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情報セキュリティ、消費者保護、電子政府の課題等社会施策を国際的視野に基づき提言。米国等海外在住日本人に好評。

GAFAの規制強化法案や反対する通信品位法(Communications Decency Act)第230条の擁護派の動向,議会下院司法小委員会のGAFAによる独占禁止法問題公聴会の模様

2020-07-30 20:15:00 | 国家の内部統制

 7月28日、筆者の手元にTechCrunchのニュース「Twitter restricts Donald Trump Jr.’s misinformation 」が届いた。このニュースにつきNHKは29日の昼のニュースでトランプ大統領自身がTwitterアカウントの一時凍結と解説(筆者注1)したが、もともと虚偽情報をツイートしたのは息子でトランプ大統領はretweet(他人のtweetのコピーして再投稿)責任を問われたのみである。

 初めに、この問題を正確に紹介するのが今回のブログの第一目的である。しかし問題は、それだけにとどまらないのである。

 筆者が本ブログの連載で取り上げた大統領選挙がらみのGAFAバッシングが進み、一方で連邦議会や大統領等に対抗するGAFAの活動も激しくなっている。

  今回筆者が取り上げるのは、米国の新型インフルエンザ感染問題の陰に隠れた問題として、(1) Trump Jr.’s misinformation retweetの事実関係の解説、(2)大統領行政命令に始まる独占的プラットフォーム(GAFA)の規制強化法案の上程の動きと具体的な法案の概要、(3)これとは反対するグループの運動(通信品位法(Communications Decency Act)第230条の擁護派)の活動の中身、(4)連邦議会下院司法小委員会が長年取り組んできたGAFAによる独占禁止法(anti-trust)問題と7月29日に開かれた公聴会の模様、(5)日本語版Twitterサイトの問題点などをフォローする点である。

 これらの問題自体、米国のビジネス界と政府や議会、大統領選挙の行方も極めて絡んで混乱しつつある現状を整理することと、さらに時間があれば筆者がなおFacebookやTwitterアカウントを作成・利用しない理由にも言及する。

1.大統領の息子(Donald John "Don" Trump Jr.)がコロナウイルスのパンデミックについて虚偽的で潜在的に生命にかかわると主張する動画を共有した後、Twitterはドナルド・トランプJr.のアカウントを一時的に凍結

  TechCrunchのニュースを仮訳する。なお、Financial Times 記事「Twitter、Covid-19ビデオでトランプJr.のアカウントを凍結:ソーシャルメディアプラットフォームは、大統領の息子がウイルスとヒドロキシクロロキン(Hydroxychloroquine)についての「誤報」を宣伝したと述べた」はTechCrunchとほぼ内容なので略す。

Donald Trump Jr 氏

 トランプ大統領の息子がコロナウイルスのパンデミックについて虚偽的で潜在的に生命にかかわる主張をする動画を共有した後、Twitterはドナルド・トランプJr.のアカウントを一時的に凍結した。

 ドナルド・トランプJr.のアカウントは、バイラル動画へのリンクを共有した後、7月28日の朝に制限された。みんなが一緒に走っているような物語とはとても異なるという理由である。

 「対象となるツイートは、COVID-19の誤報ポリシーに違反していた」とTwitterの広報担当者はTechCrunchに語った。同社によると、ツイートはCOVID-19の誤った情報に対する規則に違反しているため、削除する必要があるという。トランプのアカウントは停止されていませんが、その機能は12時間制限される。(筆者注2)

 このアカウントは完全に停止されていない。スクリーンショットによると、ツイートはルールに違反しているため(COVID-19の誤った情報を共有するため)、アカウントの機能は12時間制限されているため、削除する必要がある。

 この動画はブライトバート・ニュース(Breitbart News) (筆者注3)で広く宣伝され、「アメリカの最前線の医師」と呼ばれる白衣を着た多くの人々が出演している。このビデオでは、個人がさまざまな偽りの危険な主張を押し付けている。これには、マスクはウイルスの蔓延を防止しないという主張や、ウイルスの治療に効果的であると証明されていない薬物であるヒドロキシクロロキンのさらに別の防御策等が含まれる。

 ビデオの中心人物の1人であるStella Immanuel 氏(筆者注4)は、過去に異様な非科学的な主張を行ってきたと、Daily BeastのWill Sommerは報告している。これらの主張には、「エイリアンDNA」が現在一部の医療で使用されていること、婦人科の問題の一部は悪魔のような「霊の夫」や「霊の妻」とのセックスの結果であるとの主張が含まれている。

Donald Trump Jr 氏

 トランプ大統領は7月27日の夜にツイートでビデオを複数回共有したが、今では彼のタイムラインで「利用できなくなった」と表示されている。削除されたツイートは、ヒドロキシクロロキンを「ゴールドスタンダード」と「ゲームチェンジャー」として擁護する残りのリツイートの間に挟まれている。リツイートでは、ホワイトハウスのパンデミック・アドバイザーであるSアンソニー・スティーヴン・ファウチ(Anthony Stephen Fauci )博士 (筆者5)の主張の信頼性をも攻撃している。

Anthony Stephen Fauci 博士 

 FacebookとYouTubeは、バイラル・ビデオ(Viral Video)(筆者注5-2)のインスタンスの誤りの修正にも取り組んでいる。 Facebookでは、1400万回を超える視聴回数を記録し、同社が削除するための措置を講じる前に、プラットフォームで最も人気のある投稿の1つになった。(筆者から言わせれば、このこと自体が異常である)。

2.大統領行政命令に始まる米国の独占的プラットフォーム(GAFA)の規制強化法案の上程の動きと具体的な法案の概要

 2020.6.24 The Verge記事「The PACT Act would force platforms to disclose shadowbans and demonetizations:The bill takes a ‘scalpel’ to Section 230」が比較的に詳しく解説しているので引用し、仮訳する。また、2020.6.24 The Verge記事「Lots of politicians hate Section 230 — but they can’t agree on why」は、これまでの品位法第230条についての議論や両大統領候補の厳しい問題指摘などについて詳しく解説しているが時間の関係で今回の解説からは略す。

 新しい上院超党派の法案(Pact Act)はFacebookやYouTubeなどのインターネット・プラットフォームが享受すべき責任の明確化・保護を目的としている。

 6月24日にブライアン・シャーツ上院議員(Brian Schatz (民主党:ハワイ州)ジョン・スーン上院議員John Randolph Thune (共和党:サウスダコタ州)によって上程された「プラットフォームの説明責任および消費者への透明性保証(Platform Accountability and Consumer Transparency (PACT) Act ):法案では、FacebookやGoogleなどのオンライン・プラットフォームが義務的開示によりコンテンツ管理の慣行を幅広い範囲で明らかにする必要がある。また、この法案は「通信品位法(Communications Decency Act)」第230条に変更を加えることにより、これらの企業に違法なコンテンツを主催する責任を負わせるための新たな道を開くであろう。

Brian Emanuel Schatz (D-HI)氏

John Randolph Thune(R-SD)氏

 この法案は、プラットフォームが悪いコンテンツを削除することを奨励する措置と、これらのモデレーションシステムを抑制しておく措置を組み合わせたものであり、プラットフォームの規制に関する進行中の議論の両側からの支持を期待されている。(2020.6.24 theverge.com記事)

 法案が承認された場合、法案は、大規模な技術プラットフォームに、ユーザーが簡単にアクセスできる方法でコンテンツを管理する方法を説明し、1)削除された、2)運用が廃止された、益化されていない、または3)アルゴリズムによって範囲が制限されたコンテンツに関する分散統計を含む四半期レポートをリリースすることを強制する。

  次に、プラットフォームは、レポートを処理し、モデレーションの決定を14日以内に説明する正式な苦情システムを公表する必要がある。その後、ユーザーは、Facebookなどのプラットフォームにすでに存在する社内の報告システム内で、これらのモデレーションの決定に対して異議を申し立てることができる。

 通信品位法第230条の改正を目的としたその他の法案では、ユーザーが特定のコンテンツの緩和決定を政府、主に連邦取引委員会に報告することができるとする。 PACT法案はこれらの提案に直接反対しており、モデレートレポートを内部に残すことができる。

  2019年、共和党と民主党の両方が誤った情報に対処する手段として、または保守派が右寄りの投稿の偏見(bias)または「シャドウバン(shadowbanning)」(筆者注6)と考えているものとして230条を狙っている。ドナルド・トランプ大統領は6月、通信品位法第230条の保護措置を撤廃する大統領命令に署名した。また、 民主党の大統領候補であるジョー・バイデンも、230条を全面的に廃止するよう求めている。

 「我々のアプローチは削岩機ではなく外科用メスである」とシャ―ツ議員は6月24日の記者団に電話で語った。

 同法案は正式なモデレーション行動に加えて、法廷で命じられた違法なコンテンツを24時間以内に削除することを大規模なプラットフォームに要求する方法で、品位法第230条を修正する。 また、現在は第230条により制限されている連邦規制当局からの民事訴訟も提起される。州の司法長官は、プラットフォームに対して連邦民法を執行する権限(ability to enforce federal civil law against platforms)も与えられる。(筆者注7) これらのことから、予想される結果は、予測できない結果を伴う大規模なハイテク企業に対する新しい訴訟の洪水になるであろう。

 また、シャーツ氏は6月24日に声明で次のとおり述べた。「特定のインターネット利用を統制する品位法第230条は改革の機が熟しているという超党派のコンセンサスがある。インターネットは、比較的短い歴史の中で管理されてきた軽いタッチアプローチのおかげで繁栄した。 品位法第230条の改革に関しても同じアプローチを使用することで、プラットフォームのユーザーを確実に保護すると同時に、これら企業に責任を持たせることができる。」

3.通信品位法(Communications Decency Act)第230条の擁護派)の廃止に反対するグループの運動の中身

 筆者も間接的に参加している“Lawfare blog”は、米国の国家安全保障問題に特化したブログであり、Brokings Instituteと協力してLawfare Instituteが発刊している。ドナルド・トランプ大統領の特集記事で注目されている。

 同グループは、広くこの問題を議論すべくイエールロースクール・情報社会プロジェクト「 Everything You Need to Know About Section 230 in 5 Hours」webinarオンライン会議7/29⑭を約5時間にわたり行った。

 その要旨を同会議のmodurator兼準備委員であるケイト・クロニック(Kate Klonick :Assistant Professor at Law at St. John's University Law School, an Affiliate Fellow at the Information Society Project at Yale Law School, and Future Tense Fellow at New America. H)のレポートから引用、仮訳する。なおLawfare blogでは

「What’s Next for Section 230? A Roundup of Proposals」(著者は弁護士のZoe Bedell氏とJohn Major氏)と題するレポートを公開している。併読されるとより理解が深まろう。

5月28日オンライン検閲防止に関するトランプ大統領の大統領行政命令(後方はバー司法長官)

 通信品位法(Communications Decency Act)第230条は、最近ニュースや政治論争で頻繁に取り上げられている。過去数か月だけみても、「インターネットを作り上げた法律」は、5月28日オンライン検閲防止に関するトランプ大統領の大統領行政命令から、ジョシュ・ホーリー上院議員および民主党の大統領候補に指名されたジョー・バイデン氏が第230条を無効とすることを求める声に及ぶ等攻撃に直面している。

 しかし、第230条は実際には何と言っているか?あらゆる論争にもかかわらず、その内容に関する法律の批評家の間には一貫性の著しい欠如がある。第230条は、さまざまな理由により、さまざまな人々にとってさまざまなことを意味しているように思われる。

 この問題に対処するために、私はイェール情報社会プロジェクトが主催する5つの90分のウェビナーの1週間のランチシリーズを開催した。このシリーズは、1)品位法第230条が何を表しているのか、下書きの意味、現在の意味、インターネットの有無を問わず、インターネットがどのように見えるのかを正確に理解している専門家から、この会話をより明確にすることを目的としている。実際には、これは、その週の議論が制定法の歴史とそれが作成された背景から、その解釈と実施を通じて移り、現在の議論と「26語インターネットが生まれた」そして今、興味のある読者のためにパネルのビデオが下にあります。

 これらのパネルの一部の専門家は法学者、弁護士であるが、そうでない人もいる。ハイテク企業の内部で働いている人もいれば、それらの企業に対して訴訟を起こしている人もいる。彼らは保守的でかつリベラルである。彼らは政府機関や活動家グループの出身である。彼らは第230条の改革のために戦い、その改革に反抗した。これらの問題についての彼らの多様で知識のある議論は、議員、ジャーナリスト、連邦機関、そして一般の人々にとって今後の参照ポイントとなるはずである。

(1)最初のパネル「品位法第230条の歴史を振り返る」

 会議の始まりは、米国海軍兵学校のサイバーセキュリティ法の助教授であり、第230条の歴史の「インターネットを生み出した26の言葉」の著者であるジェフ・コセフ(Jeff Kosseff, Assistant Professor of Cybersecurity Law at the United States Naval Academy)である。同法律が起草された歴史的背景の要約、およびその立法歴史に関する詳細を提供した。

Jeff Kosseff氏

 会議はその後、サンタクララ大学ロースクール教授であるエリック・ゴールドマン(Eric Goldman, Professor of Law at Santa Clara University School of Law)に向けられた。彼は、法廷での品位法第230条の取り扱いをブログで文書化している。ゴールドマンは、ゼラン対AOL(Zeran v. AOL)とリノ対ACLU(Reno v. ACLU)での重要な決定を含む、通信品位法に関する初期の訴訟について話した。

Eric Goldman氏

 マイアミ大学ロースクールの教授であり、第230条の免責から生じた危害に関するいくつかの記事の著者であるメアリー・アンネ・フランクス(Mary Anne Franks, professor of law at University of Miami School of Law)は、第230条が被害者を犠牲にしてサイトに提供する保護についての会話を締めくくった。

Mary Anne Franks氏

(2)二番目のパネル「品位法第230条が電気通信とFCC等監督機関に何を意味するか」

 コロラド大学ロースクールの実務指導教授(clinical  professor)(筆者注7-2)であり、電気通信法の専門家であるブレイクリード(Blake Reid, clinical professor at University of Colorado Law School)は、第230条がテレコムに影響を与える可能性について話し合って会話を開始した。

Blake Reid氏

 フォーダム大学ロースクールの教授であり、第230条の広範な適用を批判しているオリビエ・シルヴァン(, professor of law at Fordham University School of Law)は、連邦通信委員会を第230条の議論に引き入れるトランプ大統領の命令の試みを検討した。 最悪の場合でも、実際のインターネットおよび通信の問題から見当違いの注意散漫になると指摘した。

Olivier Sylvain氏

 バークレー・ロースクールの法学助教授であるテハス・ナルタニア(Tejas Narechania, assistant professor of law at Berkeley Law School)は、規制がなければインターネットが発展し開花した人気のある「ストーリー」はやや不完全であると主張した。 実際、ナルタニアは、インターネットを規制し、規制に反対するために第230条が発動されたと指摘した。

(3)3番目のパネルは「品位法第230条の存在が実際にインターネットプラットフォームの弁護士や政策立案者に意味するもの」

  ツイッターで法務顧問、グーグルで法務副顧問を務めたアレクサンダー・マクギリヴレイ(Alexander MacGillivray, who has served as general counsel at Twitter and deputy general counsel at Google)は、両社での彼の初期の役割と、第230条が必要なコンテンツの量に名誉毀損の申し立てに基づいてダウンさせる「緊急対策(backstop)」をどのように提供したかを説明することで会話を始めた。

Alexander MacGillivray氏

 2008年から2013年までFacebookでコンテンツ・ポリシーの責任者を務め、現在もFacebookのコミュニティ標準として機能している多くのルールを書いたデイブ・ウィルナー(Dave Willner)は、同意した。 スタンフォードのサイバーポリシーセンターのプラットフォーム規制に関するプログラムのディレクターであるダフネケラーと、MacGillivrayのかつてのGoogleの同僚は、良いコンテンツと悪いコンテンツのスパンの定義と削除の理解のためのソリューションを提供するための第230条の役割を強調するために声を上げた。

 今回のパネルは、聴衆からの質問と、信頼と安全の専門家、つまりフラグの付いたコンテンツの審査と削除に日々取り組む業界の労働者に対する第230条の役割についての議論で締めくくった。 同じく以前Facebookに勤めたシャーロット・ウィルナー(Dave Willner)は、間違ったコンテンツを誤って削除または残すことで誤って誤った場合に巨大な法的結果からコンテンツを保護することによってコンテンツを管理する個人を保護するためにセクション230がいかに重要であるかを強調するために参加した。

(4)4番目のパネル「歴史的な議論から現在の出来事:なぜ私たちは皆、第セクション230条ついて話しているのか?」

 「The Dispatch」の弁護士兼上級編集者であるデイビッド・フレンチ(David French:Senior editor of The Dispatch)は、最初にインターネットから悪質なコンテンツを削除するためのツールとして、現在はプラットフォームを強制する手段として、第230条との関与の歴史を政治的権利によって要約すること「政治的中立」から議論を始めた。フレンチは、オンラインでの嫌がらせに関する個人的な経験と、プラットフォームによって提供されている虐待を改善するためのツールがゆっくりと不完全ではあるがどのように使用できたかについても説明した。

 2008年から2013年までFacebookでコンテンツ・ポリシーの責任者を務め、現在もFacebookのコミュニティ標準として機能している多くのルールを書いたデイブ・ウィルナー(Dave Willner,)は、同意した。 スタンフォードのサイバーポリシーセンターのプラットフォーム規制に関するプログラムのディレクターであるダフネケラーと、MacGillivrayのかつてのGoogleの同僚は、良いコンテンツと悪いコンテンツのスパンの定義と削除の理解のためのソリューションを提供するための第230条の役割を強調するために声を上げた。

 今回のパネルは、聴衆からの質問と、信頼と安全の専門家、つまりフラグの付いたコンテンツの審査と削除に日々取り組む業界の労働者に対する第230条の役割についての議論で締めくくった。 同じく以前Facebookに勤めたシャーロット・ウィルナー(Dave Willner)は、間違ったコンテンツを誤って削除または残すことで誤って誤った場合に巨大な法的結果からコンテンツを保護することによってコンテンツを管理する個人を保護するためにセクション230がいかに重要であるかを強調するために参加した。

David French氏

 キャリー・ゴールドバーグ(弁護士、パートナーゴールドバーグPLLCの創設者(大手テクノロジー企業に対する訴訟原因を専門とする原告の法律事務所)は、第230条を削除しても、多くの恐れよりも劇的な影響ははるかに少ないと主張した。

Carrie Goldberg氏

 また、キャシー・ゲリス(Cathy Gellis, attorney and technology policy outside counsel,弁護士および社外の技術ポリシー)は、このような制限は存在するものの、第230条は、今日のインターネット環境において重要な新しいテクノロジー企業の育成において重要な役割を果たすことに同意した。 

司法省による現在の第230条の改正の現在の状況と現在の立法に向けた連邦議会は、インターネットをより良くするような真面目な、または現実的な変化に向けた取り組みではないことに全員が同意した。

(5)最後のパネル「第230条の現在から未来に移動し、次のように尋ねた。第230条がなければ、世界はどのように見えるであろうか」

 会議を始めるにあたり、ハーバード・ロースクールのサイバーロークリニックの弁護士であるケンドラ・アルバート(Kendra Albert, lawyer at Harvard Law School’s Cyberlaw Clinic)と、

Kendra Albert氏

 作家でセックスワーカーの擁護者であるローレライ・リー(Lorelei Lee, a writer and sex worker advocate)は、セックスワークの広告を組織またはホスティングするプラットフォームの第230条に基づく保護を危険にさらした法律であるSESTA / FOSTA(S.1693 - Stop Enabling Sex Traffickers Act of 2017)の影響について説明した。

  SESTA / FOSTAの支持者は、性的人身売買の広告の可能性があるサイトを保持するだろうと主張したが、アルバートとリーの両氏は、免疫の喪失が性的人身売買の問題を解決するのにほとんど役立たず、すでに存在するリスクコミュニティ問題をさらに疎外させるだけであったと述べた。

Cory Doctorow氏

 作家で活動家のコリー・ドクトロー(Cory Doctorow)は、著作権など、インターネット上の初期の改革の試みについて語った。その結果、検閲とマイノリティのコミュニティへの害が増加した。会話に再び参加したダフネ・ケラー(Daphne Keller)は、第230条の改正がグローバルな会話をどのように形作るか、ひいては米国が国際機関からどのように学ぶことができるかについてパネルに思い出させた。パネリストが論じたインターネットの主な闘争は、インターネットのプラスの効果を最大化しながら、人々が自分自身への害を最小化できるようにする緊張であり、ドクトローは「相互運用性」に対する「自立」のバランスツールとして組み立てるべきと主張した。

4.連邦議会下院が長年取り組んできたGAFAによる独占禁止法(anti-trust)問題と7月29日に開かれた公聴会の模様

(1) 2019.9.14 日本経済新聞「GAFA独禁法調査 米下院、内部資料の提出を要請」から一部抜粋する。

・・・10月14日までに書類提出を促す書簡を4社に送った。経営幹部のメール履歴のほか、反トラスト法に絡んで過去10年に司法省や米連邦取引委員会(FTC)に提出した書類、競合企業のリスト、組織図などを求めた。

 例えばグーグルに対しては、検索結果を決める計算手法やユーチューブなど過去の買収案件に関して、幹部が交わしたメールなどすべての情報のやり取りの開示を要求した。各子会社のあらゆる業績データや市場シェア、主要な顧客や競合相手も説明するよう促した。

 下院司法委は取得した書類をもとに(1)デジタル市場で競争上の問題が起きていないか(2)市場を支配する企業が競争を阻害する行為に関わっていないか(3)現行法で十分に対処できるか――などを調べる方針だ。・・・・下院司法委は6月に調査を始めた。7月に各社幹部を呼んで開いた公聴会では「フェイスブックがインスタグラムなど発展途上の企業を買収して競争を抑えているのではないか」などの懸念が議員から投げかけられた。・・・・

(2) 7月28日TechCrunch 日本語版「GAFAの全CEOが出席する米議会の反トラスト公聴会は東海岸時間7月29日に開催」から一部抜粋する。

 この公聴会は下院司法委員会反トラスト小委員会が2019年に発表し、数多くのテック界最大最強企業に対して進めているデジタル市場における反トラスト捜査(米国下院委員会リリースDigital Markets Investigation:

Antitrust Investigation of the Rise and Use of Market Power Online and the Adequacy of Existing Antitrust Laws and Current Enforcement Levels)の最終章である。下院委員会サイトでこれまでの経緯も確認できる。

「6月以降、当小委員会は少数のデジタルプラットフォームの支配状況、および既存の反トラスト法と執行方法の妥当性を調査してきた」と下院司法委員会のJerrold Nadler(ジェロルド・ナドラー)委員長と反トラスト法小委員会のDavid Cicilline(デビッド・シシリン)委員長は共同声明で語った。

「これらの企業が米国市民の生活で中心的役割を果たしている状況を踏まえると、各社のCEOが包み隠さず話すことは極めて重要だ。当初から述べてきたように、彼らの証言は我々がこの捜査を完了するために不可欠である。」

(3)7月29日の議会下院司法委員会反トラスト法小委員会での委員長の冒頭声明で、これまでの経緯と小委員会の問題意識を述べたものである。 

 一方、筆者が興味を持ったのはC-PAN(2020.7.29 C-SPAN3「Heads of Facebook, Amazon, Apple & Google Testify on Antitrust Law」の内容である。以下の画面で明らかなとおり、全5時間34分である。ただし、右欄のとおり各陳述の進捗に応じ必要な箇所のみを閲覧することもできる。

  この小委員会の模様はわが国もメデイアも報じ概要を報じているが、問題となる議会や大統領候補の今後の動きである。時期を見て詳しく紹介したい。

5.その他

 筆者は今回のブログで改めてTwitterの利用規約等を詳細に読んでみた。そこで見えたものは本格的なチェックがなされていないという点である。具体的に例示するが、別途Twitter社には連絡する予定である。

Twitterrルール

私たちは信頼、安全、尊重の環境づくりにコミットしています。

(ⅰ)攻撃的な行為、(ⅱ) 私的なメディア、(ⅲ) ヘイト行為、(ⅳ) 暴力の賛美、(ⅴ) 暴力的な過激派組織、(ⅵ) 自殺や自傷行為、(ⅶ) センシティブなコンテンツ、(ⅷ) なりすまし、(ⅸ) 個人情報

個人情報の中で「金融講座の詳細」という表現がある、この部分を英語版で見ると“financial account details”である。ただしくは「金融口座の詳細」である。

②もっと重要な問題は以下の点にある。

 Our range of enforcement options (この項目は重要なベンダー法的取り扱い、利用規制の内容を明示するものであるにもかかわらず、日本語訳がない。Twitter ルールは簡単な日本語訳はあるが、さらにその小項目である“Tweet-level enforcement”の内容説明は英語で読むしかない。筆者なりに一部仮訳する。

 当社はツイート・レベルで行動を起こし、間違いを犯してルールに違反した他の点では健全なアカウントに過度に過酷にならないようにする。ツイート・レベルで利用規制に関し、行動を起こす可能性のある方法としては、次のようなものがある。

(1) Limiting Tweet visibility:

(2) Requiring Tweet removal:

(3) Hiding a violating Tweet while awaiting its removal

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(筆者注1)トランプ大統領のTwitterは意図的なretweet により一時凍結されたという記事が7月29日の昼に以下のNHKニュースで流れた。この利用規約違反者はもともとトランプJr.である。米国メデイアは100%のこのような観点から記事を取りまとめていたのにNHKのみなぜ確認しなかったのか。

(筆者注2) Twitterの「Our range of enforcement options(日本語訳がない)」に基づき筆者が推測する利用凍結の根拠規定は以下の内容と思われる。(仮訳)

 アカウントを読み取り専用モードにする:他の点では正常なアカウントが虐待的なエピソードの最中にあると思われる場合、一時的にアカウントを読み取り専用にして、落ち着くまでコンテンツをツイート、リツイート、または「いいね」にする機能を制限する場合がある。 会員は自分のタイムラインを読むことができ、ダイレクトメッセージをフォロワーにのみ送信できる。

 アカウントが読み取り専用モードの場合、他のユーザーは引き続きアカウントを表示して操作できる。この強制措置の期間は、違反の性質により異なるが、12時間から7日間である。・・・

(筆者注3) ブライトバート・ニュース・ネットワーク(Breitbart News Network)は、アメリカ合衆国のオンラインニュースサイト。ラジオ放送(Breitbart News Daily)も行っている。政治的傾向は極右である。本社はカリフォルニア州ロサンゼルスにある。ニューヨーク・タイムズはブライトバート・ニュースを、フェイク・ニュースであり、ミソジスト(女性嫌悪)、外国人嫌悪、人種差別的なサイトであると批判している(Wikipedia から一部抜粋)

(筆者注4) Dr.Stella Immanueに関しては、BBCが特集記事を載せている。

(筆者注5) アンソニー・スティーヴン・ファウチ博士(Dr.Anthony Stephen Fauci)1940年12月24日生まれ )は、アメリカ合衆国の医師、免疫学者。 1984年からアメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)所長。2020年1月からは、米国における新型コロナウイルス・パンデミックに対処するホワイトハウス・コロナウイルス・タスクフォースの主要メンバーの一人として活躍している。 アメリカ国立衛生研究所(NIH)の医師として、50年以上にわたり様々な立場から公衆衛生に貢献してきた。科学者として、またNIHのNIAIDの責任者として、HIV/AIDS研究やその他免疫不全の研究に貢献してきた。ニューヨーク・タイムズ紙はファウチを「感染症に関する米国の第一人者」と呼んだ。(Wikipedia から一部抜粋。

(筆者注6) そのインターネットに対する検閲システムが強化されているが、そうした仕組みのひとつがシャドー・バンニング、いわば闇検閲だ。支配層にとって都合の悪い情報をインターネット上から消し去るのだが、その際、発信者であるユーザーがその事実に気づかないようになっている。SNS(ソシアル・ネットワーキング・サービス)の世界ではそうした仕組みの存在は以前から指摘されていたが、ツイッターでもそうした検閲が行われていることが示された。膨大な情報を処理するため、検閲システムは自動的に学習(マシーン・ラーニング)して削除すべきかどうかを判断しているようだ。

支配層が許容する枠組みからはみ出た思想や情報を排除することが検閲の目的。人々が気づかないような方法で排除できれば言論の自由が存在していると錯覚させることができるわけだが、アメリカには言論の自由があり、そこを拠点とする有力メディアは「本当のこと」を伝え、言論の自由を支えているという妄想を抱いている人、あるいはそう信じた振りをしている人には不必要な仕組みだ。(2018.1.12 Rakuten Blog 「ユーザーに気づかれないように検閲する仕組みがツイッターにも導入されていることが確認された」から一部引用)。なお、より詳しくはUSA Today記事「Shadow banning: What is it, and why is Trump talking about in on Twitter」などを参照されたい。

(筆者注7) 州の司法長官が州民のために(on behalf of its residents)、父権( parens patriae)として連邦裁判所において違法行為を行った事業者に対して民事裁判を提訴し、損害賠償請求できることをいう。

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Copyright © 2006-2021 芦田勝(Masaru Ashida).All rights reserved. You may display or print the content for your use only. You may not sell publish, distribute, re-transmit or otherwise provide access to the content of this document.

 

 

 

 

 

 

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米国商務省は、FCCに対しオンラインプラットフォーム企業の責任範囲を明確にし、検閲から保護するための規則制定の請願書を提出」(米国大統領選挙の重要課題)

2020-07-28 17:43:31 | 国家の内部統制

 7月27日、米商務省・国家電気通信情報局(NTIA)は、ウィルバー・ロス米国商務長官に代わって、通信品位法(Communications Decency Act)第230条に関する規制を明確にするよう規則作成の請願書(petition for rulemaking)を連邦通信委員会(Federal Communications Commission :FCC)に提出した旨、リリースした。

 この請願書は、オンラインプラットフォーム企業によるオンライン検閲の防止に関する2020年5月28日の大統領行政命令に応じて提出された。これは、オンラインプラットフォームが法律(Communications Decency Act)の下で特に概説されていない方法でコンテンツへのアクセスを制限する場合、通信品位法第230条の保護を主張できる時期を明確にするようFCCに求めている。

 この問題の動きの背景は、明らかにトランプ大統領に選挙対策である。自身は日頃思いつき、場当たり的な言動訴繰り返すドナルド・トランプ米大統領が5月28日、Facebook、Google、Twitterなどのオンラインプラットフォームによる「検閲(censorship)」を取り締まるための大統領行政命令に署名した点にある。この動きは、大統領が「郵送投票は実質的に不正な行為だ」(郵送投票は自身の陣営に不利であると信じ切っている) (筆者注1)と主張した2件のツイートに対しTwitterが"要事実確認"のラベル付けをしたことをきっかけとしたものである。ツイートをばらまきながら、一方では、オンライン・プラントフォームのやり方が検閲であるとする、きわめて身勝手な行動である。

 今回の連邦行政規則第1.401条に従い、合衆国憲法修正第一との関係で聖域とされてきたがこの問題につき大統領選挙の争点もあるこの問題に取り組み始めたことは言うまでもないが、一方、FCCは極めて透明で公正なFCCの規則制定手続を行う機関であることも間違いない。(筆者注2)

 今後の大統領選挙の今後を見極め上で見極める重要な問題である、引き続きウォッチする。

1.商務省のリリースの概要

 ウィルバー・ロス商務長官は、「多くのアメリカ人は、オンライン・プラットフォームを利用して情報や接続を維持し、重要な問題についての考えやアイデアを共有している。これにより、公共政策や今後の選挙に関する自由で開かれた議論につながることがよくある」 「インターネット上のアイデアの強力な市場と世界中の情報の自由な流れを促進することは、長い間米国の政策であった。トランプ大統領は、すべてのアメリカ人が自らの見解を表明する権利を保護することを約束しており、同時に不当な制限あるいは少数の強力な企業からの選択的な検閲に直面してはならない」と述べた。

 また請願書は、FCCにさらなる明確性を求めている。

  ① Communications Decency Act第230条は、ソーシャルメディアの節度あるコンテンツ管理の決定を提供するかどうか、およびその程度

  ②ソーシャルメディア企業による節度あるコンテンツの管理と編集上の決定において、第230条がコンテンツをもはや保護しない程度にコンテンツを形成する条件の内容

  ③ ソーシャルメディアの節度あるコンテンツ管理や慣行に関する開示義務の内容

 請願原本へのリンクはここから可である。       

2.7月27日NTIAのリリース文「NTIA Petition for Rulemaking to Clarify Provisions of Section 230 of the Communications Act」

 2020.5.28の大統領行政命令13925(E.O.13925)に基づき、連邦行政規則第1.401条(47 CFR § 1.401 - Petitions for rulemaking.)に従い、国家電気通信情報局(National Telecommunications and Information Administration :NTIA)を通じて、商務長官(以下、「長官」という)は、連邦通信委員会(FCCまたは委員会という)が1934年の通信法第230条の規定を明確にするためのルール作成を開始することを謹んで(respectfully)要求する。

3.通信品位法第230条及びトランプ陣営の選挙戦略上のソーシャルメデイアの課題に関する代表的解説記事

(1) 2020.5.29「トランプ大統領、SNS標的の大統領命令に署名。通信品位法第230条の見直しを指示」 (Engadget 日本版から引用)。事実関係の説明が中心である。(筆者注3)

(2) 2020.5.30 Business Insider日本訳「トランプの大統領令の影響は?…アメリカの通信品位法第230条について知っておくべきこと」

(3) 平野晋「免責否認の法理(『通信品位法』230条):イースターブルック(主席)裁判官担当の「GTE Corp.」「Craigslist」事件から、コジンスキー主席裁判官担当の「Roommates.com」事件まで」(平野氏とは、NTTコミュニケーションズ株式会社法務担当法務担当課長時代からの学会などでお付き合いがある)

4.その他FCC規則制定の手続き

アメリカ大学ワシントン法学部非常勤教授James Miller氏の解説文を引用する。

(FCCエンジニアリングおよぶテクノロジー局の上級法律顧問でもある)。

Proceedingの開始

・FCCの職権による場合

 -Notice of Inquiry(行政命令ルート)

 -Notice of Proposed Rulemaking(法規命令ルート)

・外部から依頼する場合

-Petition for Rulemaking(法規政策・規則制定の依頼)

 -Petition for Declaratory Ruling(宣言的・確認審決の依頼―裁定依頼)

****************************************************************

(筆者注1) 5月27日付け筆者のブログ「米国の2020年大統領選挙の予備選や本選における全面的な不在者投票や郵送投票の導入の是非問題点を問う(米国大統領選挙の重要課題―その1)」

(筆者注2) 情報通信総合研究所 木村寛治「きわめて透明で公正なFCCの規則制定手続」参照

その制定手続の概要は通常、おおむね次のようである。

(1)まず早い段階から規則制定の予定を予告(Notice of Proposed Rulemaking)

必要に応じて、FCCの「仮の結論」(Tentative Conclusion)をも提示する

(2)利害関係者や各方面から広くコメントを求める(Comments)

コメント提出期限は通常1か月程度とされ、場合によっては「再コメント」(Reply Comments)の手続がとられる。これは、集まったコメントを公示し、さらに「コメントに対するコメント」を求めるものである。

(3)最終的に制定される「規則」(OrderまたはRule)

(筆者注3) 2020.5.29「トランプ大統領、SNS標的の大統領命令に署名。通信品位法第230条の見直しを指示」Engadget 日本版から引用。事実関係から説明が中心

 ドナルド・トランプ米大統領がFacebook、Google、Twitterなどのオンラインプラットフォームによる「検閲」を取り締まるための大統領命令に署名しました。この動きは、大統領が「郵送投票は実質的に不正な行為だ」と主張した2件のツイートに対しTwitterが"要事実確認"のラベル付けをしたことをきっかけとしたものです。大統領は命令への署名に際し「率直に言って、われわれは今日米国の歴史で直面した最大の危機のひとつから言論の自由を守るためにここへ来た」と述べました。

 トランプ大統領が、Twitterに投稿した2件のツイートに"要事実確認"のラベル付けをされ激怒した話は昨日お伝えしたとおりですが、この件に対しホワイトハウスは、インターネットサービスがユーザーから投稿されたコンテンツに対する最終的な責任を問われない根拠とされる、米通信品位法第230条にメスを入れようとしています。米通信品位法第230条が制定された背景には、1990年代半ばに当時のパソコン通信企業を相手取って起こされた2件の訴訟問題があります。

 まず一方は、Conpuserveが、フォーラム(会議室システム)にニュース会社が配信した情報に名誉毀損的内容が含まれていたことに対し起こされた訴訟において、自らは単なるコンテンツ"ディストリビューター"で、配信内容の責任はニュース会社にあるとしたことで責任を問われなかった事例。

 もう一方は、同じくパソコン通信企業のProdigyが、掲示板(BBS)に書き込まれたやはり名誉毀損的情報について訴訟起こされたものの、同社は「家族が安心して楽しめるサービスを提供する」とのポリシーのもと普段はユーザーが不快な思いをする可能性がある書き込み内容を削除する対応をしていために、掲示内容の編集権があるとされ、コンテンツ"パブリッシャー"であると判断され責任を問われた事例です。

 2つの問題を並べて見比べると、Prodigyのほうが普段から良心的かつ顧客に有益なサービスを提供していたにもかかわらず、法的にはCompuserveのほうが正しいという、矛盾した結果が生まれます。この状況を整理するために導入されたのが、ユーザー参加型の"双方向コンピュータ サービス"企業は第三者によって提供されたコンテンツに対して、一部の例外を除き法的責任はないと定める通信品位法第230条です。

 ただし、そのままだと挑発的、過度に暴力的、誹謗中傷、または卑猥や不潔といった、いわゆる公序良俗に反する内容の情報が溢れかえっても、誰も手を付けない状況になりかねません。230条ではプラットフォーム事業者、またはプラットフォーム利用者がこれら条件に反すると判断したコンテンツを削除しても、プラットフォーム側は責任を負わないとしており、その結果プラットフォーム側が提供したくない情報については、提供しなくても良いとも解釈できる状況を生み出しています。

 インターネット企業の多くはシリコンバレーを本拠としており、そこはリベラル色が特に強い地域であるため、Twitterが公正だと思っていてもその判断が自然と反保守的になっている可能性はあるかもしれません。しかし現状では230条によってそれが許されている状況であり、大統領命令はこの保護を取り去ろうとしていると、Wall Street Journalなどは伝えています。ただ、230条については民主党のジョー・バイデン氏やバーニー・サンダース氏らもインターネット企業に過度の免債を与えるものだとして改正もしくは廃止を求めており、またソーシャルメディアに反保守的なバイアスがあることを示す決定的な証拠もありません。

 今回大統領が出した命令は、2019年8月にホワイトハウスが用意していた案をベースとしたものと指摘されます。The Guardianによれば、この大統領命令(草稿)はソーシャルメディアプラットフォームが投稿されたコンテンツの編集を禁止することで、今回のように大統領のツイートへのラベル付けをできなくするとともに「不正なポリシー」を取り除くことで政治的な中立性を導入させようとするものだと解釈されるとのこと。

 大統領は長年Twitterを活用して自らの主張を述べてきましたが、その一方で、ソーシャルメディア企業が保守派に偏っていることにも長く批判をしてきています。今回の命令への署名に際してもTwitterを名指しし、「いずれ閉鎖させることになるだろうが法的手続きが必要だろう」「合法的に閉鎖できるようになればそうする」とまで述べています。

 ちなみに、大統領にとっていまは11月の大統領選挙で再選を果たすための重要な時期。最近はアメリカ国内の死者が10万人を超えた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応を批判する声も高まっています。一部では今回の大統領命令は、そうした国民の不満から注意をそらし、保守派の支持を固めたいのではとの見方もあり、民主党のナンシー・ペロシ議員は「残念なことに大統領令は、COVID-19に打ち勝つための国家的戦略提供に失敗したことを覆い隠すための必死の試みだ」と述べました。

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このため、その内容のチェックを含め完全なリンクのチェック、確保に努めてきた。

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 このような経験を踏まえデータの入手日から最短で1~2日以内にアップすることが可能となった。

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 本ブログは、上記のように公的機関等から直接受信による取材解析・補足作業リンク・翻訳作業ブログの公開(著作権問題もクリアー)が行える「わが国の唯一の海外情報専門ブログ」を目指す。

4.他にない本ブログの特性:すべて直接、登録先機関などからデータを受信し、その解析を踏まえ掲載の採否などを行ってきた。また法令などの引用にあたっては必ずリンクを張るなど精度の高い正確な内容の確保に努めた。

その結果として、閲覧者は海外に勤務したり居住する日本人からも期待されており、一方、これらのブログの内容につき著作権等の観点から注文が付いたことは約15年間の経験から見て皆無であった。この点は今後とも継続させたい。

他方、原データの文法ミス、ミススペリングなどを指摘して感謝されることも多々あった。

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欧州司法裁判所がSchremsⅡ判決でEU市民の第三国へのデータ移送に関しプライバシー・シールド決定の無効判断および標準的契約条項に関する決定の有効性判断(その1)

2020-07-25 18:28:09 | 個人情報保護法制

 7月16日、米国商務省ウィルバー・L.ロス長官は、この欧州連合司法裁判所(CJEU)のシュレムスⅡ事件に関する7月16日判決についての声明を発表した。

Wilbur L.Ross氏

 その内容は本文で詳しく述べるが、わが国内でこのCJEU判決の解説を代表的なものを読んでみたが、果たして原告が指摘した問題点等が明らかになっているようには思えない。

 つまり、2015年6月欧州司法裁判所判決により米国とEU欧州委員会が協議を重ねた「セーフ・ハーバー決定」が無効と判断され、これを受けてさらなる協議を行い作成したプライバシー・シールドの枠組みも再度無効とされた点である。

 この2つの裁判は申立人がオーストリアに居住するオーストリア国籍のマクシミリアン・シュレムス(Maximillian Schrems:通称Max Shrems)氏(筆者注1)である点、申立て内容もほぼ同じである。

 このような点のほかGAFAなどの活動をめぐる各国のDPAの厳しい締まりの実態が明らかとなる中でさらなる疑問がわく。

 すなわち、(1)CJEU判決を受け、欧州データ保護会議(European Data Protection Board:DPB)は加盟国の監督機関からの照会に対応したりCJEU判決のさらなる解析を目的とするFAQを7月23日に公表したが、その内容は如何、(2)この判決はGDPRの解釈、運用の一層の迅速な厳格化を求めるものである(SCCsやBCRといえども無条件での運用継続は不可である)が果たして企業実務から見たら具体的な対応の中身は如何(最大規模のローファームのレポートが恰好の材料を提供している)を次回以降取りあげる予定である。

 また、関連テーマとしては、(3)プライバシー・シールドの枠組み(筆者注2)や運用の実態は如何、特にCJEUが大きな懸念を指摘するオンブズ・パーソン・メカニズム(Ombudsperson mechanism)の法的有効性や恒久オンブズ・パーソンである米国務省国務次官キース・J.クラック(Keith Krach)氏とはいかなる人物か, その現政権や議会からの独立性は保証されているか(筆者注3)、、(4)CJEUが最も問題視する米国FISA(Foreign Intelligence surveillance Act)第702条1981年大統領令(Executive Order)12333号 (筆者注3-2)の内容は如何、(5)同制度に参画している米国企業の利用規約や透明性報告の実態が原告が指摘している問題点を本当にクリア―しているのか、(6)21015年9月のアンブレラ協定 (筆者注4)とプライバシー・シールド決定との関係、(7)2016年ころ以降 GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)等は最新の透明性報告書に国家安全保障書簡(National Security Letter)を介し FBI等の命令への対応を公表し始めた。果たして透明性報告書の内容は真に情報主体が満足できるものか、(8)欧州委員会の「十分性決定」の中身は本当に司法から見て有効か、(9)CJEUの本判決と法務官のopinionの内容比較は如何、(10)今回の裁判はGDPRに基づく保護強化に向けたEU主要国の情報保護機関やnoyb等人権擁護団体の手分けしての裁判戦略の一環であることが明確である、日本とEU間の越境データ移転についての合意内容は今後とも十分か(筆者注5)、等多くの疑問がわいてきた。

 これらの疑問を極力解決するよう、取り組んでみた。とても内容から見て1回でまとめきれないが、順次取り上げて公表したい。

1.ロス長官の声明文の仮訳

 商務省は、同裁判所がEUと米国の間の根拠となっている欧州委員会の妥当性の判断を無効にしたことに深く失望している。プライバシー・シールドについては、その実際的な影響を完全に理解するための決定については引き続き検討中である。我々は、この問題に関して欧州委員会および欧州データ保護会議(European Data Protection Board) (筆者注6) (筆者注7) (筆者注8)と密接な関係を維持しており、今回の負の結果を、それぞれの市民、企業および政府にとって非常に重要である7.1兆ドルの大西洋横断経済関係に限定できることを願っている。米国とEU間のデータ・フローは、テクノロジー企業だけでなく、あらゆるセクターのあらゆる規模の企業にとっても不可欠である。我々の経済がCOVID-19以降をめざし回復を続ける中、企業(現在5,300社以上のプライバシー・シールド参加企業等を含む)が、プライバシー・シールドによって提供される強力な保護と一貫して、中断なくデータを転送できることが重要である。

 米国は、米国の国家安全保障データアクセスの法律と慣行、およびそのような措置がどのようにしてヨーロッパを含む外国の管轄区域におけるそのようなアクセスを管理する規則に適合し、ほとんどの場合それを超えるかを裁判所に完全に理解させることを目的として、訴訟に積極的に参加してきた。

 商務省は、このプライバシー・シールド・プログラムの管理を今後とも継続する。これには、プライバシー・シールド・フレームワークへの自己認定(self-certification)および再認証(re-certification)のための申請の処理やプライバシー・シールド・リストの維持が含まれる。本日の決定は、参加組織・団体のプライバシー・シールドの義務を緩和するものではない。

2.欧州司法裁判所(CJEU)の判決プレスリリースとその内容

 CJEUの判決に係るプレスリリースをもとに補足、リンクを張りながら仮訳する。

 なお、前書きで述べたとおり、この内容を理解するだけでは企業対応を進めるうえで不十分であり、各ローファームなどが指摘しているとおり、英国にローファーム「Pinsent Masons LLP」の弁護士Andreas Carney氏が指摘しているとおり、最近時の欧州委員会のGDPRレヴューやそれを踏まえたSCCsやBCRの内容とGDPRの解釈の厳格化、近代化の取り組みやEBPBのガイダンス更新動向等十分にウォッチすべきであることは言うまでもない。

判決要旨】欧州司法裁判所は、「EU-USデータ保護シールドによって提供される保護の妥当性に関する欧州委員会決定2016/1250」無効と判断した。ただし、欧州委員会の標準的契約条項(Standard Contractual Clauses, SCCs)に関する委員会決定2010/87(Commission Decision 2010/87)については、第三国に設立された処理業者への個人データの移送は有効であると判示する。

 情報保護に係るEU法である「EU一般データ保護規則(GDPR)」(注9)は、第三国へのデータの移転は、第三国が適切なレベルのデータ保護を保証する場合にのみ、原則として行われる可能性があることを規定している。 GDPRによると、第三国は、国内法またはその国際的コミットメントの理由によって、十分な保護レベルを保証する可能性がある。適切な決定がない場合、EUで設立された個人データの輸出者が適切な保護措置を提供した場合にのみ、そのような移転が行われうる可能性がある。データ主体が、執行可能な権利と効果的な法的救済策を有する場合、 GDPRは、適切な決定または適切な保護措置がない場合に、そのような移転が行われうる条件を詳述する。

 オーストリアに居住するオーストリア国籍のマクシミリアン・シュレムス(Maximillian Schrems:通称Max Shrems)は、2008年からフェイスブック・ユーザーである。欧州連合(EU)に居住する他のユーザーの場合と同様に、シュレムス氏の個人データの一部または全部は、Facebook Ireland によって米国に所在するFacebook Inc.に属するサーバーに転送され、そこで処理が行われる。シュレムス氏は、本質的にこれらの移送を禁止するよう求めるアイルランドの情報保護監督当局である「情報保護委員会(「Data Protection Commission:以下、DPC)」に苦情を申し立てた。彼は、米国の法律と慣行は、その国に転送されたデータへの公的機関によるアクセスに対する十分な保護を提供していないと主張した。

 その苦情は、決定2000/520(いわゆる「セーフ・ハーバー決定」) で、とりわけ、アイルランド保護委員会は、米国が十分なレベルの保護を確保していることを明らかであるという理由でセーフハーバーを理由に却下した。2015年10月6日に提出された同裁判所判決では、アイルランド高等裁判所(High Court)が付託要請した先行(予備)判決::preliminary ruling)(注10)の内容を受けた司法裁判所判決は、欧州委員会のセーフ・ハーバー決定が無効であると宣言した(「シュレムスI判決」)。

 シュレムスⅠ判決とその後の関連裁判所の無効決定に続いて、アイルランド監督当局(DPC)は、2000/520委員会決定は無効であるという本裁判所の宣言に照らして、彼の告訴内容を再構築するようシュレムス氏に求めた。同氏の再構築された苦情の中でも、シュレムス氏は、米国がその国に転送されたデータの十分な保護を提供していないと主張している。 彼は、EUから米国への個人データの将来の移送の停止または禁止を求めている。 Facebook Irelandは現在、2000/520決定の附属書に定められた標準的データ保護条項に従って移送を実施している。

 シュレムス氏の告訴の結果は、特に欧州委員会決定2010/87の妥当性に依存するとの見解を持って、DPCは、CJEUの先決(予備)判決(preliminary ruling )のために裁判所に質問を参照するために高等裁判所(Hight Court)に対する手続きをとった。これらの手続きの開始後、欧州委員会はEU-Uが提供する保護の妥当性に関する決定2016/1250(プライバシー・シールド決定)を採択した。

 標準的なデータ保護条項に従って個人データの移送に適用されるかどうか、(2)そのような移転に関連してGDPRによって必要とされる保護のレベル如何、および(3)そのような状況で監督当局にどのような義務が義務付けられているかを司法裁判所に照会した。また高等裁判所は、(4)「委員会決定2010/87」および「委員会決定2016/1250」の両方の法的有効性の問題を提起した。

 今日の判決では、司法裁判所は、欧州基本的権憲章(Charter  of  Fundamental  Rights)に照らして2010/87決定の審査は、その決定の妥当性に影響を与えるものは何もないと判断する。しかし、司法裁判所はDecision2016/1250無効と宣言する。

 第一に、司法裁判所は、EU法(特にGDPR)が、加盟国に設立された経営運営者による第三国に設立された別の経営運営者への商業目的の個人データの転送に適用されることを考慮した。 その転送時またはその後、その個人データは、公安、防衛、および国家の安全の目的で、問題となる第三国の当局によって処理される場合がある。司法裁判所は、第三国の当局によるこの種のデータ処理は、GDPRの範囲からそのような転送を排除することはできないと付け加える。

 このような移転に関する必要な保護のレベルに関して、欧州基本的権憲章の下で司法裁判所は、越境移転目的で、適切な保護措置、執行権および効果的な法的救済に関するGDPRによってそのような目的のために定められた要件は、標準的なデータ保護条項に従って個人データが第三国に転送されるデータ主体が、本質的にGDPRによってEU内で保証されるレベルの保護を与えられなければならないことを意味すると解釈されなければならないと考える。

 そのような状況において、司法裁判所は、そのレベルの保護の評価は、EUで設立されたデータ輸出者と第三国に設立された移転の受領者との間で合意された契約条項の両方を考慮に入れなければならないことを指し、第三国の公的機関による第三国の移転に関するアクセスに関しては、第三国の法制度の関連する側面を考慮する必要があると考える。

 次に、司法裁判所は、決定2010/87(標準的契約条項決定)の有効性を調べた。裁判所は、同決定の標準的なデータ保護条項が本質的に契約上の契約であることを考えると、データが転送される可能性のある第三国の当局を縛らないという事実によって、その決定の妥当性が問題に呼ばれるものではないと考える。しかし、その有効性は、同決定がEU法で要求される保護レベルの遵守を確保するために、実際には可能にする効果的なメカニズムを含むかどうか、およびそのような条項に従って個人データの転送が中断または禁止されているか、またはそれらを尊重することが不可能であるかどうかに依存すると付け加える。

 司法裁判所は、決定2010/87がそのようなメカニズムを確立していることを認める。この点に関して、特に司法裁判所は、この決定はデータの輸出者とデータの受信者において、転送の前に、関係する第三国でそのレベルの保護が尊重されているかどうかを確認する義務を課していることを指摘し、 この決定により、受信者は標準のデータ保護条項に準拠できないことをデータ・エクスポーターに通知する必要があり、後者の場合、データの転送を一時停止するか、前者との契約を終了する必要があると考えた。

 最後に、司法裁判所は、私生活と家庭生活の尊重を保証する憲章の規定、個人データ保護、効果的な司法保護の権利に照らして、GDPRから生じる要件に照らして、決定2016/1250の有効性を精査した。その点に関し、司法裁判所は、決定2000/520と同様に、米国では国家安全保障、公益、法執行機関の要件が優位性を持ち、データがその第三国に転送される個人の基本的権利への干渉を容認するという立場を定めている点に留意する。

 司法裁判所の見解では、欧州連合加盟国から第三国に転送されたそのようなデータの米国の公的機関によるアクセスと使用に関する米国の国内法から生じる個人データの保護に関する制限は、 欧州委員会が決定2016/1250の交渉で評価したものは、比例の原則によるEU法の下で本質的に要求されるものと同等の要件を満たす方法で制限されておらず、これまでのところこれらの規定に基づく監視プログラムは厳密に必要なものに限定されていない。

  その明らかとなった点に基づいて、司法裁判所は、米国の特定の監視プログラムに関して、これらの規定は、彼らがそれらのプログラムを実施するために与える法執行力の制約、または潜在的に標的にされた非米国人に対する保証の存在を示していないと指摘する。司法裁判所は、これらの規定は、問題の監視プログラムを実施する際に米国当局が遵守しなければならない要件を定めているが、規定は米国当局に対する裁判所でのデータ主体対象者が実行可能な保護される権利を与えていないと付け加えた。

 さらに司法面からの人権保護の要件に関しては、司法裁判所は決定2016/1250の欧州委員会が取った見解に反して、その決定において言及されたオンブズ・パーソン・メカニズは、そのメカニズムによって提供されたオンブズ・パーソンの独立性とオンブズパーソンに米国諜報機関に拘束力のある決定を採用することを可能にするルールの存在の両方を保証するなど、EU法で要求されるものと実質的に同等の保証を提供する司法機関の前でのデータ主体に対する訴訟原因(cause  of  action)を提供しないと定めている。

 以上の理由から、司法裁判所は決定2016/1250を無効と宣言する。

3.Schrems Ⅱ裁判の欧州司法裁判所大法廷判決全文などのURL

欧州司法裁判所の判決データベースは関係資料も含め非常によく整備されている。

わが国ではあまり一般的に公開されていない情報なので、ここであえて引用する。

(1)判決文全文:JUDGMENT OF THE COURT (Grand Chamber)16 July 2020 

(2) 判決要旨(abstract):Case C‑311/18 

Data Protection Commissioner v Facebook Ireland Ltd and Maximillian Schrems

(Request for a preliminary ruling from the High Court (Ireland))

 Judgment of the Court (Grand Chamber), 16 July 2020

(3)CJEU法務官の意見( OPINION OF ADVOCATE GENERAL): Henrik Saugmandsgaard Øe (デンマーク出身))

Henrik Saugmandsgaard Øe氏

delivered on 19 December 2019 (1)

Case C‑311/18

Data Protection Commissioner v Facebook Ireland Limited,Maximillian Schrems,

Interveners(仲裁意見陳述人):The United States of America,Electronic Privacy Information Centre(EPIC),BSA Business Software Alliance, Inc.,Digitaleurope 

(4)予備判決の要請に係る参考資料 Reference for a preliminary ruling from the High Court (Ireland) made on 9 May 2018 – Data Protection Commissioner v Facebook Ireland Limited, Maximillian Schrems (Case C-311/18)

**********************************************************************************************************::

(筆者注1) Schrems氏は、オーストリア人権擁護NPO“noyb”の代表でもある。

Maximillian Schrems氏

 このNPO団体は個人データを処理する法的根拠として同意に頼る場合、企業はGDPRに含まれる厳しい要件を遵守する必要があるとし、2018年5月、noybは4件の各国の保護機関や人権擁護団体と連携して4件の苦情を申し立てた。フランスではグーグルに対して、オーストリアではフェイスブックに対し、ベルギーではインスタグラムに対して、ドイツではWhatsappに対して申し立てたのである。申立ての理由は、これらの大手IT企業が「利用するかまたは利用しないで去るか、選択肢は1つ(“take it or leave it”)」アプローチ(強制的同意手続き)を採用し、ユーザーがサービスを引き続き使用するためにはプライバシーポリシーと利用条件の両方に完全に同意することを余儀なくされている、とするものである。

 また、この共同作戦の結果としてフランスの情報保護監督機関CNILは2019.1.21の米国Googleに対するEU一般データ保護規則違反にもとづく5000万ユーロ(約63億円)の罰金命令を行っている。筆者ブログ2019.1.26(その1)同(その2完)参照。なお、グーグルを当局に告発したのは、仏NGOのLa Quadrature du Net(LQDN)とオーストリアNGOのNone Of Your Business(NOYB)の2団体。LQDNは1万人の署名を集めた。

(筆者注2) 2019.6.25 Inside Privacy「Privacy Shield Ombudsperson Confirmed by the Senate」から引用する。

 2019年6月20日、米国務省国務次官キース・J.クラック(Keith Krach)は米国上院から国務省でトランプ政権初の恒久的なプライバシー・シールド・オンブズパーソン(Privacy Shield Ombudsperson)になることが承認された。 プライバシー・シールド・オンブズパーソンの役割は、データがEUまたはスイスからEU-米国プライバシー・シールド・フレームワークの下で米国に転送されるすべてのEUデータ主体のための追加の是正手段として機能することである。

Keith J.Krach氏

 オンブズパーソンとして、クラック氏は、EUまたはスイスから米国に送信されたデータへの米国の国家安全保障アクセスに関連して、EUおよびスイスの個人からの苦情や要求に対処する責任がある。オンブズパーソンは、他の政府当局者や独立した監督機関と協力して、要求を見直し、対応する。オンブズパーソンとしてのクラック氏の役割は、経済成長、エネルギー、環境担当次官(Under Secretary for Economic Growth, Energy and the Environment)としての任務の一部を形成する。クラック氏は諜報機関から独立しており、国務長官に直接報告する責務を負う。

 今回の恒久的なプライバシーシールド・オンブズパーソンの正式な承認は、EUレベルでも歓迎された。 グローバルなCovington & Burling LLPのサイト「Inside Privacy」が以前に報告したように、欧州データ保護委員会は、プライバシーシールドの第2回年次レビューに関する2019年1月の報告書で恒久的なオンブズパーソンの任命を賞賛した。 さらに、委員会は、オンブズパーソンは「米国当局による個人データへのアクセスに関する苦情に対処することを保証する重要なメカニズムである」と強調している。 この任命は、EUと米国のプライバシーシールドと標準契約条項の両方が欧州司法裁判所で精査されている時期にあわせて行われた。

(筆者注3) 筆者はこれまでExecutive Orderの訳語に戸惑っており、「大統領行政命令」等を使ってきた。しかし2つのレポートがあるので引用する。この問題は単なる訳語の問題では済まない三権分立の基本に係る問題である。

①国立公文書記録管理局の定義では以下の通りである。「大統領令は連続番号が付けられた公的文書であり、それを通じて合衆国大統領は連邦政府の運用を管理する」

 このように定義されているものの、大統領令は合衆国憲法に明確な規定はない。現在のホワイト・ハウスの公式ページを見ると、「大統領決定Presidential Actions」の下に「大統領令Executive Orders」、「大統領覚書Presidential Memoranda」、「布告Proclamations」、「行政管理予算局関連資料Related OMB Material」の四つが置かれている。つまり、大統領令は大統領決定の一部だと考えられる。(西川秀和「大統領令」から一部抜粋)

②アメリカ合衆国憲法は、大統領に外交と安全保障を担うことを認めるとともに、法律を誠実に執行することを義務づけている。法律によって政策を変更できるのは連邦議会であり、大統領は立法に関して拒否権を行使する、署名する、署名しつつ署名時声明を付与するという選択肢を持つに過ぎない。・・・政策を形成する議会は、あらゆる政策について隅々まで詳細に法律の文言で定めることはできず、法執行を担う大統領に裁量を与える。この裁量の範囲内で、具体的にどのように法執行をすべきかを、行政組織に命令する手段が行政命令である。・・・行政命令は本来的には、議会による授権の範囲内で大統領が具体的な法執行手段を行政組織に命じるためのものであるが、議会が長年をかけて認めてきた裁量の範囲が広範であるために、現在の議会の意図に反する形の命令さえ下しうるというのが現状である。(以下、略す) 梅川健「アメリカ大統領権限分析プロジェクト:トランプ大統領と「大統領令」:とくに行政命令について」から一部抜粋。

(筆者注4) 筆者ブログ「EU-米国の個人情報移送に関する協定(「アンブレラ協定」)に見るプライバシー保護の抜本見直し(その1)」および「同(その2完)」参照。

(筆者注5) 日EU間の越境データ移転について

 欧州委員会は2019年1月23日、EUと日本が個人データに関する保護レベルについて、相互に同等と認める決定を採択したことを歓迎すると発表した。欧州委は、EU「一般データ保護規則(GDPR)」の第45条に基づいて日本に対する十分性を認定し、日本の個人情報保護委員会もEU側に同様の対応を行うことで合意した。EUと日本の間で、相互の円滑な個人データ移転を図る枠組みが発効する。欧州の情報通信技術(ICT)関連産業団体のデジタルヨーロッパは同日、日EU経済連携協定(EPA)の2月1日発効を控え、「国際的な個人データ移転のための重要なモデル」になるとし、支持を表明している。(JETROビジネス短信https://www.ppc.go.jp/enforcement/cooperation/cooperation/sougoninshou/  ~抜粋。

(筆者注6) 欧州データ保護会議(European Data Protection Board :EDPB)は、EU加盟国各国のデータ保護機関の代表、欧州データ保護監督官(European Data Protection Supervisor: EDPS)で構成され、EU内のデータ保護に関する規則の統一的な適用を促し、データ保護機関間の効果的な協力を保証する。2018年5月25日をもってこれまでの「EUデータ保護指令第29条専門家会議(WP29)」がEDPBに改組された。

EDPB議長Andrea Jelinek 氏

 EDPBは、欧州連合における「一般データ保護規則(GDPR)」と「管轄権を有するEU域内公的機関の法執行時の情報保護指令(EU Enforcement Directive)」 (筆者注7)の一貫した適用を確実にすることを目的とする。欧州のデータ保護法の条件を明確にする一般的なガイダンスを採用して、利害関係者に権利と義務の一貫した解釈を与えることができる。

 また、GDPRにより、一貫した適用を確実にするために国家監督当局に対して拘束力のある決定を下す権限も与えられている。EDPBは、EDPBの「手続規則(Rules of Procedure)」と「指導原則」(筆者注8)に従って行動する。                                                      

(JETRO 「EU 一般データ保護規則(GDPR)について」から一部抜粋、一部筆者なりに補筆した)。

また、EDPBサイトの解説を引用、仮訳する。

 EDPBは、欧州連合(EU)全体のデータ保護規則の一貫した適用に貢献し、加盟国の監督当局間の協力を促進する法人格を持つ独立した欧州機関である。EDPBは、全加盟国の監督当局(Supervisory Authorities :SA)と欧州データ保護監督者(EDPS)またはその代表者の長で構成されている。特定の個々の要求に応答する代わりに、EDPB は一般的なガイダンス等を発行する。すなわち、2018年5月25日、EDPBは従来WP29が提供してきたGDPRに関するガイダンス(Guidelines,)、勧告文(Recommendations)および最善の実践慣行 (Best Practices)を承認7/17(60)した。また、EDPBはここで利用可能な追加のガイダンスを作成している。

 EDPBは、個々のコンサルタントサービスを提供しない。データ保護法に関する質問がある個人または組織・団体等は、その拠点国の監督機関のウェブサイトに相談することを勧める。

(筆者注7) わが国でほとんど解説がない「法執行指令(Directive (EU) 2016/680(EU Enforcement Directive)」の内容を概観する。

2016年4月27日欧州議会および欧州連合理事会の指令(EU)2016/680は、刑事犯罪の防止、捜査、取り調べまたは訴追または刑事罰の執行、およびそのような個人データの自由な移動に関する管轄当局による個人データの処理に関し自然人の権利保護に関する指令である。

(筆者注8) EDPBの指針となる原則は以下の7原則である。

①独立性と公平性

②優れたガバナンス、整合性、優れた管理行動

③親密さ

④協力

⑤透明性

⑥効率性と近代化

⑦先を見越す(proactive)

(注9) GDPR第46条( 適切な保護措置に従った移転)の個人情報保護委員会の仮訳文を引用する。

  1. 第45条第3項による決定がない場合、管理者又は処理者は、その管理者又は処理者が適切な保護措置を提供しており、かつ、データ主体の執行可能な権利及びデータ主体のための効果的な司法救済が利用可能なことを条件としてのみ、第三国又は国際機関への個人データを移転することができる。
  2. 第1項で定める適切な保護措置は、監督機関から個別の承認を必要とせず、以下のいずれかによって講じることができる。

(a) 公的機関又は公的組織の間の法的拘束力及び執行力のある文書

 (b) 第47条に従う拘束的企業準則

 (c) 第93条第2項で定める審議手続に従って欧州委員会によって採択された標準データ保護条項

 (d) 監督機関によって採択され、かつ、第93条第2項で定める審議手続に従って欧州委員会によって承認された標準データ保護条項

 (e) データ主体の権利に関するものを含め、適切な保護措置を適用するための拘束力があり執行可能な第三国の管理者又は処理者の約定を伴った、第40条による承認された行動規範 又は、(f) データ主体の権利に関するものを含め、適切な保護措置を適用するための拘束力があり執行可能な第三国の管理者又は処理者の約定を伴った、第42条による承認された認証方法

3.所轄監督機関から承認を受けることを条件として、第1項で定める保護措置は、特に、以下の方法によっても講じることができる。

 (a) 管理者又は処理者と第三国又は国際機関内の管理者、処理者又は個人データの取得者との間の契約条項;又は、

 (b) 公的機関又は公的組織の間の取決めの中に入れられる条項であって、執行可能かつ効果的なデータ主体の権利を含むもの。

  1. 監督機関は、本条第3項で定める場合において、第63条で定める一貫性メカニズムを適用する。
  2. 指令95/46/ECの第26条第2項に基づく加盟国又は監督機関による承認は、その必要に応じて、監督機関によって改正され、差し替え、又は、廃止されるまで、その有効性が維持されなければならない。指令95/46/ECの第26条第4項に基づき欧州委員会によって採択された決定は、必要に応じて、本条第2項に従って採択される欧州委員会決定により改正され、差し替え、又は、廃止されるまでその有効性が維持されなければならない。

(筆者注10) CJEU の先行(予備)判決(preliminary ruling)に関する詳しい解説を引用する。なお、法律とのリンクは筆者が行った。なお、“preliminary ruling”の訳語は区々である。予備判決、先行判決、先行裁定、先行裁断等である。法的意義を踏まえ統一訳語を考えるべきと思う。

 EU加盟国の裁判所は「欧州共同体設立条約(Treaty establishing the European Community: TEC)」第 234 条および「欧州連合の機能に関する条約(Treaty on the Functioning of the European Union: TFEU))第 267 条に基づき、EU の法律や規則の解釈または有効性について CJEU に予備判決(preliminary ruling)を照会・請求することができる。この照会制度は、上記の垂直的な控訴制度と対照をなす水平的な協力体制であり、EU 全域にわたって法・規則の統一的な適用を促進・担保するものである。

 予備判決の照会は事件の一方の当事者が請求することができるが、照会の適否を決定するのは加盟国の裁判所(court or tribunal of a Member State)である。ただし、上記 TFEU第 267 条の後段により、事件を審理する裁判所が最終審であって、その決定に不服を申し立てることができない場合、当該裁判所は一方の当事者の請求により予備判決の照会をしなければならない。また、法・規則の適用について疑義がある場合、照会は義務づけられている。

 照会を求めた裁判所は、予備判決がなされるまで審理を中断する。当事者、各加盟国、欧州委員会等は、利害関係人として、書面による意見書(observations)を提出する機会が与えられる。審理に当たっては、照会の内容について専門的知識を有する法務官(Advocate-General)が任命され、原則として書面により自己の見解(opinion)を提出するが、CJEU の裁判官は当該法務官の口頭による説明のみをもって判決を下すことができる。予備判決は中間的な決定であるから、本案判決は照会を求めた加盟国裁判所が行うが、予備判決は具体的な事案に即したものであり、本案判決の内容に直結する場合が多い。

予備判決において示された解釈は既判力(force of res judicata)を有し、照会を求めた裁判所のみならず、加盟国の全ての裁判所を拘束する。しかし、当該解釈が十分に合理的な(sufficiently enlightened)ものであるか、または、さらなる照会を要するものであるかを判断するのは当該加盟国裁判所であると判示され、一事不再理の原則は採用されていない。(以下略す)。(日本弁理士会 鈴木康裕「欧州連合司法裁判所への予備判決の照会制度」から一部抜粋)

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1.100%原データに基づく翻訳と内容に即した権威にこだわらない正確な訳語づくり

2.本ブログで取り下げてきたテーマ、内容はすべて電子書籍も含め公表時から即内容の陳腐化が始まるものである。筆者は本ブログの閲覧されるテーマを毎日フォローしているが、10年以上前のブログの閲覧も毎日発生している。

このため、その内容のチェックを含め完全なリンクのチェック、確保に努めてきた。

3.上記2.のメンテナンス作業につき従来から約4人態勢で当たってきた。すなわち、海外の主要メディア、主要大学(ロースクールを含む)および関係機関、シンクタンク、主要国の国家機関(連邦、州など)、EU機関や加盟国の国家機関、情報保護監督機関、消費者保護機関、大手ローファーム、サイバーセキュリテイ機関、人権擁護団体等を毎日仕分け後、翻訳分担などを行い、最終的にアップ時に責任者が最終チェックする作業過程を毎日行ってきた。

 このような経験を踏まえデータの入手日から最短で1~2日以内にアップすることが可能となった。

 なお、海外のメディアを読まれている読者は気がつかれていると思うが、特に米国メディアは大多数が有料読者以外に情報を出さず、それに依存するわが国メデイアの情報の内容の薄さが気になる。

 本ブログは、上記のように公的機関等から直接受信による取材解析・補足作業リンク・翻訳作業ブログの公開(著作権問題もクリアー)が行える「わが国の唯一の海外情報専門ブログ」を目指す。

4.他にない本ブログの特性:すべて直接、登録先機関などからデータを受信し、その解析を踏まえ掲載の採否などを行ってきた。また法令などの引用にあたっては必ずリンクを張るなど精度の高い正確な内容の確保に努めた。

その結果として、閲覧者は海外に勤務したり居住する日本人からも期待されており、一方、これらのブログの内容につき著作権等の観点から注文が付いたことは約15年間の経験から見て皆無であった。この点は今後とも継続させたい。

他方、原データの文法ミス、ミススペリングなどを指摘して感謝されることも多々あった。

5.内外の読者数、閲覧画面数の急増に伴うブログ数の拡大を図りたい。特に寄付いただいた方で希望される方があれば今後公開する筆者のメールアドレス宛にご連絡いただければ個別に対応することも検討中である。

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米国連邦最高裁判所が1991年電話消費者保護法(TCPA)のロボ・コール禁止に係る憲法修正第一をめぐるバー連邦司法長官対アメリカン政治コンサルタント協会事件の判決

2020-07-10 15:49:48 | 消費者保護法制・法執行

 7月8日、筆者の手元にこれまでも紹介してきた米国連邦最高裁判所の判例解説サイト「SCOTUS」から7月6日付け判決「ロボ・コール禁止に係る憲法修正第一をめぐるバー連邦司法長官対アメリカン政治コンサルタント協会事件」の解説レポート が届いた。

 そのまま引用してもよかったが、今回は各種解説の中からあえて米国ロー・ファームの解説で比較的詳しいものとして「Womble Bond Dickinson (US) LLP (筆者注1)のレポートを引用、仮訳する。

 なお、本ブログの執筆に関して調べている間に米国人権擁護NPO団体である“EPIC”の解説記事にあたった。ななめ読みしたが、内容的にはEPICのレポートだけあって法的レポートとしては完成度が高い。またEPICは3月2日、第4巡回区控訴裁所判決について最高裁判所が上訴を受理したので裁判記録を移送しなさいと下位裁判所に命令する移送命令(writ of certiorari)に対するEPICの法廷助言者(事件の当事者ではない第三者)の意見陳述(Amicus Brief)(筆者注1-2)を提出している。

また、EPICは本裁判TCPA に関する詳しい解説記事を公表している。

 本判決につき関心がある向きは、この両者を精読されたい。

1. Womble Bond Dickinson (US) LLPのレポート「Supreme Court Strikes Down Government-Backed Debt Exception; TCPA Stands」の概要

 以下で主要部を抜粋、仮訳した(著者はデビッド・カーター(David Carter)、アーテイン・ベェテラ(Artin Betpera)、アーネスト・メンディータ(Ernesto Mendieta)の3氏。

David Carter氏

Artin Betpera氏

Ernesto Mendieta氏

 しかし、判決の正確性を期すうえで前記「SCOTUS Blog」などで確認せざるを得ない点、わが国の契約法では一般的でない米国契約法の法理等が出てくるため、筆者の責任で該当条文も含め適宜補足、解説を加えた。

【本文】

 7月6日、連邦最高裁判所は「バー連邦司法長官対アメリカン政治コンサルタント協会事件」の判決を下した。この裁判は我々が知っているように政治コンサルタント団体が自動ダイヤル通話の全面的な禁止を定める「1991年電話消費者保護法(Telephone Consumer Protection Act of 1991:47 U.S.C. § 227  (以下「TCPA」という) (筆者注2)自体を合衆国憲法修正第一にもとづき違憲として、その機能を終わらせようとしたものである。連邦最高裁判所は、政府の債務取り立てに係るロボ・コールの例外規定法やTCPAの該当規定に関し狭い例外適用を打ち破った。

 最高裁判所は、適切な同意を欠く携帯電話への自動ダイヤル通話の全面的な禁止を支持したが、それは政治的なスピーチよりも商業的なスピーチを支持することによって合衆国憲法修正第一に違反するので、連邦政府の支援を受けた債務を収集するために行われた自動呼び出しの禁止の例外は無効である点を明らかにした。

 今回の判決のかかる複数の最高裁の各判事の意見書面で、キャバノー(Kavanaugh)判事は「アメリカ人は多くのことに情熱的に反対している。しかし、彼らは主にロボ・コールに対する軽蔑の中では団結している」と述べた。この判決では、最高裁判所はオート・ダイヤラー(ロボ・コール)禁止を全面的に排除する努力を行おうとする原告の申立てについては却下し、一般的にみたTCPAの現状のオート・ダイヤラー禁止原則を維持した。

(1)本裁判の背景と立法の経緯

 1991年に制定されたTCPAの47 U.S.C. §227(b)(1)(A)(iii) (筆者注2)は、事前の書面による同意がない場合、自動電話ダイヤルシステムまたは人工または録音済みの音声を使用して、電話をかけたりテキスト・メッセージを携帯電話番号に送信したりすることを禁止している。

 しかし、2015年、連邦議会は「超党派予算法(Bipartisan Budget Act)」を制定し、「米国が負った債務または保証された債務を回収するためだけに行われる自動ダイヤルでの呼び出しに対するこのTCPA禁止の例外を含むこととなった。当時、この適用免除により10年間で政府を1億2000万ドル節約すると見積もられていた。

 2016年、アメリカ政治コンサルタント協会や様々な政治団体は、TCPAの自動電話ダイヤルの禁止は合衆国憲法修正第一(連邦議会は以下の立法をなし得ない。国教を規定すること、信教の自由を禁止すること、言論あるいは出版の自由を制限すること、国民が平穏に集会する権利や苦痛の救済を政府に請願することを制限すること)に違反する言論に対する内容に基づく制限であると主張し、コア政治的なスピーチをこえる債権回収呼び出しについて適用例外の違法性を主張し、北カロライナ州東地区連邦地方裁判所に対し、連邦司法長官とTCPAの運営責任機関であるFCC(連邦通信委員会)を訴えた。

 この連邦地方裁判所は、コンテンツに基づく言論差別であるため、TCPAの禁止免除につき厳格な精査が適用されることを原告と合意した。しかし、同裁判所は、免除は説得力のある政府の利益に役立つように狭く調整され、したがって厳格な精査を生き延びたと判決で述べた。

 これに対し、原告は控訴し、第4巡回区連邦控訴裁判所は、政府債務の免除は内容に基づいた厳格な監視を適用すべきとする地裁判決に同意した。 しかし今回、連邦最高裁裁判所は「超党派予算法(Bipartisan Budget Act)」の政府債務を例外免除は憲法修正第一に違反すると説示した。

 第4巡回区連邦控訴裁判所は、政府債務免除規定が致命的過小包摂(fatally underinclusive)」(筆者注3)であると判断し、従来の「分離可能性の原則(severability principles)」(筆者注4)を適用して、自動電話ダイヤルの使用禁止をすべて無効にする代わりに、免除適用のみを無効化すると法解釈の切断することを選択した。

 つまり、「TCPAの自動通話ダイヤリング制限に対する政府債務の例外が修正第一に違反するかどうか、および憲法違反に対する適切な救済策が例外を法の残りの部分から切り離すことが可能であるかどうか」を判断したのである。

(2 )最高裁判決の法解釈の解析

 まず、憲法分析に適用される精査を決定する際に、ブレット・キャバノー判事は第4巡回区控訴裁判所の決定に同意し、政府債務の例外を含むロボ・コールの制限はあくまで「内容」に基づいており、裁判所の判例の下では厳格な精査の対象であったと述べた。今回の最高裁判決は法律は自動電話ダイヤリング者が特定のトピックについて話しているかどうかに焦点を当てているため、ロボ・コール禁止の例外とする判断はあくまで内容ベースであるとする意見であった。

 その高水準の下で、最高裁判所は、政府債務を徴収している政府債務例外に対する政府の正当性は価値のある目標であるが、「政治献金、慈善募金、問題擁護、商業広告などのロボ・コール呼び出しの他の重要なカテゴリーとの差別化を十分に正当化しえない」と主張した。

 2015年の政府債務例外法(超党派予算法(Bipartisan Budget Act)」)は、オート・ダイヤラー禁止に違憲の例外を作成したと結論付け、その後、最高裁の意見は、適切な救済が1991年のロボ・コール制限全体を無効にすることなのか、それとも2015年の政府債務例外法を無効にして断ち切るのかを分析した。

 第一に、最高裁判所の判例法は強い可分性推定(presumption of severability)を示したと判決は認めている。この可分性の推定は、「裁判所が司法政策決定や事実上の司法法を回避して、法令の残りの部分をどれだけ無効にすべきかを決定することを可能にする実行可能な解決策を提供する」。本事件で一般的な例外原則の適用に関し、最高裁判所は、1934年通信法(TCPAの旧法)には、合衆国現行法律集タイトル第47編§227のロボ・コール制限および政府債務例外を含む条項をカバーする明示的な可分条項(筆者注5)が含まれていることを認めた。

 さらに、政府債務の例外規定は2015年法(超党派予算法(Bipartisan Budget Act))で制定され、ロボ・コール制限に違憲の差別的例外が追加された。したがって、今回、最高裁判所は、「可分(分離)条項条文は、違憲の政府債務例外規定を公平にカバーし、我々はそれを断ち切る必要がある」と結論付けた。

 また、分離に関し、最高裁判所は残りの法律が独立して機能することができ、したがって法律として完全に機能するかどうかを分析しなければならない。この意見は、「ロボ・コール制限の残りの部分は独立して機能し、2015年に政府債務の例外が追加される前の20年以上、法律として完全に機能した」と確認した。

 最高裁判所は、通信法の分離可能性条項の本文がここで適用されなかったとしても、分離可能性の推定は裁判所が残りの法令から2015年政府債務の例外法を分離することを要求すると結論付けた。

 キャバノー判事の複数の意見に、ジョン・ロバーツ裁判長とサミュエル・アリトー判事が完全に加わった。ソニア・ソトマヨール判事も判決に同意した。一方、スチーブン・ブライヤー判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事、およびエレナ・ケイガン裁判官は、政府が支援する債務の例外を厳格な精査ではなく中間審査のもとで見直せるはずであり、したがって、修正第一に違反していないと述べた。それにもかかわらず、これらの判事は、複数の相反する結論に照らした適切な救済策は、TCPA全体を打倒するのではなく、例外を断つことであることに同意した。したがって、9人の裁判官のうち7人は、政府が支援する債務の例外がTCPAの自動ダイヤラー制限の全体を排除する理由を提供しないことには同意した。一方、ニール・ゴーサッチ判事とクレランス・トーマス判事は、TCPAが憲法修正第一に違反し、政府が支援する債務の例外を解消することを拒否したため、自動ダイヤラーの使用に関するTCPAの制限を無効にすべきと結論付けた。

(3) 本判決の意味合い・類似裁判との関係(implications)

 最高裁判所からの本判決につきTCPAの将来にとって何を意味する可能性があるかについて、多くの誇大宣伝があった。代わりに、最高裁判所は狭義に調整された決定を採用し、おそらくその決定がTCPAによって課された制限を支持し続ける世論の大きな重みに反しないことを確実にした。

 したがって、ほとんどのTCPA訴訟は、今回の最高裁判所の意見によって直接影響を受けることはない。 ただし、企業が電話やテキスト・メッセージを送信して政府が支援する債務を徴収する場合は、自動電話ダイヤルシステムを利用する前に、適切なレベルの同意を得ていることを再度確認する必要がある。

 最高裁判所の意見は最終的に現状を維持したが、他方、制定法上のATDS(automatic  telephone dialing system” の定義の解釈に直接に関係する「デュグイド対Facebook事件(Duguid v. Facebook控訴裁判所判決)」に対する上訴請求(petition for certiorari)は係属中である。

 これが 認められれば、特にバー司法長官の結果を考えると、デュグイド事件ははるかに大きな影響を与える可能性がある。 可分条項に取り組む際、カバノー裁判官は、「今日、正確な法定文書に基づいて裁判にかけ、その結果、可分条項または非可分離条項の文章に近づく」と述べた。 デュグイドの上訴が認められた場合にも同じアプローチが適用されると、裁判所に信頼できるテキスト専門家が複数存在することにより、裁判所がATDSの定義を解釈する際にTextualism(文言主義/文理主義/原文主義/法文尊重主義)により「近づく」か、または第9巡回区控訴裁判所に判決の書き直しを命じるなど大きく影響を受ける可能性がある。

***********************************************************:

(筆者注1) Womble Bond Dickinson (US) LLPの発行ブログ” TCPA Defence Force”にsubscribeしているが、なかなか興味深い記事が多い。

(筆者注1-2) 第4巡回区控訴裁所判決について、最高裁判所が上訴を受理したので裁判記録を移送しなさいと下位裁判所に命令する移送命令(writ of certiorari)に対するEPICの意見陳述(Amicus Brief)の原本

「No. 19-631 IN THEWILLIAM P.BARR,ATTORNEY GENERAL;FEDERAL COMMUNICATIONS COMMISSION,Petitioners,v.AMERICAN ASSOCIATION OF POLITICAL CONSULTANTS,INC.,ET AL.,Respondents.On Writ of Certiorari to The U.S. Court of Appeals For the FourthCircuitBRIEF OF AMICICURIAEELECTRONIC PRIVACY INFORMATION CENTER (EPIC)AND TWENTY-NINETECHNICALEXPERTS AND LEGAL SCHOLARSIN SUPPORT OF PETITIONERS」(全37頁)

その結論部分を仮訳する。

結論 「上述した理由により、amici EPICらは、連邦最高裁判所に、TCPAの自動ダイヤラーの禁止規定が合憲であると認定し、その代わりに、第4巡回区連邦控訴裁判所の決定を覆すか、または政府債務例外措置に貢献(server)できる施策をとるよう要請する」

(筆者注2) 裁判で問題となったTCPAの条文は“47 U.S. Code 227 (b)(1)(A)(ⅲ)”である(コーネル大学のサイトで索引する際、「Title 47. Ch5.PartⅠ.Section227」で引くことになる。ちなみに、該当箇所を以下にあげる。

(筆者注3) 一般的にわが国で閲覧可の憲法解釈における「過小包摂立法問題」の論文は比較的少ない。

「過小包摂」立法論とは、法益を侵害する別のルートがあり、真に目的を達成するためには規制手段のみでは不十分である、という場合には、関連性を欠くすなわち憲法違反な立法と解される法理である。ここでは深く論じないが、この論理を極論するときわめて政治的な憲法判断が出てくる危険性を感じる。

代表的なものを以下、挙げる。

*山﨑 皓介「多様化・弾力化する違憲判断の法的構成 : 過小包摂立法を端緒として」(北海道大学:博士論文 )

*金原宏明「過小包摂な規制と厳格審査の基準の下での目的審査のあり方についてEMA事件判決におけるスカリア裁判官法廷意見を素材として一」(關西大學法學論集 65巻3 号 PP. 869-908)

*Nob’s Blog 大学の憲法の先生の執筆ブログ「暴力的ゲーム規制は違憲(アメリカ)」

平易な解説文であり、あえて一部を抜粋する。

表現の自由の保障は、国の成り立ちにかかわる基本的な原理。どこまで基本原理に忠実であるかが、国の骨格を鍛え上げ、国の統治への信頼を勝ち取る。合衆国最高裁の本年6月27日の判決は、国の基本原理に対する同裁判所の強い姿勢を示した。

この判決を書いたスカリア裁判官は,古い判決を引きながら,ビデオゲームも表現の自由の保障を受けるという。

 表現の自由は,主として,公的な問題に関する対話を保障するものであると述べつつ,「政治的プロパガンダは、ドラマを通じて知れ渡る」「ある人にとって娯楽にすぎないものも、他の人には政治的な立場を指し示す」 と述べて,政治的表現とエンターティンメントとの峻別を否定した。

スカリア裁判官が、表現の自由の基本原理と言っているのは,内容(メッセージ、アイディア、主題、内容)を理由として表現を制約する権限を政府はもたないという原理だ(内容規制の原則的禁止)。表現の内容の是非を判断するのは政府ではなく、それを受け取る個人である(リベラリズムの神髄)。ただ、わいせつ表現や犯罪の煽動など、長らく表現内容による規制が肯定されているごく限られた例外はある。

・・・・

 もし、立法者が、本気で、暴力的な表現が未成年者の健全な成長を害すると考えるのだとすれば,他の同様なメディアも規制されていなければならない。映画やアニメも含まれるはずである。暴力的ゲームだけを規制するのは、立法者が、実は未成年者のことを考えているのではなく、特定の話者や見解だけを排除したいのではないかという重大な疑問を提起するとスカリア裁判官は述べている。(過小包摂=ゆがんだ規制の動機)

(筆者注4) ベリーベスト法律事務所の「Severability Clause(可分性条項)」から一部抜粋する。

「本契約のいずれかの条項が無効とされても、他の条項には影響を及ぼさない」として、契約書の一つの条項の無効により契約全体が無効とされてしまうことを防ぐものです。短い文例としては、例えば以下のように書かれます。

“In case any provision in this Agreement shall be held invalid, illegal or unenforceable, the validity, legality,

and enforceability of the remaining provisions shall not in any way be affected or impaired thereby.

Severability Clauseが置かれる理由は?

①    契約締結後の法令や判例の変更

②    契約が無効となっても存続すべき条項の存在

③    各国・地域の法令や判例の相違

(以下略す)

(筆者注5) 筆者なりに1934年通信法の可分条項の存在、内容を調べた。以下のとおりである。

 SEC. 708. [47 U.S.C. 608] SEPARABILITY CLAUSE

If any provision of this Act or the application thereof to any person or circumstance is held invalid, the remainder of the Act and the application of such provision to other persons or circumstances shall not be affected thereby.

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その結果として、閲覧者は海外に勤務したり居住する日本人からも期待されており、一方、これらのブログの内容につき著作権等の観点から注文が付いたことは約15年間の経験から見て皆無であった。この点は今後とも継続させたい。

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デラウェア州衡平裁判所が被告MFW社(M&F Worldwide Corp)の原告の申立ての破棄およびセーフハーバー適用を拒否する判決を下す

2020-07-07 18:19:22 | 企業改革法(SOX法)とガバナンス

 さる7月6日、筆者の手元に2020.7.5 付けのHarvard Law School on Corporate Governance「デラウェア州の衡平法裁判所は、MFW社の原告の破棄申立てとセーフハーバー適用を拒否する判決を下す(Chancery Court Denies Motion to Dismiss and Application of MFW Safe Harbor)」と題する解説レポートが届いた。

 その中身は2020年6月11日(木)に出された94ページのデラウェア州衡平裁判所判決(命令および命令の理由(memorandum opinion)の中で、ジェイ・トラヴィス・ラスター(J. Travis Laster)Vice Chancellor(副裁判官)は、

Laster V.C.

原告(上訴人)アラン・カーン(Alan Kahn) v.被告(被上訴人) M&Fワールドワイド社(M&F Worldwide Corp(以下「MFW」という)88 A.3d 635(Del.2014)事件判決によって確立された安全な港(safe harbor)法理論は本件では適用されない、すなわちセーフハーバー理論はより単にビジネス側に有利になる判断基準ではなく、公平性全体が運用の基準になる可能性がある判断標準である。本判決(注1)は、Dellが行った事実行為はかなりユニークなものであるが、MFWの利益につながる点、特に特別委員会の設立、交渉におけるその役割、潜在的な脅威または強制および取締役の独立性に関する問題について、取締役会に役立つガイダンスを提供するものといえる。

 筆者なりに解説内容を斜め読みしたが、この分野は筆者の専門外でもあり、その取扱いに躊躇していたが、思い切って内容解説にチャレンジすることとした。いずれ、大阪市立大学の古川朋雄准教授などが解説を行うであろうが、先行しての解説だけに割引いて読んでいただきたい。

1.Dell Technologies(以下、「Dell」という)の'NYSEで「デル・テクノロジーズ・クラスC普通株式(NYSE:DELL)」の非上場から再上場の裁判までの時系列経緯の整理

この裁判の内容を正確に理解するうえで必須と考えられる点である衡平裁判所に持ち込まれた事実関係の経緯を筆者が独自にまとめた。限られた時間でまとめたため誤解等があろうが、後日見直す。

2013年9月、Dellの創業者であるマイケル・ソール・デル(Michael Saul Dell, 1965年2月23日生) CEOと米投資ファンドのSilver Lakeが率いる企業グループ(Silver Lake groupに249億ドル(約2兆6,643億円)で買収され、非公開(非上場)化した。

Michael Saul Dell氏                  

2016年9月、Dellは上場企業である「VMWare, Inc.(以下「VMWare」)に81.9%の株式を保有するEMCコーポレーション(NYSE上場企業)を買収(「Dell EMC」(非上場)となる)。Dell EMCは、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ホプキントンに本社を置く世界最大のストレージ機器開発企業。

この検討の一環として、Dellは、VMWare (注2)に対するDellの株式所有権の価値を追跡することを目的とした「新しい取引ができる「クラスV普通株式(new publicly traded Class V common stock)」を上場(ニューヨーク証券取引所(NYSE)のティッカーシンボルはDVMT) (注3)

DellはクラスC株式(1株に10議決権が付された株式)の新規株式公開を検討し、転換権の行使に向けた一歩を踏み出した。ここでMFWを満足させるために、Dellは特別委員会を結成し、その勧告と過半数の少数票に対する償還を条件とした。この特別委員会は償還に関してのみ権限を与えられたが、転換権の行使権限は認められなかった。

交渉の後、特別委員会はDellの最善かつ最終的なオファーを受け入れることを勧告した。しかし、クラスVの株主はそれに反対し、その後数ヶ月間、Dellは大規模なクラスV株式保有者と直接交渉したが、特別委員会は過去の勧告を再検討できないという信念のためにほとんど活動的でなかった。他方、Dellと大口のクラスV株式保有者とは合意に達した。

その合意を知らずに、特別委員会は最終的に1株当たりの高い取引を提案した。しかし、特別委員会が大規模なクラスV保有者との合意を知らされた後、特別委員会は1時間会合を開き、Dellが交渉した低価格での償還を支持することを勧告した。

Dellは2018年7月1日(現地時間)、再上場すると発表

Dellは、2018年12月11日に開催された特別会合において、株主による取引の承認を受けて、クラスV普通株取引の正常な取引終了を発表

2.デラウェア州衡平法裁判所及びデラウェア州最高裁判所に提起された訴訟

 商法や会社法関係者以外ではあまり一般的でないが、デラウェア州衡平法裁判所およびデラウェア州最高裁判所についてデラウェア州法務部が翻訳を行っているので、以下で引用する。

デラウェア州衡平法裁判所及びデラウェア州最高裁判所に提起された訴訟

 デラウェア州は、その効率的で洗練された裁判制度が世界的によく知られているが、特に会社法、ビジネス法及び商法の分野における実績・能力が高く評価されている。世界中の経験豊富な弁護士の多くが、デラウェア州に会社を設立することを依頼者に勧める最も大きな理由として、デラウェア州の裁判所及びそれらが築き上げてきた判例法を挙げている。その中でも一番注目を集めているのが衡平法裁判所(Court of Chancery)である。

 デラウェア州の衡平法裁判所は、米国内のビジネス紛争を取り扱う裁判所の筆頭格である。衡平法裁判所は、衡平法を権限の根拠とする裁判所であるため、当然のことながら、衡平法上の権利(信認義務等)及び衡平法上の救済(差止命令、特定履行等)に係る事件について審理を行い、判断を下すことができるほか、デラウェア州会社法及び関連法令に係る訴訟並びに基本定款、付属定款及び合併契約といった会社の根本規則をめぐる訴訟についても管轄権をもっている。衡平法裁判所の場合、管轄権をもつ分野が限定されていることが、裁判に携わる裁判官や弁護士の専門性が高まるというプラスの効果をもたらしている。

 デラウェア州の衡平法裁判所では、1名の「Chancellor」と4名の「Vice Chancellor」が裁判官として事件の処理にあたる。

3.衡平法裁判所判決の内容解析例

 HLS on Corporate Governanceのレポート以外で比較的詳しく論じているレポートとしてMorris James LLPのPartnerであるK. Tyler O'Connell氏が書いた「新しいデル社に関する判決では、特別委員会の狭い委任範囲、特別委員会を迂回する会社の決定と許されない「強制」は、MFWの破棄申立てを阻止するものである(In New Dell Decision, Special Committee’s Narrow Mandate, Company’s Decision to Bypass Committee and Impermissible “Coercion” Prevent Dismissal Under MFW)」が読みやすかったので、ここでほぼ全文を仮訳する。

 2014年デラウェア州最高裁判所のMFW事件判決(アラン・カーン対M&Fワールドワイド社(MFW)、88 A.3d 635、645(デル2014)は、独立取締役の特別委員会と過半数の少数派投票の承認によって条件付けされた株主の買収を管理するための安全な港(safe harbor)を提供したものである。

 一方、デラウェア州衡平裁判所の2020年6月11日に行った「デル・テック社のクラスV. 株式保有者対MFW訴訟」の判決(2020 WL 3096748(Del. Ch. Jun. 2020)で、特別委員会に不当に狭い委任を与えるという同社の決定のために、少数株主の株式の償還がMFWを満足させなかったと判断した。また、同裁判所はまた、望ましくない代替取引の迫り来る脅威に照らして、同社の申し出は許されないほど強制的であると認めた。

(1)取引:DellのクラスV株式発行をめぐる償還経緯

 2013年の非公開取引に続き、デル・テクノロジー社(以下「Dell」という)の投票権の過半数は、マイケル・デル氏とその関連会社によって支配された。またマイケル・ソール・デル氏は、超議決権を持つ取締役のメンバー権を利用してDellの取締役会の投票を制御した。

 2016年9月、Dellは上場企業である「VMWare, Inc.(以下「VMWare」)に81.9%の株式を保有するEMCコーポレーションを買収した(「Dell EMC」(非上場)となる)。この検討の一環として、Dellは、VMWareに対するDellの所有権の価値を追跡することを目的とした「新しい取引ができる「クラスV普通株式(new publicly traded Class V common stock)」(「クラスV普通株式」とは、会社およびクラスV普通株式が転換または交換される可能性のあるクラスまたは一連のシリーズの1株当たり額面$ 0.01の価値を有する普通株式をいう)を発行した。

 Dellの設立証明書の下で、クラスC株(Class C shares)も上場した場合、クラスV普通株式はDellの選挙でクラスC普通株式(Class C common shares )に転換される可能性があった(「転換権(Conversion Right)」)。この転換率は、Dellの転換決定に至るまでの10日間の各株式の市場価格に基づいていた。原告は、転換権とDellが少数株主に対して日和見的に振る舞うかもしれないという懸念のために、クラスV株はVMWareの上場普通株式に対して約30%の割引で取引されたと主張した。市場参加者はこれを「Dell割引」と呼んだ。

 DellのVMWareの所有権の価値を統合するために、DellはクラスV株式の償還を検討した。同時に、DellはクラスC株式の新規株式公開を検討し、転換権の行使に向けた一歩を踏み出したと言われている。MFWを満足させるために、Dellは特別委員会を結成し、その勧告と過半数の少数票に対する償還を条件とした。この特別委員会は償還に関してのみ権限を与えられたが、転換権の行使は認められなかった。

 交渉の後、特別委員会はDellの最善かつ最終的なオファーを受け入れることを勧告した。しかし、クラスVの株主はそれに反対した。その後数ヶ月間、Dellは大規模なクラスV株式保有者と直接交渉したが、特別委員会は過去の勧告を再検討できないという信念のためにほとんど活動的でなかった。Dellと大口のクラスV株式保有者は合意に達した。

 その合意を知らずに、特別委員会は最終的に1株当たりの高い取引を提案した。しかし、特別委員会が大規模なクラスV保有者との合意を知らされた後、特別委員会は1時間会合を開き、Dellが交渉した低価格での償還を支持することを勧告した。

(2)6月11日の衡平裁判所の判決内容

 J・トラヴィス・ラスター副裁判官は、MFW基準が多くの理由で満たされていないと判断した。特別委員会のプロセスと「強制」の概念に関する裁判所の判決は、特に興味深いものである。

 このプロセスに関して、裁判所は、Dellの転換権(Conversion Right)の行使に関する権限を含まなかったため、特別委員会の委任範囲が狭すぎると説明した。裁判所は、MFWの下で、特別委員会は、会計監査役(controller)が「会計監査役の望ましい目的のための代替手段」を介して一方的に行動するのを防ぐために権限を持たなければならない、または、やや異なる「機能的同等物」を介すべきであると述べたと説明した。ここで、Dellは、償還の代わりに、クラスV保有者にとって魅力的でない結果である転換権の行使を準備し、脅迫したと言われている。

 同様に、大規模なクラスV株式保有者と直接交渉を行うとするDellの決定は、裁判所が「二重保護」を必要とすると説明したMFWに従わなかった。つまり、特別委員会は「少数株主の交渉エージェントとして機能し、少数派株主は特別委員会の仕事に対して信任投票を下すものであるとした。

 衡平裁判所は、「特別委員会の役割は補完であり、代用品ではない。意欲的な株主のボランティアグループは、特別委員会を引き継ぐことはできないし、両方の役割を果たすものである。MFWの下で、特別委員会の提案が少数派株主によって却下された場合、委員会は交渉のテーブルに戻り、受託者能力で行動し続け、利用可能な最良の取引を引き出そうとするものであると指摘した。

 また、同裁判所は許されない「強制」に関するデラウェア州の訴訟法を詳細に見直し、Dellの申し出内容は許されないほど強制的であると述べた。この問題に関して「少なくとも5つの」異なる法律の「鎖」があることを観察した後、同裁判所は、受託者による強制に関する事件が「投票や株式の入札のような投資決定を行うことによって、株主に行動を起こす行動を取ったかどうか」を考慮した。

 最後に、特別委員会の強制に関して、MFW前の訴訟法は、委員会が提案を却下した場合、より低い価格で取引を強制するコントローラの脅威が強制的である可能性があることを支持した。

 これらの概念を適用して、衡平裁判所は、原告が適切に変換権の潜在的な行使を主張し、デルの申し立てられた声明は、償還がない場合にそれを行使する意図を示唆し、許されない強制を作成したと認めました。裁判所は、強制転換の恐れは、クラスVの株主が取引のメリット以外の理由で提案された償還を承認するよう誘導する可能性があると推論した。この状況は、いわゆる「Dell割引」で運ばれた現状を伴い、強制の事実の発見も支持した。最後に、Dellが転換権の管理を維持するという決定は、特別委員会の交渉力と最終的な勧告を損なった。この状況は、委員会が償還を承認したという推論を支持したのは、それが公正だからではなく、強制改宗の代替案よりも優れていたからである。

 衡平法裁判所は、それに応じて、MFWの延期は不当であると結論付け、償還は公正な審査基準全体の下で見直される。したがって、裁判所は被告の解雇の申し立てを否定した。

(3)本判決の主たる重要事項(key Takeaways)

 本判決は、MFWの下で満たされなければならない取引に至るまでのプロセスの基準を調べる一連の最近のデラウェア州の判決(決定)に基づいている。今回、衡平裁判所は、特別委員会が適切に機能したかどうかを評価するために、特別委員会プロセスに関する申し立てを検討した。MFWの防御を望む取引の当事者は、特別委員会が適切に広範な委任を持ち、少数派株主に代わって積極的に働くことを保証する必要がある。また、少数派株式保有者が委員会の最初の勧告と一致するかどうかに関係なく、少数派と直接交渉するために委員会を迂回してはならない点を指摘した。同裁判所の「強制」に関する包括的な議論も有益であり、訴訟当事者や司法官がその概念を今後考慮するのに役立つ可能性がある。さらにケース法の異なるらせん構造(strand)を説明する際に、裁判所は、とりわけ、「強制(coercion)」に関し、類似事件であるコーウィン判決法理(Corwin context) (注4)と同様の意味をMFW判決法理でも持つべきであることを明らかにした。

4.Dell、NYSEに再上場へ 「長期的価値構築にコミットする」とマイケル・デルCEO発言

2018年7月3日 ITmeia記事が経緯も含め簡単に解説しているので参考までに引用、取り上げる。

2013年に非公開化した米Dellは2018年7月1日、再上場すると発表した

「クラスV トラッキング・ストック」(ティッカーシンボルは「DVMT」)を廃止し、クラスCの普通株式と交換することで、クラスC株式をニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場する。クラスV株式はかつて買収した傘下の“VMware”の業績に連動する株式で、約170億ドル(約1兆8,190億円)の評価である。クラスC株式との交換に際しては、株主は、クラスV株の1株に対して、クラスC株の1.3665株か、または現金109ドルを受け取れる。これにより、取引規模は約217億ドル(約2兆3,19億円)になる。VMwareはDellの上場後も独立性を維持する。

 Dellは2013年9月、創業者であるマイケル・ソール・デルCEOと米投資ファンドのSilver Lake率いる企業グループに249億ドルで買収され、非公開化した。デル氏は非公開化の目的を、迅速な意思決定と長期的な開発戦略を可能にするためとしていた。

 デル氏は7月1日、CNBCのインタビューで「この5年間で多くの変化があった。われわれは事業を完全に改造し、重要なインフラ企業になった。(この再上場は)資本構成を単純化し、われわれが創出した価値を株主に公開するためのものだ」と語った。

 今回進める再上場の手続きでは、Dellはトラッキング・ストックという種類の株式を買い取る必要がある。

 トラッキング・ストックとは、特定の事業部門や子会社(今回の例ならVMware)の業績と連動する株式で、親会社(今回の例ならDell Technologies)が発行する。普通株式と違って、対象の部門や子会社への所有権は伴わない。親会社の業績とは切り離して、VMwareの業績のみと連動する株式であることから、Dell Technologies全体に信頼を寄せているわけではない投資家もVMwareに投資できる。

 Dellは、EMCを買収した後で、VMwareの業績と連動するトラッキング・ストック「クラスV」を発行した。ニューヨーク証券取引所(NYSE)のティッカーシンボルはDVMTだ。

 そして、今回の再上場でDellが講じる手段は、このトラッキング・ストックを、Dell自身が所有する未公開の普通株式「クラスC」か現金と交換するというもの。株主は、クラスV株の1株に対して、クラスC株の1.3665株か、または現金109ドルを受け取れる。現金の支払総額は90億ドル(約9,630億円)を超えないとしている。

 つまりDellは、現在NYSEで取引されているトラッキング・ストックをプレミアム付きですべて引き取って、Dell自身が持つ未公開の普通株式と交換することによって、今後はDellの普通株式がNYSEで直接取引されるようにする。ティッカーシンボルについてはまだ発表がない。この複雑な手続きの詳細については、Dell Technologiesのプレスリリースに説明がある。

 Dellとしては、こうした策を取ることで、新規株式公開(IPO)の正式な募集手続きを踏む必要がなくなり、それに伴うもろもろの疑問もぶつけられずに済む。主に、Dellが抱えているまとまった額の負債についての疑問だ。

**********************************************************************

(注1) 今回の衡平裁判所の「判決」は、正確にいうと略式判決申立て(motion for summary judgment)に対する裁判所の命令(Order)および命令の理由(Memorandum Opinion)という形をとっている。

(注2) VMware, Inc(ヴイエムウェア)は、米カリフォルニア州パロアルトに本拠を置くIT企業である。ITの仮想化市場において世界一のシェアを誇る製品やサービスを開発・販売しており、ソフトウェアベンダー全体としても世界第5位の売上高である。

(注3) DellはクラスV 普通株式の発行にあたり一般投資家向けのFAQ「 DELLのClass V Common Stock FAQ (全8頁)」を公開している。以下で一部仮訳する。

A)一般的な質問

1)追跡株(tracking stock)とは何か?

追跡株は、Dell Inc.(「Dell」)とEMC Corporationの親会社(「Denali」)によって発行された普通株(「クラスV普通株」)のクラスになる。 (以下「EMC」という)。 追跡株は、VMwareビジネスにおけるデナリのクロージング後の経済的関心の一部のパフォーマンスを追跡することを目的としている。Denaliは、クラスV普通株式の発行済み株式がVMware普通株式の株式と最初に1対1の関係を持つように、取引の完了時にクラスV普通株式の株式をいくつか発行する。 現在、クラスV普通株式約2億2,300万株を発行する予定である。

3)なぜEMCの買収資金を調達するために追跡株が使われているのか?

追跡株は、EMCの株主に、Dellとの予想される収益の相乗効果による価値創造から利益を得る機会を与える。現在、EMCの株主はVMwareの81%を間接的に所有している。取引の完了時に、EMCの株主は、VMwareビジネスにおける53%の経済的利益を追跡することを目的としたクラスV普通株式の株式を所有する。VMware事業に対するEMCの所有は、この取引に対するデナリの戦略的根拠の基本的な部分である。VMwareの成功は、Dell / EMCとDenaliを組み合わせたビジネス戦略にとって重要である。VMware事業における大きな経済的利益を維持することは、一般株主にとって最善の利益になると信じている。取引に利用できる資金調達の量に制約がある場合、追跡株の発行により、100%の現金対価で構成される取引よりも、DenaliはEMCに対してより高い購入価格を支払うことができる。

その他に次のような項目につき説明している。EMC株主への影響VMware株主への影響

(注4) Corwin事件に関しては2018年デラウェア州最高裁判所判決の解説論文がある。

大阪府立大学准教授 古川朋雄「買収対象会社取締役に対する責任追及訴訟におけるデラウェア州の判断枠組み―Corwin事件最高裁判決を中心に―(1)」

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本年6月に集中するトランプ政権の足元を危うくする危険をはらむ一連の連邦最高裁判決の背景とその内容を法的に検証

2020-07-04 18:11:41 | 国家の内部統制

 2020.6.17 カナダの大手法律事務所であるMcCarthy Tétrault LLP報告「Textualism(文言主義/文理主義/原文主義/法文尊重主義)」(筆者注1)に基づいて:米国連邦最高裁判所(SCOTUS)は、法律上の単語を介してLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー(生まれた性と異なる性で生きる人)、クエスチョニング(性自認や性的指向を定めない人)の頭文字をとっている)の権利を勝利に導いた(On the Basis of Text: SCOTUS Deals Victory for LGBTQ Rights Through the Words on the Page)」とする解説記事が届いた。 この判決は極めて保守化する米国司法の中で画期的な内容といえるし、わが国でも解説記事は多い。

 しかし、週刊誌やSNS等であればそれで良しとできようが、本ブログではそうはいかない。

 解説サイトをいくつかあたった結果に基づき、個性的な内容であり、かつ判例解説として代表的と思われる解説レポートを抜粋すべく、以下のとおり整理した。

 今回は、まず、この裁判をめぐる連邦最高裁の人事問題や連邦議会とのかかわり等周辺的な情報も含め整理し、(1)NPRの記事を中心に紹介し、次回以降、順次(2)以下の判決に関するレポートを紹介する。

 できる限り、この連載中で連邦最高裁判事の人柄や米国民にどのように理解されているか等についても随時引用するつもりである(単にリベラル派や保守派で片づけるには米国社会はもっともっと複雑である)。

(1)2020.6.15 ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)(筆者注2)Supreme Court Delivers Major Victory To LGBTQ Employees」

(2)2020.6.15 SCOTUS blog :Amy Howe  「Opinion analysis: Federal employment discrimination law protects gay and transgender employees (Updated)」

(3)2020.6.16 McCarthy Tétrault LLP報告「テキスト主義に基づいて:米国連邦最高裁判所(SCOTUS)は、ページ上の単語を介してLGBTQの権利を勝利に導いた(On the Basis of Text: SCOTUS Deals Victory for LGBTQ Rights Through the Words on the Page)」

(4)2020.6.16 POLITICO「LGBTQ groups vow to extend landmark court ruling beyond workplace」

2020.6.15 POLITICO「With LGBT ruling, Supreme Court hands liberals a surprise victory」

 また、今回の最高裁の判決内容を精査するうちに、トランプ政権の維持にとって重要判決といえる3件の最高裁判決が浮かび上がった。

 すなわち、(1) 618、幼少時に親に連れられて米国へ不法入国した若者の強制送還を猶予する措置「DACA」について、トランプ政権による撤廃を認めないと判示, (2) 627 、国政調査の米国籍を問う質問を含むことを却下―トランプ大統領は国勢調査の延期を指示, (3)629、人工妊娠中絶を大幅に規制する南部ルイジアナ州法を認めず無効とする判断を下した判決である。 

 これらの裁判は、連邦最高裁判所の現在の開廷期(2019年10月第一月曜日~2020年10月第一月曜日)の実質最後期にあたる本年6月中に米国の保守、改革派をめぐる問題でかつトランプ政権が真剣に取り組んできた問題につき、おおよその関係者の予想に反した判決が今回取り上げた判決以外に3件出ていることも、偶然ではない気がする。

 大統領本選挙を2020年秋に控え、トランプ政権の安定性が問われる中で反トランプ陣営定の攻撃対象は単に連邦最高裁判事の保守派、革新派裁判官では解決できない、まさに裁判官の法遵守精神が問われている重要な問題であるだけに、解説を加えるべき論点は多い。

 筆者としては、これらの裁判の判決内容の詳しい内容とかつ法律や判例などから見て後日の批判に耐えうる解説を試みたいと考える。しかし、時間の関係で今回のブログの最後に簡単な各判決文の概要のみを紹介し、詳細な解説は別途機会を改めて順次まとめたいと考える。

 なお、本文中で随時引用するが、わが国で最高裁判所の長官を含めて裁判官の法律解釈や人間性等につき国民はいかほどの情報をもっているであろうか。

 最高裁裁判官の任命は、最高裁長官の意見を聞いたうえで、内閣として閣議決定する。○最高裁長官に意見を聞くのは、最高裁の運営の実情を踏まえたものとなるよう人事の万全を期すため慣例として行っている。○最高裁長官の意見は、一般的には、出身分野、候補者複数名と最適任候補者に関するものである。○候補者については、(ア)主として裁判官、弁護士、検察官の場合は、最高裁長官から複数候補者について提示を受け、(イ)行政、外交を含む学識経験者については、原則内閣官房で候補者を選考し、いずれの場合も内閣総理大臣の判断を仰いだうえで閣議決定する。(司法制度改革推進本部顧問会議(第5回)「配布資料5」

 さらに国民審査制度がある。日本国憲法第79条に規定される最高裁判所裁判官国民審査は、既に任命されている最高裁判所の裁判官が、その職責にふさわしい者かどうかを国民が審査する解職の制度であり、国民主権の観点から重要な意義を持つものである。最高裁判所の裁判官は任命された後に初めて行われる衆議院議員総選挙の投票日に国民審査を受け、この審査の日から10年を経過した後に初めて行われる衆議院議員総選挙の投票日に更に審査を受ける(その後も同様)。

 これに比べ、米国の連邦最高裁判事に任命については、例えば司法制度改革推進本部主催「法曹制度検討会」14年10月31日第11回の配布資料 (筆者注3)  を見ておく。大統領が指名し、連邦議会上院の助言と同意を得て任命とある。この点は間違いないが、実は最高裁判事の人事は極めて現政権にとって重要な意味を持つことは言うまでもない。(筆者注4) (筆者注5)

1.2020.6.15 ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)「Supreme Court Delivers Major Victory To LGBTQ Employees」の概要

 歴史的な決定で、米国連邦最高裁判所は6月15日、「1964年公民権法(1964 Civil Rights Act)」 (筆者注6)はゲイ、レズビアン、トランス・ジェンダー(筆者注7) (筆者注8)の従業員を性に基づく差別から保護するとの判決を下した。判決結果は6-3で、トランプ大統領の最初の任命者であるニール・ゴージッチ判事(Justice Neil Gorsuch)が多数意見を書いた。この意見には、ジョン・ロバーツ裁判長(Chief Justice John Roberts)と最高裁判所の4人のリベラル派の判事が加わった。

 ゴージッチ判事は「今日,私たちは雇用主が単に同性愛者またはトランス・ジェンダーであるという理由だけで誰かを解雇できるかどうかを決定しなければならない。

「答えは明らかである」と述べた。

 彼は、人種、宗教、国籍または性別に基づいて雇用における差別を禁止する「1964年の法律(公民権法)の条文の用語によって、そのような差別が禁じられていることを明らかにした。

 この決定はLGBTQコミュニティにとって大きな勝利であり、連邦最高裁に起こされたに3つの事件で雇用者に味方していたトランプ政権にとって大きな損失といえる。

 彼らが同性愛者だったので解雇されたと主張した後に訴えた2人の関与した従業員がいる。そのうちの一人、ジェラルド・ボストック(Gerald Bostock)は、カルフォルニア州クレイトン郡の児童福祉コーディネーターとしての仕事に関し賞を受賞していていたが、ゲイのレクリエーションソフトボールリーグに参加した後に解雇されたと主張した。彼が10月にNPRに語ったように、「数ヶ月以内に、私は同性愛者であることのために解された。私は生計を失うとともに、医療保険をも失い、当時前立腺癌から回復していた。それは壊滅的であった。」

 2番目の事件では、ゲイであった現在死亡したスカイダイビング・インストラクターのドナルド・ザルダ(Donald Zarda)を含んでいた。

 3番目の事件は、ミシガン州リボニアで男性の葬儀ディレクターとして6年間働いていたエイミー・スティーブンス(Aimee Stephens,)によってもたらされたが、彼女は上司にトランスジェンダーであり、女性として働きに来ると言った2週間後に解雇された。彼女は2020年の初めに死亡したが、彼女の訴訟は生き続けた。

 ゴルジッチ判事は、1964年の法律(公民権法)の条文とセックスによる差別の禁止の面で自身の意見を表現した。

 すなわち、「性にもとづいて差別することなく、同性愛者やトランスジェンダーであることを人を差別することは不可能である。」と判事は判決文に書いた。男性に惹かれた2人の従業員(男性1人、もう1人は女性)の例を挙げた。「雇用主が男性に惹かれているという事実以外の理由で男性従業員を解雇するならば、男性に惹かれる女性ではない場合、それは明らかにセックスに基づく解雇であると、同判事は述べた。

 ゴルジッチ判事の意見は、最高裁裁判所のもう1人のトランプ大統領に任命された判事であるブレット・キャバノー(Brett Kavanaugh)判事から2つの反対意見を引き出した。これらトランプ大統領が任命した2人の判事は、エール法学教授ウィリアム・エスクリッジが"「塹壕戦(trench warfare)」(戦争において、当事国同士が戦場に長大な塹壕を築城し、互いに相手の塹壕を突破できずに長期に渡って戦線が膠着した状況)と呼んだ口頭によるだけの論戦バージョンであった。

 クレランス・トーマス判事(Justice Clarence Thomas)が加わったサミュエル・アリトー判事は、リード反対意見を書いた。それは、本質的に法令の言葉に忠実であり続けるふりをするが、代わりに"社会の現在の価値をよりよく反映するためにそれを更新する」という名目の下で多数意見を非難した。

 トランス・ジェンダーの解雇事件で雇用主である葬儀場側を代表した弁護士ジョン・バーシュ(John Bursch)は同意したが、「雇用主は法律ではなく文化に従っただけである」と述べた。

John Bursch, (Federalist Societyの正会員である)

 ゴルジッチ判事は、1964年の連邦議会は、法案の審議において性差別に基づく差別を禁止する際にLGBTQコミュニティを念頭に置いていない可能性が高いことを認めた。しかし、彼は法律の用語は明らかであると述べた。そして、彼は、法律の連邦議会の通過以来、いくつかの主要な裁判所の判決を指摘した 。 例えば、彼らは子供を持っている女性と男性の両方に対するセクシャルハラスメントを禁止するために、女性に対する差別を禁止した。

 ゴルジッチ判事が公民権法第VII編について、「法案起草者の想像力の限界は、法律の要求を無視する理由を提供しない」と述べている。しかし、ゴルジッチ判事は33ページの判決文の最後に、いくつかの潜在的な留意点を呼び起こした。

 例えば、彼は、一部の雇用主はゲイや性転換ワーカーを雇うことに有効な宗教的反対を持っているかもしれないと指摘した。しかし、彼は、「1964年公民権法が宗教の自由と交差する方法についての懸念は何も新しいものではない。宗教的な理由で、ゲイや性転換者個人を雇うことに反対する雇用主に潜在的な生命線を提供するかもしれない「スーパー法」(筆者注9)として「1993年宗教の自由回復法(1993 Religious Freedom Restoration Act)」を指摘した。

 しかし、6月15日の判決は多くの点で顕著なものであった。すなわち、現在米国の州の半数近くがLGBTQの従業員に法的保護を与えていない。今後、連邦法は、性的指向や性同一性に基づいて行われた解雇やその他の不利な雇用決定から、それらの州の従業員を保護することになろう(議会が立法に動く可能性が高い)。

 今回の最高裁判決は、これらの事件でその判決の決定を利用して、トランス・ジェンダーたる個人に対する以前の保護を奪う新しい指令を出して雇用者に味方したトランプ政権に対する直接的な叱責である。

 LGBTQの擁護、支持者は、法的な突起が今後あるかもしれないことを認めているが、スタンフォード大学ロースクールのパメラ・カーラン教授(Pamela S. Karlan ) (筆者注10)は、企業、病院、大学などの大企業からの差別に直面するLGBTQ労働者はほとんどいないと楽観的に表明した。

Pamela S. Karlan氏

 カーラン教授は2019年10月の最高裁判所の証言で公民権法第VII編事件の1つの事件に関し「カトリック司教会議以外の誰かが入ってきて、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人々を雇うために毛布として提供を拒否する雇用主が多数いるとは見ない」と、主張した。

 イェ―ル大学のエスクリッジ教授もこの点に同意した。彼は、アール・ウォーレン裁判長が率いる1960年代のリベラルな最高裁判所は、同性愛者に適用するためにサイコパス(反社会性パーソナリティ障害者)が入国することを禁じた移民法を解釈したと指摘した。

 すなわち、「LGBTの人々は、最後の世代で長い道のりを歩んできた。その国は最後の世代で長い道のりを歩んできた。そして、最高裁判所は、最後の世代で長い道のりを歩んできた」と、米国の同性婚平等の歴史について、今後出版予定の本「結婚平等:無法者から義理まで」の共著者であるエスクリッジは述べた。

 「同性婚の自由(Freedom to Marry,)」の創設者・代表である弁護士エヴァン・ウルフソン氏(Evan Wolfson)は、「この判決から1つの大きな教訓はあきらめないことである。あなたは物事を変えることができると信じる必要がある」と述べた。

 判決後、記者団に対して、トランプ大統領は本判決について「最高裁は判決を下し、我々は最高裁判所の決定と共に生きている」と述べ、彼は今回の判決は「非常に強力」と呼んだ。

 民主党大統領候補者のジョー・バイデン元副大統領は声明の中で、今回の最高裁判所の決定を称賛し、「今日、公民権法の第VII編の下で「性的指向」と「性同一性差別」が禁止されていることを肯定することによって、最高裁判所は、すべての人間が敬意と尊厳をもって扱われるべきであるという単純だが深くアメリカ人の考えを確認した」と述べた。

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(筆者注1) textualism(文言主義/文理主義/原文主義/法文尊重主義)とは、法律の解釈は、主に議会の法律立法の意図、法律が改善することを意図した問題、または法律の司法または正しさに関する重要な質問等法律の文言以外の情報源は考慮せず、あくまで法律文言の通常の意味のみに基づいておこなうべきとする法形式主義理論である。(Wikipedia を抜粋、仮訳した)

 なお、あえてここでwikipediaの簡単な解説を引用したのは、この問題が裁判所とりわけ連邦議会と連邦最高裁との法解釈をめぐる確執と大きくかかわるし、また州の立法や司法等への影響を与える重要な問題であり、従来から米国の多くの公法研究者の取り上げるテーマであったからである。したがって、サイトから読める代表的な米国の論文を以下で列記する。感心のある方は、ぜひ各論文に直接あたられたい。

①2008年 Peter J. Smith(Professor,  George Washington University Law School  )「TEXTUALISM AND JURISDICTION(Forthcoming, Columbia Law Review)」

 textualismに関する裁判実務面等からみた批判的論文である。

② Schweitzer, Thomas A. (2017) 「Justice Scalia, Originalism and Textualism」" Touro Law Review: Vol. 33 : No. 3 , Article 7

Textualismの提唱者とされる連邦最高裁のアントニア・スカリア(Antonin Scalia)判事の例えばオバマケア法(Patient Protection and Affordable Care Act)に対する法廷運営や人物論を批判的に書いている。

③ 2017.11.14 Jonathan R. Siegel(Professor of Law at George Washington University Law School.)「Legal scholarship highlight: Justice Scalia’s textualist legacy」

④ 2019 Jesse D.H. Snyder 「HOW TEXTUALISM HAS CHANGED THE CONVERSATION IN THE SUPREME COURT」(University of Baltimore LawReview: Vol. 48 : Iss. 3 , Article 4.) 

⑤ 2018.2.27 スタンフォード大学Hoover Institute:Clint Bolick(Reseach Fellow)「The Case For Legal Textualism」

  一方、わが国でtextualismに関する論文を筆者なりにさがしてみた。(1) 立命館大学法学部教授 大西祥世氏「法解釈と権力分立:立法府を中心に」:アントニン・スカリア連邦最高裁判所判事等が主張した司法の法解釈論で、ヴィクトリア・ノース(Victoria Nourse)氏(ジョージタウン大学ロースクール教授)のゼミを受けてこの論文を書いたとある。

ヴィクトリア・ノース(Victoria Nourse)氏

(2) 広島大学教授 福永実教授「アメリカにおける制定法解釈と立法資料(6)」広島法学 40 巻4号(2017 年)- 188 :福永教授によると、new textualismを支持する連邦最高裁判事、公法学者が出ているといわれている。

(筆者2) ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)は、1971年4月にアメリカ公共放送社 (CPB)によって設立された。前身はNERN(National Educational Radio Network)。本部はワシントンD.C.にあり、現在はNPRを正式名としている。約900の加盟局に番組を配信、組織化するとともに独自編成によるインターネット放送や、加盟局のストリーミングサービスの代行を行っている。加盟局そのものが独自の組織体であり、編成権は各放送局に委ねられている。加盟局はNPR以外の公共ネットワークから番組の配信を受ける事も出来る(日本語でいうクロスネット局)。

 配信する番組はNPR独自制作のほか、加盟局制作の番組も配信する。独自番組はニュース・文化系が中心であり、通勤時間帯に放送されるワイド番組『Morning Edition』及び『All Things Considered』がある。クラシックやジャズなどの音楽番組も制作している。

 NPRの予算は12%が政府からの交付金、50%が聴取者とスポンサーからの寄付金、残りは財団や大学などから提供される。

 発足以来、略称の「NPR」を愛称として知られていたが、2010年にNPRを正式名称にしている。(Wikipediaから一部抜粋)

(筆者注3)この資料を読んで関係者はすぐにその誤りに気がつくであろう。すなわちAttorney Generalを「法務総裁」と訳している。明らかに誤りとは言えないが、閣僚たる「司法長官」という訳語が一般的であると思う。

(筆者注4) JETRO 今泉慎也「米国連邦最高裁の新たな裁判官の指名と上院審議」(2009年7月)は、筆者が調べた結果とも合致する実態に即した優れたレポートである。一部抜粋する。・・・

連邦裁判所、とくに連邦最高裁の裁判官の選任は、上院の「助言と同意」(Advice and Consent.)を要する。大統領による指名が行われると、裁判官任命の案件はまず上院司法委員会(Committee on the Judiciary)に付託され、confirmation hearing(筆者注5)(原文ではこの重要部が抜けているので筆者の責任で追加した)、その議決を経て、上院の本会議において採決が行われる。指名を受けた者については、全米法律家協会連邦司法常設委員会(American Bar Association, Standing Committee on the Federal Judiciary)による格付けが行われ、候補者はWell Qualified (WQ),Qualified (Q),Not Qualified (NQ)の三段階で評価される。ソトマイヤー氏については、6月1日付でWQの評価が与えられた。司法委員会の公聴会にあたって、候補者に事前に質問票(questionnaire)への回答が求められ、さらに追加の質問が行われる。承認手続においては、候補者の経歴、過去の発言、活動、過去の裁判が根掘り葉掘り吟味される。

 候補者が、裁判官としてふさわしい人物であるかどうか、法律家としての有能であるかどうか、といった点が審査されることは言うまでもない。しかしながら、審査はそうした側面にとどまらない。大統領は、将来の法制度のあり方をにらんで、自分の所属政党、支持勢力にとって望ましい立場をとるであろう者を裁判官に任命しようとし、他方の政党は、さまざまなテクニックを駆使してそれを阻止しようとする。保守とリベラルとのさまざまな対立軸・争点――たとえば中絶(abortion)問題――が承認手続にも持ち込まれ、たとえ候補者が法律家としてWQの格付けを与えられていたとしても、候補者の政治意識やイデオロギーを問おうとする動きが強まっている。

(筆者注5) 大統領の強大な人事権に対する野党の対抗手段はかなり激しいものがある。その1つが (筆者注3)“confirmation hearing”である。例えば連邦最高裁裁判官の指名で最近時ではブレット・キャヴァノー(Brett Kavanaugh)判事の時は2019年9月4日~7日の3日間にわたる激しいやり取りがあった。そのyoutube のアクセス回数が極めて多いだけでなく、きわめて論戦内容は興味深い内容である。

 この公開公聴会は多くのメデイアや人権擁護団体等が押し寄せており、野党である民主党の代表格であるダイアン・ファインスタイン(Dianne Feinstein)議員、カーマラ・デヴィ・ハリス( Kamala Devi Harris)議員等大物議員が論戦をはっている。

Dianne Feinstein氏

 キャバノー氏の後ろの席には元国務長官であるCondoleezza Rice氏がいる。彼女は当時スタンフォードビジネススクールの教授であったがなぜそこにいるの?また、その会議には筆者がかつて米国視察時に面会している上院司法委員会の長老であるパトリック・リーヒー(Patrick Joseph Leahy)議員も出席している。

(筆者注6) JUSTIC comから the Civil Rights Act第7編の解説文を仮訳する。

 1964年公民権法の第VII編は、人種、肌色、国籍、性別、宗教など、特定の特性に基づく差別から従業員を保護する連邦法である。第VII編では、雇用主は雇用のいかなる期間、条件または特権に関して差別することはできない。同法の違反を引き起こす可能性のある分野としては、採用、雇用、昇進、移転、教育トレーニング、懲戒処分、解雇、仕事の割り当て、業績の測定、福利厚生の提供などがある。

 第VII編は、15人以上の従業員を持つ民間部門と公共部門の双方の雇用主に適用される。また、連邦政府、雇用機関、労働機関にも適用される。第VII編は、雇用機会均等委員会(Equal Employment Opportunity Commission)によって法施行される。

 第VII編の対象となる会社、団体等に雇用されたり、その会社に就労する場合、人種、宗教、国籍、性別、宗教的特徴に基づく職場の決定に関して、雇用を拒否されたり、異なる扱いを受けたりすることはできない。これらの保護された特性のいずれかを持つ人との関連付けに基づいて、当該従業員を異なる扱いを受け取る従業員はありえない。

(筆者注7) トランスジェンダー(Transgender)は、ラテン語で「乗り越える」や「逆側に行く」を意味する「トランス」という言葉と、英語で「社会的性別」を意味する「ジェンダー」との合成語である。一般に (常にではない) 生まれたときからもっているとされる、伝統的に社会で認識されている役割と同様の規範的な性役割に収まらない傾向を含む、あらゆる個人および行動、グループに当てられる一般用語である。(Wikipediaから抜粋)

   一方、「性同一性障害(ender Identity Disorder)」というのは、医学的な疾患名で、自分の身体の性別と自分の気持ちの性別が異なり、時には性の適合を願うこともあるという状態に対する病名である。性自認と異なる自身の身体に対する違和感や嫌悪が強い状態、ともいわれる。性同一性障害をかつてはトランスセクシャル(性転換症)ともいった。

(筆者注8) Justic comサイトの解説を引用、仮訳する。

 トランス・ジェンダーの従業員は、性同一性やジェンダー表現に基づいて職場で非常に厳しい差別に直面することがよくある。この種の差別には、オフィス内の憶測やトランスジェンダーの従業員の性同一性に関する虚偽の噂など、幅広い攻撃的行為が含まれる可能性がある。それは重大なハラスメントだけでなく、身体的または性的暴行にも及ぶ可能性がある。

 米国のいくつかの州では、3つの一般的なアプローチのいずれかを使用して、性同一性差別を明示的に禁止している。アイオワ州やニューメキシコ州などの特定の州では、保護された特性として性同一性を明示的に含む法律が制定されている。コロラド州やミネソタ州などの他の州では、性的指向による差別(prohibit sexual orientation discrimination)が禁止されており、性指向差別の法的定義には性同一性が含まれている。カリフォルニア州は、トランス・ジェンダーの従業員を職場での差別から保護し、差別禁止法の目的で性の法的定義に性同一性やその表現を含めている。

 連邦法は性同一性差別を明示的に禁止していないが、EEOC(Equal Employment Opportunity Commission)雇用機会均等委員会をいう。人種、宗教、性別などのあらゆる雇用差別を防止するための行政活動をする米政府内の独立機関。1965年設置)は、性同一性に基づいて差別する雇用者が1964年公民権法の第VII編に基づく性差別の禁止に違反しているという意見を発表した。この意見は、連邦機関が彼女が性移行を受けたことを知った後、連邦の雇用を拒否されたトランスジェンダーの女性のケースに関連して提供された。それはEEOCの意見または決定であるが、連邦裁判所の一般的傾向は、性同一性差別が第VII編と特定の憲法上の保証の下で禁止されている性差別の一形態であることを見出すことにある。

(筆者注9) スーパー法(super statute)という新たな用語は、2001年にイエール・ロースクールのウィリアム・エスクリッジ・ジュニア教授(Professors William Eskridge, Jr.)とニューヨーク大学ロースクールのジョン・フェレジョン教授(Professor John A. Ferejohn )によって「公的文化における新しい規範的または制度的枠組みである「スティック」を確立するための努力」を特徴付けるために適用され、 「法律への広範な影響」を持つものをいう。その結果、法律としての正式な地位を超える「準憲法」上の重要性を持っているという概念である。

William Eskridge, Jr氏(Federalist Society会員 )

(筆者注10) パメラS.カーラン(Pamela S. Karlan)教授の経歴(スタンフォード大学ロースクールサイトから抜粋、仮訳) 一部筆者の責任で補足した。

 生産性の高い学者であり、受賞歴のある教員であるパメラS.カーランは、学生が裁判所で訴訟を起こしているロースクールの最高裁判所訴訟クリニックの共同ディレクターである。 投票と政治プロセスに関する全米有数の専門家の1人である彼女は、カリフォルニア州の公正政治実践委員会(California Fair Political Practices Commission (州の政治改革法の公平で効果的な管理に主たる責任を負う5人の委員からなる独立した非党派の委員会。委員会の目的は、公務員が政府の意思決定プロセス、政府の透明性を促進し、政治システムへの国民の信頼を育むことにある)、全米黒人地位向上協会/全国有色人種向上協会( National Association for the Advancement of Colored People: NAACP)は、メリーランド州ボルチモアに本部を置く、アメリカ合衆国で最も古い公民権運動組織の一つ)の法的防衛基金の補佐役および協力弁護士、公民権の副補佐官代理を務めた。 米国司法省の課(米国対ウィンザーでの最高裁判所の決定の実施に責任を負うチームの一員として、彼女が法務部の臨時奉仕賞(従業員の業績に対して部門の最高の賞)を受賞した場合)。 カーラン教授は、憲法、憲法訴訟、民主主義の法律に関する多数の裁判事件簿、および多数の学術論文の共著者である。

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