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FCAはマネーローンダリング防止システムとその管理のさらなる失敗に対してギャランティ・トラスト・バンク(英国)リミテッドに760万ポンドの罰金を科した

2023-02-13 06:27:48 | マネーローンダリング

 英国金融行動監視機構(FCA)は、2014年10月から2019年7月までのマネーローンダリング防止(AML)システムと管理上の深刻な脆弱性に対して、ギャランティ・トラスト・バンク(UK)リミテッド(Guaranty Trust Bank (UK) Limited、以下「GTバンク」という)(注1)に7,671,800ポンド(約12億2,720万円)の罰金を科した旨のリリースが筆者の手元に届いた。以下で、筆者なりに補足、仮訳する。

 この関連期間中、GTバンクは適切な顧客リスク評価を実施できず、多くの場合、顧客によってもたらされるマネーローンダリング・リスクを評価または文書化していなかった。

 また同銀行は、顧客取引と取引関係を必要な基準をもって監視していなかった。

 これらの弱点は、FCAを含む内部および外部の情報源によってGTバンクに繰り返し強調されたが、それにもかかわらず、GTバンクはそれらを修正するための適切な措置を講じることを怠った。

 2018年初頭から、GTバンクは新規顧客の獲得を停止した。その年の後半、GTバンクは、FCAの継続的な懸念を考慮して、ビジネスに対するより広範な自主的な制限に同意した。その制限要件は、銀行が独立した第三者によってチェックされた修復計画を完了した後に解除された2021年半ばまで有効であった。

 GTバンクの行為は、同銀行がAML管理に関連して法執行措置に直面したのはこれが初めてではなく、FCAは2013年8月に重大かつ体系的な懈怠に対してGTバンクに525,000ポンド(約8,452万円)の罰金を科したことから、特に悪質といえる。

 FCAは、個人や組織が金融機関を使用して、違法な手段で取得した資産から利益を得るのを防ぐための制限を回避するリスクを軽減するために、効果的なAML管理を実施することを企業に求めている。

 FCAの執行および市場監視担当エグゼクティブディレクターであるマーク・スチュワード(Mark Steward)氏(注2)は、次のように述べた。

Mark Steward氏

 「GTバンクは、2013年の罰金に続いて、適切なAML管理を実施するために迅速に行動すべきであったが、そうしなかった。GTバンクは、AMLの弱点に対処できる計画を策定しておらず、AMLとより広い市場を金融犯罪リスクに長期間さらした。

 「企業は、金融犯罪のリスク、特にマネーローンダリングから自社とそれに対処する人々を保護する必要がある。FCAは、金融サービスの市場が安全でクリーンであり、金融犯罪を阻止するための堅牢なシステムと管理により信頼されることを保証することを決意している。FCAは、これらの基準が満たされない場合、引き続き強い措置を講じる。」

GTバンクはFCAの調査結果に異議を唱えておらず、和解に同意しているため、30%の割引を受ける資格がある。この割引がなければ、金銭的ペナルティは1,095万9,700ポンド(約17億3,200万円)となった。

【編集者への注記】

(1)GTバンクは、アフリカと英国でさまざまな銀行サービスを提供するナイジェリアの多国籍金融サービス機関であるギャランティトラストバンクホールディングカンパニーPlc.の完全子会社であるギャランティトラストバンクナイジェリアリミテッドの完全子会社である。Guaranty Trust Bank Holding Company Plcは、ロンドンとナイジェリアの両方の証券取引所に上場している公開有限会社である。

(2)GTバンクへのFCAの最終通知原本

(3)2013年8月8日、FCAは最終通知を発行し、2008年5月19日から2010年7月19日の間に適切なAMLシステムと管理を維持できなかったとして、GTバンクに525,000ポンド(約8,292万円)の罰金を科した。

(4)2018年初頭、GTバンクは新規顧客のALM新人研修を停止させた。2018年5月、GTバンクのAMLシステムとコントロールに関する重大な欠陥を浮き彫りにした熟練者のレポートが作成された。その後、GTバンクは2018年11月13日に事業に幅広い要件を自主的に課すことに合意した。

(5)AMLシステムとコントロールの改善に続いて、GTバンクが熟練者によって検証された改善計画を完了した後、この要件は解除された。

(6)金融犯罪の削減と防止は、深刻な被害を防ぎ、金融市場でより高い基準を設定するためのFCAの3カ年戦略の重要な部分である。

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(注1) Guaranty Trust Bank (UK) Limited は、イングランドとウェールズで設立された有限会社である (05969821)。 登録事務所: 60-62 Margaret Street, London, W1W 8TF. Guaranty Trust Bank (UK) Limited は、健全性規制機構(Prudential Regulation Authority)によって認可されており、金融行為監督機構(Financial Conduct Authority)および健全性規制機構によって規制されている。 GTBank および GTBank UK は、Guaranty Trust Bank (UK) Limited の商号である。 当行は、ナイジェリアの大手金融サービスプロバイダーの 1 つである Guaranty Trust Bank Plc の英国完全子会社である。

 なお、英国の金融監督システムはわが国や米国等と異なる。すなわち、金融システム全体の安定化(マクロプルーデンス)を担うイングランド銀行内の金融政策委員会(Financial Policy Committee:FPC)、個々の金融機関の健全性の確保(ミクロプルーデンス)を担う健全性監督機構(Prudential Regulation Authority:PRA)、そして金融事業者による業務上の行為の監督を担う金融行為監督機構(Financial Conduct Authority:FCA)が設置されることとなった。この体制は、銀行・証券・保険といった業種別ではなく、健全性規制と事業者の行為規制という機能面から PRA と FCA の2つの規制当局を設けている点に着目して、二頭体制(twin-peaks system)とも言われている。なお、FPC および PRA はイングランド銀行内部の組織であるが、FCA は FSA が改称された独立の機関である。(後藤 元「イギリスにおける銀行の業務範囲規制」から一部抜粋)(筆者ブログの注4参照)

(注2) マーク・スチュワード氏は 2015 年に FCA に入局して以来、同氏 は FCA の最も複雑で注目を集め、先例となる執行事件のいくつかの実施を主導しており、主要な国際金融機関や個人に対して多くの顕著な成功を収めている。彼はまた、FCA の上場権限と英国の上場市場の監視を主導し、市場監視に対するFCA のデータ主導のアプローチを開発した。さらに、彼は FCA の詐欺防止マーケティング キャンペーン「Scamsmart」の最前線に立った。彼は、2023 年春に FCA を去った。(FCAサイトから抜粋、仮訳)

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香港の暗号資産交換プラットフォームBitzlatoの閉鎖やその中核人物の起訴を巡る関係機関の取組みを暗号資産、マネーローンダリング、ロシア制裁等の観点から解析する(その1)

2023-01-30 12:16:35 | マネーローンダリング

 ロシアとウクライナ戦争における西側諸国のウクライナ支援は単に戦車や武器等の提供にとどまらない。筆者はかつて個人や法人の金融制裁の実態を「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!」ブログ(その1その2その3完 )で論じた。

 今回は、さらに金融面の厳しい制裁特に暗号資産交換所やダークネット・マーケットを巡るマネーローンダリング、違法性の高い取引実態にもとづく違法な犯罪者に対するEUROPOL、米国、ドイツの詳しい法執行を内容の解析を試みる。

 Ⅰ.2023.1.28 ユーロポール(EUROPOL)等の暗号資産プラットフォームBitzlatoの閉鎖

 EUROPOLのリリース「ビッツラート(以下、Bitzlatoという)上級管理職が逮捕された」が手元に届いた。以下でその要旨を仮訳する。

 フランスでは犯罪資産の資金洗浄容疑で暗号資産プラットフォーム・インフラが閉鎖され、キプロス、スペイン、ポルトガル、米国で6人が標的になった。

 フランスと米国の当局が主導し、EUROPOLが強力に支援している作戦は、暗号交換プラットフォームBitzlatoを標的にしている。この世界的に運営されている香港で登録された暗号通貨取引所は、大量の犯罪収益の洗浄を促進し、それらをルーブルに変換した疑いがある。法執行当局は、フランスに拠点を置くサービスのデジタル・インフラストラクチャを停止し、プラットフォームの管理者の主要メンバーを尋問した。この作戦には、ベルギー、キプロス、ポルトガル、スペイン、オランダの法執行機関と司法当局も関与した。

共同作戦機関のサイト

(1)犯罪活動に関連するすべてのビッツラート取引のほぼ半分にあたる

 暗号交換などの重要な犯罪ファシリテーターを標的にすることは、サイバー犯罪との戦いにおける重要な優先事項になりつつある。Bitzlatoは、ビットコイン、イーサリアム、ライトコイン(Litecoin)ビットコインキャッシュ(bitcoin cash)ダッシュ(dash)ドージコイン(dogecoin)Tether (USDT) などのさまざまな暗号資産をロシア・ルーブルに迅速に変換することを可能にした。暗号交換プラットフォームは、合計2億ユーロ(BTC(ビットコイン) 119000)相当の資産を受け取ったと推定されている。

 暗号資産の法定通貨への変換は違法ではないが、サイバー犯罪者のオペレーターの調査では、大量の犯罪資産がプラットフォームを通過していることが示された。分析によると、Bitzlatoを通じて交換された資産の約46%(約1億ユーロ(約140億円)相当)が犯罪活動に関連していることが明らかとなった。

 暗号解読により、疑わしい取引の大部分は米国連邦財務省・外国資産管理局(OFAC)によって認可された事業体にリンクされており、他の事業体はサイバー詐欺、マネーローンダリング、ランサムウェア、児童虐待資料に関連していることが明らかになった。たとえば、調査によると、2022年4月に閉鎖削除されたBitzlatoユーザーとHydramarketの間で2022万件のBTCトランザクションが直接行われた。

 ロシア語と英語の両方で利用可能なこの暗号資産交換プラットフォームは、フランスのホスティング会社から専用サーバーをレンタルしていた。さまざまな関係国の司法当局と法執行当局の調整された行動は、プラットフォームの削除、現在の金融資産の差し押さえ、およびさらなるテクニカル分析につながった。

(2)法執行の全体的な結果

①これまでに5人が逮捕された(キプロスで1人、スペインで3人、米国で1人)。

②ポルトガルで1人が尋問された。

③主な管理者は米国で逮捕された。

④CEO、財務ディレクター、マーケティングディレクターがスペインで逮捕された。

⑤8件の家宅捜査(スペインで4件、キプロスで1件、ポルトガルで2件、米国で1件)。

⑥サービスのデジタルインフラストラクチャを削除し、さらなる分析と調査を可能にした。

⑦押収物には、執筆時点で約1800万ユーロ(約11億2000万円)相当の暗号通貨、車両、電子機器が含まれる。

⑧他の暗号資産交換にかかる100以上のアカウントが凍結され、合計5000万ユーロがそれに関与した。

(3)犯罪行為とのリンクを明らかにするための暗号分析と国際協力

 調査活動の最初の段階では、EUROPOLは情報交換を促進し、利用可能なデータをEU内外のさまざまな刑事事件にリンクする分析サポートを提供し、数百万の暗号通貨取引の分析を通じて調査をサポートした。

 作戦行動当日、EUROPOLはその場で13人の専門家(フランスから10人、キプロスから1人、スペインから1人、ポルトガルかに1人)を派遣し、作戦活動に参加する他の国での国家調査官の配備を支援した。EUROPOLは、暗号通貨分析に関連する調整、EUROPOLのデータベースに対する運用情報のクロスチェック、および運用分析に関与する法執行当局を支援した。現時点では、すでに3,500を超えるビットコイン・アドレスと1 ,000を超えるBitzlatoユーザーの詳細が、Europolのシステムで報告されたさまざまな刑事事件とのリンクを示している。このデータやその他の関連事例の分析は、さらなる調査活動のきっかけとなることが期待される。

(4) 関係する法執行機関のリスト

・キプロス:キプロス警察(ΑστυνομίαΚύπρου)

・ベルギー:連邦警察( Belgium: Federal Police (Federale Politie/Police Fédérale)

・フランス:国家憲兵隊( France: National Gendarmerie (Gendarmerie Nationale)

・米国:連邦捜査局(United States: Federal Bureau of Investigation)

・スペイン:市民警備隊(グアルディア市民)( Spain: Civil Guard (Guardia Civil)

・オランダ:国家警察( Netherlands: National Police (Politie) 財政情報調査局  (The Fiscal Information and Investigation Service FIOD)

・ポルトガル:司法警察 ( Portugal: Judicial Police (Policia Judiciaria)

(5) 関係する司法当局

ベルギー:連邦検察庁(Parquet fédéral)(Belgium: Federal prosecutor office (Parquet fédéral)

フランス:パリ検事局( France: Paris Prosecutor / JUNALCO (Parquet de Paris / JUNALCO)

米国: 米国司法省 (US DOJ)( United States: United States Department of Justice (US DOJ)

*オランダのハーグに本部を置くEUROPOLは、テロ、サイバー犯罪、その他の深刻で組織的な犯罪形態との戦いにおいて、27のEU加盟国を支援している。まら またEUROPOLは、多くの非EUパートナー国や国際機関と協力しており、さまざまな脅威評価から情報収集および運用活動まで、EUROPOLはヨーロッパをより安全にするために必要なツールとリソースを有している。

Ⅱ. 米国の連邦司法省やFinCENの法執行行動

1.2023.1.18 FinCENリリース「FinCENは、仮想通貨取引所のBitzlatoをロシアの違法金融に関連する「主要なマネーロ-ンダリングの懸念」対象として特定した」

 FINCenのリリース文を仮訳する。

 1月18日、米国財務省の金融犯罪執行ネットワーク(FinCEN)は、暗号資産取引所のBitzlato Limited(Bitzlato)(注1)をロシアの違法金融に関連する「主要なマネーロンダリングの懸念」として特定する命令を発布した。

 これは、改正されたロシア等のマネーロンダリング対策強化法(H.R.6343 - Illicit Finance Improvements Act)のセクション9714(a)に従って発行された最初の命令であり、ロシアの違法な金融を促進および支援する事業運営が米国の国家安全保障と米国の金融セクターの完全性にもたらす深刻な脅威を強調している。この命令は、対象となる金融機関によるBitzlatoを含む資金の特定の送金を禁止するものである。

 命令の中で、FinCEN は、Bitzlato が米国外で活動している金融機関であり、ロシアの違法な金融に関連して主要なマネーロ-ンダリングの懸念があると判断した。 Bitzlato は、ロシア政府とつながりを持つサービスとしてのランサムウェア グループである Conti(注2) を含む、ロシアで活動するランサムウェア アクターの違法取引を促進することにより、Convertible Virtual Currency (CVC) のロ-ンダリングにおいて重要な役割を果たしている。

 FinCENのヒママウリ・ダス(Himamauli Das)部長代理は「Bitzlatoは、ロシアのサイバー犯罪者やランサムウェアアクターが盗難の収益を洗浄できるようにすることで、世界的な脅威をもたらす。犯罪者や犯罪支援者が進化するにつれて、これらのネットワークを混乱させる能力も進化する。我々は引き続き、これらの機関が米国の金融システムにアクセスし、ロシアの違法な資金を支援するためにそれを使用することを禁止するために、当局の全範囲を活用していく」と述べている。

 命令文に記載されているように、Bitzlatoは交換とピア・ツー・ピア(P2P)サービスを提供する仮想通貨取引所である。Bitzlatoは、ロシア関連のランサムウェアグループまたは関連会社による預金および資金移動の促進、およびロシアに接続されたダークネット市場との取引を通じて、ロシアおよびロシアの違法金融に関連する重要な事業を維持している。FinCENの調査によると、これらの接続には、Contiとロシアの接続されたダークネット市場Hydraが関与する預金、資金移動、および取引の促進が含まれるが、これらに限定されない。後記Ⅲ.で述べるとおり、2022年4月にHydraが閉鎖された後も、BitzlatoはBlackSprut、OMG!OMG!、そしてMega を含むダークネット市場を支援する取引を行っている。

 捜査の過程で、FinCENは、Bitzlatoがサービスの違法な使用と乱用を特定して混乱させるための意味のある措置を講じていないことを発見した。Bitzlatoは、マネーロンダリングや違法な金融と戦うために設計されたポリシー約款と手順を効果的に実装しておらず、そのようなポリシー約款、手順、または内部統制の欠如を堂々と宣伝している。その結果、Bitzlatoは、他の仮想通貨取引所と比較して、ロシアの違法金融に関連するマネーロンダリング活動の割合を大幅に拡大しています。Bitzlatoが、ダークネット市場を標的とした公的措置の後でも、ロシアに接続されたダークネット市場を継続的に促進していることは、違法行為者との継続的な関与と適切な管理の欠如をさらに示している。本命令に記載されているように、2023年2月1日施行より、対象となる金融機関は、Bitzlatoとの間で、またはBitzlatoによって、またはBitzlatoに代わって管理される口座またはCVC(Convertible Virtual Currency)アドレスとの間で資金の送金を行うことを禁じられる。

 本日の法執行行動は、透明性の向上を通じて米国の国家安全保障と米国の金融システムの完全性を強化し、CVCを含むデジタル資産を含む違法な金融活動の検出を促進することを目的としている。この行動は、財務省が利用可能なツールを使用してロシアの違法な金融活動を標的にし、ランサムウェアの脅威に対抗する例である。

 ロシアはサイバー犯罪者の天国であり、政府は独自の悪意のある目的でサイバー犯罪者を参加させることがよくある。2021年後半にFinCENに報告されたランサムウェア・インシデントの大部分は、ロシア関連のランサムウェアの亜種によって実施されており、Bitzlatoがロシアで免責されて活動することが許可されているロシアのサイバー犯罪者のより大きなエコシステムの一部であることを示している。

 さらに今回の行動は、違法行為を促進する責任を負う関係者に責任を負わせ、デジタル資産の乱用と戦うための財務省の世界的なリーダーシップを再確認するものである。「2022年から2026年度の財務省戦略計画(President’s Fiscal Year 2023 Budget and Treasury Strategic Plan for Fiscal Years 2022-2026)」(注3)に示されているように、財務省は国内および国際的な金融システムの透明性の向上に取り組んでいる。これには、デジタル資産の違法資金調達リスクに対処するための行動計画で特定されているように、財務省のツールを使用して、違法行為に関与したり促進したりするエコシステム内の説明責任のある関係者を拘束し、国際金融システムから切り離すことが含まれる。

連邦財務省・FinCenの命令文(Imposition of Special Measure Prohibiting the Transmittal of Funds Involving Bitzlato)原本 はここで見れる。

 このFinCENの行動に関するよくある質問(FAQs Bitzlato)は、こちらにある。

2.2023.1.18 連邦司法省リリース「7億ドル以上の違法資金の処理で起訴されたCryptocurrency ExchangeたるBitzlatoの創設者および過半数所有者たるロシア国民のアナトリー・レグコディモフ(Anatoly Legkodymov)をマイアミで逮捕」

 連邦司法省のリリース文を仮訳する。

 暗号通貨取引所のBitzlato Ltd. (以下、Bitzlato)の創設者であり過半数の所有者である中華人民共和国の深圳に住むロシア国籍のアナトリー・レグコディモフ(Anatoly Legkodymov(以下、Legkodymov という(40歳)を1月17日夜マイアミで逮捕した。容疑者は違法な資金を輸送および送金する送金ビジネスを運営していた疑いがあり、アンチ・マネーローンダリングの要件を充足せずに米国の規制上の保護措置を満たしていなかった。

 中華人民共和国の深圳に住むロシア国籍のアナトリー・レグコディモフ( Anatoly Legkodymov :40 歳) は、1月18日の午後、フロリダ州南部地区連邦地方裁判所で罪状認否を受ける予定である。フランス当局と米国財務省の金融犯罪取締ネットワーク (FinCEN) は、同時に取り締まりを行っている。

Anatoly Legkodymov被告

 DOJ司法次官補長リサ・O・モナコ(Deputy Attorney General Lisa O. Monaco.)は「1月18日、連邦司法省は暗号資産犯罪のエコシステムに重大な打撃を与えた。DOJは一夜にして、国内外の主要パートナーと協力して、暗号通貨等犯罪のハイテク軸を助長した中国を拠点とするマネーローンダリング推進役であるBitzlatoを妨害するとともに、その創設者であるロシア国民のAnatoly Legkodymovを逮捕した」と述べた。

 今日の行動は、明確なメッセージを送っている。すなわち、中国やヨーロッパから私たちの法律を破るか、熱帯の島から私たちの金融システムを悪用するかどうかにかかわらず、米国の法廷内で犯罪に応えることが期待できる。

Deputy Attorney General Lisa O. Monaco

 司法省司法次官補ケネス A. ポライト(Assistant Attorney General Kenneth A. Polite, Jr.)は「主張されているように、被告は、必要なアンチ・マネーロンダリング保護策を実装せず、犯罪者がランサムウェアや麻薬密売などの不正行為から利益を得ることを可能にした暗号資産取引所の運営を支援した。Bitzlatoの違法業務を妨害し、被告を逮捕するための National Cryptocurrency Enforcement Teamの途方もない努力は、たとえ国境を越えたとしても、暗号資産を利用した犯罪と戦うために、国内外のパートナーと協力し続けることを示している」と述べた。

Kenneth A. Polite, Jr.

 裁判所の文書によると、Legkodymovは香港で登録され、グローバルに運営されている暗号資産取引所であるBitzlatoの上級管理職であり、また過半数を有する株主である。Bitzlato は、「自撮り写真もパスポートも必要ない」と明記して、マネーローンダリングにかかるユーザーに最小限の身元確認を要求するものとして自社を売り込んできた。Bitzlato がユーザーに身元を特定する情報を提出するように指示した場合でも、ユーザーが「架空名義(straw man)」の登録者に属する情報を提供することを繰り返し許可してきた。

 ニューヨーク東部地区担当のブレオン・ピース(Breon Peace)連邦検事は「暗号資産を取引する機関は法を超越しているわけではなく、その所有者は私たちの手の届かないところにない。主張されているように、Bitzlato は質問を受けない仮想資産取引所として自らを犯罪者に売り込み、結果として数億ドル相当の預金を獲得した。被告は現在、彼の会社が暗号通貨のエコシステム(注4)(注5)で果たした悪意のある役割の代償を払っている」と述べた。

 これらの不十分な顧客確認 (know-your-customer (KYC)) 手順の結果として、Bitzlato は、犯罪行為に使用することを目的とした犯罪収益と資金の避難所になったと言われている。暗号資産取引における Bitzlato の最大の取引相手は Hydra Market (以下、Hydraという) であった。これは、麻薬、盗まれた財務情報、不正な身分証明書、マネーローンダリング サービスのための匿名の違法なオンライン市場であり、世界で最大かつ最長のダークネット市場である。Hydra のユーザーは、2022 年 4 月に米国とドイツの法執行機関によって Hydra が閉鎖されるまで、7 億ドル(約910億円)以上の暗号通貨を Bitzlato と直接または仲介者を介して交換した。

 FBIのブライアン・ターナー副局長(Associate Deputy Director Brian Turner)は、「FBIは、犯罪行為をキーボードで隠蔽し、暗号資産などの手段を使用して法執行機関から逃れようとする攻撃者を追跡し続ける。FBIは、連邦機関および国際的なパートナーとともに、この種の犯罪組織を混乱させ、解体するために絶え間なく働く。本日の被告の逮捕は、FBIがこれらの活動に従事する人々にリスクと結果を課すことを思い出させるものとなるはずである」と述べた。

Associate Deputy Director Brian Turner

 FBIニューヨーク現地事務所のマイケルJ.ドリスコル(Charge Michael J. Driscoll)担当副局長は「本日主張されているように、Legkodymovは、Bitzlatoがさまざまな犯罪活動に使用され、その結果として生じる資金の安全な避難所と見なされることを故意に許可した。FBIと私たちのパートナーは、あらゆる金融市場と同様に、暗号通貨市場を違法行為から守るという確固たるコミットメントを維持している。本日の FBI等の行動は、Legkodymovが我々の刑事司法制度で彼の行動の結果に直面することになるため、このコミットメントの例として役立つはずである」と語った。

 訴状で主張されているように、Bitzlato の顧客は、同社の顧客サービス ポータルを日常的に使用して、Hydra との取引のサポートを要求し、Bitzlato の担当者とのチャットで想定された身元で取引していることを認めた。

 さらに、Legkodymov と Bitzlato の他の管理者は、Bitzlato のアカウントが違法行為に満ちており、そのユーザーの多くが他人の ID で登録されていることを認識していた。たとえば、2019 年 5 月 29 日、Legkodymov は Bitzlato の内部チャット システムを使用して同僚に、Bitzlato のユーザーは「詐欺師であることが知られている」と書き、他人の ID 文書を使用してアカウントを登録した。Legkodymovは同僚から、Bitzlatoの顧客ベースは「Hydraでドラッグを購入する常習者」と「麻薬密売人」で構成されていると繰り返し警告された。ある上級幹部は、Bitzlato は、会社の利益を損なうことを避けるために、「名目上」のみに麻薬の売人と戦うべきだとさえ強調した。Bitzlato の共有管理フォルダに保存された内部スプレッドシートには、「積極的にKYCを回避し(Positives: No KYC(No Know Your Customer(顧客の本人確認を行わない))・

・・「消極的に汚れたお金(Negatives: Dirty money)」等同社の独自の見解が要約されていた。

 訴状で主張されているように、Bitzlato は米国からのユーザーを受け入れないと主張していたが、実際は米国を拠点とする顧客と実質的な取引を行っており、その顧客サービス担当者は、米国の金融機関から資金を送金できることをユーザーに繰り返しアドバイスしていた。さらに、2022 年と 2023 年にマイアミから Bitzlato を管理していた Legkodymov は、2022 年 7 月に 2 億 5000 万ドル(約325億円)を超える訪問を含む、米国ベースのインターネット プロトコル アドレスから Bitzlato の Web サイトへのかなりのトラフィックを反映するレポートを受け取った。

 Legkodymov は、無認可の送金事業を行った罪で起訴されており、有罪判決を受けた場合、彼は最高で 5 年の拘禁刑に処せられる。

 本ブログの第Ⅰ項で紹介したとおり、18日発表された逮捕と同時に、フランス当局は、EUROPOLおよびスペイン、ポルトガル、キプロス等のパートナーと協力して、Bitzlatoのデジタル インフラストラクチャを解体・閉鎖し、ビツラートの暗号通貨を押収し、その他の法執行措置を講じた。

Ⅲ.2022.4.5ドイツ連邦刑事庁(BKA)リリース「違法なダークネットマーケット:であるハイドラマーケット(Hydra Market)を閉鎖させた」

 BKAのリリース文を仮訳する。

 世界最大のダークネット・ マーケットプレイスのサーバーが押収され、総額約 2,300 万ユーロ(約9億2000万円)の 543 ビットコインが押収された。

 2022年4月5日、フランクフルト中央検察庁(サイバー犯罪対策中央局(ZIT)) (注6)連邦刑事警察局(BKA)は、ドイツにある世界最大の違法ダーク34ネットマーケットプレイス「ハイドラ・マーケット(Hydra Market)」のサーバー・インフラストラクチャを押収し、閉鎖した。現在約23万ユーロに相当するビットコインが確保されており、これはHydra市場に起因している。

 この点に関してZITで継続中の調査は、前述のHydraプラットフォームのこれまで知られていなかったオペレーターと管理者に向けられている。とりわけ、インターネット上の犯罪取引プラットフォームの商業的運用、商業的調達、または麻薬の不正な取得または供給の機会の付与、および商業マネーローンダリングの疑いがある。

 本日実施された押収に先立って、2021年8月からBKAとZITによって実施され、いくつかの米国当局が関与した広範な捜査が行われた。

 違法なダーク市場は、少なくとも2015年以降、匿名通信であるTor(トーア)(注7)ネットワークを介してアクセス可能なロシア語のダークネット・プラットフォームであった。その焦点は違法麻薬の取引にあり、Hydraプラットフォームは世界的にスパイされたデータ、偽造文書、デジタルサービスも提供していた。

 約 1,700 万人の顧客と 19,000 を超える販売アカウントが同マーケットプレイスに登録されていた。

 ZITとBKAによると、「Hydra Market」は世界で最も売上高の高い違法市場であった可能性がある。その売上高は、2020年だけで少なくとも12億3000万ユーロ(約172億2000万円)に達した。特に、デジタル取引を難読化するサービスであるプラットフォームが提供する「ビットコイン・バンク・ミキサー(Bitcoin Bank Mixer)」(注8)は、法執行機関にとって暗号調査を非常に困難にする。

 ドイツでは次のセキュリティ(市場閉鎖)・バナー解説が18日、ZIT, BKAのWebサイトで公開された。

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(注1) 米国の複数当局は1月18日、香港で登録した暗号資産(仮想通貨)取引所Bitzlatoの創業者でロシア国籍のAnatoly Legkodymovを起訴した。不正資金の移動事業を行い、マネーロンダリング防止要件に準拠していなかった疑いがある。

Legkodymov容疑者は17日にフロリダ州マイアミで逮捕されており、まもなく連邦地裁で罪状認否が行われる予定だ。

捜査には米司法省、ニューヨーク州東部地区連邦検事局、連邦捜査局(FBI)など様々な機関が参加している。また、司法省は、フランスの法執行当局や米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)とも連携しているところだ。

フランス当局は、欧州警察およびスペイン、ポルトガル、キプロスの当局とも協力して、Bitzlatoのデジタルインフラを解体し、強制措置を講じたとされる。

訴状の内容

 訴状によると、Legkodymov容疑者は、香港で登録された国際的な仮想通貨取引所「Bitzlato」の幹部で大株主である。Bitzlatoは、「自撮りもパスポートも必要ない」として、身分証明書をユーザーにほとんど要求しないことを宣伝していた。

 このように、顧客身元確認(KYC)の不備のため、Bitzlatoは犯罪資金の温床になっていた。Bitzlatoの最大の取引相手は、大規模ダークネット市場Hydraだった。Hydraは、麻薬、盗難された個人データ、マネーロンダリングサービスなどを扱う、不正なオンライン市場である。

 Hydraは2022年4月に米国とドイツの法執行機関によって閉鎖されたが、それまでにBitzlatoを通じて約900億円(7億ドル)以上の仮想通貨を取引していた。

 訴状は、同取引所がランサムウェア収益約19億円(1,500万ドル)以上を取り扱っていたとも指摘している。(CoinPost記事「米当局、国際協力で仮想通貨取引所を取り締まり」から抜粋)

(注2) Contiは、2020年5月に初めて確認されたランサムウェアの一種。 ダークサイドなどこれまでのランサムウェアグループは医療機関などは標的にしない事を明言しているグループが多かったが、Contiは多数の医療機関を問答無用で標的にするなどその凶悪さが注目を集めている。Contiを開発しているのは、ロシアのサンクトペテルブルクとウクライナを拠点にしていると推測されるハッカーグループのウィザード・スパイダーで、同グループはランサムウェアRyuk(英語版)も運用している。(Wikipediaから抜粋、引用 )

(注3)2022年3月28日 、 バイデン・ハリス政権は2023 年度の大統領予算を連邦議会に提出し、財務省は 2022 年度~ 2026 年度の戦略計画を発表した。大統領予算は、現在が昨年達成した歴史的な進歩を拡大し、大統領が一般教書演説で示した議題を実現するという大統領のビジョンを素直に反映している。予算は、今後の世代のために成長と成長を共有するためのより強力な基盤を認識するのに役立つ重要な投資をアメリカ人が行い、財務省戦略計画の目標を実施するためのリソースを調整したもので財務省の連邦予算項目は次のようになる。

①納税者の経験を改善し、公正な税制をサポートする。

②大統領の歴史的な気候変動資金に関する誓約を前進させる。

 ③ 国際開発における米国のリーダーシップを回復する。

④有利でないコミュニティへの融資を拡大し、手頃な価格の住宅供給を増やす。

⑤企業の透明性を高め、金融システムを保護する.財務省は、汚職マネーローンダリングテロリストの資金調達、および国内の悪意のあるアクターによる金融システムの使用を監視し、妨害する上で主導的な役割を果たしている。これら技術的能力への投資は、不正なアクターが精査を企業回避し、取引を阻止し、説明の責任を解明することを可能にする財務報告の抜け穴を埋めることを含め、これらの取り組みにとって重要である。

⑥予算は、高価値資産として指定されたものを含み、財務省の機密システムと情報を保護および防御するために2億1,500万ドルを提供する。

⑦重要機関の能力を回復する。

(2022.3.28米国連邦財務省Janet L. Yellen長官の声明から抜粋、仮訳)

(注4) 新しい暗号エコシステムはどのように機能しますか?

 暗号エコシステム(cryptocurrency ecosystem)は、参加者のネットワークが目的を達成し、シームレスな運用を確保するための特定のニーズを満たす、十分に油を注がれたシステムである。暗号エコシステムのコア機能は、ブロックチェーン開発者がブロックチェーン技術を使用する暗号通貨を構築するブロックチェーン・ プロトコルから始まる。このレベルでは、開発者は機能を作成し、役割を設計し、暗号通貨が動作するパラメーターを設定する。特定の暗号の開発者は通常、社内にいるが、複数の開発者が協力してサービスを提供したり、ボランティアをしたりすることもある。

 暗号通貨が立ち上がると、マイナー(miners:ビットコインの取引が正常に行われたことを承認する作業(マイニング)を行う人)またはステーカー(stakers:仮想通貨を保有して報酬を得る仕組みつくり人)は、ブロックチェーンへのトランザクションを更新および検証するという重要な役割を果たす。設計された合意メカニズム (プルーフ オブ ワークまたはプルーフ オブ ステーク)(注11) に応じて、マイナーまたはステーカーはトランザクションを迅速かつ安価に処理できるようにする。

 暗号エコシステムのもう 1 つの重要な側面は、投資家が暗号交換を使用してコインを購入、販売、または交換することである。すべての参加者に情報プラットフォームを提供する暗号メディアにより、エコシステムはすべての利害関係者に利益をもたらすように機能する。

(注5) 合意メカニズムという用語は、ノードのネットワークがブロックチェーンの状態に合意することを可能にするプロトコル、インセンティブ、考え方のすべてを指す。

 「プループオブワーク」と「プルーフオブステーク」は、二大合意形成メカニズムです。暗号資産はこれらのメカニズムを使って、新たなトランザクションを認証し、それらのトランザクションをブロックチェーンに追加し、トークンを作ります。ビットコイン(Bitcoin)が最初に開発をしたプルーフオブワークは、マイニングを使ってこれらの目標を達成します。カルダノ(Cardano)やETH2ブロックチェーンなどが採用しているプルーフオブステークは、ステーキングを使って同じことを実現します。(coinbaseの用語解説から抜粋,引用)

(注6) サイバー犯罪対策中央局(ZIT)は、ギーセンに拠点を置くフランクフルト・マイン.検事総長事務局の支部として、2010年1月1日に設立された。2019年11月以降、セントラルオフィスはフランクフルト・マインに拠点を置いている。現在、長としての上級検察官、上級検察官、および11人の検察官から構成されている。

 ZITは、ドイツの領土管轄権がまだ不明確な場合、または全国の多数の容疑者に対する大量訴訟におけるインターネット犯罪に関する連邦刑事庁の最初の連絡先である。ZITは、運用中央オフィスとして、以下のような犯罪の分野で特に複雑で広範な調査を処理する。

①インターネットに関連する児童ポルノおよび児童の性的虐待

②ダー.ネット犯罪(犯罪ダークネットプラットフォームとの戦い、ダークネット上の武器、麻薬、偽造品の密売)

③狭義のサイバー犯罪(ハッカー攻撃、データ盗難、コンピューター詐欺)

④インターネット上のヘイトスピーチ

また、裁判官、検察官、警察官の訓練も担当している。なお、ZITは、サイバー犯罪と戦うための司法当局のヨーロッパのネットワークである欧州司法サイバー犯罪ネットワーク(European Judicial Cybercrime Network (EJCN)の創設メンバーでもある。(ZITサイトから抜粋、仮訳)

(注7) 通常、ウェブサイトにアクセスしたりメールを送信したりするとサーバーにアクセス元のIPアドレスが残ります。これを元に「誰がウェブサイトにアクセスしたのか?」や「誰がメールを送信したのか?」を特定することが可能なわけですが、そういった情報を一切残さずに完全に匿名で通信を行えるというシステムが「Tor(トーア)」。Torの仕組みは、コンピューターから目的地(例えばgoogle.comなどのウェブページ)までの通信経路に、他のコンピューターなどの中継地点(リレーエージェント)を追加するというもの。通信時に多くのリレーを経由させ、リレーにはログを残さず、さらにはアクセス経路の出口以外は全て暗号化されているため、発信源が不明になり匿名性が保たれるというものである。(GIGAZINEの解説から抜粋)

(注8) ビットコイン のブロックチェーンは完全に公開されている。ブロックチェーン エクスプローラーにアクセスすると、2009 年初頭の仮想通貨のローンチ以降に処理されたすべてのビットコイン トランザクションの完全な記録を見つけることができる。

 一部の人にとっては、これはコア機能であり、問​​題ではない。 しかし、もう少し匿名性が必要な人にとっては、Bitcoin ブロックチェーンの公開性はプライバシー上の重大な欠陥である。

 ビットコイン取引を完全に非公開にする方法がある。 誰が誰に何を送ったかを曖昧にする. 最も一般的な方法の 1 つは、タンブラーとも呼ばれるビットコイン ミキサーを使用することである。これらは、意図した受信者にビットコインを吐き出す前に、プライベート プールで大量のビットコインをごちゃまぜにするツールである。

 ブラックボックスを介してビットコインをシャッフルすることによって、A が 10 ビットコインを B に送信したことを突き止めることは困難であるという考えである。一般の探検家が示すのは、A がビットコインをミキサーに送信したことだけである。その人物 B はミキサーからビットコインを受け取り、他の十数人も同様であった。(CoinDesk解説を抜粋、仮訳)

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2人のラトビア人がQQAAZZ組織の一部としてサイバー犯罪者として資金洗浄の支援に関し有罪答弁および国際化・肥大化する犯罪組織に取り組む国際的な捜査協力の在り方

2021-08-12 17:25:19 | マネーローンダリング

Last Updated:Febuary 25,2022

 8月6日、筆者の手元に連邦司法省ペンシルバニア州西部地区連邦検事局からの緊急リリースが届いた。

 2人のラトビア人被告が多国籍なマネーロンダリング組織でかつロシア語圏のオンライン・サイバー犯罪者フォーラムある”QQAAZZ”は、「銀行口座へ資金を落とすための国際的サービス」としてサービスを宣伝し、サイバー犯罪者が集まり、様々なサイバー犯罪活動に従事するために必要な専門的なスキルやサービスを提供したり、求めたりしている。世界で最も有害なマルウェア・ファミリー(例:DridexTrickbotGozNymなど)の背後にある犯罪組織が、”QQAAZZ”のサービスの恩恵を受けているといわれている。

 このような国際的な組織.犯罪に厳格にかつ国際的な法執行機関の共同行為は必須な時期にあることはいうまでもない。しかし、わが国の法執行機関の国際協調化は決して順調に進んでいるとは思えない。本文で述べるとおり特に警察組織だけでなく、諜報機関との緊密なコラボレーションが欠かせない。

 その意味で、本ブログではあえてわが国ではほとんど言及されていないラトビア共和国の国際的に見た重要性も含め言及する。特に歴史的に見たバルト3国の1つである極めて小国(国土は日本の約6分の1;人口は現時点で約1,863,000人)であるラトビアが3つの諜報機関を持った背景は如何、かつてソビエト連邦共和国の1つであった同国が如何してEUやNATO加盟国として完全な独立を勝ち得たのか、わが国の北方領土交渉が全く進んでいない現実と照らし合わせると検討すべき点が多い。

 したがって、今回のブログでは米連邦司法省の公開データを公開擦るとともに、第2節でラトビアの法執行機関の現状や裁判制度について基礎情報を提供する。同時に、米国がいかにバルト海に面したEU加盟国等につき強い協力関係を築いているかが自ずと理解できよう。

1.2人のラトビア人がQQAAZZ組織の一部としてサイバー犯罪者が資金洗浄の支援に関し有罪答弁

 連邦司法省のリース文を仮訳するが、犯人グループで今回の一連のFBIの捜査を一部確認できる記事があるのでその前に(1)として引用する。

(1)2021年4月3日記事「FBI、マネロン捜査にビットコイン取引履歴を利用──ロシア人ラッパー(rapper)マクシム・ボイコ(Maksim Boiko:29歳)を逮捕」 訳文は

 また、2020.3.30 Cyber Scoop 記事「FBIは、ロシアの男がサイバー犯罪者のお金をロンダリングしたと主張」も関係解説である。以下で、仮訳する。

 2020年3月27日にぺルバニア州西部地区連邦地方裁判所に提出されたFBIの宣誓供述書によると、FBIは、国際的なサイバー犯罪集団が現金をビットコインやその他の暗号通貨に変えて資金洗浄を手伝ったとして、ロシア人マクシム・ボイコ(Maksim Boiko:29歳)を逮捕した。

 3月28日にマイアミでFBI捜査官に逮捕され、連邦政府に拘留されている。ピッツバーグ・ポスト・ガゼットによると、彼は今後数週間のうちにピッツバーグに移送される見込みである。

 宣誓供述書によると、彼がピッツバーグの連邦裁判所で起訴されると、ボイコはマネーロンダリングで起訴されるだろう。それは最高10年の拘禁刑が言い渡される。

 宣誓供述書では、FBI捜査官は、オンライン名「ガンガス(gangass)」で通っているボイコは、世界中の銀行口座へのアクセスや現金をビットコインやその他の仮想通貨に変換するなど、他の犯罪者にサービスを提供した「重要なサイバー犯罪者」であると非難している。

 宣誓供述書の文書によると、FBI捜査官は、ボイコが少なくとも2015年から活動している”QQAAZZ”と呼ばれるサイバー犯罪グループと協力したと主張している。同文書によると、FBIは、このギャングが他のサイバー犯罪者と協力して、マルウェアやその他の悪意のあるツールを使用して被害者の銀行口座から盗まれた資金洗浄を支援していると疑っている。

 2020年1月、米国連邦司法省は”QQAAZZ”の告訴の一環として、サイバー犯罪者にマネーローンダリングサービスを提供した容疑で5人のラトビア人を起訴した。今回起訴された男性の一人、アレクセイス・トロフィモビッチ(Aleksejs Trofimovics)は、2017年に法執行機関によって押収された仮想通貨交換ウェブサイトを運営していたと宣誓供述書は指摘している。

○マネーロンダリング疑惑

 宣誓供述書によると、ボイコ夫妻は2020年1月19日にマイアミで米国に入国した。この文書によると、ボイコは約20,000ドルを運んでいたが、彼は米国税関国境警備局のエージェントからインタビューを受けたとき、彼はお金がビットコインとロシアの賃貸物件への投資目的で来たと主張した。

 FBIは従来からボイコのInstagramアカウントを監視しており、FBIは最終的に彼のiCloudアカウントの捜索令状を与えられ、ボイコが相当額の米ドルと外貨でポーズをとっている写真が含まれていたと同文書は示している。

 FBI捜査官は宣誓供述書の中で、写真は「ボイコの原因不明の富の証拠であり、正当な事業運営の慣行と矛盾しており、ボイコが過去数年間にわたり重大なサイバー犯罪者と違法なマネーロンダリング活動に従事してきたという申し立てと一致している」と主張した。

 FBIは、ボイコが中国の銀行口座を通じて盗まれた資金を一部ローンダリングしていたと主張している。またFBIは、ボイコは現在廃止された暗号通貨取引プラットフォームであるBTC-e(注1)にアカウントを持ち、387,964ドル相当の預金を受け取り、約848,000ドル相当の136ビットコインを引き出したと述べている

  ボイコは、安全でかつ暗号化されたメッセージング・プラットフォームである”Cisco Jabber for Windows”を使用して、他のサイバー犯罪者と通信していたとFBIは主張している。裁判所文書によると、ボイコはCisco Jabber 使って、他のマネーロンダリング活動について「マネーブースター(Money -Booster)」(現在この会社はない)と呼ばれるサイバー犯罪者と通信していた。

(2) 2021年4月 ピッツバーグ連邦地裁での審理開始

 2021..4.13 Pittsuburgh Post Gazette「Latvian extradited to Pittsburgh to face money-laundering count」

 マネーロンダリングの容疑で先週ピッツバーグ連邦地裁に引き渡されたラトビア人は、2021年4月12日にビデオで連邦裁判所に短時間出廷し、同年4月9日に拘留決定審理(detention hearing )が行われる予定である。

 アルトゥール・ザハレビッチ(Arturs Zaharevics)は、”QQAAZZ”と呼ばれる多国籍組織犯罪グループの一員としてサイバー犯罪者にマネーロンダリングサービスを提供したとして2019年9月に起訴された5人のラトビア人の1人である。

 その後、ロシアと東ヨーロッパからの15人の被告がピッツバーグ連邦地裁で同様の罪で起訴され、被告は合計で20人となった。

 ザハレビッチは、米国で拘留されている2人目のラトビア人である。 

(3)2021年8月

  2人のラトビア人がサイバー犯罪資金洗浄組織QQAAZZでの役割について有罪を認めた。8月6日と7月13日、起訴された2人の被告、アルトゥール・ザハレビッチ(Arturs Zaharevics)とアレクシス・トロフィモビッチ(Aleksejs Trofimovics)は、それぞれペンシルベニア州西部地区でのマネーローンダリングの共同謀議(conspiracy)につき有罪を認めた

 ”QQAAZZ”はヨーロッパに拠点を置くマネーロンダリング組織で、コンピュータ・ハッカーとその関係者に違法な現金売買(cash out)取引と暗号通貨取引を提供してきた。2020年以降、計20人の個人がこのスキームの一環として起訴されていた。

 ”QQAAZZ”の犯罪共同謀議をさらに進めるため、トロフィモビッチは、彼自身の名前を使用して、正当なビジネスを行っていないポルトガルのシェル会社を登録した。その後、トロフィモビッチは、”QQAAZZ”が被害者とそのそれぞれの金融機関からサイバー犯罪者によって盗まれた資金を受け取り、ローンダリングすることを可能にする目的で、ダミー会社(shell company)の名前でポルトガルに少なくとも13の企業銀行口座を開設した。これらのポルトガルの口座のいくつかは、米国の犠牲者から盗まれた資金を受け取った、または受け取ることを意図していた。

 また、ザハレビッチに関し、米国は2021年4月にイギリスからの米国への引き渡しに成功した。”QQAAZZ”の刑事共同謀議をさらに進めるために、ザハレビッチも偽名でダミー会社を設立し、米国の犠牲者から盗まれた資金を受け取るか、または受け取ることを意図したそのダミー会社の名前で外国の銀行口座を設定した。

 ペンシルベニア州西部地区のスティーブン・R・カウフマン連邦検事代行と、マイク・ノルドウォール担当FBIピッツバーグ特別捜査官が9月6日に以下を発表した。

「QQAAZZグループのような多国籍なマネーロンダリング組織は、サイバー犯罪者が彼らの計画から利益を得るのを助ける上で重要な役割を果たしている。8月6日発表された有罪を認める答弁は、外国のパートナーとの協力を通じてこれらの悪質なグループを解体するという我々の継続的なコミットメントを反映している。有罪の答弁は、世界の他の地域でそのような犯罪者を追求し、彼らが私たちの米国の裁判所での司法に直面することを保証するという我々の取リ組みさらに示している」と、ペンシルベニア州西部地区のスティーブン・R・カウフマン連邦検事代行が述べた。

 さらにFBIピッツバーグ担当マイク・ノルドウォール特別捜査官は「これらの個人の被告は、米国および世界中の疑いを持たない犠牲者から資金を盗んだサイバー犯罪者と協力してマネーロンダリング計画を運営した。彼らの有罪答弁は、誰もコンピュータや国際的な国境の後ろに隠れることができない証拠である。FBIは、脅威の特定と情報共有の改善から、これらの脅威を混乱させ打ち負かすためのFBIの運営方法の検討に至るサイバー脅威に対抗するための多くの取り組みを行っている。

 海外の法執行機関とのパートナーシップは我々が日々行っている仕事の重要な部分であり、この捜査のグローバル・パートナーは、我々全員がツール、スキル、知識を組み合わせて、これらの犯罪者を廃業させるより強力なチームを作り出すことを可能にした」と述べた。

 この場合、2人の有罪答弁と様々な責任を証明する証拠の事実に関する根拠によると、”QQAAZZ”のメンバーは、世界中のサイバー犯罪者と協力して行動し、米国や他の場所でコンピュータ詐欺の被害者から盗まれた資金洗浄を共謀した。ラトビアブルガリア英国スペインイタリアで40箇所以上の家宅捜索が行われ、米国、ポルトガル、スペイン、英国で刑事訴追が開始された。最も多くの捜索と逮捕はラトビア国警察(Latvijas Valsts Policija)によってラトビアで行われ、ブルガリアではグループに関連する広範なビットコイン採掘活動が押収された。欧州刑事警察機構(Europol)とヨーロッパ各地のいくつかの法執行機関は、米国と協力して、自国のQQAAZZメンバーに対し並行捜査と起訴を行った。

 この捜査はおもにFBIによって行われた。連邦司法省国際局(The Justice Department’s Office of International Affairs )と英国とラトビアのと法執行パートナーは、海外での被告の逮捕を確実なものとした。

 この事件は、米国連邦司法省・刑事部のマネーロンダリングおよび資産回収部のマイケル・パーカー公判検事( Trial Attorney Michael Parker of the Money Laundering and Asset Recovery Section of the U.S. Department of Justice’s Criminal Division)、チャールズ・A・トッド・エバーレ連邦検事補(U.S. Department of Justice’s Criminal Division, Assistant U.S. Attorney Charles A. “Tod” Eberle)、ペンシルベニア州西部地区国家安全保障・サイバー犯罪部門のチーフ、ブライアン・チャルネッキ連邦検事補によって起訴されている。

2.米国のバルト海周辺国とりわけラトビアとの関係強化

 以下で筆者なりに調べた結果を纏める。その際、米国務省のサイトでラトビアの解説を読んだ。両国の密なる国際関係がうかがえる。

(1) ラトビア共和国の概要

The current population of Latvia is 1,863,054 as of Wednesday, August 11, 2021,

このわが国外務省の資料は古すぎるhttps://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol80/index.html

ちなみにグロ―バルの最新情報サイト”WorldMeter”(https://www.worldometers.info/world-population/latvia-population/)で見るとラトビアに人口のピークは1990年2,664,439人である。

(2) ラトビア共和国の以下の基本データ

EU加盟国であるラトビア共和国の以下の基本データが確認できる。

① Latvia de iure:独立と独立記念日

② Citizens:国民

③ Saeima:議会

④ President:大統領

⑤ Government:政府

⑥ The Law: 法律

⑦ Judiciary:司法制度

(3)ラトビア国警察

ラトビア国警察は、生命、健康、権利と自由、財産と利益に対する刑事およびその他の違法な脅威から国家と社会を保護するための国家中央機関である。

  州警察の中央機関は、州警察の構造単位の活動を組織化し、調整する。この中央当局には、管理部(Administrative Department)、苦情および懲戒部(Complaints and Discipline Branch)、人事および採用委員会(Personnel and Recruitment Board,)、秘密体制保証ユニット(Secret Regime Guarantee Unit)、特別対応ユニット(Special Correspondence Unit,)、計画および財務委員会(Planning and Finance Board.)が含まれる。

(4)ラトビアの国家諜報機関であるVDD,MIDD,SABについて同国の関係サイトから引用し、仮訳する。

A.ラトビア国家安全保障局( Valsts drošības dienests:VDD))は、憲法保護局(SAB)と防衛情報セキュリティサービス(MIDD)に加えて、3つのラトビアセキュリティおよび情報サービスの1つである。 VDDは防諜および内部セキュリティサービスであり、さまざまなソースから情報を収集し、分析を実行し、国家安全保障に対して特定された脅威について高官に通知し、それらを中和するための対策を講じる。

 ラトビアのVDDの責任は、(1)防諜活動の実施、(2)国家機密の保護、(3)憲法秩序の保護、(4)経済的安全保障上の利益の保護、(5)テロ対策の調整と実施、および(6)高官の保護である。また、VDDは、ラトビアの3つの諜報機関およびセキュリティ機関のうち、裁判の前で捜査を実施する権利を持つ唯一の機関である。(刑事訴訟、刑事訴追を開始し、人を逮捕するため)。

 VDDの業務は内務大臣によって監督され、運用活動と審理前調査プロセスの正当性は検事総長によって監督されるが、VDDに対する議会の管理はラトビア議会(Saeima)の国家安全保障委員会によって行われる。

B.MIDD(Militārās izlūkošanas un drošības dienests)と略される国防諜報機関は、国防大臣の従属下にある国防諜報機関であり、国防諜報機関に関する法律、およびその他の法律や規則によって定義されている軍事防諜、諜報機関、およびその他の任務を遂行します。 2002年現在、MIDDの局長はIndulisKrēķis氏である。 

C.ラトビア憲法擁護局(Satversmes aizsardzības birojs :SAB))は、内閣の監督下にある国家治安機関である。 SABは、1994年に議会が採択した憲法擁護局法に基づいて1995年に設立された。 憲法擁護局の主な任務には、諜報活動、防諜活動、および国家(公式)秘密の保護が含まれる。 国家安全保障局としての、SABは、NATOおよびEUの機密情報を扱う公的機関の情報の保護も保証する。SABは、国家安全保障法、国家安全保障機関法、ラトビア共和国憲法擁護局法、国家機密法、調査業務法、および以下に関連する大臣の内閣規則に従って運営されている。

(5) ラトビア共和国外務省サイト 

(6)ラトビア共和国最高裁判所

 ラトビア固有の司法制度と思われる点を以下ピックアップする。なお、以下の最高裁の主要判例解説(Case-law)も有用である。

A.懲戒裁判所

懲戒裁判所(Disciplinary Court)の権限

Authority of the Disciplinary Court

「司法権に関する法律」の第481条に従い、懲戒裁判所は2010年に最高裁判所に設立された。

以下の場合、懲戒裁判所が召集されるものとする。

①司法懲戒委員会(Judicial Disciplinary Committee)の決定の法の支配を評価するために上訴された場合。

②裁判官の専門的活動の評価の範囲内で、司法資格委員会(Judicial Qualification Committee )によって与えられた否定的な陳述の法の支配を検証する場合。

③法的関係の確立、修正、または終了に関する司法評議会の控訴された決定を検討する場合。

④懲戒処分の適用に関する検事総長の控訴された決定の法の支配を評価する場合(検察庁法(Office of the Prosecutor Law)の第4条)。

懲戒裁判所の手続きは、司法懲戒責任法(Judicial Disciplinary Liability Law.)8/7(23)に定められている。

​ 司法資格委員会の控訴された声明、司法評議会の決定および検察総長の決定は、司法懲戒責任法によって確立された手順に従って、懲戒裁判所によって審理されるものとする。

 ○懲戒手続き

 裁判官は、判決を受けた日から7日以内に、懲戒処分の賦課および懲戒裁判所での彼/彼女に関するポストからの解任に関する司法懲戒委員会の決定に対して上訴することができる。

 懲戒裁判所の長官は、懲戒裁判所のメンバーの1人に、提出された苦情に関する報告書を作成するように、または司法倫理委員会に倫理基準の解釈と違反に関する声明と説明を与えるように、または追加の説明と文書を要求するように指示することができる。他の人をそのセッションに招待して説明を提供する。

懲戒裁判所に提出された上訴を検討するための手順は、司法懲戒責任法第113条に定められている。

懲戒裁判所が別の方法で決定しなかった場合、苦情は非公開のセッションで審理される。

 苦情を提出した申立人がセッションに参加する。裁判官がもっともらしい理由なしにセッションに到着しない場合、または裁判官が不在のときに苦情を聞くように求めた場合、不在のときに苦情を検討することができる。

懲戒処分を開始した者またはその代理人は、苦情を聞いたときに参加し、意見を表明することができる。

 苦情を聞く前に、申立人は懲戒裁判所に拒否を与えることができる。

 B.司法評議会(Judicial Council)権限の基礎

 司法評議会は合議制の権威機関であり、司法制度の方針と戦略の精緻化、および法廷制度の業務の組織化に関与している。司法評議会の設立の目標は、行政権、司法権、立法権の間の関係を相殺し、法廷制度に関する問題において重要な役割を担うことである。

 司法評議会の設立は、法律の第131章「司法評議会」を含む、2010年6月3日の改正により、「司法権に関する法律(LAW ON JUDICIAL POWER )」に定められている。これらの改正は2010年8月1日に施行した。

「司法権に関する法律」の第891条に従い、司法評議会の構成は15人のメンバーで構成される。8人の常任理事(最高裁判所長官、憲法裁判所長官、法務大臣、議会司法委員会委員長(Saeima)、検事総長、ラトビア宣誓擁護者評議会議長、議長ラトビアの宣誓公証人評議会およびラトビアの宣誓保安官評議会の議長。 )と7人の選出された裁判官(任期は4年)からなる。

. 司法評議会の活動は、2017年10月16日の議席で承認された司法評議会の規則の対象となる。司法評議会の仕事は、最高裁判所の構造単位である司法評議会の事務局によって保証されている。

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(注1) BTC-eは、2011年7月に設立され、ALWAYS EFFICIENTLLPによって運営されている暗号通貨交換および取引プラットフォームであった。 BTC-eは、さまざまな暗号通貨と米ドル、ロシアルーブル、ユーロの交換を許可した。 BTC-eは、そのミニマルなデザインと快適なユーザーエクスペリエンスで有名であった。 BTC-eは、マネーロンダリング計画に関与した罪で起訴された取引所の主要スタッフが逮捕された後、2017年7月から閉鎖された。 BTC-eはwex.nzの新しいプラットフォームとして再開された。 Wexは、マネーロンダリング防止やKYCなどのすべての法的要件を満たして機能し、現在、ユーザーに登録プロセスを実行するように求めている。 BTC-eの疑わしいオペレーターであるAlexanderVinnikはまだ押収されており、現在ギリシャで拘束されており、家族との休暇中に捕らえられた。

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米国刑務所独房服役中の元ロシア・スパイ被告が息子を使いスパイ活動見返り金要求裁判で有罪答弁(その1)

2010-11-26 07:43:19 | マネーローンダリング



 11月8日、米国連邦司法省(DOJ)とFBIはスパイ映画でもありえないようなプレス・リリースを行った。
 内容は、標題のとおりであるが、この裁判の被告ハロルド・ジェームズ・ニコルソン(Harold James Nicholson,1950年生れ)は元ベテランCIA上級職員でDOJいわく米国内でスパイ活動で有罪判決を受けた最も高いランクの1人である。

Harold James Nicolson被告

 これが事実であるならば、米国の刑務所内での収監者の情報・行動管理とりわけ国家反逆罪(米国連邦現行法律集U.S.C.第18編パートⅠ章第794条 (筆者注1)の有罪受刑者の管理はいったいどうなっているのであろうか疑いたくなってくる。(794条(c)項が「共謀罪」規定である)

 しかし、事実関係はもっと泥臭いもののようである。
 簡単に言うと、離婚後自分を育ててくれた父を最も尊敬する息子がアルバイト先であるピザ・ハットのパートとしてピザを届けるため父親のいる刑務所に出入りし、面会所で渡された父親のテッシュやキャンディー包み紙に走り書きしたメモを届けるためにキプロス、ペルー等を廻りロシア連邦の謀報員に会い札束を受け取っていたというものである。

 新たなスパイ活動は行っていた事実はなく、過去においてロシアに提供した美防諜情報の対価を「年金」としたロシアに要求したこと等を検察も起訴にあたりその点は配慮したようである。
 オレゴン連邦裁判所のアンナ・ブラウン判事は、本件における検察とニコルソンとが取り決めた「司法取引」に応じたとすれば既存の刑罰(拘禁刑)に8年追加するのみということになろう。すなわちニコルソンは外国政府のためのスパイ行為およびマーネー・ローンダリングの既遂に関する訴因各1つを認め、一方その交換条件として連邦検事は2009年の告訴時の5つの重罪(felony charges)にかかる訴因を破棄することに同意した。

 同リリースに関するコメント数等を見る限り、この問題に関する米国民の反応は今一弱いようであるが、事実関係を1996年の起訴や裁判までさかのぼって本スパイ裁判の経緯と今回の有罪答弁から得られた事実関係のみとりあえず紹介する。

 なお、過去・現在において米国のCIAやFBI等の職員が外国謀報機関から金銭等を対価に国防の機密情報を提供し、起訴・有罪となった事件は多い。
 代表的なものは1994年2月21日、妻と同時に逮捕、22日に起訴された元CIA職員オルドリッチ・ヘイゼン・エイムズ(Aldrich Hazen Ames)
(筆者注2)(仮釈放なしの無期懲役刑(いわゆる終身刑)(life imprisonment without parole):現在ペンシルバニア州アレンウッド連邦刑務所 (筆者注3)で服役中)、1996年スパイ容疑で逮捕され、拘禁刑27年で服役中の元FBI特別捜査官アール・エドウィン・ピッツ(Earl Edwin Pitts)や、今回のハロルド・ニコルソンといえる。
 筆者は、この種の犯罪捜査の専門家ではないが、この3人の基本的な共通性は金や女を目当て、勤務状況は平均よりやや上、子供がいるが離婚歴あり、給与の水準は米国の官吏として平均的以上、個人的には離婚による慰謝料負担が大、アル中、浮気という点に着目した。では何が彼らを狂わせたのか。

 当然のことながら、わが国の刑務所ではハロルドが行ったような収監当局に協力者がいるといったことはないとは信じたい(現在ハロルドはオレゴン州シェリダン刑務所に収監中)。
(筆者注4)

 今回は、2回に分けて掲載する。


1.2010年11月8日のハロルドの有罪答弁に関するDOJのリリース内容
(1)抗弁審問(plea hearing)においてハロルドは息子ナザニエルと面会しロシア連邦に寄与する情報を息子の提供したこと、サンフランシスコ、メキシコシティーやリマに息子を出向かせロシアの謀報機関に面会させたことを認めた。

(2)被告はロシア連邦の指示に従い、海外に位置するロシアのスパイに情報を提供した見合いに息子を使い秘密裡にロシア機関から現金を受領したうえで家族に渡すよう指示した。

(3)ハロルドに対する判決は、2011年1月11日に予定された。

2.1996年11月18日の父ハロルドの起訴裁判の詳細
 筆者が最も気になったのは国際スパイ事件それも相手国はロシア連邦の外国諜報機関(Sluzhba Vneshney Razvedki Rossii:SVRR(元KGB))である。また、刑期23年半(283ヶ月)の拘禁刑の起訴・判決内容や今回の捜査に関する正確な情報がDOJ、CIAやFBIサイトで確認できるであろうかという点であった。

 確かに、ニューヨークタイムズには「Harold James Nicholsonに関する同紙の記事リストアップ一覧」がある。しかし、その記事内容は極めて簡単なもので司法・捜査関係者が読んで参考になる内容ではない。

さらに調べたところ次のような資料やビデオが見つかった。
(1)1996年11月18日に行われた、中央情報(CIA)長官(Director of Central intelligence)ジョン・ドイチュ(John Deutch)、FBI長官ルイス・J・フリー(Louis J.Freeh)の共同記者会見時の配布リリース公文書である。当然ながら連邦司法長官ジャネット・リノ(Janet Reno)も声明に名を連ねている。また、同日FBIやCIAが行った共同記者会見の様子はc-span動画で見れる。

 その内容は、東西冷戦時ほどではないが米国、ロシア間のスパイ活動はなお引続いており、2010年7月に報じられたロシアと米国のスパイ容疑者の交換トレードになるとまるで東西冷戦時の再現である。

(2)FBI捜査、犯罪容疑に関する情報
全 米科学者連盟(Federation of American Scientists:FAS)サイトが起訴状でしか見られないであろう事件の捜査の詳細情報を報じている。

 その内容は当時のDOJのリリースだけでなくFBI特別捜査官(special agent)の「宣誓供述書(affidavit)」(筆者注4) 、「逮捕状(warrant of arrest)」ならびに「家宅捜査令状(search warrant)」が貼り付けている。
 おそらくDOJ等の起訴状だけでなく逮捕状の原本コピー基づくデータであろうが、具体的な捜査内容・事実に関する記載内容は極めて詳細である。
FSAは、このような社会的な事実をも冷静に報じるNPO機関である。米国の科学者はある意味で信念を貫くつまり「がんこさ」がある。

(3)米国における外国からの謀報活動対策の基本姿勢
 対ロシアや中国等に対する対謀報活動(Counterintelligence)の重要性は、ポスト・アメス(post-Ames)(筆者注5)改革後においても変わらないというのが米国諜報関係者の見方である。
 なお、1996年11月18日、ハロルド起訴時のリリースで外国からの謀報活動阻止のため、次の具体的改革の内容を挙げてある。その実質的な効果が上がっているか否かの評価は別として、国家の機微情報管理の難しさはYou Tube等メディアの多様化とともに拡がっていることは間違いない。

①CIAの反謀報活動グループの責任者は、FBIの上級官吏でCIAの最も機密データへの完全なアクセス権を持ち両機関の完全な共同的活動の任にあたる。
②CIAの反謀報活動グループは、CIAのセキュリティおよび運用の規律の両面から代理権を持ち、反謀報活動グループの正規職員である少なくとも1人のFBI特別捜査官を含む。
③「1995年財政年度諜報権限法第811条(Section 811 of the Fiscal Year 1995 Intelligence Authorization Act)」は機密情報が外国勢力に権限なしに公開されるおそれがあるというときは、すみやかにFBIに通知すべき義務を定めている。
④運用兼反謀報副局長の地位は、CIAの反謀報および対スパイ活動への高いレベルの努力を確実にするために創設した。
FBIと完全な協調を含む運用兼反謀報にかかる義務を担う副局長は、現在FBIの国家安全部と毎週会合を持つ。
⑤反防諜の努力を強化・改善する新しい研修教育主導権が引き受けられた。
⑥連邦議会は共同した反スパイ活動を行うべく増加した各種資源を提供した。

(4)ニコルソンのCIAでの任務と刑事告訴の具体的な内容
①ニコルソンは16年間CIAに勤務し、機密取扱資格(セキュリティ・クリアランス)における「最高機密(Top Secret)」および「取扱注意で断片的にのみ開示されうる諜報成果(Sensitive Compartmentalized Information:SCI)」資格を有していた。(筆者注6)
 被告は、仮に無権限アクアセスして開示したときは米国の国家安全に対する修復不可能な損失を生じさせたり、外国国家に有利な情報を与えるという高いレベルの情報を保持していた。被告はこの点に関し無権限開示は犯罪行為であり、不適切に秘密指定情報の開示を絶対に行わない旨誓約・同意していた。

②告訴状では次の違法行為を具体化した。
・1995年10月1日前後、被告は定期的なセキュリティ検査としてCIAが管理する嘘発見器による一連の検査(polygraph examinations)を受けた。これの検査の分析では、外国謀報機関との無権限の接触についての未解決の問題が起きた。

・CIAの記録分析により、被告の個人旅行の解析と預金の入手金を見る限り、説明がつかない金融取引後に外国への旅行するパターンが見られた。

・マレーシアのクアラルンプール勤務時、被告はロシアの謀報機関(Rissian intelligence service:SVRR)との接触が認められていた。1994年6月30日、被告が最後の接触時の1日後、金融残高記録をみると被告は米国の取引銀行の貯蓄口座に12,000ドル(約984,000円)を送金しているが、その根拠となる合法的な資金源は見出しえなかった。

・1994年12月、被告は個人旅行でロンドン、ニューデリー、バンコクおよびクラルンプールにアメリカから出かけている。クアラルンプールにいた時、貯蓄口座に9,000ドル(約74万円)を振り込み、またクレジットカード口座に6,000ドル(約49万円)を入金した。帰国後被告は100ドル札130枚を使って債務を返済したが、これらの資金の合法的な資金源は見出し得なかった。

・1995年6月、7月、被告は年次休暇を使って再度クアラルンプールに旅行したが、その時および直後に合計23815.21ドル(約195万3千円)の金融取引を行った。しかし、これらの資金の合法的な資金源は見出し得なかった。

・1995年12月、被告はタイのバンコクとプーケットに旅行した。金融取引記録ではこの旅行の間および帰国後に26,900ドル(約220万6千円)が表示されている。
 しかし、これらの資金の合法的な資金源は見出し得なかった。

・1996年3月、SVRR特別連絡事務所は公式に米国FBIに対しチェチェンのテロ情報を求めて来た。1994年4月、被告はCIA本部に出向き教育目的と称してチェチェンに関する情報を入手した。しかし、実際チェチェンに関する研修計画は存在しなかった。

・1996年6月、被告は個人旅行でシンガポールに出かけたが同時期にシンガポールには2人の名が知れたSVRR謀報機関職員がいた。被告はロシアの謀報機関に会う前に現居場所を秘匿する監視回避技術(counter-surveillance technique)を使用したがそれは被告には認められていない技術であった。
 被告はロシア側との接触は認められていなかった。この接触後に被告は約2万ドル(約164万円)を含む大きな現金取引を行った。

・1996年7月16日前後に、被告はCIA本部で反謀報センターの新ポストに着いた。CIAのコンピュータの記録では、被告が“Russia〔n〕”や“chechnya”を使ったキーワード検索を多数回行っていることが判明した。被告の新しい任務にはこれら情報収集する必要はまったくなかった。

・2回にわたり、FBIの職員文書監視では被告宛の偽の返却先名と外国の私書箱を宛先とした郵便ハガキを入れた封筒を確認した。郵便はがきのメッセージはCIA本部における被告の任務に関するもので1996年11月23日~24日のスイス旅行を予期させるものであった。
・裁判所が認めた被告が使用するノートパソコンの検索結果、1996年8月11日、CIAの多数の秘密文書とロシアに関する文書の断片が明らかとなった。これらの文書ファイルはプログラム・デレクトリから削除されていた。
 同文書ファイルには、モスクワに派遣予定の職員の任務、経歴およびCIA職員としての任務や経歴、ロシアのチェチェンに関する採用募集や報告が含まれていた。また、モスクワのCIA分署の情報、オルドリッチ・エイムズに関する要約情報、被告の嘘発見器検査を含む膨大な個人の監視情報が含まれていた。
 さらにCIAの7つの人事情報要旨と彼らの機密情報を記録したFDが発見された。この人事情報は、コードネームと地位によって特定可能なものであった。

・1996年11月3日前後、裁判所が認めた被告の勤務する事務所の捜査でロシアの軍備に関するCIAの高機密文書、ロシアの防諜能力、CIAにおける被告の任務上では密接に結びつかない問題に関する文書を所有していたことが判明した。

・CIA本部のニコルソンの勤務事務所の電子監視は、機密文書の分類印を削除した後に文書を写真撮影している被告を記録していた。

3.2009年1月27日、ハロルド・ニコルソンが末っ子ナザニアル・ジェームズ・ニコルソン(Nathaniel James Nicholson,1985年生れ) (筆者注7)とともに起訴DOJリリース:および有罪答弁

(1)オレゴ地区連邦地方裁判所(ブラウン判事)に対し、同日司法省オレゴン地区担当副検事は父子2人の起訴状11/10(22)を提出した。
大別すると、①司法長官への事前通知なしに外国政府のスパイとして行動したことの共謀罪(第一訴因) (18 U.S.C. §371, §951 )、②司法長官への事前通知なしに外国政府のスパイとして行動したこと(第二訴因) (18 U.S.C.§951)、③マネー・ローンダリングの共謀罪(第三訴因) (18 U.S.C.§1956(a)および(h))、④マネー・ローンダリング(第四、五、六、七訴因)の計7訴因である。
 ブラウン判事は、判決日は当初は2010年1月25日を予定した。しかし、その後延期され同年12月7日判決予定となっている。
 父ハロルドの息子に対する共謀の働きかけについて、メディア情報は、父がどのような具体的手口で息子を巻き込んだかについて家宅捜査令状や宣誓供述書等に基づき詳細に説明しているが、長くなるのでここでは略す。

DOJの起訴時のリリース概要は次のとおりである。
・被告ナザニアルは公判前釈放(pretrial release)の際、自分が希望して父と面会し、その際ロシア連邦のスパイとして父から情報と指示を受け取っていた。ナザニアルは米国外の指定された数箇所でロシア連邦の職員と接触し、スパイ行為の見返り金を受け取った。その資金は直接ハロルドの家族に支払った。

(2)2008年12月11日、司法省に起訴に先立ち、FBIの特別捜査官ジャレッド・J・ガース(Jared J.Grath)はオレゴン地区連邦裁判所に「宣誓供述書(全49頁)」を提出している。
 その詳細は省略するが、1996年11月の第一次起訴時の事実関係の分析から始まり、第17項目(8頁)以降は今回の起訴の背景となる捜査の事実関係を説明している。

(3)2009年8月28日、連邦司法省は息子ナザニアルがオレゴン地区連邦地方裁判所(判事:アンナ・J・ブラウン)の前で起訴された2つの訴因(前記①、③)につき有罪答弁を行った旨リリースした。
 外国政府のためのスパイ行為については最高刑は5年の拘禁刑と25万ドルの罰金(併科が可)(18 U.S.C.371 )、またマネーローンダリング行為については最高刑は20年の拘禁刑と50万ドルの罰金刑(併科が可)である。(18 U.S.C 1956)

同答弁の内容の内容は次のとおりである。
・ロシア連邦から受け取った資金は、父親がかつてスパイ活動を行ったこと対価として受け取った。
・ナザニアルは次のとおり米国外に出向きロシア連邦のスパイ組織から現金を受け取った。毎回の金額を見て分かるとおり1996年の父ハロルドがスパイ行為実行時に受け取った金額と比較しても極めて少ないことが理解できよう。

①2006年12月17日、メキシコのニューメキシコでスパイ組織から約1万ドル(約82万円)を受け取りオレゴン州ポートランドに戻った。
②2007年7月12日、メキシコのニューメキシコでスパイ組織から約9,080ドル(約75万円) を受け取りオレゴン州ポートランドに戻った。
③2007年12月13日、ペルーのリマでスパイ組織から7,013ドル(約58万円)
を受け取りオレゴン州ポートランドに戻った。
④2008年12月14日、キプロスでスパイ組織から9,500ドル(約78万円)を受け取りオレゴン州ポートランドに戻った。

 被告ナザニアルは答弁で2008年12月15日にキプロスから帰国した際に差し押さえられた9,500ドルの没収に同意した。また、答弁の一部として2006年から2008年の間における父とロシア連邦にかかわる行為について政府に代り証言することに同意した。


***************************************************************************

(筆者注1) US Code - Section 794: Gathering or delivering defense information to aid foreign government

(筆者注2) オルドリッチ・ヘイゼン・エイムズ(Aldrich Hazen Ames )(1941年5月26日生れ)は、元CIAの反謀報担当職員兼分析担当者で1994年にソビエト・ロシアのスパイ容疑で起訴され、現在は仮釈放無しの終身刑で服役中である。DOJは“Ames”と呼ぶ。

Aldrich Hazen Ames 被告

(筆者注3) 連邦アレンウッド連邦刑務所は複合刑務所であり、セキュリティ・レベルが「低(FCI Allenwood Low)」「中(FCI Allenwood Medium)」「上(USP Allenwood)」の3施設に分かれている。オルドリッチ・ヘイゼン・エイムズが現在収監されているのは“USP Allenwood”である。

(筆者注4) 父ハロルドが収監されているシェリダン刑務所は、セキュリティ・レベルで見た場合、DOJの下部機関である「連邦刑務所局(federal bureau of prisons)」の説明によると「中」である。この点が刑務所内で引続きスパイ行為が出来たことと関連するかは分からないが、関係があるかも知れない。

(筆者注5) 米国における刑事裁判において何らかの犯罪に関する告発を行う場合、告発者(犯罪の被害者またはFBI等その捜査代理人)が「宣誓供述書(affidavit)」を裁判所に提出して「逮捕状(warrant of arrest)」、ならびに「家宅捜査令状(search warrant)」を発布してもらうことが必要である。

(筆者注6) 米国の軍事・諜報機関で用いられている「 機密取扱資格(クリアランス)」と「機密指定の段階種別(クラスィフィケイション)」についてニッキー・ハーガー著『シークレット・パワー』の日本語版に、訳者・佐藤雅彦氏が訳注としている書籍では省略した原稿がウェブ上で掲載されており、一般的に公開されていない専門的なものなので一部抜粋した。関心のある読者は是非ウェブ全体を読まれたい。
「機密取扱資格(セキュリティ・クリアランス)」は、機密指定になった情報を閲覧する資格を、個々の人員に与える手続きを指す。機密情報の所有者は、国家安全保障の観点からみてその情報を知るに足る人物が、合法的で正当な根拠を持った国家統治目的を成し遂げる目的で機密情報を見たいとか、知りたいとか、保有したいと求めてきた場合には、「必要限定開示(Need-to-Know)」の原則――つまり「必要時にのみ必要な情報だけを必要な人にだけ供給する」という機密管理の原則――に基づいて、その人物に機密情報を提供することになる。
 米国政府・軍部の諜報共同体においては、機密情報や秘密情報の取扱資格を受けるにふさわしい、と見なされた人物は国防保安局(Defense Security Service)の身元調査(BI)を受けることになっている。さらに「最高秘密」やそれよりも機密度の高い「取扱注意で断片的にのみ開示されうる諜報成果(SCI)」の取扱資格を与えるべき候補者には、「望遠鏡的身元調査」(SBI)を行なうことになっている。
また、「機密指定の段階種別」は諜報活動によって得られたデータや成果に対する閲覧行為を管理統制するための最も基本的な方法は、個々の諜報データや諜報成果に、必要な「機密度」に応じた段階別の機密指定を行なうことである。それぞれの「機密の段階」に応じて、「必要時にのみ必要な情報だけを必要な人にだけ閲覧させる」という"必要限定開示"の原則にもとづき、機密取扱資格を与えられた人々に情報を見せるわけである。
「最高秘密(TOP SECRET)」は、正当な権限を持たない勢力に知られた場合には国家安全保障に極めて重大な損害をもたらす恐れがあると予測されるような情報を指す。
(略)
「取扱注意で断片的にのみ開示されうる諜報成果(SENSITIVE COMPARTMENTALIZED INTELLIGENCE)」(略称SCI)は、この機密指定で保護対象となるのは偵察衛星・偵察機・潜水艦などが収集した諜報データなどである。
 「取扱注意で断片的にのみ開示されうる諜報成果」の閲覧資格を得るためには「最高秘密」閲覧資格に必要な身元調査を凌ぐ厳格な身元調査を受けることになっており、完全に信頼できる人物だと判定されぬ限り閲覧資格は与えられない。「最高秘密」への閲覧資格を有している者でもこの機密指定文書への閲覧が許可されない場合がありうる。

(筆者注7) ナザニアルは、現在オレゴン州立大学工学部の学生である。



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Copyright © 2006-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All rights reserved.No reduction or republication without permission.

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米国FFIEC、FinCEN等が銀行秘密情報報告法等に関する改訂マネロン銀行検査マニュアルを公表

2009-04-03 09:33:18 | マネーローンダリング

Last Updated: March 6,2021

 米国連邦金融機関検査協議会(Federal Financial Institutions Examination Council:FFIEC)(筆者注1)、金融犯罪法執行ネットワーク(Financial Crime Enforcement Network:FinCEN)(筆者注2)ならびに財務省・外国資産管理局(Office of Foreign Assets Control:OFAC)(筆者注3)が、2006年7月28日に「銀行等に対する機密性が高くまたは不審な現金払いおよび海外との金融取引等に関する報告義務法(Bank Secrecy Act)」(筆者注4)等マネロン防止に関する検査マニュアル2006年改訂(筆者注5)を公表した。また、2007年8月24日にさらに改訂マニュアルを公表している。(2009年6月に2006年9月3日ブログの補追を行った)

 以下において2006年版の概要を紹介する。なお、これらの行動の背景には世界的規模のマネーローンダリング対策の責任組織であるFATF(金融活動作業部会)40の勧告に基づく対応があるのであるが、最近のわが国の対応としては、2006年8月30日に公表された「郵便受取および電話受付」代行業の追加を始め (筆者注6)、金融庁も、具体的対応が進んでいる。米国では、実は前記監督機関連名で、金融機関の協力強化の観点から9月13日、14日の2日間にわたり(両日とも内容は同じである)1時間という短時間ではあるものの全米ベースの金融機関等を対象とするインターネット会議(電話会議も併用されている)を開催し、改訂マニュアルの主な改正内容につき説明がなされる。登録期限は9月6日であり、筆者はすでに登録手続きを終えたが、関心のある向きはチャレンジされたい。(筆者注7)

1.2006年改訂マニュアルの構成
 全体で6章および付属資料で全367頁(PDF版)にわたるものである。
(1)序論
(2)BSA/AML遵守プログラムの調査に関する検査概観および手続
(3)関係法令に基づく要求内容および関連のテーマに関する基幹(core)となる検査概観
(4)遵守対象企業の範囲拡大および外国銀行の支店等に関する検査概観
(5)米国内外における遵守対象商品・サービスについての検査範囲拡大に関する検査概観
(6)人や企業についての検査範囲拡大の概観
(7)附属資料(関係法令、指令、参照資料等)

2.2006年改訂マニュアルを読むうえのポイント
(1)前記(2)章、(3)章の大部分は検査官におけるBSA/AML遵守検査プログラムの基盤となる部分で「検査範囲および検査計画」(PDFバージョンの15~17頁参照)および「BSA/AMLリスク査定」(同27頁)等が中心となる。両章に共通する用語、例えば「funds transfers」「foreign correspondent banking」等であり、これらの明確化が検査官等の改訂内容の理解向上につながる。
(2)検査官は、最小限次のような手続を踏まえ検査対象の金融機関のリスク査定を均一的に行う。
 ①検査範囲および検査計画(15~17頁参照)
 ②BSA/AMLリスク査定(27頁参照)
 ③BSA/AML遵守プログラム(34~39頁参照)
 ④検査総括および検査の終了(41~44頁参照)


(3)OFAC規則は、BSAの一部ではないが、OFACによる制裁処分の遵守確認に関し、検査対象機関の遵守方針や検査手続に関する基幹となる各章に関するものである。このため、検査官は検査範囲ならびに検査計画の策定に当り、銀行のOFACのリスク査定内容を確認するとともに、銀行のOFAC対応プログラムが検査期間中に行動を伴って行われているか否かをチェックする(マニュアルの144~146頁にわたるOFAC基幹検査手続参照)。


(4) 金融機関が的確な管理を欠く場合、企業・商品、顧客、企業はBSA/AMLに関するリスクを負うと評価される。加えて、今回拡大された章は、それに応じたリスク管理責任を負うことになる。これらの基幹となる検査手続は、すべての金融機関にとって適用可能なことではないが、独立したこれらのテストによる遵守内容の品質、数量の確認が求められることは間違いない。

*******************************************************************************::
(筆者注1) FFIECは、米国の連邦金融監督機関である連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、全米信用組合管理局(NCUA)、通貨監督庁(OCC)、貯蓄金融機関監督局(OTS)からなる協議会である。監督機関の共通の取組み課題についての指導的機能を有しており、最近ではインターネット・バンキング取引の安全対策の観点から2006年12月末までに各金融機関に多要素認証(multi- factor authentication)の遵守を義務付けており(FFIEC GuidanceAuthentication in an Internet Banking Environment)、わが国の都市銀行でも始まっている「トークン型ワンタイム・パスワード」もその対応例に当る。

(筆者注2)わが国の監督窓口は、金融庁総務企画局特定金融情報管理官である。なお、20181年2月1日、金融庁は体制強化の一環として、マネロンやテロ資金供与対策に係るモニタリングの企画等を行うため、「マネーローンダリング・テロ資金供与対策企画室」を設置した。同室は、金融機関のマネーローンダリング・テロ資金供与対策に関して①FATF審査への対応に関する企画・調整、②国際的な業務を展開する金融機関のマネーローンダリング・テロ資金供与対策に関する業務についてのモニタリングの企画等を行うものである。

(筆者注3外国資産管理局の内容について参考となるURLは、https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-011104.html

(筆者注4)わが国では「Bank Secrecy Act」を「銀行秘密法」と直訳されるケースが未だに多い。
これでは何が秘密なのか、誰の秘密なのかが分からない。同法は、現在では「愛国者法」に基づく改正も行われており、テロ資金防止法(BSA/AML)と引用されることが多いが、1970年に制定された当時は脱税のための資金洗浄阻止も重要な目的であったようであり、企業に対する同法の報告義務に関し、連邦財務省内国歳入庁(IRS)が多く関与している。分かりやすく言うと「銀行等に対する機密性が高くまたは不審な現金払いおよび海外との金融取引等に関する報告義務法」である。つまり、報告義務を課されるのは、狭義の金融機関(規制内容や罰則は金融機関の場合が厳しいが)だけでなく、現在は外国の銀行に金融資産を有する企業、さらに貴金属・宝石取扱業者もFinCENへの報告義務が課されるなど範囲が広がっている。IRSのサイトでは企業向けにBSAについて報告義務の内容や罰則規定についてQ&A等で詳しく説明している。

(筆者注5) わが国と同様、「検査マニュアル」は当然のことながら頻繁に改訂されるので、原本に当る際には注意が必要である。2006年7月28日に改訂された版のURLは次の通りである。FDIC等も同時に改訂のポイントを公表している。
http://www.ffiec.gov/bsa_aml_infobase/pages_manual/manual_online.htm
pdfバージョンのURL
http://www.ffiec.gov/bsa_aml_infobase/pages_manual/manual_print.htm

(筆者注6) わが国の金融監督機関のマネロン対策の政府機関は、金融庁総務企画局総務課特定金融情報室である。FTAF40の対応に関して、最近では金融庁が2006年6月13日に「カナダ金融部門との疑わしい取引に関する情報交換枠組の署名について」を公表している。現行の金融機関監督規制の下では本人確認法や組織的犯罪処罰法により届出が義務化されているが、今後はより包括的な法規制が行われる可能性が高い。

2022年10月現在のわが国の関係省庁等の取組を概観する。

新しいウィンドウで開きます  警察庁「犯罪収益移転防止法 同施行令 同施行規則など」
新しいウィンドウで開きます  警察庁「年次報告書、危険度調査書など」
新しいウィンドウで開きます  法務省「実質的支配者リスト制度の創設」

(筆者注7) 登録方法は、米国の金融機関向けに説明されているが、それ以外の場合でも可能ではある。登録サイトの標題は、「FFIEC BSA/AML Examination Manual Outreach Fact Sheet」である。

〔参照URL〕
http://www.bankinfosecurity.com/regulations.php?reg_id=298&PHPSESSID=97c3860d339c70e6d50368b0e0747873

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Copyright © 2006-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.

 

 

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米国連邦金融機関検査協議会等が銀行機密取引報告義務法等に関する改訂マネロン銀行検査マニュアルを公表

2006-09-03 21:02:17 | マネーローンダリング

 

 米国連邦金融機関検査協議会(Federal Financial Institutions Examination Council:FFIEC)(筆者注1)、金融犯罪法執行ネットワーク(Financial Crime Enforcement Network:FinCEN(筆者注2)ならびに連邦財務省・外国資産管理局(Office of Foreign Assets Control:OFAC)(筆者注3)が、「1970年銀行等に対する機密性が高くまたは不審な現金払いおよび海外との金融取引等に関する報告義務法(Bank Secrecy Act)」(筆者注4)等マネロン防止に関する検査マニュアル2006年改訂版(筆者注5)を公表した。

 以下においてその概要を紹介する。なお、これらの行動の背景には世界的規模のマネーロンダリング対策の責任組織であるFATF(金融活動作業部会)40の勧告に基づく対応があるのであるが、最近のわが国の対応としては、8月30日に公表された「郵便受取および電話受付」代行業の追加を始め (筆者注6)、金融庁も、具体的対応が進んでいる。米国では、実は前記監督機関連名で、金融機関の協力強化の観点から9月13日、14日の2日間にわたり(両日とも内容は同じである)1時間という短時間ではあるものの全米ベースの金融機関等を対象とするインターネット会議(電話会議も併用されている)を開催し、改訂マニュアルの主な改正内容につき説明がなされる。登録期限は9月6日であり、筆者はすでに登録手続きを終えたが、関心のある向きはチャレンジされたい(筆者注7)

1.改訂マニュアルの構成
全体で6章および付属資料で367頁(PDF版)にわたるものである。
(1)序論
(2)BSA/AML遵守プログラムの調査に関する検査概観および手続
(3)関係法令に基づく要求内容および関連のテーマに関する基幹(core)となる検査概観
(4)遵守対象企業の範囲拡大および外国銀行の支店等に関する検査概観
(5)米国内外における遵守対象商品・サービスについての検査範囲拡大に関する検査概観
(6)人や企業についての検査範囲拡大の概観
(7)附属資料(関係法令、指令、参照資料等)

2.改訂マニュアルを読むうえのポイント
(1)前記(2)章、(3)章の大部分は検査官におけるBSA/AML遵守検査プログラムの基盤となる部分で「検査範囲および検査計画」(PDFバージョンの15~17頁参照)および「BSA/AMLリスク査定」(同27頁)等が中心となる。両章に共通する用語、例えば「funds transfers」「foreign correspondent banking」等であり、これらの明確化が検査官等の改訂内容の理解向上につながる。

(2)検査官は、最小限次のような手続を踏まえ検査対象の金融機関のリスク査定を均一的に行う。
 ①検査範囲および検査計画(15~17頁参照)
 ②BSA/AMLリスク査定(27頁参照)
 ③BSA/AML遵守プログラム(34~39頁参照)
 ④検査総括および検査の終了(41~44頁参照)

(3)OFAC規則は、BSAの一部ではないが、OFACによる制裁処分の遵守確認に関し、検査対象機関の遵守方針や検査手続に関する基幹となる各章に関するものである。このため、検査官は検査範囲ならびに検査計画の策定に当り、銀行のOFACのリスク査定内容を確認するとともに、銀行のOFAC対応プログラムが検査期間中に行動を伴って行われているか否かをチェックする(マニュアルの144~146頁にわたるOFAC基幹検査手続参照)。

(4) 金融機関が的確な管理を欠く場合、企業・商品、顧客、企業はBSA/AMLに関するリスクを負うと評価される。加えて、今回拡大された章は、それに応じたリスク管理責任を負うことになる。これらの基幹となる検査手続は、すべての金融機関にとって適用可能なことではないが、独立したこれらのテストによる遵守内容の品質、数量の確認が求められることは間違いない。
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(筆者注1)FFIECは、米国の連邦金融監督機関である連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、全米信用組合管理局(NCUA)、通貨監督庁(OCC)、貯蓄金融機関監督局(OTS)からなる協議会である。監督機関の共通の取組み課題についての指導的機能を有しており、最近ではインターネット・バンキング取引の安全対策の観点から2006年12月末までに多要素認証(multi- factor authentication)の義務化の各金融機関に遵守を義務付けており(http://www.fdic.gov/news/news/financial/2005/fil10305.html)、わが国の都市銀行でも始まっている「トークン型ワンタイム・パスワード」もその対応例に当る。

(筆者注2)わが国の監督窓口は、金融庁総務企画局特定金融情報管理官である。2007年(平成 19 年)3月までは金融庁総務企画局総務課特定金融情報室が担当していたが、同年4月以降は国家公安委員会(警察庁刑事局組織犯罪対策部犯罪収益移転防止管理官)にその機能が移管されている。

(筆者注3)外国資産管理局の内容について参考となるURLは、https://www.jetro.go.jp/world/n_america/us/invest_02.html

(筆者注4)わが国では「Bank Secrecy Act」を「銀行秘密法」と直訳されるケースがいまだに多い。
 これでは何が秘密なのか、誰の秘密なのかが分からない。同法は、現在では「愛国者法」に基づく改正も行われており、テロ資金防止法(BSA/AML)と引用されることが多いが、1970年に制定された当時は脱税のための資金洗浄阻止も重要な目的であったようであり、企業に対する同法の報告義務に関し、連邦財務省内国歳入庁(IRS)が多く関与している。分かりやすく言うと「銀行等に対する機密性が高くまたは不審な現金払いおよび海外との金融取引等に関する報告義務法」である。つまり、報告義務を課されるのは、狭義の金融機関(規制内容や罰則は金融機関の場合が厳しいが)だけでなく、現在は外国の銀行に金融資産を有する企業、さらに貴金属・宝石取扱業者もFinCENへの報告義務が課されるなど範囲が広がっている。IRS等のサイトでは企業向けにBSAについて報告義務の内容や罰則規定についてQ&A等で詳しく説明している。
http://www.irs.gov/businesses/small/article/0,,id=152532,00.html
Bank Secrecy Act (BSA) | OCC (treas.gov)

FDIC | Banker Resource Center: Bank Secrecy Act / Anti-Money Laundering (BSA/AML)

(筆者注5)わが国と同様、「検査マニュアル」は当然のことながら頻繁に改訂されるので、原本に当る際には注意が必要である。2006年7月28日に改訂された版のURLは次の通りである。FDIC等も同時に改訂のポイントを公表している。
https://www.ffiec.gov/press/pr072806.htm

(筆者注6)わが国の金融監督機関のマネロン対策の政府機関は、金融庁総務企画局総務課特定金融情報室(国家公安委員会(警察庁刑事局組織犯罪対策部犯罪収益移転防止管理官)に移管済)である。FTTF40の対応に関して、最近では金融庁が本年6月13日に「カナダ金融部門との疑わしい取引に関する情報交換枠組の署名について」を公表している。現行の金融機関監督規制の下では本人確認法や組織的犯罪処罰法により届出が義務化されているが、今後はより包括的な法規制が行われる可能性が高い。

(筆者注7)登録方法は、米国の金融機関向けに説明されているが、それ以外の場合でも可能ではある。登録サイトの標題は、「FFIEC BSA/AML Examination Manual Outreach Fact Sheet」である。

〔参照URL〕
http://www.bankinfosecurity.com/regulations.php?reg_id=298&PHPSESSID=97c3860d339c70e6d50368b0e0747873
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EU議会が犯罪組織とテロ資金の送金規制に関する規則草案を支持票決

2006-07-09 18:37:53 | マネーローンダリング

Last Updated:Febuary 21,2022

本ブログは2011年9月21日に補筆・改訂した。

 EU議会は、7月6日に海外送金を行う金融機関やWestern Union(筆者注1)といった国際送金専門会社等に対し、EU加盟国以外からの送金者の氏名や住所、口座番号と言う識別情報を含まない場合は、送金拒否を義務付ける規則草案につき支持投票した。現状、これらの金融機関等は仕向銀行名は知っていても送金依頼人の氏名等は常に認識しているわけではない。

 また、規則草案はEU加盟国間の送金については口座番号のみ要求しているが、仮に顧客につき疑わしい場合は、3営業日以内に仕向銀行から送金者の氏名、住所についての情報を得ることが出来るとするものである。

 本規則に基づき集められた送金人の情報は、5年間の保存が義務化され、これら仕向金融機関等の監督機関は反マネロンやテロ資金についての調査活動が可能となる。最終的には、テロリスト自身や資金の流れを追跡することで捜査、起訴に寄与することが目的である。この規則草案自体はEUの「テロ阻止に関する行動計画」の一部である。

 なお、EUのマネー・ローンダリング対策については、2005年欧州議会および欧州連合理事会が決定した「EUの第3次マネーローンダリング・テロ資金供与規制にかかる指令(2005/60/EC)」)および「EUにおける資金の出入の管理に関する規則(1889/2005)」等のEUの公式サイトを参照されたい。
(筆者注2)

1.今後の規則草案の正式承認手続き
 EU蔵相会議において今後 可決することになるが、本規則草案自体マネー・ローンダリング対策における国際協調機関である「金融活動作業部会(Financial Action Task Force on Money Lauderig:FATF)」(筆者注3)の電信送金に関する特別勧告Ⅶ(SR Ⅶ)に基づくものであり、FATF修正解釈注によると2006年12月には実行に移されるべきものとされている。

2.規則草案の主な内容
(1)本規則制定の目的(第1条)
 マネー・ローンダリングやテロ資金の資金トレースを可能とし、国際的送金阻止やそれらに関する捜査を目的とする。
(2)定義に関するもの(第3条)
 適用の対象となる、テロ資金、マネー・ロンダリング、支払人(個人・法人を問わない)受取人(個人・法人を問わない)、送金サービス取扱者(payment service provider)、送金サービス仲介業者(intermediary payment service provider)等の定義。
(3)対象取引の適用除外(第2条、第5条)
クレジットカードやデビットカードその他これに類する商取引すなわち本人識別情報があり、後日のトレースが可能なものは除く。なお、EU域外からの1,000ユーロ以下の送金についてはマネロン阻止等の観点から本規則の適用範囲を限定できる。サービス・プロバイダーの情報保存期間は5年間である。
(4)EU域内の国外送金の場合の扱い(第6条)
後日トレースが可能となる支払人口座番号やその他ID情報のみの情報添付でよい。ただし、支払人、受取人のサービス・プロバイダー間では3営業日間は支払人の氏名、住所など完全な情報の保管が義務化される。
(5)EU域内の支払人からの域外の受取人への送金については完全な支払人情報(氏名、住所、口座番号の代りに出生年月日・出生地や公的ID番号も適用可)の添付が義務付けられる。(第4条、第7条)
(6)受取人のサービス・プロバイダーにおける支払人情報を欠く場合の調査に関する効果的手続きの策定義務(第8条)
(7)支払人情報を欠く場合の受取人に対するプロバイダーの本規則に基づくサービス・プロバイダーの送金取扱い拒否義務。(第9条)
(8)送金サービス仲介プロバイダーの受信情報の保存義務(第12条以下)
(9)サービス・プロバイダー等の監督機関、法執行機関との協力義務(第14条)
(10)EU加盟国は、2006年12月31日までに本規則の違反行為の場合の適用する罰則を制定するとともに、適用を確実にするために必要な手続きを定めたうえ、通知、施行しなければならない。

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(筆者注1)Wentern Unionは個人間の国際送金専門会社で米国企業である。わが国ではスルガ銀行が窓口になっているが、同サービスのメリットは、送金の受取人が銀行口座を有しなくても余良い点があげられる。
http://www.surugabank.co.jp/surugabank/01/05/11/0105110200.html

(筆者注2) 2011年1月欧州委員会は「加盟国におけるEU指令(2005/60/EC)の適用に関する最終報告(European Commission Final Study on the Application of the Anti-Money Laundering Directive)(COM(2012) 168 final, Report on the application of Directive 2005/60/EC on the prevention of the use of the financial system for 
the purpose of money laundering and terrorist financing, 11.04.2012)を公表した。

(筆者注3) 1989年アルシュ・サミット経済宣言を受けて設立された政府間機関である。2022年2月現在39カ国、オブザーバー国(オンドネシア)、準会員Task Force等9機関、オブザーバーの25国際機関(アジア開銀、国連、ユーロポール、IMF、世銀等)より構成されている。
Members and Observers - Financial Action Task Force (FATF) (fatf-gafi.org)
〔参照URL〕
1.2005年7月26日に欧州委員会が提案した草案(Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council on information on the payer accompanying transfers of funds)
http://www.fatf-gafi.org/document/52/0,2340,en_32250379_32237295_34027188_1_1_1_1,00.html#FSRBs
2.EU議会の投票結果の解説記事
http://www.fatf-gafi.org/document/52/0,2340,en_32250379_32237295_34027188_1_1_1_1,00.html#FSRBs

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