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米HHS・FDA(食品医薬品局)は北米・中南米の地域統括会社たるオリンパス・コーポレーションは火傷や火につながる可能性があるため、気管支ファイバースコープと気管支ビデオスコープをリコール

2024-01-03 09:53:52 | 食品安全・医薬

 筆者の手元に米国連邦保健福祉省(HHS)傘下の食品医薬品局(FDA)のリコール通知が届いた。筆者は、かつてブログでオーストラリアの競争・消費者委員会(ACCC)によるエアバックの安全リコールを取る上げたことがあるが、今回のリコール対象は医療機器である。

 このリコール制度は各国を比較してもかなり複雑である。今回のブログは(1)米国FDAサイトからリコール通知内容を解説し、(2)米国リコール制度の概要をなるべく正確に理解できるよう工夫する, (3) 今回のオリンパスのリコール通知のこれまでの経緯、(4)わが国のリコール制度の概観を試みるものである。

 なお、本ブログを読まれた方は気が付かれると、米国の重大なリコール通知(class )と比較して、はたしてオリンパスのリコール通知の正確な受け止め方はどうすべきであろうか。

Ⅰ.FDAのリコール通知

 FDAはオリンパス北米・中南米の地域統括会社たるオリンパス・コーポレーションが販売した「気管支ファイバースコープ(bronchofiberscopes)」と「気管支ビデオスコープ(bronchovideoscopes)」を「クラスⅠリコール」すなわち、最も深刻なタイプのリコールとして識別した。これらのデバイスを使用すると、重大な怪我や死を引き起こす可能性があるとした。

このリコールは修正(correction)であり、製品の削除(removal)ではない。

 1.リコールされた製品

①製品名:オリンパス気管支ファイバースコープと気管支ビデオスコープ

②製品コード:参照 データベースエントリをリコール

③モデル番号: 完全なリスト添付

④販売期間:2001年1月1日から2023年9月11日

⑤米国でリコールされたデバイス数:17,691台

➅オリンパスがリコールを開始した日付:2023年10月12日

2.使用デバイス

 気管支ファイバースコープ(bronchofiberscopes)気管支ビデオスコープ(brochovideoscopes)は、カメラやライトなどのアクセサリを使用して人の気道を調べたり処理したりする管状の医療デバイスである。

オリンパスのサイトから引用

3.リコールの理由

 オリンパス北米および中南米における地域統括会社たるオリンパスコーポレーション(オリンパス)は、特定の気管支ファイバースコープと気管支ビデオスコープをリコールしている。

 リコールの対象となる影響を受けた気管支ビデオスコープを使用すると、人の気道や肺の重大な火傷、気道の出血、呼吸困難、無呼吸、意識喪失、死亡など、深刻な健康への悪影響が生じる可能性がある。またけがは、長期の処置、追加の医療、長期入院、ICUケア、および死亡につながる可能性がある。さらに燃焼により、デバイスの一部が損傷または破損する可能性があり、患者に怪我をさせたり、意図せずに残ったりする可能性があり、けがの回復(retrieval)または外科的切除(surgical removal)が必要になる場合がある。

〇この問題に関しては、4人の負傷者を含め、192件の苦情があった。なお、報告された死者いない

〇次の場合、デバイスが燃焼するリスクが発生する。高周波焼灼(high-frequency cauterization)が酸素の供給中に行われたとき、または電気外科用アクセサリの電極セクションが内視鏡の端に近づきすぎたとき。

4.リコールで誰が影響を受ける可能性があるか。

 オリンパス気管支ファイバースコープまたは気管支ビデオスコープで治療を受けている人およびスコープを使用する医療従事者

5.前記影響を受ける人は何をすべきか

 2023年10月12日、オリンパスは影響を受けるすべての顧客に 緊急医療機器の是正措置につき書簡通知した。

この書簡では、デバイスの操作マニュアルの警告条項、特に次の内容を確認するよう顧客に求めていた。

①酸素を供給しながら高周波焼灼の実行を停止させる。

②内視鏡で使用する電気外科用デバイスを内視鏡から十分離してください。

③操作マニュアルに記載されているように、オリンパス気管支鏡と互換性のある高周波機器のみを使用してください。

6.連絡先情報

 このリコールについて質問がある米国のお客様は、1-800-848-9024(オプション1)のオリンパスに連絡する必要がある。

 影響を受けるオリンパスのデバイスの完全なリスト

Bronchovideoscope Olympus BF Type 1T150    Evis Exera II Bronchovideoscope Olympus BF Type 1T180

OES気管支ファイバースコープオリンパスBFタイプ1T60     Evis Exera III Bronchovideoscope Olympus BF-1TH190

Evis Exera II Bronchovideoscope Olympus BF Type 1TQ180      Evis Exera III BronchovideoscopeオリンパスBF-H190

以下、略す。

Ⅱ.FDAのリコール制度概要 

 FDAサイトの解説を仮訳する。

 リコールは、食品医薬品局 (FDA) が管理する法律に違反する製品を削除または修正する方法である。リコールは、製造業者や販売業者が、傷害や重大な欺瞞の危険性がある製品、またはその他の欠陥がある製品から公衆の健康と福祉を守る責任を負っているために行われる自主的な措置である。連邦規則集(Code of Federal Regulations: CFR)のうち 「21 CFR  PART 7—ENFORCEMENT POLICY」(筆者注)は、責任ある企業が効果的なリコールを実施できるようにするためのガイダンスを提供している。

21 CFR Part 7

 医療機器のリコールは、通常、21 CFR 7 に基づいてメーカーによって自主的に行われる。まれに、メーカーまたは輸入業者が健康へのリスクがある機器を自主的にリコールしない場合、FDA は 21 CFR 810 に基づいて医療機器リコール当局がメーカーにリコール命令を発行する場合がある。21 CFR 810 には、連邦食品医薬品化粧品法 の第 518 条(e) に基づいて医療機器のリコール権限を行使する際に FDA が従う手順が記載されている。

 21 CFR 806「医療機器の修正(correction)と除去(removals)」に基づき、製造業者および輸入者は、医療機器の修正または除去が健康へのリスクを軽減する目的で開始された場合、デバイスを除去したり、健康に危険を及ぼす可能性のあるデバイスに起因する法律違反を是正したりするため、医療機器の修正または除去について FDA に報告する必要がある。

【各用語の定義】

① 修正(correction)とは、製品を他の場所に物理的に移動せずに、製品の修理(repair)、改良(modification)、調整(adjustment )、ラベルの貼り直し(relabeling)、破壊(destruction)、または綿密な検査 (inspection)(患者の監視を含む) を意味する。

② 市場からの撤退(Market withdrawal)とは、FDA による法的措置の対象とならない軽微な違反を伴う流通製品、または通常の在庫ローテーションの実施、日常的な機器の調整や修理などの違反を伴わない、企業による流通製品の除去または修正を意味する。

③ リコール(recall)とは、FDA が管轄する法律に違反していると見なし、FDA が差し押さえなどの法的措置を開始する対象となる、企業が市販製品を削除または修正することを意味する。 リコールには、市場からの撤退や在庫の回収は含まれない。

④リコール戦略(Recall strategy)とは、特定のリコールを実施する際に取られる計画的な行動方針を意味し、リコールの深さ、公衆への警告の必要性、およびリコールの有効性チェックの程度に対処する。

⑤リコール会社(recalling firm)とは、リコールを開始した会社、または食品医薬品局の要請によるリコールの場合は、リコール対象製品の製造および販売に主な責任を負う会社を意味する。

除去(removal)とは、修理、改良、調整、再ラベル付け、破壊、または綿密な検査のために、デバイスを使用場所から他の場所に物理的に移動することを意味する。

健康に対するリスク(risk to health)とは、(1) 製品の使用または製品への曝露により、重大な健康への悪影響または死亡が引き起こされる合理的な確率があること。または (2) 製品の使用または製品への曝露が、一時的または医学的に回復可能な健康への悪影響、または重大な健康への悪影響の可能性が低い結果を引き起こす可能性があること。

  定期保守(Routine servicing)とは、デバイスの通常の耐用年数が終了したときの部品の交換 (校正、バッテリーの交換、通常の磨耗への対応など) を含む、定期的に計画されたデバイスのメンテナンスを意味する。予期せぬ性質の修理、通常の寿命よりも早い部品の交換、またはデバイスの複数ユニットの同一の修理または交換は、定期的なサービスではない。

在庫回収(Stock recovery)とは、市販されていないデバイス、または製造業者の直接の管理下にないデバイスの修正または削除を意味する。つまり、デバイスが製造業者の所有または管理下にある敷地内にあり、一部が含まれていないもの。 今回、修正または除去措置に関係するロット、モデル、コード、またはその他の関連ユニットが販売または使用のためにリリースされた。

分類Classification

 リコールは、リコール対象の製品によってもたらされる健康被害の相対的な程度を示すために、FDA によって以下のとおり、数値指定 (I、II、または III) に分類される。

クラス I - 違反製品の使用または曝露が重大な健康への悪影響または死亡を引き起こす合理的な確率がある状況をいう。

クラス II - 違反製品の使用または曝露が、一時的または医学的に回復可能な健康への悪影響を引き起こす可能性がある状況、または重大な健康への悪影響の可能性が低い状況をいう。

クラス III - 違反製品の使用または曝露が有害事象を引き起こす可能性が低い状況をいう。

Ⅲ.オリンパスのリコール通知のこれまでの経緯

 以下のとおり抜粋する。

1.2023年7月4日「米国における気管支内視鏡とレーザー治療機器を使用する際の医療機関への自主的な注意喚起について」

 OCAは、一死亡例の他重篤な患者さんの傷害に関連する事象を受けて、気管支内視鏡と適合するレーザータイプを明記し、適合しないレーザータイプを使用した際に生じるリスクについて通知します。また既存のレーザー使用に関する注意喚起を強化するために、気管支内視鏡の取扱説明書の更新を行います。これは市場からの製品回収ではありません。なお、アルゴンプラズマ凝固療法(APC)使用による気管支内で気管支内視鏡が燃焼する事象が1件発生しましたが、燃焼の原因が特定できていないため、APC使用に関する取扱説明書の更新は行っておりません。患者さんと医療従事者の安全、そして潜在的なリスクを軽減することが当社の最優先事項です。

 オリンパスの気管支内視鏡は、気道および気管支内の内視鏡診断・治療に使用することを目的としています。今回の注意喚起では、日本を含む全世界で発売している気管支内視鏡(BFシリーズ内視鏡)32機種が対象の製品になります。そのうち19機種は米国で販売されており、米国食品医薬品局(FDA)およびその他の規制当局に通知をしています。

 OCAは、2023年6月8日付の注意喚起レターで当社の気管支内視鏡を使用する全ての医療従事者の方々に対し、当社のレーザー対応の気管支内視鏡がNd:YAGレーザーまたは810nmダイオードレーザーのみに対応していることを理解いただき、徹底するよう要請しました。

 さらに、オリンパスは、当社の気管支内視鏡とレーザー治療機器の組み合わせに関する取扱説明書の警告に十分注意するよう促しています。取扱説明書では、発火の恐れがあるため、酸素を供給しながらレーザー焼灼を行わないよう警告しています。患者さんの傷害(火傷、出血、穿孔)や装置の破損を避けるため、内視鏡検査に使用するモニター上でレーザープローブの先端が確認できましたら、レーザー焼灼の治療を行うこと、またその際に気管支内視鏡と体内の壁面の距離を可能な限り確保することの周知徹底を依頼しています。

 なお、これらの製品の使用で発生した副作用や品質上の問題は、FDAのMedWatchプログラム(英文のみ)12/19(46)にオンラインで報告することができます。

2.2020年9月3日「2020年8月25日発表の『内視鏡製品の自主回収に関するお知らせ』に関して国内における自主回収の補足説明」

 このたび、自主回収の対象となる2製品の内、気管支ビデオスコープ「OLYMPUS BF TYPE Q180」は、主に欧米で販売されている製品のため、国内での回収対象製品はございません。一方、胆道ファイバースコープ「OLYMPUS CHF TYPE CB30S」(以下、CHF-CB30S)は、グローバルで販売されている製品のため、国内も対象となります。

 当社は、当社の品質基準に照らし合わせ、患者様の安全確保を最優先に考え、「CHF-CB30S」を所有・使用している国内の医療機関に案内の上、自主回収を実施します。

3.2023年11月10日「米国における気管支内視鏡と高周波治療器の併用に関する医療機関への自主的な注意喚起について」

 当社の気管支内視鏡は、推奨された高周波治療器と使用した場合の安全性が確認されており、取扱説明書に記載されている指示および警告に従って引き続き使用することができます。患者さんと医療従事者の安全、そして潜在的なリスクを軽減することが、当社の最優先事項です。

 取扱説明書では、気管支内視鏡と高周波治療機器を併用する際、焼灼中に発火する恐れがあるので、酸素を供給しながら高周波焼灼を行わないよう警告しています。さらに、患者さんの健康被害(火傷、出血、穿孔)や気管支内視鏡の破損を避けるため、高周波治療機器の電極部を内視鏡先端部から十分離してご使用いただくよう記載しています。

 オリンパスの気管支内視鏡は、気道および気管支内の内視鏡診断・治療に使用することを目的としています。今回の注意喚起は、日本を含む全世界で発売している気管支内視鏡(BFシリーズ内視鏡)28機種が対象となります。

 本件は、気管支内視鏡とレーザー治療装置での気管支鏡使用に関して2023年7月3日(現地時間)にプレスリリースで公表された「米国における気管支内視鏡とレーザー治療機器を使用する際の医療機関への自主的な注意喚起について」とは別の措置になります。

Ⅳ.わが国のリコール制度の概要

弁護士 西村裕一氏の解説が体系的かつ分かりやすいので一部抜粋する。(なお、リンクと補足は筆者が行った)

 日本の法律上、「リコール」について明確な定義はなく、様々な製品について横断的にリコール制度を定めた法律はありません。

 各種製品ごとに異なったリコール制度があり、それぞれ別の法律に根拠があることから、リコール制度の内容も製品ごとに異なることになります。

1.自動車

自動車については、「道路運送車両法」にリコール制度が定められており、国土交通省が所管しています。

(1)自動車メーカー等による自主的なリコール

 自動車メーカー等が、自動車の設計・製作過程に基づく不具合を発見した場合、その不具合の状況・原因・改善措置・使用者への周知方法を届け出ることが求められます(道路運送車両法63条の3 )。

 自動車メーカー等が、不具合を把握していたにもかかわらず、この届出を行っていなかった場合は、1年以下の懲役または300万円の罰金を科される可能性があります。

(2)国土交通大臣の勧告によるリコール

 自動車のリコールは、基本的には自動車メーカー等の自主的な届出によって行われますが、国土交通大臣は、自動車の設計・製作過程の不具合を把握した場合、自動車メーカー等に対して、必要な改善措置を講ずるよう勧告することができます(同法63条の2)。

 自動車メーカー等がこのリコール勧告を無視した場合、国土交通大臣はリコール勧告に従わない旨を公表することができ、それでもなお自動車メーカー等がリコールを行わない場合は、リコールを命令することができます。

 このリコール命令に違反すると、1年以下の懲役または300万円以下の罰金が科され、法人に対しても2億円以下の罰金が併科される可能性があります。

2.医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器

 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器については、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)にリコール制度が定められており、厚生労働省が所管しています。

*本法に関し、筆者なりに厚生労働省の「自主回収報告関連情報」サイトにより補足する。

【自主回収のクラス分類について】

クラス分類とは、回収される製品によりもたらされる健康への危険度の程度により、以下のとおり個別回収ごとに、I、II又はIIIの数字が割り当てられるものです。

クラスI:クラスIとは、その製品の使用等が、重篤な健康被害又は死亡の原因となりうる状況をいう。

クラスII:クラスIIとは、その製品の使用等が、一時的な若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性があるか又は重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況をいう。

クラスIIIクラスIIIとは、その製品の使用等が、健康被害の原因となるとはまず考えられない状況をいう。

(危害の防止)

第六十八条の九 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器若しくは再生医療等製品の製造販売業者又は外国特例承認取得者は、その製造販売をし、又は第十九条の二、第二十三条の二の十七若しくは第二十三条の三十七の承認を受けた医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の使用によつて保健衛生上の危害が発生し、又は拡大するおそれがあることを知つたときは、これを防止するために廃棄、回収、販売の停止、情報の提供その他必要な措置を講じなければならない。

2 薬局開設者、病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者、医薬品、医薬部外品若しくは化粧品の販売業者、医療機器の販売業者、貸与業者若しくは修理業者、再生医療等製品の販売業者又は医師、歯科医師、薬剤師、獣医師その他の医薬関係者は、前項の規定により医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器若しくは再生医療等製品の製造販売業者又は外国特例承認取得者が行う必要な措置の実施に協力するよう努めなければならない。

( 回収の報告 )

第六十八条の十一 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器若しくは再生医療等製品の製造販売業者、外国特例承認取得者又は第八十条第一項から第三項までに規定する輸出用の医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器若しくは再生医療等製品の製造業者は、その製造販売をし、製造をし、又は第十九条の二、第二十三条の二の十七若しくは第二十三条の三十七の承認を受けた医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品を回収するとき ( 第七十条第一項の規定による命令を受けて回収するときを除く。 ) は、厚生労働省令で定めるところにより、回収に着手した旨及び回収の状況を厚生労働大臣に報告しなければならない。

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(筆者注) CFR の 21 章(Title 21)は、「Food and Drug」に関する章であり、医薬品や食品、添加物、医療機器、規制薬物等に関する規定です。「21 CFR」と呼ばれ、Part 1 から 1,499 まで用意されており、その内容によりアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)、アメリカ麻薬取締局、そして国家薬物取締政策局によって管理されています。

(米国研究製薬工業協会サイトから一部抜粋)

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「トロイの木馬」戦略が抗菌薬耐性に対処するのに役立つとしたらどうか?EU議会 のThink Tankの研究者による斬新な提言を読む

2022-11-26 14:51:35 | 食品安全・医薬

 筆者はEU議会のThink Tankである「European Parliamentary Research Service (EPRS) 」から送られてきたルイサ・アントゥネス(Luisa Antunes)氏(フランス・パスツール研究所)(注1)によって書かれたレポートを読んだ。

Luisa Antunes氏

 抗菌薬耐性感染症(Antimicrobial-resistant infections)(注2)は、2050年までに世界で2番目に大きな死因になると予測されている。新しい抗菌薬の開発、抗菌薬の誤用と乱用に関する意識向上キャンペーン、動物、人間、環境における抗菌薬の使用と耐性の監視への投資が増加しているにもかかわらず、抗菌薬耐性は増加し続けており、過去30年間、新しい抗菌剤クラスは1つも市場に出回っていない。その答えは、すべての細菌に共通する自然の生理学的プロセスを混乱させる「トロイの木馬」戦略にあるのか?

 筆者はこのレポートを読んで、当初、抗菌薬耐性と「トロイの木馬」との関係が理解できなかった。

 しかし、2021年7月13日付けの塩野義製薬株式会社、The Global Antibiotic Research and Development Partnership(GARDP) (注3)、Clinton Health Access Initiative(CHAI ) (注4)の以下の共同記者発表を読んで、その意味が理解できた。

  2019年11月に米国食品医薬品局(FDA)(製品名:FETROJA®が承認した塩野義製薬のセフィデロコル(cefiderocol)は、「トロイの木馬」と呼ばれる新しいメカニズムにより、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を通過して抗菌活性を発揮する新規のシデロフォアセファロスポリン抗菌薬である。本薬はFDAのほか2020年4月に欧州委員会(EC)(製品名:FETCROJA®)より承認を取得している。

  今回の基本合意書の締結を通じて、低中所得国でのセフィデロコルのアクセスにおける様々な障壁を克服するために、塩野義製薬、GARDPおよびCHAIは、医師向けの臨床ガイダンス作成やトレーニングの実施等、適正使用を確実に実施するための手段を用いて対象となる各国政府やパートナー企業を支援するために、それぞれの専門知識を駆使していくという内容であった。

 さらに、リリース文はAMRは、細菌、ウイルス、真菌、または寄生虫に対して薬剤が効かなくなり、感染症の治療が困難または不可能になることです。特に、大腸菌、緑膿菌、肺炎桿菌、アシネトバクター・バウマニなどは、肺炎、尿路感染症、血流感染症、敗血症などのさまざまな重症細菌感染症を引き起こす原因菌であり、多くの場合、現在利用可能なほとんどの抗菌薬に耐性を示す場合があります。これら耐性の感染症例の場合、セフィデロコルが有望な治療薬として期待されている」と記している。

 これに対し、ルイサ・アントゥネス氏の論文は新たな解決策を投げかけたといえる。筆者は医療や薬学の専門家ではないがCOVID-19問題とともに人類が本格的に取り組まざるを得ない抗菌薬耐性感染症問題に関するこのレポートの意義を考えるうえで重要と考え急遽まとめた。

 1.ルイサ・アントゥネス氏によって書かれたレポートの仮訳

  なお、アントゥネス氏のレポートは研究者だけに関係サイトへのリンクを丁寧に行っている。筆者も補足する意味で独自にリンクを貼ったが、同氏のリンクを優先されたい。

(1) トロイの木馬戦略の低迷とガリウム作戦の意義

 10年間の包囲が失敗した後、トロイの崩壊についてのホーマーの話では、ギリシャ人はトロイの木馬に大きな木製の馬を提供した。贈り物が城壁の中に入ると、オデュッセウスが率いる軍隊が出てきて、街を破壊して戦争を終わらせた。抗菌薬耐性(AMR)との闘いのアナロジーとして古いギリシャ神話を使用するのは大げさに思えるかもしれないが、数百万ユーロが投資されているにもかかわらず、新しい抗菌薬の市場不足(注5)は、大胆な新しい戦略が必要であることを意味する。

 抗菌剤耐性菌に「提供される」可能性のあるトロイの木馬はガリウム(gallium)(注6)である。この金属ベースのナノ粒子 (注7)戦略は、すべての生物にとって不可欠な生活要件であるの獲得を利用する。必須微量栄養素として、感染中、鉄は人間と細菌の間の綱引きのポーンとして使用される。私たちの生物は赤血球(red blood cells)、ヘム(heme) (注8)、フェリチン(ferritin) (注9)、ラクトフェリン分子(lactoferrin molecules) (注10)の鉄を隔離する。

 並行して、細菌は宿主の酸化鉄(Fe(III)) (注11)と結合し、それを細菌細胞に輸送する鉄シェレーター(シデロフォアおよびヘムキャリア)を分泌する。抗菌剤としてガリウム(Ga(III))を使用することは、バクテリアをだまして鉄を獲得したと信じさせることを意味する。

 ガリウムは鉄と同様の電荷、イオン径、生化学の鉄模倣金属である。トロイの木馬のように鉄膜受容体を介して細菌細胞に侵入し、生理学的プロセスで鉄を置き換えることができる。ただし、鉄とは異なり、2価のガリウムに還元することはできない。したがって、それは補因子として鉄に依存する本質的な細胞生化学的プロセスを阻害し、すぐに細菌に対して有毒になり、そしてその死に至る。

 ガリウムは目新しい約束?ではない。この米国FDA承認のがん治療薬は、10年以上前に、「最後の手段」を含む事実上すべての既知の抗菌剤に耐性を持つようになった院内細菌性病原体であるアシネトバクター・バウムマニ(Acinetobacter baummannii)の病原性を阻害することに成功していることが示された。それ以来、ガリウムの抗菌活性は、世界保健機関(WHO)によって新しい抗菌剤の開発にとって「重要な優先病原体」であると考えられている他の多剤耐性(MDR)細菌(multidrug-resistant (MDR) bacteria)に対して実証されている。これらには、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)エンテロバクテラレス種(Enterobacterales species)、結核菌が含まれ、結核の原因であり、2番目に致命的な伝染病(COVID-19に次ぐ)であり、年間150万人が死亡している。より具体的には、ガリウムは、嚢胞性線維症(cystic fibrosis)および慢性緑膿菌肺感染症(Chronic Pseudomonas aeruginosa infection)の20人の患者を対象としたパイロ/ット第Ib相試験で有効であった。

 新しい抗菌戦略としての鉄細菌(bacterial iron)獲得の探求は、ガリウムのトロイの木馬効果に限定されない。セフィデロコール(塩野義製薬開発)は、二重盲検臨床試験において複雑な尿路感染症のカルバペネム耐性病原体に対する活性を示した広域シデロフォア-セファロスポリン併用薬である。2020年、欧州医薬品庁(EMA)は、治療選択肢が限られているグラム陰性感染症に対する「予備」としての使用を承認した。現在、EUで認可されている唯一の鉄取得抗菌薬である。他の2つのシデロフォア-セファロスポリン(siderophore-cephalosporin products)製品である塩野義製薬製、GSK-3342830(GSK製)およびGT-1(Geom Therapeutics製)は、もはや活発に開発されていない。抗菌薬の標的としての鉄獲得戦略に関する前臨床研究から入手可能なエビデンスと臨床試験におけるフォロースルーの欠如との間の翻訳ギャップは、EUの健康研究の断片化と市場の失敗の既知の問題を部分的に反映している可能性がある。

(2) 潜在的な影響と発展

 アレクサンダー・フレミングが1928年にペニシリンを発見したとき、医学は結核、肺炎、下痢などのかつて乳幼児死亡率の原因であった伝染病がついに治療できる現代に入り、平均余命と質の漸進的な改善に貢献した。すべての既知の抗菌薬に耐性のある細菌の出現は、人々が軽度の感染症で死亡する抗生物質以前の時代に私たちを押し戻す可能性がある。したがって、WHOはAMRを世界の公衆衛生上の脅威のトップ10であると宣言した。

 効果的な抗菌薬の開発、既存の抗菌薬の乱用と誤用を減らすための医療専門家と一般市民の意識の向上、監視の強化、感染予防と質の高い医療への普遍的なアクセスへの投資は、人間、動物、環境の健康を統合する効果的な AMR 対応 (「One Health」) として欧州委員会と WHO が宣言した政策措置の一部である。

 第一にAMRに効果的に取り組むことは、AMR感染による死亡率の負担を軽減するであろう。AMRは、2019年に世界で127万人の死亡を直接引き起こし、2050年までに癌を上回り、1,000万人に増加すると推定されている。EUだけでも、AMRは年間33,000人の死亡の原因であり、特に東部と南部の国々で増加し続けており、公的医療への投資の減少に一部関連している。

 第二の影響は、年間11億ユーロを超えるEUの国民医療制度への経済的負担の軽減である。COVID-19は、健康上の緊急事態が医療専門家に並外れた圧力をかけ、主要な疾患(心血管疾患、認知症、癌など)から必要な注意をそらす可能性があることを示した。OECDは、WHOによって提案された簡単な政策措置(衛生、抗菌薬管理、診断、意識向上キャンペーン)を適用すると、1年間で2ユーロの投資ごとに約3ユーロ節約できると推定している。

「スーパーバグ(superbugs)」の出現は、微生物群集における側方遺伝子導入の容易さと、観光や食品産業を含む旅行を通じた国際的な広がりによって引き起こされるスローモーションのパンデミックである。その国境を越えた性質は、学際的で国際的な調整を必要とする。普遍的な抗菌薬へのアクセスと安全な水と衛生へのアクセスへの投資は、低中所得国における治療可能な細菌感染症(コレラ、赤痢、腸チフスなど)による世界中で570万人の死亡を減らし、AMRの蔓延を防ぐ。

(2) 先見性を持った医薬品の政策立案の内容

 EUは、FP7(注12)およびホライズン2020フレームワークプログラム (注13)(注14)、および加盟国および業界とのパートナーシップを通じて、新しい治療法、ワクチン、診断ツールに関する研究開発(R&D)プロジェクトを支援している。EU-IMIパートナーシップ・プロジェクトGNA NOW (注15)は、2024年までに新しい抗菌薬の発見に3,000万ユーロ(約43億4400万円)以上を投資している。欧州保健緊急事態準備・対応局(European Health Emergency Preparedness and Response Authority:HERA)」は、AMRを国境を越えた優先脅威の上位3つの一つと位置付けており、優先病原体に対する治療薬の調達に5億8,000万ユーロを割り当てている。

 欧州医薬品戦略の一環として、欧州委員会は現在EUの医薬品法を改正しており、2022年末までに採択される予定である。これには、製薬業界が通常投資していない分野である希少疾患の治療に使用される「みなしご」医薬品(‘orphan’ medicinal products) (注16)が含まれる。MDR結核および嚢胞性線維症はそのような疾患の例であり、そのために新薬およびワクチンが緊急に必要とされている。

  抗菌薬R&D資金調達モデルに関する議論は、通常、R&Dのインプットとアウトプットに対してそれぞれ支払う「プッシュ」または「プル」インセンティブのいずれかに集中している。新しいインセンティブ・モデルは「脱連鎖(de-linkage)」(英国の「Netflix」サブスクリプション)や米国パスツール法(S.2076 - PASTEUR Act of 2021)など) (注17)であり、政府は使用に関係なく、新しい抗菌薬の年間サブスクリプ77ションを支払う。別の最近の戦略には、譲渡可能な独占権の延長が含まれるが、これは医療費が高いために批判に直面している。提案された解決策は、市場の失敗とは無関係に薬物サイクル全体に伴うヨーロッパの公共インフラの創設であった。

 最後に、感染予防とサーベイランスの研究は、新しい抗菌薬の開発よりも効果的である可能性がある。ワクチンは、低耐性で病気の緩和と根絶に貢献する。RNA技術 (注18)医療AIの革新により、嚢胞性線維症病原体や結核に対する新しいワクチンが間もなく登場し、AMRへの圧力が緩和されるであろう。廃水処理モニタリング(wastewater monitoring)(注19)メタゲノミクス(metagenomics) (注20)AMR遺伝子シーケンシング(AMR gene sequencing)(注21)などの診断技術の開発は、AMR感染の開始時にさらに妨げるのに役立つ可能性がある。

【参考】

 欧州議会のシンクタンクのページで、「トロイの木馬」戦略が抗菌薬耐性に対処するのに役立つとしたらどうでしょうか?」に関するこの「一目で」読んでください。

 YouTubeでポッドキャスト「トロイの木馬」戦略が抗菌薬耐性に対処するのに役立つとしたらどうでしょうか?」を聞いてください。

************************************************************************:

(注1) Luisa Antunes は、フランス・パスツール研究所(Institut Pasteur)の博士研究員(POST-DOCTORANT(E))で2013 年から 2015 年まで、ANCESTROME (Investissements d’Avenir ANR) コンソーシアムの資金提供を受けて博士研究員を務めていた。彼女の研究は、細菌細胞エンベロープ プロセスの系統解析に焦点を当てていた。

なお、パスツール研究所は、フランスのパリにある、生物学・医学研究を行う非営利民間研究機関であり、PSL総合大学(L'Université PSL (Paris Sciences & Lettres) )の機関である。(Wikipedia から抜粋、仮訳)

(注2) 抗菌薬耐性 (AMR) は、細菌、寄生虫、ウイルス、および真菌によって引き起こされるますます増加する範囲の感染症の効果的な予防と治療を脅かしている。

 AMR は、細菌、ウイルス、菌類、寄生虫が時間の経過とともに変化し、薬に反応しなくなったときに発生し、感染症の治療を困難にし、病気の蔓延、重症化、死亡のリスクを高める。 その結果、薬が効かなくなり、感染が体内に残り、他の人に広がるリスクが高まる。

 抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗寄生虫剤を含む抗菌剤は、ヒト、動物、植物の感染を予防および治療するために使用される医薬品である。 抗菌薬耐性を発達させる微生物は、「スーパーバグ」と呼ばれることがある。(WHO :Antimicrobial resistance を仮訳)

(注3) GARDP は、健康に最大の脅威をもたらす薬剤耐性菌感染症の新規治療薬を開発するスイスに拠点を置く非営利団体です。抗菌薬を必要とするすべての人が、有効で手頃な価格の治療を受けられるようにするため、2016年に世界保健機関 (WHO) およびDNDi (Drugs for Neglected Diseases initiative:顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ) により設立されました。2025年までに薬剤耐性菌感染症を克服するための5つの新しい治療薬を開発することを目指しています。GARDPは、ドイツ、日本、ルクセンブルグ、モナコ、オランダ、南アフリカ、スイス、英国の各政府、ならびに国境なき医師団 (MSF) および民間財団から資金提供を受けています。また、GARDP Foundationとして法人登録されています。(共同プレスリリースから一部抜粋)

(注4) CHAIは、低中所得国の人々の命を救い、病気の負担を軽減することに取り組んでいるグローバルヘルス組織です。CHAIはパートナーと協力して、高品質の医療システムを構築および維持するための政府および民間部門の能力を強化することを支援します。(共同プレスリリースから一部抜粋)

(注5) 2020年10月21日nature記事「大手製薬会社が抗菌薬を放棄した理由~

金銭的インセンティブの欠如は、大手製薬会社が市場を去ったことを意味している~」から抜粋する。

 世界中の科学者、公衆衛生機関、政府が抗菌薬耐性が次の大きな健康危機であると警告するとき、彼らには正当な理由があります。1960年代以降、細菌やその他の微生物は抗菌薬に対する耐性がますます高まり、ますます多くの人々が死亡するようになりました。

 薬剤耐性疾患は毎年約70万人を殺していますが、抗菌薬耐性に関する国連省庁間グループは、何もしなければ2050年までに年間1,000万人に膨れ上がる可能性があると推定しています。これは、現在世界中で毎年癌で亡くなっている人の数よりも多いです。

 自然の見通しの一部:抗菌薬耐性

 より多くの抗菌剤の明らかな必要性にもかかわらず、そのような薬は近づいていません。市場に出回っている新しい抗生物質は少なくなっています。最後の完全にオリジナルのクラスの抗生物質は、1980年代後半に発見されました。その理由の1つは、抗菌薬を発見して市場に投入することは、製薬会社にとって利益にならないことが多いということです。(nature 日本語版から引用)

(注6) ガリウム : 原子番号31の元素で、元素記号は Ga。ヒ素との化合物のガリウムヒ素(GaAs)は化合物半導体に、窒化ガリウム(GaN)は発光ダイオードに使われている。

(注7) ナノ粒子は、化学・素材の分野をはじめ医薬・バイオなど様々な分野で利用されており、今後も技術の発展が期待されている。特に、金・銀・銅などの金属ナノ粒子は、その高い導電性から電子部品実装用の微細配線形成への利用が研究されている。また、高い熱伝導性を持つことから高効率の熱伝導材料や、高い比表面積を生かした高活性の触媒などにも応用が期待されている。(福田金属箔粉工業株式会社の解説から抜粋)

(注8) 広義には鉄とポルフィリンの錯塩を総称し、狭義には2価の鉄イオンがポルフィリンに配位したものをさし、3価の鉄イオンが配位した錯塩は、とくにヘマチンhematinともいう。ポルフィリンの種類によって、ヘムa、ヘムb(プロトヘム)、ヘムcなどと分類される。これらはすべて赤色を呈する色素であり、生体内ではタンパク質と結合してそれぞれ特有の働きをしている。(日本大百科全書(ニッポニカ)から抜粋 )

(注9) フェリチン(Ferritin)とは、鉄結合性タンパク質の一種である。生物の細胞内において、鉄と結合することにより鉄を保存し、必要なときに鉄を放出する。藻類、細菌、高等植物、ヒト、動物を含むほぼすべての生物がフェリチンを合成する。ヒトにおいては鉄不足と鉄過剰を抑える役割を持つ。フェリチンはほとんどの組織の細胞質に存在するが、一部は鉄運搬体として血漿中に分泌されている。血漿フェリチンの量は、肉体に蓄積されている鉄の総量の推計指標であり、鉄欠乏性貧血の診断材料である。(Wikipedia から抜粋)

(注10) ラクトフェリン分子(lactoferrin molecules): ラクトフェリンは、「牛乳の赤いタンパク質」として、1939年に北欧の学者が発見した、乳から分離された鉄結合性の分子量8万の糖タンパク質です。ヒトを含む哺乳類の乳(特に初乳)に多く含まれていますが、成人においても涙液、唾液、膵液その他の外分泌液や好中球に含まれており、好中球106個あたり毎日3.45μgが合成されていると言われています。体内のラクトフェリンは、大部分が鉄イオンが結合していない状態のアポ型※であり、3価の鉄イオンや2価の銅イオンに出会うとこれを強く結合することによって、細胞や遺伝子を酸化障害から守っています。( 株式会社NRLファーマの解説から抜粋)

(注11) 鉄には鉄(Ⅱ)と鉄(Ⅲ)という2種類があ る。同じ鉄なのですが、酸化させてみると化合式が異なる。

・酸化鉄(Ⅱ)の化学式は。

・酸化鉄(Ⅲ)の化学式は。

(注12) 欧州自由貿易連合( EFTA)の第7次枠組みプログラム(Seventh Framework Programme:FP7)を仮訳する。

第7次枠組み計画(FP7)の2つの主要な戦略目標は、欧州産業の科学技術基盤の強化とその国際競争力の促進である。これらの大まかな目標は、次の4つの主要なカテゴリにグループ化される。

①相互の協力、② アイデア、③ 人、④ 容量

目的の種類ごとに、EUの研究政策の主要分野に対応する特定のプログラムがある。これらのプログラムはすべて、科学的卓越性のヨーロッパの極の創設を促進し、奨励するために協力している。FP7の活動の25%は新しいものである。これらの中には、新しく自律的な欧州研究評議会と、安全保障研究と宇宙という2つのテーマトピックがある。FP7では、強化された国家支援体制が整った。4つの主な具体的なプログラムは以下のとおりである。

①相互の協力

FP7の中核であり、その最大の構成要素である協力プログラムは、いくつかの主要なテーマ分野に応じて、ヨーロッパ全体で共同研究を促進する。FP7のこの部分では、欧州の社会的、経済的、環境的、産業的課題に対処するために最高品質の研究を支援および強化する必要がある、知識と技術の主要な分野に対応する多くの分野で支援が提供される。この取り組みの大部分は、産業競争力の向上に向けられている。包括的な目的は、持続可能な開発に貢献することである。

②アイデア

アイデアプログラムを通じて、EUの研究プログラムが最先端の科学技術における純粋な調査研究に資金を提供するのは初めてである。このような「基礎研究」は、科学技術の進歩のための新しい機会を開くため、富と社会の進歩の重要な推進力である。これは、将来のアプリケーションや市場につながる新しい知識の生産に役立つ。

③ 人

ピープルプログラムは、研究の流動性とキャリア開発をサポートする。ヨーロッパでは、科学を進歩させ、イノベーションを支え、研究への公的および民間の投資を引き付けて維持するために、高度な訓練を受けた研究者が必要である。グローバル競争の激化に伴い、研究者のための開かれた欧州の労働市場の発展と、研究者のスキルとキャリアパスの多様化が不可欠である。したがって、国境を越えたモビリティとセクター間のモビリティは、欧州研究地域の重要な要素である。これらのアクションは、研究者がキャリアを通じてスキルと能力を身に付けるのに役立つように設計された、一貫した一連のマリーキュリーアクション(Marie Skłodowska-Curie Actions) (注13)によって実装されています。FP7ピープルプログラムでは、活動は、最初の研究トレーニングから生涯学習、キャリア開発まで、研究者の職業生活のすべての段階をカバーしています。

④ 容量

キャパシティプログラムは、ヨーロッパ全体の研究とイノベーションの能力を強化し、それらの最適な使用を確保することを目的としています。予算は400万ユーロを超え、7つの分野に活用されています。

 【研究基盤】

 中小企業のための研究

 地域の研究主導型クラスターに対する知識と支援の領域

 収束領域の研究の可能性

 社会における科学

 一貫した研究方針策定支援

 国際協力

この特定のプログラムは、政策の首尾一貫した開発を支援し、協力プログラムを補完し、加盟国の政策の一貫性と影響を改善するためのEUの政策とイニシアチブに貢献し、地域および結束政策、構造基金、教育訓練プログラム、CIPとの相乗効果を見つけることも目的としている。

(注13)「 マリー・スクウォドフスカ・キュリー・アクション(Marie Skłodowska-Curie Actions)」を抜粋、仮訳する。

Marie Skłodowska-Curie Actionsは、ホライズン・ヨーロッパ(注13)の一部で優れた研究と革新に資金を提供し、国境を越えたモビリティとさまざまなセクターや分野への露出を通じて、キャリアのあらゆる段階の研究者に新しい知識とスキルを提供する。MSCAは、優秀な研究者の長期的なキャリアに投資することにより、ヨーロッパの研究とイノベーションの能力を構築するのに役立つ。

またMSCAは、世界中の優れた博士号およびポスドクのトレーニングプログラムと共同研究プロジェクトの開発に資金を提供している。そうすることで、高等教育機関、研究センター、非学術組織に構造化的な影響を与える。

MSCAは、卓越性を促進し、研究者のための欧州憲章および研究者の採用に関する行動規範に沿って、質の高い研究者教育と訓練の基準を設定する。

(注14) ホライズン・ヨーロッパ(Horizon Europe)は、2027年まで955億ユーロ(約13 兆8500 億円)の予算を持つEUの研究とイノベーションのための主要な資金提供プログラムである。

気候変動に取り組み、国連の持続可能な開発目標の達成を支援し、EUの競争力と成長を促進します。

このプログラムは、グローバルな課題に取り組みながら、コラボレーションを促進し、EU政策の開発、支援、実施における研究と革新の影響を強化する。また優れた知識と技術の創造とより良い分散を支援する。

また雇用を創出し、EUの人材プールを完全に関与させ、経済成長を促進し、産業競争力を促進し、強化された欧州研究地域内での投資の影響を最適化する。

EUおよび関連国の法人が参加できる。(筆者が抜粋、仮訳した)

(注15) GNA NOWの要旨を仮訳する。

薬剤耐性(AMR)は公衆衛生に対する大きな脅威であり、2015年にはヨーロッパだけで67万人の感染と3万3000人以上の死亡を引き起こしている。いわゆるグラム陰性菌は、多くの抗生物質が細菌に侵入して殺すのを効果的に防ぐ丈夫な外膜に包まれているため、治療が特に困難である。GNA NOWプロジェクトは、グラム陰性感染症を治療するための新しい抗生物質の緊急の必要性に対処することを目的としています。チームは3つのプログラムを並行して実行し、それぞれが革新的な作用機序を持つ異なる薬剤候補に焦点を当てます。すべての医薬品候補は、安全性と有効性を確認し、それらがどのように機能するかを理解して最適化するために、さまざまなテストを受ける。このプロジェクトは、少なくとも1つの候補について第1相臨床試験を完了し、少なくとももう1つを臨床試験に入る準備ができている段階に進めることを望んでいる。

GNA NOWはIMI AMRアクセラレーター・プログラムの一部である。

(注16) オーファンドラッグ(orphan drug)、希少疾病用医薬品:その薬を必要とする患者数が少ない(すなわち十分な利益が得られない)という理由で開発したがらない製薬会社、薬品メーカーに対して政府が補助費を出すことにより開発される薬のこと。

(注17) 公衆衛生NGO、患者団体、医療専門家、疾病団体で構成される会員主導の組織であるEPHA の「 AMRに対する英国の行動:抗菌薬の脱連鎖(de-linkage)モデルの推進」を一部抜粋、仮訳する。

英国の2019-2024年国家行動計画は、3つの主要な「AMRへの取り組み方」を中心としている。(1)抗菌薬の必要性と意図しない曝露を減らす。(2)抗菌薬の使用を最適化する。(3)イノベーション、供給、アクセスへの投資である。これら3つの分野のアクションは、前任者が採用したアプローチをさらに発展させ、新しい優先事項を導入する15の包括的なコンテンツ領域にグループ化されている。抗菌薬の環境への影響を最小限に抑え、食品の安全性を向上させることから、人間と動物の健康における実験室の能力の向上、診断とワクチンの開発とアクセス、人間と動物の感染の全体的な負担の軽減まで多岐にわたる。次に、コンテンツ分野での行動、すなわち意識と能力開発を扇動するために、測定と監視資金調達と金銭的インセンティブポリシーと規制;そしてチャンピオンとパイロット5つのレバーが活性化される。

(注18) RNAは細胞を動かすソフトウェアであり、遺伝子(DNA)から生命の重要な構成要素であるタンパク質を作る工場に情報を運ぶ。mRNAワクチンは本質的に、細胞に入ると特定のタンパク質を作るように指示するコードである。

COVIDの場合、それは通常ウイルスの外殻にある「スパイク」タンパク質である。石鹸水で分解されたウイルスの断片のように、それ自体は無害である。しかし、体はこれらのタンパク質を異物として認識し、次に実際のウイルスが発生した場合に戦う方法を学ぶ。しかし、mRNAはRNAの1つの形態に過ぎず、他にも無数の種類のRNAがあり、その多くはジャンクであると考えられていたが、現在では細胞の働きに重要な役割を果たすことが認識されている。

(注19) 米国国立医学図書館(National Library of Medicine: NLM)は、保健社会福祉省(Department of Health and Human Services: HHS)傘下の国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)の一機関で、世界最大のヘルスサイエンス分野の図書館である。

そのレポート「廃水処理における抗生物質耐性遺伝子のモニタリング:現在の戦略と将来の課題」から一部抜粋、仮訳する。

 抗菌薬耐性(AMR)は、人間と動物の健康に対する脅威が高まっている。分子生物学の進歩により、抗生物質耐性遺伝子(ARG)の多様性、ARG伝達の複雑さ、およびAMRに寄与する幅広い遍在因子を考えると、AMR緩和のための新たな重要な課題が明らかになった。地方自治体、病院、食肉処理場の廃水は廃水処理プラント(WWTP)で収集および処理され、多様な選択圧力の存在と病原性/共生微生物の高濃度コンソーシアムにより、ARGの移動と抗生物質耐性菌(ARB)の増殖に好ましい条件が生まれる。過去80年間に臨床的および獣医学的に重要な抗生物質耐性病原体の急速な出現により、AMRとの闘いにおける焦点としてのWWTPの役割が再定義された。以下、略す。

(注20) メタゲノミクス(英:Metagenomics)は、環境サンプルから直接回収されたゲノムDNAを扱う微生物学・ウイルス学の研究分野である。広義には環境ゲノミクスやエコゲノミクス、群集ゲノミクスとも呼ばれる。メタゲノム解析(Metagenomic analysis)、あるいは単純にメタゲノム(Metagenome)とも呼称される。従来の微生物のゲノム解析では、単一の菌株を環境サンプルから分離培養する過程を経る必要があったが、メタゲノム解析はこの過程を経ることなく、微生物コミュニティ(細菌叢)から直接ゲノムDNAを抽出し、様々な系統由来のDNAがミックスされた状態でDNAシーケンスを行う。そのため、メタゲノム解析では従来の培養を基本とする方法では困難であった難培養・未培養系統に属する微生物のゲノム情報が入手可能となった。(Wikipedia から抜粋、仮訳)

(注21) 抗生物質耐性感染症は公衆衛生上の大きな脅威であり、初期治療の失敗、より長い病気、および限られた治療選択肢につながる可能性がある。

 公衆衛生監視システムである腸内細菌の全国抗菌剤耐性監視システム(NARMS)は、胃腸および食品媒介性疾患を引き起こす抗生物質耐性菌を追跡する。新しい技術である全ゲノムシーケンス(WGS)により、この作業が容易になった。WGSを使用すると、科学者は遺伝情報に基づいて細菌が抗生物質に耐性があるかどうかを迅速に予測できる。2018年、この情報は、公衆衛生当局がより効果的に対応できるように、同時に発生する2つの発生の重要な区別を行うのに役立った。(米国疾病管理予防センター(CDC)の「全ゲノムシーケンシングと抗生物質耐性との競争」から抜粋、仮訳)

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Europol等による一連の食品詐欺犯罪作戦(OPSON Operation )の過去最大の成果と組織的かつ重大な国際犯罪/ EMPACTのためのEU政策サイクルの最新動向

2022-11-21 09:00:52 | 食品安全・医薬

 筆者の手元にEuropol等から一連の食品詐欺犯罪作戦(OPSON Operation )の過去最大の成功を収めた旨のリリースが届いた。この作戦は、後述4.で述べる.各種の組織・重大犯罪の脅威に対するヨーロッパの学際的プラットフォームである「EU 優先政策サイクル(EMPACT 優先度)」の一部である。

 今回のブログは、(1)食品犯罪作戦(OPSON Operation)の最新動向とその成果、(2)より大規模なEU等の取組みである2012年から始まった組織的かつ重大な国際犯罪/ EMPACTのためのEU政策サイクルについて詳しく解説を試みる。特に【2022年-2025年間の優先事項の優先度の高い項目の例示はInterpolやEuropolが本格的に取り組んでいる網羅的な課題が具体的に列挙されており、わが国の法執行機関のみならず関係機関が徹底して取り組むべき課題が網羅されている。研究材料として貴重なものであろう。

 なお、筆者が最も気になったのは、これまで中国や韓国が入っているOPSON Operationの参加国の中にわが国が入っていない点である。

 また、わが国の食の安全性について食品安全基本法が制定(平成15年)された。

これにより、「食品の安全性の確保に関するあらゆる措置は、国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下に講じられなければならない。」という基本理念が出され、下記のとおり食品の安全を守る仕組み(リスク分析)が公表されている。しかし、はたしてInterpolやEuropol主導型のような強力な取り締まりが現実になされているのか、疑問である。

消費者庁サイトから引用

1.食品詐欺を標的としたOPSON XI作戦の成果

 Europolのリリース文を補足しながら、仮訳する。

 標題は、食品犯罪作戦(OPSON Operation )「食品詐欺:棚から約27,000トン:当局は、アルコールやワインを含む1500万リットルの偽の飲料を押収」である

 食品詐欺を標的としたOPSON XI作戦により、ヨーロッパ全体で偽の食品や飲料の押収が増加している。EU全体の行動のためにEuropolによって調整されたこの作戦は、2021年12月から2022年5月の間に行われた。Europolは、26か国から、約27,000トンの偽食品が押収されたという報告を受けた。運営活動は、欧州不正対策局(Office Européen de Lutte Anti-Fraude,:OLAF)欧州委員会・健康食品安全総局(DG SANTE)欧州委員会・農業農村開発総局(DG AGRI)、欧州連合知的財産局(EUIPO)ならびに各国の食品規制当局および民間セクターのパートナーによって支援された。Interpolは、EU外で主導された活動を調整した。

いずれもEuropolサイトから引用;

 食品詐欺に対する作戦は、消費者の健康と安全に深刻な害を及ぼす可能性のある犯罪ネットワークを対象としている。腐ったマグロからメチルアルコールや偽造ビタミンを含む偽のウォッカまで、違法な食べ物や飲み物は、有毒な製品を消費していることに気づいていないことが多いEU市民にとって深刻な脅威である。犯罪行為を検出するために、国家当局は税関エリア、物理的およびオンライン市場、および食品サプライチェーン全体でチェックを実施した。運用上の行動はシーフード詐欺に焦点を当て、アルコールとワインに対して的を絞った行動を実施した。

【Europolに報告された押収と活動】

・26,800トンの違法製品を押収

・1,500万リットルのアルコール飲料を押収

・約74,000件チェック

・80件の逮捕状

・司法当局に通報した137人

・175+刑事事件が法廷へ

・2 078件の行政事件が法廷へ

・8つの犯罪ネットワークが混乱化

【押収された主な違法製品は何か?】

(数量順)

・アルコール飲料

・穀物、穀物および派生製品

・果物/野菜/豆類

・栄養補助食品/添加物

・砂糖と甘い製品

・肉および肉製品

・シーフード

・乳製品

・家禽製品

【うすめ偽造したワインメーカー】

イタリアの警察に1つであるアルマ・デイ・カラビニエリ (Arma dei Carabinieri)のカラビニエリのアンチ・ソフィスティケーション&ヘルスケア ユニット (NAS) (注1)は、違法に洗練され改造されたワインを生産および販売したワイナリーの所有者を司法当局に報告した。生産者はいくつかのラベルに水と砂糖を追加した。他の人には、彼らはバイヤーに宣伝されたワインの品質に対応していない、自然な香りを追加した。場合によっては、実際よりも高いアルコール含有量を宣言した。イタリア当局はワイナリー、11台の自動車、100万リットルのワインを押収した。

【クチナシのスパイシーな香り】

 スペイン市民警備隊(Guardia Civil)は、分子組み換えクチナシを非常に高価なサフラン・スパイスとして販売する犯罪ネットワークを解体した。容疑者はアジアからクチナシの抽出物を輸入した。国家当局は3社を調査し、11人を逮捕し、10,000 kgのクチナシ抽出物を押収した。またこの事件は、ますます多くのスパイスや調味料が混入され、密売されているという現象の高まりを浮き彫りにしている。

マリア・ガメス・ガメス(María Gámez Gámez)局長(市民警備隊の局長は次官の階級を持ち、安全保障担当国務長官の依存の下で、市民警備隊の直接指揮に責任がある)

【品質が極めて悪い肉】

 運用上の行動は、消費に適さない肉も対象としていた。1つの行動には、食品の安全性と経済監視を担当するポルトガル共和国経済食品安全庁(Autoridade de Segurança Alimentar e Económica)(注2)が関与し、秘密の食肉処理場に対して作戦を実行した。警官は、豚の違法な屠殺と焙煎の場所として使用されている疑いのある2つの家を襲撃した。この行動により、60頭の子豚の死骸が押収された。警官は、免許がなく、衛生状態が悪く、獣医の管理がなかったサイトを解体した。そこで生産された肉は追跡できなかったため、消費の最低条件を満たしていなかった。違法な食肉取引を標的とした他の事業では、消費に適さない馬肉、食品サプライチェーンに再導入される古い肉、消費期限が切れた加工食品を押収した。

【新鮮さ等において重要な問題】

 フランス、イタリア、スイスは魚のサンプリング活動を実施した。彼らは、ラベルに宣言された「鮮度」の表示が「真実」または「不正」であるかどうかをチェックした。

 サンプルを収集し、その後、標準操作手順に従って処理および分析した。結果は詐欺の指標を提供し、将来の検査をより効果的にするであろう。

Europolの知的財産犯罪調整連合は、知的財産犯罪と戦うためにEuropean Union Intellectual Property Office :EUIPOによって共同資金提供されている。

ユーロポールに報告する参加国(26か国)

* オーストリア、ベルギー、ブルガリア、コロンビア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、モンテネグロ、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スペイン、米国。

2.Interpol & Europolによる「食品犯罪作戦(OPSOPN Operation)」とは

 食品犯罪作戦(OPSON Operation) は、そのすべての段階で、以下のとおり同じ法的範囲とフレームワークのターゲットを保持している。

① 偽造食品と偽造飲料

② 標準以下のレベルの飲食物

食品は、人間または動物が摂取することを意図した、または摂取することが合理的に予想されるアイテムまたは物質として定義される。飲料は、飲用可能な液体、つまり人間または動物が摂取することを意図した、または摂取することが合理的に予想される液体と定義される。

食品には、生きた動物(市場での販売のために準備されている場合を除く)、収穫前の植物、医薬品、化粧品、たばこおよびたばこ製品、麻薬または向精神薬、または残留物および汚染物質は含まれない。

偽造食品は、知的財産権を侵害する食品と定義されている。国内法および欧州法で定義されているすべての知的財産権が含まれる。

標準以下の食品とは、その製造、包装、保管、および流通に関して、ヨーロッパおよび各国の法律で要求される基準を満たさない製品と定義されている。一般的に言えば、それはヨーロッパおよび国の基準の下で法的に要求される品質よりも劣った品質の製品である。

その作戦中、知的財産権と食品の安全性に関するヨーロッパと国内の両方の法律が施行された。

オペレーション OPSON は、後述4.のEU ポリシー サイクル(EMPACT 優先度) に組み込まれている。

OPSON VIIIの参加国(計78か国)

アルバニア、オーストラリア、オーストリア、ベラルーシ、ベルギー、ボツワナ、ブルガリア、ブルンジ、カンボジア、カメルーン、チリ、中国、コンゴ民主共和国、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エクアドル、エリトリア、エスワティニ、エチオピア、フィンランド、フランス、ガボン、ガンビア、ドイツ、ガーナ、ギリシャ、ギニアビサウ、ハンガリー、インド、インドネシア、アイルランド、イタリア、ヨルダン、ケニア、ラトビア、レソト、リヒテンシュタイン、リトアニア、マレーシア、モーリタニア、モルドバ、モンテネグロ、ナミビア、ネパール、オランダ、ナイジェリア、北マケドニア、ノルウェー、パラグアイ、ペルー、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、ルワンダ、セーシェル、シンガポール、スロバキア、スロベニア、ソマリア、南アフリカ、韓国、南スーダン、スペイン、スーダン、スウェーデン、スイス、タンザニア、タイ、トーゴ、ウガンダ、ウクライナ、イギリス、ウルグアイ、アメリカ合衆国、ザンビア、ジンバブエ。

【主な数字】

・4000万ドル相当の潜在的に危険な食べ物と飲み物を押収

・407件の逮捕状

・77カ国で作戦実行

・12,000トンの潜在的に危険な偽の食べ物と飲み物を押収

・27,579回の立ち入り検査

3.これまでの主な食品犯罪作戦(OPSON Operation) 報告

本ブログでは、逐一内容の解説は行わない。関心ある読者は各URLにもとづき内容を参照されたい。

(1) Report Operation OPSON IV 

(2) OPSONⅤ OPSON Ⅴ報告 食品安全情報(化学物質)No. 8/ 2016(2016. 04. 13)

(3) Operation OPSON VII Analysis Report 

(4) Operation OPSON Ⅷ

(5)Operation Opson IX – Analysis report 

4.EU ポリシー サイクル(EMPACT 優先度)

 EU政策サイクル - EMPACTサイトの内容を簡単に、抜粋、仮訳する。

 EMPACTは、犯罪の脅威に対するヨーロッパの学際的プラットフォームの略である。これは、外部の国境管理、警察、税関、司法協力から情報管理、イノベーション、トレーニング、予防、内部セキュリティの外的側面、および必要に応じて官民パートナーシップに至るまでの措置を含む、EUの内部セキュリティへの統合アプローチを導入する。

 組織的かつ重大な国際犯罪/ EMPACTのための最初の削減されたEU政策サイクルは、2012年から2013年の間に実施された。これに続いて、2014年から2017年と2018年から2021年の間に2つの本格的なEU政策サイクルが続いた。これらのさまざまな段階を通じて、EMPACTは、EUレベルで組織犯罪と戦うための学際的および複数機関の運用協力のためのEUの旗艦手段に進化した。欧州連合(EU)が直面している最も差し迫った犯罪的脅威を標的にするための強力な行動を求めている。

 EMPACTには、組織化された深刻な国際犯罪との闘いにおける優先順位を設定、実施、評価するための明確な方法論がある。これは、加盟国、EU機関、EU機関の関連サービス、および関連する民間部門を含む第三国および組織間の協力を改善および強化することにより、首尾一貫した方法論的な方法で欧州連合にもたらされる最も重要な脅威に取り組むことを目的としている。

【2022年-2025年間の優先事項】

優先度の高い項目の例示

リスクの高い犯罪ネットワーク:マフィア型、民族および家族ベースの組織、その他の構造化されたネットワークなど、EUで活動しているリスクの高い犯罪ネットワーク、およびこれらのネットワークで重要な役割を持つ個人を特定し、混乱させることで、汚職を利用して法の支配を損なう犯罪ネットワーク、脅迫を含む暴力行為を行い、犯罪目標を推進するために銃器を使用する犯罪ネットワークに特に重点を置いて、 そして彼らの犯罪をロンダリングする人々は、並行した地下金融システムを通じて進行する。

サイバー攻撃:サイバー攻撃を組織する犯罪者、特にオンラインで専門的な犯罪サービスを提供する犯罪者を標的にすること。

人身売買:労働や性的搾取を含むあらゆる形態の搾取のために人身売買に従事する犯罪ネットワークを混乱させ、特に強制犯罪のために未成年者を搾取する人々に焦点を当てること。被害者とその家族に対する暴力を使用または脅迫する人、または搾取を公式にするためにシミュレートすることによって被害者を誤解させる人をいう。被害者をオンラインで募集して宣伝し、デジタルサービスを提供するブローカーによってサービスを受けている人も含む。

児童の性的搾取:児童虐待資料の作成と普及、およびオンラインでの児童の性的搾取を含む、オンラインおよびオフラインでの児童虐待と闘うこと。

移民の密輸:移民の密入国に関与する犯罪ネットワーク、特にEUの国境を越える主要な移動ルートに沿って非正規移民に円滑化サービスを提供するネットワーク、およびEU内の二次移動の促進と在留資格の合法化に関与する人々と戦うこと。

麻薬密売:(ⅰ)大麻、コカイン、ヘロインの生産、密売、流通 : EUへの大麻、コカイン、ヘロインの卸売取引に関与する犯罪ネットワークを特定し、標的にすること。EUにおける大麻、コカイン、ヘロインの栽培、生産、変換、流通に関与する犯罪ネットワークに取り組むこと。

(ⅱ)合成薬物および新向精神薬(NPS)の製造、密売、流通:EUにおける合成薬物およびNPSの生産および世界的な供給に関与する犯罪ネットワークを特定し、標的にすること。

詐欺、経済および金融犯罪

(ⅰ) オンライン詐欺スキーム : オンラインで大規模な詐欺スキームを組織する個々の犯罪者や犯罪ネットワーク、および個人(高齢者などの脆弱な人を含む)、企業、公共部門の組織、特に毎年数百万ユーロの収益を生み出し、オンライン・プラットフォームを使用して詐欺の範囲を拡大し、多数の被害者を標的とする詐欺の範囲を拡大することを目的とした非現金支払い手段の詐欺および偽造を標的にする。

(ⅱ) 物品税詐欺(Excise fraud) (注3)(注4): EUにおける違法たばこ製品の生産および/または密輸に特に焦点を当てた大規模な物品税詐欺に従事する犯罪ネットワークおよび個々の犯罪者を標的とする。

(ⅲ)MTIC(VAT)詐欺 - ミッシング・トレーダー・イントラ・コミュニティ(Missing Trader Intra Community:MTIC)詐欺に関与する犯罪ネットワークおよび個々の犯罪起業家の能力を混乱させること。

(ⅳ) 知的財産(IP)犯罪、商品や通貨の偽造 : 消費者の健康と安全、環境、EU経済に有害な商品に特に焦点を当てて、知的財産犯罪、偽造品や通貨の製造、販売、流通(物理的およびオンライン)に関与する犯罪ネットワークや犯罪個人起業家と戦い、混乱させること。

(ⅴ) 刑事財政、マネーロンダリングおよび資産回収 : 犯罪資金供与およびマネーロンダリングに関与する犯罪ネットワーク及び犯罪個人と闘い及び混乱させ、特に金融調査の自動開始を支援し、訓練及び金融情報の共有を通じて資産回収の文化を発展させることにより、犯罪利益を効果的に没収する観点から資産回収を促進すること。

マネーロンダリング・サービス(マネー・ミュール(注1)参照)や貿易ベースのマネーロンダリングを含む)を提供するマネーロンダリング・シンジケート、および新しい支払い方法を広範に利用して犯罪収益を洗浄したり、合法的または並行した地下金融システムを通じて犯罪収益を洗浄したりする犯罪ネットワークをターゲットにしている。

(ⅵ) 組織的財産犯罪: 組織的な強盗や窃盗、組織的な強盗、自動車犯罪、文化財の違法取引に関与する犯罪ネットワークを混乱させ、特に移動性が高く、EU全体で活動しているものに焦点を当てる。

(ⅶ) 環境犯罪:廃棄物や野生生物の密売、犯罪ネットワーク、および犯罪を促進するために法的事業構造に高レベルで侵入したり、独自の会社を設立したりする能力を持つ犯罪ネットワークや個々の犯罪起業家に焦点を当てて、あらゆる形態の環境犯罪に関与する犯罪ネットワークを混乱させること。

(ⅷ) 銃器密売:銃器の違法な人身売買、配布、使用に関与する犯罪ネットワークおよび個々の犯罪者を標的にすること。

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(注1) イタリアの アルマ・デイ・カラビニエリ (Arma dei Carabinieri)のカラビニエリのアンチ・ソフィスティケーション&ヘルスケア ユニット (NAS)

 Arma dei Carabinieriは、イタリアの警察の1つであり、一般的な権限を持ち、恒久的な公安サービスに従事している。同時に、それはイタリア軍の一部であり(2000年以降は軍隊のランク)、国防省の下で、内務省に機能依存している。国内外の他の3つの軍隊に憲兵の任務を負っており、欧州憲兵隊の一部である。(Wikipedia から抜粋、仮訳)

 組織としての任務の中で、従来、アルマ(Arma)は食品の真正性を監督することで公衆衛生を監視するという任務を常に持っていた。1962 年 4 月 30 日の政令第 283 号により、食品と飲料の生産と取引の衛生規制に関して、総司令部は、保健省と国防省との合意の下、主要都市で最初は大都市でのみ設立されたNASは、その構造を徐々に拡大し、最近のものに達するまで、トップが率いる中央機関であるCarabinieri Command for Healthに基づいて、保健省で1996 年 7 月 1 日以来、カラビニエリ健康コマンドとカラビニエリ反薬物等3つが統一した作戦部隊を「カラビニエリ・コマンド・フォー・ヘルス」という。(NUCLEI ANTISOFISTICAZIONE E SANITA' (N.A.S.) DEI CARABINIERI から抜粋、仮訳)

(注2) ポルトガル共和国経済食品安全庁(ASAE: Autoridade de Segurança Alimentar e Económica):食品の安全性と経済活動の監視を行うポルトガルの行政機関。経済省の傘下にあり、本部と2つの地方事務所がある。

ペドロ・ポルトガル・ガスパール総局長以下の幹部

(注3) Europolの「物品税詐欺(Excise fraud)」の解説を抜粋、仮訳する。

アルコール、タバコ、燃料は、EUでの生産時またはEUへの輸入時に物品税の対象となる。

組織犯罪グループは、さまざまな手口(modi operandi)を用いて物品税を回避し、正規品と偽造物品の両方を合法的な同等品よりも低価格で販売することにより、大きな利益を生み出している。物品税詐欺は、立法上の違いと、さまざまな加盟国によって適用されるさまざまな物品税率によって引き起こされる。詐欺、経済および金融犯罪は、EMPACT 2022-2025の一環として、重大かつ組織化された犯罪との闘いにおけるEUの優先事項の1つである。

ヨーロッパにおける物品税詐欺の主な分野は次のとおりである。

①物品の密輸または違法輸入

②物品税の違法な製造

③物品税を支払わずに商品を転用することを含む転用

 2017年の重大かつ組織化された犯罪脅威評価(SOCTA)で特定されているように、燃料詐欺(fuel fraud)(注4)は急増している現象であり、通常、「デザイナー燃料」詐欺とも呼ばれる基油詐欺と燃料洗浄が含まれる。この種の詐欺には高度な専門知識が必要であり、通常は訓練を受けた化学者または同様の職業からのみが実行できる。

(注4) 燃料詐欺とは?

 燃料詐欺には、市場での価格裁定条件を悪用するための燃料の希釈、粗悪品、または密輸が含まれる。税金や補助金によって燃料製品間の価格に大きな差が生じると、悪意のある当事者はこの価格裁定取引を利用して、さまざまな燃料詐欺を実行し、莫大な利益を財源に注ぎ込むことができる。スキームは通常、脱税と補助金の乱用の 2 つのカテゴリに分類される。脱税では、高価格の課税燃料が低価格の燃料によって希薄化される。得られた混合物は、本物の高価な燃料として販売されている。このスキームが補助金付きの燃料と課税済みの燃料の両方を持つ国で実行されると、各国政府の歳入が 2 回盗まれる可能性がある。すなわち政府は、より高価な燃料に対する税金を失い、希釈のために使用された補助金付きの燃料の量を支払うことになる。さらに、低価格の補助金付き燃料は、国境を越えて補助金プログラムのない国に輸送される可能性があり、密輸された製品に高い税金がかかる可能性さえある。(Authentixサイト解説から抜粋、仮訳)

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北米で広がる韓国産えのき茸(Enoki Mushrooms)のリステリア菌汚染とリコール問題およびわが国でも留意すべき事項

2022-11-20 07:51:52 | 食品安全・医薬

 筆者の手元にわが国の厚生労働省にあたる米国FDA(食品医薬品局)から韓国グリーン・デイ・プロデュース(Green Day Produce)社製の「えのき茸(Enoki Mushrooms)」ブランド名「ジョンギルプーム(正一品)」のリコール情報が届いた。

 実は、韓国産「えのき茸(Enoki Mushrooms)」のリコールは、2020.3.10付け 内閣府 ・ 食品安全委員会・食品安全関係情報詳細(韓国:Sun Hong Foods社)2020.6.9同(韓国:Guan’s Mushroom社およびGreen社)2022年7月20日同(2020年3月から2022年5月まで、州の公衆衛生当局は、米国の小売店からえのき茸の検体を採取、リステリア菌は複数の州の検体で検出され、米国で21件のえのき茸のリコールが発生した。それらのリコールのうち9件は、韓国で栽培されたえのき茸に関連)で行われている。また、カナダでも2021.11.25にブランド名「ジョンギルプーム(正一品)」のリコールが行われている。

 ところで、わが国ではえのき茸とリステリア菌汚染はどのように扱われているであろうか。厚生労働省の警告では、【リステリア食中毒の主な原因食品例】としては、○生ハムなどの食肉加工品、〇未殺菌乳、ナチュラルチーズなどの乳製品(加熱をせずに製造されるもの)、〇スモークサーモンなどの魚介類加工品があげられているが、えのき茸は特に挙げられていない。

 今回のブログは、米国FDAやCDC等の感染拡大やリコール情報を正確に提供するとともにこれからわが国でもその消費が増えるであろう「えのき茸」の安全対策について情報提供するものである。

1.韓国産えのき茸に関連したリステリア集団感染

(1)2020.3.10 内閣府 ・ 食品安全委員会・食品安全関係情報詳細

米国疾病管理予防センター(CDC)、えのき茸に関連したリステリア集団感染に関する情報を公表。リコールは行っていない。

【一部抜粋】

     2.2020年3月9日現在、リステリア・モノサイトゲネス集団感染株の感染者計36人が17州(カリフォルニア州、ニューヨーク州他)から報告されている。

  1. 患者からのリステリア検体は2016年11月23日から2019年12月13日までに収集された。患者の年齢は1歳未満から97歳まで、年齢中央値は67歳である。患者の58%が女性である。情報の得られた32人のうち30人の入院が報告されている。カリフォルニア州、ハワイ州及びニュージャージー州から4人の死亡が報告されている。6症例は妊娠関連であり、2症例は流産となった。
  2. 疫学及び検査のエビデンスは、「韓国産」と表示されたえのき茸が、本集団感染の原因である可能性が高いことを示している。

(2)2020.6.9 内閣府 ・ 食品安全委員会・食品安全関係情報詳細

米国疾病管理予防センター(CDC)、えのき茸に関連したリステリア集団感染に関する情報を最終更新

【一部抜粋】

     4. 疫学、遡及調査及び検査のエビデンスは、韓国にあるGreen社によって供給されたえのき茸が、本集団感染の原因であった可能性が高いことを示した。

  1. FDA及び州当局は、検査のためにえのき茸を収集した。ミシガン州農業農村開発局は、患者がえのき茸を購入した食料品店からえのき茸を収集し、2検体から集団感染株を確認した。これらのきのこは「韓国産」と表示されており、Sun Hong Foods社によって販売されていた。2020年3月9日、Sun Hong Foods社は、えのき茸をリコールした。カリフォルニア州保健局は食料品店からえのき茸を収集し、1検体から集団感染株を確認した。これらのきのこは「韓国産」というラベルが付けられ、Guan’s Mushroom社によって販売されていた。3月23日、Guan’s Mushroom社は、えのき茸をリコールした。FDAは、韓国のGreen 社から、輸入時に検査用のえのき茸の検体を収集した。4月6日に、2検体でリステリア・モノサイトゲネス集団感染株を有するという結果が示された。その結果、4月7日に、FDAはGreen社に対し輸入警告を発出し、H&C Foods社はGreen社から供給されたえのき茸をリコールした。
  2. 3月18日、韓国食品医薬品安全処(MFDS)は、MFDSの調査結果及び今後の疾病予防のために取るべき措置を発表した。MFDSは韓国の2企業が生産したえのき茸にリステリア・モノサイトゲネスを確認した。

(3) 2022.7.20 内閣府 ・ 食品安全委員会・食品安全関係情報詳細

米国食品医薬品庁(FDA)は7月20日、韓国から輸入されるえのき茸に対する全国的な輸入警告を発出

【一部抜粋】当該検体採取は、2016年から2020年にかけての複数州にわたる集団感染に関するFDAの調査を受けて実施された。当該集団感染では、リステリア菌感染による複数のヒト症例と韓国産のえのき茸との関連が示され、米国17州から合計36例、カナダから12例、及び豪州から6例が報告された。米国の36例のうち、31例が入院し、4例が死亡した。

 2020年3月から2022年5月まで、州の公衆衛生当局は、米国の小売店からえのき茸の検体を採取した。リステリア菌は複数の州の検体で検出され、米国で21件のえのき茸のリコールが発生した。それらのリコールのうち9件は、韓国で栽培されたえのき茸に関連しており、表示、遡及調査、又は全ゲノムシークエンス解析(WGS)によって確認された。

 2020年の集団感染の後、FDAは公衆衛生を保護し、輸入特殊きのこ(specialty mushrooms)による将来のリステリア菌集団感染を防止するために、えのき茸に焦点を当てた輸入特殊きのこ予防戦略の実施に着手した。このFDAの予防戦略は、集団感染又は有害事象につながる根本原因の再発を制限又は防止するために、FDAによって行われる積極的かつ熟考した上でのアプローチである。

(4) 2022.11.17 米国FDA(食品医薬品局)から韓国グリーン・デイ・プロデュース(Green Day Produce)社製の「えのき茸(Enoki Mushrooms)」ブランド名「ジョンギルプーム(正一品)」のリコール情報

 わが国の食品安全委員会・食品安全関係情報詳細にはまだ掲載されていないため、筆者はFDAの情報を仮訳する。

 カリフォルニア州バーノンのグリーン・デイ・プロデュース社は、2022年9月から2022年10月まで販売された200g / 7.05ozのえのき茸(韓国製品)のパッケージを、幼児、虚弱または高齢者、および免疫力が低下した他の人に重篤で時には致命的な感染症を引き起こす可能性のある生物であるリステリア菌に汚染されている可能性があるため、リコールしている。健康な人は、高熱、激しい頭痛、こわばり、吐き気、腹痛、下痢などの短期的な症状にしか苦しむことはないが、リステリア感染症は妊婦の流産や死産を引き起こす可能性がある。

 今回リコールされたえのき茸は、全米の流通業者や小売店に配布された。

 えのき茸は、200g / 7.05ozの透明なプラスチックパッケージで提供され、前面に「エノキ・マッシュルーム」、背面にグリーン・デイ・プロデュース社と記載されている。UPCは16430-69080で、パッケージの裏側にある。パッケージにはロットコードや日付はない。

パッケージの表面

パッケージの裏面

 このリコールは、米国食品医薬品局とカリフォルニア州公衆衛生局(California Department of Public Health :CDPH)の専門知識に基づいて行われている。

 えのき茸の200g / 7.05オンスのパッケージを購入した消費者は、全額返金のために購入場所に行き返品することを勧める。質問のある消費者は、(323)587-4688またはwilliam@greendayinc.com で会社に連絡することができる。

(5) 2021.11.25カナダ政府:食品リコール警告

ジョンギルプーム・ブランドのエノキ茸はリステリア菌のためにリコールされた。

2.えのき茸とリステリア菌感染回避策

 米国メディアCBS4が「多州でリステリア菌の発生の背後にあるえのき茸」で詳しく解説している。抜粋のうえ仮訳する。

 米国の疾病管理予防センター(CDC)がえのき茸でリステリア菌の発生を見たのはこれが初めてではない。2020年、CDCは、えのき茸に関連する米国で最初に知られているリステリア菌の発生を調査した。その発生では、17の州で36人が感染した。4人が死亡し、2人が妊娠を失った。

(1)リステリア菌とはいかなるものか?

 リステリア菌は、深刻な感染症リステリア症を引き起こす可能性のある細菌です。また、一般的な食中毒の症状を引き起こす可能性がある。

 CDCは、毎年約1,600人がリステリア症にかかり、約260人が死亡していると述べた。

妊娠中の女性とその新生児、65歳以上の成人、免疫力が低下している人々を病気にする可能性が最も高い。

(2)侵襲性リステリア症の症状はどのようなものか?

 侵襲性リステリア症は、細菌が腸を越えて体の他の部分に広がるときに起こる。症状は通常、リステリア菌で汚染された食品を食べてから2週間以内に始まる。

・生のえのき茸は食べないでください。えのき茸を徹底的に調理すること。

・リステリア菌は冷蔵庫に保管されている食品で成長する可能性がある。食品を十分に高い温度に加熱することで簡単に殺せる。

・生のえのき茸は、調理されない食品とは別に保管してください。これにより、エリステリア菌がエノキ茸から食べる前に調理しない食品に広がるのを防げる。

・生のえのき茸を扱った後は手をよく洗ってください。

・生のえのき茸に触れた冷蔵庫、容器、表面を掃除されたい。

・リステリア菌は、食物、表面、手の間で簡単に広がる可能性がある。

・えのき茸を食べた後に重度のリステリア病の症状がある場合は、すぐに医療提

供者に連絡してください。

・妊娠していない人は、発熱や筋肉痛に加えて、頭痛、肩こり、錯乱、バランスの崩れ、けいれんを経験することがある。

妊娠中の人は通常、発熱、倦怠感、筋肉痛のみを経験する。さらに、リステリア菌は妊娠喪失や早産を引き起こす可能性がある。また、新生児に深刻な病気や死を引き起こす可能性がある。

(3)さらに、CDCはレストラン等に次のことを推奨している

・生のえのき茸は出さないでください。

・えのき茸は、お客様に提供する前によく調理してください。

・付け合わせとして生のえのき茸を使用しないでください。

・提供の直前に生のえのき茸をスープ料理の上に加えないでください。えのき茸はリステリア菌を殺すほど熱くならない。

・生のえのき茸は、調理されない食品とは別に保管してください。これにより、エリステリア菌がエノキ茸から、顧客に提供する前に調理しない食品に広がるのを防げる。

・えのき茸を提供する場合は、FDAの安全な取り扱いと洗浄のアドバイスに従ってください。

・生のえのき茸を取り扱った後は手をよく洗ってください。

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