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情報セキュリティ、消費者保護、電子政府の課題等社会施策を国際的視野に基づき提言。米国等海外在住日本人に好評。

米国のファミリー・ファースト・コロナウイルス対応法に基づく財務省、内国歳入庁(IRS)等の新型コロナウイルス関連の従業員や家族等の休暇を提供等に関する具体的措置内容(新型コロナウイルス対応:その6)

2020-03-21 13:31:17 | 海外の医療最前線

 3月21日に筆者の手元に米国連邦内国歳入庁(IRS)(財務省の外局)から3月18日に成立した「ファミリー・ファースト・コロナウイルス対応法(Families First Coronavirus Response Act (以下、Act)」に関し、中小企業の雇用主に対する労働者と税額控除のための新型コロナウイルス関連の有給休暇を実施する具体的な実施計画の内容にかかるリリースが届いた。

 今回のブログは、その概要を仮訳するとともに、わが国ではあまりなじみのない米国の非常事態時の中小企業の雇用者の税額控除や従業員家族のため特別有給休暇支援の施策例の内容を解説するものである。

 なお、米国を中心とするローファーム“McDermott Will & Emery”が新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに対応して、米国政府がここ数週間で行ったパンデミックとその放射性降下物によって不釣り合いに影響を受ける可能性のある中小企業を救済するための重要な立法措置等に関し、現在中小企業が利用できる救済制度の概要をまとめている。併せて読まれたい。

【概要】
 3月20日、米国の財務省、内国歳入庁(IRS)、労働省は、中小企業が直ちに完全に設計された2つの新しい払い戻し可能な給与税額 (筆者注1)控除を利用し始めることができると発表した。新型コロナウイルス関連の休業に伴う従業員に提供する費用と同額を政府が減税措置や支給するものである。2020年3月18日にトランプ大統領が署名したファミリー・ファースト・コロナウイルス対応法(Families First Coronavirus Response Act (以下、Act)に基づき、従業員等や中小企業への救済が行われることになる。

 この法律は、従業員自身の健康ニーズや家族の世話のために、従業員に有給休暇を提供するための500人未満の従業員を持つすべてのアメリカ企業に資金を与えることによって、米国がCOVID-19と戦い、敗北の回避を助けるものである。すなわち、この法律は、雇用者が労働者の給与を維持すると同時に、労働者が給与とウイルスに対抗するために必要な公衆衛生措置のどちらかを選択することを余儀なくされないようにすることを可能にするものである。

1.重要事項
(1) 労働者のための有給病欠措置
 COVID-19関連の理由から、従業員の児童養護学校が閉鎖されたり、保育を受けられなくなったりする場合、従業員は最大80時間の有給病欠権を受け取り、有給育児休暇を拡大しうる。

(2) 完全なカバレッジ
 雇用主は、法律に従って有給休暇に対して100%の払い戻しを受ける。これには健康保険費用もクレジットも含まれる。また、雇用者は給与税の責任を減免され、自営業者も同等のクレジットを受け取れる。

(3) 迅速な給与税の還付
 還付は迅速かつ簡単に取得できる。給与税に対する即時の税還付が提供される。この払い戻しが行われる場合、IRSはできるだけ早く還付金を送金する。

(4) 中小企業の保護
 従業員数が50人未満の雇用主は、学校が閉鎖されているか、事業の実行可能性が脅かされている場合は育児を利用できない子供の育児休暇を提供する要件を免除される。

(5) コンプライアンスの緩和
 誠実なコンプライアンス努力のための30日間の責任免除期間の対象となる要件。
有給休暇のクレジット(筆者注2)を即座に活用するために、企業は給与税に関しIRSに支払う資金を保持し、アクセスすることができる。 これらの金額が有給休暇の費用を賄うのに十分でない場合、雇用主は来週IRSが発表する合理化された請求フォームを提出することにより、IRSからの優先支払いを求めることができる。

2.今回の措置の背景
 同法は、COVID-19関連を理由とする有給の病気休暇、家族や医療休暇の拡大を提供し、払い戻し可能な有給疾病クレジット制度と適格雇用者の有給育児休暇クレジット制度を作成した。対象となる雇用主は、500人未満の従業員を抱える企業や非課税組織・団体で、同法に基づき、緊急有給の病気休暇、緊急有給の家族と医療休暇を提供する必要がある。対象となる雇用主は、有効日から2020年12月31日の間に提供する適格休暇に基づいてこれらの控除を請求することができる。同等の控除は、同様の状況に基づいて自営業者も利用できる。

3.有給休暇
 この法律は、対象となる雇用主の従業員が、従業員が隔離されているために働くことができない従業員の給料の100%で2週間(最大80時間)の有給病欠を受け取り、COVID-19症状を経験し、医学的診断を求めることができると規定している。検疫対象者の介護を必要とし、学校が閉鎖された子供の世話をしたり、あるいはCOVID-19に関連する理由で保育を受けられない子供を介護したり、米国保健福祉省が指定したのと同様の状況が発生したり、2週間(最大80時間)の有給病欠を受け取ることができる従業員の給与についても同様である。学校が閉鎖されている子供の介護が必要なために働くことができない従業員、またはCOVID-19に関連する理由で保育提供者が利用できない場合、従業員の賃金の2/3で最大10週間の拡張有給家族と医療休暇を受け取る場合も同様である。

4.有給病欠に伴う貸付
 新型コロナウイルス検疫や自己検疫のために働くことができない従業員、またはコロナウイルスの症状があり、医学的診断を求めている従業員の場合、適格な雇用主は従業員の定期的なレートでみて1日あたり511ドル(約56,210円)、総額で5,110ドル(約562,100円)(合計で10日間)で病気休暇の払い戻し可能な病気休暇手当を受け取ることがある。
 新型コロナウイルスの誰かの世話をしている従業員、または子供の学校や保育施設が閉鎖されているために子供の世話をしている従業員、または新型コロナウイルスのために保育事業者が利用できない場合、適格な雇用主は従業員の通常の賃金の3分の2(1日あたり200ドル、最大2,000ドル)の手当を請求することができる。対象となる雇用主は、休暇期間中に適格な従業員の健康保険の適用範囲を維持するための費用に基づいて決定された追加の税額控除を受ける権利がある。

5.育児休暇手当
 前記病欠の手当に加えて、学校や保育施設が閉鎖されている子供の世話をする必要があるために働くことができない従業員、またはコロナウイルスのために保育者が利用できない場合、適格な雇用主は払い戻し可能な育児休暇クレジットを受け取ることがある。このクレジットは、従業員の通常の賃金の 3 分の 2 に相当し、1 日あたり 200 ドル(約22,000円)、集計で 10,000 ドル(約110万円)に制限されている。最大10週間の資格休暇は、育児休暇のクレジットにカウントすることができる。対象となる雇用主は、休暇期間中に適格な従業員の健康保険の適用範囲を維持するための費用に基づいて決定された追加の税額控除を受ける権利がある。

6.休暇を提供する費用の迅速な支払い
 雇用主が従業員に支払うとき、従業員の給与小切手連邦所得税と社会保障およびメディケア税の従業員の分担を源泉徴収する必要がある。雇用主は、これらの連邦税と社会保障税およびメディケア税の割合をIRSに預け、四半期ごとの給与税申告書(Employer's Quarterly Federal Tax Return)(Form 941シリーズ)をIRSに提出する必要がある。

 来週発表されるガイダンスの下で、資格のある病気や育児の休暇を支払う資格のある雇用者は、IRSに預けるのではなく、支払った資格のある病気や育児の休暇の金額に等しい給与税額をそのまま保持することができる。

 この保持可能な給与税には、源泉徴収された連邦所得税(federal income taxes)、社会保障税とメディケア税(Social Security and Medicare taxes,)の従業員負担分、および全従業員に関する社会保障税とメディケア税の雇用者負担が含まれる。

 有給の病気や育児の休暇の費用を賄うのに十分な給与税がない場合、雇用主はIRSからの迅速な支払いの請求を提出することができるが、 IRSは、これらの請求を2週間以内に処理する予定であり、この新しい迅速な請求手順の詳細は、来週IRSから発表される。

7.具体例
 適格な雇用主が病気休暇で5,000ドル(約55万円)を支払い、それ以外のすべての従業員から源泉徴収された税金を含む給与税に8,000ドル(約88万円)を入金する必要がある場合、雇用主は適格休暇を取得するために入金する予定だった8,000ドルの税金のうち最大5,000ドルをクレジットに使用することができる。雇用主は、次の通常の預金日に残りの3,000ドル(約33万円)を入金する法律の下でのみ要求される。

 もし適格な雇用主が10,000ドルの病気休暇を支払い、8,000ドルの税金を入金する必要がある場合、雇用主は8,000ドルの税金全体を使用して適格な休暇の支払いを行い、残りの2,000ドルの加速クレジットの要求を提出することができる。

 同等の育児休暇と病気休暇のクレジット額は、同様の状況下で自営業者も利用できる。これらのクレジットは所得税申告書で請求され、推定納税額が減額される。

8.中小企業の免除
 従業員数が50人未満の中小企業は、学校の閉鎖や育児の利用不能に関する休暇要件の免除を受ける対象となります。この免除は、雇用者のビジネスの存続可能性を危険にさらす状況で利用可能にする簡単で明確な基準に基づいて利用可能になる。労働省は、この基準を明確にするための緊急指導とルールを作り提供する。

9.雇用主に対する非法施行期間
 労働者は、雇用者が法律を遵守するための期間を提供する一時的な非法執行政策ポリシーを発行する。このポリシーの下で、労働者は、雇用主が法律を遵守するために合理的かつ誠実に行動している限り、法律違反に対して雇用主に対して執行措置を取らない。労働は代わりに30日間のコンプライアンス支援に焦点を当てる。

 これらのクレジットやその他の救済の詳細については、IRS.govの新型コロナウイルス税の軽減措置を参照されたい。また、クレジットの前払いを受け取るプロセスに関する情報はIRSサイトで来週掲載される。
       
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(筆者注1)   給与税とは、雇用主もしくは従業員に課される税であり、通常は雇用者から支払われた給与を基準に課税される。一般的に給与税は、従業員給与からの控除(天引き)と、従業員給与に基づいて雇用主が支払う税の二種類に分類される。 
 前者については、雇用主が従業員給与から源泉徴収しなければならない税であり、一般的に所得税、社会保障拠出金、社会保険料などといった名前である。後者については、雇用主自身の資金から支払われる税であり、それは労働者雇用に直接関係しており、雇用者の人頭割であることもあれば、給与比例課税であることもある。   (Goo Wikipedia から抜粋 )

(筆者注2) 米国の米国税法上の居住者(Resident)にかかるクレジットについて、米国公認会計士若菜雅幸氏の解説から一部引用、補足する。

Credit とは控除のひとつですが税額から直接控除するため非常に大きな効果がある。例えば、Credit として100ドル控除するということは、税金が100ドル減額されることを意味する。その対象となるには次のものがある。
① Earned Income Credit (EIC)
米国税法上居住者(Resident)の低所得者に対する還付可能なCredit です。還付可能というのは、税金の支払いがたとえなくても、Refund を受けることができる、つまりお金がもらえるということです。独身、既婚で合算申告、子供がいる場合など状況によって条件がかわってきます。子供をEICの対象とするためには、ソーシャルセキュリティナンバーを持っている(ITINは不可)など条件があります。税法上 非居住者(Non Resident)であると、このCredit を受けることはできません。
② Child Tax Credit
17歳未満(年度末時)の子供(Qualified Child)一人につき最大2,000ドルの控除が可能になります。ここでいう子供 (Qualified Child)は、米国税法上居住者(Resident)もしくは米国市民である必要があり、申告書上で扶養者として扱われている必要があります。なお一定額以上の高額所得者はこの控除に制限が生じます。
③  Credit for Child and Dependent Care Expenses
13歳未満の扶養者に対するベビーシッター、デイケアなどの費用のうち、最大3,000ドル (2人以上の場合は6,000ドル)×所得に応じた割合(20%~35%)まで、税額控除が可能になります(2018年)。 また、13歳以上の扶養者や配偶者でも特別な介護が必要な方には適用される場合があります。この控除を得る場合、夫婦の場合は共働き (または、フルタイムの学生)である必要があります。
④ Credit for Child and Dependent Care Expenses
13歳未満の扶養者に対するベビーシッター、デイケアなどの費用のうち、最大3000ドル (2人以上の場合は6000ドル)×所得に応じた割合(20%~35%)まで、税額控除が可能になります(2018年)。 また、13歳以上の扶養者や配偶者でも特別な介護が必要な方には適用される場合があります。この控除を得る場合、夫婦の場合は共働き (または、フルタイムの学生)である必要があります。
⑤  Education Credits
・Hope Scholarship Credit (現在は、American Opportunity Tax Credit となる)
この適用を受けるためには納税者は米国税法上居住者(Resident)でなければいけません。Hope Credit は、大学や 職業訓練学校などの最初の2年間(the first 2 post-secondary education years)の授業料及び関連費用に適用され、Credit として税額から直接控除できるため、大きな節税になる控除方法です。生徒一人当たり1800ドルまで(最初の1,200ドルまで100%、次の1,200ドルまで50%)控除が可能になります。 ただし、少なくとも1学期間、ハーフタイムで就学している必要があります。調整後総所得(AGI)によって段階的に控除額が減額されます。 なお大学院は対象にはなりません。
・American Opportunity Tax Credit
2009年以降、上記 Hope Credit の適用範囲が拡大され、生徒一人当たり最大2,500ドルまで(最初の2,000ドルまで100%、次の2,000ドルまで25%)控除が可能になります。また、Hope Credit が大学や 職業訓練学校などの最初の2年間(the first 2 post-secondary education years)であるのに対し、American Opportunity Tax Credit では、最初の4年間(the first 4 post-secondary education years)の授業料及び関連費用に適用されます。
・Life Time Learning Credit
Life Time Learning Credit は、Hope Credit に比べて条件が緩くなりますが、最大2,000ドル(最初の10,000ドルのうち20%分)がCredit として税額から直接控除できます。これも調整後総所得(AGI)によって段階的に控除額が減額されます。 例えば、支払った適格授業料の総額が10,000ドルを超える場合などは、Life Time Learning Credit を使うのが最も有利になる場合が多くなります。
⑥ Foreign Tax Credit
米国市民、または米国税法上居住者(Resident)は全世界での所得が課税対象となります。従って、米国外から所得があるとき、米国外の国と米国からの両国で課税対象となり、いわゆる二重課税が発生してしまいます。この問題を解消するために、外国で支払った税金分を一定の計算に基づき控除の対象とすることができます。この場合、Credit として控除するのか、Itemized Deduction として控除するのか選択ができ、毎年どちらを使うかは状況によって変更することが可能です。

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「オーストラリア連邦政府の新型コロナウイルス感染症のパンデミック対策としての福祉面等からの経済刺激策の具体的内容」(新型コロナウイルス対応:その5)

2020-03-20 15:38:50 | 海外の医療最前線

 筆者の手元に、オーストラリア連邦政府のスコット・モリソン(Scott Morrison)首相は、新型コロナウイルスに対応すべく総額176億豪ドル(約11兆3,274億円)の福祉面からの経済刺激策を発表した旨の3月12日付けのABCニュースが届いた。

Scott Morrison首相

 一方、わが国の取組みを見ると現金給付などの直接的な家計支援を実施すべく検討に入ったと報じられている。わが国では2008年にリーマンショックで起こされた世界金融危機の時に政府は全世帯を対象に1人1万2千円(子供と高齢者は2万円)の定額給付を行った例が報じられている。
 今回のブログは、オーストラリアで準備が進められている個人では社会的弱者対象、また中小企業向けの具体的施策について同記事をもとに解説を試みるものである。なお、同記事によると、240万人の年金受給者を含め、合計で650万人(オーストラリアの全人口2,499万人(2018年6月現在))が受給者となる見込みである。


1.誰が弱者を対象とする刺激金を受け取るのか?
 このパッケージは、5つの主要なグループを対象としている。それぞれが受け取るものは次のとおり。

① 福祉年金受給者(Welfare recipients):1人あたり750豪ドル(約48,270円)以上
② 見習い訓練制度を持つ中小企業:賃金補助金(wage subsidies)を通じて見習い訓練で仕事を保持するために最大21,000豪ドル(135万2,000円)
③ 中小企業:キャッシュフローを支援するための2,000豪ドル(約12万8,700円)から25,000豪ドル(約160万9,000円)
④ 一般的なビジネス(最大規模を除く):資産の即時償却しきい値が150,000豪ドル(965万4,000円)に引き上げられ、投資を促進するための追加の減価償却割引
⑤ 影響を受ける企業:新しい10億豪ドル(約634億6,000万円)のファンドへのアクセス可とする。

2.誰が現金で750豪ドル(約4兆8,270億円)を受け取るのか?
 世帯または個人を対象とする唯一の支給手段は、社会福祉[生活保護]受給者への750豪ドル(約4兆8,270億円)の現金支給である。

 この受給資格者には、失業給付(Newstart)、障害者支援年金(disability support pension)、介護者手当(carers' allowance)(筆者注1)、若年者給付金(youth allowance)(筆者注2)、退役軍人支援金の支払い、子供手当(family tax benefits)の給付、連邦のシニア医療カード保有者(Commonwealth senior health card-holders)および高齢の年金受給者が含まれる。
240万人の年金受給者を含め、合計で650万人(オーストラリアの全人口2,499万人(2018年6月現在))が支払いを受けると予想される。
 既にこれらの支払いを受け取っている人は現金を受け取り、3月12月末までに適格な支払いの1つを請求し、その請求が許可された人も受け取れる。

3.なぜその他の人はお金を得られないのか?
 モリソン首相は、刺激策の焦点は企業であると述べた。個人への支払いは使われず、代わりに普通預金口座に入金されるかもしれないという懸念があった。
 首相は、これらの人々への支払いを望んでいる既に福祉をしている人々にお金を与えた-仕事と多分より良い財政を持っているオーストラリア人ではなく-経済を通して循環させることにある。
 「オーストラリア経済への現金注入であり、小規模企業を支援し、中規模企業を支援する」と彼は述べた。
彼はまた、すべての措置が一時的なものであることを確認した。つまり、福祉の受給者は短期の現金増額を受けるが、支給率は固定されたままである。

4.給付金は早い時期に支払われるか?
 連邦政府は、福祉年金受給者への支払いは2020年3月31日に開始することを約束した。
その支払いの90%以上は、4月中旬までに「行われる予定」である。
 法律は3月後半に議会に導入され、これらの措置を実施し、すべての法律は可決される予定である。
連邦財務大臣のジョシュ・フリデンバーグ(Josh Frydenberg)は、176億豪ドル(約11兆3,274億円)のパッケージのうち110億豪ドル(約7,079億6,000万円)が2020年6月末までに支払われると述べた。

5.企業は支払いを受けるために何をしなければならないか?
 企業のキャッシュフローサポートは、4月28日から事業活動明細書または分割払い活動明細書の50%の支払いで届き、14日以内に払い戻しが行われる。
 企業は4月2日から見習い訓練賃金補助金に登録することができるが、この13億ドル(約836億6,800万円)の措置のうち10億ドル以上は来年度まで予算化されない。

 また、税額控除を請求する企業は、次に税金が計算されるときに恩恵を受けるが、減価償却控除の恩恵は2021年6月30日まで延長される。

6.この費用にかかる納税者の負担はいくらか?
 全体として、刺激策パッケージは176億豪ドル(約11兆3,274億円)の価値がある。
中小企業への現金支払いは、パッケージの最大の構成要素であり、約80億豪ドル(約5,146億4,000万円)の価値がある。
 資産の即時償却と減価償却費の変更は、約40億豪ドル(約2,573億2,000万円)である。
 福祉年金受給者への支払いは、合計で50億豪ドル(約3,216億5,000万円)に達する。

7.さらなる給付額に増額の可能性はあるのか?
 世界的な金融危機(Global Financial Crisis :GFC)に対応したラッド前政府(筆者注3)の最初の刺激策は100億豪ドル(約6436億円)の価値があり、さらに3か月後は420億豪ドル(約2兆7,031億円)の価値があった。
 モリソン首相は今週初め、コロナウイルスの経済的影響は世界的な金融危機よりも悪化する可能性があると指摘した。

 同首相は本年5月の予算により多くの支出があるかもしれないと警告したが、3月12日の発表に関連して、「これらの措置は仕事をすることができる措置であり、今後もイベントを監視し続けると信じている」と述べた。
 また、南オーストラリア州は、建設事業に焦点を合わせた3億5,000万豪ドル(約2,252億6,000万円)の経済刺激策を発表した。

 各州および各準州の指導者は3月12日の夜に首相と会談しており、さらなる措置について議論する予定である。


8.働くことができない人々のために他にどのような支援策があるか?

 政府は、政府の疾病手当(sickness allowance)(筆者注4)と失業給付(NewStart)の待機期間を放棄している。(筆者注5)
コロナウイルスの影響を受け、医療上の理由でコロナウイルスに感染したり、実際にコロナウイルスに感染したり、仕事ができなくなったりした従業員は、現在病気の支払いと呼ばれるものにアクセスできる」とモリソン氏は述べた。

 モリソン首相はまた、適格性の変更が行われないことを確認した。つまり、5,500豪ドル以上の「流動資産」に設定された病気手当の資産テストが引き続き適用されることを意味する。

 同首相は、申請者は5日間で処理されると期待できると主張した。しかし、連邦議会上院の推定に提供された最近の数字は、病気手当の申請者は通常、1ヶ月以上の処理時間に直面していることを示している。
 社会サービス省のスポークスマンは、「個々の申し立てや季節的要求の複雑さにより処理時間が異なる可能性があることに注意すべきである」と述べ、経済的困難に直面している人に対する申し立てが優先されると述べた。

 同省は、コロナウイルスに関連する特別な例外に関する以下述べるガイダンスを提供した。

 ・隔離のため相互義務要件を満たすことができない現在の収入サポートの受給者は、オーストラリアのサービスに電話し、14日間の主要な個人的危機免除を付与することができる。ただし、診断書などの証拠を提供する必要はない(ただし、14日間の延長要求証拠が必要)。

 ・オーストラリアに住んでいるがCOVID-19が原因で研究に参加できない若年者給付金(学生)またはその他の研究関連の支払いを受ける学生は、支払いの研究活動要件を満たしていないことについて合理的な言い訳をする必要がある。この状況にある個人は、サービスオーストラリアに連絡して、状況を通知する必要がある。
 

 ・COVID-19のために働くことができない22歳未満の若者は、若年者給付金を請求し、相互義務要件の免除が認められる。

***********************************************************************:

(筆者注1) 認知症介護情報ネットワーク「オーストラリアの認知症ケア動向 Ⅰ オーストラリアの高齢者ケアの状況」から一部抜粋する。

「オーストラリアでは介護者支援についても積極的に取り組んでおり、在宅介護で仕事に出ら れない介護者に対して国は介護者手当(Carer Payment と Carer Allowance)の仕組みを用意しているほか、レスパイトケアサービスなどを充実させている。 
 (1) 介護者手当 <介護者手当(Carer Payment)> 16 歳以上の障害を有する人の在宅ケアを行う介護者が対象。受給額は以下の通り。ミー ンズテスト(インカムとアセットの双方)の対象。週 25 時間までは、就労につくことも 認められている。2006 年末現在で 11 万人の介護者が受給しているが、多くが 45~64 歳 の年齢層となっている(レスパイトケア中は年間 63 日まで手当てが制限される)。この 手当を受給するためには、継続的な介護が必要なことについての医師の証明と、適切な 介護が行われていることについての登録介護者の証明が必要である。 
対象 2 週間当たりの最大額 単身 $562.10(39,347 円) 夫婦 $469.50(32,865 円、それぞれ) 
 <介護者手当て(Carer Allowance)> 16 歳以上の障害を有す人の在宅ケアを行う介護者が対象。ミーンズテストの非対象。
 対象 2 週間当たりの大額 1 人当たり $100.60(7,042 円) ※ 本レポート記載時 1豪ドル≒70円

(筆者注2) 海外職業訓練協会「オーストラリアの雇用労働関係布法令」(2008.12.30)から一部抜粋する。
「オーストラリアには雇用保険制度はなく、“センターリンク (Centrelink) ”として知られる政府機関を通じて、失業者は直接給付金を受け取る。受給資格のある申請者は、まず全員が初期失業給付を受ける。この初期失業給付には成人向けには再出発給付金 (Newstart Allowance) 、21歳以下の若者あるいは25歳以下でフルタイムの学生向けには若年者給付金 (Youth Allowance) がある」

 (筆者注3) ケビン・マイケル・ラッド元首相(Kevin Michael Rudd)在任期間は第一期2007年12月3日~2010年6月24日、第二期-2013年6月27日~ 2013年9月18日。

(筆者注4)わが国では2020.3.6 厚生労働省・厚生労働省保険局保険課の事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給について 」を参照されたい。

(筆者注5) 
2009.2.28 福田平治「オーストラリア政府の生活支援ボーナス(Tax bonus)」支給の実施について」参照。

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米国の連邦金融機関検査協議会(FFIEC)や米銀行協会が金融機関のCOVID-19のパンデミック化に備えた改正ガイダンスを発布 (新型コロナウイルス対応:その4)

2020-03-08 08:14:28 | 国家の内部統制

 筆者の手元に3月6日付けの米国の金融監督機関の1つである連邦預金保険公社(FDIC)の「パンデミック計画に関する金融監督機関向けガイダンスの共同声明(Interagency Statement on Pandemic Planning )」に関する金融機関向けリリースが届いた。これは、そのほかの連邦金融監督機関協議会(Federal Financial Institutions Examination Council's:FFIEC )からの通知と同様の位置付けにあたるもので、また同時に米国銀行協会(ABA)も「Coronavirus Disease 2019 (COVID-19):Pandemic Planning and Business Continuity Resources for Banks」専用サイトを立ち上げている。

 今回のブログは、これらの関係機関の取組み内容の概要を取り上げ、わが国の経済金融活動のコアである民間金融機機関のパンデミック時の対応に向けた先行的課題につき警報を鳴らすものである。
 とくに、ABAのCOVID-19のパンデミック対応サイトはかなり詳しく網羅的な内容である。
わが国の金融機関や一般企業の事業継続性確保のための準備はこれからという現実を見ると、不安感を覚えるのは筆者だけであるまい。


1.2020.3.6 FDIC 金融機関向けニュース「パンデミック計画に関する金融監督機関向けガイダンスの共同声明(Interagency Statement on Pandemic Planning)(全10頁)を発布
 FDICのリリース文を仮訳する。
 ニュースCOVID-19のパンデミックへの備えは、金融機関の事業継続計画の重要な部分である。 米国の規制監督を受ける金融機関は、継続的な計画を含む関連するリスク管理計画を定期的に見直し、かつ幅広いシナリオで最小限の中断で自行の製品とサービスを提供し続ける能力を確保する必要がある。 健全化計画は、こうした不測の事態が発生したときに、消費者、企業、コミュニティへのサービスの中断を最小限に抑えるのに役立つ。 米国連邦金融機関検査協議会(FFIEC)は3月6日、パンデミックの潜在的な悪影響を最小限に抑えるために各金融機関がとるべき行動を特定するガイダンスを更新した。

 パンデミックが施設に及ぼす可能性のある影響は、各金融機関がその運用環境でどのように管理するかの計画を確立することを正当化する。最近の出来事は、条件が必要な場合にこれらの計画を実行する準備ができている機関の重要性を強調している。

 各金融機関は、事業継続計画をレビューし、次のような慎重な初期アクションを実行する必要がある。

①  パンデミックのアウトブレイク時のリスクを伝え、病気にかかる可能性を減らすために従業員がとることができる手順を議論することにより、従業員の認識を促進する。

② 業務継続の目的で、組織内および他のビジネスセクター全体で重要な機能、従業員およびリソースを特定し、優先順位を付ける。

②  経営陣、従業員、主要サプライヤーおよび顧客の役割と責任に関するテストの実施。

③  主なパンデミック計画の引継ぎ。

⑤ オンラインバンキング、テレフォンバンキング、およびコールセンターサービスへの依存の増強。

⑦ リモートアクセスと在宅勤務(telecommuting)の機能強化。

 このガイダンスは、2008年2月6日付のタイトル「パンデミック計画に関する省庁間声明:パンデミックの潜在的な悪影響を最小限に抑えるためのガイダンス」(FIL-6-2008)の内容を更新し、また2006年3月15日付の「インフルエンザのパンデミック対策に関する省庁間諮問」(FIL-25-2006)に優先する。

2.2020.3.6 米国銀行協会(ABA)「Coronavirus Disease 2019 (COVID-19):Pandemic Planning and Business Continuity Resources for Banks」サイトの概要
 以下で仮訳する。
 この専用ページには、銀行が2019年の新規コロナウイルスを慎重に計画および準備する際に役立つ一連のリソースが含まれる。 最新の状況の評価と公衆衛生当局からのガイダンスを含むように定期的に更新される。また、事業継続計画上の推奨事項、金融規制当局からのその他の関連情報、および従業員、顧客、公衆とのコミュニケーション方法に関するガイダンスも含まれている。

(1) 金融業界における規制ガイダンスなどによる規制
① 新型コロナウイルス対応をめぐる金融業界の予備的・共通的な演習・訓練(Preliminary Coronavirus Financial Industry Common Practices)
FBIIC (筆者注1)/ FSSCC(筆者注2) 2007パンデミック・インフルエンザ訓練時の行動後の報告(FBIIC/FSSCC 2007 Pandemic Flu Exercise After Action Report)
③ 演習・訓練結果の概要(2020年2月、金融サービス情報共有および分析センター(以下、FS-ISAC)ビジネス復元委員会に提出した)(Exercise Summary (as presented to FS-ISAC(筆者注3) Business Resilience Committee, Feb. 2020)

④ 米国証券業界最大の自主規制組織であるFINRA(金融取引業規制機構)はパンデミック対策に関するガイダンス(FINRA Provides Guidance on Pandemic Preparedness:Business Continuity Planning)を提供-規制通知09-59

FINRAの2009年パンデミック調査結果(FINRA 2009 Pandemic Survey Results)
⑥ California Resiliency Alliance 2019 Novel Coronavirus(2019-nCoV)クイックリンク先の一覧(注4)(California Resiliency Alliance 2019 Novel Coronavirus (2019-nCoV) Quick Links Collection)

FFIECの IT検査ハンドブック-ビジネス継続性管理ブックレット(2019)(FFIEC IT Examination Handbook - Business Continuity Management Booklet (2019))

FFIECの IT検査ハンドブック-ビジネス継続性計画ブックレット付則D:パンデミック計画(FFIEC IT Examination Handbook – Business Continuity Planning Booklet、Appendix D:Pandemic Planning) 

パンデミックの潜在的な悪影響を最小限に抑えるためのパンデミック計画ガイダンスに関する金融監督機関合同声明(2007 Interagency Statement on Pandemic Planning Guidance for Minimizing a Pandemic's Potential Adverse Effects (2007) ) (注5)

大災害:大災害の影響を受けた金融機関に対する関係省庁審査官ガイダンス(2017年12月(Major Disasters: Interagency Examiner Guidance for Institutions Affected by Major Disasters (Dec. 2017))

法定休日または自然災害の宣言への対応:自然災害およびその他の緊急事態に関する監督ガイダンス(2012年9月)

(2)感染状況および感染事例情報の更新情報機関
・疾病管理予防センター2019新規コロナウイルスの状況の概要(Centers for Disease Control and Prevention 2019 Novel Coronavirus Situation Summary)
・ジョンズ・ホプキンスCSSEによるコロナウイルスCOVID-19グローバルケース(Coronavirus COVID-19 Global Cases by Johns Hopkins CSSE)
・DHSサイバーおよびインフラストラクチャ・セキュリティ機関SitRep(2020年3月4日)(DHS Cyber and Infrastructure Security Agency SitRep (Mar. 4, 2020))

(3)利用可能なガイドと推奨事項
・疾病管理予防センター
・2019新規コロナウイルス(2019-nCoV)(2020年2月)の計画と対応に関する企業
と雇用者向けの暫定ガイダンス
・ビジネスパンデミックインフルエンザの計画チェックリスト
・CDCトラベルガイダンス
・CDCコミュニケーションリソース(無料のビデオ、ファクトシート、ポスター)
・CDC PSA:2019-nCoV:国民がすべきこと
・CDC PSA:細菌の拡散を阻止
・CDCの米国パンデミック間隔フレームワーク(PDF)
インフルエンザ・パンデミックの計画をガイドし、米国でのリスク評価、意思決定、および行動の推奨事項を提供します。インフルエンザパンデミックの進行状況を説明し、さまざまな段階の指標と評価の概要を説明している。

(4)世界保健機関(World Health Organization)
・WHOの一般大衆向けアドバイス(WHO Advice for the Public)
・パンデミック・インフルエンザのリスクと影響の管理のチェックリスト:パンデミック対応能力の構築(Checklist for Pandemic Influenza Risk and Impact Management: Building capacity for pandemic response)

・コロナウイルス病(COVID-19)の一般向けアドバイス:神話バスター(Coronavirus disease (COVID-19) advice for the public: Myth busters)

(5)労働安全衛生局Occupational Safety and Health Administration
・2019-nCoVへの潜在的な暴露から労働者を保護する。
・インフルエンザ・パンデミックに備えて職場を準備するためのガイダンス)

(6)米国商工会議所
・従業員のためのコロナウイルス(COVID-19)にかかる職場のヒント
・雇用主がコロナウイルスを計画的に対応するためのガイダンス

(6)詐欺(fraud)および詐欺まがいの不正行為(scam)
 米国内ですでに以下の犯罪行為が見られる。
・米国シークレットサービスのグローバル調査オペレーションセンターのアラート:コロナウイルス詐欺(3月4日)
・WHOのふりをする犯罪者に注意してください
・コロナウイルス:詐欺師は見出しを追う(2月10日)
・コロナウイルスをテーマにした電子メールを使用してマルウェアを配信するサイバー犯罪者(2月10日)
・投資家アラート:コロナウイルス関連の投資詐欺に注意(2月4日)
・米国、英国でのコロナウイルス・フィッシングメールは、保護安全対策に関するアドバイスを提供すると主張(2月3日)

*********************************************************************

(筆者注1) Financial and Banking Information Infrastructure Committee(FBIIC)の概要を仮訳する。
金融市場に関する大統領の作業部会の下で認可された「金融および銀行情報インフラ委員会(FBIIC)」は、金融規制当局間の調整とコミュニケーションの改善、金融セクター内の官民パートナーシップの促進、および金融セクター全体の回復力の強化を担当している 。

(筆者注2) Financial Services Sector Coordinating Council (FSSCC)の概要を仮訳する。
 重要な金融インフラの保護として2002年に金融セクターによって設立されたFSSCCは、主要な政府機関と協力して、サイバーおよび物理的な事件から国家の重要なインフラストラクチャを保護している。

(筆者注3)  FS-ISACの概要を仮訳する。
 信頼がビジネス、貿易、商取引の重要な資産になった現在、金融サービス情報共有および分析センター(FS-ISAC)は、グローバルな金融システムのサイバーリスクを軽減することに専念している。
 金融機関とその顧客にサービスを提供するこの組織は、インテリジェンス・プラットフォーム、回復力リソース、信頼できる専門家のピアツーピアネットワークを活用して、サイバー脅威を予測、緩和、対応する。
 FS-ISACの本部は米国にあり、英国とシンガポールに支部がある。 

(筆者注4) リフォルニアビジネス回復同盟(California Resiliency Alliance: CRA)のCOVID-19 / SARS-CoV-2 Quick Links Collectionの該当ページを以下、仮訳する。

 このページは、以前は2019 Novel Coronavirus(2019-nCoV)と呼ばれていたCOVID-19(疾患)/ SARS-CoV-2(ウイルス)に関するリソースへのリンク集である。カリフォルニアビジネス回復同盟(California Resiliency Alliance: CRA)は、このページに新しいコンテンツを投稿し続ける。 ページの下部にある変更ログは、新しいコンテンツを示す。 これは進化している状況であり、情報は変化している。最新情報については、CDCや公衆衛生機関などの公式ソースを参照されたい。

(筆者注5) 筆者なりにURLを確認したが、内容からみて2007年ではなくて“Interagency Statement on Pandemic Planning :Guidance for Minimizing a Pandemic's Potential Adverse Effects FIL-6-2008” が正しいと思う。筆者はFDICに別途確認する予定である。

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わが国の医療関係者や政治家は果たして「新型インフルエンザ等対策特別措置法」や「新型インフルエンザ等対策ガイドライン」等の内容を正確に理解して行動しているのか? (新型コロナウイルス対応:その3)

2020-03-06 13:00:17 | 海外の医療最前線

 最近、やっとこれらの問題がTV等でも正面から取り上げられ始めた。
 筆者は、これらの立法措置やその背景にある当時のパンデミックの想定外の拡散問題、さらにはわが国の医薬品備蓄の国際比較、また、平成17年11月から平成29年9月までの間、数次にわたり改正を行ってきた内閣官房 「新型インフルエンザ等対策政府行動計画等」が十分に機能していないという問題である。同行動計画の中身は具体的には、(1) 新型インフルエンザ等対策ガイドライン(平成30年6月21日 一部改定))、② 新型インフルエンザ等発生時等における初動対処要領(平成29年8月4日一部改正)、③ 新型インフルエンザ等対応中央省庁業務継続ガイドライン(平成26年3月31日)である。 特に重要なものは新型インフルエンザ等対策ガイドラインであろう。

 そこで筆者は、その内容を中心にチェックしてみた。
そこで、見られた重要な対策の欠落例えば、新型インフルエンザ対策ガイドライン(新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議 平成21年2月17日)の新型インフルエンザ流行時の日常生活におけるマスク使用の考え方 (新型インフルエンザ専門家会議 平成 20 年 9 月 22 日)につき「5.家庭における備蓄について: 家庭において不織布製マスクを備蓄することは、新型インフルエンザ対策と して推奨される。その他の感染予防行動や日用品の備蓄と共に行われることが 望ましい。 不織布製マスクのほとんどは諸外国で生産され、輸入されているため、新型 インフルエンザ流行前に準備しておくことが推奨される。流行期間(8 週間を想定)に応じたある程度のマスクの備蓄を推奨する。 例えば一つの目安として、不織布製マスクを、発症時の咳エチケット用に 7-10 枚(罹患期間を 7-10 日と仮定)、健康な時の外出用に 16 枚(やむを得ず週に 2 回外出すると仮定して 8 週間分)として、併せて一人あたり 20-25 枚程度備蓄 することが考えられる。」とある一方で、国家備蓄については何ら言及していない。

 以下で、その内容を概観するが、これまでの国会での議論が野党を含め政府や専門家会議委員が述べてきた内容が、これまでの反省をふまえた検討や結果と著しく乖離していることが明らかとなろう。

 また、わが国メディアの対応は、従来から肺炎の疫学的重症度の解析解説が中心である。しかし、一定の期間ごとにグローバルに発生する新たな新型インフルエンザの対応のための普遍的な法律や医療制度の向けた議論が必須な時期にあることも明らかであり、その分野の専門家会議による立法議論が急務と考える。まさに。3月5日付け朝日新聞朝刊の社説の最後にあるように政府の政策発議の内容の議論は感染症のみならず、法律、経済、社会保障などの専門家の意見等に基づく国民が理解できる丁寧な説明が必要な時期である。

 さらに、わが国に関し言及すべき点は、前回オーストラリアの国家医療備蓄の最新情報と比較して、いったいわが国の対応はどうなっているのか?
 パンデミックになってからマスク等生産者に納品を促すといった後手後手の対応ではなく、インフルエンザ・ワクチンのきわめて高い目標備蓄率(45%)がある一方で、マスクや消毒剤などが流通パイプが細くなっている間は国家また地方自治体で備蓄でカバーするといった対応がなぜ考えられないのか、一国民としてますます不安、不信感が募る毎日である。

 ところで、わが国の厚生労働省の「新型インフルエンザ専門家会議」サイトや官邸サイトの「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(第1回)議事概要」を読んだリ、その前身である新型インフルエンザ等対策閣僚会議の下に位置づけられた「新型インフルエンザ等対策有識者会議」の委員構成や議事録等についてチェックしているメデイアはいかほどであろうか。

 筆者は両者の委員構成を比較してみた。その比較の目的は、国民の厳しいチェックの在り方についての問題意識である。例えば、新型インフルエンザ等対策有識者会議は医療・公衆衛生に関する分科会及び社会機能に関する分科会を開催し、第8回有識者会議に出された「新型インフルエンザ等対策政府行動計画(案)の概要」を読んだ。特に国民生活および国民経済の案例の確保の項目を注視されたい。本文で詳しく述べるが、例えば買い占め、緊急物資の運送等、以下のとおり一般論で終始している。

【国内発生早期】
・消費者としての適切な行動の呼びかけ、事業者に買占め・売惜しみが生じないよう要請
★指定公共機関は業務の実施のための必要な措置を開始★緊急物資の運送★生活関連物資等の価格の安定

 【国内感染期】
・消費者としての適切な行動の呼びかけ、事業者に買占め・売惜しみが生じないよう要請・★緊急物資の運送★生活関連物資等の価格の安定★物資の売渡しの要請★新型インフルエンザ等緊急事態に関する融資★権利利益の保全

また、最も国民の生命を守るための新型インフルエンザ・ワクチンの備蓄率が目標である45%を大きく下回っていることなどが有識者会議の議事録で見るしかないのが現実である。(筆者注1) 

1.「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の内容と問題点
 内閣官房が同法の概要を掲載している。しかし、非常事態宣言の根拠となりうる同法につき、改めて詳細な検討が必要な時期にある一方で、数年おきにグローバルに発生する新型インフルエンザ」の対応としては前述した通り、類似の立法措置をとることは当然といえるが、その理解にはまず新型インフルエンザ等対策特別措置法に関する都道府県担当課長会議資料 資料2 新型インフルエンザ等対策特別措置法 について~的確な危機管理のために~(全32頁)平成24年6月26日 内閣官房新型インフルエンザ等対策室を丁寧に読むべきである。

 この資料は都道府県担当課長向けにまとめられたものであることから、筆者の限られた時間であるが比較的に重要な点を網羅していると感じた。
 同法や今後提示されて来るであろう改正法案についての論述は機会を改めたい。

2.内閣官房 「新型インフルエンザ等対策政府行動計画等」の内容と問題点
 (1) 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の委員構成

 延べ18回にわたる新型インフルエンザ等対策有識者会議での検討がなされている一方で、その成果を広く国民に公表し、同時に関係する分野たる法律、社会政策、福祉政策、経済・財政等の専門家からの意見を求めるべきであったと考える。
 その意味で前述した通り有識者会議の顔ぶれを見ても理解できよう。
ここで、有識者会議の委員と今回組成された新型コロナ専門家会議委員の氏名、所属、専門分野を列記しておく。比較されたいが、この人選は極めて横滑りであるといえるし、3で述べる問題に関する検討すべき問題が山積しているといえる。

 この名簿比較で読者はすぐに気が付くであろうが、医療、感染症などの専門家が多いことは言うまでもないが、問題は法律家、公共政策学が各1名である点であり、さらに言えば財政、経済の専門家は皆無である。この顔ぶれで果たして新型コロナウイルス対策、具体的国家施策を総合的に検討できる諮問内容を内閣に真正面から提言できるであろうか。

 ちなみに、弁護士 中山ひとみ氏(霞ヶ関総合法律事務所所属)は元日本弁護士連合会常務理事で医療関係のかかる問題に詳しいことは言うまでもない。また、武藤香織氏(東京大学医科学研究所公共政策研究分野教授)は生殖補助医療や生体臓器移植、遺伝性疾患など、家族と縁の深い医療や医学研究の現場や政策に関する調査研究を行ってきている。

武藤香織氏

 (2) 新型インフルエンザ等対策政府行動計画の概要

3.医療・公衆衛生、電気・水道・ガス・公共交通などの社会インフラへの影響と事業継続性の確保問題
 新型インフルエンザ等対策ガイドライン(中間報告)では、以下の記述があるのみである。
そこでの本格的な検討がないがゆえに今日の消費者パニックを生み、またこの医療品不足状態が長期化した段階で医療機関だけでなく基幹インフラの事業継続につき、だれがどこまで実際の責任や運営を担うのか、疑問がさらに湧く。

4.バイオテロ対策の取り組みへの言及は皆無
  わが国内では筆者のようなサイバー犯罪の専門家でも、この問題指摘は極めて少ない。その中で厚生労働省研究班がまとめた「厚生労働省研究班 バイオテロ対応ホームページ」が炭疽 (anthrax)等につき詳しく論じている。(筆者注2)

5.その他政府や自治体が取り組むべき課題
  新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正法の内容に係る問題でも関連する問題として、消費者庁や公正取引委員会等監視機関は便乗値上げ、買い占めなどに厳格に取り組む姿勢を直ちに見せるべきである、そのことが直接的に国民や民間企業の安心感を与えるし、まさにそれらの機関の本質的任務である。
 さらに言えば、わが国では例がない公的ならびに民間「オンブズマン」の役割が重視されるべきであろう。この問題自体は政策論として大きな問題であり、機会を改める。

***********************************************************
(筆者注1) 新型インフルエンザ等対策有識者会議(第11回)資料1-6 「ワクチン、抗インフルエンザ薬等について」でわが国におけるワクチン、抗インフルエンザ薬等であるタミフル、リレンザに関する備蓄に関する詳細な解析を行っている。

(筆者注2) 厚生労働省研究班 バイオテロ対応ホームページから引用する。
 バイオテロ対応ホームページは、平成 20 年(2008 年)に医療機関向けにバイオテロ関連疾患の臨床診断や検査方法の情報を提供するためのものとして整備され、平成 26 年からは「バイオテロに使用される可能性のある病原体等の新規検出法の確立,及び細胞培養痘そうワクチンの有効性,安全性に関する研究」班(西條政幸班長:国立感染症研究所)が担当しており、国際情勢や日本のマスギャザリングのイベントを想定し、平成 28 年からは一般向けに公開しております。本ホームページではバイオテロ対策の総論、及びバイオテロ関連疾患について、ショートサマリー、バイオテロが疑われる時の対応のフローチャート、疾患の詳細について紹介しており、専門家の意見を取り入れながらアップデートを行っております。また国内には常在しないものの輸入感染症やバイオテロとして海外から持ち込まれうるその他の関連疾患についても記載しておりますので、診療にお役立ていただければ幸いです。
また、具体的には天然痘(smallpox)、野兎病(Tularemia)、ウイルス性出血熱(Virus hemorrhagic fever)、ボツリヌス症( botulism)、ペスト( plague)等である。

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オーストラリアの医薬品等の国家備蓄制度の概要から見たわが国のパンデミック対策の新たな課題とは?(新型コロナウイルス対応:その2)

2020-03-04 16:09:30 | 国家の内部統制

 筆者の手元に2月29日付けのオーストラリアのメディアABC news「COVID-19の脅威が激化するにつれて、新型コロナウイルス感染症が国家医療備蓄を増強させる」という記事が届いた。わが国で連日、TVや新聞等で大きく取り上げられている医療検査体制の不備の問題だけでなく、マスクやアルコール消毒薬の店頭からの消滅は、国民にきわめて大きな不安感を与えていることは言うまでもない。

2020.3.510時52分現在のcorona virusのグローバルな拡散情報(WHO)

 そこで今回のブログは、オーストラリアの国家医療備蓄の最新情報の概要を紹介するとともに、わが国の国家医療備蓄についての取り組むべき課題やさらに食料品の備蓄問題、すなわち南海トラフ問題などを抱えるわが国の全体としての国家備蓄の在り方につき 内閣府や関係省庁がどこまで手当しているかを探ることにある。

1. ABC news記事の要約・仮訳
 以下で、ABC newsの記事を仮訳する。なお、会計検査院報告、主要関係者のプロファイル写真などのリンクは筆者の責任で行った。

 オーストラリア中のどの倉庫でもかまわない。 実際、あなたは毎日それを過ぎて行き、知らないことさえある。
 オーストラリア国内の複数の秘密の場所で、2,000万枚のマスク、抗生物質、ワクチン、基本的な手指消毒剤などの機器を含む約1億豪ドル(約68億円)相当の医薬品が、プラスチックで包まれた巨大なパレットの上に置かれ、配備の準備ができている。
 バイオテロ攻撃、医学的緊急事態、またはパンデミックの場合の準備として10年以上にわたって徐々に蓄積されてきた。
 これは、National Medical Stockpile(NMS)として知られている。スコット・モリソン首相によると、新型コロナウイルスがパンデミックと宣言されることはほぼ確実であり、保健当局によると、備蓄はCOVID-19への豪州の対応の重要な要素になりつつある。

(1)NMSは具体的にどのように機能するのか?
 州および準州は、まず連邦政府の最高医療責任者のブレンダン・マーフィー(chief medical officer Brendan Murphy) (筆者注)による最終承認を受けて、備蓄へのアクセスを要求する。

 これまでのところ、新型コロナウイルスの流行の間、一般開業医(GP)、医療従事者、薬剤師、および「国境で危険なまたは危険な個人」を扱う政府機関に、140万枚以上のサージカルマスクが配布された。
 保健省の広報担当者は、一部のストックは緊急事態で製品へのより迅速なアクセスを確保するために州および準州に事前に配置されていると述べた。
 また、医療用機器はオーストラリア全土のさまざまな倉庫に保管されており、テロ攻撃の懸念があるため、それぞれが秘密にされ、厳重なセキュリティ下に置かれている。
 1月、グレッグ・ハント(Greg Hunt)保健大臣は保管倉庫について珍しい洞察を与え、5段以上に積み上げられた数百のフェイスマスクのパレットを示す写真をソーシャルメディアに投稿した。

 コロナウイルスが世界的な医療緊急事態になったため、連邦政府はその供給を増やしてきた。
1月、ハント大臣は、1200万枚のフェイスマスクを所有していると述べた。2月28日に、大臣はNMSが2,000万枚のストレージを持っていることを明らかにした。すなわち、「在庫は豊富であり、最優先事項は明らかに最前線の臨床医を保護することであり、州や準州、一次医療ネットワークまたはあらゆる団体と協力して、必要な場所に物資が届けられるようにする。我々には強力なサプライチェーンがあり、我々の仕事の一環として、それは特定の連邦行動項目であった項目の1つである」と述べた。 

 まだ新型コロナのワクチンはないが、抗ウイルス薬のレムデシビル(Remdesvir)などのいくつかの薬が役立つことが示されている。

   Remdesvirの化学構造式

しかし、ハント大臣は、連邦政府がレムデシビルまたはその他の薬物を備蓄していることは示唆していない。
医薬品の備蓄の最後の注目度の高い使用例は、2009年の豚インフルエンザのパンデミック中に発生した。約2900万豪ドル(約19億7,200万円)相当の900,000投与数以上の抗ウイルス薬が配備され、また210万個の個人用保護具も配布された。

(2) 今、何が不足しているか?
 COVID-19の脅威により中国の工場は閉鎖されたままであるため、専門家はサプライチェーンのギャップについて懸念を表明している。
 世界保健機関(WHO)によると、中国は医薬品有効成分の世界生産量の約20%を占めている。しかし、一部の専門家はその数字に異議を唱え、主要な医薬品成分を構成する化学成分に「グローバルな締め技」を持っていると中国を解説している。
 UNSWのグローバル・バイオセキュリティ担当教授(UNSW global biosecurity professor)のレイナ・マッキンタイア(Raina MacIntyre)は、オーストラリアが一般大衆の医療機器や医薬品の供給に「影響を与える」と述べた。

 すなわち、「我々はジャストインタイムの経済があり、数ヶ月も数か月も続ける巨大な備蓄がない。患者が不足の影響を受ける可能性があり、中国でのみ製造される非常に特殊な薬があるかもしれない。しかし、中国は徐々に工場を開放し、通常どおり事業に復帰しようとしている」と語った。

 また、オーストラリア医師会会長のトニー・バートン(Tony Bartone)は、特定の薬やマスクが入手できないという「報告」があり、重要な供給源の1つは明らかに中国の製造部門であり、明らかに彼らは物流供給に関する独自の問題に直面している」と語った。

 

 2月28日、一般開業医王立オーストラリアカレッジ(Royal Australian College of GPs )のハリー・ネスポロン学長(Harry Nespolon)は、一般開業医(GP)がCOVID-19を持っている可能性のある人々を安全に評価できるように、ゴーグルや保護スーツを含むより多くの保護具を緊急に必要としていると語った。
 

 今週、オーストラリアではウイルスが最初に明るみに出たときの以前のパニック購入に続いて、今週、マスクの購入に走る人々の報告がすでに出ている。

(3) 国家医療備蓄にはこれらの他に何があるか?
 過去15年間で、NMSへの総投資額は約9億豪ドル(約612億円)になった。保健省によると、備蓄の価値の約80%は、タミフルやリレンザなどの抗ウイルス薬を含む医薬品に拘束されている。

 NMSについてオンラインで公開されている数少ない文書の1つである「2014年の会計検査院の報告書(The Auditor-General Audit Report「 No.53 2013–14 Performance Audit Management of the National Medical Stockpile」(全116頁))は、「抗ウイルス薬が通常7〜10年間続いたため、ほとんどの薬物を廃棄しなければならなかったため、NMSの「かなりの費用」が発生した。また、緊急時には、オーストラリアの医薬品供給システムの他の場所では入手できない「高度に専門化された薬物」の限られた供給を保持している。2014年には、「A型インフルエンザのパンデミックへの対応」を含む、14%の品目が化学的、生物学的、放射線および核の防衛に関連している」と述べている。

2. オーストラリア国家医療備蓄(National Medical Stockpile)システムの概要と最近時の改革内容
(1)保健省のサイトからNMS(以下、備蓄(Stockpile)という)の部分を引用、仮訳する。

 自然の原因やテロ活動から発生する可能性のある公衆衛生の緊急事態への国家的対応に使用するための医薬品、ワクチン、解毒剤および医療保護具の国家レベルの戦略的備蓄である。 潜在的なグローバルおよび国内需要とサービス提供の圧力が高い時期にオーストラリアの自給レベルを高めるため、各医薬品、ワクチン等備蓄品が保管されている。

 この備蓄品システムは、サービス提供の継続性をサポートするために、州および準州の保健当局が保有する薬物および保護具の保有を補完することを目的としている。また、この 備蓄品システムは、オーストラリアの医薬品供給システム内の他の場所では利用できない可能性のある緊急時に、高度に専門化された薬剤の限られた供給も保持している

 オーストラリアの保健大臣およびオーストラリア主席医務官(Chief Medical Officer of Australia)は、州または準州当局からの要請に応じて備蓄品の配備を承認する権限を持つ。 オーストラリア保健大臣諮問評議会(AHMAC)のオーストラリア健康保護主任委員会(AHPPC)は、より広範な健康緊急事態対応の取り決めの中で、備蓄品の管理を検討する上で重要な助言的役割を果たす。

 この国家備蓄品はセキュリティ上の理由から、備蓄品の内容に関する具体的な詳細は公開されていないが、オーストラリア国内のさまざまな戦略的安全な場所に保管されている。

(2) オーストラリアの国家医療備蓄の改革内容
 2014年5月13日、オーストラリア政府はオーストラリアの健康保護予算措置の強化の一環として、国家医療備蓄の改革活動のために4年間で1,540万ドル(約10億7846万円)の資金を提供すると発表した。

 同改革の議題には以下の内容が含まれる。
① 役割と責任を修正し、備蓄在庫への緊急アクセスに関する事前に合意されたルールを決定するため、連邦、州および準州の間の新しい備蓄協定の交渉。
② 緊急時のオペレーショナルリスクとロジスティック要件を削減するために、最前線のヘルスサービスを使用して在庫の少量の予備を事前に配置することを含む配置の変更。
③ 部門の戦略的指揮の下での備蓄品の日々の管理のアウトソーシングを含む、2015-16年の運用の「プライム・ベンダー」モデルへの移行。
④ 在庫と機能に関するより定期的な報告を含む、ストックパイルの新しい4年の戦略的計画サイクルの実施。
⑤ 在庫ローテーションの広範な適用および在庫手配の購入権を含む、新しい在庫供給手配の試験的実施(費用効果が高く、リスクを十分に考慮した場合)。

 この改革は、無駄と重複を削減し、緊急事態での赤字を削減し、国家備蓄協定の費用対効果を改善するものである。

2. わが国の国家備蓄についての取り組むべき課題
 わが国の国家医療備蓄に関する情報は極めて少ない。食料品の備蓄問題、すなわち南海トラフ問題などを抱えるわが国の全体としての国家備蓄の在り方につき 内閣や関係省庁がどこまで手当しているかにつき、調べてみた。限られた時間での調査であるが、専門家によるさらなる議論を期待する。また、筆者においても海外比較を試みたいと考える。

(1) 首相官邸サイトの防災特集
読んで気が付かれると思うが、備蓄問題に関する内容提起は全くない。

(2)災害医療における医薬品の備蓄と供給に関するレポート例
杏林大学医学部付属病院 薬剤部 若 林  進「災害医療における医薬品の備蓄と供給」が参考になる。 

以下の(3),(4)についてはオーストラリアのNMSのレベルに該当する記述は皆無である。
(3) 厚生労働省医政局指導課「災害医療について」

(4) 厚生労働省防災業務計画

  一方、食料の備蓄はどうであろうか。農林水産省の「わが国の農産物備蓄の状況(平成30年度」)は以下のとおりである。この内容も極めて心もとないといえる。

 この備蓄問題は改めて取り上げたい。

(3月4日16時に追記)
 なお、3月4日の朝日新聞デジタル版記事を抜粋する。「政府は3月4日午前の参院予算委員会理事会で、国が保有するマスク数を報告した。総数は743万1300枚とする一方、民間に放出できる枚数は「調査中」とした。政府は新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な北海道にマスク400万枚を配る方針だが、全国でも品薄の状態が続いている。
 参院予算委理事会で、内閣官房が報告した。2日時点の総数で、新型インフルエンザの発生に備えて各府省庁が保有していたものや、日常業務で使用するためのものが含まれている。担当者は「総数は日々変動する」としたうえで、「民間にどのくらい出せるかは現在調査中だ」と説明した。
 また、厚生労働省は全国の検疫所でマスク約18万8千枚、防護服約2万着を保有していると報告。このほか、クルーズ船対応のためにマスク約9万1千枚、防護服約2万3千着を新たに調達したという。(鬼原民幸)」

 

**************************************************************************

(筆者注)ダブリン大学ブレンダン・マーフィー教授は、オーストラリア政府の最高医療責任者であり、首相と保健省の主要な医学顧問である。また、保健省の健康保護局と保健労働部の直接的な責任も負っている。 彼は参加している多くの委員会の議長や共同議長を務め、また、国際癌研究機関(IARC)運営委員会のオーストラリアの代表委員であり、世界保健総会でオーストラリアを代表している。

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11年前(2009年)に世界的にパンデミックとなった新型インフルエンザA(H1N1)発生時のわが国の反省はどうなったのか?(新型コロナウイルス対応:その1)

2020-03-01 09:28:58 | 海外の医療最前線

 新型コロナウィルス感染症が世界的かつ急速に拡散が進む中で、わが国政府をはじめ関係機関の対応は極めて遅々とした内容で、さらには在宅勤務、全国一斉の休校措置による混乱、また流通面ではマスクやトイレットペーパーの店頭からの消滅現象など上げれば切りがない。

 ところで、筆者は2009年6月以降の新型インフルエンザA(H1N1)のパンデミック時に米国や海外関係機関の取り組み内容を専門外ではあるが、できる限りフォローすべく、本ブログで取り上げた(その関係もあり、アクセス数が2月中旬以降、急増している)。

 そこで見られた注目すべき点をピックアップすると、例えば、1)米国では連邦議会調査局(CRS)は2009年10月29日に「2009年新型インフルエンザに関する主な法的問題の概要報告(CRS報告7-5700)」を公表(筆者注1)した。


  その他、筆者ブログでは、2) WHO事務局長マーガレット・チャン氏が新型インフルエンザ大流行について再度の警告、3)米国の新型インフルエンザの第二波への準備状況やワクチン開発の最新動向、4)海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向や新たな研究・開発への取組み、5)WHOの第3回国際保健規則緊急委員会の動向、6)EUのおける新型インフルエンザA(H1N1)の疫学面の研究動向等を取り上げた。

 なお、特記すべきは3)である。記憶の良い方は覚えておられるであろうが、新型インフルエンザA(H1N1)の世界レベルの拡散は約半年続いたのである。その筆者ブログ連載の最終回(全16回連載)は2009年11月24日の最終回の前文で「わが国の優先者への新型インフルエンザ・ワクチン接種が11月から始まり、一部では死亡事例の報告が聞かれるが(当時の厚生労働省の発表では死者198人(死亡率0.15))、前倒しスケジュールも発表されるなど、具体的な対応は進んでいる。」(以下は略す)と述べている。

 特に、わが国の死者数は本年2月28日現在で11名(クルーズ6名、国内5名)であり、H1N1の時と比較して決して致死率が低いとは言えないきわめて危険な肺炎であることを念頭に置き、かつ長期戦を覚悟で取り組まざるを得ない点を、政府・関係機関だけでなく国民も理解すべきである。

 今回の新型コロナウィルスの世界的拡散について、米国疾病対策センター(CDC)はほぼ毎日更新しているサイト「Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Situation Summary」(筆者注2)で取り上げるとともに、検査キットの開発やワクチン開発動向を積極的に行っている。

 今回のブログは、前段で2009年に筆者が取り上げたブログのテーマに即してリンクを張った。なお、時間の関係で各ブログのリンクは100%メンテナンスできていない。時間を見てメンテナンスを行う予定ではいる。また。後段でCDCの「Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Situation Summary」の重要項目を仮訳する。

 なお、2009年の時と同様に、今後とも筆者の理解できる範囲で海外の関連する動き等を連載でフォローアップしたいと考える。

1.2009年6月以降の新型インフルエンザA(H1N1)のパンデミック時に米国や海外関係機関の取組み内容
(1) 連邦議会調査局(CRS)の 2009年10月29日に「2009年新型インフルエンザに関する主な法的問題の概要報告(CRS報告7-5700)」(その1)同(その2完)

(2)米国の新型インフルエンザA(H1N1)の第二波への準備状況とワクチン開発の最新動向(その1)同(その2完)

(3) 海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(その1)同(その2)同(その3)同(その4)同(その5)同(その6)同(その7)同(その8)同(その9)同(その10)同(その11)同(その12-1)同(その12-2)同(その13)同(その14)海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな課題などへの疫学・臨床戦略(その15)同(その16完)


(4) WHO事務局長マーガレット・チャン氏が新型インフルエンザ大流行について再度の警告(その1)同(その2完)

(5) WHOの第3回国際保健規則緊急委員会の動向

(6) EUのおける新型インフルエンザA(H1N1)の疫学面の研究動向

2.CDCの「Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Situation Summary」の重要項目(仮訳)
 CDC(筆者注2-2)の各研究所は、以下を含むCOVID-19対応をサポートしている。
CDC laboratories have supported the COVID-19 response, including:

 CDCは、臨床検体からの呼吸サンプル中のCOVID-19を診断できるリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(real time Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction (rRT-PCR) )(筆者注3)テストを開発した。 1月24日に、CDCはこのテストの試験プロトコルを公開した。 

 2月26日に、CDCと保健福祉省・食品医薬品局(FDA)は、オリジナルのCDCテストキットの3つのコンポーネントのうち2つを使用してCOVID-19を引き起こすウイルスを検出するプロトコルを開発した。 これにより、少なくとも40の公衆衛生研究所がテストを開始できるようになる。
 CDCは、シーケンス(sequencing) (筆者注4)が完成したときに、米国で報告された症例からGenBank(筆者注5)にウイルスのゲノム全体をアップロードした。
 CDCは、細胞培養(cell culture)でCOVID-19ウイルスを増殖させた。これは、追加の遺伝的特性評価を含むさらなる研究に必要であり、 細胞増殖ウイルスは国立衛生研究所(NIH)のBEIリソースリポジトリ(倉庫)( Biodefense and Emerging Infections Research Resources Repository (BEI Resources) に送られた。

3.CDC の新型コロナウィルスの検査キットの使用開始に関する米国のメデイア情報
 CNNによると、CDCは新型コロナウイルスに関し、感染を診断する検査キットを開発し、国内外の検査機関2月6日に配布を始めたと発表した。検査キットは通常のインフルエンザの診断で使用する機器で利用でき、4時間で結果が出ると報じた。
 しかし、2月13日CNNは新型肺炎の検査キットに不具合、作り直しへといった情報を報じている。

4.新型コロナウィルスの治療薬の開発動向
 わが国では、エボラウイルス治療薬アビガン錠を開発した富士フィルム富山化学の例が取り上げられている。

 一方、米国ではどうであろうか。
米国衛生研究所(NIH)に属する米国アレルギー・感染症研究所(NIAID)は、新型コロナウイルス感染の治療薬としての効果と安全性を調べるため、抗ウイルス薬の「レムデシビル(Remdesvir)」のランダム化二重盲検比較試験を、ネブラスカ大学医療センターで開始した。 

 現時点では新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)の治療薬として、米食品医薬品局(FDA)承認を受けた薬はなく、COVID-19の治療に関する臨床試験はこれが初めて。 
 レムデシビルは、米バイオ医薬品大手のギリアド・サイエンシズにより開発された治験薬。これまでエボラ出血熱の治療で試験的に使用されたほか、動物実験ではコロナウイルスが原因の重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)で有望な試験結果を示している。Yahoo Japan news~抜粋
 より詳細は、NIHリリース「NIH clinical trial of remdesivir to treat COVID-19 begins Study enrolling hospitalized adults with COVID-19 in Nebraska.」等を参照されたい。
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(筆者注1)  米国連邦議会調査局(CRS)が新型インフルエンザにかかる主要法律問題の概括報告の具体的な内容は2010年2月1日の筆者ブログで確認されたいが、わが国の政府、関係機関、研究機関等は以下掲げる項目につき11年前の大混乱の実態を踏まえ整理されているはずと考えるのは筆者のみであろうか。
[目次]
1.序論
2.非常時の措置 
(1).非常時担当政府機関 
・公衆衛生担当局 
・国家非常時事態宣言 
・スタッフォー法に基づく宣言
・社会保障法1135条の国民の受診権放棄または制限措置
・緊急使用認可(Emergency Use Authorizations(承認していない対策のための)
(2)国際保健規則(International Health Regulations:IHR)
・IHRの概観
・「国際的懸念発生時における公衆衛生緊急事態」宣言 
(3)患者の隔離と孤立措置担当の当局
・連邦機関
・連邦と州の調整機関
・連邦規則案
(4)国境入国問題 
・感染した在留外国人の非容認措置
・国民や在留外国人の隔離措置 
・国境の封鎖 
(5)航空と旅行制限
・ 航空会社の緊急時対策ポリシー 
・公衆衛生上の「国境または航空禁止者リスト(“Do Not Board” List)」
・連邦領空局(Federal Airspace Authority)
(7)学校閉鎖
3.ワクチン接種(Vaccinations)
(1)接種実施の背景
(2)ワクチンの配分
・概観
・2009年に先立つ選別的連邦の活動
・インフルエンザA(H1N1)緊急事態後の連邦の活動
・法的問題
(3)強制的ワクチン接種
・歴史と先例
・医療機関受持者と強制的ワクチン接種
・公衆衛生緊急事態時のワクチン接種命令
・モデル州非常事態における保健管理法(The Model State Emergency Health Powers Act)
・連邦政府の役割
4.公民権(Civil Rights)
(1)はじめに
(2)適正手続(Due Process)および保護の平等(Equal Protection)に関する憲法上の権利
(3)連邦無差別保証法(Federal Nondiscrimination Laws)
 ・「1973年リハビリテーション法(Rehabilitation Act)」504条(筆者注8)
 ・「1990年米国障害者法(Americans with Disabilities Act of 1990 :ADA)」
 ・「1986年航空バリアフリー法(Air Carrier Access Act )」
5.民事損害賠償責任問題
(1)「2005年災害危機管理および緊急事態準備法(Public Readiness and 
Emergency Preparedness Act :PREP Act)
(2)一般ボランティアおよび医療専門家ボランティアの民事責任問題
・「1997年ボランティア保護法(VVolunteer Protection Act of 1997)」
・緊急事態時における責任制限
・州等における災害相互応援協定(Emergency Mutual Aid Agreements)
6.雇用問題
(1)はじめに
(2)公共政策に違反する不当解雇(Wrongful Discharge)
(3) 「1993年介護休暇法(Family and Medical Leave Act of 1993:FMLA)」
(4)従業員保護法に関する州および連邦法

(筆者注2) COVID-19の世界的感染情報はジョンホプキンス大学のリアルタイムコロナのブレイク状況リアルタイム地図も参考になる。
Johns Hopkins Center for Systems Science and Engineering
Mapping 2019-nCoV
By Lauren Gardner, January 23, 2020

(筆者注2-2) CDCには1,700人を超える科学者、医師等がおり、アトランタからスポケーン、フォートコリンズ、シンシナティ、ピッツバーグ、モーガンタウン、アンカレッジ、サンファンに至るまで、米国中の200以上の最先端の研究所で働いている。 CDCの研究所は、その機能と専門知識が多様ですが、重要な役割を果たしアメリカの国民の生活と健康を24時間365日保護するという1つのミッションによって統一されている。(CDC laboratoriesのHP仮訳)

職種:医師(感染症専門医)、歯科医師、インフェクションコントロールドクター、薬剤師(感染制御専門薬剤師)、獣医師、看護師(感染症対策看護師)、臨床検査技師(感染制御認定臨床微生物検査技師)、診療放射線技師、臨床工学技士、歯科衛生士(感染管理歯科衛生士(感染制御歯科衛生士))、滅菌技士(第一種・第二種)、歯科技工士、農学者、生化学者、遺伝子学者、病理学者、法医学者、疫学者、気象学者、統計学者、理学者、微生物学者、細菌学者、事務職、プログラマ、官僚、軍人など多種多様。本部7,000人、支部8,500人(Wikipedia~抜粋 )

CDCの2020年予算額は65億9,400万ドル(約7,253億4,000万円)

(筆者注3) 細胞内において、遺伝情報であるDNAからタンパク質が合成される過程では、まずRNAと呼ばれるDNA配列のコピーが作製され(転写)、このRNAを基にタンパク質が合成される。DNAを大量に複製するにはPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)が汎用されるが(詳細はPCRを参照)、PCRではRNAを直接複製することができない。そこで、一度RNAからDNAへと変換する逆転写と呼ばれる反応を行い、得られたDNAを鋳型としてPCRを行うことで、RNAをDNAとして大量に複製する。このRNAからDNAへの逆転写反応、それに続くPCRという一連の過程を、RT-PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)と呼ぶ。本手法により、細胞内でどのような機能を持つRNAがどのくらい発現しているのかを調べたり、rRNAを標的として高感度で細菌を検出したりすることができるようになった。

(筆者注4) シークエンシング◆DNAを構成しているヌクレオチドの塩基配列の決定(gene sequencing)、またはタンパク質のポリペプチド鎖内のアミノ酸配列の決定(protein sequencing)を行う手続き。(英辞郎から抜粋)

(筆者注5) GenBank(ジェンバンク)は、米国立生物工学情報センター(NCBI; National Center for Biotechnology Information)が提供している、塩基配列データを蓄積・提供している世界的な公共の塩基配列データベースである。(Wikipediaから一部抜粋 )

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