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シリコンバレー銀行とシグネチャーバンクの破綻の原因の真相は如何、安易な経営実態はないのか、厳格な監督の視点にたつドッド・フランク法の再度復活はあるのか?(その2完)

2023-03-24 15:06:00 | 米国の金融監督機関

Ⅲ.First Republic BankおよびPacific Western Bank リリースに見るシリコンバレー銀行とシグネチャーバンクの連鎖的預金減少と緊急資本強化対策

(1) First Republic Bankのリリース概要(仮訳)

 2023 年 3 月 16 日:First Republic Bank に対する信頼の強化:合計300億ドルのアメリカ最大級クラスの11銀行からの無保険預金等を確保

  プライベート・バンクおよびウェルス・ マネジメント会社の大手である“First Republic Bank(NYSE:FRC)” は、3月16日、合計で300億ドル(約3兆9300億円)の無保険の預金を受け取ることを発表した。11行はバンク オブ アメリカ、シティグループ、JP モルガン チェース、ウェルズ ファーゴ、ゴールドマン サックス、モルガン スタンレー、バンク オブ ニューヨーク メロン、PNC バンク、ステート ストリート、Truist、およびU.S. Bank.である。

 アメリカ最大級の銀行からのこの支援は、First Republic Bankのクライアントと地域社会に揺るぎない優れたサービスを提供し続ける能力の証しである。

 11行の集団的支援は、当行の流動性ポジションを強化し、事業の継続的な品質を反映し、First Republic Bankならびに我々銀行システム全体に対する信任投票である。さらに、この期間中、継続的かつ圧倒的なサポートを提供してくれた同僚、クライアント、およびコミュニティに心からの感謝を伝えたいと思う。

 以前にお知らせした通り、First Republic Bank(以下、「銀行」という)は、追加の借入能力を通じて追加の流動性を獲得した。それ以来、最近の業界イベントに続いて、この借入能力を利用している。具体的には、2023 年 3 月 15 日現在、銀行は約 340 億ドルの現金ポジションを持っていた。これには、バンク オブ アメリカ、シティグループ、JP モルガン チェース、ウェルズ ファーゴ、ゴールドマン サックス、モルガン スタンレー、バンク オブ ニューヨーク メロン、PNC バンク、ステート ストリート、Truist、およびU.S. Bank.からの 300 億ドルの無保険預金は含まれていない。これら銀行の最初の預金期間は、市場レートで 120 日間である。

 2023 年 3 月 10 日から 3 月 15 日まで、連邦準備制度理事会からの銀行の借入は、4.75% のオーバーナイト(翌日物)・ レートで 200 億ドルから 1,090 億ドルまで変動した。

 2023 年 3 月 9 日の閉店以来、当行は連邦住宅ローン銀行(FHLB)に100億ドル5.09% の利率での短期借入金を増やした。

 2023 年 3 月 8 日営業終了時から2023 年 3 月 15 日営業終了までの付保預金残高は安定したままであり、毎日の預金流出はかなり鈍化している。

 当行は、借入金を削減し、将来の貸借対照表の構成と規模を評価することに重点を置いている。この焦点と一致し、この回復期間中、当行の取締役会は、普通株式の配当を一時停止することを決定した。

(2) 2023年3月22日Pacific Western Bank、Pac West Bancorp (Pacific Western Bankの銀行持株会社) のリリース概要(仮訳)

  当行は 3月22日、流動性や預金などの財務力、およびその他の最近の動向に関する次の更新を発行する。なお、財務情報は規制当局の監査は受けていない。

 2023 年 3 月 17 日の発表と一致して、当行は引き続き堅実な流動性と安定した預金残高の恩恵を受けており、2023 年 3 月 20 日の時点で利用可能な現金は 114 億ドル(約1兆4900億円)を超えている。

 2023年3月20日現在の無保険預金の合計が95億ドル(約1兆2500億円)を超えている。

 2023年3月20日の時点で、FDIC保険預金は、パススルー保険の対象となる口座を含め、当行の預金総額の65%を超えている, また、FDIC保険のベンチャー固有の預金は、パススルー保険の対象となる口座を含め、ベンチャー固有の預金全体の82%以上を占めた。また当行は、他の取引可能な証券に裏打ちされた6億ドル(約786億円)の預金を持っている。 当行のスポット預金金利は、年末からの緩やかな増加を反映しており、2022年12月31日の1.71%から2023年3月20日の2.04%に増加している。

 安定した預金レベルに加えて、当行はその流動性を強化するためにいくつかのステップを積極的に取っている。これらのステップには、FHLBからの借入の 37億ドル(約4847億円)、連邦準備制度銀行からの連銀貸出(Federal Reserve Discount Window) (注8)からの 105億ドル(約1兆3800億円)の借入を含む。

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(注8) Federal Reserve Discount Window: FRBの連銀貸出(Discount Window Lending)3/24➅は、商業銀行が短期の流動性ニーズを管理するのを支援することを目的とした中央銀行の融資制度。フェデラル ファンド市場で他の銀行から借りることができない銀行は、中央銀行の連銀貸出から連銀貸出金利で直接借りることができる。

【ポイント】

 具体的には、連邦準備銀行には連銀貸出(Discount Window)という制度があり、銀行は一定の金利(Discount Rates)で借り入れることが可能である。これは日本では基準貸付利率(以前の公定歩合)と呼ばれているもの。

 最後の貸し手機能として、連銀貸出は、商業銀行に非常に短期のローン (多くの場合一晩) を提供する中央銀行の手段。連邦準備制度理事会は、商業産業を支援する金融機関に連銀貸出を提供している。連銀貸出はフェデラル ファンドのターゲット・ レートよりも高く、これにより銀行は相互に借り入れを行い、必要な場合にのみ中央銀行に頼るようになる。

 連銀貸出による借入は、短期 (通常は一晩) で、担保付きである傾向がある。これらのローンは、中央銀行に預金する無担保融資銀行とは異なる。米国では、これらのローンは割引率よりも低いフェデラル ファンド・レートで行われる。外国の銀行でさえ、連邦準備制度理事会の連銀貸出から借りることができる。

 商業銀行は、短期的な流動性不足を経験しており、迅速な現金注入が必要な場合、連銀貸出で借り入れる。ただし、銀行は通常、金利が安く、ローンは担保を必要としないため、他の商業銀行から借りることを好む。(Investpediaから一部抜粋、仮訳)

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シリコンバレー銀行とシグネチャーバンクの破綻の原因の真相は如何、安易な経営実態はないのか、厳格な監督の視点にたつドッド・フランク法の再度復活はあるのか?(その1)

2023-03-24 15:01:57 | 米国の金融監督機関

 筆者はシリコンバレー銀行とシグネチャーバンクの破綻につき、本ブログで連載して取り上げてきた。(直近のものはここ)その中で金融監督機関であるFRBの役割に内容がいかにも弱いという印象を抱いた。

 しかし、その後の調査で2018年にトランプ前大統領が行った「Dodd Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act:ウォール街改革、および消費者保護に関する法律(以下、DFという)」(注1)の緩和法(「経済成長、規制緩和、および消費者保護法(Economic Growth, Regulatory Relief, and Consumer Protection Act :(S.2155)」)が原因であるとの解説を見出した。

 一方、この2行に連鎖して、3月16日カリフォルニア州のFirst Republic Bank の2022年末の預金残高の大幅減少をカバーすべく米国最大手銀行11行の主要な貸し手が、資金の流出の加速を抑制するために、今月初めに支援策として合計300億ドルを無保険預金した旨同行は公表した。さらに2023年3月22日、Pacific Western Bank ;Pac West Bancorp :Pacific Western Bankの銀行持株会社) は 3月22日、流動性や預金などの財務力、およびその他の最近の動向に関する次の更新情報を発行した。なお、財務情報は規制当局の監査は受けていない。

 今回のブログは、2つのレポートをもとに、この2つの視点からあるべき立法論、金融監督の観点から論じるとともに、First Republic BankおよびPacific Western Bankの預金者や投資家向けリリースの概要を紹介する。

 Ⅰ.規制の失敗101:シリコンバレー銀行の崩壊から明らかになったこと

公益ジャーナリズムProPublica記事を仮訳する。

 3月10日以降のシリコンバレー銀行とシグネチャーバンクの破綻は、おなじみのサイクルの終点であった。最初はブーム。急拡大、次に息を呑むほど速い破綻、そして国家による救済。我々は今、事後分析の瞬間にいるが、誰もが規制当局がこれまでどこにいたのか疑問に思うときにある。

 シリコンバレー銀行は、その危険信号がどれほど明白であったかですでに悪名高いものになっている。おそらく最も明白なのは、連邦住宅貸付銀行システム(FHLBS: Federal Home Loan Bank System))から借入の急速な成長であった。銀行の専門家は、この大恐慌時代の政府支援の貸し手のグループを、銀行の最後から2番目の手段として知っている。(FRBは、いつものように、最後の貸し手である。2022年末、シリコンバレー銀行は150億ドル(約1兆9650億円)のFHLBS融資を行っており、2021年の融資額ゼロから急増させた。(注2)

 「それは、よく見る必要があるという危険なサインである」と、金融規制を専門とするコロンビア大学のロースクール教授であるキャサリン・ジャッジ氏(Kathryn Judge)は筆者に語った。しかし、FHLBローンが監督・規制当局の注意を引き起こしたという兆候はなかった。

Kathryn Judge氏

 もちろん、大失敗の主な責任はSVBの経営陣にあることは間違いない。

 しかし、規制当局は、銀行家が常にリスクを冒したくなるため、それらが存在することを理解することになっている。一般的に銀行家は、成長が速く、安く借りて、自由に貸し出し、より高いリターンを得ることを期待して、投資を長期間無意味に閉じ込めたいと思っている。

 一部のコメンテーターは現在、銀行監督・規制の強化を求める声を繰り出しているが、これはおそらく賢明な動きといえよう。しかし、2つの銀行の崩壊は、規制当局の文化が自由に使える規則、法律、またはツールと同じくらい重要であることをもう一度証明している。

 少なくとも1人のジャーナリストは、早くも2022年11月に、シリコンバレー銀行を含む銀行の脆弱性の高まりを検出した。連邦預金保険公社(FDIC)の議長もこの問題について警告していた。いくつかの空売り筋(short seller)は、これら銀行の株に賭け始めた。しかし今、無謀な銀行家と緩い規制当局の組み合わせは、金融危機と連邦政府の救済、そして規制当局が次回はもっとうまくやると約束するというよくリハーサルされた光景を私たちに残した。(そして、はい、これは救済でした。一部の預金者は損失に直面しており、連邦政府は国民の支援を受けて、まだ未知の規模とコストでそれを阻止した。

 この特定の破綻の厄介な側面の1つは、銀行がどれほど目立たないか、その原因がどれほど基本的であったかということである。 規制当局は、シリコンバレー銀行の危険を検出するために特別な分析を必要としなかった。 ただし、彼らはその財務結果に気付く必要があった。 確かに、2018年に連邦議会は、SVBのような銀行がより頻繁なストレス・テストを受けることを要求した後のグローバル - 財務不能のドッド・フランク規制を緩めたが、これらのテストでは極めてふうがわりまたは極端なリスクを測定した。 この場合に必要なのは、定期的な監督だけであった。 これら銀行には、基本的に明確なリスク制御の欠陥があり、その証券取引委員会の提出報告で、その帳簿に損失を明らかにしていた。

 シリコン バレー銀行の資産は劇的に増加し、預金残高も 5 年間で 4 倍になった。 どちらの現象も、ほとんどの場合、心配な兆候である。 同行はまた、経済の1つのセクターに過度に集中しており、その預金の異常に大きな割合(約94%)が無保険であり、FDICが預金ごとに保証する250,000ドルの制限を超えていた。

 すべての債権者が一度に返金を要求した場合、銀行は生き残ることができない。ある日目を覚まして預金が保護されていないことに気づく可能性のある銀行の顧客の割合が大きいほど、引き出し集中のリスクが高くなる。

 シリコンバレー銀行がそれらの預金で行ったことは、別の警告信号であるべきであった。 彼らを利用して、あまりにも多くの長期国債を購入した。 国債金利が上昇すると、債券は価値を失う。 誰も警告を必要とすべきではなかったが、銀行自体は、金利リスクが直面している最大の危険であると述べた。規制当局は、銀行が FHLB システムから多額の借入を開始する前にそのことに気付くべきであった。

 2022年の第3四半期のSEC提出書類で、銀行の親会社は、総資本を圧倒するのに十分な大きさの債券購入による損失に座っていることを明らかにした。それは監督当局が銀行に行動をまとめるように言う良い機会だったであろう。

 しかし、シリコンバレー銀行はそうするどころか、その年のほとんどの間、最高リスク責任者(chief risk officer: CRO)(注3)が空席であった。「規制当局はそれを知る必要があり、それは重要でなければならない」と、規制状態を追跡するワシントンの非営利団体であるRevolving Door Projectの創設者兼ディレクターであるジェフハウザー(Jeff Hauser)氏は「成功を知恵の証拠として評価すると、下級銀行の審査官が「この場所にはリスクオフィサーがおらず、帳簿上のリスクに対処する計画がない」と言うのは難しい」と筆者に語った。

 銀行規制当局には素晴らしい権限がある。彼らは銀行に検査に出向き、その業務を調べ、修正を要求することができる。問題は、監督機関がめったにそうしないことである。 長年の金融アナリストであるクリス・ホレン(Chris Whalen)氏は「規制当局は、格付け[機関]やその他の分野で対立するすべてのエージェントのようなものである。彼らは良い時は流れに身を任せ、悪い時は決め球を落としてしまう」と筆者に語った。

 SVBの親会社を規制するサンフランシスコ連銀SVB自体を監督するカリフォルニア州の規制当局である「金融保護・イノベーション局(California Department of Financial Protection and Innovation (DFPI)」は、SVBが脆弱でなかった2022年、SVBに資本調達を要求した可能性がある。彼らはまた、銀行に普通預金口座の金利を上げること、言い換えれば、お金を貸すために人々にもっと支払うことを要求することもできたであろう。それは収益を侵食したであろうが、それは顧客が逃げるのを防ぐことになったであろう。銀行の最高経営責任者(CEO)であるグレッグ・ベッカー氏に、一株当たり利益を減らしたいのか、それとも米国史上2番目に大きな銀行破綻を監督することを避けたのかを尋ねてほしい。

では、なぜ米国は銀行が仕事をするために信頼できる規制当局を持っていないのか?

  その答えの一部は、規制に反対する規制当局を設置するというトランプ政権の傾向の遺産である。ドナルド・トランプ前大統領は、連邦準備制度理事会の銀行監督の最初の副議長としてランダル・クォールズ(Randal K. Quarles)氏を任命した。(2021年にFRBを退任)(FRBはこの話に対する質問に答えなかった)。

Randal K. Quarles氏

 クォールズ氏は、金融危機後の体制を緩和することが彼の使命であると考えた。彼は、攻撃的な規制当局についてどのように感じているかについて明確なシグナルを送った。「監督のテナーを変えることは、おそらく実際に私がしていることの最大の部分になるであろう」と彼は2017年7月に宣言しました。そして、ジェローム・パウエル(Jerome H.Powell)議長が2018年にFRBの議長に指名されたとき、彼は議会にクォールズが「親しい友人」であると述べ、「彼が監督の副議長として直面する問題へのアプローチについて、私たちは非常によく一致していると思う」と付け加えた。当然のことながら、クォールズ氏は、SVBのCEOベッカー氏自身が求めていたストレス・テストを後退させる2018年の法律を支持した。(注4)クォールズ氏も筆者のコメント要請に応じなかった。

 この危機は、連邦準備制度が銀行を規制していることがどれほど奇妙であるかという古い問題を提起する。2008-2009年の米国発の世界的金融危機( リーマン・ショック)に至るまでの数年間で、OTS(貯蓄金融機関監督局)、OCC(通貨監督局)、SEC(証券取引委員会)、CFTC(商品先物取引委員会)など、表面上はFRBとともに銀行監督の責任を共有していた。銀行と金融機関は、これらの機関を互いに対戦させて、最も制限の少ないものを購入した。政策立案者と立法者はこれを知っており、銀行と証券の規制の構造を変えることをいじっていた。最終的に、FRBの唯一の行動は、DF法により彼らの最も被監督金融機関数が少ないOTSを閉鎖し、残りを維持することであった。

 したがって、連邦準備制度はその責任を維持した。しかし、批評家は、FRBの主な関心事は経済をコントロールするという、より魅力的なビジネスにあるため、効果的な銀行規制当局になることは決してできないと主張している。

 しかし、規制の失敗の根源は、トランプ政権の行動よりもより深いところにある。連邦取引委員会、司法省、消費者金融保護局のトップのジョー・バイデン大統領の任命者は、経済をより効率的、安全、公平にするために権力を行使しようとしているようである。しかし、学んだ政府の無力感のポケットは残っている。規制当局は、介入し、人々を不快にさせ、要求を出し、影響力を利用することを根付かせる恐れを持っている。

 FRBの銀行監督当局は、議長が金利を引き上げ始めたため、警戒を強めるべきであった。SVBは、国債保有に対する金利リスクだけでなく、経営不振のベンチャーキャピタル企業からの信用損失の蓄積と2022年の商業用不動産価値の下落の可能性にも直面した。

 FRBの監督当局がシリコンバレー銀行に対して機敏ではなかったという事実は、彼らが私たちの金融システムがどれほどひどく脆弱であるかを内面化できなかったことを示している。米国は、ロナルド・レーガン政権下で規制緩和の時代が始まって以来、貯蓄貸付危機、長期資本管理、ナスダック暴落、世界金融危機、初期のパンデミックの金融痙攣など、バブル、マニア、暴落を繰り返してきました。議会や規制当局は、イベント後にシステムの側面を強化することがありますが、連続バブルを膨らませない回復力のある金融システムを促進することができなかった。その度に、規制当局は、バブル参加者ができるだけ密集し、従来どおり失敗すれば、政府は彼らを救うためにそこにいるという教訓を強化した。

 コロンビア大学法学部ロースクールのジャッジ教授は、「ここで最も憂慮すべき力学の1つは、監督者として、規制当局としてのFRBへの敬意の喪失である」と筆者に語った。それは、業界の最高監督官がアメリカの銀行システムの完全性に対する信頼を再構築し始めるのに良い場所ではない。

Ⅱ.Roosevelt Institute 2023 3 15 2018 年の規制緩和がどのようにシリコンバレー銀行の崩壊の舞台を整え、どのように進路を変えるべきか?」

 米国のシンクタンクRoosevelt Institute のレポートを仮訳する。

 3月10日以降週末は、史上 2 番目に大きな破綻を含む、米国史上最大の銀行破綻が 2 件見られた。米国で 16 番目に大きな銀行であり、総資産が 2,000 億ドルを超えるシリコンバレー銀行 (SVB) は、3月10日の夜に管財人の元に置かれた。そして、1,000 億ドル弱の資産を持つ シグネチャーバンク(Signature Bank) がそれに続いた。3月12日の夜、連邦預金保険公社 (FDIC) は、「システミック・リスク例外規定(Systemic risk exception)」(注5)を使用して、これらの機関の無保険の預金者が損失を被ることを防ぎ、連邦準備制度理事会は、未実現損失(unrealized losses) (保有に起因する損失) を引き受けることを目的とした新しい流動性ファシリティを立ち上げた。資産を売却せずに減価償却し、銀行の貸借対照表から外した。

 SVB の顧客は、主に新興企業やその他の企業であり、FDIC 保険の上限である 250,000ドルをはるかに超える多数の口座があった。さらに、SVB の急速な成長と資産と負債の組み合わせは、規制当局にとって失敗の可能性を示す警告サインであったはずである。この種のリスクは、連邦議会が 2010 年に「 Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act 」で制定したような適切な規制と監督によって軽減することができる。

 しかし、いくつかの重要なドッド・フランク法の撤回・後退と、2018 年に連邦議会議員が中規模の銀行は大規模な銀行よりも軽い監督を受けることを強調したため、規制当局はこれらの銀行を十分に監督していなかった。これにより、彼らは実行に耐えることができない財政状態に入ることができた。これらの規制のギャップを埋めるためには、連邦議会による追加の行動が必要である。しかし、今日の規制当局は、規制を直ちに強化する既存の権限も持っている。これらの規制は、具体的に次のことを行う必要がある。

①資産が 1,000 億ドルを超えるすべての銀行を毎年の監督上のストレス・ テストの対象とし、ストレス資本バッファーの適用を迅速化する。

②1,000 億ドルから 2,500 億ドルの間の銀行の修正流動性カバレッジ比率(注6)を復元する。

③1,000 億ドル以上の銀行がその他の包括利益累計額 (AOCI) をバランスシートに含めることをオプトアウトできないようにする。

④2018 年以前の資本規制に戻る。

⑤資産が 1,000 億ドルを超えるすべての金融機関に、破綻処理計画(resolution plans; Living Wills )(注7)を毎年提出するよう義務付ける。

 〇2018年の規制緩和法より、SVBのような大惨事が起こりやすくなった。

 2008 年の金融危機は、今週末に見られたものとは大きく異なっていましたが、ドッドフランク法により、連結資産が 500 億ドルを超える銀行に対する規制と監視が強化された。その規定の中には、シリコンバレー銀行の規模の金融機関が規制当局および銀行運営のストレス・テストの対象となること、持ち株会社および被保険者である預金取扱機関の子会社が破綻処理計画 (しばしば「リビング・ ウィル」と呼ばれる) を提出すること、および強化された資本と資本の強化が求められていた。ドッド・フランクの制定はまた、新しい監督監督体制の始まりを象徴していた。500 億ドルのしきい値を超える銀行は厳しく監視される。

 しかし、2008 年の傷跡が薄れるにつれて、銀行業界は、中規模銀行や地方銀行に課せられた厳しい規制に苛立ち始めた。銀行のロビー活動グループは、コミュニティ銀行の「規制緩和」と「調整された」規制を求めた。これにより、小規模な銀行は、大規模な国立銀行の同業者よりも厳しく規制されなくなるが、規則がすでに調整されていることを無視している。

 このロビー活動の結果、議会は 2018 年に「経済成長、規制緩和、および消費者保護法(Economic Growth, Regulatory Relief, and Consumer Protection Act :(S.2155)」 を制定した。連邦準備制度理事会に対し、1,000 億ドルから 2,500 億ドルの機関に対する規制を再度課すよう求めた。この法案はまた、住宅ローンの組成と評価に関する規制を緩和し、100 億ドル未満の銀行に対する規制を緩和し、ボルカールールを弱体化するなどの変更を加えた。さらに、法律が超党派であるという事実 (法案には上院で10 人の民主党の共同提案者がいた) は、規制当局が中規模の銀行に対する監督を最小限に抑え、代わりに最大の銀行機関に焦点を当てる必要があることを示している。

 エリザベス・ウォーレン上院議員が当時警告していたように、「ワシントンは、銀行がリスクを冒しやすくし、有権者を危険にさらしやすくし、[そして] アメリカの家族を危険にさらしやすくしている。Roosevelt 研究所の Mike Konczal 氏も同様に、S.2155 は「上位 38 の銀行のうち 25 の銀行の保護を取り除き、最大手の銀行に対する規制を弱め、彼らの利益のために規制を操作するよう奨励し、消費者保護を損なう」と説明した。

 予想通り、規制当局は資産が 1,000 億ドルを超える銀行に対する制限を復活させなかった。代わりに、連邦準備制度理事会は、規制を緩和することで、「最大かつ最も複雑な銀行の最も厳しい要件を維持しながら、リスクの少ない企業のコンプライアンス要件を緩和する」と説明した。

 SVB は、その規制と監視が弱体化した機関の 1 つである。

S.2155 規制当局が SVB の警告サインを見逃すことを許可

 S.2155 と Fed の規制によって行われた正確な変更を特定するのは簡単である。これにより、SVB は破綻の可能性があり、警告サインが見過ごされ、銀行がより大きな損害を引き起こさずに金融システムへのダメージなしに管財人を受け入れることができなかった財務状況に到達することができた

 第 1 に、この法律は、資産が 2,500 億ドル未満の銀行を会社運営のストレス ・テストから免除し、1,000 億ドルから 2,500 億ドルの銀行を定期的な監督上のストレス・ テストのみを対象とした。連邦準備制度理事会は、半年ごとに監督上のストレス・テストを実施することを決定した。SVB は非常に急速に成長したため、2021 年に実施された最後の監督ストレス テストの対象にはならなかった。その結果、2022 年に監督ストレス ・テストの対象となるはずだったにもかかわらず、テストされなかった。ストレス・ テストを受けていないため、銀行は、SVB がより多くの規制上の資本を調達する必要があったであろうストレス資本バッファーの対象にもならなかった。

 第2に、S.2155は、資産が500億ドル未満の銀行を強化された流動性要件から免除し、1,000億ドルから2,500億ドルの銀行を連邦準備制度理事会によって義務付けられた場合にのみ、そのような流動性規則の対象とした。S.2155 以前の規制体制の下では、SVB は、21 暦日のストレス・ シナリオ (修正流動性カバレッジ比率として知られる) で予想される償還要求を満たすために、十分な質の高い流動資産を手元に維持する必要があった。S.2155 の制定と連邦準備制度理事会によるより弱い規制の実施に続いて、SVB はより弱い、銀行が運営する流動性ストレス テストと流動性バッファー要件の対象となった。S.2155 と連邦準備理事会のより弱い規制のおかげで、SVB は、リスクベースの資本要件とレバレッジ制限、信用エクスポージャー レポート、単一当事者の信用制限など、他のいくつかの要件も免除された。

 第 3 に、S.2155 後のルール変更により、銀行が規制資本に 包括利益累計額(AOCI )を含めることをオプトアウトできるしきい値が引き上げられた。AOCI は、銀行の貸借対照表の資本セクションで利益剰余金を下回る未実現利益と損失である。したがって、AOCI は銀行の資本水準に影響を与える。2014 年以降、銀行の自己資本規則により、一部の金融機関は規制資本に AOCI を含めることをオプトアウトすることが許可されている。2014 年には、総資産が 2,500 億ドル以上、またはオンバランスシートの海外公開(foreign exposures)が 100 億ドル以上の銀行はオプトアウトできなかった。しかし、FRB の S.2155 以降の規則により、そのしきい値が総資産で 7,000 億ドル以上、またはオンバランスシートの海外公開で 750 億ドルに引き上げられ、より多くの金融機関がオプトアウトできるようになった。

 S.2155 と連邦準備制度の弱体化のおかげで、SVB はバランスシートに AOCI を含めることをオプトアウトすることができた。その結果、その規制資本は実際よりも健全に見えた。実際、2023年3月初め、FDIC 議長の Martin Gruenberg は、SVB銀行システム全体の未実現損失の合計が 2022 年末時点で約 6,200 億ドルに達していると指摘し、これらの「未実現損失は、予想外の流動性ニーズに対応する銀行の将来の能力を弱める」と警告した。

Martin Gruenberg 氏

 第4に、S.2155 は、資産が 500 億ドル未満の銀行は破綻処理計画の提出を免除し、1,000 億ドルから 2,500 億ドルの銀行は、FRB が命令した場合にのみ、そのような計画を提出することを要求した。S.2155 と Fed の規制の緩和により、SVB は持ち株会社の破綻処理計画を提出する必要はなかった。さらに、S.2155 の制定以前は、FDIC は資産が 500 億ドルを超える銀行の預金子会社に年 2 回の破綻処理計画を提出することを要求していたが、FDIC は 2019 年に変更を行い、資産が 500 億ドルから 1,000 億ドルの預金子会社に3年ごと。計画を提出するよう要求した。その結果、SVB は2022年12 月まで破綻処理計画を提出せず、FDIC は銀行システムの残りの部分にさらなる損害を与えることなく SVB を破綻処理する方法を適切に学ぶ時間がなかった。

 最後に、S.2155 の議会通過により、銀行の審査官は、SVB のような中規模の金融機関をより軽いタッチで監督する許可を暗示的に与えられた。S.2155 の文言により、FRB は 1,000 億ドルから 2,500 億ドルの間で強化された銀行の健全性基準を維持することができたが、この法律は上院を 67 対 31 で可決した。つまり規制当局に、資産が 2,500 億ドル未満の銀行を、国内で体系的な機関ではなく、コミュニティ・バンクのように扱う権限を暗黙のうちに与えていた。審査官はこのメッセージを受け取り、それに応じて行動したのである。

規制当局と議会は今何ができるか?また何をすべきか?

 S.2155 の制定は間違いであった。しかし、それに賛成票を投じた議会議員でさえ、方向転換を助けることができる。なぜなら、この法案は、規制当局が SVB の規模の銀行に対する規則を緩和する必要があることを単に暗示しているからである。その結果、これら銀行の代表者と上院議員は、規制当局に規制を直ちに強化するよう要請する必要がある。連邦準備制度理事会は、資産が 1,000 億ドルを超えるすべての銀行を年次の監督上のストレス・テストの対象にする必要がある。FRB はまた、1,000 億ドルから 2,500 億ドルの銀行の修正流動性カバレッジ比率(modified liquidity coverage ratio)を回復させ、1,000 億ドルを超える銀行がバランスシートに AOCI を含めることをオプトアウトするのを防ぎ、この危機に関与していなかった資本およびその他の要件を回復する必要がある。しかし、将来のものをもたらすかもしれない。FDIC と Fed は、資産が 1,000 億ドルを超えるすべての金融機関に、破綻処理計画を毎年提出するよう要求する必要がある。最後に、審査官は金融機関をより厳しく監督しなければならない。

 同様に、FRB は、SVB の破綻につながった監督上の失敗・問題点の見直しを発表し、その結果は 5 月初旬までに提出される予定である。このレビューは、審査レポートからの抜粋を含めて公開する必要がある。

 同時に連邦議会も行動すべきである。少なくとも、連邦議会は S.2155 を修正して、資産が 1,000 億ドルを超える銀行の規制を強化し、規制当局がこれらの機関をありふれた銀行として扱わないようにする必要がある。さらに、連邦議会は、FDIC が SVB およびシグネチャーバンクに対してシステミック リスクの例外を使用することの意味を検討する必要がある。預金者は現在、すべての預金が保証されていると思い込んでいる可能性がある。これは、それが真実であるかどうかに関係なく、銀行規制と FDIC の預金保険基金の健全性に重大な影響を与えるものである。最後に、連邦議会は、法改正が必要かどうかを知るために、SVB の破綻につながった監督上の失敗について独自のレビューを開始することを検討することもできる。

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(注1)「Dodd Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act:ウォール街改革および消費者保護に関する法律」の略称で2010年7月に成立した米国の金融規制改革法。

 2008年、リーマン・ブラザーズの破たんを契機として発生した世界的な金融危機を教訓として、金融取引の規制を強化し、金融機関の肥大化を防止するためにオバマ大統領が提唱し、制定された。(野村証券「証券用語解説集」から引用)

 なお、同法の詳しい内容は筆者ブログ①「2010.8.14 「米国連邦預金保険公社が一部預金保険対象預金の保障額を25万ドルとする恒久措置通達を出状」(筆者注1)」

②2010.11.25 「米国SECやFDICが「ドッド・フランク法」等を背景としたよる役員報酬の規制強化解釈ガイダンス(案)等を提示」

③2011.2.11「米国FRBがドッド・フランク法のボルカー・ルール遵守期間に関する「レギュレーションY」の最終規則を公布」

を参照されたい。

(注2)2023.1.25 Bloomberg日本語版「仮想通貨混乱で明るみ-「最後から2番目の貸し手」も関連銀行に融資」から一部抜粋する。

 米国の連邦住宅貸付銀行(Federal Home Loan Bank:FHLB)制度は1世紀近くにわたり、短期資金を必要とする銀行にとって望ましい選択肢だった。しかし、暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXの破綻後、仮想通貨に関連のある銀行にも資金を貸し付けていたことが分かり、住宅ローン促進という本来の目的以外に資金が利用されていることへの懸念が広がった。

 米銀は毎年、FHLBから超低金利で数千億ドルを借り入れる。米連邦準備制度理事会(FRB)の連銀貸付を利用した場合のように汚点と見なされることもない。

 FHLB制度は危機時や景気悪化期の安全網とされ、「最後から2番目の貸し手」と呼ばれてきた。

 仮想通貨業界に関わりのある金融機関のシルバーゲート・キャピタルやシグネチャー・バンク、メトロポリタン・バンク・ホールディングが最近、FHLB制度から資金を借り入れたと明らかにしたことで、FHLBの役割についての議論が政治問題に発展した。明らかになった事実は仮想通貨が最終的に金融システムを脅かし得るという規制当局の警告と符合する。(以下、略す)

(注3) 欧米企業の取締役会や経営陣においては、リスク管理については、個々の部門ではなく、全社的リスクマネジメント(ERM・Enterprise Risk Management)を行って積極的にその役割を担うべきだという考えがすでに一般化している。

 そこで、新たな取締役として設置されたのがCRO(Chief Risk Officer:チーフ・リスク・オフィサー・最高リスク管理責任者)である。

 CROは日本ではまだまだなじみの薄い役職であるが、欧米では、大企業の67%、そして上場企業の63%がCROや同等の役職を設置している。

 全社的リスクマネジメント(ERM・Enterprise Risk Management)を行うにあたり、その最高責任者となるのが、CRO。CROにはリスクコントロールならびにリスクファイナンシングの2つの役割が求められる。(Hupro Magzine 用語解説から一部抜粋)

(注4) 世界的な金融危機が米国を不況に陥らせた10年後, 議会は火曜日に、別のメルトダウンを防ぐために2010年のドッドフランク法の一部として制定された厳格な規則から数千の中小銀行を解放することに合意した。

 超党派主義の珍しいデモで、下院は258-159に投票し、2018年上院を通過した規制後退法案を承認し、ドッドフランクで大きな数を行うことを約束した人であるトランプ大統領に大きな勝利をもたらした。

 この法案は、国の最大の銀行が危険な行動に従事するのを防ぐために導入された強化された規制体制を解くにはるかに及ばない, しかし、それは銀行システムの大規模なスワスを管理するオバマ時代のルールの実質的な骨抜きを表している。同法律は、より厳しい連邦監督の対象となる米国の大手銀行を10未満残す。 2500億未満の資産を持つ数千の銀行を、彼らが長い間不満を言ってきた危機後の取り締まりから解放することは、あまりにも面倒である。

 共和党の議員と銀行業界は、銀行—と経済—を規制上の負担から解放するのに役立つと彼らが言った措置を応援した。

 連邦議会下院議長でウィスコンシン州の共和党員であるポールD.ライアン氏は、「この法案の成立は、我々の経済を過剰規制から解放するための一歩である。私たちの小さな銀行は成長のエンジンである。中小企業に融資し、消費者に銀行サービスを提供することにより、これらの機関は、私たちの経済に参加する何百万人ものアメリカ人にとって不可欠であり続ける」と述べた。(2018.5.22 New York Times 記事の仮訳)

(注5) 2023.3.12 「Joint Statement by the Department of the Treasury, Federal Reserve, and FDIC」を抜粋、仮訳する。

「また、ニューヨーク州ニューヨーク州のシグネチャー バンクについても同様のシステミック リスクの例外を発表している。 この機関のすべての預金者は完全に保護される。また シリコンバレー銀行の決議と同様に、納税者が損失を負担することはない。」

(注6) 流動性カバレッジ比率  :銀行や市場で危機が1カ月続いた場合の流出資金と保有する流動資産の比率。英文は「Liquidity Coverage Ratio」(LCR)。計算式は「流動資産÷1カ月のストレス期間に必要となる流動性」となる。バーゼル銀行監督委員会は、国際的な金融機関に対する規制「バーゼルIII(バーゼル3)」で、流動性カバレッジ比率を100%以上にするよう求めている。(大和証券「金融・証券用語解説」から抜粋)

(注7) ドッド・フランク法は、大規模な銀行組織やその他の特定の企業が、連邦準備制度理事会と連邦預金保険公社に定期的に破綻処理計画(Living Wills (or Resolution Plans))を提出することを義務付けている。

 一般にリビングウィルとして知られている各破綻処理計画は、重大な財政難または会社の破綻が発生した場合の迅速かつ秩序ある解決のための会社の戦略を説明し、公開セクションと機密セクションの両方を含める必要がある。破綻処理計画ルールの対象となる企業は、規模と複雑さに応じて分類される。破綻処理計画の提出の頻度と情報コンテンツの要件は、企業のカテゴリに応じて調整される。

 現在、最大かつ最も複雑な銀行組織は、隔年で解決計画を提出する必要がある。他の国内外の大規模な銀行組織は、3年ごとに破綻処理計画を提出する必要がある。3番目のグループの企業は、3年ごとに短縮された解決計画を提出する必要がある。

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連邦準備制度理事会(FRB)はマイケルS.バー連銀監督担当副議長が、シリコンバレー銀行の経営破綻に照らして、監督と規制のレビューを主導していることを発表

2023-03-14 17:34:28 | 米国の金融監督機関

 本日(14日)未明、中央銀行であり銀行監督機関である米国FRBから筆者宛てにリリースが届いた。その内容は取り立て.大きなことでないかもしれない。しかし、はたしてそうであろうか。シリコンバレー銀行は本来サンフランシスコ地区連銀が監督機関である、それにもかかわらずFRB副議長が指揮を執る意味は何であろうか。  

 偶然にも筆者は2022年12月25日のブログ「米国の連邦準備制度(Federal Reserve System:FRS、Federal Reserve Board:FRB、Federal Reserve Bank:FRB)の正確な理解とは?」でFRSやFRB組織の経営実態ならびにニューヨーク連銀の解説を取り上げている。今回の銀行破綻の原因追及に関し、興味深い内容である。併読されたい。

Michael S. Barr氏

 連邦準備制度理事会は3月13日(月)、マイケル・S・バー銀行監督副議長(Vice Chair for Supervision Michael S. Barr)氏がシリコンバレー銀行の監督と規制の失敗に基づく破綻に照らして、その見直しを主導していると発表した。そのレビュー結果は5月1日までに公開される。

 「シリコンバレー銀行を取り巻く出来事は、連邦準備制度による徹底的で透明かつ迅速なレビューを要求している」とジェロームH.パウエルFRB議長は述べている。

「我々は謙虚さを持ち、この会社をどのように監督および規制したか、そしてこの経験から何を学ぶべきかについて慎重かつ徹底的なレビューを行う必要がある」とバー副議長は述べている。

【追加説明1

FRBの検証実施は、FRBが監督方針を修正する可能性を示唆している。

現行のシステムでは、資産が1000億ドルを超える銀行をFRBが直接監督し、ワシントンのFRBスタッフや理事が監督の方向性を決定。日々の実際の監督は地区連銀が担当する。SVBはサンフランシスコ地区連銀の監督下にあった。

米議会の一部議員からは、SVBがなぜ急速に規模を拡大し、約90%の預金が保護対象外となる事態に至ったのか問う声が上がっている。

 例えば、共和党のビル・ハガティ上院議員は、インタビューで「サンフランシスコ地区連銀にはこの事態を防ぐあらゆる手段があったはず」とし、なぜその手段を活用しなかったのか、監督の観点から理解する必要があると述べた。(ロイター通信(日本語版)から抜粋)

連邦準備制度の構造解説のURL

https://www.federalreserve.gov/aboutthefed/structure-federal-reserve-banks.htm

【筆者による補足説明2

  補足説明1のみではFRBや地区連銀の監督責任に関し、なお理解できない点が多かろう。FRBサイト解説を抜粋、仮訳する。

コミュニティバンク」および「地域バンキング」

  コミュニティ・バンクは全国の企業と消費者にサービスを提供している。連邦準備制度理事会は、「コミュニティバンキング組織」を資産が100億ドル未満である組織として定義し、地域バンキング組織を総資産が100億ドルから1,000億未満の金融組織として定義している。

 連邦準備制度理事会は、コミュニティバンクを監督する際に、リスクに焦点を当てたアプローチに従う。これは、各銀行の業務のリスクの高い分野に調査リソースを絞り込み、銀行がその規模と複雑さに適したリスク管理能力を維持できるようにすることを目的としている。

大規模な金融機関

  大規模な金融機関には、資産が1,000億ドルを超える米国金融機関と、米国での資産が1,000億ドルを超える米国外の銀行組織が含まれる。大規模な金融機関の監督は、以下のことを目的としている。( ⅰ )これらの企業の回復力を高め、経営破綻または金融仲介機関として機能できない可能性を低下させる, ( ii )は、金融企業の破綻または重大な脆弱さが発生した場合に、金融システムとより広い経済への影響を軽減させる。大規模な金融機関に対する連邦準備制度の監督枠組みは SRレター12-17 / CAレター12-14 および「大規模金融機関向けの統合監督フレームワーク」参照。

 連邦準備制度は、監督業務を機関の規模と複雑さに拡大することにより、リスクに焦点を当てたアプローチに従う。金融機関の監督では、リスクに焦点を当てた監督アプローチがより効率的であり、金融システムにリスクを増大させる金融企業のより厳密な監視をもたらす。連邦準備制度は、大規模な金融機関の監督を、以下に説明する2つの監督プログラムに編成する。

 ①大規模な機関監督調整委員会( Large Institution Supervision Coordinating Committee :LISCC )監督プログラム

 米国の金融の安定にリスクが高いと特定された企業は、大規模機関監督調整委員会(LISCC)の監督プログラムによって監督されている。LISCC監督プログラムの対象となる金融機関には、以下が含まれる。( i )理事会の調整フレームワークに基づくカテゴリーI基準の対象となる企業、( ii )非営利, 銀行持株会社の場合、カテゴリーIの基準で識別される非保険貯蓄およびローン持株会社, ( iii )金融安定監視評議会(Financial Stability Oversight Council :FSOC))よって体系的に重要であると指定されたノンバンク金融機関。

②大規模銀行組織および外国銀行組織(Large Institution Supervision Coordinating Committee: LFBO )監督プログラム

 大規模外国銀行監督(Large and Foreign Banking Organization :LFBO)プログラムは、LISCCプログラムに含まれていない他のすべての大規模金融機関を監督する。LFBOプログラムには、いくつかの企業間監督活動が含まれているが、地元の準備銀行の企業固有のチームが、理事会による監督を条件として、監督業務のほとんどを行っている。国内金融機関向けのLFBO監督プログラムの詳細については ここをリンク。外国金融機関向けのLFBO監督プログラムの詳細については ここをリンク

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(注) FRB(Federal Reserve Board、連邦準備制度理事会)は、米国の中央銀行制度であるFRS(Federal Reserve System、連邦準備制度)の最高意思決定機関である。FRSにおいては、12の主要都市に散在する連邦準備銀行(Federal Reserve Bank)をFRBが統括している。FRBは、ワシントンD.C.に本拠が置かれ、7名の理事(うち議長1名、副議長1名)から構成される。メンバー:理事7人によって構成され、任期は14年。議長と副議長を含め、大統領が上院の助言と承認にもとづいて任命する。

 FRBの主な業務は、公開市場操作を含む金融政策の決定のほか、連邦準備銀行の統括・監督、市中銀行に対する支払準備率の設定、連邦準備銀行が設定する割引率(公定歩合)の審査・決定などがある。

 また、金融政策の手段である公開市場操作を決定するのはFOMCで、これはFRBの7名の理事の他、5名の連銀総裁(ニューヨーク連銀総裁のほかは、11地区連銀からの輪番制)で構成され、約6週間ごとに年8回、定期的に開催されるほか、必要に応じて随時開催される。連邦準備銀行は、実際の中央銀行業務を行う。

(みずほ証券×一橋大学:ファイナンス用語集から抜粋)

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シリコンバレー銀行に始まる経営上特殊性持った米国の中堅銀行の経営破綻問題の行方を探る

2023-03-13 13:14:22 | 米国の金融監督機関

 筆者は3月12日付けブログでカルフォルニア州の商業銀行シリコンバレー銀行の経営が行き詰まり、監督機関であるカリフォルニア州の銀行規制当局である「金融保護・イノベーション局(California Department of Financial Protection and Innovation (DFPI)」は、世界的な金融危機以来最大の米国の銀行破綻で、問題を抱えたハイテク貸し手のシリコンバレー銀行(Silicon Valley Bank:以下、SVBという)、閉鎖し、法的権限にもとづき、引き継ぎ、担保としての資産と業務の一時所有にかかるDFPI commissioner(最高責任者)命令を発出した旨解説した。

  この情報は内外メデイアでも大きく取り上げられているが、同ブログで取り上げた「シルバー・ゲート銀行(Silvergate Bank)」の持ち株会社の「シルバーゲート・キャピタル(Silvergate Capital)」は3月8日、銀行業務を終了し、任意清算に入った問題、さらにはニューヨーク州の商業銀行である「シグナチャー・ バンク(Signature Bank)」の破綻に関し、州の金融サービス局が銀行法にもとづき同行を所有し、連邦預金保険公社FDICが承継銀行を決定したとの情報が、3月13日朝FDICから直接入ってきた。

 今回のブログは、米国の連鎖的金融リスク問題とも強くかかわるため、連邦財務省やFDIC, ニューヨーク州の金融サービス局のリリースの概要を紹介するが、2008年のリーマン・ショックが起きないことを祈るのみである。

 なお、カリフォルニア州だけでなく、ニューヨーク州の銀行監督法の内容が極めて類似している。我が国の問題とも関連する面があり、別途取りあげたい。

1.連邦財務長官、連邦準備制度理事会議長、および FDICの議長の共同声明内容

 3月12日、連邦財務省リリースを以下、仮訳する。

 次の共同声明は、ジャネット L. イエレン(Janet L. Yellen)財務長官、連邦準備制度理事会のジェローム H. パウエル(Jerome H. Powell)議長、および FDIC のマーティン J. グルエンバーグ(Martin J. Gruenberg)議長によって発表された。

 3月12日、我々は、銀行システムに対する国民の信頼を強化することにより、米国経済を保護するための断固たる行動を取っている。このステップにより、米国の銀行システムは、強力で持続可能な経済成長を促進する方法で、預金を保護し、家計や企業に信用へのアクセスを提供するという重要な役割を果たし続けることが保証される。

 FDIC および連邦準備制度理事会からの勧告を受け、バイデン大統領と協議した後、イエレン財務長官は、すべての預金者を完全に保護する方法で、FDIC がカリフォルニア州サンタクララのシリコンバレー銀行(Silicon Valley Bank)の解散決議(resolution)を完了できるようにする措置を承認した。預金者は、3 月 13 日(月)からすべての資金にアクセスできるようになる。Silicon Valley Bank の解散決議に関連する損失を納税者が負担することはない。

 また、ニューヨーク州のシグネチャー・ バンク(Signature Bank)についても同様のシステミック・リスクの例外を発表している。この金融機関のすべての預金者は完全に保護され、シリコンバレー銀行の解散決議と同様に、納税者が損失を負担することはない。

 なお、同行の株主および特定の無担保債権者は保護されない。また上級管理職も解任された。無保険の預金者を支援するための預金保険基金(Deposit Insurance Fund)の損失は、法律で義務付けられているとおり、銀行に対する特別査定によって回収される。

 最後に、連邦準備制度理事会は3月12日に、銀行がすべての預金者のニーズを満たす能力を持つことを保証するために、適格な資格のある預金機関に追加の資金を提供すると発表した。

 米国の銀行システムは依然として回復力があり、堅固な基盤の上にある。これは主に、2008年の金融危機後に行われた改革により、銀行業界の安全策が強化されたことによるものである。これらの改革と今日の行動は、預金者の貯蓄を安全に保つために必要な措置を講じるという我々の取組みを示している。

 2.FDICはニューヨーク州のシグナチャー・バンクの後継銀行としてシグナチャー・ブリッジ・バンクN.A.を設立

  3月12日FDICリリースを以下、仮訳する。

 ニューヨーク州のシグナチャー・バンク(以下、Signature Bankという)は3月13日(月)、連邦預金保険公社 (FDIC) を管財人として指定したニューヨーク州金融サービス局(New York Department of Financial Services: DFS)によって閉鎖された。 預金者を保護するために、FDIC は、Signature Bank のすべての預金と実質的にすべての資産を 承継銀行Signature Bridge Bank, N.A. に譲渡した。

 Signature Bank は、ニューヨーク、カリフォルニア、コネチカット、ノースカロライナ、ネバダの全国に 40 の支店を持っていた。 オンライン・バンキングを含む銀行業務は、2023 年 3 月 13 日月曜日に再開される。 預金者と借り手は自動的に Signature Bridge Bank, N.A. の顧客になり、以前と同じ方法で、中断のない顧客サービスと ATM、デビットカード、および小切手の書き込みによる資金へのアクセスを引き続き利用できる。Signature Bank の公式小切手は引き続き決済される。またローンの顧客は、通常どおりローンの支払いを継続する必要がある。

 これらの措置は、預金者を保護し、Signature Bank の資産と業務の価値を維持し、債権者と DIF の回収を改善する可能性がある。

 Signature Bank は、2022 年 12 月 31 日の時点で、総資産が 1,104 億ドル(約15兆144億円))、総預金が 826 億ドル(約11兆2300億円)であった。FDIC は、受取人として、Signature Bridge Bank, N.A. を運営し、将来の売却に備えて金融機関の価値を最大化し、以前 Signature Bank がサービスを提供していたコミュニティ銀行サービスを維持する。

 承継銀行Signature Bridge Bank, N.A.は、FDIC によって任命された理事会の下で運営される公認の国立銀行である。 預金やその他の負債を引き受け、破綻した銀行の資産を購入する。ブリッジバンクの構造は、銀行の破綻とFDIC が金融機関を安定させ、秩序だった解決策を実行できるようになるまでのギャップを「橋渡し」するように設計されている。

 FDIC は、Greg D. Carmichael 氏を Signature Bridge Bank, N.A. の CEO に任命した。Carmichael 氏は最近までFifth Third Bancorp の社長兼 CEO  を務めていた。

Greg D. Carmichael 氏

3.ニューヨーク金融サービス局(New York Department of Financial Services:DFS)が州法にもとづきSignature Bankを所有すると発表

  2023年3月12日のDFSリリースを仮訳する。

 ニューヨーク州金融サービス局のエイドリアン・A・ハリス監督官(Superintendent Adrienne A. Harris)は、ニューヨーク金融サービス局(New York Department of Financial Services:DFS)が州法にもとづきSignature Bankを所有すると発表した。

Adrienne A. Harris 氏

 エイドリアン A. ハリス監督官は3月12日、預金者を保護するために、ニューヨーク州銀行法(Bankig Law)第 606 条(注)に従って、ニューヨーク金融サービス局 (DFS) がSignature Bankを所有したことを発表した。 DFS は、同銀行の管財人として連邦預金保険公社 (FDIC) を指定した。

 Signature Bank はニューヨーク州公認の商業銀行であり、FDIC の保険に加入しており、2022 年 12 月 31 日現在の総資産は約 1,103 億 6000 万ドル(15兆9兆90万円)、預金残高は約 885 億 9000 万ドル(約約12兆480万円)である。

 DFS は、市場の出来事に照らしてすべての規制対象機関との連絡を取り、市場動向を監視し、他の州および規制連邦整理と調整に協力して、消費者を保護し、規制対象機関の健全性を安定させ、世界の金融システムの安定性を維持している。

 FDICの適用範囲の制限と要件については、  www.fdic.govにアクセスするか、フリーダイヤル 1-877-ASK-FDIC に電話されたい。

************************************************************************:**************

(注) ューヨーク州銀行法第606条を抜粋、仮訳する。(New York Consolidated Laws, Banking Law - BNK § 606. When superintendent may take possession of banking organization;  when possession may be surrendered)

1.DFS監督官は、その裁量により、銀行組織が次の状態とみるときはいつでも、その銀行組織の事業および財産を直ちに所有することができる。

(a) 法律に違反したとき。

(b) 無許可または危険な方法で事業を行っているとき。

(c) 事業を行うには不健全または危険な状態にあるとき。

(d) 安全かつ迅速に事業を継続できないとき。

(e) 資本が減損しているとき。または、相互貯蓄貸付協会または信用組合の場合は、その負債および株式に対するメンバーへの支払額を支払うには不十分な資産を持っていること。

(f) 債務の支払いを停止したとき。または、貯蓄貸付相互組合の場合は、株主から撤回申請が提出されてから 60 日間、その撤回申請の全額を支払うことができなかったこと。

(g) 監督官の正式に発行された命令の条件を無視または遵守することを拒否したとき。

(h) 適切な要求に応じて、その記録と業務を検査のために省の審査官に提出することを拒否したとき。

(i) 自らの業務に関して、宣誓の上、審査を拒否したとき。

(j) 本章のいずれかの条項に従って任意清算の手続きを怠る、拒否する、または取らない、または継続しないとき。

2.監督官は、監督官の裁量により、監督官が承認した条件に基づいて、所有権を放棄し、当該銀行組織が事業を再開することを許可することができる。

3.監督官がそのような銀行組織の財産および事業を正当に所有した場合、監督官は、その業務が彼によって最終的に清算されるまで、その所有を保持することができる。本節の第607 項に規定されているように継続的な所有を禁止されている場合、またはそのような銀行組織が監督者の書面による承認を得て、本節の第 605 項に規定されているように自発的に業務を終了する場合を除く。

(以下は略す)

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米国連邦預金保険公社が行った第2次非銀行取引世帯調査結果と米国の経済弱者支援強化に向けた更なる課題

2012-09-16 17:27:06 | 米国の金融監督機関



 本ブログでは、2010年5月15日付けで「米国の低所得者給付金支払デビット・カード化完全移行と銀行非取引世帯救済対策の現状と課題」と題するレポートを掲載した。
 この中で紹介した連邦預金保険公社(FDIC)が連邦商務省国勢調査局(U.S. Census Bureau)に委託して2009年1月に実施し、その結果を同年12月に還元した「全米銀行口座非保有世/帯追加調査(2009 FDIC National Survey of Unbanked and Underbanked Households)」につき、このほど2011年6月に実施した第2次調査結果(2011 FDIC National Survey of Unbanked and Underbanked Households )が公表された。
(筆者注1)

 米国連邦政府(オバマ政権等)が従来から取り組んできた経済弱者の銀行取引開始に向けた諸施策については前記ブログで詳しく述べたが、米国経済の活性化の金融面からの支援やその効果が本物か改めて問う意味で今回の調査結果および“Economic Inclusuion gov.”の最新動向を概観するものである。

 なお、2010年5月の本ブログでは必ずしも詳細に説明していなかった、銀行口座非保有世帯の定義等調査の正確性にかかわる用語について補足的に解説を加えた。


1.「2011 FDIC National Survey of Unbanked and Underbanked Households」の概要
 2011年6月にFDICは第2次となる「全米銀行口座非保有世帯調査」を後援した。同調査は米国内の銀行口座非保有世帯数、人口統計学特性(demographic characteristics)および非銀行取引である理由等に関するデータを収集した。この調査は連邦商務省国勢調査局が人口現況調査(Current Population Survey:CPS)の補足調査として行われた。
 富裕層や地理的データはCPSを通じて条件つけられ、本調査以前は不可能であった非銀行取引世帯につき全米、州および大都市統計圏(large metropolitan statistical area:MSA)レベルで利用可能となった。

 2011年の調査結果に見る総合的に見た主要なポイントは次のとおりである。
①全米の世帯のうち8.2%は非銀行取引世帯である。これは全米で見た場合12世帯中1世帯にあたり約100万世帯である。
②非銀行取引世帯数は2009年の前回調査に比して微増している。推定で0.6%増は82万1000世帯をあらわす。
③全世帯の20.1%が“underbanked”である。これは5世帯に1世帯が該当することを意味し約2400万世帯に当たる。2011年調査の“underbanked”世帯数は2009年調査比で18.2%増となるが、2つの調査内容が必ずしも同一でないことからその割合は単純比較できない。
④29.3%の世帯は貯蓄口座を保有しておらず、また約10%の世帯は当座預金口座を保有していない。一方、約3分の2の世帯は当座および貯蓄口座の両方を保有している。
⑤全世帯の4分の1の世帯が過去1年間も少なくとも1回AFS商品を利用し、また10世帯に1つは2回以上AFS商品を利用している。全体的に見て、12%の世帯がこの30日以内にAFS商品を利用し、その10世帯に4世帯は非銀行取引世帯であった。

 なお、完全な報告書(全155頁)のURLは次のとおりである。
http://www.fdic.gov/householdsurvey/2012_unbankedreport.pdf

2.FDIC“Economic Inclusuion gov.”の最新動向
 同サイトを改めて見ておく。特徴的な点は次の内容である。いずれにしてもFDICは金融に関する多様な教育・啓蒙活動に積極的に取り組んでいる事実は理解できよう。
(1)全米規模、州別、4地区別、MSAに分けてそれぞれの調査結果の詳細が見れる。
(2)全世帯に対する銀行取引の位置づけや“underbanked”“unbanked”等の割合が一覧で見れる。
(3) 2011年調査で初めて当座預金口座や貯蓄口座の所有形態と割合につき調査を行った。当座預金口座を保有する世帯は88.5%であり、貯蓄口座は69.2%と当座取引より一般的でなかった。さらに貯蓄口座に関してみると完全な銀行取引世帯では78.4%保有である一方、非取引世帯(underbanked)では67.8%であった。

3.国勢追加調査にかかる用語解説
 わが国ではほとんど詳しく解説されていない用語が多く、また金融専門用語に関しても同様といえる。ここではFDICの“Economic Inclusion.gov”のGlossaryに基づき出来るだけ正確な内容を理解できるよう工夫してみた。いずれにしても、従来から指摘されているとおり、米国の消費先行型の金融システムの抜本的改革は喫緊の課題といえよう。

①“Unbanked ”:世帯内のいずれも銀行等の当座預金口座や貯蓄口座を保有しない場合

②“Underbanked”:世帯内に当座預金口座や貯蓄口座を保有しているが、実際は代替の金融サービス、すなわち(1)ノンバンクが発行するマネー・オーダー(要求定時払いで一定金額を受け取ることを指名された個人や団体に与える銀行や郵郵便局やその他機関が発行する証書。そのメリットの1つはプリペイドであることからパーソナル・チェックより信頼性が高いことが挙げられる。その発行には小額の発行手数料がかかる。国際送金等でも利用される。)、(2)ノンバンクの小切手現金化サービス、(3)ノンバンクの送金(non-bank remittances)、(4)ペイディ・ローン(payday loans:極めて高利の消費者金融をいう。経済弱者を対象とし、また各種法規制を掻い潜る商法が大きな社会問題となっている)(筆者注2)、(5)レント・ツー・オウン契約(rent-to-own agreements):消費者と売り手の間で消費者が定めた期間の間に家具、電化製品や器具や他の商品を賃借できる合意契約をいう。消費者は、単に1週間や1カ月等と同じくらい短い予め定めた期間内に周期的にレンタル料金を支払う責任が生じるが、消費者はその更新するのを選ぶなら、その継続をなしうる。また、一時払い金を支払うことによって賃借された商品を購入する機会を消費者に提供する。同契約は、高価な商品等につき頭金なしに即座に使用できる機会を信用度の低い消費者に許容するので、人気がある。ただし、消費者は買った金額の2倍になるレンタル料を支払うといった問題も指摘されている)、(6)質屋(pawn shop)、(7)税還付見越しローン(refund anticipation loans:米国商事改善協会(BBB)はペイディ・ローンと同様に50~500%の高利な短期貸付であり、貸し手は管理手数料を隠蔽したりしており、また還付金計算が誤っていたときは借り手は罰金や手数料を支払わねばならない旨警告している。なお、2010年の本ブログで述べたとおり、2011年から連邦税課税庁(IRS)は銀行口座を保有しない納税者への還付方法としてプリペイドでビットカードを選択できるようにした)、を過去12ヶ月間に1回利用した場合。

③「代替的金融サービスプロバイダー(Altenative Financial Services (AFS)Providers)」
 連邦政府による保険で保証される銀行や信用組合以外の金融サービスを提供する多くの機関をさす。具体的には小切手割引業者(Check-cashing outlets)、送金業者(money transmitters)、ペイディ貸金業者(payday lenders)、質屋、レント・ツー・オウン・販売店(rent-to-own stores)等はすべてAFSと呼ぶ。

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(筆者注1) FDICが今回行ったリリース文に誤りがある。第1次調査の実施時期は2011年1月とあるが、正しくは「2009年1月」である。筆者は別途FDICの担当者に訂正依頼文を送った。

(筆者注2) ペイディ・ローンの例として、米国ではいわゆる(AFS)だけでなく、アラバマ州に本部を置く地方銀行「リージョンズ・バンク(Regions Bank)」が2011年5月以降、年利365%の高金利を当然としているペイディ・ローン類似商品(商標名:Regions Ready Advance)を持ち出した融資姿勢の問題を、全米規模のNPO団体“Center for Responsible Lending”が10月7日のブログなどで取り上げている。8月31日の「WRAL .com」の記事9月19日付けの 「Newsobserver.com」の記事が詳しい。
 また、ノースカロライナ州司法長官ロイ・クーパー(Roy Cooper)は他州司法長官40名とともに消費者保護に危害をあたえるペイディ・ローン問題への対処法案にかかる共同意見書を提出している。

 この問題は、本来的には金融機関監督規制法である「グラム・リーチ・ブライリー法(GLBA)」の第731条に絡んだ複雑な問題を抱える。わが国でこの問題を正面から解説したものは皆無である。詳しくは別途、本ブログで解説する予定である。


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米国連邦金融監督機関が連名でレバレッジ・ファイナンスの改正ガイダンス(案)を11年ぶりに発布

2012-03-27 16:59:26 | 米国の金融監督機関



 3月26日、連邦準備制度理事会(FRB)、預金保険公社(FDIC)および財務省通貨監督庁(OCC)は各種債務比率、キャッシュ・フロー倍率(筆者注1)やその他の比率により計算される業界の標準を大幅に超える財務レバレッジ (筆者注2)ならびにキャッシュ・フロー・レバレッジ (筆者注3)に基づく融資先の融資判断取引をカバーすべく改正ガイダンス草案を連名でリリースした。

 今回の改正の背景には、これら監督機関が金融危機の引き金となったレバレッジに基づく与信取引量および規制監督の対象外の投資家の市場参加の急増に注目したことが上げられる。

 今回のブログは本通達内容を仮訳することにある。時間の関係で十二分に吟味した翻訳作業とは言えないが、わが国の関係者に対する問題提起として読んでいただきたい。


1.要旨
 米国における金融危機の間、レバレッジ融資を手控えることがあった一方で、良識ある引受け実務は退化してきた。金融市場が発展段階にあるとき、債務契約は比較的限られた貸し手保護に関する特性、すなわち重要な維持特約の欠落や貸し手の融資実行力の弱体化したときの頼みの綱に影響を与えるその他の特性を包含するなどをしばしば含んでいた。
さらに、いくつかの取引において資本構成と返済見通しは契約の新規創設の場合や分配方式かにかかわらずきわめて攻撃的であった。いくつかの金融機関では経営情報システム(management information system:MIS)はタイムリーなベースでみた正確に実際の情報開示を実現していたかという点で不十分であることが証明された。また、多くの金融機関ではリスクのある資産の重大な減少に関する買い手の要求が行われたとき、彼らは自分がハイリスクの取組みパイプラインを握っていることを認識した。

 レバレッジ・ファイナンスは経済にとって重要な形態であり、銀行の経営において与信を可能とし、その与信活動における投資家を組織化する統合的な役割を担う。銀行が、五体満足に安全かつ健全な方法で信用にたる借り手に融資手段を提供することは重要である。

 市場の発展の観点から、連邦金融監督機関は2001年に策定した「レバレッジ・ファイナンス・ガイダンス」に置き換わる次の項目からなる改正ガイダンスをこのたび提案するものである。

①健全なリスク管理の枠組みの構築
 連邦監督機関は、経営者や取締役会が当該金融機関のレバレッジ・ファイナンスに関するリスク選好を特定し、適切な与信限度を確立のうえ信頼にたる監視と承認手続きを確実にすることを期待する。

②引受け条件の標準化
 本ガイダンスは、キャッシュ・フローの限度容量、分割償還(amortization)、契約の保護、担保管理および各取引に関するビジネス契約書(business premise)は健全な内容でなければならず、資本構成は融資契約が新規創設の場合か分配方式を問わず持続可能でなければならない点を強調した。

③評価基準
 本ガイダンスは、意思決定時の健全な方法論確立の重要性と企業価値の定期的な再評価問題に集中する。

④パイプライン管理
 時宜に即した適切な開示の必要性、融資取引が失敗したとき、一般的な金融市場の破綻時の政策や手続きの準備することの重要性およびパイプラインに関する定期的なストレス・テストの実施を強調している。

⑤報告と分析
 本ガイダンスは、主要な債務者特性に関するMISの必要性を強調するとともに時宜の応じた形でのビジネスラインおよび法人全体にわたり横断的に統合する点を強調する。また、報告と分析方法に関し、定期的なポートフォリオに関するストレス・テストの実施をもって補強する。

2.コメント期限
 本ガイダンスに関する関係者の意見は、2012年6月8日までに連邦金融監督機関に提出しなければならない。

3.添付資料
「Proposed Guidance on Leveraged Lending」
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(筆者注1)「キャッシュ・フロー倍率(cash flow ratio)」とは、「株価キャッシュフロー倍率(PCFR=Price Cash Flow Ratio)ともいわれ、株価収益率(PER=Price Earnings Ratio)とともに株式市場平均や収益力の同業他社との比較をする際に用いられる。
 キャッシュ・フローは利益から税を引いた額から配当金や役員賞与などの社外流出分を除いた額に、減価償却費をくわえたもののことをいう。株価を一株あたりキャッシュ・フローで割ることで「キャッシュ・フロー倍率」が算出される。企業によっては、有税償却し内部保留を行ったり、設備投資で減価償却費が増加している場合もあるので、キャッシュ・フロー倍率(cash flow ratio)は、その企業の収益力を判断する際の尺度になる。(「資産運用まるわかり辞典」から引用)

(筆者注2) 負債がまったくない企業の財務レバレッジ(financial leverage ratio)比は1であり、その比率数値が高まるにつれ、負債が多いということになる。

(筆者注3) レバレッジは、一部の金融資産の契約上のキャッシュ・フローの特性である。レバレッジは、契約上のキャッシュ・フローの変動性を増大させ、レバレッジ効果を含む契約上のキャッシュ・フローは、利息としての経済的特徴がなくなる。このため、契約上のキャッシュ・フロー特性テストをパスできない可能性がある。
 なお、企業分析におけるフリーキャッシュ・フロー特性分析に関し、企業の本源的価値(実態価値)を計算するときには、その企業が将来に亘って生み出すであろうフリーキャッシュ・フローを推定することが必要となる。最も単純なケースでは、当期利益に非資金項目である減価償却費や引当金計上などの費用項目を足し戻し、最後にビジネスを継続していくうえで必要となる設備投資(資本的支出)を差し引いたものが該当する(企業が稼いだ利益のうち最終的に手元に現金として残る部分)。(マネックスラウンジから引用)

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米国FRBがドッド・フランク法のボルカー・ルール遵守期間に関する「レギュレーションY」の最終規則を公布

2011-02-11 14:07:38 | 米国の金融監督機関



 2月9日、米国連邦準備制度理事会(FRB)は抜本的な金融規制監督法である「ドッド・フランク・ウォールストリート金融街改革および消費者保護法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act)(以下“DFA”という)」第619条いわゆる「ボルカー・ルール」規定につき金融機関の遵守期限の概要予定表に関する連邦金融行政規則「レギュレーションY」の最終規則(final rule)を公布した。本規則は2011年4月1日施行され、速やかに連邦官報に載る予定である。(筆者注1)(筆者注2)

 本ブログは、従来から予告しているとおり“DFA”の内容についての詳細な解説を意図しているが何せ大部(2,316頁)な法律である。

 なお、米国の金融監督機関で共通的に見られることであるが規則案の小出しが頻繁である。FDIC、FRB等が個々に規則制定権にもとづく策定作業を行っているせいもあり、本ブログでも紹介しているとおり、DFA対応作業につき全体的に鳥瞰できるサイトは今のところ皆無のようである。


1.「レギュレーションY」の意義と内容等
 今回のFRBが公布した規則とは、具体的にいうと金融規制監督に関する「連邦行政規則(CFR)」のうち「レギュレーションY」の追加にかかるものである。

(1)「レギュレーションY」とは、銀行持株会社の企業活動および一定の範囲の州法設立銀行の活動を監督する規則である。また、銀持株会社がFRBの認可を得て行う次の取引について定める
①持株会社が別の持株会社から銀行を買収、合併する場合
②銀行持株会社が直接または子会社を通じノンバンクの企業活動を行う場合
③個人(個人のグループを含む)が持株会社または商業銀行のうち各州銀行法免許の州法銀行(State Member Bank)の経営権を取得する場合
④経営困難に陥った銀行持株会社または州法銀行が上級経営者または役員を選任する場合

(2)「レギュレーションY」が統治する問題は、銀行持株会社における最低資本準備金(資産準備率)の確保、一定の銀行持株会社の取引、銀行持株会社のノンバンク取引、州法銀行および米国内で営業する外国銀行の定義である。

(3) 「レギュレーションY」の銀行持株会社への適用手順については、例えばサンフランシスコ連銀のサイト等で詳しく解説している。

(4) 「レギュレーションY」の改定経緯
 FRBのサイト(12 CFR 224)で詳しく解説している。

2.「ボルカー・ルール」の概要と意義
 DFAの第619条「ボルカー・ルール」について以前に本ブログで紹介したアメリカ銀行協会(American Bankers Association:ABA)のDFAの専門サイト「ドッド・フランク法の本格実施に向けた銀行員のための重要テーマに関する施策」が金融機関にとっての実務対応面から問題を整理し、また政策立案事項を一覧形式でかつタイムテーブルに即してまとめている。

(1)「ボルカー・ルール」の内容 (筆者注3)
 銀行(預金保険対象金融機関、銀行持株会社およびこうした機関の子会社)が、自己勘定取引(proprietary trading)を行うこと、ヘッジファンド(hedge funds)やプライベート・エクイティー・ファンド(private equity funds)に出資等することを禁止する。
 ただし、例外として銀行の出資額等が当該銀行のTier 1 資本の3%以内であり、かつ、ファンドの総出資額の3%以内である場合には、ヘッジファンド等への出資を行ったり維持したりすることができる。
 連銀の監督下にある非銀行金融会社が自己勘定取引やヘッジファンド等への出資等を行う場合には、通常の規制に追加する形での資本規制および自己勘定取引や出資に関する量的制限を受ける。
 DFAの成立後6か月以内に連邦財務省内の金融安定化監督委員会(FSOC)はボルカー・ルールの適用に関して研究し提言を行い、FSOCの研究後9か月以内に、関連する規制当局(連邦銀行監督当局、米証券取引委員会(SEC)、米商品先物取引委員会(CFTC))は所要の規制を策定することが決定されていた。
(2010年8月24日付、財団法人 国際金融情報センター「金融規制改革法(ドッド・フランク法)の成立」から抜粋の上、筆者の責任で追加・補筆した)。

(2) 「ボルカー・ルール」に関する法実務的な解説サイト
 「ボルカー・ルール」そのものについて米国でも金融規制面から詳細な解説はそう多くない。その中で世界的に展開している「Chadbourne & Parke 法律事務所」解説(12頁)が正確でわかりやすく感じたので紹介しておく。

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(筆者注1)アメリカ銀行協会がDFAに関する連邦の各金融規制監督機関の政策立案動向を追跡していると述べたが、今回のFRBの最終規則案についても2月10日付、追跡専門サイト(ABA Dodd-Frank Tracker)で次のとおり紹介している(FRBの解説内容と異なる部分もあるのであえて追加する)。
「ボルカー・ルールは、財務省内に設置した金融安定化監督委員会(FSOC)が規則の詳細を定める時期または2012年7月21日のいずれか早い時期後、12ヵ月後に施行する。今回定めた最終規則はボルカー・ルールが施行される日付後、2年間の遵守期間を置く。FSOCが指定するFRBの監視下に置かれるノンバンクについては監視が指定された後2年間はFRBの認定専用窓口で対応する。また、FRBは、一定条件の下ではさらに3年の遵守期限の延長することができる。」

(筆者注2) 2月9日のFRBの最終規則については例えば米国メディア“Bloomberg”の記事が翻訳されて紹介されている。しかし、筆者が斜め読みしただけでも次のような誤訳や説明不足な点があった。翻訳者(笠原文彦氏)に確認する時間がもったいないので、ここで筆者だったらこのように原稿を書くという見本を挙げておく。
 原文の説明自体が内容的に問題なのであるが、少なくとも経済・金融関係の翻訳を請け負う以上、米国の金融機関監督法や行政規則の内容、種類、意義等について日頃勉強しておいて適宜補足するなど意欲を見せて欲しい。

「米国連邦準備制度理事会(FRB)は9日、預金保険対象金融機関、銀行持株会社および同金融機関の関連会社や子会社について自己勘定取引、ヘッジ・ファンドやプライベート・エクイティー・ファンドに出資等することを原則禁止するいわゆる「ボルカー・ルール」の適用につき、原則2年間の遵守期限を設ける行政規則を承認した。
 FRBは9日のリリースで「ボルカー・ルール」の適用に関するFRBとしての行政規則(レギュレーションY)の改正を承認したものであり、その内容は2010年11月にFRBが公布しコメントを求めた改正内容とほぼ同一であると説明した。
 昨年7月に成立した米国金融規制監督法(ドッド・フランク・ウォールストリート金融街改革および消費者保護法:ドッド・フランク法)には、その第619条でポール・ボルカー元FRB議長の名前にちなんだ同ルールが盛り込まれた。第619条は「1956年銀行持株会社法(Bank Holding Company Act of 1956)」に第13条を新規に追加するものである。このルールは銀行等が自己資本に影響を負わせるようなリスクの高い投資を行ったり、預金保険の対象となる預金をリスクにさらしたりすることを制限することに狙いがある。
なお、『レギュレーションY』は本年4月1日施行される。」

(筆者注3) わが国向けに米国の法律事務所がまとめた「ボルカー・ルール」の解説例を見ておく。
「ボルカー・ルールは、銀行及びその関連会社に対し、自己勘定による取引を行うこと、又はヘッジファンドもしくはプライベート・エクィティ・ファンドのスポンサーとなることもしくはそれらに投資することを一般的に禁止しています。また、金融システム上重要な(systemically important)ノンバンク金融会社(たとえば、規模の大きい保険会社や証券会社等)に対し、自己資本規制や、上記の活動に対するその他の定量的な制限(禁止ではありません)について遵守することを義務付けています。ボルカー・ルールは、制定時から2年後に発効し、その時点から2年間の経過期間が開始することになっています。」

(筆者注4)「自己勘定取引」とは 基金を集め、それにより企業を買収し、収益力を向上させ、その後その企業を転売し、売却益を基金出資者に配当すること。

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米国SECやFDICが「ドッド・フランク法」等を背景としたよる役員報酬の規制強化解釈ガイダンス(案)等を提示

2010-11-25 14:31:34 | 米国の金融監督機関



 本ブログでは、2009年9月12日付けで政府からの不良資産救済プログラム(TARP)に基づく資本注入を受けている金融機関の役員報酬規制強化に関する連邦財務省の暫定規則やガイドランの内容を詳しく紹介した。

 また、本年7月21日に成立した「ドッド・フランク・ウォールストリート金融街改革および消費者保護法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act:H.R.4173)(以下、「ドッド・フランク法」)」の主要な改革のポイント事項について解説してきた。

 ドッド・フランク法は本ブログでも解説してきたとおり、米国の銀行、証券、保険、金融先物等の金融監督面での影響が極めて大きくまた条文数も多い法律であるが、連邦監督規制機関(筆者注1)はこれを受けた規則案や金融機関における具体的対応に資するためのガイダンスの策定が進んでいる。

 筆者は、この膨大な条文にわたる法律の内容についてまとまった解説を行うべく準備は進めているが、何にせ関係する金融監督機関が個々に対応をとっており、また同法は上院・下院の多くの関係法案との調整結果を踏まえて1本化されたものであり、内容的な批判を含めた包括的な資料は極めて少ないことから、さらに時間がかかると思われる。
(筆者注2) (筆者注3)

 そのような状況下で最近時、アメリカ銀行協会(American Bankers Association:ABA)が「ドッド・フランク法の本格実施に向けた銀行員のための重要テーマに関する施策」と題するウェブサイトを立ち上げた。
 その中では、「預金保険」、「消費者金融保護局(BCFP)」、「OCCとOTSの併合」、「FRBの金融監督機能」、「新たな貯蓄組合規則」、「不動産抵当ローン市場」、「デビットカード処理における適切な手数料への置き換え等に関する規則の策定」、「証券、スワップデータならびにその金融派生商品の適正化ルール」、「役員や従業員の報酬の公開性」、金融システム全体とした監督制度改革問題である「金融安定化監督委員会(FSOC)」、「システミックな監督体制」、「金融調査局創設」等があげられている。

 ABAは金融実務面からこれらの個々のテーマにつき金融界への最新の情報提供や連邦議会対策サミット

(筆者注4)等の準備を進めている。

 従って、筆者としてもABAの最新情報分析は勿論のことであるが、本ブログでは体系的な解説に優先させて個別問題を取り上げ、全体的なイメージが纏まった時点で包括的な解説を行うべく方針を変更したい。なお、金融監督機関のこれら規則制定や各種報告作業量は膨大なものであり、優先順位はその重要性とは別の観点からスケジュール化し進んでいることに留意されたい。
(筆者注5)
                                                
 今回は、同法に基づく改革の基本柱の1つである金融機関における「役員報酬」に関する規制強化規則(案)に関する策定状況を概観する。

 なお、
(筆者注3)で述べるとおり、現状わが国での同法に関する体系的な解説は極めて少なく、かつ法律や米国の専門家のレポートに含まれるキーワード(例えば“Say on Pay”、“Golden Parachutes”、“Volcker Rule”等)の意義・解説が十二分に行われていない。
 今後わが国の金融実務関係者等がより正確な解釈や理解を行う意味で、本ブログが多少でも米国の原資料との橋渡しができればと考え、今後も関連テーマを取上げていきたい。


1.2010年10月14日、FDICが金融機関向け通達「銀行等におけるゴールデン・パラシュートの申請に関する解釈ガイダンス(Guidance on Golden Parachute Applications)」を発出
 連邦金融監督である連邦預金保険公社(FDIC)は、金融サービス業界における役員報酬にかかる規制・監督強化の取組みの一環として、FDICは金融機関が許されるゴールデン・パラシュート報酬支払いをする場合の「申請ガイダンス」(通達に添付)を公布した。 このガイダンスは、銀行検査結果でCAMELS (筆者注6)レイティング評価が「4」、「5」である 金融機関(troubled insitutions)におけるゴールデン・パラシュート報酬にかかる、(1)報酬の支払基準の明確化、(2)FDICによる承認要件を充足するのに必要な情報の種類の指定、(3)FDIC職員がゴールデン・パラシュート支払いを承認する否かを決定するにあたって考慮すべき要素を明確化する目的で策定したものである。

 以下、ガイダンスのハイライトの内容をあげる。
(1)ゴールデン・パラシュート報酬支払は、問題金融機関が関連事業会社(institution-affiliated party:IAP)がその関連性の廃止に伴い支払う報酬にも関与する。

(2)預金保険法(FDI Act)およびその適用規則は問題金融機関(銀行検査で総合評価の格付けが「4」および「5」に合致する金融機関については規則に別途の定めがある場合を除き、ゴールデン・パラシュート報酬の支払を禁止する。その例外は、特定の状況でかつ特別な承認がなされた場合のみ「申請」により許可される。

(3)銀行の上級管理者に利するゴールデン・パラシュート報酬支払の申請は、当該受給者の銀行への影響や主要な法人の主導性や政策決定とりわけハイリスクな銀行戦略にかかる活動への関与といった個人の実績評価を含む高度な精査結果(scrutiny)に従う。

(4)本通達は、申請時に要求される情報の類型の詳細なガイダンスならびに監督機関職員が申請や支払額案を評価する際の考慮すべき要素を提供する。

(5)申請手続きの簡素化や申請数の削減を意図して、本ガイダンスはほとんどのケースに該当する1人あたり最高5千ドル(約41万円)のゴールデン・パラシュート報酬の支払については「申請不要」とした。ただし、その場合、銀行は受取人の署名および受取り金額について確定日付とともに支払い記録の保管が義務付けられる。

(6)複数件をまとめたゴールデン・パラシュート報酬の申請形式として、金融機関が同様の責任を持つ比較的低水準の従業員に対しまたは人員整理や組織再編に伴う低額の支払を求めて来た場合も同様に認められる。

(7) FDICは、ゴールデン・パラシュート報酬の支払申請の承認に際し、段階的分割支払または報酬を条件付で減らす「条件付回収条項(clawback provision)」を求めることができる。

2. 2010年10月18日、証券取引委員会(SEC)が「銀行等における『法的拘束力のない投票権(“Say on Pay”)』および委任状投票(Proxy Vote)に関する規則案」を提示
 10月18日にSECがリリースした内容は「ドッド・フランク法」第951条に基づくものである。 (筆者注7)
 同リリースには、(1)役員報酬にかかる総会議案 “Say on Pay”に関する規則(案)(Reporting of Proxy Votes on Executive Compensation and Other Matters)のリリース(No.34-63123)(全85頁)、(2)株主の役員報酬にかかる承認手続きおよびゴールデン・パラシュート報酬に関する規則(案)(Shareholder Approval of Executive Compensation and Golden Parachute Compensation)のリリース(No.33-9153)(全122頁)

 この“Say on Pay”とは、経営者の報酬を株主総会の議案として株主の「賛否」を問うものである。

(1)今回提案された規則案では、公開(上場)会社は連邦規則に基づき委任状投票にあたり次の手続の遵守が必要となる。
・株主に対し役員報酬および同投票の頻度要求に関するに勧告的決議投票(advisory vote)の機会の提供
・株主に対し、役員報酬協定(compensation arrangements)および“ゴールデン・パラシュート”で知られる合併取引時の報酬合意(understandings)について勧告的決議投票の機会の提供
・合併に関する株主総会招集通知(proxy statements)における“ゴールデン・パラシュート”協定についての追加的開示

今回SECが提示した規則案は、金融機関の投資管理者報告においてSEC規則に基づく別の報告が要求され場合を除き、少なくとも毎年役員報酬および“ゴールデン・パラシュート”協定に関する投票を求める。

 2009年SECは「不良資産救済プログラム(Troubled Asset Relief Program:TARP)」の下で未返済債務を負う公開会社では株主に対し総会議案において経営者の報酬投票権を明記することを採択した。

(2)経営者の報酬を株主総会の議案として株主の「賛否」を問う“Say-on-Pay”投票権および追加的開示要求
A.株主の役員報酬に関する承認
ドッド・フランク法の適用にランするSEC規則案では、連邦委任状規則に従う会社は役員報酬に関する勧告的決議投票権を株主に提供しなければならない。
ドッド・フランク法に基づき追加したSEC法第14A(a)( Shareholder Approval of Executive Compensation)は初めての株主総会が2011年1月21日以降に開始する初めの年次総会において少なくとも3年に1回“Say-on-Pay”投票を行う旨を明記した。
 SEC規則案は、公開会社は非拘束の投票を含む年次株主総会招集通知において“Say-on-Pay”投票を提供することを求めている。

B.役員報酬に関する株主投票の頻度に関する株主の承認
(略)

C. “ゴールデン・パラシュート”協定に関する株主の承認と開示
(略)

(3) “Say-on-Pay”等の投票に関する金融機関の投資管理者報告
(略)

(4)本SEC規則(案)に対するパブリックコメント期限
 2010年11月18日

********************************************************

(筆者注1) 今までも重ねて述べてきた内容であるが、一般的に複雑な制度になっているのであらためて概要をわが国の預金保険機構の解説である原和明「米国における銀行破綻処理」から抜粋、引用しておく。(正確な訳語は筆者の責任で補足した)


「米国においては、監督権限(primary regulatory authority)は、原則として免許付与機関が持っており、国法銀行については財務省連邦通貨監督局(OCC)、州法銀行については州当局、連邦免許の貯蓄金融機関については財務省貯蓄金融機関監督(OTS)、州免許の貯蓄金融機関については州当局となっている。
また、FDIC加入の州法銀行・州免許の貯蓄金融機関については、別に連邦監督機関(primary federal regulator)があり、連邦準備制度加盟の州法銀行についてはFRB、連邦準備制度未加盟の州法銀行・貯蓄銀行(savings bank)についてはFDIC、州免許の貯蓄貸付組合(S&L)等についてはOTSとなっている。
別に預金保険制度加盟金融機関については、FDICが連邦預金保険者として検査権限を持っている。
米国においては、監督機関の間で検査原則や基準等を統一し、ひいては金融機関の監督を統一するために、1979年にFFIEC(Federal Financial Institutions Examination Council)が設けられており、FRB、FDIC、NCUA、OCC、OTSなどが参加している。また、FFIECを通じて検査情報や監督情報が共有されている。」

(筆者注2)ドッド・フランク法の全体ならびに逐条的な解説レポートとして引用できるのは、米国のデベボイス・アンド・プリンプトン法律事務所(Debevoise & Plimpton LLP)の「ドッド・フランク法の逐条要約解説(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act-Summary of Key Provisions)」(全196頁)であろう。
 ただし、厳密に言うとこのレポートの元となっている法案は2010年6月29日に「H.R.4173両院協議会(Conference Committee)」で承認された報告(Report115-517,111th Cong,2ndSess.,dated June 29 2010)に基づくものである。
 本ブログでも8月14日に紹介した同法案の審議をあらためて紹介すると、2009年12月11日に下院でH.R.4173を可決、また2010年5月20日には上院はクリス・ドッド銀行・住宅・都市委員会委員長が上程した上院独自法案「S.3217:2010年米国金融安定化復元法案(Restoring American Financial Stability Act of 2010)」を可決した。
 しかし、この両法案には重要な点での相違点が含まれていたため、6月14日から21日の間に「H.R.4173両院協議会」で調整が行われ、6月29日に協議会報告を採択の上、30日に下院総会で再度最終的に採択されたものである。

 また、同法に関するわが国の金融関係や法律関係者が参照できるレベルのものとしては次の2つのレポートを推奨したい。

(1) ディビスポーク・アンド・ウォードウェル法律事務所(Davis Polk & Wardwell LLPの“Summary of Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act,Enacted into Law on July 21,2010”である。全体で130頁にわたるものであるが、面白いと感じたのは冒頭に各監督機関がドッド・フランク法に基づき今後規則制定や報告書をまとめる数を推定していることである。また、記載項目の順序は法律自体の順序には準拠していないで「ボルカー・ルール」を三番目にもってくるなど独自の優先順序をつけている点である。
 また、同法律事務所の日本事務所ではブログ“U.S. Legal Developments”のカテゴリーで「ドッド・フランク」を取上げ、そこでは「ドッド・フランク法における金融調査局」、「ドッド・フランク法のおける店頭デリバティブ」、「ドッド・フランク法のおけるボルカー・ルール」等を個別に取上げて仮訳している。わが国ではこれに類したものがないだけに貴重なブログといえる。

(2)企業法務専門のレキソロジー法律事務所(Lexology )の“Summary of Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act”である。8頁であり財務省の「金融安定化監督協議会(Financial Services Oversight Council)」には言及しているものの同省の下部機関として創設する「金融調査局(Office of Financial Research)」は触れていない。網羅性については不満が残るものの主要なキーワードには言及している。

(筆者注3)わが国で「ドッド・フランク法」の全体的構成について要旨を解説したレポートとしては国立国会図書館 井樋三枝子「外国の立法 (2010.7/8) 」「【アメリカ】 金融規制改革法」があげられる。
執筆時期にはまだ(筆者注2)で紹介したような米国法律専門家による資料がなく、法案内容自体が調整中ということもあり苦労したとは思うが、公的資料として見た場合、内容的に問題がある。


以下気が付いた点を一部例示であげておく。
(1)紙幅の制約があるとは思うが、正確な法律の逐条内容の検索につながる情報がない。少なくとも“Thomas”、 “GovTrack.us”、”OpenCongress“等にリンクできるURLは必須であろう。
(2)内容から見て法律の条文に準拠していると思ったが、例えば「金融安定化監督協議会(Financial Stability Oversight Council:FSOC)」の投票権を持つ委員10名の列挙中、NCUA(全米信用組合管理機構)が漏れている。また、FSOCやその下部機関的機能を担う金融調査局が連邦財務省の機関である点の説明が抜けている。
(3)第3章に関し、財務省貯蓄金融機関監督局(OTS)を廃止し監督権限を移管する件に関し「権限はFDICと財務省に合併するOCCに移行。FDIC及びFRBは現行の権限を継続」と説明している。これではあまりにも説明不足のそしりを免れない。
米国の金融監督機関の権限とは何を指すのか。「監督権限」、「規則制定権限」、「法執行権限」に分けて説明しないと連邦や州にまたがる複雑な問題を正確に理解できない。筆者なりに例示的に解説を試みる。
すなわちドッド・フランク法第Ⅲ編「Transfer of Power to the Comptroller of the Currency,the Corporation,and the FRB」の内容を引用すると次のようになる。
・FRBヘの移管:監督権限、規則制定権限
・OCCへの移管:連邦貯蓄協会(Federal Savings Associations )の関係事項および規則制定権限
・FDICへの移管:州の貯蓄協会に関する法執行権限

(筆者注4)ABAは2011年3月13日~14日の2日間にわたり「金融界として来る規制強化に対処すべく相互の協力関係強化のための全米規模のコミュニティ・バンク会議」を開催する。この会議の主目的は連邦議会対策である。2010年3月にはABAは「ドッド・フランク法案」に対する議会への発言力保持のために約1,000人の銀行家がワシントンに集結した。

(筆者注5)連邦準備制度理事会のドッド・フランク法(DFA)対応の適用状況は「ドッド・フランク法に基づく規制改革にかかる実績達成および今後の適用項目予定一覧」で確認できる。同サイトの構成は、次のとおりである。


(1) 主導作業項目中の完了事項(Initiatives Completed)
・信用格付け(Credit Ratings)(DFA939A条)
・透明性強化政策(Transparency Policy)
・消費者金融保護局の設置に伴う移行資金口座をニューヨーク連銀に開設(DFA1017(b)(1)条)
・貸付真実法関連:第一順位の不動産抵当ローン(ジャンボ・ローン)にかかる固定資産税および保険に関しローン融資者がエスクロー勘定(不動産会社とは別に、取引物件の権原調査、関係書類等の保管、決済の代行等を行っている。この専門会社エスクロー会社は寄託された手付金等の金銭を別個に開設した口座(Escrow Account)に預けておくことが法律によって義務付けられている。このことによって、もしエスクロー会社が差し押さえを受けても、その口座は差し押さえの対象から除外される。)を開設する必要があるか否かを決定するための閾値(年率)の引上げ案
 なお、「政府保証のない民間住宅ローンであるコンベンショナル・ローンのうち、ファニー・メイ(連邦抵当金庫)やフレディ・マック(連邦住宅貸付抵当公社)といった政府支援機関(GSE)の買取り条件に適合するローンを、コンフォーミングローン(Conforming Loan)と呼ぶ。GSEの買取り条件に合致しないノンコンフォーミングローンのうち、債務者の信用力は十分だが、ローン額がGSEの買取り上限額を超えるものが、ジャンボローン(Jumbo Loan)である。」 「世界を覆うサブプライム問題の脅威」第2回 サブプライムローンの主な特徴(2008年7月6日)から引用。
・デビットカードの置き換え料金、決済ネット等に関する調査
・金融監督安定化協議会の設立準備(DFA111条)
・ボルカー・ルールの研究(DFA111条) なお、FRBは2010年11月17日にボルカー・ルールに関し、禁止される自己勘定売買、企業投資ファンドまたはヘッジファンド活動を扱っている金融機関におけるその遵守期間に関する規則(案)公表した(コメント期限は連邦官報発出後45日以内)。・統合的な監督のためのノンバンク金融会社の指定準備(DFA113条)
・不動産鑑定士における評価の独立性保障にかかる暫定規則案(DFA1472条)
・証券化市場における信用リスク保持による潜在的影響に関する報告書(DFA941条)
(以下、略)

(2)FRB主導項目についての作業予定(2010年11月~12月)
(3)同(2011年1月~3月)

(筆者注6)米国の銀行検査結果は、1979年に導入された「統一金融機関格付制度(Uniform Financial Institutions Rating System:UFIRS)」に基づく「CAMELSレイティング」で評価される。「CAMELSレイティング」は、(1)自己資本の充足度(Capital Adequacy)、(2)資産内容(Asset Quality)、(3)経営内容(Management)、(4)収益力(Earnings)、(5)流動性(Liquidity)、(6)マーケット・リスクに関する感応性(Sensitivity to market risk)の6つの項目につき5段階(Component Ratings)で評価され、最終的に1(良好)から5(破綻の危険性大)までの総合的評価(Composite Ratings )が行われている。総合評価が「4」ないし「5」という格付けとなった銀行は、問題銀行(troubled bank)として捉えられて監督機関からその強化が行われる。(「資本市場クォータリー」1999年春号 林 宏美「英米の銀行検査体制」5頁以下が参考になる)

(筆者注7) SECはドッド・フランク法対応に関する成果一覧のウェブサイト“Implementing Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act — Accomplishments”を設けて関係機関による参照に寄与している。

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米国元銀行頭取が銀行を故意に破産させかつFDICに約430万ドルの損失を生じさせた訴訟で有罪答弁

2010-10-31 08:47:58 | 米国の金融監督機関


Last Updated:February 21,2021


 2010年10月26日、FBIは2001年から2007年の間「ヒューム・バンク(Hume Bank)」頭取であった被告ジェフリー・W・トンプソン(Jeffrey W.Thompson)が銀行に対する詐欺を事由とする裁判で「有罪答弁(Pleads Guilty)」を行った旨リリースで発表した。

 FBIの解説は主に母親や親戚に対する不正融資等極めて悪質な犯罪行為の内容が中心であり、司法関係者が読むには情報不足である。筆者は独自にFDICの資料や起訴時の報道等を調べて、あらためて事件の全貌の解明を試みた。

 時間の関係ですべての情報を網羅しているとは思えないが、経営破たんが続く米国金融界の闇の部分が多少でも垣間見ることが出来れば幸いである。
 なお、本起訴につき米国民の反応は弱いようである。この種の金融機関経営者は米国では珍しくないということなのか。

 なお、ミズーリ州西部地区連邦検事のベス・フィリップス(Beth Phillips)は2011年3月10日、ミズーリ州ベイツ郡のヒューム銀行の前頭取が、銀行が破産に追い込まれたほどの重大な損失に関し銀行詐欺計画の一環としてFDICに虚偽の陳述を行ったとして連邦裁判所から有罪判決を受けたと発表した。

Beth Phillips氏

 ヒューム銀行の元頭取のジェフリーW.トンプソン(40歳)は、2011年3月9日に、仮釈放なしの連邦刑務所で6年6か月の刑を宣告された。 又同裁判所は、トンプソン被告に、詐欺計画または彼の居住用財産からの収入を表す30万ドル(約3270万円)を連邦政府に没収するよう命じた。 


1.元ヒューム銀行頭取の起訴
 2009年12月2日、ジェフリー・W・トンプソンはミズーリー州のヒューム銀行の頭取であった時期の2004年1月から退任した2007年8月の間に銀行に対する詐欺行為(1訴因)、資金の不正使用(3訴因)、不正な銀行取引・報告(6訴因)、さらにはFDICへの虚偽の報告(3訴因)の計13訴因につき連邦大陪審(grand jury)により起訴相当と判断された。

 トンプソンが持ち出し管理していた融資につき被告は融資管理記録を改ざん・隠蔽したため返済期限経過の融資等による損失をもたらしたことから、ヒューム銀行は2008年3月7日に破産し、ミズーリー州金融当局(Missouri division of Finance)はFDICを管財人(Recipient)に指名した。(筆者注1) FDICは保険金432万4,463ドル(約3億5千万円)を預金者に支払い、また、セキュリティ銀行(Security Bank)はヒューム銀行の全預金を引き継ぎ、ヒューム銀行は同日のSecurity Bankの支店となった。

2.起訴状や有罪答弁に見る違法行為の具体的内容
(1)被告は、融資管理記録を改ざん・隠蔽したため返済期限経過の融資等による損失をもたらした。例えば、返済期限経過の融資につき元本をゼロに改ざん(1,584件)、延滞利息をゼロに改ざん(1,460件)、融資管理報告書上の満期日を改ざんした(1,445件)。

(2)妻の叔父に対する融資23万4千ドル(約1,895万円)の融資損失させた。
 起訴状ではその他、次のような不正融資が記載された。
・被告の妻の従兄弟ブラッド・ラニング(Brad Laning)に対する融資において、返済期限経過後の融資の元本(past-due principal)記録をゼロに改ざんした。
・妻の叔父リック・ラニング (Rick Laning) への融資につき未払い利息(実際は3,672ドルあり)をゼロ、また弁済期限経過後の元本(実際は5,510ドルあり)をゼロと改ざんした。

(3)被告は次のような手口でヒューム銀行の取締役会に対し、融資内容と当座貸越しの内容を隠蔽した。
・未投函当座貸し越しの事実や利息を計上すべき融資につき隠蔽した。
・顧客に対し指示欄、財務表や信託証書につき空白のままにするよう指示し、後日自分が記入する旨説明した。

(4)被告は問題がある借り手の融資目的につき取締役会に次のような虚偽の説明を行った。
・被告の義父(father–in-law)ディビー・クリンクシック(Davie Klincksick)
に対し、14,500ドル(約118万円)を農機具の購入資金として記載して融資したが、その収益のうち9,000ドル(約73万円)を直ちに被告夫婦の共同預金口座(joint account)に入金後、同日にその資金を車の支払代金として小切手を切った。

 このような虚偽の融資完了報告は、州や連邦銀行検査官さらには同行の取締役会に対し問題を隠蔽した。

(5)被告は、銀行検査官の質問状に対し同行は“accommodation loan” (利子や手数料がかからず借り手を支援する特別融資)、“nominee loans”(名義貸し不正銀行融資)(筆者注2)はまったくないと記載した。
しかし、実際に被告は“accommodation loan”や“nominee loans”を実行し、親戚から個人的に元本に対する裏利子等利益を得ていた。

 被告は今回有罪答弁したことで、詐欺の手口や自身の住居につき計30万ドル(約2,430万円)を政府に没収されることに同意した。

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(筆者注1) より正確に手続を説明すると次のようになる。
FDICは管財人(receiver)に指名され、資産を売却、回収し、非付保預金者および債権者(security holder)に配当を支払う。預金者優先弁済権が預金者に与えられている。(預金保険機構「預金保険制度の国際比較(2008年5月現在)」

(筆者注2) “nominee loans”は、米国金融監督検査協議会(FFIEC)「内部ローン詐欺(Insider Loan Fraud)」(2頁以下)等で取上げられているものである。一般的ではない用語なので補足すると「融資契約書に記載された借り手は実際の融資の使用や利益を得る者ではない融資形態である。このような融資は健全な銀行経営原則から見て違法なものである。」

〔参照URL〕
http://www.nevadadailymail.com/story/1591477.html
https://archives.fbi.gov/archives/kansascity/press-releases/2011/kc031011a.htm
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米国連邦預金保険公社が一部預金保険対象預金の保障額を25万ドルとする恒久措置通達を出状

2010-08-14 11:53:00 | 米国の金融監督機関

 

 5月3日付けの本ブログで、米国金融監督機関でありかつ預金保険保障機関である連邦預金保険公社(FDIC)の預金保護限度額の引上げ措置および暫定措置の延長にかかる経緯等について次のとおり詳しく解説した。

 「米国では2008年10月3日 「緊急経済安定化法(Emergency Economic Stabilization Act of 2008(EESA):H.R.1424)」が成立し、同年10月8日にFDICは、EESAに基づき、預金保護限度額を 10万ドル(約850万円)から25万ドル(約2,125万円)に引き上げたと発表した。また非金利の当座預金等についてはFDICによる「暫定流動性保護プログラム(temporary Transaction Account Guarantee Program:TTAGP)」として金額無制限に保護すると発表した。施行は同年10月3日からであり、何れも2009年12月末までの暫定的措置であった。

 しかし、銀行の経営破たんの状況は引続いており、預金者の信用不安を回避するため2009年5月20日に成立した前記“Helping Families Save Their Homes Act of 2009”により、オバマ政権は、借入枠の拡大(2010年までは5,000億ドル)と、預金保護拡大措置の延長とを決めた。すなわち2008年10月に成立した金融安定化法で導入された保護上限の拡大措置(10万ドルを25万ドル)を2013年12月31日まで延長するとした。」

 実はこのようなTTAGPに基づく暫定延長措置はその後も続いており、FDICは2009年8月26日に2010年6月30日まで金額無制限の適用範囲の拡大を行い、さらに2010年4月13日には、同措置の2010年12月31日までの暫定期間の再々延長(更なるFDIC規則の改正措置なしに12か月の再延長の可能性も明記)通知を行うとともに、TTAGPの延長措置の脱退を希望する加盟金融機関については4月30日までに「オプト・アウト」する権利を留保した(同権利は2010年7月1日から有効となる)。

 今回のブログは金融規制監督や銀行経営の抜本的改革を目指して本年7月21日に成立した「ドッド・フランク・ウォールストリート金融街改革および消費者保護法(Dodd–Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act:H.R.4173)」(ドッド・フランク法)
(筆者注1)の包括的な解説作業をまとめる中で出てきた問題ではあるが、実は米国金融改革の更なる大きな課題を提供する預金保険制度の課題を正確に見据える意味で取り上げた。

1.FDICによるTTAGPに基づく保障金額や対象預金に関する暫定措期間の延長
(1)FDICは2009年8月26日に2010年6月30日までTTAGPに基づくFDIC加盟金融機関において金額無制限の適用範囲を「非金利(無利子)預金(要求払い預金(Demand Deposit Account:DDA))、0.5%以上の金利を得られない「低金利の普通預金(low-interest NOW account)」、「銀行振出小切手(cashier or bank checks)」および「弁護士預り金信託勘定(Lawyer Trust Accounts)」(筆者注2)まで拡大することを通知した。

(2)2010年4月13日には、同措置の2010年12月31日までの暫定期間の再延長(更なるFDIC規則の改正措置なしに12か月の再延長の可能性も明記)通知を行うとともに、TTAGPの延長措置の脱退を希望する加盟金融機関については4月30日までに「オプト・アウト」する権利を留保した(同権利は2010年7月1日から有効となる)。

2.「ドッド・フランク・ウォールストリート金融街改革および消費者保護法」の可決・成立と一部預金につきFDIC標準保証金額25万ドルの恒久措置
(1)2010年7月21日「ドッド・フランク法」の大統領署名と成立
 第Ⅲ編副編C FDIC 第335条「銀行や信用組合の預金保障額の恒久的増額( PERMANENT INCREASE IN DEPOSIT AND SHARE INSURANCE):165頁」に定める内容に従い、従来の預金保険法(12 U.S.C.1821(a)(1)(E))で定める10万ドルから暫定措置により引上げられていた25万ドルに恒久的に引上げられた。
(7月21日付、FDIC通達参照。)

(2)FDICの最終規則
 これを受けて、FDICは8月10日開催の理事会において「FDICの標準保障限度額(standard maximum deposit insurance amount:SMDIA)の10万ドルから25万ドルへの恒久的引上げおよびその店頭ロゴ広告の改正規則最終案)(Final Rule to Conform Deposit Insurance and Advertising (Logo) Regulations to Permanent SMDIA of $250,000 )」を採択した。この結果、連邦預金保険規則の第12編パート330および同編パート328が改正され、SMDIAは7月22日から施行されることとなった。
 なお、FDIC保障額の公式署名ロゴは即日25万ドルに改正されており、加盟金融機関は2011年1月3日までにロゴ等の差し替えを行うことが義務付けられている。
(8月12日付、FDIC通達参照)

(3)FDICのその他関連措置
 FDICの「保障保険料計算の専用ウェブ“Electronic Deposit Insurance Estimator:EDIE”」の内容も即日限度額は25万ドルに更新された。
*************************************************************************************************:

(筆者注1)「ドッド・フランク・ウォールストリート金融街改革および消費者保護法(ドッド・フランク法)」に関する連邦議会での審議経緯の概略は次のとおりである。
「2009年12月11日、連邦議会下院で「ウォールストリート金融街改革および消費者保護強化法案( Wall Street Reform and Consumer Protection Act of 2009:H.R.4173)(以下“H.R.4173”という)」が可決された(提案者(sponsor)は下院「金融サービス委員会」委員長バーニー・フランク(Barney Frank:民主党、マサチューセッツ州選出)および連邦財務省)。本法案はオバマ政権も強くその成立を希望しており、今後はより規制強化の内容をもつ別法案「2009年米国金融安定復元法(Restoring American Financial Stability Act of 2009)」(提案者はクリス・J・ドッド上院「銀行・住宅・都市委員会」委員長)を擁している上院で審議が行われた。
 また、フランク委員長が同時に提案した「2009年金融安定化改善法(Financial Stability Improvement Act of 2009:H.R.3996)(以下“H.R.3996”という)」も11月18日、金融サービス小委員会で修正のうえ同委員会を通過している。

 参考までに2009年12月、H.R.4173が下院に上程されたときの主旨説明のキーワードを紹介しておく。
①「消費者金融保護庁( Consumer Financial Protection Agency:CFPA)」の創設
②財務省内に「金融安定化協議会(Financial Stability Oversight Council:FSOC)」の創設
③財務省内に「金融調査局(Office of Financial Research:OFR)」の創設
④銀行事業体に対する自己勘定取引の原則禁止、ヘッジファンド等への投資の一般的禁止(ボルカー・ルール)
⑤巨大な金融機関の解体権限と「破綻させられないくらい大きすぎる金融機関」の存在を終結させる(Dissolution Authority and Ending “Too Big to Fail”)
⑥役員報酬やゴールデンパラシュートに対する株主の勧告的投票権(Executive Compensation)付与:
⑦SECの権限強化など投資家保護(Investor Protection)
⑧金融派生化商品の規制強化(Regulation of Derivatives)
⑨不動産担保制度改革と略奪的融資禁止(Mortgage Reform and Anti-Predatory Lending)
⑩信用格付け機関の改革(Reform of Credit Rating Agencies)
⑪ヘッジファンド、未公開株式および私募資本プール登録制度(Hedge Fund, Private Equity and Private Pools of Capital Registration)
⑫連邦財務省内に保険局の創設(Office of Insurance)

 同改革法案は上院で2010年5月20日可決、6月30日に下院で上院との調整修正案が可決、H.R.4173は7月15日に上院で最終可決された。
  この間、上院と下院は内容の調整協議(House and Senate conferees)を行い、6月29日に下院委員会は「ドッド・フランク・ウォールストリート改革および消費者保護法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act)」の最終調整案の要旨を公表した。

(筆者注2) “Interest on Lawyers Trust Accounts (IOLTA)”とは、弁護士が依頼者から受け取っている預り金を、小口のまま銀行に預けていたのでは手数料等差し引かれ実質的な利子が付かないので、1つの口座にまとめてその利子を貧困者への法的サービス提供の資金して利用する効率的口座管理制度である。


[参照URL]
[FDICの関係通達]
http://www.fdic.gov/news/news/press/2010/pr10161.html
http://www.fdic.gov/news/news/financial/2010/fil10049.html

[ドッド・フランク・ウォールストリート改革および消費者保護法(ドッド・フランク法)の原文]
http://frwebgate.access.gpo.gov/cgi-bin/getdoc.cgi?dbname=111_cong_bills&docid=f:h4173enr.txt.pdf

[連邦議会下院金融サービス委員会のH.R.4173専用サイト]
http://financialservices.house.gov/Default.aspx

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米国の連邦預金保険公社による暫定保護限度額引上げや全額保護措置の概要と今後の行方

2010-05-03 16:25:29 | 米国の金融監督機関



 金融関係者で本ブログを読んでいる方の中には、“FDIC's Electronic Deposit Insurance Estimator(EDIE)” のことを知っておられる方もあろう。わが国の預金保険制度の原型となる米国の預金保険制度は期間限定ながら、今、金融危機の中で極めて異例な保護措置を実行している。

 今回のブログは、このような前例のない保護措置を取らざるを得ない米国の金融リスク、信用不安の実態等をあらためて整理するものである。

 なお、2009年5月21日付けでわが国の預金保険機構(DIC)のHP調査(海外事情・預金保険研究)において「米国:預金保険制度の変更を含む法律が成立」という標題で「預金保険制度の変更としては、(1)臨時的な保護限度額引上げ期間の延長、(2)預金保険基金回復計画の回復期限の延長、(3)預金保険機関の借入限度額の引上げ、(4)連邦預金保険法に基づくシステミック・リスク・エクセプション
(筆者注1) (筆者注2)実施により損失が生じた場合の特別保険料の賦課対象の追加、賦課基準の弾力化」にかかる立法措置(住宅ローンの差押回避と利用促進を意図した法律(Helping Families Save Their Homes Act of 2009:S.896))の概要を説明している。

 しかし、今回取り上げる(1)の変更内容についての詳しい説明は、その後の預金保険機構サイトでも行われていない。今回、筆者はURLのリンク先を見直して国立国会図書館サイトにアーカイブされていることに気が付いた。

(筆者はかつて預金保険機構は出向先であった)

 

1.FDICの預金保護限度額の引上げ措置および臨時措置の延長にかかる経緯
 米国では2008年10月3日 「緊急経済安定化法(Emergency Economic Stabilization Act of 2008(EESA):H.R.1424)」が成立し、同年10月8日にFDICは、EESAに基づき、預金保護限度額を 10万ドル(約930万円)から25万ドル(約2,325万円)に引き上げたと発表した。また非金利の当座預金等についてはFDICによる「暫定流動性保護プログラム(temporary Transaction Account Guarantee Program:TTAGP)」として金額無制限に保護すると発表した。施行は同年10月3日からであり、何れも2009年12月末までの暫定的措置であった。

 しかし、銀行の経営破たんの状況は引続いており、預金者の信用不安を回避するため2009年5月20日に成立した前記“Helping Families Save Their Homes Act of 2009”により、オバマ政権は、借入枠の拡大(2010年までは5,000億ドル)と、預金保護拡大措置の延長とを決めた。すなわち2008年10月に成立した金融安定化法で導入された保護上限の拡大措置(10万ドルを25万ドル)を2013年12月31日まで延長するとした。なお、TTAGPにもとづく金額無制限の暫定保護措置は2010年6月30日まで存続することとなった。

 この延長措置については、FDICは2009年5月22日付け金融機関向け通達“FDIC Insurance Coverage Extension of Temporary Increase in Standard Maximum Deposit Insurance Amount”で詳しく解説している。

2.FDICの預金保護限度拡大措置の内容 (筆者注4)
(1)FDICに関する法律および規則の内容
 FDICサイトのFact Sheet や預金者向け小冊子(Your Insured Deposits-Temporary Changes to FDIC Deposit Insurance Coverage-)が簡潔に説明しているので、ここで引用する。
 特に危機的な臨時措置と感じたのはFDICサイトでの「あなたの保護預金額についてのQ&A」である。
 設例では1家族の全口座が「1金融機関」に預入されており、各預金口座、夫婦の共同名義預金(Joint Account) (筆者注3)、退職者個人貯金年金口座(Retirement Account)(個人退職基金口座(IRA)、撤回可能信託(revocable trust account)取引を行っている4人家族(両親と子供2人)となっており、当該家族の全口座残高300万ドル(約2億7,900万円)が全額保護されると説明されている。

 以下、FDICの具体的な解説内容を紹介するが、設例が米国では一般的であるとすると、全額保護額の大きさはいかに受け止めるべきであろうか。

(A)単一名義所有預金
 FDICは同一預金者名で所有される同一銀行の単一名義預金口座を名寄せし合計額につき25万ドルを限度として保護される。設例では夫、妻につき各25万ドルの残高があり、その全額計50万ドルが保護される。

(B) 退職者個人貯金年金口座
 FDICは同一預金者名で所有される同一銀行の退職者個人年金貯金口座を名寄せし合計額につき25万ドルを限度として保護される。設例では夫、妻につき各25万ドルの残高があり、その全額計50万ドルが保護される。

(C)共同名義預金口座
 設例では夫婦は同一銀行に1つの共同名義預金口座をもっている。FDICは共同所有者の持分(寄与分)を合計して保護する。設例では残高は50万ドルで夫と妻の所有権割合は50%である、すなわち25万ドル以下であることから各25万ドル、計50万ドルが全額保護される。

(D) 撤回可能信託
 まず保護額の算出にあたり、FDICは各所有者が持つ預金残高を計算する。
・夫の持分相続人割合:75万ドル
夫が死亡時の妻を相続人指名(POD Account beneficiary)しているため100%の割合をもち、また子供Aと子供Bを受託者とする生前信託に関しては夫と妻が50%持つ。
・妻の持分相続人割合:75万ドル
妻が死亡時の夫を相続人指名(POD Account beneficiary)しているため100%の割合をもち、また子供Aと子供Bを受託者とする生前信託に関しては夫と妻が50%持つ。

 次に、FDICは各所有者につき受益者(相続人)数を計算する。設例では各所有者は異なる3人の受益者(配偶者、子供A、子供B)を持つ。撤回可能信託については所有者が5以下の受益者を有するときは所有者は各異なる受益者につき25万ドルまで保護される。
夫の撤回可能信託預金の持分割合につき75万ドル(25万ドル×受益者3人)が保護され、妻についても同様で計算される

 以上まとめると設例では、(A)+(B)+(C)+(D)=300万ドルが保護されることになる。

(2)口座の所有者の死亡や撤回可能信託受益者の死亡時の保護範囲の扱い
 FDICは口座名義人の死亡後、当該口座につき権限者により再設定などが行われない限り、6か月間の据置期間(grace period)は生存しているとみなして預金を保護する。(筆者注5)

また、非公式の撤回可能信託方式である例えば“POD Account”において相続人が死亡した場合は前記据え置き期間の適用はない。ほとんどの場合、保護額は直ちに減額される。
 (例)母親は2人の子供を“POD Account”の相続人として50万ドルを銀行に口座に預託していた。口座所有者と相続人が生きているときは口座は50万ドルまで保護される(25万ドル×2人の相続人)。1人の相続人が死亡したとき、母親の“POD Account”に対する保護額は25万ドルに減額される。
 さらに正式な撤回可能信託の場合、6か月の据置期間や非公式の撤回可能信託のような制約は適用されない。ただし、契約上の諸条件は承継受益者(successor beneficiary)やその他の信託預金の再配分に影響を与えるため保護額が変更される可能性がある。

(3)FDICの臨時措置にかかる預金者向け啓蒙活動(Q&A)の内容
 FDICは、今回の暫定措置の有効期限である2013年12月31日までの間、預金者の混乱を避けるため次のような店頭での掲示等の推奨措置を行っている。
 本措置の徹底を図るため預金者への通知や預金窓口で掲示する「FDIC加盟金融機関である旨のロゴ」の横などに暫定措置に関する「声明文」を貼る。特に新規口座の開設時の説明や2013年12月31日以降に満期を迎える定期預金証書への表示が重要であるとしている。

(4)保護金額の計算に関するオンライン・シュミレーション・サービスの例
 FDICは、預金者や銀行の担当者が正確に暫定的な保護内容を理解できるよう専用サイト(FDIC's Electronic Deposit Insurance Estimator(EDIE)”)を用意している(FDICサイトで良く出てくる文言であるが、「FDIC加盟機関に預けられたあなたの預金は何が起ころうと100%保護され、1ペニーたりとも失うことはない」)。

 EDIEサイトを見ると、対象となる主な預金として、当座預金(Checking Accounts)、貯蓄預金(saving accounts)、マネーマーケット口座(MMDAs)、譲渡性預金(CDs)と記載されている。なお、EDIEは投資信託(mutual Funds)、株式、債券、年金保険(Annuities)等の金融取引には適用されない旨説明されている。

 また、EDIEサイトでは具体的なFDIC加盟金融機関ごとに保護範囲を調べる手間を省くため金融機関名や預金種類別を入力することで検索が出来、その結果の印刷までが一連して行える画面が用意されている。
 なお、2010年4月22日、FDICは計算サイトの内容更新通達を発している。

3.FDICの預金保護限度拡大措置の法的・財政的な問題点
 金融監督制度改革と極めてかかわりを持つ問題であり関係する問題につき簡単に触れる。

(1)GAO勧告
 2010年4月15日、連邦議会の行政機関への監視機関である「連邦議会行政監査局(GAO)」は、今回の金融危機に伴い2008年および2009年中に実施されたFDICの5回の勧告中、財務省が援助決定に至った3回の緊急援助につき、(1)起動決定に至るFDIC、FRBおよび財務省により取られた手段、(2)決定の根拠、結果的に取られた行動の目的、および(3) 預金保険加盟金融機関と非加盟金融機関に与える経営改善刺激策や行動に関する起こりうる効果の検証結果報告(Regulators’ Use of Systemic Risk Exception Raises Moral Hazard Concerns and Opportunities Exist to Clarify the Provision)を公表した。同要旨も閲覧可である。

 詳細は省略するが、結論部分において「システミック・リスク・エクセプションに関し、透明性と責任をより確実にするために、連邦議会は財務省に対し発表された行動、要件をはっきりさせる支援を決断しない場合の文書による理由説明および財務省の要求条件やその例外についての条件を明確化すべく、連邦議会は「連邦預金保険公社法:Federal Deposit Insurance Corporation Act:FDI Act)」を改正すべきである。

 特に現在進められている連邦議会での金融規制監督制度改革を審議する際、それらはシステミック・リスク・エクセプションの使用による市場原則の弱体化効果を緩和するために金融システム上重要な金融機関に対し、より重大なかたちで規制・監督上の監視を確実にすべきである。今回のGAOの調査結果につき連邦準備制度理事会と財務省は全体的に同意した。」とGAO報告は述べている。

(2)今回、FDICが行った措置の根拠に関する連邦破産法との関係でみた法的な課題
 具体的には連邦規則集12巻360.1条(12 C.F.R. § 360.1 Least-cost resolution)に基づく法的な問題点に関し、米国大手ローファームGibson, Dunn & Crutcher LLP (GD&C)が2008年9月26日に発表した小論文「資産保全管理人(consevator)または破産管財人(receiver)としてのFDICの機能の概観(OVERVIEW OF THE FDIC AS CONSERVATOR OR RECEIVER)」があり、その冒頭で次のとおり述べている。

 「同メモは、連邦預金保険公社(FDIC)の資産保全管理人または破産管財機関としての管理の全体を概観するものである。 このような関係においては起こりうる多くの複雑な特定の問題から見ると、本メモは概観の必要性だけでなく、重要な地方銀行などの比較的大きい複雑な銀行の場合に起こるかもしれない契約相手(counterparty)の問題に特別な 関連性を与え、一般的な企業倒産と異なるFDICの枠組みの要素の概要を述べるものである。

 本メモは3つの部分からなる。すなわち (1) FDIC独自の解決を統治する法的枠組みの背景と1990年代以降の変更や開発についてのハイライトの整理、 (2) 連邦破産法の条文との比較に関するFDIC独自の取組みの6つの特有の局面に関する概要、 および(3)最終章ではFDIC独自の解決手続における問題と不明確な点を例証する2つの例:債券の証券化(loan securitizations)と参加の処理、およびスタンドバイ信用状(standby letters of credit)に基づきさらに詳細な考察を行う。」

 これだけで大問題であり、その分析は機会を改めたい。

(3)FDICの臨時措置にかかる預金者向け啓蒙活動(Q&A)の内容
 FDICは、今回の暫定措置の有効期限である2013年12月31日までの間、預金者の混乱を避けるため次のような店頭での掲示等の推奨措置を行っている。
 本措置の徹底を図るため預金者への通知や預金窓口で掲示する「FDIC加盟金融機関である旨のロゴ」の横などに暫定措置に関する「声明文」を貼る。特に新規口座の開設時の説明や2013年12月31日以降に満期を迎える定期預金証書への表示が重要であるとしている。

(4)保護金額の計算に関するオンライン・シュミレーション・サービスの例
 FDICは、預金者や銀行の担当者が正確に暫定的な保護内容を理解できるよう専用サイト(FDIC's Electronic Deposit Insurance Estimator(EDIE)”)を用意している(FDICサイトで良く出てくる文言であるが、「FDIC加盟機関に預けられたあなたの預金は何が起ころうと100%保護され、1ペニーたりとも失うことはない」)。

 EDIEサイトを見ると、対象となる主な預金として、当座預金(Checking Accounts)、貯蓄預金(saving accounts)、マネーマーケット口座(MMDAs)、譲渡性預金(CDs)と記載されている。なお、EDIEは投資信託(mutual Funds)、株式、債券、年金保険(Annuities)等の金融取引には適用されない旨説明されている。

 また、EDIEサイトでは具体的なFDIC加盟金融機関ごとに保護範囲を調べる手間を省くため金融機関名や預金種類別を入力することで検索が出来、その結果の印刷までが一連して行える画面が用意されている。
 なお、2010年4月22日、FDICは計算サイトの内容更新通達を発している。


[参照URL]
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/998254/www.dic.go.jp/kenkyu/chosakenkyu/20090521.html
http://www.govtrack.us/congress/billtext.xpd?bill=h110-1424

https://www.fdic.gov/news/news/inactivefinancial/2009/fil09022.html

http://www.fdic.gov/deposit/deposits/insured/index.html
https://edie.fdic.gov/

http://www.fdic.gov/news/news/financial/2010/fil10016.html

**************************************************************

(筆者注1) 金融危機対応(システミック・リスク・エクセプション)の内容は国や監督機関法制により異なる。わが国の預金保険機構が比較しているのでここで引用する。
 米国の場合、システミック・リスクの例外規定(systemic risk exception)を適用するためには、以下の承認が必要。
•FDIC 理事会の3 分の2 の承認。
•連邦準備制度理事会の3分の2の承認
•財務長官が、大統領と協議した上での承認
 なお、筆者なりに調べたところ、2007年3月3日、国際預金保険協会(筆者注2)の会合においてFDIC副総裁Martin J. Gruenberg氏はスピーチの中でシステミック・リスク・エクセプションの適用条件につき次のとおり述べている。
“The systemic risk exception requires the approval of two thirds of the members of the FDIC's Board of Directors, two thirds of the members of the Board of Governors of the Federal Reserve System, and the Secretary of the U.S. Treasury, who must first consult with the President.”

(筆者注2)「国際預金保険協会(International Association of Deposit Insurers(IADI); Basel, Switzerland)」は、2002年5月に世界各国の預金保険機関・関係当局等により、各国預金保険機関等の相互協力の拡大を通じ、金融システムの安定化に資することを目的として設立された(預金保険機構の解説)。

(筆者注3) Joint Account(共同名義口座)にすることで、1つの口座を配偶者等と二人以上で使うようにできる口座であり、小切手発行が連名になり、配偶者自身で小切手を切ることが可能となる。配偶者にもATMカードが送られる。この預金契約は法的に見ると「合有(joint tenant))」にあたるとされ、“Joint Account”に関する米銀“U.S. Bank”の解説を引用しておく。なお、“WITHDRAWAL RIGHTS, OWNERSHIP OF ACCOUNT, AND BENEFICIARY DESIGNATION”の項目で検索すること。

“Joint Account(生存者権付共同(合有)預金口座)”: これは以下の特徴をもつ2人以上の自然人の氏名名義による口座をいう。口座名義人の引出権: 各共同名義人は口座残高および引出権につき完全かつ分離した別々のアクセス権を持つ。そして、それぞれはもう片方(複数の場合もある)は合有に係る預金の支払について承認を行う。 一部合有権者の死亡により生き残った合有権者は残った預金残高に対する完全な引出権を持つことになる。 1人以上の生き残っている合有名義人がいるときは、その生存権者には同じ引出権が残る。
(筆者補足)「合有(joint tenant)とは、生存者権(Right of Survivorship)という財産保有(預金や不動産等)形態で、その構成員が死亡時に残った者が必然的に合有資産を相続する方式である。

合有している財産は正式に裁判所の手続きにより遺言検認(probate) 手続を受ける必要がないため、裁判手続き費用を節約出来るということから利用されている。他方、合有にて財産を所有すると税金における利点(Tax Benefit)を大幅に失う点や、合有財産は遺言や信託の対象にならないため財産としての確実性を失うなどの信託財産を設計する上でデメリットがある。
 なお、遺言検認手続の簡素化策として“Payable 0n Death (POD)Beneficiary”を指定
しておけば、所有者の死亡時には、指定のBeneficiary(相続人)にprobateなしで移行できる。」
 各合有権者は口座の所有権をその所有者の引出権利の範囲内でその変更権を持つ。

(1)共同名義口座の所有権: 各合有口座名義人は口座の基金に対するその者の純貢献差益に比例して各合有名義人が「所有する」と推定される。 各合有名義人は、ある人が死亡したときときに同人によって所有されていたファンドが、生存者によって所有されることを意図する。 1人以上の生存者がいれば、故人のファンドの「所有権」は等しくそのような生存者と共有される。

(2)他の合有口座残高に対する権原(Title): 米国のいくつかの州法では、「Joint tenancy in common(通常合有権:生存者財産権のない合有権つまり各合有権者の権利は、遺言に従って分配されるもの)」または「夫婦全部所有権(tenancy by the entirety)ではない」のどちらかを加えるかまたはともに上で述べた意思を明示するのが、賢明とされている。

(筆者注4) FDICの付保限度額は、単独名義預金口座(single account)、共同名義預金口座(joint account)、信託勘定口座(trust account)、退職者個人貯金(retirement account)等、別々に設定される。保険金額は、金融機関ごとに、同一の資格(capacity)と同一の権利(right)を有する預金者ごとに10万ドル(利息を含む)に設定される。退職者個人貯金は例外的に25万ドルに限度額が設定される。

(筆者注5) 預金者死亡時の保護方式はわが国とFDICでは異なる。わが国の預金保険制度では次のとおりとなる。
(1)破綻日前に死亡していた場合:相続分が確定しているときは、各相続人の相続分と相続人の他の預金等とが合算され、保険の対象となる預金等のうち、決済用預金は全額、それ以外の預金等については各相続人ごとに元本1,000万円までとその利息等の合計額が付保預金額となる。
(2)破綻日後に死亡した場合:死亡した親の預金等として名寄せされ、保険の対象となる預金等のうち、決済用預金は全額、それ以外の預金等については元本1,000万円までとその利息等の合計額が付保預金額となる。
「預金保険制度の解説-制度概要及びQ&A-」のQ36より抜粋。

 
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Copyright © 2006-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.

 

 

 

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米国連邦財務省がウェルズ・ファーゴとシティグループから総額450億ドルの返済受領

2009-12-24 12:35:23 | 米国の金融監督機関

 

 12月23日、米国連邦財務省は「不良資産救済プログラム(Troubled Asset Relief Program:TARP)」にもとづき資金投入していたウェルズ・ファーゴとシティグループから合計450億ドルを受け取り、現在、不良資産救済プログラムによる金融機関からの返済総額は1640億ドルに上る旨のリリースが同省広報局から筆者の手元に届いた。

 このニュースはわが国のメディアも夕刊で取り上げるであろうが、その内容の正確性を期すため筆者なりに仮訳してみた。

 なお、12月24日午後13時現在で財務省の最新プレスリリース・サイトを見たが23日のリリースはまだ掲載されていない。

(仮訳) 米国連邦財務省は、このほどウェルズ・ファーゴとシティグループから「不良資産救済プログラム(Troubled Asset Relief Program:TARP)」に基づく資金投入に関し、合計450億ドル(約4兆500億円)の返済金を受領した。これにより、TARP投入資金の総額(約7千億ドル)中、1640億ドル(約14兆7600億円)の返還を得たことになる。

 今回、ウェルズ・ファーゴは「公的 資本注入計画(Capital Purchase Program:CPP)」の下で250億ドル(約2兆2500億円)を返済、またシティグループは「不良債権損失補てん計画(Targeted investment Program:TIP)」(筆者注1)の下で200億ドルを返済し、これら銀行からの返済総額が2010年の終わりまでに1750億ドルを超えると見込んでいる(これは10年間かかると見込んでいた銀行への総納税負担リスク(総額約7千億ドル)を4分の3に削減することになる)。

 さらに12月23日付けで、財務省、連邦準備制度理事会、連邦預金保険公社(FDIC)およびシティグループは、米国政府が元々3000億ドル(約27兆円)のシティグループ資産の損失を分担する合意を「解除」した。この合意は、2009年1月に成立し、当時、財務省により「特定不良債権損失補てん制度(Asset Guarantee Program:AGP)」の下で締結され、その補償期間は10年間と予想されていた。(筆者注2)

 連邦政府は、同合意の下で何らの損失も負担せず、かつ米国政府はそのような保証のための考慮されていたシティグループにより発行される普通株のための証明書と同様に保証された「トラスト型優先証券(trust preferred securities)」により、70億ドル中52億ドルを維持できた。この合意解除により、AGPは納税者へ利益を確保した。

 現在、財務省は金融システムを安定させる目的をもつ“TARP”について、配当、利息、早期返済、および新株引受権販売により利益を上げられると見込んでいる。 当初2009年財政年度において760億ドル(約6兆8400億円)の負担により 総額2450億ドル(約22兆500億円)に上ると予測していた銀行への資金投入は、現在、利益をもたらすと予測される。

 米国の 納税者は、“TARP”から既に160億ドル(約1兆4400億円)の利益を得た。また、財務省が行う数週間先の追加的な新株引受権販売により、その利益はかなり高いものになるであろう。

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(筆者注1)「 特定不良債権損失補てん制度(Targeted investment Program:TIP)」とは、「2008年緊急経済安定化法(H.R.1424)第102条に定めるもので不良資産の損失補てんのため「保険プログラム」の創設が認められている。財務省はシティグループ向けの支援策として2008年12月の段階では同条の適用を検討していた。

(筆者注2) シティグループは2009年1月15日に米国連邦財務省、連邦預金保険公社およびニューヨーク連邦準備銀行との損失分担プログラムにつき最終合意している。

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Copyright © 2006-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.

 



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