Civilian Watchdog in Japan-IT security and privacy law-

情報セキュリティ、消費者保護、電子政府の課題等社会施策を国際的視野に基づき提言。米国等海外在住日本人に好評。

米国FCCがVoIP等に対する通信傍受支援法(CALEA)の適用強化第2次命令を発出

2006-05-27 16:31:58 | 個人情報保護法制

Last Updated : April 17,2015

 米国憲法の重要課題の1つである「通信の秘密」(憲法第修正第1:表現の自由や修正第4:プライバシーの保護が明文上の根拠)は、「1994年通信傍受支援法(Communications Assistance for Law Enforcement Act:CALEA)」 (筆者注1) (筆者注2)により多くの関係者の議論を呼んでいるが、連邦通信委員会(FCC)は5月3日にブロードバンドサービス・プロバイダーおよびVoIPサービス・プロバイダーに対する警察等法執行機関への協力・支援に関する規則の強化を図る報告書ならびに命令(Order)を採択、公布した。 (筆者注3)
 FCCは2005年9月23日に同趣旨の規則策定についての第1回目の報告書・命令案についてパブコメに付しており、その上で修正されたものである。

 この問題について、CDT等の全米規模の人権保護団体、プロバイダ団体および教育機関はCALEAはあくまで公衆電話交換網における通信傍受の規制法であり、VoIP等新たなインターネット通信に適用することに反対している。 (筆者注4)


 また、これら団体や教育機関は2005年10月25日にコロンビア地区控訴裁判所に対し、FCCの規則制定権違反を理由に提訴しており、なお裁判所の判断が出ていない段階でFCCの第2次命令が出された点を問題視している。 (筆者注5)


 これらの動きについて、わが国では2005年9月の段階で一部メデイアで簡単に紹介されているが、今回の動きはほとんど報じられていないようであり、今後のわが国の法制化の議論の前提としてここであらためて整理しておく。

1.新規則の適用遵守期限
 2006年5月12日から90日以内。

2.適用対象事業者
ブロードバンド事業者、VoIP事業者のほかすでにCALEAの適用通信事業者も含まれる。

3.CALEA第103条に定める特別な義務の内容
(1)通信の傍受(call intercept)
(2)通信を特定する情報へのアクセス
(3)傍受した通話および通信に関する特定情報の政府への引渡し
(4)通話加入者への最低限の干渉とプライバシーへの配慮

4.相互接続VoIP事業者の定義・要件
(1)リアルタイムでの双方向での音声通話が可能。
(2)ブロードバンド接続を必要とすること。
(3)顧客のIP互換性機器を利用の要件とすること。
(4)加入者が公衆電話交換網で呼出しを受けまたは通話を開始することを許可するもの。

5.業界自主基準の採用
 CALEAの適用をすでに受けている事業者に関して業界が定めた法的な最小限の開示基準について、法的に要求されるものではないが、「セーフハーバー」とはなりうる。
 FCCの新規則は、このセーフハーバーについてVoIPにも広げ技術基準とその要件は業界自主基準作成団体に残したとしている。

6.新規則下での法遵守のための「信頼できる第三者(trusted third party:TTP)」の利用
 TTPとは、コンピュータ処理機関(service bureau)として、通信事業者の機器にアクセスできたり事業者の傍受手順をコントロールできる者を言うが、そのプロセスは認められるがCALEA遵守の必要条件ではない。VoIPプロバイダーの法遵守責任は依然残る。

7.CALEA遵守のためのシステム・セキュリティ計画の策定義務
 新規則では相互接続VoIPプロバイダはFCCに対して5月12日から90日以内にシステムセキュリティ計画を開発、提出することが定められている。同計画には、企業の遵守方針と法律が定める要件すなわち、①適切な記録の保持、②報告の要件に合致するという観点から通信等の傍受を行うことおよび通信の特定情報が含まれる。
 また、これら方針、手順、記録の保持および報告についての責任者たる上級役員の任命も求められている。

8.FCCの規則違反への処罰
 FCCは既存の通信事業者と同様にVoIPプロバイダに対する独立した監督権限(セキュリティ計画を提出しない通信事業者に対して「罰金刑」を科すことや業務停止命令(cease and desist order)を下すことが出来る。 

9.本件に関する連邦議会調査局(CRS)の議会宛報告 

 CRSは 2007年6月8日報告「Order Code RL30677  Digital Surveillance: The Communications Assistance  for Law Enforcement Act」の改定版を公表している。 

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(筆者注1) 米国における連邦の法体系中で基本的に理解すべき点は「通信傍受(合法・非合法がある)」と「盗聴」の差異である。後者が憲法上禁止されていることは間違いないが、筆者注2)の通り一連の立法においてその権利がなし崩し的に弱められており、米国の人権保護団体であるCDT(Center for Democracy & Technology)、EPIC(Electronic Privacy Information Center)、EFF(Electronic Frontier Foundation )等がロビー活動などを積極的に行っている背景はそれらの点にある。
 また、合法的通信傍受には、①犯罪捜査目的(合衆国法律集(U.S.C)第18編第119章(2510条~2522条)、同編121章(2701条~2712条))、②対外的な国家安全保障・諜報活動(intelligence)に区分され、法律的な手続きとしては、①傍受命令(interception order:裁判所による通信傍受許可)、②捜査令状(search order:建物や帳簿など有形物の押収の許可)、③ペン・レジスター(pen register)やトラップ・トレース・デバイス(trap-and –trace device:特定の通信デバイスにかかってきた・かけた電話番号の収集、ただし通信内容の傍受は不可)、④召喚令状(subpoena:記録内容を有形なかたちへの作成を求めるもので例えばサーバーの通信記録を印刷して証拠にする場合など)がある。
(本解説は、政策・慶應義塾大学メディア研究科助教授兼総合政策学部助教授の土屋大洋氏の論文を参考にした)

(筆者注2) 1968年通信傍受法(Wiretap Act)」 :捜査機関が行う通信傍受において犯罪の存在を信じるに足りる相当な理由を裁判官に示した上で傍受命令を得ることを定めているが、実態は裁判官が疑義をはさむことはまれである。
「1986年電気通信プライバシー法(Electronic Communication Privacy Act)」 :前記「通信傍受法」の改正法でパソコン通信など電気通信にまで拡大したもの。
 なお、対対外的な謀報活動に関しては「1978年国外諜報捜査法(Foreign Intelligence Surveillance Act)」がある。同法は外国や外国勢力の関係者に対しては国内と異なり「信じるに足りる相当な理由」がなくても傍受が認められるもので、また傍受命令申請等も非公開なため濫用問題が指摘されている。

(筆者注3) FCCはHPにおいて本命令に関する解説を行っている。

(筆者注4) CDTが1998年以降CALEA問題に取り組んできた詳細な経緯解説 やFBIによる盗聴取り組みはサイバーセキュリティの脆弱性・無能化につながるとする関係団体の2013年の意見書「Leading Security Experts Say FBI Wiretapping Proposal Would Undermine Cybersecurity 」

 (筆者注5) 同裁判所への申立人代表は、CDT、EFF等の団体のほかCOMPTEL(電気通信事業者、インターネット接続サービス業者、無線通信事業者等からなる団体で約25年間にわたり議会やホワイトハウス、FCCなどへの働きかけを行っている。)である。
裁判所への申立文のURLはCDTサイトでは不明。

〔参照URL〕
http://ipcommunications.tmcnet.com/hot-topics/cap/articles/1274-fcc-sets-calea-deadlines-voip-providers.htm

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EUの電子政府強化に向けた2010年までの行動計画(i2010)が採択・公表される

2006-05-22 16:39:37 | 電子政府(eGovernment)



 去る4月25日に欧州委員会が採択した「電子政府行動計画(EU i2010 eGovernment Action Plan)」の概要によると25カ国における行政の効率化(政府機能の近代化)により税収の削減効果は毎年数千億ユーロに達すると見込まれている。

 情報・通信機能の近代化・効率化がキーとなるのであるが、電子インボイス
(筆者注1)(筆者注2)(筆者注3)による公共調達の100%実現により、EU全体で毎年約3,000億ユーロ(約42兆3,000億円 )の経費が浮くと予想しており、すでに加盟国25カ国は2005年マンチェスターで署名を行っている。(筆者注4)

 この署名に基づき、このほど委員会が採択した行動計画は2010年までにすべてのヨーロッパ人が加盟国と提携して明確に利益を理解できるかたちで次の5分野において取り組み目標を達成するというものである


1.いかなる市民も後に残さない:2010年までに性、年齢、国籍、所得ならびに障害の有無に拘らずべての市民がデジタルテレビ、パソコン、携帯電話等広範囲の技術にアクセスできる環境を実現する。

2.効率性の向上:英国の年金プログラムの変革は、公務員の窓口での対面サービスのための時間を50%開放し、その他の業務のための時間的余裕を作り上げた。すべての加盟国は2010年までに「効率性向上における高いレベルの効果」および「行政面の負荷削減」について情報通信技術を使って成し遂げる。

3.電子公共調達(electronic public procurement)の適用:加盟国は2010年までに公的分野のオンライン調達について100%又は少なくとも50%までを実現し、年間400億ユーロの予算節減を可能にする。

4.EU全体にわたる公的サービスへのアクセス可能の実現:加盟国政府はウェブサイトの利用や公的サービスの相互利用における国家電子認証による安全なシステムを確立する点について同意した。この行動計画では2010年までにその実現を見通した。

5.市民の参加権および民主的な決定プロセスの強化:行動計画は、政策決定にあたり国民の効率的政治参加を実現するため、情報通信技術を用いた実験の支援を提案する。

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(筆者注1)「インボイス」は貿易取引において必須とされることから、わが国の専門家(英和辞典、翻訳ソフトも含め)も含め「送り状」と訳すことが一般的である。しかし、これは明らかに誤訳であり、正しくは「請求書」である。すなわち英国の起業者向け(株式会社や個人所業主)政府支援サイトでは顧客向けに「commercial invoice」を発行する場合の内訳項目に関する法的要件を解説しており、また付加価値税(VAT)の登録事業者の場合についても同様に説明している。ちなみにインボイスには次のような種類がある。①commercial invoice(商品の売買時に使用する。商品の明細、支払期日、船積予定、単価、合計等を明記する)、②customs invoice(税関用インボイスで輸出通関時に申告用に使用する)、③proforma invoice(見積書と同じ役目を持つもので、輸入相手国が事前の輸入許可や輸入認可などを義務付けている場合に、輸出車が買い手に同インボイスを事前に送り、輸入国政府の輸入許可を受けるのが目的)、④tax invoice(国内取引で消費税、物品税など中間間接税がかかる場合に使用する)、⑤shipping invoice(船便や航空便の出荷時に貨物代金以外にかかる費用の請求を買い手に行う際に使用する)。
 電子インボイスは、これらのインボイスを従来の紙ベースから電子署名に基づく電子書類をインターネット経由で税関、買い手など送付するとともにファィリングするもので電子商取引化において欠かせないものである。

(筆者注2)付加価値税 (VAT)は、品物やサービスの公的または私的な消費に課される税をいう。流通チェーンや生産のすべての段階で徴収され 、各段階で加えられる価値に基づいて国に支払われるため、「付加価値税」という名前がついている。付加価値税は一般的に、課税対象となる事業者によって支払われなければならないが、各事業者は、原則的に、販売する時に付加価値税を課し、原則的に、購買する時に支払う付加価値税額を差し引く権利がある。結局、この税金は、購入する時に付加価値税を差し引くことのできない「最終消費者」が負担する間接税である。

(筆者注3) EUにおいてVATの請求書に関する加盟国間の規則の統一化と電子化に対応するため、閣僚理事会指令(2001/115/EC)が2004年1月1日付けで発効している。そこでは請求書の発行者や内容が真正であることを保証するため「デジタル署名(電子署名ではない)」又は「EDI(電子データ交換)」の方法が定められている。
http://europa.eu.int/eur-lex/pri/en/oj/dat/2002/l_015/l_01520020117en00240028.pdf

(筆者注4)欧州委員会が公表したEU加盟国における電子政府の経済的効果の例を見ておく。イタリアでは、2003年中にパソコン購入にかかる費用が電子公共調達の導入により平均34%削減し、それまでの間に32億ユーロ(約4,512億円)の経費節減を実現した。またポルトガルでは、電子公共調達により30%の経費削減を実現した。

〔参照URL〕
1.ニュース・リリース:http://europa.eu.int/idabc/en/document/5542/194
2.行動計画の全文:http://ec.europa.eu/information_society/activities/egovernment_research/doc/highlights/egov_action_plan_en.pdf
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豪政府は社会福祉関連のICアクセス・カードの導入のためアドバイザーの入札告示

2006-05-21 17:22:23 | 国民IDカード・認証技術問題

 

 5月11日にオーストラリア連邦政府「社会保障・福祉サービス担当省(The Minister for Human Services(DHS) :の担当大臣ジョー・ホッキー(Joe Hockey))は、10憶オーストラリア・ドル(約830億円)の予算を背景とするスマート・カード・プロジェクト(ICアクセス・カード(Access Card))の中核となる個人・法人の専門アドバイザーを募るため、2つの入札告示(tender notice)を始めた(入札の詳細は5月15日に「Aus Tender」のウェブサイトに掲示されている)。(筆者注1)

Joe Hokey氏

 同プロジェクトの主たる目的は、これから迎える社会的な不安、すなわち高齢化、病気等への対応を持ち、遠隔地管理機能を備えたコミュニティ社会作りである。この点は、欧米先進国における高齢化への取組みの先例として、わが国としても見逃しえない重要なテーマであろう。

1.アクセス・カード・プロジェクトの概要
 (1)現在同国で行われている17の健康保険・社会政策サービス、退役軍人カード(veteran card)および国家保険サービス(Medicare)(筆者注2)にかかるカードサービスをこのシステムに切替え、統合するものである。
(2)このカードの切替え、登録は2008年から2年間にかけて国民を対象に開始され、2010年前半から登録済者のみ具体的なサービスを受けることが出来ることになる。
(3)本カードシステムに伴い経済効果について大手コンサルティング会社であるKPMGは4年以上にわたり10憶9千万豪ドル(約904憶7千万円)の費用がかかる一方で、 10年以上にわたり30憶豪ドルの経費削減が図れるとの予想を行っている。
(4)本プロジェクト推進のため同省内に「アクセス・カード局(Office of Access Card)」がすでに設置されている。

2.アクセス・カードの仕様概要とプライバシー問題 
 DHSの資料では次の点が説明されている。(筆者注3)
   (1)表面にはカードの名義人氏名、写真、裏面は保持者の署名の登録番号が表示される。
 (2) ICチップには、本人の住所、生年月日、子供や扶養家族等は記録される。また本人の選択に基づき、緊急時の連絡先、アレルギーの有無や内容、健康に関する留意事項、持病(chronic illnesss)、免疫情報(immunisation information)や臓器提供者(organ donor status)に関する情報を保存される。
 (3)個人情報管理に関して、政府の公文書によると、アクセスカード・システムの基盤となる登録システムは「Medicare Australia」、「Centrelink」(筆者注4)、「退役軍人省(Department of Veterans Affaires)」は別々なシステムに分かれており、そこにはいかなる機微情報や当該機関の固有情報は保持されないとされている。

3.募集目的
 1つは、スマート・カードによる福祉・健康サービスを提供するためのリーダーとなるアドバイザー募集、2つは、カードの概念構築から実際の交付にいたるまでの間のモニタリングや監査を行うといったアドバイザーの募集である。また、同大臣の説明によると、オーストラリア政府この2つの政府自体から独立性を持ったアドバイザーの役割は、導入戦略全体にわたる問題と監査ならびにシステムの保証であると述べている。さらに、同省はプロジェクト専門の副長官も求めている。

4.募集概要
(1)締め切り:2006年6月9日午後2時
(2)勤務地:キャンベラ
(3)アドバイザー契約に当たり次の条件を要する。
①アクセスカードについて、費用面、実施スケジュールおよび品質ついて必須とされる最善の取組みについてのアドバイス
②商業ベースでアクセスカードを成功裏に適用させるため最適な構成についてのアドバイス
③技術面、既存の関連システムの統合およびビジネス手順に関する最適の取組についてのアドバイス
④必要な機器やサービスの購入に関連する調達や営業ベースの条件についてのアドバイス
⑤システム提供業者の事後的管理に関するアドバイス
⑥外部の利害関係者の意見聴取についての支援アドバイス
⑦プログラム全体にわたる枠組みの管理についてのアドバイス
⑧手順および必要な手段についてのプロジェクト管理
(4)応募方法
ファックス・Emailは不可とし、期限厳守のこと。
(5)顧問契約期間
 全体の契約期間は4年間とし、当初の2年間に加え任意期間2年間とする。
(6)募集に当たっての要件
全要件は入札要件(Request for Tender:RFT)に記載している。

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(筆者注1)https://www.tenders.gov.au/federal/shared/rftdetail.cfm?p_id=2517&p_criteria=AZ3274&p_advert=1
なお、オーストラリアにおける政府事業等への入札要件(Request for Tender)の前提としては、まず政府入札システムへの登録から始まる。登録自体、国籍を問わない。
https://www.tenders.gov.au/federal/shared/register.cfm

(筆者注2) オーストラリアの保健制度は、民間部門と公共部門に分かれており、後者である National Health Service(国家保健サービス)は、政府の Medicare(メディケア)と呼ばれる。メディケアは公立病院での無料の治療、病院以外での医療費の援助などの医療サービスや医療プログラム、医師、専門医、メディケアに参加している眼科医などの開業医による無料の治療、または治療費の援助を提供しており、その財源は所得税を主とする一般税収で賄われる。全医療関連費用の約3分の1は、民間の健康保険を含む、民間部門を通じて支払われている。
メディケアは、医師が処方するほとんどの医薬品の費用についても援助しており、オーストラリアの永住者全員と、査証申請者の一部がメディケアのサービスを利用することができる。
http://www.dfat.gov.au/aib/japanese/health.html
 なお、これらオーストラリアの福祉・移民情報等については非営利組織であるAdult Multicultural Education Services (成人多文化教育サービス) (AMES) は、現在、多文化言語および雇用サービスを専門とするオーストラリア最大のサービス提供事業者であり、政府との契約により支援され、毎年 50,000 人を超える人々への教育、サービスを成功的に提供している。 AMES は、日本語を含む85の異なる母国語を話す131カ国からの移民を援助しており、新しいオーストラリア市民とその家族、海外からの留学生、およびコミュニティへの多岐にわたるサービスの増加と向上のために、組織の財源を再投資している。
http://www.ames.net.au/livingInAustralia.asp?articleZoneID=2125&hContextId=40&lang=ja

(筆者注3) http://www.humanservices.gov.au/idc.htm


(筆者注4) Centrelinkはオーストラリア政府による退職者、求職者、学生、要介護者、寡婦、移民などに対する各種手当て、サービスを提供している。これら手当ての受給について難民、人道的移民永住ビザ保持者などについては待機期間なしに即時に支給される。オーストラリアには、必要と認める人に所得やその他の援助を行う社会的「セーフティネット」の制度がある。1997年以来、社会保険の支払いは「センターリンク」が単独に行っている。この機関は、その他の連邦政府のサービスへの窓口の役目も務めている。
 政府機関と民間の組織が協力して、高齢者、障害者、病人、失業者、先住オーストラリア人、子持ち家庭や、非英語圏からの移民などを支援している。また、さらなる経済的参加や社会参加に意欲的かつ余裕のある人たちに対しては、様々な奨励策も導入している。
 オーストラリアの社会援助制度に対する新しい取り組みは、5つの原則に基づいている。すなわち、①サービスの実施、②経済援助の簡潔化、③財政刺激策と援助の改善、④相互責任および⑤社会協力の育成である。
  なお、これら政府の各省庁のサイトを読んで気が付くと思うが、多国籍・多言語化社会に極めて積極的であり、例えば「外務・貿易省(Department of Foreign and Trade)」のサイトでCentrelinkを見ると、なんと62カ国語で同じ内容が見れる。また、Centrelinkの日本語版を見ると同国内から日本語で福祉制度などについて照会する場合、通話料(公衆電話や形態電話の場合を除く )は一律25セント(約21円)と記されている。
http://www.centrelink.gov.au/internet/internet.nsf/languages/jp.htm
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英国における携帯電話利用約款の内容の適正化に関する監督機関の具体的取組み例

2006-05-14 10:46:19 | 消費者保護法制・法執行

 



 今国会に「消費者契約法の一部を改正する法律案」が提出されている。同法律は平成12年5月に成立、翌年4月1日付で施行されているのであるが、その主たるたる内容は、事業者による不当行為(不当な勧誘行為、不当な契約条項の使用)があった場合に消費者は契約の取消や条項の無効を主張できるとするものであった。しかし、新規参入事業者も含め、悪質住宅リフォーム詐欺や違法なネットオークション等の詐欺商法問題が後を絶たないのが現状である。この理由にはわが国が取ってきた許認可型行政の取組みの限界の問題もあろうし、苦情への迅速な対応機関の対応の整備不足、さらには処罰内容の軽さなどが指摘されている。

 このようなことから、今般上程された一部改正法案は、①同種の被害が多数発生する警告が生じていること、②事後的救済のみによるのでは、被害の急速な拡大に有効性に欠くというものである。そこで一定の消費者団体に、事業者の不当な行為に対する差止請求権を認める制度(消費者団体訴訟制度)の導入を目的とするものである。去る5月5日付の本ブログでも紹介したとおり、今後わが国でも集団訴訟の提訴だけでなく、米国のように集団訴権の濫用抑止・法制整備等の問題も出てこよう。

 今回紹介する「約款」適正化についても、消費者保護制度の重要な検討事項として例えば「国民生活審議会」において過去3次(第8次、9次、11次)にわたり個別業種ごとの個別約款の内容につき、適正化の提言を行ってきている。特に第8次の「消費者政策部会報告」における約款適正化の一般基本要件として挙げられている内容についてはグローバルな内容と思われる。
(筆者注1) 

 しかし、実態的にこれらの改善は行われているのであろうか。今回は、携帯電話会社の契約約款を例に取り、WatchdogであるOfcom(通信・メディア庁)(英国の「2003年電気通信法(Communications Act 2003)」に基づき5つの機関が統合され、2003年12月に稼動した電気通信・放送分野における単一の独立規制・監督機関)
(筆者注2)が、Hutchison 3G UKおよびやUK Onlineの2社に対して「1999年消費者契約における不公正条件に関する規則(The Unfair Terms in Consumer Contracts Regulations 1999:以下「規則」という) (筆者注3)に基づき行い、本年5月に公表した一言一句の指導内容をもとに、具体的に約款内容がどのように改正されたかを後者を例に検証する。なお、Ofcomの指摘項目は全部で26項目あり、今回は5項目のみ紹介する(最後に、本件についてのOfcomの報告内容のURLとUK Onlineの改訂約款のURLを記しておいたので参照されたい。わが国の企業にとっても参考となる実務的な内容といえる)。

 今回取り上げた約款問題は、急速に拡大するインターネット等を介した電子商取引のトラブル防止策として電子商取引法の法制整備とともに優先課題である。総務省、経済産業省、公正取引委員会等わが国の「Watchdog」の具体的な取組みを期待する。


1.本約款の適用対象
UK Online が提供するインターネットサービス、ブロードバンドサービス、オンラインメールサービスについて定めるものである。
〔Ofcomの問題指摘①〕
総則3項で「本サービスへの加入にあたり、消費者は以下の契約条件(terms and conditions)の内容を理解・承認し、同意する」とあるが、これは規則の附表(schedule)2()にいう「潜在的な不公正(potentially unfair)」に当たる。すなわち、このような文言自体、消費者がすべての約款内容を読解する適切な機会を認めないことになるからである。


〔UK Online の修正文①〕
 これらの契約条件は、都度更新される「公正利用規定(Fair Usage Policy):www.ukonline.net/fup」および「利用規定(Acceptable Use Policy):www.ukonline.net/aup 」と併せて読み込んでください。お客様が利用するサービスは合意内容に基づき管理され、お客様が本サービスの利用にあたり、十分な注意をもってこれらの条件につき読まれることを期待します。

〔Ofcomの問題指摘②〕
総則5項で「本約款に定める契約条件はあなたの制定法上の権利に影響を与えない」
とあるが、規則7条にいうにいう潜在的不公正に当たる。すなわち、「制定法上の権利(statutory rights)」は法律用語であり、平易かつ理解しやすい用語ではない。


〔UK Online の修正文②〕
これらの契約条件は、法律に基づくお客様の権利に影響を与えません。もし、お客様が内容についての助言を求めるなら、当社は助言が可能な機関として「Citizens Advice Bureau」(筆者注4)のお客様の住所地の地方支部をご紹介します。(この修正についてはまだ行われていない。)

〔Ofcomの問題指摘③〕
2.4項において「UKOnlineは所与の時間内に通信サービスの提供を行うべく努力するが、仮に遅延した場合、同社は責任を負わない。」とある。この内容はサービスの遅延に対する事業者の責任を排除するもので、規則の附表2の1項(b)の潜在的不公正に当たる。
〔UK Online の修正文③〕
当社は、時間内に通信を行うよう努力(endeavour)します。

〔Ofcomの問題指摘④〕
2.7項(修正後では2.8項)では「仮に消費者がブロードバンド・サービス用の機器や送付の詳細につき配達の受取りができなかったり、配達そのものが不可能となった場合、UK Onlineは同機器を保管し、最終的な受領にかかる費用は消費者負担とする」とあるが、これは規則の附表2の1項()の潜在的不公正に当たる。すなわち、消費者にとってどのような負担があるのか指示がないことは好ましいものでなく、したがって消費者は契約の締結前に十分に理解する機会がないままに条件に同意することになるからである。


〔UK Online の修正文④〕
お客様がブロードバンド用機器を注文された場合で、仮に配達に失敗したりその配達内容の詳細につき誤った結果、送付に失敗した場合、当社は同機器を保管します。



〔Ofcomの問題指摘⑤〕
2.8項(修正後では2.10項)では、UK Onlineが提供したブロードバンド用機器について試験した結果、仮に消費者に届いた機器自体に欠陥があった場合、消費者はUK Onlineにその旨の通知が求められている。もし、欠陥の原因が同機器の製造業者の保証にかかる場合UK Onlineは代替品を提供するとある。このような条項の内容は、消費者に欠陥内容の特定までを求めるもので、規則附表1項()の潜在的不公正に当たる。すなわち、メーカーの保証内容がどのようなものでまた修理のために必要となる費用の問題が明らかになっていない。
〔UK Online の修正文⑤〕
・・・・仮に消費者に届いた機器自体に欠陥があった場合、当社の技術サポートチームにご連絡ください。同チームが同機器につき欠陥があり、メーカー保証(一般的な不具合や製造過程における欠陥のみ適用があります)がある場合、当社は機器や部品の交換を提供します。お客様は直接同チーム宛機器や部品を返送してください(筆者注5)。なお、欠陥のある部位が特定できない場合は、別途の料金負担(公正かつ合理的な金額の範囲)が生じる場合があります。
******************************************************************************************:
(筆者注1) 内容は以下の通り網羅されている。インターネット取引の普及を前提とした見直しとその徹底が急務であろう。
1.適正な約款の基本的要件
①公平性の確保。
②解釈に幅が生じないような規定であること。
③取引実態と約款の内容とを一致させること。
④理解しやすい内容への配慮
 ・専門的な法律用語の使用は避ける。やむを得ず使用する場合は分かりやすい解説をつける。
 ・活字の適切な大きさを確保。用紙と活字のコントラストの配慮。
・簡潔な内容。冗長な説明の排除。
・目次や見出しなど、色刷りなどによる重要事項の強調。
⑤約款内容の書面による事前開示
2.約款条項の適正化の一般原則
約款内容に盛り込むべき項目内容は次の通りである。
(1)契約の成立
①契約の成立(申込・成立時期)
②事業者の承諾の留保
③クーリング・オフの説明
④消費者の申込撤回に対する損害賠償の内容
(2)消費者の権利・義務
①消費者の権利の内容
②消費者の義務の内容
(3)債務不履行
①事業者の債務不履行時の扱い(損害賠償、消費者からの契約解除、解約補助者の責任)
②消費者の債務不履行(損害賠償、事業者からの契約解除、期限の利益の喪失)
(4) 契約内容の変更・解消
①事業者からの変更・解消
②消費者からの変更・解消
(5)解約当事者の変更
①契約上の地位の交替等
②事業者の債権譲渡等
(6)債権の保全
①事業者の債権の保全(期限の利益の喪失、担保)
②消費者の債権の保全
(7)危険の負担
(8)その他(裁判管轄、抗弁の切断)
http://wp.cao.go.jp/zenbun/kokuseishin/spc08/houkoku_b/spc08-houkoku_b2-1_2.html

(筆者注2)“Ofcom”は、情報通信産業の統合的な規制・監督を目指すため、放送を担当する「独立テレビジョン管理委員会 ( Independent Television Commission:ITC ) 」、放送番組を規制する「放送基準委員会 (Broadcasting Standards Commission :BSC) 」、通信規制を担当する「通信委員会 (Office of Telecommunications :Oftel)」 、民放ラジオ放送の免許を所管する「ラジオ委員会 (Radio Authority :RA)」 、電波の周波数割当てを担当する「無線通信局 (Radiocommunications Agency :RCA) 」の5つの規制・監督機関を統合し、その機能を引き継ぐ機関として2003年12月29日に設置、機能を開始した。
 なお、英国における通信メデイア規制機関の歴史的経緯については確認できる専用サイト“Regulator Archives”がある。

(筆者注3) Ofcomのこれらの指導の法的根拠は「1999年消費者契約における不公正条件に関する規則(The Unfair Terms in Consumer Contracts Regulations 1999)」である。
http://www.opsi.gov.uk/si/si1999/19992083.htm

(筆者注4)Citizens Advice Bureauは、英国内に約3400箇所のアクセスポイントを持ち、また21,000人以上のボランティアを有する基金援助に基づく公認慈善事業団体である。毎年約530万件の多種の消費者問題解決に取り組んでおり、全国機関は情報システムの構築、ボランテアの教育等を行っている。
http://www.citizensadvice.org.uk/macnn/index.htm

(筆者注5)わが国の常識では、「着払い」まで記載すると思うのであるが。

〔Ofcomの報告書のURL〕
http://www.ofcom.org.uk/bulletins/comp_bull_index/comp_bull_ccases/closed_all/cw_887/
〔UK Onlineの改訂利用約款のURL〕
http://www.ukonline.net/footerpages/producttermsinc.php?sso_auth=0
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EUにおけるICTの取組みと国民が電子政府サービスに求めるものは何か!

2006-05-06 21:48:53 | 電子政府(eGovernment)

 

Last Updated: Febuery 21,2022

 わが国の電子政府の取組みが極めて一元的かつ体系的とは言いがたいが、着実に進んでいることは間違いない(筆者注1)。この分野での先進国が並ぶEUのIT社会への取組みを概観するとともに、その重要な目標の1つである「高品質の公共サービス」について加盟国の国民の本音はどこにあるのか、この問題につき中心となる「eUSER」プロジェクトの調査結果がこのほど公表された。


 EUのIT社会へ取り組み自体かなり複雑な経緯をたどるとともに経済・社会システムの変革問題等と複雑に絡む問題も多く、これらの問題を整理しながら、各種問題点についてのポイントを紹介する。このことは、わが国が今後取り組むべき「電子政府」や「電子自治体サービス」への課題をまとめる上でも参考となろう。

1.EUのICT(情報通信技術)政策の過去と今後
 EUは1999年12月の欧州委員会報告「eEurope-すべてのUE加盟国の国民のための情報社会」に基づくeEurope戦略(リスボン戦略)が欧州理事会で2000年3月に承認されたことに始まっている。これを受けて2000年5月に「eEurope 2002 Action Plan」が策定され、2001年3月に欧州委員会はその評価を含めた報告書「eEurope 2002-効果と優先課題」を発表している。さらに2002年5月には後継の3年計画である「eEurope 2005 Action Plan 」を策定し、同理事会の承認を受けている。 
 その後、2005年2月には経済成長の低迷、労働生産性の・失業率の改善等が見られないことから、eEurope戦略の原型となったリスボン戦略そのものの見直し、すなわち成長と雇用問題を重点分野とする戦略に見直し、2005年3月の理事会で「i2010(2010年に向けた欧州情報社会)(i2010 – A European Information Society for growth and employment)」を承認した。(注1-2)

 この見直しの過程で知識や技術革新の持続とともに①ブロードバンド最ビスの提供を中心とする単一欧州情報空間の創設、②EU以外の主たる競争国との格差の縮小のため、研究・開発の効率性向上、③国民すべてが共有でき、かつ高品質な公共サービスが提供されることによる生活の質の向上、の3本柱とするものである。
 
2.ICT政策実現のための重点的研究開発プロジェクト
 前記戦略に基づくEUの研究開発政策は、欧州委員会が補助金給付を行い、市場での活動の前段階で一期間毎に計画を見直しつつ各国機関や民間企業、大学等が共同研究開発を行うフレームワークプログラム(FP)が1984年以降行われている。現在は第6期(2002年~2006年:5年間の総予算のうちICT分野が3割強を占めている)の最終段階にあるが、第5期(1999年~2002年)の6テーマのうち4テーマを変更している。

 また、2007年から2013年の期間で取り組む第7期の内容は、基本的に第6期項目を承継しているが、具体的には、①健康管理、②食料・農業・バイテクノロジー、③情報通信技術、④ナノサイエンス・ナノテクノロジー・素材・新製造技術、⑤エネルギー、⑥環境と気候変化、⑦輸送・航空学、⑦社会経済と人文科学、⑧宇宙とセキュリティ研究の8分野である(その他、溶融エネルギー研究と核分裂・放射線防御はユーロアトムFPが取扱う)。また、より知識集約型のプロジェクトを目的とするもので、同委員会が2005年4月に提案した7年間の総予算規模は727億2,600万ユーロでFP6の総予算178億8,300万ユーロに比べ、単年度比較で約2.9倍となっている。(筆者注2)

3.IST(Information Society Technology)を中心とする情報通信技術分野の研究開発活動
 ISTの目的は、知識集約社会の中心となる技術分野においてEUのリーダーシップを確立させ、ビジネスや産業分野に改革と競争を導き、ひいてはEU全体の利益をもたらすことにある。Advisory Groupをかかえており、FP6では次のような優先テーマ・重点プロジェクトに取り組んでいる。(筆者注3)
 
(1)主要な社会・経済における新たな挑戦
①グローバルな信頼性とセキュリティの枠組み造り
②革新的な政府のためのICTの研究(電子政府関連)
③ネットワーク化されたビジネスのためのICTの研究
④運輸関係の共同化システム(ESafety)
⑤より健康な生活のための統合化された生物医学情報
⑥技術で補強された「eLearnig」
⑦先端的なグリッド技術(筆者注4)、システム、サービス
⑧環境リスク管理のためのICT
⑨eInclusion(生涯学習統合プログラム(Integrated Lifelong Learning Programme)のもと、デジタル識字率や他の情報通信能力向上のため、デジタル化による社会進出を促進するためのプログラム)
⑩拡大EUにおけるICT研究の統合
⑪高齢化社会における生活補助環境(Ambient Assisted Living)

(2)コミュニケーション、コンピューティングおよびソフトウエア
①万人のためのブロードバンド
②3Gを超えた携帯電話、無線システムおよびホーム・プラットフォーム
③ネットワーク化されたAVシステムとホーム・プラットフォーム
④組み込み型システム
(3)構成要素とミクロシステム
①徴微細エレクトロニックス(Nanoelectronics)
②ミクロ・ナノに基づくサブシステム
③ナノ・ミクロ統合のための技術と素子
④光通信の構成要素(photonic components)

(4)知識とインターフェイス技術
①Multi modal Interface(マン・マシン・インタフェースの形式を増やしたユーザー・インタフェースで、ペン入力や音声入力などあらゆる入力手段があり、出力も画像や音声などを利用したマルチメディアに対応し、3次元表示もできる)
②意味論(Semantic)ベースの知識と内容に関するシステム
③認知システム(Cognitive System)
④先端のロボット工学
⑤オーディオ・ビジュアルの内容に関する検索エンジン

(5)将来および想定される新技術

(6)国際協力(International Co-operation)

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(筆者注1)2002年OECDの「Information Technology Outlook」においてICT分野における国民1人当たり研究費の投資額の平均比較が行われているが、EUが80ユーロ(約11,360円)に対し、わが国が400ユーロ(約56,800円)、米国が350ユーロ(約49,700円)となっている。このICT分野の予算問題は、2006年3月に欧州議会・EU理事会において「情報社会・メデイア委員会」委員長のヴィヴィアン・レデイングがEUにおける予算額の減少によるEU全体の競争力低下問題としての警告をわが国や米国と比較のもとに行っている。
http://cordis.europa.eu/fetch?CALLER=FP7_NEWS&ACTION=D&RCN=25397&DOC=5&CAT=NEWS&QUERY=

(筆者注1-2) 欧州委員会は2006年4月25日、”COMMUNICATION FROM THE COMMISSION TO THE COUNCIL, THE
EUROPEAN PARLIAMENT, THE EUROPEAN ECONOMIC AND SOCIAL
COMMITTEE AND THE COMMITTEE OF THE REGIONS:
i2010 eGovernment Action Plan: Accelerating eGovernment in Europe
for the Benefit of All ”を公表している。

(筆者注2)FP6の予算
https://op.europa.eu/en/publication-detail/-/publication/a3811644-2445-11e9-8d04-01aa75ed71a1
FP7の予算
https://ec.europa.eu/defence-industry-space/eu-space-policy/space-research-and-innovation/seventh-framework-programme-fp7_de
EUにおける2005年行動計画(eEurope Action Plan 2005)の目玉としてeサービスの具体的プロジェクトのために資金援助策として、コスト支援を行う「eTEN」が取り上げられている。先行するプロジェクトへの資金支援を行い、平等な汎EU化を目指すもので、対象となるプロジェクトの範囲は、①eGovernment 、②eHealth、③eLearning、④eInclusion、⑤信用とセキュリティ(EU域内の電子署名、暗号化の普及)等である。
https://ec.europa.eu/information_society/activities/ict_psp/documents/pollink_brochure_einclusion.pdf

(筆者注3) ISTの研究成果は、「IST Results」のサイトで確認できるし、ニュースの受信を登録することも出来る。また、EU全体のR&Dの研究成果の総合窓口ポータルである「CORDIS」でもIST関連の情報の入手が可能であるし、一定の手続きを踏んでパスワード等を登録すれば、「Professional Search」が出来る。

(筆者注4) 「Grid」とは情報コンセントに接続するだけでネットワークを通じて安全、安定、容易に情報サービスが享受できる次世代インフラである。また、「Grid computing」とは、コンピュータ資源を有効に利用し、高速ネットワークによる無限大のスケーラビリティを実現する広域ネットワークを用いた分散並列計算環境のこと。

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ドイツの「資本投資家保護モデル手続法(KapitalanlegerMusterverfahrensgesetz:KapMuG)」の施行とクラス・アクション問題

2006-05-05 20:42:12 | クラス・アクション・ADR

 

Last Updated : Febuary 21,2022

 ドイツでは2005年11月1日に標記法律「KapitalanlegerMusterverfahrensgesetz(KapMuG)」(筆者注1)が施行された。同法律は、多数の投資家による裁判上の請求を類型化・集約化して裁判の促進を図る「新たな訴訟手続き」である。例えば、米国の「class action 」や英国の「group action」に相当するものであるが、従来ドイツにはクラス・アクションに相当する証券取引法等法律や制度はなかった。この制度の導入の背景は、多数の投資家が投資銀行等1社の被告を訴追する手続上の困難さを解決することにある。最近では、2005年にフランクフルトの連邦地方裁判所(Regional Court)に対し約1万5千人の投資家がドイツ・テレコムAGに対する証券訴訟を起したことがあげられる。(筆者注2)
 さらに、ドイツの民事訴訟手続は個々人がそれぞれ請求を行うことが原則となっており、その結果、請求者は実質的に高い訴訟コストを負担するリスク、すなわち複雑化し、費用のかかる専門家(弁護士等)の意見を要するというリスクを負担することになる点である。このため請求訴訟の阻害要因となっていたのである。

 KapMuGが取り組んだ解決策は、「モデル手続」という概念を導入したものである。すなわち、10以上の類似の個人の損害賠償請求訴訟において関係する事実や法律に関する訴因を1つに集約化し、連邦上級裁判所(Bundesgerichthof(Higher Regional Court))の判決内容は、すべての原告に対し拘束力を持つとするものである。同法は、①資本市場に関する虚偽、欺きや不完全な情報に基づく投資家からの損害賠償の補償請求、および②企業買収法(Wertpapiererwerbs und Übernahmegesetz (WpÜG)(筆者注3)に基づき規制される申出から生じる特定の契約の履行にかかる請求を取り込むものである。損失を被った投資家だけでなく、裁判所や被告企業にとってメリットがあり、資本市場分野における紛争解決に簡易かつ迅速な道を開いたものである。

 つまり、すべての証券の発行者、その他の投資に関する公開買付け申出人、投資銀行、取締役会や諮問委員会のメンバー、その他WpÜGの定める入札者等は潜在的に関係すると見るのである。

 なお、モデル手続自体、ドイツにおいて民事訴訟分野における新たな手続であり、5年間の時限立法である。法務省は改めて本法の効果を評価し、成功と判断した時点で集団訴訟に関する一般ルールとして制度化するとしている。(筆者注4)

 以下、モデル手続の主な段階に則して概略を説明する。(筆者注5)

(1)訴訟の開始段階
 第一審(筆者注6)において、なお個々の投資家は別個の独立した訴訟を提起することになる。しかし、被告側を管轄する裁判所は新法に基づき新法のもとで取り上げられるすべての訴訟について排他的裁判管轄を行うことになる(1条、14条、16条)。この唯一の例外は被告企業が海外の企業の場合である。
 
(2)モデル手続の適用段階
 一度訴訟が開始されると原告または被告は既存または確定できていないという理由の前提条件をもって、モデル手続の適用の宣告を上級裁判所に請求できる。本宣告は同種の請求についてのみなしうるもので、その内容を新たに公衆の閲覧に供するため電子的に公示(電子版法律官報)されることになる。

(3)モデル手続段階
 モデル手続は4か月間内に起訴された同様の10件以上の案件に適用される。上級裁判所はモデル手続に基づき排他的裁判管轄権を持ち、モデル請求者1名を選任する。モデル請求者は、モデル訴訟を継続するとともに他の参加原告は独自の意見を述べる権利を有する。個々の訴訟は開始されるとともに、モデル訴訟が終了するまで延長される。モデル訴訟における和解は原告全員の同意がある場合のみ成立する。モデル手続に伴う追加的裁判所および弁護士にかかる費用の負担はない。同時に、一般原則と異なり、裁判所が指名する法律専門家等に関する追加的費用の前払いも不要である。

(4)個々の訴訟に関する判決の効果
 モデル手続の判決は、当該決定以降に開始するすべての訴訟(下級裁判所を含む)を拘束する(既判力(res judicata)を有すること)(16条)。原告の個別訴訟に関しては、裁判所はモデル手続に服従しない事実や法律については独自に決定せねばならない。
 また、モデル判決についていったん終結すると、一般的な関心から連邦最高裁判所や上級裁判所が控訴を認めるか否かの裁量権はない。

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(筆者注1)KapMuG(英文訳はドイツ法務省によると「Capital Market Model Case Act」)のわが国での解説はあまり多くないように思える。例えば、福岡大学法学部の久保助教授が「福岡大学法学論叢」平成17年6月号で草案を紹介されている。

https://www.bafin.de/SharedDocs/Standardartikel/EN/bieterpflichten_wpueg_en.html;jsessionid=3B76AF32780EED2E6A7ACB24B07C7E56.2_cid503


(筆者注2)https://www.dw.com/en/telekom-investors-suit-starts-2nd-round/a-1751362


(筆者注3)ドイツでは、企業買収法とともに関連する株式会社法等の改正を含む一括改正法「有価証券取得のための公開買付けの申出ならびに企業買収の規制のための法律(Gesetz zur Regelung von öffentlichen Angeboten zum Erwerb von Wertpapieren und von Unternehmensübernahmen)」が 2002年1月1日付で施行されている。


(筆者注4KapMuGの制定は、関係するドイツの法律、例えば「株式取引所法(Börsengesetz)」、「憲法裁判所法(Gerichtsverfassungsgesetz)」、「証券販売員への手数料供託規則(VerkProspG)」、「弁護士報酬法(Rechtsanwaltsvergütungsgesetz)」等の改正を伴うこととなった。


(筆者注5) 連邦上級裁判所の役割がキーになるが、その点についての法的な詳しい解説は、以下のURLに詳しい。

https://www.bundesgerichtshof.de/EN/TheCourt/Proceedings/proceedings_node.html

(筆者注6)ドイツの司法制度では憲法裁判所(Bundesverfassungsgerichit)、通常裁判所、特別裁判所(労働裁判所(Bundesarbeitsgericht)、行政裁判所(Bundeswerwaltungsgericht)、社会裁判所(Bundessozialgericht)、財政裁判所(Bundesfinanzhof)等)からなり、各裁判所は連邦と16州の裁判所から構成されている。一般的に、州裁判所が第一審又は第二審となり連邦裁判所が最終上訴審となる。

〔参照URL〕
http://www.jura.uni-augsburg.de/prof/moellers/aktuelles/bt-beschl_kapmug.html
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オーストラリアのスパム阻止のためのISP倫理実施綱領が2006年7月16日から本格実施

2006-05-03 20:15:20 | サイバー犯罪と立法



 Last Updated:Febuary 21,2022

 スパム問題についてはわが国の法規制の現状は4月23日の本ブログでも紹介した。この問題の解決には総務省の「迷惑メールへの在り方に関する研究会」報告の内容どおり、国際協調と業界の自主的規制は欠かせない点であろう(プライバシー問題や言論の自由の問題と平行しての話ではあるが)。 実際、自主規制に関して先行したかたちで取り組んでいる米国では、2002年2月に業界団体である「Direct Marketing Association:DMA」は自主規制ガイドラインを発表し、また法規制を支持する方針を明らかにしている。(DMAは2006年2月1日から電子メールマーケティングのセキュリティ対策としてメッセージ識別・認証システムを実施している)(筆者注1)

 一方、オーストラリアの電気通信監督機関である「オーストラリア連邦通信メディア庁(ACMA)」は、同国のスパム法「 Spam Act 2003」や「1997年電気通信法(Telecommunication Act 1997)」(筆者注2)の実施責任を負うものであるが、2006年3月末に同国内で営業する689社のISPに対し、ヤフーやMSNホットメールと同様に、本年7月16日以降法律遵守状況のチェックを受ける義務を織り込んだ業界(Internet Industry Association)が策定した「実践綱領(Code of Practice)」を正式にACMAに登録した。(筆者注3)

1.スパム対策自主綱領策定の背景
 同国では、2003年アンチ・スパム法の制定により同国内を発信地とするスパムの件数の割合が過去1年間で2%から1%に減少し、今回の綱領によってさらに減少することが期待されている。しかしながら、これで十分とはいえないとの問題指摘もあり、ACMAは自主綱領の策定にあたり、これら事業者に対し、①技術的な具体的対応策、②消費者教育や理解度向上策、③国際的な協調(国際電気通信連合:ITUはISPの自主規制強化ならびにスパム阻止のための刑罰強化を求めている)を求めている。
 
2.ACMAの取組姿勢
 WatchdogとしてのACMAは、本自主綱領違反行為に対しては1千万豪ドル(約8億4千万円)の罰金を科すよう連邦裁判所に要請するとしている、一方でACMAはスパム排除のために業界が共同した行動をとることを期待している点を協調している。したがって、今後ACMAは関係企業と連携を取り、遵守命令を発する前に警告を鳴らすことになろう。

3.「実践綱領」の内容
 全体で29頁ものであるが、ここでは注目すべき点を中心に解説しておく。
(1)A編:前書き
①業界自主綱領の策定の法的根拠・・「1997年電気通信法」112条3B項(ISP等e-marketing業者においても公益性を有することから自主規制が義務付けられている。
 また、同法113条では自主綱領に盛り込むべき項目例示が定められている。これらに基づきISP業界団体であるIIA(Internet Industry Association)、WAIA(Western Australian Internet Association)、SAIA(South Australian Internet Association)等が中心となって国内ISP25社による専門委員会を組成して取りまとめた(策定に当たっては、当然同国のプライバシー委員会や消費者協会等のパブコメを求めている)。
②範囲と目的
③専門用語の解説

(2)B編:対象となる情報の規定

(3)C編:法執行に関するACMA等監督機関等との協調活動

(4)D編 :スパム・フィルターの提供サービス
 ISPは加入者に直接又はホームページの目立つ箇所を使ってスパムフィルターの提供を行わねばならない。この場合、ISPはその機能などに応じた合理的な費用を請求することが出来るが、入手方法やアップデートについてのフォローも必要である。

(5)E編:ISPの負うべき技術面の義務
①ISPは、第三者に代って向けられたメールについて許可するという自らが管理する着信接続(inbound connection)を制限できる。この制限はサービス促進する目的で配するユーザーグループ内でのサービスの場合に限られる。
②ISPは加入者に対しても前項に基づき制限することを要求できる。
③ISPは、「Acceptable Use Policy:AUP」を提供しなければならない。これは、第三者に代って向けられたemail(不正なシステム構成(mis-configuration)の有無に係らず意図的になされたもの、トロイの木馬やウイルスに限られない)について、ISPが着信接続に疑いを持った場合に直ちに接続遮断することに関する条項である。

(6)F編:スパムに関する報告義務

(7)G編:顧客やISPに対する苦情の取扱い
①顧客からのスパムについての苦情
②ISPによる綱領違反についての苦情

(8)雑則
①施行日
②見直し日

(9) 専門委員会の委員名簿一覧

(10)附表:AUPのフラグ表
 
4.わが国の自主的取り組み事例
 わが国では2002年にISP等通信事業者が中心となって「迷惑メール対策連絡会」を設立している。2003年6月には「迷惑メール防止関係法等にコンプライアンスした事業のための広告メールガイドライン(オプトイン、オプトアウトの基本的な考え方が織り込まれている)」を策定している。また、個別事業者団体の具体的活動としては社団法人「日本テレマーケティング協会」の「迷惑セールス電話拒否サービス制度」が注目されよう。(筆者注4)
 一方、米国の連邦取引委員会(FTC)が中心となって取り組んで2003年6月に開始した「Do Not Call (電話勧誘拒否登録制度)」(筆者注5)の評価も分かれているが、いずれにしてもIT社会の影の問題として本格的に取り組むべき重要課題といえよう。

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(筆者注1) DMAのマーケティング電子メールの正規性認証についての詳細は別途取り上げる予定であるが、ここでは認証システムの2月1日実施に関するDMAのサイト説明の関連URLのみ挙げておく。

http://www.the-dma.org/cgi/dispannouncements?article=425++++++

  なお、2018年5月、ANAはデータ&マーケティング協会(旧ダイレクトマーケティング協会:DMA)を買収した。 この買収により、両方の組織の全体的な戦略が単一のブランドの下で調整され、マーケティングのすべての側面にサービスを提供することに専念する米国最大の業界団体が設立された。これで、DMAのWebサイトがANAに完全に組み込まれた。

(筆者注2)「Telecommunications Act 1997」

(筆者注3) 実践綱領のURL.
https://data.allens.com.au/pubs/pdf/cmt/fotelapr06.pdf
 なお、オーストラリア政府は2004年12月に電気通信法112条1A項に基づきISP等関係業界による包括的なスパム要綱やガイドラインの策定に資するため「Australian eMarketing Code of Practice」策定している。
https://www.accc.gov.au/system/files/public-registers/documents/D06%2B40607.pdf

(筆者注4) 「迷惑セールス電話拒否サービス制度」のURL.
https://www.commufa.jp/services/phone/option/number-refuse.html


(筆者注5) 米国「Do Not Call制度」の紹介記事例.


〔参照URL〕
ACMA: http://www.acma.gov.au/ACMAINTER.2097430:STANDARD:pc=PC_2008
http://www.afa.org.au/public/content/ViewCategory.aspx?id=313

https://www.findlaw.com.au/news/4203/acma-registers-internet-industry-code-on-spam.aspx

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