「はやぶさ」のサンプル分析、初の成果(ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト) - goo ニュース
日本の小惑星探査機「はやぶさ」がサンプル採取に成功した小惑星25143イトカワは、岩石などの衝突によって分裂した、より大きな天体の破片で形成されているという。微粒子のサンプルを分析した結果、イトカワの正体が徐々に明らかになり、初めての科学的成果が公表された。
イトカワは「ラブルパイル天体(破砕集積体)」という密度が低い天体で、固い岩石の塊とは違い、ちりや破片が重力によって集積してできていることをはやぶさは証明した。
はやぶさは2003年に日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって打ち上げられ、2005年イトカワに到着、昨年の6月に地球へ戻ってきた。サンプル収集用のカプセルはオーストラリア内陸部に届けられたが、探査機本体は超高温に達する大気圏再突入で燃え尽きている。
サンプル容器からは1500個以上の微粒子が収集され、国際的な分析作業が進んでいる。
東北大学の惑星科学者、中村智樹氏の研究チームは、イトカワを構成する岩石が長期間、摂氏800度以上に熱せられていたことを示す鉱物的な痕跡を発見した。
一般的に、小惑星は内部に散在する放射性原子の崩壊によって温度が上昇する。「直径20キロに満たない小惑星の場合、表面から熱がすぐに失われるため、800度という高温は維持できない」と中村氏は説明する。
一方、イトカワの直径はわずか300メートルである。大きな小惑星の内部が破片となり、再び集まって形成されたという結論が必然的に導き出される。
◆イトカワを構成する小惑星の破片は熱を受けた
また、イトカワの岩石サンプルの一部からは、高速の衝撃を受けて部分的に溶けた形跡が見つかっている。おそらく、“親”の小惑星を粉々にした天体衝突が原因だと考えられる。
中村氏は、「一部の微粒子に衝撃の影響で溶けた部分があり、非常に短い時間だが摂氏1000度を超える温度にさらされていたことがわかった」と述べる。
天体衝突の時期はまだ不明だが、早急に特定したいという。「衝突した天体の種類についても詳細はわかっていないが、かなりの確率で別の小惑星だと考えられる」。
この発見自体にそれほど驚きはないかもしれない。既存の研究でも、太陽系に散らばる固い岩石小惑星の多くが、大きな天体の衝突や分離によって生じた破片で構成されていることが示されている。
「密度が低い小惑星も同じように、衝突と再集合のプロセスを通じて形成される可能性を示した点が重要だ」と中村氏は語る。
今回の研究成果は、8月26日発行の「Science」誌に掲載されている。
小惑星イトカワから微粒子の分析から、イトカワの実態や、経歴がだんだんとわかってきたそうです。わずかな微粒子から様々なことが解明されることにはとても驚きます。