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英国の金融ウォッチドッグFCAは何千もの誤解を招く広告をブロックならびに金融企業の顧客向け義務の高度化施策“Consumer Duty”を体系的に解説(その1)

2023-02-24 09:49:31 | 消費者保護法制・法執行

 

 英国の金融監督機関である「金融行為規制機構(Financial Conduct Authority:FCA)」は、2022年中に8,582件(2021年の14倍)のソーシャルメディア等でのプロモーションを修正または削除することを金融サービス企業に要求したと、2月3日のプレスリリースで発表した。

 かつて筆者は2022年11月1日付けblog「英国の暗号資産にかかる『金融サービスおよび市場法』改正法案を巡る最新動向」で英国の暗号資産に関し規制のあり方を論じた。

 さらに本リリースを読む中で“Consumer Duty”という用語が出てきた。はたしてこの訳語は何か?直訳すると「消費者義務」である。しかし、正確にいうと金融監督機関であるFCAが消費者保護を「最優先の項目」として位置付け、金融サービス業全体に対し,ぜい弱な顧客の公正な取り扱いに関する規則や指針(ガイダンス)を広く意見を公募してまとめ上げたものである。(日本弁護士連合会「海外調査結果報告書:英国における『消費者のぜい弱性』等に関するヒアリング結果」参照。このような直訳は極めて危険である。

 最後に、最近時FCAは、その権限を利用して違法に運営されている仮想通貨 ATM をホストしている疑いのあるリーズ周辺のいくつかのサイトに立ち入り、検査した。この記事に関しFCA のリリース文をもとに抄訳する。

 なお、Bird& Birdのblog「The FCA’s new Consumer Duty」の解説内容は有益であり、最後にFCA解説と一部重複するが、仮訳、引用した。

 今回のブログは、このFCAの金融面の消費者保護に向けた具体的活動を紹介するものである。翻って考えるとわが国の金融監督機関の取組みは、はたしてどうなっているのであろうか。

今回は2回に分けて掲載する。

Ⅰ.FCAのソーシャルメデイア等詐欺的なプロモーション活動やフィン・フルエンサー.の規制の実態

 FCAは、消費者が詐欺に遭いお金を失うことを防ぐために、1,800を超える警報アラートを公開した。

 ソーシャル・メディアは、誤解を招くプロモーションと戦うための規制当局の取り組みの主要な焦点であり続けている。FCAは、いくつかのビッグテック企業と緊密に協力して、FCA認定企業によって承認された金融プロモーションのみを許可するように広告ポリシーを変更したが、消費者を保護するためにテクノロジー企業がさらに多くのことを行う必要がある。

 FCAは、問題のある企業や誤解を招く広告を見つけるために使用するデジタルツールを大幅に改善した。これらの改善により、2021年と比較してはるかに多くのケースを処理することができた。

フィン・フルエンサー(Fin-fluencers’)(注1)も規制当局にとって懸念が高まっている。権限のない個人は、特定の投資のメリットについて人々に助言すべきではない, これは我々の規制の対象となる可能性が高く、彼らに対して取られる措置につながる可能性があるため、FCAは、過去1年間にすでにいくつかのソーシャルメディア・インフルエンサーに対して具体的行動を起こしている。

 あるケースでは、FCAは、規制対象の会社の取締役が、許可されていないトレーダーやその他の金融商品のアドバイスを促進するために個人プロファイルを使用していることを発見した。FCAは、彼らが金融サービスを宣伝するために個人のソーシャルメディアを使用することをブロックし、金融サービスの宣伝を停止するよう会社に要求した。

 FCAのマーケッツ担当エグゼクティブ・ディレターのサラ・プリチャード(Sarah Pritchard)氏は次のように述べている。

Sarah Pritchard,氏

 「我々の金融機関に対する期待は変わらない。金融プロモーションは、公正で明確で、誤解を招くものであってはならない。変わったのはFCAのアプローチである。より優れたテクノロジーを活用することで、低品質または誤解を招く広告をより迅速に見つけることができる。そして、我々がそれらを見つけたら、即我々は金融企業にそれらを改善させるか、それらを完全に削除させるために介入する。

 今年  (2023年)は、我々は人々の苦労して稼いだお金を危険にさらしているソーシャルメディアを使って違法に投資を宣伝する人々に圧力をかけ続ける。」

 家計は生活費の上昇の影響を受け続けているが、FCAは、家計や財政に苦しんでいる人々が詐欺師やリスクの高い規制されていない製品を示す広告の影響を受けやすくなる可能性があることを懸念している。

 FCAは現在、金融プロモーションを承認したいと考える企業に対して、より厳しいチェックを導入することについて協議している。この措置により、FCAは、許可されていない企業や個人による有害な金融プロモーションを迅速に停止できるようになる。

 また、2023年7月31日には“Consumer Duty”が施行される。この義務の下では、企業は消費者に情報を提供し、金融商品やサービスについて効果的で情報に基づいた意思決定を行うのに役立つことを証明する必要がある。

 英国の規制当局は引き続き投資や年金詐欺に関し「ScamSmart」キャンペーンを使用して、投資や年金詐欺を回避する方法に関する情報を人々に提供している。

. FCAの新しい消費者保護に向けた新たな企業義務に関する規則やガイダンスの策定

(1) わが国でThe FCA’s new Consumer Dutyに関する解説例

 唯一の解説と思われる日本弁護士連合会「海外調査結果報告書:英国における『消費者のぜい弱性』等に関するヒアリング結果」から概要箇所を抜粋、引用する。

 なお、このレポートはあくまでFCAのヒアリング結果であり、またヒアリング時点の情報に限定されている。

 筆者は、改めてFCAの“Consumer Duty”サイトからの情報にもとづき青字の注書きで補完した。

・FCAは2021年5月にFCA諮問書(Consultation Paper :CP21/13: 全56頁)諮問期限は7月31日)「A new Consumer Duty」(直訳:新しい消費者義務)(注2)とを発表した。

・FCAは高い水準の消費者保護の実現を目指している。事業者において,消費者がどのようなニーズを持っているかをどのように把握しているのか,そのために事業者がとった行動が有効であったのかという点を,FCAが評価することを目指している。

・諮問書に対してはパブリックコメントで様々な意見が寄せられており,新たな原則,ルール,ガイダンスの公表を検討している。

・目標達成の上で最も重要な事項は,①コミュニケーション,②製品とサービス,③カスタマーサービス,④価格と価値の4項目である。これらが最も実現が困難なことだからである。

・①コミュニケーションにおいては,事業者が消費者に提供する情報は,公正で,明確で,かつ誤認惹起的でないことが確保されていなければならない。現状では,事業者が複雑な商品を提供しているため,十分に理解可能な情報提供が困難になっているのが課題である。

・②の製品とサービスについては,適切でない人に対してそれらが提供されるケースが問題である。事業者は,自らが提供する商品・サービスが誰のニーズに向けられたものなのか,提供された消費者にとって適したものなのか,必要な人に届けられているのかを確認する必要がある。

・③の顧客サービスについては,事業者が消費者に提供するサービスについて,代金の支払後に実際にその商品やサービスを利用できなかったなどという問題が生じている。FCAが重視しているのは,購入した消費者が期待したものを受け取ることができることであり,事業者がこれを阻害してはならないということである。

・④の価格と価値については,商品やサービスに相応の価値があり,消費者が支払った価格に対して受ける利益が不相当ではないことが必要である。ここで生じている問題は,特定の商品やサービスを購入した消費者に対して付加的な負担が掛けられていることや,忠実な顧客であればあるほど支払うべき価格が高額になり,結局は,商品やサービスを変えた方が得になるということである。

5 分析

⑴ 金融監督機関であるFCAが消費者保護を「最優先の項目」としていること

今回のヒアリングで調査の対象とした本ガイダンスは,金融サービス業全体に対し,ぜい弱な顧客の公正な取り扱いに関する指針を定めたものである。

FCAによる規制の対象となる企業は,銀行,保険会社,投資会社等,イギリスの全ての金融機関・金融サービス業者であるが,対銀行,対保険会社という形で個別に指針を定めるのではなく,すべての金融機関等に対する指針を示している点で,本ガイダンスは特徴的であるといえる。

また,FCAは消費者政策を担当する機関ではなく金融業に対する監督機関であるが,消費者保護を重要な目標の一つに掲げ,かつ,ぜい弱な顧客の公正な取り扱いを「最優先項目」として位置付けて,本ガイダンスを公開している。

(以下、略す)

 (2)FCA「消費者のための企業の新たな遵守保護義務(new Consumer Duty)」は、金融サービスに大きな変化をもたらす」の解説

 FCAのConsumer Duty解説(要旨)等を以下、仮訳する。

 FCAは、金融企業が消費者にサービスを提供する方法を根本的に改善する新しい消費者義務を導入する計画を確認した。これにより、金融サービス全体でより高く明確な消費者の保護基準が設定され、企業は顧客のニーズを最優先することが求められる。

 この義務は包括的な原則で構成されており、企業が従わなければならない新しい規則がある。これは、消費者が理解できるコミュニケーション、ニーズを満たし、公正な価値を提供する製品とサービスを受け取り、必要なときに必要な顧客サポートを受ける必要があることを意味する。

 我々の期待を明確にし、金融企業が顧客のニーズに焦点を当てることは、企業が消費者の利益のために競争し、革新するための柔軟性につながるはずである。 

 この義務は、より積極的でデータ主導の規制当局になるための FCA の変革の一部である。企業が顧客のニーズをどのように満たしているかを評価することで、FCA は、消費者に適切な結果をもたらさない慣行を迅速に特定し、実務慣行が市場の規範として定着する前に行動を起こすことができる。

 消費者および競争部門のエグゼクティブ・ ディレクターであるセルドン・ミルス ( Sheldon Mills )氏は、次のように述べている。

Sheldon Mills 氏

 「現在の経済情勢は、消費者が適切な経済的意思決定を行うことがこれまで以上に重要であることを意味する。 金融サービス業界は、人々に必要なサポートと情報を提供し、顧客を第一に考える必要がある。“Consumer Duty”は金融サービスに大きな変化をもたらし、高い基準に基づいた競争と成長を促進する。この義務は、我々が規制する企業の基準を引き上げるため、何らかの損害が発生するのを防ぎ、新しい問題を発見したときに迅速かつ積極的に行動することを容易にする。」

 この義務には、具体的には金融企業に対する以下の要件が含まれる。

①ぼったくり料金と手数料徴収を止めさせる。

②消費者に製品を持ち出すのと同じくらい簡単に製品を切り替えたりキャンセルしたりできるようにする 。

③有益で利用しやすいカスタマー・ サポートを提供し、消費者が回答をあきらめるほど長く待たされることのないようにする 。

④金融製品やサービスについて人々が理解できるタイムリーで明確な情報を提供するため、ほとんどの人が読む時間のない長い条件に重要な情報を埋め込むのではなく、消費者が適切な金銭的な決定を迅速に下せるようにする

⑤顧客に適した金融製品とサービスを提供する。 

⑥脆弱な状況にある顧客を含む顧客の真の多様なニーズに、すべての段階でそれぞれのやり取りの中で焦点を当てる 。

 FCA は、現在販売されているすべての新規および既存の金融製品と金融サービスに対して新しい規則を実装するために、企業に今後 12 か月の猶予を与える。この規則は 12 か月後にクローズド ・ブック製品(注3) (注4)に拡張され、企業が販売されなくなったこれらの古い製品を新しい基準に引き上げるためにより多くの時間を与えることにつながる。

【読者への注記】

1.PS(Policy Statement)22/9(2022.7.9): 新しい消費者向け義務

2.FCA はまた、義務を履行するために必要な情報を企業に提供するための最終ガイダンス(Finalised Guidance: FG22/5 Final non-Handbook Guidance for firms on the Consumer Duty) 全121頁)を発行した。

3.金融企業の義務には、「企業は小売顧客に良い結果をもたらすために行動しなければならない」という新しい消費者原則が含まれている。

4.企業により高い基準を設定することにより、この義務はFCA がより革新的で断定的かつ適応的な規制当局になるための変革の中心であり、消費者と英国全体の市場の成果を改善するための FCA の新しい 3 年間の戦略の重要な部分である。

5.FCA には、「2021 年金融サービス法(Financial Services Act 2021)」(注5)を通じて、この作業を進める議会に対する権限がある。 

6.2021年12月CCP21/36 (全243頁): 新しい消費者に対する義務: CP21/13へのフィードバックとさらなる協議を行った。

7.今般の動きはFCAは、新たな消費者税を導入して金融業界の考え方を根本的に変えるものである。

FCAが変えていること

 以下を含むルールを導入している。

企業が小売顧客に良い結果をもたらすために行動することを要求する新しい消費者原則。 

新しい原則の下での私たちの期待をより明確にし、企業が 4 つの結果を解釈するのに役立つ分野横断的な規則 (以下を参照)。 

消費者義務の下で見たい 4 つの結果に関する規則。これらは、企業と消費者の関係の重要な要素を表しており、顧客に良い結果をもたらすのに役立つ。

これらの結果は以下に関連する。 

①製品とサービス 

②価格と価値  

③消費者の理解 

④消費者をサポート

 〇誰に影響するか   

 このポリシーとガイダンスは、次の団体等に対し深い関心を持つべき可能性がある。   

①電子マネーおよび決済セクターの企業を含む、規制対象の企業 

②消費者団体と個人消費者

③業界団体・業界団体

④政策立案者および規制機関

⑤業界の専門家とコメンテーター

⑥学者とシンクタンク

金融商品の販売または更新可能な新規および既存の製品またはサービスについて、新規則は 2023 7 31 日に発効する。 

すでに閉鎖(closed)された製品またはサービスの場合、規則は 2024 7 31 日に発効する

〇次のステップ  

 FCAが導入している規則とガイダンスは、下図のとおり段階的に施行される。

Ⅲ.Bird& BirdblogThe FCA’s new Consumer Duty」の解説内容

 ロンドンに本部を持つ国際的ローファームBird& Birdのblog「The FCA’s new Consumer Duty」を仮訳する。なお、このレポートは13か国(注6)計18人の弁護士の執筆からなる大部レポートである。

1.FCAの主たる提案主旨は何か?

 2022年7月27日、FCAは、FCAの企業向け原則に導入される新しい消費者義務に関する最終規則とガイダンスを定めた。この消費者義務は、企業の文化とFCAが期待する行動について、より明確でより高い基準を設定することにより、リテール金融サービス市場における消費者保護の現在のレベルを高めることを目的としている。企業は、販売前と販売後の両方で、消費者に販売する製品やサービスの影響を考慮する必要がある。

 FCAの提案の中心は、企業が小売顧客に良い結果をもたらすために行動することを要求する新しい消費者原則の導入である。消費者原則は、新しい原則の下でのFCAの期待をより明確にし、企業が4つの結果を解釈するのを支援する分野横断的なルールによって支えられている(以下のポイントIII.を参照)。新しい規則の下では、消費者は次のことを行う必要がある、すなわち、(i)理解できるコミュニケーションを受け取る。(ii)ニーズを満たし、公正価値を提供する製品およびサービスを受け取る。(iii)必要なときに必要なカスタマーサポートを受けられるようにする。

〇小売り消費者向け企業義務が関連する影響範囲は如何?

 方法に大きな変化をもたらし、ますます多くの企業が新しい規則が規制遵守にどのように影響するかに関心を持つようになると考えていることを示している。以下でConsumer Dutyの概要を示し、英国の金融サービス会社への潜在的な影響について説明する。

〇企業のどのような活動と製品が対象となるか?

 Consumer Dutyは企業の規制された活動に適用され、FCAの提案は「小売顧客」に販売される製品とサービスに関連する。FCAは、この用語には、プロのクライアント(大企業や政府機関など)および適格なカウンターパーティを除くすべてのクライアントが含まれると説明している。FCAの提案は、消費者または零細企業である顧客がConsumer Dutyの目的上「小売顧客」と見なされるように、決済機関および電子マネー機関にも拡大される。

 重要なことに、FCAの提案は、たとえその企業が最終顧客と直接の関係を持っていない場合でも、小売顧客への製品やサービスの製造または供給に関与している企業にまで及ぶ。FCAは、「小売市場」という用語を使用して、提案された規則の対象となる市場を参照している。

〇消費者向け義務の3つの重要な柱は何か?

  1. 消費者原則

 消費者原則と消費者義務全体の導入を通じて、FCAは、原則のうち、特に原則6(顧客の利益)の既存の要件を強化する、強化されたレベルのケアを適用することを目指している。この原則は現在、企業は顧客の利益を十分に考慮し、顧客を公正に扱わなければならないと読まれている。Consumer Dutyの実施にあたり、これは客観的な基準となり、企業は個々の顧客にとって絶対的な最良の結果を達成することを目指すのではなく、顧客ベース全体の合理的な期待を考慮する必要がある(「合理性」の概念については、以下の分析を参照されたい)。

1.Consumer Dutyの包括的な横断的ルール

 一連の横断的なルールは、FCAが企業に期待する行動基準を開発し、増幅する。新しい規則では、企業は次のことを行う必要がある。

a)消費者に予見可能な危害を加えないようにする。

・企業は、その行為、製品、またはサービスを通じて顧客に危害を加えることを禁止され、消費者にそのような危害を加えないように積極的な措置を講じる必要がある。

・企業は、顧客の脆弱性、行動バイアス、または知識の欠如を悪用しようとするべきでない。

・企業は、自社の製品やサービスのメリットとリスクを公正に説明する必要がある。

b)顧客が金融目標を追求できるようにする。

・企業は、消費者が自分の利益のために行動できるようにする必要がある。

企業は、消費者の行動特性に関する知識を活用して、消費者が情報に基づいた意思決定を行うことを可能にし、サポートする必要がある。

c) 企業は誠実に行動する

誠実さ、公正かつオープンな取引、消費者の合理的な期待との一貫性を特徴とする新しい行動基準が確立された。

III. FCA新規則の4つの成果

 4つの成果は、企業が製品やサービスを設計、販売、サービスを提供する方法、およびカスタマージャーニーに沿った主要な接点という、企業と顧客の関係の重要な要素を表している。4つの成果は次のとおりである。

1.製品の品質とサービス

 FCAは、すべての製品とサービスが目的に適合していることを望んでいる(つまり、消費者のニーズを満たすように設計され、消費者を対象としている)。提案された規則は、小売消費者に販売または配布される前に、すべての新製品および/またはサービス、または当該製品またはサービスへの重要な適応に関しても適用される。この規則は、新規顧客に販売される前に、既存の製品やサービスにも適用される。

 金融企業の上級管理職は、販売された製品やサービスから顧客が受け取る可能性のある結果が適切に評価され、文書化されていることを確認することが期待される。

2.製品の価格と価値

 Consumer Dutyの実施後、製品またはサービスの価格が公正価値を提供するかどうかの評価は、少なくとも特定の製品またはサービスの一部を構成する制限、消費者が支払う価格、 ターゲットオーディエンスの脆弱性の特徴と同様に、次の要因を考慮する必要がある。

 上級管理職は、企業の製品とサービスが顧客に公正な価値を提供し、定期的に評価されていることを文書化し、証拠を提供することが期待される。

3.消費者の理解

 企業のコミュニケーションは、消費者をサポートし、金融商品やサービスについて十分な情報に基づいた意思決定を行えるようにする必要がある。これを達成するには、対象読者の特性、製品の複雑さ、使用されるコミュニケーションチャネル、および企業の役割に応じてコミュニケーションを調整する必要がある。明確、公正、誤解を招くことのない方法で小売顧客に伝達されること。小売顧客に正確で関連性のある情報をタイムリーに提供する。

上級管理職は、顧客とのコミュニケーションが透明であることを確認し、関連するすべてのコストと料金を完全に開示する必要がある。また、料金の構造を完全に理解していない、または請求される料金のレベルに不満を持っている可能性のある消費者のために、効果的な苦情処理プロセスを確立する責任がある。

4.消費者のサポート

 企業は、企業との関係を通じて消費者のニーズを満たすレベルのサポートを提供することが求められる。企業は、脆弱な状況にある顧客を含め、小売顧客に不利益を与えてはならない。顧客が合理的に予想されるとおりに製品を使用できるようにする必要がある。消費者が金融目標を追求する際に不合理な障壁(不当なコストを含む)に直面しないようにする。

 上級管理職は、苦情の分析と電話の監視を通じて、顧客に提供されるサービスのレベルに関する定期的なレビューを委託することが期待される。

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(注1) フィン・フルエンサーとは、おもに金融に関する情報や専門知識に特化し、SNSやブログなどでフォロワーを多く持つインフルエンサーのこと。「Finance(ファイナンス)」と「インフルエンサー」を合わせた造語で、「金融インフルエンサー」と呼ばれることもある。フィン・フルエンサーは、おもにTikTokやYouTubeなどで個人投資・資金管理・資産運用などに関するコンテンツを発信している。金融機関のマーケティング担当者が情報を発信している場合もあるが、フィン・フルエンサーの多くは個人投資家で、中には数百万人ものフォロワーを持つ人もいる。(IDEAS FOR GOOD解説から抜粋)

(注2) 正確にはFCAのnew Consumer Duty検討経緯はCP21/13より前から動き出している。

(注3) クローズド・ブロック(またはクローズド・ブック)はもはや新規発売はされていないが、生命保険会社の財務報告書に保険料収入が発生している契約として記載される保険契約のことを示します。生命保険は長期にわたるため、保険会社はこうしたクローズド・ブロックに関する長期戦略を策定する差し迫った必要性を感じにくいものです。社内でクローズド・ブロック業務を行うことでコスト削減とランオフ業務の管理を目指す戦略は、クローズド・ブロックとオープン・ブロックを同じ保険契約管理システムで処理している場合には有効かもしれませんが、保険会社がシステムのアップグレード、デジタル戦略の導入、システムの簡素化を進める場合は、クローズド・ブロックは縮小するのに管理コストは増大し、システムが陳腐化するリスクも否めません。(CELENT リサーチの解説から抜粋)

(注4)FCAのclosed bookの用語解説

(注5) 解説を以下のとおり、抄訳する。

2021年4月29日、英国の金融サービス法的枠組みの複数の要素を修正するオムニバス法である「2021年金融サービス法(FS法)」が国王の裁可Royal Assentを受け成立した。2021年法によって行われた主な変更には、①ベンチマーク規制(の保持されているEU法バージョンの変更が含まれる「2016/1011 / EU) ( UKベンチマーク規則)」、2)「市場濫用規則(596/2014 / EU) ( UK MAR )」、および3)「金融商品市場規則(600/2014 / EU) ( UK MiFIR )」。金融サービス会社も企業も、2021年FS法に基づく改正に注意する必要がある。

(注6)共同執筆者の国名をあげる。これだけの国の弁護士が取り組んでいる背景にはこの問題は単に英国のみの問題でない点が明らかである。

英国、オーストラリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スウエーデン、ネザーランド、アラブ首長国連邦

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英国の金融ウォッチドッグFCAは何千もの誤解を招く広告をブロックならびに金融企業の顧客向け義務の高度化施策“Consumer Duty”を体系的に解説(その2完)

2023-02-24 09:14:43 | 消費者保護法制・法執行

〇「合理性」の概念は何か、そしてなぜそれが重要なのか?

 合理性の概念はConsumer Dutyに組み込まれている。この基準は、合理的な慎重な企業がどのように行動するかという不法な概念を反映しており、上記のように、消費者原則を含むConsumer Dutyのすべての要素の解釈に適用される。これは、企業が満たさなければならない客観的な行動基準であり、企業が自ら定義できるものではない。FCAは、コモンロー(注7)の下での既存の義務のために、企業がすでにこの原則に精通しているべきであるという期待を示している。

...企業にとっての主な影響は何か?

Consumer Dutyは、企業に幅広い影響を与えると予想される。

顧客の利益と成果に新たな焦点が当てられると、企業は必然的に、プロセスのあらゆる段階および組織構造のあらゆるレベルで消費者向け義務を検討するようになる。

上級管理職は、会社の事業分野全体で義務が確実に満たされるようにする責任があり、消費者義務の要件と基準を遵守しなかった場合に責任を問われる可能性がある。消費者義務の遵守を監督する具体的な責任は、上級管理職の責任声明に記載する必要がある。

適切な管理情報(management information :MI)は、顧客の成果の提供が適切に評価および監視されていることを証明するための鍵となる。MIは「目的に適合」し、消費者義務の要件を満たすために「合理的な措置」を取っていることを証明する際に上級管理職をサポートする必要がある。

企業は、特に製品やサービスを設計する際に、「そもそも正しく行う」アプローチを採用することが期待される。FCAはまた、企業が顧客のニーズを満たし、財務目標を追求するための意思決定を行うことができる立場に置くことにさらに重点を置くことを期待している。

企業は、自社の慣行とプロセスを継続的に監視、テスト、適応させて、期待される結果を提供していることを自社と規制当局の両方に納得させる必要がある。FCAは、企業が上記の結果に準拠していることを証明するために、情報とデータを提供することを期待する。

企業は、上級管理職によって監督される消費者義務について、スタッフに定期的なトレーニングを提供する必要がある。

企業の統治機関は、少なくとも毎年、消費者義務と一致する顧客に良い結果をもたらしているかどうかについての会社の評価をレビューし、承認する必要がある。

FCAは、消費者義務の実施が反復的であることを期待しており、企業と協力して、製品とサービスの実施とレビューに関する優れた取組み(good practice)を決定する。

このような背景から、FCAは、実施期間中に企業が取るべき行動に対するより明確な期待を示している。これには、FCAが企業が実装作業の計画、既存のオープンな製品とサービスのレビュー、および特定された問題を修正して消費者義務に完全に準拠していることを確認することを期待する時期の重要なマイルストーンが含まれる。

Consumer Duty実施期間中の企業の重要な日付と具体的期待

2022年10月:企業の取締役会(または同等の管理機関)は、実施計画に同意し、これらが新しい基準を満たすために成果物で堅牢であることを証明できる必要がある。企業は、実施計画、取締役会の書類、議事録を監督者と共有するよう求められることを期待する必要がある。

2023年4月:製品業者は、消費者義務に基づく義務を果たすために必要な情報を販売業者と共有する。

2023年7月:製品業者は、既存のオープンな製品およびサービスに加える必要がある可能性のある変更を特定し、必要な救済策を実施する。

現行の継続的な義務:(a)即時の消費者危害を引き起こす問題を解決する義務。(b)企業は、既存の要件および/または規則の違反を構成する可能性のある損害をFCAに報告する。(c)脆弱な消費者または市場供給全体に影響を与える方法で製品またはサービスへのアクセスを撤回または制限することを検討している状況でFCAに関与する義務。(d)企業は、実施期限までに消費者義務を遵守するために必要な作業を完了していないと思われる場合、FCAに通知する。

〇現在認可を申請している企業の立場は?

なお、FCAはすでに専用ウェブページを更新し、「企業や個人に対する権限の評価は将来を見据えたものである(つまり、企業や個人は、当社の規則やガイダンスを継続的に遵守できることを証明する必要がある)」という警告を挿入している。したがって、認可を申請する企業または個人(および許可の変更を申請する企業または個人)は、今後、それらに関連する消費者義務の要件を満たすことができることを証明する必要がある。

Ⅳ.FCAはリーズの未登録の暗号資産対応ATMオペレーターに対してアクションを実行

2月14日、 FCA のリリース文を以下、仮訳する。

Financial Conduct Authority (FCA) は、その権限を利用して、違法に運営されている仮想通貨対応 ATM (注8)をホストしている疑いのあるリーズ(注9)周辺のいくつかのATMサイトに立ち入り、検査した。

 

暗号資産対応ATM例 (The Guardianサイトから引用)

 FCA は、ウェスト ヨークシャー警察のデジタル・ インテリジェンスおよび調査ユニットとの共同作業の一環として、市内のいくつかのサイトから証拠を収集した。

 FCAの執行および市場監視担当エグゼクティブ・ディレクターであるマーク・スチュワード氏は、「英国で運営されている未登録の仮想通貨ATMは違法行為を行っている。

 我々は、英国で運営されている未登録の暗号ビジネスを引き続き特定し、違法ビジネスを混乱させている。

 英国で事業を展開する暗号資産ビジネスは、マネーロンダリング対策のために FCA に登録する必要がある。 ただし、暗号通貨製品自体は現在規制されておらずリスクが高いため、投資した場合はすべてのお金を失う覚悟が必要である。

 また、ウェスト・ ヨークシャー警察のフォース サイバー チームのリンジー ブラント巡査部長は、次のように述べている。

 「ウェスト・ヨークシャー全体で情報収集作業を行った後、すぐにいくつかのライブ暗号ATMの場所を確立した。オペレーターに機械の使用をやめて中止すること、および規則違反はマネーロンダリング規則に基づいて調査されることを要求する警告書が発行された。

  その後、調査結果を Financial Conduct Authority と共有した。FCA と協力して、ここウェスト・ ヨークシャーで全国初と思われる取り組みができることをうれしく思う」

 暗号資産対応 ATM は、顧客が資金を購入したり、現金を暗号資産に換金したりできるマシンである。

【読者への追加メモ】

1.FCAは定期的に、暗号アセットは規制されておらず、リスクが高いことを消費者に警告している。つまり、問題が発生した場合に人々が保護を受ける可能性はほとんどない。

2.FCAは、2017年のマネーロンダリング規則(The Money Laundering, Terrorist Financing and Transfer of Funds (Information on the Payer) Regulations 2017 )に基づく調査権限を使用してこれらの調査活動を実施した。

3.FCA は、FCA の許可なく営業していると疑われる企業のリストを公開している。

4.現在、暗号ATMの運営に登録されている英国の企業や個人はない。

5.FCAは以前に 警告 英国の暗号資産対応ATMのオペレーター事業者は、マシンをシャットダウンするか、強制措置に直面する。

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(注7) 普通法とも呼ばれ、エクイティ(衡平法)と対比される英米法系に属する判例法。英国において中世より国王裁判所(後にコモン・ロー裁判所)によって各地のゲルマンの慣習を基礎にして国内の共通の法として歴史的に集積されてきた法体系。(企業年金連合会の用語集から抜粋)

(注8) Crypto自動預け払い機( ATMs )は、ユーザーが暗号資産、 現金またはデビットカードと引き換えに売買できるスタンドアロン型の電子売店(electronic kiosks)である。すべての暗号資産対応ATMがビットコインの販売, 他の暗号通貨をも提供するものもある。一部のものは購入のみに限定されているため、すべての暗号資産対応ATMが暗号の販売を許可するわけではない。Crypto ATMは、従来のATMのように銀行口座に接続しない。むしろ、ユーザーの デジタルウォレット・ トランザクションを処理し、暗号を顧客に送信します。世界中に何万もの暗号ATMがあるが、その大半は米国にある。(investopediaから抜粋、仮訳)

主要国の暗号資産対応TM台数

 

(注9) リーズ (Leeds) は、イングランドの北部にある都市。行政上はウェスト・ヨークシャー州シティ・オブ・リーズに所属する。人口は78万9194人。

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米国連邦取引委員会(FTC)が健康製品に関する新しい拡大コンプライアンス・ガイダンスを発行

2023-01-11 10:34:40 | 消費者保護法制・法執行

 2022年12月20日、米国連邦取引委員会(以下、FTCという)は、以前の1998年のガイダンスである栄養補助食品:業界向け広告ガイド(全32頁)を改定および置き換える健康製品等コンプライアンス・ガイダンスの発行を発表した。

Libbie Canter氏

Laura Kim氏

 筆者の手元にCovington & Burling LLPの解説記事が届いた。筆者はLibbie Canter氏、Laura Kim氏他である。日頃、わが国の各種メディア、SNS、 チラシ等健康製品に関する広告があふれている一方で、わが国の広告規制は一体どうなっているかと疑うことが多い。

 FTCの対応は、時宜を得たものであり、取り急ぎ補足を加え、解説記事を仮訳して紹介するものである。

1.改定健康製品コンプライアンスガイダンスの意義

 FTCは、ガイドの基本的な内容はほとんど変更されていないと述べているが、このガイダンスは、以前のガイダンスの範囲につき栄養補助食品を超えて拡大し、食品、市販薬、デバイス、健康アプリ、診断テストなど、すべての健康関連製品に関する主張を広く含めている。今回改定されたガイダンスでは、1998年以降にFTCが提起した多数の法執行措置から引き出された「主要なコンプライアンス・ポイント」を強調し、①広告側の主張の解釈、②立証その他の広告問題などのトピックに関連する関連する例について具体的に説明している。

(1) 広告側の主張の特定と広告の意味の解釈

 改定されたガイダンスでは、まず、広告主の明示的主張と黙示的主張の違いを含め、主張の識別方法と解釈方法について説明する。改定ガイダンスでは、広告の言い回しとコンテキストが、製品が病気の治療に有益であることを暗示する可能性があることを強調しており、広告に病気への明示的な言及が含まれていない場合でも、広告主は有能で信頼できる科学的証拠で暗黙の主張を立証できる必要がある。

 さらに、改定されたガイダンスでは、広告主が適格な情報を開示することが予想される場合の例が示されている(商品が人口のごく一部をターゲットにしている場合や、潜在的に深刻なリスクが含まれている場合など)。

 欺瞞やだましを避けるために適格な情報が必要な場合、改定されたガイダンスには、その適格な情報の明確で目立つ開示を構成するものについての議論が含まれている。具体的には、改定ガイダンスでは、主張と同じ方法で開示を提供する必要があると述べている(つまり、主張が視覚的に行われる場合は、その開示が視覚的に行われる必要がある)。視覚的な主張は目立つ必要があり、①そのサイズ、②契約内容、③開示する場所、および④表示される時間の長さに基づいて、簡単に気づき、読み、理解する必要がある。また、可聴開示の場合は、聞き取りやすく理解しやすいように、音量、速度、リズムで行う必要がある。

 さらに、改定ガイダンスはソーシャルメディアでは、開示条件は「避けられない」べきであると述べているが、FTCはハイパーリンク(注1)を含まないことを明確にしている。対象となる情報には、製品に利点が「ある可能性がある」、または利益の達成に「役立つ」など、あいまいな修飾条件を含めるべきでないとしている。

(2) 製品等にかかる主張の立証の根拠

 次に、改定ガイダンスでは、製品と主張の種類、真実の主張の利点、立証を開発するコスト/実現可能性、虚偽の主張の結果、および分野の専門家が合理的であると信じる立証の量など、有能で信頼できる科学的証拠を構成するために必要な立証の量と種類を決定するために使用されるいくつかの要因を示している。

 改定ガイダンスでは、主張の証拠の裏付けの量、種類、または強さは正確でなければならないと述べている(たとえば、広告は、それが正確でない場合、科学者がコンセンサスに達したことを示唆してはならない)。

 改定ガイダンスは、ランダム化比較試験(randomized controlled trial:「RCT」)(注2)の使用を強調し、RCTは「最も信頼できる証拠の形式であり、一般的に専門家が健康上の利益の主張に必要とするタイプの立証である」ことを強調している。このガイダンスによると、有能で信頼できる科学的証拠の基準を満たすために特定の数のRCTは必要ない。研究の質は量よりも重要である。

 またガイダンスは、研究は統計的に有意な結果をもたらし、臨床的に意味のあるものでなければならないと述べている。さらに、事後分析の結果である統計的に有意な結果は、データマイニング(注3)または「p-hacking 」(注4)の疑いを引く可能性がある。一方、改定ガイダンスは、疫学または観察研究は限られた状況、すなわち(1)この分野の専門家がそれらを許容可能な代替物であると考える場合にのみ受け入れられることを示唆している。(2)RCTはそれ以外の方法では実行不可能である。同様に、動物および人工的に作られた環境の中(in vitro)研究、消費者の個々の経験に関する事例証拠、および公衆衛生上の推奨事項は、健康強調表示を立証するには不十分であると説明されている。

(3) その他の広告に関する問題

 最後に、改定ガイダンスでは、消費者の声や専門家の推薦代替医療に基づく主張FDA(アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration)承認に関する主張など、健康関連の広告における他の一般的な問題として説明している。

 公式承認ガイドを強化するために、改定ガイダンスは、劇的な結果を描写する広告は、「典型的ではない結果」と述べることによって治癒することはできないことを強調している。また、専門家の承認者は適切な資格を持っている必要がある。

 改定ガイダンスの例によると、専門家が免許を受けておらず、製品とクレームに関連する分野で実践していない場合、専門家は広告で医師と呼ばれるべきではない。改定ガイダンスは、伝統的な使用/ホメオパシー(注5)製品の立証基準に例外がないことを強調している。—伝統的な使用について主張することはできるが、これらの製品は有能で信頼できる科学的証拠で立証されなければならない。

 今回改定されたガイダンスは、ビジネスガイダンスとしてのみ役立つことを目的としており、法的な強制力または効力はない。

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(注1) ハイパーリンクとは、文書データなどの情報資源の中に埋め込まれた、他の情報資源に対する参照情報。また、そのような参照が設定された、文字や画像など文書内の要素のこと。単に「リンク」(link)と略して呼ぶことが多い。(IT用語辞典から抜粋)

(注2) ランダム化比較試験(RCT) randomized controlled trial:ある試験的操作(介入・治療など)を行うこと以外は公平になるように,対象の集団(特定の疾患患者など)を無作為に複数の群(介入群と対照群や,通常+新治療を行う群と通常の治療のみの群など)に分け,その試験的操作の影響・効果を測定し,明らかにするための比較研究をいう。群分けをランダムに行うのは,背景因子の偏り(交絡因子)をできるだけ小さくするためであるが,コンピュータで乱数を発生させ,割り付け表を使用する方法が適切だとされている。ただし、くじ引きやサイコロの使用,患者番号などでの割り付けは準ランダム化となってしまい,真の意味でのランダム化とはならない。(EBPT用語集から抜粋)

(注3) データマイニング (Data mining)とは、大量のデータを統計学や人工知能などの分析手法を駆使して、「知識」を見出すための技術である。データマイニングという言葉の示す通り、情報(データ)から有益なものを採掘(マイニング)できる。

 ITビジネスの分野では、近年「ビッグデータ」が注目を集めている。それに従い、ビッグデータを有効に活用するための手段として、データマイニングにも注目が集まっている。他にも(Customer Relationship Management、つまりは顧客との関係性を管理(CRM)で顧客情報を管理する際にも利用されている。

 データマイニングを行うことで得られる知識とは、どんなものか。情報を分類すると以下の4つに分けられる。

■データ(Data):整理されていない数値

■情報(Information):「データ」を整理・カテゴライズしたもの

■知識(Knowledge):「情報」から得られる傾向・知見

■知恵(Wisdom):「知識」を利用して人が判断する力

 これはDIKWモデルと呼ばれており、下に行くほど有用性の高いものと判断される。

 データマイニングで行えるのは「知識」を見出すところまでであって、実際にその「知識」に有用性があるのか、どう活用するのかは『人』の判断力にかかって来る。また、このデータの蓄積から分析を生かして課題を解決するのが、データサイエンスの領域になる。(ITトレンドの解説から抜粋)

(注4) 教育・経験・先入観など,何らかの影響を受けて偏ってしまうことを「バイアスがかかる」と言う。

そして,p-hackingはバイアスの1つである。

 具体的には,研究者が複数の統計解析を試し,有意な結果が得られたものを選択的に報告する行為を指す。

 加えて,研究者が複数のデータを吟味し,有意な結果が得られるものを選択的に採択する行為もp-hackingとされている。

(注5) ホメオパシー医療としても知られるホメオパシーは200年以上前にドイツで確立された医療体系で異なる2つの理論を基にしている。

 一つは「類似したものは類似したものを治す(同種の法則)」で、ある物質を健康な人に投与すると起こる症状に関して、その症状がある人にその物質を投与すると治るという考えである。

 もう一つは「超微量の法則」という考えで、薬剤が微量であるほど、その有効性が高くなるという考えである。多くのホメオパシー製品は、元の物質の分子が残らないほど非常に希釈されている。

 ホメオパシー製品には、植物(赤タマネギ、アルニカ[山岳地帯の薬草]、ツタウルシ、ベラドンナ、イラクサ)、鉱物(ヒ素など)、動物(蜂を丸ごと潰したものなど)がある。ホメオパシー製品は、砂糖玉にしたものを舌下に置いて服用する。他には、軟膏、ゲル、点滴、クリーム、タブレット錠などの形状がある。治療は人それぞれに「個別化」または最適化されている。同じ症状のある人たちが、異なる治療を受けることはよくある。(厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』解説から抜粋)

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https://www.investopedia.com/terms/m/materialinsiderinformation.asp

 

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米国FTCと7州によるGoogleとiHeartMediaが欺瞞的な推奨宣伝行為に関する罰金にかかる和解の同意命令案

2022-12-11 16:38:40 | 消費者保護法制・法執行

 2022年11月28日、連邦取引委員会(「FTC」)と7人の州司法長官は、GoogleのPixel 4スマートフォン(注1)を宣伝する欺瞞的な広告を放送したという訴えを解決するために、Google LLCおよびネットラジオiHeartMedia、Inc. (注2)と和解に達したと発表した。両社は、これらの申し立てを解決するために、7州に合計940万ドル(約17億7800万円)を支払うことに同意した。

 このFTCの和解同意の内容もさることながら、筆者はわが国の日頃テレビやラジオさらにはネット広告、チラシ広告を見るにつけ、もしわが国にFTCがあったならどうなるであろうかという疑問が当然湧いた。

 この問題はGoogle、iHeartMedia、Inc.ならびにTeami、LLCといった大手企業の問題だけにとどまらない極めて重大な問題を投げかけていることは間違いない。

 以下述べるとおり、わが国では影響度の高い有名人を使った広告、宣伝がほぼ100%日常的に行われ、他方でFTC法のような厳しい罰則を伴う法律や厳しい運用実態がないわが国ではどうなるのか。

 これに関し、わが国で誇大広告に関する法律と規制はどうなっているであろうか。例えば、後述する解説 (注3)を読むと、1)景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法), 2)薬機法(正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)、3)健康増進法があげられている、

 この問題に関し、筆者はこの3法の取締りの実態を調べてみた。例えば、インターネットにおいて健康食品等を読んだ。はたして、消費者庁サイトで見る限り裁判事例:課徴金納付命令事例は皆無である。

 このような日米の法執行の基本姿勢の大差をどう解決するのか。その意味で今回のブログの更なる研究を進めたいと考える。

  なお、このような行政罰による取締法の罰則適用の甘さはわが国固有の問題であり、さる2月10に可決・成立した「法人等による寄付の不当な勧誘の防止等に関する法律」の第6章 罰則(1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、またはこれを併科)規定が本当に十分に機能するのか、所管省庁である消費者庁の点も含め引き続き注視したい。(注4)

1.FTCと7州によるGoogleとiHeartMediaが欺瞞的な推奨宣伝行為に関する罰金にかかる和解の同意命令案

 FTCのリリース資料ならびにその内容を補完する“Radio Insight”記事をもとに重複を避けるべくまとめてみた。

(1)事実関係     FTCの訴状 (注5)によると、GoogleはiHeartMediaに260万ドル以上を支払い、iHeartMediaのラジオパーソナリティにiHeartMediaステーションでGoogleのPixel 4スマートフォンを宣伝する推奨文言を録音させた。FTCは、GoogleとiHeartMediaが、ラジオパーソナリティが電話を所有しているか、定期的に使用していると広告に虚偽の表現をすることにより、FTC法に違反していると主張した。

 GoogleはiHeartMediaに広告の台本(script)を提供し、「ナイトサイトモード」(注6)のおかげで、特に暗い場所では、私のお気に入りの電話カメラである」などの文言が含まれていた。また訴状は、GoogleがiHeartMediaと提携していない他のラジオパーソナリティに同様の主張をするために金銭を支払ったと主張した。

 FTC によると、Google は 2019 年に、10 の米国内主要市場で iHeartMedia と他の 11 のラジオ ネットワークを雇っ記録て、オンエアのパーソナリティに“Pixel 4”スマートフォンの推薦をおよび放送させた。Google は iHeartMedia に、Pixel 4 携帯電話の広告に関する次のセリフを含むスクリプトを提供した。「これは、夜景モードのおかげで、特に暗い場所での私のお気に入りの電話カメラである。スタジオのようなすべての写真を撮っている。また、一度に複数のタスクを処理できる新しい音声起動機能タイプである「 Google アシスタント」のおかげで、仕事を片付けるのにも役立つ」等と宣伝した。

 しかし、実際、オンエアのパーソナリティは、広告の大部分を記録して放送する前に、Pixel 4 が提供されなかったため、同スマートフォンを所有しておらず、定期的に使用してもいなかった。(Radio Insight記事から抜粋)

 Google は、インターネット関連のサービスと製品を専門とする多国籍テクノロジー企業である。テキサス州サンアントニオに本社を置く iHeartMedia は、米国最大のラジオ局所有者であり、850 以上の AM および FM ラジオ局と、毎月 2 億 4500 万人以上のリスナーに届くインターネット ラジオ ネットワークを所有している。

(2)FTCおよび7州の司法長官の法執行行為と和解案

 和解案はGoogleおよびiHeartMediaに対する同意命令(案)は、各企業が、エンドーサーが自社の製品やサービスを所有または使用した、またはエンドーサーの体験について虚偽の表明を行うことを禁じている。(FTCリリースから抜粋)

*FTC の請求を和解させるため提案された同意命令は、Google とiHeartMedia の違法とされる行為に対処することを目的としている。とりわけ、被告らは以下の行為が義務付けられた。

①推奨者が特定の製品を所有または使用したこと、またはその使用経験について、Google が虚偽の報告をすることを禁止する。

②iHeartMedia が、エンドーサーが消費者製品またはサービスを所有または使用したこと、またはそれらの経験について不当に伝えることを禁止する。

③Google と iHeartMedia に対し、注文を特定の人に配布のうえ、コンプライアンス・ レポートをFTCに提出し、FTC がコンプライアンスを確保できるように記録を保持することを要求する。

 これらの措置は、虚偽の証言、偽のレビュー、およびその他の欺瞞的な支持に取り組むための FTC の取り組みに基づいている。これには、否定的なレビューを抑圧するという過去の慣行について、オンライン・ファッション小売業者の Fashion Nova に異議を唱え、推奨、推奨ガイドの更新案に関するパブリック コメントの募集、マーケティング担当者およびプラットフォーム向けのオンライン・レビュー管理に関するビジネス・ガイダンスの発行等 700 人以上のマーケティング担当者に偽のレビューやその他の誤解を招く恐れがあることを通知することが含まれる。(Radio Insight記事から抜粋)

 今回の和解同意は、iHeartMediaの推奨文言と証言の分野での他のFTCの法執行措置に引き続いて行われた。FTCの法執行としては、たとえば、2022年2月、FTCは、” Teami、LLC”(注7)が欺瞞的な推奨を使用して販売および販売した製品を購入した消費者に93万ドル(約1億2200万円)以上を返還した。

 また、FTCは2020年3月にTeamiとその所有者に対して訴訟(注7)を起こし、強い影響力を持つインフルエンサーが製品を宣伝するために支払われたことを適切に開示せずに、著名なソーシャルメディアのインフルエンサーによる推奨のために金銭を支払ったと主張した。

 このような法執行措置に加えて、FTCは2021年10月に700社以上の企業に罰則違反の通知(注8)を配布し、承諾や証言に関する欺瞞的または不公正な行為に従事すると、各違反行為ごとに最大43,792ドルの民事罰が科せられる可能性があることを通知した。

 今回提案されたFTC同意命令は、行政管理上の苦情を発行し、提案された同意合意を受け入れるためのFTCの投票結果は、5-0 であった。FTC は、近日中に連邦官報に同意契約パッケージの説明を掲載する予定であり、連邦官報に掲載されてから30日間のパブリックコメント期間の対象となる。処理が完了すると、コメントは Regulations.gov に投稿される。

(3)関係機関の責任者の声明

 FTCの消費者保護局のサミュエル・レヴィン(Samuel Levine)局長は、

 Samuel Levine氏

 「GoogleとiHeartMediaはインフルエンサーにお金を払って使用したことのない製品を宣伝し、広告ルールの真実を露骨に軽視していることを示している。連邦取引委員会は、欺瞞的な広告を取り締まり、規則を破る企業が代償を払うようにするために、州内のパートナーと協力することをやめない」と述べた。

 また、マサチューセッツ州司法長官のモーラ・ヒーリー(Maura Healey)氏は

Maura Healey氏

 「人は直接の経験を重視するのが常識である。消費者は、ラジオ広告が製品について真実で透明性があり、偽の推奨で誤解を招くものではないことを期待している。本日の和解により、Google と iHeart はこの欺瞞的な広告キャンペーンの責任を負い、州法および連邦法を遵守することが保証される」と、述べている。

 カリフォルニア州司法長官府の職員は Radio Insight に対し、Google が罰金の矢面に立たされ、iHeartMedia が $400,000 を要求されるだろうと語った。

 Google は、インターネット関連のサービスと製品を専門とする多国籍テクノロジー企業である。テキサス州サンアントニオに本社を置く iHeartMedia は、米国最大のラジオ局所有者であり、850 以上の AM および FM ラジオ局と、毎月 2 億 4500 万人以上のリスナーに届くインターネット ラジオ ネットワークを所有している。

 FTCの行政訴状は、このような企業の不実表示が FTC 法に違反していると主張している。

 FTCは、アリゾナ州カリフォルニア州ジョージア州イリノイ州マサチューセッツ州ニューヨーク州、およびテキサス州の7司法長官事務所の支援に感謝すると述べた。

(FTCの注)FTCは、法律が違反されている、または違反されていると「信じる理由」があり、手続きが公益にかなうとFTCが思われる場合、行政不服申し立てを発行する。委員会が最終的に同意命令を出すと、それは将来の行動に関して法的効力を持つ。このような命令に違反するたびに、最大 46,517 ドル(約632万6000円)の民事罰が科される場合がある。

2.わが国の誇大広告に関する法律の規制対象と罰則規定と運用の実態

(1) 誇大広告に関する法律の規制対象と罰則規定の概要

弁護士 中村 望氏の解説を以下、一部抜粋する。

 誇大広告とは、それ自体は法律上の用語ではありませんが、商品やサービスの内容・価格などが、実際のものより優良または有利であると消費者に誤認させるような表現を用いる広告のことをいいます。また、法規制上認められていない効果効能や科学的根拠のない効果を謳う広告も誇大広告に該当します。

主な法律として、以下の3つが挙げられます。

①景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)

②薬機法(正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)

③健康増進法

不当景品類及び不当表示防止法(以下、「景品表示法」という。)は、不当な景品表示により、一般消費者の自由で合理的な選択を妨げる可能性のある行為を制限・禁止し、一般消費者の利益を保護することを目的として定められた法律です。景品表示法上での“表示”とは、顧客を誘引するための手段として行う広告や表示のことをいいます(同法第2条第4項)

景品表示法より禁止されている不当表示は、以下の3つの種類に大別されます。

①優良誤認表示

例えば、「運動や食事制限は一切なしで、簡単に3キロ痩せる」、「一週間飲み続けると誰でも身長が5センチ伸びる」など、科学的根拠もなく、商品を使用するだけで著しい効果が得られるような表現を使用した場合、優良誤認表示に該当する可能性が高いです。

②有利誤認表示

商品やサービスの優良誤認表示とは、商品やサービスの品質や内容が、著しく優良であるかのように誤認させるような表示や表現をいいます。販売価格や販売条件が、実際より有利であると誤認させるような表示や表現をいいます。

例えば、期間限定のキャッシュバックキャンペーンなどで、消費者に「今すぐに買わないと損だ」と思わせておきながら、記載された期間終了後も同じ条件のキャンペーンを継続する場合などは有利誤認表示に該当します。

③内閣総理大臣が指定するもの

工作物、有価証券など、特定の商品やサービスについては、紛らわしい表示や正しい判断を困難にさせる表示を内閣総理大臣が特に指定して禁止しています。

  景品表示法の規制対象は、商品やサービスを供給する事業者のみです。原則として、広告代理店、新聞社、出版社、放送局等は、商品・サービスの広告の制作等に関与していても、当該商品・サービスを供給している者でない限り、規制の対象とはなりません。(注9)

 近年、インターネットの普及に伴い、アフェリエイターやアフェリエイト・サービス・プロバイターに商品の広告を委ねる企業が増えていますが、アフェリエイターやアフェリエイト・サービス・プロバイターは、アフェリエイト・プログラムの対象となる商品を売る事業主ではないので、原則として、景品表示法の規制を受けることはありません。

【罰則】

 景品表示法に違反する不当な表示等の疑いがある場合、消費者庁と都道府県は、企業への事情聴取、関連資料の収集などの調査を行います。調査の結果、違反が認められた場合は、企業に対して、違反の対象となる内容の排除、再発防止策の実施等を求める措置命令を発令します。措置命令に従わない場合は、2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科が科せられます(同法第36条)。

 また、優良・有利誤認表示が認められた場合、課徴金納付命令の対象となり、政令で定める方法により算定した売上額に3%を乗じた額を課徴金として納付することを命じられる可能性があります(同法第8条)。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、「薬機法」という。)は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器の品質、有効性および安全性の確保を主な目的とした法律です。2014年の薬事法改正により、名称変更され、医薬品や医療機器等を取り巻く環境の変化や、再生医療の実用化に向けた動き等に対応した内容となりました。

 薬機法の規制対象は、本来は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品の5種類です。ただし、健康食品などの薬機法の規制対象外の商品でも、広告などで医薬品のような効能を謳う商品については、規制の対象となります。

 薬機法第66条には以下のように定められています。

 “何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。”

 「何人」も対象になるため、景品表示法とは違い、商品やサービスを供給する事業者だけではなく、広告代理店、新聞社、出版社、放送局、アフェリエイターなども対象となります。

【罰則】

 第66条に定められた虚偽又は誇大広告の禁止に違反した場合、2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはこれらの両方が科せられます。

 健康増進法では、健康保持・増進効果に関する虚偽・誇大広告が放置された場合、これを信じた国民が適切な診療機会を逸してしまうなど、重大な支障が生じるおそれがあることから、食品として販売されている商品の虚偽・誇大広告を規制しています。

健康増進法

 健康増進法の禁止対象となる誇大表示の典型例として、以下のような表現が挙げられます。

①特定の疾病の改善又は予防効果を目的とする表現

例:末期がんが治る、血糖値が気になる方向け、高血圧の方に最適など

②身体組織昨日の一時的増強・増進等を目的とする表現

例:免疫力の向上、疲労回復に効く、老化防止効果ありなど

③含有する食品または成分の量(内閣府令で定める事項の例)

例:ビタミンA〇〇mg配合、大豆〇〇g含有など含有する食品または成分の量については、虚偽の内容の場合のみ、規制対象となります。

【罰則】

 健康増進法には、国民の健康の保持増進及び国民に対する正確な情報の伝達に重大な影響を与えるおそれがある場合、その表示に関して必要な措置をとるべき旨の勧告、また勧告に従わなかった場合は命令が発令されることが定められています(同第66条)。

 さらに、命令に従わなかった場合は、6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金という罰則が適用されます(同法第71条)。

(2)規制法の運用実態

 消費者庁「景品表示法違反被疑事件の調査の手順」から抜粋する。

 わが国の法執行自体、法律に罰則規定があっても、その運用の実態を見ると消費者庁の解説を見る限り、いずれも「措置命令」であり「課徴金納付命令」に至っていない。

 このような法執行の実態はその他の法律、例えば個人情報保護法に違反に対する罰則の運用の例でも同様である。

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(注1) Pixel 4・Pixel 4aは、アメリカのGoogleによって開発された第4世代移動通信システム対応のSIMフリースマートフォンである。2019年10月に販売開始。

(注2) 米国のネットラジオ「iHeartRadio」は、登録ユーザー数が3000万人を突破したと発表した。iHeartRadioはネットラジオの分野では、最大規模のPandora Radioに次ぐ第二勢力。 運営するのは、全米最大のラジオ・ネットワーク「Clear Channel Communicarions (クリア・チャンネル・コミュニケーションズ)」。iHeartRadioは無料で1500局以上のラジオ局が聴けたり、カスタマイズ可能なアーティストラジオが生成できる、パーソナル聴き放題音楽サービスである。(All Digital Musicの解説から抜粋)

(注3) 投稿日:2021.03.13弁護士 中村 望氏「誇大広告に関する法律の規制対象と罰則規定を解説」を引用した。

(注4) 11月29日【法務大臣】の記者会見時の答弁

 大変重要な御指摘だと思いますけれども、法務大臣としての立場でお答えさせていただくしかないかなと思っています。まず私としては、寄附の不当な勧誘によって生じた被害を救済するという観点から、まずは国内において必要な措置を講じていくことが、大臣として重要であると考えています。

 御案内のように、現在、寄附の不当な勧誘による被害の救済を容易にするため、「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案」が既に閣議決定されているほか、寄附に関する新法が消費者庁において検討されています。

 法務省としては、それらの法律案中、当省の所管事項に関する事項について必要な協力をするなど、引き続き被害者の救済に向けた取組に万全を尽くしてまいりたい、我々ができることをしっかりやっていくということに尽きるだろうと思います。

  ただ、刑法上の問題のあるものにつきましては、捜査機関の活動内容に関わるということもあるので、法務大臣としてコメントは難しいかなというふうに思っています。(法務大臣閣議後記者会見の概要-令和4年11月29日(火)から一部抜粋)

(注5)(2) FTCの事件処理手続

 ア 審査手続

 FTCは、特定事件について審査を開始するときには、職員の中から審査官を指定し、これに審査を行わせる。審査官は、連邦取引委員会法第9条に基づく罰則付き命令(Subpoena)による書証提出命令、出頭命令等及び同法第20条に基づく民事審査請求(Civil Investigation Demand :CID)による文書提出命令、口頭供述命令等を行うことができる。

イ 同意命令

 FTCは、違反事件の審査の結果、法的措置を採ることが相当であると判断したときは、まず、関係人にFTCの申立てを記載した文書(Complaint)及び排除措置命令案(Orders to Cease and Desist)を送付し、これらの内容につき交渉し、合意に達した場合には、合意内容を踏まえた同意命令案を作成し、委員会の議決を経て、通常30日間のパブリック・コメントを行う。その後、再度委員会の議決を経て、同意命令(Consent Order)を発出する。

 また、下記ウの審判開始決定後であっても、同意命令の手続を行うことができる。審判開始決定後、被審人との間で同意された同意命令案が審判官を通じてFTCに付託される。この場合も、同案を官報に掲載し、一般からの意見を求めることとなる。FTCは、当該意見等を考慮して、再審査を行い、同意命令を発出する。

 同意命令は、審判手続を経た命令ではない。したがって、同一の事案について後に損害賠償請求訴訟が提起されても、同意命令による事実や違法性についての推定といった効果は発生しない。(公正取引委員会・各国・地域の競争法・米国から一部抜粋)

(注6) 【Android】ナイトモード(夜間モード)とは

 Android OSバージョン9.0以降が搭載されているスマホには「ナイトモード」とよばれる機能が付いていますが、この「ナイトモード」とは一体どんな機能なのでしょうか?

 Androidを「ナイトモード」に設定すると、スマホ画面の色が従来の青みがかった色調から赤みを帯びた暖色系の色調に調整され、ディスプレイに表示されます。

 また、同時にスマホ画面の明るさ(輝度)も制御してくれるため、夜間など、周囲が暗い中で急に明るいスマホ画面を見た時に感じる強烈な光から瞳を守ってくれる効果も期待できます。

 暗い場所でも画面が見やすい!目に優しい機能!

 夜間や明かりの消えた暗い部屋などでスマホ画面を操作する必要があるとき、「ナイトモード」に設定しておけば画面にフィルターがかかり、体内リズムを狂わせるブルーライトの光もやわらいで、瞳を守ってくれます。(APPTOPIの解説12/9⑫から抜粋)

(注7) 連邦取引委員会は、Teamiが欺瞞的な健康強調表示を使用して販売および販売したお茶製品を購入した消費者に93万ドル (約1億2600万円)以上を返還させた。

 FTCは2020年3月17日にTeami、LLC.とその所有者を訴え、同社が偽の健康強調表示を行い、被告の製品を宣伝するために支払われていることを適切に開示しなかった有名なソーシャルメディアインフルエンサーからの推奨文言に対し報酬を支払ったとするフロリダ州中央区連邦地方裁判所の永久差止命令及び金銭判決(Stipulated Order for Permanent Injunction and Monetary Judgment) (330.77 KB)を得た。

 Teamiは、信頼できる科学的証拠なしに、「Teami 30日間デトックスパック(Teami 30 Day Detox Pack)」が消費者の1)体重を減らすのに役立ち、他のお茶が2)癌と戦い、3)詰まった動脈を取り除き、4)片頭痛を減らし、5)インフルエンザを治療および予防し、5)風邪を治療すると主張したと判示された。

(注8) FTCの罰則違反の通知とは何か?

 FTCが不当または欺瞞的に行動した企業に対して罰則を受けることができる1つの方法は、FTC法のセクション5(m)(1)(B)、15 U.S.C. §45(m)(1)(B)にある罰則違反当局を介することである。この権限の下で、FTCは、(1)会社がFTC法に違反して行為が不公正または欺瞞的であることを知っていたこと、および(2)FTCがそのような行為が不公正または欺瞞的であるという書面による決定(以下を参照)をすでに発行していたことを証明した場合、民事罰を求めることができる。

 この権限を発動するために、FTCは企業に「罰則違反の通知」を送ることができる。この通知は、FTCが1つ以上の行政命令(同意命令を除く)でFTC法に違反して不公正または欺瞞的であると判断した特定の種類の行為をリストした文書である。 この通知を受け取ったにもかかわらず禁止された慣行に従事している企業は、違反ごとに最大46,517ドルの民事罰に直面する可能性がある。

 会社に通知が送られたからといって、FTCが法律に違反していると信じる理由があることを示すものではない。むしろ、FTCは、企業が法律を理解し、法律を破ることを思いとどまらせるために、これらの通知を送信する。(FTCのNotices of Penalty Offensesから抜粋、仮訳)

(注9)この点は米国FTC法と異なる規制方法といえるであろう。

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ネザーランズ消費者・市場庁(ACM)はアップルのアプリ配信サービス「アップ・ストア」での出会い系アプリに関し、プロバイダーを不当に制限しており500万ユーロ(約6億5800万円)の制裁金命令

2022-02-16 11:55:06 | 消費者保護法制・法執行

 

 2022.2.8のロイター通信、Bloomberg等は オランダ消費者・市場庁(ACM)は2月7日、米アップルのアプリ配信サービス「アップ・ストア(App Store)」で提供されている出会い系アプリに関して、アプリ・プロバイダーがアップル以外の決済手段を利用できないよう不当に制限しているとして、改めて500万ユーロ(約6億5800万円)の制裁金を科したと発表した。

 アップルに対するACM制裁金命令はこれで3度目であり、ACMは2022年1月15日を期限として是正措置を講じるよう指示したが、同社がその遵守を怠ったとして毎週500万ユーロの制裁金を科している。

 ところでこれだけの大きな問題であるにも拘わらず、筆者は本質的なアップルの違法性の内容が理解できなかった。そもそもアップルがアプリ・プロバイダーにデジタル・コンテンツ(「super likes 」や「boost」など)を販売させた場合とはいったい何を指すのか。筆者自身これまで出会い系アプリを利用したことがなく、そのビジネス自体がどのようなものかが理解できなかった。

https://apps.apple.com/jp/app/super-likes-hashtags-captions/id1403657541

https://apps.apple.com/jp/app/match-boost-for-tinder-see-who-alreadly-liked-you/id1131405194

 今回のブログは、(1)ACMのアップルに対する行政命令および(2)アップルの反論内容、(3)アップルのACMへの暫定差し止め命令要請に対するロッテルダム地方裁判所の予備救済裁判官の決定内容等、今般のACM命令の内容を詳しく整理したいと考え、まとめてみた。

 また、同時にわが国では詳しい解説が皆無ある(4)ネザーランズの裁判制度についても調べた範囲で最後にまとめた。機会をあらためて詳しく解説したい。

1.ACMの役割や任務

 ネザーランズ消費者・市場庁(Autoriteit Consument & Markt:ACM)は、市場が人々と企業にとってうまく機能することを保証することにより、健全な経済の実現に貢献している。市場がうまく機能すれば、企業は互いに公平に競争し、人々や企業は不公正な慣行によって害を受けることはない。 人々や企業は、どのような規則が適用され、どのように権利を行使できるかを知っている。

 ACMは、自由で規制された市場のための規則を施行し、それらの規則の遵守を促進することによって市場がうまく機能することを保証する。すなわち、誰もがこれらの規則を知り、権利を行使できるように情報とガイダンスを提供する。エネルギー、電気通信、輸送、および郵便市場を規制して、これらの市場での手頃な価格、品質、継続性、およびアクセス可能性を保護する。

 さらに、結果として市場がより良く機能すると信じる場合、規則や規制を改善するためにオランダの議会に助言を与える。(ACMのホームページから抜粋、仮訳した)

2.ACMのアップルの独占的権限濫用に対する行政改善命令

(1) ACMが2021年8月24日にAppleに課した定期的なペナルティ(毎週500万ユーロ)支払いの対象となる命令を発布

 アップルは、出会い系アプリ・ プロバイダー向けにネザーランズの App Store にアクセスするための条件を修正する必要がある。App Store では、出会い系アプリ・プロバイダーは アップルの支払いシステム以外の支払いシステムを使用する必要があり、さらに、出会い系アプリのプロバイダーは、アプリの外部で支払いシステムを参照する機能を持つ必要があるとする内容である。

 2021年8月24日の決定(命令)において、ACMはアップルに対し、出会い系アプリ・プロバイダーに適用されるApp Storeの法外な条件を修正するよう要求した。Appleが不合理な条件を変更しない場合、それはペナルティを支払う必要があリ、このように、ACMは、出会い系アプリ・プロバイダーに対するAppleの法外な条件を迅速に改善すべきと指摘した。

 このACM命令の執行は、アップルがロッテルダム地方裁判所に暫定的差し止め(Interim injunction) によりACMが決定を公表できないようにし、ペナルティ支払いの対象となる命令を暫定的に停止するために暫定的な差し止めを裁判所に申請したため、2022年1月15日まで遅れた。

(2)2021年12月24日のロッテルダム地方裁判所の決定

 本判決では、予備救済裁判官は、ACMがペナルティ支払いの対象となる命令に対するアップルの異議を判決し、6週間後まで、アップルに対してACMによって課される定期的なペナルティ支払いの命令を部分的に停止させた。さらに、その時点まで、ACMはペナルティ支払いの対象となる命令の中断部分に関する情報を提供しない場合がある。これに関連して、予備救済裁判官の決定は、部分的内容が公表されることとなった。

 本裁判は、アップルがアプリでデジタル・コンテンツ(「スーパーライプ」や「ブースト」など)を販売したい場合に出会い系アプリ・プロバイダに課す条件についてである。これらの条件には、消費者からの支払いが、アップルがiOSオペレーティングシステムに組み込んだ特定のソフトウェア(アプリ内課金:IAP API) (注1)を使用する出会い系アプリ・プロバイダーのいわゆるコミッション・エージェントとしてAppleに支払わなければならないものが含まれる。出会い系アプリのプロバイダーは、他の支払い決済方法を使用することはできないし、また自分のアプリで支払いの他の方法を参照することもできない。

 条件のこの部分に関して、予備救済裁判官は、アップルがこれらの条件を持つ出会い系アプリ・プロバイダーのためのアプリストア・サービスの市場で支配的な地位を濫用しているというACMの意見を支持した。アップル側が主張した圧倒的経済力の地位を持たないことやそれらの条件が必要であるという主張は支持されなかった。

 この判決は、AppleがApp Storeのオランダのストアフロントで提供する出会い系アプリを選択することを許可する必要があり、アプリ内で販売されるデジタル・コンテンツやサービスの支払いを処理した当事者と、それらの出会い系アプリ・プロバイダーがアプリ内で購入するためにアプリ外の支払いシステムを参照する可能性があることを選択できる。ACMの命令の一部が停止されているため、予備救済裁判官は、Appleが違反を時間内に終了しない場合に支払わなければならないペナルティ支払いの金額を減額した。また、休日に関連して、予備救済裁判官は、Appleがペナルティ支払いを没収することなく違反を終了するために2022年1月15日まで留保する権利を持つと判示した。

2.ACMの再度のペナルティ命令

 2022.2.14 ACM はリリース「アップルの新しいアプリの開発条件は、アップルが出会い系アプリ・プロバイダーに課す不必要で法外・不合理な条件である」を公表した。以下でその内容を概観する。

(1)ネザーランズの消費者・市場庁(Autoriteit Consument & Markt: ACM)は、アップルが出会い系アプリ・プロバイダーに課した改訂利用条件は法外な内容でありプロバイダーに不必要な障壁並びに消費者に負担を作り出していると結論付けた。

 すなわち、新しい改訂した利用条件は、出会い系アプリ・プロバイダーが代替支払いシステムを使用したい場合は、完全に新しいアプリを開発する必要があると規定している。アップルは、これらの新しい条件について事前にACMに通知している。しかし、アプリ・プロバイダーは既存のアプリを調整できない。ACMは、これがAppleが定めた要件と対立する法外な条件であると考え、そのようにアップルは依然ACMが指摘した要件を遵守していないという意見である。

 したがって、アップルはさらに500万ユーロをACMに支払う必要があるという結論である。アップルのこれまですべてのペナルティ支払いの合計は、現在2000万ユーロになっている。

(2)アップルの改訂した条件の何が問題か?

 改訂された条件では、Appleは別の支払い方法を使用したい出会い系アプリ・プロバイダ-にかなりの数の追加条件を課している。たとえば、出会い系アプリのプロバイダーは、新しいアプリを開発し、その新しいアプリを Apple App Store に提出する必要があるが、ACMはこの状態は出会い系アプリのプロバイダーを傷つけるという見解である。すなわち、代替支払いシステムを選択する出会い系アプリ・プロバイダーは、追加コストを負担することを余儀なくされ、また、同時に現在アプリを使用している消費者は、別の支払い方法を使用する前に、新しいアプリに切り替える必要がある。

 また、このような変更について消費者に適切に通知するには、アプリ・プロバイダーに多くの時間と労力負担をかける。たとえば、コンシューマーは古いアプリを削除し、新しいアプリをインストールする必要があり、さらに、ACMは、Appleが出会い系アプリ・プロバイダに課した改訂された条件の他のいくつかの要素についてなお疑問を持っている。

3.ネザーランズの裁判制度

 政府サイトの解説があるが、ラッシャ法律事務所  (Lassche Advocaten)の解説(court-system-netherlands)がより分かりやすかったので抜粋し、仮訳する。なお、今回、調べてみたがrechtspraak.nlサイトの解説は素晴らしい内容である。ただし、オランダ語が堪能でないと読みこなせない。したがって、筆者はニュースとマガジンの申込のみ行ったが、いずれ機会をみて本格的に解析してみたい。

 ネザーランズの民事裁判所と刑事裁判所の組織は、3つのステップでの司法行政に基づいている。事件は最初に下級裁判所によって審理される。当事者がその判決に同意しない場合、彼はその問題を高等裁判所に付託することができる。これは、高等裁判所への控訴と呼ばれる。その後、特定の状況では、紛争を最高裁判所である「最高裁判所」に付託することが可能である。これは最高裁上告(appealing in cassation)として知られている。

(1)地方裁判所(Rechtbank

 ネザーランドは10の裁判区に分かれており、それぞれに独自の地方裁判所がある。アムステルダム(Amsterdam)、北ホラント(Noord-Holland)、デンハーグ(Den Haag)、ミッドデンオランダ(Midden-Nederland)、ロッテルダム(Rotterdam)、ゼーランド西ブラバント(Zeeland-West Brabant)、オーストブラバント(Oost-Brabant)、リンブルフ(Limburg)、オーストオランダ(Oost-Nederland)、ノールトオランダ(Noord-Nederland)である。各裁判所には、いくつかの準裁判区(subdistrict sector)があり、地方裁判所は最大5つのセクターで構成されている。これらには、常に行政部門、民間部門、刑事部門、および準裁判区部門が含まれる。家族事件と少年事件は、外国人に関する法律の施行の場合のように、しばしば別々の部門に入れられる。裁判所評議会(court council)はそのような問題を自由に決定することができる。

(2)セクターごとの裁判制度

サブ/ディストリクト(セクター・カントン:Subdistrict (Sector Kanton))

 一般市民が地方自治体で自分たちの事件を審理するのは比較的簡単である。これは、彼らが彼ら自身の訴訟を議論する権利を持っており、法廷で彼らを代表するために弁護士を必要としないことを意味する。民法の観点から、副地区裁判官(Kantonrechter)(注2)は、家賃、雇用の購入、雇用を含むすべての事件を扱う。また彼は25,000ユーロ(約328万円)未満の金額を含むすべての紛争に対処する。

 刑法では、地区裁判官は軽微な犯罪のみを扱い、重大な犯罪は扱いません。多くの場合、これらは警察または検察官が和解を提案した場合です。被告人がそのような提案を受け入れることを拒否した場合、その事件は地方裁判官の前に出されます。副地区裁判官は通常、開廷の直後に口頭での判決を行う。

(3)刑法

 刑法部門の裁判官は、地方裁判官の対象とならないすべての刑事事件を扱う。これらの事件は、単一の裁判官の部門または3人の裁判官がいる合議体(full court)で聞くことができる。合議体部門では、より複雑な事件と、検察が1年以上の懲役を要求するすべての事件を扱う。

(4)民事法/家族法

 民間部門は地方裁判官に特別に割り当てられていない事件を処理する。これらの事件のほとんどは1人の裁判官によって決定されるが、ここでもより複雑な事件に対処するために3人の裁判官による合議体部門がある。多くの地方裁判所は、そのような事件の数がかなり多い場合、家族事件と少年事件のために別々の部門を持っている。

 時として非常に短い通知文で中間判決(interlocutory judgment)を得る必要がある場合がある。これらの手続きは「略式手続き(summary proceedings)」と呼ばれる。略式手続きは通常、裁判所の長官またはその代理人を裁判官として、単一の裁判官で審理される。

(5)行政法

 ほんの一握りの例外を除いて、行政紛争は地方裁判所によって審理される。多くの場合、行政法部門による審理の前に、行政当局の支援の下で異議申し立て手続きが行われる。これらの事件は単一の裁判官の部門によって審理されるのが普通であるが、ここでも地方裁判所は、複雑な事件または根本的な問題を含む事件に3人の裁判官を任命することを決定できる。問題の地方裁判所に外国人に関する法律に準拠する事件を処理するための別個の部門がない場合、そのような事件は行政法部門またはその部門によって処理される。公務員や社会保障の問題が関係する場合、当該上訴は特別控訴裁判所である「中央控訴裁判所(Centrale Raad van Beroep)」の問題となる。

(6) 控訴裁判所(Gerechtshof

 10の裁判区は、ハーグ、アムステルダム、アーネム-ロイワーデン、デンボッシュの4つの控訴裁判所管轄区域に分けられる。刑法および民法に関して、控訴裁判所の裁判官は、地方裁判所によって可決された判決に対して控訴が提出された場合にのみ対処する。控訴裁判所は、事件の事実を再検討し、独自の結論に達する。ほとんどの場合、オランダ最高裁判所に上告することにより、控訴裁判所の決定に異議を申し立てることができる。刑事および民事訴訟に加えて、控訴裁判所は、行政裁判所としての立場で、税務査定に対するすべての控訴も扱う。

(7) 特別行政裁判所

「中央控訴裁判所(Central Appeals Tribunal(Centrale Raad van Beroep)」は、主に社会保障と公務員に関連する法律分野で活動している上訴委員会である。これらの分野では、それは最高の司法当局であり、同裁判所はユトレヒトを拠点とする。

「貿易産業控訴裁判所(College van Beroep voor het Bedrijfsleven)」は、社会経済行政法の分野での紛争を裁定する特別行政裁判所である。さらに、この上訴裁判所は、競争法や電気通信法などの特定の法律に対する上訴についても裁定する。同裁判所はハーグを拠点としている。

(8 )最高裁判所(Hoge Raad; 裁判官

Mr. dr. G. Dineke de Groot (ディネケ・デ・グロート)最高裁判所長官

 ハーグにあるネザーランズ最高裁判所は、下級裁判所が判決を下す際に法律の適切な適用を認めたかどうかを審理する。この段階で、下級裁判所によって立証された事件の事実は、もはや議論の対象ではない。したがって、最高裁判所での訴えは、法の統一を促進する上で重要な機能を果たす。

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(注1) アプリ内課金(IAP)の実装についてamazon appstoreの解説を抜粋、引用する。「このページでは、これまでAmazon Appstore SDKを使用したことがない開発者の方、またはIAP APIを実装した経験がない開発者の方を対象に、IDEのセットアップ方法やIAPにおいて推奨される開発・テスト・申請のワークフローについて説明します。

最初はサンプルを使用した方がわかりやすいため、ここでは新規プロジェクトを一から作成せず、IAPサンプルアプリをIDEにインポートする方法を説明します。IAP APIの実装方法については、アプリ内課金(IAP)APIを組み込む方法を参照してください」以下、略す。

(注2) 副地区裁判所

 Pro bono lawyerプロボノ(Pro bono:各分野の専門家が、職業上持っている知識やスキルを無償提供して社会貢献するボランティア活動の弁護士ネットワーク)の解説から抜粋、仮訳する。

(1)副地区裁判所判事とは何か?

 ネザーランズには民事法があり、これは「民法」や「私法」ともいう。市民の権利と義務を規制する。たとえば、雇用法でいうと、雇用主は単に従業員を解雇することはできない。それには解雇につき一定のルールがある。副地裁判事は、特定の事項を支配する裁判官である。

(2)民事法の副地区裁判所

 民事法には裁判官が2人いる。すなわち副地区方裁判所判事と民事裁判所判事である。その違いは、各裁判官が処理するケースの種類であり、民事裁判所と控訴裁判所では、弁護士と関わる義務がある。しかし、副地方裁判所の場合ではその義務はない。つまり、あなたは弁護士なしで訴訟することができる。これは、あなたの法的問題を自分で副地方裁判所に訴えることができることを意味する。

(3)副区方裁判所の取り扱う事案例:副地区裁判所判事は何をするのか?

 副地区裁判所はどのようなケースを扱うか?あなたはいつ副地区裁判所に行くことができるか?副地区裁判所は次の処理を行う。

  • 25,000ユーロ(約77万円)以下の請求事件
  • 即時解雇(summary dismissal)等雇用に関する事件
  • レンタルにかかる事件
  • 消費者販売事件
  • 重要な消費者信用事件
  • 管理にかかる事件
  • 指導にかかる事案(Mentorship)
  • 破産事件(Receivership)
  • 相続/事業承継の受け入れや拒否事件

 これらは、副地区裁判所判事の能力と呼ばれている。たとえば、最大 25,000 ユーロの値を持つ事件では、損害が25,000ユーロ以下である人身傷害のケースも含まれる。民事裁判所は、離婚のような個人および家族の法律のケースのほとんどを行う。しかし、副地区裁判所は、これらの主題は個人法と家族法の範囲に該当するが管理、指導または後見に関するケースを扱う。

(4)副地区方裁判所が扱う刑法事案

 また、副地区裁判所は刑法の役割も持っている。例えば、副地区裁判所は、違反、密猟の犯罪、交通違反の控訴(複数の訴訟の控訴手続き)に関する規則を定めている(モルダー事件控訴手続き)。

(5) どのように副地区裁判所にあなたの事件を提出するか?

 裁判所手続には、請願手続き(petition)と召喚手続き(summon)の2種類がある。ただし、これら2つの手順のいずれかを開始する前に、相手方に手紙を書くと便利である。 したがって、5,000ユーロの支払いについて誰かと対立する場合は、最初に相手に相手が支払わなければならないことを書いてください(たとえば)。 常に支払い期間を与えてください! 相手方が期間内に支払いをしない場合、あなたは法廷に行くことができる。 このように、手順が誰かの屋根に生で落ちることはありません。 そして多分あなたはそれを一緒に理解するであろう。 その後において訴訟は必要ない。

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ACCCは、連邦裁判所に個人データの拡大された使用についてGoogleが適正な消費者の同意を得ずにまた誤解を招くなど消費者を騙したと告訴

2020-08-06 17:34:58 | 消費者保護法制・法執行

 筆者が6月25日のブログ(第4項)で取り上げたACCCのGoogle LLC(本社)およびGoogle Australia Pty Ltd (筆者注1)(全体として以下「Google」という)に対して2019年10月29日にNSW連邦裁判所に訴訟を起こし、Googleが収集、保持、使用する個人の位置情報について、誤解を招く行為を行ったこと、および消費者に対し虚偽または誤解を招く表現をしたと主張した。

 今回、ACCCは同裁判所に対し、第2弾としてGoogleのビジネス活動につき新たな違法性問題を取り上げ、告訴した。すなわちACCCは、Google LLC(Google)に対する連邦裁判所への訴訟手続きを開始し、Googleがオーストラリアの消費者を騙して、ターゲット広告を含む消費者のインターネット・アクティビティについて情報収集および統合できる個人情報の範囲を拡大することについて同意を得るべきであるとリリースで主張した。

 なお、前述のブログで詳しく解説したとおり、ACCCのリリースの巻末に簡潔な裁判声明である“Concise Statement(ACCC v Google LLC _Concise statement ( PDF 1.48 MB )”がリンクされており、そのStatement の冒頭のキー情報「File Number: NSD816/2020」にもとづき連邦裁判所のデータベースにアクセスが可能となる。

 実は、7月27日、ACCCのリリースの巻末では「ACCC注書き:通常、ACCCが裁判所に提出する簡潔な陳述書(concise statement)は、Googleによる異議申し立てが行われるまで秘密裏に提出されたため、ここでは、添付しない」とあったが、7月末に“concise statement”を復活させた。

 また、最近時ACCCはリリース文を以下の点で修正している。「修正:このメディアリリースの以前のバージョンでは、Googleがユーザーの健康に関する情報を使用して広告をパーソナライズまたはターゲティングすることを示唆する架空の例を使用していた。 Googleは健康情報に基づいてパーソナライズされた広告を表示しないと反論したため、 この例は、ACCCメディア・リリースから削除した」

 今回のブログは、ACCCのリリース文の仮訳および補足説明を中心にとりまとめる。

1.ACCCはGoogle LLC(Google)に対する連邦裁判所への訴訟手続きを開始

  ACCCは、Googleがオーストラリアの消費者を騙して、ターゲット広告を含む消費者のインターネット・アクティビティについて収集および統合できる個人情報の範囲を拡大することについて同意を得るべきと主張した。その理由は以下の点である。

(1) googleは消費者の明示的なインフォームド・コンセントを得ていないという問題

 ACCCはGoogleが消費者に適切に通知しなかったことにより消費者を誤解させ、すなわち2016年6月に消費者のGoogleアカウントの個人情報と、Google技術(以前はDoubleClick技術)を使用して広告を表示するGoogle以外のサイトでの個人の活動に関する情報を組み合わせを始める動きについて、消費者の明示的なインフォームド・コンセントを得ていなかったと主張した。

 これは、ユーザーのGoogle以外のオンラインアクティビティに関するこの種のデータが、Googleが保持するユーザー・アカウントの名前やその他の識別情報にリンクされることを意味する。2016年6月以前は、この情報はユーザーのGoogleアカウントとは別に保持されていたため、データは個々のユーザーにリンクされていなかった。 

 2016年6月以降、Googleはこの新たに結合された情報を使用して、広告ビジネスの商業的パフォーマンスを見直し、改善した。

(2)ACCCはGoogleがプライバシー・ポリシーの関連する変更の説明を正しく行わず消費者を騙した問題

ACCCのロッド・シムズ(Rod Sims)委員長は、以下のように述べた。

 「Googleはオーストラリアの消費者に対し、Googleに接続されていないWebサイトでのインターネット活動を含め、大量の個人情報をどうするつもりだったかを誤解させたと考えたため、ACCCはこのような告訴措置をとった。

 Googleは、個人を特定できる形で消費者について収集した情報の範囲を大幅に拡大した。これには、サードパーティのウェブサイトでの彼らの活動に関する潜在的に非常に機密でかつプライベートな情報が含まれていた。その後、この情報を使用して、消費者の明確なインフォームド・コンセントを得ずに、ターゲットを絞った広告(targeted advertisements)を提供した。

 ACCCは「Googleはこのステップを踏むために消費者から明確な同意を得ていなかった」と主張している。

 この新たに組み合わされた情報を使用することで、Googleは自社の広告製品の価値を大幅に高めることができ、そこからはるかに高い利益を生み出した。

 同時に、シムズ委員長は「ACCCは、消費者がデータを使用してGoogleのサービスに効果的に支払うと考えているため、Googleによって導入されたこの変更により、消費者の知らないうちにサードパーティにとってGoogleのサービスの「価格」が上昇した」と述べた。

(a)「わたしは同意する」(I agree)ポップアップ通知の問題

 この同意行為は、Googleアカウントを持つ数百万のオーストラリア人に影響を与えたとされている。

 少なくとも2016年6月28日から2018年12月までの間、Googleアカウントの所有者は、Googleからのポップアップ通知(筆者注2)に「同意する」をクリックするように求められた。この「通知」は、本来データを組み合わせる方法を説明することを目的としており、googleは誤解を招くかたちでこれについて消費者の同意を求めた。したがってこの同意は消費者の錯誤または正確に理解していない結果に基づくもので有効な同意とは言えない。

(b)Googleアカウントのいくつかの新機能

 Googleはユーザー・アカウントにいくつかのオプション機能を導入した。これにより、Googleが収集するデータとその使用方法をより詳細に制御できると同時に、Googleがより関連性の高い広告を表示できるようになった。

 その消費者向け通知には、「Googleアカウントで詳細情報が表示され、確認や管理が容易になる」かつ「Googleはこの情報を使用して、Web上の広告をよりユーザーの関連性の高いものに絞る」と記載されている。

 2016年6月以前は、Googleは、広告目的で、Google検索やYouTubeなどのGoogleが所有するサービスやアプリでのGoogleアカウントユーザーのアクティビティに関する個人を特定できる情報のみを収集、使用していた。

(c)20166月以降のアカウント情報の提供範囲の変更

 消費者が「同意する」の通知をクリックすると、Googleは、Googleが所有していないサードパーティのサイトやアプリの使用を含む、Googleアカウント所有者のオンライン活動に関する個人を特定できるはるかに幅広い情報の収集と保存を開始した。

 2016年6月以前は、この追加データはユーザーのGoogleアカウントとは別に保存されていた。

 これは、Googleアカウントに保存されている個人データと組み合わせて、GoogleアドマネージャーブランドやGoogleマーケティングプラットフォームブランドを通じてなど、さらにターゲットを絞った広告を販売するための貴重な情報を提供した。

 ACCCは、このGoogleの「同意する」通知は誤解を招くものであると主張している。これは、消費者がGoogleが行った変更やデータの使用方法を適切に理解できなかったため、インフォームド・コンセントを提供していなかったためであると判断した。

 シムズ委員長は「多くの消費者は、情報に基づいた選択を与えられれば、Google自身の金銭的利益のためにこのような幅広い個人情報を組み合わせて使用するGoogleの許可を拒否した可能性があると考えている」と、述べた。

(3) Googleのプライバシー・ポリシーの変更問題

 2016年6月28日より以前は、Googleはプライバシー・ポリシーで「データ主体のオプトインの同意がない限り、「DoubleClickのCookie情報」と「個人を特定できる情報」を組み合わせはしない」と述べていた。

2016年6月28日、Googleはこのプライバシー・ポリシー文言を削除し、次の声明文言を挿入した。「[d]お客様のアカウント設定により、Googleのサービスと配信される広告を改善するために、Googleが提供する他のサイトやアプリでのアクティビティが個人情報に関連付けられる場合があります」

 以下で示すとおり、改正前のGoogleのプライバシー・ポリシーには、「[w] eは、お客様の明示的な同意なしに、このプライバシー・ポリシーに基づくあなたの権利を低下させることはありません。」と明記していた。

 ACCCは、Googleのプライバシー・ポリシーに対するこの変更について、Googleが実際に消費者の明示的な同意を得ていなかったため、明示的な同意なしに消費者の権利を低下させないというGoogleの声明は誤解を招くものであったと主張している。

 シムズ委員長は「Googleは、ユーザーのプライバシーを保護する方法について明確に説明した。 しかし、ACCCは、個人情報の保護方法を変更する前に、Googleが消費者に約束した明確な同意を得ずに変更を加えたと主張している」と述べた。

(4)Googleのダブルクリック・サービスの買収問題

 2008年、Googleはパブリッシャーと広告主への広告配信テクノロジーサービスのサプライヤーであるDoubleClickを買収した。

 Googleは現在、アドテック仲介サービスの主要サプライヤーである「Googleアドマネージャーブランド」「Googleマーケティングプラットフォームブランド」を通じてDoubleClickのサービスを提供している。

 これらのサービスは、DoubleClickの広告技術を使用して広告を表示するサードパーティ・サイトでのユーザーのインターネット・アクティビティを追跡する。

 GoogleによるDoubleClickの買収には、米国連邦取引委員会(FTC) (筆者注3)や欧州委員会(European Commission) (筆者注4)などの反トラスト監督当局による承認が必要であった。 また、ACCCは、この買収トランザクションを確認して承認し、クリアした。

 FTCと欧州委員会はGoogleの買収を承認させた。その際、Googleからの提出資料を検討した結果、消費者のインターネット活動に関するDoubleClickのデータと、Googleサービスに関する消費者の活動に関する独自のデータを組み合わせることができなくなった。そのユーザーはGoogleがそうすることを妨げたのである。

 しかし、これら政府機関は買収を承認する際にこれらの提出書類に依存していなかった。

 2016年6月28日より前は、Googleはプライバシー・ポリシーに記載されているように、個人を特定できない形でこの情報を収集して保存していた。

 一方、2016年6月28日に、このDoubleClickデータの扱い方を説明する用語を削除することにより、プライバシー・ポリシーを変更したのである。

(a)プライバシー・ポリシーの変更の影響分析:-架空の例

 メアリーはGoogleアカウントを持っている。彼女はGoogleアカウントにログインしている間、デスクトップ・コンピューターとモバイル・デバイスの両方でインターネットを定期的に使用している。

 2016年6月28日以前では、メアリーがデスクトップ・コンピューターのWebブラウザーを使用して、Google以外のWebサイト(ニュースやショッピングサイトなどのDoubleClickテクノロジーを使用するWebサイトを含む)にアクセスしたり、健康問題を調査したりした場合、Googleはこれらのアクティビティに関するデータをメアリーのGoogleアカウントでは保存できなかった。

 同様に、メアリーがモバイル・デバイスでGoogle以外のアプリ(フィットネス・アプリなど)を使用した場合、Googleはこのアクティビティに関するデータをGoogleアカウントに保存できなかった。

 つまり、Googleはこれらのアクティビティに関する情報を収集した可能性があるが、これらの情報はユーザーのGoogleアカウントとは別に保存されていた。

 一方、2016年6月28日以降、メアリーが上記の通知で[同意する]をクリックした場合、GoogleはメアリーのGoogle以外のWebサイトおよびGoogle / DoubleClickテクノロジーを使用したアプリでのメアリーのアクティビティに関する情報をGoogleアカウントに保存し始めた。

 たとえば、メアリーがデスクトップ・コンピュータで個人の健康問題を調査していて、Googleテクノロジーを使用して広告を表示する健康ウェブサイトにアクセスした場合、GoogleはメアリーのGoogleアカウントでこのアクティビティに関するデータを保存しているはずである。

 同様に、メアリーがGoogleテクノロジーを使用してモバイルデバイスでフィットネスアプリを使用して広告を表示した場合、GoogleはメアリーのGoogleアカウントでこのアクティビティに関するデータを保存していた。

 Googleは、消費者のGoogleアカウントに保存されているすべての情報を使用して、ターゲットを絞った広告を表示するようになった。

(b)Googleの通知の画面表示

 消費者が使用しているデバイスとGoogleサービスに応じて、2016年6月28日からGoogleが発行した通知はさまざまな方法で提示された。参考のために、デスクトップ・デバイスを使用して消費者に発行された形式のGoogleの通知のコピーを以下に示す。

出典:Google Australia Pty LtdからACCCに提供されたもの

2016年6月28日に行われたGoogleのプライバシー・ポリシーに関連する変更も参考のために以下に示す。

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(筆者注1) Melanie Silva氏( Managing Director of Google Australia and New Zealand)

(筆者注2) ポップアップ通知はスパムのようなブロックが可能である。その解説例を挙げておく。「Google Chrome完全ガイド:スパムのようなWebの通知をブロックする設定方法」

(筆者注3) 2007.12.20 FTCリリース「Federal Trade Commission Closes Google/DoubleClick Investigation」仮訳する。

提案されたGoogleのDoubleClick買収は実質的に競争を減らす(独占的である)可能性は低い。

連邦取引委員会は本日、Google Inc.が提案したインターネット広告サーバーDoubleClick Inc.の31億ドルの買収を阻止するつもりはないと発表した。Googleの取引に関する8か月の調査を終了し、4-1の投票で、本委員会は以下のように結論付けた。「証拠を慎重に検討した結果、Googleが提案したDoubleClickの買収によって競争が大幅に減少する可能性は低いと結論付けた」というのが多数意見である。

 利害関係者は提案されたGoogleの買収が消費者のプライバシーに与える影響について懸念を表明したが、本委員会はそのような問題は「GoogleとDoubleClickに固有のものではなく」、「オンライン広告市場全体に及ぶ」ことに気付いた。

さらに本委員会は、「合併と買収の連邦反トラスト法の見直しの唯一の目的は、競争に悪影響を与える取引を特定して是正することであるため」、FTCは、この取引を理由として取引をブロックする、またはこの取引の条件を要求する法的権限を欠いていると述べた独占禁止法とは関係がない。しかし、本委員会は消費者のプライバシー問題を非常に真剣に受け止めていることを付け加えて、本日発表した一連の提案された行動マーケティング原則の発表を相互参照した。

なお、FTCサイトではこの買収問題に関する資料がリンク可である。

(筆者注4) 2008.3.11 欧州委員会リリース「Mergers: Commission clears proposed acquisition of DoubleClick by Google」仮訳する。

合併:欧州委員会、GoogleによるDoubleClickの買収案を承認

欧州委員会は、「EU合併規則(Council Regulation (EC) No 139/2004 of 20 January 2004 on the control of concentrations between undertakings (the EC Merger Regulation))」に基づいて、オンライン広告テクノロジー企業DoubleClick by Googleの買収を米国で承認した。 2007年11月に開始した本委員会の詳細な調査(IP / 07/1688 を参照)は、買収取引が広告配信またはオンライン広告市場での仲介において、消費者に悪影響を与える可能性は低いと結論付けた。 したがって本委員会は、この取引が欧州経済領域(EEA)またはその重要な部分内での効果的な競争を著しく妨げることはないと結論付けた。

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米国連邦最高裁判所が1991年電話消費者保護法(TCPA)のロボ・コール禁止に係る憲法修正第一をめぐるバー連邦司法長官対アメリカン政治コンサルタント協会事件の判決

2020-07-10 15:49:48 | 消費者保護法制・法執行

 7月8日、筆者の手元にこれまでも紹介してきた米国連邦最高裁判所の判例解説サイト「SCOTUS」から7月6日付け判決「ロボ・コール禁止に係る憲法修正第一をめぐるバー連邦司法長官対アメリカン政治コンサルタント協会事件」の解説レポート が届いた。

 そのまま引用してもよかったが、今回は各種解説の中からあえて米国ロー・ファームの解説で比較的詳しいものとして「Womble Bond Dickinson (US) LLP (筆者注1)のレポートを引用、仮訳する。

 なお、本ブログの執筆に関して調べている間に米国人権擁護NPO団体である“EPIC”の解説記事にあたった。ななめ読みしたが、内容的にはEPICのレポートだけあって法的レポートとしては完成度が高い。またEPICは3月2日、第4巡回区控訴裁所判決について最高裁判所が上訴を受理したので裁判記録を移送しなさいと下位裁判所に命令する移送命令(writ of certiorari)に対するEPICの法廷助言者(事件の当事者ではない第三者)の意見陳述(Amicus Brief)(筆者注1-2)を提出している。

また、EPICは本裁判TCPA に関する詳しい解説記事を公表している。

 本判決につき関心がある向きは、この両者を精読されたい。

1. Womble Bond Dickinson (US) LLPのレポート「Supreme Court Strikes Down Government-Backed Debt Exception; TCPA Stands」の概要

 以下で主要部を抜粋、仮訳した(著者はデビッド・カーター(David Carter)、アーテイン・ベェテラ(Artin Betpera)、アーネスト・メンディータ(Ernesto Mendieta)の3氏。

David Carter氏

Artin Betpera氏

Ernesto Mendieta氏

 しかし、判決の正確性を期すうえで前記「SCOTUS Blog」などで確認せざるを得ない点、わが国の契約法では一般的でない米国契約法の法理等が出てくるため、筆者の責任で該当条文も含め適宜補足、解説を加えた。

【本文】

 7月6日、連邦最高裁判所は「バー連邦司法長官対アメリカン政治コンサルタント協会事件」の判決を下した。この裁判は我々が知っているように政治コンサルタント団体が自動ダイヤル通話の全面的な禁止を定める「1991年電話消費者保護法(Telephone Consumer Protection Act of 1991:47 U.S.C. § 227  (以下「TCPA」という) (筆者注2)自体を合衆国憲法修正第一にもとづき違憲として、その機能を終わらせようとしたものである。連邦最高裁判所は、政府の債務取り立てに係るロボ・コールの例外規定法やTCPAの該当規定に関し狭い例外適用を打ち破った。

 最高裁判所は、適切な同意を欠く携帯電話への自動ダイヤル通話の全面的な禁止を支持したが、それは政治的なスピーチよりも商業的なスピーチを支持することによって合衆国憲法修正第一に違反するので、連邦政府の支援を受けた債務を収集するために行われた自動呼び出しの禁止の例外は無効である点を明らかにした。

 今回の判決のかかる複数の最高裁の各判事の意見書面で、キャバノー(Kavanaugh)判事は「アメリカ人は多くのことに情熱的に反対している。しかし、彼らは主にロボ・コールに対する軽蔑の中では団結している」と述べた。この判決では、最高裁判所はオート・ダイヤラー(ロボ・コール)禁止を全面的に排除する努力を行おうとする原告の申立てについては却下し、一般的にみたTCPAの現状のオート・ダイヤラー禁止原則を維持した。

(1)本裁判の背景と立法の経緯

 1991年に制定されたTCPAの47 U.S.C. §227(b)(1)(A)(iii) (筆者注2)は、事前の書面による同意がない場合、自動電話ダイヤルシステムまたは人工または録音済みの音声を使用して、電話をかけたりテキスト・メッセージを携帯電話番号に送信したりすることを禁止している。

 しかし、2015年、連邦議会は「超党派予算法(Bipartisan Budget Act)」を制定し、「米国が負った債務または保証された債務を回収するためだけに行われる自動ダイヤルでの呼び出しに対するこのTCPA禁止の例外を含むこととなった。当時、この適用免除により10年間で政府を1億2000万ドル節約すると見積もられていた。

 2016年、アメリカ政治コンサルタント協会や様々な政治団体は、TCPAの自動電話ダイヤルの禁止は合衆国憲法修正第一(連邦議会は以下の立法をなし得ない。国教を規定すること、信教の自由を禁止すること、言論あるいは出版の自由を制限すること、国民が平穏に集会する権利や苦痛の救済を政府に請願することを制限すること)に違反する言論に対する内容に基づく制限であると主張し、コア政治的なスピーチをこえる債権回収呼び出しについて適用例外の違法性を主張し、北カロライナ州東地区連邦地方裁判所に対し、連邦司法長官とTCPAの運営責任機関であるFCC(連邦通信委員会)を訴えた。

 この連邦地方裁判所は、コンテンツに基づく言論差別であるため、TCPAの禁止免除につき厳格な精査が適用されることを原告と合意した。しかし、同裁判所は、免除は説得力のある政府の利益に役立つように狭く調整され、したがって厳格な精査を生き延びたと判決で述べた。

 これに対し、原告は控訴し、第4巡回区連邦控訴裁判所は、政府債務の免除は内容に基づいた厳格な監視を適用すべきとする地裁判決に同意した。 しかし今回、連邦最高裁裁判所は「超党派予算法(Bipartisan Budget Act)」の政府債務を例外免除は憲法修正第一に違反すると説示した。

 第4巡回区連邦控訴裁判所は、政府債務免除規定が致命的過小包摂(fatally underinclusive)」(筆者注3)であると判断し、従来の「分離可能性の原則(severability principles)」(筆者注4)を適用して、自動電話ダイヤルの使用禁止をすべて無効にする代わりに、免除適用のみを無効化すると法解釈の切断することを選択した。

 つまり、「TCPAの自動通話ダイヤリング制限に対する政府債務の例外が修正第一に違反するかどうか、および憲法違反に対する適切な救済策が例外を法の残りの部分から切り離すことが可能であるかどうか」を判断したのである。

(2 )最高裁判決の法解釈の解析

 まず、憲法分析に適用される精査を決定する際に、ブレット・キャバノー判事は第4巡回区控訴裁判所の決定に同意し、政府債務の例外を含むロボ・コールの制限はあくまで「内容」に基づいており、裁判所の判例の下では厳格な精査の対象であったと述べた。今回の最高裁判決は法律は自動電話ダイヤリング者が特定のトピックについて話しているかどうかに焦点を当てているため、ロボ・コール禁止の例外とする判断はあくまで内容ベースであるとする意見であった。

 その高水準の下で、最高裁判所は、政府債務を徴収している政府債務例外に対する政府の正当性は価値のある目標であるが、「政治献金、慈善募金、問題擁護、商業広告などのロボ・コール呼び出しの他の重要なカテゴリーとの差別化を十分に正当化しえない」と主張した。

 2015年の政府債務例外法(超党派予算法(Bipartisan Budget Act)」)は、オート・ダイヤラー禁止に違憲の例外を作成したと結論付け、その後、最高裁の意見は、適切な救済が1991年のロボ・コール制限全体を無効にすることなのか、それとも2015年の政府債務例外法を無効にして断ち切るのかを分析した。

 第一に、最高裁判所の判例法は強い可分性推定(presumption of severability)を示したと判決は認めている。この可分性の推定は、「裁判所が司法政策決定や事実上の司法法を回避して、法令の残りの部分をどれだけ無効にすべきかを決定することを可能にする実行可能な解決策を提供する」。本事件で一般的な例外原則の適用に関し、最高裁判所は、1934年通信法(TCPAの旧法)には、合衆国現行法律集タイトル第47編§227のロボ・コール制限および政府債務例外を含む条項をカバーする明示的な可分条項(筆者注5)が含まれていることを認めた。

 さらに、政府債務の例外規定は2015年法(超党派予算法(Bipartisan Budget Act))で制定され、ロボ・コール制限に違憲の差別的例外が追加された。したがって、今回、最高裁判所は、「可分(分離)条項条文は、違憲の政府債務例外規定を公平にカバーし、我々はそれを断ち切る必要がある」と結論付けた。

 また、分離に関し、最高裁判所は残りの法律が独立して機能することができ、したがって法律として完全に機能するかどうかを分析しなければならない。この意見は、「ロボ・コール制限の残りの部分は独立して機能し、2015年に政府債務の例外が追加される前の20年以上、法律として完全に機能した」と確認した。

 最高裁判所は、通信法の分離可能性条項の本文がここで適用されなかったとしても、分離可能性の推定は裁判所が残りの法令から2015年政府債務の例外法を分離することを要求すると結論付けた。

 キャバノー判事の複数の意見に、ジョン・ロバーツ裁判長とサミュエル・アリトー判事が完全に加わった。ソニア・ソトマヨール判事も判決に同意した。一方、スチーブン・ブライヤー判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事、およびエレナ・ケイガン裁判官は、政府が支援する債務の例外を厳格な精査ではなく中間審査のもとで見直せるはずであり、したがって、修正第一に違反していないと述べた。それにもかかわらず、これらの判事は、複数の相反する結論に照らした適切な救済策は、TCPA全体を打倒するのではなく、例外を断つことであることに同意した。したがって、9人の裁判官のうち7人は、政府が支援する債務の例外がTCPAの自動ダイヤラー制限の全体を排除する理由を提供しないことには同意した。一方、ニール・ゴーサッチ判事とクレランス・トーマス判事は、TCPAが憲法修正第一に違反し、政府が支援する債務の例外を解消することを拒否したため、自動ダイヤラーの使用に関するTCPAの制限を無効にすべきと結論付けた。

(3) 本判決の意味合い・類似裁判との関係(implications)

 最高裁判所からの本判決につきTCPAの将来にとって何を意味する可能性があるかについて、多くの誇大宣伝があった。代わりに、最高裁判所は狭義に調整された決定を採用し、おそらくその決定がTCPAによって課された制限を支持し続ける世論の大きな重みに反しないことを確実にした。

 したがって、ほとんどのTCPA訴訟は、今回の最高裁判所の意見によって直接影響を受けることはない。 ただし、企業が電話やテキスト・メッセージを送信して政府が支援する債務を徴収する場合は、自動電話ダイヤルシステムを利用する前に、適切なレベルの同意を得ていることを再度確認する必要がある。

 最高裁判所の意見は最終的に現状を維持したが、他方、制定法上のATDS(automatic  telephone dialing system” の定義の解釈に直接に関係する「デュグイド対Facebook事件(Duguid v. Facebook控訴裁判所判決)」に対する上訴請求(petition for certiorari)は係属中である。

 これが 認められれば、特にバー司法長官の結果を考えると、デュグイド事件ははるかに大きな影響を与える可能性がある。 可分条項に取り組む際、カバノー裁判官は、「今日、正確な法定文書に基づいて裁判にかけ、その結果、可分条項または非可分離条項の文章に近づく」と述べた。 デュグイドの上訴が認められた場合にも同じアプローチが適用されると、裁判所に信頼できるテキスト専門家が複数存在することにより、裁判所がATDSの定義を解釈する際にTextualism(文言主義/文理主義/原文主義/法文尊重主義)により「近づく」か、または第9巡回区控訴裁判所に判決の書き直しを命じるなど大きく影響を受ける可能性がある。

***********************************************************:

(筆者注1) Womble Bond Dickinson (US) LLPの発行ブログ” TCPA Defence Force”にsubscribeしているが、なかなか興味深い記事が多い。

(筆者注1-2) 第4巡回区控訴裁所判決について、最高裁判所が上訴を受理したので裁判記録を移送しなさいと下位裁判所に命令する移送命令(writ of certiorari)に対するEPICの意見陳述(Amicus Brief)の原本

「No. 19-631 IN THEWILLIAM P.BARR,ATTORNEY GENERAL;FEDERAL COMMUNICATIONS COMMISSION,Petitioners,v.AMERICAN ASSOCIATION OF POLITICAL CONSULTANTS,INC.,ET AL.,Respondents.On Writ of Certiorari to The U.S. Court of Appeals For the FourthCircuitBRIEF OF AMICICURIAEELECTRONIC PRIVACY INFORMATION CENTER (EPIC)AND TWENTY-NINETECHNICALEXPERTS AND LEGAL SCHOLARSIN SUPPORT OF PETITIONERS」(全37頁)

その結論部分を仮訳する。

結論 「上述した理由により、amici EPICらは、連邦最高裁判所に、TCPAの自動ダイヤラーの禁止規定が合憲であると認定し、その代わりに、第4巡回区連邦控訴裁判所の決定を覆すか、または政府債務例外措置に貢献(server)できる施策をとるよう要請する」

(筆者注2) 裁判で問題となったTCPAの条文は“47 U.S. Code 227 (b)(1)(A)(ⅲ)”である(コーネル大学のサイトで索引する際、「Title 47. Ch5.PartⅠ.Section227」で引くことになる。ちなみに、該当箇所を以下にあげる。

(筆者注3) 一般的にわが国で閲覧可の憲法解釈における「過小包摂立法問題」の論文は比較的少ない。

「過小包摂」立法論とは、法益を侵害する別のルートがあり、真に目的を達成するためには規制手段のみでは不十分である、という場合には、関連性を欠くすなわち憲法違反な立法と解される法理である。ここでは深く論じないが、この論理を極論するときわめて政治的な憲法判断が出てくる危険性を感じる。

代表的なものを以下、挙げる。

*山﨑 皓介「多様化・弾力化する違憲判断の法的構成 : 過小包摂立法を端緒として」(北海道大学:博士論文 )

*金原宏明「過小包摂な規制と厳格審査の基準の下での目的審査のあり方についてEMA事件判決におけるスカリア裁判官法廷意見を素材として一」(關西大學法學論集 65巻3 号 PP. 869-908)

*Nob’s Blog 大学の憲法の先生の執筆ブログ「暴力的ゲーム規制は違憲(アメリカ)」

平易な解説文であり、あえて一部を抜粋する。

表現の自由の保障は、国の成り立ちにかかわる基本的な原理。どこまで基本原理に忠実であるかが、国の骨格を鍛え上げ、国の統治への信頼を勝ち取る。合衆国最高裁の本年6月27日の判決は、国の基本原理に対する同裁判所の強い姿勢を示した。

この判決を書いたスカリア裁判官は,古い判決を引きながら,ビデオゲームも表現の自由の保障を受けるという。

 表現の自由は,主として,公的な問題に関する対話を保障するものであると述べつつ,「政治的プロパガンダは、ドラマを通じて知れ渡る」「ある人にとって娯楽にすぎないものも、他の人には政治的な立場を指し示す」 と述べて,政治的表現とエンターティンメントとの峻別を否定した。

スカリア裁判官が、表現の自由の基本原理と言っているのは,内容(メッセージ、アイディア、主題、内容)を理由として表現を制約する権限を政府はもたないという原理だ(内容規制の原則的禁止)。表現の内容の是非を判断するのは政府ではなく、それを受け取る個人である(リベラリズムの神髄)。ただ、わいせつ表現や犯罪の煽動など、長らく表現内容による規制が肯定されているごく限られた例外はある。

・・・・

 もし、立法者が、本気で、暴力的な表現が未成年者の健全な成長を害すると考えるのだとすれば,他の同様なメディアも規制されていなければならない。映画やアニメも含まれるはずである。暴力的ゲームだけを規制するのは、立法者が、実は未成年者のことを考えているのではなく、特定の話者や見解だけを排除したいのではないかという重大な疑問を提起するとスカリア裁判官は述べている。(過小包摂=ゆがんだ規制の動機)

(筆者注4) ベリーベスト法律事務所の「Severability Clause(可分性条項)」から一部抜粋する。

「本契約のいずれかの条項が無効とされても、他の条項には影響を及ぼさない」として、契約書の一つの条項の無効により契約全体が無効とされてしまうことを防ぐものです。短い文例としては、例えば以下のように書かれます。

“In case any provision in this Agreement shall be held invalid, illegal or unenforceable, the validity, legality,

and enforceability of the remaining provisions shall not in any way be affected or impaired thereby.

Severability Clauseが置かれる理由は?

①    契約締結後の法令や判例の変更

②    契約が無効となっても存続すべき条項の存在

③    各国・地域の法令や判例の相違

(以下略す)

(筆者注5) 筆者なりに1934年通信法の可分条項の存在、内容を調べた。以下のとおりである。

 SEC. 708. [47 U.S.C. 608] SEPARABILITY CLAUSE

If any provision of this Act or the application thereof to any person or circumstance is held invalid, the remainder of the Act and the application of such provision to other persons or circumstances shall not be affected thereby.

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オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)がGoogleが提案したFitbitの買収に関する予備段階での懸念の概要を声明(その1)

2020-06-25 15:25:11 | 消費者保護法制・法執行

 Last Updated 4 August, 2020 (紫色部が追加箇所)

 6月18日、日本でいうと公正取引委員会や消費者庁にあたる「オーストラリア競争・消費者委員会」(以下「ACCC」という)は、「Googleが提案したFitbit の買収に関する予備段階での懸念の概要を説明し、消費者の健康状態データへのGoogleのアクセスが参入障壁を高めかつその支配的地位を一層高め、いくつかのデジタル広告および健康市場での競争に悪影響を与える可能性がある」と発表した。(発表声明文原文)

 ウェアラブル・デバイスを製造する企業であるFitbitは、ユーザーの毎日の歩数、心拍数、睡眠データなど、10年以上にわたって消費者から健康情報を収集してきた。

 ACCCだけでなく、海外主要国の規制監督機関は,従来から世界的に見たIT巨人であるGoogle 、Facebook等のGAFA (筆者注1)の市場独占的活動や顧客情報の収集に対し、行政訴訟など厳しい姿勢を取り続けてきている。 (筆者注2 )

 これまでのACCCのFacebookに対する予備的問題提起の背景を概略整理すると、以下のとおりである。

(1)2017年12月4日、当時の財務大臣であった Scott Morrison 氏は、デジタル・プラットフォームの調査を行うようACCCに指示した。 この調査では、デジタル検索エンジン、ソーシャルメディア・プラットフォーム、およびその他のデジタル・コンテンツ集約プラットフォームが、メディアおよび広告サービス市場での競争に与える影響について検討した。 特に、この調査では、ニュースやジャーナリズムのコンテンツの供給に対するデジタル・プラットフォームの影響と、メディア・コンテンツの作成者、広告主、消費者に対するこの影響について検討した。

(2)2018年12月10日、ACCCは調査結果として378頁の予備報告書を発表し、関係者からの意見を公募した。(筆者注3)

(3)最終報告書(623頁)は、財務大臣に提供された後、2019年7月26日に公開された

(4)2020年2月27日に ACCCはリリース「Google LLC proposed acquisition of Fitbit Inc」で今後の検討スケジュールも含め検討を開始するとともに競争法上の予備的な懸念を概説する問題の声明を発表し、同時に2020年7月10日までに問題のステートメントに関する意見の提出を公募した。

 その後、関連した動きとして、2019年10月29 日、ACCCは、Google LLCおよびGoogle Australia Pty Ltd(全体として「Google」という)に対して連邦裁判所に訴訟を起こし、Googleが収集、保持、使用する個人の位置情報について、誤解を招く行為を行ったこと、および消費者に対し虚偽または誤解を招く表現をしたと主張した。 

*この連邦裁判所への告訴内容については、第4項で詳しく解説するが、筆者が最も気になったのは、どの連邦裁判所が所管でまた裁判の予定や詳細な裁判資料は何を見ればよいのかといった、法律実務を行う上で重要な情報の入手方法等ある。ACCCが明らかにしているのは” Concise  Statement”のURLのみである。(その真意は不明であるが明らかに訴訟相手および弁護士対策である )

この点の関するオーストラリアの各種メディア情報をあたったが、解説記事は皆無であった。なお、8月4日筆者の手元に Telecompaperの記事「EU confirms in-depth investigation into Google takeover of Fitbit」が届いた。すなわち、欧州委員会は、Googleが提案しているウェアラブルメーカーであるFitbitの買収に関する反独占法に係る詳細な調査が始まったことを確認したとされているが、その背景には今回ACCCが示した懸念があることは間違いなかろう。

そこで、筆者はConcise Statementのキー情報の基づき、連邦裁判所サイト(Commonwealth Courts)で以上で述べた情報の入手を行った。この種の解説は、わが国でも大学内での研究者以外ではまず行っていないと思われる。今回のブログの巻末で詳しく解説する。

なお、ACCCの一連の動きに関し、わが国の公正取引委員会は2018年12月10日、予備報告(全374頁)のリリース文の概要訳)を公表している。また、2019年12月にACCCの最終報告(7月26日公表のもの)のリリース文の概要訳を公表している。(筆者注4)

 一方、これだけ読んで何が問題であるか、また今後、法執行機関であるACCCがどのような法的手段をとるかにつき理解できる人はわが国ではかなり限られよう。(筆者注5)

 そこで、今回のブログはACCCのリリース内容の仮訳に加え、これらGAFA企業がいかに世界的に見て独占的に消費者の機微情報を収集し、さらには広告活動への結び付け活動を行っているかを主要国の動向を中心に検証することにある。

 なお、ACCC報告書は具体的推奨事項として、デジタル・プラットフォームに表示される著作権を侵害するコンテンツの削除に対する権利所有者の要求をより効率的に促進するため、 ACCCは、オーストラリア通信メデイア庁(Australian Communications and Media Authority: ACMA)がコードを開発して施行することを提案している。

 この内容は筆者自身直ちに理解できない点であったが英国の法律事務所Bird&Bird LLP

が解説「オーストラリア通信メデイア庁(Australian Communications and Media Authority: ACMA) のDigital Platforms and the mandatory takedown code」で詳しく論じているので本ブログ3.の最後で仮訳、引用することとした。

1.ACCCはGoogleが提案したウェアラブル・健康デバイスの製造企業であるFitbitの買収に関する独市場独占等への重大な懸念を予備的報告書で表明

(1)ACCCの2020年6月18日付けリリース文の全文を以下、仮訳する。

 ACCCは6月18日、Googleが提案したFitbitの買収に関する予備的な懸念の概要を説明し、消費者の健康データへのGoogleのアクセスが参入障壁を高め、その支配的地位をさらに高め、いくつかのデジタル広告および健康市場での競争に悪影響を与える可能性があると発表した。

 ウェアラブル・デバイスを製造する企業であるFitbitは、ユーザーの毎日の歩数、心拍数、睡眠データなど、10年以上にわたって消費者から健康情報を収集してきた。(筆者注5-2)

 ACCCのロッド・シムズ(Rod Sims)委員長は次のとおり述べた。

「我々の懸念は、GoogleがFitbitを買収することで、Googleがさらに包括的なユーザーデータセットを構築し、その地位をさらに固め、潜在的なライバルへの参入障壁を引き上げることを可能にすることである。

ACCCの“Digital Platforms Inquiry” は、検索と位置データの集中、およびサード・パーテイ(コンピューター本体を製造している企業やその系列企業以外の、ソフトウエアや周辺機器などを作るメーカーの総称)のWebサイトとアプリを介して収集されたデータに基づいて、Googleの実質的な市場力が構築されていることを見出した。

 新興企業であるFitbitのような企業と成熟した企業の両方による合併、すなわちGoogleによる過去の買収により、Googleの地位がさらに強化された。グーグルが利用できるユーザーデータへのアクセスはそれが限られた競争だけに直面するようにそれが広告主にとって非常に価値のあるものにした。」

 さらにACCCの今回の調査は、特定のオンライン広告サービスと初期のデータ依存型健康市場に焦点を当てている。 FitbitのデータがGoogleにもたらす独自性と潜在的な価値、およびこれらの広告と健康市場における競合他社の可能性を探るものである。

 ACCCが問題とする声明で概説したもう1つの重要な問題は、WearOS(筆者注6)、Googleマップ、Google Playストア、Androidスマートフォンの相互運用性などの重要な関連サービスを提供する際に、Googleが競合他社よりも自社のウェアラブル・デバイスを支持する可能性が高いかどうかである。

この点につきシムズ委員長は次のとおり述べた。

「これは急速に進化しているセクターであり、デジタル市場の発展には本質的な不確実性があるが、それは競争規制当局として、将来が不明確だからといって競争が減ることはないと結論づけることができるという意味ではない。

我々の立場は、特にそのような重要な市場を取り巻く不確実性がある点である。ACCCは、買収の可能性を徹底的に調査して、将来の競争を阻害する必要がある。。競争規制当局としての私たちの仕事は、これらのようなトランザクションに続く可能性のあるデータと広告に関する潜在的な問題を慎重に比較検討することである。

我々は、またこのトランザクションを検討している他の管轄区域の他の競争当局と非常に密接に協力する。」

 今回のACCCの問題に関する声明へのフィードバックは、2020710日までに送信可である。

また、ACCCの最終決定は2020年8月13日に発表される予定である。

【本件の背景と問題点】

 2019年11月1日、Fitbitは21億米ドル(約2,237億円)でGoogleに買収される契約を締結したと発表した。

 Googleは幅広い分野で活動しており、Google検索、YouTube、Googleマップ、Gmailなどの消費者向けインターネットサービスを含む、多数のテクノロジーサービスと製品を提供している。 Googleはオンライン広告にも積極的で、健康関連サービスでの存在感を確立している。

一方、Fitbitは、手首に装着可能なウェアラブル・デバイス、スマート・スケール(体重、体脂肪、BMI、除脂肪体重を自動的に記録し、長期的な体の変化を表示)、ソフトウェア、さまざまな健康関連サービス(雇用者、保険会社、ヘルスケアプロバイダー向けの健康ソリューションなど)を開発、製造、配布している。

(2) ACCCの発表声明文(Statement of Issue)(25)の内容

次の3項目である。

① 提案されたGoogleのFitbitの買収から生じる競争問題に関するオーストラリア競争消費者委員会(ACCC)の予備的見解を概説、

② さらに調査を要する領域を特定、

③ 特定の問題に関する利害関係者からの提出を公募する(提出期限は7月10日)。

ACCCの最終決定は2020813日に発表予定である。

2.ACCCのこれまでの世界的なITプラットフォーム企業であるFacebook、Google等の対する予備的報告書とその後の法的告訴等の状況

(1) 2018年12月10日のACCCのリリースと予備報告書

わが国の公正取引委員会の【ACCCリリース文の概要訳】(筆者注4)あるが、ここでその全文を以下、引用する。

 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)が,Google及びFacebook並びにオーストラリア国内のニュース及び広告に関する報告書について公表したところ,そのうち競争政策に関する主要な部分は以下のとおり。

 Google及びFacebookは,消費者のコミュニケーション方法,ニュースへのアクセス方法及びオンライン広告の閲覧方法を変容させており,市場支配力の集中及びデジタル・プラットフォームの広範な影響によって作り出された潜在的な課題を考慮することは,政府機関及び規制機関にとって喫緊の課題である。

 本日公表された予備的報告書(以下「報告書」という。)には,11の予備的勧告と,調査を続けるに当たって,8分野における更なる分析が記載されている。

 ACCCの見解は,Googleがオンライン検索,検索広告及び関連ニュース表示サービス(News Referral)における潜在的な市場支配力を有し,Facebookがソーシャルメディア,ディスプレイ広告及びオンライン関連ニュース表示サービスにおける潜在的な市場支配力を有している,というものである。

 ACCCは,これらの極めて重要なプラットフォーム事業者が有する市場支配力に懸念を抱いている。報告書によれば,その懸念は,オーストラリアの企業への影響,とりわけ,メディア事業者によるコンテンツの収益化への影響,また,ターゲット広告のために消費者のデータが収集されていることにある。

 ACCCのシムズ委員長は以下のように述べた。「デジタル・プラットフォームは,私たちの暮らしや,互いにコミュニケーションを取ったり,ニュースや情報にアクセスする方法を一変させた。こうした変化の多くが,消費者がニュースや情報にアクセスする手段や,消費者がお互いに,また企業と交流することに積極的に作用したことは賞賛に値する。」

 「他方で,デジタル・プラットフォームは,多くのオーストラリア企業にとって,無くてはならないビジネスパートナーである。Google及びFacebookは,オンラインニュースメディア事業等の企業が消費者に接するにあたって,決定的な役割を果たしている。それにもかかわらず,極めて重要であるコンテンツの表示順序を決定するアルゴリズムの運用については,全く透明ではない。」

 ACCCは,GoogleやFacebookといったデジタル・プラットフォーム事業者がオーストラリアの消費者から収集した膨大かつ多様なデータに関し懸念を有している。このように収集されたデータは,ユーザーがデジタル・プラットフォームを利用する際に能動的に提供している範囲を超えている。

 今回行った調査の一環で,消費者がデジタル・プラットフォームによって収集された情報の量及び範囲について懸念を有していることが判明した。ACCCは,特定の契約や条項において,サービス及びプライバシーについてのオンライン上の条項が長く,複雑であり,曖昧であることについて特に懸念を有している。

 消費者は,十分な情報がなく,限られた選択肢しかない場合に,適切な意思決定ができず,このことは消費者を害し,ひいては,競争を阻害することとなるのである。  

 シムズ委員長は,以下のように述べた。

 「ACCCは,GoogleやFacebookのようなデジタル・プラットフォーム事業者の強力な市場支配力を考慮すれば,規制制度をより強力な水準とすることは正当化されると考えている。」

 「オーストラリアの法律は,企業が強い市場支配力を有すること,競合他社と競争して打ち負かすために能力や技術を発揮することを禁止しているものではない。しかし,市場支配力を有する企業が競争又は消費者厚生を阻害するリスクがあるときには,政府は,消費者及び企業を保護するための行動を採るべきである。」

 報告書では,Google及びFacebookの市場支配力の増大に対処し,消費者の選択肢の増加を促進させるための予備的な勧告をしている。この勧告では,例えば,Googleのインターネットブラウザ(Chrome)を携帯端末,パソコン及びタブレットにデフォルトブラウザとして,Googleサーチエンジンをインターネット・ブラウザのデフォルトサーチエンジンとしてインストールすることを防止するよう提言している。

また,ACCCは,デジタル・プラットフォームが広告及びニュースのコンテンツをランク付けし,かつ,表示する方法に関して,新設又は既存の規制当局が,調査,監視及び報告業務をすべきであると提言している。他の予備的勧告では,企業結合法制についても提言している。

 ACCCは,消費者がさらに情報を入手し,購買力を向上できるようにするために,デジタル・プラットフォーム事業者によるデータ収集に係る特定の規約を設けることについて,更なる勧告を行うことも検討している。

 「今回の調査によって,特定のデジタル・プラットフォーム事業者が競争法及び消費者法に違反しているという懸念が明らかになった。ACCCは,執行活動が必要であるかどうかを決定するために,5件の被疑行為を調査しているところである。」とシムズ委員長は述べた。 

(2) ACCCの予備的報告書の本文(378頁)

公正取引委員会の訳文では言及していないが、予備報告書(Preliminary report)に応じた書面による意見の提出は、2019年2月15日までにplatforminquiry@accc.gov.auに電子メールで送信する必要があった。 

3. ACCCの最終報告書とそのリリース

 ACCCの最終報告書「Digital platforms inquiry - final report」3部で構成」(全623頁)は、財務大臣に提供された後、2019年7月26日に公開された

なお、2018.12.10ACCCリリースでは最終報告書は2019年6月3日予定であったが、実際の公表は6月24日であった。

 ACCCのシムズ委員長の発表時の動画

(1)ACCCのリリース文(仮訳)

 本日発表されたACCCのDigital Platforms Inquiryの最終報告によると、主要なデジタル・プラットフォームの支配とオーストラリアの経済、メディア、社会全体への影響は、重要な全体的改革で対処する必要がある。

 この最終レポートには、デジタル・プラットフォームの成長に起因する問題の交差を反映した、競争法、消費者保護、メディア規制、プライバシー法にまたがる23の推奨事項が含まれている。

ロッド・シムズ委員長は次のとおり述べた

「ACCCの提言は包括的でかつ前向きであり、この調査の過程で特定した多くの競争、消費者、プライバシー、ニュースメディアの問題に対処するものである。重要なことに、私たちの提言は、政府やコミュニティが発生した問題に対処するために必要なフレームワークと情報を提供するという点で動的である。我々の目標は、コミュニティがこれらの問題を最新の状態に保ち、施行、規制、および法的枠組みを将来にわたって保証できるよう支援することである。」

今回の調査の過程で、ACCCはデジタル・プラットフォームに関連する多くの悪影響を特定した。その多くは、GoogleとFacebookの支配によるものである。

具体的には、これらには以下が含まれる。

①GoogleとFacebookの市場支配力は、広告、メディア、およびその他のさまざまな市場で、企業のメリットを競う能力を歪めている。

②デジタル広告市場は不透明で、特に自動化されたプログラマティック広告(筆者注7)の場合、資金フローは非常に不確実である。

③消費者はデータがどのように収集および使用されるかについて十分に知らされておらず、収集された広範囲のデータをほとんど制御できない。

④ニュースコンテンツの作成者は、支配的なデジタル・プラットフォームに依存しているが、そのコンテンツの収益化は困難である。

⑤オーストラリアの社会は、世界中の他の人々と同様に、偽情報(disinformation)とニュースに対する不信や疑惑(mistrust)の高まりの影響を受けている。

 さらにシムズ委員長は次の指摘を行った。

「我々が提起した問題に対する主要なデジタル・プラットフォームの対応は、「私たちを信頼する」と表現するのが最もよいであろう。収益の増加に重点を置き、株主に価値を提供することに何の問題もないし、確かにそれは賞賛されるであろう。しかし、この調査中に明らかになった問題は、企業自身に任せるにはあまりにも重要であると考える。消費者法とプライバシー問題、および競争法と政策に対する行動はすべて、デジタル・プラットフォームの市場支配力と消費者のデータの蓄積に関連する問題に対処するために不可欠である。」

【オーストラリアのメディア企業とニュースの消費者】

ACCCは、オーストラリアのメディア・ビジネスに対するデジタル・プラットフォームの影響と、オーストラリア人がニュースにアクセスする方法に対処するための一連の推奨事項を作成した。

これらには以下の事項が含まれる。

① 指定されたデジタル・プラットフォームにそれぞれオーストラリア通信メデイア庁(Australian Communications and Media Authority: ACMA)に行動規範を提供して、これらのプラットフォームとニュース・メディア・ビジネスの間の交渉関係の不均衡に対処し、コンテンツの価値の共有と収益化の必要性を認識するよう要求する。

② メディア規制フレームワークを調和させることにより、ニュース・メディア・ビジネスとデジタル・プラットフォームの間に存在する規制の不均衡に対処する。

③ 地元のジャーナリズムを支援するための年間約5,000万豪ドル(約36億8,000万円)の助成金を支給する。

④ オーストラリアの公益ジャーナリズムへの慈善資金を奨励するための措置を紹介する。

⑤ ACMAは、信頼できる信頼できるニュースを特定するためのデジタル・プラットフォームの取り組みを監視する。

⑥ 意図的に誤解を招く、有害なニュース記事に関する苦情を処理するための業界コードを作成して実装するためにデジタル・プラットフォームを要求する

⑦ デジタル・プラットフォームでの著作権の執行を支援するための強制的ACMAの削除コードの紹介。

【競争の促進】

 大規模なデジタル・プラットフォームによるスタートアップ(新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長とエクジットを狙う事で一獲千金を狙う人々の一時的な集合体)の買収は、将来の競争の脅威を取り除く可能性を秘めていると問い合わせは述べている。買収により、プラットフォームによるデータへのアクセスも増加する可能性がある。どちらの状況でも、プラットフォームの市場支配力がさらに強まる可能性がある。

 ACCCは、オーストラリアの合併法の変更を提案し、潜在的な競争の影響を考慮することを明示的に要求し、データの重要性を認識させるようにしている。また、ACCCは大規模なデジタル・プラットフォームが、オーストラリアでの競争に影響を与える可能性のある買収案についてACCCに警告する通知プロトコルに同意することを推奨している。

 この最終レポートはまた、Googleに対して、Androidデバイス(新規および既存)のオーストラリアのユーザーが、デフォルトで提供されるのではなく、ヨーロッパで提案されているいくつかのオプションから検索エンジンとインターネット・ブラウザーを選択できるようにすることも求めている。

【消費者に力を与える】

 支配的なデジタル・プラットフォームに関連する問題に対処するには、効果的な消費者保護が不可欠である。この調査を通じて、ACCCは、消費者に危害を及ぼす可能性のあるいくつかの問題のあるデータプラクティスを特定した。

 ACCCは、これらのデータプラクティスのいくつかを調査して、矛盾があったかどうかを判断することで、非常に進んだ。

 最後に目次を以下で引用する。なお、付属書目次は略す。

 なお、42頁にわたる「 Executive Summary」が本文とは別に公表されている。

〇デジタル・プラットホームと強制的削除コードに関する補足説明

 ACMAの「デジタル・プラットホームと強制的削除コード(Digital Platforms and the mandatory takedown code)」の解説文を仮訳する。なお、関係法のリンクは筆者の責任で行った。

 筆者は、英国の大手法律事務所Bird&Birdの弁護士Sophie Dawson氏とJoel Parsons氏の(両氏とも在オーストラリアのパートナーである)共著である。

Sophie Dawson氏

Joel Parsons氏

 ACCCは、オーストラリアで動作するデジタル・プラットフォームの削除プロセスを管理するために、必須とする業界コードを実装することを推奨している。これは、デジタル・プラットフォームに表示される著作権を侵害するコンテンツの削除に対する権利所有者の要求をより効率的に促進するためである。今回ACCCは、ACMAがそのコードを開発して施行することを提案している。

 「勧告8」の内容は、予備報告書(2018.12.10)において「勧告7」として登場した。その最終報告書では、ACCCは再び、強制削除コードには次の2つの主要な利点があると述べている。

  1. コンテンツ作成者とメディアビジネスが迅速かつ効率的に削除を行うのに役立つ。

最大250,000豪ドル(約1,838万円)の民事罰が適用される可能性があり(民事罰制度が他の既存の必須コードに類似している場合)、その遵守(コンプライアンス)が奨励される。

  1. これは、1968年著作権法(Copyright Act 1968:Cth)に基づく認可責任の明確さを改善させる。調査への利害関係者の提出は、著作権法に基づく著作権侵害の承認者としてのプラットフォームの責任の位置に関する曖昧さは、それが有効な抑止力として機能せず、プラットフォームが侵害している素材を削除することを奨励しないことを示唆した。司法の決定は、著作権侵害が発生することを可能にする単なる「施設の提供」が著作権侵害の許可を構成しないことを示しました。著作権法のセクション36(1A)と101(1A)は、侵害の疑いのある権限者が、行為を防止または回避するために他の合理的な手段を講じたかどうかを検討する産業界の行動規範が必要あると述べている。したがって、プラットフォームが必須のコードに準拠していない場合、プラットフォームがコードに準拠していなかった場合でも、理論的には権利所有者がプラットフォームを著作権侵害で告訴するのに役立つ。

 最終報告書は、ACMAが電気通信法(Telecommunications Act 1997 (Cth)(予備報告書で推奨されたとおり)に基づいて関連する必須規格を開発できるようにするために、法改正によって新しい削除手順を実装できると述べている。予備報告書でACCCは、電気通信法の第6部における「電気通信産業」の定義を「プラットフォーム」を含むように修正することを提案したが、最終報告書は埋め込みのメカニズムを自由に残し、コードは「その他の適切な立法改正」を通じて導入した。速報で予告された方法で電気通信法の修正案を起草するには、「デジタル・プラットフォーム」の定義を考案する必要がある。このような定義を作成することは悪名高いことであり、オーストラリア著作権理事会が述べたように、そのような定義では、「オーストラリアのメディア組織を直接的または間接的に捕らえない」ことを確実にするために注意深い草案が必要となる。

 利用される立法メカニズムに応じて、ACMAが必須コードを開発する権限を与えられると、ACCCは、通信法に基づいてACMAが他のコードを開発する場合と同様に、ACMAが利害関係者と協議できると述べている。皮肉なことに、これには、必須の基準の詳細が各州および準州で流通している新聞に掲載されるという要件が含まれる場合がある。

 ACCCによると、最終的なコードには、権利保有者とデジタル・プラットフォームの間の協力のためのフレームワークを含めて、少なくとも以下の点をカバーする必要がある。

1.著作権を侵害するコンテンツのオンラインでの配布を積極的に特定して防止するために、権利者とデジタル・プラットフォーム業者がどのように協力すべきか。

2.オーストラリアの営業時間中や重要なライブイベントの放送中にプラットフォームに人員がいるという要件を含め、権利所有者とプラットフォーム間のコミュニケーションを改善するための対策は如何。

3.生放送の商業放送などの時間的制約のあるコンテンツの場合、権利を侵害するコンテンツと特定のプロセスを削除するための合理的な時間枠をどうするか。

4.権利所有者が繰り返し侵害に対処するために一括通知を行うためのメカニズム。

5.削除アクションが発生する前に、権利所有者が著作権の所有権を証明しなければならないプロセスを合理化するための措置。

 予備報告書の「推奨7」と最終報告書の「推奨8」の間の主要な進化は、プラットフォームと権利所有者間の協力をより重視しているようである。オーストラリアの営業時間中および重要な放送イベント中にプラットフォームを利用できる人がいて、デジタルプラットフォームにそのようなイベント中の時間依存性を遵守する必要があるという提案は、ライブ放送イベントで取引し、保護するための迅速なアクションを必要とする放送局から歓迎される。彼らの知的財産。近年、テレビで放映されたイベントを再放送するデジタル・プラットフォームでホストされている初歩的なライブストリームを使用して、権利所有者のライブ放送コンテンツの価値を下げることができることが明らかになった。

4. ACCCのGoogle LLCおよびGoogle Australia Pty Ltd(全体として「Google」という)に対して連邦裁判所に告訴

 2019年10月29日、ACCCのGoogle LLCおよびGoogle Australia Pty Ltd(全体として「Google」という)に対して連邦裁判所に訴訟を起こし、Googleが収集、保持、使用する個人の位置情報について、誤解を招く行為を行ったこと、および消費者に対し虚偽または誤解を招く表現をしたと主張旨リリースした。検証性が極めて明確であり、わが国の検討に資すると考え、その概要を以下で仮訳する。

 なお、言うまでもないがACCCは裁判所に持ち込む以上、日常的に見たアクセス記録情報を丁寧に保存、管理している実態を見るにつき、わが国の消費者庁や国民生活センターの活動内容と比較せざるを得ない。

 ACCCは、少なくとも2017年1月からAndroidの携帯電話やタブレットで画面に表示したときに、特定のGoogleアカウント設定が有効または無効につきGoogleが収集または使用した位置情報について消費者を騙しており、この点はオーストラリアの消費者法(Australian Consumer Law)に違反したと主張した。

 この問題表示は、Androidの携帯電話とタブレットでGoogleアカウントを設定する消費者、およびAndroidの携帯電話とタブレットからGoogleアカウントの設定に後でアクセスした消費者に対して行われた。

 「これらの画面上の表現の結果として、Googleは情報に基づく選択をせずに、消費者の場所に関する非常に機密性が高く価値のある個人情報を収集、保存、使用したとGoogleに対して訴訟を起こした」とACCC委員長のロッド・シムズは述べた。

(1)データの収集に関する不適切表示問題

 位置データの収集に関するACCCのケースは、2つのGoogleアカウント設定に焦点を当てています。もう1つのラベルは「ウェブとアプリのアクティビティ」である。

 ACCCは、2017年1月から2018年後半にかけて、消費者がGoogleに位置情報データの収集、保持、使用を望まない場合は、両方の設定をオフにする必要があることを消費者に適切に開示しておらず誤解を招くものであったと主張している。

 代わりに、ACCCは、消費者がAndroidフォンまたはタブレットでGoogleアカウントを設定したとき、Googleの指示に基づいて、「ロケーション履歴」がGoogleが収集、保持、またはユーザーが彼らの場所に関するデータを使用した保持に影響を与える唯一のGoogleアカウント設定であると誤って信じていたと主張している。

 同様に、消費者が後でAndroidデバイスのGoogleアカウント設定にアクセスした場合、Googleは「ウェブとアプリのアクティビティ」をオンのままにしておくと、位置情報データを収集し続けることを知らせなかった。

シムズ委員長は次のとおり述べた。

「我々の場合、消費者はこの行動の結果として、「ロケーション履歴」設定をオフにすることで、Googleが位置情報の収集を単純で単純なものにしてしまうことを理解したであろう。我々は、Googleは別の設定もオフにする必要があるという事実について沈黙を守り、消費者を騙したと主張した。

 多くの消費者は位置情報の収集を停止するために設定をオフにすることを意識的に決定しているが、Googleの行為が消費者がその選択をすることを妨げた可能性があると我々は主張する。」

 また、ACCCは2018年半ば頃から2018年後半にかけて、Googleが消費者に、位置情報データの収集、保持、使用を妨げる唯一の方法は、Google検索やGoogleマップなどの特定のGoogleサービスの使用を停止することであると説明したと主張している。ただし、これは「ロケーション履歴」と「ウェブとアプリのアクティビティ」の両方をオフにすることで実現できる問題である。

(2)位置データの使用に係る問題表示・説明

 ACCCはまた、顧客が「ロケーション履歴」と「ウェブとアプリのアクティビティ」の設定にアクセスしたときに位置情報がどのように使用されるかを説明するGoogleの画面上のステートメントが誤解を招くものであったとも主張している。

 Googleは、消費者が「ウェブとアプリのアクティビティ」の設定にアクセスした2017年3月以降、および消費者が「ロケーション履歴」の設定にアクセスした2018年5月以降、Googleは位置情報を収集および消費者によるGoogleサービスの使用するだけであることを表すメッセージを画面に表示していた。

 しかし、Googleは、消費者によるグーグルのサービスの利用に関係のない他の多くの目的のためにGoogleがデータを使用する可能性があることを開示しなかった。

シムズ委員長は次の点を述べた。

「Googleがこのデータの使用を開示できなかったため、消費者は個人の位置情報をGoogleと共有するかどうかについて情報に基づいた選択をする機会を今も奪われていると考えている。「デジタル・プラットフォームと消費者データに関連する透明性と不適切な開示の問題は、ACCCのデジタル・プラットフォーム調査の主な焦点であり、ACCCの最優先事項の1つであり続けている。」

 ACCCは、データ表現を収集して使用することにより、GoogleがAndroidオペレーティングシステム、Googleサービス、Google Pixelスマートフォンの性質、特性、適合性について一般の人々に誤解を与える可能性のある行為にも関与したと主張している。

 ACCCは、Google等に対し、裁判所の是正通知の発行とコンプライアンス・プログラムの確立を必要とする罰則、宣言および命令を求めている。

【問題の経緯と論点】

 Google LLCは米国に設立された多国籍企業であり、本社はカリフォルニア州マウンテンビューにあり、またAlphabet Inc.の子会社である。

 Google Australia Pty LtdはGoogle LLCの子会社であり、Pixelスマートフォンの販売を含む、オーストラリアでのGoogle LLCのビジネスの特定の業務を行っている。

 GoogleマップなどのGoogleサービスを消費者に提供する際の使用に加えて、Googleは次のような広告目的で位置データを使用する。

①他のユーザーの広告をパーソナライズするため。

②人口統計情報を推測するため。

③広告のパフォーマンスを測定するため。

④広告サービスを促進、提供、または第三者に提供すること。および/または

⑤匿名化されて集計された統計(来店コンバージョン統計など)を作成し、それらの統計を広告主と共有するため。

 Google LLCは、オーストラリアの消費者に対し次のようなさまざまなソフトウェア製品とサービスを提供している。

①Google Playストア

②Google検索

③グーグルクローム

④グーグルマップ

⑤Gmail

⑥YouTube

 これらのサービスには、Googleアカウントを使用してアクセスする。 Google Playストアなど一部には、消費者がGoogleアカウントにサインインしている場合にのみアクセスできるが、ユーザーがサインインしていない場合、YouTubeなどの他の機能にはアクセスできない。

 新しいGoogleアカウントのデフォルト設定では、「ロケーション履歴」を「オフ」(または「一時停止」)にし、「ウェブとアプリのアクティビティ」設定を「オン」にする。

「ロケーション履歴」が「オン」になっている場合、Googleはユーザーの位置に関連する個人データを定期的に収集して保持します。ただし、「ロケーション履歴」がオフになっている場合でも、ウェブとアプリのアクティビティ設定が「オン」になっていると、ユーザーのロケーションに関し、Googleのアプリやサービスでのユーザーのアクティビティに関連する個人データを取得かつ保持する。

 ACCCのDigital Platforms Inquiryの最終報告(2019.7.26)では、以下を含むプライバシー法の強化が推奨されている。

①プライバシー法の「個人情報」の定義を更新して、IPアドレス、デバイス識別子、位置データ、および個人の識別に使用できるその他のオンライン識別子などの技術データをキャプチャすることを明確にする。

②通知と同意の要件を強化して、消費者がデジタル・プラットフォームで収集できる個人データについて具体的に情報に基づいた決定を行えるようにする。

ACCCの例示による問題提起:

以下の例はあくまで架空のものであるが、「ロケーション履歴」がオフにされたときに、Googleの行動によりGoogleがデータを収集できた可能性があるとACCCが主張する方法を例示で概説する。

【仮説例A

 ジョンはAndroidスマートフォンのGoogleマップ・アプリを使用して、シドニーのCBDにある彼のオフィスからハイドパークのアーチボルドファウンテンまでのルートを検索する。ジョンはGoogleマップ・アプリを開き、目的地として「アーキバルドの噴水、ハイドパーク」を手動で入力する。ジョンはGoogleマップの指示に従い、モバイルデバイスを持ち、オフィスからアーチボルドの泉まで歩く。

 「ウェブとアプリのアクティビティ」をオンにしておくと、ジョンがGoogleマップを使用してこのデータを保存できるため、「ロケーション履歴」がオフになっていても、ジョンの位置に関するデータはGoogleアカウントに保存される。

【仮説例B

 メアリーはタウンズビルのショッピングセンターにいる。彼女はAndroidスマートフォンでGoogleアシスタントアプリを開き、音声認識機能を使用して「郵便局はどこですか?」と尋ねる。このアクティビティの一部として、「ロケーション履歴」がオフになっている場合でも、「ウェブとアプリのアクティビティ」をオンにすると、メアリーがGoogleアシスタントサービスを使用してこのデータを保存できるため、メアリーのロケーションに関するデータがGoogleアカウントに保存される。

【ローケーション・データ収集に関する端末表示での説明】

 以下の画像は、2018年4月30日から2018年12月19日までの間にAndroidモバイルデバイスでGoogleアカウントを設定する消費者に表示されるロケーション履歴とWebおよびアプリのアクティビティ設定の説明のバージョンを示している。

 

下の画像は、2017年の初めから2018年の終わりまでに、Androidモバイルデバイスを使用してロケーション履歴の設定をオフ(または「一時停止」)にしたユーザーに表示されるステートメントを示している。

【ローケーション・データ使用に関する画面表示での説明】

下の画像は、Androidモバイルデバイスを使用して、2018年後半から現在までのロケーション履歴の設定をオフ(または「一時停止」)にしたユーザーに表示されるステートメントを示している。

以下の画像は、2018年後半から現在までWeb&App Activity設定にアクセスしたユーザーに表示されるステートメントを示している。

以下の添付文書には、この問題に関連してACCCが提起した法廷文書が含まれている。これらの最初のドキュメントが後で修正される場合、私たちはそれ以上のドキュメントをアップロードしない。

Concise statement (全27頁) 表題「 NOTICE OF FILING  」

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(筆者注1) 「GAFA(ガーファ)」とは、Google、Apple、Facebook、Amazon.comの頭文字を並べたもので、2012年ごろからまずフランスで使われるようになった結構古くからある言葉です。今年ヒットしたスコット・ギャロウェイ氏の書籍でタイトルになったこともあり、最近は日本でも取り上げられる機会が増えました。

 GAFAという言葉は、広告や検索(Google)、スマートフォンとそのアプリ(Apple)、SNS(Facebook)、ショッピング(Amazon)というネットの「プラットフォーム」で大きなシェアを持つ「プラットフォーマー4傑」という意味で使われています。また、「個人情報は集めるわ、市場独占で自由競争を阻害するわ、税金はごまかすわ、のずるくて巨大な米国企業」という、あまり良くないニュアンスでも使われている言葉です。(IT mediaから一部引用)

(筆者注2) 2017.9.16筆者ブログ「スペインの個⼈情報保護庁(AEPD)のFacebookに総額120万ユーロ(約1億5,600万円)の 罰⾦刑とEU加盟国の新たな規制強化の動向(その1)」同(その2完)等を参照。

(筆者注3) 「予備報告」という位置づけながら合計374ページにも及ぶこの報告書の中でACCCは「GoogleとFacebookがオーストラリアのニュース業界に大きな影響を及ぼしているため、2014年から2017年の間に新聞などの伝統的な活字メディアの職業ジャーナリストの数は20%以上減少しています」と指摘。「オーストラリアのジャーナリズムにおける、世界的なデジタルプラットフォームの役割について再考すべきである」と結論づけている。

(筆者注4) 公正取引委員会は2019年10月に同年7月26日にACCCが公表したリリース文を概要訳を行っている。その内容はあくまでACCCのリリース文の概要訳文であり、報告書の本体623頁を改めて整理・解析したものではない。

 なお、わが国の公正取引委員会の事務局の情報解析能力を疑うわけではないが、この公開資料は単なる直訳であり、内容的に見てACCCの情報を超えるものではない。これに関し、最近筆者がブログで取り上げた「オーストラリアの消費者擁護団体やACCCが行った水に流せる使い捨てシートによる下水施設の「ファットバーグ」の原因追及と製造企業の広報活動の在り方をめぐる告発の動向」を併せて読まれたい。

 すなわち、ACCCの世界的衛生用品企業である「キンバリー・クラーク(Kimberly Clark )」告発の背景として消費者保護団体(CHOICE)の地道な実証テストがあっては初めてACCCの告発がありえたのである。しかし、ACCCのリリースではこの点につき何ら言及していない。単なる翻訳作業以上の情報でなければ、わざわざ公正取引委員会サイトで紹介する意味がない。

(筆者注5) わが国のデジタル市場競争の在り方についての検討はどうなっているであろうか。

一例として 内閣官房デジタル市場競争会議の開催について令和元年9 月2 7日デジタル市場競争本部決定同会議の議員名簿を見てほしい。なお、第2回同会議資料「豪州の動き」(41頁)においてACCCの2019年7月26日の最終報告書で示された提言内容につき引用されている。

(筆者注5-2) Fitbitはカリフォルニア州サンフランシスコに本社を置く。このため、米国内で最も厳しいといわれる2020年1月1日施行された同州の保護法「(California Consumer Privacy Act of 2018」に準拠すべくプライバシーポリシーで明言している(2019.12.18 改訂New!当社では最近、カリフォルニア州の新しいプライバシー法の下で義務付けられる開示についての項目を含めるために本ポリシーを改訂いたしました。以下の「変更のまとめ」と改訂版ポリシーをご確認ください。以前のポリシーは当社アーカイブに保管されています。)。しかし、その内容を読むとそうではない箇所もあり、この点については別途まとめたい。

 なお、同州の保護法の仮訳としてわが国の個人情報保護委員会サイトがあるが、内容の解説は一切ない。一方、2019.6.6 JETRO「施行が迫る「カリフォルニア州消費者プライバシー法」(米国)」は企業から見た対応上の重要と思われる点をEUのGDPRとの比較も含め網羅しているレポートである。

(筆者注6) Wear OS by Google(旧称Android Wear)は、スマートウォッチ(腕時計型ウェアラブルデバイス)向けに設計されたGoogleのAndroidベースのオペレーティングシステム。Android携帯端末やiPhoneとBluetoothや Wi-Fi、LTEでペアリングすることで、端末で受け取った通知をWear OS by Google側で閲覧や操作をできる。またGoogle Playより、Wear OS by Googleに対応したアプリをインストールすることができる。(Wikipedia から抜粋)。

(筆者注7) 運用型広告(プログラマティック広告)とは、膨大なデータを処理するアドテクノロジーを活用したプラットフォームにより、入札額や広告素材の変更などの広告最適化を自動的かつ即時的に支援する広告手法をいう。

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オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)がGoogleが提案したFitbitの買収に関する予備段階での懸念の概要を声明(その2完)

2020-06-25 11:04:54 | 消費者保護法制・法執行

 

【Appendix】オーストラリアの連邦裁判所の裁判記録の検索手順

専門家でなくても“File Number”さえ判明すれば詳細な資料は検索できる。今回の検索ではConcise Statementで「File Number 」=「NSD1760/2019」を確認できた。

なお、筆者はCommonwealth Courts Portalに登録済であるが。ここでは未登録者のアクセス手順で説明する。実際に試されたい。

 

②まず、連邦裁判所のHPから「Federal Law Search」を選ぶ。

③画面下のacceptをクリック

④File Number*に「NSD1760/2019」を入力→Search by File Numberをクリックする。

⑤裁判所名:Federal Court Australia,Registry; Title:AUSTRALIAN COMPETTITION AND CONSUMER COMMISSION v GOOGLE LLC&ANOR 等を確認する。

⑥ CONSUMER PROTECTION をクリックし、詳細な事件内容を確認する。

⑦Court Events and Order画面から詳細を検索する。

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米国NHTSAが米国の大手自動車部品メーカー「TRW Automotive Holdings Corp」のエアバッグのリコールを公表

2020-01-25 11:34:47 | 消費者保護法制・法執行

 筆者は、1月11日のブログおよび1月21日付けのブログで「オーストラリア競争・消費者保護委員会(ACCC) 」(筆者注1)(筆者注2)の「タカタNADI 5-ATエアバッグ」のリコールに関する警告内容を紹介した。

 ところが、1月21日トヨタ自動車は、米国やカナダ、中南米で約340万台をリコール(回収・無償修理)すると発表した。米国の自動車部品メーカーの電子制御装置に不具合があり、衝突時にエアバッグが作動しない惧れがあるという。(詳しく報じている2020.1.22 Business Times記事などから抜粋)
また、同日、トヨタ自動車は日本国内向けに平成9年から平成11年に生産したヴィッツ、カローラなどの一部車両につきまして、令和2(2020)年1月22日に下記内容のリコールを国土交通省へ届けを出し、1月23日から自社HPでリコールの受付開始を報じた(筆者注3)

 このうち米国は約290万台で、日本は含まれていない。リコールの対象車種は、2011~19年型の「カローラ」、12~18年型「アバロン」など。
 エアバッグは2015年ドイツのZF Friedrichshafen AG(筆者注4)に買収された米国の大手自動車部品メーカー「TRW Automotive Holdings Corp」で社名は現在「ZF TRW Automotive Holdings Corp.」が製造したもので、米国運輸省・道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration:NHTSA)(筆者注5)が昨年4月、同社製のエアバッグを採用しているトヨタ、ホンダ、三菱自動車、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(Fiat Chrysler Automobiles NV :FCA)など自動車大手6社を対象に調査を開始していた。調査は約1230万台が対象で、今後、他メーカーにもリコールが広がる可能性がある。(読売新聞オンライン記事をもとに、一部筆者が独自に調査のうえ加筆)、なお、この読売記事は正確性に難点があり、後記5.Business Timesや後述するNHTSAサイト等を参照されたい。

 今回のブログは、わが国で詳しく論じられていない米国自動車部品メーカーのエアバッグのリコール問題を、過電圧・過電流ストレス(Electrical Over Stress:EOS )やラッチアップ(latch -up)・リスク問題等につき技術面も含め具体的に解説、紹介する。

 なお、今回の調査を通じ最も筆者が感じたことは、ハイテク技術の導入が著しい自動車業界で今後、自動運転の導入などが進めば、ますますこれらの電子部品の問題の解決が同時に進行しないとリコールの範囲はますます拡大することは否めないと考えるのは筆者だけであろうか。

1.NHTSAのエアバッグ不具合事故調査の再開
2018.3.16 NHTSAは、① Kia Motors America(기아자동차;  米国起亞自動車)(筆者注6)、 ② Chrysler (FCA US LLC)、 ③ Mitsubishi Motors North America, Inc.、 ④Hyundai Motor America(アメリカ現代自動車)、⑤ TRW Automotive Inc, ⑥Honda(American Honda Motor Co.)、 Toyota Motor Corporationを対象とする調査を再開した旨公表した。

2.2019.4.24 のBloomberg記事「米NHTSAがトヨタなども対象としエアバッグ不具合リスクで約1230万台を調査」
 以下、Bloombergの日本語版から引用する。

 2019.4.19 米道路交通安全局(NHTSA)は自動車約1230万台を対象に、衝突時にエアバッグが開かない不具合が生じる可能性について調査している旨ODI  (Office of Defects Investigation RESUME  (ODI))を公表した。

 部品メーカーのZF-TRWが供給したエアバッグ制御ユニットをNHTSAは調査。同ユニットは「過電圧・過電流(Electrical Over Stress:EOS )ストレス」(筆者注7)のために作動しなくなり、衝突時にエアバッグとシートベルト・プリテンショナー(Seatbelt Pretensioner)(筆者注8)が通常通り起動しない可能性がある。NHTSAがウェブサイトに23日掲載した通知で明らかにした。

 NHSTAは2018年、韓国の現代自動車と起亜自動車の一部車種を中心とした予備調査を開始。調査は今回大きく拡大され、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)、トヨタ自動車、ホンダ、三菱自動車の2010-19年モデルも対象に加わった。

 NHTSAは、トヨタ車でエアバッグが開かずEOSが原因として疑われる2件の衝突事故を確認しており、うち1件では死者が出たと指摘。トヨタは電子メールで配布した資料で、NHTSAの分析に協力し問題を調査しており、適切な対策を講じる方針だとコメントした。

3.2019.8.29 TOYOTA 「カローラなどのリコール」発表内容
 平成15年から平成20年に生産したカローラなどの一部車両につきまして、令和元年8月28日に下記内容のリコールを国土交通省へ届け出しました。
 ご愛用の皆様にはご迷惑をおかけし誠に申し訳ございませんが、トヨタ販売店からご案内させていただきますので、お早めに点検・修理をお受けいただきますようお願い申し上げます。
お客様のご愛用車が対象車両かどうかは、リコール等情報対象車両検索でご確認いただけます。以下、略す。

4.NHTSARのRecalls専門サイト 
(1)米国運輸省(現長官はElaine Lan Chao)の道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration:NHTSA)がRecall専門サイトを掲げている。しかし,今回問題となったZF TRW Automotive Holdings Corp.製のエアバッグのリコールについてはNHTSAサイトで確認するしかない。

  2020.1.13 NHTSAのトヨタの 不具合報告(DEFECT INFORMATION REPORT)の一部を抜粋する。詳細は、同サイトで確認されたい。

以下は略す。

(2) 2019年12月31日付けCarComplaints.com  (筆者注9)の解説記事
 以下、仮訳する。なお、裁判制度等に関する補足は筆者が独自に行った。

 2019年12月31日 — ZF TRWカナダエアバッグ訴訟がエアバッグ会社とこれらの自動車メーカーに対して提起された:被告は、起亜カナダ、現代オートカナダ、トヨタカナダ、ホンダカナダ、FCAカナダ、カナダの三菱自動車販売である。
この集団訴訟の原告には、ZF TRWエアバッグコントロールユニットを搭載したこれらの車両のいずれかを購入またはリースしたケベック州のすべての企業および消費者が含まれる。

 ZF TRWエアバッグシステムには、車の室内に設置され、車両の前部にある衝突センサーに電気的に接続されたエアバッグ・コントロールユニット(ACU) (筆者注10)が含まれる。ACUは、エアバッグとシートベルト・プリテンショナーがクラッシュ(機能停止)時に展開する必要があるかどうかを決定する。
 このクラッシュ検出システムには、クラッシュの重大度を検出し、必要に応じてエアバッグを展開し、シートベルト・プリテンショナーを巻き込む"アプリケーション固有の集積回路"(ASIC) (注11)もある。つまり、集積回路に欠陥がない場合である。
 しかし、このクラスアクションでは、原告はメーカーがアプリケーション固有の集積回路を過負荷にし、エアバッグやシートベルトのプリテンショナーの展開を防ぐためにクラッシュ中に作成された余分な電気信号を可能にする電気オーバーストレスの影響を受けやすいため、欠陥があると主張した。
 ZF TRW製エアバッグコントロールユニットは、ASICに損傷を与える可能性のある有害な信号の送信を防ぐ配線と回路を備えているはずであるが、訴訟では車両が十分な保護を持っていないと主張した。
 カナダ運輸省(Transport Canada)は、一部の車両のリコールを発行したが、集団訴訟では、影響を受けるすべての車両がリコールされていないと主張している。これまでのリコールには、2016年のクライスラーリコール、2018年の現代自動車と起亜自動車のリコールが含まれる。
 ZF TRWカナダ・エアバッグ訴訟は、ケベック州(province)の控訴裁判所(Provincial Courts of Appeal) (筆者注12)においてモントリオール地区 - J.ジョナスゾーン対ZFオートモーティブホールディングス株式会社らに対し提起された。
原告は、消費者法グループ有限責任会社(Consumer Law Group Inc.)が代表する。

2014-2019 Acura RLX
2014-2019 Acura RLX Hybrid
2012-2014 Acura TL
2015-2017 Acura TLX
2012-2014 Acura TSX
2014 Acura TSX Sport Wagon
2012-2013 Acura TSX Sportswagon
2010-2011 Dodge Nitro
2009 Dodge Ram 1500
2010 Dodge Ram 3500
2012-2019 Fiat 500
2013-2015 Honda Accord
2014-2015 Honda Accord Hybrid
2012-2015 Honda Civic
2012-2015 Honda Civic GX
2012-2015 Honda Civic Hybrid
2012-2015 Honda Civic SI
2012-2016 Honda CR-V
2012-2017 Honda Fit
2013-2014 Honda Fit EV
2012-2014 Honda Ridgeline
2013-2019 Hyundai Sonata
2013-2019 Hyundai Sonata Hybrid
2015-2017 Jeep Compass
2010-2012 Jeep Liberty
2015-2017 Jeep Patriot
2010-2018 Jeep Wrangler
2013 Kia Forte
2013 Kia Forte KOUP
2013-2019 Kia Optima
2012-2016 Kia Optima Hybrid
2014 Kia Sedona
2013-2017 Mitsubishi Lancer
2013-2015 Mitsubishi Lancer Evolution
2014-2015 Mitsubishi Lancer Ralliart
2013-2016 Mitsubishi Lancer Sportback
2013 Mitsubishi Outlander
2009-2012 Ram 1500
2010-2012 Ram 2500
2010-2012 Ram 3500
2011-2012 Ram 4500
2011-2012 Ram 5500
2012-2018 Toyota Avalon
2013-2018 Toyota Avalon Hybrid
2011-2019 Toyota Corolla
2017-2018 Toyota Corolla IM
2011-2013 Toyota Corolla Matrix
2012-2017 Toyota Sequoia
2012-2019 Toyota Tacoma
2012-2017 Toyota Tundra

5.最近のリコール情報やカナダでのクラスアクション等の動向
 2020.1.22 BusinessTimes記事「Toyota Recalls 3.4 Million Vehicles For Defective Airbags」を前述の説明と重複するが、以下、仮訳する。

 衝突時にエアバッグが膨張するのを防ぐことができないという電気的欠陥を理由として、トヨタ自動車や他の自動車大手が対象になる世界で約600万台以上の車両をリコールすることを余儀なくされたとトヨタは火曜日に発表した。
すなわち、これらの車には事故や衝突時の振動や騒音から完全に保護されていない電子機能が装備されている場合があり、エアバッグが適切に配備されない可能性があるというものである。
 問題の電子制御ユニットは、シートベルト、特にいわゆるオートプリテンショナーの機能にも影響を与える可能性がある。リコールは、約300万台の米国車を含み、2011-'13マトリックス、2011-'19カローラ、2012-'18アバロン、2013-'18アバロンハイブリッドモデルをカバーしている。

 米国運輸省・道路交通安全局(NHTSA)は2019年4月、トヨタがリコールした車両を含む多くの自動車メーカーが関与する1,200万個以上のエアバッグの不具合の可能性について調査を開始した。
 NHTSAによると、電気流れの過負荷が膨張に失敗したエアバッグの"考えられる原因"と考えられているトヨタのユニットを含む即死にいたる事故を含む2つの正面衝突事故を特定した。当該クラッシュは、新しいトヨタのカローラモデルを含んでいた。
 NHTSAは、調査対象のエアバッグが2010年から2019年までに1,200万台以上に搭載され、トヨタ、ホンダ、フィアット・クライスラー、現代自動車、三菱、起亜自動車が販売したと指摘した。

 ドイツの世界的な自動車部分メーカー「ZFフリードリヒスハーフェン(ZF Friedrichshafen)」(筆者注4)が所有するTRWオートモーティブホールディングスが最初に製造した電子制御ユニットは、これらの自動車会社が製造した車両に搭載されていた。NHTSAは、およそ8人が故障に関連して死亡したと述べた。

 フィアット・クライスラー、起亜自動車、現代自動車は以前、TRWエアバッグコントロールユニットに搭載された250万台以上の車両のリコールを発表しており、衝突事故で死傷する可能性がある。

 フィアット・クライスラーは、自動車メーカーが2016年に同じエアバッグ問題で約200万台の車をリコールした際、電子欠陥に関連する可能性のある3人の死亡と5人の負傷者の報告があったと明らかにした。

 起亜自動車と現代自動車は、2018年にエアバッグの故障問題で100万台以上の車をリコールした。2018年にこの2つの自動車会社は、北米で4人の死者と6人の負傷者が欠陥のある電子ユニットに接続されたという報告を明らかにした。

 トヨタ自動車のディーラーは、必要に応じてエアバッグ制御装置とそのワイヤーフックの間にノイズフィルターを設置すると述べた。日本の自動車メーカーは、2020年3月中旬頃にリコールのリコールを車の所有者に通知すると言う以外は、疑わしいエアバッグシステムに関連した負傷者や死者の数は明らかにしなかった。

*******************************************************
(筆者注1) わが国では ACCCを「公正取引委員会」と訳すことが多い。ACCCのHPから該当箇所を詳しく引用する。
「消費者、企業、コミュニティに利益をもたらすために、(1)市場における競争と公正な取引を促進し、また(2)国家レベルデでインフラ・サービスを規制する。ACCCの主な責任は、個人と企業がオーストラリアの競争保持、公正な取引、消費者保護法を運用すること、とりわけ「2010年競争と消費者保護法」(筆者注2)を遵守することである。

上記(2)【規制機能】の内容を以下、仮訳する。
競争が制限されている一部の市場では、国内インフラ産業に関連するさまざまな規制機能と、価格監視の役割がある。ACCCの機能は次のとおりである。
① 全国的に重要なインフラストラクチャ―・サービスの価格とアクセス条件を決定する。
②  大量の水、エネルギー、通信に関する業界固有の法律の遵守を監視および法執行する。
③ 特定の商品やサービスの価格と品質に関する監視と報告により、市場の状況の影響に関す
る情報を提供する。
④ 関係者が規制の枠組みとインフラストラクチャ市場の構造と運用を理解するのに役立つ情
報を広める。
③  政府および政策当局からの要請に応じて、規制結果および競争力のある機能的な市場をどのように達成できるか等についてアドバイスを提供する。

 一方、わが国の「公正取引委員会(Fair Trade Commission、略称:JFTC)」の役割を確認しておこう。
 日本の行政機関の一つである。 内閣府の外局として、内閣総理大臣の所轄の下に設置される合議制の行政委員会である。「公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進すること」を任務とする(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律27条の2柱書、1条)。 
そして、自由主義経済において重要とされる「競争政策」を担っている(中央省庁等改革基本法21条10号)(Wikipedia から抜粋)

 以上から比較して考えると、ACCC訳語は「公正取引委員会」でもないし「競争・消費者委員会」でも言葉足らずであろう。筆者なりに意訳すると「競争・消費者保護委員会」といえようか。

(筆者注2)オーストラリアの「2010年競争と消費者保護法」は、市場のほとんどの分野、サプライヤー、卸売業者、小売業者、消費者間の関係を対象とする。その立法目的は、公正な取引と競争を促進し、消費者保護を提供することにより、オーストラリア国民の福祉を強化することである。広く次の項目をカバーする。
① 製品の安全性とその分類
② 不公正な市場慣行の改善
③  価格の監視
④ 業界規範の監視
⑤  業界規制–空港、電気、ガス、通信業界の規制
⑥  合併と買収の監視

(筆者注3) トヨタのリコールサイトを見ておく。 なお、専門用語については筆者が青字で加筆した。
1.不具合の状況
 運転者席用エアバッグのインフレータ(膨張装置)において、吸湿防止が不適切なため、ガス発生剤が吸湿することがあります。そのため、使用過程でガス発生剤が吸湿や乾燥を繰返した場合など、エアバッグ作動時に正常に展開しないおそれがあります。
2.改善の内容
 全車両、予防的措置としてエアバッグインフレータ(エアバッグをふくらませるためのガスを発生させる装置で、電気が流れると内部の火薬に火がつき、薬品を高温にして化学反応を起こさせる仕組み。金属容器に収められた状態でハンドル内に組み込まれており、タカタ製のインフレーターは不具合でこの金属容器が破裂する事故があった:朝日新聞キーワード解説から引用)またはエアバッグアッセンブリ(下図国土交通省の解説図を参照)を代替品と交換します。
なお、代替品の準備にお時間をいただきますので、準備が整い次第あらためてご案内します。

 

(筆者注4)ドイツ、フリードリヒスハーフェンに本社を置くZF Friedrichshafen AG(以下、ZF)1/22⑲は1915年創業のグローバル・サプライヤーで、ドイツ企業トップ100内、世界の自動車部品サプライヤーのトップ5内に位置している。2015年に創立100周年を迎えたZFは、2018年時点で世界40カ国に230の事業所を展開しており、およそ14万6,100人の従業員を擁している。

 (筆者注5) NHTSAは、自動車や運転者の安全を監視する米国運輸省の部局。交通事故による死亡・障害の防止および経済的損失の削減を図るため、自動車の安全性に関する調査の実施、情報の公開、安全規格の制定などを行う。1970年設置。(「デジタル大辞泉」から抜粋)

(筆者注6) 起亜自動車(Kia Motors Corporation)は、大韓民国の第2位の自動車メーカーである。2016年の売上げ台数は330万台で、世界第8位。 
 かつてはマツダ、フォード・モーターと密接な関係だったが、1998年の経営破綻を境に現代自動車の傘下に入って以来、現代と密接な関係となり、「現代-起亜自動車グループ(現・現代自動車グループ)」を構成している。(Wikipedia から抜粋)

(筆者注7) EOSとは、ラッチアップ(マイコンは膨大な数のPN接合で構成されています。その中にはPN接合が2つ連なった4重構造の「PNPN」が構成さている部分があります。PNPNの構造は、電力用スイッチング素子として使用される「サイリスタ」(Thyristor)の構造であり、マイコン内のPNPN部分は「寄生サイリスタ」と呼ばれます。サイリスタは、アノード(Anode)とカソード(Cathode)とゲート(Gate)の3端子で構成され、通常アノードからカソードへ電流は流れませんが、ゲートに信号を入力するとアノードからカソードに向かって電流が流れます。一度、流れ始めた電流は、電源を切らない限り流れ続けます。この時のオン抵抗は非常に小さいので、大電流が流れます。これと同じ現象がマイコンの中の寄生サイリスタで発生することを“ラッチアップ(latch -up)”と呼んでいる。
 マイコンでラッチアップが発生すると内部に大電流が流れ、正常に動作しないどころか、最悪の場合はマイコン内部の配線の溶断、素子の破壊などを引き起こします。正常な使い方をしていれば、ラッチアップは発生しませんが、電源の立ち上げ手順を間違えたり、急峻な高電圧ノイズが端子に入った場合に発生します。EDN.jp「Q&Aで学ぶマイコン講座(4):ラッチアップって何? (1/3)」ら一部抜粋。)や、電源電圧の印加手順間違いなどで、IC内部にスペック以上の高電圧が印加されたり、大電流が流れたりすること。

(筆者注8)ホンダが、ホンダ車のSEATBELT PRETENSIONERの図解入り解説サイトが詳しく解説している。

 (筆者注9) “CarComplaints.com”は、自動車のオンライン苦情問題リソースであり、訪問者がサイトに提出した苦情データに基づいて、グラフを使用して自動車の欠陥パターンを示す。その受付ける苦情は、車両、車両コンポーネント、および特定の問題ごとに公開されたデータを使用して論理グループに編成される。補修にかかる平均コスト、障害時の平均走行距離、一般的な解決策、および個々の所有者のコメントが各問題グループに対して表示される。苦情データにアクセスするために必要な料金やユーザー登録は不要であるあるが、車の苦情を提出するにはユーザー登録が必要である。

(筆者注10) エアバッグコントロールユニット(ACU)とは、衝突による衝撃から乗員を守るため、衝撃検知と各エアバッグの点火制御を行うセンサとコントロールユニットをいう。

(筆者注11) ASIC(application specific integrated circuit)とは、特定用途向け集積回路)は電子部品の種別の1つで、特定の用途向けに複数機能の回路を1つにまとめた集積回路の総称である。(Wikipediaから抜粋 )

(筆者注12)カナダの裁判所制度の概観図:カナダ司法省のサイトから抜粋、引用

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ACCCが 「潜在的潜在的かつ即死に至るタカタNADI 5-ATエアバッグ装備車の詳細リスト」  を追加公表

2020-01-21 17:18:57 | 消費者保護法制・法執行

 

  去る1月11日の筆者ブログで解説したオーストラリア競争・消費者保護委員会(ACCC)1月10日付けで、「タカタNADI 5-ATエアバッグ」のリコールに関する警告内容を紹介した。その際、対象となる車のメーカーは8社でリコール対象台数は約78,000台と記されていたが、実際ACCCのリリースで記載された対象となる車の製造メーカーはAudi, BMW, Ford, Honda, Mazda の5社のみであった。 

 筆者は、後日のACCCの安全規制局(Product Safety Australia)の統合版のリリースを期待していたが、このほど1月20日付け ACCCの安全規制局(Product Safety Australia)でその手元に届いた。また、筆者が独自に調べた各ユーザーにとって各メーカーのホットラインの情報提示の資するための安全規制局のサイトから全8社の対象車の機種モデルやホットラインの連絡先を調べたので追加的に報告する。

 

 

 

 

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ACCC 「トヨタ、マツダ、スズキが深刻な安全リスクから新しいエアバッグ安全リコールに参加」の新たな意義を見る

2020-01-11 14:31:58 | 消費者保護法制・法執行

 

 オーストラリアのタカタ製エアバッグのリコールについては、従来からわが国メディアでも以下のような記事が取り上げられている。

(1)  2017年7月24日記事

 オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)は24日、タカタ<7312.T>製エアバッグのリコール(回収・無償修理)について調査していると明らかにした。

 同国の警察はこれより先、シドニーで今月、自動車が衝突して運転していた男性が死亡した事故について、欠陥エアバッグが原因だったとの見方を示していた。これがタカタ製であれば、同社製の欠陥エアバッグによる世界で18人目の死亡例となる。ACCCによると、オーストラリアでは2009年以降、230万台以上がリコール対象となっている。以下略す。

(2)  2018年2月28日記事 

 オーストラリア当局は、欠陥のあるタカタ製エアバッグを全てリコール(無料の回収・交換)させる。豪競争消費者委員会(ACCC)が28日にウェブサイトに掲載した資料によると、国内の自動車の約7台に2台が強制的なリコールの対象となる。

 自動車メーカー各社は、2020年末までにエアバッグの交換を完了する必要がある。既に自主的なリコールの対象だった車両のほかに、新たに130万台に今回の措置が適用される。

 オーストラリアでは09年以降、欠陥のあるタカタ製エアバッグを搭載した車両が約270万台リコールされている。同国ではタカタのエアバッグが原因とされる事故で死亡1件、重傷1件が報告されている。以下略す。 

 以上読んでわかるとおり、これら記事では自動車メーカー名が明確に表に出てこない。これらの記事はAPやブルームバーグ等欧米の主要メディアの翻訳版であるが、その理由は何かという筆者の疑問への答えはいかなる点であろうか。

 その意味で今回のACCの発表とその背景にある自動車業界の安全性問題の根の深さが理解できよう。以下で、ACCCのリリース文仮訳を行うとともに、その新たな意義を検証する。 

1.ACCC(オーストラリア競争・消費者保護委員会)のトヨタ、マツダ、スズキ車のユーザー向け警告

 1月10日、人気のトヨタ・スターレットを含む1996年から1999年の間に製造された18,000台以上の車両の自主回収を発表し、影響を受ける車両の買い戻しを申し出た。これらの車両には、潜在的に致死につながるタカタNADI 5-ATエアバッグが装着されている。

 ACCCのスティーブン・リッジウェイ(Stephen Ridgeway)委員長代行は次のとおり述べた。「これらのエアバッグは、事故で誤って展開し、高速で車両のキャビンに部品や金属片を推進することによって、車内の人々を傷つけたり、死に至る可能性がある。これらエアバッグは、クラッシュ時に完全に膨張していない場合もあり、ドライバーを期待どおりにその保護ができなかった。

 影響を受けるトヨタ、マツダ、スズキの車両の所有者は、直ちに車両の運転を停止し、緊急の無料検査を手配するためにメーカーに連絡することを勧める。オーストラリアの安全当局は現在、オーストラリアでこれらのエアバッグの不配備の疑いに関する4件の事件の報告を受けている。これらの事件は、BMW車の死亡と重傷、トヨタ車の死亡と重傷をもたらした。

 ドライバーはこれらの警告を真剣に受け止める必要がある。これらのエアバッグは、死亡または重傷につながる深刻な安全リスクを引き起こす可能性がある。自ら命を危険にさらさないでほしい。そして、あなたの車が影響を受ける場合、他の輸送手段を検討してほしい」 

 各消費者は、下表で車両の車両識別番号(Vehicle Identification Number)を確認するか、ACCCのオーストラリア安全規制局 (Product Safety Australia website) (筆者注1)にアクセスして、自分の車がこのリコールに含まれているかどうかを確認する必要がある。自分の車が影響を受けているかどうかを確認するために助けを必要とする人は、助けを求めて各メーカーのホットラインを鳴らすべきである。

 具体的には、トヨタは、交換用エアバッグが利用可能になるまで、車両を買い戻すか、長期的な代替車のレンタルを提供するサービスを提供している。 また、マツダとスズキは、影響を受ける車をオーナーから買い戻すことを申し出ている。

 トヨタ、マツダ、スズキによる本日の自主回収は、2019年11月以降、アウディ、BMW、フォード車にかかる約17,000台の自主回収に続くものである。ACCCの支援を受けたインフラ・運輸・都市・地域開発省は、ホンダと三菱の自主回収を完了しようとしている。これらのリコールはまもなく開始される見込みである。 

 アウディ、BMW、フォードはすでにリコールを開始しており、緊急的に顧客に連絡している。影響を受けるアウディ、BMW、またはフォードの車両にアクセスしていて、まだ連絡を取っていない場合は、メーカーに緊急の無料検査を手配してほしい。 

 さらに、アウディ、フォード、ホンダ、マツダ、三菱、スズキ、トヨタは、この安全問題の結果、クリスマス休日期間中に大きな困難を経験している消費者に対して、緊急の短期支援を検討することに合意した。この苦難の支援を求める消費者は、自動車メーカーの本社に連絡することができる(下記の連絡先詳細)。BMWのオーナーは直接BMWに連絡して、車両を点検用に手配要求することができる。

 今回の消費者向けの詳細については、タカタNADI 5-ATエアバッグのリコールを参照されたい。 

2.今回の一連の緊急措置の背景と重要な問題点

 これらの車両には、8つのメーカーにわたる約78,000台のオーストラリア車に搭載されたタカタNADI(非アジドドライバーインフレータ)タイプの5-ATエアバッグが搭載されている。これらの車のかなりの数はまだ登録され、国内の道路上で走行している可能性が高い。

 今回問題となる「NADI 5-ATエアバッグ」は、既存のタカタ製エアバッグの強制リコールの下で幅広いメーカーから多数の新しい車でリコールされたエアバッグとは異なる。

 以前にwww.ismyairbagsafe.com.auをチェックして、エアバッグがエアバッグのリコールの強制の影響を受けているかどうかを確認したドライバーでも、再度オーストラリア安全規制局のウェブサイトも確認する必要がある。 

 タカタの承継会社であるジョイソン・セーフティ・システムズ(JSS) (筆者注2)は、世界的に供給されている特定のインフレータ(エアバッグインフレータ:自動車のエアバッグ用のガス発生装置)安全リスクを確認している。

 2019年12月3日に米国道路交通安全局(NHTSA)に機器の欠陥報告書が提出され、2020年初めに米国で影響を受ける車両のリコールが見込まれている。

 また、2019年11月のBMWリコール直後、豪インフラ交通省はすべての自動車メーカーに連絡を取り、オーストラリアの他のどの車両が影響を受ける可能性があるかを判断した。

 

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(筆者注1) Joyson Safety Systems(JSS)は米国ミシガン州アーバーンヒルズにグローバル本社を置き、25か国の98ロケーションから主に自動車用部品、システム、 及び技術を提供しており、また5万人を超える従業員によりグローバルにネットワークを展開している。

JSSは中国上海に本社を置くNingbo Joyson Electronic Corporation(SHA:600699、「Joyson Electronics」)の子会社である。

 (筆者注2) 2017年11月、均勝(寧波均勝電子(ジョイソン・エレクトロニクス;Ningbo Joyson Electronic))は、傘下の米子会社である自動車部品大手、キー・セイフティー・システムズ(KSS)を通じて、相安定化硝酸アンモニウムを使用したエアバッグに関する事業を除くタカタ株式会社を買収すると発表した。買収金額は、約1,750億円(15.88億米ドル)と公表されている。

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ソーシャル・メディア・プラットフォームの偽のフォロワーや同類の業者をいかに規制すべきか?

2019-05-08 09:10:56 | 消費者保護法制・法執行

 近年、偽のフォロワーや偽の同類の慣行がソーシャルメディア全体に広がっている。”Facebookや”Instagramなどのソーシャルメディア・プラットフォームは、いわゆる「不正行為」を取り締まっていると発表してはいるが、その慣行は依然として普及、拡大している。

 ソーシャルメディアで広告を出しているブランド企業の場合、偽のフォロワーや同類のものにお金を払うのは魅力的である。すなわち消費者の目にブランドの正当性を追加することで競争力を高めることができ、有名人推薦のお得な情報が利用されている。

 しかし、その利点には反面、重大な法的リスクや新たなIT新技術のリスクが伴う。偽の好き嫌いや信者を違法に購入することによって、ブランド企業は方執行機関からの執行措置および競合他社によってもたらされた誤った広告に関し賠償請求等に直面する可能性があるといえる。

 やや古くなるが、2019年1月30日、ニューヨーク州司法長官レティーシャ・ジェームス(Letitia "Tish" A. James ) (筆者注1)が「偽フォロワーの販売は「違法」とする初めての司法判断」と当該業者グループと「和解」を行った旨公表した。(筆者注2)

 筆者は、選挙運動や世論操作等にも関係するこの問題の重要性を理解してはいたが、このほどこれらの問題点を法的にまとめたロバート・フロイント(Robert Freund )弁護士のレポートを読んだので、その内容を仮訳するとともに補足説明することとした。

 また同時に、ソシャル・メディアが次々と新規参入する一方で、米マーケテイング業界代表であるBBB(Better Business Bureau)がいかにに厳しい目でチェックしているかにつき、併せて解説を試みる。

1.ニューヨーク司法長官による画期的な決定「偽造品エンゲージメントの販売は違法

 (1)司法長官の違反会社デヴ―ミとの和解

 2019年1月30日、ニューヨーク州司法長官 レティーシャ・A・ジェームス(Letitia "Tish" A. James )(61歳)は、問題の会社「Devumi(デヴ―ミ)」は、他人の身元を盗み、ソーシャル・メディア・プラットフォーム上で偽のフォロワーや同類のものを販売することを禁止する旨の「和解」を行ったと発表した。

 Letitia "Tish" A. James 長官

 ジェームス長官は、「今般の『和解』が偽のソーシャルメディアへの関与を売り込み、盗まれた身元を使用してオンライン活動に関与していることを違法とする法執行機関が行った最初の事例である」と発表した。

 この「和解」によると、デヴ―ミの顧客は、俳優、音楽家、運動選手、造形会社から、ビジネスマン、政治家、解説者、学者まで多岐にわたった。これらの顧客は、自分や自分の製品が実際よりも人気がある(つまり、より合法的である)ことを一般に知らせることを望んでデヴ―ミのサービスを購入した。 司法長官は、デヴ―ミのサービスは「詐欺的にソーシャルメディアの視聴者の意思決定すなわち、何を買うかについての消費者の決定スポンサーの対象に関する広告主の決定や政策立案者、有権者、ジャーナリストによる、どの人々や政策が公的支援を受けているかについての決定等に広く影響を及ぼそうとしている」と述べた。

 デヴ―ミとの「和解」は金銭的な罰を科すものではないが、同様のサービスに対するさらなる行動の扉を開き、司法長官は将来の加害者が金銭的な罰則を受ける可能性があると警告した。なお、デヴ―ミは、司法長官による調査の開始と関連する宣伝のために売上が大幅に減少した直後、2018年半ばに業務を停止した。

(2) 今後、売り手は用心する

 ニューヨーク司法長官のデヴ―ミとの和解は、偽の信者や同類の売り手を扱っているだけだが、偽の契約を購入した企業も政府機関や規制当局からの法執行措置に直面する可能性がある。また、偽造品を購入したブランド企業が競合他社によって提起された民事訴訟の対象になる可能性があり、潜在的な財務上のエクスポージャーがはるかに大きくなる可能性がある。

 すなわち、合法的なソーシャルメディア・マーケティング・キャンペーンを実行していており、偽の好きな人やフォロワーを購入しているブランド企業にビジネスを失った競合ブランド企業は、「連邦商標法(Lanham (Trademark) Act :15 U.S. Code § 1125. False designations of origin, false descriptions, and dilution forbidden )」および/または「カリフォルニア州不正競争法(Cal. Bus. & Prof. Code § 17200, et seq.:UCL)」などの不正競争法等に基づき損害請求を取り戻すことができる。

 米商標法(Lsnham Act)は、「商品またはサービスに関連して、またはそれに関連して、他人によるスポンサーシップ、または商品、サービス、または商業活動の承認について欺くこと、または商業広告において、商品、サービス、またはコマーシャルの性質、特性、品質、または地理的起源を誤って表すこと活動により、虚偽または誤解を招く事実の説明または虚偽または誤解を招くような事実の表現を商業上使用する者に責任を課す」

 ソーシャル・メディアへの投稿に対する偽の好き嫌い(いいね)は、連邦商標法に基づく「広告主の」商品、サービス、または商業活動の承認」についての誤った声明を構成する可能性がある。同様に、偽のフォロワー数は「商業活動」の本質または承認を誤って表現する可能性があり、当該ブランドを消費者の間で人気があると信じるように大衆を欺くことになる。

 一方、連邦取引委員会(FTC)は、偽物を購入することは違法であることに同意する。特定の活動がFTC法に違反する可能性があるかどうかを国民が理解するのを助けるためのガイドラインを発行した。すなわち、FTCは、「The FTC’s Endorsement Guides: What People Are Asking」において「偽の「いいね」を購入した広告主は、実際の消費者からの「いいね」のためのインセンティブを提供する広告主とは非常に異なる」と述べた。「好き」が存在しない人々または製品やサービスの使用経験のない人々からのものである場合、それらは明らかに詐欺的であり、偽の「好き」の購入者と販売者の両方が法執行に直面する可能性がある。

 FTCガイドラインを法執行するための民事公訴権(private right of action )はないが、同ガイドラインは連邦商標法に基づき虚偽広告を構成するものを知らせることができると明記する。(筆者注3) 同様に、FTC法の違反(FTCガイドラインに記載)は、カリフォルニア州のUCLを含む、州の消費者保護法の下で民事請求の根拠となり得る。(筆者注4)

  デヴ―ミとの和解により、偽のソーシャルメディアによるエンゲージメントの売り手に対する民事訴訟の道が開かれたが、買い手は、同様の結果に直面する可能性があることに注意する必要がある。州政府等の法執行行動と競合他社による民事訴訟の両方のリスクがあるため、ブランド企業はソーシャルメディアの足跡を人為的に増やすという誘惑に抵抗し、代わりに本物の人気を得ることに集中する必要がある。

 逆に、合法的に事業を行っているが偽造品を購入している競合他社にビジネス機会を失っているブランド企業は、連邦商標法の使用を検討し、不公正競争法を競争の場をより平等に保つためのツールとして考えるべきである。

2.2019年1.月30日のジェームス長官のリリース内容

 事実関係も含め、後記3.で述べる内容とほとんど重複するので略す。

3.米国BBB(Better Business Bureau)がいかにに厳しい目でデヴ―ミに類するビジネスをチェックしているか

 米国BBBGovernment ActionNY AG and Florida AG Announce Settlements With Sellers Of Fake Followers And “Likes” On Social Media の中心部を仮訳、同時に補足する。

 デヴーミに関する司法長官の調査結果は以下のとおり。

 Devrupt LLCとドイツのCalas、Jrが所有する関連会社であるDisruptX Inc.、Sociall Bull Inc.および Bytion Inc.(以上をまとめて「デヴ―ミ」という)は、 ソーシャル・メディア・プラットフォームのユーザーに、偽のフォロワー、「いいね」意見、その他の形式のオンラインでの支持と活動を販売した。デヴ―ミは、1)インターネットにおける自作自演(sock puppet accounts)とは、一つのウェブサイト上で、一人の人間が、同時に複数の人間が活動しているように見せかける行為を行った、2)挑発的メッセージを投稿するTroll、3)脆弱性のある多数のコンピューターを悪意を持って支配するボット(Bots)」等を使用して詐欺行為を行った、これらのボットおよびソックパペット・アカウントは、実際の人々の本物の前向きな意見を表現するふりをしていた。また、4)場合によっては、デヴ―ミは本人のソーシャル・メディアのプロファイルを「同意なし」にコピーした偽のアカウント(名前や写真など)を提供していた。

 さらに、デヴ―ミは、ソーシャル・メディア・インフルエンサー(Social Media Influencer :特定の業界で信頼性を確立しているソーシャルメディアのユーザーである。 大勢の聴衆にアクセスでき、彼らの信憑性と範囲によって他人を説得することができる)からの推薦を、インフルエンサーが彼らの推薦に対して支払われたことを開示することなく売却した。インフルエンサーの意見が、彼らが支持するあらゆる製品、会社、サービス、または人の評判と販売に特に強い影響を与える可能性があることを考えると、これは特に厄介である。

 これらのビジネス・プラクティスは、何を買うかについての消費者の決定スポンサーの対象に関する広告主の決定政策立案者、有権者、そしてジャーナリストによる、どの人々や政策が公的支援を受けているかについての決定につき、ソーシャルメディア・オーディエンスの意思決定につきだましたり、影響を及ぼそうとしていた。

 その他の多くのデヴ―ミの顧客は、偽の活動や支持を買っていることを知っていたが、デヴ―ミの商慣行は、誤って彼らが本物の保証を支払っていると信じていた自社顧客の一部を欺きました。デヴ―ミはまた、偽の活動を禁止する方針を持つソーシャルメディア・プラットフォームを偽った。

4.筆者のコメント

 以上述べたとおり、ロバート・フロイント弁護士のコメントは今後の類似のビジネスの乱立とその法規制の在り方につき、1つのヒント与えてくれると思う。

 時間の関係でここに引用されているFTCのFAQガイドや先例判決の内容には立ち入らないが、機会を改めて整理してみたい。

***************************************************************::

(筆者注1) Letitia "Tish" A. James (born October 18, 1958)司法長官のプロファイルを簡単に述べる。

 ニューヨーク州では、民主党のレティーシャ・A・ジェームス現ニューヨーク市政監督官(Letitia “Tish” James)が、キース・ウォフォード氏(共和党)を下し、アフリカ系黒人として初めての司法長官の座を確実にした。開票36.17%の時点で、ジェームス氏が78.79%を獲得。ウォフォード氏の19.69%に大差をつけた。

 ニューヨーク州では、エリック・シュナイダーマン元司法長官が性的暴行疑惑で2018年5月に辞任した後、バーバラ・アンダーウッド氏(Barbara Underwood)がNY州としては初の女性司法長官を務めていたが、同氏は出馬しなかった。

 ジェームズ氏は、トランプ氏の慈善財団や、政権の移民政策や環境政策に対するニューヨーク州による提訴事案を継続担当し、トランプ政権と引き続き対決していくことを表明している。

 

2019.1.1 司法長官に就任

Education

ニューヨーク市立大学のレ―マンカレッジCity University of New York, Lehman (BA学士)

ハーバード大学Howard University (JD:法学博士)

コロンビア大学Columbia University (MPA: 公共経営修士)

 なお、ニューヨーク州という激戦区の司法長官に選ばれたことは政治家(民主党)としてみたときに興味深い点であり、また、鮮明に反ランプの政治姿勢を明らかにしていることもきわめてユニークである。

 また、大学でのスピーチや就任スピーチをYoutube等で見たが、見かけの強引さだけでなく、優しい母親でもあり、ユーモアもありそうである。筆者も時間を見て同司法長官にEメールを送ってみたい。(返事が来るか(笑)?)

(筆者注2) 2019年1 月29日の BBC(日本語版)の記事は以下のとおり説明している(一部抜粋)。なお、記事の中でSNS用語が使われているので、筆者なりに補足した。

 デブーミ社のウェブサイトを見ると、同社は顧客に対し、ツイッターのフォロワー最大25万人までの注文を受け付けている。価格は12ドル(約1300円)から。「いいね!」やリツイートも購入できる。

Pinterest(ネット上のWebサイト・あるいはPinterest上にある画像を自分のボードに集めることができる画像収集サービス)やLinkedIn(世界最大級のビジネス特化型SNSおよび同サービスを提供するシリコンバレーの企業)、SoundCloud(ドイツのベルリンに拠点を置くSoundCloud Limitedが運営する音声ファイル共有サービス)やユーチューブなどについても、フォロワーを販売している。

同社のウェブサイトには「私たちは20万以上の事業、著名人、音楽家、ユーチューバー、その他のプロを支援してきました。注目度を高め、客に大きな影響を与えられるよう、お手伝いしてきました」と書かれていた。

会社登記はニューヨーク市だが、ニューヨーク・タイムズ紙によるとこれは見せかけで、実際の事務所は米フロリダ州にあるという。また、フィリピンでも従業員を雇っているという。

(筆者注3) Grasshopper House, LLC v. Clean and Sober Media LLC et al 事件判決はManning Int'l Inc.対Home Shopping Network、Inc.事件(152 F. Supp. 2d 432,437(SDNY 2001)を引用して、「原告は、Lanham法に基づく虚偽の広告を主張するための基礎としてFTCガイドラインに頼ることができ、また依拠すべきである」と述べた。 

(筆者注4) See Rubenstein v. Neiman Marcus Grp. LLC, 687 F. Appx 564, 567 (9th Cir. 2017)([A]lthough the FTC Guides do not provide a private civil right of action, [v]irtually any state, federal or local law can serve as the predicate for an action under [the UCL].’”) (quoting Davis v. HSBC Bank Nev., N.A., 691 F.3d 1152, 1168 (9th Cir. 2012)).

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移動体通信事業者の顧客のトラッキング専門会社サイトで主要な米国の移動体通信事業者のすべての顧客はリアルタイムで他のユーザーの同意なしに閲覧可能となったのか?(その1)

2018-06-13 14:04:45 | 消費者保護法制・法執行

 

  さる5月18日に筆者の手元に米国のサイバー問題で最も専門性が高くかつ取組みが具体的なBlogサイト”KrebsonSecurity”(セキュリティ専門・調査報道が中心)の主幹であるブライアン・クレブズ(Brian krebs)氏から「移動体通信事業者の顧客のトラッキング専門会社”LocationSmart”サイトで、主要な米国の移動体通信事業者のすべての顧客は、リアルタイムで他のユーザーの同意なしに閲覧化可能となったのか?」 (後続の記事参照)と題する記事が届いた。それと前後して、ZDnet 、NewYork Times等のメディアも米国の他のトラッキング専門会社が本人の同意なしに法執行機関にトラッキング情報を譲渡あるいは売却していたなどのリーク記事が公表された。 

 この問題につき、筆者の関心は次の点に集約できると考えた。

①マーケティング支援ビジネストしてトラッキング専門会社の情報保護法等関係法から見た有効性、②トラッキング専門会社のシステムの脆弱性の中身と漏えい時のシステムのリカバリー体制、③電気通信事業者のこの問題の見方と取り組み、④連邦通信委員会(FCC)や連邦取引委員会(FTC)等監督機関の従来の取り上げ方や今後の調査の動向、⑤トラッキング・ビジネス規制にかかる連邦および州法の立法動向、⑥このビジネスに関する連邦議会の関係議員の見解と対処、⑥わが国で同様の問題はないと言えるのか等である。 

 かなり広範囲の問題であり、またそれぞれが専門性も高いテーマである。今回は第1回目として、KrebsonSecurity Blogにもとづき「事実関係」と①、③、⑤を中心にまとめた。できるだけ補足しながら解説をしたいと考えたが、時間も限られることから、やや正確性を欠く点は覚悟でまとめてみた。 

1.事実関係及び関係者の取組内容の概観

 はじめに、KrebsonSecurity Blogの内容が最も関係する問題を網羅しているので主要な部分を仮訳する。なお、時間の関係で同Blogは関係サイトとのリンクは十分には張られていない。このため、筆者の責任で追加的にリンクを張った。 

(1) ”LocationSmart”のユーザーの正確な位置情報がパスワードや認証なしに誰でも見れる状態が発覚 

 携帯電話事業者のユーザーの正確な位置情報に関するリアルタイム・データを集約する米国企業である”LocationSmartは、 パスワードや認証または認可を必要とせずに、同社のWebサイトのバグを原因とするコンポーネントを介して誰にでもこの情報を漏らしていることを”KrebsonSecurity”は検知した。”LocationSmart”は”KrebsonSecurity”からの連絡を受けて、5月17日(木)午後の早い段階でこの脆弱なサービスを遮断した。”LocationSmart”は、米国内のAT&T 、 Sprint 、 T-Mobile  、 Verizonの電話発信位置情報を数100ヤードの範囲で捕捉するサービスである。  

 5月10日(木)、 ”New York Times” は、 ”Securus Technologies” と呼ばれる別の携帯電話ロケーション追跡会社が、事実上すべての主要なモバイル・ネットワーク・プロバイダの顧客に関するロケーション・データをミズーリ―州ミシシッピー郡保安官事務所に売却または譲渡したというニュースを報じた。 

 5月15日(火)、 ZDnet.com  は、 Securusがカリフォルニア州のカールスバッドにある仲介業者”Location Smart”を通じてデータを取得しているという記事を掲載した。 

5月16日(水)午後、米国メディア「マザーボード(MOTHERBOARD)」は、もう1つの爆弾情報を公開した。ハッカーがSecurusのサーバーに侵入し、Securusが認定したユーザーのユーザー名、電子メールアドレス、電話番号、パスワードをハッキングした。 伝えられるところによると、盗難された認証情報のほとんどは、全米の法執行官がログオンに使うもので、その対象期間は2011年から2018年までである。

  ”KrebsonSecurityは、前述のマザーボードの記事が出る数時間前にカーネギー・メロン大学「人間とコンピュータの相互作用研究所(Human-Computer Interaction Institute)」に在籍する博士論文提出資格者である研究者ロバート・シャオ(Robert Xiao) (筆者注1)は”Securusと”LocationSmart”の報道を知って、”LocationSmartが潜在的な可能性についてWebサイトで公開しているデモ・ツールを覗いた顧客が行いうるモバイルロケーション・テクノロジーをテストしたと述べた。 

LocationSmartのデモ・ツール(デモ・サイト:https://www.locationsmart.com/try/は、すでに閉鎖されている)は、氏名、電子メールアドレス、電話番号をサイトのフォーム(My Mobile)を選択、POST要求を入力するだけで、誰でも自分の携帯電話のおおよその位置を見ることができる無料のサービスである。 ”LocationSmart は、ユーザから提供された電話番号をテキスト化し、そのデバイスの最も近い基地局のタワーにネットワーク接続許可を要求するのである。 

2018.5.27 https://www.locationsmart.com/platform/location

World's Largest Location-as-a-Service Company

https://www.locationsmart.com/

 その同意が得られると、”LocationSmart”は加入者に彼らのおおよその経度と緯度をテキスト化し、Google Street Viewマップ上に座標をプロットする。このことは、潜在的にあなたのモバイル・デバイスに関する多くの技術データを収集して保存する。たとえば、情報には「デバイスの緯度/経度、精度、見出し、速度、標高、基地局(cell tower)、Wi-Fiアクセスポイント、またはIPアドレス情報が含まれるが、これらに限定されない。 

 しかし、 カーネギー大学のシャオ氏によると、この同じサービスは、匿名の照会や不正照会を防ぐための基本的なチェックを実行することができなかった。つまり、Webサイトの仕組みに関する知識が少ない人でも、”LocationSmart”のデモサイトを悪用して、パスワードやその他のアクセスの資格情報を入力する必要がなく 、携帯電話の番号検索を行う方法を見つけ出す可能性がある。 

 シャオ氏は「私はほとんど偶然にこのような事件に遭遇したが、手順はそれほど難しいことではなかった、これは最小限の労力で誰でも発見できる。そして、その要点は、ほとんどの人の携帯電話を彼らの同意なしに追跡することができるということである」と述べた。  

 また、加入者の携帯端末に最も近い携帯電話の無線基地局に接続確認するために”LocationSmartのサービスに確実に問い合わせることができたことを示した。シャオ氏は、友人がアクセスしている数分間に何度も友人の携帯電話番号を確認しえた。 友人のモバイルネットワークに数分かけて何度も接続確認ることで、彼は座標をGoogleマップに差し込み、友人の携帯電話指向性の動きを追跡することができた。  

  シャオ氏は「これは本当に怖いものだ。また、ボランティアがカナダのあるTelus Mobilityのモバイル顧客に対して脆弱なサービスをテストし、追跡に成功した」と述べた。  

 ”LocationSmart”のデモ・サイトが本日オフライン(遮断される)になる前に、KrebsonSecurityは5人の異なる信頼できる情報源に接続確認を行い、5人すべてがシャオ氏が自分の携帯電話の所在を特定することに同意した。シャオ氏は、「公共のLocationSmartサービスに、私の5つのソースすべてに属する携帯電話のほぼ正確な位置を問い合わせることを数秒で決定づけることができた。」と語った。  

(2) LocationSmartのデモページへのシャオ氏と協力者の検証の結果 

 これらのデモテストの情報源の1人は、シャオ氏のデモサイトへの質問によって返ってきた経度と緯度は、 現在の自分の現在位置から100ヤード以内に位置したと語った。別の筋によると、シャオ氏が見つけた場所は、正しい現在地から1.5マイル離れていたという。 残りの3人の関係者は、携帯電話で返される場所は、当時約1/5〜1/3マイルの距離にあったと述べた。  

 LocationSmartの創設者兼CEOである マリオ・プロリッティ(Mario Proietti )氏は、電話でコメントを求められたが、「同社は調査中だと語り、また、私たちはデータをあきらめていない。正当で許可された目的で利用できるようにする。これは、合意に基づいてのみ行われる、正当で認可されたロケーションデータの使用に基づいている。我々は、プライバシーを真剣に受け止め、すべての事実を見直して調査する」と述べた。 

 ”LocationSmartのホームページには、米国の主要なワイヤレス・プロバイダー4である Google 、 Neustar (筆者注2)、 ThreatMetrix (筆者注3) 、 US Cellular (筆者注4)などの企業の企業ロゴが含まれている。 同社は、同社の技術が企業の遠隔の従業員や企業資産を把握するのに役立ち、モバイル広告主やマーケティング担当者が消費者に「地理に関連した宣伝」を提供するのを助けると語っている。  

 また、”LocationSmart”のホームページには多くのパートナーが掲載されている。 

  LocationSmartがデモサービスを提供された期間や同サービスがどれほど長い間許容されていたかは明確でない。 Archive.org からのこのリンクは 、少なくとも2017年1月にさかのぼりうることを示唆している。The Internet Archiveのこのリンクは、2011年中頃からサービスが別の会社名 - loc-aid.comの下に存在していた可能性があると示唆している。サービスは同じコードを使用していた。  Domaintools.com によると、 Loc-aid.comは、locationsmart.comと同じサーバーでホストされている4つの他のサイトの1つである。  

 ”LocationSmartのプライバシーポリシーによると、同社にはセキュリティ対策が講じられているとのことである。「当社が収集した情報の紛失や誤用からサイトを守るため、当社のサーバーはファイアウォールによって保護されており、セキュリティをさらに強化するために物理的に安全なデータ設備に配置されている。 外部の攻撃から100%安全なコンピュータはありませんが、個人情報を保護するために取った手順は、情報の種類に適したセキュリティ問題の可能性を大幅に低下させると考えている」 

 しかし、これらの保証はいつでも彼らの物理的な場所を明らかにすることを心配している携帯電話を持っている誰にでも中空になるかもしれない。 モバイル・ロケーションデータをルックアップするために悪用される可能性のあるLocationSmartのWebサイトのコンポーネントは、Webサイト訪問者による特定のクエリに応答してデータを表示するように設計された、安全でないアプリケーションプログラミングインターフェイスまたはAPIである。 

 ”LocationSmartのデモ・ページでは、ユーザーが携帯電話をサービスに配置することに「同意」する必要があったが、実際”LocationSmartは明らかにAPI自体との直接的なやりとりを防止または認証を行わなかった。 

  API認証の弱点は珍しいことではないが、短期間で多くの人に機密データを公開する可能性がある。2018年4月2日、KrebsOnSecurity は、 Fast-casualベーカリーチェーンPaneraBread.comのWebサイトで食品をオンラインで注文するためにPaneraBreadのアカウントにサインアップした者が、数千万の顧客のために名前、電子メールアドレス、物理アドレス、誕生日、クレジットカードの最後の4桁を公開したAPI の話を取り上げた。 

  ロン・ワイデン(Ron Wyden 民主党、オレゴン州選出)上院議員(財政委員会のランキング・メンバー)は、 Securusリスク暴露記事を受けて、全米トップ4つの無線通信会社と米国連邦通信委員会に送った5月9日付けの手紙で、すべての当事者に対し、非公開の顧客データの無制限の開示と潜在的な濫用問題につき先を見越した手順をとるよう強く求めた。  

 ワイデン議員は、「Securusは、AT&Tの顧客のリアルタイムの位置情報を主要な無線通信事業者との商業的関係を持つ第三者ロケーション・アグリゲータを通じて購入し、政府の顧客と定期的に情報を共有することを私のオフィスに通知してきた。この実務では、無線通信事業者の法的義務が、政府がアメリカの電話記録の監視を行い、何百万人ものアメリカ人を政府の潜在的な虐待と未確認の監視にさらす唯一の道筋になるといえる」 

 ”Securus”は、LocationSmartから携帯電話の位置情報を入手したと報じられているが、ニューヨークタイムズに対し、顧客が令状や宣誓供述書などの法的文書をアップロードし、その活動が承認されたことを証明するよう要求している。 しかし、ワイデン議員は自身の手紙で、「Securusの上級幹部は、実際に裁判所命令であるかどうかを判断するためにアップロードされた文書の合法性を決して確認せず、そうする義務があるという提案を却下していた」と述べている。  

  ”SecurusはBrian Krebsからのコメントの要求に応答しなかった。  

(3) 電子通信事業者の反応 

  ATTSprintT-MobileVerizonこの問題につきどう対処しようとしているかは不明である。 顧客の位置情報を漏らしているサードパーティ企業(位置情報追跡企業)は、各モバイルプロバイダーのプライバシー・ポリシーに違反するだけでなく、リアルタイムでこのデータを公開すると、米国内のすべてのモバイル・ユーザーにプライバシーとセキュリティのリスクが深刻な影響を及ぼす。 

 ”LocationSmartWebサイトのコーポレート・ロゴによってそれぞれリストしているにもかかわらず、大手通信事業者の中には”LocationSmartとの正式なビジネス関係を確認または拒否するものはない。 

 AT&Tのスポークスマン、 ジム・グリア(Jim Greer)氏は、「AT&Tは『顧客の同意』または『法執行機関の要請』がなければ、ロケーション情報の共有を許可しない。第三者たるベンダーが当社のポリシーを遵守していないことを知った場合は適切な措置を講じる」と述べた。  

 T-MobileBrian Krebsに対し、無線通信業界の国際協会であるCTIAが定めた「GPS位置情報等を利用した位置情報サービスに関するベスト・プラクティス・ガイドライン(Best Practices and Guidelines for Location-Based Services )」に準拠した自社のプライバシー・ポリシーに言及した。  

 また、”T-Mobile” の広報担当者は、「ワイデン上院議員の手紙を受け取った後、”Securus”と”LocationSmart”への顧客のロケーションデータの取引を直ちに停止する。また、顧客のデータのプライバシーとセキュリティを非常に真摯に受け止めている。SecurusとLocationSmartで確認された問題を解決し、そのような問題が解決され、お客様の情報が保護されるようにした。また、 我々はこの問題につき調査し続けている」と述べた。  

 ”VerizonはKrebsに対し自社のプライバシー・ポリシーに言及した。  

”Sprint”の責任者は、以下の声明を発表した。 

 「お客様のプライバシーとセキュリティを守ることが最優先事項であり、私たちはプライバシー・ポリシーでその点を明確にしている。 念のため明らかいうと、当社は、消費者の機密情報を第三者に共有または売却することはない。 私たちは、個人的に識別可能な地理的位置情報を顧客の「同意を得て」、または「法執行機関からの有効な裁判所命令」などの合法的な要求に応じて共有する。  

 「私たちは、ワイデン上院議員から手紙で提出された質問に対し、適切なチャネルを通じて直接答えた。ただし、SprintとSecurusの関係にはデータ共有は含まれていないことに注意することが重要であり、刑務所携帯電話の不正使用を矯正施設で阻止する努力を支援する目的に限定されている。」 

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(筆者注1)  ロバート・シャオ(Robert Xiao):カーネギーメロン大学「人間とコンピュータの相互作用研究所(Human-Computer Interaction Institute)」 に在籍する博士論文提出資格者で、2018年11月のブリテッシュコロンビア大学の助教に就任予定。

 なお、HCIについて補足しておく。「ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI: Human-Computer Interaction)は,人とコンピュータとのインタラクション(相互作用)に関する学際的な研究領域です.人とコンピュータとのインタラクションのみならず,人とロボットを代表とするような機械とのインタラクション,人と人とのインタラクション(あるいはコミュニケーション)も研究の対象となります.ユビキタス社会,知識協創社会の実現へ向けて,ヒューマンコンピュータインタラクションに関する研究は今後ますます重要になると考えられています. 

 ヒューマンコンピュータインタラクションの研究では,より良いインタラクションを実現するコンピュータシステムのデザイン,実装,評価をおこなうために,コンピュータシステムを利用する人間(ユーザ)への理解を深く追求することが必要となります.我々の研究グループでは,計算機科学をベースとして,認知科学,心理学,文化人類学,社会学,言語学,学習理論,デザイン理論,色彩理論などの分野で確立された知見を応用し,現在下記の研究テーマに取り組んでいます」( 国立大学法人・奈良先端科学技術大学院大学サイトから引用) 

(筆者注2) ”Neustar、Inc.”.は、インターネット、テレコミュニケーション、エンターテイメント、マーケティング業界向けのリアルタイムの情報と分析を提供する米国のテクノロジー企業であり、グローバルコミュニケーションやインターネット業界に情報センターとディレクトリサービスも提供している。(Wikipedeiaを仮訳

(筆者注3) Threatmatrixを一言でいう高度の技術をもって各種ビジネスや個人活動を支援するデジタル・アイデンティティ・カンパニーである。日本語解説サイト(https://www.threatmetrix.com/ja/cyber-security-solutions/payment-processing/)を参照されたい。 

(筆者注4) US Cellular Corporationは、米国内で5番目に大きな無線通信ネットワークを所有し、運営する地域通信事業者であり、2017年第1四半期時点で米国23州426市場で500万の顧客にサービスを提供している。 同社はイリノイ州シカゴに本社を構えている。(Wikipedia から一部引用、仮訳)。

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移動体通信事業者の顧客のトラッキング専門会社サイトで主要な米国の移動体通信事業者のすべての顧客はリアルタイムで他のユーザーの同意なしに閲覧可能となったのか?(その2完)

2018-06-13 13:17:17 | 消費者保護法制・法執行

 (4) 今何が問題か? 

 米国人権擁護NPOの「電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation:EEF)」のスタッフ弁護士であるステファニー:ラカンブラ(Stephanie Lacambra)は、米国内の無線通信の顧客は、自分の携帯電話会社による位置情報の追跡をオプトアウトできないと述べた。すなわち、まず通信事業会社は、この情報を使用して、より信頼性の高いサービスを顧客に提供する。また法律では、無線会社は「緊急の911規制」 (筆者注5)に準拠するために、いつでも顧客の携帯電話のおおよその位置を確認できる必要がある。

 「しかし、議会や連邦規制当局が、顧客の位置情報を第三者と共有する方法をより明確にしない限り、モバイル・デバイスの顧客は、サードパーティの企業によって潜在的にその位置情報を公開される可能性がある。これが、私たちが位置情報のための堅牢なプライバシー保護のために懸命に働いた理由である。法的執行機関がこのような令状を得るために必要とされるのは本当に唯一のものでなければならない。それが我々が推進しようとしてきたルールである」と彼女は述べた。 

 また、ワシントンDCの政策シンクタンクである「デモクラシー・テクノロジー・センター(Center for Democracy & Technology)」の政策担当部長、クリス・カラブレース(Chris Calabrese)氏は、次のとおり述べた。「モバイル加入者の位置情報に関する現行の取扱規則は1986年に制定された「電子通信プライバシー法(Electronic Communications Privacy ActECPA)であり、それ以来、実質的に改正されていない。  

 「この法律(ECPA)は実際に古くなっている。しかし、法執行や法執行の要求であることを確認していない第三者への関与や、その要求の背後にある証拠が正当なものかどうかを確認しないプロセスには、大きな問題があり、かつ重大なプライバシー違反である。  

 「移動体通信事業者が位置情報を機微的に扱わなければならないと思っても驚かれるだろうし、この情報を一般に公開したくないと確信している。私の推測では、移動体通信事業者は、これが最悪の悪夢のようなものだからこそ、厳しく対応するであろう。我々すべては、携帯電話はポータブル・トラッキング・デバイスであることを知っている。また我々はそこから多くの利益を得ることができるので、私たちはそれをOKとするが、同時に我々は、この情報が十分に保護されるべきだという何らかの暗黙的な取引がある。しかし、私はもしその保護策がそうでないときは大きな問題を抱えることになり、非常に迅速に修正されなければ、これらの事故例はある種の立法介入を拍車することになると思う」とカラブレース氏は続けた。 

 他方、シャオ氏は、「移動体通信事業者が第三者企業に顧客のロケーション情報へのアクセスを提供している限り、SecurusやLocationSmartなどのロケーション・トラッキング企業からの情報のリークが多くなる可能性が高い。また、このようなデータへのアクセスがはるかに厳密に管理できるようになるまで、このような違反が起きるのを引き続き注視していく必要がある」と述べた。 

 実際、ワイデン上院議員は、この話に応じて、518()に次の声明を発表した。

 「 Securus甘いセキュリティが公開されてから、わずか数日後に起こったこのロケーションデータのリークは、ワイヤレス・エコシステム全体のどのような企業がアメリカ国民のセキュリティをいかに低く評価しているかを示している。 それはプライバシーだけでなく、すべてのアメリカ家庭の財政的および個人的な安全にも、明らかでかつ現在の危険を表している。 ワイヤレス通信事業者や”LocationSmartは、携帯電話でアメリカ人のロケーション情報を追跡するために、ウェブサイトに関する基本知識を持つハッカーをほとんど容認しているようである。さらに、アメリカ人の安全に対する脅威は深刻である。ハッカーがこのサイトを使ってあなたが家にいる時間を知って、いつ盗みに入れるかを知ることができた。また、誘拐犯はあなたの子供の携帯電話を追跡して、彼らが一人であることを知ることができた。”LocationSmartや他の企業活動の危険性は無限であるう。FCCがこの漏えい事件後に対処すべき行動を拒否すれば、アメリカ人に対する将来の犯罪がFCCの委員長になるだろう」  

   マーク・ワーナー(Mark Warner)上院議員(ヴァージニア州選出 民主党)も次の声明を発表した。  

「これは昨年の多くの開発のうちの1つで、消費者が実際にデータを収集し使用する方法について暗闇にいることを示している。データを使用する方法については、ユーザーを運転席に置く21世紀の新ルールが必要という証拠だ」  

 518(金)にKrebsOnSecurityの記事に対する声明において、「”LocationSmar”は基本的知識を持つハッカーをほとんど容認しているようである。”LocationSmart”は、企業顧客(enterprise customer)に安全な運用効率をもたらすために努力するエンタープライズ・モビリティ・プラットフォーム(筆者注6)を提供する。 ”LocationSmartのプラットフォームを介したロケーション・データの開示は、個々の加入者から最初に受け取った「同意」に依存している。サイバーセキュリティの研究者であるシャオ氏がオンラインデモで最近確認した同意メカニズムの脆弱性は解決され、”LocationSmart”の試行デモ・サイトは現在無効になっている。 さらに、この脆弱性が5月16日より前に悪用されておらず、許可なく得られた顧客情報が実際リークされていないことを確認した。 

 しかし、516日、シャオ氏は”Location Smart”プラットホームの脆弱性を悪用して24人もの加入者を見つけた。シャオ氏の公開声明に基づき、Krebsグループは、シャオ氏が個人的に同意を得た後にのみ加入者であると理解している。”LocationSmart は、単一の加入者の所在地が同意なしにアクセスされたのではなく、他の脆弱性が存在しないことを確認する努力を続けている。”LocationSmartは、情報のプライバシーとセキュリティ対策を継続的に改善することを約束し、この事件から学んだことをそのプロセスに組み込んでいる。  

 この文脈において、”LocationSmart”が誰が許可なく得た顧客情報を引き出された「顧客」に当たるかは明らかでない。したがって、サービスの「バグが多いアプリケーション・プログラミング・インターフェース(vuggy API)」を悪用して検索された人は、明らかにすべてが「顧客」とはみなされない。 

2.米国における電気通信事業者の法規制の内容

 わが国の総務省が平成26(2014)7月に取りまとめた報告書「緊急時等における位置情報の取扱いに関する検討会 報告書 :位置情報プライバシーレポート ~位置情報に関するプライバシーの適切な保護と社会的利活用の両立に向けて」16以下から、一部抜粋する。ただし、この資料は必ずしも十分かつ正確なものとはいい難い。適宜筆者が補足(下線部が筆者の追加箇所)して引用する。また、必要に応じ筆者の責任で関係先にリンクを張った。 

 「米国においては、個人情報・プライバシーに関する分野横断的な法律は存在せず、分野毎の個別法と自主規制が基本となっている。電気通信分野においては、1934通信法(Communications Act)第222(§ 222. Privacy of customer information)で顧客情報のプライバシーを規定しており、電気通信事業者は、電気通信サービス加入者の通信パターン、請求記録等の消費者固有のネットワーク情報(CPNI)に関して、集計顧客情報(集計データで、個人顧客の身元及び特徴が除去されているもの)については、通信目的外での利用や公開を許容されている。(本報告の後ではあるが米国の取組みとして、2016年10月27日、FCCは「ブロードバンド顧客プライバシー保護規則」を最終決定した。この規則については筆者のBlog 小向教授の論文が詳しい。 

 自主規制としては、携帯電話に代表される移動体通信や無線インターネットなど無線通信に関する国際的な業界団体であるCTIA、「GPS位置情報等を利用した位置情報サービスに関するベスト・プラクティス・ガイドライン(Best Practices and Guidelines for Location-Based Services )(全10頁)」を平成22年3月に設けている。その二大原則として、位置情報サービス提供者は、位置情報がどのように利用・開示・保護されるかについてユーザーに通知し、その利用・開示について「同意」を求めることとされている。なお、集計データ及び匿名データはガイドラインの対象外となっている。

 加えて、 連邦取引委員会(FTC)はモバイル端末上の利用者情報の取扱いについて、スタッフレポートとして「モバイルプライバシーディスクロージャーズ:透明性の確保による信頼の構築(FTC Staff Report | February 2013:Mobile Privacy Disclosures:Building Trust Through Transparency)」を平成25年2月に公表しており、この中では、OS事業者、アプリ開発者双方に対し、位置情報についてはセンシティブ情報として、取得前に消費者に通知し、明白な同意をとることが提言されている。」以下、略す。 

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((筆者注5) クレブズ氏のBlogには詳しく説明されていないので、以下の解説文を補足する。

「連邦通信委員会(FCCは、20119月、次世代緊急通報(Next Generation 911)の構築に向けた規則策定を開始した。次世代緊急通報とは、従来の音声通話による緊急通報の付加機能として、IPベースでのテキスト・メッセージによる通報(Te x t-to-911)や、画像、動画の受付も可能にしようとするものである。なお、米国で導入が検討されているのは、全国ベースでの位置情報を付加したテキスト・メッセージによる緊急通報機能であり、障害者の利用や緊急時に音声通話ができない場合を想定している。また、FCCは、201212月には、Te x t-to-911を全国的に導入することで大手移動体通信事業者と合意した。(以下、略す)(一般財団法人マルチメディア振興センター 情報通信研究部 副主席研究員 田中絵麻「米国における次世代緊急通報「Text-to-911」の導入動向」 

 なお、平成19年4月1日より実施されている、わが国の携帯電話やIP電話につきdocomo等キャリアが提供する緊急通報位置通知(携帯電話からの緊急通報(110番、118番、119番)を発信した際、通話が接続された緊急通報受理機関に対して、発信された場所に関する情報を自動的に通知)も類似のシステムといえよう。 

(筆者注6) エンタープライズ・モビリティ・プラットフォーム(企業のモバイル管理戦略;)は、以下で例示するようにIT戦略企業の共通テーマとして多くが取り上げられている。しかし、筆者なりに考えると、”LocationSmart”が提供しているリティール事業者、メーカーなどに向けたマーケティング情報とは目的が異なるように思える。モバイル主体の「同意」の意義も変わってくるため、これらを混同しないことがまず大前提となろう。

1)ORACLE Mobile(https://www.oracle.com/jp/solutions/mobile/index.html)

2)CITRIX(https://www.citrix.co.jp/enterprise-mobility-management/)

3)FUJITSU EMS(Enterprise Mobility + Security)  (http://www.fujitsu.com/jp/services/application-services/application-development-integration/ms-solutions/services/ems/)

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