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米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦規制・監督機関やEU関係機関等の対応(第2回―その3完)

2010-06-29 12:55:48 | 国際政策立案戦略

Ⅲ.連邦商務省・海洋大気保全庁(National Ocean and Atmospheric Administaration: NOAA)機能と役割の取組み
 わが国では一般的に知られていない“NOAA”の役割とはいかなるものであろうか。「大型タンカーなどからの油流出事故は深刻な海洋環境汚染を引き起こし、漁業や観光産業、海上交通などに大きな被害を及ぼす。大規模な油流出事故が発生した場合、被害を最小限に食い止めるには、初期の段階での適切な漂流予測に基づいた防除活動が重要である。(中略)
海上保安庁水路部海洋調査課は本分野に長年の経験を有する米国(NOAA)の危険物流出対応室(HAZMAT)を訪問して、災害発生時の漂流予測及びその精度向上について情報収集及び意見交換を実施して、今後の漂流予測体制の強化を図る。(以下略)(平成11年「漂流予測の高度化に関する交流育成」 海上保安庁水路部海洋調査課の報告)より引用。

 実際、その提供するメキシコ湾の図は分かりやすく、ディープウォーター・ホライゾンの連邦政府専門サイト“Deepwater Horizon Response”でもNOAAの解析図等を多用している。

 では、今回の原油流失に関しNOAAの対応はいかなる内容であろうか。専用サイトの解説内容を見ておく。
(1)NOAAとニューハンプシャー大学の海岸線対応調査センター(the Coastal Response Research Center)が共同開発した“Environmental Response management Application”によるウェブベースの“Geographic Information System (GIS) tool”プラットフォームである“GeoPlatform.gov/gulfresponse” は、リアルタイムで原油流失やBPや関係機関の対応状況を把握できる。

(2)毎日の更新情報(6月22日現在)
①連邦政府の指示で、BP社は封じ込めドームの技術(containment dome technique)を利用した原油の捕獲と水面上のガスの燃焼を継続している。
②トランス・オーシャン社が保有する大型海洋深海油田掘削船「ディスカバラー・エンタープライズ(Discoverer Enterprise )」による原油回収に加え、政府の指示により導入された原油排出部のライザー管につないだ「Q4000」による閉鎖線(choke line)から吐き出された追加的な原油とガスを燃焼し続けている(この状況は写真参照。上がQ4000で、中央が「ディスカバラー・エンタープライズ」であり、燃焼の炎が見れる)。

 この24時間で25、836バレル (筆者注7)の原油が回収できた。この数日は天候が比較的よくガス等の燃焼運用は成功裡に行われている。合計275箇所のガス燃焼作業の結果、932万ガロン以上の原油の撤去が行われた。

(3)NOAAの取組み
 NOAAは、連邦、州および地方政府に対し連携した科学的気象や生物学的取組みに関する情報を提供する。各関係機関の専門家は原油の流失を阻止し、またメキシコ湾の多くの海洋哺乳類(marine mammals),海がめ(sea turtles)、魚、貝等海中の生物の命を助けるため動き回った。NOAAは天候がよければ毎日上空飛行による観測を行い、原油のモデル拡散軌道(model trajectories)の検証を行っている。

(4)原油拡散軌道(Trajectories)予想
 メキシコ湾では水曜日(6月23日)は圧倒的に陸に向かって5~12ノットのスピードで南東の風が、また木曜日(6月24日)は東北東の風が吹くと予想される。拡散軌道はミシシッピー湾内の西向きの流れが東に向けた油膜の更なる動きが始まることを示している。ミシシッピー州のホーンアイランドとフロリダ州のパナマシティはこの予測期間中に海岸線は危険にさらされると見込まれる。また、しつこい南東の風によりルイジアナ州沖のシャンドルール諸島やブレトン・サウンド(Breton Sound)やミシシッピーデルタ地域が危険にさらされると予想される。

 FOAAは、上空飛行、船舶による観測および衛星解析で当該地域をモニタリングし続ける。

(5)漁業活動閉鎖地域指定
 本日(6月22日)、NOAAは現行の漁業閉鎖海域の変更を行っていない。現行の閉鎖海域は6月21日に施行された内容である。魚等の捕獲、放流やレジャーでの魚釣りは禁止されるが、同海域の運航は認められる。閉鎖海域の広さは8万6,985平方マイル(22万5,290平方キロ)であり、メキシコ湾案の排他的経済水域の約36%である。

(6)海ガメと海洋哺乳類のアセスメント結果(2010年6月21日有効)
 4月30日から6月21日の間、テキサス・ルイジアナ州からフロリダ州のアパラチコーラ(Apalachicola)の範囲で計527匹の海ガメが確認された。6月20日(日)と21日(月)の間で13匹のカメが浜に打ち上げられて死んでいるのが見つかった(ミシシッピーでは10匹、アラバマ州で2匹、ルイジアナ州で1匹である)。
 10匹の生きているカメは沖合いの鳥類やカメの調査を行っている間、ルイジアナ州漁業省に集められたがそのうち2匹は明らかに原油に汚染されていた。
 4月30日以降、合計92匹の海岸に打ち上げられたり捕獲されたカメには明らかに外的な原油に汚染された形跡が見られた。

Ⅲ.NIHの取組み
 連邦国立衛生研究所(The National Institutes of Health :NIH))は、連邦保健福祉省(HHS)の下部機関であり、国民の健康や生命の安全性等に関する多くの調査研究を行い、具体的リスクに対しては警告を鳴らす機関である。当然、今回のディープウォーター・ホライゾン事故の住民の健康への影響調査結果を網羅できる専門サイトを立ち上げている。
NIHには「国立医学図書館(The National Library of Medicine :NLM)」が設置されており、そこには「大規模災害情報管理センター(the Disaster Information Management Research Center)」を設置、今回の事故対応として「原油流失と健康への影響概観(Crude Oil Spill and Health) 」という専門サイトが用意されている。
 同サイトは“crude”とは言いながら、主要連邦機関には見られない網羅的内容であり参考となるのでやや詳しく説明しておく。

①特徴的サイト:連邦政府の一元的ディープウォーター・ホライゾン対策専門サイト(Deepwater Horizon Response) (筆者注8)やNOAAの取組み
②概観:連邦環境保護庁(EPA)やNOAA、保健福祉省・疾病対策センター(CDC)の取組み
③保健情報:HHSやCDCの取組み
④流失した原油の拡散状況、全石油炭化水素(Total Petroleum Hydrocarbons :TPH )の状況(Crude Oil)
⑤石油分散剤(Disperants)の使用と影響
⑥海産物等への影響(seafood and fisheries contamination)
⑦対応と復旧対策
⑧関係州の専用サイトとのリンク
⑨Facebook 、Twitter、Youtube等SNSとのリンク

*********************************************************************************************:
(筆者注7) 1日あたりの原油回収量 25,836バレルの量はどれくらいか、イメージが浮ばないであろう。1バレル = 159リットルであり、4,108キロリットルとなる。この数字は関係機関の当初の予想を上回っているようだ。

(筆者注8) 連邦政府のdeepwater Horizon対応の統合サイト“Deepwater Horizon Response”の内容は国民の理解度向上面から見て日々充実してきていると思われる。6月23日時点のサイトの特徴点をあげておく。(本文で述べた大規模災害情報管理センター(he Disaster Information Management Research Center)」の「原油流失と健康への影響概観(Crude Oil Spill and Health) 」サイトの内容と比較して欲しい)。

①News/Info:NOAAの航空写真と比べ分かりやすい図解地図、関係州の対応最新情報、Deepwater Horizonに関する非公開合同事故原因聴聞会(joint Investigation )の模様の一部記録写真(この委員会の目的は4月20日に起きたDeepwater Horizon 可動原油掘削装置(mobile offshore drilling unit :MODU))の爆発と作業員の死亡等に関する結論と勧告の策定である。5月下旬に行われたその結果は、承認を得るため沿岸警備隊本部および連邦内務省の石油掘削認可機関「海洋エネルギー管理、規制・執行局(Bureau of Ocean Energy Management, Regulation,and Enforcement:BOE)に送付されその承認後、広く国民やメディアに公開される。それまでの間は分析結果や結論の内容は非公開である。
②Area Plan:4州の専門サイトとのリンクによる最新情報
③Health and Safety:大気、海岸線、水質検査結果および現地労働者やボランティアの健康・安全性問題


[参照URL]
http://www.gao.gov/new.items/d09744.pdf
(2009年8月、GAO報告「ROYALTY-IN-KIND PROGRAM:MMS Does Not Provide Reasonable Assurance It Receives Its Share of Gas,Resulting in Millions in Forgone Revenue」(全45頁)
・https://www.doi.gov/sites/doi.gov/files/migrated/news/pressreleases/upload/OCS-Safety-Oversight-Board-Report.pdf

(5月19日付「海洋エネルギー局、安全・環境法執行局および天然資源収入管理局の設置に関する内務省長官令(No.3299)」)
・http://www.doi.gov/deepwaterhorizon/loader.cfm?csModule=security/getfile&PageID=35872
(6月21日付:BOEの局長等人事に関する長官令(No.3302)」)
・http://www.mms.gov/ooc/PDFs/TheMMSRoyalty-in-KindProgram.pdf
(MMSの“Royalty-in-Kind Program”の解説サイト)
https://response.restoration.noaa.gov/about/media/where-find-noaa-information-deepwater-horizon-oil-spill.html
NOAAの「Where to Find OR&R and other NOAA Information on the Deepwater Horizon Oil Spill」ディープウォーター・ホライズン解説サイト

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Copyright © 2006-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission

 



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米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦規制・監督機関やEU関係機関等の対応(第2回―その2)

2010-06-29 12:45:14 | 国際政策立案戦略

(2) 内務省の「MMS改革プログラム10原則」の内容
①新しい倫理基準の設置
Salazar長官は2009年1月、MMS役職員のための新倫理ガイドラインを発布した。MMSの全従業員は倫理教育を受け、また2009年3月に倫理綱領の遵守が要求される。

 なお、MMSは極めて莫大な石油利権に関わるため、原油掘削企業等からの収賄・賄賂等不正行為が横行し、2009年8月連邦議会行政監査局(GAO)報告やIGの指摘の概要を理解するために米国の主要メディア(New York Times、Bloomberg)を読んでみた。わが国では正確に紹介されていないこの問題につき記事等で補足する。
 ブルームバーグは、サラザール長官の連邦議会下院「天然資源委員会(Committee on Natural Resources)」での証言中でGAO報告(筆者注5)等を引用し、米国のPIKプログラムの監査、会計、および従業員のモラルの低下等失敗を認めたと述べている。筆者は特に前述した倫理観の欠如がなぜここで出てきたのか、初めは理解できなかったが、IGの報告すなわち、MMSの従業員の「薬物乱用と乱交の文化」石油会社からの賄賂、セックス、コカインやメタフェタミン(ヒロポン)の乱用に事実が報告されたとある。議会もこの問題は放置せずに従来からこの問題に取組んでいる Nick J.Rahall委員長(ウェスト・バージニア州選出:民主党)等による改正法案の動きを紹介している。なお、ブルームバーグの記事は石油会社の対応等にも言及しており、参考になる。

(3)MMS業務執行プログラムの改革
①原油・ガスという現物による掘削権利用料支払方式(Royalty –in-Kind(PIK) Program)の廃止
1982年以来が行ってきた戦略的石油備蓄(Strategic Petroleum Reserve:SPR)を含む“Royalty –in-Kind Program”とはいかなるものか、上記のとおりわかりやすい訳語も含めこの言葉だけでは理解できないし、米国メディアも丁寧に解説していない。

 MMSに“Royalty –in-Kind Program”専門サイトがある。サラザール長官の改革基本原則の優先課題である。その冒頭にGAOの勧告で指摘され議論を呼んだ “Royalty –in-Kind Program”について従来のGAOの見解を否定し効率的な財政収入手段として前向きの評価が次のとおり述べられている。(2007年2月時点の見解である)

「1982年以来、MMSは連邦保有の土地や先住民にかかる鉱物資源における連邦財務省最大の財政収入源として責任を持ち支払い受取り機関の任に当たってきた。収入額は年度ベースで平均70億ドル(約6,300億円)である。
“Royalty –in-Kind Programは財政収入活動の重要な側面を持ち、同プログラムを通じてエネルギー開発企業はMMSに現金でなく石油やガス(現物)のかたちで権利使用量を支払ってきた。MMSは石油やガスを市場で販売して財政収入に当るか、または戦略石油備蓄のためにエネルギー省に石油を提供してきた。
 2005年財政年度で見てRIKプログラムは、連邦財務省の収入として約320億ドル(約2兆8,800億円)を生み、現金(市場での商品価値:value)での支払い受取による方法よりも多くの財政収入を得た。現物納付方式であるRIKの方式は2004財政年度で比較しても価値で受け取る方法に比べ約3分の1の費用で済むし、さらに財務省の会計システムの効率性も評価できる。」

(4)沖合いの風力や再生可能なエネルギー源に関する連邦機関の権限とのバランス
(5)内務省監査総監や独立性のある評論者の勧告内容への対応
(6)沖合いの諸施設に対するMMS査察プログラムの見直しを国土安全保障省合衆国沿岸警備隊(USCG)/MMS海洋委員会に指示
(7)英国ブリストル湾(Bristol Bay)および北極海(Arctic Ocean)の沖合い開発のリース計画の取消
(8) 連邦大陸棚(Outer Continental Shelf) (筆者注6)のどの地域が石油・ガス開発に最適であるか明確、秩序だったかつ科学的基礎に基づく決定手続の確立

 なお、同長官令リリースではMMSの歴史的・経済的役割につき解説しており、参考に記しておく。
・1982年1月19日、内務省長官ジェームス・ワット(James Watt)は長官令に基づき連邦地質調査所(U.S.Geological Survey)、内務省・土地管理局(Bureau of Land Management)および同省・先住民局(Bureau of Indian Affairs)の鉱物収入管理部門を統合しMMSを創設した。

 以降、MMSは石油、ガス、石炭、金属、カリ(potash)および再生可能エネルギー資源を中心とする収入を管理(1982年以来その総収入は2,100億ドル(約18兆9,000億円)以上となる)し、他方でその収入を州、部族(tribes)、群および連邦財務省に配分している。MMSは年間137億ドル(1兆2,330億円)の収入を上げ、これは内務省の収入の約95%となっている。

・MMSはまた連邦大陸棚の天然ガス、石油や他の鉱物資源の連邦管理機関でもある。MMSは従来型および再生可能なエネルギー資源のリース計画を開発・実行する。他方、沖合いのエネルギー開発の運用や関係法令の遵守について監督権限を持つ。

2.「鉱物資源管理局(Minerals Management Service:MMS)」からBOE等への改組・監督権限等の見直しと新人事に関する内務省サラザール長官令の発布
(1)「5月19日付:海洋エネルギー局、安全・環境法執行局および天然資源収入管理局の設置に関する内務省長官令(No.3299)」
第1条では、「本令の目的として(1)連邦大陸棚開発の監督および責任の明確化、(2)国民へのロイヤルティに関する財政収入による納税者への公平な配当、および(3)沖合いの開発にかかる独立した安全性・環境保護と法執行を行うため任務の分離と再割当てを行うことである。」と述べており、その内容につき次のとおり説明している。
 
A.「MMSの倫理基準、」
前記(2)を参照されたい。

B.「MMSの再構築および独立性を持った任務を担う3部門の設置構想」
今回の組織改革の中心となる点である。
「海洋エネルギー管理局」:土地・鉱物資源担当副長官監督下で天然資源の評価、開発計画およびリースに関する活動を含む従来型や再生可能なエネルギー資源に係る連邦大陸棚の継続的開発問題を担当する。

「安全・環境保護執行局」:土地・鉱物資源担当副長官監督下で米国沖合いのエネルギー開発活動に関する安全、環境保護面の包括的監督機関として担当する。

「天然資源財務収入・資産管理局」:政策・管理および予算担当副長官監督下で財政収入、監査と法遵守、財務管理および資産管理を担当する。

(2)「6月21日付:BOEの局長等人事に関する長官令(No.3302)」
 6月21日付け長官令(Secretarial Order)」で元連邦司法省監察官(former Justice Department Inspector General)のミシェル・ブロムウィッチ(Michael Bromwich)等の任命が発せられた。なお、BOE自体6月24日の午前中、まだ正式なウェブサイトが出来ていない(まだ旧MMSにリンクする)。その理由は、後述するとおり5月19日発令の長官令のうち人事が決まったのみであり、「有効な法執行」、「エネルギー開発」、「自然エネルギー資源収入管理」というホワイトハウスや連邦議会との間で3部門の組織構想の調整協議がまだまとまっていないことがその理由であろう(令公布後、30日以内が実施期限である)。

 その意味でDOIのリリース内容を読んだが、後半でこの数週間サラザール長官が取組んでいる米国沖合いの原油・ガス開発の管理、監視を巡る改革を含む内務省の業務改革やMMSの独立性強化策を公表している。これらの内容は5月19日の長官令の内容と重なるので略す。
**********************************************************************************************
(筆者注5) 2009年8月、GAOが行ったMMSに関する報告書「Royalty –in-Kind(RIK)-Program:MMSは本来権利行使すべき(forgone revenue)大陸棚RIKガス収入に関する適切かつ時宜を得た方法の改善勧告」(全45頁)の概要を引用したが、いうまでもないが本ブログではGAO報告を比較的多く引用する。その意義はまさに「連邦議会の連邦行政機関のWatchdog」が的確に機能し、その透明性重視の姿勢を始め、また行政機関自身もその勧告内容への対応を積極的に行っているという、本来の「三権分立」の原型を見るように思えるからである。

(筆者注6) 米国の大陸棚のうち、連邦政府の管轄する部分。石油を始めとする地下資源は土地所有者に帰属するという法理が適用されている米国では、所有関係が特定されない大陸棚における海底の土地の所有権と海底下の石油資源の帰属を明確にする必要が生じ、米国では 1953 年の Submerged Lands Act および Outer Continental Shelf Lands Act によって、海岸線から 3 マイル(テキサス州およびフロリダ州のメキシコ湾岸では 3 海洋リーグ=約 10.5 マイル)まで各州、その外側は連邦の所管と規定された。(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構サイト「石油天然ガス用語辞典」から引用)


[参照URL]

http://www.gao.gov/new.items/d09744.pdf
(2009年8月、GAO報告「ROYALTY-IN-KIND PROGRAM:MMS Does Not Provide Reasonable Assurance It Receives Its Share of Gas,Resulting in Millions in Forgone Revenue」(全45頁)
・https://www.doi.gov/sites/doi.gov/files/migrated/news/pressreleases/upload/OCS-Safety-Oversight-Board-Report.pdf

(5月19日付「海洋エネルギー局、安全・環境法執行局および天然資源収入管理局の設置に関する内務省長官令(No.3299)」)
・http://www.doi.gov/deepwaterhorizon/loader.cfm?csModule=security/getfile&PageID=35872
(6月21日付:BOEの局長等人事に関する長官令(No.3302)」)
・http://www.mms.gov/ooc/PDFs/TheMMSRoyalty-in-KindProgram.pdf
(MMSの“Royalty-in-Kind Program”の解説サイト)
https://response.restoration.noaa.gov/about/media/where-find-noaa-information-deepwater-horizon-oil-spill.html
NOAAの「Where to Find OR&R and other NOAA Information on the Deepwater Horizon Oil Spill」ディープウォーター・ホライズン解説サイト

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Copyright © 2006-2010 芦田勝(Masaru Ashida ) All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.

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米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦規制・監督機関やEU関係機関等の対応(第2回―その1)

2010-06-29 12:24:05 | 国際政策立案戦略

 

Last Updated:February 25,2021


 6月24日付けの本ブログで、世界的に注目されている歴史的海洋汚染事故である米国「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)」 の半潜水型海洋掘削装置(rig )爆発事故とその後の大規模な原油流失についてとりあえず第1回目の報告を行った。

 今回は、6月20日記載時に時間の関係で十分言及できなかった、(1)連邦内務省の下部機関で石油やガス施設の掘削認可・監督機関である「海洋エネルギー管理、規制、執行局(Bureau of Ocean Energy Management, Regulation,and Enforcement:BOE)(同局は6月17日即日施行で従来の「鉱物資源管理局(Minerals Management Service:MMS)」から職員等の倫理面強化や権限の細分・明確化による監督強化のため改組・改革・改称し、連邦内務省長官ケン・サラザール(Ken Salazar)
(筆者注1)は元連邦司法省監察官(former Justice Department Inspector General)のミシェル・ブロムウィッチ(Michael Bromwich)を局長に任命するといった取組みの背景、(2)連邦商務省・海洋大気保全庁(National Ocean and Atmospheric Administaration: NOAA)の取組状況について解説する。

 特に、今回、ディープウォーター・ホライズンの司法省、内務省(BOE)、エネルギー省を除く環境、保健、食品連邦関係機関や関係州の取組みについて網羅したサイトが、連邦保健福祉省・国立衛生研究所(The National Institutes of Health :NIH)) NIH・国立医学図書館(The National Library of Medicine :NLM)の「大規模災害情報管理センター(the Disaster Information Management Research Center)」サイトであることが分かった。
(筆者注2)

 次回以降、USCG、FDA といった連邦環境調査や沿岸安全保持機関、食品安全保障機関や漁業規制機関等の取組状況について解説する。

 また、EU等国際的石油掘削メジャーの監督にあたる国々の対応にも厳しさが増している。さらに、当然のことながら環境保護団体はBP社のコンプライアンスや労務管理態勢につき重大な指摘を行っており、その内容も合わせて解説する予定である。

 今回は 3回に分けて掲載する。


Ⅰ.「海洋エネルギー管理・規制・執行局(Bureau of Ocean Energy Management, Regulation,and Enforcement:BOE)への組織改組・改革と新人事を巡る課題

1.連邦内務省のMMSの抜本的機構改革の背景と内容
 内務省(DOI)のサラザール長官は5月19日、6月21日にMMSの改組に関する長官令と人事発令を行った。

 その内容を理解する上で、同長官が2009年1月に行ったMMSの独立性強化、改組のための連邦議会行政監査局(GAO)や内務省監査総監(Inspector General:IG)が指摘したMMS職員倫理基準、資源収入の支払方針やプログラムについて監視機能強化と納税者への公平な還付を保証、さらに積極的な沖合いのエネルギー構成施設の更新についての連邦関係機関のバランスを取るといった「MMS改革プログラム10原則」を理解しておく必要がある。

 これまでの経緯やその内容は、わが国ではほとんど解説されていないが、米国のオバマ政権のエネルギー戦略に関する重要な内容であり、以下、概要をまとめておく。

(1) 2009年8月31日にGAOが行った厳しいMMS改善勧告報告
 GAOが行った報告「Royalty –in-Kind(RIK)-Program:MMSはロイヤルティ収入の権利者としての当然の権利を的確に行使しておらず、結果として当然受けるべき数百万ドルにわたる 財務収入利益受領権行使を合理的に保証していない(MMS Does Not Provide Reasonable Assurance It Recieves Its Share of Gas,Resulting in Millions in Forgone Revenue)」の内容は概ね次のとおりである

・MMSは2008年財政年度でMMSは“Royalty –in-Kind(RIK)”方式でガス販売収入として24億ドル(2,160億円)を得た。GAOが重要視するのはMMSが当然の権利を持つ範囲でRIKガスを受け取っていることを納税者に対し保証する義務がある点である。「MMSがRIKに基づき所有するガス量」、「MMSのガス占有割合」、および「ガス生産不均衡調整(gas imbalance)」(筆者注3)として実際にMMSが受け取るガス量の相違が重要な点である。
 すなわち、次のとおりMMSにおいて十分なチェック機能が働いていない問題点をあげている。

①MMSが天然ガスの不均衡量として2,100万ドル相当を所有していると推定している一方で、同金額が適切であるか確認するすなわちRIKガス収入の100%が収入として計算できているか否かを確認する十分な情報がないーすなわちもっとMMSが得るべき金額が多いのではないかーという問題

②MMSは、RIK支払ガス会社の自主的作成報告書や割当データ(allocation data)について承認手続きが十分であるとして部分的に独自に監査しないので、RIKガスの正しい量に見合う金額を受け取っているか否かの確認が出来ない。

③仮に不均衡量を見出したとしても、PKIプログラムの担当官はその不均衡の調整や解決を行うための適切な方針や手続を持たない。

④MMSは効率的にPIKプログラムを管理する監督するスタッフと教育体制を欠いている。

⑤MMSはRIKガス不均衡によるデータ修正のための時宜に合いかつ適切なデータ提供のITシステムを持たない。2003年にMMSは民間ソフトウェア・ハウスから既製のソフトを購入してカスタマイズしたデータベースを利用している。この目的は全データを1つのデータベースにまとめデータの追跡も含め一元管理するというものであった。しかし、RIKガス不均衡データの提供能力はない。

 GAOが石油会社からの不均衡報告につき2007年1月から2008年6月の間のRIKプログラムを追跡した結果、MMSの集計表(spreadsheets)では少なくとも35%が同報告が遅延し、10%は完全に集計表がなくなっていた。この点に関し、GAOはMMSが必要な情報をすべて入手したとしても頻繁に報告の変更を手作業で行う点に注目した。すなわち、MMSは石油会社が不均衡報告をどのように提出すべきかにつき標準化した方針をもっていないのである。

 MMSが保有する利益権(royalty)の決定時にエラーが発生する機会の増加だけでなく、標準化された方針の欠如は不均衡の有無のチェックする時間がかかることにつながる。

 また、GAOは次のような事例でMMSへの石油会社の支払の遅延は納税者の還付金を受け取る機会を奪っていることを証明している。

・「連邦石油・ガス利益受領権管理法(Section 115 of the Federal Oil and Gas Royalty Management Act of 1982)」の第115条 (筆者注4)は月次での不均衡報告を義務付けているためMMSのモニタリングは日次ではなく月次である。しかし、一方、石油会社は比較的原油価格が高いときはMMSの保留量を低く計算し、他方書くが低いときは保有量を多く計算する。この結果、本来価格が高い時期にMMSが得られるべき収入が少ないという問題がある。なお、この指摘に関しGAO報告では日次のモニタリング方式の採用については内務省は同意していないと記している。
***************************************************************************************************

(筆者注1) 2009年12月17日、オバマ政権は内務省長官に新しくコロラド州出身の連邦議会民主党上院議員ケン・サラザール(Ken Salazar)を内務長官に任命、2010年1月20日、上院本会議で正式に承認された。米国内務省は他の欧米諸国の内務省とはかなり機能が異なる。すなわち、環境政策、エネルギー政策、連邦政府所有地の管理・利用、野生生物の保護等の関する政策管理機関である。
 また、サラザール長官の環境問題の考え方であるが、上院議員在職中(2005年1月-2009年1月)は、車やトラックの排気ガス基準引上げのためのCAFÉ 改善法案に反対投票したり、エクソン・モービルや他の大手石油会社の税優遇措置の撤廃法案の廃止修正に投票した。また、2006年には、フロリダ州沖の沖合いの原油・天然ガス掘削を禁じる保護措置に終止符を打つ内容の法案に共和党議員とともに少数の民主党員とともに賛成しており、環境保護団体から批判を受ける投票行動をとっている。今回のMMSからBOEの改称やトップ人事がオバマ政権のエネルギー政策の変化にどのようにつながるのかまさに注目の的とすべき点である。ただし、この点について分析しているメディアは米国でも少なく、わが国では皆無である。

(筆者注2) H1N1の新型インフルエンザに関する情報収集をきっかけとしたものであるがピッツバーグ大学の公衆衛生危機管理センター(Center for Public Health Preparedness)のサイトは最新情報を整理するうえで貴重なサイトである。今回、メキシコ湾の原油流失事故についても基本的な観点から現状と回復のための施策について平易に解説を加えており、関係者は是非参照されたい。

(筆者注3) 「ガス生産不均衡(gas imbalance)」:この用語を理解できる日本人は石油関係者以外では少なかろう。筆者も専門家でないので米国の関係サイトで調べてみた。GAOの問題指摘のキーとなる言葉であり、その正確な理解には欠かせないためである。筆者なりに解説してみるが、関係者による正確な解説を期待したい。

 石油生産の過剰生産と過少生産のための生産調整といったところであろう。油源の開発事業者が競合した場合、当然生産性が高い油田と低い油田がありうる。これを放置すれば油田が枯渇するといった資源開発の根本問題だけでなく、事業者の権利・義務の調整のための業者間開発協定(operating agreement)は、この問題を根本的かつ完全に解決できるであろうか。
 なお、開発業者間の生産調整協定に関し、欧州エネルギー監督機関協議会(the Council of European Energy Regulators:CEER)は「生産量均衡原則(Balancing Priciples)」を定めている。

参考:2005年12月23日「Gas Balancing Rules in Europe (EU加盟国におけるガス開発均衡協定に関するレポートでCEERの生産調整原則について解説」(英国シンクタンクNERA Economic ConsultingとTPA Solutions Ltdの共同レポート)は参考になる。
http://www.tpasolutions.co.uk/documents/050128_Final_Report_on_gas_balancing_for_the_CEER.pdf

(筆者注4) 「連邦石油・ガス利益受領権管理法(Section 115 of the Federal Oil and Gas Royalty Management Act of 1982)」の第115条は、「1996年連邦石油およびガスのロイヤルティの簡素化と公平性に関する法律(FEDERAL OIL AND GAS ROYALTY SIMPLIFICATION AND FAIRNESS ACT OF 1996)」に基づき追加された条項である。


[参照URL]

http://www.gao.gov/new.items/d09744.pdf
(2009年8月、GAO報告「ROYALTY-IN-KIND PROGRAM:MMS Does Not Provide Reasonable Assurance It Receives Its Share of Gas,Resulting in Millions in Forgone Revenue」(全45頁)
・https://www.doi.gov/sites/doi.gov/files/migrated/news/pressreleases/upload/OCS-Safety-Oversight-Board-Report.pdf

(5月19日付「海洋エネルギー局、安全・環境法執行局および天然資源収入管理局の設置に関する内務省長官令(No.3299)」)
・http://www.doi.gov/deepwaterhorizon/loader.cfm?csModule=security/getfile&PageID=35872
(6月21日付:BOEの局長等人事に関する長官令(No.3302)」)
・http://www.mms.gov/ooc/PDFs/TheMMSRoyalty-in-KindProgram.pdf
(MMSの“Royalty-in-Kind Program”の解説サイト)
https://response.restoration.noaa.gov/about/media/where-find-noaa-information-deepwater-horizon-oil-spill.html
NOAAの「Where to Find OR&R and other NOAA Information on the Deepwater Horizon Oil Spill」ディープウォーター・ホライズン解説サイト

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米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦政府、関係州政府や連邦規制・監督機関等の対応(第1回-2・完)

2010-06-24 15:34:13 | 国際政策立案戦略

4.連邦エネルギー省の対応
 連邦エネルギー省のチュウ長官(Steven Chu)は「Deepwater Horizon」専用サイトの冒頭で、「透明性原則は公益面だけでなく科学的な対応過程の一部である。我々は独立性をもった科学者、技術者およびその他の専門家が、この事故情報につき見直しかつ自らの結論を下すべくあらゆる機会を確認すべきである。」と述べている。

 また、同省は「オバマ政権のBP社時原油流失に関する透明性をもった現下の取組機関として、現地原油流失の図解(schematics)へのオンラインアクセス、加圧試験(pressure test)、診断結果および誤作動している噴出防止装置(blowout preventer)やその他のデータを提供している」と説明している。

 同省のサイトでは、全面的にBP社の直接的提供データに基づき極めて専門的な図解解説を行っている。しかし、皮肉にもBP社は、司法省の言明を待つまでもなく環境保護面だけでなく労務管理なども含め適切な対応を取ってこなかった「地球を壊す穴掘り企業」の代表になった。この点につきエネルギー政策全体の監督庁であるエネルギー省長官や連邦内務省の下部機関で石油やガス施設の掘削認可・監督機関である「海洋エネルギー管理、規制・執行局(Bureau of Ocean Energy Management, Regulation,and Enforcement:BOE)(同局は6月17日即日施行で従来の「鉱物資源管理局(Minerals Management Service)」の責任者である内務省長官ケン・サラザール(Ken Salazar)氏は、6月16日のBP社との協議の場には出席していない(筆者にはその辺の背景までは推測できない)。これらの対応のアンバランスさはオバマ政権の「エネルギー政策の脆弱性のあらわれ(energy vulnerability )」といえるかもしれない。

5.連邦環境保護庁の対応
 連邦環境保護庁(U.S.Environmental Protection Agency:EPA)は「メキシコ湾原油流失に対するEPA対応」サイトを立ち上げている。同サイトでは、まず「BP社による分散化剤(dispesants)の安全性、環境面から見た解説」に重点が置かれている。
 ここでは6月14日時点のサイトの内容に基づきその要旨のみ紹介するが、この問題に関し専門家でない地元住民等にも理解できるよう電話会議の内容も含めリリース内容が全面的に公開されている。これらの公開の確保が「風評防止」に役立つことは言うまでもない。

(1)原油流失に伴う分散剤の使用許可と環境、水質など安全性検査結果(記者会見、声明発表、電話会議録写し)
 今回の原油流失危機が発生した際に、沿岸警備隊とEPAはBP社に対し流失の影響を削減させるため水面上の現有原油への「許可された分散剤(2-Butoxyethanol および2-Ethylhexyl Alcohol)」の使用許可を与えた。
 この使用許可は、環境保護および影響を受ける地域住民の健康を保証するための一定の条件を含むものである。現在BP社は水面における分散剤の使用を継続することが認められている。近隣住民への情報提供とその健康保護を保証するため、EPAは継続的に航空機による大気のモニタリング、常設および移動式飛行場を使い湾岸地区の大気質(air quality)のモニタリングを行っている。

 ・EPAおよびUSCGはBP社に対し、Deepwater Horizonの原油流失源における水中での分散剤の使用を許可した。予備検査結果では水面下の分散剤の使用により表面に達する原油量の削減効果があることを示した。
 BP社が水面下での分散剤の散布を行っている間、連邦政府はその効果、環境・水、大気質ならびに厳密なモニタリング・プログラムに基づく人間の健康への影響に関する定期的な分析の実行を要求する。このためEPA指示命令は、BP社が環境保護および国民の健康を保証するために厳格に遵守すべき監視計画を含んでおり、EPAは分散剤の使用がもし環境への効果以上にマイナスの影響を与えると判断するときは、ただちにその使用を停止させる権限を留保する。

・具体的に分散剤の使用による環境への影響へのモニタリングの各カテゴリー別結果概要
①空気データ:2010年6月12日までの間にEPAが行ったモニタリング結果においてオゾンおよび微粒子物質(particulates)の大気中の濃度は、この時期の通常の海岸線地区の数値としては正常値内にある。EPAは低レベルの海岸線における石油製品が関連してにおいが引き起こす汚染物質につき観測した。これらの化学物質は頭痛、目や鼻やのどの炎症、吐き気を引き起こすものであり、同地域は通常低レベルであることから住民は短期的に臭いのため健康上の問題を引き起こすことがありうる。

②沈殿物(sediment)データ:6月1日までに海岸線で収集された沈殿物サンプルでは通常、石油中に含まれる化学物質の上昇値は見られなかった。

③石油廃棄物(waste)管理データ:EPAはメキシコ湾に沿って石油残骸物(oil debris)、原油の塊(tar balls)、ムース・オイル(mousse oil)(重質油が時間の経過により固めのグリース化したもの)およびその他の石油廃棄物(other petroleum waste products)の収集のための専門家チームを配置した。その予備検査では通常、石油製品にみられる化学成分のみが検出され典型的な健康保護を取るべきというものであった。
 なお、EPAの沿岸水質検査(Coastal Water Sampling)として5月22日~23日にかけて ルイジアナ州の海岸10箇所で採取した権検査の結果では、BPが使用許可された「分散剤(2-Butoxyethanol および2-Ethylhexyl Alcohol)」は検出されなかったと報告されている。

6.連邦司法省の取組み
 これまで述べた州や連邦機関に比べると腰が引けているというか連邦議会等政治的問題との調整について意識過剰なところが鮮明にうかがえる。とはいえ、6月1日、ホルダー司法長官は記者会見において現地視察結果を踏まえ司法省の取り組み方針につき以下のとおり言明している。
①本日の朝に我々が見たものは何マイルにもわたる原油であった。我々が見た原油は海岸線に沿ってすでに植物や動物の生態系に悪影響を与え、かつこの地域の人々の日々の生活に多くの影響を与えている。今回の災害は悲劇(tragedy)そのものである。
 私自身、この事故で忘れられない点が1つある。我々の環境やガルフコーストのコミュニティが被った莫大な費用に加え、4月20日の爆発と火災により11名のrig作業員の貴重な命が失われたことである。

 我々は爆発とその後の原油の流失の原因を調査することで、これらの貴重な命の価値を決して忘れないことをアメリカ国民に確約する。

②今回の事故対応の早期の段階において、我々はニューオリンズでの活動すなわちガルフコーストの近くで働いたり住んでいる人だけでなく、アメリカの納税者や同地域の環境や野生生物の保護するため、連邦司法省の環境・天然資源部長(Environment and Natural Resources Division)であるイグナシア・モレノ(Ignacia Moreno)市民権部長(Civil Division)であるトニー・ウェスト(Tony West)を含む連邦検事グループを派遣した。彼らはそのとき以降、事実の収集と政府の法的対処策を調整すべく誠実に働いている。

③我々は納税者の税金を1セントたりとも無駄なく取り返し、環境と野生生物が被った損害を取り戻すことを確約する。すなわち、我々は責任を持つ者が大混乱(mess)を整理し、悲劇で失われまた傷ついた天然資源を回復したり置き換えるべくことを確実にするつもりである。そして法律の範囲内の最大範囲でいかなる違法行為を起訴に持ち込むつもりである。

④それらの適用に関し、司法省の検事等が取組んでいる具体的な法律は次の通りである。(筆者注5)
「水質汚濁防止法(Clean Water Act:CWA)」(民事罰および刑事罰を定める)
「1990年油濁法( Oil Pollution Act of 1990:OPA)」
「1918年渡り鳥保護条約法( Migratory Bird Treaty Act)」
「1973年絶滅保護種法(Endangered Species Act)」(同法は絶滅の危機に瀕した種の動物につき怪我をさせたり死なせた場合には刑事罰を科す)
その他伝統的な犯罪処罰法


(筆者注5)読者は気づかれると思うが、多くのセグメント立法を有する米国で環境規制法はこれだけと思うであろう。今回適用の中心となっている「1990年油濁法( Oil Pollution Act of 1990:OPA)」が1989年「エクソン・バルディス号」の流失事故を背景に成立したことから考え、その規制強化に向けた改正法案は連邦議会下院や上院ですでに出されている。その概要を述べておく。
〔上院〕S.3305 「Big Oil Bailout Prevention Liability Act of 2010」(2010年5月4日上程:「1990年油濁法につき沖合原油掘削施設(offshore facility)に関し責任を持つ企業の責任強化に関する改正法案」(提出議員:民主党Bill Nelson(Fla.),Frank Lautenberg(N.J.),Robert Menendez(N.J.)他6名):共同提案議員は23名。
公式法案要旨は、「2010年4月15日施行の本法にもとづき、深海港(deepwater port: 沖合のLNG受入基地については、LNG基地建設促進を目的として2002年に改正された深海港法(Deepwater Port Act)に基づき、米国運輸省(DOT)(沿岸警備隊、海事局)の規制下に位置付けられることになった(沖合3マイル以遠のプロジェクト)を除く航行可能水域や海岸線隣接地域での原油掘削施設からの石油排出につき責任を負うものは、撤去にかかる総費用に加え100億ドル(現行7,500万ドル)の賠償金を科すというもの。 」

〔下院〕H.R.5214「Big Oil Bailout Prevention Act of 2010」(2010年5月5日上程:「1990年油濁法につき沖合原油掘削施設(offshore facility)に関し責任を持つ企業の責任強化に関する改正法案」(提出議員:共和党Holt Rush他72名が提案)。
公式法案要旨はS.3305の内容のほかに、(2)として州や地方政府が原油流失被害の準備および被害の緩和措置のため、大統領に「重油流失責任信託基金(Oil Spill Liability Fund)」からの事前支払を行う命令を発布できる規定を盛り込むというものである。
なお、同様の内容の法案が上院ではS.3472 、下院ではH.R.5355 が上程されている。

 米国は議員立法が最優先される国であるが、行政機関も適用法の限界には敏感で、下院や上院の関係委員会の委員長との二人三脚立法はごく一般的である。司法省等政府
関係者の発言等から見て当然現行法の適用の限界は承知しており、オバマ政権は適切な立法措置のために議会幹部との水面下の調整を行っていると見るのが常識であろう。

 

[参照URL]

*筆者追加注2021.2.25

2010年6月現在の本ブログ執筆時の参照すべきBP社、連邦政府のデープホライズン対策専門サイト、連邦環境保護庁、地元州の環境保護機関のサイトは一部リンクが不可となってる。これだけの原油流失事故であるのにかかわらず、問題意識の低さか?

 しかし、筆者なりに正確な情報入手にタレンジした結果、連邦エネルギー省科学技術情報局(OSTI.gov)の報告書にたどり着いた。表題は

「Sandia National Laboratory Support of the BP Deep p water Horizon Oil Spill Accident:Kenneth Gwinn Solid Mechanics Department, Engineering Sciences Center:Sandia National Laboratories Sandia National Laboratories Albuquerque, NM:January 25, 2011」(全14頁)

その前文でこのプレゼンテーションの情報は、具体的には、 2010年9月8日、BP社のディープウォーターホライズンの事故調査報告書(http://www.bp.com/extendedsectiongenericarticle.do?categoryId=40&contentId=7061813)にBPの数値等に依っているとある。

・BP社のディープウォーター・ホライズン対応専門サイト:
http://www.bp.com/extendedsectiongenericarticle.do?categoryId=40&contentId=7061813
・連邦政府のディープウォーター・ホライズン対策専門サイト“Water Horizon Response”:
http://www.deepwaterhorizonresponse.com/go/doc/2931/578227
・フロリダ州環境保護庁の被害状況専門サイト:http://www.dep.state.fl.us/deepwaterhorizon/
・連邦エネルギー省長官のサイト:
http://www.energy.gov/organization/dr_steven_chu.htm
・連邦環境保護庁(EPA)の「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」の専門サイト:

・EPAのCase and Settlement InformationとAdditional Information on the Deepwater Horizon Oil Spillの解説サイト

https://www.epa.gov/enforcement/deepwater-horizon-bp-gulf-mexico-oil-spill
・6月1日の連邦司法省ホルダー長官の記者会見:http://www.justice.gov/ag/speeches/2010/ag-speech-100601.html
・6月16日のホワイトハウスのBP社会長他との損失補償合意内容声明:
http://www.whitehouse.gov/blog/2010/06/16/important-step-towards-making-people-gulf-coast-whole-again
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米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦政府、関係州政府や連邦規制・監督機関等の対応(第1回-1)

2010-06-24 15:33:31 | 国際政策立案戦略

 
 4月17日付けの本ブログで、3月30日にフランスのパリ控訴院(Cour d’appel de Paris)は1999年12月12日に発生した老朽タンカー「エリカ号(Erika)」の沈没とそれに伴うフランス史上最悪というブルターニュ海岸の重油汚染問題につき、2008年1月16日に出された第一審のパリ大審裁判所(Tribunal de grande instance)刑事法廷の判決を支持し、エリカの依頼主である「トタル(Total.S.A.)および航行性・安全性認定につき十分な検査義務懈怠につきイタリア国際船級認定協会会員会社リナ(RINA)に各37万5,000ユーロ(約4,613万円)の過失・注意義務違反による「罰金刑」を言い渡した旨の情報を紹介した。

 皮肉にも、その約1か月半後に米国いや世界史上最大の原油流失事故が発生した。

 米国ルイジアナ州沖のメキシコ湾(Gulf Coast)で国際石油資本である英国BP社(旧社名: British Petrolerum )が操業する(掘削作業自体はトランスオーシャン(Transocean)が受託)石油掘削基地「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)」 の半潜水型海洋掘削装置(rig)
(筆者注1)で4月20日夜に大爆発が発生、作業員126名中11人が行方不明、17名が負傷したと報じられた。(筆者注2)

 正確な原油流出量が把握できないまま、4月30日までにメキシコ湾に隣接する4州(ルイジアナ、ミシシッピー、アラバマ、フロリダ)が非常事態宣言を公布している。なお、BPは当初1日あたり流失量が1,000バレル(16万リットル)と公表したが、4月28日国土安全保障省合衆国沿岸警備隊(USCG)は1日5,000バレル(80万リットル)と公式に公表した。しかし、6月13日現在のフロリダ州環境保護省によると1日当り12,000~40,000バレル(192万リットル~640万リットル)とされ、その後6月17日時点では連邦政府の公表(6月15日)とおり35,000~60,000バレル(560万リットル~960万キロリットル)に修正されている。

 今回のブログは関係州、連邦政府機関である連邦環境保護庁、エネルギー省、司法省、環境保護団体さらに「1990年油濁法につき沖合原油掘削施設(offshore facility)に関し責任を持つ企業の責任強化に関する改正法案」等の対応を中心に述べる。

 単に米英等のメディアが報じている政治面や環境保護面以上に海洋国であるわが国にとって重要な海洋の危機管理対策の任に当たる連邦商務省・海洋大気保全庁(National Ocean and Atmospheric Administaration: NOAA)の下部機関である海洋局(National Ocean Service:NOS)に属している危険物流出対策室( Office of Response and Restoration:OR&R)やUSCGといった関係機関の対応さらに食品医薬品局の対応等については次回以降で解説する予定である。さらに米国メディアでもほとんど報じていない連邦内務省の下部機関で石油やガス施設の掘削認可・監督機関である「海洋エネルギー管理、規制・執行局(Bureau of Ocean Energy Management, Regulation,and Enforcement:BOE)」(旧MMS)の深海海洋掘削の監督権限の強化を巡るための人事や改組・改革についても言及する。

 また、現下の最大の課題は、BP社等当該企業の公開性遵守に基づく正確な情報公開義務は当然ながら、USCGによる被害の拡大阻止、連邦環境保護庁(EPA)等環境保護機関、州や司法機関等の協力体制の下で米国がこのオバマ政権の基本を揺るがすような「オバマのカトリーナ」にならないための迅速かつ緻密な対応が望まれよう。このような状況下でオバマ政権は
(筆者注3) 、BP社のカール・ヘンリック・スバンベリ(Carl-Henric Svanberg((スェーデン人))会長等幹部は16日、メキシコ湾の原油流出事故に関してホワイトハウスで会談し、BPが被害者への賠償として預託口座に4年間で合計200億ドル(約1兆8,000億円)を拠出することで合意したと報じた。

Carl-Henric Svanberg 氏(現volvo会長)


 この問題に限られたことではないが、最近時のわが国のメディアもやっと取り上げ始めたが人類史上最大規模の海洋汚染危機に対し、あまりにも米国連邦政府や英国系のメジャーの経営戦略の無責任さは明らかである
(筆者注4)

 なお、BP社の原油流失事故の関する英国「エネルギー・気候変動省(DECC)」のクリス・ハフニー(Secretary of State for Energy and Climate Change)閣内大臣のリリース:ディープウォーター・ホライゾンの大惨事を受けて北海の石油リグ(rig)の検査強化策等や「2004年環境破壊賠償責任に関するEU指令(Environmental Liability Directive :ELD)」から見た問題や欧州議会や欧州委員会の動きについても別途まとめたい。

  今回は、3回に分けて掲載する


1.BP社の原油流失への対応を巡る最新情報
 BP社の原油流失事故の対応を巡る最新情報サイトを見ておく。後述するエネルギー省の報道もそうであるが、専門家向けのみでなく国民に正確な事故原因や世界中で行われている海底油田やLPGガス掘削作業に伴うリスクとその安全の対策が世界中の市民が理解できるレベルが求められているといえる。

2.大統領行政命令第13543号に基づく「BP社 ディープウォーター・ホライズン原油流出および沖合い掘削に関する全国委員会(National Commissioner on the BP Deepwater Oil Spill and Offshore Drilling )」の設置と今後の予定
(1)設置目的
 同委員会は、ディープウォーター・ホライズン爆発事故の根本原因に関する事実と状況を検証し、また将来における米国沿岸での原油掘削への影響を明らかにすることを目的とする。委員会の大統領への最終報告期限は2011年1月12日である。
 この目的に沿い連邦法、連邦規則や企業の実務慣行の見直しに関する勧告等を行う。
委員会に対する検討要請項目は以下の項目である。
①マコンダ原油噴出口の爆発(Maconda Well Explosion)と掘削作業の安全性
②米国の国内エネルギー政策における沖合い原油掘削の役割
③行き会い掘削事業の監督・規制の在り方
④原油流出対策
⑤流出の影響と調査
⑥復旧に向けた取組みと選択肢

(2)委員
 共同委員長は連邦議会元上院議員ダニエル・ロバート・グラハム(Daniel Robert Graham:一般的には、“Senator Bob Graham”)、元連邦環境保護庁長官ウィリアム・k・ライリー(William K.Reilly) である。

Daniel Robert Graham氏

William K. Reilly 氏

 その他の委員は次のとおりである。なお、これら委員の略歴のホワイトハウスの公式発表は6月14日であった。
・環境保護NPO団体である「天然資源保全協会(Natural Resources Defense Council :NRDC)代表フランシス・G・ベイネック(frances G.Beinecke)
・メリーランド大学環境科学センター所長・教授ドナルド・ボッシュ(Donald Boesch)
・全米地理学協会(National Geographic Society:米国ワシントンD.C.に本部を置く、世界最大の非営利の科学・教育団体。日本版もある)執行副会長のテリー・ガルシア(Terry Garcia)
・ハーバード大学のエンジニアリングおよび応用科学(SEAS)学部長チェリー・ミューレイ(Cherry A. Murray)
・アラスカ・アンカレッジ大学学長のフランシス・ウルマー(Frances Ulmer)

3.関係州や連邦司法省の対応
(1)関係5州の対応
各州の専用サイトによる対応状況は次のとおりである。
前述したとおり、ルイジアナ州等4州は非常事態宣言の発出とともに州民への情報開示を目的とするウェブサイトを構築している。概観した限り、その内容については差異があるものの連邦関係機関との情報連携を極めて重要視していることはいうまでもない。
また、テキサス州リック・ペリー(Rick Perry)知事サイトを見ると「非常事態宣言」は行っていないが、原油流失に係るあらゆる可能性に対応するための連邦や州の関係機関と会議・調整を行い、 毎日ホワイトハウス、USCG、国土安全保障省、NOAAおよびメキシコ湾に面した州知事と電話会議を行っていると述べている。

ルイジアナ州「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」サイト(連邦政府機関であるUSCG、USCG統合部隊および連邦環境保護庁の専門サイトとリンク)

ミシシッピー州「ミシシッピー州環境保全省「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」サイト」
同州環境保全省の「海岸線の水泳安全監視情報」

アラバマ州「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」サイト
同州環境保護省(ADEM)の「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」サイト

フロリダ州:環境保護省の「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」サイト
同州保健省の地域別保健影響情報等の専門サイト
同州の例で「非常事態宣言」について補足しておく。2010年4月30日に州知事が「群別非常事態宣言(州知事の行政命令(Executive order Number 10-99))を公布、また、2010年5月3日に「追加群別非常事態宣言(行政命令(Executive order Number 10-100))を公布した。

⑤テキサス州:テキサス州総合土地管理局(general land office:GLO)の「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)の原油流失阻止および対応プログラム(Oil Spill Prevention and Response Program)」サイト:GLOは州法“The Oil Spill Prevention and Response Act of 1991 (OSPRA)”に基づく州の監督責任機関である。

(2) ディープウォーター・ホライズン問題に関する前記5州以外の州の対応例
カリフォルニア州知事は、5月3日、州の財政再建の一環として同州サンタバーバラ(Santa Barbara)沖で計画されていた原油開発拡大計画の中止を決めたと報じられている。

***************************************************************************************

(筆者注1) 石油リグ(rig)は石油プラットフォームとも呼び、海底から石油や天然ガスを掘削・生産するために必要な労働者や機械類を収容する、海上に設置される大きな構造物をいう。(三菱東京UFJ銀行のワシントンDC・レポートから引用)

(筆者注2) わが国で、独自に今回のメキシコ湾原油流失事故に関する詳細な記事は皆無といってよい。その最大の理由は情報源が大手メディアに限られていることである。その中で損保ジャパン・リスクマネジメントの解説「メキシコ湾沖 石油掘削基地 爆発炎上・原油流失事故」は唯一、各種情報を収集し冷静に情報を整理している。また、オバマ政権や議会のエネルギー政策の見直し課題については5月14日付の三菱東京UFJ銀行のワシントンDC・レポート「 Obama政権にとってタイミングの悪いメキシコ湾石油流出事故」がポイントを簡潔にまとめている。これら以外にまともな情報がないこと自体が、わが国の海外情報の偏りの証左といえる。 

(筆者注3)ちなみに、カール・ヘンリック・スバンベリ(Carl-Henric Svanbergの年間総報酬はいくらくらいと思うか。Bloomberg Businessweek で見れる。2008年度で見ると2億4,500万円(20,423,391スェーデン・クローネ)である。米国のウォールストリートの金融経営者の場合と比べていかがか。

(筆者注4) これらの点を明確に指摘したユニークなブログを見つけた。5月6日から6月5日までの間に計8回連載している。図解や動画を駆使して前後して読めるので是非参考にされたい。ただし、情報源が限られており、内容面の信頼性は保証しかねる。
連載第1回目( 5月6日投稿)のURL: http://nappi10.spaces.live.com/blog/cns!39E8451829AE7F4!21549.entry
連載8回目(6月5日投稿)のURL: http://nappi10.spaces.live.com/blog/cns!39E8451829AE7F4!22220.entry

**********************************************************************************************::::

[参照URL]

*筆者追加注2021.2.25

2010年6月現在の本ブログ執筆時の参照すべきBP社、連邦政府のデープホライズン対策専門サイト、連邦環境保護庁、地元州の環境保護機関のサイトは一部リンクが不可となってる。これだけの原油流失事故であるのにかかわらず、問題意識の低さか?

 しかし、筆者なりに正確な情報入手にタレンジした結果、連邦エネルギー省科学技術情報局(OSTI.gov)の報告書にたどり着いた。表題は

「Sandia National Laboratory Support of the BP Deep p water Horizon Oil Spill Accident:Kenneth Gwinn Solid Mechanics Department, Engineering Sciences Center:Sandia National Laboratories Sandia National Laboratories Albuquerque, NM:January 25, 2011」(全14頁)

その前文でこのプレゼンテーションの情報は、具体的には、 2010年9月8日、BP社のディープウォーターホライズンの事故調査報告書(http://www.bp.com/extendedsectiongenericarticle.do?categoryId=40&contentId=7061813)にBPの数値等に依っているとある。

・BP社のディープウォーター・ホライズン対応専門サイト:
http://www.bp.com/extendedsectiongenericarticle.do?categoryId=40&contentId=7061813
・連邦政府のディープウォーター・ホライズン対策専門サイト“Water Horizon Response”:
http://www.deepwaterhorizonresponse.com/go/doc/2931/578227
・フロリダ州環境保護庁の被害状況専門サイト:http://www.dep.state.fl.us/deepwaterhorizon/
・連邦エネルギー省長官のサイト:
http://www.energy.gov/organization/dr_steven_chu.htm
・連邦環境保護庁(EPA)の「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」の専門サイト:

・EPAのCase and Settlement InformationとAdditional Information on the Deepwater Horizon Oil Spillの解説サイト

https://www.epa.gov/enforcement/deepwater-horizon-bp-gulf-mexico-oil-spill
・6月1日の連邦司法省ホルダー長官の記者会見:http://www.justice.gov/ag/speeches/2010/ag-speech-100601.html
・6月16日のホワイトハウスのBP社会長他との損失補償合意内容声明:
http://www.whitehouse.gov/blog/2010/06/16/important-step-towards-making-people-gulf-coast-whole-again
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偽のスパム架電による正当な金融機関の確認電話を阻止する電話利用型DOS攻撃の最新動向

2010-06-22 13:34:52 | Phishing ・新型詐欺問題


 Last Updated:February 25,021


 筆者は手元に届くFBIからの情報で、2010年5月11日リリースで変わったサイバー犯罪(ホワイトカラー犯罪にも該当)の情報を読んでいた。
 わが国でこのような犯罪は考えられるのか良く分からない点もあり、そのままにしていたが約1ヶ月半後の6月21日にもFBIサイトで再度取り上げられていた。

 IT詐欺の多様化はとどまることを知らないのであり、犯罪手口を提供するというマイナス面は承知しつつもあえて正確な情報提供し、あわせて捜査関係機関の認識をあらたにしたいとの目的からまとめた。

 なお、FBIが述べている通り、このような犯罪行為が行われる背景にはまさにSNSの安易な利用と個人情報(とりわけ口座情報等)の提供があることは間違いない。また、わが国では自動ダイアリング・プログラムによるマーケティング活動といった迷惑電話の規制法制がないこともあり
(筆者注1)、一方、振り込め詐欺もそうであるが「電話番号の非開示」も重要な安全対策の対象であり、またこれらを扱う事業者の認識も変えなくてはならない時代になったといえる。

1.犯罪の手口
 この手口は電話型DOS攻撃(telephony denial-of-service:TDOS)として知られており、この数週間FBIと協同調査を行った電話会社によると、これらのDOS攻撃の急増が見られた。
 加害者は、自動ダイアリング・プログラムと複数の口座を対象として、被害者に向け数千回の電話により固定電話や携帯電話の利用を遮断、通話不可とする

 被害者が電話口に出ると、通話の中断(dead air:無言電話 )あったり無害な録音メッセージ(innocuous recorded message)や広告さらにはテレフォン・セックス・メニュー等多様である。このスパム電話の呼出し時間は通常短いが非常に頻繁であり、被害者はこの妨害電話に対処するため電話番号の変更を行わざるを得なかった。

 FBIは、この違法な呼出しが牽制的な機能を持つと判断した。すなわち、TDOSを行っている間、加害者は銀行とのオンライン取引や他の取引口座につき同口座から資金を引き出すためアクセスしているのである。

 加害者は何らかの方法で犠牲者の金融取引情報を入手すると、次にEメールアドレス、電話番号や銀行口座番号等被害者の個人識別情報を入手したり、取引内容の変更を行うため金融機関に連絡を取るため金融機関にコンタクトをとる。

 わが国でも同様であるが、このような場合、金融機関は預金者である被害者に確認電話する。その電話確認行為を阻止するため、加害者は口座を正式に管理している金融機関が直接本人に取引内容や口座内容の変更について電話確認しようとしても、その電話は話し中となり確認が出来ず、後日、金融機関や被害者が被害に気がついたときはすでに遅しである。

 FBIはこの犯罪手口について民間調査会社のサイトから同犯罪が行われていることを知っていた。2009年フロリダ州のセイント・オーガスティン(St.Augustine)に住む非常勤歯科はTDOSにより年金口座から40万ドル(約3,640万円)を失うという被害に遭った。

 連邦捜査機関は1分間に大量の架電呼出しを行うコンピュータで作成する自動ダイアリング・ツールと組合わせた1人のユーザーにより作られたVOIPアカウントを発見した。そのVOIPアカウントは廃止されたが、その手口の加害者は特定できなかった。FBIの捜査パートナーであるAT&TはニューアークのFBIサイバー犯罪チームの支援を得て調査を行った。

 AT&Tの世界的詐欺対策管理部副部長(Associate Director of Global Fraud Management)のアダム・パナギーア氏(Adam Panagia)は、2009年11月のこの手口が行われた後、最近米国全般にこの種の犯罪が増加していると述べている。

 5月に電気通信詐欺対策協議会(the Communication Fraud Control Association:CFCA) (筆者注2)はFBIに公式の法執行グループの連絡調整機関となるよう要請を行った。FBIとCFCAはTDOSを防御するためその傾向やパターンを分析し、他方で一般利用者を教育、また加害者を特定して司法の場に持ち込むことの協同作業を行っている。

2.本質的な問題
 頻繁に電話がかかってくること自体、通信事業会社の技術的な問題で犯罪の脅威ではないと考え、被害者は直ちに法執行機関に連絡しようとしない。米国PAETECのCIOであるロバート・ムーア氏はVOIPや電話サービスの最新技術の出現でこれらのプラットフォームを利用するビジネスをターゲットとする犯罪はますます専門化してきたと述べている。FBIは、この悪意ある電話呼出しに見る1つの傾向は受け手が電話口に出たとき被害者の多くが予め録音されたアジア訛りの米国の自動車広告を聞いている。また、もう1つの際立った特徴は受け手が電話口に出たとき「電話セックスメニュー」について聞かれることである。

3.被害者とならないための方法
 TDOS攻撃から自身を守るため消費者は詐欺師の行動の先回りすることである。
 FBIニューアークの特別捜査官のミシェル・B.ウォード氏(Michael B.Ward)は
「受け手が欲しない(unsolicited)電話は常に詐欺の現われであり、FBIはこの手口を広く一般に通知・助言することが重要であると信じる。」と述べている。「消費者は仮に自分がTDOS攻撃や類似の詐欺の目標となったと信じるときは、金融取引口座や主要な信用情報機関に対し注意を促すという強固な安全手続を引続き取るべきである。定期的かつ頻繁にオンラインバンキングやテレフォンバンキングのパスワードを変更すべきであり、また毎年送付される自らの信用情報を入手するとともに詐欺的な犯罪が行われていないかなどを検証すべきである。

 AT&T社のアダム・パナギーア氏は「我々はTDOSが行われていると疑わしいときは金融機関に通知した後、直ちに電話通信プロバイダーにも通知する。」と述べている。
 この通知は犠牲者が保有するオンライントレードのブローカーに対しても行うべきである。最近の事件で犠牲者が金融機関への通知を迅速に行った結果、口座の資金が盗まれる試みが阻止できた例がある。

 FBIは米国インターネット犯罪苦情センター(Internet Crime Complaint Center:IC3 に通知された苦情や申立について直ちに行動を起こすものではなく、これらの情報は犯罪の傾向とパターンの分析に利用されるものであるが、もしパターンが特定されると更なる詳細な犯罪捜査のため、犠牲者は詳細情報が聴取されることになるであろう。
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(筆者注1) 2010年3月23日、英国ビジネス・イノベーション・職業技能省( Department for Business, Innovation and Skills :BIS)の 閣外大臣であるケビン・ブレナン議員(Kevin Brennan MP)はマーケティング会社等による自動化された呼出装置(ACS)を使用する電話呼出しのままで無言の状態が続き、オペレータが直ちに通話口に出ない呼出しによる消費者の迷惑と精神的苦悩対策として最高額(200万ポンド:約2億6,400万円)の罰金刑の引上げに関する省令改正を公表した。この件に電話セールスに関する法規制問題として別途本ブログを作成する予定である。

(筆者注2) わが国で「 電気通信詐欺対策協議会(the Communication Fraud Control Association)について紹介したサイトは見ない。その理由の1つは人権問題と微妙にかかわる問題であることかも知れない。同協会のHPで由来について解説しているので簡単に紹介する。なお、CFCAは2008年5月、中華人民共和国の北京で開催された世界通信会議(International Conference on Communication)のセキュリテイ・フォーラムの協同スポンサーである。CFACの設立の構想は1985年2月、長距離電気通信事業者の通信の安全性に関する専門家グループにより始まった。その中心となる目的は増加しつつあるコミュケーション詐欺と効果的に戦う方法・手段を見出すことであり、AT&T、ITT、MCI、Network One、Satellite Business System、Sprintの代表がCFACの土台を作るため会合を重ねた。数年間にわたり会員の資格はワールド・ワイドのネットワークに広がり、構内換機(PBX/PABX)所有者、ISP、ケーブル・衛星放送事業者(cable and satellite providers)、詐欺対策システム開発事業者(fraud system developers)、検察官、警察等法執行機関、通信分野のコンサルタント等にまで拡大した。
 CFCAの本部は米国ニュージャージー州ローズランド(Roseland)に置く。CFCAが支援する教育プログラムでは通信システムがいかなるかたちで詐欺師により用意される、それとどのように戦い、企業の資産をどのように守るか等について集中的に扱う。

[参照URL]

https://archives.fbi.gov/archives/newark/press-releases/2010/nk051110.htm

http://www.fbi.gov/page2/june10/phone_062110.html

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米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦政府、関係州政府や連邦規制・監督機関等の対応(第1回-3完)

2010-06-20 15:33:44 | 国際政策立案戦略

7.環境保護団体の取組み事例紹介
 米国に本拠を持つ環境保護NPO団体“Food & Water Watch”の代表(executive director)であるウエノア・ハウター氏(Wenonah Hauter)は6月8日、英国エネルギー・気候変動省(DECC)のクリス・ハフニー(Secretary of State for Energy and Climate Change)閣内大臣がディープウォーター・ホライゾンの大惨事を受けてオイル検査者を増員した件を取り上げている。

Wenonah Hauter 氏

8.オバマ政権とカール・ヘンリック・スバンベリBP会長等との合意内容
 6月16日のホワイトハウスの声明 (筆者注6)によると、BP社は今年を含めた4年間で計200億ドル(年50億ドル)を政府やBP社がコントロールするのではなく補償専用口座(エスクロー勘定(escrow account):この用語は「プロジェクト・ファイナンスの返済原資となるキャッシュフローをプロジェクトの破綻等の非常事態に備え、プロジェクト事業体から隔離しておくための口座。返済の確実性を高める。」という意味である)に拠出する。同口座は原油流出で被害を受けた個人や企業への補償を目的とし、弁護士のケネス・ファインバーグ(Kenneth Feinberg)氏の監視下に置かれる。

 同氏は、2001年の「9.11米同時多発テロ」の犠牲者向け補償基金を管理して名をはせ、その後、不良資産救済プログラム(TARP)の適用を受けている企業の役員や高報酬従業員の報酬規制に関する報酬基準およびコーポレート・ガバナンスの暫定最終規則の制定および連邦財務省のTARP担当特別報酬監督官(Special Master)として任命され、さらに今回BP補償基金の管財人となったのである。(筆者注7)

 ホワイトハウスの声明では、次のような点を強調している。
①200億ドルの補償金額は上限キャップではない。メキシコ湾岸で生活や仕事を行う人々や企業等に対しBP社は彼らの請求を遵守することを公に明言した。今回のオバマ政権がBPとの間で合意した内容は金銭面および法的な枠組みの確立することにある。
②200億ドルの補償基金は原油流失のより住民自身や漁業等事業において経済的損失が生じたときは、この200億ドルの一部に対する請求訴訟を起こす原告適格が認められる。この基金は、裁判所における現存の個人的請求または州による裁判請求を無効とするものではない。
③BP社は原因となる環境破壊に関する責任を引続き持つし、政府はその活動を支援することを継続するつもりである。

 また、補償請求手続の独立・中立性を保証するための「請求手続機関」および「エスクロー勘定の内容」について次のとおり明記する。
〔独立性のある請求手続機関〕
①手続の独立性を保証するため独立請求監督官(independent claims administrator)としてケネス・ファインバーグ(Kenneth Feinberg)氏を任命する
②同機関は、被害回復請求に関する標準を作成する予定である。
③3名の裁判官からなる合議体は、監督官の決定に対する上告の際に利用可能となる。
④同機関は、原油流失により損害を被った個人や事業者すなわち地方、州、部族および連邦といった各政府による請求のために設計される。
⑤同機関の決定に不同意な請求権者は、引き続き法律の下で裁判所に訴えたり、「重油流失責任信託基金(Oil Spill Liability Fund)」 (筆者注8)への請求が認められる。
⑥独立請求監督官による現行法の下での決定は、BP社を法的に拘束する。
⑦同機関が下したあらゆる請求内容につき、支払のためエスクロー勘定に求めることができる。
〔エスクロー勘定〕
BP社は2010年の50億ドルを含む4年間に合計200億ドル提供する(contribute)することに合意した。BP社はこの責任を果たすため米国にある同社資産200億ドルを預託することとする。
・BP社は責任ある当事者として被害の撤去や損害の回復にかかる支払につき確約した。そのことは、責任を回避するため1990年油濁法(OPA)に基づく補償支払額のキャップを適用することを主張しないことを意味する。
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(筆者注6) 6月16日のオバマ政権幹部とBP社幹部の会合の出席者名は次の通りである。
政府側(6名):President Barack Obama, Vice President Joe Biden ,Senior Advisor(大統領上級顧問)Valerie Jarrett,Labor Secretary(労働省長官)Hilda Solis,司法長官Eric Holder,国土安全保障省長官Janet Napolitano
BP社側(4名):会長Carl-Henric Svanberg,CEOのTony Hayward,法律顧問Rupert Bondy,sen専務取締役Robert Dudley

(筆者注7) 2009年9月17日付けの本ブログで米国やEU加盟国における金融機関の役職員の高額報酬問題につき解説した。米国の金融危機を発端とする緊急経営支援策の裏腹の問題としての高額報酬規制の取組みにつき述べたが、ここでその後の財務省や特別監督官の具体的な報酬規制の主な決定内容について時間をおって補足説明しておく。

・2009年6月10日、連邦財務省が” Interim Final Rule on TARP Standards for Compensation and Corporate Governance”を公布。すなわち、不良資産救済プログラム(TARP)の適用を受けている企業の役員や高報酬従業員の報酬規制に関する報酬基準およびコーポレートガバナンスの暫定最終規則の制定および連邦財務省の不良資産救済プログラム(TARP)特別報酬監督官(Special Master)としてケネス・ファインバーグ(Kenneth Feinberg)氏を任命した。

・2009年10月22日、ケネス・ファインバーグが高額の公的資金の注入を受けた米国企業(AIG, Citigroup, Bank of America, Chrysler, GM, GMAC and Chrysler Financial)の役員等上位高所得者計175人(トップから25名×7社)の現金報酬(cash compensation)につき90%以上削減、またボーナスを含む総報酬を平均50%以上削減および現金報酬の上限を50万ドル(約4,500万円)とする第1次強制決定(first rulings)のリリースした。

・2009年12月11日、ケネス・ファインバーグはAIG, Citigroup, GM, and GMACの4社の上位26位~100位従業員に対する第2次強制報酬額決定(second rulings)をリリースした。

・2010年3月24日、 ケネス・ファインバーグはAIG, Chrysler, Chrysler Financial, GM, and GMAC.の5社計119人(Bank of America および Citigroupは特別支援金を全額返済済のため適用除外)に対する2010年度の現金報酬は2009年度比平均33%削減、総報酬額は15%近くまで削減すること、および「2009 年アメリカ再生・再投資法(American Recovery and Reinvestment Act(H.R.1)」に基づき2009年2月17日以前に支援を受けた企業411社に対しトップ25位の報酬額の報告を特別監督官に30日以内に提出のうえ納税者に適切な返済を促すよう交渉する旨リリースした。

(筆者注8) 1990年油濁法( Oil Pollution Act of 1990:OPA) は、1989年3月24日にアラスカ州プリンスウィリアムサウンドで「エクソン・バルディス号」が座礁し、約37,000トンの原油が流出し、船主は流出油の清掃費用(expeditious oil removal ) 、汚染による被害者への損害賠償及び罰金等で多大な支払いを強いられた。一方、アメリカ合衆国政府は当時の連邦法と州法を見直し、油濁に関する責任及び補償に関する包括的な法体系の確立・整備を実施し、1990年8月18日に新連邦法として制定された。OPA の主な内容は、①油濁損害に関する責任や賠償について、各州独自の立法権の優先(州法優先)。②連邦政府以外の州や第三者に責任当事者(船主)への損害賠償請求権を与えており、船主は厳格責任(無過失責任)を負う。③責任限度額として、3,000トン以下のタンカー:トン当り$1,200、最低$2,000,000、3,000トン超のタンカー:トン当り$1,200、最低$10,000,000、その他の船舶:トン当り$600、最低$5000,000、但し、重過失、故意、連邦の安全基準に対する違反がある場合は責任の制限はない。④汚染除去費用及び損害補償のための基金制度(OSLTF:補償限度額10億ドル)を設置、その後「2005年エネルギー政策法(The Energy Policy Act of 2005)」に基づき基金限度額は27億ドルに引上げられ、また「2006年デラウェア河川保護法( Delaware River Protection Act of 2006)」 および「2006年海岸線保護および沿岸警備法第4編( Coast Guard and Maritime Transportation Act of 2006)」に基づき責任限度額が引上げられた。基金の財源は国内産原油と輸入石油製品1バレル(約159リットル)当り5セントの税金からであり、基金制度は、原因者が不明、支払能力がない、責任限度額の超過分、支払拒否の場合、適用される。⑤すべての油輸送船及び300トン超のその他の船舶は、米国の国土安全保障省合衆国沿岸警備隊(USCG)が発行する賠償資力証明書(Certificate of Financial Responsibility:COFR)を取得して船内に備え置かなければならない。⑥米国水域内で油の輸送を行う船舶の所有者及び運航者は、事故対応として船舶油濁事故対応計画書(Vessel Response Plan:VRP)を作成し、コーストガードの承認を受け船内に備え置かなければならない。なお、油濁事故による損害には、私的財産だけではなく、自然資源の損害(natural resource damages:NRDs)も含まれることが明記されている。(谷川久監修、東京海上火災保険株式会社船舶損害部編:『アメリカ合衆国油濁法の解説』、 U.S. Coast Guard’s National Pollution Funds Center :NPFC): http://www.uscg.mil/npfc/About_NPFC/opa.asp)に基づき筆者が各法律原典とのリンクなど補筆した)

[参照URL]
・BP社のディープウォーター・ホライズン対応専門サイト:
http://www.bp.com/extendedsectiongenericarticle.do?categoryId=40&contentId=7061813
・連邦政府のディープウォーター・ホライズン対策専門サイト“Water Horizon Response”:
http://www.deepwaterhorizonresponse.com/go/doc/2931/578227
・フロリダ州環境保護庁の被害状況専門サイト:http://www.dep.state.fl.us/deepwaterhorizon/
・連邦エネルギー省長官のサイト:
http://www.energy.gov/organization/dr_steven_chu.htm
・連邦環境保護庁の「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」の専門サイト:
http://www.epa.gov/bpspill/index.html
・6月1日の連邦司法省ホルダー長官の記者会見:http://www.justice.gov/ag/speeches/2010/ag-speech-100601.html
・6月16日のホワイトハウスのBP社会長他との損失補償合意内容声明:
http://www.whitehouse.gov/blog/2010/06/16/important-step-towards-making-people-gulf-coast-whole-again

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米国疾病対策センターの職場等での完全禁煙法実施州の最新情報発表と副流煙に関するIOM等報告書

2010-06-01 03:29:54 | 海外の医療最前線

 
Last Updated:February 25,2021
 

 2009年12月30日、米国疾病対策センター(CDC)はノース・カロライナ州が南部の州で初めてとなる2010年1月2日からレストランと酒場(bar)における完全喫煙禁止法を施行する旨発表した。

 ノース・カロライナ州の場合、個人的な職場での喫煙を禁止していないためCDCの「禁煙やタバコの使用のコントロールに関する州レベルでの最新データおよび過去のデータを含むデータベース(State Tobacco Activities Tracking and Evaluating(STATE)System)」
(筆者注1)の定義に該当する22州(ワシントンD.C.を含む)とは異なるものの前向きの取組みを評価している。

 今回は、わが国でもやっと最近その健康被害問題が強く叫ばれてきた「副流煙(secondhand smoke)」対策の米国の最新動向を紹介する。

 本文で述べるとおり、米国の保健に関する研究機関の健康リスク問題の取り上げ方はかなりセンセーショナルであり、時として医療専門家から非科学的であると反発を招くことが多いが
(筆者注2)、この副流煙問題は間違いなく二次喫煙者への重大な健康被害を招く問題であり、迅速かつ的確な規制を行うべき重要課題であることは間違いない。

 なお、わが国の職場における受動喫煙防止対策については、厚生労働省は2009年7月より有識者による「職場における受動喫煙防止対策に関する検討会」(座長:相澤 好治 北里大学医学部長)を8回にわたって開催し、その結果を報告書としてまとめ2010年5月26日に公表した。
 
 
1.副流煙の健康リスク
 副流煙は米国では毎年46,000人の心臓発作死(heart attacks)や3,400人の肺癌死(lung cancer deaths)を引き起こす原因とされているが、さらに米国では1億2,600万人の非喫煙者がその危険にさらされている。
 2006年、公衆衛生総監(Surgeon General) (筆者注3)は非喫煙者が被るこれら副流煙リスクから考えて、すべての室内での禁煙の徹底が必要であるとの結論 (筆者注4)づけている。すなわち、非喫煙者と喫煙者の完全切り離し(分煙)や空気清浄やビル換気向上策は副流煙から人々を保護する効果的な方法とはいえないとしている。

 また、米国全米アカデミーの医学研究所(Institute of Medicine:IOM) (筆者注5)は2009年10月15日、副流煙被爆が心臓発作に引き金となり、州等による完全禁止法の制定と心臓発作による入院患者の減少のための政策の強力な実行の必要性を理解させるべきであるとする報告書を発表した。(筆者注6)

 これら2つの最近時の副流煙に関する科学的調査報告書は、完全喫煙禁止法の施行後1年目に、心臓発作入院件数を平均して8%~17%低下させたことを証明している。

2.米国における完全禁煙法実施済の州
 CDCの“State Tobacco Activities Tracking and Evaluating(STATE)System”によると「職場」、「レストランオ」および「酒場」での完全禁煙禁止を実施している州は現時点で以下の22州である。
アリゾナ、コロラド、デラウェア、ワシントンD.C.、ハワイ、イリノイ、アイオワ、メリーランド、メイン、マサチューセッツ、ミネソタ、モンタナ、ネブラスカ、ニュージャージー、ニューメキシコ、ニューヨーク、オハイオ、オレゴン、ロードアイランド、ユタ、バーモント、ワシントン

 なお、2010年中に仕事場、レストランおよび酒場での100%禁煙法が施行されるのはミシガン州(2010年5月1日)、ウィスコ州(2010年7月5日)である。
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(筆者注1) 米国の州政府および地方政府の多くは、学校、病院、空港、バスターミナルなどの公共施設を禁煙にする法律を通過させている。企業の雇用者に非喫煙者をタバコから守る社内方針を立てるよう命じる州や非喫煙者の権利を述べた法律を制定している地方自治体もあり、そのほとんどは州法よりも厳しいものになっている。州レベルでのタバコの規制に関する情報は米国国立疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention、CDC)のState Tobacco Activities Tracking and Evaluating(STATE)Systemのウェブサイトを参照されたい。STATE Systemは、禁煙やタバコの使用のコントロールに関する州レベルでの最新データおよび過去のデータを含むデータベースである。

(筆者注2)フジ虎ノ門健康増進センター長の齊尾武郎(さいお たけお)氏が、「IOMレポート『人は誰でも間違える』の真実」と題する小論文で医学から見た健全なる批判精神(healthy skepticism)の重要性について改めて問題提起を行っている。その批判の対象となっているのが1999 年12 月にIOMが公表した“To Err is Human:building a safer health system”であり、このレポートが衝撃を与えたのは,米国では投薬ミスや医師の過労による医療過誤(medical error)で年間44,000 ~ 98,000 人もの入院患者が死亡しており、その数は標準的な処置の基準を定めたり、医療ミスを報告するシステムを作ったりするなど、正しい対策を取ることで減らせると指摘したことである点を紹介されている。
 齊尾氏が指摘する問題点は、わが国の医療専門家がIOMレポートが出たときに、レポート自身を批判的に吟味し,IOMレポートの根拠となっているデータを深く読み込もうとするのが当然であるにもかかわらず、行われていない点である。
 この点は、筆者が本ブログの執筆に当り単に海外メディア記事の翻訳ではない客観的な事実の検証に常に心掛けている点であり、専門分野は異なっても共通的な重要なテーマであるのでここで紹介した。

(筆者注3)「連邦公衆衛生総監 (Surgeon General of the United States:Surgeon General)」はわが国では比較できるものがなく、定訳もない。また総監が運用責任上のヘッドとなる「米国公衆衛生特別任命団(U.S.Piublic Health Service Commissioned Corps)(以下「任命団」という)」についても、その組織や運用実態に関する説明は皆無である。そこで、筆者の判断で以下のとおり解説を行うが、関係者による正確な補筆を期待したい。

 連邦保健福祉省次官補(Assistance Secretary for Health)は任命団の戦略および政策命令を監督する。Surgeon Generalは公衆衛生総監局(Office of the Surgeon General)を通じて約6千人にのぼる任命団全体を監督する。

 Surgeon General(現総監は2009年11月3日に宣誓したRegina Benjamin)は米国における主たる保健教育責任者であり、健康の増進ならびに病気や怪我の危険をいかに減少させるかにつき可能な限り最善の科学的情報を提供する責務をもつ。任期は4年間で連邦議会上院の助言と同意に基づき大統領が任命する。

 また、任命団の多様なカテゴリーを代表する責任者が“Chief Professional Officers:CPOs”である。各CPOsは自らの専門カテゴリーについて総監局および連邦保健福祉省に対するリーダーシップや協調を提供す。また、団員の募集、保持やキャリアー開発に関しガイダンスの策定や総監や管理委員会(administrative committees)への助言を行う。

 CPOsは以下のカテゴリーに区分されている。括弧内はカテゴリー別の2008年5月現在の要員数である。
①歯科(376)、②栄養士(dietitian)(92)、③医療技術(404)、④環境衛生(365)、⑤検眼士、ソーシャルワーカー、医師助手(physician assistant)等の公共医療(1,010)、⑥医学(988)、⑦看護(1,405)、⑧薬剤士(949)、⑨科学/研究者(247)、⑩作業療法(occupational therapy)、物理療法(physical therapy)、音声言語病理学(speech-language pathology)および聴覚学(audiology)等のセラピスト(140)、⑪獣医(veterinarian)(85)

 では、具体的に団員資格を得るには要件が求められるのか。
①米国民であること。
②44歳未満。
③一定の医学上の資格を有すること。
④該当する場合、現在かつ無制限の免許を有していること。
⑤認定機関の資格または上級資格を有していること(qualifying degree or a higher degree from an accredited institution)(職業により異なる)

 最後に、最大の問題である特別任命団になることはどのような処遇上のメリットがあるのであろうか。簡単にまとめておく。
①努力とキャリアの積み重ねで引上げられる初任給
②健康管理や歯科治療の無料化
③住宅・食事手当ては非課税
④初年度1年当り有給休暇が30日
⑤有給病欠(Paid sick leave)
⑥有給産休(Paid maternity leave)
⑦連邦祝日の休暇
⑧医療過誤保険適用
⑨勤続20年以降個人退職年金プラン計画適用
⑩従業員貯蓄プラン(Thrift Savings Plan)(従業員が自ら選択して、給与の一定割合を拠出する確定拠出プラン。低コストで退職プラン導入が可能である。事業主もマッチング(上積み)拠出でき、将来引き出しを行うまで拠出金には課税されない。資産運用収益についても、引き出し時まで課税が繰り延べされる。従業員の拠出には税引き後拠出と税引き前拠出があるが、税引き後拠出は税制優遇措置を受けられない。1978年に401条(k)が追加されてからは、税引き前拠出は401(k)プランと同義になった。このプランは古くから存在し、最大の加入者を持つ連邦政府職員用のFERS Thrift Planの加入率は2000年3月現在で86.2%にも上っている。)ジオシティーズの解説から引用。
⑪保険料負担が少ない生命保険
⑫家族の保険料負担が少ない

(筆者注4) 2006年米国公衆衛生監査総監報告「認識しない(受動)喫煙による被爆健康侵(The Health Consequences of Involuntary Exposure to Tobacco Smoke: A Report of the Surgeon General)」は、本文のみでも全709頁にわたるものである。従って本ブログでは、第1章から全体的な結論部分のみを抜粋、紹介する。
1. 副流煙は煙草を吸わない子供や大人の早死に(premature death)と疾患を引き起こす。

2. 副流煙にさらされた子供は、乳幼児突然死症候群(sudden infant death syndrome :SIDS)、急性呼吸器感染症(acute respiratory infections)、耳の病気および激しい喘息(acute respiratory infections)によって増加するリスクを負う。 両親が喫煙する場合は、子供の呼吸不全(respiratory symptoms)を引き起こしたり肺の成長を遅くする。

3. 副流煙の大人への被爆は、即座に心臓血管系(cardiovascular system)に悪影響を及ぼし、冠状動脈性心臓病(coronary heart disease)と肺癌(lung cancer)を引き起こす。

4. 科学的な証拠は、禁煙により副流煙への被爆リスクが全くないことを示している。

5. タバコ規制における具体的進展にもかかわらず、何百万人ものアメリカ人(子供と大人の両方)が彼らの自宅と仕事場でまだ副流煙にさらされている。

6. 屋内で喫煙禁止は副流煙への被爆から非喫煙者を完全に保護する。 非喫煙者と喫煙家を分離、空気清浄機の設置やビルに通気向上によっても、副流煙への非喫煙者の被爆を回避できない。

(筆者注5) 米国アカデミー医学研究所(Institute of Medicine:IOM)は1970年に全米科学アカデミーの一部機関として設立され、政府から独立したNPO団体であり、中立的な立場からメーカーや国民の政策決定への助言を行う。現在は、「全米科学アカデミー(National Academy of Sciences)」、「全米技術アカデミー(National Academy of Engineering)」、「全米研究評議会(National Research Council)」とともに「全米アカデミー(National Academy)」の構成機関である。

(筆者注6) IOM報告の正式タイトルは「副流煙被爆と心臓血管系への副作用: 証拠に基づきそれを理解する(Secondhand Smoke Exposure and Cardiovascular Effects: Making Sense of the Evidence)」である。別途、簡潔に要旨がまとめられており、参照されたい。

〔参照URL〕
http://www.cdc.gov/media/pressrel/2009/s091230.htm
http://www.surgeongeneral.gov/library/secondhandsmoke/report/
http://www.iom.edu/Reports/2009/Secondhand-Smoke-Exposure-and-Cardiovascular-Effects-Making-Sense-of-the-Evidence/Report-Brief-Secondhand-Smoke.aspx
http://www.surgeongeneral.gov/

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