Civilian Watchdog in Japan-IT security and privacy law-

情報セキュリティ、消費者保護、電子政府の課題等社会施策を国際的視野に基づき提言。米国等海外在住日本人に好評。

ドイツ・バイエルン州の民間部門のデータ保護委員長による州内のウェブサイトの検証結果

2019-03-25 12:44:55 | 消費者リテラシィ

 2019年3月5日にインターネットの安全の日のシンポジュームでバイエルン州の民間部門のデータ保護委員(BayLDA:Bayerisches Landesamt für Datenschutzaufsicht)の委員長(Präsident)トーマス・クラーニック(Thomas Kranig)氏の講演が行われた。

Thomas Kranig:バイエルン州民間部門のデータ保護委員会サイトから引用写真

 講演の柱は、(1)サイバーセキュリティ(Cybersicherheit)、(2)トラッキング問題(Tracking)である。

 ところで、この講演内容をスライドで傍聴したように体験できるとしたらどうであろうか。

 筆者はこれに挑戦してみた。ただし、執筆時間の関係で(2)の部分のみ取り上げることとした。

 なお、この講演は法解釈論のみのためではない。ウェブサイトを具体的に検証した結果を踏まえ、EUのGDPR遵守の観点からチェックした結果である。しかし、その内容はわが国の関係者が見据えるべき重要な指摘が含まれている。

1.インターネットの情報保護面から見た安全性監査(Sicher im Internet-Datenschutzcheck „Tracking“)(スライド No.20)

 情報保護面からのチェック:「トラッキング」のプライバシー侵害にかかる苦情が統合されたバイエルン州内の選ばれた40のウェブサイトのトラッキングの実態に関するデータ保護調査(トラッキングの情報内容およびユーザーの同意を含む)結果

 

 2.調査した内訳としてどのウェブサイトのカテゴリーの割合は?(スライドNo.21)

①ハウス&リビング・・・7.5%

②自動車&電気製品・・・10%

③メディア・・・・・・・17.5%

④保険&銀行・・ ・・・12.5%

⑤スポーツ・・・ ・・・12.5%

⑥オンラインショップ ・27.5%

⑦その他・・・・・・・・12.5%

 

3.Webサイトのトラッキング・ツール:Webサイトには、広範なユーザー・プロファイルを作成するトラッキング・ツールが組み込まれているか?(スライドNo.22)

 今回レビューした40のWebサイトのうち全部にあたる40すべてのWebサイトにトラッキング・ツールが含まれていた。

 

《結果の評価(Bewertung des Ergebnisses)

 スコア・レビュー(筆者注1)のバックグラウンド・レビューされたサイトにはすべて、第三者のトラッキング・ツールが含まれており、第三者のサービスによるデータ処理を引き起こした。ユーザーがWebサイトにアクセスすると、ユーザーに知らされることなく、ユーザーのデータが自動的に表面に出ない形でバックグラウンドで第三者に送信されるのである。

 《背景(Hintergrund)》

 トラッキング・ツールは、次のようなさまざまな目的でWebサイトで使用されていた。たとえば、①広告の資金調達、②コンテンツの最適化、③セキュリティ上の理由などである。多くの場合、ユーザーの広範なプロファイルが作成される。さらに、使用状況プロファイルには、ユーザーの例えば、①政治的態度、②健康、③性的嗜好に関する結論などにつき、ユーザーのネット・サーフィン行動に基づいた特性と関心が割り当てられることもよくある。

4.透明性(スライドNo.23)

 ユーザーはトラッキング・ツールの使用について透明性をもってあらかじめ周知されているか?

①トラッキング・ツールの使用に関する情報はプライバシーポリシーに含まれている・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25%

②プライバシーポリシーにトラッキング・ツールの使用に関する情報は含まれていない、または不十分な情報のみ記載されている・・・・・・・・・75%

《結果の評価》

 保護法にいう「透明性」の要件を満たすデータ保護の規制を行っているウェブサイトはほとんどない。多くのウェブサイト運営者は、トラッキング・ツールの使用について黙秘している。その一方で、その他のものは、ウェブサイトに含まれていない様々なトラッキング・ツールを提供する。その結果、ユーザーは、どの目的のために処理されるかにかかわらず、透明性をもってあらかじめ通知されることはほとんどない。

 《背景》

 EU「一般データ保護規則(GDPR)(DS-GVO)」(筆者注2)の遵守が義務づけられるウェブサイトの運営者は、シンプルで理解しやすい言語でデータ処理についてユーザーに通知することが義務づけられる。その通知には、すべての第三者コンテンツと組み込んだトラッキング・ツールのネーミングが含まれる。さらに、ユーザーは、第三者によるトラッキングが、1)どのような目的で行われ、2)どのくらいの期間このデータが保存されるか、3 )どのようなデータが収集されるかについて通知する必要がある。

5.同意 (1)(スライドNo.24)

 クッキー・バナー(筆者注3)関してユーザーの「同意」を求めるWebサイトの割合はどうか?

①ユーザーの「同意」を求めない・・   ・・・・20%

②データ保護法に準拠していない「同意」を得る・・80%

《結果の評価》

 レビューされた40のウェブサイトのうち、30社はいわゆる「クッキー・バナー」を使用している。 クッキー・バナーは、ユーザーが自分のデータの処理に「同意」を得ることを目的としている。 我々の監査結果は、クッキー・バナーに関し得られたすべての同意が無効であることを明らかにした。

《背景》

 クッキー・バナーを使用するWebサイトの所有者は、合法的なデータ処理のためにユーザーの同意が必要であると見なされる。またウェブサイト運営者は、データ保護規定においてこれを明確にしている。同意が無効な場合、トラッキング・ツールの使用は保護法違反となる可能性がある。

6.同意(Einwilligung)を得るための要件(2) (スライドNo.25)

 Webサイトからの法的に有効な「同意」の要件は満たされているか?

 ①あらかじめ同意を得る:8/40ウェブサイト

 ②同意につき通知する:4/40ウェブサイト

 ③自発的に同意する:8/40 ウェブサイト     

ただし、①~③のすべての同意要件を満たしたのは0/40であった。

結局、全ウェブサイトの「同意」はすべて無効であった。

《結果の評価》

 得られた同意のどれも有効ではなかった。その結果、「同意」を要するトラッキング・ツールによるデータ処理は保護法違反となる。

《背景》

 その同意は、事前に付与されている場合にのみ有効である。すなわち、すべてのトラッキングの定型書式は、ユーザーが積極的に自由意思で「同意」するまではブロックされており、かつその同意は自発的である必要があり、ユーザーはデータの処理について事前に通知される必要がある。これらの条件の1つでも満たさない場合は、当該同意は保護法違反となる。

7.ユーザーのトラッキング・ツールによるデータ処理の阻止は可能か?(スライドNo.26)

 ユーザーは、ブラウザの独自の設定によっても、Webサイト上のツールを追跡することでプロファイリングを防ぐことができるか?

 

 1ウェブサイトのみでユーザーは自分自身をプロファイリングするのを防ぐことができた。

 1つのWebサイト上でのみ、ユーザーはWebサイトにアクセスしたときに本物の選択をすることができた。また、データをトラッキング・ツールで処理するかどうかを決定できた。レビューした他のすべてのWebサイトでは、ユーザーがこのデータ処理を許可するかどうかを決定する前に追跡が行われていた。「トラッキングしない」というブラウザを設定(筆者注4)できたとしても、Webサイト運営者しか確認はできなかった。

 「同意」が得られたかどうかにかかわらず、Webサイトへのアクセス時にユーザーは追跡される。また「トラッキングしない」設定を受け入れて追跡定型書式の実行を阻止したWebサイトは1つだけであった。他のすべてのWebサイトでは、ユーザーはWebサイトをはじめに呼び出すときにすでにトラッキングを防ぐことができなかった。

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(筆者注1)マーケティングオートメーションは、訪問者のWEBアクセスやメールの反応、セミナーなどイベントの出席、テレアポ電話の反応などのお客さまの行動を記録します。マーケティングオートメーションが記録した行動を、スコアリングの設定に基づいて数値(スコア)に変換します。これが、マーケティングオートメーションのスコアリング機能です。(KAIROS MARTKETING: スコアリングとは?MAツールのスコアリングの基本を学ぶから一部抜粋)

(筆者注2)EUの「一般データ保護規則」のドイツ語版は”Datenschutz-Grundverordnung DSGVO”である。

(筆者注3)「トラッキングCookie」と呼ばれるCookieがあります。これは、見ているWebサイトのCookieではなく、主にサイト内に埋め込まれたバナー広告を配信しているサーバーのCookieです。閲覧中のサイトの運営者とは別にバナー広告を配信している業者のサーバーからも、訪問者の端末にCookieが送り込まれるのです。(ウイルスバスターチャンネル「閲覧履歴を追跡されている?行動ターゲティング広告の仕組みを知る」から一部抜粋)

(筆者注4)多くのWebブラウザには、Cookieの扱いや追跡に関する設定項目が設けられています。iPhoneの標準ブラウザ「Safari(サファリ)」も例外ではありません。Safariの「プライバシーとセキュリティ」設定をチェックしてみましょう。「追跡しない」や「Cookieをブロック」といった項目が用意されています。

なお、「追跡しない」を有効にした場合、Webサイトに対してトラッキングの停止を求める宣言をしますが、実際にトラッキングするかしないかを決めるのはWebサイト側に委ねられます。(ウイルスバスターチャンネル「閲覧履歴を追跡されている?行動ターゲティング広告の仕組みを知る」から一部抜粋)

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ベトナムの新サイバーセキュリティ法や施行令等に見る内容面からみた新たな課題(その3完)

2019-03-20 15:40:00 | サイバー犯罪と立法

3.ベトナムの改正サイバーセキュリティ法の特色のある解説レポート例

 以下で例示する、詳しくは論じないが特徴点のみ紹介する。

(1)Vietnam New Cyber Security Law:Cyber Research Databankの「Vietnam New Cyber Security Law」

中国のサイバーセキュリティ法、EUの一般情報保護規則(GDPR)、ベトナムのインターネット検閲、アムネステイの人権侵害批判等に言及するとともに、関係する問題につきリンクを適宜張っている。

(2) 2019.1.9 ハノイのロイター通信:Vietnam says Facebook violated controversial cybersecurity law

 

 記者:Trong Khanh Vu 

  論争の的となるサイバーセキュリティ法が共産党の支配国ベトナムで施行された1月2日に、Facebookは、ユーザーが反政府のコメントをプラットフォームに投稿することを許可したことで、ベトナムの新しいサイバーセキュリティ法に違反したと当局から指摘された。経済改革と社会の変化に対する開放性の増大にもかかわらず、ベトナムの共産党は厳しいメディア検閲を保持しており、反対意見を容認していない点などを踏まえ、「Facebookは国家に対する活動を誘発しているファンページを削除する要求に応答しなかった」と政府公式のベトナム通信社は情報通信省を引用して述べている。(以下、略す) 

(3) 2018.11.15 Hogan LovellsUpdate: Vietnams New Cybersecurity Law 

 内容的には第2項で述べたレポートに近い。

(4) 2018.12.13 アジア・インターネット連盟(Asia Internet Coalition )

 サイバーセキュリティ法施行令草案に対する公安省大臣あて意見書Comments on the Draft Decree Guiding the Implementation of Law on Cybersecurity

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ベトナムの新サイバーセキュリティ法や施行令等に見る内容面からみた新たな課題(その2)

2019-03-20 15:32:31 | サイバー犯罪と立法

 

2.Hogan Loells LLPのブログ(Vietnam’s New Cybersecurity Law)

 以下で仮訳する。なお、いうまでもなく、このブログは公安省のサイバーセキュリティ法の施行令草案の内容も引用している。

 2018612、ベトナムの国民議会は、2019年1月1日に施行されるサイバーセキュリティ法 (Law on Cybersecurity (Luật an ninh mạng);以下、「 サイバーセキュリティ法」という)を可決した。とりわけ、この法律は、ベトナムで事業を行うテクノロジー企業のデータ処理方法を規制するとともに、「禁止」されたコンテンツを投稿するユーザーのインターネット接続を制限するものである。法律の規定が一見して広い範囲で適用されるため、ベトナムのエンド・ユーザーにサービスを提供している外国のハイテク企業は、データのローカライズ義務やベトナム国内での支店、事務所等物理的施設の設置義務化等を懸念している。

 

ベトナム国民議会(Quc hiNational Assembly)のサイト

  ベトナムで一般的であるように、サイバーセキュリティ法は関連当局によって発行される将来の実施ガイダンスを通して提供されるべきさらなる詳細化を目的として非常に広く起草された。導入ガイダンスの以前の草案では当局がサイバーセキュリティ法のすべての条項を推進していたが、2018年10月31日に公開された最新の施行令草案(latest draft implementing decree)は、ある程度、法律の適用範囲の明らかな狭小化に対する懸念を和らげた。しかし、問題は残る。

 以下で、サイバーセキュリティ法の重要な側面と現時点の施行令草案について説明する。 

(1) 1年間の法遵守の猶予期間

  サイバーセキュリティ法は、原則として、電気通信ネットワークまたはインターネットを介したサービスを提供したり、またはベトナムの顧客に付加価値サービスを提供する国内外の会社を対象とする。同法は広く解釈すると、これらのサービスには、ソーシャルネットワーク、検索エンジン、オンライン広告、オンライン放送およびストリーミング(streaming) (筆者注4)EコマースのWebサイトおよびマーケット、インターネット・ベースの音声/テキストサービス(OTTサービス(筆者注5)、クラウドサービス、オンラインゲーム、その他のオンラインアプリケーションが含まれる。

  当初、同法が2019年1月1日に施行されると、そのようなすべてのサービス・プロバイダーはサイバーセキュリティ法を遵守することが義務付けられると予想されていたが、最新の施行令草案では、サービスプロバイダーは公安省からの要求の受領後1年間の猶予期間が明記された。 最終的な施行令が発行されたときに変更がないと仮定すると、これは当局によって明確に指示されるまで、企業がコンプライアンスに向けた措置を講じる必要がないことを意味する。これは、法律の適用範囲の広さに関する一般的な懸念を軽減するだけでなく、より具体的には、遵守期限が迫っている2019年1月1日の期限を守ることができない企業に安心感を与える。

(2) 個人データのローカライズされた保存と保持義務

 サイバーセキュリティ法の対象となるオンラインサービス・プロバイダーは、法的に定められた期間内は、ベトナムのエンドユーザーの個人データをベトナム国内に保管し、要求に応じてそのようなデータをベトナム政府当局に引き渡すことが求めらる。 この文脈における個人データには、①名前、②生年月日、③出生住所、④IDカード番号、⑤住所、⑥電話番号などの個人を特定できる個人情報だけでなく、⑦役職、⑧健康状態、⑨医療記録、⑩バイオメトリクス(筆者注6)などのものも含まれる。ユーザによって作成されたデータ(たとえばアップロードされた情報およびデバイスからの同期または入力されたデータ)およびユーザの関係に関するデータ(たとえばユーザー個人が接続または対話する友人およびグループ)もデータ・ローカライゼーション要件の対象となる。

 法律が定めるデータ保持期間は、保持するデータの種類によって異なる。サービスプロバイダーが対象サービスを提供し続ける限り、個人データはベトナム国内に保存されなければならないが、ユーザーによって作成されたデータおよびユーザーの関係に関するデータは少なくとも36ヶ月間保存されなければならない。

2018.11.28 Draft Cybersecurity Decree issued in Vietnam から一部抜粋のうえ筆者が仮訳した。なお、同ブログはベトナムの弁護士Yến Vũ(イエン・ヴオー)氏によるものである

Yến Vũ 氏

(3) 当局によるコンテンツの管理と検閲問題

 サイバーセキュリティ法は、情報通信省または公安省からの要求を受けてから24時間以内に、オンラインサービス・プロバイダがユーザーの投稿を監督し、政府によって「禁止」されているコンテンツを削除することを要求している。「禁止されるコンテンツ」には、ベトナム社会主義共和国に反対する、またはそうでなければ害を及ぼす情報が含まれる。 例えば、理論的には政府、共産党あるいはそれぞれのメンバーまたは役員に対して行われた批判的または反対意見を含む「中傷的宣伝」は禁止される。また、 政治的または社会経済的な活動や反国家活動を奨励すると見なされる内容も、同様にサイバーセキュリティ法に違反する。

 オンラインサービス・プロバイダーが、禁止されたコンテンツを投稿することについてユーザにフラグを立てる場合、そのようなユーザへのインターネット接続の提供を停止し、またそのユーザをその電気通信ネットワークから本質的にブロックしなければならない。 関係当局から要求された場合、プロバイダはユーザ情報を報告して引き渡すことを強制されることさえある。そのため、新しい法律を遵守するとするためには、企業のユーザーのプライバシー保護に関する自社の利用規約(および場合によっては他の司法管轄)に違反することが必要となり、オンラインサービス・プロバイダーはサイバーセキュリティを遵守する方法を選択でき、これにより利用者の個人情報を保護する。

(4) 海外のサービス・プロバイダーの支店または駐在員事務所の設立の条件

 サイバーセキュリティ法は表面的にはすべての海外のサービス・プロバイダーにベトナム国内での支店または駐在員事務所の開設を要求しているが、施行令草案は多くの基準を守ることにつき、ありがたいことにその範囲を狭めた。海外のサービス・プロバイダーが現地での駐在員事務所や支店の設置することを要求される前に法律の大部分に違反するかあるいは当局との協調に失敗した時の条件に関する設置基準を定めている。

 具体的には、法令の下では、とりわけ、(i)ユーザーがサイバー攻撃、サイバー犯罪、または国家の安全と公の秩序を乱すその他の行為を行うことを許可する場合、および(ⅱ)サイバーセキュリティポリシングの違反、ユーザーの詳細な個人情報の認証の失敗、ユーザーの個人情報の機密保持の失敗、関連当局へのユーザー情報の提供、またはタイムリーな違法コンテンツの削除に失敗するなど、サイバーセキュリティ法に違反した場合に限り、海外のプロバイダーはベトナム国内に現地での支店や駐在員事務所を設立する必要がある。

 この施行令草案では、どの海外サービス・プロバイダーが現地の駐在員事務所等の設置要件の対象となるかを特定する責任を公安省(Bộ Công an)に割り当てている。この基準が広い解釈に開放されていることを考えると、同省は、特定の海外のサービスプロバイダーがベトナムに現地での駐在員事務所等を設置する必要があるかどうかの事実上の仲裁人となるであろう。したがって、ベトナムで認められている活動のいずれかに従事している海外の会社は、ある時点でこの要件に巻き込まれる可能性がある。それは確実にそのようなすべての会社が法の施行日(2019年1月1日)から自動的にカバーされるという初期の懸念をへらす改善内容といえる。

(4) サイバーセキュリティ法の不遵守に対する潜在的な罰則内容

 サイバーセキュリティ法を遵守しなかった場合の罰則内容はまだ発表されていないが、当局者は、違反即のサービスの禁止はありそうもないと指摘している。しかし、ベトナム国内企業は以前、当局から反国家的な資料を宣伝すると思われるサイトでの広告掲載を一時停止するよう圧力をかけられており、新しい法律は当局がそのような取り組みを行うためのさらなる基盤を提供することになると考えられている。

(5) 結論

 サイバーセキュリティ法の具体的施行が続いているので、ベトナム国内の顧客にオンラインサービスを提供している会社は間違いなく注目しているであろう。当面の間、懸念は残るものの、当局がサイバーセキュリティ法の骨を荒廃させるために当局が傾いているように見える方向は、少なくとも、海外の技術者が主張するより厄介な条項から後退しているように思われ、特に企業はそう懸念している。

3.DataGuidanceの記事「ベトナム:サイバーセキュリティ」の要約

標記ブログを仮訳する。なお、法律等のリンクや注記は筆者の責任で行った。

Ⅰ.統治に関するテキスト

1.1法律

   ベトナムのサイバーセキュリティ法の主要な部分は、「サイバーセキュリティ法No: 24/2018/QH14 ( CSL: Luật an ninh mạng) ( 2018年に制定され、2019年1月1日に発効) 」 (英訳版)「サイバー情報セキュリティに関する法律No.86 / 2015 / QH13 ( 'LCS' )」 ( 2015年に制定され、2016年7月1日に発効) (英訳版)、およびLCSの下位レベルの実装法令および通達。2022年4月現在、CSLの実装ガイドラインはない。

(1)CSLとLCSは、さまざまなサイバーセキュリティ領域を対象としている。LCSは主にサイバーデータのセキュリティ保護に関する要件を提供するが、CSLは主にサイバー環境全体の国家安全保障を確保するための要件を提供し、 オンラインスピーチの管理と他のデジタル犯罪との闘いに重点を置いている。

(2)CSLとLCSは、ベトナムおよびベトナムを拠点とするユーザー(データホルダー)からのオンライン情報を使用、収集、処理、および配布するすべてのユーザーに広く適用される。

(3)LCSとCSLの立法として相対的に未完成であり、特に現在まだ実施規則がないLCSを考えると, その範囲内には不確実なままであり、当局からのさらなる指導を必要とする多くの領域があり、ベトナム政府およびその機関は、より低いレベルで法律を導くため、具体的には 公安省 (「MPS」)はCSLと 情報通信省 (「MIC」)LCSをガイドするため、更なる継続的な努力が必要である。

1.2規制当局

 一般に、ベトナム国会(NATIONAL ASSEMBLY: Quốc hội nước Cộng hòa xã hội chủ nghĩa Việt Nam)はLCSとCSLを公布する機関である。ただし情報通信省 (以下、MICという)( B Thông tin và Truyn thông)公安省 (以下、「MPSという)(BỘ CÔNG AN)は、LCSとCSLの両方を規制、実装、解釈、施行する主要な規制当局である。特に、MICはLCSに関する主要な権限であり、CSLに関してより支援的な役割を果たす。逆に、MPSはCSLの中心的な権限であり、LCSに関してより支援的な役割を果たす。

 公安省 (MPS)はベトナム政府直属の公的機関であり、治安、秩序、社会安全の国家管理の機能を果たす。すなわち、 対諜報活動、 防犯調査、 火災予防と救助、 刑事判決の執行、投獄、拘留または一時拘禁の対象とならない判決執行、 法的保護とサポート等、 同省の国家管理下にある部門および分野における公共サービスの国家管理を行う。(Wikipediaから抜粋、仮訳) なお、この機関制度は中国に極めて類似している。

公安省大臣トー・ラム(To Lam)氏

公安省は、ベトナム人民の公安全般を管理する機関である。

1.3.規制当局のガイダンス

 MPSは、CSLが2018年に公布されたにもかかわらず、CSLの実装規則や公式ガイダンスをまだ発行されていない。タイミングは不確かであるが、政府が実施令をまもなく発行することが広く期待されている。しかし、デジタル犯罪への取り組みオンラインヘイト・スピーチの管理の問題に関して、MPSはオンラインで犯された違反を罰するための刑事訴追が極端な場合に適用される可能性がある範囲で措置の導入に非常に積極的である。

 一方、LCSを実施するために政令142/2016が政府によって発行された。政令142/2016は、オンライン紛争に対処するデータホルダーにガイダンスを提供し、義務を課す。したがって、オンライン情報の競合の報告を受け取った場合にデータ所有者が対応するための手順とタイムラインを示す。また政令142/2016は、データ保有者が情報の変更を含め、遵守を拒否した場合に当局がオンライン紛争を防止するために実施する必要がある措置を規定し、データホルダーの情報ポータルに対して技術的な障壁を適用する。

2.CSLの適用範囲

 CSLはすべてのデータホルダーとその情報インフラストラクチャに適用される。CSLとLCSは、ベトナムとベトナムを拠点とするユーザーからのデータを処理するすべての事業体とネットワークおよび情報システムをまとめてカバーしている。一見したところ、どちらの法律もソーシャルネットワークプロバイダー(Facebook、YouTube、Googleなどの巨人「純粋なテクノロジー」企業)に焦点を当てているように見えるが, 法律の言語は広範であり、それに直面して、幅広いビジネス活動とモデルを反映している。特に、両方の法律は、通信ネットワーク、インターネット, ベトナムのインターネット上のその他の付加価値サービス。この幅広い言語は、さまざまな活動をカバーしており、明らかにソーシャルメディアサービスに限定されていない。たとえば、外国の銀行がベトナムのクライアント(ベトナムに居住するベトナム人以外の市民を含む)にオンラインサービスを提供する場合、その活動は法律でカバーされる場合がある。別の例は、ベトナムの居住者がアクセスでき、ベトナムの居住者が使用するオンライン予約サービスである。

 もちろん、ユーザーやソーシャルメディアネットワークプロバイダーも、デジタル犯罪への取り組みやオンラインスピーチの管理に関して対象となっている。この面での違反を罰するために、行政上の罰金と刑事訴追の可能性がある。

 CSLの適用範囲を特定の事業体に明確化/制限する可能性のある実施法令を起草するための継続的な取り組みがあるが、2022年の時点では, CSLの実施に関する政令草案とCSLに基づく個人データの保護に関する政令草案の両方が政府によって承認されていない。

3.用語の定義

・情報セキュリティプログラム: 情報および情報システムを保護するために機能するハードウェアまたはソフトウェア。

・サイバーセキュリティ・インシデント: 国家安全保障、公序良俗、または組織や個人の合法的な権利と利益を脅かすサイバースペースでの予期せぬ出来事。

サイバー情報セキュリティリスク: サイバー情報セキュリティのステータスに影響を与える可能性のある主観的要因または客観的要因。

サイバー犯罪: 刑法No.で定義されているサイバースペース、情報技術、または電子機器の使用を含む犯罪。ベトナム国会の刑法100/2015 / QH13(2015年11月27日成立)(ベトナム刑法第286条)。

286 コンピュータネットワーク、電気通信ネットワーク、または電子機器に有害なソフトウェアプログラムの拡散

 以下のいずれかの場合に、コンピュータ ネットワーク、電気通信ネットワーク、または電子機器に有害なソフトウェア プログラムを意図的に拡散した者は、5000万 ドン(30900)から 2 億ドン(1237600)の罰金、または最高の罰金に処されるまたは3年の社会内刑(community sentence)(筆者注7)または636か月の有期懲役(imprisonment)(刑法第38)

(a) 得た違法利益は 5000万ドン(約30万900円)から 2 億ドン(約123万7600円)未満であること。

(b) 違反により、5000万ドンから 3億ドン(約185万6000円)未満の物的損害が発生したこと。

(c) 有害なプログラムが、50 ~ 199 台の電子デバイス、または 50 ~ 199 人のユーザーがいる情報システムに感染したこと。

(d) 犯罪者は、以前に民事上の刑罰を受けているか、同じ犯罪で以前に有罪判決を受けたが未だに取り消されていないこと。

2. 以下のいずれかの場合に犯した犯罪には、2 億ドン(約123万7600円)から 5 億ドン(309万4100円)以下の罰金、または 3 年から 7 年以下の有期懲役が科せられる。

(a) 犯罪が組織化されたグループによって行われたこと。

  1. b) 得た違法利益は 2 億ドンから 5 億ドン未満であること。
  2. c) 違反により、3 億ドンから 10 億ドン未満の物的損害が発生したこと。
  3. d) 有害なプログラムは 200 ~ 499 台の電子機器、または 200 ~ 499 人のユーザーがいる情報システムに感染したこと。
  4. dd) 危険な再犯。

3. 以下のいずれかの場合に犯されたこの犯罪には、7 年から 12 年の有期懲役が科せられる。

(a) 犯罪が機密情報であるデータ システム、または国防と安全保障に役立つ情報システムに対して行われた場合。

(b) 国家電力網、制御情報システム、 銀行または金融情報システム、 交通管制情報システム等国家情報インフラに対する犯罪であること。

(c) 得られた違法な利益は何ですか? 5億ドン以上であること;

(d) この違反により、10億ドン以上の;物的損害が発生したか;

(dd) 有害なプログラムは500 台の電子デバイスまたは情報システムによる? ユーザー数は 500 人に感染したか。

4.違反者には、3000万 ドンから 2 億ドンの罰金が科せられるか、または1 年から 5 年間、特定の役職に就くことや特定の仕事に従事することが禁止される場合がある。

4.情報管理システム/フレームワークの実装

 データホルダーまたはベトナムを拠点とするユーザーはすべてのネットワークおよび情報システムは、データホルダーがそのようなシステムを使用してベトナムからのデータを収集、使用、転送、または処理する場合、当局による特定の監視の対象となる。

 CSLは、「国の重要な情報インフラストラクチャ」として分類される特定の国のネットワークおよび情報システムの要件も規定している。 また、CSLは、政府がこの規定を明確にするために国の重要な情報インフラストラクチャの具体的リストを公布することを規定しているが、ただし、現在のところ、そのようなリストは公布されていない。

 CSLの第10.2条は、以下の国内情報システムは「国の重要な情報インフラストラクチャ」と見なされることを規定している。

①軍事、安全保障、外交、または暗号化された重要なシステム

②国家機密情報のアーカイブと処理するもの

③特定の重要なアイテムやドキュメントの保管を提供するもの

④国家安全保障に関連する他の施設の保管、製造、管理を提供するもの

⑤中央組織の運営に奉仕するもの

➅エネルギー、金融、銀行、電気通信、輸送、資源と環境、化学、健康、文化、報道当局にサービスを提供するもの

⑦人間または環境に有害な材料または物質の保管を提供するもの

⑧国家安全保障または国家安全保障目標に関連する重要な作業における自動監視および制御システム。

「国の重要な情報インフラストラクチャ」として分類されていないネットワークおよび情報システムは、LCSがそれらを5つのクラスに分割し、各分類は特定のレベルの必要なセキュリティ対策に対応している。以下の見出しは、これらのカテゴリと、各ネットワーク分類のセキュリティ対策に関する法令85/2016 / ND-CP(DECREE ON THE SECURITY OF INFORMATION SYSTEMS BY CLASSIFICATION)4/24⑳の第7条から第11条に記載されている基準を要約している。

分類1

組織または機関の内部運用に対応し、公開情報のみを処理する情報システム。

分類2

分類2に該当するには、次の基準の少なくとも1つを満たす必要がある。

①組織または機関の内部運用を提供し、ユーザーの個人情報および個人情報を処理するが、機密の国家情報を処理しない情報システム;

これらのマナーの1つで人々と企業にサービスを提供する情報システム:

法律に従い、レベル2以下の情報とオンライン公共サービスを提供します;

条件付きビジネスサービスのリストに記載されていないオンラインサービスを提供します。または

10,000人未満のユーザーの個人情報および個人情報を処理する他のオンラインサービスを提供します。そして

組織または機関が使用する情報インフラストラクチャのシステム。

分類3

分類3に該当するには、次の基準の少なくとも1つを満たす必要がある。

①分類された国家情報を処理する、または国防と安全保障にサービスを提供する情報システムであり、その妨害行為が国の防衛と安全を危うくする。

②次のいずれかの方法で人と企業にサービスを提供する情報システム。

③法律に従い、レベル3以上の情報とオンライン公共サービスを提供する。

④条件付きビジネスサービスのリストで定義されているオンライン公共サービスを提供する者。または、10,000人以上のユーザーの個人情報および個人情報を処理する他のオンラインサービスを提供するもの。

⑤業界、国、または国の機関や組織が使用する共有情報インフラストラクチャのシステム。

➅規制された建設の等級付けに従って、グレードII、III、またはIVの建物の通常の活動の操作と操作に直接サービスを提供する産業用操作情報システム。産業用操作情報システムは、「建設 の通常の活動の運営(第6.2.d条-法令85/2016)データの監視と収集、操作の重要なセクションの管理と制御における機能的な役割を持つ情報システムとして定義される。

分類4

分類4に該当するには、次の基準の少なくとも1つを満たす必要がある。

①国家情報を処理するか、国防と安全保障のサービスを提供し、その妨害行為が国の防衛と安全保障に深刻な妥協をもたらす情報システム;

②電子政府の発展に役立ち、24時間体制で機能し、事前のスケジュールなしに停止しない国家情報システム;

③代理店や組織に全国規模および24時間体制でサービスを提供し、事前のスケジュールなしに停止しない共有情報インフラストラクチャのシステム。

④規制された建設の等級付けに従って、グレードIの建物の通常の活動の操作と操作に直接サービスを提供する産業用操作情報システム。

分類5

分類5に該当するには、次の基準の少なくとも1つを満たす必要がある。

①機密の国家情報を処理する、または国防と安全保障のサービスを提供し、その妨害行為が国の防衛と安全保障に過度に重大な損害を与える情報システム;

②国の特に重要な情報とデータの集中ストレージを提供する情報システム;

③ベトナムと世界をつなぐ国家情報インフラのシステム;

④法的安全保障に関する建設または重要な建物の規制された等級付けに従って、特別等級の建物の通常の活動の操作と操作に直接サービスを提供する産業操作情報システム 国家安全保障に関する規制;

⑤首相の裁量によるその他の情報システム。

4.1サイバーセキュリティのトレーニングと意識

通達第9条によると。2017年3月/ TT-BTTTTは法令No. 85/2016を指導し、サイバー情報セキュリティの各レベルには、その付属文書に詳述されている各関連指標がある。

CSLの第49条によれば、サイバー情報トレーニングは次のように規制される。

(1)情報システムの管理機関は、管理および技術スタッフメンバーにサイバー情報セキュリティの知識とスキルのトレーニングを提供するものとする。

(2)フルタイムのサイバー情報セキュリティ担当者は、専門資格に関連するタスクを割り当てられ、その実行を支援され、サイバー情報セキュリティの復習トレーニングに参加する際に優先される。

国は、サイバー情報セキュリティのための人材育成を目的とした高等教育機関および職業訓練機関を通じ、組織および個人に投資し、合弁事業および建設における他の組織との提携に参加することを奨励するものとする。

内務省 幹部、公務員のためのサイバー情報セキュリティの知識と運用に関するトレーニングの計画と組織化において、MICおよび関連する省庁とセクターの主要な責任を負い、公務員調整するものとする。

4.2サイバーセキュリティのリスク評価

 LCSによると、サイバーセキュリティリスク評価とは、情報または情報システムに対する危害および脅威のレベルの検出、分析、および推定を意味し、MICが管理するものとします。

 サイバー情報セキュリティ基準または規制適合性の評価は、次の場合に行われる。

①規制適合認証が実施され、規制適合スタンプは、サイバー情報セキュリティ製品を販売する前に、組織または個人が取得するものとします。またはサイバー情報セキュリティの国家管理に役立つこと。

②国の重要な情報システムにサービスを提供し、サイバー情報セキュリティの国家管理にサービスを提供するサイバー情報セキュリティ基準または規制適合性の評価は、MICによって指定された適合認証機関によって行われる。

4.3 ベンダー管理

 LCSの第10条は、電気通信企業、電気通信アプリケーションサービスを提供する企業、および情報を送信する情報技術サービスを提供する企業は以下が義務付けられる。

①情報の保管、個人情報の保護、組織や個人の個人情報の保護に関する法律を遵守すること。

②情報の送信が違法であるという組織または個人の通知を受け取ったとき、ブロックおよび処理措置を講じる。

②受信者に情報の受信を拒否するように提供する。

③有能な国の機関がサイバー情報セキュリティを管理および確保するために、要求に応じて必要な技術的および専門的条件を提供する。

 電子メールサービスを提供している、または情報を送信および保存している企業は、送信、受信の過程でマルウェアフィルタリングシステムを備えている必要がある。 システムを介して情報を保存し、法律に従って管轄の州機関にレポートを送信するものとする。

 インターネットサービスを提供する企業は、マルウェアの拡散を管理、防止、検出、および停止するための措置を講じ、管轄の国の機関の要求に応じてそれを処理するものとする。

4.4説明責任/記録保持

 監査手順に関しては、監査関係書類は、使用期間中、完全かつ安全に保存されなければならない。さらに、処理活動の記録に関しては、電子形式でもハードコピー形式でも、そのような活動は関連するように記録されなければならない。 一方、データは機密に保つ必要があり、使用期間中のみ調査できる。

 設計、デフォルト、または行動規範によるプライバシーに関連する関連規定は存在しない。

5.データセキュリティ

(1)技術的および組織的対策: 科学技術省 サイバー情報セキュリティに関する国の技術基準を評価および公開し、MICはサイバー情報セキュリティに関する国の技術基準を公布するものとする。

(2)アクセス制御と特権:これらは、次のデータ分類に基づいて規定される。

①公開情報は、組織または個人が所有し、そのような事業体を特定して特定することなくすべての事業体に開示するオンラインデータである。

②個人情報は、組織または個人が所有し、開示しないか、識別および配置された1つまたはいくつかの事業体にのみ提供するオンラインデータである。

③個人情報は、特定の人物の識別に関連するオンラインデータです。

④分類された状態情報は、分類された状態情報の保護に関する法律に準拠して、機密、秘密、および極秘として分類されたデータである。

マルチファクター認証:適用規定なし

暗号化:該当規定なし

暗号化:このような対策は、銀行および電気通信部門のみ必要である。

セキュリティポリシー:適用規定なし

*この法律は、データホルダーに、ネットワークおよび情報システムで発生するリスクを監視および管理するための技術的手段を実行する義務を課している。対策は、ネットワークと情報システムのそれぞれのクラスによって異なります。このような措置は、クラス1および2のネットワークおよび情報システムの原則に従うものとする。データ保有者は、独自の裁量で対策を積極的に適用することを勧める。

(3)クラス3以上のネットワークおよび情報システムを運用するデータホルダーの場合、次の対策を講じる必要がある。

①ユーザーのデータを保存し、当局が要求を確認および調査できるようにする(データをローカライズする)

②リスクを検出するために技術的なソリューションを適用する。

③データを提供し、セキュリティ対策の実施について報告するために、要求に応じて当局と協力する。

 現在、上記の対策をさらに詳しく説明または明確にする規定はこれ以上ない。そのような措置がベトナムのデータ保有者によって厳密に遵守されているかどうかは不明である。

6.サイバーセキュリティ・インシデントの通知

 データホルダーには、サイバーセキュリティ・インシデントを当局に通知する義務がある。ベトナムの法律では、「サイバーセキュリティ・インシデント」は、情報または情報システムが攻撃または危害を加えられて問題のシステムの全体、機密性、または利用に影響を与えるインシデントに限定されていると理解されておりようである。このような基準が実際に何を意味するかは不明であるが、システムがクラッシュしたり、格納されたデータの機密性を損なう原因となる重大なインシデントは、サイバーセキュリティインシデントと見なされることは間違いないと理解している。

 サイバーセキュリティインシデントが発生した場合、データホルダーは当局に通知する必要なく、インシデントに積極的に対処するために5日間の 猶予がある。このような5日間の終了後、データホルダーは、インシデントが解決されたか進行中のかに関係なく、インシデントを当局に通知する必要がある。インシデントが5日間の通知期間の終了時に継続中または未解決のままである場合、データ保有者は、インシデントに対処するために取られたアクションについて当局に最新の状態に保つ必要がある。ただし、現在、この要件が実際にどのように実装されるかについての詳細な規定はない。

 データホルダーがインシデントを解決できないと見なした場合、当局はインシデントに対処する場合があるが、長期にわたる事件が当局による介入の権利を引き起こすかどうかは不明である。

7.権限を持つための登録

 データホルダーは、ネットワークと情報システムをMICに登録して分類する必要がある。登録書類には、問題のネットワークと情報システムを説明する技術書類が含まれており、データホルダーによるネットワークと情報システムの自己評価も含まれている。MICが申請書類を検討する法定のタイミングは、完全な一式文書の提出日から7日間である。

8.セキュリティ担当者の任命

 該当規定なし。データ保有者が「セキュリティ」担当者を任命する明確な法的義務はない。

ただし、電子商取引活動に関する法令52/2013 / ND-CP (ベトナム語のみで利用可能 )、顧客の個人データを保存および使用するeコマースWebサイトを所有するトレーダーは、組織のアドレスと連絡先情報を詳細に指定する個人データ保護ポリシーや情報を収集および管理するための役員を指定いる必要がある。

9.各セクター固有の要件規定

(1)金融サービス部門

 より具体的な規制の対象となるのは、(金融セクター全体とは対照的に)銀行セクターだけである。特に 中央銀行であるベトナム国立銀行 (「SBV」(State Bank of Vietnam[))は、ベトナムの信用機関がLCSに基づくものと非常によく似た手順でデータ侵害インシデントを処理するためにプロトコルに厳密に従うことを要求する。ただし、主な違いは、SBVとその専門部門が、信用機関がそのようなプロトコルを適用することを処理、調整、および支援するライン権限になることである。そのため、銀行や金融会社は、LCSに従う必要がある通常の会社よりもこのプロトコルに準拠しているようである。

(2)健康・保健部門

 CSLとLCSに基づく一般的な法律に従いながら ベトナム保健省 ( MOH)4/24⑱は通達(Circular )54/2017を発行した。通達54/2017は、MOHが患者のデータをオンラインで処理するときに適用する医療ユニット(病院、診療所など)の「優良事例」と見なすものを規定している。法的手段の形ではないが、これらの「優良事例」は主に「示唆的」であると見なされており、医療ユニットが実際にこれらのプロトコルを適用するかどうか、またはどのように適用するかは不明である。

(3)電気通信

 電気通信法第6条により情報の機密性を確保するには、次のものが必要である。

①電気通信活動に従事する組織および個人は、国家機密の保護に関する法律の下で国家機密を保護するものとする。

②電気通信ネットワークを通じて国家機密として分類された情報を送信、送信、または保存する場合、組織および個人は、暗号法の下でそのような情報を暗号化するものとする。

③すべての組織および個人の公衆通信ネットワークを介して送信される個人情報は機密に保たれ、通信ネットワークに関する情報の管理は、管轄の国の機関によって法律に基づいて行われるものとする。

④電気通信事業者は、名前、住所、発信者番号、電話番号、発信者の位置、通話受信者の位置、通話時間など、電気通信事業との契約締結時に電気通信サービスのユーザーが提供するその他の個人情報ユーザーは、情報を提供することに同意した場合を除き個人情報を開示することはできない。

⑤電気通信事業者は、料金の計算、請求書の請求、および契約義務を回避する行為の防止のために、電気通信サービスユーザーに提供された情報を交換することについて書面で同意する。

⑦情報の開示は、法律に基づいて管轄の国の機関から要求される。

(4)雇用部門

該当規定なし。LCSおよびCSLに基づく一般的なガイダンスが適用される。 

(5)教育部門

該当規定なし。LCSおよびCSLに基づく一般的なガイダンスが適用されます。 

(6)保険部門

一般に、「保険事業に関する法律」により保険会社は保険購入者に関する情報を秘密にしておく義務がある。

その他の部門問題は、LCSおよびCSLによって管理される。

10.罰則

 一般に、CSLとLCSの両方が、法律を遵守しなかった場合、行政上の罰金と刑事訴追の可能性があると概説している。CSLの機能の多くは規制されていないままであるが(たとえば、ローカルエンティティを設定するための要件、データローカリゼーションなど), デジタル犯罪とオンラインスピーチは、2020年4月15日に発効する新しい政令15/2020 / ND-CPの下で厳しく規制されており、政令91/2020によって改正された。特に、特に政府によるCOVID-19との闘いの文脈において、刑事訴追が急増している一方で、行政上の罰金と違法なコンテンツの削除が蔓延している。例えば, 4月14日に最初の刑事訴追が現れ、ベトナムでのCOVID-19の確認された事件に関して「偽のニュース」を広めたとされる1人のFacebookユーザーを犯罪にした。(筆者注9)

 潜在的な行政罰は別として、現在、CSLおよび/またはLCSへの非準拠を犯罪とする刑法に基づく特定の規定はない。

11.その他の関係領域

 さらに、政令53/2022では、駐在員事務所の設立とともに、データストレージ要件が導入されている。より具体的には、政令53/2022の第26条は、ベトナムに保管する必要のあるデータには以下が含まれる。

(1)ベトナムのユーザーの個人データ;

 ・ベトナムを拠点とするユーザーが作成したデータ。アカウント名、使用時間、クレジットカード情報、電子メールアドレス、IPアドレス、最新のログアウト、登録された電話番号など。

 ・ベトナムを拠点とするユーザーとユーザーの友人またはユーザーが対話する他の人々との関係に関するデータ。

 ・ベトナムでの個人データの保管に関して、政令52/2022は、データ保管の形式は問題の企業によって決定される可能性があるが、MPSは通知、ガイド, 企業がデータストレージの要件に準拠していることを監視、監督、および促す。

(2)個人データの保持

 さらに、政令53/2022は、関連する企業がMPSがデータの保存を要求する決定を下してから12か月以内にデータストレージ要件を実装する必要があると指摘している。 また、企業がリクエストを受け取ったときからのそのようなデータの保存期間は、最低24か月である。より具体的には、CSLのセクション26の違反の調査と処理に役立つシステムログは、最低12か月間保存する必要がある。

 さらに、政令53/2022の第26条は、外国企業が次の基準のいずれかに該当する場合、ベトナムに駐在支店を設立する必要があると規定している。

(3)ベトナムでビジネスを行う外国企業は、次のいずれかの分野にある。

①通信サービス企業

②データの共有と保存企業

③ベトナムユーザーのための国内または国際的なドメインの提供企業

④eコマース業者

⑤ソーシャルネットワークとソーシャルマーケティング業者

➅オンラインゲーム

⑦規定;またはメッセージ、電話、ビデオ通話、電子メール、またはオンラインゲームの形式でのインターネット上の他の情報の管理、または操作。

⑧企業が提供するサービスは、CSLに違反する行為を行うために使用できる。

 ****************************************************************************************

(筆者注4)streaming”とは、インターネット上で動画や音声などのコンテンツをダウンロードしながら逐次再生すること。Windows Media PlayerやQuickTime、RealPlayerなどのストリーミング・ソフトを使って受信する。映像や音楽データはデータ容量が大きいため、すべてのデータをダウンロードしてから再生する従来の方式では、受信が完了するまでに時間やネットワーク負荷がかかる。ストリーミングでは、サーバーから映像や音声データが少しずつ配信され、受信した側で同時に再生する。ネットワークへの負担がなく、ユーザーはダウンロードを待つことなく、すぐに映像や音声を視聴できる。(ASCII.jpデジタル用語辞典から引用)

(筆者注5) OTTとは、通信会社やISP(インターネットサービスプロバイダ)とは無関係にインターネット上で提供される、通信容量を大量に使用するサービス。また、そのようなサービスを提供する事業者。パソコンやスマートフォンからインターネットを通じて誰でもオープンに利用できる動画や音声の配信サービス、音声通話、ビデオ通話サービスなどがこれに当たる。(IT用語辞典から引用)

(筆者注6) ベトナムにおけるバイオメトリクとは具体的に何を指すのであろうか。Hogan Lovells LLPのブログは言及していない。このため筆者は別途、公安省サイトのガイダンス資料で見たが、なお詳しい定義は記載されていなかった。

(筆者注7)ベトナムのcommunity sentencesの解説(英国などと異なる点もありあえて仮訳する)

2015 年ベトナム刑法第 32 条第 1 項 c によれば、犯罪者に対する主な刑罰として社会内刑(community sentences)が規定されている。

2.ベトナムにおける社会刑の適用に関する規則(仮訳)

(1)社会内刑の適用:

①軽度の犯罪を犯した者、または本法で定義する重大な犯罪を犯し、安定した職業や定住の地を有し、社会から隔離される必要のない者には、6 か月から 3 年の社会内刑が科されるものとする。

②有罪判決者が一時拘禁されている場合、一時拘禁の期間は社会内刑の期間から差し引かれるものとする。つまり、一時拘留の 1 日は社会内刑の 3 日と等しい (=) 。

③地域社会への刑を言い渡された者は、その者が勤務する組織や機関、あるいはその者が居住するコミューンの人民委員会によって監督され、教育を受けるものとする。

④受刑者の家族は、そのような機関や組織、あるいはコミューンの人民委員会と協力して受刑者の監督と教育を行う責任がある。

(2) 受刑者の義務:

①刑に服している間、受刑者は社会内刑に関する規定に従って一定の義務を履行しなければならず、収入の一部(5% - 20%)が毎月国家予算に支払われることになる。

②特別な場合には、裁判所は所得控除を要求せず、その理由を判決で明示する場合がある。

③ 兵役中の受刑者の収入は所得控除されない。

④-社会内刑を言い渡された者が失業しているか、服役中に職を失った場合、その人は社会内刑の期間中、地域社会に奉仕する仕事をしなければならない。

⑤コミュニティサービスの継続時間は、1 日あたり 4 時間を超えてはならず、1 週間あたり 5 日を超えてはならない。

(3)この措置は、妊娠中の女性、生後6か月未満の子供を育てている女性、高齢者や虚弱な人、致命的な病気を患っている人、重度の障害や極度の重度の障害を持つ者には適用されない。

(4)社会内刑を宣告された者は、2019 年刑事裁判執行法に定められた義務を履行しなければならない。

(平成2015年刑法第36条による)

したがって、軽度の犯罪、重大な犯罪の場合、安定した職場や明確な住居がある場合、犯罪者を社会から隔離する必要がないとみなされる場合、ベトナムでは6か月から3年の社会内刑が適用される。

(筆者注9)東南アジアの国で新型コロナウイルスに関するネット上のコメントが急速に広がるなか、ベトナムでは2020年4月14日、ソーシャルメディア上での「フェイクニュース」やデマの流布に対する罰金を導入する新たな法令が発効した。
2020年1月にベトナムで最初の新型コロナウイルス感染者が検出され、保健省はこれまでに267人の感染者、死亡者はいないと報告しているが、この数字は他のアジア諸国で見られる数字を大きく下回っている。
地元当局はすでに、既存の法規定に基づき、ドナルド・トランプ米大統領が広めた用語を使ってウイルスに関する「フェイクニュース」と称する内容を投稿した数百人に罰金を科している。 しかし、2月に起草された新しい政令は、「フェイクニュース」を特に対象としていない2013年の政令に取って代わるものである、と新ガイドラインは述べている。
新政令によるとソーシャルメディアを利用して虚偽、虚偽、歪曲、または中傷的な情報を共有した者には、ベトナムの基本給約3~6か月分に相当する1,000万ドン(約6万円)~2,000万ドン(約12万円)の罰金が科せられるという。(ロイター通信記事を仮訳)

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ベトナムの新サイバーセキュリティ法や施行令等に見る内容面からみた新たな課題

2019-03-20 14:00:23 | サイバー犯罪と立法

Last Updated : April 24,024

 過去にさかのぼることになるが、筆者は最近、昨年2018年11月15日付けの米国のローファームHogan Lovells LLPのブログ「更新情報:ベトナムの新サイバーセキュリティ法」を読んだ。

 筆者自身、ベトナム法は全くの素人であるが、社会主義国家でありかつてサイバー・セキュリティの後進国といわれるベトナムのサイバー立法の中身と同国に進出を行っている海外のプロバイダー等テクノロジー企業にとってい如何なる影響があるのかなど、気になる点も多いことから、あえてその仮訳や追加的解説試みた次第である。

 また、筆者なりにより立法措置や法解釈面からの詳しいレポートを探したところ、2018年7月30日付けのベトナム・ビジネス法サイトの解説記事「Vietnam’s New Cybersecurity Law 2018」を見出した。さらに2022年4月のData Guidanceの解説等である。

 今回のブログは、まず(1)Vietnam’s New Cybersecurity Law 2018」の概要・ポイントを仮訳したのち、(2)Hogan Loells LLPのブログ(Vietnam’s New Cybersecurity Law)を仮訳し、(3)Data Guidanceの”Vietnam 

cybersecurity”の概要の仮訳最後に(4)新サイバー法に関する問題点につき広く関係メディアにリンクを広く張った解説記事を紹介する。

 なお、(1)、(2)の内容はかなり重複がみられる点があるが、あえてそのまま掲載した。後日、あらためて整理したい。また、ベトナムの所管国家機関や執筆者の写真は筆者の責任でリンクを張った。もうベトナムのサイバー規制法を理解するうえで重要なことは中国のサイバー規制法の正確な理解である。(筆者注0)

 最後に、今回紹介した解説記事を正確に読むには「改正サイバー・セキュリティ法」の全文および「施行令草案」等の全文とを関連付けた解説を併読する必要があることは否めない。後日、改めて投稿したい。

1.「Vietnam’s New Cybersecurity Law 2018」の概要とポイント

 以下、全文を仮訳するが原文(英語版)はかなり英米法に熟知した筆者(Nguyen Bich Ngoc)(筆者注1)によるもので大変読みやすいし、かつ法律にかかる問題指摘の視点も時宜を得ている。(なお、筆者の判断と責任でベトナムの関係法令等のリンクを張った)

 Nguyen Bich Ngoc氏

 2019年1月1日からベトナムで新しいサイバーセキュリティに関する法律(Law on Cybersecurity (Luật an ninh mạng)(以下、「CSL 2018」という)が施行される。ベトナムでは2015年11月19日付けの「サイバー情報安全法(LAW ON CYBER INFORMATION SECURITY)」(2016年7月1日施行)によりある程度規制されているサイバー環境を保護するための措置を提供するだけでなく、CSL 2018には政府機関によるサイバーネットワーク上に掲載または公表される内容を管理するためのさまざまな規定も含まれる。以下は、CSL 2018の中のいくつかの顕著な問題を取り上げる。

 なお、ベトナムの独立系メディア” The Vietnamese Magazine”がCSLの年表(Timeline)をまとめている。参考になろう。

(1) CSL 2018の適用範囲

 CSL 2018は、サイバーセキュリティの保護に関与するすべての機関、団体および個人に適用される。これは、サイバースペースでの活動が、国家の安全、社会の秩序と安全、合法的な権利と団体および個人の利益に害を与えないことの保証として広く定義される。特に、CSL 2018は、GoogleFacebookなど、ベトナムに居住するユーザーをかかえる海外のネットワーク事業者にも適用される。

  CSL 2018は、ITインフラストラクチャ、電気通信、インターネット、コンピュータシステム、データベース、情報処理、保管および管理システムのすべてのネットワークを網羅し、電子商取引、Webサイト、オンライン・フォーラム、ソーシャル・ネットワーキングとブログなどのサイバースペースおよびインターネットユーザーにサービスを提供するあらゆる企業の活動を規制する。

(2) 情報システムの運営者( Ch Ch qu quant n h th thngngthôngtin )

 CSL2018は、情報システムの運営者に様々な義務を課す。同法によると、「情報システムの運営者」とは、情報システムに対する直接的な管理権限を有するあらゆる機関、団体または個人を意味する。

(3) 重要な情報システムと非重要な情報システム

  CSL 2018は、情報システムを(i)国家安全保障に不可欠な情報システム(Critical Information Systems )と(ii) Critical Information Systemsに分類されないもの( Non-critical Information Systems )に分類する。

 重要情報システムは、一般に情報主体が、事件、侵入、ハイジャック、または運用管理、歪曲、中断、停止、麻痺、攻撃による破壊にさらされた場合、サイバーセキュリティを著しく危険にさらす情報システムとして定義されている。CSL 2018に基づく重要情報システムの具体的リストは、2017年5月10日付けの首相決定632号(Decision 632 of Pime Minister)(以下、「決定632」という)の下ですでに規定されているものよりも広いと思われる。現在、決定632は、情報通信省(MIC )または官庁が管理者である共産党および政府機関内の電気通信エリアおよび情報ネットワークを対象としている。重要情報システムには、 とりわけ、エネルギー、金融、銀行、電気通信、運輸、天然資源と環境資源、化学、ヘルスケア、文化、報道などの分野の情報システムが含まれる。 おそらく、決定632には、国家安全保障および情報通信省(CƠ QUAN CHỦ QUẢN: BỘ THÔNG TIN VÀ TRUYỀN THÔNG (MIC) )以外の関連省庁の関与にとって重要なより多くの分野が補完される可能性がある。(筆者注2)

  ベトナム情報通信省のHPから抜粋

  一方、重要ではない情報システムは、明確には定義されていないが、民間組織や企業によって管理されている情報システムであるべきである。

 (4) サイバースペースに対する禁止行為

 CSL 2018では、サイバースペースを使用して以下の行為を行うことを禁止している。

 ①国家安全保障、社会秩序および安全に関する法律に違反する目的で、サイバースペース、ITおよび電子メディアを使用すること。

②ベトナム社会主義共和国国家に反対する目的で人々を組織化、活性化、共謀、扇動、賄賂、詐欺またはトリック、コントロールする、訓練または叩き込むこと。

③歴史を歪め、革命的な功績を否定し、国家の団結的まとまりを破壊し、宗教に対する犯罪、性差別または人種差別的行為を行うこと。

 ④ 虚偽の情報を提供し、市民を混乱させ、社会経済活動に害を与え、国家機関や公務を遂行する人々の業務に支障をきたす、あるいは他の機関、団体および個人の合法的権利および利益を侵害すること。

⑤ 売春、社会的な悪、人身売買などの活動を行うこと。すなわち、卑猥な、堕落した、または犯罪的な情報の公開 または人々の優れた伝統や慣習、社会倫理あるいは地域社会の健康を破壊すること。 

⑥ 犯罪を仕掛けるために他の人々を扇動、誘惑、または活性化すること。 

 これらの禁止のリストは例えば、歴史を歪めたり、革命的な達成を拒否したり等、きわめて一般的な意味で曖昧であり、権限を実質的な取締機関の裁量に委ねることになる。

(5) データのローカライゼーションの要件

 ベトナムにおいて国内外の企業が電気通信ネットワークでサービスを提供し、インターネットや付加価値サービスをサイバースペースで収集、分析、処理する「個人情報」、「サービス利用者の関係データ」、「サービス利用者が作成したデータ」は、ベトナム国内に保管されなければならない。さらに、これらの活動を行っている外資系企業は、ベトナムに「駐在員事務所」または「支店」を設立する必要がある。

 現在、多くの外国企業が国境を越えてベトナム内のユーザーにサービスを提供している。これらの要件を遵守するためには、外国企業はおそらく、ベトナムでストレージ機器を設置および維持するためのコストを増加させる必要があろう。

(6) 重要情報システムの監督

 重要情報システムは、所管官庁による評価の対象であり、かつ満足のいくサイバーセキュリティ条件として認定された後にのみ運用に入ることができる。重要情報システムは、定期的またはこの法律に基づいて指定されたイベントの発生時に検査することができる。重要情報システムの運営者は、システムの監督、自動警告のメカニズムの策定およびサイバーセキュリティに対する脅威の警告の受け取りを担当し、それらの状況に対処するための計画を立てる責任がある。

(7) 重要でない情報システムの監督・検査

 国家安全保障を侵害する、または社会秩序および安全に重大な損害を与えるサイバーセキュリティ法の違反がある場合、重要でない情報システムは、サイバーセキュリティ対策本部(task force)によるサイバーセキュリティ検査の対象となる可能性がある。 サイバーセキュリティ対策本部は、検査の少なくとも12時間前に非重要情報システムの管理者に書面による通知を送付した後に、検査を実施することができます。検査の対象となるコンポーネントには、 システム内で保存、処理、転送されたデータおよび国家秘密保護手順にかかるソフトウェア、ハードウェア、デジタル機器などがある。

 しかしながら、CSL2018はCSL2018の違反があると判断するための明確な根拠および手順を定めていない。例えば、CSL2018はサイバースペース内で歴史を歪め、革命的な業績を否定し、国家連帯を破壊し、宗教、性差別または人種差別的行為に対する違反行為を禁ずる。しかし、個々の行為を歴史を歪め、したがってその規定に違反していると判断することは困難であり議論の余地がある。そのため、これらの規定は、サイバースペースでサービスを提供し、サービスの提供中に顧客のデータを保持する企業にとって不確実性を生み出す可能性がある。

 (8) コンテンツの監視

 ベトナムのサイバースペースのサービス・プロバイダーは、サイバースペースでアップロードおよび配信されたコンテンツを監視するため、次にあげる多くの要件を満たす必要がある。

①政府機関、団体および個人のソーシャルネットワーク上のすべてのWebサイト、ポータルまたは専門ページでは、国家に対する宣伝活動を伴う情報の提供、アップロード、送信、暴動の誘発、セキュリティの妨害、治安紊乱、困惑または中傷的な使用および経済管理命令に違反は「禁止されているコンテンツ」として禁止される。

②サイバーセキュリティの管轄当局である情報通信省(MIC)公安省(Bộ Công an)から書面による要求を受け取ったときに、ユーザーのアカウント登録を確認し、ユーザーの情報を提供しなければならない。

ベトナム公安省(Bộ Công an)のHP

③サイバーセキュリティ対策本部または情報通信省からの依頼を受けた24時間以内に情報の共有を禁止し、禁止されているコンテンツを削除し、調査目的で関連するシステム・ログ(nhật ký hệ thống)を記録保管場所に移動する。

④ 禁止されている情報をアップロードした団体や個人へのサービス提供を中止する。

 前述した内容のいくつかは曖昧であるので、ネットワーク管理者が禁止されたコンテンツを決定し、フィルタリングすることは非常に困難で費用がかかる可能性がある。例えば、CSL2018は、次の内容を含むように国家に対して宣伝されている情報を定義している。(i)人々の行政当局に対する信頼を歪めたり、中傷したりする。(ii)心理的戦争を開始し、侵略的な戦争を起こし、民族、宗教およびすべての国の人々の間で分裂または憎悪を引き起こす。(iii)人々、国旗、国章、国歌、偉人、指導者、有名人、または国民的英雄を侮辱とあるが、これらの制限を読むとき、ある人は次の点で混同するかもしれない。

① 誰を「偉人」、「指導者」、「有名人」、「国民的英雄」と見なすべきか?

② 「国民的英雄」の達成について異なる観点を持つ新しい公的研究が、「国民的英雄」を侮辱すると見なすことができるかどうか?

 ③ この規制は、行政システムやそのシステムの特定の役人の指導力と統治を批判する人々の権利を奪うことにならないか? 

(9) 法執行

 CSL 2018の法執行を担当する対策本部は、公安省と国防省(Bộ Quốc phòng Việt Nam )の下に任命される。サイバーセキュリティ対策本部は、CSL 2018の下での監視範囲は限られているが、幅広い権限を持っている。 例えば、サイバーセキュリティ対策本部は、情報システムの検査を実施したりユーザー・データを収集したりするために刑事訴訟法に基づく手順に従うことは要求されず、かつ彼らが収集している情報を秘密にし続けることは要求されない。

 CSL 2018の下では、同法に違反した結果は、懲戒処分、行政上または刑事上の責任を問われる可能性がる。 商業法人の場合、CSL 2018の違反に対して刑事責任が適用されるかどうかを検討する際には、そのような違反が「2015年改正刑法」(筆者注3)の下で商業法人に適用される犯罪の範囲に該当するかどうかを判断する必要がある。

(10) 結論

 CSL 2018の要件は、費用を増加させ、法令遵守に対する責任と、サービスプロバイダーにとっての法令遵守と顧客データ保護との間のジレンマをもたらす可能性がある。CSL 2018に基づく多くの要件は、政府のさらなるガイダンスの対象となるでろう。したがって、影響を受ける団体や個人は、この法律を導くため更なる関係機関の文書に従っていく必要がある。 

2.Hogan Loells LLPのブログ(Vietnam’s New Cybersecurity Law)

 以下で仮訳する。なお、いうまでもなく、このブログは公安省のサイバーセキュリティ法の施行令草案の内容も引用している。

 2018612、ベトナムの国民議会は、2019年1月1日に施行されるサイバーセキュリティ法 (Law on Cybersecurity (Luật an ninh mạng);以下、「 サイバーセキュリティ法」という)を可決した。とりわけ、この法律は、ベトナムで事業を行うテクノロジー企業のデータ処理方法を規制するとともに、「禁止」されたコンテンツを投稿するユーザーのインターネット接続を制限するものである。法律の規定が一見して広い範囲で適用されるため、ベトナムのエンド・ユーザーにサービスを提供している外国のハイテク企業は、データのローカライズ義務やベトナム国内での支店、事務所等物理的施設の設置義務化等を懸念している。

 

ベトナム国民議会(Quc hiNational Assembly)のサイト

  ベトナムで一般的であるように、サイバーセキュリティ法は関連当局によって発行される将来の実施ガイダンスを通して提供されるべきさらなる詳細化を目的として非常に広く起草された。導入ガイダンスの以前の草案では当局がサイバーセキュリティ法のすべての条項を推進していたが、2018年10月31日に公開された最新の施行令草案(latest draft implementing decree)は、ある程度、法律の適用範囲の明らかな狭小化に対する懸念を和らげた。しかし、問題は残る。

 以下で、サイバーセキュリティ法の重要な側面と現時点の施行令草案について説明する。 

(1) 1年間の法遵守の猶予期間

  サイバーセキュリティ法は、原則として、電気通信ネットワークまたはインターネットを介したサービスを提供したり、またはベトナムの顧客に付加価値サービスを提供する国内外の会社を対象とする。同法は広く解釈すると、これらのサービスには、ソーシャルネットワーク、検索エンジン、オンライン広告、オンライン放送およびストリーミング(streaming) (筆者注4)EコマースのWebサイトおよびマーケット、インターネット・ベースの音声/テキストサービス(OTTサービス(筆者注5)、クラウドサービス、オンラインゲーム、その他のオンラインアプリケーションが含まれる。

  当初、同法が2019年1月1日に施行されると、そのようなすべてのサービス・プロバイダーはサイバーセキュリティ法を遵守することが義務付けられると予想されていたが、最新の施行令草案では、サービスプロバイダーは公安省からの要求の受領後1年間の猶予期間が明記された。 最終的な施行令が発行されたときに変更がないと仮定すると、これは当局によって明確に指示されるまで、企業がコンプライアンスに向けた措置を講じる必要がないことを意味する。これは、法律の適用範囲の広さに関する一般的な懸念を軽減するだけでなく、より具体的には、遵守期限が迫っている2019年1月1日の期限を守ることができない企業に安心感を与える。

(2) 個人データのローカライズされた保存と保持義務

 サイバーセキュリティ法の対象となるオンラインサービス・プロバイダーは、法的に定められた期間内は、ベトナムのエンドユーザーの個人データをベトナム国内に保管し、要求に応じてそのようなデータをベトナム政府当局に引き渡すことが求めらる。 この文脈における個人データには、①名前、②生年月日、③出生住所、④IDカード番号、⑤住所、⑥電話番号などの個人を特定できる個人情報だけでなく、⑦役職、⑧健康状態、⑨医療記録、⑩バイオメトリクス(筆者注6)などのものも含まれる。ユーザによって作成されたデータ(たとえばアップロードされた情報およびデバイスからの同期または入力されたデータ)およびユーザの関係に関するデータ(たとえばユーザー個人が接続または対話する友人およびグループ)もデータ・ローカライゼーション要件の対象となる。

 法律が定めるデータ保持期間は、保持するデータの種類によって異なる。サービスプロバイダーが対象サービスを提供し続ける限り、個人データはベトナム国内に保存されなければならないが、ユーザーによって作成されたデータおよびユーザーの関係に関するデータは少なくとも36ヶ月間保存されなければならない。

2018.11.28 Draft Cybersecurity Decree issued in Vietnam から一部抜粋のうえ筆者が仮訳した。なお、同ブログはベトナムの弁護士Yến Vũ(イエン・ヴオー)氏によるものである

Yến Vũ 氏

(3) 当局によるコンテンツの管理と検閲問題

 サイバーセキュリティ法は、情報通信省または公安省からの要求を受けてから24時間以内に、オンラインサービス・プロバイダがユーザーの投稿を監督し、政府によって「禁止」されているコンテンツを削除することを要求している。「禁止されるコンテンツ」には、ベトナム社会主義共和国に反対する、またはそうでなければ害を及ぼす情報が含まれる。 例えば、理論的には政府、共産党あるいはそれぞれのメンバーまたは役員に対して行われた批判的または反対意見を含む「中傷的宣伝」は禁止される。また、 政治的または社会経済的な活動や反国家活動を奨励すると見なされる内容も、同様にサイバーセキュリティ法に違反する。

 オンラインサービス・プロバイダーが、禁止されたコンテンツを投稿することについてユーザにフラグを立てる場合、そのようなユーザへのインターネット接続の提供を停止し、またそのユーザをその電気通信ネットワークから本質的にブロックしなければならない。 関係当局から要求された場合、プロバイダはユーザ情報を報告して引き渡すことを強制されることさえある。そのため、新しい法律を遵守するとするためには、企業のユーザーのプライバシー保護に関する自社の利用規約(および場合によっては他の司法管轄)に違反することが必要となり、オンラインサービス・プロバイダーはサイバーセキュリティを遵守する方法を選択でき、これにより利用者の個人情報を保護する。

(4) 海外のサービス・プロバイダーの支店または駐在員事務所の設立の条件

 サイバーセキュリティ法は表面的にはすべての海外のサービス・プロバイダーにベトナム国内での支店または駐在員事務所の開設を要求しているが、施行令草案は多くの基準を守ることにつき、ありがたいことにその範囲を狭めた。海外のサービス・プロバイダーが現地での駐在員事務所や支店の設置することを要求される前に法律の大部分に違反するかあるいは当局との協調に失敗した時の条件に関する設置基準を定めている。

 具体的には、法令の下では、とりわけ、(i)ユーザーがサイバー攻撃、サイバー犯罪、または国家の安全と公の秩序を乱すその他の行為を行うことを許可する場合、および(ⅱ)サイバーセキュリティポリシングの違反、ユーザーの詳細な個人情報の認証の失敗、ユーザーの個人情報の機密保持の失敗、関連当局へのユーザー情報の提供、またはタイムリーな違法コンテンツの削除に失敗するなど、サイバーセキュリティ法に違反した場合に限り、海外のプロバイダーはベトナム国内に現地での支店や駐在員事務所を設立する必要がある。

 この施行令草案では、どの海外サービス・プロバイダーが現地の駐在員事務所等の設置要件の対象となるかを特定する責任を公安省(Bộ Công an)に割り当てている。この基準が広い解釈に開放されていることを考えると、同省は、特定の海外のサービスプロバイダーがベトナムに現地での駐在員事務所等を設置する必要があるかどうかの事実上の仲裁人となるであろう。したがって、ベトナムで認められている活動のいずれかに従事している海外の会社は、ある時点でこの要件に巻き込まれる可能性がある。それは確実にそのようなすべての会社が法の施行日(2019年1月1日)から自動的にカバーされるという初期の懸念をへらす改善内容といえる。

(5) サイバーセキュリティ法の不遵守に対する潜在的な罰則内容

 サイバーセキュリティ法を遵守しなかった場合の罰則内容はまだ発表されていないが、当局者は、違反即のサービスの禁止はありそうもないと指摘している。しかし、ベトナム国内企業は以前、当局から反国家的な資料を宣伝すると思われるサイトでの広告掲載を一時停止するよう圧力をかけられており、新しい法律は当局がそのような取り組みを行うためのさらなる基盤を提供することになると考えられている。

(6) 結論

 サイバーセキュリティ法の具体的施行が続いているので、ベトナム国内の顧客にオンラインサービスを提供している会社は間違いなく注目しているであろう。当面の間、懸念は残るものの、当局がサイバーセキュリティ法の骨を荒廃させるために当局が傾いているように見える方向は、少なくとも、海外の技術者が主張するより厄介な条項から後退しているように思われ、特に企業はそう懸念している。

 

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(筆者注0)筆者がこれまで行った中国のサイバーセキュリティ法や情報保護法に関する立法内容につき一覧をあげる。

(1)「中国のサイバーセキュリティ法の施行と重大な情報インフラ等の保護に関する規制草案等の公表と今後の課題」(その1)、(その2)(その3)

(その4完)

(2)「中国のサイバーセキュリティ監視機関が国内人気オンラインサービス10社のプライバシーポリシーの監査計画を発表」(その1)(その2)

(その3) (その4完)

(3)「中華人民共和国が『データ安全保障法(データセキュリティ法):中华人民共和国数据安全法)』を可決」

(4)「中华人民共和国最高人民法院が民間の顔スキャン技術の使用と身元とプライバシーの保護に関するガイドラインを定めた『司法解釈文書』を発出」

(5)「中国、全国人民代表大会常任委員会で個人情報保護法(中华人民共和国个人信息保护法:PIPL)を可決」(その1)(その2)(その3完)

(6)「中国が取り組んでいる国家安全法やサイバー強化法の重要性を最新、正確な情報入手および平易に理解する方法」

(7)「中国の国境を越えた個人データ転送メカニズム措置の最終版公表と事業者の対応にむけた実際のステップ内容」

(筆者注1) 筆者は2024年4月現在、ベトナムのローファーム(Venture North Law (VNLaw))のパートナ―弁護士である。プロファイルを読むとハノイ大学の経済・法学士、貿易大学の輸出技術認定を受けており、これまで企業・M&A、土地・不動産ビジネス、商業・法令遵守、証券規制、環境・雇用等多くのビジネス案件を扱ってきている。

(筆者注2) ベトナムの電子政府計画に係る法整備の概要は次のサイトが参考になる。

2017年9月開催された3rd Asia-Pacific Regional Forums on Smart Cities

and e-Government 2017におけるベトナム情報通信省のスライド「E-GOVERNMENT POLICY OF VIETNAM」

(筆者注3) 2015年11月27に国民議会で可決された改正刑法(No. 100/2015/QH13)の全文(英語版)および概要解説を参照されたい。なお、同法は2018年1月1日施行されている。なお、わが国でも国際協力機構(JICA)のベトナム改正刑法の全文訳が公表されている。

(筆者注4)streaming”とは、インターネット上で動画や音声などのコンテンツをダウンロードしながら逐次再生すること。Windows Media PlayerやQuickTime、RealPlayerなどのストリーミング・ソフトを使って受信する。映像や音楽データはデータ容量が大きいため、すべてのデータをダウンロードしてから再生する従来の方式では、受信が完了するまでに時間やネットワーク負荷がかかる。ストリーミングでは、サーバーから映像や音声データが少しずつ配信され、受信した側で同時に再生する。ネットワークへの負担がなく、ユーザーはダウンロードを待つことなく、すぐに映像や音声を視聴できる。(ASCII.jpデジタル用語辞典から引用)

(筆者注5) OTTとは、通信会社やISP(インターネットサービスプロバイダ)とは無関係にインターネット上で提供される、通信容量を大量に使用するサービス。また、そのようなサービスを提供する事業者。パソコンやスマートフォンからインターネットを通じて誰でもオープンに利用できる動画や音声の配信サービス、音声通話、ビデオ通話サービスなどがこれに当たる。(IT用語辞典から引用)

(筆者注6) ベトナムにおけるバイオメトリクとは具体的に何を指すのであろうか。Hogan Lovells LLPのブログは言及していない。このため筆者は別途、公安省サイトのガイダンス資料で見たが、なお詳しい定義は記載されていなかった。

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FTCがCOPPA違反訴訟でこれまでの最大額の金銭的和解を獲得

2019-03-04 12:45:34 | 個人情報保護法制

 2019年2月27日に、米国連邦取引委員会(FTC)(筆者注1) は 、「1998年児童オンライン・プライバシー保護法(CHILDREN'S ONLINE PRIVACY PROTECTION ACT, 15 U.S.C. §§6501-6506:COPPA)」(筆者注2) に基づき、570万ドル(約6億2,700万円)のこれまでにない高額の記録的な民事罰に関し、リップシンク(lip-syncing) (筆者注3)・ビデオ・ソーシャル・ネットワーキング・アプリ(TikTok)の運営会社(北京字節跳動科技有限公司(ByteDance))と和解したと発表した。

 このFTCのCOPPA訴訟、和解は、罰金額の大きさだけでなく、別途、民主党系委員であるレベッカ・スローター氏(Rebecca Slaughter)氏とロヒット・チョプラ(Rohit Chopra)氏の2人の民主党推薦委員による共同声明(JOINT STATEMENT OF COMMISSIONER ROHIT CHOPRA AND COMMISSIONER REBECCA KELLY SLAUGHTER)が、将来のFTCの法執行は、FTC違反企業の執行役員や部長等の個人に対しても、消費者保護法違反につき責任を適用すべきであると述べた点も注目されている。

 Rebecca Slaughter氏(FTCサイトから引用)

 Rohit Chopra氏(FTCサイトから引用)

 このニュースわが国でもCNET、 AFP等が簡単に紹介しているが、リンク先が間違っていたり(筆者注4)、説明内容が不十分(筆者注5)である。また、FTC自身のリリース文もわが国の読者にとって決して十分な内容とは思えない。

 特に、13歳以下の子供のプライバシー保護を厳しくチェックするCOPPAやその運用ガイダンスを定めるFTCのCOPPA規則(CHILDREN'S ONLINE PRIVACY PROTECTION RULE)(筆者注6)まで立ち入って解説を正確に理解することは、わが国の親であれば必須の責務であると考えるのは、筆者だけであるまい。

 今回のブログは、これらの課題につき比較的丁寧に説明しているHogan Lovells LLPのブログをベースに仮訳し、またFTCのリリース内容等に基づき筆者なりに補足説明を加えた。

 なお、このような米国の監督機関の強化の動向を見る一方で、筆者は2月28日にわが国の内閣府が発表した「平成30年度青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)(平成31年2月)」の内容を読んであらためての重大な問題傾向を認識した。インターネットの使用時間の長さだけでなく、最後に取り上げるがスマホ等インターネットの利用内容の上位を占めるのはいずれの年齢層でも、「動画視聴」、「音楽視聴」、「ゲーム」などという点である。今回取り上げる米国の法執行機関、人権擁護団体の具体的な活動内容を正確に理解すべきと考え【補足】を追加した。

1.COPPAの基本的な保護内容

 COPPAは、13歳未満の子供から個人情報を収集するという13歳未満の子供を対象としたWebサイトおよびオンラインサービスの運営者ならびに13歳未満の子供から個人情報を収集するという実際の知識を持つ運営者に適用される。今回告発された問題の動画アプリである”TikTok”としても知られている”Musical.ly” (筆者注7)では、ユーザーはリップシンクのビデオを作成して公開することができる。 ユーザーは、アカウントを「フォロー」したり、ビデオにコメントを付けたり、直接メッセージを送信したりすることで互いに対話できる。 

2.Musical.lyアプリの運用の実態に基づくCOPPAの適用問題

(1) FTCによると、Musical.lyは、ユーザーの「姓名」、「オンライン連絡先情報」、「短い略歴(プロファイル)」、「ユーザー間の直接メッセージの内容」、「ユーザーの画像や音声を含む写真やビデオ」など、ユーザーから個人情報を収集した。 ユーザーのプロファイルはデフォルト(初期設定)で「公開」に設定されている。 ユーザーがデフォルト設定を「公開」から「非公開」に変更しても、ユーザーのプロフィール写真と略歴は他のユーザーには表示されたままとなる。

 また、 ユーザーは、他のユーザーから直接メッセージを受け取ることもできる。さらに、FTCは、しばらくの間、アプリがユーザーのデバイスの位置情報を収集して、ユーザーが半径50マイル以内の他のユーザーのリストを表示できるようにしていたと主張した。

(2) FTC は、訴状で以下の点で、同アプリの内容はCOPPAの適用対象となるものであり、管理されていると主張した。 

① Musical.lyは13歳未満の子供を直接オーディエンスとしてターゲットにした。 アプリの性質には子供向けのアクティビティ(短いリップシンクのビデオの作成)が含まれるため、アプリの音楽オプションには「ディズニー」や「学校」などの子供向けのカテゴリがある。お互いに絵文字 、そしてユーザーの大部分が13歳未満であることが判明しており、FTCは同アプリが「 13歳未満の子供たちに向けられたオンラインサービス 」であると主張した。

② Musical.lyは、アプリが13歳未満の子供から情報を収集していることを実際に知っていた。Musical.lyは、13歳未満の子供たちが知らないうちにアカウントを作成したという親からの苦情を数千件受信したとされている。同アプリは2017年に新規ユーザーの年齢選別を開始したが、既存のユーザーにはそうではなかった。さらに、FTCは、デフォルト設定が公開から非公開に変更された場合でも、ユーザーベースの年齢はすべてのユーザーに表示されるプロフィール写真および経歴から容易に明らかであると主張した。  FTCの苦情は、アプリを介して「子供と連絡を取ろうとしている大人の多くの公開レポート」を参照していた。 

(3) FTCは、Musical.ly次の点で具体的にCOPPAに違反していると主張した。

① サービス上の目立つ通知や、子供の個人情報に関するアプリの慣行についての親への直接の通知なしに、13歳未満の子供から情報を収集した。 

② 13歳未満の子供の個人情報を収集または使用する前に、検証可能な保護者の同意を得ていない。 

③ 親から直接要請された場合、そのような子供の個人情報を削除しなかった。

④ 収集された目的を達成するために合理的に必要な期間を超えて、子供の個人情報を保持した。

⑤ 13歳未満の子供によるアカウントの作成に関する親の苦情に応えて、Musical.lyはアカウントを無効にしたとされるが、アカウントに関連するコンテンツを削除しなかった。 

3.Musical.lyの罰金外の同意内容

 570万ドルの罰金に加えて、Musical.lyは、13歳未満の子供のユーザーアカウントに関連するすべての個人情報を、所持、管理または管理下で破壊するか、または検証可能な保護者の同意を得ることに同意した。(筆者注8) 

4.委員2名による企業の役員や部長など個人責任追及に関する共同声明の内容

 共同声明の中で 、コミッショナーのレベッカ・スローター氏とロヒット・チョプラ氏は、FTCの調査中に「運営する大企業の個人はしばしば精査を避けてきた」と述べた。 食肉処理場とチョプラは変更を求め、欧州委員会に「執行役員と役員の役割を明らかにすることを優先すること」を求め、責任ある個人に説明責任を持たせるよう求めた。(3人の共和党系委員はいずれもこの声明に参加しなかった)。

 特に、この共同声明は、プライバシーの侵害およびその他の消費者保護法に基づく組織的責任だけでなく、役員等個人の責任理論を追求する少なくとも一部の消費者保護当局における取り締まり強化と一致している。

5.連邦司法省との連携と同意判決の意義

 FTCによると、連邦司法省はFTCに代わりカリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所(U.S. District Court for the Central District of California.)に訴状を提出し、「同意判決(consent decree)」を提案した。すなわち、FTCはは、法律が違反された、または違反されていると「信じる理由」があり、訴訟が公益のためであるとFTCに告発されたとき、訴状の提出を承認します。この同意判決は、地方裁判所の裁判官によって承認され署名された時点で法的効力を持つ。

6.FTCに協力した消費者保護団体

 FTCシモンズ委員長は、リリースの最後でこの問題に注意を向ける手助けをしてくれた米国のプライバシー擁護団体Better Business BureauのChildren's Advertising Review Unit(CARU)に感謝すると述べている。

 

補足】2019.3.4 追加

 2月28日内閣府は2月28日、青少年のインターネット利用環境に関する2018年度の実態調査結果を発表した。メディアの記事を読むと、平日1日当たりの小学生の平均利用時間は前年度より21分増えて1時間58分となった。中学生も15延び2時間44分、高校生は3分増の3時間37分というような記事が目についた。

  しかし、筆者がもっとも懸念した点は前文で触れたとおり、児童が1人で親の監視下でない状態で動画、ゲーム等を行い、かつその内容につき親は99%無関心または無理解という点である。

 子供は将来の大人予備軍であり、プライバシ―権の正確な理解がないまま大人になること自体大きな社会的問題であると考える。その意味でこれらの問題につき正面から取り上げ、啓蒙団体、コンサルテイング機関の重要性が増すといえる。(筆者注9)

2018.2.28 内閣府「平成30年度青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)(平成31年2月)」から抜粋。

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(筆者注1) FTCの組織概要を記しておく。委員は5名で大統領の指名に基づき連邦議会上院で承認される。任期は7年で同一政党から2名以上が推薦され、現委員は2018年5月に選任されJoseph J. Simons委員長をはじめ共和党から3名、民主党から2名が選ばれている。最新の組織図を参照されたい。

(筆者注2) FTCは児童のプライバシーに関しては、1998年児童オンライン・プライバシー保護法(Children’s Online Privacy Protection Act of 1998, COPPA)に基づく執行権限を担っている。COPPAは、13歳未満の児童向けのウェブ・サイトやオンライン・サービスの管理者と、13歳未満の児童から個人情報を収集していることを現実に認識しているウェブ・サイトやオンライン・サービスの管理者に対して、児童の個人情報を収集、利用、開示する際に、ウェブ・サイト上での通知を行い、親から検証可能な同意(verifiable parental  consent)を得ることを義務付けている。また、親による児童の情報へのアクセス権と、以後の利用を拒否する機会等が認められている。

 FTCは、この法律を実施するための児童オンライン・プライバシー規則(Children’s Online Privacy Protection Rule)の策定権限があり、2000年4月21日に規則を施行している(小向太郎「米国FTCにおける消費者プライバシー政策の動向 」から一部抜粋)

(筆者注3)リップシンク((lip sync) 口パク(くちパク)とは、音声と同期して口元を動かすことである。実際に声を出さずに口だけパクパクと動かす様から名付けられた。1980年代からラジオ、テレビなどで「口パク」と蔑称で呼ばれることが増え始め、現在では放送業界の各所で受け入れられている技法のひとつである。少なくとも、デジタル時代に録音メディアが移行してから顕在化した技法である。(Wikipediaから一部抜粋 )

(筆者注4) Cnet japan記事はFTCサイトのリンクを行っているが、FTCのリリース文にリンクすべきところを2人の委員の共同声明にリンクさせている。修正されたい。

 (筆者注5) AFP記事は、COPPAの対象が「未成年」であると書いているが、正しくは「13歳未満」であり、解説記事としては不十分である。

(筆者注6) FTCのCOPPA規則の詳細については筆者ブログを参照されたい。

(筆者注7) FTCのリリースによると 2014年以来、世界中で2億人以上のユーザーがMusical.lyアプリをダウンロードしているが、米国では6,500万のアカウントが登録されている。

(筆者注8)  FTCのリリースによると罰金の支払いに加えて、和解同意では、アプリの運営者が今後のCOPPAに準拠し、13歳未満の子供が作成したすべての動画をオフラインにすることも同意した。

(筆者注9) 児童のプライバシー保護問題を具体的に取り上げ平易に情報提供したり、消費者意識向上、苦情等の受付を行っている海外の団体、機関、ネットワークを以下あげる。なお、各機関や団体の任務の詳細については別途取りまとめる。

① INHOPE(International Association of Internet Hotlines - INHOPE)

② Better Internet for Kids

③ INSAFE(Insafe network of Safer Internet Centres

④ オーストラリア: FOSI

⑤ 英国:London School of Economics and Political Science:EU Kids Online

⑥ フランス: Internet Sans Crainte(インタ―ネットは怖くない) 

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Copyright © 2006-2019 芦田勝(Masaru Ashida)All rights reserved. You may display or print the content for your use only. You may not sell publish, distribute, re-transmit or otherwise provide access to the content of this document.

 

 

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