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ロシアとウクライナ戦争の拡大阻止のための米国やNATOが北大西洋条約第5条(集団防衛)の適用について具体的な検討内容

2022-03-08 13:46:35 | 国際紛争

  筆者は去る3月7日付けのブログの最後で米国やNATOが北大西洋条約第5条(集団防衛)の適用について具体的に検討を進めている旨、解説した。

 この問題については、NATOにとって最後の切り札であり、もし適用を誤ると第三次世界大戦に突入するという大問題である。さらに国連の議決ともかかわる微妙な問題だけに慎重な検討がなされているようである。

 この点につき米国CNNが3月7日付け記事で簡単な要約を行っている。重要な問題であり、ブリンケン国務長官も東欧の関係国を回る中で強く協調している点でもあり、その概要を紹介する。また、同長官のラトビア外相との共同記者会見でも明言していることから今回のブログであえて取り上げた次第である。

1.北大西洋条約第5条(集団防衛)

【外務省の解説】北大西洋条約第5条(集団防衛)欧州又は北米における一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす。締約国は,武力攻撃が行われたときは,国連憲章の認める個別的又は集団的自衛権を行使して,北大西洋地域の安全を回復し及び維持するために必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を個別的に及び共同して

直ちにとることにより,攻撃を受けた締約国を援助する。(外務省の解説から引用)

2.CNN記事

 北大西洋条約第5条(集団防衛)に関する部分を抜粋、仮訳する。

(1)北大西洋条約第5条(集団防衛)とは何か?

 第5条は、NATOの1つのメンバー国に対する攻撃は、すべてのメンバー国に対する攻撃であるという原則である。これは、1949年にソビエト連邦のカウンターウェイトとして設立されて以来、30人のメンバー国(注1)による同盟の要となっている。

 この原則は、潜在的な敵対者がNATO加盟国を攻撃するのを阻止することを目的としている。第5条は、同盟全体の資源が単一の加盟国を保護するために使用できることを保証する。これは、同盟国なしでは無防備になるであろう多くの小国にとって極めて重要である。たとえば、アイスランドには常備軍がない。

 米国は最大かつ最も強力なNATO加盟国であるため、同盟のどの国も事実上米国の保護下にある。

 そのような武力攻撃およびその結果としてとられたすべての措置は、直ちに安全保障理事会に報告されなければならない。安全保障理事会が国際の平和と安全を回復し維持するために必要な措置を講じたとき、そのような措置は終了するものとする。

 冷戦時代の主な関心事はソビエト連邦であったが、近年、東欧でのロシアの積極的な行動が注目されている。

(2)これまで第5条が発動されたことはあるか?

 第5条は一度だけ発動された:2001年9月11日以降、米国へのテロ攻撃時である。

 しかし、NATOの第5条の原則は、祖国への攻撃を超えている。同盟はまた、2012年にシリアとトルコの国境にパトリオットミサイルを配備し、2014年にロシアがクリミアを併合した後、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランドでその軍隊を強化するなど、いくつかの機会に集団防衛措置を講じた。

 NATOの同盟国も、アフガニスタン、イラク、シリアで戦うために米国に加わった。

(3)5条は、ロシアのウクライナへの攻撃にどのように適用されるか?

 ウクライナはNATO加盟国ではないため、米国はNATO加盟国が攻撃された場合と同じように国を保護することを強制されていない。

 しかし、ウクライナの隣国の多くはNATO加盟国であり、ロシアの攻撃がこれらの国の1つに拡大した場合、第5条は米国や他のNATO加盟国からの直接の関与を引き起こす可能性がある。

(4)NATO加盟国への攻撃とは何を指すのか?

 第5条の文言は、加盟国に対する「武力攻撃」が集団行動の引き金となることを規定している。

 しかし、「武力攻撃」を構成するのはNATO加盟国次第であり、ロシアの攻撃的な姿勢は、NATOの対応を潜在的に誘惑する国の意欲に対する懸念をすでに引き起こしている。

 たとえば、バージニア州の民主党上院議員マーク・ワーナーは最近、ウクライナへのロシアのサイバー攻撃が意図された「地理的境界」を超えた結果につながり、NATO加盟国に影響を与える可能性があるとワシントンポスト紙 に語っている。

 「ポーランドやルーマニア、バルト三国に出血して病院を閉鎖する可能性があり、そこにアメリカ軍がいる可能性があります。ライトが消えたためにトラックに乗ったアメリカ軍が墜落した場合、第5条に非常に近づく」 と語った。

 ヨーロッパ最大のザポリージャ原子力発電所サイトに対するロシアの攻撃は、同様の懸念を引き起こした。ウクライナの原子力規制当局はこの地域で「放射線レベルに変化はない」と述べたが、NATO加盟国に広がる放射線漏れがあったとしたらどうなるだろうか。

 「それは同盟が作るための質問だ」と国防総省のスポークスマン、ジョン・カービー氏は3月初めにCNNに「具体的には、第5条は、NATOの同盟国に対する武力攻撃が第5条を誘発することを明確にしていることを思い出すべき 」と語った。

(5)米国の政府当局は現在、第5条について何と言っているか?

 米国国務長官のアントニー・ブリンケン氏は、「NATOの第5条に対する米国と同盟国のコミットメントを繰り返し、「NATOの領土の隅々まで守るための行動。それはそれと同じくらい明確で直接的である」と述べている。

 米国のトップ外交官からのコメントは、一般教書演説でのジョー・バイデン大統領の「私たちの総力でNATO諸国の領土の隅々まで守る」という誓約を反映している。

3.2022.3.7 ブリンケン国務長官とラトビア外務大臣エドガース・リンケヴィッチ(Edgars Rinkēvičs, Latvi)との共同声明の中で北大西洋条約第5条(集団防衛)への言及箇所

以下抜粋のうえ、仮訳する。

・・・・

 また我々は我々自身の共有防衛を強化している。わが国と北大西洋条約機構(NATO)同盟国は、いかなる脅威にも対応する用意がある。バイデン大統領はほんの数日前の一般教書演説でアメリカ国民と話をし、彼は繰り返し肯定したことを再び明らかにした:我々はいつでもどこからでも来る侵略からNATO領土のあらゆるインチ単位で守る。第5条へのコミットメントは、1つに対する攻撃は全てに対する攻撃であり、鉄則である。バイデン大統領はそれを一切の批判を許さない神聖な原則(sacrosanct)と呼んだ。そして、誰もそれについて疑問を持つべきではない。

 北大西洋条約機構(NATO)は史上初めて欧州東側の防衛計画を発動し、最高連合軍司令官ヨーロッパに必要に応じてNATO対応部隊を配備する権限を与えた。多くの同盟国は、部隊の存在感を高め、この取り組みに追加の装備と能力を貢献した。バイデン大統領はさらに7,000人の米軍をヨーロッパに配備するよう命じ、すでにヨーロッパにいる軍隊をラトビアを含む北大西洋条約機構(NATO)の東側に移した。

 我々は今、ラトビアに1000人以上の米兵を保有している。我々は、ラトビアの軍隊と協力して、カナダが主導するNATOが「強化した即応前進戦闘部隊」(ENHANCED FORWARD PRESENCE (EFP))(注2)と共に訓練するために、ラトビアとバルト地域に軍隊をローテーションし続けている。そして、わが国はNATOの強化された空軍警備任務部隊(air policing mission.) (注3)を強化するために、同地域にF-35ストライキ戦闘機(F-35 strike fighter jets)を配備した。

 また、ラトビアやマルチパートナーと協力して、悪意のあるアクターから重要なインフラを保護するサイバーセキュリティや、ラトビアのエネルギー供給がロシアに依存しないようにエネルギーセキュリティなど、他の分野のセキュリティにも取り組んでいる。

*****************************************************:::

(注1) アルバニア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、クロアチア、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、モンテネグロ、オランダ、北マケドニア、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、トルコ、英国、米国の30か国。

(注2) NATO強化した即応前進戦闘部隊(ENHANCED FORWARD PRESENCE (EFP)

 NATOは、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランドに4つの多国籍大隊規模の戦闘群を交代で配置し、同盟の東部での前向きな存在感を高めている。英国、カナダ、ドイツ、米国がそれぞれ主導するこれらの大隊規模の戦闘群は、大西洋横断の絆の強さを実証し、1つの同盟国への攻撃がアライアンス全体への攻撃と見なす。これは、世代における同盟の集団的防衛の最大の強化の一部である。

 また、NATOは、ルーマニアの南東部多国籍師団の下で、多国籍フレームワーク旅団の周りに建設された土地要素を備えた同盟地域の南東で調整された前方プレゼンスを開発し、複合共同強化訓練イニシアチブを通じて多国籍訓練を調整した。

 さらにNATOは、同盟の360度の視点でセキュリティ問題に対処するために、SACEURの責任範囲全体でその存在と活動を拡大している。

(注3) 2004年3月29日にバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)はNATOに加盟した。これらの国は、ソ連崩壊後の経済混乱の影響もあり、国家財政が疲弊し、有効な航空戦力を保持していなかった。

 そのため、NATO加盟諸国が戦闘機部隊を順次派遣し、交代でバルト三国における領空警備任務を行うこととなった。戦闘機部隊の派遣は2004年3月30日にベルギー空軍の4機のF-16戦闘機が派遣されたことを皮切りに、3カ月交代で行われている。戦闘機部隊はリトアニアの空軍基地でスクランブル待機状態に置かれ、識別不明機に対する要撃などを行っている。(Wikipedia から抜粋)

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米国ブリンケン国務長官のモルドバ共和国訪問の本当の目的とは?東欧の3か国のEU加盟申請と更なるロシアの拡大戦略に要注意すべき

2022-03-07 20:49:16 | 国際政策立案戦略

 3月6 日、ロイター通信(日本語版)は「米国務長官がモルドバ共和国訪問、ウクライナ避難民の受け入れ称賛」したとある。しかし、その最大の目的はジョージア、ウクライナに続いてEU加盟申請したモルドバ共和国(以下、モルドバという)を米国としていかに後押しするかである。

 ウクライナ以外は旧ロシア連邦の一部をなす経済的・政治体制的にも小国である。以下で述べるとおり、これら3か国のEU加盟について、EU内の議論の進展は極めて弱い。すなわち、これら3か国の加盟はドイツやフランスなどと異なり、今後EU加盟国にとって足かせになることはいうまでもない。

 つまり、米国のロシアとの対峙はEUの将来にとって極めて重要な意味を持つ点をわが国としても十分理解しなければならないのである。

 今回は、ウクライナ戦争が仮に停戦合意に至ったとしてもこれら2か国の動向がさらに大きな世界的不安定を招くという問題を改めて取り上げるものである。

 また、ウクライナ戦争に関し、米国は独自にポーランドへの軍事支援(ロシア製MiG-29戦闘機(注1)、Su-57第5世代ステルス戦闘機(注2)をウクライナに譲渡する)承認すると明言していたが、ウクライナ空軍は3月1日 facebookで、EU加盟国のブルガリアからMiG-29×16機とSu-25×14機、ポーランドからMiG-29×28機、スロバキアからMiG-29×12機を受け取ると発表、これはEU外務・安全保障政策上級代表のボレル氏が「ブリュッセルの資金でウクライナに戦闘機を提供する」と27日に発表したことを受けての措置だ。

  しかし、実際は、ポーランド、ブルガリア、スロバキアはこの考えを拒絶し、ウクライナのパイロットはMiG-29を得ることなく手ぶらで去ったという記事もある。

 また米国政府は3月1日、ロシアが隣国ウクライナに侵攻した後、欧州連合(EU)とカナダによる同様の動きを受けて、アメリカ領空からのロシア便の禁止を発表した。米国運輸省連邦航空局の命令は水曜日の終わりまでに発効し、ロシア市民である人物が所有し、認定、運用、登録、チャーター、リース、または管理されているすべての航空機の運航を停止した。ただし、ロシアは当然のことながら対抗措置を取った。

 今回のブログは泥沼化するウクライナ戦闘問題と、周辺国のEU加盟の動き、さらにNATO軍の最新動向等を概観する。

1.モルドバ共和国の現状

(1)国勢

* 面積:3万3,843平方キロメートル(九州よりやや小さい)

* 人口:264万人(2020年:モルドバ国家統計局。トランスニストリア地域の住民を除く)

モルドバ(ルーマニア系)人(75.1%)、ウクライナ人(6.6%)、ロシア人(4.1%)、ガガウス(トルコ系)人(4.6%)等(2014年:モルドバ国勢調査)

マイア・サンドゥ大統領(任期4年)(Maia Sandu)ルーマニア語 )首相:ナタリア・ガブリリツァ(Natalia Gavrilița)

*トランスニストリア問題(注3)

 ロシア系住民が入植し、ロシア軍の駐留するトランスニストリア地域が1990年9月に「独立」を宣言し、1992年には本格的な武力紛争に発展(トランスニストリア紛争)。現在は停戦状態にあるが、モルドバ政府の実効支配が及んでいない。問題解決に向けた枠組として、当事者・仲介者であるモルドバ、トランスニストリア地域、ロシア、ウクライナ、OSCEに、オブザーバーの米国、EUを加えた「5+2」協議があり、教育、運輸、電話通信、環境等の分野での協力に関する合意文書が署名され、日常的に生じる問題解決に取り組んでいるが、根本的な問題解決の目処は立っていない。

* GDP: 119億ドル(2020年:IMF):日本50,451億ドル

* 一人当たりGDP:4,523ドル(2020年:IMF);日本 40,089 USドル

* 経済成長率:-7.0%(2020年:IMF)

*失業率:8.0%(2020年:IMF) 農業・食品加工業以外の基幹産業に乏しい。市場経済移行中であり、IMFと協調して構造改革に取り組んでいる。

(2)EUの加盟申請

 モルドバは3月3日(木)に正式にEU加盟を申請し、ロシアのウクライナ侵攻が始まってから1週間後に、いわゆるアソシエイテッドトリオのパートナーであるウクライナとジョージアに加わった。

 隣国のウクライナでの戦争をきっかけに、モルドバのマイア・サンドゥ大統領、首相、議会議長は、3月3日に自国がEUに加盟するための正式な申請書に署名した。

 

カタールのメディア「Al Jazeera」から引用写真

 「我々は平和と繁栄の中で生き、自由な世界の一部になりたいと思っている。時間がかかる決定もあれば、変化する世界に伴う機会を利用して、迅速かつ断固として決定しなければならない決定もありうる」と彼女は語った。さらに、申請書は数日中にブリュッセルに送られるであろうと大統領は言った。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は今週初め、キエフが ロシアの侵略から身を守るために特別な迅速な手続きの下で「即時」EUのメンバーシップを取得することを許可する公式の要請を提出したときの道を示した。

 モルドバの動きは、東方パートナーシップのメンバーであるジョージアが正式にブロックのメンバーシップを申請したのと同じ日に行われた。

2.ジョージア国(共和国制)

(1)国勢

* 面積:6万9,700平方キロメートル(日本の約5分の1)

* 人口:400万人(2021年:国連人口基金)

*ジョージア系(86.8%)、アゼルバイジャン系(6.2%)、アルメニア系(4.5%)、ロシア系(0.7%)、オセチア系(0.4%)(2014年、ジョージア国勢調査)

* GDP:157.3億米ドル(2020年:IMF推計値)

* 一人当たりGDP 4,248ドル(2020年:IMF推計値)

* 経済(実質GDP)成長率:-6.1%(2020年:IMF推計値)

*失業率:18.5%(2020年:ジョージア国家統計局:)

主要産業は、茶、柑橘類、果物、たばこ、ブドウ栽培を中心とする農業及び畜産業、紅茶・ワインを中心とする食品加工業、マンガンなどの鉱業。

(2) 軍事力

総兵力20,650人(陸軍19,050人、国家警備隊1,600人)準兵力5,400人(ミリタリー・バランス2021)

(3)首相 イラクリ・ガリバシヴィリ(ირაკლი ღარიბაშვილი:Irakli Garibashvili)

(4)ロシアの強い影響

ジョージアは国内に分離独立を主張するアブハジア南オセチアを抱え、両地域には中央政府の実効支配が及んでいない。2008年8月、ロシアは両地域を「共和国」として独立承認したが、現時点でロシア以外に独立を承認したのは数か国のみ。

3.EUのこれら3カ国の加盟に関する最新動向

 本ブログでは詳しく論じないが、EURACTIVEドイツのメディアDWが詳しくEU加盟国内の動きを論じている。

4.NATO軍の対ロシア対応

 筆者の手元にNATO本部から届いた3月2日付けニュースがあるので一部抜粋し、仮訳する。

  NATO即応部隊は、月曜日と火曜日(2022年2月28日から3月1日)にルーマニアに到着し、同盟の東部でのNATOの防御態勢を強化した。 ルーマニアに配備する前に、500人のフランス軍が南フランスのイストルに集まった。

 NATOが集団的防衛と抑止のためにNATO即応部隊を活性化したのはこれが初めてである。 これは、ロシアの大規模な軍事力増強とウクライナへの侵攻によって引き起こされた、ヨーロッパで過去数十年で最大の安全保障危機の中で、NATOが防衛対応計画を活性化したことに続くものである。

 フランスは、NATO即応部隊の今年の最も準備の整った要素をリードしている。これは、NATOが必要に応じて急いで配備できる、最大40,000人の陸、空、海、特殊作戦部隊で構成される多国籍部隊である。

 NATO事務局長のイェンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)は、この展開を歓迎し、「フランス軍はこの部隊の主要部隊としてルーマニアに到着した。 EUの集団的防衛条項である第5条に対する我々のコミットメントは、鉄壁である。 我々はNATOの領土の隅々まで保護し、防御する」と述べた。

***************************************************

(注1) ロシア製MiG-29戦闘機(ポーラン空軍の飛行動画

(注2)Su-25  旧ソビエト/ロシアのスホーイ設計局で開発された亜音速攻撃機(シュトルモビク)。ロシアでの非公式の愛称は「グラーチュ*1」、NATOコードはFrogfootフロッグフット。

(注3) 日本ルーマニアビジネス協会(以下、「JRBA」)の「もうひとつのモルドバ共和国~トランスニストリア」を参照されたい。なお、JRBAのHPを抜粋する。「日本ルーマニアビジネス協会 (JRBA) は、日本ルーマニア経済または文化交流に興味をお持ちの企業・個人のための社団法人です。ルーマニア及び日本の企業や個人で構成され、両国間のネットワーキングを応援し、会員共通の利益を守る混合的な団体です。日本ルーマニアビジネス協会はビジネスの発信、交流、技術、知的交流、両国の文化及び言語教育の推進など、より多くの企業、そして人々との豊かなパートナーシップを築く為の、会員サポート向けのさまざまな事業を行っております。」

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OSCEはウクライナへのOSCE特別監視ミッションの国家ミッションメンバーの死を悼む

2022-03-03 13:56:04 | 国際紛争

2022年3月2日、ウィーンのヘルデン広場でのOSCE本部前の旗と黒い弔旗の写真

 筆者の手元に3月3日、OSCEはウクライナへのOSCE特別監視ミッションの国家メンバー (OSCE Special Monitoring Mission to Ukraine:SMM)である マリーナ・フェニーナ (Marina Fenina)氏が, ロシア軍のハリコフで砲撃で死亡した旨のリリースが届いた。

 筆者は OSCEについて2月22日の本ブログ「プーチン大統領がウクライナのドネツクとルガンスクの特定の2地域を国家として承認するとした発表に対するOSCEウクライナ担当特別代表キヌネン特別代表の声明の意義」で取り上げているが、今回のブログは、(1)OSCEの公表内容、(2)ロシアとウイクライナの停戦合意の重大な不安定性と 同合意の違反国(しかけた国)はいずれか、(3)SMMの役割、(4)ロシア国営放送であるタス通信の報道内容、等について、取り急ぎまとめたものである。

1.OSCEのリリース内容

 OSCE議長兼ポーランド外相であるズビグニェー・ラウ(Zbigniew Rau)およびOSCEのヘルガ・マリア・ット(Helga Maria Schmid:ドイツ)事務総長は、マリーナの愛する人たち、そしてSMM全体に対し、次のとおり心から哀悼の意を表す。

ズビグニェー・ラウ(Zbigniew Rau)OSCE 議長

ヘルガ・マリア・シュミット(Helga Maria Schmid:ドイツ)事務総長

 「心から哀悼の意と同情はマリーナの家族に向かう。マリーナはSMMチームの大切なメンバーであり、ウクライナの同僚たちは私たちのサポートを提供するために彼女の家族と密接に連絡を取り合っている。マリ-ナは、戦争地帯になった都市で家族のために物資を手に入れながら殺された。ハリコフやウクライナの他の都市や町では、ミサイル、砲弾、ロケット弾が住宅や町の中心部を襲い、女性、男性、子供など、罪のない民間人を殺害し、負傷させた。

 国際社会全体、そしてOSCE全体からの繰り返しの呼びかけにもかかわらず、ウクライナに対する挑発的な軍事作戦は続いている。我々は、市民に死滅及び負傷を引き起こす都市部の砲撃の増加を強く非難し、ロシア連邦に対し、敵対行為の即時停止と有意義な対話を求める声を改めて表明する」

2.2020年7月20日、ドンバス停戦合意の内容

 わが国では詳しい解説が極めて少ない中でReliafweb記事「パターンを破る:ウクライナでの最新の停戦協定の相対的な成功」を仮訳する。

 この記事は今回もロシアのウクライナ攻撃で大きく期待外れであったことはいうまでもない。

 特に、注意すべきはロシアの情報戦略である。例えば、2022.2.17 Yahoo news「ウクライナ軍が東部地域で迫撃砲を用いて攻撃」=露メディア」を重要視したわが国メディアはどれだけあったであろうか。ここで抜粋、引用する。

 「ロシアのスプートニク通信は同日、合同停戦合意調整委員会(JCCC)を引用して、ウクライナ軍が午前4時30分頃、親ロシア派武装勢力が掌握したルガンスク人民共和国地域の4か所に迫撃砲と手榴弾の攻撃を敢行したと報じた。

 ウクライナ東部のルガンスク州はドネツク州とともにロシアの国境に面した地域で、親ロシア派武装勢力とウクライナ政府軍の交戦が続いている場所だ。これら2つの地域を合わせて「ドンバス」とも呼ばれている。

 ロシアのRIA通信は、「ロシアの支援を受ける武装勢力は、ウクライナ政府軍が終戦協定に違反して迫撃砲の砲撃を加えた、と伝えた」

 このロシアのメディアの記事は押しなべてもともとの停戦違反はウクライナである主張している。

【Reliafweb記事】要旨

 ドンバスでの最近の停戦合意は、ウクライナとロシア主導の分離主義勢力間の戦闘の大幅な減少をもたらし、ロシアとウクライナの和平交渉の将来への期待を高めている。2020年7月22日、ウクライナ、ロシア、欧州安全保障協力機構(OSCE)の代表がウクライナ東部の戦争解決について話し合うプラットフォームであるウクライナの三国間接触グループ(TCG)は、ドンバスの最前線に沿って停戦体制を強化するための措置に関する新たな合意に達した。新協定は2020年7月27日に発効した。これは2018年初めから締結された8回目の停戦合意であり、これまでのところ最も効果的である。

 ドンバスでの戦争は、ロシア軍がクリミアを占領し、領土を獲得し、キエフの新しい親欧米政府を弱体化させることを目的としてウクライナ東部に入った2014年に始まった。ウクライナとロシア主導の軍隊間の激しい戦闘が続いた。ロシア主導の部隊には、ロシア連邦の正規軍部隊のほか、ドネツク(DNR)とルハンスク(LNR)人民共和国のウクライナ分離主義者の親ロシア武装形成が含まれていた。紛争の最前線は2015年末までに安定したが、その後もトレンチ戦争(紛争における膠着状態(trench warfare)が続いている(ISW(戦争問題研究所)レポート、2017年9月7日)。(注1)

 2020年の7月の停戦は、ウクライナとロシア主導の軍隊間の戦闘の急激な減少につながっている。今回の停戦合意の3ヶ月前に、ACLEDは武装衝突や爆発/遠隔暴力イベントを含む合計3,046件の停戦違反を記録している。停戦後の3ヶ月間に、停戦違反件数は542件に減少し、82%減少した。しかし、通常数週間以内に侵食された以前の停戦とは異なり、現在の合意は、ほぼ4ヶ月間、戦闘のレベルを低く保つことができた。減少にもかかわらず、停戦違反は依然としてほぼ毎日記録されており、双方の死亡者数につながった。

 実用的な要因と政治的要因の両方が7月の休戦の成功に貢献した可能性がある。以前は、平均して3ヶ月ごとに新たな停戦合意に達した。7月の休戦は採択に半年以上かかり、TCGの代表者は新しい開発を計画し実施する時間を増やした。この間、TCGへのウクライナ代表団は大きな変化を遂げた。ほぼすべてのウクライナ代表は、独立して決定に達する権限とそれらの決定の実行に貢献する能力の両方を代表団に提供することを意図して置き換えられた(Ukrinform、2020年5月8日Ukrinform、2020年5月6日)。

 新協定は、合同停戦合意調整委員会(JCCC)の円滑化を通じてTCGの臨時会合を招集することを含む停戦違反に対応するための調整メカニズムの使用を求めている。JCCCは、ウクライナ、ロシア、およびTCGが合意した合意の遵守を遵守する任務を負うDNRとLNRのロシア主導の武装形成からの代表者のグループである。この調整メカニズムが戦闘を減らすことができない場合、この合意は、それぞれの軍事司令部による命令の問題、そのような命令に関する公の声明、およびTCGへの通知(OSCE SMM-2020年7月23日)に続く報復戦争を可能にする。最前線の部隊が停戦違反に対応することを可能にするこのアプローチは、ロシアやウクライナがそのようなエスカレーションが有利であると計算した場合でも、意図的なエスカレーションが可能であるが、不注意なエスカレーションを減らすのに役立つかもしれない。

 ドンバスの紛争の冷却は、それを駆動する政治的問題を解決しない。ウクライナとロシアは、ドンバスでの選挙開催を含む紛争を解決するためのロードマップに合意した。しかし、両国は、これらの目標を達成する方法について相互理解に達していない。ロシアは、これらのプロキシが武装解除する前に、彼らのプロキシによって制御される選挙が必要であることを維持し続けている。彼らは、この条件が満たされるまで、戦争を終わらせる方向に進むことを拒否した。ウクライナは、これらの条件の下で選挙が行われる場合、ロシアの代理部隊が結果に影響を与え、最終的にはDNRとLNRの人形政権を正当化すると考えている(ユーロマイダンプレス、2019年9月21日)。

 ウクライナは、ドンバスで活動する外国の傭兵と軍事組織が地域を去った後にのみ選挙が可能であることを維持し続けている。ウクライナは、最初に占領地域に入り、そこで活動するロシア主導のフォーメーションを武装解除し、ウクライナの政治システムへの復帰を守るためにロシアの情報バブルから人口を打ち破ることを望んでいる。分離主義地域の多くは、ウクライナと西側のメディア資源へのアクセスを拒否され、ウクライナの政治状況(ラジオ・フリー・ヨーロッパ(注2)2019年8月8日記事)の歪んだ見解を提示されている。ウクライナはまた、DNRとLNRのリーダーシップを起訴したいと考えている。ウクライナは、その要求を後退する兆候を示していない。ロシアの要求にもかかわらず、10月25日に行われた今年の地方選挙にドネツクとルハンスクを含めることを拒否した。

 一方、国際的および国内的な懸念は、ウクライナでの活動に対するロシア政府の関心を低下させ、停戦の成功に寄与する可能性がある。ベラルーシでは、2020年8月の不正な大統領選挙の後、時にはクレムリン同盟のアレクサンドル・ルカシェンコ政権に対して広範囲にわたる反政府デモが行われた(詳細については、この最近のACLEDインフォグラフィックを参照)。

 この危機は、ルカシェンコ政権を一般的に選ばれた政府に置き換える恐れがあり、クレムリンの地域的利益に沿わない開発であり、管理に注意と資源が必要である。同様に、ナゴルノ・カラバフでのアゼルバイジャンとアルメニアの間の最近の6週間の戦争の中で、ロシア政府の注目はトルコとの関係に焦点を当てています(ラジオ・フリー・ヨーロッパ、2020年11月9日。BBC、2020年11月10日)。ロシア自体では、少なくとも2036年までウラジーミル・プーチン大統領の権力掌握を固めた憲法に関する国民投票の後、夏にデモ活動が増加した。人気のある地域知事の逮捕と著名なロシアの反体制派の人物の中毒もデモの増加に貢献しました(詳細については、この最近のACLED分析「CONSOLIDATED POWER AND GROWING UNREST: PUTIN’S RUSSIA IN SUMMER 2020」を参照)。これらの動きはすべて、ウクライナでの軍隊を使ってキエフに圧力をかけるというロシア政府の当面の関心を弱めたかもしれない。

 7月27日の休戦は画期的なものであり、ドンバス紛争の終結に向けた重要な一歩は間違いなく重要である。しかし、以前の停戦は、明白な理由や警告指標なしに迅速かつ侵食されている。この休戦は、最前線全体に沿って戦闘が続いているため、最終的には変わらないかもしれない。ドンバスでの戦争は、キエフに対するクレムリンの主要な影響力のレバーのままである。今後、ロシア政府は、国内デモの中で強さの兆候として東ヨーロッパの筋肉を曲げ、新政権が米国で引き継ぐにつれて地政学的な力を西側に示す方法を模索するかもしれない。これは、今後数ヶ月でドンバスでの敵対の増加につながる可能性がある。

3.SMM( 注3)の役割

 Reliefweb記事「Statement from the OSCE Special Monitoring Mission to Ukraine」を抜粋、仮訳する。

 キエフ、2月18日 - ここ数日、OSCEウクライナ特別監視団(SMM)は、停戦強化措置に関する2020年7月の合意が発効する前に報告された停戦違反の数に等しい、ウクライナ東部の接戦線に沿った運動活動の劇的な増加を観察した。

 SMMは、現場での国際社会の公平な監視者としての役割を認識しており、停戦へのコミットメントやミンスク議定書で予見されるその他の措置を実施する上で、両国を支援することに尽力している。 SMMは現在、両国サイドによる申し立てをフォローアップしており、これらのエリアへのアクセスを支障なく確保する必要があります。裏付けられ確立されたすべての事実は、SMMのレポートで引き続き公開される。

 緊張が高まるこの時期、SMMは、両国が行ったすべてのコミットメントを厳格に遵守し、緊張を軽減し、この紛争に苦し続ける接触線の両側の無実の民間人の生活の利益のために即時のエスカレーションに向けて取り組むために必要なすべての措置を講じるために、双方への要請を繰り返す。

4.OSCEスタッフの死亡につきロシア国営放送であるタス通信の報道内容

 3月3日7時57分発ロシアのタス通信記事を以下、仮訳する。

 ウクライナへのOSCEウクライナ特別監視団(SMM)の従業員であるマリーナ・フェニーナは、ハリコフの砲撃中に殺害された、とウィーンのOSCE事務局は3月2日に発表した。

「マリーナは、戦争地帯となった都市で家族のために物資を手に入れている間に殺された」と声明は述べた。

OSCEの議長兼ポーランド外務大臣であるZbigniewRau氏とOSCEの事務総長であるHelgaMaria Schmidは、彼女の愛する人たちに以下のとおり哀悼の意を表した。

「国際社会全体から、そしてOSCE全体からの繰り返しの呼びかけにもかかわらず、ウクライナに対する挑発的な軍事作戦は続いている。私たちは、都市部の中心部での砲撃の増加が民間人の死と負傷を引き起こしていることを強く非難し、ロシア連邦に敵対行為の即時停止と有意義な対話に従事すること」と述べた。

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(注1)米国のシンクタンクである「戦争問題研究所(The Institute for the Study of War)は、信頼できる研究、信頼できる分析、革新的な教育を通じて、軍事問題についての情報に基づいた理解を深める。同研究所は、米国の戦略目標を達成するために、軍事作戦を実行し、新たな脅威に対応する国の能力を向上させることに取り組んでいる。 ISWは、無党派、非営利、公共政策研究機関である。

(注2) ラジオ・フリー・ヨーロッパおよびラジオ・リバティー(Radio Free Europe / Radio Liberty、略称はRFE / RL、自由欧州放送とも訳される) は、アメリカ合衆国議会の出資によるラジオ放送と報道の機関である。本部はプラハ。(Wikipediaから一部抜粋)

(注3)SMMにつき、わが国との関係を紹介する。

2015.7.30 外務省リリース「ウクライナにおけるOSCE特別監視団への人員派遣」

1.本年8月3日から,ウクライナにおけるOSCE特別監視団(以下,SMM)の報告・分析部報告ユニットの報告官ポストに外務省職員1名を派遣します。本派遣は,OSCE加盟国を除くパートナー国11か国の中では最初の人員派遣となります。報告官は,ウクライナ各地域から報告される情報を分析し,報告書を作成する業務を担当します。

2 SMMは,ウクライナにおける政治的安定と民主主義の回復を目的とし,ミンスク合意の下,停戦,重火器撤収等の状況をモニターし,報告するという重要な任務が付与されており,我が国を始めとするG7諸国はその活動を後押ししています。

3 日本はこれまで,OSCEとの特別な協力関係や,ウクライナ情勢におけるOSCEの役割の重要性に鑑み,政治対話促進ミッションへの財政的・人的貢献(2014年3月~4月),ウクライナ大統領選挙及び議会選挙の監視活動への人的貢献(2014年5月及び10月,計20名)を行うとともに,SMMに対しても,計200万ユーロの財政的貢献を行っています。本派遣が,ウクライナの平和と安定に貢献することを期待しています。

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