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ペンシルベニア州の公立学校の当時14歳女子学生が行ったSnapchatと教育委員会の処分をめぐる連邦最高裁判決の意義とこの問題の重要性

2021-06-27 07:19:41 | SNSと言論の自由問題

 

 わが国のメディアでも報じられたとおり、連邦最高裁判所は6月23日、州の公立学校には、学生がキャンパス外で言ったことを罰する一般的な権限がないと判示し、部活動禁止処分は合衆国憲法修正第一に反すると判示したが、一方で学校側が、一定の範囲で生徒の校外の言論を規制することは可能であるとする点も明示した。

 8-1のこの判決は、学校の子供たちがソーシャルメディアやテキストメッセージを通じてほぼ絶えず互いに連絡を取り合っている時代に、憲法修正第一の保護範囲を拡大した。 今回の決定は、すべての学生の学外の表現を保護するものではなかったが、最高裁判所は、将来の事件で解決される例外を制限することを提案した。 

 また、スティーブン・ブレイヤー最高裁判事は、「合衆国憲法修正第一が学校に与える裁量権」は、学外の表現の特殊な特徴に照らして、「減少されるべき」と補足意見を書いた。

 一方、クラレンス・トーマス最高裁判事は、停学を支持したであろうと述べ反対意見を述べた。 

 当時ペンシルベニア州の公立学校の9年生(日本の中学3年生)だったブランディ・レヴィ(Brandi Levy)は、ある土曜日にコンビニエンスストアでSnapchatに投稿したメッセージを理由として罰せられたが、連邦最高裁はレヴィの勝利を認めた。

Brandi Levy氏

 彼女は極めて下品な四文字言葉を使って「f ---学校f ---ソフトボールf ---チア-チームf ---全部」と書いた。学校のチアリーディングコーチの1人がメッセージを発見したとき、レヴィは2年生の間ずっとジュニア代表チームにおいて出場停止になった。

 彼女と彼女の両親は訴訟を起こし、連邦控訴裁判所は、彼女のメッセージがキャンパス外に投稿されたため、彼女は学校当局の手の届かないところにあり、罰せられないとの判決を下しました。今回、最高裁判所はそこまでは明確にしなかった。

 6月23日の判決は、学生の表現に関する裁判所の以前の決定をインターネット時代に併せ見直した。1969年、連邦最高裁判所は、生徒と教師は「校舎の門で言論または表現の自由に対する憲法上の権利を放棄することはない」と判示した。生徒の表現は、学校の仕事と規律を実質的に混乱させない限り、規制することはできないと最高栽判決は述べたのである。

 同裁判で、マハノイ地域学区の教育委員会は、レヴィの出場停止処分を擁護し、「スマートフォンとソーシャルメディアの普及、およびパンデミック時の遠隔教育の必要性により、キャンパス内とキャンパス外の境界線が曖昧になったと述べた。生徒の表現がどこから来たとしても、メッセージが学校に向けられて混乱を引き起こす場合、学校は生徒を懲戒することができなければならない」と同委員会は述べた。  

 今回のブログはわが国の新聞記事も必ずしも詳細かつ正確でない点を踏まえ、まず、(1)レヴィがSNSで行った行為の違法性、非常識性につき改めて検証した、(2)当時14歳であったレヴィは一時の感情が高ぶったはいえこのようなきわめて下品な言葉を安易に使うことが、すべて言論の自由.で保護されるとするといえるかについても納得いかない。他方、(3)学外授業で他人や学校の人格・名誉等を否定する言葉を問題視しない親や教育者も問題である。さらに言えば、このような言葉が、SNS等で使わえているとすると今回の失言だけでない、いじめなどの可能性も考えられる。

 同様の事案では、わが国の場合いかなる裁判所の判断が出てこようか私見も含め論じる。

1.事実関係と連邦最高裁の判決に至る経緯

 学校のチアーリーダーであるレヴィは、翌年に関しjunior varsity(JV)チームに降格させられた。彼女の中指を立てた写真(筆者注1)とFで始まる極めて下品な言葉をSnapchatで使い、:欲求不満のつかの間のフィット感で応答した。

「F---学校、f---ソフトボール、f---チアチ―ム、f---全部」(筆者注2)と当時14歳ペンシルベニア州の9年生(日本の中学3年生)だったブランディ・レヴィ(Brandi Levy)は土曜日にSnapchat (筆者注3)にアップした。Snapchatの「ストーリー」(スナップチャット)のすべてのフレンドが24時間だけ見れる、複数のスナップのまとめをいう)に投稿されたすべての「スナップ」と同様に、約250人の「友人」に送られたこの「スナップ」画像は、誰もが月曜日にペンシルベニア州のマハノイ地域の高校に戻る前に、24時間以内に消えてしまっていた。

 この問題は、思春期の怒り暴発とそれに対する大人の反応が最終的に最高裁判所に到着し、この事件は合衆国憲法修正第一の「言論の自由の保護」が米国の5,000万人の公立学校の学生の学外活動にどのように適用されるかを決定することに結びついた。

「これは、学生のスピーチを含む50年以上の判断中で最も重要なケースである」と、エール大学ロースクールの教授で、「校舎の門:公教育、最高裁判所、そしてアメリカの心のための戦い」の著者であるドライバー教授(Justin Driver)は述べた。

 Justin Driver氏

 ドライバー教授は「学生のスピーチの多くは学外にあり、ますますオンライン・スピーチの機会が増す。学校の管理者と話をすると、学外の学生のスピーチは彼らを悩ませ、下級裁判所はこの分野で必死に指導を必要としている」と一貫して取材記者に述べた。

 携帯電話は、ほぼすべてのティーンエイジャーの手とソーシャルメディアの優先コミュニケーション・モードの延長となっており、それは驚くべきことではない。そして、この1年間、Covid -19パンデミック下で多くの学生は、ズームクラス中(Zoom classes)に自宅で「スピーチ」を行っており、学校のキャンパスの近くに行っていない。

 憲法修正第一は「そのスピーチがキャンパス外で始まったからといって、キャンパス環境を覆す学生のスピーチを無視するよう学校に強制する」わけではないと、マハノイ地域学区が提出した簡単な報告・意見書は、レヴィをチアリーデイングチームから追い出すという学校の決定を支持した。.

 「生徒のスピーチがどこから来ても、学校は、スピーチが学校に向けられ、学校環境に同じ破壊的な害を課すときに、生徒を同様に扱うことができるはずだ。

 教育委員会の弁論趣意書(brief)とドライバー教授の著書の表題は、学生のスピーチ、ティンカー対デモイン独立コミュニティ学区に関する基本的な最高裁判所のケースを指す。1969年2月24日の最高裁の判決「ティンカー対デモイン裁判」(筆者注4)は、生徒と教師が「校舎の門で言論や表現の自由に対する憲法上の権利を放棄しない」ことを有名にした。

 しかし、1969年の判決で最高裁は「学校は、言論を制限する際に一般的に州よりも学生に対するより広範な権限を持っており、当局は学校機能の「物質的かつ実質的な」混乱を引き起こす可能性のあるキャンパス内スピーチのために学生を懲戒することができると」述べた(裁判所は、彼女がベトナム戦争に抗議するために身に着けていた黒い腕章は破壊的ではないと判断した)

 この半世紀の間に、連邦最高裁判所の憲法修正第一に関する決定はほとんどなく、学校の管理者の側の考えに傾いている。司法機関は、学生によるみだらなスピーチ、学校関係者の指示で運営された学生新聞、そして学校の活動で学生が開催した一見親マリファナのメッセージ「ボンヒッツ4イエス(“Bong Hits 4 Jesus”)」を持つ無意味な看板に関する学校の懲戒処分(disciplinary action)を支持している。.

 今回のレヴィのケースはこれとは異なる。これは、学校の行事に接続されていない、つまりオンラインと週末に行われた校舎の門をはるかに越えたスピーチ・メッセージに関するものである。

 フロリダ大学ブレヒナー情報の自由化センター所長のフランク・ロモント(Frank LoMonte)氏は、「これはSnapchatの軽度のかんしゃくに関する非常に狭いケースのように思えるかもしれないが、あらゆる年齢層の学生によるスピーチについてあてはまる問題である」と述べている。

Frank LoMonte 氏

 司法機関が学生のスピーチ事件を取りあげることはまれであるため、ロモント氏は「今般の最高裁は2、3世代に適用される基準を考え広く書いている。かつ彼らはすべてのメディアでのあらゆる形式のスピーチの基準を書いている」と記している。

 もちろん、レヴィと友人がウィルクス・バレの南西約40マイルのペンシルベニア州の石炭国の町、マハノイ市の24時間コンビニエンスストア、ココアハットにいたとき、それはレヴィの心にはなかった。ゴールデンベアーズ・ジュニアバリエーションチームで参加して1年後、彼女は代表チームに上がることを望んでいたが、さらに悪いことに、彼女の見解では、新入生が彼女の前に代表チームの地位を得ていた。

「その日、私は本当にイライラし、動揺していた」と、現在18歳で会計学を学ぶ大学生のレヴィは語った。

 彼女と彼女の友人が中指を伸ばして”Fuck you”ポーズをとったスナップに加えて、彼女は別のものを送った。「私と(レヴィが名前で識別した別の学生)が、私たちが多様性を作る前にチアリーダーの年が必要だと言われるのは大好きですが、それは他の誰にとっても問題ではないですか? 」レヴィは混乱した微笑顔でもってサイン・オフした。

 これは、24時間以内に溶解するレヴィのスナップを受け取った約250人に送られた。「私はそれが誰にも影響を与えるとは思わなかったし、それは本当にありませんでした」と、レヴィは語った。

 しかし、ある人がレヴィ・スクリーンショットを撮っていて別の人に見せた。一部のチアリーダーはレヴィのメッセージについて不平を言い、コーチたちは彼女を1年間メンバーから外すことを決めた。

 コーチは、レビィのスナップは、「敬意を表し、不適切な言葉や不適切なジェスチャーを避ける、「チアリーディング、チアリーダー、またはインターネット上に配置されたコーチに関する否定的な情報」に対する厳格なポリシーを含む彼女が同意したチーム・ルールに違反していると述べた。

 これに対しブランディの両親であるラリーとベティ・ルーは、アスレチックディレクター、校長、監督(superintedant)、教育委員会(school board)に訴えたが、役に立たなかった。

 その後、米国人権擁護団体である”American Civil Liberties Union: ACLU”(筆者注5)の助けを借りて、彼らは連邦訴訟を起こした。

 地区裁判官は、ブランディの演説が混乱を招くものではなかったことに留意し、分隊の停止が憲法修正第一に違反することに同意した。 裁判官は彼女が2年生のときにJVチームに復帰させるよう命じ、彼女は3年生と4年生に代表チームをつくった。

 これらは「少し厄介でした」と彼女は述べたが、この事件の最も永続的な影響は、仲間の学生が時々彼女を「B.L.」と呼ぶことである。

 教育委員会の控訴に基づいて行動する第3巡回区連邦控訴裁判所の判事は、地区裁判官よりもさらに進んだ意見を出した。 シェリル・アン・クラウス(Cheryl Ann Krause )裁判官は、この問題を検討した他の裁判所に反対し、ティンカーによる学校管理者への権限付与は、学外での演説には及ばないと述べた。

 同判事の意見は、「レビィの発言は学校が所有、運営、または監督するチャネルの外にあり、学校の許可証を持っていると合理的に解釈されないスピーチ」と定義した。

 また判事は「控訴裁判所は、管理者がデジタル時代の学校環境を管理する」ために直面する課題に留意した。しかし、私たちは同様に、新しいコミュニケーション技術が新しい領域を開き、規制当局が不適切、不快、または挑発的であると考える言論を抑制しようとする可能性があることを念頭に置いた。 そして、憲法修正第一が保護する貴重な自由を犠牲にすることなしに、どんなに善意を持っていても、そのような努力を許すことはできない」と 記した。

 同裁判所のトーマス・L・アンブロ判事(Ambro, Thomas L.)は、学外での演説に関して同僚と意見が一致せず、彼女の演説は実質的に混乱を招くものではなかったため、同僚がレヴィに有利な判決を下すだけで十分だったと述べた。

Ambro Thomas L.氏

 第二学区教育委員会は最高裁判所に対し、第3巡回区連邦控訴裁判所の判決を支持することは危険であると語った。

 すなわち、「公教育の黎明期以来、学校は、キャンパスを混乱させたり、他の生徒に危害を加えたりするスピーチを懲戒する権限を行使してきた。そのスピーチがキャンパス内で発生したかどうかに関係なく、ワシントンの弁護士リサS.ブラットが提出した学区の概要は述べている。

(2) 連邦最高裁判事の反対意見や補足意見

  最高裁の評決は多数意見8対1であった。

 一方、クラレンス・トーマス判事は、停学を支持したであろうと述べ反対意見を述べた。

Clarence Thomas判事

 また、スティーブン・ブレイヤー(Stephen Breyer)判事は、「合衆国憲法修正第一が学校に与える余裕」は、学外の表現の特殊な特徴に照らして、「減少されるべき」と補足意見を書いた。

Stephen Breyer判事

(3)合衆国憲法修正第一に関する連邦裁判所がが抱える学校外の生徒の各種言論とりわけネットワーク利用の多様化にかかる多くの課題

 人権擁護団体と教育委員会の対立点の洗い直しが問われている。Washinnton Postの記者は以下の点を挙げている。

 バイデン政権によって最高裁判所で支持されている地区は、多くの問題を提起している。すなわち、 彼のプレイコールについてのツイートの山でコーチを弱体化させる運動選手、 拡声器で通りの向こう側の破壊的な結果を引き越す学生、などである。 

 さらに深刻なことに、「コロンビア特別区および少なくとも25の州の法律では、学校の環境を大幅に混乱させたり、他の生徒の権利を妨害したりするキャンパス外の嫌がらせやいじめに対処することが学校に義務付けられている」と簡単に述べている。「クラスメートに自殺を促したり、黒人のクラスメートをリンチの写真で標的にしたり、妥協した立場にある仲間の学生のクラス全体の写真にテキストを送信したりする学生は、彼らの感染行為は学校にいる時間に限定されない」

 ネットいじめを懸念するグループの連立は、容赦ないオンライン嫌がらせの後に自分の命を奪った「別のチアリーダー、車で2時間の距離」など、そのような悲劇的な結果の例をもって簡単な多数の書類を提出した。

 第3巡回区連邦控訴裁判所の判決によると、レビィ訴訟はこれらの問題を提起しなかったため、「暴力を脅かしたり、他の人に嫌がらせをしたりする、学外の学生の演説の修正第一の影響を別の機会に留保した」

 ペンシルバニアACLUの責任者であるWitoldJ.Walczakは「学校はネットいじめに対処する必要がある。私たち[ACLUと教育委員会]を隔てているのは、これらの問題に対処するために学校にどれだけの力が与えられているかである。学区のアプローチはパワーグラブが大きすぎるように感じる」

 レヴィは、100以上の組織、250人の個人、および9人の共和党司法長官からなる広くイデオロギー的に多様な連立から支持を得ている。

 「過去10年間に、同じ側にこのように多様なグループが存在する別の事件は見つかりません」と、最高裁判所が6月23日にそれを聞いたときに事件を主張するACLU国内法務部長のDavidColeは述べた。「私たちは、右から左へ、学生から管理者へ、公民権団体、宗教の自由組織等からの支援を受けている」

DavidCole 氏

 この問題は、人気のない言論を保護することに誇りを持っているように見える最高裁判所に提起されている。 ロモント教授がスレートで書いたように、「ロバーツ最高裁判所は確かにそれをかたっている。憲法修正第一は私たちにあらゆる種類の不快感を許容することを要求している。これには、反同性愛者のヘイトスピーチ(スナイダー対フェルプス事件)、軍事的英雄主義についての嘘(米国対アルバレス事件)、またはグラフィカルに暴力的な闘犬のビデオの販売(米国対スティーブンス事件)も含まれる。

 以下、ワシントンポストの記者の解説は、連邦最高裁の修正第一に対する連邦最高裁判事の関連事件での意見などを論じているが、本ブログはあくまで事実関係のみを正確に伝えることであり、略す。

2.今回の連邦最高裁の学校内外のオンライン言論手段の更なる拡大傾向と教育現場での軋轢問題についての筆者の私見

(1) 疑問点

 限られた時間での解析は難しい。直接原告に聞けないし、事実関係の整理だけでも約半日かかった。しかし、わが国の憲法問題も含め言論や表現の自由をどこまで認めるのか。

A.レヴィのとった行動は、14歳が感情のままにそれも安易にsnapchatという即記録が残らないSNSを利用した点はいかにも子供じみており、彼女の両親は果たして冷静に教育委員会と話しあったうえで裁判にも持ち込んだのかという点である。

 また娘が普段と同級生や学校に対する不満を行っていないか、その冷静な解決をサポートしてきていたかといいう点で更なる疑問がわく。

B.”Fuck”の意味を調べてみた。人に向けてこの単語が使われた場合、極めて攻撃的な罵倒表現となる。「死ね」「殺すぞ」「今すぐに俺の前から消え失せろ」である。・・・他者や社会一般の幸福に対する冷淡さの感情を表現するときや、要求を強く拒絶したり、何かに失敗したり、突然嫌な思いを味わったり、怒りの感情が湧いてきた際にも咄嗟に出る単語であり、その際には「クソ!」「畜生!」といったニュアンスである。(Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%83%E3%82%AF)から一部抜粋。

 だとすると、レヴィの発言は未成年とはいえ常識的に見てもきわめて違法性があり、成人であれば名誉棄損責任やハラスメント責任を問われかねない失言である。

 なお、朝日新聞記事にあるように「くたばれ学校・・・」という訳語は内容から見て正確でない。

(2)青少年等に対するインターネット利用環境の安全性強化の先進的取組国の例

 この問題を正面から取り上げている国の例としてオーストラリアを見ておく。

 特に「eSafetyコミッショナー」は、関係法に基づく他国にない独自の権限を持つ。わが国においても参考になる点が多く、以下でそのHPの概要を仮訳する。なお、関係法のリンクは筆者の責任で行った。

 「eSafetyコミッショナー:Julie Inman Grant」は、オーストラリア政府の法律の下で、オンラインの安全性を促進するためのさまざまな機能と権限を持つ。同コミッショナーは、「2015年オンライン安全強化法(Enhancing Online Safety Act 2015(Cth))」に基づいて独立性を持った法律に基づく機関として設立された。2015年設立の政府機関、現従業員数71名。

Julie Inman Grant 氏

 コミッショナーの職務の多くは、同法第15条に定められている。当初、これらの機能は主にオーストラリアの子供たちのオンラインの安全性を高めることに関連していたが、2017年に、この法律は、すべてのオーストラリア人のオンラインの安全性を促進および強化するという委員会の権限を拡大するために改正された。 

(A)画像ベースの虐待に関連する権限 

① 2015年オンライン安全強化法により、コミッショナーはオーストラリアの子供を対象とした深刻なネットいじめに関する苦情を調査し、それに対処することができる。

 同法は、参加しているソーシャルメディアサービスからネットいじめの資料を削除するための2段階のスキームを確立している。このスキームの2つの層は、さまざまなレベルの規制監督の対象となる。

 ソーシャルメディアサービスは、オプト・イン事前許可ベースでスキームのTier1に参加する義務を負う。また、通信大臣によってTier2サービスとして宣言されたソーシャルメディアサービスは、コミッショナーからの要求に違反した場合、法的拘束力のある通知および民事罰の対象となる場合がある。 

(B)画像ベースの虐待に関連する権限 

 2015年オンライン安全強化法は、コミッショナーがオンラインプラットフォームからの性的な画像やビデオの削除を支援できるようにする民事罰制度を確立している。場合によっては、コミッショナーは、画像ベースの不正使用の責任者に対して措置を講じることができる場合もある。

 このスキームにより、eSafetyは、ソーシャルメディア・サービス、Webサイト、ホスティング・プロバイダー、および加害者に強制的な削除通知を送信し、性的な素材の削除を要求することができる。

 また、民事罰制度は、eSafetyに次のような加害者に対して行動を起こすため、以下のようなさまざまな権限を与える。

① 正式な警告を発する。

② 是正措置の方向性を与える。

③ 侵害通知を発布する。

④ 強制力のある事業を受け入れる。

⑤ 裁判所に差し止め命令または民事罰命令を求める。 

(C)違法で有害なオンライン・コンテンツに関連する権限 

①オンラインコンテンツ・スキーム

 また、コミッショナーは、「1992年放送サービス法(Cth)」の附則5および附則7に基づいてオンライン・コンテンツ・スキームを管理する。

 このスキームの下で、コミッショナーはオンライン・コンテンツに関する有効な苦情を調査し、禁止または潜在的に禁止されていることが判明した資料に対して措置を講じることができる。これには、児童の性的虐待に関する資料が含まれる。

 オンライン・コンテンツ・スキームは、法執行機関の役割、およびオンラインの児童の性的虐待と闘う「国際インターネットホットライン協会(International Association of Internet Hotlines :INHOPE)」と相互に関連している。

②忌まわしい暴力的な素材

 2019年のクライストチャーチのテロ攻撃後に「1995年刑法( Criminal Code Act 1995 (Cth) 」に加えられた改正により、忌まわしい暴力的資料(abhorrent violent material (AVM). )に関連する新しい犯罪条項が作成された。(筆者注6)

 この法律は、AVMを、記録またはストリーミングする加害者または共犯者によって作成されたオーディオ、ビジュアル、またはオーディオビジュアル素材として定義している。

  • 重傷または死亡につながるテロ行為
  • 殺人または殺人未遂
  • 拷問
  • レイプ
  • 暴力または暴力の脅威を伴う誘拐。

③サービスプロバイダーへの指示

 「1997年電気通信法(Telecommunications Act 1997 )(Cth)」は、eSafetyコミッショナーが、コミッショナーの機能と権限のいずれかに関連して、通信事業者またはサービスプロバイダーに書面で指示を与えることができると規定している。

 クライストチャーチのテロ攻撃に続いて、コミッショナーは、テロ行為や暴力犯罪を助長、扇動、または指示する資料へのアクセスや露出からオーストラリア人を保護することにより、オーストラリア人のオンラインの安全性を促進するという彼女の機能に関連して指示を出した。この指示により、インターネット・サービスプロバイダー(ISP)は、加害者のビデオとマニフェストへのアクセスを提供するWebサイトを一時的にブロックする必要が出てきた。 

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(筆者注1) この中指は陰茎、人差し指と薬指は陰嚢を象徴し、"Fuck you"(くたばれ、くそくらえ)などの侮蔑表現に相当する卑猥で強烈な侮辱の仕草である。(Wikipediaから引用)

(筆者注2) ACLUの本判決の解説では“fuck school fuck softball fuck cheer fuck everything.”と明記されている。

(筆者注3)  ”Snapchat”は OSはiOS, Androidではスマートフォン向けの写真共有アプリケーション。登録した個人やグループに向けて画像などを投稿するSNSアプリ。アメリカではインスタグラムを抜いて、10代が選ぶSNS第1位になるほど人気がある。最大の特徴は投稿されたスナップやチャットの内容が、たったの数秒で消えてしまうことである。

(筆者注4) ティンカー対デモイン裁判の要旨をACLUサイト”TINKER V. DES MOINES - LANDMARK SUPREME COURT RULING ON BEHALF OF STUDENT EXPRESSION”から引用、仮訳する。

 ティンカー対デモイン裁判は、公立学校での言論の自由に対する学生の権利を確固たるものにした1969年の歴史的な最高裁判所の判決である。

 メアリー・ベス・ティンカー(Mary Beth Tinker)は1965年12月に13歳の中学生で、彼女と学生のグループがベトナム戦争に抗議するために学校に黒いアームバンドを着用することを決めた。教育委員会は抗議の風を受け、先行して禁止を通過させた。 メアリーベスが12月16日に学校に到着したとき、彼女は腕章を外すように命ぜられ、その後、停学処分された。

 弟のジョン・ティンカーとクリス・エックハートを含む他の4人の学生も同様に停学処分になった。 生徒たちは、アームバンドを外すことに同意するまで学校に戻ることができないと言われ、生徒たちはクリスマス休暇の後、腕章なしで戻ってきましたが、これに抗議して、学年度の残りの期間は黒い服を着て、憲法修正第一の訴訟を起こした。 

 1969年2月24日、連邦最高裁判所は7-2の判決を下し、学生は「校舎の門で言論または表現の自由に対する憲法上の権利を放棄しない」との判決を下した。

 同裁判所は、合衆国憲法修正第一が公立学校に適用され、教育プロセスを混乱させない限り、学校関係者は生徒の言論を検閲できないと認定した。黒の腕章を身につけることは混乱を招くものではなかったので、裁判所は、憲法修正第一が学生の腕章を身につける権利を保護したと判示した。

(筆者注5) 2021.6.23、ACLUは「SUPREME COURT RULES TO PROTECT STUDENTS’ FULL FREE SPEECH RIGHTS」“fuck school fuck softball fuck cheer fuck everything.”」で裁判経緯を解説している。

(筆者注6) オーストラリア連邦議会は、ソーシャルメディアなどのサービスで公開された暴力的な動画類を運営元の事業者が迅速に削除することを義務づける刑法改正法「Criminal Code Amendment(Sharing of Abhorrent Violent Material)Bill 2019」を可決した。2019年4月3日に上院をスピード通過したのに続き、下院でも翌日に可決した。違反した事業者やその幹部は、巨額の罰金や拘禁刑を科される可能性がある。 

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                                                              Civilian Watchdog in Japan & Financial and Social System of Information Security 代表                                                                                                           

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バイデン政権は1977年海外官吏への贈収賄行為防止法の執行の増強と拡大を優先させる大統領覚書を発布

2021-06-24 17:09:27 | 国家の内部統制

 2021年6月3日、ホワイトハウスは国家安全保障上の中核的利益として贈収賄法執行強化に関する「大統領覚書(memorandum ) 」(筆者注1)を発表した。この覚書は、「贈収賄は米国の国家安全保障、経済的公平性、世界的な反貧困と開発努力、民主主義そのものを脅かす」と説明している。これは、贈収賄との闘いに前例のない機関間の動向に焦点をあて、これらの努力のための資金を増加することを示している。

  連邦議会の民主党と共和党の拮抗の中での政権運用を担うバイデン政権としても、このような覚書や行政命令は今後とも多用せざるを得ないと思われる。

  このような中で、筆者が読んだいくつかのローファームのレポート中でビジネス界にとって推奨すべき点を比較的詳しく解説しているNational Law Revew”Biden Administration Prioritizes Increased and Broadened Anti-Corruption Enforcement”を中心に、Smith Pachter McWhorter PLC.のブログ「Biden Administration Prioritizes Transnational Anti-Corruption Efforts」併せ仮訳、引用することとした。

 なお、引用したNational Law eviewのブログの注書についても併せて仮訳のうえ、本ブログでも筆者の責任で判決要旨等を補足のうえ、引用した。

1.6月3日「大統領覚書(memorandum ) 」の概要と企業として留意すべき点

 現在、ビジネス関連の贈収賄・汚職を対象とした捜査は、主に「1977年海外官吏への贈収賄行為防止法(「Foreign Corrupt Practices Act :FCPA」)(筆者注2)および”15 U.S. Code § 78dd–1 - Prohibited foreign trade practices by issuers” に基づいて連邦司法省によって行われ、またSEC(筆者注3)は上場企業の場合の潜在的記帳義務および記録義務違反の可能性を模索している。すなわち、6月3日の覚書は、FCPAの運用に関し現状が変わることはほぼ確実であることを示している。国家安全保障担当補佐官(national security advisor)は、2020年末までにバイデン大統領に対する勧告で、贈収賄に対する新たな戦争をもたらすために機関のグループを率いる。どのような新しい法律、規側やイニシアチブを制定するかははっきりしていないが、今後連邦政府がどのように贈収賄を再定義し、それを根絶しようとするかは大きく変わる可能性が高いことは明らかである。

 例えば、6月3日の覚書は、マネーロンダリングへの法執行を強化し、米国企業が有益な所有者または所有者を財務省に報告することを義務付ける堅牢な連邦法を実施するなど、米国および国際金融システムにおけるあらゆる形態の違法な金融に対処することを求めている。また、バイデン政権は、サイバーセキュリティへの焦点の強化、中国への強硬なアプローチ、制裁、輸出規制、外国代理人登録法(Foreign Agents Registration Act :FARA) (筆者注4) (筆者注5)に引き続き焦点を当てることを示している。

 バイデン政権の執行方針は今後数ヶ月間引き続き具体化するが、関係企業は今すぐ行動を起こして、調査や執行措置にさらされる可能性のあるリスクを特定し、対処する必要がある。企業は、セクター固有の法律や規制に準拠するために統制とプロセスを評価する必要があるが、ほとんどの企業に影響を与える焦点が増えると予想される分野が以下のとおりいくつかある。

(1 ) 海外官吏への贈収賄行為防止法

 FCPAの贈収賄防止規定は、ビジネスを取得または維持するために外国の官吏に提供または与えられることを知ったうえで、価値のあるものの提供、作成、または支払いを禁止している。FCPAの会計に関する規定は、米国の証券取引所に上場している有価証券を持つ企業に対し、企業の取引を正確に反映した帳簿や記録を保持し、内部会計管理の適切なシステムを維持することを義務付けている。ただし、一定の制限に従って(筆者注6)、FCPAは治外法権申請を行っており、企業と個人の両方が世界のどこでも起こる贈収賄に対してFCPAの下で責任を負う可能性がある。(筆者注7)

 企業は、営業国、食事や娯楽、感謝や贈り物、旅費、および協力する第三者など、通常のビジネス分野で提供する利益の種類に基づいて、FCPA違反に対して脆弱である可能性がある。会社は、従業員の贈収賄行為だけでなく、第三者が会社の代わりに行動していた場合の第三者の贈収賄行為に対しても責任を負う可能性があることを覚えておくことが重要である。報告されたFCPAの症例の90%は第三者を含む。潜在的な罰則としては、多額な企業の罰金と個人の拘禁刑が含まれる。

(2) マネーロンダリング防止

 マネーロンダリングは、一般的に、犯罪的に派生した収益の真の起源を隠すか偽装するように設計された行為に従事し、収益が正当な起源から派生したように見せたり、正当な資産を構成したりするものと定義される。マネーロンダリングは、金融犯罪、テロ資金供与、国際贈収賄計画と絡み合う可能性があるため、国家安全保障上の重大な懸念事項である。

 また「銀行等に対する機密性が高くまたは不審な現金払いおよび海外との金融取引等に関する報告義務法(Bank Secrecy Act)」(筆者注8)は、銀行に特定のマネーロンダリング防止コンプライアンス・プログラムの確立、顧客デューデリジェンスの実施、外国資産管理局(「OFAC」)および他の政府リストに対するスクリーニングを義務付け、不審な活動を監視および報告することで、マネーロンダリングやテロ資金供与に対抗することを目的としている。2021年1月1日、連邦議会は「2020年マネーロンダリング規制法( Anti-Money Laundering Act of 2020 :AMLA)」 (筆者注9)と「2021年企業透明性法(Corporate Transparency Act :CTA」(筆者注10)を可決した。これらの法律は、BSAの下で規制の対象となる事業体の種類を拡大し、新しい報告要件を課し、外国の銀行記録を取得する米国政府の権限を拡大し、新しい罰則を作成した。

(3) 対中国施策

 バイデン政権はトランプ政権の「中国イニシアチブ」のブランドを変更するかもしれないが、輸出管理と制裁違反、企業秘密の盗取、ハッキング、経済スパイ、外国直接投資とサプライチェーンの妥協、適切な透明性なしにアメリカの国民や政策立案者に影響を与えるための秘密の努力を起訴することによって、中国の国家安全保障上の脅威に対抗することに引き続き焦点を当てている。実際、バイデン政権が贈収賄法執行強化に関する「大統領覚書(memorandum ) を発布したのと同じ日に、アメリカの投資を受け入れ禁止されている中国軍とのつながりを持つ企業のリストを拡大する大統領行政命令( executive order )も発出した。

 中国に大きな足跡を持つ企業は、米国の規制に反する可能性のある方法で行動するよう中国政府から圧力を受けやすい。例えば、2020年末、中国に拠点を置くビデオ会議会社Zoomの幹部は、天安門事件を記念してニューヨークでビデオ会議を混乱させたとして、中国当局と共謀したとして刑事告発された。(筆者11) 新政権下で開始された追加の同様の種類の調査と容疑を期待するのが妥当であろう。

 さらに、中国で事業を行っている企業は、一見「普通の」中国市民の多くが国有団体や中国共産党の加盟により、法律の下で外国当局者の資格を得ているため、FCPA違反に対して特に脆弱です。また、企業は当事者が中国と関係を持つ米国外国投資委員会(「CFIUS」)プロセスに関連して、ますます精査を期待すべきである。(筆者注12)

(4) サイバーセキュリティ強化

 基本的なレベルでは、企業は、顧客から収集したデータとデータを保護し、侵害を防止し、違反が発生した場合に適切に対応することが求められる。企業は、サイバー脅威の進化の性質と、サイバーセキュリティの取り組みが人間の行動に依存しているため、保護措置の信頼性と、サプライチェーンやサービスが中断された場合の消費者と投資家の信頼の両方に大きな影響を与える可能性があるため、脆弱である。

 正式なサイバーセキュリティ規制の書籍ははほとんどないが、バイデン政権は近い将来、正式な規制の可能性を示唆しており、ランサムウェア攻撃などの課題や脅威に対する人員とリソースの急増を指示することで、サイバー法執行の状況を明確に活性化しているランサムウェア攻撃に対する強い世論の叫びに対して、DOJは今週初め、先月サイバー強要者に支払われた230万ドルの暗号通貨の押収に成功したと発表した。(筆者注13) 認識する規制の既存の領域の1つは、「コンピュータ詐欺および不正利用防止法(Computer Fraud and Abuse Act :CFAA)」であり、「許可なしに」コンピュータシステムにアクセスしたり、「許可されたアクセスを超える」方法でコンピュータシステムにアクセスしたりするための刑事罰と民事罰の両方を提供する。(筆者注14)  例えば、昨年、企業は競合他社のデータに不正にアクセスした結果、1,000万ドルの罰金を支払った。(筆者注15) 企業のサイバー対応スパイ活動により貴重な知的財産が危険にさらされる可能性があるこの分野では、より多くの調査が期待できる。

(5) 経済貿易制裁と輸出規制

 OFACは、米国の外交政策と国家安全保障目標に基づいて、対象となる外国や政権、テロリスト、国際麻薬密売人、大量破壊兵器の拡散に関連する活動に従事する人々、および米国の国家安全保障、外交政策または経済に対するその他の脅威に基づいて、経済貿易制裁を実施し、実施する。

 その制裁は性質や範囲が異なり。一部は広範な国レベルの禁止事項であり、他のものは特定の個人や団体を対象としている。また米国は国家安全保障上の利益を保護し、外交政策の目的を促進するために輸出管理を課している。

(6) 外国代理人登録法

 FARAは、政治活動に従事している外国の特定の代理人に対し、外国の代理人との関係を定期的に公表し、それらの活動を支援する活動、領収書、支払いを行うことを義務付けている。

2.今後、企業が準備するためにおこなうべきこと

 この広大な執行環境と、国内外の贈収賄と闘うというバイデン政権のコミットメントを考えると、企業は自らを守るために今取るべき具体的な措置が以下のとおりある。 

 第一に、企業は、独自の事業に基づいて、現在の気候における暴露を特定するために、リスク評価を日常的に実施する必要がある。あまりにも頻繁に、企業は、予算や時間の制約やリスクプロファイルがほとんど静的なままであるという信念のために、時代遅れの評価に依存している。定期的なリスク評価は、新しい、進化する財務、運用、規制、評判のリスクを積極的に特定し、評価を行い、重大な危害を及ぼすリスクが最も高いリスクを軽減するための対策を実施するための不可欠なツールである。

 第二に、企業は、コンプライアンス・プログラムが不正行為を適切に検出し、防止していることを確認する必要がある。これは、コンプライアンス・リソースとプロセスにストレスを与えるCovid-19パンデミックから出てくるので、特に当てはまる。すべての企業は、資金調達、リモートワークの取り決め、新しい技術、またはその他の開発の形で、業務の変更に照らしてコンプライアンス・プログラムを再び見る必要がある。政府は、企業が過去1年間の課題にもかかわらず、効果的なコンプライアンス・プログラムを実施することを期待している。企業は、コンプライアンス・プログラムを評価する際に、不正行為を抑止するために政府とどのように連携できるかを検討する必要がある。企業文化は、リーダーシップがリスクに目をつぶらないことを示すことができるようにすることが重要である。さらに、連邦司法省はここ数年、過去の不正行為から学んだ教訓を取り入れ、繰り返し犯罪を防ぐための新しいプロセスを実施する必要性に重点を置いてきた。

 第三に、企業は不正行為が発生した場合に計画を立てる必要がある。会社がどのように対応するかについての弁護士との計画を策定するために何かがうまくいかないまで待ってはいけない。企業がインシデント発生直後に社内外で通信する方法は、それが調査の対象になるか対象になるかを決定することができる。調査に直面した企業の戦略としては、政府の視点と企業の見解を理解し、政府と効果的にコミュニケーションを取り、専門的な産業や慣行について調査担当を教育し、公正に評価できるように支援する必要がある。

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(筆者注1) 「大統領覚書」は、行政命令(executive order)と異なり、連邦官報への記載義務がなく、また、法執行を命じるにあたって必要とされる根拠法を明示する必要もない。多くの覚書は、「合衆国憲法と制定法の定め」を理由として命令を下している。根拠法を示す必要がないにもかかわらず、両者は同じ効果を持つとされる。これは大統領にとって大きなメリットとなる。既存の法律の文言からは引き出せないような権限を、根拠法を曖昧にすることによって引き出すという戦略が可能になるためである。この大統領覚書という形式が大統領によって多用されるようになったのが、オバマ政権であった。(日本国際問題研究所 梅川建「第7章 大統領による政策形成と「大統領令」:オバマからトランプへ」から一部抜粋)

(筆者注2)「海外官吏への贈収賄行為防止法(「Foreign Corrupt Practices Act :FCPA」)」の正確な内容と訳語については筆者blog 「米国FBI等のハイチ大地震にかかる災害支援寄付詐欺警告と米国の詐欺問題の根の深さ」(筆者注8) 参照。

(筆者注3) SECは 「Spotlight on Foreign Corrupt Practices Act」FCPA専門解説サイトでFCPAを主要国語に訳している。ちなみに日本語訳のURLは https://www.sec.gov/spotlight/foreign-corrupt-practices-act.shtml である。

(筆者注4) 連邦司法省サイトのFARA仮訳する。

外国代理人登録法(FARA)は1938年に制定された。FARAは、政治活動または法令で指定されたその他の活動に従事する外国代理人の特定の代理人に、外国代理人との関係および活動を定期的にこれらの活動を支援するための領収書と支払額を公開することを義務付けている。これら必要な情報の開示は、外国人代理人としての彼らの機能に照らして、政府とアメリカ人によるそのような人々の活動の評価を容易にする、国家安全保障局(National Security Division:NSD)の対スパイ活動および輸出管理セクション(CES)のFARAユニット(筆者注5)は、FARAの管理と施行に関し責任がある。

(筆者注5) National Security Division (NSD)の組織図 参照。

(筆者注6) 米国連邦第二巡回控訴裁判所は、米国対ホスキンス事件(902F.3d 69(2d Cir. 2018)において、一般論として被告が法律の対象とならないFCPA違反で外国人を告発する陰謀または共犯に基づく理論を採用することはできないと判示した。

 以下は、Lexis Nezisの解説(https://www.lexisnexis.com/community/casebrief/p/casebrief-united-states-v-hoskins)から抜粋、仮訳する。

15 U.S.C.S. §§78dd2および78dd-3、および共犯責任に関する治外法権に対する推定規定は、政府が陰謀および共謀法を使用して、外国官吏贈収賄行為防止法(FCPA)に基づいて罰せられない犯罪で被告を起訴することを禁じている。これは、FCPAは、その規定に違反したとして起訴される可能性のある者のカテゴリーを正確に定めているためである。

 原審である連邦地方裁判所は、被告が米国の領土内で、§78dd-3に違反して外国公務員に賄賂を贈る行為を行うために、さまざまな共犯者と故意に共謀したと主張する陰謀のその部分を却下することにつき誤りを犯した。被告が国内の関係する代理人であることを証明する意図は、彼を法律の条件の範囲内に正直に置いたものといえる。

(筆者注7) 例えば、5月24日、連邦司法省は、カナダの新興エネルギー会社から200万ドルの賄賂を勧誘し受け入れ、その真の性質を隠すために賄賂の支払いをロンダリングしようと共謀したとして、チャド共和国の元駐米大使とカナダに対する起訴を発表した。https://www.justice.gov/opa/pr/charges-unsealed-against-former-chadian-diplomats-us-charged-connection-international-bribery、国際贈収賄とマネーロンダリング計画(2021年5月24日)に関連して起訴された米国に対する元チャド外交官に対する封印されていない容疑を参照されたい。

(筆者注8) 筆者ブログ「米国FFIEC、FinCEN等が銀行秘密情報報告法等に関する改訂マネロン銀行検査マニュアルを公表」 (筆者注4) 参照。

(筆者注9) 連邦財務省・金融犯罪取締ネットワーク(Financial Crimes Enforcement Network:FinCEN)の「Anti- MoneyAnti-Money Laundering Act of 2020」の解説  参照。

(筆者注10) 米国議会の下院と上院は、それぞれ2020年12月28日および2021年1月1日に、トランプ大統領が国防権限法(National Defense Authorization Act、以下「NDAA」といいます。)に関して行使した拒否権を覆し、その結果、2021年1月1日にNDAAが発効しました。NDAAには企業透明化法(Corporate Transparency Act、以下「CTA」といいます。)が含まれており、同日に発効しました。CTAにより、非公開会社に課される開示義務に重要な変更が生じました。すなわち、CTAは、主として米国で事業を展開している小規模な非公開会社である「報告会社」に対して、実質的所有権(beneficial ownership)に関する報告義務を課すことになります。後述するように、報告会社には、後日までこの義務は発生しませんが、既存のまたは新規に設立される報告会社は、近い将来にこの義務を履行する準備をしなければなりません。(Lexologyレポート「企業透明化法(The Corporate Transparency Act)、小規模の非公開会社に対し、実質的所有者(Beneficial Owner)に関する情報の報告を義務づける」から一部抜粋)。

(筆者注11) 2020年12月18日、連邦検事はZoomのソフトウエア部門幹部(金新江:Xinjiang Jin: 1981年生)に対し、中国の強い要請によりでの会議通話を混乱させたとして告発した。連邦司法省のリリースの要旨を抜粋し、以下で要旨を仮訳する。(DOSの原文ではZoomはCompany-1となっている)

 Jinの起訴状と逮捕状は12月18日、ブルックリンの連邦裁判所で、州間嫌がらせを行う陰謀と身元確認の手段を譲渡する違法な陰謀を行ったとしてXinjiang Jin(金新江:)被告(別名「Julien Jin」)を起訴のため開封した。米国に本拠を置く電気通信会社(Zoom)の幹部従業員であるJinは、6月に1989年中国での天安門事件を記念して開催された2020年5月と6月の一連の会議を中断する計画に参加したとされている。この会議は、Zoom1が提供するビデオ会議プログラムを使用して実施され、ニューヨーク州東部地区に居住する個人を含む米国を拠点とする個人によって組織および主催されたものである。JinはFBIから指名手配されており、米国に拘留されていない。

(筆者注12) CFIUSは、米国の国家安全保障に対するそのような取引の影響を決定するために、米国への外国投資および外国人による特定の不動産取引に関する特定の取引を検討する権限を与えられた機関間委員会である。このような潜在的な取引に従事する企業は、国家安全保障上の利益が関係する取引を承認する前に、米国政府によって課される可能性のある要件に注意する必要があります。

 対米外国投資委員会(CFIUS)は、財務長官を議長に、関連する複数の省庁により構成される組織であり、米国の国家安全保障の観点から、米国の企業・事業・技術に対する外国投資の審査を行っている。2018年8月に成立した「外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」では、外国の敵対者による脅威を防ぐために、CFIUSの権限が強化され、外国投資家は、特定の産業分野の取引については、事前にCFIUSに届け出を行う法的義務が課せられた。

(Action(活動) 週刊 経団連タイムス:2021年1月28日 No.3485 対米外国投資委員会(CFIUS)の近年の動向(https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2021/0128_12.html)から一部抜粋)。

(筆者注13) ランサムウェア強要者であるダークサイドに支払われた暗号通貨で司法省が230万ドルを押収した。DOJのリリースの要旨を抜粋、仮訳する。

 司法省は6月7日、現在約230万ドル相当の63.7ビットコインを押収したと発表した。これらの資金は、コロニアル・パイプライン(筆者注14)を標的にしていたダークサイド(DarkSide)と呼ばれるグループの個人への5月8日の身代金支払いの収益を表しており、重要なインフラストラクチャが運用を停止したとされている。押収令状は7日、カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所のローレル・ビーラー判事によって承認された。

 連邦司法省のリサ・O・モナコ副長官は、次のように述べている。

Lisa O. Monaco DOJ 副長官

「身代金の支払いは、デジタル恐喝エンジンを推進する燃料である。本日の発表は、米国が利用可能なすべてのツールを使用して、これらの攻撃を犯罪企業にとってより高額で収益性の低いものにすることを示している。これらの攻撃を妨害および阻止するために、ランサムウェア・エコシステム全体を引き続きターゲットにする。本日の発表は、法執行機関への早期通知の価値も示している。コロニアルパイプラインがDarkSideの標的になっていることを知ったときに、FBIに迅速に通知してくれたことに感謝する」 

(筆者注14) 連邦最高裁判所のVan Buren判決は、6月3日、これまでの巡回区裁判所で解釈が別れていた判例を覆し、有益で重要なオンライン活動を起訴するために悪用された連邦コンピュータ犯罪取締法である「コンピュータ詐欺および不正利用防止法(Computer Fraud and Abuse Act :CFAA)」」における「許可されたアクセスを超える」という悪名高い曖昧な法律文言の意味を明らかにした。

 オンラインサービスは、差別の証拠の収集やセキュリティの脆弱性の特定などの目的を含め、サービスの使用方法または使用理由を制限するためにCFAAの刑事規定を使用できないことを確認したため、今回の決定はすべてのインターネットユーザーにとって勝利である。また、法律を解釈するための厄介な物理世界のアナロジーと法理論の使用を拒否した。これは、過去に最も危険な権利者への虐待のいくつかをもたらして来ていた。

 今般のVan Buren判決は、セキュリティの脆弱性を発見する作業が公共の利益にとって不可欠であるが、利用規約に違反する方法でコンピュータにアクセスする必要があるセキュリティ研究者にとって特に朗報である。連邦司法省による法律の解釈に基づき、CFAAは、ウェブサイトの利用規約違反に対する個人に対する刑事告発を許可した。しかし、最高裁判所判事の過半数は、司法省の解釈を却下した。また、高等裁判所はEFFが望むほどCFAAの解釈を絞り込んでおらず、法律が技術的アクセス障壁の回避を要求しているかどうかという疑問を残したが、研究者や調査ジャーナリストなどを保護するのに役立つ優れた言葉を提供した。(米国の人権保護団体Electronic Frontier Fundation:EFFの解説を抜粋、仮訳した)。

(筆者注15)チケット・マスターが競合他社のコンピュータシステムへの侵入に対して1000万ドルの刑事罰金を支払う(2020年12月30日司法省のリリース「Ticketmaster Pays $10 Million Criminal Fine for Intrusions into Competitor’s Computer Systems」)、https://www.justice.gov/usao-edny/pr/ticketmaster-pays-10-million-criminal-fine-intrusions-competitor-s-computer-systems-0を一部仮訳する。

チケット・マスターは、競合他社の元従業員が不法に保持しているパスワードを使用して、被害者のビジネスを「阻止」するためのスキームでコンピューターシステムにアクセスした。12月30日、ニューヨーク・ブルックリンの連邦裁判所は、Ticketmaster L.L.C. (Ticketmasterまたは会社という)は、競合他社のコンピューターシステムに許可なく繰り返しアクセスした責任を解決するために、1,000万ドル(約11億円)の罰金を支払うことに同意した。

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ニュージーランドの銀行等における小切手の廃止と高齢者等のデスクリミネーション(discrimination)問題

2021-06-23 10:00:31 | 金融取引とセキュリティ

ソルダムの実

 手形や小切手という金融取引のペーパーレス化が強く指摘され始めてからかなりの年数が立つ。2021年3月18日一般社団法人全国銀行協会は「手形・小切手機能の電子化状況に関する調査報告書~約束手形の利用の廃止等に向けた自主行動計画等の策定に向けて~(2020年度)」を公表した。その要旨で「本調査報告書は、2018年12月に取りまとめられた手形・小切手機能の電子化に向けた検討会報告書」(以下「検討会報告書」という。)において提言された中間的な目標である「全面的な電子化を視野に入れつつ、5年間で全国手形交換枚数(手形・小切手・その他証券の合計)の約6割が電子的な方法に移行すること」の進捗状況をモニタリングするとともに、わが国企業を巡るデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた課題や、検討会報告書取りまとめ時には想定していなかった新型コロナウイルス感染症に伴う書面・押印・対面手続の見直しに関する社会的要請を踏まえ、手形・小切手機能の「全面的な電子化」に向けた今後の取り組みについて取りまとめたものである」と記されている。(注1)

 筆者も、かつてこの問題にかかわった関係で今後の検討内容・動向を注視する予定である。

ところで、筆者の手元にニュージーランド金融市場局(Financial Market Authority)からのニュース記事が届いた。

 「ニュージーランド会社登記局(New Zealand Companies OfficeNZCO)は、2021年6月23日以降、小切手を受け入れることができなくなります。これは、NZCO自身を含むほとんどのニュージーランドの銀行が小切手の使用を段階的に廃止するという決定に従うことを意味します。また、6月26日から、NZCOが受け取った小切手が返却されます。小切手に代わる支払い方法については、NZCOのウェブサイトのヘルプガイドをご参照ください。」と書いてある。

 これだけの文章で、その意味することを理解できる日本人は皆無に近いと言えよう、。実際、この問題は日常生活、金融取引、慈善活動だけでなく永住、企業設立等広く社会的影響を持つものである。

 これらの問題については、わが国では本来的にはJETROが対応するべきものと考えるが、なお詳しい解説は見た記憶がない。また、両国の金融関係の解説サイトも数多くある割には本格的に論じたものは皆無である。

 そこで本ブログでは、急遽、関係する両国の金融機関サイト情報の収集と市議会や法務省等の情報などに基づき解説を試みるものである。

 また、この問題について両国の関係機関は高齢化社会が進む一方でIT化についていけない人々への支援策が金融機関ごとに十分かという問題提起も行われている。他方、わが国における通帳の有料化等の問題は今後の金融機関画が進めようとしているサービスのオンライ化(電子決済化)と極めて関連する点であり、本ブログでも併せ言及する。 

1.ANZ銀行の例(https://www.anz.co.nz/comms/cheque-removal/)でみる小切手の利用停止とそれに代わるあらたな銀行取引手段とは?

 ZNZ銀行のサイトから主要部を抜粋のうえ、仮訳する

(1) 利用停止はいつから開始されるのか?

 2021年6月1日以降、小切手はANZ口座への入金が受け付けられなくなり、また他の銀行口座への支払い方法としてANZ銀行小切手(注2) も使用できなくなる。

オーストラリア・ドル(AUD)、カナダ・ドル(CAD)、グレートブリティッシュ・ポンド(GBP)、および米ドル(USD)建ての外国小切手は、追って通知があるまで引き続き預けることができる。この他の通貨の外国小切手は入金できない。

 この変更は、具体的には次のことを意味する。

① 5月31日以降、ANZ口座に小切手を入金したり、ANZ銀行小切手を使用して他の銀行口座に小切手を入金したりすることはできない。

② 5月31日および同日以前に発行した小切手は預けられなくなる。

③ 5月31日以降、ANZは銀行小切手を発行しなくなるが、この日付より前に発行さ*れたANZ銀行小切手は、通常の要件に従って処理される。 

今後の他人や会社等に支払う方法とは具体的に何か

これら電子決済取引を行うには、1)ANZインターネットバンキング、2)ANZ goMoneyモバイルアプリ、3)ANZ電話バンキング(電話による24時間年中無休の自動バンキング)に登録する必要がある。これらセットアップと利用は簡単なものであり、ANZ銀行チームは、電話または支店でその具体的方法の説明を受けられる。 

(2) ANZは簡単なオンライン・インターネット・バンキングおよび電話バンキングへのガイド

 オンラインおよび電話での銀行業務への移行を支援するために、段階的な印刷可能なガイドとビデオをまとめている。

お客様が支払い、送金、銀行取引の確認、口座やローンの管理などについて、!)ANZインターネッ・トバンキング、2) goMoney(,モバイル・バンキング)、3)Direct Online for Business (注3)、4)電話バンキングでは、24時間年中無休で財務を管理できる。

  これらのガイドでは、次の方法について説明している、

1)登録、ログイン、およびANZのサービスの利用

2)他人への支払または請求書支払い

3)顧客のANZクレジットカードへの支払いを含め、顧客のANZアカウント間での送金

4)自動支払い (注4)の設定、編集、または削除。そして複数の人が承認する必要がある支払いの設定(ビジネスの場合) 

具体的にガイドを見る

支払い方法や設定した支払いができない場合の対処方法など、電子支払いの詳細については、電子支払いをご覧ください。

これら電子決済を行うには、ANZインターネットバンキング、ANZ goMoneyモバイルアプリ、ANZ電話バンキングを設定する必要があることを忘れないでください。 

 2.ユージーランドの大手銀行等の小切手利用の段階的廃止スケジュール

(1) 2020年4月8日、ニュージーランドの首都ウェリントンのメディアは以下のとおり報じた。

 一部の銀行はまだ小切手を受け入れているが、ニュージーランドの銀行や政府機関は徐々に小切手を廃止し始めている。Kiwibank は2月28日から、ACC  (注5)歳入庁(Inland Revenue)NZ Post(民間郵便事業会社)は、小切手を受けいてたり、発行しなくなった。ニュージーランド最大の民間銀行BNZ(Bank of New Zealand)は, 2021年6月30日までに小切手を段階的に廃止することを目指していると発表し、ANZは2021年5月31日に小切手の使用を中止した。

また、Westpac は、Rabobank(オランダのラボバンクの子会社) は6月25日から小切手の受け入れを停止予定である。

なお、協働組合銀行(Co-operative Bank )は5月20日から廃止している。ASB は8月27日から廃止予定である。

 一方、TSBSBS は依然、小切手を発行し、受け入れている。(この部分は法務省の説明で補足、修正した。)

 ウェリントン市議会は2021年4月1から小切手の受け入れを停止すると発表した。

「4月1日木曜日以降、ウェリントン市議会はそのサービスの支払いとして小切手を受け付けなくなるが、まだ多くの他の支払いオプションが利用可能である。

5月31日月曜日以降は小切手を受け付けないウェリントン市議会はANZを含め、ニュージーランド国内のすべての主要銀行は、支払いオプションとしての小切手の使用を停止すると報じた。

市議会の4月1日の締め切り日により、受け取ったすべての小切手が銀行の締め切り前に処理されることを確認する時間が与えられる。

市議会への支払には、以下のようなまだ多くの方法がある。

① オンラインまたはサービスセンターで入手可能な紙のフォームで料金支払いの口座引き落とし(Direct Dbit)の設定.。

② サービスの請求書支払いのためのダイレクトクレジットアカウントの設定:電話:06-0582-0106111-00

③ デビットカードによるオンライン支払い(www.wcc.govt.nz)

④ クレジットカード支払い(追加料金が適用される)

⑤ ニュージーランド・ポストでの直接支払い(現金またはEFTPOS)

⑥ あなたの取引銀行とのインターネットまたは電話バンキング

現在の小切手ユーザーは、詳細について銀行に連絡し、すべてのサービスのインターネットバンキングまたはテレフォンバンキング等、他の支払い方法を手配することを勧める。 

3.ニュジーランドにおける小切手使用率の低下

 リティールバンキング動向の国際的専門機関である”Retail Banker International”は2020年5月13日のニュースで以下の情報を提供している。以下を抜粋し、仮訳する。

伝えられるところによると、ANZでの小切手の使用量は、2017年から2018年にかけて前年比で20%減少し、顧客がデジタル方式を使用するにつれて減少し続けた。ANZのスポークスマンは、「現在、お客様の1%未満が定期的に小切手を使用している」と述べ、、またWestpacは、小切手の受理と発行を停止し、サービスを完全に放棄する前に顧客に「十分な通知」を行う計画を発表した。

これら各銀行は声明のなかで、「小切手の使用量は長年減少しており、多くの顧客が小切手を使用するよりも速く、安全で、安価なデジタル決済を好むようになっている」と述べている。 

3.ニュージーランド法務省の例にみる小切手の段階的廃止予告

 以上の民間銀行の小切手廃止の動向に対応して国家機関であるニュージーランド法務省は、各決済につき次のとおり詳細に解説している。

【注意】ANZ銀行は、2021年5月31日の営業終了後、小切手による支払いの処理を停止しする。他の銀行の最終小切手処理日の詳細については、FAQ ページをご覧されたい。 

〇本省は、2021年5月31日以降、小切手による支払いを処理または受け付けを行わない。

〇ほとんどのニュージーランド銀行は2021年半ばまでに小切手による支払いを受け付けたり処理したりしなくなるため、多くの組織が小切手による支払いを停止することを決定した。 これには、本省の銀行サービスプロバイダーであるWestpacが含まれる。

 以前に省関連サービスの小切手で支払いを行った、または受け取った場合は、以下の情報を参照して代替の支払いを見つけてください。 

(1) 罰金の支払い(pay a fine)

これには、賠償(reparations)、裁判所命令による罰金(court-ordered fines)、侵害罰金(infringement fines)(注5)、およびスピード違反者等への課税(offender levies)(注6)が含まれる。 

(2) 特許出願手数料の支払い(pay a filing fee)

これには、裁判所への提出手数料と審判手数料が含まれる。 

(3) 法律扶助を受けた際の債務返済(legal aid debt repayment)

定期的な返済または訴訟費用の一括払いが必要になる場合がある。 

(4) 裁判所の費用拠出命令(cost contribution order)

費用拠出命令とは、専門家の報告、子供のための弁護士の任命、または裁判所を支援する弁護士の費用に対して支払う必要があると裁判所が命じた場合をいう。 申請が取り下げられた場合や、申請後に紛争を解決した場合でも、支払いが必要になる場合がある。 

(5)陪審員サービスにかかる支払いの受け取り

召喚状に銀行口座を入力して郵送で返送するか、オンラインフォームに記入して、直接クレジットで支払いを受け取る。

(6) 民亊執行命令にもとづく支払い

 債務者が支払わない場合は、民事債務の回収を支援するよう裁判所に求めることができる。これは民事執行と呼ばれ、この民事執行プロセスは自分で管理し、料金を支払う必要がある場合がある。 

(6)賠償金の受け取り

 判決文では、裁判官は犯罪の結果としてあなたが感情的な危害を被ったり、財産を失ったりした場合、裁判官は犯罪者にあなたに金銭を払うように命じることができ、これは「賠償」として知られている。裁判官は、その人が犯罪のためにどれだけの損害、損失、または費用を被ったか、そして犯罪者の支払い能力を検討のうえ、賠償額を決定する。

(7) 法務省が管轄する支払いに関するFAQ

2021年5月31日以降、省は小切手による支払いを受け付けたり送信したりしなくなる。この変更の詳細については、以下のFAQを参照されたい。

4.小切手の廃止に伴う特に高齢者などへの影響を懸念する問題指摘

 わが国でも高齢者だけでなく中年層でもインターネットバンキングの利用率は依然低いといえよう。これはわが国だけの問題ではない。

例えば、ウエリントンのメディアは「高齢者はさまざまな支払い方法を使用するが、この年齢層では他のどの年齢層よりも小切手が使用されている。 Age Concern NewZealandのProfessional Educator: Elder Abuse and NeglectであるHanny Naus氏 は、

Hanny Naus氏

段階的廃止は高齢者に大きな影響を与えると述べ、高齢者がどのように移行するかについて懸念していると述べている。

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(注1) 具体的には、次のとおり、手形・小切手機能の「全面的な電子化」に向けた目標を設定するものとする。・手形については、2026年度を目標とし、「全面的な電子化」に取り組み、政府が掲げる手形の利用の廃止方針を踏まえ「約束手形の利用の廃止等に向けた自主行動計画」(以下「自主行動計画」という。)を策定する。・小切手についても、産業界・金融機関の取扱負担や環境コストを踏まえつつ、2026年度を目標とし、「全面的な電子化」を目指し、わが国の決済手段のDX化を後押しする。なお、毎年のフォローアップの状況も見ながら2024年度に自主行動計画の評価を行い、必要な見直しを行うものとする。これら金融業界としての自主行動計画等の策定に向けて、産業界・関係省庁も参加したかたちで手形・小切手機能の「全面的な電子化」を議論する検討会を設置し、産業界・関係省庁との連携を図るほか、次の取り組み強化事項の詳細化等を行う予定である。(要旨から一部抜粋)

(注2) ANZ銀行の解説:ANZ銀行の銀行小切手(bank cheque)を購入する仮訳する。なお、日本では実務上「自己宛小切手」または「預金小切手(預手)」という。

銀行小切手は、個人または企業に支払う便利な方法です。 小切手または普通預金口座をお持ちの場合は、オンラインで銀行小切手を簡単に購入できます。

① 銀行小切手を購入するには、PayAnyoneに登録する必要があります。

② 1日あたりの金額制限が適用されます。

③ オンラインで銀行小切手を購入すると、手数料がかかります。

④ 発行請求額は、使用しているアカウントによって異なり、アカウントを選択すると表示されます。

【銀行小切手を購入するにはどうすればよいですか?】

銀行小切手を購入する手順:

1) ANZインターネットバンキングにログオンしたときに最初に表示されるページであるホームページに移動する。。

2) 小切手または普通預金口座を選択する。

てください

3) アカウント・アクションから「銀行小切手の購入」リンクを選択し、以下の手順に従います。以下は略す。

(2) ANZ Direct Onlineの機能

事業者向け24時間、年中無休のサービスで口座の管理と大量の支払い事務をこなすものである。具体的に次の業務をこなすものである

1) 支払いを管理する

債権者と従業員に支払いを行い、直接引き落としを設定し、アカウント間でお金を移動する。 支払いは、効率的な承認と処理のためにグループ化できる。 トランザクションファイルは、ほとんどの会計ソフトウェアパッケージからインポートして、効率と精度を高めることができる。

2) すべての追加機能を備えたオンラインでの国際決済

ANZ Direct Onlineを介して、さまざまな通貨で海外のサプライヤーに支払うことができる。 効率的な処理のために支払いをまとめてまとめることができ、受取人テンプレートを使用して処理トランザクションをさらに高速化できる。為替レートはライブであり、マーケットチームと協力しているときに先物為替レートを利用できる。 

3) 詳細なレポートと監査履歴を表示する

組み込み済の監査履歴は、すべてのアカウント・アクティビティを追跡できる。 国内、外通貨、クレジットカードの詳細なアカウント情報を表示およびダウンロードができる。 組み込みの監査履歴はすべてのアカウント・アクティビティを追跡するため、履歴レポートとデータにアクセスして、あなたとあなたの会計士の財務報告を支援できる。 

4) すべてのユーザーのアクセスをカスタマイズする

ユーザーごとに個別のログオンを作成し、ユーザーがアクセスできる領域を指定することで、機密性を保持できる。 役割を割り当てるだけで、チームはあなたのビジネスを円滑に運営する仕事に取り掛かることができる。 署名者は、モバイルでも利用できる安全な2要素認証プロセスを使用して、どこからでもあなたたちの支払いを承認できる。 

(注3) Direct Online for Business は先進的な内容(ANZサイト仮訳)

 アカウントへの24時間年中無休のアクセスと大量の支払いを処理するための高度に開発されたツールを備えたANZダイレクトオンラインは、以下のとおり、ビジネス・トランザクションを管理するための包括的な方法です。 ANZダイレクトオンラインがどのように機能するかについて、今すぐお問い合わせください。 

 (1) 支払いを管理する

 債権者や従業員へ支払いを行い、口座引落とし(direct debits)を設定し、顧客のアカウント間で資金を移動する。 また、この支払いは、効率的な承認と処理のためにグループ化できる。銀行取引ファイルは、ほとんどの会計ソフトウェアパッケージからインポートでき、その効率化と精度を高めることができる。 

(2) すべての追加機能を備えたオンラインでの国際決済が可能

 ANZ Direct Onlineを介して、各種通貨で海外のサプライヤーに支払うことができる。 効率的な処理のために支払いをまとめてまとめることができ、受取人テンプレートを使用して処理トランザクションをさらに高速化できる。 為替レートはリアルタイムであり、マーケットチームと協力しているときに先物為替レートをも利用できる。 

(3) 詳細なレポートと監査履歴を表示が可能

 組み込まれた監査履歴は、すべてのアカウント・アクティビティを追跡可となる。 国内、外貨、クレジットカードの詳細なアカウント情報を表示およびダウンロードできる。 組み込みの監査履歴はすべてのアカウント・アクティビティを追跡するため、履歴レポートとデータにアクセスして、貴社や貴社の会計士の財務報告を支援できる。 

(4) すべてのユーザーのアクセスをカスタマイズする

ユーザーごとに個別のログオンを作成し、ユーザーがアクセスできる領域を指定することで、機密性を保持できる。 役割を割り当てるだけで、チームはあなたのビジネスを円滑に運営する仕事に取り掛かることができる。貴社の署名者は、モバイルでも利用できる安全な2要素認証プロセスを使用して、どこからでも支払いを承認できる。 

【簡易かつ使い勝手が良い】

ANZ Direct Mobile

これで、あなたはスマートフォンでANZダイレクトにアクセスできます。 新しいモバイル機能により、次のことが簡単に行える(動画参照)。

① 残高と取引を確認する

② 支払いを管理する

③ 国内支払いを作成する

④ 支払いを承認または免除する 

【ヘルプデスク】ANZ Direct Onlne Helpdeskは月曜日から金曜日の7:30am ~7:00pmの間に開かれており、また、アプリケーション内からセキュア・メールを送信したり、検索可能なオンラインヘルプをいつでも参照したりすることもできる。

 (注4) 自動支払い(automatic payment):家賃の支払いなど、特定の個人または法人等への設定金額のスケジュールされた支払い(たとえば、毎週、隔週、毎月など)。 または、自動支払いを使用して、支払い日ごとに普通預金口座に定期的に預金するようにするもので、、最初は自分で支払う。 

 (注5) The Accident Compensation Corporationは、ニュージーランド政府の機関が行っている事故補償制度をいう。ニュージーランド人か海外からの旅行者かを問わず、事故に対しての医療費の補償をしてくれる(ただし、病気については適用外)。

ニュージーランドにおいては、事故による傷害等について、業務上であろうがなかろうがわが国のような別建ての制度によることなく、事故補償制度(通称 ACC1))という単一の制度により、1970年代前半以降は補償等(リハビリテーションを含む)のカバーがなされることになっている。この ACCによる補償等はネグリジェンス(過失)訴訟の原則禁止を前提として無過失責任によりなされる仕組みとなっており、労災事故であるとか交通事故であるとかといった傷害等の原因にではなく傷害等を被ってしまったという結果に着目して、被災者本位の迅速な救済システムとなることを意図している。(増田 幹司「ニュージーランド事故補償制度(通称ACC)と医療事故に関する一検討-治療行為による傷害(Treatment Injury)という概念が誕生するまでのACCの沿革-」から一部抜粋)

 (注6) 例えば違反通知書(Infringement Notice)とは、スピード違反や違法駐車などの交通違反行為を犯した際に、州警察署、または道路通行局(Department of Transport and Mains Road)から発行される違反通知書のことである。スピード違反などの場合はその場で手渡されることが多いが、例えば交通事故に巻き込まれた場合、警察による現場検証後に郵送されてくることもある。

 通知書を受け取った際の対応として、次の4つの選択肢が挙げられる。

(1)罰金を支払う(違反罰金(infrigement fines)である)

これは違法行為を認めたことになり、罰点(Demerit Points)が課せられます。罰金支払い後はほかの選択肢を選べない。また200ドル以上の罰金の支払いを命じられた場合は分割払いができる。

以下、略す。(オーストラリア警察の場合の解説(日豪プレス法律相談室から抜粋)

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1.100%原データに基づく翻訳と内容に即した権威にこだわらない正確な訳語づくり

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このため、その内容のチェックを含め完全なリンクのチェック、確保に努めてきた。

3.上記2.のメンテナンス作業につき従来から約4人態勢で当たってきた。すなわち、海外の主要メディア、主要大学(ロースクールを含む)および関係機関、シンクタンク、主要国の国家機関(連邦、州など)、EU機関や加盟国の国家機関、情報保護監督機関、消費者保護機関、大手ローファーム、サイバーセキュリテイ機関、人権擁護団体等を毎日仕分け後、翻訳分担などを行い、最終的にアップ時に責任者が最終チェックする作業過程を毎日行ってきた。

 このような経験を踏まえデータの入手日から最短で1~2日以内にアップすることが可能となった。

 なお、海外のメディアを読まれている読者は気がつかれていると思うが、特に米国メディアは大多数が有料読者以外に情報を出さず、それに依存するわが国メデイアの情報の内容の薄さが気になる。

 本ブログは、上記のように公的機関等から直接受信による取材解析・補足作業リンク・翻訳作業ブログの公開(著作権問題もクリアー)が行える「わが国の唯一の海外情報専門ブログ」を目指す。

4.他にない本ブログの特性:すべて直接、登録先機関などからデータを受信し、その解析を踏まえ掲載の採否などを行ってきた。また法令などの引用にあたっては必ずリンクを張るなど精度の高い正確な内容の確保に努めた。

その結果として、閲覧者は海外に勤務したり居住する日本人からも期待されており、一方、これらのブログの内容につき著作権等の観点から注文が付いたことは約15年間の経験から見て皆無であった。この点は今後とも継続させたい。

他方、原データの文法ミス、ミススペリングなどを指摘して感謝されることも多々あった。

5.内外の読者数、閲覧画面数の急増に伴うブログ数の拡大を図りたい。特に寄付いただいた方で希望される方があれば今後公開する筆者のメールアドレス宛にご連絡いただければ個別に対応することも検討中である。

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関係者のアドバイスも受け会員制の比較検討を行っている。移行後はこれまでの全データを移管する予定であるが、まとまるまでは読者の支援に期待したい。

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2021年7月9日、商業・娯楽・小売業・飲食業における生体認証情報の収集と利用に関するニューヨーク市の新しい法律が施行

2021-06-21 08:37:05 | 個人情報保護法制

 筆者の手元に6月18日付け”Steptoe & Johnson LLP”の解説記事「2021年7月9日、商業・娯楽・小売業・飲食業における生体認証情報の収集と使用に関するニューヨーク市の新しい法律が施行される」が届いた。しかし、新法の内容の解説としては”Nixon Peabody International LLP”の「Biometric Data Restrictions: New York City Today, New York State Tomorrow?」がより詳しい内容である。

 したがって、今回のブログは後者の内容を中心に仮訳、補足しながら、解説を試みる。

 なお、筆者は2017年8月19日付ブログ「米国で生体認証情報プライバシー法を採択した第三番目の州であるワシントン州の立法内容の検証する 」で詳しく論じている。本ブログと併せて読まれたい。

〇ニューヨーク市行政法典(New York City Administrative Code)(2021年ニューヨーク市行政法第3号:ニューヨーク市行政法典第22-1201条~22-1205条)の制定経緯と施行予定

 顔認識等生体認証技術の使用は、小売店や娯楽施設など、さまざまな公共の生活で急速に成長している。このテクノロジーの使用の増加に伴い、その使用によって取得された情報が、それを所有する人々によってどのように保存、共有、および使用されるかについての懸念が高まっている。このような懸念に対処する州の法律立法はこれまでに限定されてはいるが(イリノイ州(筆者注1)、テキサス州(筆者注2)、ワシントン州(筆者注3)には現在そのような法律がある)、ニューヨーク市行政法典(New York City Administrative Code)(2021年ニューヨーク市行政法第3号:ニューヨーク市行政法典第22-1201条~22-1205条)(以下「NYC法」という)にこのほど新たに追加された。

 NYC法は2021年7月9日に発効し、ニューヨーク州議会の両院で同様の法律が提案された。

 ニューヨーク市内で事業を行い、そのような技術を使用する企業は、NYC法の要求要件に精通することが不可欠であり、ニューヨーク州の他の場所でそのような技術を使用する企業も、それほど遠くない将来に同様の法律の規制対象となる可能性があることに注意することを勧奨する。

 以下に示すのは、NYC法の適用範囲と条件についての簡単な要約である。

(1) NYC法はどの事業に適用されるか?

 NYC法は、ニューヨーク市内で運営されている「商業施設(commercial establishments)と呼ばれる場所、つまり娯楽施設、小売店、または飲食店に適用される。「娯楽の場(place of entertainment)とは、劇場、スタジアム、アリーナ、競馬場、美術館、遊園地、展望台、またはその他のアトラクション、パフォーマンス、コンサート、展示、運動競技やコンテストが開催されるの場所など、個人または公的に所有および運営される娯楽施設のことである。

 また「小売店(retail store)とは、消費者商品が販売、陳列、または販売のために提供される施設、または小売店で消費者にサービスが提供される施設である。

 さらに「飲食店(food and drink establishment)とは、敷地内外、または手押し車、スタンド、車両の内外で消費または使用するために、一般の人々に飲食物を提供または販売する施設をいう。

(2) NYC法の適用対象となる生体認証情報の種類とは何か?

 NYC法は、「生体認証情報(biometric identifier information)」に関係する。これは、商業施設によって、または商業施設に代わって、単独でまたは組み合わせて、個人を特定する、または特定を支援するために使用される(i)網膜(a retina)または虹彩スキャン(iris scan)、(ii)指紋または声紋(voiceprint)、(iii)手または顔の形状のスキャン、またはその他の識別特性に限られない生理学的または生物学的特性をいう。 

(3) 誰の生体認証情報がNYC法の保護対象になるか?

 NYC法には別段の記載がないため(たとえば、市の居住者にのみ適用されると記載されているなど)、住んでいる場所や居住地に関係なく、それらの情報が保持または使用される場所がニューヨーク市内で生体認証情報が収集されている個人に適用されると考えられる。 

(4) NYC法はいかなる行為や遵守行為を要求しているか?

 NYC法には2つの必要要件を定める。まず、第一に顧客の生体認証識別子情報を収集、保持、変換、保存、または共有する商業施設は、必要に応じてすべての顧客入口の近くに明確で目立つ標識を配置して、そのような収集、保持、変換、保存、または共有を開示する必要がある。この「通知要件」とは、消費者および労働者保護委員会が規定する形式および方法で、わかりやすい簡単な言語により顧客の生体認証識別子情報が必要に応じて収集、保持、変換、保存、または共有されている内容につき開示すべきである。「顧客」とは、商業施設からの商品またはサービスの購入者または借主、あるいは購入予定者または借主のことをいう。

 第二に、NYC法は、価値のあるものと引き換えに販売、リース、取引、共有すること、またはその他の方法で生体識別情報の取引から利益を得る(「販売禁止」)行為を違法とした。販売禁止の文言は、関連会社間など、考慮なしに生体認証識別子情報の共有を許可しているように見える。ニューヨーク市外に所在し、ニューヨーク市内の事業体から無料で生体識別子情報を受け取る事業体がNYC法の対象となるかどうかは不明である(たとえば、NYC法は、許可されていれば、そのような譲渡を行うことができる。 NYC法に従ってそのような情報を保持するために、受信者による合意の対象となる必要がある)。

(5) NYC法を施行するための個人の行為としての法執行の権利はあるか?

 ある。集団訴訟弁護士にとって肥沃な新しい実務分野であることが証明される可能性があるもの(1人の個人が利用できる損害賠償額が少なく、法的費用を回収する権利と組み合わされている場合)では、NYC法は被害者が苦しんでいる人を規定しています法律に違反することにより、違反当事者に対して彼または彼女自身に代わって訴訟を起こす可能性がある。

 通知要件に違反したとして商業施設に対して訴訟を起こす少なくとも30日前に、被害者はそのような人の主張を記載した書面による通知を商業施設に提出しなければならない。 30日以内に、商業施設が違反を是正し、被害者に違反が是正され、それ以上の違反は発生しないという明示的な書面による声明を提供した場合、そのような違反について商業施設に対して訴訟を起こすことはできない。

 商業施設が引き続き通知要件の細分化に違反している場合、被害者はそのような施設に対して訴訟を起こすことができる。販売禁止の違反を主張する訴訟については、事前の書面による通知は必要ない。

 また、勝訴した当事者は、通知要件の違反および販売禁止の過失違反ごとに500ドルの損害賠償、販売禁止の意図的または無謀な違反ごとに5,000ドルの損害賠償、および違反に関しては合理的な弁護士費用、専門家に証人費用およびその他の訴訟費用を含む費用を回収することができる。

 さらに、裁判所は、差し止めによる救済および適切とみなされるその他の救済を与える場合がありうる。 

(6) 適用上の例外はあるか?

 ある。

 第一に、NYC法は、政府機関、従業員、または代理人による生体認証ID情報の収集、保存、共有、または使用には適用されない。

 第二に、通知要件義務は、銀行、信託会社、国法銀行、貯蓄銀行、連邦相互貯蓄銀行、貯蓄貸付組合(savings and loan association)、連邦貯蓄貸付組合(federal savings and loan association)、連邦相互貯蓄貸付組合( mutual federal savings and loan association),信用組合、連邦信用組合、外国銀行の支店、公的年金基金、退職金制度、証券ブローカー、証券ディーラーまたは証券会社として定義されている金融機関には適用されない。「金融機関」という用語には、顧客への商品やサービスの小売販売を主な事業とし、クレジットカードの発行や自動車などのディーラーなど、顧客への店内融資などの限定的な金融サービスを提供する商業施設は含まれない。ただし、販売禁止は金融機関にも適用されるので留意されたい。

 第三に、次の場合において、通知要件は写真またはビデオ録画を通じて収集された生体識別情報には適用されない。(i)収集された画像またはビデオが、以下に基づいて個人を識別する、または識別を支援するソフトウェアまたはアプリケーションによって生理学的または生物学的特性が分析されない場合。、および(ii)画像またはビデオは、法執行機関以外の第三者と共有、販売、またはリースされていない場合。この例外により、たとえば、通知要件に準拠する必要なしに、店舗内のセキュリティカメラを継続して使用できる(前記(4)の2つの要求要件が満たされていることを前提とする)。

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(筆者注1) イリノイ州法

(740 ILCS 14/) Biometric Information Privacy Act.

(筆者注2) テキサス州法

BUSINESS AND COMMERCE CODE

TITLE 11.  PERSONAL IDENTITY INFORMATION

SUBTITLE A.  IDENTIFYING INFORMATION

CHAPTER 503.  BIOMETRIC IDENTIFIERS

(筆者注3)ワシントン州法

Chapter 19.375 RCW

BIOMETRIC IDENTIFIERS

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本ブログの継続維持のため読者各位のご協力をお願いいたします。特に寄付いただいた方で希望される方があれば、今後公開する筆者のメールアドレス宛にご連絡いただければ個別に対応することも検討中でございます。 

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【本ブログのブログとしての特性】

1.100%原データに基づく翻訳と内容に即した権威にこだわらない正確な訳語づくり

2.本ブログで取り下げてきたテーマ、内容はすべて電子書籍も含め公表時から即内容の陳腐化が始まるものである。筆者は本ブログの閲覧されるテーマを毎日フォローしているが、10年以上前のブログの閲覧も毎日発生している。

このため、その内容のチェックを含め完全なリンクのチェック、確保に努めてきた。

3.上記2.のメンテナンス作業につき従来から約4人態勢で当たってきた。すなわち、海外の主要メディア、主要大学(ロースクールを含む)および関係機関、シンクタンク、主要国の国家機関(連邦、州など)、EU機関や加盟国の国家機関、情報保護監督機関、消費者保護機関、大手ローファーム、サイバーセキュリテイ機関、人権擁護団体等を毎日仕分け後、翻訳分担などを行い、最終的にアップ時に責任者が最終チェックする作業過程を毎日行ってきた。

 このような経験を踏まえデータの入手日から最短で1~2日以内にアップすることが可能となった。

 なお、海外のメディアを読まれている読者は気がつかれていると思うが、特に米国メディアは大多数が有料読者以外に情報を出さず、それに依存するわが国メデイアの情報の内容の薄さが気になる。

 本ブログは、上記のように公的機関等から直接受信による取材解析・補足作業リンク・翻訳作業ブログの公開(著作権問題もクリアー)が行える「わが国の唯一の海外情報専門ブログ」を目指す。

4.他にない本ブログの特性:すべて直接、登録先機関などからデータを受信し、その解析を踏まえ掲載の採否などを行ってきた。また法令などの引用にあたっては必ずリンクを張るなど精度の高い正確な内容の確保に努めた。

その結果として、閲覧者は海外に勤務したり居住する日本人からも期待されており、一方、これらのブログの内容につき著作権等の観点から注文が付いたことは約15年間の経験から見て皆無であった。この点は今後とも継続させたい。

他方、原データの文法ミス、ミススペリングなどを指摘して感謝されることも多々あった。

5.内外の読者数、閲覧画面数の急増に伴うブログ数の拡大を図りたい。特に寄付いただいた方で希望される方があれば今後公開する筆者のメールアドレス宛にご連絡いただければ個別に対応することも検討中である。

【有料会員制の検討】

関係者のアドバイスも受け会員制の比較検討を行っている。移行後はこれまでの全データを移管する予定であるが、まとまるまでは読者の支援に期待したい。

                                               Civilian Watchdog in Japan & Financial and Social System of Information Security 代表                                                                                                          

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