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イタリア個人情報保護庁の2016年上期の法執行の動向調査レポートと保護法の運用面からみた課題(その1)

2016-09-20 15:33:50 | 個人情報保護法制

  Last Upadated:April 30.2024

本ブログは2016年9月現在で執筆したため、その後2018年2018 年 8 月、個人データ保護法典等の国内法を EU 一般データ保護規則に適応させるとともに、個人データ保護に関するイタリア独自の規制を含む立法命令が制定された点など多くの変更(詳しい解説5/1①)があった点があり、以下のとおり本ブログでも改めて取り上げたので参照されたい。

①2019-02-05 「イタリア個人情報保護庁(del Garante per la protezione dei dati personali :Garante)の最近のトピックスを読む」5/1②

②2019-02-08「イタリアGaranteが違法なテレマーケティング行為を理由に”Wind Tre”に60万ユーロの罰金命令を下す」5/1③

③2019-04-25「イタリアで発布された最初のGDPRに基づく罰金命令」5/1④

④2021-08-04 「イタリアDPAであるGaranteが大手食品・食料品配送会社Deliveroo Italyに対し計250万ユーロ(約3億2500万円)で制裁金と改善命令」5/1⑤

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 9月18日に筆者の手元にイタリア個人情報保護庁(Garante per la protezione dei dati personali (以下,Garanteという))から「2016年上期の法執行の動向調査のレポート」が届いた。 

 イタリアの「個人情報保護法(2003年イタリア共和国立法命令第196号)(Decreto Legislativo 30 giugno 2003, n. 196"Codice in materia di protezione dei dati personali")」 (筆者注1)(筆者注2)の調査は、EUの欧州委員会、EUの情報保護機関である「欧州個人情報保護監察庁(EDPS)」「EU保護指令第29条専門家会議(Article 29 Working Party)」 等で取り上げられているが、内閣府等が指名するわが国の専門学者(いわゆる「有識者」?)も含め、わが国では取り立てて詳しくは紹介されていない。

 本ブログでは、参考としてイタリアの法令体系や検索方法についてもあわせ簡単に言及する。

  また、イタリア企業のプライバシーポリシーの内容等もこの際に比較すべきと考え、わが国でも翻訳されている代表的な企業のポリシーの内容を読んでみた。後段で紹介するとおり、その内容は決して正確性かつ十分なものとはいえないものであった。 

 今回のブログは、1)イタリアの保護法や行動規範体系を概観し、2)2016年上期のGaranteの法執行の動向、3)イタリア企業のプラバシーポリシーの内容等から見た制度、運用課題をまとめた。 

 なお、筆者が気になったが確認できていない点がある。2003年保護法と2016年4月に欧州議会本会議で採択された「一般データ保護規則(正式には「Regulation(EU)2016/679」、「GDPR」という)」および「新保護指令(正式には「Directive(EU)2016/680」との整合性問題である。GPDPのサイトで見ると、4月14日のニュースで採択の経緯のみ取り上げているが、詳しい内容には言及していない5月24日付けのサイトで「一般データ規則」や「新保護指令」の経緯と原典へのリンクを可としているのみである。 

 他方、イタリアの個人情報保護の取り締まりは財務警察(Guardia di Finanza) (筆者注3)深く関与しており、その点も正確に理解しておく必要がある点を補足する。 

 筆者はイタリア語の専門家ではないし、ましてやイタリア法の専門家ではない。専門家による誤訳、誤解等の指摘を期待する。 

 1.イタリアの個人情報保護立法や行動規範の概要

(1)「個人情報保護法(2003年イタリア共和国立法命令第196号)

 2003年6月30日に成立した法律(立法命令)で、2004年1月1日施行された。1996年以来の各種法律、特に1996年個人情報保護法(1997年3月施行)のほか、行動規範や規則を統合したものである。Garanteの解説文仮訳する。(Garanteの解説がっ法改正に伴い、その後削除されている)

 同法の基本原則は、1)単純化、2)調和および3)効率性である。3編からなる。第1編はあらゆる団体や組織に適用される一般的保護原則を定め、第2編は特定の分野すなわち医療、電気通信、銀行や金融、人材関係に関する団体等に求められる追加的手段を定め、第3編は制裁及び情報主体への救済手続きを定める。 

 同法の適用範囲は、国家及び州等で行われるすべての情報処理活動である。イタリア国内で使用されるPCやコンピュータをベースにするシステムで使用する団体等以外のものも含む。もし、EU以外の団体等がイタリア領土内でデータ処理を行う場合は、イタリア国内にイタリアの法令を適用するため代表部を指名しなければならない(この点は、通知義務にしたがううえで、Garanteへの通知及び情報主体への通知義務を負う)。 

(2)法令の主な特徴的事項

①通知義務

 単純化の主要な目的は「通知手続き」にある、そこではEUの情報保護指令(指令18条(2)参照)の線上に即し1996年法に比べより単純化した。通知手続きにおいてデータ主体の権利や自由権にマイナス影響を与えないものである。イタリア法の下では情報処理がハイリスクのカテゴリーに入る場合のみGaranteへの通知義務を負うものである。すなわち、特に遺伝子、生体認証データ、個人の分析やプロファイルためのデータならびに信用情報等に限定する。また、このような取り組みは個人にとって透明性と理解の向上をかたちづくる。 

②データ収集範囲の最小化

 法第3条はイタリアにおける保持情報の最小化原則導入した。法は、団体等に可能な限り個人を特定しないデータの使用を促す。 

③データ主体の権利/決定権

 法はデータ主体の保護権を強化、すなわち権利の実行及び手続きをより簡便にさせる。苦情申立手続きの単純化の過程のなかで、Garanteはデータ主体の苦情申立様式をそのウェブサイト上で公開した。また、Garanteはその決定において遵守要求の守ることを事業者に命じた。Garanteの調査への対応期間につき事業者は15日間の期間が与えられた(旧法では時間枠は5日間であった)。苦情を受け付けてからの処理するまでの日数は60日に引き上げられた(従来は30日)。 

④国際的な個人情報の移送

 保護法は一定の範囲で国際的な情報の移送に規定を統合した(法42条から45条)。以前の法では事業者は個人情報をEU域外に移送する時はGaranteに通知しなければならなかったが、新法の下ではデータの移送がデータ主体にとり不利益が生じる場合のみ通知義務が発生することとなった。さらに、毎年通知の再提出を求めないことになった。非EU加盟国への合法的移送規定は43条に定めてており、本人の同意、契約上の義務に合致、公益に合致、生命や健康の安全措置、弁護人による調査が対象となる。

 合法的移送の追加規定は44条に定めており、1)契約上の安全策の採用されているとして欧州委員会が適切とみなす国への移送、2)拘束的企業準則BCR(Binding Corporate Rules)を制定した企業グループ内の移転の場合、である。 (筆者注4) 

(3)特定の個人情報処理の運用に関する主な特徴点

①人材個人情報

 保護法は個人情報の保有にかかるEU指令8条(b)項を完全に受け入れている。従業員の同意についての発行物が信頼に足らないためその代替物見つけたいと欲して機微個人情報を処理する団体等は法26条の例外を見ることができる。たとえば、26条(4d)は雇用法のもとでの義務に合致するときは本人の同意なしに機微情報の処理が許される。 

②健康に関するデータ

 データ主体の書面による同意及びデータ管理者が民間企業の場合はGaranteの承認が必要とされる。公的団体の場合はその処理は法律や規則が定めているときは認められる。しかしながら、後者については詳細な特別な処理や目的が定められていなければならない。その他関係する公的機関においては特別な規則事項により特定されていなければならない。

 原則としてデータ主体の同意は不要であるが、他方でデータ主体の健康や身体の完全性を引き出すため医療に関する専門家の場合以外はGaranteの承認が必要となる。

 (一部略す)

 2.Garanteの2016年上期の法執行の動向調査

 Garanteのサイトの解説を以下のとおり仮訳する。 

 2016年上期のテレマーケティング、慈善事業行為およびオンラインゲーム等につきGaranteの監査機能の下で確認された。

 2016年の上半期の統計でみると計190万ユーロ(約2億1,850万円)の制裁金が課され、2,000件以上の違反事件が争われた。 

 具体的には、①テレマーケティングやコールセンターの活動、② 事前に編集されたプリコンパイルされた730の慈善団体に関連するデータ処理、 ③ 販売代理店のオンラインゲーム(dealership online games)、④一部のイタリア国家統計局(ISTAT) (筆者注5)の情報システム、⑤債務再編(debt restructuring)を扱う企業が対象となった。これら企業、団体は、今後数カ月のうちに個人データ保護法の遵守の検証のためのGaranteの起動によって影響を受ける部門の一部である。ここ数週間内に、当局は2016年下半期における介入の新たな分野を提供すべく立ち上げた。その具体的内容は、「Doc.No web 5408359」を参照。  

 また、Garanteの捜査・調査は、財務警察のプライバシー特別捜査班と共同で実施された。まさに最近時、財務警察とGaranteの間で連携強化に関する協定に基づく新手順が署名された。 

 また、前記の分野に加えて、実際Garanteの検査は、①報告、②苦情や市民の訴え、③強制通知義務 (筆者注6)遵守の調査、④開示基準と合意の遵守等に始まる問い合わせならびに公共および民間団体によって処理された機密情報を保護するための最低限のセキュリティ対策の採用等に焦点を当ててた。 

  一方、2016年上半期において、Garanteの活動は、罰則を課す事案の著しい増加を記録した。すでに財務省によって収計された合計額が約190万ユーロとなり、2015年上半期に比べて5%増であった。また、制裁処分は、2000件(2015年上半期に比べて44%増)で争われた。そのうち37件は、最低限のセキュリティ対策を採用することを怠った点に主に焦点を当て、裁判所への報告(2015年上半期と比較して85%増)、労働者の遠隔操作に接続時の法違反、Garanteの規定の遵守を怠った等が続く。最低限のセキュリティ対策を怠った問題につき、公共および民間企業を含め、合計で26件が数えられている。 

  Garanteの財務警察のプライバシー特別捜査班の協力を用いて行う調査としては、関係する多くの微妙な分野、すなわち、1)大規模な公共データベース(歳入庁、INPS)、2) 多国籍企業による非EU諸国への個人データの移送、3)カーシェアリング会社(特に顧客の地理情報)、4)電話マーケティング、 5)人材紹介会社が行ったプロファイリング、6)私立探偵、7)障害者の個人データの使用に関する自動車ディーラー等である。

   公共部門特に地方自治体政府であきらかとなった主な法違反問題は、民間部門でも最も一般的ではあるが、1)顧客に関するデータ違反に関するもの、2)大量のデータ収集に関する主体の同意の欠如、または3)最低限のセキュリティ対策の欠如、4)GaranteGPDPへの通知義務違反等である。 

3.イタリアの法令体系や検索方法入門

 イタリアの法令体系については国立国会図書の国/地域別資料紹介>イタリア>法令資料が最も信頼性があり、リンク先も含め内容が更新されている。 

(1) 官報

Serie Generaleの中に「法律(Leggi)」、「大統領令(Decreto del Presidente della Repubblica )」、「緊急命令または暫定措置令(Decreto-Legge)」、「省令(Decreto Ministeriale)」などにつきリンクも含め解説されている。 

(2)司法省などの共同運営法令サイト(Normattiva )HPで「法令データベース」は以下のベル上院や下院の法令検索サイトも含め検索が可能である。

 例えば、今回対象となる「個人情報保護法(2003年イタリア共和国立法命令第196号)(Decreto Legislativo 30 giugno 2003, n. 196"Codice in materia di protezione dei dati personali")」はNormattivaでも検索できる。

 以下の画面はNormattivaの検索画面であるが、制定年と法令番号の入力のみで196号の本文がリンクできる。

  

(3)上院のHPでは、「1996年以降に制定された法律」、「立法命令(Decreti Legislativi)」や「法律命令(Decreti-Legge)」、また下院のHPでは1946年以降の制定順法令(Leggi ordinarie)の検索が可能である。

4.イタリア大手企業のプライバシーポリシーに見る保護法の理解と運用面等の課題

 筆者なりにわが国にも進出しているイタリア大手企業のサイトで、プライバシーポリシーの内容を確認してみた。

 そこで見えてきた問題としては、1)法律等の不正確な引用、2)訳語の誤り、3)説明不足等数多くの問題点が浮かび上がってきた。時間の関係で逐一のコメントは略すが、いずれにしてももっとローファーム等専門家を活用し、丁寧な解説を実践すべく国際的企業として積極的に取り組まれたい。 

(1) マンフロット(Tha Manfrotto Group )のプライバシーポリシー

 同社は、わが国でも有名なイタリアの三脚メーカーである。1960年代末にイタリア人のフォトリポーター、リノ・マンフロット(Lino Manfrotto )によって創業された。彼自らの体験をもとに作り出された、使いやすく安定性のあるスタジオ用品はプロの間で評判となり、自らのブランドによる製品ラインアップを作ることとなった。カメラ三脚の製造は、1974年に開始。 現在、ラインナップは業務用の大型三脚から携帯用の小型三脚まで、またスチル用、ビデオ用、照明用などと幅広い。パノラマ撮影用に決まった角度でカメラを回転させることができる雲台も製造している。(Wikipedia  から抜粋)

 同社のプライバシーポリシーは、イタリア国内の販売向けのもの(和訳)と、日本国内の販売向けの2種類がある。当然のことながら、前者はイタリア保護法に即した内容であり、後者はわが国の「個人情報の保護に関する法律(平成15年5月30日法律第57号)」に即した内容である。後者の内容は、専門家による解説のように思える。 

 問題点を整理する。

*イタリア国内向け和文ポリシー

英語版の原文をただ和訳した内容である。訳語も不正確で少なくともイタリアのローファームが校閲した内容とは思えない。

 筆者なりに気がついた修正意見を以下のとおり一覧にまとめた。  

 

 (2) イタリア南部カンパニア州を中核とする血液透析専門クリニックを包括する国際組織であるCimasa系列グループのプライバシー規約

①同グループのHP にもとづき概要を見ておく。

「Cimasa系列グループは、11の血液透析専門クリニックを包括する一大組織であり、カンパニア州では慢性腎臓疾患の診断と治療の分野で基点となっています。

血液透析とは、生体の正常な機能に必要な血液を浄化して体内に戻すという方法であり、障害を起こした本来の腎臓の吸収機能が最大限正常化できる技術を持つ最先端医療機器を要しまず。 

当ナーシングホームユニットでは、標準血液透析に加えて高流量血液透析およびオンライン血液ろ過による治療法にも対応し、患者様個別の必要性に的確にお応えいたします。

また、ポンペイMaria Rosariaナーシングホームには、腎血管外科が設置され、中心静脈カテーテルの挿入とともに、先天的またはプロテーゼによる動静脈フィステルの形成術を施します。

2009年中だけでも、同科にて行われたバスキュラーアクセス手術は約450件に上り、これはイタリア国内でも記録的な件数となりました。引き続き2010年には約500件が見込まれていますが、中には他のセンターから移ってきた患者様もおり、当ナーシングホームの絶対的信頼性を示しています。  

プライバシー規約の問題点

 問題をまとめると前述のマンフロットトほぼ同様の問題点が指摘できるし、誤訳のレベルはさらに程度が低い。翻訳業者のレベルは極めて問題である。 

(3) アリタリア・イタリア航空の個人情報保護方針:個人情報の利用に関する方針および同意書(イタリア共和国政令第 196号(2003年6月30日施行) 第13条に準ずる文書)

 前述の2社に比べると一見丁寧かつ具体的な内容を擁しているように思えるが、実際読んでみると一般顧客などにはとても理解できない内容である。

 明らかに気がついた点のみ一覧にまとめておく。早急に改訂版を作成されることを期待する。

4.イタリア大手企業のプライバシーポリシーに見る保護法の理解と運用面等の課題

 筆者なりにわが国にも進出しているイタリア大手企業のサイトで、プライバシーポリシーの内容を確認してみた。

 そこで見えてきた問題としては、1)法律等の不正確な引用、2)訳語の誤り、3)説明不足等数多くの問題点が浮かび上がってきた。時間の関係で逐一のコメントは略すが、いずれにしてももっとローファーム等専門家を活用し、丁寧な解説を実践すべく国際的企業として積極的に取り組まれたい。 

(1) マンフロット(Tha Manfrotto Group )のプライバシーポリシー

 同社は、わが国でも有名なイタリアの三脚メーカーである。1960年代末にイタリア人のフォトリポーター、リノ・マンフロット(Lino Manfrotto )によって創業された。彼自らの体験をもとに作り出された、使いやすく安定性のあるスタジオ用品はプロの間で評判となり、自らのブランドによる製品ラインアップを作ることとなった。カメラ三脚の製造は、1974年に開始。 現在、ラインナップは業務用の大型三脚から携帯用の小型三脚まで、またスチル用、ビデオ用、照明用などと幅広い。パノラマ撮影用に決まった角度でカメラを回転させることができる雲台も製造している。(Wikipedia  から抜粋)

 同社のプライバシーポリシーは、イタリア国内の販売向けのもの(和訳)と、日本国内の販売向けの2種類がある。当然のことながら、前者はイタリア保護法に即した内容であり、後者はわが国の「個人情報の保護に関する法律(平成15年5月30日法律第57号)」に即した内容である。後者の内容は、専門家による解説のように思える。 

 問題点を整理する。

*イタリア国内向け和文ポリシー

英語版の原文をただ和訳した内容である。訳語も不正確で少なくともイタリアのローファームが校閲した内容とは思えない。

 筆者なりに気がついた修正意見を以下のとおり一覧にまとめた。  

 

 (2) イタリア南部カンパニア州を中核とする血液透析専門クリニックを包括する国際組織であるCimasa系列グループのプライバシー規約

①同グループのHP にもとづき概要を見ておく。

「Cimasa系列グループは、11の血液透析専門クリニックを包括する一大組織であり、カンパニア州では慢性腎臓疾患の診断と治療の分野で基点となっています。

血液透析とは、生体の正常な機能に必要な血液を浄化して体内に戻すという方法であり、障害を起こした本来の腎臓の吸収機能が最大限正常化できる技術を持つ最先端医療機器を要しまず。 

当ナーシングホームユニットでは、標準血液透析に加えて高流量血液透析およびオンライン血液ろ過による治療法にも対応し、患者様個別の必要性に的確にお応えいたします。

また、ポンペイMaria Rosariaナーシングホームには、腎血管外科が設置され、中心静脈カテーテルの挿入とともに、先天的またはプロテーゼによる動静脈フィステルの形成術を施します。

2009年中だけでも、同科にて行われたバスキュラーアクセス手術は約450件に上り、これはイタリア国内でも記録的な件数となりました。引き続き2010年には約500件が見込まれていますが、中には他のセンターから移ってきた患者様もおり、当ナーシングホームの絶対的信頼性を示しています。  

プライバシー規約の問題点

 問題をまとめると前述のマンフロットトほぼ同様の問題点が指摘できるし、誤訳のレベルはさらに程度が低い。翻訳業者のレベルは極めて問題である。 

(3) アリタリア・イタリア航空の個人情報保護方針:個人情報の利用に関する方針および同意書(イタリア共和国政令第 196号(2003年6月30日施行) 第13条に準ずる文書)

 前述の2社に比べると一見丁寧かつ具体的な内容を擁しているように思えるが、実際読んでみると一般顧客などにはとても理解できない内容である。

 明らかに気がついた点のみ一覧にまとめておく。早急に改訂版を作成されることを期待する。

 

 

 

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(筆者注1) イタリアの法令中「立法命令(Decreto Legislativio」は、憲法第77条第1項に基づき、両議院の委任をもって、政府により制定され、通常の法律の効力を有する。 

(筆者注2) Garanteは、保護法のほか行動規範などの英文資料を公開している。ただし、イタリアGarante年報2014年の英語版が最新である。 

(筆者注3) 財務警察 (Guardia di Finanza) は、経済・財務省(Ministero dell'Economia e delle Finanze)の所属であり、脱税、密輸から麻薬取引、国境警備などを中心に捜査・取締を行っている。人員は約6万8千名。1774年10月5日にサルデーニャ王国で設立された国境警備部隊が前身となっている。経済犯罪、脱税事案、知的財産権事案、組織犯罪、税関任務、国境警備、不法移民事案を行う。国境警備隊・沿岸警備隊としての側面もあり、準軍事組織となっている。そのため、第一次世界大戦および第二次世界大戦にも参加している。約80機の航空機と300隻以上の船舶を有する。Wikipedia その他でまとめた。

(筆者注4) 別ブログからコピーする。

 

(筆者注5) 別ブログからコピーする。

 

(筆者注6) 別ブログからコピーする。

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GAOが連邦司法省に対し「情報公開法」訴訟費用の採算性分析を踏まえた原告勝訴の解明等につき勧告(その2完)

2016-09-12 13:41:20 | デジタルアーカイブ

⑦ 連邦捜査局(FBI)

  連邦捜査局(FBI)は、ジョー・パターノ(Joe Paterno:フットボール指導者)、レイ・ブラッドベリー(Ray Bradbury:小説家)、ロバート・バード(Robert Byrd)・合衆国連邦議会上院議員とチャーリー・ウィルソン(Charlie Wilson)下院議員のFBI記録を電子記録図書館(保管室)に加えた。 FBIファイルは、彼らに対する脅威の捜査と個人自身へのFBIによる調査を含むこれらの数字に関して、広範囲にわたる材料をカバーしている。現在利用できる何千もの文書でもって、1955年(バード上院議員の記録でみると)1955年から1990年代の間で記録したこれらのファイルは、これらの個人の生命ならびにFBIの自身の歴史のスナップショットに対する価値ある洞察データを提供する。

 ⑧ アメリカ航空宇宙局(NASA)

 アメリカ航空宇宙局(NASA)は、新しい全天赤外線の地図帳とカタログを公開した。そして、14年以上前始まったプロジェクトを締めくくった。広域赤外線探査衛星(Wide-field Infrared Survey Explorer :WISE) (筆者注6)を使用して、天文学者は、ほぼ5億の物(例えば我々の宇宙を作る惑星、星や銀河)のイメージをとらえることができた。NASAはWISEプロジェクトによって撮られる個々の画像を結合して、彼らを18,000のイメージに入れた。そして、それは現在、市民が一般的に利用できる。全ての地図帳は、現在まで我々の宇宙の最も鮮明なイメージの1つを代表する。 

⑨ 国立公文書館(National Archives and Records Administration:NARA)

 国立公文書館(National Archives and Records Administration:NARA)は、ケネディ大統領、ジョンソンおよびニクソンの大統領図書館(Presidential Libraries) (筆者注7)とともに、「国防長官のベトナム機動部隊局の報告("Report of the Office of the Secretary of Defense Vietnam Task Force,")」というタイトルで、「ペンタゴン・ペーパー("Pentagon Papers.")」として非公式に知られている完全なレポートを公表した。当初1967年に国防長官ロバート・マクナマラによって命ぜられ、レポートの一部は、1971年にプレスにリークされて、広く報告し、配布された。同レポートの公式な公開は、プレスにこのリークの40回目の記念日と時期が同じであるとともに、7,000の非編集化されて機密扱いが解かれたページを含む。レポートの他の版とは異なり、この公式リリースは、編集(それが当初、1969年1月15日にあったちょうどその時に国防長官クラーク・クリフォードに出された重要な新情報と背景となるドキュメンテーションを含む)なしで、現在利用できる。 

⑩ 連邦捜査局(FBI)

 連邦捜査局(FBI)は、「金庫室(Vault)」という名前の約6,700の文書や他のメデイアを含む新しい電子記録ライブラリーを稼動開始した。この金庫室は、紙からデジタルコピーされた2,000以上の文書(市民に発表されてはいたが、FBIウェブサイトにこれまで加えられなかった25以上の新しいファイルを含む)を含む。以前はFBIサイトに掲示されるが、要請を受けてFBIの以前の電子記録・ライブラリからのファイル削除される何十もの記録は減少した。また、金庫室自体、読者の使い勝手(ファイルの範囲内で話題またはキーワードによって記録を検索する能力を含む)を良くするのためのいくつかの新しい道具と資源を含む。すなわち、そして市民はオープンなソース文書閲覧ソフトや、記録を金庫室内で見るために彼ら自身のファイル・ソフトウェアを必要としなくなった。 

3.わが国の情報公開法や同施行令等行政機関等が保有する情報の公開に関する関係法令とその運用の実態

 具体的に見ると「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(平成11年5月14日法律第42号)、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令」(平成12年2月16日政令第41号)、 「公文書等の管理に関する法律」(平成21年7月1日法律第66号)、「公文書等の管理に関する法律施行令」(平成22年12月22日政令第250号)「行政文書の管理に関するガイドライン」(平成23年4月1日内閣総理大臣決定)等がある。

 これらの全体像は、総務省の解説サイト「情報公開制度の法律の概要や公文書等の管理に関する法律等関係法令、ガイドライン」を参照されたい。 

(1)「情報公開法の制度運営に関する検討会」の検討状況

 総務省は、法施行後4年を迎え、平成16年(2004)4月27日~平成17年3月18日までの間、有識者 (筆者注8)による計12回検討会を開催し、その結果は平成17年3月29日に報告書として公表された。

 ただし、前述の理由から、その検討内容については筆者は現時点で一切確認できない。 

(2)わが国の情報公開法に基づく「審査会」の審議状況及び「訴訟」の実態

 平成26年度の実績報告を総務省の報告「平成26年度における行政機関情報公開法の施行の状況について 」を見ておく。13頁以下「3.不服申立ての件数と処理の状況」から以下のとおり抜粋する。 

(a)不服申立ての件数 

ア 開示決定等について不服がある者は、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)に基づき、行政機関の長(法第17条の規定に基づき権限の委任を受けた行政機関の職員を除く。)に対し、審査請求又は異議申立てをすることができる。

平成26年度には、表13のとおり、1,203件の不服申立てが行われており、25年度と比べて増加している。 ・・・ 

(b)裁決・決定等の状況 

ア 平成26年度に処理済みとされた1,306件についてみると、表16のとおり、審査会に諮問し、答申を受けて裁決・決定を行ったものが635件、審査会に諮問しないで裁決・決定等を行ったもの(不服申立てが不適法であること等により審査会に諮問する必要がないもの)が671件となっている。

 裁決・決定等の内訳をみると、不服申立てに理由がないとして棄却したものが432件(33.1%)、不服申立てに理由があるとして開示決定等の全部又は一部の取消し又は変更をしたもの(申立ての認容又は一部認容)が計218件(16.7%)

、不服申立てが不適法であるとして却下したものが637件(48.8%)となっている。 ・・・・」 

4.わが国の情報公開に関する訴訟の状況

 前述3.(2)の総務省の報告から抜粋する。 

 「開示決定等の取消し等を求める訴訟についてみると、表20のとおり、平成26年度に新たに9件が地方裁判所に提起されている。この9件及び前年度から係属している18件の計27件のうち、平成26年度には、9件の判決が出されている。

 また、高等裁判所には、地方裁判所(第一審)の判決を不服として9件の控訴事件(前年度から係属している4件を含む。)が係属し、そのうち5件について判決が出されている。

 さらに、高等裁判所(控訴審)の判決を不服として最高裁判所に上告又は上告受理の申立てを行ったものが5件(前年度から係属している3件を含む。)あり、そのうち3件について判決が出されている。 

 なお、平成26年度に新規提訴された9件のうち6件は、行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)第12条第4項の規定に基づいて特定管轄裁判所に提訴されたものである。」 

5.日米の制度比較を踏まえた検討課題

 前述したように、訴訟件数は大きく異なり、制度の利用実態から見て単純な日米比較は難しかろう。

 しかし、問題の本質は件数だけではないはずである。情報公開制度により不利益を被る国民=納税者が行政のプレスリリースや勉強不足のメデイアの情報に頼らない政治への直接的な関心と行動が最も重要な制度改革論の視点であろう。

 わが国では情報公開法が平成13年(2001)4月1日施行されて3年後に「情報公開法の制度運用に関する検討会」が計12回開催された。

 その最も重要な結論部分が見えない中で具体的な問題指摘はむずかしいが、筆者なりの感じた点を以下あげる。 

(1)市民活動の重要性

 納税者の視点、税金・予算の無駄への対策

 米国の例で見て見よう。2003年8月財団法人自治体国際化協会「米国における情報公開制度の現状」(ニューヨーク事務所)から一部抜粋する。

 「米国の例でみても政府情報に対する国民のアクセスは、FOIAの成立により計り知れないほど向上した。特に、ジャーナリストや学者がFOIAを利用して入手した資料で明らかとなった事実により、歴史的事実等が変更されることもあった。また、健康及び治安などの社会問題に関連して、FOIAを使って出生・死亡・結婚等の情報が公表されてきた。

FOIAによる公開請求により明らかにされた情報の例は、以下のとおりである。

・小型機の安全性・政府による浪費的支出・全米で最も危険な就業場所(職場環境が原因でがんや心臓病その他の病気にかかる危険性が増大した状況に直面した約25万人の労働者に関する情報等)・90年代初めの放射線実験の乱用・多くの軍人を死傷させた政府支給の夜間用ゴーグル。GAO報告でも指摘されているとおり、・・・・」 

(2) わが国のNPO等による公開請求の取り組み団体例 

 情報公開の真正面から取り組んでいるとされるNPO等は数少ない。総務省があげているもののほか、現時点で活動している団体名を挙げておく。 

① 「情報公開市民センター」 名古屋:内閣府NPO団体中情報公開法で検索結果 

② 情報公開クリアリングハウス  

③ 特定非営利活動法人行政監視機構 内閣府NPO団体中情報公開法で検索結果 

④ 国市民オンブズマン連絡会議 

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(筆者注6) 広域赤外線探査衛星(WISE:Wide-field Infrared Survey Explorer)は、2009年12月14日に打ち上げられた、アメリカ航空宇宙局の予算で開発された赤外線天文衛星である。口径40cmの赤外線望遠鏡を備え、3 - 25μmの波長で全天を10か月以上観測する。IRAS、COBE等、以前の同様の機器よりも少なくとも1000倍の感度を持つように設計されている。(Wikipediaから引用) 

(筆者注7) 2010年12月、 「アメリカンセンターJapan」 が「大統領図書館法と大統領図書館の設立」と題する連邦議会調査局(Congressional Research Service)がまとめた報告の翻訳を行っている。 

(筆者注8) 筆者がこだわるのは、わが国の政府発言や審議会等でよく出てくる「有識者」という文言である。英米圏ではこれは”experts”が一般である。特定の一部専門家が「有識者」の名のもとに政府系の各委員会の委員としてよく出てくるが、決して斬新な意見は述べない。その個別氏名はあえて記さないでおく。 

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GAOが連邦司法省に対し「情報公開法」訴訟費用の採算性分析を踏まえた原告勝訴の解明等につき勧告(その1)

2016-09-12 11:58:23 | デジタルアーカイブ

 本ブログでしばしば引用してきた米国連邦議会の連邦機関の”Watchdog”である「行政監査局(GAO)」が、このほど米国の「連邦情報公開法(FOIA)」 (筆者注1) に基づく訴訟事案について、その採算性の分析結果等透明性を向上するよう連邦司法省に勧告した旨の報告書Freedom of Information Act: Litigation Costs For Justice and Agencies Could Not Be Fully Determinedを公表した。 

 筆者は、その内容に関心を持ったほかに、わが国の「情報公開法」(「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(平成11514日法律第42号)等の運用実態との比較を行ったらどうなるかという点に興味を持った。さらに、わが国の見直しはどうなっているのか、どのような人々によりどのような議論が行われているのか等を調べてみた。 

 今回のブログは、はじめに(1)GAO報告の概要を紹介し、あわせて(2)米国の主要連邦機関の情報公開法遵守体制を概観し、次に(3)わが国の「情報公開法」の運用実態ならびにそこから導かれる課題等を論じてみる。 

 特に、米国の連邦機関とりわけFBIやDOD等機密性の極めて高い保有管理する公文書に当たるデータ量の圧倒的なボリュームと国民のそれらへのアクセス可能とする長期的な視野に入れた検討と取り組みがあってこそ、今日の米国のアーカイブ・システムがあるように思う。わが国のアーカイブ分野の重要な検討課題といえる。 

 なお、最後に詳しく論じたいが、総務省の「情報公開法の制度運用に関する検討会」の審議内容や資料を確認しようとすると、国立国会図書館のWABP(国立国会図書館:インターネット資料収集保存事業)サイト(筆者注2) に飛ぶ。その画面に該当検討会のURLをコピー・アンド・ペーストすれば原資料に行き着くはずであった。筆者は実際やってみたが、「ただ今混み合っております。時間をおいて再度お試しください」のメッセージが帰ってきたのみである。土曜の昼である。この時間帯に込み合っているようでは平日であれば、いつになったら確認できるのか。まさにわが国の情報公開法の基本機能が欠落しているとしか言いようがない。

 さらに問題と思えるのは、なぜ行政機関の古くなった(かただか12年で古いとは思えないが)データの保存がなぜ「国立公文書館(筆者注3)でなく「国立国会図書館」なのか、その本来の機能や法的に見ても大いに疑問が湧く。この問題は別途取りまとめたい。 

 今回は、2回に分けて掲載する。 

1.GAO Reportの概要

 GAO報告の本文全文は35頁である。イライト版(1頁)をもとに仮訳する。 

(1) GAOがこの調査を行った理由

 米国の「連邦情報公開法(以下「FOIA)という)」  (筆者注4) は、連邦機関に対し広く市民に政府情報へのアクセスを提供することを要求する。そして、毎年、各連邦機関はそのアクセス情報を公表する。それにもかかわらず、多くのFOIAに基づく要求は拒否または時宜を得た対応は行われていない。連邦機関が法令の期間以内に要請に応じないならば、FOIAは依頼人が訴訟することを認める。過去10年間、2006年(下記グラフ参照)以降起こされた訴訟の57パーセントの増加で、司法省は連邦機関に対して起こされた3,350件のFOIA訴訟を報告した。(下図参照)

 

(GAO report から引用) 

 GAOは、連邦機関が原告が十分に勝訴した訴訟に要するFOIA訴訟関連の経費を決定するよう求めた。そのためGAOは、2009年から2014年まで決定されたFOIA関連の訴訟に関する司法省のデータを見直すとともに、28の連邦機関全体でみて、原告が大幅に勝訴した112件の訴訟事件内容を確認した。また、GAOは司法省および連邦機関からコスト・データを見直し、これらのデータの有効性と信頼性を議論するために、各機関の担当官と面談した。

 

  (GAO report から引用) 

(2) GAOの司法省への勧告内容

 もし、連邦議会がFOIA訴訟費用の報告の透明性がシステムとプロセスを開発するために増加する経費を上回ると決定するならば、原告が勝った訴訟を擁護するとき、それは原価見積りを要する経費に関する情報を集め、かつ報告するために提供することを司法省に要求することを考えることができる。本レポートの草案についてGAOがコメントする際、連邦司法省は、良いFOIA管理を成し遂げることが、さらなる報告の費用と利益のバランスをとる必要性につきGAOの認識に感謝すると述べた。 

(3) GAOが調査結果を踏まえ明らかにした結果

 2009年~2014年に下された決定による1,672件の「情報公開法(FOIA)訴訟」のうち、GAOは原告が大幅に勝った112件の訴訟内容を確認した。これらの112の訴訟のための訴訟関連の経費は、完全には決定することはできなかった。そのような訴訟と関連した経費とは、1)当該連邦機関にかわり司法省により算定される額、2)個別の連邦機関が計算する訴訟費用、3)原告の弁護士に与えられる和解協定に基づいて裁判所が調査する弁護士費用と諸費用を含む。 

 112件の訴訟のうち、司法省は、合計で約97,000ドル(約980万円)になる8つの訴訟の弁護にかかる経費に関する情報を提供した。司法省当局は、同省は原告が実質的には勝った個別の訴訟に関し特に経費の内容を追跡しないし、そしてその弁護士が個々の訴訟のためにそのような経費を追跡することは要求されないと述べた。

 個々の連邦機関に関し、GAOの研究では28件のうちの17件は、それらは112件の選ばれた訴訟のうちの57に関するコスト情報を適所に提供することができたシステムまたはプロセスを可能とした。この情報によると、連邦機関は2009年会計年度から2014年会計年度の間に、これらの訴訟のためにFOIA訴訟関連の経費でおよそ130万ドル(約1億3,130万円)を負担した。残りの連邦機関には、原告が勝ったFOIA訴訟関連の経費を追跡するためのメカニズムがなかった。これらの連邦機関は、司法省のガイダンスが特定の訴訟に関連した経費を徴収して、報告することを機関に要求しないので、または、もし原告が訴訟の結果として勝つならば、経費を追跡しなかったと述べた。 

 FOIAによって必要とされるように、司法省は毎年すべての訴訟(原告への弁護士費用および仲裁経費を含む)の結果を報告した。しかし、112件の選ばれた訴訟のうちの11件に関し、司法省は、それを与えられる弁護士の費用および経費の額が被告たる連邦機関によって報告される総計額と異なると報告した。司法省によると、弁護士の費用および仲裁経費の差は、各連邦機関と原告の間で控訴手続きと和解合意によるとされた。 

 実際のコスト情報を報告することを司法省および連邦機関に要求することが連邦活動に関してより良い透明度に至ることができたが、経費はそのような報告と関係する。これらの経費(潜在的利益だけでなく)を考慮することは、FOIA訴訟関連の活動の監視を強化するためにそのような要求が費用対効果が良いといえるかどうかを決定する際に、連邦議会を支援することにつながる。

 2.連邦のFOIA専門サイトの最新情報ならびに主要連邦機関の情報公開法への対応 

(1) 米国の各連邦機関のFOIAに関する統括機関

 連邦司法省(DOJ)である。FOIA専門の解説サイトを準備している。 

(2) 主要連邦機関の情報公開法への対応

 DOJ以外の連邦機関のFOIAに関するガイダンスや現下の取り組み課題の解説文を仮訳しておく。 

① 国務省のFOIA問題対応サイト 

 

 ② 連邦司法省のFOIA専門サイト

 連邦機関の総括機能を持っており、その内容は最も具体的で詳しい。

  

③ 消費者金融保護局(CFPB)の苦情受付専門サイト

 消費者金融保護局の消費者の苦情データベースは、2012年6月にクレジットカード関する苦情受付から稼動を開始した。以降、CFPBが扱う問題(例えば債権回収、学生ローンや不動産抵当)によって取り扱われる他の製品・サービスに関して消費者の苦情を受け付けるべく拡大されてきた。同データベースの発足の一年後に、データベースは回転原則にもとづさらなるデータを加えて、176,000以上の登録件数を含んだ。また、同データベースは、市民により製品タイプ別に視覚に訴えたり、ソートしたりダウンロードすることができるようになった。 

④ 農務省の食品安全検査局( Food Safety Inspection Service)

 食品安全検査局は、食中毒の危険性を減らすための対する実用的な手順を詳述しているYouTube上で、一連の公共的な内容の発表ビデオを公開した。 「あなたの手順をチェックしてください」シリーズが、4つの安全な食品の取り扱い手順を例示するーすなわち、①きれいに洗い、②分けて、③調理して、④冷やす – 食中毒問題の重要性に気づきをもたらして、個人が食中毒危険を理解することを支援するものである。 

⑤ 「2012年連邦航空局(FAA)の現代化および改正法(Federal Aviation Administration (FAA) Modernization and Reform Act of 2012)」 

(2012年2月14日にオバマ大統領により署名された)は、米連邦法典の第18編を改正した。それにより、航空機にレーザーポインターを向けることを連邦犯罪(federal crime) (筆者注5)とした。FAAはそのような事件のために専用のプログラム・ページを作成し、法執行行動に関連した出来事ならびにリリースに関して最新ニュースを提供した。また同ページは、市民がレーザー事件を報告する能力を持つべき点とともに、レーザーによるリスクと影響に係る情報を持っている。 

⑥ U.S.NRC 原子力規制委員会

 原子力規制委員会(Nuclear Regulatory Commission:NRC)は、新しい文書により機関の公式記録システム委員会全体にわたる文書へのアクセスと管理システム(ADAMS)を更新し続けている。同システムは、一般人がアクセスできる2つの記録文書システム(Publicly Available Records System (PARS) Library Public Legacy Library )を提供する。

  毎年何百もの新しい文書を加えて、PARS図書館は、1999年の末からNRCによって公表された730,000以上のフルテキストの文書を現在含む。 Public Legacy Libraryは、1980年代にさかのぼっている文書のために、200万以上の書誌的引用を含む。 ADAMSインターフェースは、これらの図書館のフルテキスト検索と文書ダウンロードを実行するために、市民に検索エンジンを提供する。 

******************************************************************************:****

(筆者注1) わが国でもFOIAに関する解説記事は多い。その中で国立国会図書館のカレントアウェアネスは2012年10月20日付けで「米国国立公文書館等、FOIAに基づく情報公開要求の提出からアクセスまでの手続きを行える”FOIAonline”を公開」を紹介している。

 「2012年10月1日、米国国立公文書館(NARA)と米国環境保護庁、米国商務省とともに開発した、連邦情報公開法(FOIA)に基づく情報開示請求オンラインシステム“FOIAonkine”を公開しました。開示要求の提出やその後の処理状況の確認、他の開示要求の検索や開示情報へのアクセス等が可能とのことです。」

 ちなみに、DOJサイトの情報公開請求対象の連邦機関や件数の推移グラフを引用する。

  

(筆者注2) 検討会に関する資料はすべて国立国会図書館サイトに移管されており、WARPに飛ぶしかない。このようなアーカイブ資料が米国の連邦公文書館等別保管されるケースは欧米でもあることにはあるが、今回の場合わずか12年前の資料である。 

(筆者注3) 「国立公文書館は昭和46年(1971)7月に国立公文書館が設置された。昭和62年(1987)制定された公文書館法と、平成11年(1999)に制定された国立公文書館法の規定により、国立公文書館は、その設置根拠と責務などについて法律上の責任を果たすことになりました。すなわち、国の各機関が所蔵している公文書などの保存と利用(閲覧・展示など)に関する責務を果たす施設として位置付けられ、国民の共通の財産である公文書を後世に継続して伝えるという重要な役割を担うこととなりました。平成13年(2001)4月に国の行政改革の一環として独立行政法人国立公文書館となりました。」

(国立公文書館の「業務概要」から一部抜粋)

 また、 「国立公文書館法(平成11年6月23日法律第79号))」は次にとおり定める。

・・・

(業務の範囲) 

第11条   国立公文書館は、第四条の目的を達成するため、次の業務を行う。 

一   特定歴史公文書等を保存し、及び一般の利用に供すること。 

二   行政機関(公文書等の管理に関する法律第二条第一項 に規定する行政機関をいう。以下同じ。)からの委託を受けて、行政文書(同法第五条第五項 の規定により移管の措置をとるべきことが定められているものに限る。)の保存を行うこと。 

(以下、略す)

 これを読んでも第二号が情報公開法の制定とリンクされていることはいうまでもないし、東京大学大学院 教授 宇賀 克也「日本における公文書管理法の制定と今後の課題」(2012年2月)が国立公文書館法の改正経緯等詳しく解説している。これを読んでも、その情報公開法との関連性が一番のポイントであることはいうまでもない。 

(筆者注4) 米国の「連邦情報公開法(以下「FOIA)という)」の解説は、わが国においても数は比較的に多い。実際の利用方法に即した解説は、国立公文書館の資料 74頁以下「3. アメリカにおける資料の公開と利用」等が参考となる。ただし、わが国の解説資料は国立国会図書館のカレントアウェアネス以外は、最新情報は期待できない。 

(筆者注5) 「連邦犯罪」とは、アメリカ合衆国の連邦憲法上,刑事裁判権が連邦に留保されている犯罪のことをいい,具体的には,州際通商に従事する航空機の損壊,州際誘拐,窃盗自動車州際移送,連邦公務員汚職,連邦銀行強盗,麻薬犯罪および通貨,郵政,関税,破産などに関する犯罪がこれにあたる。 (ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典から抜粋) 

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「米連邦航空局の商用ドローン使用規則の施行とわが国の実態から見た新たな検討課題」(その2完)

2016-09-05 07:26:25 | 国際政策立案戦略

⑤警察庁「小型無人機等飛行禁止法について」 (筆者注11)

 国会議事堂、内閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等、外国公館等及び原子力事業所の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(平成28年法律第9号。以下「本法」という。)第8条第1項の規定に基づき、以下の地図で示す地域(対象施設の敷地又は区域及びその周囲おおむね300メートルの地域:「対象施設周辺地域」)の上空においては、小型無人機等の飛行を禁止される。 

⑥日本産業振興協議会(JUIDA)が2016年1月26日から5月までの間、実証実験(β版)「ドローン専用飛行支援地図サービス(SoraPass)」を提供した。筆者はもちろん参加した。  

【実証実験の背景の説明】

ドローン産業の発展を支援するわが国最大の団体である一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は、 株式会社ゼンリンとブルーイノベーション株式会社とともにドローン専用飛行支援地図サービスの共同開発に着手しました。 このサービスはドローンに特化したわが国でも初めての飛行支援地図サービスで、1月26日から実証実験版の利用開始、サービス開始は来年度を予定しています。 

 

 なお、同サービスはその後も引き続き利用はログインにより可能である。

   

(2) 日米の比較表を作成 大きく異なる点を中心に整理

  追加予定

 

 

 

(3)プライバシー問題は少なくとも国土交通省、警察庁、市町村条例レベルでは問題視されていない?

 3.わが国においてさらに検討すべき優先課題 

(1)技術面からみた安全性への課題 

 欧州では、ドローンは「遠隔操縦航空機システム(Remotely  Piloted  Aircraft  Systems:  RPAS)」と呼ばれ、EUROCONTROLEEASAが中心となってルールづくりが進んでいる。2014年4月、欧州委員会(European Commission)が民生ドローン(Civil Drones)のルールづくりを要求し、2015年3月、欧州航空安全機関(European Aviation Safety Agency: EASA「ドローン運用のコンセプト(Concept of Operations for DronesA risk based approach to regulation of unmanned aircraft(12))を公表した。同文書ではドローンの飛行形態等に応じて、「オープン(Open)」「特定(Specific)」「認証(Certified)」の3分類でルールづくりを進めている。

(EUの民間ベースのドローンへの取り組みの詳細は、専門サイト等参照) 

 わが国における同様の検討が急がれよう。また、電波ののっとりいわゆるハッカー対策等の問題に関し、「ドローンによる自動配送実現に重要な制御通信の改ざん・盗聴防止 NICTらが実証実験に成功」等、実務的な観点にたった実証実験の進展も期待されよう。 

 さらに電波法の関係で見ると、日本国内で「技適マーク」が付いた機種以外を操縦すると、電波法違反になる可能性があるという問題もある。(筆者注12)

 (2)プライバシー保護

 総務省は2015年9月11日に「「ドローン」による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」(案)に対する意見募集の結果の公表した。住宅地にカメラを向けないなどの注意点を定義し、軽犯罪法は個人情報保護法に抵触するケースについても紹介してる。その詳しい内容は省略するが軽犯罪法で取り締まることでよいのか、そもそもわが国の個人情報保護法は事業者の保護規制法であることから、当然ドローン飛行運用についても飛行場所や航空機の安全性のみの観点からの規制だけでない、広く規制のあり方が喫緊の課題と考えられよう。

 ********************************************************************* 

(筆者注11) その内容を見ておく。

警察庁「小型無人機等飛行禁止法について」から一部抜粋する。

 国会議事堂、内閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等、外国公館等及び原子力事業所の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(平成28年法律第9号。以下「本法」という。)第8条第1項の規定に基づき、以下の地図で示す地域(対象施設の敷地又は区域及びその周囲おおむね300メートルの地域:「対象施設周辺地域」)の上空においては、小型無人機等の飛行を禁止されています。 

○本法の規制の対象となる小型無人機等とは、次のとおりです。

① 小型無人機(いわゆる「ドローン」等)

② 特定航空用機器(操縦装置を有する気球、ハンググライダー、パラグライダー、回転翼の回転により生ずる力により地表又は水面から浮揚した状態で移動することができ、かつ、操縦装置を有する機器であって、当該機器を用いて人が飛行することができるもの航空法(昭和27年法律第231号)第2条第1項に規定する航空機に該当するものを除く。) 

○ただし次のものについては、適用されない。

①対象施設の管理者又はその同意を得た者が当該対象施設に係る対象施設周辺地域の上空において行う小型無人機等の飛行

②土地の所有者若しくは占有者(正当な権原を有する者に限る。)又はその同意を得た者が当該土地の上空において行う小型無人機等の飛行

③国又は地方公共団体の業務を実施するために行う小型無人機等の飛行

 この場合、小型無人機等の飛行を行おうとする者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、その旨を当該小型無人機等の飛行に係る対象施設周辺地域を管轄する警察署を経由して都道府県公安委員会に通報する必要があります。 

○警察官等は、本法の規定に違反して小型無人機等の飛行を行う者に対し、機器の退去その他の必要な措置をとることを命ずることができます。

また、一定の場合には、小型無人機等の飛行の妨害、破損その他の必要な措置をとることができます。 

○なお、上記に違反して、

・対象施設及びその指定敷地等の上空で小型無人機等の飛行を行った者

・法第9条第1項による警察官の命令に違反した者

は、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処せられます。 

(筆者注12) DRONE MDIAの電波法との関係を解説した例「技適マークのついていない機種を所有しているだけなら違法ではないのですが、電源を入れてしまうと違法になってしまいます)。電波法では「技適マーク」がついていない無線を使用する機械を使う=国が定めた電波の利用ルールに違反してしまう(法律違反)と、規定されています。(電波の強さ等に応じて例外となる機械も一部あります)」

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「米連邦航空局の商用ドローン使用規則の施行とわが国の実態から見た新たな検討課題」(その1)

2016-09-05 06:51:16 | 国際政策立案戦略

 米国や英国の小型無人航空機システム(「UAS:Unmanned Aircraft Systems)UAV(Unmanned aerial vehicle」または「ドローン(drones)」)につき、これまで筆者のブログ(筆者注1)で数回にわたりとりあげてきたが、その商用利用に関する連邦航空局(FAA)の待望久しい規則が、2016年8月29日に施行された。(正確に言うと、筆者ブログでも紹介したとおり、2015.2.15付けでFAAは連邦官報で新規則全文「Operation and Certification of Small Unmanned Aircraft Systems」(全文152頁)を掲載した。その中で官報掲載後、60日目に施行すると明記されており、今回のFAAの実施通達は、まさにそのスケジュールに即したものである)。 

 これは、営利目的のために小型のドローンを操作したいと考える何人も包括的でかつ一般に適用できる一連の規則が与えられたことを意味する。 

 しかし、従来言われていたように、この利用についてはかなり多くの制約があることも事実である。今回のブログは、1)FAAの規則内容を「適用免除(waivers)」を含めあらためて概観するとともに、2)UAS規制の主な日米比較、3)わが国の規制の実態からみた更なる課題とりわけプライバシー保護面からの課題等を取り上げる。 

 今回は、2回に分けて掲載する。 

1.FAAの新Small UAS規則(New mall UAS Rule)(連邦航空規則第107編:Part 107)の内容

 筆者は、前記のとおり、すでにブログでFAA, OST(連邦運輸省・事務総局(Office of the Secretary of Transportation)および連邦運輸省(DOT:Department of Transportation)の検討内容につき概略(日本エレベータユースの解説記事を引用)を述べた。なお、新規則の詳しい翻訳は、社団法人ドローン操縦士協会のFAA規則の翻訳文を参照されたい。 (筆者注2)

  今回は、従来取り上げていない事項をInside PrivacyのブログFAA Drone Rules Take Effect; Commercial Use of Drones Permitted with Certain Conditionsを中心に仮訳するとともに補足的な解説を加える。 

(1)基本原則

 新規則は、あなたが営利目的のためにドローンをすぐに使用できるということを意味しない。新しい規則の下で、あなたはドローンの操縦を行うためには、1)遠隔操縦証明書(Remote Pilot Certificate)を持っていなければならない、2)申込者は少なくとも16才であること、3)英語の読み書きに習熟していること、4)FAAが認可したテスト・センターで初級の航空知識テスト(Initial Aeronautical Knowledge Test) (筆者注3) にパスしたこと、5)TSA身元調査(筆者注4) (筆者注5)に合格したこと、等である。FAAは、この適用過程に完了するには6~8週がかかると見積もる。FAAは、承認されたこのテスト・センターに関する情報とともに、FAAは知識テストに関する予習用データをウェブサイト (筆者注6) に掲示した。 

 ドローンが使用されることができる前に、営利目的のためにも使われるすべてのドローンはFAAオンライン登録されなければならない。

 (2)ドローンの新規則の下で定められるその他の使用条件: 

①規制されない自由な(クラスG)空域(空港の近くの一般に低い高度空域でない空域) (筆者注7)で飛ばされなければならない。

②パイロットまたはもう一人の監視者(observer)(「目視見通し内(“Visual Line-of-sight”))」と呼ばれる) (筆者注8) により常に見える状態で飛行しなければならない。 (筆者注9)

• 400フィート未満(約122m)で飛ばさなければならない。

• 時速100m以下で飛ばさなければならない。

• 日中のUASが見通せる時間帯に飛ばなければなりません(夜間の飛行は原則禁止:called “Visual Line-of- sight”)

• 先行権を有人の航空機に譲渡しなければならない。

• 人々(ドローンの運行に参加している人々を除く)の上を飛び越えてはならない。

• 走行中の車両(人口のまばらな地域の上にあること以外は)の上を飛んではならない。 

(3) 適用免除と免除・承認証明書の扱い

 新規則は、飛行申込者が安全な飛行を実行できることを証明するならば、上記の大部分の必要条件に対する「適用免除(waivers)」を求めることができることとし、FAAは 第333条の適用除外と免除・承認証明書(COA)」 (筆者注10)を公表した。 

 FAAは、1)適用免除を要請できるオンライン・ポートを準備するとともに、2)クラスG以外のどんな空域にでも飛行するために、承認(Authorization)はこのオンライン・フォームを使用して航空交通管制から得なければならない。概説される適用免除や承認要請に関し、どれくらいの期間を要するかは明らかでない。しかし、それは予想されたUAS使用の少なくとも90日前に適用することが勧奨されている。

  すでに、伝えられるところでは、UASのオペレーターが前記で概説した状況を踏まえ、FAAは2016年8月29日現在で76件の適用免除申請を受け付けた。 FAAは、それらの適用免除のうち72件は夜間飛行希望でかつ適切な安全予防措置をとりたいというオペレーターであると述べた。 

(4) 8月29日のFAAの記者会見

 FAAは人々の上で飛行するドローンに関する規制機能を持ち、新規則が今年末までには完全な内容で実施されると見込んでいる、また新規則は衛星通信などを利用した見通し外(beyond line of Sight:BLOS)の長距離の飛行を許していると述べたが、その具体的規則がいつ準備ができているかについては言及しなかった。 

 ドローンを利用するために第333条の適用免除を得たオペレーターにとって、それらの免除はまだ効力を有しており、彼らの個々の有効期限の間は有効である。このため、オペレーターは、彼らが第333条の適用免除(その中で含まれるすべての規則も含む)の下で動き続けるか、新しい規則の下で動くかを選択可能である。 

(5) 新規則への評価

 各種の規制にもかかわらず、新規則はアメリカ合衆国でドローンの商用利用のために大きな前進を意味する。新規則(それは55ポンド(25kg)未満のドローンにも適用される)が、なお①ニュースの収集もののための空中ビデオ、②パイプラインや電波塔の点検、③空中写真測量(aerial surveying)、④土地や建設サイトの監視のための航空写真、⑤災害対応と他の用途を含む各種営業運転のためにドローンの広範囲にわたる利用が展開されることを我々は期待する。 

(6) 連邦商務省・電気通信情報局(NITA)取り組み

 筆者なりに米国の民間ドローンのプライバシー保護の透明性や説明責任につき調べた。2015.4.24 Comments on Privacy, Transparency, and Accountability Regarding Commercial and Private Use of Unmanned Aircraft Systems 

が参照すべきものである。 

2.わが国のUASの各規制の実態

 一般的に米国FAAのUAS規則とわが国の規制との比較を見てみる。 

 これまで述べたように、FAA規則は、(1)UASの飛行運用上の制限(Operational Limitations)、(2)UASのオペレーター(Operators)の認定とその責任

(Operator Certification and Responsibilities)、(3)Aircraft Requirements(耐空性等UASの飛行機として要件)、(4)模型飛行機(Model Aircraft)へのUAS規則の適用の4分野につきFAAが定める小型UASの飛行承認規則は明記している。 

 一方、わが国のこれをわが国の無人飛行機施行規則にあたるものは、2016.7.29 国土交通省「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」最も基本となる解説」のみである。 

 あまり明快な解説ではないと思えるが、少なくとも注意深く読めば理解できる内容である。 

 一方、わが国のドローンの法規制の概要をまとめると次の通りである。 

(1)航空法等の改正

 ドローンに対応する航空機のカテゴリーとして「無人航空機」を設け、①航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であって、②構造上人が乗ることができないもののうち、③遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるものと定義した。具体的にはドローン(マルチコプター)、ラジコン機、農薬散布ヘリコプター等が想定されている。

 他方、規制対象外に該当するもの(改正航空法2条)の基準として、「無人飛行機本体の重量とバッテリーの重量の合計(バッテリー以外の取り外し可能な付属品の重量は含まない)で、200グラム未満のもの」と定めた。(航空法施行規則5条の2) これはおもちゃを適用除外とする意図である。 

①飛行場所を特定した申請で利用可能な航空局標準マニュアル:無人航空機飛行マニュアル(制限表面・150m以上・DID・夜間・目視外・30m・催し・危険物) 

②飛行場所を特定しない申請のうち、以下の飛行で利用可能な航空局標準マニュアル(空港周辺の飛行と150m以上の飛行では利用できません)

 ○人口集中地区上空の飛行

 ○夜間飛行

 ○目視外飛行

 ○人又は物件から30m以上の距離を確保できない飛行

 ○危険物輸送又は物件投下を行う飛行

 ○催し物上空での飛行

③国土交通省・無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール:技術的な問題のガイドライン 

④無人飛行機の飛行禁止空域

 次の1).2)の区域は、国土交通大臣の許可を受けた場合を除機、飛行が禁止される。(改正航空法132条) 

 1)無人航空機の飛行により航空機の安全に永久を及ぼすおそれがある者都として国土交通省令で定める空域(航空布施行規則236条)

 2)236条1号に掲げる空域以外で、国土交通省令で定める人または家屋の密集している地域の上空 

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(筆者注1)2015.3.22 筆者のブログ「ホワイトハウスの無人航空システム使用時のプライバシー権等に関する覚書と法 制整備等の最新動向(その1) 、「同(その2) 「同(その3)

 また、英国については2015.3.17 筆者のブログ「英国の運輸省民間航空局によるUAS規制の現状と航空安全面やプライバシー面からの新たな課題 を参照されたい。 

(筆者注2) 米国のドローンに関する連邦のプライバシー保護法制は比較的遅れている。一方、州レベルでは2015年8月現在、26州で独自の法律が成立している。例えば、アーカンソー州とミシシッピ州ではドローンによる「のぞき」を禁止、フロリダ州は私有地の建物や人を許可なく撮影することを禁止している。

  プライバシー保護は、オバマ政権にとっても優先課題の一つに位置付けられている。2015年2月には、オバマ大統領は「ドローンの国内利用時における経済的競争の促進とプライバシー、人権、自由権の保護」と題する大統領覚書を発表し、国家電気通信情報庁(NTIA)に対して、政府機関や民間ドローン事業者がドローンを通じて収集する情報のプライバシーを保護するためのガイドラインを策定するよう指示した(高橋 幹「諸外国におけるドローンを巡る規制の動向」)

 (筆者注3) USA運用の前提となる初級の航空知識テスト(Initial Aeronautical Knowledge Test) については 、2016.7 FAA: Flight Standards ServiceRemote Pilot – Small Unmanned Aircraft Systems Airman Certification Standards

が詳しく解説している。またわが国ではやや古いがエアーアコード・フライングスクール校長 脇田祐三「飛行訓練および操縦資格取得要領」が参考になる。 

(筆者注4) 米国運輸保安局(TSA)「TSA Background Checksのサイト」から、その概要とチェック項目を見ておく。これだけ見ても米国の航空運輸システムにおける身元調査時のテロ対策の力の入れ方が理解できよう。 

9/11のテロ攻撃と運輸保安局(TSA)の編成後、より厳しい身元調査は、制限された地域への出入りを必要とする人々のために必要とされた。より多くの規則が改正され、我国の航空運輸システムをテロリズムから守るための挑戦に対処するために追加された。また、

NATA(NATA Compliance ServicesNATAS) (筆者注5)は、新しい規則の遵守を確実にすることを要求されるデータの収集と伝送を合理化する専門的手順を開発した。あらゆる段階で、我々は、あなたが所定の個人の各種の身元について知っている必要があるものを慎重に特定し、確かめ、保証する。あなたの顧客やと従業員の安全とセキュリティが危なくなっているときに、失敗の余地はない。 

①A Criminal History Records Check (CHRC)

A Criminal History Records Check (CHRC) is a TSA-defined process for taking and checking fingerprints against the FBI database. NATACS takes this process one step further by also screening information against the FBI Terrorist Watch list.

②Criminal History VerificationIn 

In order to give you added confidence in your hiring decisions, NATACS searches for any criminal convictions, whether felony or misdemeanor, at the County, State and Federal level.(5検査と10検査がある)

③FAA Records Check

④Air Carrier Records Check

⑤Drug and Alcohol History Check

⑥Motor Vehicle Registry Check

⑦National Driver Registry Check

⑧Social Security Trace/ Verification

⑨Professional License/Certificate Verification

⑩10-Year Application Review

⑪Worker's Compensation History

⑫Professional Reference Check 

(筆者注5) NATA の事業内容を見ておく。

 NATA(NATAS)は、航空業界を専門としている国の唯一のフルサービスの従業員の身元調査(background checks)と検証行う会社である。全米航空運輸協会の子会社として、アメリカ合衆国の「航空の声(Voice of Aviation)」と考えられており、他の同様の企業チームも、「輸送の番犬」の役割を満たすために、NATACSよりよく適したものはない。

 身元調査、社員IDチェック(badging)、指紋鑑定から完全な薬物管理プログラムまで、あなたは真実を得て、我々が生む結果を信頼することを期待できる。調査、検証とコンプライアンス・プログラムの60年の航空界での経験を全体的に捧げたプロとして、我々はNATACSがあなたのセキュリティマネジメントの必要性の論理的な唯一の源であると考える。 

(筆者注6) 「クワッドコプター」の定義を見ておく。

「ドローン(Drone)とは無人航空機を意味するもので、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)と同じ意味です。要するに固定翼機(飛行機)でも回転翼機(ヘリ)でも無人飛行が可能な機体はドローンと呼んでもいいということです。

マルチコプターは2枚を超えるローター(テールローターは除く)を搭載した回転翼機のことです。ローターの回転速度の差異によってヨー角(左右回転)を制御する関係で通常は偶数枚のローターを持ちます。

マルチコプターは2枚を超えるローターを搭載した回転翼機の総称であり、4枚ローターの物は「クワッドコプター(クアッドコプターとも言われる)」、6枚ローターを「ヘキサコプター」、8枚ローターを「オクトコプター」とも言われます。

※3枚ローターは「トライコプター」と言います。 

つまりドローンは無人飛行機、マルチコプターは形状を示す名称です。実際には同じような意味で使われることが多いようです。」 

(筆者注7) FAが指定する空域の「class G」とは規制空域である「class A」から「class E」以外の飛行につき規制されない自由な空域である。米国のAirspace (空域)」class Aclass Eにつき平易に解説している。 

(筆者注8) 「visual-line-of-sightは「VLOS」と略されることもありますが、ドローンなどの遠隔操縦による無人航空機の運用における視界の定義では、遠隔地にいる操縦者から飛行物体が裸眼(あるいはメガネなどの矯正)だけで完全に視認できていることを意味します。たとえ一瞬でも何らかの遮蔽物によって視認できなくまった時点でVLOSではなくなります。また、望遠鏡などの装置を使っての視認も対象外とされます。当然ながら、ドローンにカメラを搭載してそのカメラ視点で操縦するといった手法や、GPS連動等による自動操縦などもVLOSではありません。(山本一郎「ドローンの商業利用ルール案が米国で発表されましたがこのままでは宅配に使えないようです」から抜粋) 

(筆者注9) 国立研究開発法人情報通信研究機構・ワイヤレスネットワーク研究所 三浦龍「小型無人機(ドローン)の安全運航に不可欠なワイヤレス技術」は安全運行におけるワイヤレス技術問題を詳しく論じている。 

(筆者注10) わが国のドローンメーカーであるDJIのサイトが次のように解説している。

「米連邦航空局(FAA)が初めてセクション333条項(Section 333)の適用除外をDJI Phantomに対し認めたのは今年1月のことで、これによりPhantomに米国内で商業利用する資格が与えられました。6か月後、これまでに商業用ドローンオペレーターに認可されたSection 333の免除は、700件以上になりますが、その圧倒的多数はDJIのクワッドコプターを使用している企業です。 

 無人航空機(UAV)を含む新たな規制ができるまで、米国内でドローンを商業利用するためには、現在はSection 333適用除外と免除・承認証明書(COA)が必要です。」

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