後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔203〕映画「獄友」(金聖雄監督)を見てから、日本の死刑制度は存続すべきか否かを考えませんか。

2018年12月29日 | 映画鑑賞
●11月09日(金)
多摩地域巡回上映ツアー 東久留米市<成美教育会館>
2018年11月9日(金) 上映時間:14:00
会場:成美教育会館(西部池袋線東久留米駅北口4分)

 清瀬の市民運動仲間に勧められて映画「獄友」を見に行ったのは11月のことでした。
 この映画は金聖雄監督のドキュメンタリー作品です。金聖雄監督はこれまで「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」「袴田巖 夢の間の世の中」という冤罪事件映画も世に問うています。従って「獄友は」冤罪ドキュメント三部作の一つということになります。「袴田巖 夢の間の世の中」は以前このブログでも取り上げましたので興味ある方は探してみてください。
 さて、この映画に登場する冤罪被害者は5人です。「狭山事件」の石川一雄さん、「袴田巖 夢の間の世の中」に登場する「袴田事件」の袴田巌さん、「布川事件」の桜井昌司さんと杉山卓男さん、「足利事件」の菅家利和さんです。
 この5人は横のつながりはなかったということですが、「足利事件」の菅家さんの釈放をきっかけ集まるようになったということです。それぞれの事件の時代や状況も様々な中で、5人が見せる冤罪に対する考え方や思いを知ることにより、現在日本に現存する死刑制度などについて深く考えさせられるのです。
  なお、「獄友」の主題歌は谷川俊太郎作詞、小室等作曲です。歌は獄友イノセンス オールスターズということで、小室等、うじきつよし、伊藤多喜雄、李政美、坂田明、金聖雄、谷川賢作、中川五郎、及川恒平など27人が参加しています。サウンドトラックにはこのメンバーが協力参加していて、音に厚みを加えています。CD「獄友」は、これらのメンバーのオリジナルが収録されていてその個性が際立っています。

 金監督のこの映画に賭ける思いを読んでいただきましょう。

■映画「獄友」(HPより)
映画のこと
シリーズ3作目だからこそ、できることがあるはずだ!
金聖雄 監督

「なぜ再審が始らないのだろう」
「なぜ彼らはあんなにまっすぐに生きているんだろう」

 2本の映画をつくって、今考えることは、様々な「なぜ!?」だった。いつも言うが、私はジャーナリストでもなく冤罪専門の映画監督でもない。何か使命感に駆られて映画をつくっているわけではない。それでも映画づくりの中で嫌と言うほど権力の非道を思い知らされた。同時にそれらを引き受けて生きる人たちの魅力に引きつけられて映画をつくってきた。
 「また冤罪映画!?」と思う人もいるだろう。しかしどうしても描かなければならないものがある。
 彼らは人生のほとんどを獄中で過ごした。いわれの無い罪を着させられ、嘘の自白を強要され、獄中で親の死を知らされた。奪われた尊い時間は決して取り戻すことができない。しかし、絶望の縁にいたはずの彼らは声を揃えて言うのだ。「"不運"だったけど、"不幸"ではない、我が人生に悔いなし」と。
 冤罪など、許されるはずがない。
 しかし、彼らにとって"獄中"は生活の場であり、学びの場であり、仕事場であった。まさに青春を過ごした場所なのだ。「冤罪被害」という理不尽きわまりない仕打ちを受けながら、5人は無実が証明されることを信じ懸命に生きたのだ。時に涙し、怒り、絶望し、狂い、そして笑いながら...。
 冤罪被害者の横のつながりはほとんどなかったが、「足利事件」の菅家さんの釈放をきっかけに、彼らは同じ痛みを抱えるものとして、お互いを支え合うようになった。はじめて彼らの話を聞いた時、どんなに重い話をされるだろうかと緊張し身構えていたが、会った瞬間、笑いをこらえることができなかった。自分たちのことを「獄友(ごくとも)」と呼び、獄中での野球や毎日の食事や仕事のことを懐かしそうに語り、笑い飛ばす。そこには同じ「冤罪被害者」という立場だからこそわかり合える特別な時間があった。そしてなぜ自白したのか、獄中で何があったのか、娑婆に出てからのそれぞれの人生を自ら語ってくれた。
 奪われた時間の中で、彼らは何を失い、何を得たのかを描き出す。
そこからあぶり出されるものは、司法の闇であり、人間の尊厳であり、命の重さだ。
 今"ごくとも"たちは、"青春"のまっただ中にいる。
 ぜひ、一緒に作品づくりに参加していただけるならば、うれしい限りである。


  戦争と死刑制度に通底するのは、国家の名による殺人です。なによりも人の命を大切にすること、反戦非戦を推し進めることが、基本的人権の尊重と平和主義、国民主権を柱とする日本憲法を抱く日本国民が目指すことではないでしょうか。そして、世界的に見ても死刑制度は減少傾向にあるのです。
 最後に、先日出された死刑執行に関する札幌弁護士会会長声明を読んでいただきましょう。

■死刑執行に関する会長声明(札幌弁護士会)

 2018年(平成30年)12月27日、大阪拘置所において2名の死刑が執行されました。本年7月に計13名の死刑が執行されて以来の執行であり、本年の執行人数は合計15名となりました。また、第2次安倍内閣以降、死刑が執行されたのは15回目、合計36名に対して死刑が執行されたことになります。
 死刑は生命を奪う刑罰であり、誤判の場合、事後的な回復が不可能です。そして誤判・えん罪の危険が現実のものであって、誤った死刑が執行されるおそれが否定できないことは、これまでの複数の再審開始決定が明らかにしています。なお、本日死刑が執行された2名のうち1名は再審請求中でした。
 国際連合の自由権規約委員会は、日本の第6回定期報告に対する最終見解(2014年7月23日採択)において、死刑判決に対する必要的な上訴制度がないこと、再審請求に死刑の執行停止効がないことなど、日本の死刑制度には国際人権基準の観点から問題があると指摘しています。
 そもそも国際社会においては、死刑廃止に向かう潮流が主流です。2016年(平成28年)12月19日には、国連総会において「死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議が、2014年(平成26年)12月に引き続き117か国の賛成により採択されています。
 また、2017年(平成29年)12月末日現在、死刑を廃止又は停止している国(10年以上死刑が執行されていない国を含む。)は142か国に及び、世界の3分の2以上の国において死刑の執行がなされていません。
 このような死刑制度が抱える重大な問題性や国際的な死刑廃止への潮流に鑑み、日本弁護士連合会は、2016年(平成28年)10月7日、第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、日本で国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに、死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言しました。
同宣言は、犯罪被害者や遺族への支援の拡充を求める一方、人権を尊重する民主主義社会における刑罰制度は、犯罪への応報にとどまらず、社会復帰の達成に資するものでなければならないとの観点から、死刑制度を含む刑罰制度全体の抜本的見直しを求めるものです。
 今回の死刑執行は、このような死刑制度を巡る国内外の情勢の変化及び人権擁護大会における上記の宣言を無視するものであって、極めて遺憾です。
 当会は、政府に対し、直ちに死刑の執行を停止し、2020年までに死刑制度を廃止することを求め、今回の死刑執行に対し強く抗議します。

 2018年(平成30年)12月 札幌弁護士会 会長 八木宏樹

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