Civilian Watchdog in Japan-IT security and privacy law-

情報セキュリティ、消費者保護、電子政府の課題等社会施策を国際的視野に基づき提言。米国等海外在住日本人に好評。

BSIは2015年版「ドイツのITセキュリティの現状に関する報告書」を発行

2015-11-30 11:55:30 | サイバー犯罪と立法

ドイツ連邦情報セキュリティ庁(BSI)の概観写真

Last Updated:April 2,2021

  11月20日 (金)夜10時頃から厚生労働省のHPへのアクセスが不能となるいわゆる「DDoS攻撃」を受け、国際的ハッカー集団アノニマスが声明を出したというニュースがまことしやかに伝えられている。本ブログ原稿を書いている11月21日(土)午前9時過ぎになってもアクセス不能は解消されていない。同省は対外接続を遮断したのである。

 今回のDDoS攻撃はあきらかに「APT攻撃」である。ATP攻撃とは簡単にいうと「特定の相手に狙いを定め、その相手に適合した方法・手段を適宜用いて侵入・潜伏し、数か月から数年にわたって継続するサイバー攻撃のこと」とされている。もし、このような攻撃が仮にわが国のさらに重要な国家機関、国防機関、基幹産業等への情報インフラ・システムに向けられたとしたら、テロどこではないリスクが発生することは言うまでもない。

  ところで、筆者の手元にこの分野ではわが国以上に感度の高いと思われるドイツの「連邦情報セキュリティ庁(Bundesamt für Sicherheit in der Informationstechnik:BSI)」が11月19日に「2015年情報セキュリティ白書(BSI veröffentlicht Bericht zur Lage der IT-Sicherheit in Deutschland 2015)」を公表した旨のニュースが届いた。 

 同ブログは、具体的な内容には欠けるものの、国家の基幹インフラのリスク対策問題に疎いとされるわが国のIT関係者やシステム運営責任者等への、今取り組むべき重要課題に関する警告の意味で仮訳する。 

 ○ドイツ連邦情報セキュリティ庁( Bundesamt für Sicherheit in der Informationstechnik:BSI) (筆者注1)、「ドイツ連邦2015年版 ITセキュリティの現状に関する報告書(Die Lage der IT-Sicherheit in Deutschland 2015)」 (52頁)を発表した  (筆者注2)(筆者注3)ベルリンで連邦内務大臣トーマス・デメジエール(Thomas de Maizière)とBSI長官ミハエル・ハンゲ(Michael Hange )は、同報告書を公表した。

 同報告書は、現在のドイツのITセキュリティの状況およびサイバー攻撃の原因と各機関への攻撃について説明、分析したものである。BSIは同年次報告書から引き出されるドイツにおけるITセキュリティを向上させるための解決策について議論した。 

 年次報告書によると、ITシステムにおける弱点や脆弱性が原因とされる事故の発生件数は依然、高いレベルのままであり、またサイバー空間での非対称脅威が危険にさらされていることを示している。 2015年の一連のITセキュリティ事件を見ると、サイバー攻撃の手段および方法の急速な専門化を示している。

 ○これはAPT攻撃(APT)(筆者注4)と呼ばれる攻撃について特に当てはまる。これらAPTは、企業や行政機関に対する大きな脅威を現在および将来に引き起こす。 APT攻撃の実態はほとんどは一般に多くは知られていない。 しかし、このカテゴリに当てはまるものとしては、2015年は5月のドイツ連邦議会へのサイバー攻撃や同4月にフランスのテレビチャンネルTV5モンドへのサイバー攻撃等が含まれる。 

  現在のITセキュリティ状況は、情報技術の革新と複雑さの継続的な高い率と世界のIT市場における競争圧力の影響を受けている。 現在進行中のデジタル化は、主に機能的および経済的要因を通じ、グローバルな視点で決定される。  ITセキュリティの側面は、さまざまな理由からプロバイダーやユーザーにより同一視されない。 

○本レポートの主要目標:重要インフラの保護  

 2015年BSI年次報告書の一つの焦点は、ITへの依存度を高める機能面の重要インフラの保護である。 年次報告書は、多くの重要なインフラ産業はよく自社のITセキュリティにつき安全な位置づけにあるといえる状況を示している。しかし、いくつかの産業ではITセキュリティにつき累積的需要(pent-up demand)がある。 ダイナミックな脅威の状況を考えれば、企業のリスク管理の一環として、ITセキュリティを検討することは他の企業や機関のためだけでなく、重要なインフラストラクチャといえる。  

  BSI長官ミハエル・ハンゲは「すべての企業にサイバー攻撃が行われているという事実に適応する必要があり、また、その損害を大幅に低減するには、強化する必要がある被害の予防、検出および対処の柱の強化しなければならないと述べている。  

 ドイツのITセキュリティ状況の詳細については、BSIのウェブサイトでダウンロードが可能であり、「2015年版ITセキュリティの状況に関する報告書」として利用できる。  

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(筆者注1) BSI (Bundesamt für Sicherheit in der Informationstechnik) は、ドイツの連邦政府においてコンピュータと通信のセキュリティ担当部門である。コンピュータ・アプリケーションのセキュリティ、重要インフラ (critical-infrastructure) の保護対策、インターネットセキュリティ、暗号、盗聴対策、セキュリティ製品の認証、およびセキュリティ評価機関 (test lab) の認定を、専門分野および責任範囲としている。 ボンに本拠を置き、職員数は 約600 名を超える。2009年10月16日より Michael Hange  が長官を務めている。Wikipediaから一部抜粋。 

(筆者注2) BSIのいわゆるセキュリティ白書は原則、毎年12月頃発刊されており、同時に英語版もほぼ毎年出されている。過去の英語版へのリンク手順を以下解説する。なお、BSIの白書の英訳版は2015年以降は、2016年版(https://www.bsi.bund.de/SharedDocs/Downloads/EN/BSI/Publications/Securitysituation/IT-Security-Situation-in-Germany-2016.html)、2018年版(https://www.bsi.bund.de/SharedDocs/Downloads/EN/BSI/Publications/Securitysituation/IT-Security-Situation-in-Germany-2018.html)である。

①BSIのHP(https://www.bsi.bund.de/DE/Home/home_node.html)を開く

②右上の”service”を選択

 

③さらなるテーマ別を選択→刊行物一覧

④更なる刊行物の検索(Publikationsuche)をクリック

⑤年度別白書の選択、ドイツ語版が表示(必ずダウンロードして読む)

「2015年ドイツのITセキュリティの状況(Die Lage der IT-Sicherheit in Deutschland 2015)」

(https://www.bsi.bund.de/SharedDocs/Downloads/DE/BSI/Publikationen/Lageberichte/Lagebericht2015.html#:~:text=Der%20Bericht%20zur%20Lage%20der,Cyber%2DRaum%20sich%20weiter%20zuspitzt.)

⑥その次が英語版のITセキュリティ白書「The State of IT Security in Germany 2015」(https://www.bsi.bund.de/SharedDocs/Downloads/EN/BSI/Publications/Securitysituation/IT-Security-Situation-in-Germany-2015.pdf?__blob=publicationFile&v=1)

 

 なお、”APT”が具体的に取り上げられたのは、2014年版からである。 

(筆者注3) BSIのプレスリリースから報告書の全文(PDF:52頁)に当ろうとすると失敗する。本文中のURL表示にミスがあったためである。本ブログでは、筆者が独自にリンクを貼ったので問題ないと思うが、11月26日にBSI事務局の技術責任者であるフロリアン・ヒレブラント氏(Florian Hillebrand)にメールを送ったところ、翌27日にお礼のメールが届いた。登録上の技術的な理由から訂正はできないが、今後このようなミスを起こさないよう注意するという内容である。 

(筆者注4) APTによる攻撃の定義および対処策について参考とすべきサイトをあげておく。 

(1)中尾康二 独立行政法人情報通信研究機構(NICT)・KDDI株式会社情報セキュリティフェロー「サイバー攻撃と最近の対策ー安心・安全なサイバー空間の利活用に向けてー」:P.18からP.22でATPによる攻撃の事例やその特性を解説 

(2) 2014年9月30日独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のリリース「『高度標的型攻撃』対策に向けたシステム設計ガイド」の公開 を参照。

(3) IPAの『高度標的型攻撃』対策に向けたシステム設計ガイド(本文130頁)

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「パリの過激派連続テロの影響はEU自体の根本的制度見直しにつながりうる重要問題と考えるべき」

2015-11-21 17:40:51 | EU加盟国・EU機関の動向

 11月13日のテロ事件は内外の多くのメデイアが取り上げ、人権問題は埒外に飛ばされたように思える。この1年だけを見てもEUが抱える問題は、ギリシャの経済財政危機問題、トルコのEU加盟問題、移民・難民問題等、多くの課題をかける中で今回のテロ事件が起きたといえる。 

 このEUテロ対策については、EUの行政機関である欧州委員会、欧州議会等でこの1年間だけを見ても国際協調の中で、多くの決定等がなされているはずであり、筆者も日頃ウォッチしているEU関連サイトでもそのように受け止めていた。 (筆者注1) 

 しかし、11月13日以降のEUのリーダー役である欧州連合理事会を中心とする動きを見ていると、必ずしも本気で取り組もうとしているのか、各国の利害が錯綜し、国連やNATOさらにはインターポールやユーロポール(Europol:欧州刑事警察機構)等国際的な法執行機関との連携がすすんでいるのかといった点に関する情報を模索していた。

 そのような状況下で、11月20日に筆者の手元にEU議会のシンクタンクである”European Parliamentary Research Service”から簡潔な内容のレポートが届いた。

 個人的(筆者はアニータ・オラフ(Anita orav) (筆者注2)レポートで簡単ではあるが、筆者が求めていたEUのテロ対策はこれまでたどってきた経緯を概観し、かつその原データへのリンクが網羅的に行われていた。 

 今回のブログは、同レポートを仮訳するとともに、これだけのテロ対策に法執行機関等が本気で取り組んでいたのか、さらに言えばわが国もテロ対策訓練や南シナ海等での監視活動から裏返しのテロのリスクに緊急かつ本気で取り組むべき時期に入ったとする考えからまとめた。なお、時間の関係で、リンク先のEUの原典資料の解析は行っていない。APT攻撃(APT)等サイバー対策とも大きく関わる問題でもあり、改めて整理したい。 

訳文の本文

「 EU域内で急進・過激な思想や活動を阻止させる」 

 パリにおける11月13日の悲劇的なテロ攻撃は、再び過激な考えに基づく安全保障への即時的脅威、テロ組織や外国の戦闘員によるEU市民へのシンパ勧誘活動(recruitment)の事実を実証した。 

  EU加盟各国は、国家安全保障のための能力は保有しているが、 これらの複雑な脅威のクロスボーダーの性質は、EUレベルでの協調的対応を必要とする。  

 〔EUが取り組んだ問題の背景 と対処策の内容〕

○欧州委員会が議会や理事会に提出した「急進化(Radicalisation)」の定義は、 EU市民をテロにつながる可能性のある意見、見方や考えを支持する現象踏まえたもので、EU加盟国における域内の安全保障に深刻な脅威となる。 

  欧州委員会の移民・内務・市民権担当委員 ディミトリオス・アヴラモプロス (Dimitris Avramopoulos(ギリシャ))によると 、イスラム過激主義者は急進化した思想の持ち主を楽しませるのにわずか6〜8週間しかからないであろう。欧州議会は、EU域内で約5,000人が「ISIL / Da'esh」やアルカイダ系「アル・ヌスラ(Jabhat Al-Nusra)」にすでに加わっていると推計している。 

○2015年の早い時点でEUの「司法・内務閣僚会議(Justice,and Home Affairs:JHA)」はチャリー・ヘボラ攻撃に対処すべく「リガ共同声明(Riga Joint Statement)」を採択した。同声明は、欧州連合理事会は次の3つの連鎖的行動にもとづく「戦略課題」を定めたものである。すなわち、①EU市民の安全を守る、②急進化思想の阻止および基本的人権強化等コミュニティの価値の強化である。 

○2015年10月8日,9日のJHAにおいて各国の閣僚は情報交換やインターネットを介した急進思想に阻止を含む反テロの具体的手段等の実行につき、欧州連合理事会議長およびEUの反テロ・コーデネーターからブリーフィングを受けた。 (筆者注3) 

○2015年10月8日、9日のハイレベル「 急進主義の拡大に対処するための刑事司法会議(High-Level Ministerial Conference Criminal justice response to radicalisation)では、懸念される問題として、オンラインや刑務所内での勧誘行為による急進主義思想の拡大が指摘された。2015年9月18日には、議会や評議会にかわり理事会が『2005年テロ阻止条約』に署名した旨の「決定(Europe Convention on the Prevention of Terrorism (CETS No 196))」 (筆者注4)がなされた。また、2015年5月19日第125会期ではテロ阻止にかかる追加プロトコル(Additional Protocol to the Council of Europe Convention on the Prevention of Terrorism)が閣僚委員会で採択されている。同プロトコルは、2014年9月24日の国連安全保障理事会(U.N. Security Council)決議2178(2014))の適用となる、テロ目的の旅行や、そのような旅行に対する資金支援ならびに組織化行為を犯罪行為とすることを求めている。 

○2015年4月28日、欧州委員会はすでに進行中である次の手段を含む、「EUにおける安全保障の課題(European Agenda on Security)」を明らかとした。1)2015年2月2日に「EUインターネットフォーラム」を立ち上げる、2)2015年7月1日にEurpol内に「インターネットテロ専門照会班(EU Internet Referral Unit)」を設置した。3)2011年に

「Radicalization Awareness Network:RAN」を創設、とりわけ2015年10月1日に新たな”RAN Centre of Exellence”を立ち上げた。4)EU加盟国をEU全体として支援すべくEurpol内に”European Counter- Terrorism Centre” を設置した。 

〔急進化阻止に係る欧州議会の決議〕

 2015年10月19に、欧州議会の市民の自由権、司法および域内問題委員会は、テロ組織による急進主義の拡大や勧誘行為を阻止するため、同委員会が積極的にまとめた報告(案)「1.6.2015 DRAFT REPORT」を公表した。このことは、2015年11月に予め議論がスケジュール化されていた。同報告の報告者であるラチダ・ダチ(Rachida Dati)はボーダーレスを実現化した「シュンゲン条約」エリア内で自由に域内を旅行する急進主義のEU市民たる「hotbeds」を引用し、このような加盟国の共通の脅威に対すべき点を訴えた。同報告は、域外との金融の流れに関する透明性の改善によるテロ資金源の閉鎖のニーズ等を指摘し、世界の地域やEUだけに止まらず国際的な対処が求められるグローバルな事象であるという認識を明らかにしている。 

○同報告は、問題が起きてからとる手段ではなく、宗教問題を含む教育面での重要な考え方をはぐくむことが協調されるべきとしている。 

○インターネットの重要な役割は、違法なメッセージのオンラインによる情報配信を阻止すべく、サービス・プロバイダーにその法的責任を十分充足させることにある。 

○最後に同報告書は、「EU市民の安全保障は彼らへの自由権の保障と両立しない問題ではない」と述べ、EUにおける基本的人権の尊重を強調している。

 

***************************************************** 

(筆者注1) 筆者のグログでも2010年時点で「2010年11月22日、欧州委員会(担当委員:セシリア・マルムストロム(Cecilia Malmstrom))はEU市民の保護強化のためのEUが直面する緊急的なセキュリティ脅威に対処すべく長期的な「EU域内セキュリティ強化のための行動戦略目標(EU Internal Security Strategy in Action)」(全41項目)(以下「戦略目標」という)を採択した旨公表した」ことについて詳しい解説を行っている。この中で、筆者ブログが取り上げている「2011年~2014年の戦略目標およびその実現のための行動計画(Five Strategic Objectives and Specific Actions for 2011-2014)」が厳密に実施されていたら、今回のテロ事件は起きなかったといえようか。ここまで経緯も含めた解説は内外メデイアでもまず見ない。 

(筆者注2) 筆者の略歴は入手不可である。Oravという姓はマケドニアではないか。 

(筆者注3)オラフ氏のブログでは、2015年10月8日,9日のJHAの議題等には言及しているが、さらに同会議での結論「2015.10.8 欧州連合理事会「Council conclusions on strengthening the use of means of fighting trafficking of firearms」反テロ目的の武器の搬送との戦い」については直接言及していない。この点は、今回のテロ攻撃の事前取締りの不十分さを物語るものと考えられる。 

(筆者注4)2015.10.24欧州連合理事会決定COUNCIL DECISION (EU) 2015/1913 of 18 September 2015 on the signing, on behalf of the European Union, of the Council of Europe Convention on the Prevention of Terrorism (CETS No 196)を参照されたい。 

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英国の個人データ保持立法に係る法令体系の現状と高等法院判決等をめぐる新たな法的課題(その3 完)

2015-11-18 16:18:25 | 個人情報保護法制

Last Updated October 25,2016

(6) RIPAの治外法権問題(extra-territoriality)

  RIPA 第4条は、それがRIPAによる傍受能力の通知、傍受令状と通信データ収集通知を通信サービスを英国市民に提供する非英国企業に適用することができなければならないという政府の懸念に対処しようとする。 

 いまから18ヵ月前の2012年12月に発表された「通信データ法草案」(パラグラフ230~243)に関する合同委員会(Joint Committee on the draft Communications Data Bill)の報告では、通信データの通知に関しては、この問題は若干の点で検討がなされた。 

 DRIP Acの説明では、2つの異なった側面がある。第一は、解釈の問題として、RIPAの令状類と通信データ収集準備が英国の外での行為にあてはまることができるかどうかである。第二は、RIPA令状または通知が英国外での事業体に発布できるかどうかである。そして、事業体がRIPAの下で関連した税の対象となるようになる方法である。彼らが適切な令状または通知で、または、それがあれば仕えられない限りだれもこれらのRIPA準備中で何もしなければならなくない時から、この点は重要となる。 

 最初の側面に関して、既存のRIPA規定は令状の下で認可されることができるか、必要とされることができる行為またはデータ発受信される通信の位置に対する明確な領域の制限を含まない。それは、イギリスの中での行為にはっきりと限定される無許可の傍受害が犯罪となることと対照をなす。 

 しかし、「発受信の行為の位置」は問題の一部である。英国外に所在する人は、英国の中で行為に従事するかもしれない。英国の中に所在する人は、英国の外で行いに従事するかもしれない。そして、英国外に所在する人は、英国の外で一定の行為に従事するかもしれない。RIPAの異なる面の上のこれらの異なるシナリオ・マップは、なんと理解するのがおそろしく難しい問題であろう。。 

○この問題につき前記合同委員会報告は、以下のように述べた。 

 「RIPAが下書きされる条件は、通信データを明らかにすることを要求されうるテレコミュニケーション・オペレーターに制約を押しつけないように見る。彼らがイギリスで動く限り、彼らが拠点を置くかもしれないという問題は重要ではない。」

 「行為の位置」に関しては、現在、DRIPは、令状、能力のメンテナンス通知と通信データ収集通知は各々が英国の外での行為に関するものも含む点をはっきりと述べている。

  次にDRIPは発受信者がイギリスの中にいるか否かを問わず、そのような令状と通知に対応する仕事があてはまると定める。傍受令状の場合、義務の遵守に関する過怠を知っている場合は、RIPA 第11条第7項にもとづき刑事責任を問うことができる。 

 それから、DRIPは非英国事業体の上で英国の中で令状と通知を送達する方法を考案するためにどんなことも行う。データ収集が注意する通信のために、これは口頭の通知を含むことさえできる。この仕上げが単に実務的な質問であるか、おそらく、英国の外で政府令状と通知を送達することがもう一つの国家の領土主権を侵害している執行行為にふさわしい行為と考えられているかもしれないという、より心からの懸念を表すかどうかは、推測の問題である。  

 データ保持通知に関しては、彼らが閣内大臣がオペレーターまたはそれが関連があるオペレーターの説明気付けでそれを持ってくることに適切であると思うような方法でそれを与えるか、発表することによってオペレーター(またはオペレーターの説明)に与えられることができると、DRIPは定める。 

(7)テレコミュニケーション・サービス(Telecommunications services)

  先に説明したとおり、DRIP第5条の下での「テレコミュニケーション・サービス」の改められた定義は、DRIPの下でのデータ保持およびRIPAの両方にあてはまる。  

5.2015年7月17日の高等法院のDRIP Actに対する無効判決

 英国の2014年に可決された通信監視法(DRIP Act)に対して2人の英国議員が代表者としての法的挑戦は、2015年7月17日に高等法院の無効判決を得た。

 2015年7月17日の”IPS Review”レポートHigh Court Rules UK Telecoms and Internet Data Retention Act Unlawfulを以下、仮訳する。同レポートは、政府や議会における最新情報やステイクホルダーの意見等を反映した内容である。ただし、この種のレポートは必ずしも原データへのリンクや議会での立法等の基礎知識がないと極めて読みづらい。筆者の判断で補足とリンクを貼った。(前段の部分は本ブログの本文と重複するので略す)。

 ○政府は2014年4月8日の欧州司法裁判所判決を受け、急いでRIPAを書き直して、それをDRIP Actに変えた。それは実際的には2、3の微調整修正立法だけによる実質同じ法律であった。一方、2015年の政府(内務省)の新立法の法案「Draft Investigatory Powers Bill 」という内容でをさらに立法を生育させ続けている。そして、それはブロードバンドISPにユーザーのオンライン活動(注記:これは、ユーザーの実際の通信内容は含まれない)の非常に大きい部分を記録・保持することを強制する内容であり、DRIP Actの内容をさらに広げたものであると脅迫されるようなものである。 

 しかし、高等法院の司法審査を通してDRIP Actと戦うために市民権擁護グループ”Liberty”と力を合わせるほうを選んだデイビッド・デイビス議員(保守党)とトム・ワトソン議員(労働党)が立ち上がり、ECJの原判決を回避しようとする政府の試みに誰もが満足であるというわけではない。 

 政府の計画は、通信データにアクセスすることを独立した承認を要求するEU法がもとめる点に同意する2015年7月17日の高等法院判決によりつまずいた。そしてDRIP Actは、現在のところ2016年3月末日までに適正なものとしなければならない。

 特にDRIP Act(通信データを保持およびアクセスするために必要な権限に対する両方に的を当てている)の第1条と第2条に関して次の問題が存する。 

○DRIP Actの第1条および第2条にかかる高等法院の最終的な精査結果: 

①両条とも、個人データが重罪を防止して、捜査する目的で、または、そのような罪に関して刑事告発を実行するためにアクセスするのみの目的を確実とするため、明確かつ詳細な規則を提供することにつき懈怠している。 

②データへのアクセスは、裁判所または独立機関(その決定は厳格に厳しく必要であることへのデータへのアクセスとそれの使用を制限することができる)によって認可されていない。法院の判決は、「その承認がアプリケーションをつくる権限または公的機関から完全に独立した裁判官または当局者によってある必要性は、責任がある人が適宜に訓練されるか、または経験されるならば、その人物は特に厄介となる」という意見を述べた。

 ○英国の人権擁護団体”Liberty”は、同判決が大規模なインターネットや電話監視のアプローチを控えて、その代わりにより目標を絞ったとする指示を受ける新しい法律が促進されることを望む。すなわち、事前の裁判所の保持許可とデータが重大犯罪や死亡と負傷事故を防止する捜査の一部として保持されるだけであるという限定的な必要性を要求した。 

○一方、デイビッド・デイビス(HaltempriceとHowden選挙区選出の保守党議員)は、以下のように述べた: 

「法廷は、2014年(政府は急いで、そして、法律を通しての悪い考えは致命的に傷がある)に明らかだったことを認めた。彼らは罪のない人々のデータにアクセスする前に裁判であるか独立した承認を必要とするために現在、法律を書きかえなければならない。そして、デビッド・アンダーセン(David Anderson QC)の意見(筆者注19)とRUSI(英国王立防衛安全保障研究所)報告(筆者注20)の専門家の間に新しいコンセンサスを反映する。 

 この立法による変更は、プライバシーと社会の治安を改善する一方で、裁判所は政府が法律を考慮するために1日議会の検討を行うべく、ほぼ9ヵ月の猶予期間を与えた。」 

○また、トム・ワトソン(西ブラミッチ・イースト選挙区選出の労働党議員)は、以下のように付け加えている。 

「政府は、重要なセキュリティ立法を急ぐことがやりそねの立法に終わると警告された。高等法院は政府に対し議会に戻って、適切な立法を行うよう求めた。政府は、人々のプライバシーの権利を重んじるように、誤って見受けられた法律を議論するために、議員に1日を与えた。すなわち、2016年3月まで法律が書きかえられることを確実にしなければならないということである。 

 政府のデータ収集権限に対する独立した監視機能がなければならない。そして、適切な法的フレームワークと市民の通信データの使用とアクセスに関する規制規則がなければならない。」 

○本裁判の勝利は、議員が政府をうまく立法的な視点から見直した最初の事例として明らかに祝えるものといえる。しかし、それはより厳しい規則の方へ完全に切り替える動きを停止させするには十分なものではない。しかし、なすべきことは、法案の見直しに関し、その適用範囲をより多くの重罪に制限して、監視強化の立法を改善することである。その一方で、政府は今般の高等法院判決につき控訴院に上訴する予定になっている。  

6EU Data Retention Directiveを無効とする法務官の意見書(opinion)    

 2013年12月12日に法務官Pedro Cruz Villalón(スペイン)が欧州連合基本憲章(Charter of Fundamental Rights of the European Union)(以下「憲章」という)データ保持指令( DIRECTIVE 2006/24/EC OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL:of 15 March 2006)(以下「保持指令」という)の間の互換性の欠落を指摘する意見書(opinion)を提出した。

 この問題につき従来から厳密のフォローしているORGが次のとおり要点を解説している。なお、ECJが同意見書につき正確なプレスリリースを発表しており、あわせて参照されたい。

「2013.12.12に、欧州司法裁判所の法務官ペドロ・クルスヴィラロンは、「欧州連合基本憲章」と「データ保持指令」の間の互換性に関する意見書を提出した。同裁判所のプレス・リリースは、法務官の保持指令への意見書について次のとおり解説した。

そのような電気通信のために「通信トラフィック」と「位置データ」を集め、また保持することを電話または電子通信サービスの提供業者に義務を課すことは、市民のプライバシーに関する基本的権利に対する重大な干渉(interference)を形成する」。

法務官は、第一に同指令は「基本的な権利の行使に対するいかなる制限も法律により定められなければならない」という憲章が求めるものと相容れないと述べた(ここでリファレンスされる基本的な人権はプライバシーの権利である)。第二に、EUの立法(保持指令)はデータへのアクセス権を決定するために十分なガイドラインを提供しなかった。

EU議会は、特に法執行権限を持つ加盟国の機関が収集や保持されたデータに対し、正当にアクセスしうる犯罪行為の徴候について、『重大犯罪(serious crime)』以上に正確な説明を提供しなければならなかった」

 最後に、指令が定める情報保持の時間枠(time - frame)(保持期間)の設定が適正でなかったと指摘した。指令第6条は各加盟国が定める保持期間は最高2年~6ヶ月以上としているが、 (筆者注22) 一方で法務官は多くの加盟国が1年未満にまでそれを短くするはずがないと述べた。    

 7.欧州司法裁判所のEUデータ保持指令の無効判決 

 冒頭で述べたとおり、この判決はわが国でも多くのメデイア等が紹介しており、URLのみ挙げる予定でいたが、判決の論点は必ずしも明確に伝わっていない点が気になり、例示的な内容を持つ”Techdirt”の解説を、以下、引用する。最後に、同判決を取り上げている主な解説のタイトルとURLをまとめておく。 

(1)2014.4.8 Techdirt「EUデータ保持指令の保持義務は、EU裁判所によって『無効』と判示」レポートの要訳 

○2013年12月12日、英国メデイアはEUの2006年データ保持指令に関して欧州司法裁判所(CJEU)の法務官 (筆者注23)の少ない内容ではあるが複合的判断を報じた。それはヨーロッパのテレコミュニケーション会社に彼らの顧客についてメタデータを保持するのを強いる。法務官は保持指令が基本的なヨーロッパの権利と相容れないと判断したが、それが改定されるまで、法務官は単にそれを中止するだけにしようと提案した。その法務官の意見は、CJEUを拘束せず、通常、最終評決(final verdict)の内容を暗示するものと考えられていた。 

○4月8日、CJEUはその最終判断を言い渡した。予想通りで、それは法務官の意見と同じ一般的な線をたどるものであった。しかし、イベントの驚くべきで喜ばしい変化において、それは厳しい糾弾と最終的の過酷さでそれをはるかに越えたものであった。(2014.4.8 CJEUの同判決に関するプレスリリースの原本参照。 

○CJEU法廷は、EUデータ保持指令が無効であると断言する。 

 保持に伴うその干渉が厳しく必要であることに限られなため、それは私生活に対する敬意と個人データの保護への基本的な権利に対する広範囲で特に重大な干渉を伴う。

 CJEUは、指令を「無効である」と宣言したとき、正確にそれが意味したものをはっきりさせた。 

 すなわち、法廷が判決の一時的な影響を制限しなかったとすると、無効の宣言は指令が効力を生じた日付から実施されねばならないものであった。

 言い換えると、それはちょうど本日の判決から無効なのではなく、指令が発効された瞬間から無効であったとする(かなり衝撃的な平手打ちである)。法廷には、包括的なデータ保持が基本的な権利(太字は判決原文)に干渉すると断言することに対する躊躇はない。

 同法廷は、それらのデータの保持を必要とすることにより、また権限を持つ国家の当局がそれらのデータにアクセスするのを許すことによって、指令は私生活に対する敬意への、そして、個人データの保護への基本的な権利への特に重大な方法により干渉すると見る。さらにまた、個人データが保持されて、その結果、加入者や登録ユーザーはその後使われるという事実または知らされている関係する人にとって彼らの私生活が不断の監視の対象であるという感覚を起こしそうである。 

○同時に、法廷は、有効な状況がそのような個人データを保持するためにあることを認める。 

 すなわち、権限をもつ国家の当局への彼らのありうる伝達目的でデータの保持は、一般的な利益すなわち重大犯罪との戦いと、最後に、公共の安寧の目的を真に満たす。 

○重要な問題 ― Techdirtがしばしば強調した点であるが、法的均整の問題である。そして、ここでは、ECJは疑いを持たない。

 同法廷は、データ保持指令を採択することによって、EU議会が法的均衡の原則の遵守によって押しつけられる限度を上回ったという意見である。 

 法廷は、データ保持指令が法的均衡に関するテストに落第しているとみる3つの特定の方法をリストし続ける。第一に、どんな「重大犯罪と戦う目的に照らして作られている分化、制限または例外」なしででも、それは、指令がすべてのデータが保持されなければならないことを示している点に注目する。つまり、セキュリティ・サービスに影響を与えた「それのすべてのものを集める心理」は、本質的に不相応で、このように受け入れがたい点である。 

第二に、法廷は、警察か他の当局がそのデータにアクセスすることは許されるかどうか判断するのに用いられることができる客観的な基準がない点に注目する。また、ほとんどすべての情報が現在の指令に対するものに伴う。 

○最後に、指令は、権限のある国家の当局がデータにアクセスするかもしれなくて、その後彼らを利用するかもしれない実質的で手続的な状況を置かない。

特に、データへのアクセスは、裁判所または独立行政機関によって事前のチェックに依存していない点である。 

 ○CJEUが、各国の当局が裁判官にとても高度な個人データにアクセスする許可を求める必要はあると主張しているのを見ることはおそらく驚くべきことではない。しかし、それは政府がそのような手続きをオプションで重要でないと考えるようである背景に対しては、そうする必要は非常に重要な点であることを思い出させるものである。  

○最後に、ECJは、6ヵ月から24ヵ月その他の間で区別が格納されるそういう個人データで、そして、まわりに拠点を置くようにされないで、指示的なデータ保持期間をセットするための客観的な基準がないと指摘する。それも指令が虐待または不当アクセスの重要な問題に対処しない、何もデータがどのように保持期間の終わりに破壊されなければならないかについて言及しない点に注目する。また、個人データが常にEU内で保持される必要性はない点にも注目する。  

○保持指令を適用している既存の英国の国内法の状態が現在何であるかは、まだ明らかでない。これらの法律は、保持指令に従うために、EU加盟国によって可決された。同指令が無効とされた今、それ法令が、また、無効なことをおそらく意味する。彼らは政府によって無効にされますか、または、自国の裁判所で難詰されるまで、彼らは執行を続けるか?それらは、ヨーロッパのあたりの政治家と弁護士がおそらく若干の緊急と討論している問題である。欧州委員会が要求するものは、この点にある。  

 国家による立法は、CJEUによる判決の後は、EU法と反する面だけに関して改正される必要がある。さらにまた、保持指令の無効の発見は、EUの「eプライバシー指令(2002/58/EC)」の下の加盟国がデータの保持に恩恵を施す能力を撤回しない。

 1つのことは確かである。すなわち、NSAによって行われる大規模で不相応な監視活動とヨーロッパ(それはデータ保持指令の下で認可されるそれらに多くの類似点を持つ)の中の英国のGCHQは、現在、「国家の安全保障」に訴えることによってのみその行動が弁明されることができない。欧州司法裁判所による本日の判決は、それが何でも、すべてを正当化するためにヨーロッパで使われることができる「テロリズム」がもはや切り札でないことを意味する。 

(2)CJEU判決に関する主な解説の要旨とURL

 後日、本項は追加する。

  

 

8.追記

 本ブログの内容と緊密の関係する通信プロバイダーの情報保持義務化法の立法例として、オーストラリアは、改正法に基づくいわゆるメタデータ保持義務法(「2015年テレコミュニケーション(通信傍受およびアクセス)改正(データ保持)法)(Telecommunications(Interception and Access)Amendment (Data Retention)Act 2015)」を2015年4月13日に成立させ、2015年10月13日に施行している。

 その内容については、すでに関係するローファームや人権擁護NPO等が取り上げているが、筆者が興味を持ったのは、同法に関する簡単なコンメンタールといえる”IT Security Training Australia”がまとめた解説文「New Data Retention Obligations and Privacy」である。なお、実務的に見て参考にすべきものとしては連邦司法省の法解説サイトにあるISP向けのガイダンス「DATA RETENTION Guidelines for Service Providers(全14頁)」があげられる。

 その内容等は、別途まとめつつある本ブログで改めて紹介したい。 

************************************************************************

(筆者注18) 11条第7項の原文を引用する。

(7)A person who knowingly fails to comply with his duty under subsection (4) shall be guilty of an offence and liable

 (a)on conviction on indictment, to imprisonment for a term not exceeding two years or to a fine, or to both;

 (b)on summary conviction, to imprisonment for a term not exceeding six months or to a fine not exceeding the statutory maximum, or to both.

(筆者注19) Independent Reviewer of Terrorism Legislation の独立権限のテロ法案の精査責任者デイビッド・アンダーセン(王室顧問弁護士:David Anderson Q.C)は、2015年6月11日にアンダーセン報告「A Question of Trust – Report of the Investigatory Powers Review」がリリースされた。同報告書(全文382頁)がデイビッド・デイビス議員が引用しているレポートであると推測される。 

(筆者注20) ここで引用されているRUSI Reportとは、2015年7月13日に公表した「A Democratic Licence to Operate: Report of the Independent Surveillance Review」(全154頁)をさすと推測される。 

(筆者注21) 州連合司法裁判所の最新情報を補足する。「欧州司法裁判所」の裁判官は加盟国から1名で計28名、法務官は11名、「一般裁判所」の裁判官は39名である(法務官はいない)。また2016年9月7日付けの欧州連合理事会通知によると、「EU加盟国の政府は、欧州連合司法裁判所の「一般裁判所(General Court)」の14名の裁判官と1名の法務官(advocate general)を任命した。14名の指名のうちの7名は、3年おきに行われる一般裁判所の部分的な人事交替に伴うもので、その他の6名は、2015年に同意された一般裁判所の改革との関連がある。残りの1人は、裁判官の辞任伴うものである。」という内容である。 

(筆者注22)2006年EU保持指令第6条は各加盟国が定める保持期間は最高2年~6ヶ月以上としている。原文を記しておく。 

Article 6:Periods of retention:Member States shall ensure that the categories of data specified in Article 5 are retained for periods of not less than six months and

 not more than two years from the date of the communication.

(筆者注23) 法務官の任務」は一般的には次のとおり説明されている。EUの関係サイト等を参考に筆者の立場でリンク等補足する。

○法務官(Advocate General):8名、任期6年、再任可能(加盟国数には関係なく任命)(TFEU(欧州連合の機能に関する条約)252条、253条)この点、リスボン条約の最終文書に付属する宣言A.条約の規定に関する宣言38により、司法裁判所の要請により理事会の全会一致で3名の増員が可能である。現在は11名(uliane Kokott,Eleanor Sharpston,Paolo Mengozzi,Yves Bot,Melchior Wathelet,Nils Wahl,Maciej Szpunar,Manuel Campos Sánchez-Bordona,Henrik Saugmandsgaard Øe,Michal Bobek,Evgeni Tanchev)である。

・首席法務官 (First Advocate General):司法裁判所が任命、任期1年(司法裁判所手続規則(以下、「手続規則」)10条)

【法務官の任務】裁判所を補佐し、案件に関し、完全に公平かつ独立の立場から、理由を付した意見を公判に提出する。

 法務官は、裁判所の係属事件について公平で独立した立場から意見を述べることで、裁判所を補佐している(ただし法務官の意見は直接的に判事を拘束するものではない)(在ルクセンブルグ日本大使館のサイトから一部抜粋のうえ、 筆者が加筆した)

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英国の個人データ保持立法に係る法令体系の現状と高等法院判決等をめぐる新たな法的課題(その2)

2015-11-17 15:37:15 | 個人情報保護法制

Last Updated :October 25,2016

4.Graham Smith氏のブログの仮訳

Graham Smith氏

 2014年7月12日付けの 英国の弁護士Graham Smithの”Cyberleagle”blog「DRIP法を解剖する-緊急的に立法された「データ保持および捜査権限法案」(Dissecting DRIP - the emergency Data Retention and Investigatory Powers Bill)」仮訳する。(筆者注11)なお、本ブログの関係データへのリンクは決して十分ではない。筆者の責任で追加してリンクを張った。 

(1)DRIP Actの立法手続きの問題点

 CJEUがEUデータ保持指令を無効として判決の3か月後に、英国政府は「2009年データ保持規則(2009 Data Retention Regulations)(以下「保持規則」という)」を代替するための緊急立法により突然大急ぎの対応を開始した。それらの規則(英国の「1972年欧州共同体法(European Communities Act)」のもとに作られた)は、まだ名目上は実施されているが、EU保持指令に対するCJEUの審査には非常に弱いものであった。 

 DRIP法は、何を目的とする法律か?、それだけの材料がそのような短い通知で現れ、よく考えた分析は難しい。筆者(Graham Smith)は、同法に対する若干の第一印象を本稿で述べる。 

○DRIP法案は、2014年7月11日午後に内務省のウェブサイトに載ったその付随的・暫定的な内容の関係規則草案とともに、無理に四角を円にしなければならなかった。理想的には、同法案はCJEUがECのデータ保持指令が無効であると考えた約15項目のEUの基本的な人権侵害問題に焦点をあて、妥当と考えられる試みが行われるべきであった。しかし、2016年12月末日を期限とするDRIP法の「サンセット条項」が効き始めるまで、内務大臣テレサ・メイは下院宛7月10日付けの声明を送らなければならなかった。 

○実際、DRIPは四角を円にはできない。事実、新しく発表された影響評価(Impact Assessment) (筆者注12)では、法律がすべてのECJの問題指摘を解決するというわけではないことを認める。そして、「可能な場所で」かつ「実行可能な範囲で」ECJ判決について述べるだけであると主張する。また、「ECJの判断を無視するものとして理解される危険」も認める。 

[筆者(Graham Smith)の更新補追:2014年7月16日、英国議会の人権に関する合同委員会は、パラグラフ33(8頁)の内務大臣あてメモにおいて、DRIP法案は、既存の国内法と共に、ECJの判決において述べられるEU保持指令の大部分の問題点があると批判的に申し入れた。同委員会は「英国法を満足させるか、満足させるべく正確に、政府の分析であるすべての問題(CJEU判決のパラグラフ54~68で述べられる必要条件の各々から出発しているさらに仔細なメモ)」に対する説明を「欧州人権条約:ECHR(European Convention on Human Rights )」メモとして提供するよう内務大臣宛てに、手紙を出した。] 

(2)DRIP Actの内容から見た問題点

○我々は、2つの単純な質問を作ることができる。 

1. Does DRIP merely maintain the status quo?

 DRIPは、単に現状を維持するだけの法律か? 

2. If so, how far is maintaining the status quo permissible in the light of the ECJ decision?

 もしそうなら、ECJ判決に照らしてどれくらい、現状法は許され、保持されることが可能か? 

○しかし、第一に、我々はDRIPは英国「2009年データ保持規則(2009 Data Retention Regulation)」に十二分に置き換わる以上のものであると認めざるをえない。それは、通信傍受令状(interception warrants)、傍受能力と通信データの実質的な変更を2000年「公的法執行機関による通信の監視・捜査・通信傍受や遮断等の権限規制に関する法律

(Regulation of Investigatory Powers Act :RIPA)」の規定にアクセスさせる。内務大臣は、データ保持法と異なる原則すなわち、特にRIPAの妨害と通信データ収集の準備規定の適用領土の範囲をはっきりさせる切迫した必要性をもって、これらの改正を正当化した。これらは、DRIP Actのデータ保持とは直接関わらない側面である。 

DRIP Actの第4条(Extra-territoriality in Part 1 of RIPA)は、それがRIPAを通信サービスを英国市民に提供する非英国企業に適用することができなければならないという政府の懸念に対処したものである。

第5条(Meaning of “telecommunications service”)は、テレコミュニケーション・サービスに関する旧法たるRIPA の定義を広げる。同法の注記(Explanatory Notes)を見ると、webメール・プロバイダーが明らかに対象となるということになっている。そのような変更には、データ保持への含みがDRIPに垣根を越えるクロスオーバーする点にある。 

第3条(Grounds for issuing warrants and obtaining data)は、更なる規制を通信傍受令状と通信データ収集通知が出されることに更なる制限ができるとする一般的な目的を置く。これは、既存の実務規範(codes of practice)と合致するようにRIPAを適用させる。 

○非データ保持にかかる改正のメリットが何であれ、なぜそのような無謀な速度で議会を通して急速に発展する緊急立法を要求するかにつき、疑問の余地がある。議会は、ECJのデータ保持違法判決に続いて主要な法律の政府の切迫した必要に関して肩車(piggy-back ride)に乗っているように見える。 

○データ保持に関して、DRIP Actは単に現状を維持するだけか?

条項第3条~5条は別として、データ保持のために、DRIP Actが単に現状を維持するだけであるという主張に集中しよう。具体的に、次の3つの質問に分けて論ずる。

① 同じプロバイダーは、データを保持することを従来どおり要求されるか?  

② プロバイダーは、同じデータを保持することを要求されるか? 

③保持期間は、従来と同じか? 

同じプロバイダーは、データを保持することを前の通り要求されるか?問題

 この問題につき、政府の説明が、既存の1組の定義からもう一つまで動いており、より良い手段に改めるといった点からも、これは答えるのが難しい。陰謀理論家はどうも怪しいである。この分野が悪名高い反啓蒙主義者的な立法のもう一つの例を記録するかもしれない。 

 「2009年データ保持規則は、EU内で一般的に公開されている「電子通信サービス」の定義とEU通信フレームワーク指令(DIRECTIVE 2002/21/EC OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL)(「2003年通信法(Communications Act 2003)」により英国で国内法化された)の「ネットワーク」の定義に基づいていた。 

 しかし、DRIP ActはそれらのEUの定義を捨てて、その代わりに公共テレコミュニケーション・システムとサービスにつき英国独自のRIPA定義を採用した。次に、それは14年間実施されてきたにもかかわらず、それを改めた点である。 

 なぜ、立法の意図が現状維持ということであるなら、DRIPは単に2003年通信法の定義を使い続けないのか?同法の注記(Explanatory Noteのパラグラフ56 (筆者注13)では、これが「アクセスと保持体制につき全体に均一な定義を明確にする」ことであることと記載されている。 

 これらの変更が、既存の「2009年規則」より広いネット事業者を対象とするかどうかは、現段階では誰にもわからない。それは、2つの定義のセットとトラック1台分の仮定による詳細な比較を要求する。しかし、極めて明白であることは、DRIPがRIPAの定義を広げるということである。 

 従来のRIPA法第2条第2項の「データ通信サービス(telecommunications service)」の定義は、「アクセスや使用することのための施設(テレコミュニケーション・システム)、およびアクセスの供給」にあるサービスに関して定義される(原文:“telecommunications service” means any service that consists in the provision of access to, and of facilities for making use of, any telecommunication system (whether or not one provided by the person providing the service)。つまり、テレコミュニケーション・システムに関連する2つの別々の要素(two discrete elements)がある。

 一方、DRIP第5条は、RIPA定義が「送信による通信の創造、管理または蓄積を容易にすることを含むか、そのようなシステムによっても送られる」サービスをカバーすると定める。 

 法案の注記(パラグラフ71)(筆者注14)では、これがインターネット・ベースのサービス(例えばwebメール)を提供する会社が対象となることを確実とするために適切であることされている。注記(パラグラフ18) (筆者注165では今回の改正が「通信データと通信傍受の要請」目的であることになっているが、それもDRIPの下での新しい義務的なデータ保持体制にあてはまる。 

 表面上は、今回の法改正は、まさにwebメールだけでなく、いかなるリモート・ストレージ・サービス(remote storage service) (筆者注16) (RIPA 法の下の「コミュニケーション」の意味が、効果的に送信ができる何でもありうることを心に留めておくべきである)にでもあてはめることができた。「容易にする」という言葉は、幅広い解釈のための赤旗である。これが非常に広い範囲の活動をカバーする明らかな可能性がある。それは、正確に最も完全な議会による詳細な調査に値する規定のタイプといえる。  

 RIPAの今回の改正に関して、内務省は、サンデー・タイムズ(2014年7月13日、同紙の会員のみ閲覧可)で次のとおり報告した。「同法案は、現在の定義が解釈されなければならない方法をはっきりさせる。しかし、これは内容の変更や、新しいサービスを対象とするためにRIPAの定義の意味を広げることではない。」 これは、たわごとである。事実、改正案は、BがAの範囲にない何もカバーしないまで、B.を含む範囲を拡大するという趣旨から、新しいサービスは対象となる。たとえ異なる見解BがAの範囲内でものを実際カバーしないかどうかに存在するかもしれないとしても、改正が新しいサービスを対象とする『ことができない』ことを示唆することはナンセンスである。

 ②プロバイダーは、同じデータを保持することを要求されるか?

 法案注記は、DRIP通知(DRIP notice)(すなわち一般のテレコミュニケーション会社への閣内大臣による通知)では既存の法律に定められているそれらに更なるデータ・タイプの保持を求めることができない点を強調する。これは2009年保持規則の附則に『関連した通信データ』を定めることによって達成される。そして、それはCP(中央処理装置)で保持することが要求されることができるデータ通信の特定のタイプを述べることで可能となる。

  また、定義はそれが関係するテレコミュニケーション・サービスを供給するところの公的なテレコミュニケーション・オペレーター(PTO)によって英国で発生するか、処理される限りだけ、そのようなデータが対象となるという重要な資格取得を達成する。言い換えると、PTOはそれらサービスを供給する過程においてそれを生み出さないか、処理しないならば、データ保持は要求されることはない。

 通常、この点は忠実に2009年保持規則を複製したように見える。しかし、テレコミュニケーション・サービスとシステム(前記参照)のRIPA定義の採択とその改正は、「関連した通信データ」に含まれるデータの範囲におそらく影響を及ぼすことになろう。 

③保持期間は、同じであるか?

 従来の「2009年規則」は、12ヵ月間の保持を命ずる。DRIP法案(法案の明らかな欠陥に従うと)は、最大12ヵ月の保持期間を定める。その一方で、異なる目的のためにより短い期間が指定されることを可能とする。 

 すなわち、同法案の欠陥とは、DRIP actの第1条第4項(b)の下で最大の保持期間を適所に指定していないならば、閣内大臣は12ヵ月より長く保持を必要としている第1条第2項(c)の下で通知を明らかに出すことができるというのである。実際に政府がこれを可能と考えているとは信じ難い。規則草案(draft regulations)の規定は、明確に12ヵ月の保持最大期間を特定している。 

(3)データ保持のために現状を維持することは、ECJ判決後に許されるか?

 下院と上院議員に肯定的な決議を要求する第二の立法行為を通して実行されることになっている時から、新しい政府の新たな立法の意図はECJが何ゆえにデータ保持指令を無効にしたかという点がまず最初に不明だったという根拠に対処する点にあった。

 現在、公になっているDRIP法案、暫定的な草案規則はECJ判決について述べることつながるが、しかし、何かの一般的な義務的なデータ保持がECJ判決において確認されたより基本的な問題のいくらかにどのように対応することができたか見ることは常に難しい。  

 CJEU判決において確認されるそのあらゆる異議を置くことを目的とするECJが国家の立法で独立して解決されなければならない自己永続的な問題であるかどうかについての議論の余地が、あるかもしれない。、もしそうならばなんて、それぞれは克服されなければならないであろう。それは、以下の点を念頭に置くべきであろう。 

①ECJは、EUの基本的人権と自由に関するEU憲章(EU Charter of Fundamental Rights and Liberties)のEU立法との互換性を評価した。 

②2014年4月30日に下されたECJのレーガー判決の後であるが)、国家の立法はEU憲章に従わなければならないことは大いにありそうであり、エセックス大学のスティーヴ・ピアー(Steve Peers)教授によって説明される理由で、教授が指摘した点に注目するが、国家の法律もEU人権憲章に従わなければならないかどうかの問題は、同法廷では論じられなかった。 

 国内法の立法では、彼らがEU憲章に従う方法で、一定の自由裁量権(latitude)(意見を持ち込む余地)を持ちうるであろう。 

③ECJ判決は、ストラスブールの欧州人権裁判所(Cour européenne des droits de l'homme)が条約に関して行ったより厳しい標準を人権憲章のもとにいくつかの点で適用したかもしれない。もしそうならば、それは可能性の上でそれを開けることができた内務大臣は、ECJ判決のすべての面に対応しているというわけではない一方で、ヨーロッパ人権条約のDRIPの迎合性を保証するかもしれない。 

(4)CJEU判決との比較を踏まえたDRIP Actの問題点

 いずれにしても、主要な影響評価は、現在、政府がECJ判決の完全な意味に対応しようとしなかったことをある程度はっきりさせた。 

 こういうことは心に留めるべきあり、データ保持指令を無効にするだけのECJ判決の根拠をリストして、DRIP Actがどのように同判決の対応の有無を考えることは、有益であり、以下一覧にまとめる。〔最新版:政府はそれ自身に比較している注を今回は発布した〕。

 

(5)DRIPをRIPAにつなげる

 政府は、ECJ判決の意味にいくらか対処するために通信データへのアクセスを決定するRIPAの必要性、バランスと安全装置規定に頼っている。 

 しかしながら、RIPAは、保持された通信データにアクセスするのに用いられることができる唯一の法律ではない。RIPAの安全装置を楽しまない他の権限が、存在する。他の特定されない権限の使用は、の通信データ・実践コード(パラグラフ1.3)では無視されるが、禁じられていない。 

 2012年に提案された「通信データ法案(Communications Data Bill )」(筆者注18)は、そのような権限が通信データを得るのに用いられるのを妨いだ。第24条の草案注記は、以下のように記載していた。: 

「123:この条項は、法案の附則2を彼らは公的当局にオペレーターの同意を得ることなく通信データのテレコミュニケーション・オペレーターによって発表を確保するのを可能にする限りにおいて、特定の一般的な情報力の撤回をもたらす。したがって、第24条は、オペレーターが得て、関連した法令のフレームワークが第8条およびEU指令2002/58/EC(プライバシーと電子通信に関する指令)の実質的な保護をはっきりと保証する場合,通信データを明らかにする法律によって必要とされないことを確実とする」 

 ECJ判決の遵守性を評価する際に、DRIPがRIPAの安全装置と共に読まれなければならないという議論は、類似した安全装置を持っていないかもしれない他の権限が存在するならば、維持するのが難しい。。したがって、DRIPは、RIPA にもとづく承認と通知への義務的に保持されたデータへのアクセス、裁判所命令または他の裁判の認可または正当な理由を制限することによる第1条第6項またはDRIPの下の規則でこれに取り組む。暫定的な草案規則のパート3も、この制限を「Anti-terrorism, Crime and Security Act 2001」第102条の下で自発的に保持されるデータに適用する。

 ○DRIPのRIPAに関する規定

 DRIPの新しい規定は、前に簡単に述べたとおり、第4条および第5条を含む。法案注記によると、RIPAが2000年に制定されたとき、これらの処置は現在の法律の意図をはっきりさせることを目的とするだけで、したがって、議会の詳細な精査を受けた。

 Last Updated October 25,2016

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(筆者注12) スミス弁護士は7月22日付けのブログ「Mandatory communications data retention lives on in the UK -or does it?」でもDRIP Actの立法上の問題点や関係者の動き等を取り上げている。本ブログで取り上げたレポートと併せて読まれたい。

 (筆者注13) 国土交通省国土技術政策総合研究所 「英国の規制インパクト評価について」参照。  

(筆者注14)スミス氏のブログでは注記パラグラフ53となっているが、正しくは「56」である。参考まで「パラグラフ56」の原文を引用しておく。なお、スミス氏には別途訂正されたい旨メールしておいた。 

”This section inserts a new subsection into section 2 of RIPA. New section 2(8A) makes clear that the definition of “telecommunications service” includes companies who provide internet-based services, such as webmail.” 

(筆者注15) スミス氏のブログではパラグラフ71に定めると書かれているが、内容から言ってこれは56の誤りではないか。ちなみに、56の文言は下記のとおりである。

Meaning of “telecommunications service”. 

56.This section inserts a new subsection into section 2 of RIPA. New section 2(8A) makes clear that the definition of “telecommunications service” includes companies who provide internet-based services, such as webmail. 

(筆者注16)18.The Interception of Communications and the Acquisition and Disclosure of Communications Data codes of practice, made under section 71 of RIPA, specify that interception warrants can only be issued and communications data can only be obtained on the grounds of economic well-being when specifically related to national security. This Act makes this clear in primary legislation. 

(筆者注17) リモート・ストレージとは、遠隔地のサーバなどに設けられ、手元のコンピュータからネットワークを介してアクセスできるようになっている記憶装置。また、その中に設けられた特定のソフトウェアのためのデータ保存領域。インターネットなどを通じてリモートストレージを提供するサービスをリモート・ストレージ・サービスという。(IT 用語辞典 e-wordsから引用) 

(筆者注18) Open Rights Groupが同法案につき詳しく論じている。 

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英国の個人データ保持立法に係る法令体系の現状と高等法院判決等をめぐる新たな法的課題(その1)

2015-11-17 09:12:23 | 個人情報保護法制

 2015年11月13日に発生したパリでの同時多発テロは、そのテロ組織のハイテク化など今までにない問題を提起した。このようなテロ事件が起こるたびに取り上げられるのは「通信傍受」の強化と反面その行き過ぎによる「人権侵害」問題である。

 筆者はそのいずれに組するものではない。しかし1年以上前の立法問題であるが、英国は2014717日に「2014年個人データ保持および捜査権限法( Data Retention and Investigatory Powers (DRIP) Act )(以下”DRIP Act”という)の成立を進展させる目的で議会での承認プロセスを急速に進め、必ずしも十分な審議を踏まえずに下院と上院から支持を取り付け、可決・成立、翌日718日には施行した。

 ところが、DRIP Actはその法的効力につき2014年7月22日に英国議会の議員2人(デイビッド・デイビス議員(保守党)トム・ワトソン議員(労働党)) (筆者注1)を代表とする裁判に持ち込まれ、英国・高等法院(High Court)は2015年7月17日に同法第1条、2条につき無効判決(本文44頁)を下した。同時に、同法の適用させず、それによって、EU法と互換性を持つ他の法律ヲもって追いつかせるため、政府に2016年3月31日まで代替立法させる最終期限を与えてEU法への対応期間を延長させた。 (筆者注2) 

 これを受けて、内務省は2015年11月4日に「Draft Investigatory Powers Bill 」を議会に向けて提示した。 

 このように立法として多くの問題点をかかえる同法や関連法令につき、筆者は、まずDRIP Actの立法プロセスや法的問題点等を中心にまとめるべく関係サイトを横断的に見た。多くの論者がいかにも拙速を欠くといえる急いだためサンセット条項(sunset clause)立法 (筆者注3)という点も特徴的であり、施行の政策的背景、その法的問題点、人権擁護派議員の反発等ならびに立法擁護の立場から述べたレポートがほとんどであった。(筆者注4) 

 しかし、本質的な問題が見えない中で、冷静に調べた結果、3つの有力な情報源を見つけた。(1)英国の人権擁護団体Open Rights Group:ORG のレポート、(2)英国サイバー法専門の弁護士グラハム・スミス(Graham Smith) (筆者注6)が主催するブログ(Cyberleagle)のブログ「DRIP法を解析する」ほか、(3)英国のロー・ファーム・Pinsent Masons LLPのブログ”Out Law .com”等である。特にORGの各レポートはリンク先が正確かつ網羅されており、われわれ海外の関係者が独自に論評内容を深化させる上で必須の資料といえる。 

 本ブログは、一部内容の重複があるが、これら3つのレポートを引用、仮訳した後、法執行関係者等の意見等を引用する。なお、限られた時間の中で英国の法学者のサイトも検索したが、大学の専門雑誌の解説の筆者は政府法案の擁護、または反対といった立場のはっきりしたものであり、純粋学術的なものではなかった。 

 また、当然ながら論じられなければならないのは前記2015年7月17日の英国・高等法院判決の内容と意義であり、必要な範囲で関係するレポートを引用する。なお、英国のこの種の論議では比較的アカデミック分野も含め多くの論者が出るのであるが、この法律、法令等については極めて少ない。その理由は1つには高等法院判決にもあるとおり、拙速な議会での法案審議や本ブログでも分かるとおり、関係法令が十分に整備されていない点等であろうか。

  筆者は本ブログでDRIP Actや関連法令の体系的理解を「wikipedia」の解説等を参照した。 

 なお、最後に(1)2013年12月12日の欧州連合司法裁判所(CJEU)・法務官(AG)の意見書の内容・主な論点および(2)2014年4月8日のCJEU大法廷判決文について、わが国でも多くの解説や論評があるので代表的なブログの要約とURLのみあげておく。 

 今回は、3回に分けて掲載する。 

1.DRIP Act立法の背景

(1)犯罪捜査と個人データの保持に関する英国の法律、規則、命令等の内容

 筆者なりにData Retention and Investigatory Powers (DRIP) Act以前の法体系相関関係を図解で整理する。(英国の内務省サイトではこのような図解はないが、2009年に内務省が公表した Public Consultation Paper「REGULATION OF INVESTIGATORY POWERS ACT 2000:Consolidating Orders and Codes of Practice」(全124頁)弁護士Rob Bratbyのblog「Watching the Connectives「Interception and data retention for telecoms in the UK」等に基づき、整理した。

 2.DRIP Actの立法として意義と問題点の概要

(1)英国のロー・ファームPinsent Masons LLPのブログ”Out-Law”の2014年7月18日の ブログ「 New UK data retention laws come into force」の内容を以下、仮訳し、概観しておく。 

○英国のテレコミュニケーション会社は、2014年7月18日に顧客の通信内容に関する情報を保持する義務につき、新しい英国の法規則の対象となる。 

 「個人データ保持および捜査権限法(DRIP Act)」は、急速に進めた法案の議会の承認プロセスの後、下院と上院から支持を取り付けて可決、7月17日に国王の裁可(Loyal Assent)を受け、成立後に、翌7月18日に施行された。

 ○内務大臣テレサ・メイ(Theresa May )は、2014年5月に新しい法律がテロと組織犯罪を防止するために英国の情報機関 (筆者注7)に「彼らが必要とする権限と能力」を与えると述べた。 

○DRIP Actは、2014年7月18日EUのCJEU判決によって無効であると今年始めに決定されたEU法を実装した個人データ保持に関する英国の国内法として、「2000年公的法執行機関による通信の監視・捜査・通信傍受や遮断等の権限規制に関する法律(Regulation of Investigatory Powers Act 2000:RIP Act)に代わるものである。CJEUは、EUデータ保持指令がEU市民に与えるべきプライバシーの権利を過度に侵害すると判示した。 

○メイ内務相は「我々がすぐに立法行動しなかったならば、捜査活動は一晩中突然真っ暗になることになる。犯罪者やテロリストの行動は阻止されず、法執行機関が彼らの仕事を遂行することができ、そして無実の命は失われる。DRIP法は、我々が保護すべきその人々の仕事の遂行がさらに困難とならないこと、そして、彼らが犯罪を解決して、市民の生命を救い、市民を危害から保護するため、活力ある権限を維持することができることを確実にする」と述べた。 

○この新しいデータ保持法は、通信元(source of communication)、送信先(destination)、日付(date)、時間(time)、期間(duration)やタイプ(type)のようなモバイルおよびインターネット通信について、トラフィック・データに関するものである。DRIP Actは他の法律によって保護される通信の内容(content of communications)の保持義務を課すものではない。 

○DRIP Actのもとでは、もし国務大臣がデータ保持が法執行機関の捜査またはテロまたは他の重大犯罪を阻止するのを支援するために「必要かつ適切である」と考えるか、または既存のRIP Act (Regulation of Investigatory Powers Act)の中で指定された制限目的を支援するため、一般のテレコミュニケーション・オペレータ(通信事業会社)に『通信データ』を格納することを要求できる。 

○新法のもとで、テレコミュニケーション会社は、個人データを最高1年間保持するよう要求される。新しい規定によれば、英国の国外に拠点を置く事業会社は、新しい規則に従って作られるデータ保持命令(Data Retention Order)に従うことを強制されることになる。 

同法により同サービスの提供者は、(1)送信された通信の作成、管理または蓄積を容易にする業務を含み、または(2)そのようなシステムによって送信しうる通信サービスの提供者は、DRIP Actの適用対象となる。 

(2)英国・通信傍受委員会(IOCCO) (筆者注8)は、通信傍受が新しい法令がどのように作動しているかという半年ごとのレポート(Interception of Communications Commission)を首相に提出しなければならない (筆者注9)(筆者注10) そして、テロ法に関する新しい独立した権限を持つ査定者が、特に「プライバシーを保護する安全装置」と「技術を変えようとする新たな挑戦」という観点を考慮するよう任命されることになっている。 

3.英国人権擁護団体”Open Rights Group”のDRIP法案の批判ブログ

  2014年7月14日、ORGとして、その時点の法案内容や政府の取り組み等に関し、簡潔のまとめたブログ「The DRIP myth list」を公表している。本ブログの4.で述べるGraham Smithレポート等を読む上で、必須の内容と思われる。その概要を紹介する。DRIP Actの立法経緯は関係データへのリンクも含め11月5日に更新されたORGのブログが詳しい。

 (1)「これは、非常事態である」

 CJEU大法廷判決は、2014年4月8日に下された。政府は、判決内容につき調査する期間は、3ヵ月あった。ORGは、それがORGや他の擁護団体にとって、この法案による法的措置とこの『緊急』法律を促した点は脅威であると思っている。テロリズムまたは犯罪的な活動は脅威ではない。しかし、どんな法的措置でも、少なくとも7ヵ月の間どんな結果ももたらしそうにない。政府は、この法律の緊急性について、我々を誤解させてはならない。その重要性と我々の市民的自由に対する脅威があれば、それは適当な議会での詳細な調査なしで法案を通過してはならない。

○立法の背景:解釈を支配しているCJEU判決の後、ORGやその他の擁護団体は、判決にのっとり、彼らがインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)にデータを保持するのを止めるよう依頼しているかどうか尋ねるために、内務省に連絡した。5月に内務省はISPがデータを保持し続けなければならないと述べることによって反応した。6月、1,500人以上のORGサポーターは、彼らに彼らのデータを保つのを止めるよう依頼している彼らが利用するISPに手紙を書した。ISPは、内務省の指示に従って行動すると言うことによって応えた。

 (2)「これは権限の拡張ではない、それは現状の回復である」

 キャメロン首相は「政府は、新しい権限または能力を導入してはいない」と述べた。しかし、実際、DRIPはまさに解釈を支配しているCJEUによって違法になった保持指令に対処てしない。DRIP法案の条項第3条~第5条は、RIPA の規制の改正を形作る。すなわち、DRIPは、次の2つの方向で政府の監視能力を広げる。

①それはRIPAの適用範囲の範囲を広げる-これは、政府が英国国外に会社に通信データのために妨害令状を交付することができることを意味する。

②「テレコミュニケーション・サービス」の定義をRIPAより広げる。これは、Gmailのようなwebメール・サービスを含む。現時点で明白でない点は、インターネット・サービスのどんな他の種類が含まれるかということである。

 (3) 「我々が犯人を捕えることができることは、傍受が唯一の方法である」

 ORGは、通信データの目標とされた保持が警察が重大犯罪(例えばテロリズムと児童虐待)に取り組むのを助けることができることには同意する。しかし、支配的な点につきCJEUは、データを保持することに決めるために、低い入り口を概説した。たとえば、重大犯罪が犯されるならば、データは特定の地理的地域が捜査を支持するために保持されることができる。これは、警察がまだ特定の調査(すべての市民の包括的な監視よりもむしろ)のためにデータを保持することができることを意味する。

 CJEU判決は、明らかに包括的なデータ保持が個人的な家庭生活に我々のプライバシーの権利と個人的な家庭生活に送る権利に干渉するということであった。しかし、他のヨーロッパ諸国は、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、ドイツ、ギリシャ、ルーマニアとスウェーデンを含む国々は、CJEU判決を拒絶した。これらの国は、包括的なデータ保持を通して彼らの市民の市民的自由を徐々にむしばむことなく重大犯罪に取り組み続ける。 

(4)「DRIP 法案にはサンセット条項がある」 (筆者注11) 

 DRIP法案は、2016年12月31日までの時限立法である(当初の法案では2016年3月が期限であった)。政府はこれが『不注意と透明度を強化する』と主張する。しかし、その期限日付は2年半先である。我々はこの日付が2014年12月31日に早められる必要があると思っている。そして、これは改められることができるか、非常に簡単に廃止されることができる。。法律が議論なしで急いで通されることになっているならば、2014年12月31日の初期の有効期限は次の6ヵ月の間一般の詳細な調査を考慮に入れるであろう。これは、現在が緊急事態であると思っているそれらの議員でさえ合理的な要請である。 

(5)「同法案は、支配しているCJEU判決を考慮する譲歩を含める」

 DRIPは現時点で解釈を支配しているCJEU判決の主要部を無視する-その包括的なデータ保持義務は、私生活に対する敬意や個人データの保護への基本的な権利を著しく干渉する。政府は、法案が他の面における不注意と透明度を強化すると主張した。たとえば、彼らは、それが通信データの保持を要請することができる公的機関の数を制限すると主張する。それでも、この譲歩案は、DRIPまたはそれを実行する第二の法律でも現れない。法的要求の承認が、英国市民のプライバシーの権利を維持するためでなかったといえる。 

****************************************************************************

(筆者注1) 議員は、英国のドローン規制法問題に関しても超党派で取り組んでいる。2015年3月17日付けの筆者ブログの「Ⅲ.英国議会の超党派ドローン問題議員連盟(All Party Paliamentary Group in Drones:APPG)の取組み」参照。このような重要な問題につき超党派な議論ができうる環境が英国議会にはあるのか。じっくり研究してみたい。

(筆者注2)の、同判決文第122項を参照されたい。

We will make an order disapplying s 1 of DRIPA to the extent that it permits access to retained data which is inconsistent with EU law in the two respects set out in our declaration, but suspend that order until 31 March 2016. The order will be that s 1 is disapplied after that date:

 (筆者注3) ンセット法とは、廃止期日が明記され、議会で再認可されなければ自動的に廃止される法律である。DRIP Actで言うと2016年12月末日である。 英国議会の用語解説を以下、引用、仮訳する。「その法律が可決・通過されたら、それに一定の有効期限を与える法案をいう。 議会には一定の期間後再びその真価によって決める機会がなければならない点が感じられるとき、sunset clause が法律案に含まれる。」

(筆者注4)クロエー・グリーン(Chloe Green)のブログThe DRIP Act potentially gives UK personal data to cyber-criminals on a platterは、ユニークな視点から法案を論じている。筆者は法律専門家ではないジャーナリストではあるが、(1)DRIP 法案の保持義務の適用プロバイダーの範囲が、web-mailやSNS等に拡大するとあるが、捜査当局に利するだけでなく、2014年6月、テレコミュニケーションの巨人であるAT&Tから顧客電話の日付、時間、接続時間といった詳細が盗まれた事件や、またオレンジ事件ではサイバー犯罪者がプロモーション・adsを使って得たE-メール・アドレスや電話番号、生年月日を大量のフィッシングのハッカーを行った事件では約130万人のユーザー被害を導いている点等を指摘し、同法がそれら犯罪者に利する可能性を取り上げ、サイバー犯や組織犯罪グループに利するリスク問題、また(2)海外に本部を有するプロバイダーへのDRIPの適用が果たして英国民のプライバシー保護上で有効か等を鮮明に論じている。 

(筆者注5) 国で、”Open Rights Group”の幅広い活動内容をとりあげているレポートとしては、国立国会図書館の2011年8月25日資料デジタル化に関する英国図書館とGoogleの契約内容についての記事」CNET記事「英国図書館、著作権法の改正を訴え--デジタルコンテンツ規定の盛り込みを要請」」等があるが、米国の同種の団体に比べると極めて少ない。しかし、筆者から見ると、そのレポート内容のレベル、専門性、信頼性等は大手ローファームに引けをとらない高いものという気がする。 

(筆者注6) 英国サイバー法専門の弁護士グラハム・スミス(Graham Smith)が主催するブログ(Cyberleagle)は、法的問題の断片的な解説ブログというよりは、学会論文に近い逐条的な解析と内容・分量である。長くなるが、類似のブログも見当たらないことから、原典に近いかたちでブログの仮訳を試みる 

(筆者注7) 英国の情報(諜報)機関とは、一般的には次のものをいう。

MI6 Secret Intelligence Service (SIS)

Government Communications Headquarters (GCHQ)

MI5 Security Service  

(筆者注8) IOCCOの法的根拠は次のとおりである。2000年RIPAの第57条(それ以前は1985年の通信傍受法)は、遡及的に英国の情報機関、警察その他の公的機関による手配(arrangements)、令状による通信傍受や情報収集および開示につき、遡及的に首相に報告することで、内務省とともに機能する。

IOCCOの活動にかかる関係法令が同サイトで以下のとおり図示されている。 

 

 

(筆者注9) IOCCOの通信傍受行動報告の法令上の根拠、対象機関等についての解説サイトを以下、仮訳する。なお、IOCCOの現委員長は、2015年11月4日に就任したスタンリー・バーントン(Stanley Burnton)である。関係先へのリンクは筆者の責任で行った。

○英国・通信コミッショナーによる通信傍受に係る監査報告 

(1)IOCCOは、9つの各捜査、情報(諜報)機関に対し、年2回の監査を行う。

 2000年RIPA Actの第6条第2項にあげられている次の人によりまたはそれに代わって作成される場合以外は、通信傍受令状の請願はできない。 

①情報保安庁(Security Service:MI5)長官(内務大臣の法的権限の下で活動するが、内務省には属していない):現在の長官(Director General)はアンドリュー・パーカー(Andrew Parker) (MI5の役割は、1989年セキュリティ・サービス法に「国の安全を保護するものとする。とりわけ、エスピオナージ、テロリズム及びサボタージュからの脅威、外国勢力のエージェントの活動からの脅威並びに政治的、産業的、及び暴力的手段による議会制民主主義を転覆又は弱体化しようとする活動の脅威から国の安全を保護するものとする。」と定義されている。(公益財団法人・防衛基盤整備協会「英国の対情報機関(MI5)の概況」から一部引用). 

②秘密情報局(MI6:SIS)の局長(Chief of the Secret Intelligence Service :外務省が任命)(MI6の現局長はアレキサンダー・ウィリアム・ヤンガー(Alexander William Younger) 

政府通信本部(GCHQ)長官:現長官はキアラン・マーテイン(Ciaran Martin) 

④ 国家犯罪対策庁長官(Director General of the National Crime Agency:現長官はキース・ブリストウ(Keith Bristow ) 

⑤ロンドン警視庁の警視総監:現総監(Commissioner of the Metropolitan Police)はベルナード・ホーガン(Bernard Hogan) 

⑥北アイルランド(PSNI)警察

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EU-米国の個人情報移送に関する協定(「アンブレラ協定」)に見るプライバシー保護の抜本見直し(その2完)

2015-11-05 11:44:04 | 個人情報保護法制

(3)2015.9.8 欧州委員会「Questions and Answers on the EU-US data protection "Umbrella agreement"」のアンブレラ協定に関するQ&A

 9月8日、欧州委員会はEU・米国間のアンブレラ協定についてのQ&Aを発表した。EPICレポートをさらに具体化した内容も含まれるので、前述の説明と一部重複するが仮訳しておく。なお、EUの公式情報とのリンクは筆者が独自に行った。 

○EU・米国の「アンブレラ協定」交渉は完了した。そして、同協定はまさに仮調印段階にある。 

○EU-米国間のデータ保護に関する「アンブレラ協定」とは何か? 

 EU-USデータ保護「アンブレラ協定」は、EU-US間の法執行協力に対する包括的な高水準レベルの情報保護の枠組みを実施する目的のものである。同協定は、刑事犯罪(テロ行為を含む)の防止、捜査、取り調べや起訴の目的でEUと米国の間で交換されるすべての個人データ(たとえば名前、住所、前科等)をカバーする。

 アンブレラ協定は、両域間の個人情報の移送につき合法性と安全装置と保証を提供する。そして、それによって基本的な権利を強化し、EU-米国間の法の執行協力を容易にし、かつ信頼関係を復活させる。 

 特に、協定によりEU市民は平等的な取扱からみた利益を得る。すなわち、彼らにプライバシー違反が発生した場合、米国民と同様の裁判をうける保障権がある。この点は欧州委員会ジャン・クロード・ユンケル委員長(Jean-Claude Juncker )の政治ガイドラインで「アメリカ合衆国はそうしなければならない[...]それらが米国内にあるか否かを問わず、すべてのEU市民には米国の法廷でデータ保護権利を行使する権利があることを保証する。そのような差別を取り除くことが、大西洋を横断する関係で信託を復活させることにとって不可欠である」と述べた。 

○アンブレラ協定はどのようにして、越境的な個人データの移送をより安全なものにするか?

 この協定は、既存のEU-USと加盟国の 法執行当局間の合意内容を補完する。それは、明確かつ調和するデータ保護規則を構築し、この分野でのプライバシー保護の高水準を将来の合意に寄与する。 

 アンブレラ協定は、警察と刑事司法当局の間で交換されるとき、各人の個人データが保護されていることを保証するために、以下の保護を提供する。

①データ使用に対する明確な制限– 個人データの使用目的が刑事犯罪の防止、捜査、取調べまたは起訴する目的でのみ使用される物であり、かつ相互に互換性を持つ目的を越えて処理されてはならない。

②更なる個人情報の移送 – 米国外や非EU国または国際組織へのいかなる移送については、当初個人データを移送する国の所管官庁の事前の同意を受けなければならない。

③個人情報の保持期間-個人の個人情報は、必要または適切な期間より長く保持されてはならない。これらの保持期間は発表されるか、または一般に公開されているようにしなければならない。その期間が許容できる期間であることについての決定は、人々の権利や利害への影響を考慮しなければならない。

④本人のアクセス権アクセスと訂正権-どんな個人でも特定の状況(法の執行の前後関係を与えられる)に従い、自身の個人データにアクセスする権利がある。 – そして、それが不正確であるならばそれを訂正することを求めうる。

⑤データ保護違反が発生した場合の主体への情報提供 – 提供のメカニズムは、所管官庁と必要に応じてデータ主体にデータ保護違反の通知を確実にするように、実施されているようにされる。

⑥司法救済措置と法的拘束力-米国当局の場合には米法廷がアクセスまたは改正を拒むか、不当に彼らの個人データを明らかにする前に、EU市民には司法共済を求める権利がある。協定のこの規定は、米国の司法救済法が連邦議会で可決されるか否かによる。 

○アンブレラ協定において何の目的で、個人データは大西洋を横断して転送することができるか?(目的による制限)

 EUと米国の法執行機関の間に移送される個人データは、警察の協力と裁判所の協力のフレームワークで刑事犯(テロ行為を含む)の阻止、捜査、取調べまたは起訴目的で、共有されることができるのみである。協定は、このデータが他の非互換の目的のためにさらに処理されることはできないと明確に述べる。 

○米国が個人データを第三国または国際組織に譲渡することに決めるとしたら、どのように、アンブレラ協定は、そのデータを保護するか?(米国外の国へのさらなる移送)

 米国当局がそれを第三国へ移送する必要があるとき、アンブレラ協定は大西洋を横断して転送されるEU市民のデータを保護するために強いセーフガードを導入する。すなわち、米国当局がより遠くにそれがEUから第三国や国際組織まで受け取ったデータを転送する場合に備えて、それは当初データを米国へ動かしたEUの法執行機関から同意を最初に得なければならない。 

○司法救済とは何か?司法救済制度によりアンブレラ協定はどう変わるのか? 

  EU市民の個人データが米国の捜査当局に譲渡され、かつ彼らのデータが不正確であるかまたは不当に処理されたとき、現状は米国に住居しないEU市民は米国の裁判所(一方、米国民はEUの裁判所に保障を求めることができたのと異なり)で救済を求めることはできない。ユンケル委員長の政治ガイドラインにおいて要求されるように、アンブレラ協定はEU市民の米国民と平等の取扱いを導入する。 

 1974年の米国プライバシー法の司法救済規定の中心をEU市民まで広げる法案は、3月18日(司法救済法案)は、米国連邦議会に正式に上程された。同法案が可決されると、米国当局がアクセスまたは訂正を拒んだか、不当に彼らの個人データを明らかにする場合に備えて、それはEU市民に米国の法廷に司法救済を求める権利を与える。司法救済法案は、アンブレラ協定の締結を考慮に入れている。 

○協定は実際はどのように働くか、例示してほしい? 

 例:あるEU市民の名前が大西洋を横断する捜査において容疑者のそれと同一であったとする。彼らの個人データはEUから米国へ移されて、誤って収集され、米国の「ブラックリスト」に含まれる。その結果、これは入国ビザに対する拒絶から、逮捕といった一連の悪い結果に至ることができる。EU市民は、彼らの名前を米国当局ー必要に応じ裁判官により削除されねばならない。 かつて、間違いが発見される。ヨーロッパ市民(およびアメリカ市民)は、EUでそれらの権利がある。個人データが米国とも交換されるとき、彼らにはそれらの権利がなければならない。また、彼らのデータが不正確であると思う市民は、そこで国内法のもとに許されて、当局(たとえば自国の個人情報データ保護当局)または一人の代表に彼または彼女のために修正(correction)または訂正(rectification )を求める許可を与えることができることになる。 

 もし、修正または訂正が拒否されるか制限されるならば、個人データを処理する米国当局は否定の理由または修正または訂正の制限事由を説明している回答を原告を代理する個人またはデータ保護当局に提供しなければならない。 

○協定の締結の次のステップは何か? 

 米国の司法救済法案が、EU市民に米国の裁判による救済の権利を与えるべく可決された後においてのみ、アンブレラ協定は署名され、正式に締結される。 

 欧州理事会は、欧州委員会による提案に基づいて、協定に署名することを認める決定を採択した。契約を結んでいる決定は、欧州議会の同意を得た後に、欧州理事会によって採択される。

 ○アンブレラ協定の交渉は最初にいつ開始されたか?

 欧州議会は、2009年3月26日の決議において、市民的自由と個人のデータ保護の十分な保護を確実にするためEU-US間の合意を求めた。2009年12月、欧州理事会は欧州委員会に「データ保護に関する交渉と、必要な場合米国による法の執行目的のためのデータ共有協定のために」推奨を提案するよう促した。 

  2010年5月26日、委員会はEUと米国(IP/10/609MEMO/10/216  (筆者注4))間の個人のデータ保護合意について交渉するために、付託草案を提案した。 

 2010年12月、EU加盟国の法務相は、EUと米国(IP/10/1661 を参照)の間の交渉の開始につき承認した。同交渉は、2011年3月29日(MEMO/11/203 参照)に正式に始まった。 

2.「2015年司法救済法案( H.R.1428 - Judicial Redress Act of 2015)」

(1)法案要旨

 同法案は、自然人たる市民が当該機関によって保持される記録の不法な開示にアクセス、訂正または救済するために特定の米政府機関に対して1974年プライバシー法に基づく民事訴訟を起こすため、外国機関または地域の経済統合組織を指名する権限を司法省(DOJ)に与えるものである。 

 司法省は、国務省、財務省および国土安全保障省の賛同を得て、当該人の属する国または組織が刑事犯の防止、捜査、取調べまたは起訴するための個人情報を米国と共有するために適切なプライバシー保護を受けるならば、当該市民のためそのような民事救済の追求を続行しうる国または組織を指名することを認める。

  このDOJによる指名権は裁判や行政のレビューからは除かれる。  

 コロンビア特別区のための米国地方裁判所に対しこの法のもとに起こっているどんな主張に対する独占的な司法権でも許諾される。  

(2)同法案をめぐる議論

 あらためて本ブログで追記する。

     **********************************************************

 (筆者注4)2010年MEMO/10/216の標題は「EU-US data protection agreement negotiations: frequently asked questions 」である。

  *******************************************************
Copyright © 2006-2015 芦田勝(Masaru Ashida).All rights reserved. You may display or print the content for your use only. You may not sell publish, distribute, re-transmit or otherwise provide access to the content of this document.

 

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EU-米国の個人情報移送に関する協定(「アンブレラ協定」)に見るプライバシー保護の抜本見直し(その1)

2015-11-05 07:03:58 | 個人情報保護法制

 さる10月6日、EU・米国間の「セーフ・ハーバー協定」を無効とする欧州司法裁判所(CJEU)判決については,わが国でも紹介されているが、その判決の以前から欧州委員会と米国政府機関との間で行われていたセーフ・ハーバーVer.2交渉や米国NSA(国家安全保障局)のEU主要国へのスパイ行為やEU市民の監視強化に対する反発等についての詳しい解説は皆無である。 

 特に注目すべき点は、今回述べるいわゆる「アンブレラ協定」と米国連邦議会下院で可決された「2015年司法救済法案( H.R.1428 - Judicial Redress Act of 2015)」が真に米国企業にとってEU市民の個人情報を合法的に移送できる手段となりうるのかという点である。

  これらの問題につき本格的な情報収集している人権擁護団体は、今のところEPIC(Electronic Privacy Information Center)のみである点、また大手ローファームでも限られたは範囲で取り上げられているというのが現状である。

 本ブログは、EPICの解説等の内容を補完しつつこれらの問題点を包括的に整理するとともに、わが国の企業におけるEU市民情報を扱いの適正化のメルクマールを模索するのが狙いである。

  なお、CJEU判決の詳しい内容及びこれを受けて専門的な検討を急速に進めているEU指令第29条専門家会議の審議内容、また、2015年6月2日、米議会上院は、NSAによる通話記録の大規模収集活動を禁じる画期的な「米国自由法(USA Freedom Act)案」を賛成67反対32の賛成多数で可決、成立(筆者注1)した点等については、別途本ブログで紹介する。

   今回は、2回に分けて掲載する。 

.EU・米国間のアンブレラ協定の内容と秘密裡に進めている問題点

 欧州委員会および米国の国務省や国土安全保障省は同協定の内容につき、秘密裡に進めてきたことは事実である。筆者はまずEPICが「連邦情報公開法(FOAI)」を活用して具体的に進めたアンブレラ協定案の入手結果、その内容面から見た問題点を見ておく。

 (1)EPICレポートにみるアンブレラ協定案の内容とその協定にいたる背景

  EPICサイトでこの問題を詳しく論じたのは「EU-US Data Transfer Agreement」である。

 ここでは、その本文部分を仮訳し、補足説明を行う。 

○EPICの同協定案の入手

 EPICは情報公開法にもとづく開示請求を行った後、EU委員会から機密とされる「アンブレラ協定」の内容を入手した。すなわち、欧州委員会は情報公開開示請求に応じて、EPICにEU・米国間のデータ移送協定の書面内容を公開した。米国とEU当局(欧州委員会)は、2015年9月にいわゆる「アンブレラ協定」を纏め上げたが、その最終的な文書内容は秘密とされた。EPICは、文書の公開を得るために2015年9月中旬に米連邦機関(国務省国土安全保障省)と欧州委員会に対し、複数のFOIA開示請求を起こした。

 同協定は、10月20日連邦議会下院で可決された「2015年司法救済法( H.R.1428 - Judicial Redress Act of 2015)」とともに、セーフ・ハーバー取り決めの法的効果を否定した欧州司法裁判所(CJEU)の判決(2015年10月6日)を受けた重要な文書である。同合意を検証した法律学者は、それが極めて不備のあるものであると結論を下している。EPICは、米連邦機関から同意の公開要求を続行し続けている。(2015年10月23日)  

○連邦議会下院は、えせのプライバシー保護法案を可決:下院は「2015年司法救済法」を可決した。その唱える立法目的に反し、このプライバシー保護法は米国以外のEU市民まで保護範囲を広げることができない。

 EPICは、連邦議会への書面において同法案は越境個人情報のデータフローを許すために十分な保護を提供しないと主張し、米国の連邦機関によって集められるすべての個人情報の保護を確実にするよう法案の見直しを勧告した。

 連邦議会は、最近法案を成立させたが、秘密のEU・米国の「アンブレラ協定」の内容を除き法案を発展させるために前向きに動いた。EPICはアンブレラ合意の情報開示請求を提出し、最近行政機関から迅速承認処理(expedited processing)が拒否されたことから行政不服審査の訴え(administrative appeal)を提起した。(2015年10月21日) 

○EU・米国のアンブレラ協定の背景(Background)

  2015年9月8日、欧州委員会と米政府当局は、彼らがデータ保護に関する取り決めを大西洋を横断する犯罪捜査のために結んだと発表した。「一度大挙して、大西洋を横断して捜査当局の間に移されるとき、この合意はすべての個人データの保護の高水準を保証する」と、9月8日にEU司法担当委員Věra Jourová's (チェコ:ヴェラ・ヨウロバー)は声明を出した。その発表にもかかわらず、米政府当局も彼らのEUの窓口となる当局(筆者注2)も、同合意の文書内容を公表しなかった。 

○アンブレラ協定案の分析

 EU・米国間の協定と刑事犯罪の防止、捜査、起訴に関する個人情報の保護に関するアンブレラ協定の全文は、最初はEUの人権監視団体”Statewatch”によって公表された。2015年9月14日に、EU議会は協定の非公式のバージョンを公表した。EPICは、USとEU機関に対し文書の公開を執拗に追求している。 

○アンブレラ協定の徹底的な分析は、以下のとおり。

・EPICの関心点

 EPICは、越境の個人情報のデータ・フローを可能にするために、包括的な法的枠組みの確立を支援する。そのためEPICは、以前に米国は「1981年欧州評議会条約」の批准プロセスを開始すべきと主張した。  

「1974年(連邦)プライバシー法(Privacy Act of 1974 )」(筆者注3)は、その個人情報を保護するための義務を連邦機関に課す。この義務および付随する責務は、個人データの収集から生じる。したがって、データの所有者の市民権または家柄が何であるかは重要ではない。 

○EPICの指摘する「2015年司法救済法」の問題点

 重要な点として、それが法的影響を持つ前に、アンブレラ協定は1974年の米国プライバシー法の改正を必要とする。このため、連邦議会は「2015年司法救済法」をもってその立法策を提案した。

 EPICは下院司法委員会への手紙において、意味がある保護を米国以外の人の上で集められるデータにも提供すべきとする司法救済法案の修正を勧奨した。同法案(上院での審議途上)は、連邦プライバシー法( Private Act of 1974)を改正しようとする。EPICは、審議中の法案がEUと米国間の境界データフローを許すために十分なプライバシー保護を提供することができないと主張した。またEPICは、法律を実施することに関する怠慢について米国で一般人の懸念を増やすことも指摘した。EPICは、米連邦機関によって集められるすべての個人情報の十分な保護を確実にすると以前議会の具体的行動に勧めた。EPICは、EU・米国の「アンブレラ協定案」のテキストの公開も求めている。 

(2)米国ローファームで見るアンブレラ協定の内容と問題点

  前述したEPICレポートは事実関係は網羅的に捕捉しているが、やや説明不足の感は否めない。そこでMcGuireWoods LLPブログ「EUとアメリカは、個人情報の移送に関してアンブレラ協定にたどり着く(EU and U.S. Reach “Umbrella Agreement” on Data Transfers) 」 の内容もあわせ見ておく。 

○2015年9月9日にEUと米国は、大西洋をまたぐ2つの地域が刑事犯とテロ犯捜査の間、個人情報を交換し合うことを可能とする合意に達した。

 いわゆる「アンブレラ協定」はEUと米国の間で4年間の交渉を経たもので、捜査の間に警察と裁判所当局の間で交換される個人情報を保護する。

  EU内の懸念は、2013年に米国の国家安全保障局(NSA)がEU市民に対する大規模な監視を産業スパイ活動も含むかたちで行うとともに首相、大臣等をスパイしていたといったという意外な事実の露見後にあきらかとなった。欧州委員会は、今回の協定がEU・米国間の失われた信頼を復活させるのを助けると述べた。

 アンブレラ協定は「犯罪の防止、捜査、取調べおよび起訴の目的で」EUと米国の間の個人情報の移送を許す。そして、それが「互換の処理目的を超えない限度で」であると定める。そして、第三国に共有データを移送するうえでも処理の限度を米国またはEU加盟国の能力に置くことになろう。

  重要な点は、EU市民には米国当局が情報へのアクセスまたは訂正を拒む、あるいは不当に彼らの個人情報を公開する場合、米国の法廷の前において自身のデータ保護の権利を実施するうえで米国民と同じ権利を認める点である。米国民にはEU域内で現在データ保護の権利があるので、これは同等の関係(quid pro quo)とみなされる。 

○EU司法担当委員Věra Jourová's (チェコ:ベラ・ヨウローワー)は、「本協定が米国とEUの捜査機関の間で交換される個人データのために「高水準の保護」を保証する、したがって、アンブレラ協定交渉の仕上げは、効果的に基本的なプライバシーの権利を強化し、EU-米国のデータ・フローに対する信用を作り直す重要なステップである」と声明で述べている。 

○協定の次なるステップ

 米国では、アンブレラ協定が相互で署名され、正式に手続きが終了することができる前に、「2015司法救済法案」は、EU市民に裁判の保障権を与えるべく可決されなければならない。クリス・マーフィー上院議員・民主党( Chris Murphy (Democrat)フランク・ジェームズ・センセンブレナー( Frank James Sensenbrenner Jr.)下院議員 によって導入された法案を後援している)は、彼が必要な文言を現在審議中である「サイバー・セキュリティー情報共有化法(Cybersecurity Information Sharing Act)」に付随させるか、単独法案としてそれを通過させるかを狙っていると述べている。 

 他方、EUにおいて欧州理事会は欧州委員会の提案に基づいて、協定書の署名を認可している決定を採用しなくてはならない。協定を結ぶ決定は、欧州議会の同意を得た後、欧州理事会によって採用される。 

○セーフ・ハーバー協定の未来は?

 会社間の個人情報の移送問題をカバーする別途のEU-米国の上のセーフハーバー協定は、交通規制ブロックにぶち当たった。アンブレラ協定によってカバーされる裁判の補償問題に関する賛同は、協定締結の両当事者がセーフ・ハーバー交渉の一部としてその点で前進するのを認めなければならない。

  2014年、欧州議会はセーフ・ハーバー協定(それはセーフ・ハーバー自己証明スキームに署名した5,000の米国企業がEU外の米国に個人データの移送を合法化する)を一時中止することを可決した。しかし、2013年の調査で数百社もセーフ・ハーバー取り決めに合致していることにつき嘘をついたことが明らかになった。 

 ほぼ2年前の2013年11月27日、欧州委員会は、セーフ・ハーバー・スキームを改善するため米国に対する13の勧告を出したが、まだそれを受けた改善するためにほとんど何も行われてこなかった。

 米国・商務省は、同協定を国家の安全保障の上に位置する例外措置を拒否している。同協定は現在見直し中であり、また2015年9月9日、EUの司法担当委員ベラ・ヨウローワーはセーフ・ハーバーの精査・研究がすぐに終わるであろうと確信していると述べている。 

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(筆者注1)この法律によりNSAの活動は制限され、オバマ大統領は、市民の自由と国家の安全が保障されるという。この法律により、NSAはテロとは関係ない不特定多数の市民の通話記録ー電話番号、電話をかけた日時など-を収集、保存できなくなる。また、通話記録を保存するのはNSAではなく通信会社となり、米当局が通信会社から通話記録を取得する場合は、秘密裁判所である外国情報活動監視裁判所が特定の個人やグループについて発行する令状が必要になる。(2015.6.3 yahoo blog「米国自由法成立」から一部引用)。 

(筆者注2) 米国の国務省、国土安全保障省をさす。 

(筆者注3)4. 1974年のプライバシー法

1974年に制定されたプライバシー法(the Private Act)は、FOIAの関連法とされる。プライバシー法は合衆国法典第5章第552a 条に記載されており、氏名、ソーシャルセキュリティ番号、或いは他の身分を示す数字やシンボルのような個人ID によって検索され得る情報を保護するためのものである。個人は自己に関わる情報にアクセスし、必要であればこれらの情報の修正を請求する権利が与えられた。プライバシー法では、条文中に列記された12 個の例外的な開示事由に該当しない場合には、本人が書面で同意しない限りその個人の情報を開示することが禁止された。FOIA と同様に、プライバシー法は連邦政府のエージェンシーのみを拘束し、連邦政府のエージェンシーが所有・管理する公文書のみに適用された。プライバシー法に基づく請求は、アメリカ国民やアメリカの永住者として法的に認められた外国人が自分に関する情報を入手する場合にのみ行うことができた。(財団法人自治体国際化協会(ニューヨーク事務所)「米国における情報公開制度の現状」から一部抜粋。なお、同解説はこれまでのFOIAの立法経緯を詳しく論じている)。 

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