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デラウェア州衡平裁判所が被告MFW社(M&F Worldwide Corp)の原告の申立ての破棄およびセーフハーバー適用を拒否する判決を下す

2020-07-07 18:19:22 | 企業改革法(SOX法)とガバナンス

 さる7月6日、筆者の手元に2020.7.5 付けのHarvard Law School on Corporate Governance「デラウェア州の衡平法裁判所は、MFW社の原告の破棄申立てとセーフハーバー適用を拒否する判決を下す(Chancery Court Denies Motion to Dismiss and Application of MFW Safe Harbor)」と題する解説レポートが届いた。

 その中身は2020年6月11日(木)に出された94ページのデラウェア州衡平裁判所判決(命令および命令の理由(memorandum opinion)の中で、ジェイ・トラヴィス・ラスター(J. Travis Laster)Vice Chancellor(副裁判官)は、

Laster V.C.

原告(上訴人)アラン・カーン(Alan Kahn) v.被告(被上訴人) M&Fワールドワイド社(M&F Worldwide Corp(以下「MFW」という)88 A.3d 635(Del.2014)事件判決によって確立された安全な港(safe harbor)法理論は本件では適用されない、すなわちセーフハーバー理論はより単にビジネス側に有利になる判断基準ではなく、公平性全体が運用の基準になる可能性がある判断標準である。本判決(注1)は、Dellが行った事実行為はかなりユニークなものであるが、MFWの利益につながる点、特に特別委員会の設立、交渉におけるその役割、潜在的な脅威または強制および取締役の独立性に関する問題について、取締役会に役立つガイダンスを提供するものといえる。

 筆者なりに解説内容を斜め読みしたが、この分野は筆者の専門外でもあり、その取扱いに躊躇していたが、思い切って内容解説にチャレンジすることとした。いずれ、大阪市立大学の古川朋雄准教授などが解説を行うであろうが、先行しての解説だけに割引いて読んでいただきたい。

1.Dell Technologies(以下、「Dell」という)の'NYSEで「デル・テクノロジーズ・クラスC普通株式(NYSE:DELL)」の非上場から再上場の裁判までの時系列経緯の整理

この裁判の内容を正確に理解するうえで必須と考えられる点である衡平裁判所に持ち込まれた事実関係の経緯を筆者が独自にまとめた。限られた時間でまとめたため誤解等があろうが、後日見直す。

2013年9月、Dellの創業者であるマイケル・ソール・デル(Michael Saul Dell, 1965年2月23日生) CEOと米投資ファンドのSilver Lakeが率いる企業グループ(Silver Lake groupに249億ドル(約2兆6,643億円)で買収され、非公開(非上場)化した。

Michael Saul Dell氏                  

2016年9月、Dellは上場企業である「VMWare, Inc.(以下「VMWare」)に81.9%の株式を保有するEMCコーポレーション(NYSE上場企業)を買収(「Dell EMC」(非上場)となる)。Dell EMCは、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ホプキントンに本社を置く世界最大のストレージ機器開発企業。

この検討の一環として、Dellは、VMWare (注2)に対するDellの株式所有権の価値を追跡することを目的とした「新しい取引ができる「クラスV普通株式(new publicly traded Class V common stock)」を上場(ニューヨーク証券取引所(NYSE)のティッカーシンボルはDVMT) (注3)

DellはクラスC株式(1株に10議決権が付された株式)の新規株式公開を検討し、転換権の行使に向けた一歩を踏み出した。ここでMFWを満足させるために、Dellは特別委員会を結成し、その勧告と過半数の少数票に対する償還を条件とした。この特別委員会は償還に関してのみ権限を与えられたが、転換権の行使権限は認められなかった。

交渉の後、特別委員会はDellの最善かつ最終的なオファーを受け入れることを勧告した。しかし、クラスVの株主はそれに反対し、その後数ヶ月間、Dellは大規模なクラスV株式保有者と直接交渉したが、特別委員会は過去の勧告を再検討できないという信念のためにほとんど活動的でなかった。他方、Dellと大口のクラスV株式保有者とは合意に達した。

その合意を知らずに、特別委員会は最終的に1株当たりの高い取引を提案した。しかし、特別委員会が大規模なクラスV保有者との合意を知らされた後、特別委員会は1時間会合を開き、Dellが交渉した低価格での償還を支持することを勧告した。

Dellは2018年7月1日(現地時間)、再上場すると発表

Dellは、2018年12月11日に開催された特別会合において、株主による取引の承認を受けて、クラスV普通株取引の正常な取引終了を発表

2.デラウェア州衡平法裁判所及びデラウェア州最高裁判所に提起された訴訟

 商法や会社法関係者以外ではあまり一般的でないが、デラウェア州衡平法裁判所およびデラウェア州最高裁判所についてデラウェア州法務部が翻訳を行っているので、以下で引用する。

デラウェア州衡平法裁判所及びデラウェア州最高裁判所に提起された訴訟

 デラウェア州は、その効率的で洗練された裁判制度が世界的によく知られているが、特に会社法、ビジネス法及び商法の分野における実績・能力が高く評価されている。世界中の経験豊富な弁護士の多くが、デラウェア州に会社を設立することを依頼者に勧める最も大きな理由として、デラウェア州の裁判所及びそれらが築き上げてきた判例法を挙げている。その中でも一番注目を集めているのが衡平法裁判所(Court of Chancery)である。

 デラウェア州の衡平法裁判所は、米国内のビジネス紛争を取り扱う裁判所の筆頭格である。衡平法裁判所は、衡平法を権限の根拠とする裁判所であるため、当然のことながら、衡平法上の権利(信認義務等)及び衡平法上の救済(差止命令、特定履行等)に係る事件について審理を行い、判断を下すことができるほか、デラウェア州会社法及び関連法令に係る訴訟並びに基本定款、付属定款及び合併契約といった会社の根本規則をめぐる訴訟についても管轄権をもっている。衡平法裁判所の場合、管轄権をもつ分野が限定されていることが、裁判に携わる裁判官や弁護士の専門性が高まるというプラスの効果をもたらしている。

 デラウェア州の衡平法裁判所では、1名の「Chancellor」と4名の「Vice Chancellor」が裁判官として事件の処理にあたる。

3.衡平法裁判所判決の内容解析例

 HLS on Corporate Governanceのレポート以外で比較的詳しく論じているレポートとしてMorris James LLPのPartnerであるK. Tyler O'Connell氏が書いた「新しいデル社に関する判決では、特別委員会の狭い委任範囲、特別委員会を迂回する会社の決定と許されない「強制」は、MFWの破棄申立てを阻止するものである(In New Dell Decision, Special Committee’s Narrow Mandate, Company’s Decision to Bypass Committee and Impermissible “Coercion” Prevent Dismissal Under MFW)」が読みやすかったので、ここでほぼ全文を仮訳する。

 2014年デラウェア州最高裁判所のMFW事件判決(アラン・カーン対M&Fワールドワイド社(MFW)、88 A.3d 635、645(デル2014)は、独立取締役の特別委員会と過半数の少数派投票の承認によって条件付けされた株主の買収を管理するための安全な港(safe harbor)を提供したものである。

 一方、デラウェア州衡平裁判所の2020年6月11日に行った「デル・テック社のクラスV. 株式保有者対MFW訴訟」の判決(2020 WL 3096748(Del. Ch. Jun. 2020)で、特別委員会に不当に狭い委任を与えるという同社の決定のために、少数株主の株式の償還がMFWを満足させなかったと判断した。また、同裁判所はまた、望ましくない代替取引の迫り来る脅威に照らして、同社の申し出は許されないほど強制的であると認めた。

(1)取引:DellのクラスV株式発行をめぐる償還経緯

 2013年の非公開取引に続き、デル・テクノロジー社(以下「Dell」という)の投票権の過半数は、マイケル・デル氏とその関連会社によって支配された。またマイケル・ソール・デル氏は、超議決権を持つ取締役のメンバー権を利用してDellの取締役会の投票を制御した。

 2016年9月、Dellは上場企業である「VMWare, Inc.(以下「VMWare」)に81.9%の株式を保有するEMCコーポレーションを買収した(「Dell EMC」(非上場)となる)。この検討の一環として、Dellは、VMWareに対するDellの所有権の価値を追跡することを目的とした「新しい取引ができる「クラスV普通株式(new publicly traded Class V common stock)」(「クラスV普通株式」とは、会社およびクラスV普通株式が転換または交換される可能性のあるクラスまたは一連のシリーズの1株当たり額面$ 0.01の価値を有する普通株式をいう)を発行した。

 Dellの設立証明書の下で、クラスC株(Class C shares)も上場した場合、クラスV普通株式はDellの選挙でクラスC普通株式(Class C common shares )に転換される可能性があった(「転換権(Conversion Right)」)。この転換率は、Dellの転換決定に至るまでの10日間の各株式の市場価格に基づいていた。原告は、転換権とDellが少数株主に対して日和見的に振る舞うかもしれないという懸念のために、クラスV株はVMWareの上場普通株式に対して約30%の割引で取引されたと主張した。市場参加者はこれを「Dell割引」と呼んだ。

 DellのVMWareの所有権の価値を統合するために、DellはクラスV株式の償還を検討した。同時に、DellはクラスC株式の新規株式公開を検討し、転換権の行使に向けた一歩を踏み出したと言われている。MFWを満足させるために、Dellは特別委員会を結成し、その勧告と過半数の少数票に対する償還を条件とした。この特別委員会は償還に関してのみ権限を与えられたが、転換権の行使は認められなかった。

 交渉の後、特別委員会はDellの最善かつ最終的なオファーを受け入れることを勧告した。しかし、クラスVの株主はそれに反対した。その後数ヶ月間、Dellは大規模なクラスV株式保有者と直接交渉したが、特別委員会は過去の勧告を再検討できないという信念のためにほとんど活動的でなかった。Dellと大口のクラスV株式保有者は合意に達した。

 その合意を知らずに、特別委員会は最終的に1株当たりの高い取引を提案した。しかし、特別委員会が大規模なクラスV保有者との合意を知らされた後、特別委員会は1時間会合を開き、Dellが交渉した低価格での償還を支持することを勧告した。

(2)6月11日の衡平裁判所の判決内容

 J・トラヴィス・ラスター副裁判官は、MFW基準が多くの理由で満たされていないと判断した。特別委員会のプロセスと「強制」の概念に関する裁判所の判決は、特に興味深いものである。

 このプロセスに関して、裁判所は、Dellの転換権(Conversion Right)の行使に関する権限を含まなかったため、特別委員会の委任範囲が狭すぎると説明した。裁判所は、MFWの下で、特別委員会は、会計監査役(controller)が「会計監査役の望ましい目的のための代替手段」を介して一方的に行動するのを防ぐために権限を持たなければならない、または、やや異なる「機能的同等物」を介すべきであると述べたと説明した。ここで、Dellは、償還の代わりに、クラスV保有者にとって魅力的でない結果である転換権の行使を準備し、脅迫したと言われている。

 同様に、大規模なクラスV株式保有者と直接交渉を行うとするDellの決定は、裁判所が「二重保護」を必要とすると説明したMFWに従わなかった。つまり、特別委員会は「少数株主の交渉エージェントとして機能し、少数派株主は特別委員会の仕事に対して信任投票を下すものであるとした。

 衡平裁判所は、「特別委員会の役割は補完であり、代用品ではない。意欲的な株主のボランティアグループは、特別委員会を引き継ぐことはできないし、両方の役割を果たすものである。MFWの下で、特別委員会の提案が少数派株主によって却下された場合、委員会は交渉のテーブルに戻り、受託者能力で行動し続け、利用可能な最良の取引を引き出そうとするものであると指摘した。

 また、同裁判所は許されない「強制」に関するデラウェア州の訴訟法を詳細に見直し、Dellの申し出内容は許されないほど強制的であると述べた。この問題に関して「少なくとも5つの」異なる法律の「鎖」があることを観察した後、同裁判所は、受託者による強制に関する事件が「投票や株式の入札のような投資決定を行うことによって、株主に行動を起こす行動を取ったかどうか」を考慮した。

 最後に、特別委員会の強制に関して、MFW前の訴訟法は、委員会が提案を却下した場合、より低い価格で取引を強制するコントローラの脅威が強制的である可能性があることを支持した。

 これらの概念を適用して、衡平裁判所は、原告が適切に変換権の潜在的な行使を主張し、デルの申し立てられた声明は、償還がない場合にそれを行使する意図を示唆し、許されない強制を作成したと認めました。裁判所は、強制転換の恐れは、クラスVの株主が取引のメリット以外の理由で提案された償還を承認するよう誘導する可能性があると推論した。この状況は、いわゆる「Dell割引」で運ばれた現状を伴い、強制の事実の発見も支持した。最後に、Dellが転換権の管理を維持するという決定は、特別委員会の交渉力と最終的な勧告を損なった。この状況は、委員会が償還を承認したという推論を支持したのは、それが公正だからではなく、強制改宗の代替案よりも優れていたからである。

 衡平法裁判所は、それに応じて、MFWの延期は不当であると結論付け、償還は公正な審査基準全体の下で見直される。したがって、裁判所は被告の解雇の申し立てを否定した。

(3)本判決の主たる重要事項(key Takeaways)

 本判決は、MFWの下で満たされなければならない取引に至るまでのプロセスの基準を調べる一連の最近のデラウェア州の判決(決定)に基づいている。今回、衡平裁判所は、特別委員会が適切に機能したかどうかを評価するために、特別委員会プロセスに関する申し立てを検討した。MFWの防御を望む取引の当事者は、特別委員会が適切に広範な委任を持ち、少数派株主に代わって積極的に働くことを保証する必要がある。また、少数派株式保有者が委員会の最初の勧告と一致するかどうかに関係なく、少数派と直接交渉するために委員会を迂回してはならない点を指摘した。同裁判所の「強制」に関する包括的な議論も有益であり、訴訟当事者や司法官がその概念を今後考慮するのに役立つ可能性がある。さらにケース法の異なるらせん構造(strand)を説明する際に、裁判所は、とりわけ、「強制(coercion)」に関し、類似事件であるコーウィン判決法理(Corwin context) (注4)と同様の意味をMFW判決法理でも持つべきであることを明らかにした。

4.Dell、NYSEに再上場へ 「長期的価値構築にコミットする」とマイケル・デルCEO発言

2018年7月3日 ITmeia記事が経緯も含め簡単に解説しているので参考までに引用、取り上げる。

2013年に非公開化した米Dellは2018年7月1日、再上場すると発表した

「クラスV トラッキング・ストック」(ティッカーシンボルは「DVMT」)を廃止し、クラスCの普通株式と交換することで、クラスC株式をニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場する。クラスV株式はかつて買収した傘下の“VMware”の業績に連動する株式で、約170億ドル(約1兆8,190億円)の評価である。クラスC株式との交換に際しては、株主は、クラスV株の1株に対して、クラスC株の1.3665株か、または現金109ドルを受け取れる。これにより、取引規模は約217億ドル(約2兆3,19億円)になる。VMwareはDellの上場後も独立性を維持する。

 Dellは2013年9月、創業者であるマイケル・ソール・デルCEOと米投資ファンドのSilver Lake率いる企業グループに249億ドルで買収され、非公開化した。デル氏は非公開化の目的を、迅速な意思決定と長期的な開発戦略を可能にするためとしていた。

 デル氏は7月1日、CNBCのインタビューで「この5年間で多くの変化があった。われわれは事業を完全に改造し、重要なインフラ企業になった。(この再上場は)資本構成を単純化し、われわれが創出した価値を株主に公開するためのものだ」と語った。

 今回進める再上場の手続きでは、Dellはトラッキング・ストックという種類の株式を買い取る必要がある。

 トラッキング・ストックとは、特定の事業部門や子会社(今回の例ならVMware)の業績と連動する株式で、親会社(今回の例ならDell Technologies)が発行する。普通株式と違って、対象の部門や子会社への所有権は伴わない。親会社の業績とは切り離して、VMwareの業績のみと連動する株式であることから、Dell Technologies全体に信頼を寄せているわけではない投資家もVMwareに投資できる。

 Dellは、EMCを買収した後で、VMwareの業績と連動するトラッキング・ストック「クラスV」を発行した。ニューヨーク証券取引所(NYSE)のティッカーシンボルはDVMTだ。

 そして、今回の再上場でDellが講じる手段は、このトラッキング・ストックを、Dell自身が所有する未公開の普通株式「クラスC」か現金と交換するというもの。株主は、クラスV株の1株に対して、クラスC株の1.3665株か、または現金109ドルを受け取れる。現金の支払総額は90億ドル(約9,630億円)を超えないとしている。

 つまりDellは、現在NYSEで取引されているトラッキング・ストックをプレミアム付きですべて引き取って、Dell自身が持つ未公開の普通株式と交換することによって、今後はDellの普通株式がNYSEで直接取引されるようにする。ティッカーシンボルについてはまだ発表がない。この複雑な手続きの詳細については、Dell Technologiesのプレスリリースに説明がある。

 Dellとしては、こうした策を取ることで、新規株式公開(IPO)の正式な募集手続きを踏む必要がなくなり、それに伴うもろもろの疑問もぶつけられずに済む。主に、Dellが抱えているまとまった額の負債についての疑問だ。

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(注1) 今回の衡平裁判所の「判決」は、正確にいうと略式判決申立て(motion for summary judgment)に対する裁判所の命令(Order)および命令の理由(Memorandum Opinion)という形をとっている。

(注2) VMware, Inc(ヴイエムウェア)は、米カリフォルニア州パロアルトに本拠を置くIT企業である。ITの仮想化市場において世界一のシェアを誇る製品やサービスを開発・販売しており、ソフトウェアベンダー全体としても世界第5位の売上高である。

(注3) DellはクラスV 普通株式の発行にあたり一般投資家向けのFAQ「 DELLのClass V Common Stock FAQ (全8頁)」を公開している。以下で一部仮訳する。

A)一般的な質問

1)追跡株(tracking stock)とは何か?

追跡株は、Dell Inc.(「Dell」)とEMC Corporationの親会社(「Denali」)によって発行された普通株(「クラスV普通株」)のクラスになる。 (以下「EMC」という)。 追跡株は、VMwareビジネスにおけるデナリのクロージング後の経済的関心の一部のパフォーマンスを追跡することを目的としている。Denaliは、クラスV普通株式の発行済み株式がVMware普通株式の株式と最初に1対1の関係を持つように、取引の完了時にクラスV普通株式の株式をいくつか発行する。 現在、クラスV普通株式約2億2,300万株を発行する予定である。

3)なぜEMCの買収資金を調達するために追跡株が使われているのか?

追跡株は、EMCの株主に、Dellとの予想される収益の相乗効果による価値創造から利益を得る機会を与える。現在、EMCの株主はVMwareの81%を間接的に所有している。取引の完了時に、EMCの株主は、VMwareビジネスにおける53%の経済的利益を追跡することを目的としたクラスV普通株式の株式を所有する。VMware事業に対するEMCの所有は、この取引に対するデナリの戦略的根拠の基本的な部分である。VMwareの成功は、Dell / EMCとDenaliを組み合わせたビジネス戦略にとって重要である。VMware事業における大きな経済的利益を維持することは、一般株主にとって最善の利益になると信じている。取引に利用できる資金調達の量に制約がある場合、追跡株の発行により、100%の現金対価で構成される取引よりも、DenaliはEMCに対してより高い購入価格を支払うことができる。

その他に次のような項目につき説明している。EMC株主への影響VMware株主への影響

(注4) Corwin事件に関しては2018年デラウェア州最高裁判所判決の解説論文がある。

大阪府立大学准教授 古川朋雄「買収対象会社取締役に対する責任追及訴訟におけるデラウェア州の判断枠組み―Corwin事件最高裁判決を中心に―(1)」

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米国SECが企業改革法(SOX法)第404条の内部統制要件実現の具体的行動計画を公表

2006-06-11 12:33:20 | 企業改革法(SOX法)とガバナンス

 

Last Updated:Febuary 21,2022

 最近時、監査法人サイトや金融専門雑誌等において米国企業改革法(the Sarbanes-Oxley Act of 2002)の解説記事が頻繁に出ている。同法が制定された背景は言うまでもなくエンロン事件等傷ついた証券市場の信用の建て直しであるが、その主な内容は、①監査(内部・外部)の独立性強化、②経営社の責任の厳格化・明確化、③情報開示に強化等多岐にわたっており米国の公開会社(public company)に適用される。
すなわち、わが国の企業にとって米国の証券取引委員会(SEC)に登録または登録予定している企業の子会社や支店には同法が適用されるし、また第404条「経営者による内部統制の評価」については今後わが国の法令・基準等に取り入れられることは間違いないといえる。

 去る5月17日にSECは、①公開会社のための内部統制遵守ガイダンスを公開会社会計監視委員会(the Public Company Accounting Oversight Board;PCAOB)と共同で策定する(これらの背景としては最近数ヶ月間にわたる投資家、公開会社、監査役等から大規模なヒアリングやコメントを元に分析している)、②とりわけヒアリングで指摘された最大の課題は中小企業(後記GAOの資料では資本金7億ドル以下)のおける対応が時間的に間に合わない、対応費用の負担問題等から遵守期限の延期問題や上場廃止を意図する企業も出ている(筆者注1)ことなども踏まえ、今後の行動計画を公表したので概観する。

 なお、SOX法の今回取り上げた第404条問題は一連の逐条的なSEC規則の制定作業の一部である。その長期にわたる作業の全体像を鳥瞰する資料があれば筆者としても勉強したい。

1.5月10日のSEC円卓会議と最近数ヶ月間の第404条の運用と効果についての各方面からのヒアリング状況
(1)SOX法成立2年目を迎えてこれまでの関係業界・公的機関からの意見の集約のための円卓会議の開催
 5月10日に開催されたが、それに先立って5月1日までに広く関係者から内部統制に関する報告および監査規定に関し意見を求めており、この集約結果も含め円卓会議で議論が行われた。(筆者注2)(筆者注3)(筆者注4)
(2)4月23日に公表された「小規模公開会社におけるSEC諮問委員会最終報告(Final Report of the Advisory Committee on Smaller Public Companies to the SEC )」(筆者注5)
(3)4月に連邦議会行政監査局(GAO)が取りまとめた「SOX法の小規模公開企業への適用ににあたり検討すべき重要項目に関する考察結果(Sarbanes-Oxley Act:Consideration of Key Principles Needed in Addressing Implementation for Smaller Public Companies)」(筆者注6)

2.今後SECが取り組む行動計画
(1)公開会社の経営者向けガイダンスの策定の準備
 まず第404条に関する経営者向けガイダンス草案「Concept Release」の発行と同時にすべての公開会社が必要かつ関心を持つところのSECが最終的に目的とする経営面の査定経営手順案についてのパブコメの募集を行う。また、SOX法第404条(a)項に定める①経営者による査定時における社外監査役の適切な役割 、②SECが関心を持つ第404条(b)項に定める外部監査役による監査証明の代替性についても意見を求める。
(2)SECは中小企業の法対応を支援 するため、従来からCOSO(the Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission) (筆者注7)の活動を支援してきたが、財務諸表の内部統制に関し、すべての公開会社が今後策定するガイダンスに基づき適宜対応してくれることを期待する。
 また、SECとして財務諸表に基づき経営者がいかに内部統制を図るかについてガイダンスの策定を行うことで中小公開会社が有用的に第404条(a)項の査定を完全なものに出来るようCOSOの追加的ガイダンスの範囲についても考慮中である。
(3)SECに出されたコメントについてみると、第404条の経営者の査定につきSECが意図した経営者からのトップダウンであり、完全に正確なリスク判断に基づくものではない。今後策定するConcept Releaseに対して寄せられた意見・情報および予想されるCOSOガイダンスから、財務諸表に基づく内部統制についてトップダウンでありかつリスク判断の実行を可能とする経営者向けガイダンスを発刊する予定である。
 本ガイダンスは、404条報告につき加速的対応免除会社(non-accelerated filers)(筆者注8)および小規模公開会社の対応を確実にするため、SECは当該ガイダンスにつき企業の規模や個々の企業の実情に応じられるよう配意する予定である。

3.PCAOBの監査基準の改正
 PCAOBは、本年5月17日に「財務諸表の監査時における財務諸表に対する内部統制―監査基準第2版―の改正案」を公表した。この内容はSECの提案を受けたものであり、主な改正点は次の通りである。なお、SECはPCAOBの監査基準第2版が公益ならびに投資家保護にとって一貫性のあるものとなることを保証するため、PCAOBと緊密な連携作業を行う。
(1)監査人が統合的監査において詐欺的要素に関するリスクや重大な過ちに的を絞った監査を行うことを保証するよう追い求めること。
(2)2005年5月16日付けでPCAOBが公表したガイダンスに含まれる重要な概念を組み込む。
(3)仮にあるとすれば、内部統制の効率化に向けた会社の手順の評価に対する監査人の役割を取り上げ、明確化する。

3.PCAOB検査プログラムに対するSECの監視内容等
 2006年5月1日に、PCAOBは「2006年検査目標」は監査人が監査基準第2版に基づき(1)費用削減効果的な効果をあげているかどうか、②監査人の活動が2005年5月、11月に発表したガイダンスに準拠しているかどうか、である旨発表した。SECのPCAOBに対する監視の一環として、SECの要員はPCAOBの検査プログラムも含め運用内容を監視する。とりわけ、2006年のPCAOBの検査完了時において、SECの要員はPACOBの検査において監査法人に対して前記声明の実現につき適用を積極的に働きかけたかどうかにつき検査を行う。
(2) 加速的対応免除会社(non-accelerated filers)に対する遵守期限の延期
SECは加速的対応免除会社およびその監査人に対し、①近々SECが策定しようとしている経営者向けガイダンスの恩典を受けること、②PCAOBの改正基準第2版の評価・適用の機会を提供するため、加速的対応免除会社に対し404条の対応期限の短期の延期を認める予定である。しかしながら、それらの会社においてもその延期はSOX法第404条(a)項が定める会計年度開始時点または2006年12月16日までに経営者による査定(management assessment)を実施することが前提となる。
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(筆者注1) 5月17日付けのSECのリリースでも、SEC委員長のクリストファー・コックス(Christopher Cox)は中小企業の経営者や連邦議会の議員から指摘されているSOX法第404条の免除例外はない旨コメントしている。すなわち、投資家保護の観点から公開企業の規模の大小、外国・国内企業を問わないとしている。

(筆者注2)円卓会議の議事録のURL: http://www.sec.gov/spotlight/soxcomp/soxcomp-transcript.txt

(筆者注3)SEC事務局からの論点整理のURL:
http://www.sec.gov/spotlight/soxcomp/soxcomp-briefing0506.htm

(筆者注4) 円卓会議のライブビデオも見れる。
http://www.connectlive.com/events/secicr2006/

(筆者注5) Final Report: Advisory Committee on Smaller Public Companies (sec.gov)

(筆者注6) http://www.gao.gov/new.items/d06361.pdf (全93頁)

(筆者注7) 「COSO内部統制フレームワーク」とは、1992年に米国のトレッドウェイ委員会組織委員会(COSO:the Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)が公表した内部統制のフレームワークのことである。今日、事実上の世界標準として知られている。具体的には「要約」「フレームワーク」「外部関係者への報告」「評価ツール」(1992年)、および「『外部関係者への報告』の追補」(1994年)という5分冊からなる文書で、基本的な理論や考え方に加え、内部統制評価ツールなど内部統制の具体的な方法論と枠組みが示された。この内部統制の枠組みが「COSOの内部統制フレームワーク」あるいは「COSOフレームワーク」と呼ばれるものである。
http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/coso.html参照。

(筆者注8) SECは2005年3月2日付けリリースで、2003年6月5日に遵守期限の延期措置を再度延期する措置を行っている(2006年7月15日または7月15日以降に来る最初の財務報告から内部統制に遵守が義務付けられる。)。その対象となるのがnon-accelerated filers(時価総額7,500万ドル以下の公開企業)および外国の非公開証券発行者である。

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