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米国財務省・内国歳入庁(IRS)が民間身元確認技術会社のID.meシステムの使用を撤回、別の本人認証システムへの移行を公表

2022-02-17 17:10:30 | 生体認証技術とプライバシー問題

 

 2月7日、筆者の手元に米内国歳入庁(IRS)からリリース「IRSは、顔認識を含む民間身元確認技術会社たるサードパーティ(ID.me)の顔認識システムの使用を中止し、別の本人認証システムに移行する旨発表」が届いた。

 その内容を要約すると、申告シーズン中の納税者の大きな混乱を防ぐために、この中止は今後数週間にわたって行われる。この中止中、IRSは顔認識を伴わない追加の認証プロセスを迅速に開発し、オンライン化する。また IRSは、政府間パートナーと協力して、納税者データを保護し、オンライン・ツールへの幅広いアクセスを保証する認証方法を開発する。

 2月7日発表されたID.meシステム(注1)の使用中止と別認証システムへの移行は、納税者が申告書を提出したり、未払いの税金を支払ったりする能力を妨げるものではない。この期間中、IRSは引き続き税務申告を受け付け、現在の税務シーズンに他の影響はない。人々は通常どおりに税金を申告し続ける必要があるという内容である。

 この問題につき、筆者は2月2日付け本ブログ「IRSは税務記録にオンラインでアクセスするために納税者に顔認識識別情報の提出を義務付ける認証システムにつき代替システムを検討開始」 でロン・ワイデン(Ron Wyden)上院議員(民主党:オレゴン州)等超党派連邦議会議員や人権擁護団体、さらには主要メディアの記事や「1:1マッチング(照合)」や「1:Nマッチング(識別)」技術等につき詳しく取り上げている。

 しかし、その一方で(1)民間企業であるID.meのCEOのこの問題に対する不誠実な対応とはいかなるものか、(2)ID.meのサイトの最近のブログ投稿では、会社がIDを検証する方法と、顔を照合するために依存するアルゴリズムに名前を付ける方法について説明している。これには、Paravision(NISTによってテスト済み)やAmazonが発売した製品であるAmazonのRekognitionが含まれる。果たして、IRSは本当にかなり精度が低いと言われる顔認識システムの導入をまだあきらめていないのではないか、(3) 米国の警察が使う「アマゾンの顔認識技術」、その利用の一時停止は大きな転換点になるかといった問題をどうクリアするのか、すなわち米国の警察当局が採用しているアマゾンの顔認識技術「Amazon Rekognition」について、警察当局による使用を「1年間停止」すると同社が発表した。顔認識ツールを警察に提供する正当性を激しく主張してきた同社にとって、大きな転換点となる可能性があるという問題等である。

 一方、この問題につきわが国のメデイアはどのように取り上げたであろうか。2月11日の朝日新聞の朝刊は問題の本質的な解説記事とはいいがたい。したがって、筆者はIT問題専門サイトであるTechCrunchWired comtechdirtの記事を読み直した。

 これらの記事により、冒頭述べた疑問点はかなりクリアーになった。それでも、GAFAだけでない米国IT企業の連邦機関や州機関等への売り込み競争はすさまじい。その実態を理解するため、techdirt記事「ID.meは、IRSが同社とのパートナーシップを再検討しているため、既存のデータベースに対して自撮りを実行することを最終的に認めている」の要旨を仮訳するとともに新たな課題をまとめてみた。

 なお、解説記事としてはWired comの翻訳文はわかりやすいし、読みやすい。併読されたい。

【techdirt記事の要約にもとづく仮訳】

  テクノロジー企業であるID.meは、過去数か月にわたって政府機関の顧客に対し驚くべき侵害を行った。これの一部は、連邦政府が2020年に不正なCOVID関連の請求で4,000億ドル(約46兆円)を失ったと(証拠なしで)主張した会社のCEOであるブレイク・ホール(Blake Hall)氏による未審査の請求によるものである。彼はまた、そのID.meにつき(証拠を提供せずに)当社の顔認識技術は頑丈で、健全で、正確で、人間のレビューによって阻止されていると主張した。

Founder & CEO:Blake Hall氏

 これらの主張は、ID.me のAIにいくらか欠陥があることが明らかになった後にも行われ、その結果、いくつかの州で失業手当支給から人々が締め出された(支給の遅延)。 ID.meが現在27の州でさまざまな利益の分散を処理するために使用されていることを考えると、これは大問題であった。そして、ID.meがIRSとの契約のおかげで、受益者の全国全体を処理することが期待されるのであれば、それはさらに悪化するに違いない。

 もう1つの問題は、報告された失敗に対するID.meのCEOの態度である。彼はまだ4,000億ドルの詐欺の主張を裏付けるものを何も生み出しておらず、州レベルでの大規模な失敗に直面したとき、不完全な自撮りのために人々が単に失業手当の受給利益へのアクセスを拒否されるのではなく、詐欺師の行動としてでこれらを非難することを選択したのである。

 CEO であるホール氏による別の主張は、ID.meのCEOによる引き返すことをもたらし、彼の会社の活動に対する監視の強化に促された。まず、会社のAIは外部の関係者によってテストされたことがない。つまり、CEOが言う正確性の主張は、独立して検証されるまで、深刻な側面に目を向ける必要がある。

 しかし、他方、ホール氏は会社が顔を照合するために既存のデータベースを使用していないと主張し、同社が誰かの身元を確認するために「1:1マッチング(照合)」の照合に依存していることをほのめかした。しかし、これは、以前に同社のサーバーに写真をアップロードしたことがないすべての利益追求者に当てはまる可能性はなく、ID.meが一致するものを見つけられないと主張した場合にのみ拒否された。

 同社が「1:Nマッチング(識別)」技術を使用していたことは明らかである。これには、認識技術としては失敗の可能性が高く、ほとんどすべての顔認識技術に固有の欠陥がある。さらに女性やマイノリティを扱う場合の信頼性が低くなる傾向がある。

 ID.meへの外部からの精査が増えたことで、CEOのホール氏は頭がクリーンになった。そして、それは彼自身の従業員がこの1:Nマッチング(識別)のでたらめのラインを維持し続けることが同社を悩ませるためにどのように戻ってくるかを指摘することから始まった。 Cyber​​Scoopが入手したID.me社内の内部チャットでは、従業員がホール氏に、彼の不正が会社に損害を与える前に会社の実務慣行について正直であるように懇願していることが明らかに示されている。

 「1:Nマッチング(識別)」は多くの顔の検索を無効にすることはできるが、貴重な詐欺対策ツールを失うことになる。または、1:Nマッチング(識別)を使用することに対する公の立場を変えることもできる」と、部下のエンジニアは2月1日に会社のSlackチャネルに投稿されたメッセージに書き込んだ。

 Cyber​​Scoop (注2)が得た内部メッセージは、ID.me社が社内会議でIRSと1:Nマッチング(識別)」の使用について話し合ったことも意味した。

 これらのメッセージは直接的な影響を及ぼした。ホール氏はLinkedInの投稿を発行し、会社が「1:Nマッチング(識別)」を使用したことを認めた。これは、会社がIDの検証に外部データベースにも依存していることを示している。

 2月3日のLinkedInへの投稿でホール氏は、「1:Nマッチング(識別)」検証が「登録中に1回」使用され、「本人確認に関連付けられていない」と述べている。

 「これは、正当なユーザーが自分のIDを確認することを妨げるものではなく、IDの盗難を防ぐ以外の目的で使用されることもない」と彼は書いている。

 ホール氏のこの投稿は、ID.meの技術の欠陥ではなく、悪意のある詐欺師の結果であるというメリットへのアクセスの失敗をほのめかして、物事の本質をかなり曖昧にしている。しかし、彼のタイミングが遅れた正直さは、州レベルでの同社の複数の失敗とともに、IRSがID.meのAIへの依存を再考する原因となっている。

 「連邦財務省は、内国歳入庁(IRS)がウェブサイトにアクセスするために顔認識ソフトウェアID.meに依存していることを再検討している」と財務省の当局者は2月4日、数千万人のアメリカ人の顔の画像の会社のコレクションの精査の中で語った。

財務省とIRSは、ID.meの代替案を検討していると同省の関係者は述べており、その間、当局はソフトウェアに関する懸念に注意を払っている。

 これは、IRSがID.meを完全に断念したことを意味するものではない。現時点では、比較して買い物をしているだけである。オンラインで税金を申告するということは、当面の間は、なおID.meの検証ソフトウェアを利用することを意味する。

 ID.meのサイトの最近のブログ投稿では、同社がIDを検証する方法と、顔を照合するために依存するアルゴリズムに名前を付ける方法について説明している。これには、Paravision(米国立標準技術研究所:NISTによってテスト済み)やAmazonが発売した製品であるAmazonのRekognitionが含まれる。

 これはID.meには遅すぎる可能性がある。州および連邦政府の契約を食いつぶしながら、公に正直かつ透明に関与することを拒否したことで、Extremely Online(注4)の監視を超えて同社への監視が拡大した。ロン・ワイデン(Ron Wyden)上院議員は、IRSがID.meをオンライン・ファイリングの唯一のオプションにした理由を知りたがっている。

 同議員は「アメリカ人がIRSウェブサイトの個人データにアクセスするために、顔認識システムに提出するか、何時間も待機するか、またはその両方をしなければならない可能性があることに非常に不安を感じている。e-filing(注3)の還付は影響を受けないが、私はこの計画の透明性を高めるためにIRSに働きかけしている」と述べた。

 しかし、e-filingは影響を受けるとみるのが正しい。ブルームバーグ(Bloomberg)への声明でIRSのスポークス・パーソンBarbara] LaMannaが指摘したように、ID.meはまだ電子申告者とe-filingの間に位置している、ID.meを使用したくない納税者は、オンラインでの納税を拒否できると述べた。

 既存のIRSアカウントを持っている人はこの技術的な障害を回避できるかもしれないが、新しい申告者は依然としてID.meと対話してe-filing用のアカウントを設定する必要がある。

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(注1) Natptax(National Association of Tax Association )サイトでは、ID.me制度の目的、プライバシー問題への配慮、NIST基準のクリアー、利用手順等解説スライド(全17頁)で見れる。

(注2) CyberScoopは、米国のサイバー関係の大手メディアであり、わが国でも多くの公的機関で引用されている。

(注3) e-filing (電子申告)

 e-filingは、インターネットまたは直接接続を介して米国内国歳入庁に税務書類を提出するためのシステムであり、通常は紙の書類を提出する必要はない。電子ファイリング機能を備えた税務準備ソフトウェアには、スタンドアロンのプログラムまたはWebサイトが含まれる。税務専門家は、主要なソフトウェアベンダーの税務準備ソフトウェアを商用利用している。

 納税申告者は、IRS Free Fileサービスを使用して、資格がある場合は認可されたIRS e-fileプロバイダーの税務ソフトウェアを使用するか、Free File AllianceのオンラインFree File Fillable Formsを使用して無料でe-fileできる。 2020年以前は、IRS e-fileにはサードパーティの使用が必要であり、IRS Webサイトから直接e-fileすることはできなかった。 2020年、IRSは、所得が69,000ドルを超える納税者が利用できるIRS Free File Fillable Formsを介して直接、電子申告を可能にした。その金額を下回る収入のある人は書類を米国の郵便で送る必要がある。(Wikipedia から抜粋、仮訳、リンクは筆者の責任で行った)

(注4) Extremely onlineとは、ターミナルオンラインとも呼ばれ、インターネット文化に密接に関与している人を指す用語である。彼らは、オンライン投稿が非常に重要であるとしばしば信じている。(Wikipedia から一部抜粋、仮訳)

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IRSは税務記録にオンラインでアクセスするために納税者に顔認識識別情報の提出を義務付ける認証システムにつき代替システムを検討開始

2022-02-02 16:08:00 | 生体認証技術とプライバシー問題

 

 1月31日、筆者の手元に米国人権擁護団体であるEPICからこの問題に関する解説記事が届いた。この問題はロイターやBloomberg、Washingtonpost等が大きく取り上げているが、わが国のメディアでは読んだ記憶がない。

 米国連邦財務省・内国歳入庁(IRS)は、税務記録にオンラインでアクセスするために、納税者に顔認識識別番号の提出を義務付ける予定である。IRSの政府の顔認識の使用の拡大は、論争を引き起こした。(注1)(注2)

 IRS の“ID.me”の顔マッチング・システムを受託した会社は、最初は「1:1マッチング(照合)」のみが使用されると主張した。しかし、同社は後にこれらの主張を撤回し、特定の状況で「1:Nマッチング(識別)」を使用していることを認めた。(注3)(注4) IRSは、1:Nマッチング(識別)での認識の使用に対処できず、一般的に顔認識を使用する有意義な評価を欠いている ID.me サービスの使用に関するプライバシー影響評価(privacy impact assessment)を実施した。EPICは、米国の納税者にプライバシーに侵襲的な顔認識技術の使用に反対するために、他の公益団体・組織と協力しているという内容である。

 なぜ、このような事態が起きてしまったのか、ID.meシステムが抱える問題の背景やこの問題の影響範囲、筆者が以前から意見交換している連邦議会上院財務委員会のロン・ワイデン(Ron Wyden)上院議員(民主党)の意見(注5)などにつき、解説を試みるものである。

1.ID.meのこれまでの経緯と問題点

 Wikipedia が詳細に解説しているので、主要部を仮訳する。

 ID.me(もともとは、軍人や退役軍人にデジタルID検証を提供)は、人々がオンラインで自分の法的アイデンティティを証明することを可能にするアメリカのオンライン・アイデンティティ・ネットワークである。ユーザーは、そのデジタル資格情報を使用して、政府のサービス、医療ログイン、または小売ブランドからの割引、金融にアクセスできる。 ID.me はバージニア州マクリーンに拠点を置いている。

 COVID-19パンデミックによる景気後退をきっかけに、ID.me は失業保険請求者の身元を確認するために約30の州(Arizona, California, Colorado, Florida, Michigan, New York, and Texas)の失業者対策機関によって契約された。COVID-19不況の間、ID.meのいくつかの州での検証プロセスは、合法的に失業者の多くが彼らの利益にアクセスするのを妨げる長い遅延をもたらした。

 2021年11月、内国歳入庁は、2022年夏までに旧ログイン・システムを ID.me に置き換えるとともに、現在のログイン・システムを第三者の検証システムに置き換える計画を発表した。しかし、関係する多くの研究者は、正確性の証拠の欠如、黒い肌やトランスジェンダーの人々が自分の情報にアクセスするのを妨げる偽陰性(false negatives)、第三者が納税者になりすまして税務情報にアクセスできるようにする偽陽性、政府とその請負業者への生体情報の提供を拒否する市民の権利について懸念を提起した。2022年1月28日、IRSの親機関である米国財務省は、プライバシーに関する懸念から代替システム案を検討する可能性があると発表した。

 ID.me は、数多くのID検証製品を提供している。「高度なレベル保証」の身元確認のため、運転免許証、パスポート、社会保障番号などの個人データを検証する。 ユーザーは、ID.me 写真アプリを使用して、自分の携帯電話でビデオの自撮りを取る必要がある。ID.me この情報を通じてユーザーを確認できない場合、ユーザーは"信頼できる審判"ビデオ通話に話すように指示される。 ID.me は、このビデオコール・ラインの長い遅延のために論争を巻き起こした。

 個人識別システムの一環として、写真や身分証明書など、幅広い個人情報を収集している。 同社は、信頼できると考える多くの「政府機関、通信ネットワーク、金融機関」、その他の企業に情報を送信して、情報を検証する。 同社は、インターネットプロトコルアドレスと一意のデバイス識別子を非個人を特定できるものとして扱い、場所、職業、言語、ID.me で閲覧したページのリスト、および ID.me 使用前後に訪問されたURLとともに、第三者に公開する。(以下、略す。)

2.米国財務省は、IRSオンライン・アクセスのためにID.meバイオメトリクス認証の代替システム案の動きと検討問題

 Biometric Update .com「US Treasury considers alternatives to ID.me biometrics for IRS online access」の概要を仮訳する。

 ID.meがオンライン納税申告のために提供しているIRSの契約は、顔認識と生体認証の使用に基づいて論争を引き起こし続けており、代替案の身元確認手段の検索を促している。

 Bloombergが報じた財務省当局者のコメントによると、現在、米国財務省はオンラインサービスへのアクセスを確保するための代替システム案を検討している。

 財務省の広報担当者はBloombergに、近代化のための資金が不足しているため、IRSは不正アクセスから納税者のアカウントを保護するため、外部機能に依存していると語った。また財務省当局者は、IRSはすべての納税者データを保護し、ID.meはデータを第三者に開示することを法的に禁じられているとも述べた。

 ID.meは、以前にParavisionの生体認証とiProovのライブネス検出の使用につきを開示したが、現在はAmazon Rekognition(注5)を使用して不正防止のための1対多の生体認証を実行していると述べている。詐欺チェックプロセスの結果、自撮り写真の0.1%未満が潜在的に詐欺であるとフラグが立てられていると同社は述べている。

 同社の声明によると、「生体情報が政府機関と共有されるのは、政府機関に関連付けられたアカウントに関連する明らかな詐欺や個人情報の盗難があった場合のみです」とのことである。

 上院財務委員会のロン・ワイデン上院議員はBloombergに対し、連邦政府機関が使用する身元確認システムについてさらに情報を求めると語った。(注6)

 ID.meは、IRSに加えて、社会保障局、退役軍人局、その他の5ダース以上の連邦機関、および30の州で使用されている。その中には、カリフォルニア州雇用開発局があり、州が疑わしいと見なした約27,000の医療提供者に関連する345,000の障害チェックにフラグを立てて一時停止した。 StateScoopによると、請求者とプロバイダーはIDの確認のためにID.meに照会され、27,000近くのうち485が正当な、またはID盗難の被害者であることが判明した。

 バイオメトリクスやその他のアルゴリズム・システムにおける人口統計学的公平性の卓越した擁護者として名声を得たJoy Buolamwini氏は、アトランティック誌(The Atlantic:1857年にアメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンで創刊され、奴隷制廃止、教育、その他の当時の主要な政治問題に関する主要な作家の解説を掲載した文学および文化の解説雑誌)において、学術研究が「正確な用語を使用する」ことに失敗したと書いたときの例として、ID.meが「1:1マッチング(照合)」の検証と「1:Nマッチング(識別)」の関係を曖昧にし、引用に失敗したと書いている。

 Buolamwini氏は、正確性(または「バイアス」)の人口統計上の違いが、コロラド州の個人が経験した問題を引用して、給付の遅延または拒否をもたらしたと主張している。同氏は、連邦政府と州政府は、オンラインの確定申告と失業手当のプロセスにID.meを使用するのをやめるべきと指摘する。

 また、ID.meは、7000万人のデジタルIDユーザーの顧客体験を向上させるために採用しているため、自身の成功の犠牲になっている可能性もある。同社はまた、ビデオチャットの量の急増に対処するために750人の労働者を雇用する計画を発表した。

 さらに、ID.meは、24時間年中無休でサポートを利用できるようにし、「後で戻ってくる」オプション、新しい言語のサポート、および専用のエスカレーションチームを立ち上げている。

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(注1) IRSの広報担当者によると、2022年の夏から、IRS.gov アカウントを持つユーザーは、簡単なユーザー名とパスワードでログインできなくなる。代わりに、政府の身分証明書、自撮り写真、請求書のコピーをバージニア州に拠点を置く身元確認会社ID.me、に提供し、身元を確認する必要がある。この問題は、しばしば筆者が引用してきた専門サイト「Krebs on Security」(注2)が最初に気づいたこの変更は、以前はユーザーが個人の生体認証データを提出せずにIRSアカウントにアクセスすることを可能にしていた内国歳入庁の大きな変化を示している。(2022.1.19 Gizmodoサイト「IRS Will Require Facial Recognition Scans to Access Your Taxes Online」から一部抜粋、仮訳。

(注2) 同サイトの解説を一部抜粋、仮訳する。

 米国内国歳入庁 (IRS) で税務記録を管理するオンライン・アカウントを作成した場合、これらのログイン資格情報は2022年後半に機能しなくなる。同庁は、2022年の夏までに、irs.gov にログインする唯一の方法は、ID.me、すなわち申請者が請求書や身分証明書のコピーを提出することを要求するオンライン・アイデンティティ検証サービス、ならびにモバイルデバイスを介して自身の顔のライブ・ビデオ・フィードを介して行われることになると述べている。以下、略す)

(注3) 識別と照合

「識別」は、多くの対象者から特定の人を判定すること。 1:N認証(注2)とも呼ばれる。 一般的には、提示された生体データに対して、データベース上の全データと比較処理を行う。

「照合」は、指定された人に対し、その人かどうかを判定すること。 1:1認証とも呼ばれる。識別とは異なり、一般的には、対象者1人のデータとの比較処理を行う。

*モフィリア(Mofiria)   社(https://www.mofiria.com/biometrics-and-security-blog/biometrics/biometrics-terminology/)の解説から抜粋、仮訳。

(注4) 1:Nマッチング認証とは、認証端末上の顔情報を登録データベース上の複数人の顔情報を照合しユーザーを本人認証する方式。

(注5) Ron Wyden上院議員のツィート文

I’m very disturbed that Americans may have to submit to a facial recognition system, wait on hold for hours, or both, to access personal data on the IRS website. While e-filing returns remain unaffected, I’m pushing the IRS for greater transparency on this plan.

 (注6) Amzon Rekognition :機械学習を使用して画像と動画の分析を自動化する。事前トレーニングされたカスタマイズ可能なコンピュータビジョン (CV) 機能を提供して、画像と動画から情報とインサイトを抽出する。Amazonの専用サイトを参照されたい。

(注7)ロン・ワイデン上院議員とジェフ・マークリー上院議員(民主党・オレゴン州)(Senator Jeff Merkley)はIRSの広範で継続的な処理バックログ(未処理分)の中で、オレゴン州と全国の納税者にペナルティ救済を提供するよう米国財務省と内国歳入庁(IRS)に要請するよう同僚議員に要請した。

 2021年12月下旬現在、IRSは600万件の個人所得税申告書と230万件の修正された個人確定申告のバックログを持っており、納税者にペナルティ救済を提供するようIRSに要請するという。

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