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米国FRBと財務省がインターネット・賭博規制に関する規則案について関係機関からの意見を公募)

2007-10-14 23:17:43 | サイバー犯罪と立法

 

 Last Updated:March 6,2021

米国の中央銀行である連邦準備銀行制度理事会(FRB)と財務省(DOT)は、10月1日付けで「2006年違法なインターネット・賭博の取締りに関する法律(Unlawful Internet Gambling Enforcement Act(以下”UIGEA”))」にもとづく法適用に関する規則(案)について、関係機関から来る12月12日を期限とするパブリック・コメントを公募している。(最終規則「31 CFR Part 132 RIN 1505-AB78))

 UIGEAは独立した法案ではなく、「2006年港湾安全および行政責任法(Security and Accountability For Every Port Act of 2006t(以下“SAEPA”))」(下院法案H.R.4954)の第Ⅷ編の5361条から5367条を指す。(筆者注1)

 ところで、わが国内でPC等の端末を使って海外の合法的カジノにアクセスするオンライン・カジノについて現行刑法(185条(単純賭博罪)、186条(常習賭博罪))の適用については困難とする論調が多い。(筆者注2)(筆者注3)

 一方では地方財政の逼迫対策として公営ギャンブル(カジノ)の旗振りをしているのが東京都や大阪府であることも情けない。(筆者注4) 

 ネット・カジノ・カフェ(オンライン・ゲーム・カフェ)の法的違法性について法務省や警察庁の見解が不透明な中で若者の間で広がっている現実(筆者注5)、特にこの問題について一番勉強しているのが「オンライン・カジノ・ファン」という現実を見るにつけ、司法・捜査当局および刑法研究者の迅速な解釈の明確化の検討や立法措置の検討が求められよう。

 そういう意味で、米国の規制立法の背景や決済機関の対応をめぐる動きは、わが国としても極めて重要な研究材料といえる。また、アメリカ人の賭け事への誘惑を満たすものとされる“Second Life”のギャンブル・セクターはUIGEAに違反するのかという問題も絡んでくる。(筆者注6)

 なお、“UIGEA”の立法により大きな経済的影響を受けているとされる英国の「賭博委員会(Gambling Commission)」の規制・監督の現状については別途解説する。


1.米国UIGEAの要旨
(1)銀行やクレジットカード会社などの金融機関(Financial Transaction Providerがオンライン・ギャンブル・サイトとの出入金・決済の取扱いを原則禁止する 。
(2)ISP等のインターネット事業者(Interactive Computer Service)がオンライン・ギャンブル・サイトを運営・リンクおよびユーザーをギャンブル・サイトへ誘導したりすることを禁止する。
(3)禁止する対象には例外がある(州内または部族内で完結するギャンブル、州内競 馬取引法(Interstate Horseracing Act of 1978)が認める競馬、米国内の証券・商品先物取引等) 。
(4)同法違反の場合、5年以下の禁固刑または罰金刑(または両者を併科)を科す。(5366条)

2.同規則案策定の法的背景および関係する各種決済手段の明確な定義付け
 “UIGEA”は、連邦監督機関であるAgenciesに対し次の内容を盛り込んだ規則について司法省と協議のうえ策定することを義務付けている。また“違法な賭け行為”等その定義や運用は連邦、州および部族(tribal)法の解釈の変更、制限や拡大を行うものではない。
 規則案のポイントとなる項目は次の内容である。
(1) 本規則において使用する用語の定義を定める。
(2) “UIGEA”が定める禁止取引きと関連しまたは容易にするため決済システム参加者が使用しうる支払いシステムを指定する。
(3)本規則に基づき、一定の参加者をその適用除外とする例外規定を定める。
(4)決済システム参加者に禁止取引きを特定したり阻止するため指定する合理的ポリシーや手続きの作成およびその適用すること支払いシステムの非例外機能の遂行を要求する。
(5)各決済システムにおいて非例外参加者のためにポリシーや手続きの非例外例の内容を提供する。
(6)違法行為に対する法執行の枠組みを定める。

3.FRBおよび財務省のUIGEAの適用に関する規則(案)の内容および各種決済形態の解説
 本公募通達は全体で52ページもので、米国人でもその説明の重複、くどさにへきへきしているらしい。しかし、良く読んでみると結構その内容はかなり“practical”である。つまり、インターネットというグローバルかつヴァーチャルな世界で違法な賭け事を決済面で規制していくという視点である。特に各決済手段の特性を分析しながら、①1取引毎のキー・コードとして使えるものはないか(identifying information)、②送金依頼人や受取人の特定につながる情報はないかといった観点から分析・模索している点である。(筆者注7)

 本ブログでは筆者なりに要点のみ説明するが、個人的に関心があったのは規則案の解釈の前提として必須といえる「第Ⅱ章 逐条分析」(6頁以下)で説明されている“UIGEA”で定める「ACH、カード、小切手取立等5つの決済システム」についてである。(筆者注8) (筆者注9)

 特に“Western Union””MoneyGram” (筆者注10)“PayPal”は既存の銀行等による決済手段とは異なる「資金送金ビジネス(Money transmitting business)」である。これらの部分について興味のある読者は丁寧に読んで欲しいし、できたら図解化したら米国の最新の決済の仕組みが勉強できる(ただし、金融機関向けに作成されたものとしては、注書きの内容も含め説明内容の不足の感は否めない)。

共通規則部(案)
【1条】規則制定権、規則制定の目的および関係規則との結合
連邦準備制度理事会および財務長官(両者を併せ“Agencies”という)は、UIGEA802条にもとづき本条案を共同作成した。制定の目的は、①本規則部が求めるところに従い「指定する支払システム(designates payment systems)」、②特定の支払システム参加者中の適用例外、③合理的にみて違法な賭博行為の特定・阻止または禁止取引(restricted transactions)の阻止および禁止のための「ポリシー」や「手続き」の策定義務の免除を受けうる決済参加者(non-exempt participants)やその内容例についての必要な定義を定めること、および④Agenciesが排他的規則制定権にもとづき指定する決済システムおよびシステム参加者中免除を受けるものに関し、本規則に基づく取締権を定めることである。
 関係規則とは、「2007年ACH規則(2007 ACH Rules :A complete Guide to Rule & Regulations Governing the ACH Network(“ACH Rules”))」に定める関連用語の定義をいう。

【2条】定義
(a)ACH(Automated clearing house system)はACH規則に基づき定められたバッチ処理による電子登録を介する資金移動システムである。ACH規則には“originating depository financial institution ”“operator ”“originating gateway operator”“receiving depository financial institutions”等の用語が定義されており、本規則でも準用する。
(b)賭け(bet)および賭博(wager)
 (1)ある人間が偶発的な出来事により一定の価値物を受け取るという合意または理解に基づき、成果価値を賭けたり、競技、スポーツ・イベント、機会に基づくゲームを行うことを意味する。
(2)宝籤やその他の懸賞を勝ち取るチャンスや機会を含む。
(3)合衆国法典(U.S.C.)28巻3702条に定めるプロおよびアマチュアスポーツの保護に関する法律(“PASPA”)に定める違法な賭け行為を含む。
(4)賭けや賭博のビジネス勘定(金融取引機関、双方行コンピュータサービスまたは電気通信サービスを除く)をもってその入出金用に賭け人または顧客によりファンドの設立や移動を行うための指示や情報を含む。
(5)次のものは除く。
 (ⅰ) 証券取引法により規制される取引行為(具体的定義は1934年証券取引法3条(a)号(47)に定められている)
(ⅱ)商品取引法(7 U.S.C.1以下)12条(e)号に基づく取引行為、登録事業者の規則に従った行為または免除取引所の取引行為。
(ⅲ)あらゆる店頭登録金融派生商品(Any over-the-counter derivative instrument)
(ⅳ)その他の取引き
(A)商品取引法に基づき規則の例外とされる取引。
 (B)商品取引法12条(e)号または証券取引法28条(a)号に基づく州ゲーム法または闇取引業者法(bucket shop law)の例外取引き。
(ⅰ)保証契約(Any contract of indemnity)または保証(guarantee)
(ⅱ)保険契約(Any contract for insurance)
(ⅲ)預金保険付預金取扱い機関の預金またはその他の取引き
(ⅳ)以下省略
(c)カード発行者
クレジットカード、デビットカード、プリペイドカード、価値保管型商品(stored value product)を発行する者またはその代理人
(d)カードシステム
(e)小切手交換所(check clearing house)
(f)小切手取立てシステム
(g)消費者:自然人のみをいう。
(h)指定する決済システム:規則案3条に掲げる。
(i)電子資金移動(Electronic fund transfer)
(j)金融機関:州法銀行または国法銀行、州また連邦貯蓄貸付組合、相互貯蓄銀行、州または連邦信用組合、その他顧客のために口座を保持する機関をいう。
(k)金融取引サービス提供業者:与信業者、クレジットカード発行業者、金融機関、その他電子資金移動、資金搬送業務、または信用取引、電子資金移動や価値保管商品取引、資金搬送サービスを利用するための端末取扱い業者、またはそれらのネットワークの参加者をいう。
(l)娯楽目的のコンピュータサービス
(m)インターネット
(n)州内取引き(intrastate transaction)
(o)部族内取引き
(p)資金搬送業務および資金搬送サービス:31 U.S.C.5330条(d)号に定める定義による。
(q)指定された決済システムの参加者
(r)禁止取引き
(s)州
(t)違法なインターネットギャンブル
(u)電子資金移動システム

【3条】指定された決済システム
 次の決済システムは、禁止取引きに関しまたは容易にする参加者により使用されるものとする。
(a)ACH
(b)カードシステム
(c)小切手取立てシステム
(d)資金搬送業務
(e)電信送金システム


 【4条】例外
 規則案に基づきポリシーの策定および運用手続きを定める義務から適用除外される決済参加機関やシステムそのものを列挙している。
(a)ACH
(b)小切手取立てシステム
(C)電信送金システム

【5条】禁止される取引きの処理
 すべての非例外的な指定された決済システムの参加者は、規制行為の特定および阻止について文書により策定すべきポリシーや手続きの設定および適用を行わねばならない。
 ポリシーや手続きは合理的な観点から次のような要件を満たさねばならない。
(ⅰ)禁止取引きの特定かつ阻止に役立つこと。
(ⅱ)その他禁止取引きに関し指定されたシステムまたは禁止取引きの参加者の
商品やサービスの受け入れの阻止または禁止にかかるものであること。

【6条】定めるべきポリシーおよび手続きの策定内容および例示
(a)各決済システムごとに見た策定内容の例示は次のとおりである(詳細は省略)。
(b)ACHの場合の例示
以下の(b)(2)および(b)(3)に規定する場合を除き、仕向預金取扱金融機関(originating financial institution)およびACH決済の借方取引きの第三者仲介機関 (third-party sender in an ACH debit transaction)、ならびにACH貸方取引きの被仕向預金取扱機関において次の行為を取っていた場合は合理的の禁止行為を阻止または禁止していたとみなす。
(ⅰ)受け付けた顧客について顧客との関係に基づき、ACH借方取引きまたはACH貸方取引きとして禁止取引きを起こしていないと保証する顧客との関係を確立・維持すべく次にいうような適正な行動を意図的にとっていた場合
 (A)顧客の事業内容の性質を解明するため潜在的な顧客についてスクリーニングを行っていた場合
 (B)顧客との間で禁止行為に関与していないとする商業契約合意を取り交わている場合
(ⅱ)仕向け預金取扱機関または第三者仲介機関が、顧客がACH借方取引きに関し禁止取引きを起こしていたことに気付いていたとき、または受け手の預金取扱い機関が禁止取引きであることに気付いていたときは当該手続きについて次の定めを行っていたときを含む。
 (A)罰金を課す時期
 (B)顧客がACHシステムを通じACH貸し方取引きを起こすことを認めない時期
 (C)当該状況下においては該当口座を閉鎖する
(2)外国の送信者(外国銀行、外国の第三者送金処理者、または外国の仕向けゲートウェイ運用者を含む)からの直接のACH借方を起こされた場合は一定の場合(中略)は合理的に阻止または禁止取引きを行ったものとみなす。
(3)略
(c)カードシステムの例(略)
(d)小切手取立て(略)
(e)資金送金ビジネスの例(略)
(f)電信送金の例(略)

【7条】連邦規制監督機関による排他的法執行要求要件
 本規則の下における要求は、次の排他的法執行に従う。
(a)指定される決済システムおよびそこへの参加機関に関する連邦の機能面上の規制監督機関は次の法律に定める裁判権に従う。
(b)指定する決済システムおよび金融取引提供者に関し、連邦取引委員会(Federal Trade Commission)は、本条(a)項に記述するとおり他の連邦の機能規制監督機関には従わない。

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(筆者注1)第109連邦議会には“UIGEA”と標題が似た法案“H.R.4411 Internet Gambling Prohibition and Enforcement Act”および“H.R.4777 Internet Gambling Prohibition Act”が上程されていたが、いずれも成立せず廃案になっている。なお、両法案はUIGEAとは内容的に重要な点で異なる法案である。

(筆者注2) Japan Casino  Newsサイトの解説が複数の弁護士の意見を取りまとめており、そのまま引用する。

「オンラインカジノに関して、明確に規定した法律はなく、判例もまだでていません。現行の法律で適否が問題となるのは、刑法185条(単純賭博罪)または同法186条1項(常習賭博罪)ですがこれが適用されるかを検討してみました。

まず、賭博罪には国外犯処罰規定がないので(刑法2条・3条)、国外のカジノや国外のサーバーがその国の営業許可を得ているか否かに関わらず、日本の刑法によって処罰されることはありません。つまり、日本人が国外のカジノで賭博行為をしたり、パソコンを操作してオンラインカジノに参加しても、刑法によって処罰されることはないということです。問題は日本国内からパソコンを操作し、国外のオンラインカジノに参加する場合です。

【考えられる問題点】
賭博罪は必要的共犯ないし対向犯とされており、相手方のない賭博行為というものは観念されず、いわば相手方と(賭け参加者とカジノ開帳側の)セットで違法とされる犯罪です。(カジノ経営者と参加者の双方を立件できなければ原則賭博罪の適用は困難です。)しかしながら、オンラインカジノの場合、上記のように国外のカジノや国外のサーバーは、その国で営業許可を得ているか否かに関わらず日本の刑法(賭博罪)の適用を受けることはありません。したがって、日本国内からの国外へのオンラインカジノへの参加は違法とはならないというのが大方の見解です。また、必要的共犯ないし対向犯の一方が、国外犯処罰規定がないことにより処罰されない場合、もう一方の扱いについて論述した文献は見当たりません。つまり、海外のカジノ運営会社やサーバーなどは、現行の日本の法律では処罰できないということになります。

日本国内でオンラインカジノが取り締まられた事例はまだありません。取り締まるべき法律自体がないからなのです。」

(筆者注3)平成18年2月23日に海外(フィリピン)のオンラインカジノへアクセスさせたゲームカフェの店員およびその客が京都府警に常習賭博容疑で現行犯逮捕された。客の負け分をフィリピンのカジノ開設者と折半していたとされている。 あるカジノ専門サイトの解説では今回の摘発の要因は、①現金の支払い受取りが同一場所で行われている点、②カフェの経営者と客であるプレイヤーが同一個所にいる点、③国内のサーバーを経由している点をあげて、刑法186条に基づく摘発を行ったのではないかと指摘している。

参考までに常習賭博罪に関するキーワードを簡単に述べておく。

「賭博」当事者の任意に左右しえない偶然の事情にかかる勝敗によって財物の得喪を争うこと。博戯(当事者の行為によって勝敗が決まるとき)と賭事(当事者の行為に関係ないことで勝敗が決まるとき)がある。

「刑法186条」常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

「利益を図る」賭博開帳の対価としての不法な財産的利益をあげようとする意思で行為すること。

 今回の容疑者はネットカフェ形式のオンライン・カジノであるが、英国のゲームソフトメーカーであるPlaytech社製のソフトを利用していた。

 法律論としては、仮に個人が自宅のPCから海外の合法カジノにアクセスして「無料ボーナス」を受け取った後に引き出すためにチップを購入し、「賭け」行為を行った場合はどうなるのであろうか。また、自分の自宅に友人等を集めて手数料を取って行ったら186条違反は間違いなかろう。

(筆者注4) 具体的には平成12年5月に設置した「地方自治体カジノ研究会」とそれを引き継いだ16年8月に設置した「同協議会」のことである。この研究会の構成都府県は、東京都、神奈川県、静岡県、大阪府、和歌山県、宮崎県の実務担当者である。ここでいう「実務担当者」とはどのような部署を指すのかが明らかでなく、当初拡大を考えていた他道府県の正式参加もままならないようである。

 協議会に参加する各府県の公式サイトで見る限り、具体的な「カジノ特別法」について言及しているのは大阪府静岡県であり、非公開の協議会(自民党カジノ議連・カジノ・エンターテイメント検討小委員会が法案や基本方針を公表・作成済み)について開催状況をサイトで報じているのは大阪府、和歌山県情報館のみである。

 地方自治体カジノ研究会の報告書全文につき、筆者は確認しようと試みたが、概要のみで全文は入手はできなかった。ちなみに、IR(統合型リゾート)に関する和歌山県の取組み経緯から一部抜粋する。

*平成16年8月 「地方自治体によるカジノ研究会」の発展的解消を受け、カジノ推進に賛同する都道府県が連携してカジノ実現のための法制度などについて検討等を行う「地方自治体カジノ協議会」が発足(東京、静岡、大阪、和歌山、宮崎、神奈川の6都府県で構成)

(筆者注5) わが国の司法・検察関係者は当然承知の情報であろうが、カジノ・オンラインの国際的なネットワークの広がりは国際的ビジネスとなっている。例えば「casinoking.com」10/7 24サイトを見て欲しい。自宅のPC等から言語の障害なしに多国語で高額の賞金獲得をいとも容易に誘う手口は決して無視しえない内容である。「無料ゲーム」としても楽しめるといいながら、無料のボーナスを餌にチップ購入(最低11万6千円等)を交換条件として「賭け」行為をすすめ、多いところでは12倍の賭けを行うかたちを取っている。同サイトの印刷は不可である。

(筆者注6) ワシントン・ロー・スクールのラマサウトリー助教授が「Second Lifeのギャンブル・セクターは“UIGEA”に違反するか」という問題指摘を行っている。わが国では、ここまでの検討はなされていないのではないか。

(筆者注6-2) 2010年5月20日FRBが”Unlawful  Internet Gambling Enforcement  Act  of  2006  Overview ”を公表している。

(筆者注7)米国の議会の“practical ”な点はもう1つある。「米国では毎年の予算がすべて法律として審議され、制定される。米国憲法は第I条第1節で、「いっさいの立法権限は議会に与える」と定めている。したがって、予算編成の権限も立法の一部として大統領ではなく議会(立法府)にあり、財政関連法案は議員が細部にわたる決定権限も持つ(もちろん通常の法案と同様、大統領には拒否権がある)。大統領は毎年2月第1月曜日に予算教書(President's Budget)を議会に提出するが、これは議会に対するリクエストにすぎず、そのまま採用されるわけではない。議会は歳入・歳出に関する法案を独自に審議し、制定することができる。日本では予算編成は内閣(行政府)の仕事であり、ここが日米の予算編成プロセスの大きな違いだと言える。
 では、実際に予算の立法化作業をどこが行うのかというと、上・下院の委員会である。連邦議会の上・下院には、それぞれ軍事・外交・通商科学・歳入・保健年金・司法・公共事業などといった専門分野別に委員会が設置されていて、歳出権限法を定める(予算以外についても、議員を通して持ち込まれるさまざまな法案をスクリーニングして公聴会にかけ、どの法案を本会議に送るのかを決めている)」
http://www.glocom.ac.jp/j/publications/2005/07/2006.htmlから引用。

 ところで、“UIGEA” 法案(H.R.4411)における連邦予算局が下院司法委員会で行った報告では2007年から2011年の間に法施行による連邦、州等行政機関が新たに負う財政支出は200万ドル(約3億3,200万円)として連邦予算全体への大きな影響はないとしている。なお、民間の決済機関がFRB等の規則に遵守するためのコストについては明らかにしていない。

(筆者注8) ACHは、 米国の連邦準備銀行(FRB)等によって運用され、銀行間の資金決済を電子的に行う決済システムである。給与振込、公共料金の支払いの他、利息や配当金の自動振込や自動引落、財務省が依頼人となる社会保障給付金等の受給資格付与プログラムに基づく給付等に利用されている。さらに最近では、大量処理に向いていることから保険の掛け金、株式の購入や法人の現金残高の連結処理等に利用されている。ACHは、米国の銀行がネットワークで結ばれて一大決済システムを構築しており、銀行、証券会社等25,000以上の金融機関で構成されている。
ACHの民間部門の実務的な運用は、全米自動決済協会(National Automated Clearing Association(NACHA)) が策定した規則により、また財務省の支払いについてはNACHAの規則に適合する範囲で連邦政府規則によって管理される。
 NACHAは、直接会員11,000以上の金融機関(商業銀行、貯蓄銀行、貯蓄貸付組合、外国銀行、エッジ法会社(1919 年のエッジ法(銀行法改正)により認められた金融会社。連邦政府の免許を受けて国際金融業務を行い、FRB の監督に服する。通常は銀行の子会社で、国際銀行業務を行うものと国際投資業務を行うものとの2つのタイプに大別される)および信用組合)、地方の40のACH協会および業界協議会を通じた585機関の代表からなる非営利協会である。
 なお、これと対象的な米国の非現金小口決済システムは「小切手」である。2004年の連銀の調査では、紙ベースの小切手のシェアーは2000年の57%(取扱額は12兆ドル(約1,392兆円)、48億枚)から2003年には45%に低下している。もっとも連銀は手を拱いているわけではなく、小切手のイメージ処理を目的とした「21世紀の小切手決済法(Check Clearing for the 21th Century Act)」を2003年10月に成立し、2004年8月28日に施行している。

(筆者注9) 米国におけるホールセールやリィテールの決済システムの図解はないのか、筆者がかねてから抱いてきた疑問は未だに解決できない。唯一の救いは連邦金融機関検査協議会(FFIEC)がまとめた「2004年3月Retail Payment System Booklet」である。実務面から見ると簡潔な図解ではあるが、小切手、クレジットカード、PIN型デビットカード、オンライン型P 2P、ACHの各決済ごとに取引stepの番号順に説明をしている。初心者にも理解しやすい内容であり、本規則案と併用して読むと用語が共通しており一層理解が深まろう。
 また、ACHだけに限ればNACHAサイトの図解がより正確で詳しい。

 これと比較するものとして既存米国銀行のシテイバンクの「手数料一覧」を見おく必要があろう。

(筆者注10) 外国送金の手段として邦銀を利用するより割安な方法として紹介されている例が多い、ただし、“Western Union”の場合、利用者は唯一の日本の代理店であるスルガ銀行と送金委託契約の締結が必要となる。また、Moneygram internationalを利用する場合は、東京にあるポルトガルの「イタウ銀行(Banco Itau S.A.)」に出向くことが必要になる。

〔参照URL〕
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/20071001a.htm
および
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/bcreg20071001a1.pdf

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Copyright © 2006-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.

 

 




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