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第二次米国政府の責任ある企業行動に関する国家行動計画(U.S Government’s National Action Plan)の概要

2024-03-26 11:09:34 | 国家の内部統制

 3月25日、バイデン・ハリス政権は、(1)人権と労働者の権利の尊重を強化および改善し、(2)グリーンエネルギーの利用を拡大、(3)汚職に対抗、(4)環境を保護、(5) 人権擁護者を保護、(6)ジェンダー平等と平等を推進し、(7)権利を尊重したテクノロジーの使用を促進するというコミットメントを反映した、責任ある企業行動に関する「米国の第二次国家行動計画(NAP)(以下、NAPという)」を発表した。

 11月の大統領選挙を控えたバイデン政権の活動の一環ではあるが、その重要性から見て本ブログではその概要書を注補足の追加を踏まえ仮訳する。

 バイデン大統領は史上最も労働者寄りの大統領であり、ボトムアップとミドルアウトから持続可能な世界経済を構築することに尽力している。 同氏とハリス副大統領は共に、高い労働基準を推進し、意思決定の場に労働者の声を反映させ、ここ米国内だけでなく世界中で不当労働行為に対する規則を執行することに取り組んできた。

 今回の第二次行動計画(NAP)の発表は、複数の利害関係者の調整、会議、経済的インセンティブ、規制、その他の活動を通じて責任ある事業活動を強化するという政府全体の取り組みを反映している。 この NAP は、海外で事業を展開し投資する米国企業の責任ある企業行動 (responsible business conduct :RBC) (注1)に関するあらゆる問題に取り組んでいるが、特に、急速に変化するリスク環境における効果的なデューデリジェンスなどを通じて、人権を尊重するという企業責任への期待に焦点を当てている。

 NAP は、企業が国際基準に基づいてバリューチェーン全体にわたって人権デューデリジェンス (human rights due diligence :HRDD)(注2) を実施することに対する政府の期待を定めている。この報告書は、企業が利害関係者と協力して策定したセクター固有の基準の導入をさらに進める必要があることを強調している。この基準は、バリューチェーン全体にわたる人々に対するビジネスの影響に関する進捗状況を有意義に測定するための信頼できる指標を提供する。

 NAP は、米国政府が RBC を促進および奨励し、企業による効果的な HRDD 実践の実施を加速するために、利害関係者との協議に基づいて以下の 4 つの優先重点分野を定めている。

1.責任ある企業行動に関する連邦諮問委員会の設置

国務省は、責任ある企業行動に関する連邦諮問委員会(Federal Advisory Committee)(注3)を活用して、民間部門、影響を受ける地域社会、労働組合、市民社会(人権擁護活動家を含む)、学界、およびRBCに関する政策の編成、その他の関連利害関係者との連携や取組みを強化する。

②諮問委員会は、RBC 問題に関する進展を継続し、NAP 実施の追跡を支援することができる。

2.連邦の調達政策およびプロセスにおける人権尊重の強化

① 保健社会福祉省、国土安全保障省、司法省が議長を務める米国政府ホットライン作業部会は、労働者と市民社会が連邦請負業者や下請け業者による人身売買違反を政府に通報できる方法を改善するための選択肢を特定する予定である。

② 国務省は、買収要員と連邦請負業者がプロジェクトの設計、要請、監視中にデューデリジェンスを実施できるよう支援するため、高リスクかつ大量の契約に対する人身売買リスクマッピングプロセスを試験的に実施する。

③ 国土安全保障省の税関・国境警備局( Customs and Border Protection:CBP)は、CBPが関税法に基づいて罰則を課す場合は常に、企業の連邦政府との取引の停止や禁止について、ケースバイケースで積極的な検討を指示するためのガイダンスを草案する予定である。サプライチェーンで強制労働を使用している企業に米国の税金が流れないよう関税法違反やその他の法律の繰り返しによりCBPが強制労働と闘うために施行する。

④ 国防総省は、国際人権に沿って民間セキュリティプロバイダーの監視と認証を提供する複数の利害関係者によるイニシアチブである民間セキュリティプロバイダー協会国際行動規範協会(International Code of Conduct Association for Private Security Providers’ Association :ICoCA)への加盟を奨励または要求するかどうかを評価するための民間セキュリティベンダー向けの人道法基準にもとづく審査を実施する予定である。

3.救済策へのアクセスの強化

 ①国務省は、利害関係者の関与を強化することにより、RBC に関する OECD 多国籍企業ガイドラインのための米国国内窓口 (U.S. National Contact Point :NCP) を強化する。 NCP の改革には以下が含まれる。 1)NCP の新しい諮問機関の創設、2) NCP の機密保持ポリシーの変更を提案し、その手順規則を更新する。3) 刑務所に関するNCPの最初の政策の1つを策定する,4) NCP ウェブサイトのアクセシビリティを向上させる。 NCPを強化するためのオプションを評価する。

②連邦労働省は、労働者主導の社会コンプライアンスを促進し、グローバルバリューチェーンにおける労働者の権利を保護する国際労働機関が実施する200万ドル(約3億200万円)の技術支援プロジェクトに資金を提供することで、救済制度への革新的なアクセスを開発する

米国国際開発金融公社(U.S. International Development Finance Corporation :DFC))は、政策コミットメントを更新し、報復疑惑に対応するための内部ガイダンスを開発し、DFC 苦情処理メカニズムでの匿名苦情を可能にすることにより、DFC 苦情処理メカニズムを利用する団体および個人に対する報復からの保護を強化する。

 ④ 連邦財務省は、プロジェクトの影響を受けた地域社会に対して、国際金融公社や多国間投資保証機関を含む多国間開発銀行における効果的な救済システムを提唱する。

米国輸出入銀行(Export-Import Bank of the United States)は、救済手続きの強化について輸出信用庁と協力し、救済へのアクセスとプロジェクトベースの苦情処理メカニズムの有効性を改善する方法について意見を求めるための一般向けの働きかけに取り組む。

4.企業へのリソースの提供

① 連邦労働省は、事業運営とバリューチェーンにおける労働者の権利の成果を推進するための政府全体の視点、アプローチ、および一連のリソースを伝達するオンライン・リポジトリ(オンライン収納庫)である責任ある企業行動と労働者の権利にかかる情報ハブを設立する。

②米国政府は、先住民コミュニティおよび影響を受けるコミュニティとの部族協議および関与に関するベストプラクティスに関する企業向けのガイダンスを発表する予定。

③ 連邦国務省は3月25日の週、1)検索エンジン、2)ソーシャル メディア プラットフォーム、3)その他のデジタル サービスなどのオンライン プラットフォームに対する、人権活動家の保護に関する米国政府のガイダンスを発表した。

④ 国務省は、人権侵害を可能にする、または悪化させる可能性のあるテクノロジーへの投資を検討する際に、投資家が人権デューデリジェンス( HRDD)を実施することを奨励するためのガイダンスの開発を主導する。

⑤ 米国連邦政府は、特定の国および/または分野で事業を行う、またはそれに関わる取引に従事する企業、投資家、その他の利害関係者向けに追加のビジネス勧告を作成する予定である。

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 本NAPには、前述の4つの優先分野以外にも、特定の優先分野の取り組みを詳述する付則(appendix)が含まれており、技術、気候、公正な移行(just transitions)(注4)、労働者の権利、反汚職などの分野で、米国政府がRBCを推進するために講じる追加の措置を列挙している。

 本NAP の全文は state.gov 参照。なお、 関係者は、RBCNAP@state.gov まで電子メールでいつでもフィードバックや提案を提供可である。

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(注1) 「責任ある企業行動」の国際的なスタンダードに「OECD多国籍企業行動指針」がある。人権問題に対処するための手法として提唱された「デュー・ディリジェンス(DD)」の対象を企業行動全般に拡大させたガイドラインである。

 2023年、OECD多国籍企業行動指針の改訂が検討されている。公表されている改訂案では、DD対象の拡大・明確化が提案されている。環境・科学技術等の分野で、求められるDDの量と質が底上げされ、DD義務化の潮流を加速させる可能性がある。

 欧州では、既に環境DDを義務化した国がある。AIガバナンスの法整備も進んでいる。ハードローのプレッシャーに接している欧米企業に比べ、日本企業のDD義務化への備えは遅れている。

 DDは「責任ある企業行動」を達成するための手段に過ぎない。その義務化の潮流を、受動的な「規制対応」と捉えるのではなく、能動的に「企業文化の改革を求める社会からの要請の高まり」と捉えることが重要だ。

(第一生命経済研究所「企業行動デュー・ディリジェンス拡大への対応~責任ある企業行動のための国際ガイドライン改訂案から読み解く~」から抜粋)

(注2)国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)が作成した「人権デュー・ディリジェンス:解釈の手引き」およびビジネスと人権リソースセンター「ビジネスと人権リソースセンター「人権デューデリジェンスと影響評価」参照。

(注3)    連邦諮問委員会は、1972年成立の連邦政府諮問委員会法(Federal Advisory Committee Act - PL92-463)に基づき個別法、大統領、議会、機関が設置するものである。総合サービス庁(General Services Administration-GSA)は、他の連邦政府機関の行政サービス改善を目的とした連邦政府機関であるが、その業務の一つに連邦政府諮問委員会法(Federal Advisory Committee Act-FACA)の管理運営責任がある。

 2019 年 6 月 14 日に、連邦諮問委員会の効用を評価及び改善する大統領令 13875 号(Evaluatingand Improving the Utility of Federal Advisory Committees)が発令された。連邦政府の各省庁に設置され、政策上の助言等を行う諮問委員会は、連邦諮問委員会法(Federal Advisory Committee Act,P.L.92-463: FACA)に基づき設置され活動しているが、その設置の必要性を評価し、不要な諮問委員会の廃止を求めるものである。(外国の立法 No.281-2(2019.11) 国立国会図書館 調査及び立法考査局「連邦諮問委員会の効用を評価・改善する大統領令」他から抜粋)

また、遠藤悟「政府諮問委員会の役割」が詳細に解説している。       

(注4) 「公正な移行(Just Transition)」とは、環境問題の解決や対策を実施するうえで、関係する産業分野に従事する労働者や、産業が立地する地域が取り残されることなく、公正かつ平等な方法により持続可能な社会へ移行することを目指す概念のことです。2015年に開催された気候変動枠組み条約の第21回締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」の前文では、「自国が定める開発の優先順位に基づく労働力の公正な移行並びに適切な労働(ディーセント・ ワーク)および質の高い雇用の創出が必要不可欠であることを考慮」すると言及されています。(朝日新聞デジタル版から抜粋)

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米国内外でのトランプ裁判の全体像について鳥瞰図かつ法的に詳しい解説に挑戦(その4完)

2024-03-16 07:37:48 | 国家の内部統制

3.議論すべき同裁判判決の法的問題

 ニューヨーク州司法長官の申し立ての闇の中心は、トランプ、トランプ・オーガナイゼーション、およびその他のさまざまな個人被告が、その組織のさまざまな不動産資産の評価額を水増ししたということである。 認められた巨額の不当利得の吐き出し額は主に、トランプ・オーガニゼーションがSFC資産の虚偽表示を通じて達成したとされる利息コストの削減約1億6,800万ドルで構成されており、残り(判決前の利息適用前)は主に「不正行為」に関連している。 トランプ氏らは特定の不動産資産(ワシントンの旧郵便局ビルを含む)の売却を通じて利益を得たことを実感した。

 エンゴロン判事は、同社のD&O保険と保証保険の更新が保険詐欺によって調達されたことを明示的に認定したが、保険取引に関連して授与された不当利得の吐き出し額の一部は存在しない。 エンゴロン判事の判決では、保険申請の虚偽表示により、トランプ・オーガニゼーションが保険を取得できたか、あるいは本来受け取れていたであろうより有利な条件で保険を取得できたことが、明示的ではなく暗黙的に示されている。

 エンゴロン判事の判決は、虚偽報道の疑いによって組織がどのような利益を得たかを、それほど多くの言葉で明確に述べていない。 確かに、保険に関する裁判所の認定は、間違いなく、彼のさまざまな差止命令による救済(例えば、役員の禁止を含む)の裁定を裏付けた。 しかし、この決定は、保険の不当表示の申し立てと差し止め命令による救済との間に直接の関連性を示していない。

 保険の世界を長年観察してきた著者(Kevin M. LaCroix)にとって、保険の調達に関連した重大な虚偽表示が、州の司法長官による訴訟での不正認定の根拠となっているということは、ある意味新鮮なことのように思える。 通常、申請の虚偽表示の申し立ては、誤解を招くとされる保険会社によって主張され、求められる救済は、誤解を招くように調達された保険契約の取り消しである。 確かに、申請の虚偽表示が保険契約取り消しの根拠となる可能性があるというだけで、その虚偽表示が詐欺容疑の根拠となる可能性を排除するものではない。 政策撤回の代替手段の方がより馴染みのあるアプローチであるというだけである。

 少なくとも、エンゴロン判事による公判証言の朗読によれば、トランプ・オーガニゼーションが保険会社の代表者に対する虚偽の説明によってD&O保険と保証保険を調達したという実質的な裁判証拠が存在したようだ。 しかし、ワイセルバーグ氏とマコニー氏が保険会社の代表者に対して積極的な虚偽の陳述を行ったという証言はあるものの、その証拠を拡張して、被告全員が保険詐欺を行う共謀に関与したというさらなる法的結論を導き出すことは、説得力に欠ける。

  さまざまな被告がトランプとトランプ・オーガニゼーションの財務状況を強迫的に虚偽報告する常習的かつカジュアルな方法は、保険詐欺の任務を含む一般的な陰謀を包含するのに十分広範であったと述べている。 確かに、ワイセルバーグ氏とマコニー氏のあからさまな保険詐欺行為は、他の被告の利益のために行われた。 同様に、他の被告に対する保険詐欺陰謀の判決も説得力に欠けるようだ。

 財務状況報告書が水増しされた資産評価を反映しており、さまざまな被告がSFCを利用してトランプ、トランプ・オーガナイゼーション、およびさまざまな関連団体にさまざまな利益を調達したことは、おそらく、実質的な公判証言やその他の証拠によって裏付けられている。 同様に、裁判所の不正行為の認定にも不可解な点がいくつかある。 例えば、被告らが繰り返し指摘したように、被告らがSFCを利用して調達したさまざまな信用枠やローンはすべて意図したとおりに機能した。 すべての債務は期限内に全額返済された。 信用枠と融資は、最終的にはドイツ銀行にとって利益となった。

 エンゴロン判事は意見書でこれらの事実を明示的に認めたが、次のようにも述べた。「適時に全額返済したからといって、虚偽の陳述が市場に与える損害は消えるわけではない…虚偽の陳述にもかかわらず、被告が行ったことは議論の余地がない。 必要なすべての支払いを期限内に行う。 次のグループの貸し手はそれほど幸運ではないかもしれない。」

 市場を保護することは訴訟を正当化するかもしれないが、それが巨額の賠償金を正当化するのだろうか? 巨額の賞金の計算方法には奇妙な点がある。 前で述べたように、賞金総額のうち約 1 億 6,800 万ドルは、トランプ オーガニゼーションが詐欺的な SFC を使用して確保したと想定される利息コストの削減に相当する。 事実上、裁判所は、トランプ・オーガニゼーションがドイツ銀行から1億6,800万ドルをだまし取ったと主張しているようだ。 しかし、ドイツ銀行が一瞬でも 1 億 6,800 万ドルを騙し取られたと考えたとしたら、銀行自体が独自の詐欺救済策を追求するのではないではないか?

 そしてドイツ銀行は結局、どの程度まで騙されたのだろうか? ドイツ銀行関係者らは公判で、富裕層から個人財務諸表を提示されると、銀行は日常的かつ当然のこととして50%のヘアカットを適用していると証言した。 同行自身のやり方は、トランプ氏のような富裕層が定期的に資産を膨らませているという認識を反映しているようだ。 50%のヘアカットを考えると、実際のところ同銀行は誤解さえあったのだろうか? あるいは、別の言い方をすれば、虚偽表示とされる内容を誰も信じず、詐欺の被害者とされる人が被害を受けたと信じていない場合、本当に詐欺はあり得たのであろうか?

 そうは言っても、エンゴロン判事の書面による決定書は、被告たちが定期的かつ日常的にトランプとトランプ・オーガナイゼーションの財務状況を虚偽報告していたという強い印象を与えている。 また、エンゴロン判事は、デゴルジュマン賞の巨額と差し止めによる救済の厳しさを説明する際、被告が誤りを認めようとしないことだけでなく(「悔悟と反省の完全な欠如は病的ともいえる」)、 また、トランプ・オーガニゼーションの広範な「企業不正行為」の歴史についても言及し、とりわけエンゴロン判事は、トランプ大学に対する詐欺容疑と和解について言及した。 トランプ財団に対する詐欺疑惑とその解散。 トランプ大統領の就任に関連してトランプ・オーガニゼーションが過剰な手数料を受け取ったという告発の和解。 そして、事業記録の改ざん疑惑を含む15件の税金詐欺の刑事訴追に対する同社CFO(ワイスルバーグ)の有罪答弁。 これらの考察に基づいて、エンゴロン判事は、「裁判所が大幅な差止め命令を認めない限り、被告は不正行為を続ける可能性が高いと判断した」と述べた。

 被告であるトランプ氏らは間違いなく控訴するだろうが、 控訴がどうなるかはまだ分からない。 控訴裁判所は、公判証言に基づいて、差し止めによる救済の一部または全部が正当であり、適切であると結論付ける可能性が十分にある。 その一方で、控訴裁判所が巨額の不当利得の吐き出し(disgorgement)についてどう判断するかは非常に興味深い。 当該の金額が訴えに耐えられるかどうかを見るのは興味深いことになるであろう。

 なお、エンゴロン判事の判決の保険的側面に注意を促し、判決のコピーを提供してくれた忠実な読者に特に感謝する。

(2)ニューヨーク州司法長官府の解説

 内容的に上記と重複するのでプレスリリース参照。

Ⅳ.ジョージア州府フルトン郡検事がジョージア州RICO(Georgia Racketeer Influenced and Corrupt Organizations (RICO) Act)違反で起訴

裁判所

ジョージア州フルトン郡上位裁判所(Superior Court of Fulton County)(注16)

② 裁判官

Judge :Scott McAfee 氏

Scott McAfee 氏

③起訴者:Fulton County District Attorney Fani T.Willis:

 

 Fani T.Willis 氏

④裁判の概要や経緯につき2023.8.15 JURIST blogを以下、抜粋し、仮訳する。

 ジョージア州フルトン郡大陪審は 2023年8月14日の夜遅くに13件の刑事告訴に関する元米国大統領ドナルド・トランプ氏を起訴した。合計41訴因の起訴状は、トランプが、同じく起訴された他の18人の個人とともに、2020年米国大統領選挙においてジョージア州の選挙プロセス中に干渉するために共謀したと主張している。トランプ氏は第4番目の刑事告発中のおいても、2024年の大統領選挙に向けてキャンペーンを続けている。

 これらの容疑には、ジョージア州での ①「威力脅迫および腐敗組織に関する取締法(Georgia Racketeer Influenced and Corrupt Organizations :RICO) Act)(注17)反1訴因、②公務員による宣誓違反)の教唆3訴因、③公務員になりすます陰謀1訴因、④陰謀のコミットにかかる2訴因、⑤ 第一級の文書偽造による陰謀のコミットにかかる2訴因、➅陰謀にコミットした2訴因、⑦実際に虚偽の陳述や書面を行った罪2訴因、⑧虚偽文書提出の陰謀1訴因、⑨虚偽の文書提出1訴因が含まれる。

 98ページにわたる起訴状には、トランプ氏と共同被告らが「(2020年11月3日の)選挙の結果を不法にトランプ氏に有利に変える」ために「関連する様々な犯罪行為に関与」した経緯を詳しく説明している。ジョージア州大統領選挙は接戦となったが、最終的に州内の有権者の過半数が現大統領ジョー・バイデンに投票した。

 起訴状では、被告らの犯罪行為は2020年大統領選挙でジョージア州の選挙人が投票してから約2年後の2022年9月15日まで続いたと主張している。 大陪審はまた、アリゾナ、ミシガン、ネバダ、ニューメキシコ、ペンシルベニア、ウィスコンシンなどの州でも同様の取り組みへの言及があり、ジョージア州以外でも選挙干渉の取り組みの証拠を審問するようである。

 起訴状には、最初の訴因であるRICO法違反だけでも161件の犯罪行為が挙げられている。 起訴状によると、選挙当局が2020年大統領選挙の結果をバイデン有利と認定するのを阻止するために、トランプ氏と共同被告らはジョージア州議会議員、ジョージア州知事ブライアン・ケンプ(Brian Kemp)(共和党:60歳)、ジョージア州務長官ブラッド・ラフェンスペルガー(Brad Raffensperger)(共和党:68歳)に対して影響力を行使しようとしたという。 ブラッド・ラフェンスペルガーは、トランプ前大統領が州選挙当局に対し、同州でのバイデン氏の選挙におけるリードを逆転するのに十分な票を獲得できるよう要求した悪名高い電話( NBC newsのyoutube音声)の受け手であった。

Brian Kemp 氏

Brad Raffensperger 氏

 また、起訴状は被告がジョージア州の選挙運動員に嫌がらせをし、大統領(副大統領)選挙人(有権者)の偽の酷評(slate)を作成して普及させ、州から選挙データを盗んだと主張している, そして起訴につながったまさにその調査を妨害したとある。

 起訴状の公表後、フルトン郡地方検事ファニ・ウィリス(Fani Willis)は記者団に記者会見を行い、そこで彼女は以下のとおり語った。

 「ここにいる皆さんに思い出していただきたいのは、起訴とは、告訴を裏付ける相当の理由(probable cause)(注18)についての大陪審の決定に基づいた一連の告発にすぎないということである。 現在、公判において合理的な疑いを超えて、起訴状におけるこれらの罪状を証明することが私の検事局の義務である」

 起訴に応じて、トランプの大統領選挙キャンペーンは 起訴ステートメント。その中で、彼らはウィリス氏の調査は党派的であると主張し、それが2024年の大統領選挙におけるトランプの選挙入札に干渉する可能性があることを示唆した。起訴ステートメントは次のとおりである。

 「トランプ大統領に対する法的二重基準セットは終了しなければならない。… これらの活動は...アメリカの民主主義に対する重大な脅威を構成し、大統領に投票する正当な選択からアメリカ国民を奪おうとする直接の試みである。それを選挙の干渉または選挙の操作と呼ぶ—それは人々の選択を抑制するための支配階級による危険な努力である。それは反アメリカ人の行動ありで間違っています。

 また大陪審は、トランプの18人の共同被告の起訴を支持するのに十分な証拠を見出した。元トランプの弁護士であるルディ・ジュリアーニ氏やジョン・イーストマン氏などの一部の個人は、他の人物で頻繁に発生した名前である 係争中の訴訟 そして 周囲の放射性降下物 2020年の大統領選挙から。その他は、ジョージア州の選挙干渉のこれらの主張に固有である。さらに、起訴状には、起訴状の発行を担当する大陪審に知られていない30人の起訴されていない共謀者およびその他の個人の追加のキャッシュへの参照がある。

 8月14日の起訴で起訴された19人の個人はすべて、同日の午後12時(EST)まで、逮捕の令状に従って自発的にフルトン郡の役人に引き渡さなければならない。

【補足】Open Caucasus Media 記事「 ジョージア州民・ドリーム、トランプ大統領の選挙法拒否権を「不正に」覆すよう起訴」から抜粋、仮訳する。

 米国のジョージア州が再び大統領選挙を巡る政治的激動の中心にある。

 ファニ・ウィリス(Fani T. Willis)検察官は2023年7月、ドナルド・トランプ氏に対する数年にわたる捜査の一環として、大陪審に証拠を提示する予定だ。

 差し迫った起訴の最も明らかな兆候として、ウィリス氏は2023年8月14日と8月15日の陪審審理で証言するよう証人を呼んでおり、大陪審は同週起訴状を採決する可能性がある。

 ウィリス氏は同州での2020年大統領選挙の結果を覆そうとしたとされるトランプ氏の試みに焦点を当ててきた。

 陪審結果の発表の可能性を前に、司法当局はすでにアトランタのフルトン郡裁判所の外にバリケードを築いている。

 トランプ氏は不正行為を否定し、捜査は政治的動機に基づくものだと攻撃した。 同氏は依然として2024年の大統領選の共和党指名獲得の最有力候補である。

 本記事は2023年8月14日の週に何が起こるかについてのガイドである。

1.トランプ大統領はジョージア州でどのような罪に問われる可能性があるか?

 元連邦検事のニーマ・ラフマニ(Neama Rahmani)氏は、トランプ氏は不正投票や選挙不正など、詐欺や陰謀関連の罪に問われる可能性ならびに司法妨害の可能性もあると指摘している。

Neama Rahmani 氏

 ジョージア州の法律専門家も、ウィリス氏が前大統領をRICO法により恐喝容疑で告発すると予想している。この法律は組織犯罪に適用されることで有名である。しかし、ウィリス氏は、他の広大な事件でもそれを使用しているという評判を築いている。

 トランプのホワイトハウス時代の首席補佐官マーク・メドウズ(Mark Meadows)氏、弁護士ルディ・ジュリアーニ–(Rudolph William Louis "Rudy" Giuliani III)氏は、主張されているように、カリフォルニアの弁護士と政治家は、起訴された人々の中におり、すべてが不正行為を否定している。

Mark Meadows 氏

Rudolph William Louis "Rudy" Giuliani III 氏

 RICO法としても知られる同州の「恐喝・腐敗組織取締法」は、検察官が共通の目的や目的によって結びついたさまざまな犯罪を告発することを認めている。 また、首謀者と疑われる人物を指摘することも可能になる。

 エモリー大学の法学教授モーガン・クラウド(Morgan Cloud:Charles Howard Candler Professor of Law Emer)氏)(注19)は、「恐喝とは、州法か連邦法、あるいはその両方で違法とされている特定の行為を行うことと定義される。一つの犯罪だけでなく、相互に関連した一連の犯罪を行うことだ」と述べた。

 この場合、裁判の具体的な共通の目的はジョージア州の選挙結果を覆すことであるとクラウド氏は述べた。

2.ドナルド・トランプ裁判の法的問題はどれくらい大きいのか?

 米国の大陪審とは何か?トランプ氏がこの件で起訴されるのは初めてではない。

 2週間前、連邦司法省は複数のレベルでの大統領選挙干渉でトランプ氏等を起訴し、起訴状ではジョージア州での同氏の行為に多くの時間を割いた。

3.トランプ氏が起訴されたらどうなるのか?

 大陪審がトランプ氏の起訴を可決した場合、同氏は罪状認否手続きのため数日以内にフルトン郡裁判所に出廷する可能性がある。

 ある意味で、このプロセスは日常的なものとなっており、これは2020年の選挙介入、不正な口止め料の支払い疑惑、フロリダ州の政府機密ファイルの保管をめぐる連邦告発に加えて、トランプ氏にとって4度目の刑事告発となる。

 しかし、ジョージア州アトランタでの起訴はいくつかの重要な点で目立つ可能性がある。

 過去3回の起訴では、連邦裁判所の規定によりテレビカメラの使用が禁止されたが、マンハッタンの法廷ではフォトジャーナリストの入場が一時的に許可された。

 ただし、この件は地方裁判所の規則によりテレビで放送される可能性がある。 NBCニュースの報道によると、最終決定権は裁判長にあるが、申請は認められることが多いという。

1)トランプ氏が勝つのが最も難しいと思われる刑事事件はいずれか?

 3 つの全く異なるトランプ裁判について法廷研究者が語る。

 元連邦検察官のパトリック・コッター氏は、この呼び出しはおそらく今後のトランプ氏らの起訴の「最高の宝石」になるだろうと述べた。

 この被告らの電話による会話のニュースを受けて、ウィリス氏は2021年2月に捜査を開始した。

 起訴状によると、トランプ氏は司法長官やブライアン・ケンプ州知事など、州内の他の共和党幹部らにも支援を求めたというが、彼らはその事実を拒否した。

2)議員へのプレゼンテーション

 トランプ氏の仲間、特に弁護士のルディ・ジュリアーニ氏も、ジョージア州で不正投票やその他の陰謀論について虚偽の主張を広めた。

 連邦政府の起訴状によると、これにはジュリアーニ氏がジョージア州議員らに行ったプレゼンテーションにも含まれており、その中で彼は根拠のない主張を数多く行った。

 これらには、何千人もの死者が州内で投票したという主張が含まれていた。 ジョージア州の世論調査員が投票に干渉し、議員が同州の正当な選挙人団の結果を認定を取り消す権限を持っていたことを主張した。 トランプ氏はソーシャルメディア上でこうした主張を拡大した。

 さらにジュュリアーニ氏は、フルトン郡の捜査の対象であることも明らかにした。

3) 偽の選挙人団計画

 また前大統領の同盟者らは、選挙人団(技術的に米国大統領を選出するシステム)の偽選挙人に、ジョージア州で同州で勝利し支持を得たバイデン氏ではなく、トランプ氏に投票させる計画を調整したとされる。 その選挙人団の投票計画は失敗した。

 連邦特別検事のジャック・スミス氏とジョージア州検察官のファニ・ウィリス氏はともに捜査において偽の選挙計画に焦点を当ててきた。

4) 選挙データの違法侵害

 最後に、トランプ陣営の弁護士がデータ会社と協力して、ジョージア州コーヒー郡の選挙システムから機密データをコピーしたと伝えられている。

 ワシントン・ポスト紙の調査によると、この事件はトランプ氏の弁護士らによる複数の州で投票機器にアクセスしようとする試みの一環だった。 ウィリス氏はこの事件に注目していると言われている。

5)元大統領はすべての不正行為を否定した。

 同氏の弁護士らはおそらく、同氏がジョージア州当局に投票の改ざんを明示的に依頼したことはないと主張するだろう。

 同氏は2020年4月、ラフェンスペルガー氏との電話会談は「まったく完璧」であり、電話に応じた弁護士の誰も不適切な指摘をしなかったと述べた。

 「何も間違ったことは言われなかった。実際、電話の終わりに、特にジョージア州における選挙不正について話し合いを続けることで合意したのみである」

米国大統領選挙の本来の争点とは?社会保障費に注目?(2024.3.17補筆分)

  米国の社会保障支援事業団体である“Social Security Works”と連邦社会保障庁(Social Security Administration)(注20)の説明等から引用、仮訳する。

1.社会保障予算を巡る民主党・共和党の対立

 米国社会保障団体であるSical Security  Works (注21)の予算案関係サイトから抜粋、仮訳する。

 3月11日、ドナルド・トランプ元大統領が社会保障の削減を呼びかける一方、ジョー・バイデン大統領は社会保障の保護と拡大を求める2025年度予算案を発表した。

 以下は、ソーシャル・セキュリティ・ワークスの理事長、ナンシー・アルトマン(Nancy Altman)氏の声明である。

Nancy Altman 氏

 3月11日朝、ドナルド・トランプはテレビに出演し、メディケアとメディケイドとともに社会保障の削減を要求した。これは、大統領候補としてあらゆる予算の削減を提案し、社会保障専用の資金を永久に廃止しようとしたトランプ大統領の記録と一致している。 さらに、社会保障の民営化と退職年齢の引き上げを求めるトランプ氏の過去の主張や、それを「ねずみ講」と中傷したことと一致している。

 これは、密室での社会保障とメディケアを削減することを目的とした委員会の創設を提案している下院共和党の2025年度予算案とも一致している。

 ジョー・バイデン大統領は本日、社会保障の将来について全く異なるビジョンを掲げた2025会計年度予算案を発表した。 バイデンの予算案では、社会保障の保護と拡充が求められており、億万長者や億万長者に応分の拠出を義務付けることでその費用を支払うことが求められている。

(2) 1月18日、下院予算委員会(House Budget Committee : Chairman Jodey C.Arrington (テキサス州選出・共和党)は、いわゆる 「2023年財政委員会法(Fiscal Commission Act of 2023)」を進めることを投票した。出席したすべての共和党員委員が賛成に投票した。

Jodey C.Arrington 氏

 *ビデオ: 公聴会中に、Social Security Worksのアレックスローソン事務局長は、委員会に反対する50万件を超える請願書を提出した。ジョディ・C・アーリントン委員長は、ローソン氏を逮捕することで対応した。

 「共和党は、社会保障とメディケアを削減するために設計された非公開の委員会を進めている。共和党員の多くはそれが彼らの目標ではないと主張しようとしたが、彼らは民主党の修正案を投票してそれらのプログラムの削減を除外し、代わりに億万長者に公平な分配を支払うことを要求した。

 委員会の民主党の大多数は委員会に合法的に反対した。ただし、少数の例外に民主党委員3人Scott Peters(D-CA)、Jimmy Panetta(D-CA)、Earl Blumenauer(D-OR)は賛成した(彼らはアメリカ人を後ろから突き刺し、ジョー・バイデン大統領を弱体化させた)。

 3月7日、ジョディ・アリントン委員長が仕切る下院予算委員会は、下院共和党の「2025会計年度予算決議案(House Republican FY2025 budget resolution)」の審議を行った。 予算決議案は出席した共和党員全員の支持を得て委員会外で報告されたが、民主党員全員が反対票を投じた。

以下は、ナンシー・アルトマン氏の声明である。

 「この予算にはいわゆる『財政委員会』が含まれており、ホワイトハウスはこれを正確には社会保障とメディケアのための委員会と呼んでいる。 この委員会は、共和党が政治的責任を回避できるようにすることを目的とした、迅速かつ非公開のプロセスを通じて、重要な獲得利益を削減することを目的としている。この予算案に賛成票を投じた共和党議員全員が社会保障とメディケアの削減に投票した。法案上程の際、民主党は社会保障とメディケアを保護するための多数の修正案を提案したが、共和党はそれらすべてを否決した。」

2. 大統領選挙で大きな争点となると考える米国の公的扶助制度

 わが国と大きく制度が異なるので補足する。厚生労働省の解説[2014 年の海外情勢]第2節 アメリカ合衆国(United States of America)社会保障施策から以下、抜粋(P.7以下)する。なお、SSIについては、野田 博也「アメリカの補足的保障所得(SSI)の展開― 就労自活が困難な人々に対する扶助の在り方をめぐって ―」を参照されたい。

(1)米国の公的扶助制度

 日本の生活保護制度のような、連邦政府による包括的な公的扶助制度はない。高齢者、障害者、児童など対象者の属性に応じて各制度が分立している。また、州政府独自の制度も存在している。

  主 要 な 制 度 は、 貧 困 家 庭 一 時 扶 助(Temporary Assistance for Needy Families:TANF)、補足的所得 保 障(Supplement Security Income:SSI)、 メディケイド、補足的栄養支援(Supplemental Nutrition

Assistance Program: SNAP(2008年10月より 食料スタンプ(Food Stamp)から名称変更))、一般扶助(General Assistance:GA)の5つである。

(2)特に筆者は補足的所得保障(Supplement Security Income:SSI)に注目し、SSAの2025年予算案に関する部分を仮訳する。

 連邦社会保障庁(SSA)では、2025バイデン・ハリス大統領予算案は次のことを行う。

(A)アメリカ人が自ら稼いだ社会保障給付を保護する。主管庁(SSA)は社会保障の保護と強化に力を注いでおり、社会保障給付を削減しようとするあらゆる試みや社会保障を民営化する提案に反対している。

①社会保障の保護は、最高所得のアメリカ人に公平な負担を払うように求めることから始めるべきであると信じている。

②高齢者や障害を持つ人々、特に目的を達成するための最大の課題に直面している人々のために、社会保障給付とSSI給付を改善する取り組みを支援し、サービス提供を改善する。

③ SSAは、600万人を超える退職者、生存者、およびメディケア請求者のサービス提供を改善することを約束し, また、毎年200万人を超える個人が障害と補足的所得保障(SSI) (注22)を申請している。

④予算では、SSAの現地事務所、州の障害決定サービスでの退職者、障害のある個人、およびその家族のためのテレサービスセンターでのカスタマーサービスを改善するために、154億ドル(約2兆2,946億円)の裁量予算権限—  13億ドル(約1937億円)または9%の増加を2023年の制定レベル—に要求し、また,予算は、待ち時間を短縮することにより、SSAのサービスへのアクセスを改善する。

(B)事前資本とアクセシビリティの改善。

 この予算により、社会保障プログラムの厳格な管理と監視を維持しながら、対象となるすべての個人にアクセス可能な社会保障サービスを提供できる。SSAプログラムは、サービスが行き届いていないコミュニティや、サービスへのアクセスの障壁に直面している人々(低所得、限られた英語能力、精神的および知的障害を持つ個人、ホームレスに直面している人々など)に到達する必要がある。

 また予算案は、SSI申請プロセスを簡素化および更新し、特にサービスが行き届いていないコミュニティのためのアウトリーチ活動を通じてSSAプログラムおよびサービスへのアクセスを拡大するためのSSAの取り組みをサポートする。さらにITシステムを改善して、顧客により一貫性があり、公平で、アクセス可能な体験等を提供する。

 さらに従業員の面倒な手動プロセスを削減させる、すなわち National 800番号のセルフサービスオプションを増やし(注23); サイバー・セキュリティ・プログラムを拡張する。さらに、予算案は不適切な支払いの防止と解決を優先させる。

(C)全米規模で包括的な有給家族および医療休暇を提供

①アメリカの労働者の大多数は、民間部門の労働者の73%を含む、雇用主が提供する有給の家族休暇を利用できていない。不釣り合いに女性と有色労働者である最低賃金の労働者のうち、94%は雇用主を通じて有給の家族休暇を利用できない。

 さらに、5人に1人の退職者が退職計画よりも早く退職し、国家の労働供給と生産性に悪影響するだけでなく、病気の家族の世話させるなど家族に悪影響を与える。

②予算案は、SSAが管理する全国的な包括的な有給家族および医療休暇プログラムを確立することを提案している。プログラムは次のことを行う。

1)家族や医療上の理由で休暇を取るために、労働者に進歩的で部分的な賃金交換を提供する。堅牢 な管理資金を含めるため、包括的な家族の定義を使用させる。

2)予算案は、適格な労働者が休暇を取ることができるように、最大12週間の休暇を提供する。重病の愛する人の世話; 彼ら自身の深刻な病気から癒させるとともに、愛する人の軍事展開から生じる状況に対処する。

3)家庭内暴力、性的暴行、またはストーカー行為からの安全を見つける—それ以外の場合は“安全休暇”として知られている。

4)予算案は、愛する人の死を悲しむために最大3日間を提供する。

 3.2025年予算案のファクトシートのポイント

 バイデン氏の予算案はSSAのスタッフ、情報技術、その他の改善にも資金を提供し、同局の資金を2023年に制定された水準から9%増加させると述べている。

 また社会保障庁長官のマーティン・J・オマリー(Martin J.O’Malley)氏(民主党)は3月11日、声明で「政権は高齢者や障害者、特に家計のやりくりに大きな困難に直面している人たちに対する社会保障給付やSSI給付金を改善する取り組みを支援する」と述べた。一方、トランプ大統領「予算削減に関してはできることはたくさんある」と述べた。

Martin J.O’Malley氏

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(注16) ジョージア州フルトン郡上位裁判所(Superior Court of Fulton County)

(注17) Georgia Racketeer Influenced and Corrupt Organizations (RICO) Actにつき  Poole Huffman 弁護士事務所の解説から抜粋、仮訳する。

 ジョージア州(Georgia Racketeer Influenced and Corrupt Organizations (RICO) Act)法は、州の恐喝者および腐敗組織取締法を作成する際、州議会は連邦の RICO 法をモデルとして使用した。 ただし、ジョージア州 RICO 法 (OCGA 16-14-4) にはいくつかの相違点があり、連邦法に比べてはるかに広範である。

  最も重要な 2 つの違いは、連邦 RICO 法では継続性と企業の証明が必要であることです。 対照的に、ジョージア州 RICO 法は、短期間しか活動していない個人や計画を訴追するために使用できる。

 民事訴訟において、RICO法 は被害を受けた企業や個人が損害を回復するために使用できるツールである。 すなわち、RICO 請求を提起する場合、当事者は私設司法長官または公益弁護士(private attorneys general)になる。 彼らは3倍(原告の損害賠償額の3倍)を回収でき、場合によっては弁護士費用も回収できる。

 残念なことに、RICO 法は訴訟で乱用されており、単純な契約事項違反がしばしば持ち込まれています。 本質的に被告は犯罪行為で告発されているため、これらの問題を弁護することは困難であり、賭け金も高くなる。

 通常、ジョージア州 RICO 法に基づいて起訴される犯罪の種類は、数千件の取引または複数の被害者が関与する複雑な犯罪計画です。 ジョージア州RICOに基づいて起訴されるためには、その基礎となる犯罪が恐喝行為である必要があります。 恐喝行為として認定される犯罪類型は、OCGA 16-14-3 にリストされている。

 RICO法 は当初は組織犯罪と闘うためのツールとしてスタートしたが、今日の検察は従業員の横領事件、ポンジスキーム(ねずみ講詐欺)、クレジットスキーム(credit schemes)、複雑な投資スキーム、または総額 10 万ドルを超える一連の窃盗事件を起訴するために RICO を使用している。 この法律は、商業賭博事件、鎮痛剤(オピオイド)クリニック(または丸薬製造所)(pain management (opioid) clinics (or pill mills)、公務員の訴追にもよく使用されている。

 RICO 法は OCGA 16-14-4で成文化されている。 RICO 犯罪には最高 20 年の拘禁刑と、25,000 ドルまたは金銭的不当利得の 3 倍のいずれか大きい方の罰金が科せられる。両罰の併科もある。

(注18) 推定原因(probable cause)は、警察が逮捕、捜索を行う、または令状を受け取る前に通常満たされる必要がある憲法修正第 4 条にある要件である。 裁判所は通常、犯罪が行われたと信じる合理的な根拠がある場合(逮捕の場合)、または捜索する場所に犯罪の証拠が存在する場合(捜索の場合)に相当原因を認定する。緊急の状況では、推定の原因によって令状のない捜索や押収が正当化される場合もある。令状なしで逮捕された者は、推定原因の迅速な司法判断のため、逮捕直後に管轄当局に連行されることが義務付けられている。

(コーネル大学ロースクールの解説から抜粋、仮訳

 合衆国憲法修正第4条(仮訳)は、「不合理な捜索および押収に対し、身体、家屋、書類および所有物の安全を保障されるという人民の権利は、これを侵してはならない。令状は、宣誓または確約によって裏付けられた推定原因(probable cause)に基づいてのみ発行され、かつ捜索すべき場所、および逮捕すべき人、または押収すべき物件を特定して示したものでなければならない。」 本条は直接には捜索・押収(Search and Seizure)についての規定であるが、ここにいう押収には、「人の押収」すなわち逮捕(Arrest)が含まれるとするのが米国における判例・通説である」(Weblio 辞書から抜粋)

Amendment IV

The right of the people to be secure in their persons, houses, papers, and effects, against unreasonable searches and seizures, shall not be violated, and no warrants shall issue, but upon probable cause, supported by oath or affirmation, and particularly describing the place to be searched, and the persons or things to be seized.

(注19)クラウド教授のサイトでは、ファニ・ウィリス検事のトランプ氏等の起訴にかかる各種報告等をリンクさせている。

(以下は、2024.3.17補筆分)

(注20)  社会保障庁(Social Security Administration:SSA)は、アメリカ合衆国連邦政府の独立機関の1つ。社会保障(ソーシャルセキュリティ)および社会保険プログラム(年金・障害者保険・公的扶助)を扱う。これらの福祉を支えるため、アメリカの労働者のほとんどが所得から社会保障税を支払っている。(Wikipedia から抜粋)

(注21) Social Security Works(社会保障事業団)のHPから仮訳する。

 社会保障事業の任務・使命は、以下のとおり。

①恵まれない人々やリスクにさらされている人々の経済的安全を保護し、改善する。

②現在または将来、社会保障に依存している人々の経済的安全を守る。

③社会正義の手段として社会保障を維持する。

 社会保障事業団の資金は、一般からの寄付と、オープン ソサエティー財団、退職研究財団、CREDO、市民参加活動基金などの財団からの助成金によって賄われている。 社会保障事業団 は、Atlantic Philanthropies からの寛大な助成金を受けて設立された。

(注22) 補足的所得保障(Supplement Security Income:SSI)は、連邦政府による低所得者に対する現金給付制度であり、65歳以上の高齢者又は障害者のうち資産及び所得に関する受給資格要件を満たす者が対象となる。新規無資産受給者に対する連邦の所得保障の給付上限月額は、710ドル(2013年)である。なお、他からの収入がある場合やOASDIなど他から給付所得がある場合には、補足的所得保障の給付額は減額される。また、多くの州において連邦所得保障に州独自の上乗せ支給を行っている。2013年12月現在のSSIの受給者は約840万人であり、約54億ドルが給付されている。

(注23) SSA現地事務所とNational 800 番に関する社会保障計画に関する解説仮訳する。

 月曜日が来ると、社会保障庁の現地事務所ほど忙しい場所はない。 多くの人が週末後にやって来て、給付金について問い合わせたり、新しい社会保障カードを申請したり、保険請求に関して社会保障に必要な情報を提供したりする。 現場事務所でのサービスの待ち時間は非常に長い場合がある。

 社会保障のNational 800番 から情報を入手しようとすることは、多くの人が実際の人と話すまでに電話で 1 時間以上待つのと同じくらい難しいことである。 現地事務所やNationall800番への電話での待ち時間に応えて、社会保障庁は、2019年度予算で提供される以下の情報により、これらの問題を是正するという目標を発表した。(以下、略す)

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米国内外でのトランプ裁判の全体像について鳥瞰図かつ法的に詳しい解説に挑戦(その3)

2024-03-15 19:10:38 | 国家の内部統制

⑨今後の裁判予定

 2024.2.26 The Hill記事「トランプ前大統領はストーミー・ダニエルズ、マイケル・コーエンがニューヨークの静けさのお金刑事裁判で証言することをブロックしようとしている」仮訳する。

 2024年2月26日の元トランプ大統領の口止め料審理(hush-money trial)でトンプ氏の弁護士は、ニューヨークの連邦裁判所の裁判官がトランプの最初の刑事裁判で証言することから主要な目撃者をブロックすることを要求した。

 トランプ氏の弁護士であるトッド・ブランシュ(Todd Blanche)氏は、トランプの元フィクサーであるマイケル・コーエン(Michael Cohen)とポルノ女優 ストーミー・ダニエルズ(Stormy Daniels) 元プレイボーイモデルのカレン・マクドゥガル(Karen McDougal)につき、トランプとの申し立てについて口止め料に支払った2人の女性からの証言を阻止するために移動した。

 トランプ氏のコーエン氏への賠償金の支払いは、マンハッタン地方検事アービン・L・ブラグ(lvin L.Bragg)(民主党)によるトランプ氏の刑事訴追の推進策でもある。ブラッグ氏は同事件を否認し、業務記録文書偽造の34件の容疑でコーエン氏や他の証人につき無罪を主張した。

 トランプ側の47頁にわたる動議(motion)は、証人の信頼性を徹底的に攻撃し、コーエン氏を「嘘つき」と非難し、ダニエルズが「虚偽」で「卑劣な」証言をするだろうと示唆している。

 またトランプ氏の弁護士らは、検察が口止め料の支払いを、2016年の大統領選挙前にトランプ氏に関する否定的な情報を隠蔽するための「捕まえて殺す」計画であると述べたことにも焦点を当てた。

  2月26日の検査官へのmotionの提出は、トランプ氏が裁判で特定の証言を導入することを阻止するため行われた。これには、トランプ氏が選択的に起訴されている主張や、コーエンの信頼性に疑問を投げかける司法省の提出書類が含まれていた。

 弁護人は、トランプ氏の民事詐欺裁判で、1月に終了したコーエン氏の証言内容を指摘し、コーエンは詐欺裁判で、彼とワイセルバーグ“リバースエンジニアリング”元大統領が好む数に到達するためのトランプの資産であると証言しましたが、反対尋問では、彼の発言を取り上げた。

 すなわち、「マイケル・コーエン 嘘つきである」トランプの弁護士が書いた。「彼は最近、トランプ大統領を含む民事裁判で、証言台と宣誓の下で偽証を犯した。彼の公式声明が何らかの兆候である場合、彼はこの刑事裁判で再びそうすることを計画している。裁判所は、この裁判所の完全性と正義のプロセスを保護するために、コーエンの証言を排除する必要がある」と述べた。

 トランプ氏の口止め料審理(hush-money trial)裁判は、3月25日にニューヨークで開始される予定である。これは、彼が直面する最初の刑事裁判—であり、元大統領がこれまでに直面したことのないものである。

 ブラッグ氏は2023年春、当時トランプ氏のフィクサーだったマイケル・コーエン氏への支払いに関連し、業務記録を改ざんした34件の罪でトランプ氏を起訴した。 コーエン氏は複数の女性に対し、トランプ氏との不倫疑惑について沈黙を守るよう報酬を与えていた。

 トランプ氏はこの事実を否定し、無罪を主張した。

 起訴直後、トランプ氏には秘密保持命令(protective order)が出され、証拠開示によって受け取った資料を公に開示することが禁止された。

 しかし、トランプ元大統領の証人らの言論制限要求は、トランプ氏が2024年3月25日に裁判に臨む数週間前に大きなエスカレーションを示している。

 トランプ氏は他の2件の事件でも自身に課されたgag orderを攻撃している。 同氏の弁護士らは法廷で、これらの制限はトランプ氏の核心的な政治的演説を抑圧し、大統領候補としての地位を強調するものだと説明し、依頼者の合衆国憲法修正第1条の権利を侵害していると主張した。

 NY裁判の陪審の選考は2024年3月25日に行われる予定。

 「そのような保護の必要性は切実である」と検察側は申し立ての中で書いている。 「被告には、陪審員、証人、弁護士、裁判所職員など、被告に対するさまざまな裁判の参加者について、公の場で扇動的な発言をしてきた長い歴史がある。これらの発言は、被告の追随者や同盟者から誘発される避けられない反応と同様に、この刑事訴訟の秩序ある運営に重大かつ差し迫った脅威をもたらし、重大な偏見を引き起こす可能性がかなり高い」と付け加えた。 gag orderは事件を監督するフアン・メルチャン判事の承認が必要となる。

-2. ニューヨーク州ニューヨーク郡裁判所の民事裁判

 ドナルド・トランプ前大統領の民事詐欺裁判判決の詳細とりわけD&O 保険および保証保険の調達詐欺裁判について、筆者の手元に弁護士Kevin M. LaCroix氏のブログ「The Insurance Part of the Massive Trump Civil Fraud Verdict」が届いた。

 その内容は、2月6日のニューヨ―ク州最高裁判所(注14-2)のドナルド・トランプ前大統領の民事詐欺裁判判決の詳細内容と、有罪判断の根拠である不正行為の疑いのある行為の中で、不実表示の疑いによる D&O 保険および保証保険の調達があったことの注目した点である。

 わが国メデイアでは詳しい判決内容は言及されていないことから(1) Kevin M. LaCroix氏のブログを仮訳、(2)は司法長官府の解説を引用する。

(1) Kevin M. LaCroix氏のブログの仮訳

 本ブログの読者は間違いなく、2024年2月16日、ドナルド・トランプ氏に対するニューヨーク民事詐欺裁判を主宰する判事、トランプ・オーガニゼーション(The Trump Organization)およびその関連団体、そしてさまざまなオーガニゼーションの幹部(トランプの息子2人を含む)が、被告に対して次のような裁判後の評決を下したことを知っているであろう。

 最終判決前の利息(pre-judgment interest )(注15)と合わせると、その価値は4億5,000万ドル(約670億5,000万円)を超える。 裁定の際、判事はトランプ氏と他の被告が銀行、保険会社、公務員に対し組織とトランプ氏の財務状況を不正に虚偽報告したと結論づけた。

 本ブログの読者にとって興味深いのは、不正行為の疑いのある行為の中に、不実表示の疑いによる D&O 保険および保証保険の調達があったことである。

 以下で説明するように、裁判所の判決の保険に関する部分には興味深い点がいくつかある。 2024 年 2 月 16 日のニューヨーク州 (ニューヨーク郡) 最高裁判所判事アーサー F. エンゴロン判事による判決および命令のコピーは、ここでご覧いただける。

1.事件の背景

  ニューヨーク州司法長官レティシア・ジェームス(Letitia James)は、2022年9月21日にドナルド・トランプ氏と他の被告に対して初めて民事訴訟を起こした。訴状では、ニューヨーク州司法長官法執行法第63条(12)に違反する詐欺的または違法な金融活動の疑いを含む7つの訴訟原因が主張されていた。) (1)業務記録の意図的な改ざん(intentional falsification of business records)、(2) 業務記録を改ざんに関する共謀(conspiracy to falsify business records)、 (3)虚偽の財務諸表の提出に関する共謀(conspiracy to submit false financial statements.)。

 訴状の第6訴因は、被告のアレン・ワイセルバーグ(Allen Weisselberg)氏とジェフリー・マコニー(Jeffrey McConney)氏(それぞれトランプ・オーガニゼーションのCFOと管理者(controller))が、ニューヨーク州司法長官法執行法第63条第12項ニューヨーク刑法第176.05条に違反して保険詐欺を犯したと主張した。 第 7 訴因では、被告全員に対する保険詐欺の共謀を主張した。

Allen Weisselberg氏(76歳) (左)

Jeffrey McConney 氏(69歳)

 保険詐欺疑惑は、トランプ・オーガニゼーションによる2017年1月のD&O保険の買収(ちょうどトランプが大統領に就任しようとしていた頃)と、2017年から2020年の期間中の保証保険の買収に関連していた。

 2023年9月26日、アーサー・エンゲロン(Arthur F. Engoron)判事は、訴状の最初の訴因(つまり、被告がニューヨーク州司法長官法執行法第63条(12)に違反する詐欺的または違法行為に従事したと主張する最初の訴因)に対する略式判決を求める司法長官の申し立てを認め、他の6件の訴因については2023年10月2日から裁判が始まった。

Arthur F. Engoron 氏

 エンゲロン判事が最近の判決で述べたように、司法長官は公平な救済(不当利得の吐き出し(disgorgement)  :差止命令(injunction)の付随的命令による救済の形で)のみを求めていたため、被告には陪審裁判を受ける権利がないと裁判所は述べた。 この事件はエンゲロン判事によって審理された。 法廷は最終的に43日間の公判で40人の証人の証言を聞いた。 裁判は2023年12月13日に結審し、裁判所は2024年1月11日に最終弁論を行った。

2.エンゴロン判決の概要

 エンゴロン判事の判決に要約されているように、公判証言の多くはトランプ大統領の財務状況報告書(SFC)の財務情報に関連していた。 ニューヨーク州の司法長官は基本的に、被告らはトランプ・オーガニゼーションのさまざまな不動産資産の高騰評価を反映してSFCを利用して、有利な金利での不動産ローンやその他の利益を得るため利用したと主張した。

 エンゴロン判事が要約した裁判証言の多くは、不動産資産の評価の問題に関連していた。 裁判証言の朗読は興味深い読み物となる。 多くの例の中で、さまざまな裁判証言によると、ブライアクリフ・ゴルフ・クラブの潜在的な付属ユニット71戸の評価額は4,350万ドル(約64億8,150万円)から4,500万ドル(約67億500万円)の範囲であったが、その資産は2016年、2017年、2018年のSFCに1億100万ドル(約150億4,900万円)強で引き継がれていたことが示されている。 トランプ ナショナル ゴルフ クラブ LA の評価額は 1 億 700 万ドル(約159億4,300万円)でしたが、2015 年の SFC では資産が 1 億 4,000 万ドル(約208億6,000万円)と評価された。 セブン・スプリングスの特定の建設用地の潜在的な建設地役権は、総合的に550万ドル(8億1,950万円)と評価されたが、2014年のSFCのバックアップデータでは、資産は「驚異的な」1億6,100万ドル(約239億8,900万円)とされていた。

 トランプの不動産資産に関する誇張の中には、本当に情けないものもあった。 トランプ氏はトランプタワーにある高級アパートの広さを水増ししたようだ。 2015年と2016年の財務諸表で、トランプ氏は自身のトリプレックス・アパートの広さは3万平方フィートを超え、評価額は3億2,700万ドル(約487億2,300万円)だと主張した。 アパートの実際の広さは10,996平方フィートであった。 トランプ大統領またはトランプ・オーガニゼーションがトランプ大統領の特定のオフィスビルの階数を誇張したとする裁判証言もあった。 例えば、トランプ大統領は、マンハッタンにある58階建てのトランプタワーは68階建てであると主張したと伝えられている。 判決の裁判概要には、他にも多数の同様の例が挙げられている。

 SFC で使用される資産評価が重要だったのは、SFC が、ドイツ銀行やその他の貸し手がトランプ・オーガナイゼーションへの信用供与と不動産融資を行うことに合意し、より有利な条件でそうすることに同意したための基礎だったためであり、信用と融資は延長された トランプ氏の個人保証に基づいてより有利な金利での支払いであったが、SFCに基づいて十分であると受け入れられた。 裁判所は最終的に、トランプ・オーガニゼーションがこの方法で確保した金利コストの削減は相当なものであったと結論付けた。 実際、エンゴロン判事が認めた巨額の金額のかなりの部分は、この方法で同社が確保した想定される利息コストの削減額を反映している。

 司法長官はまた、トランプ・オーガニゼーションが財務上の不正表示の疑いに基づいてD&O保険と保証保険を取得したと主張した。裁判所は、国際的な専門保険グループである HCC Global (「HCC」) の従業員マイケル・ホール(Michael Holl )氏と、2010 年から 2020 年までチューリッヒ保険の引受人を務めてたクラウディア・マルカリアン(Claudia Markarian)氏の証言を聞いた。

 ホール氏は、2016年12月にトランプ・オーガニゼーションの保険ブローカーから、同社のD&O保険の更新に関して連絡を受けたと証言した。 どうやら、トランプ大統領の就任式が近づいていることを考慮して、同社はD&O保険プログラムの責任限度額を500万ドルから5,000万ドルに引き上げたいと考えていたようだ。 ホール氏は、組織の財務諸表を見るためには、トランプタワーにある同社のオフィスで財務諸表を見る必要があったと証言した。 同氏のメモには、「財務資料はほとんど見ていなかった」が、2015年の貸借対照表は見たことが記されている。 貸借対照表には1億9,200万ドル(約286億800万円)の現金が反映されており、ホール氏はこれが「流動性の尺度」として意味があると証言した。 ホール氏のメモには、「重大な訴訟や誰からの連絡もなかった」と言われたことも反映されていた。 ホール氏は、財務情報と表明に基づいて、HCC が補償範囲を更新することを決定したと証言した。

 一方、マルカリアン氏は、トランプ会社の保証保険を引き受けるために、彼女も会社のオフィスを訪れて財務諸表を見る必要があったと証言した。 アレン・ワイセルバーグ(Allen Weisselberg)氏と同社のCFO兼監査役のジェフリー・マコニー(Jeffrey McConney)氏に会った。

 また彼女は、ワイセルバーグ氏がマルカリアン氏に代理した不動産保有物件が外部の評価会社によって毎年決定されたものである2018年と2019年のSFCも見せられた。 (エンゴロン氏は、トランプ・オーガニゼーションが専門の評価会社を一度も雇っていないことを明らかにした。)マルカリアン氏のメモには、彼女が会社の流動性の指標として手元現金の額を具体的に調べたことも反映されている。 ワイスルバーグ氏が公判で、トランプ・オーガニゼーションが不動産評価に専門の鑑定士を雇っていないと証言したことを知らされると、それが更新を承認するための分析に「重要」になっただろうと彼女は述べた。 彼女はまた、現金の額についての虚偽の表示が更新を承認するという彼女の決定に「大きな影響を与えた」だろうと証言した。

 エンゴロン判事はその調査結果と結論の中で、特に「チューリヒは、トランプ・オーガナイゼーションの保険契約の引受を決定する際に、ワイセルバーグ氏とマコニー氏による虚偽の表明と、SFCにある手持ち現金の額に関する意図的に虚偽で誤解を招く情報に依存した」と認定した。

 D&Oの更新に関して、エンゴロン判事は、2017年1月10日の会合の時点では捜査が進行中であったため、ホール氏に対する「重大な訴訟や誰からの連絡もなかった」という陳述は「虚偽」であると明示的に認定した。 司法長官室は、トランプ財団とトランプ家族のドナルド・トランプドナルド・トランプ・ジュニアイヴァンカ・トランプエリック・トランプに捜査を依頼した。彼らは全員トランプ・オーガニゼーションの理事および役員であり、捜査を知っていた。 エンゴロン判事は、更新方針が拘束される以前には、トランプ・オーガニゼーションの誰もが調査の存在をHCCに知らせていなかった、と認定した。 しかし、トランプ・オーガニゼーションは2年後、司法長官の捜査に起因する執行措置を求める申し立てを保険会社に提出した。

 エンゴロン判事の意見書には、「HCCが請求を認識したとき、引受会社はリスクのエクスポージャーが価格設定よりも大幅に高いと判断し、既存の保険料の5倍を超える更新保険を提示した」と述べられている。 また、エンゴロン判事は、2015年のSFCに反映されているように、HCCがドナルド・トランプが手元に1億9,200万ドルの現金を持っているという虚偽の表示にさらに依存していたと認定し、「これは、SFCが約款にSFCを書くべきかどうかについてのHCCの分析に重要な役割を果たした」とエンゴロン判事は結論づけた。

 エンゴロン判事は法的結論の中で、ワイセルバーグ氏とマコニー氏がそれぞれ第6の訴因に基づき、「ニューヨーク行政執行法第63条(12)およびニューヨーク州刑法第176.05条(保険詐欺)に違反して、繰り返しかつ執拗に保険詐欺を行った」として責任を負っていると認定した。 エンゴロンによれば、ワイセルバーグ氏とマコニー氏は、両氏とも保険会議に参加し、「彼らはドナルド・トランプ氏のSFCについて、保険代理店に対し、彼の現金資産の価値を偽るなどの虚偽の説明を行った。 SFCは外部の評価から来ており、トランプ・オーガニゼーションに対する潜在的な請求権の存在について嘘をついていた。」 これらの行為のそれぞれにより、保険申請書に「保険会社を誤解させる目的で重大な虚偽の情報が含まれる」ことになった。

 エンゴロン判事は、保険金詐欺の公然行為を行ったのはワイセルバーグ氏とマコニー氏だけであると認定したにもかかわらず、保険金詐欺の共謀の第7の訴訟原因に基づいて被告全員が責任を負うと認定し、法的権限を引用して、公然行為は1人のみであると主張した。 陰謀を促進した共謀者の実態を明らかにする必要がある。 さらに同判事は、「各被告は事業記録や評価額を改ざんするという個々の行為によって、保険詐欺の陰謀を幇助し教唆し、実質的に詐欺的なSFCを意図的に保険会社に提出させた」と付け加えた。

 エンゴロン判事は、被告らが保険詐欺を犯した(または保険詐欺を共謀した)と結論づけたが、認められた救済は主に不動産ローンに関する虚偽表示の疑いに関連していた。 したがって、授与された巨額のうち約1億6,800万ドルは、トランプ・オーガナイゼーションが偽のSFCの使用を通じて確保した金利コストの節約に関連したものであった。 残りの裁定額のかなりの部分は、被告らがワシントンの旧郵便局ビルなど、特定の実質的な不動産資産の有益な売却を通じて確保した「不正に得た利益」に関係する。(資産売却益の返還に関する理論は、財務上の虚偽の表示がなければ、被告には資産を購入する余裕も、売却から利益を得る立場にもいなかったであろうということのようである)

 エンゴロン判事は、不当利得の吐き出し(disgorgement)という形での金銭的救済に加えて、さまざまな形での差し止めによる救済も認めた。トランプ氏、ワイスルバーグ氏、マコニー氏は、ニューヨーク企業の役員を3年間禁止される。 ドナルド・トランプ・ジュニアとエリック・トランプは2年間、ニューヨークの企業の役員または取締役としての勤務を禁止される。 トランプ大統領はニューヨークの金融機関からの融資申請を3年間禁止される。 トランプ・オーガニゼーションに内部統制と財務報告義務を確立し、遵守することを保証するために、新しい独立コンプライアンス担当ディレクターがトランプ・オーガニゼーションに設置された。 そして、エンゴロン判事が以前に命じた現在の監視員は引き続き同社の財務取引を監督することになる。

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(注14-2)ニューヨーク州最高裁判所の詳細については筆者ブログ(注1)を参照。

(注15) 最終判決前の利息(pre-judgment interest ); prejudgment interest: 裁判で勝訴が決定された時点から、最終判決が下される時点までの金銭の使用の損失の補償として、訴訟の勝訴当事者に与えられる利息(Marriam -Websterを仮訳)

(筆者ブログ(注2)参照)。

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米国内外でのトランプ裁判の全体像について鳥瞰図かつ法的に詳しい解説に挑戦(その2)

2024-03-15 14:55:14 | 国家の内部統制

■4つのトランプ裁判につきアクターも含め法的な意味で争点を整理する。

. フロリダ州での連邦政府機密文書の違法な収集と保管裁判

1.裁判概要 (刑事事件)

裁判所:フロリダ州南部地区連邦地方裁判所

裁判官:US District Judge :エイリーン・キャノン(Aileen Cannon)

Aileen Cannon 氏

検事:ジャック・L.スミス連邦特別検事(Special Counsel :Jack L.Smith)(注2)

Jack L.Smith 氏

②事件の概要

政府機密文書の違法収集と保管問題

 当初のDOJ起訴状(全49頁)は、トランプ氏が大統領として米国が所有する何百もの機密文書を収集し、それらをホワイトハウスの段ボール箱に保管したと主張している。一部の文書には、米国と外国の両方の米国の核計画含む米国とその同盟国の軍事攻撃に対する潜在的な脆弱性、そして外国からの攻撃に対応して報復の可能性を計画している防衛および兵器能力に関する情報が含まれていた、と述べている。

Mar-a-Lagoのトランプ邸内の機密文書の山(起訴状に添付されている)

 2023年6月8日、ドナルド・トランプ元大統領と彼の補佐官であるワルティン・T .ナウタ Jr. (Waltine Torre Nauta Jr.)氏はフロリダ州 Mar-a-Lagoのトランプ邸での機密文書の取り扱いの誤りに関連する容疑でフロリダ州南部地区の連邦大陪審により起訴された。取って代わる 起訴 2023年7月27日に封印が解除され、追加の被告カルロス・ド・オリベィラ(Carlos De Oliveira)が起訴され、トランプに対する証拠の改ざんに対する国防情報を故意に保持し, そして捜査官に嘘をついたとする3つの追加告発が含まれる。(2023年7月27日付け最終起訴状(全60頁))

 なお、起訴状によると計36訴因のうち主たる訴因1~31は「全米の国防に関する故意の保管(Willful Retention of National Defense Information:18 U.S.C.§793(e))」(注8)である。

 より具体的に言うと2021年1月から、トランプがホワイトハウスを去る準備をしていたので、 連邦検事は、トランプ氏がホワイトハウスのスタッフに、“数百の機密文書[。] ”を含む、彼の出発を見越してさまざまなアイテムを箱に入れるように個人的に指示したと主張している トランプ氏の共同被告のボディーマン、元米国海軍メンバーのウォルティン・T.ナウタ(Waltine Torre Nauta Jr.)氏は、この文書の転送を支援するよう指示されたグループの一部であった。

(機密資料の保管が明らかになった理由については、起訴状の他に2023.6.9付けLawFare記事2/6(42)を参照されたい。

 共同被告

Mar-a-Lagoの不動産マネージャーであるカルロス・ド・オリベィラ(Carlos De Oliveira)氏、ワルティン・T .ナウタ Jr. (Waltine Torre Nauta Jr.)氏

Carlos De Oliveira 氏

Waltine Torre Nauta Jr.氏

2.フロリダ州南部地区連邦地方裁判所アイリーン・キャノン連邦判事は機密文書裁判でトランプ前大統領の起訴棄却申し立てを却下(2024.3.17 追記分)

 3月14日のJURIST解説を仮訳する。一部、筆者の判断でリンクを追加した。

 ドナルド・トランプ前大統領の機密文書不当拘留容疑に関する刑事訴訟を管轄する米連邦判事は3月14日、2ページにわたる短い命令で前大統領の棄却申し立てを却下(rejected)した。 トランプ前大統領は、この事件で係争中の自身に対する刑事告発40件のうち32告発の却下を求めていた。 しかし、アイリーン・キャノン判事は、32件の刑事告発は違憲でかつ曖昧であるとするトランプ氏の主張を否定した。

 キャノン氏は最終的に、「提示された問題全体の解決策は、法定用語や語句の法定用語や語句の依然として変動する定義についての、争点となっている指導上の質問に大きく依存している」と結論付けた。 また判事は、トランプ前大統領の却下動議はいくつかの事実上の問題を提起したが、それらは本件の「事実認定者(finder of fact)」である陪審によって最もよく解決されるべきであると判示した。

 キャノン氏は3月14日初め、この却下動議に関して連邦検察官とトランプ氏の弁護士から3時間半に及ぶ弁論(arguments)を聞いた。 トランプ氏の弁護士は、トランプ氏が起訴されている刑法規定内のいくつかの文言に異議を唱えた。 これらの文言の中には、「不正所持」「国防に関する」「受け取る権利がある」などの文言が含まれていた。

 2月22日に裁判所に提出された棄却を求める動議の中で、トランプ前大統領は刑法の文言が「曖昧さの原則を生む適正手続きの原則や権力分立の懸念と矛盾している」と主張した。 彼の主張は、トランプ前大統領が「大統領記録・連邦記録法2014年改正」(Presidential and Federal Records Act Amendments of 2014, 法令番号113-187)に基づいて私的使用のために文書を保持し、機密解除したと主張したが、この訴訟の以前の提出文書のエコーであった。

 曖昧さの原則は、刑法が処罰される行為の種類を明示的に規定し、定義することを要求する憲法の原則である。 該当する刑法規定(18 U.S. Code § 793 - Gathering, transmitting or losing defense information)のあいまいな文言は法律の過度に広範な適用と恣意的な執行につながる可能性があるという懸念があるため、過度に曖昧な法律は適正手続きの懸念に基づいて廃止されるべきである。

 しかし、ジャック・スミス特別検事が率いる連邦検察当局はトランプ前大統領の主張を拒否した。 トランプ氏の棄却動議に対する返答の中で、連邦検察当局はトランプ氏の主張を「理由がない」として却下した。 検察側は、トランプ氏の行為は刑法で禁止されている明確に定義された行為に完全に該当すると主張した。 すなわち、連邦検察官は次のように主張した。

    「 [A] 元大統領であるトランプ氏が、国防情報を不正に取得したり故意に保持したりしない義務を含む、国家安全保障と軍事機密を保護することの最も重要性を理解していないはずがない。」

 トランプ氏に対するこの訴訟での40件の刑事告訴は、元大統領が2021年1月20日にホワイトハウスを出発する際に政府の機密文書を不当に持ち出したという主張に端を発している。これらの文書には、米国と外国の同盟国の防衛兵器能力、核情報、米国の潜在的な脆弱性、報復計画や防衛に関する機密記述と分析が含まれていた。起訴状には、トランプ前大統領が2021年1月20日に米大統領としての任期を終えた後、これらの機密文書を所有または保持する権限がなかったことが明確に述べられている。しかし、この文書は2022年8月のトランプ大統領のフロリダ州にあるア・ラーゴの私邸の捜索中にFBIによって発見された。

 キャノン氏がトランプ前大統領の訴えの棄却動議を偏見なく拒否したことは注目に値する。 これは、トランプ前大統領が後日の裁判で憲法の曖昧さに対して再び同じ異議を唱える可能性があることを意味する。

 キャノン氏は3月4日、前大統領の大統領特権(presidential immunity.)の主張に基づくトランプ氏の棄却動議についての弁論も聞いた。 しかし、キャノン氏は、この件におけるトランプ前大統領の免責の可能性の問題についてはまだ決定を下していない。

 米国連邦最高裁判所は2024年4月に、連邦検察によるトランプ氏に対する2020年の選挙干渉事件における別の免責請求に関する弁論を審理する予定である。 機密文書事件をめぐる事実と状況は2020年の選挙妨害事件とは異なるが、最高裁判所の判決はトランプ大統領の免責主張に関するあらゆる決定に影響を与える可能性がある。

Ⅱ.ワシントンD.C.連邦議会議事堂攻撃の陰謀および2020年の大統領選挙の結果を覆そうとした刑事裁判

1.裁判概要

裁判所;Wasington D.C連邦地方裁判所

事件の概要

 2023年8月1日、ワシントンD.C.の大陪審(grand jury)は、2021年1月6日の米国連邦議会攻撃に関連して元トランプ大統領を起訴することを投票した。また2020年の大統領選挙の結果を覆そうとする彼の主張された試みにつき起訴した。

裁判官

連邦地方判事ターニャ・S・チャッキン(US District Judge Tanya S. Chutkan)氏

起訴検察官

連邦特別検事ジャック・L.スミス(Jack L. Smith)

起訴状原本

➅ワシントンD.C. 巡回区控訴裁所判決(以下、「D.C.控訴裁判所」という)(judgment)(3裁判官:Karen LeCraft Henderson, J.Michelle  Child, Florence  Pan)

C-SPAN画像から引用

 2024年2月6日、D.C.控訴裁判所は、ドナルド・トランプ前大統領が2021年1月6日の連邦議会議事堂攻撃での彼の役割について彼に対する政府の訴訟で起訴から免除されないことを決定した。(米政治専門ケーブルチャンネルC-SPANで裁判内容は動画で音声とテキストで確認できる)

 トランプ氏は以前に持っていた 解任に移動 彼の起訴は 元大統領の刑事責任追及が大胆かつ公平に行動する大統領の能力を阻害すると主張し、検察からの行政免責を主張し、併せて大統領特権、特にデリケートな義務と大胆で躊躇しない行動の必要性を引用した。

 全会一致の57ページの意見書(opinion)同裁判所判決で、同裁判所はトランプ氏と他の元大統領—が在職中に犯した犯罪容疑で起訴できると裁定した。裁判所は、免責に関するトランプの主張は説得力がなく、元大統領が無益な連邦刑事訴追によって過度に嫌がらせを受けるリスクはわずかであると結論付けた。

 さらに、同裁判所は、「この刑事事件の目的のために、トランプ元大統領が他の刑事被告のすべての抗弁とともに市民たるトランプになったと決定した。しかし、彼が大統領を務めている間に彼を保護したかもしれないいかなる大統領の行政免除も、もはやこの起訴から彼を保護しない」と述べた。(注8-2)

 トランプ氏は2024年2月12日までに連邦最高裁判所に対し、D.C.控訴裁判所判決につき上訴できることとなっていた。

連邦最高裁判所SCOTUSの解説から抜粋、仮訳

 ジャック・スミス特別検事は連邦最高裁判所に対し、トランプ前大統領が起訴された犯罪は「我が国の民主主義の根幹を揺るがす」ものであり、これらの容疑が「速やかに解決」されることには「国益がある」と述べ、ターニャ・S・チャッキン判事らに求めた。 2020年大統領選挙の結果を覆す共謀の罪でトランプ氏が裁判を受ける道を開くため、2月14日の夜に開かれた。

 スミス氏の申し立ては、トランプ氏が裁判所に対し、自身の免責請求を却下するD.C.控訴裁判所の決定を一時的に差し止めるよう要請してからわずか2日後、ワシントン地裁がスミス氏にトランプ氏の要請に応じるよう設定した期限の6日前に提出された。

 米国連邦地方裁判所判事のターニャ・S・チャッキン氏は当初、トランプ氏の訴訟の公判期日を34に設定していた。2023年 12月初旬、彼女は、大統領としての公務の一部である行為については訴追を免除されるとして、トランプ氏に対する告訴却下を求める動議を拒否した。

 その時点で、スミス氏は連邦最高裁判所に出向き、D.C.控訴裁判所がトランプ氏の上訴に対する判決を下すのを待たずに、判事らに免責問題について早急に検討するよう求めた。

 連邦最高裁判所はその時点では介入を拒否し、D.C.控訴裁判所は2月6日に判決を下した。3人の裁判官からなる合議体は全員一致の意見でチャッキン判決を支持し、「トランプ前大統領はトランプ国民となった」と強調した。 彼が大統領を務めていた間に彼を守っていたかもしれない行政特権は、もはや今回の訴追から彼を守ってくれない」と述べた。

 トランプ前大統領側は2月5日に連邦最高裁判所に出廷し、最高裁判所の審査を申し立てる時間を与えるためにD.C.控訴裁判所の判決を一時的に差し止めようと求めた。 同氏は判事に対し、「刑事訴追からの免除がなければ、我々が知っている大統領職は消滅するだろう」と語った。

 しかし、連邦最高裁判所で100件以上の訴訟を弁論してきた連邦最高裁判所で政府の刑事事件を担当してきた元法務長官代理(Deputy Solicitor General)マイケル・ドリーベン(Michael Dreeben)氏(注9)署名した提出文書の中で、スミス氏は、トランプ氏は単に自分の事件の裁判を遅らせようとしているだけだと反論した。「これらの容疑の解決の遅れは、迅速かつ公正な判決に対する公共の利益を挫折させる恐れがある。これはあらゆる刑事事件における切実な利益であり、犯罪容疑による前大統領に対する連邦刑事告訴を伴うものであるため、ここでは国家的に独特の重要性を持っている。公権力の行使を含め、大統領選挙の結果を覆そうとする努力を行っているのみである」とスミス氏は記した。

 スミス氏は、既に弾劾され議会で有罪判決を受けていない限り、大統領としての公式行為の一部である行為に対する免責を求めるトランプ氏の主張は「過激な」もので、仮に受け入れられれば「大統領の責任についての歴史を通じて広く浸透してきた理解を根底から覆すことになり、民主主義と法の支配を損なうものだ」と述べた。 実際、スミス氏は、大統領が「選挙を覆し、後継者への平和的権力移譲を妨害しようとする犯罪計画とされるものは、連邦刑法からの新たな形の絶対免除を認める最後の場所であるべきだ」と示唆した。

 スミス氏は、裁判の続行を認めれば、将来の大統領が退任後の自らの行為で起訴されるのではないかと懸念することになるというトランプ氏の提案に激しく反発した。同氏は、刑事訴追の可能性が過去に大統領の行動を妨げてきたという「証拠はない」とし、将来的には構造的安全策によって純粋に政治的な理由による訴追は阻止されるだろうと強調した。

 他に米国大統領に対する刑事訴追がないことは、トランプ大統領の主張を裏付けるものではないとスミス氏は述べ、トランプ大統領は「前例のない」犯罪容疑の「前例のない」規模、性質、重大さ、つまり有権者の意志に反して大統領職に留まろうとする不正な取組みを見逃していると述べた。

 そしてスミス氏は、トランプ元大統領が自身の事件の公判前手続きを延期することにどのような関心を持っていても、彼に対する刑事告発の解決を延期することによる「政府と国民への深刻な損害」の方がはるかに大きいと続けた。スミス氏は、裁判を予定通り進めることに対する国民の関心が最も高まるのは、「今回のように、元大統領が大統領職に留まるために選挙プロセスを破壊する共謀の罪で起訴されたとき」であると示唆した。

 スミス氏はチャッキン判事に対し、トランプ氏の執行猶予申請と、その後に起こる可能性のあるD.C.巡回控訴裁判所の判決の見直しを求める申し立てを却下するよう求めた。しかし、別の選択肢として、裁判所はD.C.巡回裁判所の判決を保留するというトランプ大統領の要請を審査請求として扱い、紛争が迅速に解決されるよう、3月下旬に口頭弁論に向けて迅速に手続きを進める必要があると同氏は続けた。

刑事および民事訴訟に対する大統領の免責に関する論文例

 なお、Find Law 解説サイト「刑事および民事訴訟に対する大統領の免責(Presidential Immunity to Criminal and Civil Suits)」に関する論文を一部抜粋、仮訳する。

 合衆国憲法は、刑事または民事訴訟からの大統領の免責については直接規定していない。代わりに、この特権は、1860年代の連邦最高裁判所による第II条、セクション2、第3項(Article II, Section 2, Clause 3)の解釈を通じて、時間の経過とともに以下のとおり、発展してきた。

〇大統領は民事責任から免除されるか?

 大統領は、公務に関連する訴訟から生じる訴訟について、民事責任から免除される。これには、これらの職務の「外周」でのすべての行為が含まれる。しかし、大統領は非公式な行為から生じる行動から免除されない。

〇元大統領は責任から免除されるか?

 裁判所は、在職中の公式行動の「外周」で取られた措置について、元大統領に免責が及ぶかどうかはまだ決定していない。しかし、現職の大統領と同様に、元大統領は在職中の非公式な行為から生じる行動から免除されない, 就任前に発生した行為および退社後に発生した行為につき免除されない。

〇大統領の免責は何をカバーしているか?

 大統領の免責は、大統領の公務に関連する行動をカバーする。これには、それらの職務の「外周」にあるものも含まれる。免責は、非公式な行為、犯罪行為、および就任前に発生する行為には適用されない。

-2.ワシントンD.C.連邦巡回区控訴裁判所での決定

 2024年2月6日、米国のワシントンD.C.連邦巡回区控訴裁判所は、トランプ氏が2020年の連邦選挙干渉事件で起訴から免除されないことを決定

US appeals court rules Trump not immune from prosecution in federal 2020 election interference case

 JURIST解説から、抜粋、仮訳する。

 米国ワシントンD.C.の連邦巡回区控訴裁判所(以下、「D.C.控訴裁判所」という)の3人の裁判官からなる合議体は、2月6日、2020年の連邦選挙干渉事件でドナルド・トランプ前大統領には訴追の免除権がないと判示(No. 23-3228)した。

 裁判所は全会一致の判決で、トランプ氏が米国大統領としての公務中に行ったと主張する行為について「絶対的な」大統領訴追免責を受ける権利はないとの判断を下した。 この裁判所の判決は、「元大統領は連邦刑事責任に関して特別な条件を享受していない」としたコロンビア地区タニヤ・チュトカン連邦地方裁判所判事の2023.12.2判決を支持した。

 さらに巡回控訴裁判所は以下の点を明らかとした。

「この刑事事件の目的のために、トランプ前大統領は他の刑事被告の弁護をすべて引き受けてすなわちトランプは一市民となった。 しかし、大統領在任中に彼を守っていたかもしれない行政特権は、もはや今回の訴追から彼を守ってくれない。」

 D.C.控訴裁判所の3人の裁判官の合議体での控訴の訴えにおいて、トランプ氏は彼の免責主張を支持して次の3つの主要な論点を主張した。

①三権分立の原則により、裁判所は大統領が行った公式行為を審査することができない。

②三権分立の原則に根ざした機能政策の考慮事項では、行政府の機能への侵入を防ぐために免責が必要である。

③元大統領は、弾劾判決条項に基づいて連邦議会によって最初に弾劾され、有罪判決を受けた場合にのみ起訴される可能性がある。

 しかし、2月6日の判決では、D.C.控訴裁判所はトランプ側の3つの主張の根拠すべてを拒否した。

 トランプ前大統領の最初の主張に関して、裁判所は「正しく理解されているように、三権分立の原則は合法的な裁量的行為を免責する可能性があるが、あらゆる公的行為について前大統領を連邦刑事訴追することを妨げるものではない」と認定した。

 3 人の裁判官からなる合議体は、2024年1 月 9 日の口頭弁論中で、特に 1803 年の米国連邦最高裁判所のマーベリー対マディソン事件(Marbury v. Madison, 5 U.S. 137 (1803))に関連して、権力分立の問題も提起した。この画期的な訴訟において、裁判所は、裁量的行為(discretionary)と羈束行為(ministerial:行政の執行に、自由裁量の余地がないこと)という 2 つのタイプの公的行為を概説した。 裁量的行為は裁判所によって決して審査されることはないが(政治的プロセスを通じて対処するのが最善であるため)、同裁判所は、羈束行為を遂行する義務が法律によって課されているため、羈束行為は審査の対象となる可能性があると認定した。

 トランプ氏は、この訴訟で問題となっている行為は公的行為であるため、免責を受ける必要があると主張したため、合議体はトランプ氏の弁護士にマーベリー事件の先例について話すよう求めた。 最終的に同裁判所は判決の中で、トランプ前大統領の行動は、もし公式行為とみなされるのであれば、行政行為(ministerial.)であると結論づけた。このため裁判所は、トランプ氏は連邦刑法に従って行動したとして起訴されたが、それを怠ったと推論した。したがって、裁判所は、「トランプ前大統領の行為は連邦刑法に反するいかなる法的裁量権も欠如しており、その行為については法廷での責任がある」と認定した。

 次に裁判所は、政策上の懸念に関するトランプ前大統領の2番目の主張に焦点を当てた。 裁判所は、この訴訟で争点となっている2つの政策上の懸念につき、(1) 行政府の権限と機能に対する侵害の可能性、(2) 大統領選挙の完全性と有権者の民主的に大統領を選ぶ能力の維持問題であると述べた。

 裁判所は「国民と行政府の双方が抱く刑事責任への関心は、大統領の行動を萎縮させ、厄介な訴訟を容認するという潜在的なリスクを上回る」と結論付けた。 トランプ大統領は、こうした責任は将来の大統領が危険な決断を下す意欲を抑制するだろうと主張したが、裁判所はそのような責任は「権力乱用や犯罪行為の可能性を阻止する」ことで政府に利益をもたらすと認定した。 裁判所は、合衆国憲法の下では、大統領が米国の法律を忠実に執行することを求めるテイク・ケア条項(Take Care Clause)(注10)の対象となると指摘した。「もし大統領が…処罰されずにこれらの法律に反抗できる唯一の役人だったとしたら、それは顕著な矛盾となるであろう」と裁判所は述べた。 そうすることは、「個々の国民が投票し、投票を数えてもらう権利」を損なう可能性があることになる。

 トランプ氏の3番目の主張を検討した結果、裁判所は弾劾判決条項(注11)が実際に「前大統領に対する最も強力な証拠」を提供したと認定した。トランプ元大統領は、この条項は大統領の責任は議会弾劾によってのみ問われることを意味していると主張したが、裁判所はその文言が「『法律に従って』弾劾された当局者の刑事訴追の選択肢を明示的に保持している」と認定した。

 D.C 控訴裁判所は、トランプ氏側の主張を却下し、「トランプ前大統領の解釈では、容易に弾劾の対象に分類されない犯罪(すなわち、「反逆罪、贈収賄、またはその他の重罪および軽罪」)の犯行も許可されることになり、上院議員30人が正しければ」犯罪は大統領が退任するまで発見されない」と述べた。同裁判所は、このような条項の解釈は、大統領が国王になることを阻止するという法制定者の目的と根本的に矛盾していると認定した。

 また裁判所は、この事件でのトランプ氏に対する告発は二重の危険(double jeopardy)(注12)に相当するというトランプ氏の主張も棄却した。 トランプ氏は以前、2021年1月6日のアメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件での役割を理由に下院(民主党が多数)で裁判にかけられ弾劾されたが、上院は弾劾罪で同氏に有罪判決を下さなかった。 たとえ弾劾があったとしても、裁判所は、そのような弾劾は同一または類似の事実に基づく将来の訴追を妨げるものではないと認定した。 裁判所は次のように書いている。

 「二重危険条項の先例の解釈によれば、トランプ前大統領の弾劾無罪は、次の 2 つの理由により、その後の刑事訴追を妨げるものではない。(1) 弾劾は刑事罰をもたらさない。 (2) 起訴状は、弾劾決議の単一の罪状と同じ罪を告発していない。」

Ⅲ-1.ニューヨーク州ニューヨーク郡裁判所係属の刑事事件

1.裁判概要

裁判所:

 ニューヨーク州ニューヨーク郡最高裁判所(supreme court)

起訴者

Manhattan district attorneyニューヨーク州マンハッタン地方検事(連邦裁判所管轄区の首席検事DA)アービン・L・ブラグ(lvin L.Bragg)

lvin L.Bragg氏

③事件の概要

  トランプ氏は2023年3月、2016年のアダルト映画スター(ストーミー・ダニエルズ(Stormy Danielss)氏 との不倫疑惑への13万ドル(約1950万円)の秘密保持契約(non-disclosure agreement )にもとづく口止め料(hush money)支払いや関連した重罪容疑等でマンハッタン地方検事によって刑事事件で初めて起訴された。すなわち検察は、トランプ氏が2016年の選挙の公平性・健全性を損なう違法な陰謀(Conspiring)に参加していたと主張した。 さらに、同検事は違法な業務・財務記録の改ざん等情報を隠蔽する違法な計画に参加していたと主張している。 一方、トランプ氏側は無罪を主張した。

 statement of facts URL:https://www.documentcloud.org/documents/23741577-read-trump-indictment-related-to-hush-money-payment

 ④裁判官

ファン・メルチャン(Juan Merchan)New York Supreme Court Judge(元検察官)

 

 Juan Merchan 氏

⑤トランプ側弁護士(Trump’s legal team)    

Todd Blanche 氏(Blanche Law com設立者 )(注13)

Susan Necheles 氏(Necheles Law LLP代表)

Joe Tacopina 氏(Tacopina Seigel & DeOreo代表)

 ⑤証人

Michael Cohen(元トランプ氏の顧問弁護士:2018年)(注14)

 

David Pecker氏  (右)

Stormy Danielss氏(45歳)

Karen McDougal 氏 (53歳)(右)

 ➅刑事責任

ニューヨーク州刑法第175.10に基づく第一級の業務記録等の改ざん等(FALSIFYING BUSINESS RECORDS IN THE FIRST  DEGREE Penal Law § 175.10)起訴状原本

*ニューヨーク州刑法第175.10第一級業務記録偽造罪は、第二級業務記録改ざん罪を犯し、かつ、その詐欺の意図に別の犯罪を犯したり、その行為を幇助したり隠蔽したりする意図が含まれている場合に有罪となる。

第一級の業務記録の改ざんはクラス E の重罪である。

合計訴因数 34

 JURISTの法事実の詳細解説        

根拠法 

(ⅰ)Conspiring to defraud the US (18 U.S. Code § 371 - Conspiracy to commit offense or to defraud United States)                             

(ⅱ)Conspiring to corruptly obstruct and impede the US Congress (18 U.S. Code § 1512 - Tampering with a witness, victim, or an informant)                            

(ⅲ)Conspiring against US citizens’ right to vote (https://www.law.cornell.edu/uscode/text/18/241)                                       

 

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(注8) 18 U.S. Code § 793 - Gathering, transmitting or losing defense information

(e)Whoever having unauthorized possession of, access to, or control over any document, writing, code book, signal book, sketch, photograph, photographic negative, blueprint, plan, map, model, instrument, appliance, or note relating to the national defense, or information relating to the national defense which information the possessor has reason to believe could be used to the injury of the United States or to the advantage of any foreign nation, willfully communicates, delivers, transmits or causes to be communicated, delivered, or transmitted, or attempts to communicate, deliver, transmit or cause to be communicated, delivered, or transmitted the same to any person not entitled to receive it, or willfully retains the same and fails to deliver it to the officer or employee of the United States entitled to receive it; or

(注8-2) 2023.9.15 米特別検察官がコロンビア地区連邦地裁「政府は裁判所に対し、司法の適正な運営と公正かつ公平な陪審を確保するために以下の即時措置を講じることの超法規的措置を確保するための政府の要請申立て:本声明はこれらの訴訟を不利にするものではない(GOVERNMENT’S OPPOSED MOTION TO ENSURE THAT EXTRAJUDICIAL :STATEMENTS DO NOT PREJUDICE THESE PROCEEDINGS)」(全19頁)から一部抜粋、仮訳する。

 この事件で大陪審が起訴状を差し戻して以来、被告(ドナルド・J・トランプ)はコロンビア特別区の住民、裁判所、検察官、証人候補者を攻撃する公式声明を繰り返し広く広めてきた。 被告は供述を通じて、我が国の司法制度において陪審の評決は「公開法廷での証拠と弁論によってのみ導かれる」という「逸脱の原則」に反して、これらの訴訟手続きの健全性を損ない、陪審員に偏見を与えると脅している。 外部からの影響によるものではない」 シェパード対マクスウェル、384 US 333, 351 (1966) (引用は省略)。

 「外部からの不利な干渉からプロセスを保護する」という裁判所の義務に従って、同上。 第 363 条で、政府は裁判所に対し、司法の適正な運営と公正かつ公平な陪審を確保するために以下の即時措置を講じることを要請する: (1) 地方刑事規則 57.7(c) に従って、特定の不利な超法規的判決を制限する、厳密に調整された命令を下すこと。 声明。 (2) いずれかの当事者がこの地区の住民との接触を伴う陪審調査を実施する場合、陪審調査が裁判員に不利にならない方法で実施されることを裁判所が保証できる命令を締結する。 政府は被告の弁護士から被告の立場を聴取しており、被告はこの動議に反対している。」

(注9) マイケル・ドリーベン(Michael Dreeben)氏は、米国連邦司法省の法務長官室に 30 年以上勤務し、そのうち 24 年間は連邦最高裁判所で政府の刑事事件を担当する法務長官代理(Deputy Solicitor General)を務めた。現在O’Melveny & Myers LLP.のパートナー、ハーバード大学ロースクール講師、ジョージワシントン大学ロースクール名誉講師を任務。

(注10)テイク・ケア条項(Take Care Clause)

 合衆国憲法ArtII.S3.3.1は大統領が「法律が忠実に執行されるよう配慮しなければならない義務」と規定している。 この義務には、少なくとも 5 つのカテゴリーの行政権が含まれる可能性がある。(1) 第 2 条の冒頭および後続の条項によって、憲法が大統領に直接与える権限、 (2) 議会の法律によって大統領に直接与えられる権限、 (3) 議会法によって連邦政府の各省およびその他の執行機関の長に与えられる権限、 (4) 米国の刑法を執行する義務から暗黙のうちに生じる権力、 (5) いわゆる「公務」を遂行する権限。これに関して連邦政府最高幹部は、解任の機会や方法に関して限られた裁量権を行使できる。

 以下の解説では、1)憲法や法令が大統領に与えている権限を大統領がどのように行使するのか、2)テイク・ケア条項と大統領の罷免権ひいては監督権との関係、3) 誰が彼に代わって行政権を行使するのか、そして4)議会が行政府職員の行動をどこまで指示できるのか等、これらの行政権によって提起される疑問のいくつかを検討する。(以下は略す。)(コーネル大学ロースクールの解説から抜粋、仮訳)

(注11) ドナルド・トランプ大統領に対する弾劾手続の経緯

 合衆国憲法第2章第4条は、「第 4 条 [弾劾]大統領、副大統領および合衆国のすべての文官は、反逆罪、収賄罪その他の重大な罪または軽罪につき弾劾の訴追を受け、有罪の判決を受けたときは、その職を解かれる」と規定している。

 同憲法の第1章第2条第5項は、下院は、議長その他の役員を選任する。弾劾の訴追権限は下院に専属する」とのみ規定している。つまり、下院が弾劾の罪状について大陪審の役割を果たし、調査・起訴する。

 これを受けて下院は2019年12月18日、権力乱用と議会妨害の2項目について大統領を弾劾訴追した。

 下院民主党による弾劾調査は、情報機関の匿名告発者が2019年9月に、トランプ氏とウクライナ大統領との電話会談に問題があったと議会に報告したことを機に始まった。

 ホワイトハウスが公表した通話記録によると、トランプ氏は7月25日にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話で、2020年の大統領選で対立候補になるかもしれない民主党のジョー・バイデン前副大統領とその息子について捜査するよう働きかけていた。

 民主党が進めた調査で複数の関係者が証言したところによると、トランプ氏は政敵に対する捜査要求と引き換えに、すでに米議会が承認していたウクライナへの軍事援助4億ドルの凍結解除を提示したほか、ホワイトハウスでの首脳会談の実現を提示したとされている。下院本会議をこれを権力乱用と認めて、大統領を弾劾訴追した。

 下院民主党が2019年9月に、トランプ氏がウクライナ大統領に何を働きかけたのか調査を開始すると、トランプ氏はホワイトハウス関係者の証言を次々と阻止した。下院本会議はこれを、議会妨害と認めて、大統領を弾劾訴追した。

【上院の弾劾権限】とは

 弾劾に関する合衆国憲法の規定はあいまいで、第1章第2条第5項では下院が「弾劾の権限を専有する」とのみ規定している。つまり、下院が弾劾の罪状について大陪審の役割を果たし、調査・起訴する。

 そして、憲法は第1章第3条第6項は「すべての弾劾を裁判する権限は、上院に専属する。この目的のために集会するときには、議員は、宣誓または宣誓に代る確約*をしなければならない。合衆国大統領が弾劾裁判を受ける場合には、最高裁判所長官が裁判長となる。何人も、出席議員の 3 分の 2 の同意がなければ、有罪の判決を受けることはない。」

*宗教上の理由などから宣誓できない場合に、これに代えて行う宣誓同様の陳述

 第1章第3条第 7 項は「弾劾事件の判決は、職務からの罷免、および名誉、信任または報酬を伴う合衆国の官職に就任し在職する資格の剥奪以上に及んではならない。但し、弾劾につき有罪判決を受けた者が、法にもとづいて、起訴、公判、判決、または処罰の対象となることを妨げない。

 1868年2月に始まった当時のアンドリュー・ジョンソン( Andrew Johnson, 1808年12月29日 - 1875年7月31日)は、アメリカ合衆国の政治家。第16代副大統領および第17代大統領を歴任)に対するものがアメリカ建国史上、大統領への初の弾劾裁判となり、この時に定まった手続きがその後も総則として引き継がれている。しかし、究極的には、今回の弾劾裁判で証拠や証人をどう扱うか、審理の期間や弁論をどうするかなどを決めるのは、共和党幹部のアディソン・ミッチェル・マコーネル Jr.(Addison Mitchell McConnell, Jr.)上院院内総務(2024年11月退任予定: 82歳)と、民主党のチャック・シューマー(Charles Ellis "Chuck" Schumer)民主党:72歳)上院院内総務ということになる。

(注12)米国の二重の危険(double jeopardy):同一の行為に関して民事制裁金と刑事処分を課すことは、一般に二重の危険には当たらないとされている(1997年Hudson vs. United States連邦最高裁判例)

(注13)トッド・ブランシュ(Todd Blsnche) :トップクラスのホワイトカラー刑事弁護人で元連邦検察官。

(注14) Michael Cohen(元トランプ氏の顧問弁護士)

 アメリカ人の元弁護士で、2006年から2018年までドナルド・トランプ元大統領の弁護士を務めた。コーエン氏はトランプ・オーガニゼーションの副社長およびトランプ氏の個人顧問を務め、しばしばトランプ氏のフィクサーと言われている。 コーエン氏はトランプ・エンターテインメントの共同社長を務め、子供の健康慈善団体であるエリック・トランプ財団の理事も務めた。 2017年から2018年まで、コーエン氏は共和党全国委員会の財務副委員長を務めた。

 トランプ元大統領は、2016年の米選挙へのロシア介入に関する特別検察官の捜査が始まった1年後の2018年5月までコーエン氏を雇用していた。 2018年8月、コーエンは選挙資金違反、税金詐欺、銀行詐欺など8つの罪状で有罪を認めた。 コーエン氏は、2016年の大統領選挙に「影響を与えることを主な目的として」トランプ大統領の指示で選挙資金法に違反したと証言した。 2018年11月、コーエン氏はモスクワのトランプ・タワー建設の取り組みについて米連邦議会委員会に虚偽を述べたとして有罪を認めた。(Wikipedia から抜粋し、仮訳)

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米国内外でのトランプ裁判の全体像について鳥瞰図かつ法的に詳しい解説に挑戦(その1)

2024-03-15 12:05:20 | 国家の内部統制

Last Updated:March 17 ,2024

 すなわち内外のメデイア記事の多くがトランプ裁判につき、誹謗中傷合戦を紹介しているものの、一部の米国のロースクールを除き法的点からの詳しい解析はほとんど行っていない。

 メデイアではトランプ氏やトランプ・オーガニゼーションに関する裁判数は民事、刑事事件で計4つと書いているのが多数である。しかし、例えば、本ブログの第Ⅲ-2章で述べるとおりニューヨーク州司法長官レティシア・ジェームズは、不動産価値を不当に水増ししたとしてトランプ前大統領・オーガニゼーションに2億5,000万ドル(約3,725億円)の損害賠償と州内での事業の禁止を求めている。その裁判は2023年10月に始まった。この関連でR&D保険詐欺問題も取り上げられている

 筆者はこのような背景にうんざりしつつ、改めて厳秘な意味で法解釈を試みようと考えた。例えば、本ブログで取り上げるジョージア州フルトン郡の検事が組織犯罪取締法である「同州RICO法(威力脅迫および腐敗組織に関する取締法(Georgia Racketeer Influenced and Corrupt Organizations :RICO) Act)」をもとにトランプ・オーガニゼーションを刑事起訴に持ち込んでいる。この起訴・裁判方法は従来のトランプ裁判法理では見られなかっただけに興味深い点が多い。これに関し、2021年1月6日の連邦議会議事堂占拠犯人らの起訴を含む裁判の一括審理の法的の有罪化の可能性等についても研究したい。(RICO法の問題点は本文や(注1)で述べた)

 また、トランプ前大統領は英国では逆に原告となった裁判で、英国高等法院(High Court of Justice)はクリストファー・スティール(Christopher Steele)氏の会社に対する風評被害とデータ保護の権利侵害に対する訴えを却下し、スティール氏に訴訟費用として30万ポンド(約2,670万円)を支払わなければならないとの判決を2024年2月1日に下した。(この裁判で原告側が前述の米国RICO法を援用をして、却下されている点が興味深い)

 さらにいうと大統領選挙と並行して進められるトランプ裁判特にスーパー・ロイヤーをうたい文句にトランプ元大統領の弁護士となった弁護士各位の弁論技術を見極めたいというのも本音である。また、司法取引後 トランプ氏から離反した多くの著名な弁護士らはどこに行ったのか。

 最後にもう1点、11月の大統領選挙に絡んで両候補の社会保障費の考え方の差をあえて取りあげる。この問題は司法判断以上にきわめて重要な投票判断材料となろう。

 これまで筆者ブログで取り上げたトランプ裁判について、以下のとおり整理する。その都度の断片的解説という問題があるが、少なくとも一般メデイア記事に比べ読むに堪えられよう。

 さらに2019年12月以降の連邦議会のトランプ前大統領に対する弾劾裁判の失敗もなおトランプ氏裁判に大きな影を投げかけていることは間違いない。((注11)参照)

2022.8.27 「フロリダ州連邦地裁の治安判事がドナルド・トランプ氏の領地マー・ア・ラーゴでのFBI捜査宣誓供述書の公開を命じた」

2022.11.7「ニュ―ヨーク州最高裁判所裁判官はニューヨーク州司法長官の要請に基づくトランプ一家(Trump Organization)の財務報告等を監督する独立した監視人(monitor)の任命を承認」

2023.1.15「米メリック・B・ガーランド連邦司法長官は1月12日、バイデン大統領の機密文書問題の特別顧問としてメリーランド地区の元米国検事ロバート・ハー氏を任命したと発表」

2023.12.19「二ューヨーク州上訴裁判所は民事詐欺裁判でトランプ前大統領が申し立てた(法廷で審議中の事柄の)発言禁止令を支持」

2023.12.26「2024年秋の米大統領選挙や同年3月の一部裁判の最高裁判決等を控えスピードアップするトランプ裁判の動向と争点」

 今回は4回に分けて掲載する。

トランプ裁判の鳥瞰レポート

Ⅰ.国際法曹協会(International Bar Association) 米国特派員たるフリーランスの記者ウィリアム・ロバーツ氏のレポート「裁判中のトランプ–と法の支配–」(2023年12月日)仮訳する。

 元米国大統領ドナルド・トランプ氏は、大統領再選挙に立候補している一方で、4つの刑事訴追と民事詐欺裁判に直面している。IBAグローバルインサイト は法の支配への影響を評価するレポートをまとめた。

 2023年11月中旬に米国ニューハンプシャー州で行われた選挙集会で、ドナルド・トランプ前大統領は、「アメリカを破壊するために嘘をつき、選挙で不正行為をする」敵対者を「害虫」のように「根絶する」と約束した。この文言は、トランプ大統領が再選されれば司法省を利用して現米国大統領ジョー・バイデン氏らを追及するという脅しに不気味な光を投げかけた。

 これは、2024年の大統領選の共和党候補を獲得しようとしているトランプ前大統領の最新の攻撃路線だ。アイオワ州とニューハンプシャー州では期日前投票が2024年1月に予定されており、米国大統領選挙まで1年を切っている。 刑事訴追と民事訴訟に直面し、トランプ前大統領の選挙戦での発言はますます過激になっている。 例えば、彼は自分を起訴したワシントンD.C.の米国連邦特別検事(US special Counsel )ジャック・スミス(Jack J.Smith)氏を「気が狂っている人物」と呼んだ。(注2) 

 トランプ氏は現在、合計4つの刑事訴追と連邦および州当局によって提起された1つの民事詐欺事件で裁判にかけられている。事件は広範囲に及び、元大統領の内外の行動に移る。トランプ氏は全面的にこれら告訴に異議を唱えた。これら組み合わせで、トランプ氏の主張は民主主義の規範と法の支配を公然と無視する危険な扇動者の絵を描いている。

(1)わが国の司法・政治システムは、ここ米国でいくつかの重要な方法で失敗した

 クリス・エデルソン(Chris Edelsons)(ワシントンD.C.アメリカ大学・政治学部・有期助教)Assistant Professor of Government, American Universityは次のとおり述べた。

Chris Edelsons氏

 「ここ米国では、私たちのシステムはいくつかの重要な点で失敗した。わが国が機能し健全な自由民主主義が行われていれば、ドナルド・トランプ氏が1月6日の連邦議会議事堂襲撃を奨励し称賛し、その後、下院で弾劾されたとき、彼は罷免されていただろう。しかし、彼はそうならなかったので、我われに残されたのは、彼の責任を問う方法としての裁判訴追だけである。」

 さらのエデルソン氏は「米国の選挙制度では、ドナルド・トランプ氏がまだ大統領選に立候補することが認められていることが一つの理由だが、次に何が起こるかは不透明だと(トランプ氏が)望んでいるのは、選挙に勝って、これらの刑事事件での責任を回避できることだ」と彼は言う。 「彼は刑務所から逃れるために戦うだろう。彼は刑務所から出ないための最善の道は選挙に勝つことだと期待しており、それができる可能性はある」と付け加えた。

 ニューヨーク州では、トランプ大統領がアダルト映画スターのストーミー・ダニエルズ(Stormy Daniels)氏とプレイボーイのモデル、カレン・マクドゥーガル(Karen McDougal)氏への口止め料の支払いを隠蔽するために業務記録を改ざんした疑いで州により起訴されているが、トランプ氏はこれを否認している。この裁判は2024年3月下旬に開始される予定である。

 一方、ニューヨーク州司法長官レティシア・ジェームズ(New York State Attorney General Letitia A.James)氏は、不動産価値を不当に水増ししたとしてトランプ前大統領に2億5000万ドル(約372億5,000万円)の損害賠償と州内での事業の禁止を求めている。 その裁判は2023年10月に始まった。

Letitia A.James 氏

 ジョージア州では、フルトン郡地方検事のファニ・T・ウィリス(Fani Taifa Willis)氏が、同州の「威力脅迫および腐敗組織に関する取締法(RICO Act)」に基づき、トランプ氏とその他18名を告発した。 トランプ元大統領の元法律顧問のうち3人目と4人目の被告が罪状を軽減して有罪を認め(司法取引)、国を代表して真実を証言することに同意した。 トランプ氏と他の被告(全員が無罪を主張)の公判期日はまだ設定されていない。

 スミス連邦特別検事はトランプ氏に対して2つの別々の告訴を提起しており、1件目は機密文書の取り扱いに関わるフロリダ州南部地区で、2件目は2020年大統領選挙を覆そうとするトランプ氏の試みに関連してワシントンD.C.で行われている。

 機密文書事件の裁判は2024年5月に始まる可能性があるが、延期される可能性がある。 選挙不正問題の裁判は3月上旬に始まる可能性がある。 トランプ前大統領は両方の疑惑を否定している。

(2) 無駄のない卑劣な起訴

 2020年の大統領選挙結果を覆そうとするトランプ元大統領の試みに関連した2つの事件(1つは連邦レベル、もう1つは州レベル)は、おそらくアメリカ国民にとって最も政治的に爆発的な事件である。 2020年の全米一般投票ではジョー・バイデン大統領がトランプ大統領の7,420万票に対して8,130万票の差で勝利したが、米国の選挙制度の古風な18世紀の構造により、実際の選挙戦はさらに狭かった。

 米国大統領は直接選出されるのではなく、1789 年に合衆国憲法に基づいて設立され、選挙人団(United States electoral college)内の「選挙人」を人口に基づいて各州に割り当てる機関である選挙人団によって選出される。2016年にトランプ氏が勝利したミシガン州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州で勝利し、バイデン氏は選挙人獲得数306人、トランプ氏の232人で勝利した。バイデン氏は、これまで共和党に投票していたアリゾナ州とジョージア州でも勝利した。これら5つの激戦州ではバイデン氏が僅差で勝利し、合計27万7,000票を獲得した。もしこれら5州のうち3州が逆の方向に進んでいたら、トランプ氏は一般投票で敗れたものの、ホワイトハウスを維持していたかもしれない。

 トランプ氏と彼の政治的同盟者は、州と地方レベルでの選挙結果に異議を唱える76の訴訟をもたらした。2人を除くすべてが証拠の欠如のために解雇されたか、またはメリットに失敗した。成功した2人は未成年であり、詐欺を主張しなかった。

 それにもかかわらず、トランプ氏は選挙が不正に決定されたという根拠のない主張を展開した。彼は、連邦議会が選挙人投票の集計と検証を行うための正式な議会を開会する予定だったその日に、ワシントンD.C.で支持者の大規模な集会を組織した。 数千人の暴力的な親トランプデモ参加者が国会議事堂の警察のバリケードを突破し、議会議事堂に侵入し、議事は数時間の遅延を余儀なくされた。 2022年夏の米下院1月6日委員会に提出された証言によると、同氏のチームは主要州の偽の選挙人を代用しようとしたという。

 元米国大統領が数多くの重大な容疑で刑事告発され、係争中であることは米国歴史上、本当に異常なことだ。

 (3) ジョン・T.ショー(John T. Shaw) (南イリノイ大学ポールサイモン公共政策研究所(Paul Simon Public Policy Institute)所長)の発言

John T. Shaw 氏

 1年に及ぶ議会調査でトランプ氏の行為に関する忌まわしい証拠が山ほど明らかになった後、特別検事スミス氏は2023年8月1日に元大統領に対して4件の訴追を行った。 トランプ氏は米国に対する詐欺を共謀し、有権者の権利を剥奪し、公式手続きを妨害しようとした罪で起訴されている。

「最も重要な容疑は選挙人投票の認証を阻止する陰謀行為だ」とワシントンD.C.の法律事務所カールトン・フィールズの株主で元米国司法省検事のジーン・ロッシ(Gene Rossi)氏は述べた。

 

 Gene Rossi 氏

「ロッシ氏はこの起訴はドナルド・トランプ個人に対するものである。 これは無駄がなく卑劣な起訴であり、彼は非常に深刻な結果に直面している。2024年11月に行われる大統領選挙前に、トランプ氏が陪審によって有罪とされる可能性がある。元大統領がこれほど重大な罪に問われていること自体、歴史的で注目すべきことであり、まったく衝撃的だ」と述べた。

 2021年1月6日の連邦議会暴動からほぼ3年間で、議事堂侵入に関連した罪で1,200人以上が起訴された。400人以上が暴行や法執行妨害の罪で起訴された。右翼団体「プラウド・ボーイズ(Proud Boys)」(注3)(注3-2)や「オース・キーパーズ(Oath Keepers)」(注4)の主催者や国会議事堂を襲撃した暴徒の先兵らに10年以上の長期拘禁刑が言い渡された。 「彼らの主な目的は、議会、つまり下院と上院が(1月6日)に任務を遂行するのを阻止することであった」とロッシ氏は言う。「あの日、元大統領の指示と彼の激励と熱烈な支援を受けて国会議事堂に押し入った人々は、彼らがしたかったことは[…]議員たちに危害を加えるまではいかなくても、議員たちを脅かして白昼の光を奪うことだった」

 デモ参加者が国会議事堂に侵入したとき、マイク・ペンス元副大統領は選挙人集計を主宰していた。 大統領のツイートに反応して、親トランプ派の群衆は「マイク・ペンスを吊るせ」と叫んだ。 国会議事堂の敷地内には間に合わせの足場が建てられた。 約114人の警察官が負傷し、中にはクマよけスプレー、野球バット、盾、槍を振り回したデモ参加者との白兵戦で重傷を負った人もいた。

Former Vice President Mike Pence氏

 現在、ワシントンD.C.でのトランプの連邦裁判は、連邦地方判事のターニャ・S・チュトカン(US District Judge Tanya S Chutkan.)氏が主宰している。 バラク・オバマ前大統領によって任命されたチュトカン氏は、トランプ大統領に対し、「顧問弁護士」による弁護(被告が専門家の弁護に従ったと主張する、有罪を回避するための危険な戦略)につき、申し立てられた犯罪の実行につながる法的アドバイスを利用するつもりかどうかを2024年1月15日までに裁判所に通知するよう命じた。同裁判は、米国の15の州と2つの準州で共和党大統領候補の予備投票が行われる「スーパー・チューズデー」の前日である3月4日に始まる予定である。

Tanya S Chutkan氏

 重要なことは、またトランプ氏は、2020年の大統領選挙を覆そうとする試みに関連して、ジョージア州フルトン郡で非常に深刻な恐喝罪に直面していることである。同州の大陪審が提出した41件の広範囲にわたる起訴状は、偽の選挙人投票を連邦議会に提出し、選挙を不正に覆そうと共謀した罪でトランプ氏と他の18人を起訴した。 おそらくこの事件は今後の大統領選挙戦で大きく取り上げられることになるだろう。トランプ氏はこの不正行為を否定している。

 つまり、ジョージア州には連邦法以上に広範なRICO法があり、フルトン郡地方検事のファニ・T・ウィリス(Fani T.Willis)氏に対し、州の選挙結果を取り消すためにトランプ大統領に加わった多数の共謀者容疑者を起訴する裁量権を与えている。 RICO法では、ウィリス被告が他の州で被告がとった可能性のある行為を含め、幅広い事実を証拠として提出することが認められている。

(4) 権力を握る(Going to stay in power)

 トランプ裁判の重要な進展として、元トランプ弁護士のケネス・j・チェセブロ(Kenneth John Chesebro) (注5)、シドニー・パウエル(Sidney Powell) (注6)、ジェナ・エリス(Jenna Ellis) (注7)へのインタビュー’の検察官のビデオ録画の抜粋が、3つの司法取引に達した後、オンラインで公開された。

Kenneth John Chesebro 氏

Sidney Powell 氏

Jenna Ellis 氏 (右)

*ジョージア州検察局は去る2023年10月20日、トランプ前大統領らが選挙結果を覆すために共謀したとされる事件で、起訴対象者の一人、ケネス・チェスブロ弁護士(62歳)が有罪を認め、今後の裁判でトランプ氏らにとって不利な証言をすることに同意したと発表した。

 エリスは、2020年12月にホワイトハウスのクリスマスパーティーでトランプ大統領補佐官のダン・スカヴィーノ Jr.( Daniel Scavino Jr.)との出会いを語った。エリスはバイデンの勝利に対する法的挑戦が失敗したことをスカヴィーノに後悔を申し出た。スカヴィーノ氏は、トランプは関係なくホワイトハウスに滞在するつもりだったと答えた。

Daniel Scavino Jr.氏

 ジョージア州の刑事訴訟におけるトランプ裁判の主任弁護士であるスティーブ・サドウ(Steven H.Sadow)氏は、エリスが‘絶対に意味のない’を詳述した‘のプライベート会話’を呼び出した。

Steven H.Sadow 氏

 残りの15人の被告の1人を代表する主任弁護人は、報道機関にビデオを提供したことを認めた。ウィリス検事は事件の保護命令を求め、裁判官はこれに同意した。

 ハーバード大学ロースクールで憲法を学んだチェセブロ弁護士は、16人のジョージア共和党がトランプ氏が同州で勝利し、自らを宣言したと主張する計画を考案し、調整したとされている。

 チェセブロ氏は州の当初の陰謀容疑を認めず、代わりに虚偽の文書を提出したことによる単一の重罪の容疑で有罪を認めた。チェセブロ弁護士は、検察官との契約では、彼がいかなる種類の偽の選挙人計画やそのようなものの構築者でも決してなかったことを証明していると述べた。

 パウエル氏は、2020年のトランプの敗北後、外国の行為者がトランプからバイデンに電子投票システムへの投票を反転させる方法を設計したという陰謀論を促進した。彼女はトランプの法務チームに参加し、トランプとのホワイトハウス会議に参加し、トランプの誤った主張を推進する上で重要な役割を果たした。

 ジョージア州フリントン郡地方検事ウィリス氏は、裁判が2024年半ばまで開始されないと予測しており、大統領選挙の最中に裁判が継続されることを意味し、2024年後半または2025年初頭までは結論が出ないと考えている。

 仮にトランプ氏が共和党の指名を獲得し、2024年の総選挙に勝利した場合、彼は2025年1月20日に大統領になる。その場合, トランプ氏は、州検察官が選出または現職の大統領に対して起訴することにより米国政府の事業に干渉することを許されるべきではないという強い憲法上の議論を利用できるであろう。

 特に珍しいのは、トランプ氏が対立する当事者間の平和的な権力の移転を阻止しようとする罪で起訴されていることある。そしてその後、彼の検察は共和党の有権者の間で彼を助けたように見えるがが、彼の裁判の結果は彼の立候補と総選挙での党のための災害を意味するかもしれない。

 トランプ氏は、大統領選挙の干渉があったことを明示的に主張しており、自身の裁判にかかる裁判官、検察官、書記官を政治的に偏っているとして攻撃している。2023年6月、彼はバイデン大統領を米国連邦司法省を兵器化していると非難した。それは本当に私たちの民主主義の本質、民主主義の核心、つまり平和的な権力の移転に行く。それは250年の間アメリカのシステムの魔法の1つあった、とジョン・T.ショー(John T. Shaw)氏は以下のとおり述べた。

 「米国には、行政機関が司法省と検察官を使用して政治的反対者を追いかけることができないことを明確にする法律がある」とフIBAのフォーラム共同副議長(Secretary, IBA Rule of Law Forum)ロバート・バーンスタイン氏は個人的な立場でコメントする。現職の大統領が司法省を武器にしていると誰かが言ったときはいつでも、それは私たちの司法制度の公平性、そして私たちの法執行機関全般に対する信頼を損なう, これは法の支配に対する脅威である」

(5)トランプ裁判はフロリダからニューヨークへ

 一方、トランプ氏は他の理由で法的措置に直面しています。元大統領, 元大統領が取った何百もの機密文書を不適切に処理した罪で、2023年8月に個人補佐官とMar-a-Lagoのボデーマンが起訴された–政府が違法に– ホワイトハウスはフロリダ州パームビーチのマール・ア・ラゴ(Mar-a-Lago)にに向かい、全員が無罪を主張した。2017年から2021年まで大統領として、トランプは定期的な諜報ブリーフィングから受け取った秘密資料を含め、数十箱の紙資料と記念品を蓄積していた。

 大統領の記録を保持する責任を負う米国の機関である国立公文書館が資料を要求したとき、トランプはいくつかを返却した, しかし、他の人々を守り、彼自身の弁護士による彼が持っていたものをカタログ化して返却するためのフォローアップの試みを回避したとされている。

 FBIは2023年8月にマール・ア・ラゴを捜査のため襲撃し、102の秘密の米国文書を押収した。明らかに、国家安全保障文書について話しているとき、それは大きなノーノーです’、現在ワシントンDCで実務訴訟担当者である司法省の元最高検察官であるポールペルティエは言います。

 IBA 法の支配フォーラム共同副議長(Secretary, IBA Rule of Law Forum)のロバート・ステイーブン・バーンスタイン(Robert Steven Bernstein)氏は以下のとおり語った。

 「現在起こっているように、法的プロセスの信頼性と正当性が疑われるとき、それは私たちの司法制度全体への信頼を損なう風土を作り出す。」

 Mar-a-Lagoの文書事件は2024年5月までに裁判にかけられるとは予想されておらず、おそらくさらに遅れるであろうし、選挙後まで遅れる可能性は十分にある。大統領であった2020年にトランプによってベンチに指名された米国地方裁判所のエイリーン・キャノン(Aileen Cannon)裁判官が事件を処理している。彼女は、トランプの弁護側に、事件の根底にある機密文書を検討する十分な時間を与える意欲を示した。これは、別個の複雑な一連の米国の証拠手続きを呼び起こす。他の裁判の場合と同様に、トランプは不正行為を否定した。

 一方、ニューヨークでは、トランプの民事詐欺事件で非陪審裁判を監督しているアーサー・F・エンゴロン州裁判官が, これはトランプ側から控訴されているが、トランプ・グループが銀行や保険会社に虚偽の財務諸表を提出したことをすでに決定している。訴訟で問題となっているのは、どのような救済策と罰則を適用すべきかである。

 トランプ氏と彼の3人の大人の子供たちは、事件の裁判で証言するために裁判所に呼ばれた。公判では、トランプ氏は裁判官に偏見があると非難し、ニューヨーク州司法長官ジェームズ氏を攻撃し、彼女を「政治的ハック(political hack)」と呼んだ。特に、裁判官はトランプがソーシャルメディアで彼の法務書記官を攻撃することを禁止する「ギャグ命令(裁判にかかわった参加者による情報またはコメントを制限する裁判所命令)」を出した、そしてそれはトランプがそれに違反した場合、10,000ドル(約148万円)の罰金を引きだした。(注7-2)

(6)権威主義対民主主義

 トランプ氏が2024年に共和党の大統領候補になるかどうかの最初の実際のテストは、1月15日にアイオワ州中西部で行われる。共和党員は、州全体のコミュニティセンターや地元の講堂で‘コーカサス’として知られる党会議に出席する。世論調査では、トランプ氏がアイオワ州で最も近いライバルであるフロリダ州知事のロンデサンティスと元サウスカロライナ州知事および国連大使のニッキーヘイリー氏よりも強いリードを示している。

 これは、ドナルド・トランプが提示する多くの前例のない状況の1つである。アイオワ州デモインにあるドレイク大学の政治学部教授兼共同議長であるレイチェル・ペイン・コーフィールド(Rachel Paine Caufield)氏は、トランプ氏はこれまでに見たことのない’とは別の大統領候補者である。彼はまさにこのノミネートフィールドのフロントランナーである。

Rachel Paine Caufield氏

 コーフィールド氏は「トランプ氏に対する起訴状は、少なくとも最初は、ドナルド・トランプ氏を助けているようである。ニューヨークでの最初の起訴により、彼は世論調査で批判を跳ね返ったという。彼の後に来る設立エリートがいるという考えに彼はよく仕えているようで、彼らは政治的に動機付けられており、彼らは悪意を持っている。これらの犯罪容疑者の顔写真(mug shot)」がジョージア州フルトン郡から出てきたとき、それはドナルド・トランプを傷つけなかったと彼女は付け加えた。すなわち、それはドナルド・トランプを助け、彼は犯罪容疑者の顔写真(mug shot)」で選挙資金を調達した」

 世論調査では、共和党の有権者の最大70%が、トランプが2020年の大統領選挙に勝利したとまだ信じており、2024年に再びそれを実行できると考えている。その理由の1つと米国の政治情勢の厄介な側面の1つは、トランプ氏と彼の基地の間のフォックス・ニュース・テレビや、彼の方針を踏襲し続けている政治家などの支持メディアの自己強化フィードバックループである。ジョン・T.ショーショー氏は、2021年1月6日に米国議会議事堂にいて、事件を目撃したが、それでもトランプを支持している主要な政治家がいると語った。彼らは中世の戦闘が展開するのを見て、誰がそれを引き起こしたかを正確に知っている’とショーは述べた。‘彼らの即時の反応は非常に批判的で非常に内臓的でした。しかし、彼らは最も重要なことは、基地がどこにあるかを理解することであると決定した。そして共和党の基地がトランプを許すことをいとわないとき,この神聖な規範の違反でさえ、議員たちは一列に並んだ。

 アン・ランバーグ(Anne Ramberg)氏は、IBAの人権研究所評議会の共同議長である。法の支配に基づいて構築された民主主義は、米国では深刻な[危険]である。これまでのところ、チェックとバランスは司法府によって支持されている。しかし、トランプ氏は民主主義と法の支配を妨害するためにできる限りのことをしている。その結果はもちろん、米国と民主主義世界全体にとって壊滅的なものである。[...]より多くの独裁者が大規模で重要な国で権力を握るようになることを踏まえると、それは危険な進展である。いくつかの国で民主主義が弱体化しているという明らかなパターンがある。

 アイオワの後、共和党の大統領指名コンテストはすぐに展開される。有権者は、2024年1月23日にニューハンプシャー、2月8日にネバダ、2月24日にサウスカロライナの投票に行く。コロンビア特別区、アイダホ州、ミシガン州、ミズーリ州、ノースダコタ州が3月の第1週に投票する。3月5日までに– ‘として知られるスーパー・チューズデイ共和党の指名大会への代表のほぼ半分が決定される。

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(注1) 川崎友巳「アメリカ経済刑法における RICO 法違反の罪の意義」(同志社法学 71巻6号[通巻409号](2020))参照。なお、同論文は、ジョージア州RICO法(注17)参照)には言及していない。

(注2) On November 18, 2022, Jack Smith was appointed by Attorney General Merrick B. Garland to serve as the Special Counsel by Order No. 5559-2022.

連邦司法省のJack J.Smith特別検事に関するリンクサイト

(注3) プラウド・ボーイズ( Proud Boysとは、アメリカ合衆国およびカナダの男性のみによって構成されるネオ・ファシズム思想を有するオルタナ右翼団体。カナダ公安省によりテロ組織登録されている。

アメリカで2021年1月にあった連邦議会襲撃事件をめぐる裁判で、極右団体「プラウド・ボーイズ」の元リーダー:ヘンリー・"エンリケ"・タリオ(Henry "Enrique" Tarrio,Henry:40歳)に2023年9月5日、扇動共謀罪などで拘禁刑22年が言い渡された。同国の民主主義の中枢を襲ったこの事件の首謀者に対する量刑としては、これまでで最も重い。(2023年9月6日BBC news日本語版から抜粋)

*2023.5.5 BBCnews: 2021年1月6日の米連邦議会襲撃事件について、首都ワシントンの連邦地方裁判所の陪審は5月4日、極右団体プラウド・ボーイズの4人に対して扇動共謀の罪で有罪の評決を下した。同じ罪で起訴されていた5人目についても、同罪では無罪評決を出したものの、他の複数の重罪で有罪と評決した。

連邦議会襲撃事件では、2020年米大統領選でジョー・バイデン氏の当選を認めず、選挙結果を覆そうとしたドナルド・トランプ氏の支持者らが、バイデン氏の当選認定手続きを阻止しようと議事堂に乱入した。プラウド・ボーイズは当日、100人以上がこの襲撃に参加し、大きな役割を果たしたとされる。

*2023.9.1 BBCnews:および米連邦司法省のリリース

 アメリカで2021年1月にあった連邦議会襲撃事件をめぐる裁判で、極右団体「プラウド・ボーイズ」のリーダーのジョー・ビッグス(Joe R.Biggs 39)は2023年8月31日、拘禁刑17年の刑と監視付き釈放36か月の判決を受けた。また共同被告ザカリー・レール(Zachary Rehl)被告( 38歳)は拘禁刑15年と監視付き釈放36カ月の判決を受けた。

 2人は2021年1月6日の連邦議会議事堂侵入に関連した扇動陰謀およびその他の容疑であり、彼らの行動は、2020年大統領選挙の認定に必要な選挙人票の確認と集計の過程にあった米国議会の合同会議を混乱させたというものである。

 首都ワシントンの連邦地裁で開かれた裁判で、検察側は陸軍退役軍人で陰謀論サイト「インフォウォーズ」の特派員だったビッグス被告について、議会襲撃の「扇動者」だったと主張していた。同被告は2023年5月、扇動共謀罪(18 U.S. Code § 2384 - Seditious conspiracy(注3-2)などで有罪評決を受けていた。

Joe R.Biggs ジョー・ビッグス被告(BBC new から抜粋)

(注3-2) 扇動共謀罪(18 U.S. Code § 2384 - Seditious conspiracy): いずれかの州または準州、あるいは米国の管轄下にある場所で、二人以上の人物が、米国政府を打倒、鎮圧、武力破壊すること、または米国政府に対して戦争を起こそうと共謀した場合、 またはその権限に武力で反対すること、または米国法の執行を武力で阻止、妨害、遅延させること、あるいはその権限に反して米国の財産を武力で押収、奪取、占有したときは 、彼らはそれぞれ、本編に基づいて罰金を科されるか、20年以下の拘禁刑、あるいはその両方が科せられる。(コーネル大学ロースクールの解説2/6(109)を仮訳)

(注4) Oath Keepers:護憲派(を自称する極右団体)。“oath”(誓い)は、アメリカ合衆国憲法に記された国民の権利、とりわけ「政府の横暴に対して実力で抵抗する権利」への誓いを意味する。彼らの目には、オバマ政権による医療保険改革も金融業規制も「政府の横暴」と映っている。(Imidas  から抜粋)

(注5) ケネス・j・チェセブロ(Kenneth John Chesebro) 

(注6) テキサス州の弁護士、シドニー・パウエル氏(68歳)は 2020年の選挙で敗北した後、ドナルド・トランプ前大統領の法務チームに加わった, ジョージア州の選挙干渉事件でいくつかの軽犯罪につき有罪を認めた。

 フルトン郡フルトン郡上位裁判所のスコット・マカフィー裁判官の前に現れ、彼女は6年間の保護観察を行い、 6,000ドル(約88万8,000円)の罰金を支払うこと、 2,700ドル(約39万9,600円)をジョージア州国務長官の事務所に支払うこと、ならびに共同被告たる裁判で誠実に証言することに同意した。

 パウエル氏は選挙詐欺に関する陰謀論を広めるのを助けた。当初、パウエル氏はジョージア州の訴訟で7件の重罪容疑に直面した。これには、選挙詐欺を犯すための威力脅迫および腐敗組織に関する陰謀が含まれ。検察官との交渉により、パウエル氏は元の容疑で有罪とされた場合に直面したよりもはるかに低い罪で判決が下された。

 パウエル氏は、彼女の裁判のための陪審員の選択が始まる予定の1日前に有罪の嘆願書に入った。彼女は起訴状で指名されたトランプ氏を含む19人の被告の1人であり、司法取引を受け入れた2人目である。

(注7)元トランプ氏キャンペーン弁護士ジェナ・エリス(Jenna Ellis) 氏は ジョージア州の選挙転覆事件で2023年10月23日に有罪を認め、フルトン郡の検察官–過去1週間で3番目の有罪の嘆願に協力した。

 アトランタ裁判所での予定外の公開審理で、エリス氏は虚偽の発言を支援および禁ずる1カウントにつき有罪を認め, 選挙に起因する重罪の背景は、エリスと他のトランプ氏の弁護士が2020年12月にジョージア州の議員に売り出したことである。

 彼女は5年間の保護観察の判決を受け、 5,000ドル(約74万円)の賠償金を支払うよう命じられた。

 エリス氏は10月23日に有罪を認めながら裁判官に涙の声明を発表し、2020年の選挙を覆そうとするトランプ氏の前例のない試みへの彼女の参加を否定した。

 エリス氏、チェセブロ氏、パウエル氏はすべて、将来の裁判で検察に代わって証言することに同意した。裁判ではじきだされたこれらのかつてのトランプ弁護士は現在、主要なトランプ氏の悪の元凶になるために軌道に乗っている。彼らはすべて弁護士であり、起訴側に2020年に舞台裏で起こっていたことに光を当てることができる。

 検察官にとって、もともと19人を請求するという 広大な裁判ケースで。これまでのところ、4人が有罪を認めている。(2023.10.24 CNN new から抜粋、仮訳)

(注7-2) 2023.9.16 BBC news 「米特別検察官、トランプ前大統領による裁判関係者の威圧や中傷を禁止するよう裁判所に請求」

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世界の平和にとって1秒たりとも気が抜けない激務を担うオースティン国防総省長官の緊急入院・手術を巡る米国の軍事・防衛態勢の継続・維持問題

2024-01-30 07:25:45 | 国家の内部統制

Last updated:January 29,2024

 筆者の手元に米国防総省からのリリースが複数届いている。要約すると国防総省オースティン長官(70歳)の前立腺がんによる緊急人院とその後の回復、トップ軍幹部の動向、野党共和党を含むホワイトハウスへの批判、国防長官の執行権限の委譲の法的問題等であろう。この問題に関する世界の情報メデイアが交錯している。いずれにしても大統領選挙を控えバイデン政権の不安定さや透明性の欠如批判に応える責任はあろう。

 この問題は自衛隊幹部の執務不能時における非常事態問題は東シナ海等の紛争問題や北朝鮮問題を抱えるわが国でも他山の石とすべき重要問題であることは言うまでもない。

 米国の国防総省はホワイトハウスに次ぐ巨大かつ重要組織であり、本ブログでも、わが国で日頃詳しい解説がない分野だけに立ち入った詳しい解説を心がけた。また、わが国のシビリアン・コントロールの在り方も併せて論じたい。

  本ブログの執筆中に米国と英国はイエメンにあるフーシ派武装勢力の標的約十カ所への攻撃を開始した旨の情報が配信されてきた。まさに重要な軍事決断時期であったといえる。

 国防総省は1月29日、以下のリリースを行った。「ロイド・J・オースティン国防長官は本日、国防総省での勤務に復帰した。 同長官は、2024年1月15日にウォルター・リード国立軍事医療センターから退院して以来、自宅で職務を行っていた」

 なお、国防総省は1月29日、以下のリリースを行った。「ロイド・J・オースティン国防長官は本日、国防総省での勤務に復帰した。 同長官は、2024年1月15日にウォルター・リード国立軍事医療センターから退院して以来、自宅で職務を行っていた」

Ⅰ.18日、国防総省報道官のパット・ライダー少将(Major General Patrick S. Ryder)が撮影禁止、記録のみの筆記録(Transcripts)プレス・ブリーフィングの概要

Patrick S. Ryder少将

 私が最初に行いたいのは、記者の多くが持っている今後の予定(timeline)に関する質問のいくつかに対処することである。 次に、長官の健康状態に関する状況の最新情報を提供する。

 12月22日(金)、国防長官ロイド・J.オースティンIII(Secretary of Defense Lloyd J. Austin)は、ウォルターリード国立軍事医療センター(Walter Reed National Military Medical Center))で選択的医療処置を受けた。彼の手続き中および彼の入院中に、彼は特定の運用権限を国防副長官に移管した。その後、1223()にいったん退院し、休暇中も自宅で仕事を続けた。

 11()の夕方、彼は激しい痛みを経験し始め、救急車でウォルターリード国立軍事医療センターに移送され、そこで集中治療室に入院した。彼は意識はあったが、かなり苦痛であった。その夜、彼は医師による検査と評価を受けた。

 1月2日(火)の午後、長官の状態と医学的アドバイスに基づいて, 国防長官の特定の任務の権限移譲にかかる関係法(10 USC 132)201031付け 大統領令 EO13533 (Executive Order 13533)「国防総省内での継承命令の規定」にもとづき、国防総省キャスリーン・ヒックス国防副長官(Deputy Secretary of Defense Kathleen Anne Holland Hicks  )(筆者注1)に移管された。長官および副長官のスタッフと合同スタッフは、定期的な電子メール通知手続きを通じて移管が行われたことを通知された。

Kathleen H. Hicks 副長官

 1月4日(木)、副長官と国家安全保障顧問(National Security Advisor)は、長官から長官の入院について通知を受けた。国防長官のジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官(National Security Advisor ,Jacob Jeremiah Sullivan) (筆者注2)はインフルエンザで病気になり、これらの通知が遅れた。現在、ホワイトハウスと議会の通知を含めるために、これらの通知手順を改善する方法を検討している。

Jacob Jeremiah Sullivan 氏

 1月4日の午後、副長官と国防長官の大統領補佐官は、公式声明の起草と議会のアウトリーチに直ちに従事し始めた。また副長官は、1月5日にワシントンDCに戻るための緊急時対応計画を立て始めた。しかし、副長官は同日午後、長官が1月5日に完全な通信能力と関連する運用上の責任を再開する準備をしていることを知らされた。したがって、副長官は暫定的に最良のコミュニケーション姿勢を確保するために適切な場所に留まった。

 国防長官の権限移管にかかる法律「10 U.S.C. § 132(b) 」(筆者注3)準拠し、および大統領令EO 13533「国防総省内での継承命令の規定」により、特定の状況下では、国防副長官が国防長官の代理を務め、その権限を行使するものとする。

 10 USC 132(b)と一致し, ヒックス副長官は、この期間に部局の日常的な運用および管理の決定を行い、完全に承認され、他の軍事問題について大統領を支援する準備ができていた。

 1月5日の午後、国防総省の長官と他の首席補佐官が国防長官の大統領補佐官から通知を受けた。

 オースティン長官は1月5日の夕方に任務を再開した。

 オースティン長官は現在、ウォルターリード国立軍事医療センターに入院しており、元気で順調に回復している。彼はもはや集中治療室にいないが、病院のよりプライベートな地域で回復にあったている。彼は体調には不快感を経験し続けているが、彼の予後は良好である。

 1月5日の夜に職務を再開して以来、長官は運用上の最新軍事情報を受け取り、必要なガイダンスを提供してきた。彼は必要な安全な通信機能に完全にアクセスでき、国防総省の日常業務として世界中で監視し続けている。

 また、ヒックス副長官、統合参謀本部議長であるCQブラウン・ジュニア大将(Chairman of the Joint Chiefs of Staff Gen. Charles Q. Brown, Jr.)、および上級スタッフとも密に連絡を取り合っている。

Gen. Charles Q. Brown, Jr.大将

 1月8日、彼は大統領デイリーブリーフ(PDB)(筆者注4)と運用アップデートを受け取った。彼が自分の回復に焦点を当てている間でも、彼は本日一日中、部局とホワイトハウスの上級指導者と接触することを期待している。

 現在、彼の退院の具体的な日付はまだ決まっていないが、長官が利用可能になった時点で、長官の健康、執務等ステータスに関する最新情報を提供し続ける。

 また、オースティン長官が透明性の問題について責任を負ったことを強調したいと思う。そして、同省は私たちの通知手順を改善するための措置を講じた。

 1月2日の午後、私は広報担当国防次官補 (ATSD (PA)(筆者注5)から、長官が入院していることを知らされた。彼には提供する追加情報がなかった。しかし、私はもっと学び、より以前に国民の承認を求めるべきだったと認識している。

 したがって、今回の経験から学ぶことをお詫び申し上げる。あなたが私たちに期待する基準を満たすために、私はできる限りのことを行う。1月8日遅くに国防総省報道協会と面会し、さらに話し合い、フィードバックとアドバイスを受けることを楽しみにしている。また、国防総省記者団から軍事記者・編集者協会などから受け取ったフィードバックにも感謝する。

 国防長官と国防総省にとって、私たちが奉仕するアメリカ国民の信頼ほど重要なものはない。そして我々は毎日その信頼を獲得し、それに値するために一生懸命働き続ける。

 1月12日国防総省の追加リリースを仮訳する。

 パット・ライダー少将(Major General Patrick S. Ryder)は、国防長官ロイド・J.オースティンIII(Secretary of Defense Lloyd J. Austin)の健康状態について次のように最新情報を提供した。

 オースティン長官は引き続きウォルターリード国立軍事医療センターに入院しており、健康状態は良好である。

  彼はDODの上級スタッフと連絡を取り、必要な安全な通信機能に完全にアクセスし、世界中の国防総省の日常業務を監視し続けている。

 長官は今週、イエメンのフーシ派支配地域の軍事目標に対する1月11日夜の多国籍攻撃への米軍の参加の監督と指揮に積極的に従事した。 大統領の指示を受けて、11日米国中央軍に攻撃を実行するよう命令を出し、安全な通信機能一式を使って作戦をリアルタイムで監視した。 長官の多国籍攻撃後の声明はここで見ることができる。

 1月12日、オースティン長官は下院軍事委員会委員長のマイク・D・ロジャース下院議員(House Armed Services Committee Chairman Rep. Michael Dennis Rogers : D-Wash.)

Michael Dennis Rogers 氏

 上院軍事委員会のランキング上級委員のロジャー・F・ウィッカー上院議員(Roger Frederick Wicker)、下院軍事委員会ランキング委員のアダム・スミス下院議員(House Armed Services Committee Ranking Member Rep. Adam Smith: Washington's 9th congressional district.選出 民主党)と電話会談を行った。

Adam Smith 氏

 現時点ではオースティン長官の退院の具体的な日程は未定であるが、DODはそれまで毎日最新情報を提供し続ける。

Ⅱ.ウォルター・リード国立軍事医療センターの医療関係者の長官の治療内容・診断結果の詳細声明

 2024 年 1 月 9 日の声明を仮訳する。

 メリーランド州ベセスダにある「ウォルター・リード国立軍事医療センター」の外傷医療ディレクターのジョン・マドックス博士(Dr. John Maddox, Trauma Medical Director)とマーサがんセンター前立腺疾患研究センター長のグレゴリー・チェスナット博士(Dr. Gregory Chesnut, Center for Prostate Disease Research of the Murtha Cancer Center Director)は1g月9日、オースティン 長官に関して次の声明を発表した。

 長官は定期的に推奨する健康診断の一環として、定期的に前立腺特異抗原(PSA)監視を受けている。 2023 年 12 月初旬の検査室評価の変更により、治療が必要な前立腺がん(prostate cancer)が特定された。 2023年12月22日、医療チームと相談した後、ウォルター・リード国立軍事医療センターに入院し、前立腺がんの治療と治癒を目的とした前立腺切除術と呼ばれる待機的外科手術(elective medical procedure)を受けた。 この手術中、彼は全身麻酔下にあった。 長官は手術から順調に回復し、翌朝帰宅した。 彼の前立腺がんは早期に発見され、予後は良好である。

 2024年1月1日、長官は12月22日の手術処置による吐き気と激しい腹部、股関節、脚の痛みを伴う合併症のためウォルター・リード国立軍事医療センターに入院した。 初期の検査で尿路感染症が判明した。 1月2日、綿密な監視とより高度なケアのために彼をICUに移送する決定が下された。 さらなる検査により、腹水の貯留により小腸の機能が損なわれていることが判明した。その結果、腸の内容物が逆流してしまい、鼻からチューブを入れて胃の内容物を排出することで治療された。 腹水の貯留は非外科的ドレーン留置により排出された。 彼は入院中中着実に回復してきた。また 彼の感染症は治癒した。 彼は回復を続けており、時間はかかるかもしれないが、完全な回復が期待されている。 この入院中、長官は一度も意識を失うことはなく、全身麻酔も一度も受けなかった。

 前立腺がんはアメリカ人男性のがんの最も一般的な原因であり、生涯のうち男性の8人に1人、アフリカ系アメリカ人男性の6人に1人が罹患する。 前立腺がんの発生頻度にもかかわらず、スクリーニング、治療、サポートに関する議論は非常に個人的でプライベートなものであることがよくある。 前立腺がんの発見と治療には早期のスクリーニングが重要であり、どのようなスクリーニングが自分にとって適切であるかについて医師に相談する必要がある。

Ⅲ.国防総省長官および副長官およびDOD上級役職員の覚書「標題: 国防長官の職務と義務の引継ぎに関する通知プロセスの見直し」の概要

 覚書を仮訳する。

DODサイト(2022年現在)から一部抜粋 上級幹部の顔写真が確認できる。

〇DODの国防長官府(OSD)の組織図 (筆者注8)

 本覚書は、合衆国法令集第10編第132(b)条(10 U.S.C. § 132(b)) に準拠し、 および大統領令 EO13533「国防総省内での継承命令の規定」により、特定の状況下では、国防副長官が国防長官の代理を務め、その権限を行使するものとする。これには、長官が職務の機能や職務を遂行できない場合も含まれる。 2024年1月1日の夜、オースティン国防長官は、最近の選択的医療処置後の合併症のためウォルターリード国立軍事医療センターに入院した。 2024 1 2 日、国防長官の特定の権限が国防副長官に移管された。 この移管は2024年 1 月 5 日(金)まで継続された。

 私(Kelly E. Magsamen)(筆者注9)はここに、総務管理部長のジェニファー・ウォルシュ(Jennifer Walsh)に対し、DOD法務顧問と相談の上、関連事実を特定するための調査を直ちに主導するよう指示した。

 緊急事態の期間中の状況を評価し、国防副長官が任務を十分に遂行するよう通知を受けたプロセスと手順をここに評価する。

Kelly E. Magsamen氏

 合衆国法典第10編§ 132(b)条および大統領令EO 13533に基づく国防長官の任務に関する任務の見直しの目的は、これらの出来事を取り巻く事実をより深く理解し、今後の適切なプロセスを推奨する。 このレビューの目的は、(1) 特定の権限が移譲されたと決定された場合の明確性と透明性を確保するのに役立たたせる、(2) 適切かつタイムリーな通知が大統領とホワイトハウス、および必要に応じて米国議会と米国国民に対して行われたこと。

 本レビューには次の内容を含める必要がある。

① 2024 年 1 月 1 日の国防長官の入院に始まる出来事と通知のタイムライン。

② 長官がその職務の機能や責務を遂行できるか、または遂行できないかどうか、およびそのような通知がどのように行われるかを判断するための現在のプロセスを調査する。

③ 必要に応じて、米国大統領、国防総省の高官、その他の関係者に対する既存の通知プロセスを改善するための勧告。

 私は、このレビュー審査を 30 日以内に完了するよう指示する。また、レビューは現在進行中であり、直ちに発効するが、さらに私は次のように指示する。

「権限の移譲」(transfer of authority TOAが発生した場合、上級幹部情報支援室(Cables Executive Support Office :ESO)(筆者注10)は、DOD法務顧問(General Counsel)、統合参謀本部議長および副議長(Chairman and Vice Chairman of the Joint Chiefs of Staff)、国防長官及び副長官の参謀本部(Deputy Chiefs of Staff to the Secretary and Deputy Secretary)、 統合軍司令官(Combatant Commanders)、陸軍長官(Service secretary means the secretary concerned as defined in 10 USC 101(a)(9))、参謀本部の制服組の最高幹部(Service Chiefs of Staff)(筆者注11)、ホワイトハウスのシユツエーション・ルーム(White House Situation Room) (筆者注12)、および長官および国防副長官の上級幹部。

② 電子メールのメッセージには、TOA の理由 (通信デバイスの圏外、定期的な治療、入院など) が含まれる。

③事前に計画された TOA を調整する際、国防長官の軍事補佐官 (Secretary's Military Assistant (MA) ) チームのメンバーが私、副長官の首席補佐官、副長官から長官、副長官、副長官の上級軍事補佐官に最新情報を伝える。その他の長官および副長官の軍事補佐官 MA は、事前に計画された TOA の予想スケジュールに基づいて 至急な連絡等を行う。

④緊急の TOA の場合、担当 軍事補佐官MA は少なくとも音声通信に依存し、電子メールでフォローアップする。ずれの場合も、Cables ESO からの電子メールは通知を記録する。

 上記の当面の措置は、30 日間のレビューの結果、さらに修正される可能性がある。

cc: DOD法務顧問

Ⅲ.今回の国防長官の緊急入院や軍最高幹部の対応の遅れ、ホワイトハウスへの情報遅れ等の問題

 今回のオースティン長官の緊急入院と権限移管に関する米国の議会等によるシビリアン・コントロールに関するメデイア等に見るさらなる課題につき1月7日のAP News 記事から抜粋、以下、仮訳する。

 オースティン国防長官(70歳)は、軽度の選択的医療処置後の合併症のため入院したままであると彼の報道官は述べた。 国防総省がウォルターリード国立軍事医療センターでの長官の入院に関する情報をどれほど密接に保持していたかがますます明らかになるにつれて、報道官は彼の当初の声明の中で、長官は回復中であり、すぐに国防総省に戻ることを楽しみにしていると述べたが、彼の病気について他の詳細を提供しなかった。

 国防総省報道官のパット・ライダー少将空軍少将は、ホワイトハウスと合同参謀本部はオースティン長官の入院について通知を受けたが、その通知がいつ起こったかは確認しなかったと語った。

 多くの米国当局者は1月6日、長官が入院していることを1月5日まで国防総省の最高幹部の多くが知らなかったと述べた。当局は匿名の条件で話し、プライベートな会話について話し合った。1月5日にホワイトハウスが彼の状態を知ったことを報告した最初の人物は米メデイアPolitico (筆者注13)であった。

 ライダー少将は、 議会のメンバーは1月5日の午後遅くに告げられ、他の当局者は議員が午後5時以降に通知されたと述べた。長官のスタッフの主要な上級メンバーにいつ伝わったかは明らかではないが、国防総省全体で, 多くのスタッフが、長官の病院滞在に関する声明を発表したときである5日の午後5時過ぎに知った。つまり、多くの軍幹部は長官が今週休暇を取っていると信じていた。

 長官が入院したときに引き継いだキャサリン・ヒックス国防副長官も不在であった。米国の当局者は、長官との間に彼女が仕事をすることを可能にするプエルトリコで彼女とのコミュニケーションセットアップを持っていたと述べた。 結果、米軍で41年間過ごし、2016年には4つ星の陸軍大将として引退した人は無力であった。

 ライダー少将は1月6日、長官の回復は順調で、1月5日の夕方、病院のベッドから全職務を再開したと語った。なぜ入院が長い間秘密にされているのかと尋ねられた少将は、5日にそれが“回復が進む状況であり、プライバシーと医療の問題のためであると述べ, 国防総省は長官の職務不在を公表しなかった。当時、少将はオースティンの医療処置または健康に関するその他の詳細を提供することを拒否した。

 連邦議会上院軍事委員会で最高位にある共和党ロジャー・ウィッカー(Mississippi Sen. Roger Frederick Wicker ) 氏(筆者注14)(筆者注15)(筆者注16)は「国防総省は、国防長官の病状を数日間故意に差し控えたことは受け入れられない。われわれ議会は、部局の衝撃的な法律違反について1時間ごとにさらに学習している」

Roger Frederick Wicker 氏

 また、アーカンソー州選出共和党のトム・コットン(Sen. Thomas Bryant Cotton , R-Arkansas)氏 (筆者注17)も大統領や議会等通知の遅れを次のとおり批判した。

Thomas Bryant Cotton 氏

 「国防長官は、核指揮系統を含む大統領と制服を着た軍部との間の指揮系統における主要なリンク責任者であり, 最も重要な決定を数分で行わなければならないとき、長官がホワイトハウスにすぐに伝えなかったことは, この衝撃的な内訳には影響があるはずである」

 国防総省をカバーするメディアメンバーを代表する国防総省報道協会(Pentagon Press Association:PPA)は、5日の夜にライダー少将とDOD広報担当次官補のクリス・ミーガー(Chris Meagher)氏に抗議の手紙を送った。

Chris Meagher氏

 PPAはその書簡で「長官がウォルターリード国立軍事医療センターに4日間滞在していて、国防総省が5日の夜遅くに国民一般に警告しているという事実は怒りそのものである。中東の米軍サービスメンバーに対する脅威が高まっている現在、米国はイスラエルとウクライナでの戦争で主要な国家安全保障の役割を果たしている。アメリカの国民がその最高の防衛指導者の健康状態と意思決定能力について知らされることは特に重要である」

 これまで他の米国の上級指導者たちは、自身の入院についてはるかに透明であった。すなわち、メリックガーランド司法長官が2022年に通常の医療処置に参加したとき, 彼のオフィスは1週間前に国民に通知し、彼が外出することが予想される期間と彼がいつ仕事に戻るかを概説した。

 今回のオースティン長官の入院時期は、イランが支援する民兵が米軍がイラクとシリアに駐留している基地で繰り返し無人偵察機、ミサイル、ロケットを発射した時期である。バイデン政権を何度も反撃するように導いた。これらの攻撃には、長官や他の主要な軍事指導者によるデリケートでトップレベルの議論と決定が含まれることがよくある。

 また、アメリカはイエメンのフーシ過激派(Houthi militants)による商業船への持続的な攻撃を阻止するために南紅海をパトロールするために船と他の資産を使用する新しい国際海事連合の背後にある主要な主催者でもある。(筆者注18)

 さらに、オバマ政権、特にオースティン長官は、武器を供給し、ウクライナに訓練する取り組みの最前線にいる。 彼はまた、ハマスとの戦争についてイスラエル人と頻繁にコミュニケーションをとっている。

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(筆者注1)DODサイトのヒックス副長官の略歴を仮訳する。

 キャスリーン・H・ヒックス閣下は第35代国防副長官を務めている。彼女は2021年2月9日にその役職に宣誓した。

 副長官に就任する前は、ヒックス 氏はヘンリー A. キッシンジャー氏が代表する外交問題評議会(Foreign Policy and International Relations : Council on Foreign Relations ) (筆者注6)上級副代表、CSIS(戦略国際問題センター)の国際安全保障プログラムのディレクターを歴任した。

 2009 年から 2013 年まで、彼女は国防総省の高級文官を務めた。 2012年に米国上院によって政策担当首席国防次官に承認され、世界および地域の国防政策と戦略について国防長官に助言する責任を負った。

 また彼女は戦略、計画、戦力担当の国防副次官も務め、2012 年の国防戦略指針と 2010 年の 4 年ごとの国防見直しの開発を主導し、将来の戦力能力、海外での軍事態勢、緊急時および戦域作戦計画に関する指針の策定を主導した。

 Deputy Under Secretary of Defense for Strategy, Plans and Forces(SPF の DUSD) になる前の 2006 年から 2009 年まで、ヒックス氏は戦略国際問題研究所の上級研究員を務めていた。 ヒックス氏は国防長官室の公務員としてキャリアをスタートし、1993 年から 2006 年までさまざまな役職を務め、大統領管理インターンから上級行政職まで昇進した。

(筆者注2) ジェイコブ・ジェレマイア・サリバン(1976年11月28日生まれ)はアメリカの弁護士で、現在ジョー・バイデン大統領直属の国家安全保障担当大統領補佐官を務めている。 彼はこれまでに米国国務省でバラク・オバマ大統領の政策局長、バイデン副大統領の国家安全保障担当補佐官、ヒラリー・クリントン長官の首席補佐官を務めた。また サリバン氏は、イラン核交渉における米国連邦政府上級顧問、クリントン長官の2016年大統領選挙キャンペーンにおける上級政策顧問、さらにイェール大学ロースクールの客員教授も務めた。

 2020年11月23日、バイデン次期大統領はサリバン氏を米国国家安全保障担当大統領補佐官に任命すると発表し、2021年1月20日に就任した。

(筆者注3) (1)10 USC 132(b)条: Deputy Secretary of Defense を仮訳する。

(b) 副長官は、国防長官が定める職務を遂行し、権限を行使するものとする。 副長官は、長官が死亡、辞任した場合、またはその他の理由で長官の職責および職務を遂行できなくなった場合に、長官を代理し、その権限を行使するものとする。

(2)オバマ大統領時代に発令された2010.3.1 Executive Order 13533—Providing an Order of Succession Within the Department of Defenseを仮訳する。

 1998 年の連邦空員制度改革法 (修正版) を含むアメリカ合衆国の憲法および法律により、大統領として私に与えられた権限により、5 U.S.C. 3345 以降では、以下のことが命じらた。

セクション 1. 継承順位。

(a) 本命令第 2 条の規定に従い、国防総省の以下の職員は、列記された順序で、次の期間中、国防長官 (長官) の職を務め、その職務と義務を遂行するものとする。 長官が死亡、辞任、またはその他の理由で長官の職務の機能および職務を遂行できなくなった期間、長官がその職務の職務および職務を遂行できるようになるまでの期間:

(1) 国防副長官。

(2) 陸軍長官。

(3) 海軍長官。

(4) 空軍長官。

(5) 防衛次官(調達、技術、兵站担当)。

(6) 政策担当の国防次官。

(7) 国防次官(監察官)。

(以下は略す)

(筆者注4) 大統領日報 ( President's Daily Brief, PDB) は、米国政府の担当部局が毎日作成し、米国大統領に毎朝届けられる最高機密文書。これは大統領が認めたごく限られた政府高官らにも渡される。日報の内容には、機密性の高い情報分析、CIAの秘密工作に関する情報、最も機密性の高い米国の情報源からの報告、同盟国の情報機関と共有している報告、といったものが含まれる。大統領日報は、大統領選で当選し就任を控えた次期大統領にも渡される。

 大統領日報は国家情報長官が作成し、中央情報局 (CIA)、国防情報局 (DIA)、国家安全保障局 (NSA)、連邦捜査局 (FBI)、そのほか米国のインテリジェンス・コミュニティーに属する機関から上がってきた情報を総合した内容になっている。(Wikipediaから抜粋 )

(筆者注5) 広報担当国防次官補 (ATSD (PA)) は、広報、内部情報、地域関係、情報訓練、視聴覚問題の主任参謀であり、国防長官および国防副長官の補佐を務める。 国防総省の取り組みを支援し、約 3,800 人の軍人および民間人からなる世界的な広報コミュニティを主導している。次官補は、長官の情報原則に従って国防総省の情報を国民、議会、メディアに提供する。 2012 年 10 月以前は、この役職は「広報担当国防次官補」として知られているが、2011 年の大統領任命効率化および合理化法に応じて名前が変更された。ATSD(PA) は重要な人物であるが、国家の重要人物ではなく、唯一の広報担当者である。(Academic Acceleratorから抜粋)

(筆者注6) 外交問題評議会(Council on Foreign Relations)は、アメリカ合衆国のシンクタンクを含む超党派組織。 1921年に設立され、外交問題・世界情勢を分析・研究する非営利の会員制組織であり、アメリカの対外政策決定に対して著しい影響力を持つと言われている。超党派の組織であり、外交誌『フォーリン・アフェアーズ』の刊行などで知られる。本部所在地はニューヨーク。(Wikipediaから抜粋 )

(筆者注7) DODの行政管理部長 (Director of Administration and Management:DA&M) は、国防総省の国防長官室 (Office of the Secretary of Defense OSD) 内の役職である。 DA&Mは、組織および行政管理事項に関する国防長官および国防副長官の主席補佐官および顧問として、以下の責任を負う。

  ①組織憲章の策定と維持、②国防総省委員会の管理、③国防総省の本部管理、③OSD歴史的記録などの割り当てられたプログラムの監督プログラム、④国防総省の情報自由法プログラム、⑤国防総省プライバシー・ プログラム、⑥国防総省市民の自由プログラム、⑦OSD 内部管理制御プログラム、および⑧ OSD 情報技術/CIO プログラムである。さらに、DA&M は国防総省軍保護局とワシントン本部サービスの管理と監督の責任を果たしている。従業員は約 1,300 名、現場活動予算は 13 億ドル(約1,872億円)に達している。

(筆者注8) 国防総省の国防長官府(Office of the Secretary of Defense :OSD)の解説の仮訳

 アメリカ合衆国国防長官府 (Office of the Secretary of Defense (OSD) は、アメリカ国防総省の本部である。国防長官直属の組織であり、主に文民職員 (いわゆる「背広組」)で組織されている。政策開発、国防計画、資材管理、会計、及び背策評価の責任分野で各種権限を行使し、国防総省に対する権限、指揮、統制を実行する長官を支援する。長官府は、統合参謀本部とともに、国防総省を管理する国防長官の支援部門であり、アメリカ合衆国において連邦行政部全体を管理する大統領の大統領行政府に相当する。

 長官府には、国防長官 (SecDef)と国防副長官 (DepSecDef)に直属する6人の国防次官 (研究・技術、取得・維持、政策、会計検査、人事・即応、諜報・安全保障) が置かれている。国防次官は、全て大統領によって任命され、国防長官や国防副長官と同様に、連邦議会上院の承認を要する。

 その他の役職として、国防次官補、国防長官補佐官、法律顧問、運用試験・評価局長、行政事務局長及び割り当てられた職務を遂行するために国防長官が設置した役職があり、それぞれ国防長官を補佐する。

 長官と副長官は、6人の次官を監督し、それぞれの次官は数人の次官補を監督している。その他に長官に直属する特別職員も数人置かれている。以下、略す。(Wikipediaから抜粋、なお、そこに引用されているOSDの組織図は古い、本ブログのものを参照されたい)

(Wikipedia から抜粋, 仮訳)

【DODの国家情報機関機能】(青色部:筆者が説明を補筆した)

国防総省の組織の一部は、アメリカのインテリジェント・コミュニティ (IC)のメンバーとなっている。通常は国防総省の管轄下で活動する連邦レベルの諜報機関であるが、同時に国家情報長官の権限にも服している。これらの機関は、国家の政策立案者や戦争に関する権限を有する者が、その職務を遂行するために、戦闘支援機関として機能する。また中央情報局 (CIA)や連邦捜査局 (FBI)などの国防総省以外の諜報機関や法執行機関の支援も実施する。

 上記以外にも、各軍種には独自の諜報機関が置かれている。国防総省の管轄下にある国家情報機関とは別組織であるが、調整の対象とはなっている。国防総省は、シギント(signals intelligence:通信、電磁波、信号等の、主として傍受を利用した諜報・諜報活動のこと)、地理空間情報(Geospatial intelligence:地理空間情報を含む画像、信号、または署名の活用と分析から得られる、地球上の人間の活動に関するインテリジェンス。 GEOINT は、地球上の物理的特徴と地理的に参照された活動を記述、評価し、視覚的に表現する。 米国連邦法典で定義されている GEOINT は、画像、画像インテリジェンス (IMINT)、および地理空間情報で構成されている)、マジント(Measurement and Signature Intelligence :MASINT) は、情報収集の技術分野であり、固定または動的ターゲット・ソースの特有の特性 ンテリジェンス、音響インテリジェンス、核インテリジェンス、化学および生物学的インテリジェンスが含まれる)の各分野で国家情報機関の間の調整を担当している。また、これらの分野の資産を管理するとともに、情報衛星の打ち上げ、運用、情報網の構築を行っている。また国防総省は、CIAが実施するヒューミント(HUMINT; Human Intelligence):人が人に接触して収集するデータ、情報、知識。相手の経歴、身体的特徴、思想傾向、雰囲気、性癖、言語化されない暗黙知も含まれる)に協力すると同時に、軍事面での優先的なヒューミントを実施するために独自の機関 (国防情報局内の国防秘密局)を保有している。国防総省の国家情報機関は、国防次官 (諜報・安全保障担当)によって監督されている。

(Wikipedia等から抜粋) なお、日経XTECH「細分化が進むインテリジェンス」も参照されたい。

(筆者注9) ケリー・マグサメン(Kelly Magsamen)氏は、ロイド・J・オースティン3世国防長官の首席補佐官である。 国防長官の幹部スタッフを指揮し、国防長官に国防総省に関するすべての問題について助言やアドバイスを提供する責任を負う。

(筆者注10)覚書に出てくるCABLES EXECUTIVE SUPPORT OFFICEにつき補足する。SDCの解説を仮訳する。

 DISA(アメリカ国防情報システム局)は、軍事通信、電波監理や通信システムの開発などを担当する国防総省の内局) の戦略的コミュニケーションと広報を担当する部局である。

 国防総省長官通信局 (Secretary of Defense Communications:SDC)は、国防総省長官および国防総省副長官、その直属の事務所、および指定された特使に専用の通信サポート、意思決定サポート、および状況認識サービスを提供する。

 2017 年に国防情報システム局のミッション・ポートフォリオに統合された SDC は、すべての脅威シナリオおよび地理的位置にわたってグローバルな状況認識を提供する統合通信ソリューションを提供し、国防長官が合衆国法典第 10編 および第50 編1/8(22)で義務付けられている指揮統制権限と責任を行使できるようにする。

 国防長官の信頼できるプロバイダーとして機能する統合奉仕チームは、非常に小さな拠点を維持しながら、大きな任務を達成する。

 SDC の小さいながらも重要なコンポーネントの 1 つは、その使命をサポートする有能な軍人を継続的に探しているケーブル支局(Cables Branch)である。

 SDCの上級幹部支援官であるジョージ・ランドルフ(George Randolph)陸軍中佐ケーブル支局長は「SDCの作戦情報管理および指揮統制サポートセンターであり、約20人の軍人が配置され、3人チームで活動している。我々は、国防長官とその直属のスタッフに、場所に関係なく、複数のプラットフォームと分類にわたって包括的な音声、ビデオ、およびデータ機能を提供する」

 ケーブルズ支局のメンバーは、ホワイトハウス状況室、国務省、国防総省の各機関、および外国の対応機関との連絡役としても機能する」と述べた。

(筆者注11) 統合参謀本部 (Joint Chiefs of Staff:JCS) は、米国国防総省内の制服を着た最高幹部の組織であり、軍事に関して米国大統領、国防長官、国土安全保障会議および国家安全保障会議に助言を与え、 重要な組織である。 統合参謀本部の構成は法令で定められており、議長(CJCS)、副議長(VJCS)、陸軍、海兵隊、海軍、空軍、宇宙軍の長官、および軍司令官から構成される。(Wikipedia を抜粋、仮訳)

(筆者注12) シチュエーションルーム ( White House Situation Room) は、アメリカ合衆国、ホワイトハウスのウエストウイングの地下にある施設である。513.2平方メートルの会議室と情報管理センター機能を備える。

 シチュエーションルームは、アメリカ合衆国大統領とその顧問(国家安全保障問題担当大統領補佐官、国土安全保障担当大統領補佐官、大統領首席補佐官を含む)が、国内外の有事の監視と対応を行うため、そして外部機関(海外の機関を含む)と安全な通信を行うために利用すべく、国家安全保障会議のスタッフによって運営されている。(Wikipedia から抜粋)

 (筆者注13) ポリティコ(Politicoは、政治に特化したアメリカ合衆国のニュースメディアである。主にワシントンD.C.の議会やホワイトハウス、ロビー活動や報道機関の動向を取材し、テレビやインターネット、フリーペーパー、ラジオ、ポッドキャストなどの自社媒体を通じてコンテンツを配信している。(Wikipediaから抜粋 )

(筆者注14) ロジャー・F・ウィッカー(Roger Frederick Wicker)氏は、2007年12月から米国上院でミシシッピ州民の代表を務めている。上院議員時代、ウィッカー氏は雇用を創出し、連邦政府の行き過ぎを制限し、生命を守り、強力な国防を維持する成長促進政策を擁護してきた。

 ウィッカー氏は、第 118 連邦議会の上院軍事委員会のランキング上級委員(筆者注13)である。ウィッカー氏は上院商業・科学・運輸委員会の上級委員でもあり、以前はそれぞれ第116議会と第117議会で議長と幹部を務めていた。 彼の他の委員会の任務には、環境および公共事業委員会および規則および管理委員会が含まれる。

Roger Frederick Wicker氏

 ウィッカー氏は米国ヘルシンキ委員会の幹部であり、欧州安全保障協力会議 (CSCE)(筆者注16)の副議長でもある。また、ウィッカー氏は、米国商船アカデミー議会訪問者委員会のメンバーも務めている。(ウィッカー氏のHPから抜粋、仮訳)

(筆者注15) 連邦議会委員会構造は立法プロセスにおける主要部分である。委員会は一般的に、様々な政策分野にフォーカスを置き、与党議員が議長を務める(各委員会における最年長の少数派党員は「有力メンバー」(ranking member)と呼称される)。また各議会委員会には個別の職員も常駐している。

(筆者注16) 欧州安全保障協力機構(OSCE)は、ソビエト連邦が最初に全ヨーロッパ安全保障会議の設立を提案した1950年代初頭にその起源を持つ。1960年代半ばに、ワルシャワ協定はそのような会議の呼びかけを更新した。1969年5月、フィンランド政府はヘルシンキを会議場として提供する覚書をすべてのヨーロッパ諸国、米国、カナダに送った。1972年11月から、最初の35か国の代表が3年近く集まり、会議の手配と枠組みを策定し、1975年7月に作業を終えた。

1975年8月1日、最初の35の参加国の指導者がヘルシンキに集まり、ヨーロッパの安全保障協力会議の最終法に署名した。ヘルシンキ合意とも呼ばれる最終法は条約ではなく、非公式に“バスケットと呼ばれる3つの主要セクションで構成される政治的拘束力のある合意である「コンセンサス」に基づいて採用された。この包括的な法律には、バンクーバーからウラジオストクに及ぶ地域の安全と協力を強化するために設計された幅広い措置が含まれる。(OSCEサイトから抜粋、仮訳)

(筆者注17) トム・コットン氏はアーカンソー州出身のアメリカ合衆国上院の共和党議員である。 所属する委員会には、刑事司法およびテロ対策小委員会のランキングメンバーを務める司法委員会、情報委員会、空陸電力小委員会のランキングメンバーを務める軍事委員会が含まれる。(トム・コットン氏のHPから抜粋、仮訳した)

(筆者注18)1月11日の米国非営利公共メディアNational Public Radio(NPR) は以下のとおり報じている。抜粋、仮訳する。

 国防当局者が匿名を条件に語ったところによると、米国と英国はイエメンにあるフーシー派武装勢力の標的約十カ所への攻撃を開始した。今回の空爆は、紅海での国際貨物船と米軍艦に対するフーシー派による2カ月以上にわたる攻撃に続くもので、米当局が封じ込めに懸命に取り組んできた中東紛争が拡大している。

 バイデン大統領は書面による声明で、今回の共同攻撃はフーシー派の行動に対する防衛反応であり、オーストラリア、バーレーン、カナダ、オランダの支持を得ていたと強調した。

 バイデン氏は「こうした標的型攻撃は、米国と米国のパートナーが米国人員への攻撃を容認したり、敵対勢力が世界で最も重要な商業航路の一つで航行の自由を脅かしたりすることを容認しないという明確なメッセージであり、私は必要に応じて我が国国民と国際商取引の自由を守るため、さらなる措置を躊躇なく指示するつもりである」と述べた。

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2024年秋の米大統領選挙や同年3月の一部裁判の最高裁判決等を控えスピードアップするトランプ裁判の動向と争点

2023-12-26 16:24:45 | 国家の内部統制

 12月に入りトランプ前大統領に関する裁判の動向に関する米国メデイアの報道に動きが顕著になっている。筆者は本ブログで一部取り上げたが、やはり断片的メデイア情報では不十分であり、わが国でも本質的かつ正確な裁判解説が必要と考えた。

 その結果、やはり毎日グローバルな裁判動向を取り上げているピッツバーグ大学ロースクールの提供サイト“JURIST”でかつ同スクールの博士課程にあるローレン・バン(Rauren Ban)の解説記事が最も網羅的かつ正確であると判断した。

Rauren Ban 氏

 そこで“JURIST”の記事からRauren Ban氏の解説を3本抜粋し、以下で補足を加えたうえで仮訳した。なお、同氏を初めトランプ裁判の解説は2024年早々より具体的展開が深まることは違いない。筆者なりに引き続きフォローしたい。

 なお、米国のメデイアだけでなくわが国のメデイアも同様に各裁判所の決定につき一喜一憂している節がある。トランプ陣営における特に2024年11月の大統領選をにらみ最高裁の判決の先延ばしを図っている事実を冷静に受け止め、法的争点を正確に報道するのが法学者やメデイアの責務であろう。

1.連邦地裁判事は2020年の米国大統領選挙妨害事件でトランプ大統領の免責特権の主張を否定 

 2023 年 12 月 2 日付けJURIST解説記事を以下、仮訳する。

 ドナルド・トランプ前米大統領の2020年の選挙妨害事件を管轄する連邦地裁判事は12月1日、トランプ氏は大統領免責特権(presidential immunity)(注1)の主張によって係争中の4件の刑事告発を却下することはできないとの判決を下した。

 米国連邦地方裁判所判事ターニャ・チュトカン(US District Judge Tanya Chutkan)氏は、トランプ氏は米国大統領として「公的な責任の『外周』内で行われた行為に対する刑事訴追の絶対的な免除」を享受しているとするトランプ氏の主張に反論した。 チュトカン氏はその代わりに、「元大統領は連邦刑事責任に関して特別な条件を享受していない」と認定した。

Tanya Chutkan 判事

 トランプ氏は当初、10月5日に大統領の免責に基づいて訴訟を却下する申し立てを提出していた。その申し立ての中でトランプ氏は、大統領として行ったあらゆる公式行為について刑事訴追からの「絶対的免責(absolute immunity)」を享受していると主張した。その議論に基づき、トランプ前大統領は、2021年1月6日の自身の行動(筆者注2)は「大統領としての公式責任の中心」にあると主張した。トランプ大統領は、「検察は選挙の公正性を確保し、それを主張する努力が職務の範囲外であったとは主張しないし、主張することはできない」と主張した。 現連邦政府は10月19日の申し立て(motion)でトランプ前大統領の主張に異議を唱え、これに応じた。

 12月1日の決定の中で、チュトカン判事はトランプ前大統領の法律解釈に同意せず、却下の申し立てを拒否した。

 まずチュトカン氏は、合衆国憲法の解釈は大統領の刑事訴追免除を支持しているというトランプ前大統領の主張に言及した。トランプ氏の主張は、部分的には、合衆国憲法の弾劾判決条項に基づき、自身も議会で弾劾され有罪判決を受けた犯罪でのみ起訴される可能性があるという主張に基づいている。

  チュトカン氏はこの主張に反対し、「憲法の条文には(トランプ氏が)主張する免除を与えるものは何もない」と述べた。 チュトカン氏は、「憲法の起草者や批准者のいずれも、弾劾されて有罪判決を受けない限り、前大統領が刑事免責されることを意図または理解していたという証拠はなく、ましてや弾劾判決条項(Impeachment Judgment Clause)がそのような効果を持つという広範なコンセンサスは存在しない」と説示した。

 また、トランプ前大統領は、「個人責任が大統領の意思決定に与える萎縮効果」や、元大統領が連邦、州、地方当局から刑事訴追される可能性について懸念を表明した。さらにトランプ氏は、大統領がそのような訴追の脅威を知った場合、公務の遂行に気を取られたり、躊躇したりする可能性があると主張した。

 しかし、チュトカン氏は事件の状況を理由にこの懸念を一蹴した。 具体的には、「これらの懸念は、元大統領の連邦刑事訴追という文脈では同じ重みを持たない」と彼女は述べた。 チュトカン氏は自身の所見を支持して、ニクソン政権時代の過去の最高裁判所の判決に言及し、「『誠実で適度な毅然とした』大統領なら、合法的な意思決定の義務を遂行することを恐れることはない」と強調した。

 さらにチュトカン氏は、本事件で大統領の免責を否定すればさらなる訴訟への「水門を開く」ことになるというトランプ大統領の主張には何の根拠もないと判示した。なお、 チュトカン氏が論じたように、この事件に対する大統領免責の適用に関する彼女の決定は、この事件およびこの事件だけに適用される。

 最終的にチュトカン氏は「どの大統領も難しい決断に直面するだろう。意図的に連邦犯罪を犯すかどうかはその中に含まれるべきではない。もし彼女がトランプ大統領の罷免要求を認めれば、「法の尊重を促進し、犯罪を抑止し、身を守り、犯罪者の更生を図る」という米国民の利益が妨げられるだろう」とチュトカン氏は論じた。 こうした理由から、チュトカン氏はトランプ氏の却下申し立てを拒否し、202434日の公判期日に向けての審理の推進を再開した。

 この事件は、トランプ氏が直面している91件の刑事裁判に及ぶ4件の刑事裁判のうちの1件である。 同氏は、2020年の米大統領結果を覆す取り組みを共謀し、それに参加したとして4件の妨害罪で起訴されている。 同氏は2023年8月に無罪答弁(pleaded not guilty)を行い、なお容疑を否認し続けている。(筆者注3)

 

2.1211日、連邦検察は連邦最高裁判所に対し2020年の選挙干渉事件におけるトランプ大統領の免責問題を取り上げるよう要請

  2023 年 12 月 11 日付けJURIST解説を以下、仮訳する。

 連邦検察は12月11日、2020年の米大統領選挙中に選挙干渉を行ったとしてドナルド・トランプ前大統領に対する刑事事件への介入を連邦検察当局に要請した。

 ジャック・スミス特別検察官(Special Counsel Jack Smith)は、トランプ大統領が在任中に犯した犯罪に対する刑事訴追からの絶対的免責権があるかどうかを判断するため、コロンビアD.C.連邦控訴裁判所で現在係争中の控訴を取り上げるよう裁判所に要請したが、地方裁判所は以前この訴えを却下した。

Jack Smith 検事

 スミス氏は控訴裁判所への請願の冒頭で、「この訴訟は私たちの民主主義の中心にある根本的な問題を提起している。 そのため、(トランプ氏の)免責の主張が当裁判所によって解決され、被告の免責の主張が却下された場合にはできるだけ速やかに被告の裁判が進行することが極めて重要である」と述べた。

 この訴訟は現在、2024年3月4日に裁判に進む予定である。しかし、米国コロンビアD.C.控訴裁判所がトランプ大統領の控訴を審理している間は、現在保留中である。 この控訴は、大統領特権に基づいて訴訟を却下するというトランプ大統領の要請を却下した12月1日のターニャ・チュトカン地方判事の判決に端を発している。

 トランプ前大統領は、合衆国憲法が大統領在職中に犯した行為に対するいかなる刑事責任も免除していると主張し続けている。 またトランプ氏は、同じ容疑ではないものの、すでに米連邦議会下院で裁判にかけられ弾劾されているため、刑事告訴は二重の危険(double jeopardy)に相当すると主張している。

 通常、この訴訟は米国連邦最高裁判所で取り上げられる可能性がある前に連邦控訴裁判所を経る必要がある。しかし、202434日の公判期日で敗訴する可能性に直面し、連邦検察当局は12月11日、控訴手続きの迅速化を求めた。「米国はこれが異例の要請であることを認識している」とスミス氏は控訴裁判所への請願書に書いた。

 そこで、その理由に関しスミス氏は次のように説明した。

 「以下の決定に対する控訴審理が控訴裁判所で通常の手続きを経て進められた場合、審査のペースによっては最終決定が得られるまでに何か月もかかる可能性がある。 たとえ判決が早く下されたとしても、そのような判決のタイミングによっては、連邦最高裁判所が今会期中に審理し判決を下すことができない可能性がある。」

 すなわち、連邦最高裁判所の会期は2023年10月に始まり、判事は通常、裁判所の判決の大部分が発表される6月か7月まで勤務することが予想されている。

 トランプ大統領は現在、この事件で4つの刑事訴追を受けており、2024年3月4日にコロンビアD.C.控訴裁判所で陪審裁判が行われる予定である。本件は、前大統領が直面している4つの刑事事件のうちの1つであり、その範囲は連邦および州の刑事告訴数が91件に及ぶものである。

3.米連邦最高裁判所、連邦選挙干渉事件におけるトランプ前大統領の免責請求の迅速な審理を否定する決定

 2023年12月22日のJURISTの解説を以下、仮訳する。

 米国連邦最高裁判所は、ドナルド・トランプ前大統領の「大統領の絶対的免除(absolute presidential immunity.)」の主張の審理を促進するよう求めるジャック・スミス特別検察官(Special Prosecutor Jack Smith)の要求を却下した。 この動きは、スミス被告が12月11日にトランプ氏に対する2020年の選挙干渉訴訟でこの問題を取り上げるよう連邦最高裁判所に要請した後に行われた。

 最高裁判所は短い命令の中で、「判決前の裁定令状の申し立ては却下される」と述べた。 判事らは同決定の理由を示さず、反対意見もなかった。 この決定は、訴訟が通常の上訴手続きを通じて進められることを意味する。 現在、米国コロンビアD.C.巡回区控訴裁判所で係争中であり、2024年1月9日に弁論に進む予定となっている。

 以前、スミス氏は最高裁判所に対し、2024年3月4日の公判期日を維持するために事件の審査を迅速化するよう要請していた。 トランプ前大統領がターニャ・チュトカン地裁判事(District Judge Tanya Chutkan)の判決に対して控訴している間、この事件の一審裁判所でのすべての審理手続きは一時停止されている。

  12月1日、チュトカン判事は、トランプ氏がこの件で直面している4つの刑事告発について大統領の免責特権がないことを明らかにした。 スミス氏は最高裁判所への提出文書で、「(トランプ氏の)免責の主張が当裁判所によって解決され、被告の免責の主張が却下された場合には可能な限り迅速に被告の裁判が進行することが極めて重要である」と主張していた。

 スミス氏の申し立てに応じて、トランプ氏は裁判所によるこの問題の審査を迅速化するよう求めるスミス氏の要求に反発した。

 トランプ前大統領は、この事件は公的に重要であるからこそ、「猛スピードではなく、慎重かつ熟慮した方法で解決」されるべきだと主張していた。

 トランプ氏は自身のソーシャルメディアプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」で連邦最高裁判所の12月22日(金)の決定を称賛した。

 今回、スミス特別検事は連邦最高裁判所に対し、トランプ大統領の大統領免責請求の審査を迅速化するよう要請すると同時に、コロンビア特別区巡回裁判(D.C. circuit)に対し控訴手続きの迅速化も要請した。 DC巡回控訴裁判所は12月13日に手続きを迅速化することに合意していた。つまり、この問題に関する両当事者の準備書面(brief)(筆者注4)は2023年12月末までに提出される予定となっている。

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(筆者注1) 大統領免責特権(presidential immunity)につきFind Law の解説を以下、仮訳する。

 合衆国憲法は、刑事訴訟や民事訴訟からの大統領の免除について直/接議論していない。 その代わりに、この特権は、最高裁判所による第 2 条第 2 項第 3 項の解釈を通じて、時間の経過とともに発展してきた。

 大統領は、上院の休会中に発生する可能性のあるすべての空席を、次の会期終了時に期限切れとなる委員会を付与することによって補充する権限を有する。

 トランプ政権の元当局者が議会の調査で召喚されたため、大統領免責の考え方は近年メディアの大きな注目を集めた。 しかし、この法理論は 1860 年代にまで遡る。(以下は 略す)

(筆者注2) 2020年大統領選挙で第45代米国大統領ドナルド・トランプ氏が敗北してから2か月後の2021年1月6日水曜日の午後早く、彼の支持者の暴徒が米国議会議事堂を襲撃した。 ワシントンD.C. 暴徒は、議会合同会議が次期大統領ジョー・バイデンの勝利を正式に認定するための選挙人投票の集計を阻止することで、トランプ大統領の権力を維持しようとした。 この事件を調査した下院特別委員会によると、この攻撃は選挙を覆すためのトランプ大統領の7つの計画の集大成であった。

 事件の直前、最中、あるいは直後に5人が死亡した。1人は国会議事堂警察に射殺され、もう1人は薬物の過剰摂取で死亡、3人は自然死であり、その中には自然死と判断された警察官も含まれていたが、検視官もこう述べた 「起こったすべてのことが彼の状態に影響を及ぼした」と述べた。 警察官138名を含む多くの人が負傷した。 この攻撃に対応した警察官4名が7か月以内に自殺で死亡した。 2022 年 7 月 7 日の時点で、攻撃者による金銭的損害は 270 万ドルを超えている。(Wikipediaを抜粋、仮訳した )

(筆者注3) ドナルド・トランプ前米大統領は8月3日、ワシントンのコロンビアD.C.の連邦裁判所で4件の刑事告発について無罪答弁を行った。この容疑は、トランプ氏が2020年大統領選挙への介入を共謀したとされる8月1日に開封された起訴状に端を発している。

 トランプ前大統領は、4つの連邦刑事告訴の罪状認否のため、個人弁護士とともにモクシラ・ウパディヤヤ連邦地裁判事(Magistrate Judge Moxila A. Upadhyaya)に出廷した。 トランプ氏は、(ⅰ)米国連邦政府に対する詐欺の共謀(conspiracy to defraud the US government)、)(ⅱ)公的手続きの妨害の共謀、公的手続きの妨害と妨害の試み(conspiracy to obstruct an official proceeding, obstruction of and attempt to obstruct an official proceeding)、および(ⅲ)米国の有権者の投票権に対する共謀(conspiracy against US voters’ civil rights)について無罪を主張した。 これらの罪状にはそれぞれ、最高で5年、20年、20年、10年の拘禁刑が科せられる。(JURIST解説から抜粋、仮訳した)

(筆者注4) 裁判のさまざまな段階で提出される、訴訟の論点を明らかにして自らの立場を有利に運ぶための書類を指す。

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二ューヨーク州上訴裁判所は民事詐欺裁判でトランプ前大統領が申し立てた(法廷で審議中の事柄の)発言禁止令を支持

2023-12-19 14:43:45 | 国家の内部統制

 筆者の手元にピッツバーグ大学ロースクールの2024学年度法務博士課程(J.D. Candidate)(筆者注1)ローレン・バン(Lauren Ban)氏のJURISTレポートが届いた。専門家がゆえに原データとのリンクがしっかりできており、わが国でも参考になりうる法律レポートといえる。

Lauren Ban氏

 筆者は、かつてトランプ裁判自身、トランプ氏の身内や一族、支持グループに関する民事、刑事裁判に関して、2022年8月27日のブログおよび同年11月7日のブログで具体的に取り上げた。

 ニューヨーク州上訴裁判所は12月14日、裁判所が行った「発言禁止令(緘口令)」(gag order)を覆そうとするドナルド・トランプ前大統領の申し立てを却下した裁判決定の専門家向け解説である。この決定についてはCNN等が訳文記事で概要を報告している。

 しかし、この問題はそう簡単ではない。例えば、記事に出てくる①「箝口(かんこう)令(または緘口令・接近禁止命令)」とは具体的に何か、②上訴裁判所(ニューヨーク州の最上級審)の同州の裁判制度の構造とは・位置付けは、③トランプ氏の金融詐欺を巡る民事訴訟(筆者注2)の具体的中身とは等である。

  さらに本ブログを執筆中にピッツバーグ大学ロースクールの記事や米国主要メデイア記事で12月15日、米連邦陪審、名誉毀損訴訟でルディ・ジュリアーニ(Rudy Giuliani)氏に計1億4,800万ドル(約210億1600万円))の支払いを命じる決定という情報を得た。

 今回のブログは、(1)二ューヨーク州上訴裁判所は民事詐欺裁判でトランプ前大統領が申し立てた発言禁止令を支持判決の経緯と内容、(2) 米連邦陪審、名誉毀損訴訟でルディ・ジュリアーニ氏に計1億4,800万ドル(約211億1600万円))の支払いを命じる陪審決定評決の概要を整理する。

1.ニューヨーク州の裁判制度の解説

 筆者は2021年2月27日「わが国および海外主要国の裁判制度および法令・判決等の調べ方・ガイダンス-判例検索システムのAI化を探る-(その3)」でかつて取り上げた。ただし、巻末で「次回以降、DISTRICT COURT、FAMILY COURT、SURROGATE'S COURT、Town and Village Courts 等に続く」と記したが、筆者の都合で中断している。

 機会を見て追加したい。

 2.Lauren Ban氏のJURISTレポートの仮訳

 トランプ前大統領と彼の一族の事業に対する州の民事詐欺裁判において、下級裁判所の判事によって科されたもの。控訴手続きは継続中だが、民事裁判は12月13日に結審した。12月15日、トランプ前大統領は12月14日の判決に対して州の最高裁判所(New York Supreme Court)であるニューヨーク上訴裁判所(New York Court of Appeals.)に控訴する意向を示していた。

 ニューヨーク州最高裁判所の4人の裁判官からなる合議体は、短い命令の中で、トランプ氏の上訴は民事詐欺裁判を監督するアーサー・エンゴロン(Arthur F.Engoron)判事(筆者注3)が発した「緘口令と法廷侮辱命令(Contempt Orders)(筆者注4)に異議を申し立てるための適切な手段」に依存していないと判断した。

Arthur F.Engoron判事

 トランプ氏は、個人が裁判官の作為または不作為に異議を申し立てることを認めているニューヨーク州第 78 条に基づいて控訴していた。すなわちトランプ前大統領は、エンゴロン判事の10月3日の緘口令とその後の追加命令に異議を唱えようとした。この緘口令により、トランプ氏と弁護士らは「法廷内外を問わず、裁判官スタッフに言及するいかなる公的声明」も禁じられた。この命令を出した後、エンゴロン氏は、緘口令の条件に違反したとしてトランプ氏を 2 回侮辱罪で告訴し、また前大統領に総額15,000ドル(約218万円)の罰金を科した。

 トランプ氏は、自身に対する緘口令は 米国憲法修正第 1 および ニューヨーク州憲法第 1 条第 8 節(Article I - Bill Of Rights Section 8 - Freedom of speech and press; criminal prosecutions for libel) (筆者注5)に基づく自身の権利を侵害していると主張した。同法廷は緘口令の重大さについてはトランプ大統領と意見が異なっているようで、この令の限定的な性質がトランプ大統領と彼の言論の自由の権利に害を及ぼす可能性は非常に小さいと説明した。 裁判所はまた、エンゴロン判事の命令は「通常の上訴手続きを通じて検討可能」であるため、トランプ大統領が第 78 条(筆者注6)の手続きに依存したのは見当違いであると認定した。

 トランプ夫妻とトランプ一家等に対する民事詐欺裁判は、11週間と47人の証人(トランプ氏自身を含む)を経て、12月13日についに結審した。 2022年9月、ニューヨーク州司法長官レティシア・ジェームス(Letitia James)は、トランプ夫妻がより有利な融資金利と減税を得るために金融詐欺に関与したと非難した。裁判が始まる前に、エンゴロン判事は、2011 年早い時期にトランプ夫妻がさまざまな事業資産の財務評価について嘘をつき、1980 年代に遡って詐欺を行っていたことを明らかとした。

Letitia James 氏

 エンゴロン氏は、この事件の残りの 6 つの罪状についてさらに評決を下さなければならない。この事件は裁判官裁判(bench trial)として行われたため、エンゴロン氏は裁判官と陪審員の両方を務めた。判決は2024年初めに下される予定である。

 トランプ氏は、91 件の連邦および州法にもとづく罪状に及ぶ、4 件の刑事訴訟に個別に直面している。事件の 1 つは、2020 年米国大統領選挙の結果を覆すために共謀したと主張しており、米国連邦最高裁判所以来注目を集めている。同裁判所は、「大統領の絶対的免責(absolute presidential immunity)」というトランプ大統領の主張を審理することに同意した。12月15日、著名な法学者と「法の支配協会(Society for the Rule of Law)」)関係者のグループは、法廷準備書面を通じてトランプ氏の主張を却下するよう裁判所に促し、「大統領の免責特権が最もしてはならないことは、再選に敗れた大統領を勇気づけて、公的行為その他を通じて犯罪行為に従事させることである」と述べた

3.米連邦陪審、名誉毀損訴訟で元トランプ弁護士ルディ・ジュリアーニ氏に計14,800万ドル(2111600万円)の支払いを命じる

  ピッツバーグ大学ロースクールのセレステ・ホール(Celeste Hall)氏のレポート及びPOLITICO記事を併せ仮訳する。

 米連邦陪審は12月15日、2020年ジョージア州大統領選挙の結果を改ざんしたとして母親ルビー・フリーマン(Ruby Freeman)と娘ワンドレア(シエイ)・モス(Wandrea (Shaye) Moss)を告発した元トランプ弁護士(元ニューヨーク市長)ルディ・ジュリアーニ(Rudy Giuliani)氏に対し、彼女らに計1億4,800万ドル(210億1600万円)の民事損害賠償を評決で支払うよう命じた。

 ワシントンD.C.の住民8人からなる陪審は、ジュリアーニ氏から名誉毀損を受けたとしてルビー・フリーマン氏と娘のシェイエ・モス氏にそれぞれ約1600万ドル(約22億9585万円)、ジュリアーニ氏の申し立てに続いて脅迫や嫌がらせ、専門職による大量の脅迫を受けた後に経験した精神的苦痛に対してそれぞれ2000万ドル(約28億6982万円)の賠償を命じた。

 また同陪審は、ジュリアーニ氏が今後同様の中傷行為に参加するのを阻止することを目的とした「懲罰的」損害賠償金として7,500万ドル(約107億6180万円)を支払わなければならないとの判決を下した。

POLITICO記事から抜粋

 

母Ruby Freeman氏と娘Wandrea (Shaye) Moss氏(MSNBC動画画像から一部抜粋)

 2023年夏、連邦判事はジュリアーニ氏が名誉毀損(defamation)、精神的苦痛を意図的に与えたこと(intentional infliction of emotional distress)、およびそれらの不法行為を行う民事共謀(civil conspiracy)(筆者注7)の罪で有罪と認定した。 ジュリアーニ氏は判決後もフリーマン氏とモス氏に対する軽蔑的なコメントを続け、彼らが不正に選挙結果を改変したとの主張を強めた。 ジュリアーニ氏は、原告側が自身のオンラインでのコメントが損害の「直接の原因」であることを証明しておらず、訴訟を十分に主張していないと主張し、12月初旬までこの判決を争った。今回、 コロンビア地区連邦地裁ベリル・ハウエル(Beryl A.Howell)判事はこれらの上訴のそれぞれを却下した。

Beryl A. Howell 判事

 ジュリアーニ氏は、この決定に対して今後も闘い続けると述べた。 彼の弁護士は損害賠償額の減額を求めて控訴をまとめている。

*********************************************************

(筆者注1) 法務博士、法務博士、または法務博士(Juris Doctor: JD)は、大学院で入学可能な法律の専門職学位です。 JD は、米国で法律実務を行うために取得される標準的な学位です。他の一部の法域とは異なり、米国では実務に学士号は必要ありません。米国では、オーストラリア、カナダ、その他のコモンロー諸国と同様、ロースクールを修了することで法学博士号を取得できます。 これは、米国では(研究博士号とは対照的に)専門職博士号の学術的地位を有しており、米国教育省の国立教育統計センターでは「PhD – Professional Practice」と表現されています。(Academic Acceleratorの解説から抜粋)

 法務博士 (JD) の学位取得を検討しているのはあなただけではない。 米国では毎年何千人もの人々が法務博士号を取得していますが、われわれの調査によると、彼らはさまざまな理由で法務博士号を取得している。たとえば、他者を助けるため、刺激的な分野で働くため、さまざまな職業への扉を開くためなどである。このページには、法務博士号の概要と、法科大学院への進学計画に使用できるリソースが含まれている。

 法務博士の学位は、法律学習における「第一学位」とみなされる。 言い換えれば、米国で弁護士として活動したい場合は、ほとんどの場合、法務博士の学位が必要になる。 しかし、JDは弁護士になりたい人だけが取得するわけではない。 法務博士号を取得して法律図書館司書になったり、学術界に入ったり、コンサルティング業界に就職したりする人もいる。 政治に参入したい場合や、権利擁護の活動をしたい場合にも役立つかもしれない。

 法務博士の学位は、ABA 認定のロースクール、ABA 認定されていない学校、およびカナダおよびその他の世界の多くのロースクールによって提供される。

 米国では、JD プログラムへの入学には学士号が必要であり、 他の国では入学要件が異なる。さらに、各学校には独自の一連の要件がある。効率的に申請できるように、学校が何を要求しているかを必ず理解されたい。

 JD プログラムのほとんどは 3 年間のフルタイム・プログラムであるが、ただし、多くの法科大学院では、修了までに約 4 年かかるパートタイム・プログラムを提供している。(アメリカ・ロースクール入学判定協議会(Law School Admission Council: LSAC)サイトを仮訳)

(筆者注2) 2023.11.7付けのBBC記事(日本語版) (英字版)等が参考になろう。

(筆者注3)アーサー・エンゴロン(Arthur Engoron)判事の略歴

(筆者注4) 法廷侮辱または裁判所侮辱(さいばんしょぶじょく、英: contempt of courtまたは単にcontempt)とは、裁判所またはその職員に対する、反抗的な、または敬意を欠く非違行為であって、裁判所の権能、正義および権威に反抗しまたはこれを毀損する態様で行われるものをいう。(Wikipedia から抜粋)

(筆者注5) 「ニューヨーク州憲法 第 1 条 権利章典 第 8 節 - 言論および報道の自由、 名誉毀損に基づく刑事告訴(Article I - Bill Of Rights Section 8 - Freedom of speech and press; criminal prosecutions for libel )」の仮訳

 すべての国民は、その権利の濫用に対して責任を負いながら、すべての主体について自由に自分の感情を話し、書き、発表することができる。 また、言論や報道の自由を制限したり短縮したりする法律は制定できない。すべての刑事訴追または名誉毀損の起訴では、陪審に対して真実が証拠として提出される場合がある。かつ名誉毀損として告発された事項が真実であり、善意と正当な目的のために出版されたものであると陪審が判断した場合、当事者は無罪となる。 そして陪審は法律と事実を決定する権利を有する。 (2001 年 11 月 6 日の国民投票により修正された)

(筆者注6) 「第 78 条訴訟」とは何か?

 ニューヨーク州民事訴訟法および規則 (New York's Civil Practice Law and Rules :CPLR)第 78 条訴訟は、主にニューヨーク州および地方自治体の当局による行為(または不作為)に異議を申し立てるために使用される訴訟をいう。 第 78 条訴訟は、裁判官、法廷、審議会、さらには法定権限に基づいて存在する民間企業に対しても提起されることがある。

 特に、ニューヨーク労働省の失業保険控訴委員会の決定に対する控訴は例外である。 このような上訴は、ニューヨーク州最高裁判所第三部上訴部に行う必要がある。

 ニューヨーク州では、ほとんどの行政処分に対して第 78 条の手続きが利用可能であるが、特定の上訴手続きがあるかどうかを判断するには、特定の機関または団体を管轄する法律を参照する必要がある。たとえば、不動産法は、固定資産税評価に異議を唱えたい住宅所有者が使用できるプロセスを確立している。(Legal Assistance of Western New York, Inc.の解説を仮訳)

(筆者注7) 民事共謀には 3 つの主要な要素がある。

①個人または団体 (共謀者) のグループが協力して違法行為を行うこと。

② その行為には不法な目的があること。

③他人に危害を加えたり損害を与えたりする行為であること。

 この損害は、経済的損失、人身傷害、または評判の低下として現れる可能性がある。 民事共謀法は、コモンローの原則と法律の規定に由来している。 これらの慣習法の原則は、民事共謀罪の請求の要素、責任、救済を確立する。

 米国の裁判所は、1800 年代後半にこの法的請求を認め始めた。 クランプ対コモンウェルス事件では、バージニア州最高裁判所は、他人のビジネスを弱体化させる計画は有効な法的主張であるとの判決を下した。 この考えは他の州裁判所やその後の連邦地方裁判所でも引用され、広がった。(Find LawのCivil Conspiracyの定義を仮訳)

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ドイツ連邦両議会は「ロビー活動登録法」の締め付けを強化する一部法改正を可決

2023-11-27 10:48:44 | 国家の内部統制

 ドイツでは、この数年連邦議会および連邦政府に対するロビー活動の透明性確保のための施策として「ロビー活動登録法(Lobbyregistergesetz) :以下「登録法」という」(筆者注1)が 2021 年 4 月 27 日に成立、公布、2022年1月1日施行された。

 この法律については、わが国では国立国会図書館が2021年4月に簡単な解説を行っている。

 ところで筆者の手元に、最近ドイツ連邦参議院(Bundesrat)のKOMPAKT (筆者注2)の標記議会決議(Beschluss )のニュース

(https://www.bundesrat.de/DE/plenum/bundesrat-kompakt/23/1038/06.html?view=renderNewsletterHtml)が届いた。これにより「ロビー活動登録法」の更なる規制強化法案が可決されたことになる。

 さらに筆者が独自に調べた範囲で補足すると、連邦議会(Bundestag)の登録法の改正の解説サイトも併せて読む必要性を感じ、あらためて連邦議会サイトの法解説等を読んでみた。そこで一部法改正の内容、経緯につき要約すると以下のとおりとなる。

 Ⅰ.連邦議会サイトの改正法の解説

 1.ロビー活動登録法の改正案が提出

 2023年6月23日(金)、連邦議会はSPD(ドイツ社会民主党:Sozialdemokratische Partei Deutschlands)(筆者注3)、同盟90/緑の党(ALLIANCE Bündnis 90/Die Grünen)Bündnis 90/Die Grünen)(筆者注4)およびFDP(筆者注5)が提出した「ロビー活動登録法改正案(20/7346)( Gesetzentwurf der Fraktionen SPD, BÜNDNIS 90/DIE GRÜNEN und FDP:Entwurf eines Gesetzes zur Änderung des Lobbyregistergesetzes)」を初めて審議した。 さらに、ディー・リンケ議員グループからの「ロビーの透明性とロビー連絡先の開示に関する独立審査機関」と題された動議(20/288) (筆者注6)と、AfD(筆者注7)議員グループからの「法改正に関する法案」が初めて提出された。その内容はドイツ連邦議会および連邦政府に対する「ロビー活動のためのロビー登録を導入する法律(ロビー活動登録法一部改正案)Gesetzes zur Änderung des Gesetzes zur Einführung eines Lobbyregisters für die Interessenvertretung gegenüber dem Deutschen Bundestag und gegenüber der Bundesregierung (Lobbyregistergesetz)」(20/1322)」である。 討論の後、提案は主任討論のために選挙検証、免除および手続き規則制定委員会に付託された。

 2023年10月19日、ドイツ連邦議会は、選挙審査、司法および裁判所規則に関する委員会の反省のバージョンでロビー登録法を改正する法律を可決した。

 この法律は、連邦参議院による決議と連邦大統領による法執行を条件として、2024年3月1日に発効する予定である。(筆者注3)

 2.与党連合の改正法案の特徴

 2023年6月23日(金)、SPD、同盟90/緑の党、FDPは、ロビー活動登録法の改正法案(20/7346)を提出した。そこにあるように、与党議会グループは、2022年1月1日から設置され、ドイツ連邦議会の管理下にあるロビー登録制度の初期の実践経験に基づいて、変更が必要であると考えている。 2022年以降、利益団体はドイツ連邦議会または連邦政府のロビー登録に登録する必要がある。情報によると、2023 年 3 月 22 日時点で 5,762 の利益団体が登録されている。一般の人々は、ドイツ連邦議会と連邦政府の共同登録簿を www.bundestag.de/lobbyregister で公開することができる。 特別な検索機能を使用すると、登記簿のエントリを個別に表示したり、フィルタリングして連邦議会や連邦政府の利益を代表する人物を確認することもできる。

1.ロビー活動登録法の概要

 この法律は、ドイツ連邦議会に電子形式で保管される公共ロビー活動登録簿の設置を規定する。すなわち連邦議会や連邦政府の議員に直接的または間接的に意思決定や意思決定のプロセスに影響を与えるために連絡を取る、またはこれを委託する利益代表者は、公共登録簿に登録する必要がある。

(1)このロビー活動登録は、政治に対する国民の信頼と、議会や政府における意思決定や意思決定のプロセスの正当性を強化することを目的とする。その目的は、これらのプロセスに対する利害関係者の影響に関する透明性を高めることにある。

(2)入力する情報および一部の例外は法律で規制されており、任意登録も可能である。該当関係者の登録は無料とする。

(3)活動登録簿に登録することが法的に義務付けられ、または自発的に登録するすべての利害関係者は、ドイツ連邦議会および連邦政府が市民社会の参加を得て制定した行動規範も受け入れなければならず、利益の表明は、公開性、透明性、誠実さ、誠実さに基づいてのみ行われなければならない。

(4)この行動規範の重大な違反が明らかとなった場合、この事実は登録簿に掲載される。これは、ドイツ連邦議会へのアクセス権の付与、委員会の公聴会への参加、連邦省庁の法案草案への協会や専門家グループの参加にも影響を与える可能性がある。

(5)登録簿への記入漏れ、不正確、不完全、または遅滞は行政犯罪となり、最高 50,000 ユーロ(約815万円)の罰金が科せられる。

2.改正法案の主な特徴を概観

 (1) 開示要件の厳格化(Schärfere Offenlegungspflichten)

 2024年1月1日に改正法に発効予定の計画変更に伴い、連立各派は「透明性のある政府活動の観点から」ロビー活動登録法の範囲と開示要件を厳格化したいと考えている。このためには、登録エントリと影響対象をより意味のあるものにし、適用範囲を「適度に」拡大する必要がある。 将来的には、局長レベル以上の省庁との接触も含まれる予定である。

  さらに、利益団体がどの法案や規制案を参照しているのかを明記する必要がある。 利益の表明にとって基本的に重要な声明と報告書は、日時、関心のある分野、影響を受けるプロジェクト、および抽象的な宛先名を記載してアップロードする必要がある。

(2) 資金調達に関する透明性の向上(Mehr Transparenz zur Finanzierung)

 将来的には、利益団体の主な資金源と会費もロビー名簿に記載されなければならない。財務情報を拒否するオプションは利用できなくなる。同法の説明覚書によれば、寄付によって資金を賄われている組織は、主要な資金源に関する必須情報に焦点を当てることで救済されるべきだと述べる。

 将来的には、各会計年度の総額 10,000 ユーロ(約163万円)および寄付金およびその他の寄付金の総額の 10 パーセントを超える寄付金またはその他の寄付金については、事前に名前を提供することが義務付けられるため、彼らがそれぞれの組織に対して支配的な影響力を持っているという仮定に基づくものである。

(3)第三者と回転ドア効果(Drittstaaten und Drehtüreffekt)(筆者注9)

 第三者に代わって利益を代表する場合には、さらなる透明性が期待される。特定の団体では、ロビー活動を行う団体・組織はクライアントとして第三者を指定するとともに、第三者向けの擁護団体への注文量も指定する必要がある。選出された役人や役職者が利益代表活動に移行する場合、現在および以前の役職および任務を開示する必要がある。

 また、登録管理機関として、連邦議会には明らかに矛盾する記載事項を調査する独立した権限が与えられている。同時に、利益団体の更新義務も簡素化される。

(4)この法律は202431に施行される予定。

3.その他

 連邦議会の法解説サイトでは以下の項目が一覧性をもって開示されているが、本ブログでは項目のみ取り上げ、その内容は略す。 

  1. 同法のステークホルダーのへの提供情報(Ⅳ)
  2. 連邦議会および連邦政府の利益団体の宛先に関する情報
  3. 登録法の検索についての案内
  4. 登録法の要約解説A~Z
  5. 法律、議会資料および立法手続き、経緯等に関する詳細解説(一部英語訳もある)
  6. 登録主体

Ⅱ.当初のロビー活動登録法に関する2021年4月27日の国立国会図書館(外国の立法 No.289-12021.10)の解説の引用

【ドイツ】連邦議会及び連邦政府に対するロビー活動の透明性確保―ロビー登録法―連立与党会派(CDU/CSU 及び SPD)の議員提出法案により、ロビー登録法(BGBl. I 2021 S.818)が制定され、2021 年 4 月 27 日に公布された。同法は、正式名称を「ドイツ連邦議会及び連邦政府に対する利益代表のためのロビー登録を採用する法律」といい、2022 年 1 月 1 日から施行される。ロビー活動の透明性確保のため、連邦議会に電子登録システム「ロビー登録簿

(Lobbyregister)」を設置して運用し、継続的に連邦議会、連邦議会議員、会派、議員団又は連邦政府に対するロビー活動を行う者又は団体に登録義務を課す。全 10 か条から成り、その内容は次のとおりである。第 1 条:適用範囲、第 2 条:登録義務、第 3 条:登録内容、第 4 条:登録簿の設置及び運用、第 5 条:誠実な利益代表の原則、第 6 条:ドイツ連邦議会建物入場及び公聴会参加、第 7 条:過料規定、第 8 条:経過措置、第 9 条:報告及び評価、第 10 条:施行。

登録義務が発生するのは、①定期的な活動、②長期的な継続性を目的とする活動、③第三者によるビジネスとしての活動、④直近 3 か月間に 50 件以上の異なる接触が行われた活動についてである。例えば、一地域の関心事、市民からの問合せ、請願、特定の財団又は協会の活動などは、登録義務から除外される。継続的な活動やビジネスライクな第三者によるロビー活動の透明性を確保することによって、政治に対する国民の信頼と、議会や政府における意思形成や決定のプロセスの正当性を強化することを目的とする。(海外立法情報調査室・泉 眞樹子)

Ⅲ.ドイツ連邦参議院サイトのロビー活動登録法の締め付け強化法案の可決経経緯や内容の解説

ドイツ連邦参議院「ロビー活動登録法の一部を改正する法案(544/23)( Gesetz zur Änderung des Lobbyregistergesetzes)の解説サイトから抜粋、引用、仮訳する。

1.ロビー活動登録法の一部改正法の内容について

 2022 年 1 月 1 日から施行された法律により導入されたドイツ連邦議会のロビー活動登録法は、初期の実務経験に基づいて選択的に最適化されることになっている。さらに、透明性のある政府活動の観点から、範囲と開示義務が強化する。

 その目的を達成するために、たとえば次のような方法で、レジスタ・ エントリの重要性が強化され、適用範囲が適度に拡大される。

  1. 部門管理レベル以上の省庁との連絡を含める。
  2. 影響力の対象の重要性を強化する。 将来的には、利益団体がどの立法または規制の提案に言及しているのかを明らかにし、日付、関心のある分野、影響を受けるプロジェクト、および対象を明記した関連声明および報告書を登録簿に入力する必要があるとする。

 ③EU透明性登録制度との調和を通じて、権利擁護に費やされた財政努力に関する情報を強化し、財務情報を拒否する選択肢を削除し、主な資金源を開示する義務を導入する。

 ④利益代表活動(「回転ドア効果」)において選出された役人および役職者を変更する際の透明性につき、現在および以前の役職および権限も開示することにより強化する。

 ⑤独立した監査権限を通じてレジストラーの権限を強化する。

(筆者が議会の説明である1038. BR、11/24/23 - 6 (a) -を抜粋、仮訳した)

2. 法案審議の経過について

 この法律は連立政権(ドイツ連邦議会、SPD(ドイツ社会民主党:Sozialdemokratische Partei Deutschlands)、同盟90/緑の党(ALLIANCE Bündnis 90/Die Grünen)およびFDP)の主導によるものである。

 ドイツ連邦議会は第131回会期でこの法案を可決した。2023 年 10 月 19 日選挙検証・免除委員会によって修正された手順規則が採択された。

3.合同委員会の勧告

 連邦議会(Bundestages)と連邦参議院(Bundesrates)の議員からなる合同委員会はドイツ連邦基本法(Grundgesetz für die Bundesrepublik Deutschland)第 77 条第2項にもとづき法案を提出するよう勧告する。なお、両議会は、合同委員会から求められた命令に拘束されない。

*以下、ドイツ連邦基本法第 77 条第2項を仮訳する。なお、 中川 恒雄氏の全文訳を参考にした。

77 [立法手続]

2 連邦参議院は、法律議決を受け取った後3週間以内に、法律案の合同審議のために、連邦議会および連邦参議院の構成員で組織される委員会の招集を要求することができる。この委員会の構成および手続は、連邦議会が議決し、かつ連邦参議院の同意を必要とする議事規則で定める。この委員会に派遣される連邦参議院の構成員は、命令に拘束されない。法律が連邦参議院の同意を必要とするときは、連邦議会または連邦政府も、招集を要求することができる。委員会が、法律議決の修正を提案したときは、連邦議会は、改めて議決を行わなければならない。

2a  法律のために連邦参議院の同意が必要とされる限り、第 2 項第 1 文に基づく要請がなされていないとき、または調停手続きが行われていないときは、連邦参議院は議会決議を修正する提案がなされないまま終了しない限り合理的な期間内に同意について決議しなければならない。

4.一部改正法案の可決

2023 年 11 月 24 日、連邦参議院は、議会グループのイニシアチブに基づいて連邦議会が 2023 年 10 月 19 日に可決した「ロビー活動登録法の一部改正案」を可決・承認した。この法律は今後、連邦政府を通じて連邦大統領(Bundespräsident)(筆者注3)に提出され、署名を得た後、連邦法官報で発表される予定である。

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(筆者注1) “Lobbyregistergesetz”の訳語は、国立国会図書館の訳のとおり「ロビー登録法」となろう。しかし、この法律が目指すものはロビー活動の透明化であり、この訳は直訳すぎる。したがって、本稿では筆者はあえて「ロビー活動登録法」の訳語を使う。

(筆者注2)「 連邦参議院KOMPAKT」は、以下の通り連邦評議会の本会議に関する包括的で明確な構造情報を提供するサービスを提供する。連邦評議会は、各本会議のウェブサイトに広範な情報を公開している。議会の議題に加えて、印刷物、説明、スピーチリスト、ニュースレター、記事、画像ギャラリー、ビデオ等であり、連邦参議院KOMPAKTは、これらのドキュメントを1か所にまとめる情報部門である。

〇プレビュー(Vorschau)

個々の議題項目の内容と委員会の推奨事項の説明するもので、各議題は、連邦参議院の会議の2週間前に表示される。連邦参議院KOMPAKTはそれらを準備し、今後のトピックについてコメントされた見通しを与える。

 各本会議では、連邦議会が平均60〜80の議題項目を扱う。連邦参議院KOMPAKTは、委員会が連邦評議会に推奨する最も重要な措置に関する内容と目標、およびレポートを説明する。本会議の前日に、概要は発表されたスピーカーによって補足される。ワンクリックで、スピーカーの機能と伝記を知ることができる。

〇レビュー(Rückschau)回顧できるビデオ録画

 レビュー:決議の説明とスピーチ内容のビデオ録画である。すでにセッション中に、連邦参議院KOMPAKTでは議会で行われたスピーチのビデオ録画が閲覧可。決議に結果は本会議の直後にここに表示される。簡単な記事は、連邦議会が提示された議題項目に対して行った決議と、今後の手続き手順が保留中であることを説明している。

〇ダウンロード用の写真

 連邦参議院 KOMPAKT画像ギャラリーには、閲覧とダウンロードのためのセッションの無料写真がある。

〇ニュースレターおよびTwitterでの連邦参議院KOMPAKT

 連邦参議院KOMPAKTを無料のニュースレター購読11/25③することもできる 。これにより、現在の会議のプレビューと、本日の最も重要な議題項目の結果、および電子メールによるレビューでのプレナリーの概要が表示される。

 さらに、オンライン編集チームが連邦評議会での現在の出来事について。 Twitter での通知が可能。

(筆者注3) ドイツ社会民主党: Sozialdemokratische Partei Deutschlands、略称: SPD〈エス・ペー・デー〉は、1863年に結成されたドイツの中道左派政党。中道右派政党のドイツキリスト教民主同盟とともにドイツにおける二大政党の一つである。進歩同盟加盟。(Wikipedia から一部抜粋)

(筆者注4) 同盟90/緑の党(Bündnis 90/Die Grünenは、ドイツの環境政党。グローバルグリーンズ加盟。2022年現在、ドイツ連邦議会で118議席を持つ3番目に大きい政党であり、1980年代以降一定の勢力を持っている。1998年から2005年まではドイツ社会民主党と連立政権を組み、脱原発・風力発電の推進・二酸化炭素の削減など環境政策を進展させ、ヨシュカ・フィッシャー外相などの閣僚を送り出した。2021年12月からは社会民主党・自由民主党と連立政権を組んでいる。この期間以外は常に野党であった。(Wikipedia から一部抜粋)

(筆者注5) FDP各派は由民主党( Freie Demokratische Partei、略称: FDP)各派は、ドイツの自由主義政党。自由主義インターナショナル加盟。2021年ドイツ連邦議会選挙では92議席を獲得して第4党を維持し、11月24日にドイツ社会民主党、同盟90/緑の党と連立政権樹立で合意。8年ぶりに政権に復帰することとなった。(Wikipedia から一部抜粋)

(筆者注6) 原語は Antrag である。Antrag は議案の一つであり、日本でいう決議案に相当するものも含むが、議事運営的な動議に相当するものも含んでいる。本稿では、これまでのドイツの議会に関する諸々の論稿を参考とし、Antrag を動議と訳した。(国立国会図書館・外国の立法 255(2013. 3)の注20から抜粋)

(筆者注7) 政党「ドイツのための選択肢( Alternative für Deutschland、略称:AfD(アーエフデー)は、ドイツ政党。メディアでは右派極右政党と表記される。現在の党首はティノ・クルパラアリス・ワイデル氏。

(筆者注8)ドイツの議会制度全体についてドイツ連邦共和国大使館・総領事館のホームページの中の「ドイツの現状」(全183頁)が良くまとまっている。

(筆者注9) ドイツにおける「回転ドア効果(Drehtüreffekt)」とは、いかなる意義を言うのか。筆者なりに調べた。政界を辞め、産業界で高収入の仕事に就く。この現象は一般に回転ドア効果としても知られており、政治とビジネスの間の急速な変化の比喩である。寝返った人々の長くて上位のリストを見ると、あたかも彼らが政界を離れた後、実業界で高給取りの地位に就いているかのように見え、政治とビジネスの間の急速な交代がブームになっているようだ。関心のある方はMaria-Elena Ohle氏の著書「Der Drehtüreffekt – der lohnende Wechsel von der Politik in die Wirtschaft (German Edition) Kindle版」を読まれたい。ただしドイツ語版のみである。

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英国政府と労働者の交渉が「後退」するにつれて英国全土で最大50万人がストライキを行う

2023-02-04 18:43:06 | 国家の内部統制

     2月1日には最大50万人の労働者がストライキを行い、数千の学校が閉鎖され、鉄道が閉鎖され、国境が大幅に混乱し、組合はストライキ終了に関する交渉が「後退している」と述べるなど英国全面的な機能停止状態が続いている。

 著しいインフレ、政府の取組みの甘さはわが国でも同様といえようが、わが国のメデイアは総じて全体像を報じていないし、海外メデイアもロイター通信記事を受け売りである。

 今回のブログは、The Guardian 記事をベースに解説を追加しつつ改めて英国社会の実態を垣間見るべくレポートとしてまとめてみた。

 英国の教師、公務員、国境警備隊のスタッフ、列車の運転手などによるストライキ行動は、大臣が「議論をやめさせるための〕議事妨害(stonewalling)」によるものであると非難したものである。

 2月1日には最大50万人の労働者がストライキを行い、数千の学校が閉鎖され、鉄道が閉鎖され、国境が大幅に混乱し、組合はストライキ終了に関する交渉が「後退している」と述べた。

 閣僚は「国民をだまし」、英国の医療福祉の中核制度である「国民保健サービス(NHS)(注1)と鉄道組合との和解に向けた動きを凍結したとして非難されている。政府筋は、これまでのストライキ行動に終止符を打つことについての2月初めの楽観主義が薄れたことを個人的に認めた。

 調整された一連のストライキには、教師、公務員、国境警備隊のスタッフ、列車の運転手などが関与し、政府は国民に「重大な混乱」に備えるように指示している。

 イングランドとウェールズの何千もの学校は、全英教員連合(National Education Union :NEU)(注2)の最大200万人のメンバーが、全額資金によるインフレを上回る昇給を求めてストライキ行動を起こすことにより、閉鎖されるか、または部分的に閉鎖される。スコットランドのファイフとオークニー諸島の学校も、国内最大の教育組合であるスコットランド教育研究所(EIS) (注3)による地域行動の一環として、2月1日にストライキを行った。

 NEUは、85%の学校が影響を受けると予測しており、ある調査では、最大7校に1校がすべての生徒に閉鎖され、特にロンドンでは4分の1に上昇することが示唆されている。

 ストライキ中の教師は事前に学校に伝える必要がなく、保護者は代替の手配を迫られているため、混乱の全容は学校の日が始まるまでわからない。首相の公式スポークスマンは、この情報の欠如は「失望した」と述べた。

 イングランドのほとんどの列車は運行されず、14の大手の列車運転手(注4)に影響を与える行動があり、他方、公務員中心の英公共商業サービス組合(Public and Commercial Services Union:PCS)(注5)スタッフによるストライキのために空港や入国審査ホールの列で混乱がエスカレートすることが予想される。

 内閣府(Cabinet Office)、保健、運輸、教育、ビジネス部門、大英博物館(British Museum)、選挙委員会(Electoral Commission)、英国宇宙局(UK Space Agency)(注6)、土地登記所など、100を超える部門や公的機関からも10万人以上の公務員がストライキを行う予定である。

 どの大臣と組合の間でも新たな協議は計画されていないが、教育大臣のジリアン・キーガン氏は今週初めに4つの教育組合と会った。

Gillian Keegan氏

 来週までストライキをしていない国民保健サービス(NHS)の労働者の間では、効率性が見つかれば賃金交渉が検討されているという政府のブリーフィングが無に帰したという特別な怒りがある。

 ある保健組合幹部筋は、政府はその後の会合の申し出をすべて「議事妨害」していると述べた。スナク首相のスポークスマンは、今後の会談について、「現在計画されているものは承知していない」と述べた。

 ストライキを回避するための交渉は1月31日に決裂し、NEUは2月と3月下旬に予定されているストライキを回避するための交渉を再開することに熱心であると述べたが、財務省が事実上進展を阻止しているため、突破口の見込みはほとんどないようだ。

 NEU共同書記長のメアリー・バウステッド(Mary Bousted)氏(注7)は、「これは組合の役割を理解していない政府のせいである。結局のところ、彼らが交渉しなければならないことを理解していない。現時点では、彼らは申し出をしていない。

Mary Bousted 氏

 「ストライキ行動の翌日まで27日ある。我々は、この紛争の解決を交渉するためにその時間を使うことを約束する。我々は政府に同じコミットメントを示すよう求める」

 列車運転手組合(train drivers’ union)は、2月1日のストライキの前に賃金紛争を解決する努力が完全に行き詰まり、英国の鉄道の多くが停止すると述べた。

 英鉄道運転士労働組合(ASLEF)(注6)の副書記長であるサイモン・ウェラー(Simon Weller)氏は、ドライバーはこれまで以上に決議から遠ざかっていると述べた。彼はガーディアン紙に、「残念ながら、物事はある程度後退している」と語った。

Simon Weller 氏

 ウェラー氏は、鉄道事業者を代表するレール・デリバリー・グループ(Rail Delivery Group)が先月、組合がそれを見る前にすぐにマスコミに発表した最初の申し出に関する交渉七の決裂を非難した。「それは我々が交渉プロセス、プロトコルで持っていたすべての信頼を壊した・・・・そして問題は、彼らが隅に自分自身を描いたことである。」

 彼は、オファーと添付された文字列は、それが「失敗するように設計されている」ことを意味すると述べた。組合指導者を怒らせるだけでなく、運転手が取引の詳細に激怒したため、この動きは裏目に出たと彼は語った。先週、1,000人のメンバーでウェビナーを行った・・・質問は、いつ個人分担金(ante)が上がるのかということであった。彼らは本当に怒っている」彼は述べた。

 乗客は旅行前に確認するように言われており、ASLEFは今週24日間のストライキの最初の週を開始するため、ほとんどの都市間および都市の通勤ルートで列車はまったく走っていない。2月3日にはさらに24時間のストが行われる。

 イングランドの14の鉄道事業者のうち、サウス・ウェスタン鉄道のみが通常のサービスを実行しようとしているが、グレーター・アングリア(Greater Anglia)LNER(London North Eastern Railway)GWRはスケルトン・サービス(サービスなどを基本的なレベルで運営し続けるために必要な最低限の従業員数)を運営する。

 2月1日には、ストライキの影響を緩和するために約600人の軍人が配備される予定であり、そのほとんどが国境任務に関するものである。

 首相の公式スポークスマンは、「明日行われるストライキ行動の規模を考えると、重大な混乱があり、日常生活を送ろうとしている国民にとって非常に困難になることを私たちは知っている」と述べた。

 政府高官筋は、首相は、1月30日にNEUに例外が設けられたものの、真剣な交渉が行われる前に組合がストライキを中止すべきであることを明らかにしたと述べたが、当局者は解決策を見つけるために絶えず取り組んでいると述べた。

 情報筋は、保健・教育組合にとって、大幅な歳出削減や増税がなければ、現在の需要が手ごろな価格ではないことは明らかだと述べた。来週のNHSストライキについて、情報筋は「賃金について話し合う用意があることを示したが、着陸帯がなければならない。それが組合にとってどのように見えるかはわからないし、全面的に10%の上昇を前提に始めることはできない」と述べ、保健組合は、政府自身の提案がどのようになるかについての指示を受け取っていないと述べた。

 国境警備隊のフィル・ダグラス(Phil Douglas)局長は、ロンドンで開催された空港運営者会議で、ストライキは、軍隊が配備され、待ち時間がわずかに減少した12月のストライキよりも大きな影響を与える可能性があると語った。

Phil Douglas局長

 今回、ダグラス局長は「みんなが出て行く。明日はPCSのメンバー全員がストライキで満員だ」と述べた。彼は、「間違いなく」国境軍によるさらなるストライキがあり、PCSの任務は5月まで続くだろう。われわれは彼らがそれを使用することを期待するだろう」と述べた。

 ドーバー(Dover)、カレー(Calais)、ダンケルク(Dunkirk)、そしてフランスとのユーロトンネル入り口で働く国境警備隊のスタッフは、半期中にストライキを行うと、PCS組合は2月31日の夜に発表した。

 現在の紛争中の港湾での最初の産業行動では、この行動は2月17日、18日、19日、20日,1000人以上の官吏に影響を与えると予想されている。

 この行動は、現在の紛争中に英国の港に影響を与える最初のものであり、学校の休暇中に混乱を引き起こす可能性がある。港のストライキは、ウエスタン・ジェット・フォイル(Western Jet Foil)とマンストンの処理センターで小型ボートで新しく到着した国境警備隊の官吏には影響しない。

 NHSのストライキは2月第2週にエスカレートすると予想され、水曜日を除く毎日行われ、救急車のスタッフ、看護師、理学療法士が含まれる。

 組合はさらに、NHSの給与審査機関のフィリッパ・ヒルド委員長が、保健社会福祉省が締め切りからほぼ3週間後の4月に始まる次の給与ラウンドまでに証拠を提出していないことを明らかにしたことにさらに怒りを抱いた。

 最大の健康組合であるユニゾン(Unison)(注7)は、3月までのストライキ日を発表すると述べ、健康信託の数が2倍になり、英国の救急車サービス全体が含まれる可能性がある。

 同組合の保健責任者であるサラ・ゴートン氏は、大臣たちは和解に向けて取り組んでいるふりをして「国民を追い払っている。賃金交渉はなく、首相は国民をだまそうとするのをやめなければならない」と彼女は語った。

Sara Gorton氏

 さらに「政府の戦術は、掘り下げて、給与審査機関の報告を何ヶ月も待ち、論争がなくなることを願うことのようです。そうはならない」と述べた。

 ロイヤル・カレッジ・オブ・ナーシング(Royal College of Nursing:RCN)(注8)GMB組合ユナイト(Unite)のメンバーは来週の2月6日にストライキを行い、7日にRCNからの9日目の行動が続く。チャータード理学療法士協会(Chartered Society of Physiotherapy) (注9)は 2 月 9 日木曜日にストライキを行い、15,000 人のユニゾン救急車スタッフが10日、イギリスの 5 つの救急車サービスで行動を起こす。

Institute for Government (注10)は、公務員の現場離職率が過去 10 年間で最高レベルであることを示すレポートを発表した。 士気は2015年以来初めて低下し、調査対象者のうち、組織が目標を達成するための動機付けになっていると答えたのはわずか41%で、前年の51%から大きく減少した。

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米メリック・B・ガーランド連邦司法長官は1月12日、バイデン大統領の機密文書問題の特別顧問としてメリーランド地区の元米国検事ロバート・ハー氏を任命したと発表

2023-01-15 15:49:47 | 国家の内部統制

 ジョー・バイデン大統領が政府の機密文書を不適切に処理したかどうかを調査する特別顧問に任命されたロバート・K・ハー(Robert K. Hur)氏は、機密漏洩調査の経験を持つ元司法省の高官である。

 この司法長官による特別顧問に任命は、今回が初めてではない。2022年11月18日、連邦司法省の元検事であり、ハーグの国際刑事裁判所の元主席検事であるジョン・L・スミス(JOHN L. SMITH)氏を、進行中の2件の犯罪捜査を監督する特別顧問として任命した。この人事発表は後述するとおり、トランプ前大統領の2020年の大統領選挙後の権力の移譲、または2021年1月6日前後に行われた選挙人団の投票の認証を違法に妨害、機密文書やその他の大統領の記録を含む進行中の調査およびその調査の妨害の可能性等である。

Robert K. Hur 氏

 今回のブログは、基本的な点で不正確な情報記事が出回っている点を反省する意味で以下をまとめた。なお、言うまでもないが、米国メディアの情報収集力には頭が下がる。

(1) 米国司法長官メリック・ガーランドによって任命されたハー氏(50歳)とは?ならびに任命に至る経緯

(2) ジョン・L・スミス特別顧問の任命とその後の動向

(3)“special counsel”の正確な訳語とは、わが国メディアが100%「特別検察官」と誤訳している。正しい訳語解説、根拠法等を明記する。

(4) アメリカの大統領図書館制度〔Presidential Libraries〕につき根拠法を含め正確な解説を試みる。

 なお、今回筆者は改めてトランプ・シンパの顔ぶれを眺めてみた。詳細を逐一点検したわけではないが、なかなか各主張は個性的かつ極めて攻撃的アジテーターまたはキャリア―の捏造等であり、米国の政治論を学ぶには絶好の材料である。

1.米国司法長官メリック・ガーランドによって任命されたハー氏(50歳)とは?ならびに任命までの経緯

 1月12日に米国司法長官メリック・ガーランドによって指名されたハー氏は、トランプ政権時代に任命されたメリーランド州の米国連邦検事であり、最近ではギブソン・ダン・アンド・クラッチャー(Gibson, Dunn & Crutcher)法律事務所の訴訟パートナーを務めていた。

 ガーランド長官は、ハー氏がバイデン氏の副大統領時代の機密記録がデラウェア州の民主党員邸とワシントン州のシンクタンクに不適切に保管されていたかどうかを判断する準独立検察官たる特別顧問として行動すると述べた。

左:ラウシュ連邦検事 右:ガーランド司法長官

 ハー氏は、「個人または団体が法律に違反しているかどうか」を調べるだろうと、ガーランドは述べた。

 ハー氏は2018年にトランプ前大統領からメリーランド州の最高連邦法執行官(chief federal law enforcement officer)に任命され、2021年初めに共和党大統領の任期が終了したことでその地位を離れた。

 ハー氏は、今回、特別顧問の就任後に発表された声明で、「公正、公平、冷静な判断で、割り当てられた捜査を遂行する、恐れや好意を持たずに、迅速かつ徹底的に事実に従う」つもりであると付け加えた。

 一方、ホワイトハウスは、特別顧問の調査に協力することを約束した。

2.司法長官メリック・B・ガーランドは2022年11月18日ジョン・L・スミス(JOHN L. SMITH)氏をトランプ全大統領に関し進行中の2件の犯罪捜査を指揮・監督する「特別顧問]として任命

(1)2022.11.18 米連邦司法省広報室 「特別顧問(special counsel)の任命」リリース文を仮訳する。

 司法長官メリック・B・ガーランドは2022年11月18日、司法省の元検事であり、ハーグの国際刑事裁判所の元主席検事であるジョン・L・スミス氏(注1)を進行中の2件の犯罪捜査を監督する特別顧問として任命したことを発表した。任務の1つ目は、コロンビア特別区の裁判所への提出書類に記載されているように、2020年の大統領選挙後の権力の移譲、または2021年1月6日前後に行われた選挙人団の投票の認証を違法に妨害した個人または団体の有無に関する調査である。 2つ目は、機密文書やその他の大統領の記録を含む進行中の調査、およびその調査の妨害の可能性であり、フロリダ州南部地区の係争中の問題で提出された裁判所の提出書類で参照および説明されている。

 ガーランド司法長官は「トランプ前大統領が次の選挙で大統領候補であると発表したことや、現職の大統領も候補者になる意向を表明したことなど、最近の進展に基づいて、私は、特別な人物をと特別顧問として指名することは公共の利益にかなうと結論付けた。このような任命は、特にデリケートな問題における独立性と説明責任の両方に対する国務省のコミットメントを強調するものである。また、このことで検察官や捜査官は迅速に仕事を続け、事実と法律のみに基づいて決定を下すことができる。」と述べた。

 また司法長官は、「特別顧問は司法省の職員の日常的な監督を受けることはないが、彼はDOJの規則、手順、および方針を遵守しなければならない。私は、特別顧問がこの仕事を迅速かつ完全に遂行するためのリソースを確実に受け取るようにする。これまでの仕事とスミス氏の検察官としての経験を考えると、この任命がこれらの捜査の完了を遅らせることはないと確信している。これらの捜査を追求している男性、女性は、最高水準のプロフェッショナリズムに従って行動しており、この部門の通常のプロセスがすべての調査を誠実に処理できると強く信じている、しかし、彼らのみで得意になるのは危険であり、現時点で特別顧問を任命することは正しいことだと思う。ここに提示された異常な状況はそれを要求する。したがって、スミス氏の任命は、公平かつ緊急にこれらの問題を完了するための正しい選択である。」と述べた。

(2) ジャック・スミス特別顧問の活動内容

 NBC news記事を仮訳する。

 ジャック・スミス特別顧問は、ドナルド・トランプ前大統領、彼の選挙運動、および2020年の選挙を覆すための彼の努力を支援した一連の補佐官と同盟者に関係するすべての通信について、主要な大統領激戦州の地方当局責任者を大陪審召喚した。

 ミシガン州ウェイン郡、ウィスコンシン州ミルウォーキー郡とデーン郡、アリゾナ州マリコパ郡であるの選挙当局のトップに召喚状が発行された。これらの郡には、デトロイト、ミルウォーキー、マディソン、フェニックス、ピッツバーグがある。

 召喚状の存在は、2022年12月6日にワシントンポスト紙によって最初に報告された。

 同召喚状は、偽の選挙人が関与する計画をスミスが調査していることを示している。

 ミルウォーキー郡書記のジョージ・クリステンソンのスポークスパーソンは、スミスの事務所が召喚状を送ったと認めた。 NBC ニュースが入手し、11 月 22 日に発行された召喚状のコピーは、トランプ元大統領、彼のキャンペーン、および 19 人の側近と同盟者のリストとの、または関与する通信のすべての記録を要求しました。召喚状は、2020 年 6 月 1 日から 2021 年 1 月 20 日までの連絡を求めていた。

 これらの補佐官や支持者には、ジャスティン・クラーク(Justin R. Clark)氏(48歳)

シドニー・パウエル(Sidney Katherine Powell (68歳)氏 (注2)

ルディ・ジュリアーニ(Rudolph William Louis Giuliani:79歳 )氏 (注3)

ビクトリア・トーシング(Victoria Toensing:82歳)氏

ジョン・チャールス・イーストマン(John Charles Eastman ( 63歳)

クレタ・ミッチェル(Cleta B. Deatherage Mitchell ) (注4)

ジェナ・エリス(Jenna Lynn Ellis :39歳)氏

 など、2020年の選挙での敗北を覆すためのトランプの努力に密接に取り組んだ選挙運動弁護士や他の弁護士が含まれていた。トランプの2020年のキャンペーン・マネージャーであるビル・ステピエン(Bill Stepien)氏もそのリストに載っていた。

3.ガーランド司法長官や米国メデイアによるこれまでの経緯に関する補足説明

 ガーランド長官や米メデイアのCBS等は、バイデン大統領の機密文書が調査の中心になるようになった経緯について、これまで知られていた以下のことを説明、報じた。

 調査に詳しい2人の情報筋がCBSニュースに対し、約10の文書は、センターにあるバイデン大統領の副大統領事務所からのものである、と情報筋は述べた。CBS ニュースは、FBIも米国の弁護士の調査に関与していることを知った。

 中間選挙直前の2022年11月2日、バイデン氏の個人弁護士が資料を特定したと、大統領特別顧問のリチャード・ザウバー(Richard Sauber)氏は確認した。

Richard Sauber 氏

 ザウバー氏はCBSニュースへの声明で、バイデン氏の個人弁護士が「ワシントンDCのペンシルベニア大学の「ペン・バイデン外交およびグローバル関与センター(Penn Biden Center for Diplomacy and Global Engagement):以下、「ペンバイデンセンター」という」は、米国の第46代大統領であるジョーバイデンにちなんで名付けられたシンクタンクである。

 ペン・バイデン・センターのオフィススペースを空ける準備をするために、施錠されたクローゼットに保管されていたファイルをまとめていたときに発見されたと述べた。同文書は、他の機密書類と一緒に箱に入ったフォルダに含まれていた、と情報筋は語った。情報源は、文書の内容も分類レベルも明らかにしていない。この件に詳しい情報筋は、CBSニュースに、文書に中核となる秘密文書は含まれていないと語った。

 また、ザウバー氏は、資料が発見された同日たる11月2日にホワイトハウスの弁護士事務所が国立公文書館に通知し、国立公文書館は翌朝資料を入手したと述べた。

 さらにザウバー氏は、「これらの文書の発見は大統領の弁護士によってなされた。同文書は、国立公文書館による以前の要求または調査の対象ではなかった。その発見以来、大統領の個人弁護士は、オバマ・バイデン政権の記録が適切に保管されていることを確認するプロセスにおいて、国立公文書館の所有権および司法省と協力してきた」と述べた。

 一方、ガーランド長官は、イリノイ州北部地区連邦検事ジョン・ラウシュ(John R. Lausch,Jr.)氏に、極秘扱いの資料がどのようにしてペン・バイデン・センターにたどり着いたかを調査するよう命じた。この調査は予備的なステップと見なされ、司法長官は特別顧問を任命する可能性を含め、さらなる調査が必要かどうかを判断する材料であった。

 ラウシュ氏は、ドナルド・トランプ前大統領から米国連邦検事に指名されており、現在もトランプ時代の米国の連邦検事を務めている2人のうちの1人である。もう一人は、大統領の息子であるハンター・バイデンの捜査を主導しているデラウェア州の連邦検事デビッド・ワイス(David C. Weiss)である。

David C. Weiss氏

 Lausch 氏は最近、司法長官に説明を行い、最終的に司法長官に最終報告書を提出する予定であった。

 2022年11月4日の夜、国立公文書館の監察官は連邦司法省に連絡し、ホワイトハウスがバイデンが副大統領を辞任した後、バイデンの個人事務所であるペン・バイデン・センターで機密扱いマークの付いた文書が特定されたことを国立公文書館(National Archives and Records Administration, NARA)に通知したと述べた。

 ガーランド長官によると、11月9日、FBI捜査官は機密情報が誤って取り扱われたかどうかを理解するための評価を開始した。その後、ガーランド氏は、トランプ氏が任命者であるラウシュ氏に、特別顧問を任命するかどうかについて初期調査を行うよう依頼したと述べ、ガーランド氏は1月12日に任命を行った。

4.Special Counselの正確な訳語とは?

A.キャノングローバル戦略研究所の主幹である宮家邦彦氏が的確に以下のとおり説明している。

(1)訳語「特別顧問」の意義

そもそもこの官職、英語名だけでも3種類ある。

(1)special prosecutor

(2)independent counsel

(3)special counsel

(1)は文字通り「特別検察官」。1875年にグラント大統領が某スキャンダル捜査のため任命したのが最初だ。この官職名は1983年まで使われたが、1978年に議会が法制化するまでは司法省内部規則などに基づき任命されていた。

(2)は「検察官」なる用語をあえて避けた「独立顧問」だ。ウォーターゲート事件を踏まえ、78年にそれまでの特別検察官の地位を法律で定める「政府内倫理法」が時限立法で制定され、83~99年にはこう呼ばれていた。

(3)は現行の官職で司法省の「特別顧問」。99年の政府内倫理法失効後、連邦規則28章600条に基づき司法長官が米政府外から弁護士を任命して設置できる常勤職だ。

(4)これとは別に1924年、上下両院特別決議に基づき、クーリッジ大統領が「特別顧問」を任命した例がある。

B.前記(3)説の法的根拠

 宮家氏の指摘のとおりロバート・K・ハー氏はガーランド司法長官から特別顧問として任命されたのである。

 さらに正確さを高めるため米国の「特別顧問」の法的根拠を、以下あげる。

Code of Federal Regulations(連邦行政規則集)

 第28編 第6章 パート600 1/13

パート600-特別顧問の一般的な権限

権限: 5 U.S.C. 301;28 U.S.C. 509, 510, 515-519.

§600.1特別弁護士を任命する理由

  司法長官、または司法長官が解任された場合、司法長官代行は、人または事件の犯罪捜査が正当化されると判断した場合に特別弁護士を任命し、(ある)米国検事局または司法省の訴訟部門によるその人物または問題の調査または起訴は、司法省またはその他の異常な状況に利益相反をもたらすであろう。そして

(b)このような状況下では、問題の責任を負うために外部の特別弁護士たる特別顧問を任命することが公共の利益になる。

§600.2司法長官が利用できる行動案

特別顧問の選任を検討すべき事項が司法長官の注意を喚起された場合、司法長官は以下を行うことができる。

(a)特別顧問を任命する。

(b)司法長官が適切と考える事実調査または法的調査からなる初期調査を実施し、決定をより適切に通知するよう指示する。

(c)問題の状況下では、部門の通常のプロセスから調査を削除することによって公共の利益は提供されず、部門の適切なコンポーネントが問題を処理する必要があると結論付ける。司法長官がこの結論に達した場合、彼または彼女は、特定の役人の解任などの利益相反を軽減するために適切な措置を講じるよう指示することができる。

§600.3特別顧問の資格

(ある)特別顧問として指名された個人は、誠実さと公平な意思決定に定評があり、捜査が適切、迅速、徹底的に実施されること、および捜査および起訴の決定が刑法および司法省の方針に関する情報に基づいた理解によって裏付けられることの両方を確保するための適切な経験を持つ弁護士でなければならない。特別顧問は、合衆国政府外から選出されるものとする。特別顧問は、特別顧問としての責任が職業生活において最優先されること、及び、調査の複雑さ及び段階によっては、調査に全時間を割く必要があることに同意する。

(b)司法長官は、適切な任命方法を確保し、特別顧問が倫理および利益相反の問題の適切な身元調査および詳細なレビューを受けることを確実にするために、行政担当司法次官補と協議するものとする。特別顧問は、合衆国法典第5編第7511条(b)(2)(C)1/13(22)に定義される「機密従業員」として任命されるものとする。

§600.4特別顧問の管轄権

(ある) 元の管轄:特別顧問の管轄権は、司法長官が定める。特別顧問には、調査されるべき事項の具体的な事実陳述が提供される。特別検察官の管轄権には、偽証、司法妨害、証拠隠滅、証人への脅迫など、特別検察官の捜査の過程で犯された連邦犯罪(偽証、司法妨害、証拠破壊、証人脅迫など)を捜査し、かつ、これを妨害する意図で犯された連邦犯罪を捜査し訴追すること、調査および/または起訴されている問題から生じる上訴を実施すること権限も含まれる。

(b) 調査の過程で、特別顧問が、割り当てられた問題を完全に調査して解決するため、またはコースで明らかになった新しい問題を調査するために、元の管轄で指定されたものを超える追加の管轄が必要であると結論付けた場合 彼または彼女の調査の結果、彼または彼女は司法長官と相談し、司法長官は追加事項を特別検察官の管轄内に含めるか、別の場所に割り当てるかを決定する。

(c) 民事および行政管轄:特別顧問は、捜査の過程で、行政上の救済措置、民事制裁又は刑事司法制度外のその他の政府の措置が適切であると判断した場合には、必要な措置をとるための適切な構成要素について司法長官と協議するものとする。特別顧問は、司法長官によって特に管轄権を付与されない限り、民事上または行政上の権限を持たないものとする。

 

§600.5特別顧問の補助スタッフ

 特別顧問は、特別顧問を補佐するために適切な部門の従業員の配置を要求することができる。部局は、特別顧問を集め、詳細が入手可能な適切な人員の名前と履歴書を提供するものとする。また、特別顧問は、特定の従業員の詳細を請求することができ、指定された従業員が勤務する事務所は、その要請に対応するために合理的な努力をしなければならない。特別顧問は、特別顧問に配属されている間、その職務を分担し、その業務を監督する。必要に応じて、特別顧問は、省外から追加の人員を雇用または配置するよう要求することができる。部局のすべての職員は、特別顧問と可能な限り最大限に協力しなければならない。

 

§600.6特別顧問の権能(Powers)と法的権限(Authority)

 特別顧問は、次の段落の制限に従うことを条件として、その管轄権の範囲内で、合衆国検事のすべての捜査および訴追機能を行使する完全な権限および独立した権限を行使するものとする。本編に規定されている場合を除き、特別顧問は、司法長官または司法省内の他の者に、その義務および責任の遂行について通知または協議するかどうか、およびどの程度まで通知するかを決定するものとする。

§600.7行動範囲と説明責任

(ある)特別顧問は、司法省の規則、規制、手続き、慣行および方針を遵守するものとする。彼または彼女は、倫理およびセキュリティの規制と手順を含む、部門の確立された慣行、方針、および手順に関するガイダンスについて、部門内の適切なオフィスと相談するものとする。特別顧問は、特定の決定の異常な状況により、指定された部門コンポーネントによる必要なレビューおよび承認手順の遵守が不適切になると結論付けた場合、司法長官に直接相談することができる。

(b)特別顧問は、省の職員の日常的な監督を受けないものとする。ただし、司法長官は、特別検察官に捜査または起訴のステップについての説明を提供するよう要求することができ、検討後、その行動は確立された部門の慣行の下で非常に不適切または不当であり、追求されるべきではないと結論付けることができ。その審査を行うにあたり、司法長官は特別顧問の見解を大いに重視する。司法長官が特別顧問による提案された措置を追求するべきではないと結論付けた場合、司法長官は§600.9(a)(3)に指定されているように連邦議会に通知するものとする。

(c)特別顧問および職員は、司法省の他の職員と同じ基準および範囲で、不正行為および倫理的義務違反について懲戒処分を受けるものとする。そのような問題に関する問い合わせは、司法長官の承認を得て、部門の適切な事務所を通じて処理されるものとする。

(d)特別顧問は、司法長官の個人的な行動によってのみ懲戒処分または解任することができる。司法長官は、不正行為、職務怠慢、無能力、利益相反、または部門の方針違反を含むその他の正当な理由により、特別顧問を解任することができる。司法長官は、特別弁護士に対し、解任の具体的な理由を書面で通知するものとする。

§600.8特別弁護士による通知と報告。

(a) 予算

(1)特別顧問は、司法省からすべての適切な資源を提供されるものとする。特別検察官は、任命後60日以内に、司法長官の審査と承認のために司法管理部門の支援を受けて、今会計年度の予算案を作成するものとする。この提案に基づき、司法長官は特別検察官の運営のための予算を定める。予算には、必要な資格の説明とともに、人員の配置の要求を含めるものとする。

(2)その後、特別顧問は、各会計年度の開始の90日前に、司法長官に調査の状況を報告し、翌年度の予算要求を提供するものとする。司法長官は、調査を継続すべきかどうかを決定し、継続する場合は、次年度の予算を確定するものとする。

(b) 重要なイベントの通知:特別検察官は、緊急報告に関する省のガイドラインに従って、調査の過程での出来事を司法長官に通知するものとする。

(c) 機密報告書ドキュメントの提出:特別検察官の業務の終了時に、特別検察官は、特別検察官が下した起訴または不起訴の決定を説明する機密報告書を司法長官に提供するものとする。

§600.9司法長官による通知と報告。

(ある)司法長官は、各議会の司法委員会の委員長および少数派議員に、各行動の説明とともに通知する。

(1)特別顧問を任命したとき。

(2)特別顧問を解任したとき。

(3)特別顧問による調査の終了時に、適用法と一致する範囲で、司法長官が特別顧問による提案された措置が確立された部門の慣行の下で非常に不適切または不当であり、追求されるべきではないと結論付けた事例の説明と説明(もしあれば)。

(b)このセクションのパラグラフ(a)(1)の通知要件は、正当な調査またはプライバシーの懸念が機密性を必要とすると判断した場合、司法長官によって請求される場合がある。機密保持が不要になった時点で、通知が提供される。

(c)司法長官は、これらの報告書の公開が、適用される法的制限に準拠する範囲で、公共の利益になると判断することができる。特別顧問および職員を含む司法省職員による特別検察官が取り扱う事項に関するその他のすべての情報開示は、犯罪捜査に関するパブリックコメントに関する一般的に適用される司法省のガイドラインおよび関連法に準拠するものとする。

5.アメリカの大統領図書館制度〔Presidential Libraries〕の概略

1 アメリカの大統領図書館制度〔Presidential Libraries〕から一部抜粋した。なお。リンクは筆者が行った。

(1)日本にはないが、アメリカの国立公文書記録管理局( National Archives and Records Administration:NARA) にある機能の1つに大統領図書館部門がある。

 1978 年に Presidential Library Act が制定されるまでは、大統領記録は大統領個人に帰属していた。この法律以後、大統領在職中の記録は連邦政府の財産となり、NARA の大統領図書館部の管理下にある。機密関係の審査〔security review〕を受けた後に公開され、資料目録〔finding aid〕が作成され一般市民の利用に供される。

(2) 根拠の法律

1978年の大統領記録法(合衆国法律集USC 44 Chapter22)を基本とする。

その§2203 において、大統領による大統領記録処分に関する規定、大統領任期終了後の合衆国アーキビストによる大統領記録の管理、監督、保護、公開に対する責任を定める。

(3) その機能

  名称は図書館〔library〕であるが、博物館の機能も多分に持っている。各図書館では常設展示のほかに年に1、2回の特別展を開催しており、文書資料だけでなく、展示にふさわしいモノ資料も数多く所蔵。大統領の子供時代から在職時代まで、執務関係記録だけではなく家族や全人的な紹介を目的としている。

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(注1) スミス氏はコソボ戦争中に犯された 戦争犯罪の調査等を行っていた。

(注2) Sidney Katherine Powell氏は、ノースカロライナ大学のロースクールを修了後、連邦検察官としてテキサス州やバージニア州に赴任。1993年にダラスで弁護士事務所を開業し、エンロンの会計不正で法的責任を問われたアーサー・アンダーセンやメリルリンチの元重役の代理人を務めた。これを切っ掛けとして共和党関係の知己を得た。ロバート・モラー特別顧問による2016年アメリカ合衆国大統領選挙におけるロシアの干渉に関する捜査でマイケル・フリンの偽証容疑が捜査された際には、フリンはディープステートの犠牲者として徹底抗戦の構えを見せた。結果としてフリンは司法取引で有罪を認めたものの、このことでQアノン信奉者を始めとした陰謀論者を含むトランプ支持者との関係を深めた。(Wikipedia から抜粋)

(注3) 1994 年から 2001 年までニューヨーク市の第 107 代市長を務めたアメリカの政治家および弁護士です。彼は以前、1981 年から 1983 年まで米国司法長官、1983 年から 1989 年までニューヨーク州南部地区の米国司法長官を務めていた。・・・ 2020 年の大統領選挙に続いて、彼は選挙結果を覆す試みで提起された多くの訴訟でトランプを代表し、不正投票機、投票所の詐欺、および国際的な共産主義の陰謀。ジュリアーニは、2021年1月6日のアメリカ合衆国議会議事堂攻撃の前の集会で演説し、不正投票の虚偽の主張を行い、「戦闘による裁判」を求めた。その結果、彼の弁護士免許は 2021 年 6 月にニューヨーク州で停止された。(Wikipediaから抜粋、仮訳)

(注4) リンド アンド ハリー ブラッドリー財団の事務局長である。その略歴を見る限りトランプ・シンパとは思えない。

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アメリカの成人教育制度は壊れているのか、教育専門家がそれを修正できるのか、各州が取り組むその具体的方法とは!

2023-01-05 18:30:44 | 国家の内部統制

 筆者の手元にプロ・パブリカ(Pro Publica)(注1)からきわめて興味深いニュースが届いた。筆者はAnnie Waldma; Aliyya Swaby; Anna Clarkの3氏。

Annie Waldma 氏

Aliyya Swaby 氏

Anna Clark 氏

 米国の成人教育問題につき公的メデイアかつ世界的に著名なプロ・パブリカらしい優れた解析力のあるレポートである。

 米国の義務教育問題の現状と学習障害等の取組課題等を広く各州等の専門家から取材するなど鋭くえぐった内容であるが、これらはわが国でも解決すべき重要課題でもある。

 これに類したわが国のレポートがないがゆえに、本ブログで取り上げた。

(1)米国の成人教育制度は壊れているのか

 米国の教育専門家は、国家システムを改善するためにはより多くの資金が重要であると言う。多くの州は、限られた資金にもかかわらず、創造的な解決策を開発した。

 要救済者は彼らは学習障害でも必要な助けを得ることができなかった。また、彼らは英語を読む能力なしに、この国(米国)に来た。さらに、国は彼らに最も重要なスキルを教えることに失敗したまま学校を卒業させた。

 国立教育統計センター(National Center for Education Statistics)によると、時には重複する多くの理由で、4,800万人のアメリカ人成人が基本的な英語を読むのに苦労している。それは、1)彼らがまともな仕事を見つけて維持すること、2)街の通りの看板をナビゲートすること、3)医学的指示に従うこと、そして、4)投票することができないままにするかもしれない。さらに、5)彼らは詐欺に対して脆弱であり、汚名と恥に直面している。

 利用可能な主な救済策は無料の成人教育クラスである。 そこでは彼らが彼らの読書力を改善し、高校卒の資格を得ることが可能となる。

 しかし、成人教育のためのインフラは非常に不十分であり、プロ・パブリカの調査によると、米国の識字率が一貫して低いことが明らかになっているように、政府の努力は問題に対処するのに十分ではない。全米の約500の郡は、成人の3分の1近くが基本的な英語を読むのに苦労しているホット・スポット(犯罪多発地区)である。これは不均衡な不完全雇用の一因となる。識字率の低いコミュニティでは、多くの場合、経済投資が少なく、課税ベースが小さく、公共サービスに資金を提供するためのリソースが少ない。

 「なぜ人々が最初に教育を受けなかったのかに関係なく、今すぐ教育を受けられるようにすることが我々の最善の利益である」と、成人教育と労働力政策に焦点を当てている全米技能(National Skills Coalition)の上級研究員であるアマンダ・ベルクソン・シルコック(Amanda Bergson-Shilcock)氏は述べている。

Amanda Bergson-Shilcock 氏

 プロ・パブリカは、成人教育を改善するための最良のアイデアのいくつかについて、専門家、学生、教育者にインタビューした。多くの専門家は、国のシステムを改善するためにより多くの資金が重要であると述べているが、多くの州は限られた資金にもかかわらず革新的方法を開発した。成人が識字率の低さを克服するのを助ける方法はあり、その助けをより広く利用できるようにすることは、個人と彼らのコミュニティの両方にとって、より大きな問題を解決するであろう。

(2)識字能力が最も低い大人にもっと注意を向けるべきである

 厳格な連邦基準により、州は成人学生にできるだけ早く高校卒の資格を取得するように促している。より多くの時間を必要とする学生は、そのようなシステム下で「もがき苦しむ(flounder)」になる可能性がある。「学生を基本的なレベルに導くのはとても難しい。彼らは非常に多くの課題を抱えている」と、ミシシッピ-州のランキン郡学区の成人教育を指揮するアンドリュー・ストレロー(Andrew Strehlow)氏は述べた。

Andrew Strehlow氏

 着実な学業成績の期待は、成人学生、特に10年以上教室で学んでいない学生にとって難しい場合がある。「義務教育6年生のレベル(sixth-grade level)(日本の小学6年生)で読んでいて、高校生までの残り6年間で3か月の荷造りをしていると誰かが言った場合、それは義務教育プログラムの終わりだからである。(注2) 現実的に、何人がそれを達成しているか? 誰も達成していない」と、デトロイトのセント・ビンセント・アンド・サラ・フィッシャーセンター(St. Vincent and Sarah Fisher Center in Detroit)を率いるダイアン・ルノー(Diane Renaud)氏は指摘した。調査によると、一部のプログラムは、苦労している生徒をクラスから追い出すことにさえ行っていた。

 また、一部のプログラムは、学生により多くの1対1のサポートを提供することに重点を置いている。例えば、ラスベガスのクラーク郡図書館地区は、各生徒に、高校の資格に向けて取り組むときに電話をかけ、励ますコーチと協力する機会を提供していた。図書館の識字サービス・マネージャーであるジル・ハーシャ(Jill Hersha)氏は、プログラムの学生の多くはホスピタリティ業界で何年も働いていて、職を失ったと述べた。「しかし、彼らは永遠に学校にいなかった」と彼女は述べた。コーチは、彼らが目標を定義し、一歩一歩前進するのを助けた。

(3)特に農村部での成人教育クラスの可用性と柔軟性を高める

 プロ・パブリカは、国の大部分に成人教育クラスがなく、住民はプログラムに登録するために数十マイル移動する必要があることを発見した。ミシシッピー州では、5郡に約1郡が州が運営するプログラムを欠いていた。ネバダ州の農村部の一部の地域では、人々は仮想クラス(virtual classes)を受講するか、最大70マイルまで運転する必要があった、とエルコのグレートベイスン大学(Great Basin College in Elko)で成人教育を指揮するミーチェル・ラサール・ウォルシュ(Meachell LaSalle Walsh)氏は述べた。都市部でも、授業のスケジュールが合っていないと、参加そのものが難しくなる可能性がある。

 アクセシビリティを高めるために、一部の州では、プログラミングが広大な地域で利用できるようにするためのパートナーシップを開発している。10年前、州の報告書で広大な成人教育システムが調整されておらず、断片化されていることが判明した後、カリフォルニア州はそれを地域のニーズをより適切に評価し、コミュニティグループと協力できる地域コンソーシアムに再構成した。71の地域のそれぞれで、地元のコミュニティカレッジと学区が協力して教材を調整し、プログラム全体で学生に関するデータを収集し、個別のサービスを確実に提供できるようにした。新しい構造は、学生が住んでいる場所に関係なくプログラムにアクセスできるようにするのに役立つ。「アイデアは、その地域内の学生と労働力のニーズを満たすために協力することである」と、同州の成人教育部長であるキャロリン・ザクリー(Carolyn Zachry)氏は述べた。

Carolyn Zachry 氏

(4) 学習障害を持つ成人と協力する方法について教育者を訓練する

 専門家は、成人学生の半数が学習障害を持っていると推定しているが、診断されていない場合もある。多くのプログラムには、これらの学生と協力するためのリソースがない。「彼らは極めて十分なサービスを受けていない」と、アメリカ学習障害協会(Learning Disabilities Association of America)の教育ディレクターであるモニカ・マクヘイル・スモール(Monica McHale-Small)氏は語った。連邦政府のデータによると、全国的には、成人教師の5%未満が特殊教育の認定を受けている。2021年、テネシー州全体で、特殊教育の認定を受けた成人向けの教師は1人だけであった。

Monica McHale-Small氏

 一部の州では、障害を持つ成人と協力する方法を教師に示すための集中プログラムを開発した。ミネソタ州は、ワークショップを提供し、ベストプラクティスに関するプログラムに相談する身体的および非明白な障害支援プログラムに資金を提供している。組織を管理するウェンディ・スウィーニー(Wendy Sweeney)氏は「障害を持つ個人、特に隠れた障害は、開示しない限りわからないし、診断されたことさえないかもしれない。教師がクラスの生徒と協力し、学習を支援するためのいくつかの戦略を持っていることを確認することが重要である」と述べた。

(5)成人教育プログラムにより多くの資金を投資する

 連邦政府は2021年、成人教育のために州に約6億7500万ドル(約891億円)を提供したが、インフレ調整後の数字は20年以上停滞している。また、州も最低額の寄付を義務付けられているが、プロ・パブリカは支出に大きなギャップがあることを発見した。資金が少ないと、リーチの少ない小規模なプログラムにつながる:適格な成人の3%未満がサービスを受けている。「州または連邦レベルでこれらの議員による認識がない場合、彼らは余分なお金を入れないだけである」と、非営利団体の“ProLiteracy”のプログラム・ディレクターであるミシエル・デーケッチ(Michele Diecuch)氏は述べている。

Michele Diecuch氏

 2022年、バージニア州選出の連邦議会下院・民主党ボビー・スコット(Robert C. Scott)氏は、アクセスを拡大し、今後5年間で連邦成人教育予算を3億ドル増やす法案を提出した。下院は2022年春に法案を可決したが、上院で審議されており、すぐに法律になる可能性は低い。

 一部の州では、近年、成人教育への資金提供も増やしている。

 2021年に成人教育から100万ドル以上を削減した後、ジョージア州は次の州予算でその資金を回復することを選択した。また、フルタイムの州職員の給与を5,000ドル引き上げ、すべてではないが一部の成人教育教師を支援している。州議会議員は、資金を増やすために支持者や教育者からの大きなプッシュを必要とすることが多いと、成人基礎教育連合(Coalition on Adult Basic Education)の最高経営責任者であるシャロン・ボニー(Sharon Bonney)氏は述べた。

 さらに「あなたが行う仕事の価値について州知事と話してください。なぜなら、知事がそれに資金を提供する可能性がはるかに高いことを理解しているからである」と彼女は語った。

Sharon Bonney氏

(6) 教員の給与を引き上げ、常勤教員を増やす

 ほとんどの成人教育教師はパートタイムで働くか、ボランティアであるため、離職率が高く、指導に一貫性がない。テネシー州では、スタッフ教師の3分の1以上が認定されておらず、80%以上がパートタイムでしか働いていない(州の労働・労働力省(labor and workforce department)によると、認定されていない教師は成人教育に関するトレーニング・モジュールを受講する必要がある。テネシー州マクミン郡アセンズのテネシー応用技術大学(Tennessee College of Applied Technology)の成人教育コーディネーターであるレスリー・トラビス(Leslie Travis)氏は、より多くのフルタイムの教師と何ができるかを夢見ている。「もっとたくさんのクラスを開くことができた」と彼女は語った。「今すぐ少なくとも6人の教師を雇う必要がある」トラビス氏は、順番待ちの学生を避けるために理想的とは言えない解決策にたどり着いた:25人以上の学生を教室に詰め込んだ。

Leslie Travis氏

 同様に、ネバダ州では、ほとんどすべての成人教育教師がパートタイムで働いており、その半数は認定されていない。「リノとラスベガスでさえ、彼らは人員配置に問題を抱えている」と州の成人教育プログラムの監督者であるナンシー・オルセン(Nancy Olsen)氏は述べた。

 マサチューセッツ州ミネソタ州には、経験豊富な教師が新しい教師を訓練する「トレーナーのトレーニング」プログラムがある。他の州よりも多くの資金を投入しているアーカンソー州では、すべての教師が教育の認定を受け、フルタイムの教師は成人を教えるか、ライセンスに向けて取り組むために特別に認定されている必要があり、非伝統的な学生をサポートする能力を磨く。「さまざまなレベルの成人学習者を教える方法のトレーニングを受けた教師がいる場合、それは本当に違いを生む」とアーカンソー州の成人教育ディレクター、トレニア・マイルズ(Trenia Miles)氏は語った。

(7)生徒がクラスに出席するのを妨げる障壁を克服できるように支援する

 ミシシッピー州出身のロロンダ・マクネア(27歳)は、生まれたばかりの娘の世話をするために11年生で高校を中退して以来、高校の資格を取得したいと考えていた。「あなたはそれを持たずに高給の仕事を得るつもりはありません」と彼女は語った。しかし、仕事と育児の合間に、彼女はクラスに出席するのに十分な時間を確保することができなかった。この夏、教育を再開するために、マクネアはフルタイムで働くのをやめ、学校にいる間子供たちを見ることができる母親と一緒に引っ越さなければならなかった。多くの成人学習者は、安定した育児や交通手段の欠如から仕事の柔軟性の欠如まで、同様の障壁に直面している。教育者は、これらの障害に対処することの重要性をますます認識している。

 ミシシッピー州MIBEST(Mississippi Integrated Basic Education and Skills Training )イニシアティブを作成し、一部の学生に育児、交通機関、食事支援、受験料の支援、キャリアカウンセリングなどのサポートを提供している。しかし、このプログラムは一時的な慈善資金に依存しており、主に最高レベルで入学する学生への支援を指示している。(注3)州の成人教育を監督するミシシッピー・コミュニティ・カレッジ理事会(Mississippi Community College Board)のアシスタントディレクターであるニキナ・バーンズ(Nikitna Barnes)氏は「私たちは、すべての人にそのレベルのサポートを提供するのに十分な資金を持っていなかった」と語った。

(8)教室に戻るために大人を支援する

 キャスリン・イスキ(Kathryn Iski :56歳)さんは、2021年、テネシー州ナッシュビルの成人教育プログラムに、読書と数学の両方の初心者として参加した。子供の頃学校に通っていなかったイスキさんは、何ヶ月も勉強し、読書の複数の学年レベルを上げた。しかし、2022年の6月、ターゲットデリでの宅配仕事で残業が必要になったため、彼女はやめなければならなかった。3か月以上後、彼女は勉強に遅れを取り戻し、追いつくために一生懸命働かなければならなかった。イスキさんのような大人の学生は、仕事のスケジュールと矛盾するとクラスをスキップしなければならないことがよくある。彼らは遅れて、目標を達成するのに時間がかかるかもしれない。

 最も革新的なプログラムのいくつかは、成人教育と実際の仕事を組み合わせて出席を促している。専門家は、連邦および州の資金が不十分なため、これらの機会はまれであると言う。プロ・パブリカの記事は、デトロイトのスキル・フォー・ライフ(Skills for Life)を強調しており、住民に週2日学校に戻るように支払い、残りの3日間は市の仕事をするために住民に支払う。2021年、ジョージア州では、デカルブ郡の衛生部門が、高校の卒業証書を持たない従業員に、会社の勤務時間に仮想クラスを受講する機会を提供した。同部門はまた、資格試験の受験費用をカバーした。「私たちは100%の保持率を持っていた」と、ジョージア・ピードモント・テクニカルカレッジで成人教育を主導し、職場プログラムの開始を支援したメーガン・マクブライド(Meghan McBride)氏は述べた。

Meghan McBride氏

リテラシー ミッドサウスを通じて、1 対 1 の個別指導セッションで読書を上達させる生徒。 申請者は、しばしば何ヶ月にもわたる待機リストに直面する。

(9)移民ステータスに関係なく、すべての学生に教育プログラムを開く

 アリゾナ州やジョージア州を含む少数の州は、成人教育プログラムが文書化されていない人々にサービスを提供するために州の資金を使用することを妨げている。

アリゾナ州は、2006年に有権者によって可決された法律で義務付けられているように、市民権または合法的な居住地の証拠を提供しなかったため、毎年何百人もの人々の登録を拒否している。2010年に申請者が合法的に国内にいることを確認するプログラムを要求する法律を可決したジョージア州では、主に移民と難民にサービスを提供する3つの連邦資金によるグループは、文書化されていない学生を許可しているため、州の資金提供を拒否されている。アリゾナ州の教育省は、この政策が登録やプログラムに与える影響についてコメントすることを拒否した。

 ジョージア州の成人教育副長官であるカヤンナ・グッド(Cayanna Good)氏は、彼らにサービスを提供するプログラムのない文書化されていない移民は亀裂を通り抜けていると述べた。

Cayanna Good氏(前列右)

 これらの州では、英語を学びたい、高校の資格を取得したい、または読解力を向上させたい文書化されていない移民には、選択肢がほとんどなく、無料の選択肢はさらに少なくなる。成人教育の専門家(National Skills Coalition (NSC)の上級研究員)であるアマンダ・ベルクソン・シルコック(Amanda Bergson-Shilcock)氏によると、この決定には代償が伴う。「この場合の『代償』は、教育水準の低い労働者からの収入と税収の損失だけでなく、一部の人々が自分たちの生活や願望は投資する価値がないと明確に言われている二層社会を作り出すための人的コストである。人を教育するための当面のコストは、教育しないことの長期的な社会的コストよりもはるかに安価である」と述べた。

(10) 技術的および学術的な指導を織り交ぜて、人々を仕事に備えさせる

 2000年代、ワシントン州の成人学生はせいぜい高校の資格を取得していたが、生活賃金を支払うさらなる教育や仕事に進んでいなかった。「私たちはパイプラインの上下で人々を出血させていた」と州の成人教育ディレクターであるウィル・ダーデン(Will Durden)氏は語った。そのプログラムは、大学のクラスや就労資格プログラムとのつながりが不十分であった。「あなたはこの間ずっと、関連性がないと思われる数学を学ぶことに費やしている。それはあなたが人生で前進するのを助けるようには見えない。だから学生は中退する」と彼は述べた。

ウィル・ダーデン(Will Durden)氏

 ワシントン州は、高校の卒業証書を持たない成人が学業スキルと職業訓練を同時に追求できるようにする「I-BESTプログラム」を開拓した。2人の教師(1人は読解力と数学のスキルを提供し、もう1人は職業訓練を提供する)が連携して働き、レッスンを文脈に入れ、大人がより早く進歩できるようにする。最近の研究によると、I-BESTの学生は、プログラムを受講しなかった成人の学生よりも技術的な資格を取得する可能性が高かった。ミシシッピー州を含む他の場所で複製されている。

 (11)学童の識字権を保護する

 専門家は、識字率を向上させる最善の方法は、大人になる前に子供たちに上手に読むように教えることだと言う。すべての州憲法には教育を受ける権利が含まれているが、合衆国憲法には含まれていないが、他の170か国が憲法でその権利を確認している。このコミットメントがなければ、子どもたちとその家族は、学校に恐ろしい習熟率の責任を負わせるのに苦労してきた。

 近年、子どもたちに識字能力があるかどうかを争う訴訟がいくつかある。2016年、ミシガン州デトロイトの学生のグループが州を訴え、適切な教育を提供できなかったため、合衆国憲法修正第14条に違反して、有色の低所得の子供たちにほぼ独占的にサービスを提供する地区が読むのに苦労していると主張した。「識字能力は公的および私的生活への参加の基本であり、アメリカの教育の伝統の中核的な要素である」と原告は訴状で述べた。

 連邦判事は当初、「識字へのアクセスは基本的権利ではない」という州の立場に同意して、訴訟を却下した。2年後の2020年、米国第6巡回区控訴裁判所は判決の一部を覆し、学生は「基本的な最低限の教育、つまり基本的なレベルの識字能力を提供できる教育を受ける基本的権利」を持つべきであると宣言した。ミシガン州は約1か月後に事件を解決し、デトロイトの学校の識字プログラムに9,400万ドル(約124 億800万円)の支払いを約束した。

(12)アメリカの成人の5分の1は読むのに苦労している。なぜ我々は彼らに教えないのか?

 全米の学生は、州に憲法上のコミットメントに対する説明責任を負わせるために戦っている。2017年のカリフォルニアでは、学生は識字権を求めて訴訟を起こし、民主主義に参加する人の能力に不可欠であると主張しました。彼らは最終的に州と和解した。ミネソタ州ノースカロライナ州での最近の訴訟も、質の高い教育へのアクセスを主張している。

 「子供たちに読み方を教えられないシステムの弁護はありえない」と、デトロイトとカリフォルニアの両方の訴訟で学生の弁護士であるマーク・ローゼンバウム(Mark Rosenbaum)氏(University of California, Irvine School of Lawの非常勤教授)は述べた。「あなたは学生に識字能力へのアクセスを拒否する。それは皮肉にもコミュニティの権利を剥奪するために開発できる最も効果的な戦略である。」

Mark Rosenbaum氏

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(注1) 米国ニューヨーク・マンハッタンに拠点を置く非営利(NPO)の報道組織。サンドラー財団の設立提案を受けたポール・スタイガー(「ウォールストリート・ジャーナル」の元編集長)が中心となり、2007年10月に発足した。最初の記事発信は2008年6月。

プロパブリカは、長期間にわたる独自取材によって行政や企業の不正・腐敗を明らかにする「調査報道」を専門とする。当局の発表や権力サイドの情報に依存しない調査報道は、古くは「ワシントン・ポスト」によるウォーターゲート事件(1972~73年)が代表で、米ジャーナリズムの真髄と言われてきた。(知恵蔵から一部抜粋)

(注2)「アメリカの教育制度を徹底解説!学校の種類や日本との違い」が詳しく日米比較を行っている。

(注3) ミシシッピー州のコミュニティカレッジ:ミシシッピ州には、15のコミュニティカレッジがあり、年間10万人の学生に250以上のプログラムを提供している。ミシシッピ・コミュニティ・カレッジ理事会(Mississippi Community College Board:MCCB)は、州内のコミュニティカレッジのための支援や調整を担う機関で、専門能力開発センター(Center for Professional Development Center)を通じて、コミュニティカレッジの教職員や管理者向けの様々な研修プログラムを提供している。

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ニュ―ヨーク州最高裁判所裁判官はニューヨーク州司法長官の要請に基づくトランプ一家(Trump Organization)の財務報告等を監督する独立した監視人(monitor)の任命を承認

2022-11-07 10:30:00 | 国家の内部統制

11月3日、筆者の手元に CNBC記事ニュ―ヨーク州最高裁判所裁判官は、ニューヨークAGの勝利 となるトランプ一家(Trump Organization)の財務報告等を監督する独立した監視人の任命を承認」が届いた。

【裁判所決定のキーポイント】

ニューヨーク州ニューヨーク郡最高裁判所(注1)のアーサー・エンゴロン裁判官(Arthur Engoron)は、トランプ一家の財務諸表(financial statements)と財務報告書(financial reports)を監督する特別な独立監視人の任命を承認した。

また、アーサー・エンゴロン裁判官(注2)の命令は、裁判所と司法長官事務所に事前に通知することなく、会社が非現金資産を譲渡することを禁じた。

この独立監視人の任命は、「2011年から2021年までのトランプ氏の[財政状態に関する財務諸表等のすべてを通して永続的な虚偽表示を考えると正当化された」とエンゴロン判事は決定で明確に述べた。

 ところで、筆者は、まず2022年9月21日、ニューヨーク州司法長官(AG)のレティシア・ジェームズ(Letitia James)氏は、ドナルド・トランプ前大統領、トランプ一家、彼の成人した子供3人等を、会社の事業に関連する何年にもわたる虚偽の財務諸表を含む広範な詐欺の疑いで訴えた裁判の詳細を調べた。

 今回のブログは、まずジェームズ氏の長年にわたるトランプ企業の虚偽の財務諸表、財務報告に関する民事訴訟提起の内容をCNBC記事等を詳細に解析し、そのあとで特別な独立監視人の任命について法的に見て補足しながら解説する。

  なお、いうまでもなくこの裁判論争は連邦議会の中間選挙や州知事選挙(注3)を左右する重大問題といえる。

1.ニューヨーク州司法長官のレティシア・ジェームズは、9月21日ドナルド・トランプ前大統領、トランプ一家の彼の成人した子供3人などを、会社の事業に関連する何年にもわたる虚偽の財務諸表や財務報告を含む広範な詐欺・虚偽行為の疑いで告発

 ニューヨーク州は、広範囲にわたる詐欺の申し立てをめぐってドナルド・トランプ、彼の会社、家族等を訴え、少なくとも2億5000万ドル(約367億5000万円)の損害賠償(in dameages)を求めた。

  CNBC記事11/4, 同記事を仮訳する。なお、これら記事の筆者は法律専門家ではない点が気になるため補足するとともに、筆者の責任で原文が冗長なので整理し直した。

ニューヨーク州司法長官のレティシア・ジェームズは9月21日に、ドナルド・トランプ前大統領、トランプ一家の彼の成人した子供3人などを、会社の事業に関連する何年にもわたる虚偽の財務諸表や財務報告を含む広範な詐欺・虚偽行為の疑いで訴えた。

CNBC動画から引用

マンハッタンの州の最高裁判所に提起された220ページにわたる民事訴訟の訴状は、少なくとも2億5000万ドル(約367億5000万円)の損害賠償を求めている。

【訴状の主な内容】

(1)ドナルド・トランプ、その子供であるドナルド・トランプ・ジュニア(Donald Trump Jr.)、エリック・トランプ(Eric Trump)、イヴァンカ・トランプ(Ivanka Trump)がニューヨークの会社の役員を務めることを永久に禁止し、訴訟で指名されたトランプ企業がニューヨーク州で事業を行うことを永久に禁止する。

 また、ジェームズ氏は、マンハッタンの連邦検察官と合衆国内国歳入庁(IRS)に、連邦犯罪の可能性についてトランプ氏を捜査するよう要請したと述べた。彼女は、トランプの3年間の民事調査中に得られた証拠は、銀行詐欺と金融機関への虚偽の陳述の犯罪の可能性を示していると述べた。

(2)トランプ氏が銀行、保険会社、IRSへの財務諸表で資産の価値を大幅に誇張して、彼の会社にとってより有利なローンと保険条件を取得し、他方で違法に納税義務を引き下げた。

ジェームズ氏は記者会見で「トランプは彼の純資産を数十億ドル誤って膨らませ、トランプと彼の会社がニューヨークの不動産を5年間取得することを禁じ、同じ期間に州にチャートされた銀行からのローンを申請することを禁じることを目指す」と発表した。

彼女は声明で「あまりにも長い間、この国の強力で裕福な人々は、法律等規則が彼らに適用されないかのように活動してきた。ドナルド・トランプは、この不正行為の最もひどい例の一つとして際立っている。ドナルド・トランプは、彼の子供たちとトランプ一家の上級幹部の助けを借りて、彼の純資産を数十億ドル誤って膨らませて、自分自身を不当に豊かにし、システムをだました」と述べた。

同訴訟では、「大幅に膨らんだ資産価値の数値は驚異的であり、特定の年の不動産保有のすべてではないにしてもほとんどに影響を与えている」と主張している。

(2)全体として、トランプ氏、トランプ一家およびその他の被告は、繰り返されるパターンと共通のスキームの一部として、2011年から2021年までをカバーする11の財務諸表に含まれる資産の200を超える虚偽の誤解を招く評価を導き出した」と訴状は明記した。

訴状によると、トランプ氏の個人的な財務諸表は「2011年から2021年までの期間、その構成と表現の両方で詐欺的で誤解を招くものであった」。

ジェームズ氏は、トランプがマンハッタンの彼のアパートが詐欺の疑いの一部として実際の3倍以上のサイズであると偽って主張したと述べた。そして訴状によると、トランプはフロリダ州パームビーチにある彼のMar-a-Lagoクラブの資産を、資産が多くの厳しい制限の対象であることを知っていたにもかかわらず、無制限の財産にあり、住宅用に開発できるという誤った前提で評価した。

Mar-a-Lagoは「年間収益は2500万ドル未満であった」とジェームズ氏は述べている。「それは約7500万ドルと評価されるべきであったが、それは7億3900万ドルと過大評価した」

訴状によると、「トランプ一家が第三者に反対の主張をしているにもかかわらず、トランプの財政状態の声明を作成するために社外の専門家を雇っていなかった。これらの財務報告書には、ローンや保険の適用範囲を取得するために使用されたさまざまな不動産資産の価値に関する請求が含まれていた。トランプ氏とトランプ一家が、資産の評価にアプローチする方法に関係する外部の専門家からアドバイスを受けた限り、彼らは日常的にそのようなアドバイスを無視または矛盾していた」とある。

ジェームズは、その具体例として、訴訟に記載されているマンハッタンの不動産、「ウォール街40番地」を指摘した。すなわち、彼女は、トランプ一家とトランプは、その資産の価値を2010年8月1日時点で2億ドル、2012年11月1日時点で2億2000万ドルと計算する銀行から評価を受けたと述べた。

しかし、トランプの2011年の財務諸表では、ウォール街40番は5億2400万ドルの価値があると記載されていた。その後、その評価額はトランプの2012年の財務諸表で5億2700万ドル、2013年の声明で5億3000万ドルに増加し、「『専門家』によって計算された価値の2倍以上」となったと訴状は述べた。

(3)トランプに加えて、訴訟の被告には、トランプ一家の最高財務責任者(CFO)を長年務めたアレン・ワイセルバーグ(Allen Weisselberg)氏(注4)が含まれている。

Allen Weisselberg氏

ワイセルバーグとトランプ一家は2021年、マンハッタン地方検事局から、ワイセルバーグを含む企業幹部に与えられた報酬の一部に税金を払わないようにするための計画の疑いで刑事告発された。

(4)訴訟の他の被告には、ワイセルバーグのサブである経理部門幹部ジェフリー・マコニー(Jeffrey McConney)氏

Jeffrey McConney氏

およびマンハッタン、ウエストチェスター郡、ニューヨーク、ワシントンDC、シカゴに不動産を所有するいくつかのトランプ企業が含まれる。

(5)全部で7訴因からなる損害賠償訴訟は、企業財務記録の改ざんビジネス記録を改ざんする陰謀、虚偽の財務諸表の発行、虚偽の財務諸表を改ざんする陰謀、保険金詐欺保険金詐欺を犯す陰謀等、執拗で繰り返される詐欺行為を主張している。

マンハッタンの地方検事局(Manhattan District Attorney's Office:DA))のスポークスマンは、ジェームズがトランプについてその事務所に刑事照会したことについてコメントすることを拒否したが、トランプは何年もの間、民主党の司法長官が共和党の元大統領に対する政治的敵意によって動機付けられたと言って、彼のビジネスを調査したとしてジェームズを強く非難してきている。

(6)トランプ一家や弁護士等の反論

アメリカの億万長者は、米国の中間選挙に記録的な8億8000万ドルを費やした。2022年の選挙への連邦および州の支出は167億ドルを超え、これまでで最も高価な中間選挙期になった。トランプ顧問弁護士のカッシュ・パテル(Kash  Patel )は、マー・ア・ラゴ文書事件で証言するための免責を認めた。

Kash Patel氏

刑事告発されたポール・ペロシ(ペロシ下院議長の夫)の攻撃者(注5)であるデビッド・デパペ(David DePape:カナダ国民)は、拘留から解放された後、国外追放される可能性があると国土安全保障省(DHS)は述べている。選挙当局は、陰謀を煽る脅威に備えているが、それでも最高のものを望んでいる。

David DePape被告(Los Angels Times記事から引用)

バイデン大統領は、極端な「MAGA共和党員が有権者と選挙当局を脅迫したと非難し、民主主義を「腐食させる」と呼んでいる。

「彼女(ジェームズ氏)の本当に悪い世論調査数を見るまで、この訴訟が提起されるとは思っていなかった」とトランプはジェームズ氏の再選レースに言及して書いた。「彼女は、都市が彼女の監視下にある世界の犯罪と殺人の災害の1つであるという事実にもかかわらず、「トランプを手に入れる」プラットフォームでキャンペーンを行った詐欺師である!」

トランプ氏の顧問弁護士、アリーナ・ハバ氏( Alina Habba)(注6)は9月21日の声明で、「今日の司法長官の訴状提出は事実や法律に焦点を当てているのではなく、司法長官の政治的議題を推進することだけに焦点を当てている。司法長官事務所が、不正行為が全く行われていない取引を詮索することで、その法定権限を超えていることは十分に明らかである。我々は、わが国の司法制度がこのチェックされていない権限の濫用に耐えられないと確信しており、司法長官の無益な主張のすべてからクライアントを守ることを楽しみにしている」と批判的に述べた。

訴状によると、ジェームズ長官事務所は65人以上の目撃者にインタビューし、調査の一環として何百万もの文書を検討したという。

(7)ニューヨーク州マンハッタン地方検事局は、トランプと彼の会社の犯罪捜査を行っており、ジェームズが訴訟で行った主張を多くの点で反映している。

しかし、DAの事務所は今日まで刑事告発を行っておらず、2022年の初め以来、そうする可能性は低いようである。

司法長官の記者会見の後、DA局長アルビン・ブラッグ(Alvin Bragg)氏は声明で、「ドナルドJ.トランプ前大統領、トランプ一家およびそのリーダーシップに関する私たちの犯罪捜査は活発で進行中である」と述べた。

*トランプ氏らに対する訴状は参照可である。

2.ニュ―ヨーク州最高裁判所裁判官はニューヨーク州司法長官の要請に基づくトランプ一家(Trump Organization)の財務報告等を監督する独立した監視人(monitor)の任命を承認

CNBC記事を以下、仮訳する。

ニューヨーク州最高裁判所のエンゴロン裁判官は、任命のほか同時に説明責任を回避するため裁判所と州司法長官事務所に事前に通知することなく、トランプ企業が非現金資産を州外に譲渡することを禁じた。

11月3日のエンゴロン裁判官の11頁にわたる決定文(decision and order)は、ニューヨーク州司法長官のレティシア・ジェームズによって2022年9月21日に提起された抜本的な訴訟で指名されたトランプと彼の成人した3人の子供たちにとって重大な打撃といえる。

このニューヨーク州司法長官による訴訟は、トランプと他のトランプ一家の幹部を、財務諸表等に関連する数十年にわたる詐欺行為で非難するものである。

エンゴロン氏の書面による裁判所命令は、「2011年から2021年までのトランプ氏の[財政状態に関する声明]のすべてを通して永続的な虚偽表示」を考えると、独立した監視人の任命は正当化されると述べ、11月15日まで、双方から推奨される潜在的な監視人を検討するように双方に与えた。

監視人は、詐欺を禁止するニューヨーク州法に違反する「さらなる詐欺や違法性がないことを保証する」ことになろう。

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(注1) ニューヨーク市の裁判所制度について、筆者のブログで詳しく解説している。

参考までにWikipediaの解説(New York Supreme Court)を仮訳する。

ニューヨーク州最高裁判所は、ニューヨーク州統一裁判所制度における一般管轄権を有する裁判レベルの裁判所である。 (その上訴部は、最高の中級上訴裁判所でもある) ニューヨーク市以外の多くの郡では、主に民事管轄裁判所として機能し、ほとんどの刑事事件は郡裁判所で処理されるが、無制限の民事および刑事管轄権が付与されている。

最高裁判所は事実審裁判所であり、州の最高裁判所ではないという点で、他のほぼすべての州の裁判所とは根本的に異なる。 ニューヨーク州の最高裁判所は上訴裁判所である。 また、それは事実審裁判所ではあるが、最高裁判所は「州のいくつかの郡または司法区にある別々の裁判所の集合体ではなく、一般的な州全体の管轄権を持つ単一の大きな法廷」として機能している。 最高裁判所は、ニューヨーク州の 62 郡のそれぞれに設置されている。

(注2) Arthur F. Engoron 判事は現在、ニューヨーク州最高裁判所第一裁判区(ニューヨーク郡)判事である。

決定文は正式には“preliminary injunction and appointment an independent monitor”である。この“preliminary injunction”は、予備的差し止め命令である。

(注3)2022年11月8日(火)に中間選挙が実施され、下院の全435議席、上院は3分の1の34議席が改選される。バイデン政権の審判となる選挙になるが、バイデン政権の支持率低迷で民主党の劣勢が予想されている。また、中間選挙投開票日には、36州で州知事選が行なわれる。

(注4) 2022.9.18 Bloomberg 記事「トランプ一家のCFO、税金詐欺で司法取引」を引用する。なお、補足説明、リンクは筆者の責任で行った。

トランプ前米大統領の一族が経営するトランプ一家のアレン・ワイセルバーグ最高財務責任者(CFO)は9月18日、ニューヨーク市マンハッタンの州裁判所に出廷し、税金詐欺の罪で有罪答弁を行った。40年間トランプ家の不動産ビジネスを支えてきたワイセルバーグ被告(75歳)は、起訴された15件すべてについて有罪を認めた。

 ワイセルバーグ被告は司法取引によってトランプ氏の不動産会社に対して証言する義務を負うと、事情に詳しい関係者2人が述べた。嘘の証言をすればこの司法取引は無効になる。関係者によれば、トランプ一家に対する裁判が決着するまでは、ワイセルバーグ被告の量刑は言い渡されない取り決めになっている。

 ペース大学ロースクール(ニューヨーク州)のベネット・ガーシュマン(Bennett L. Gershman)教授は、マンハッタン地区検察当局にとって「大勝利」だと評価する。「この有罪答弁は、会社が詐欺に関与していたことを証明するのに使われる可能性がある。詐欺を認めたということは、CFOとして会社の代わりに詐欺を働いたということだ」と説明した。

Bennett L. Gershman教授

 ワイセンバーグ被告とトランプ一家に対する公判は10月24日に設定された。予定通りに裁判が進むとすれば、中間選挙の時期とちょうど重なる可能性がある。

(注5) 米下院議長宅侵入の容疑者、暴行・誘拐未遂容疑で訴追=司法省

米検察当局は31日、ナンシー・ペロシ下院議長の自宅に侵入し議長の夫であるポール・ペロシ(Paul Pelosi)氏にけがを負わせたとして、デビッド・デパペ(David DePape)容疑者(42歳)を暴行と誘拐未遂容疑で訴追した。連邦司法省が発表した。2件の訴因で最高50年の拘禁刑(朝日新聞の訳、「禁固刑」は誤り)が科せられる可能性がある。デパピ容疑者は10月28日未明、カリフォルニア州サンフランシスコにあるペロシ夫妻の自宅に押し入った。(2022年11月1日朝日新聞(10/31ロイター通信記事の訳)記事)

11月1日NBCCnews記事を以下、仮訳する。

州および連邦検察当局は10月31日、連邦議会下院議長のナンシー ペロシ (D-カリフォルニア州) 氏の夫に対する10月28日の残忍な攻撃の容疑者に対する刑事告発を発表した。

連邦検察官は、42歳のデビッド・デパペ容疑者を、家族を脅したり傷つけたりすることで連邦当局者に報復することを目的とした誘拐と暴行の試みを理由に起訴した.

数時間後、サンフランシスコ州地方検事のブルック・ジェンキンス(Brook Jenkins)氏は、殺人未遂、住居侵入窃盗、致命的な武器による暴行、高齢者への虐待、高齢者の不法監禁、公務員とその家族に対する脅迫を含む州の罪状を発表した(カリフォルニア州北部地区連邦裁判所への起訴状 参照。)

Brook Jenkins氏

(注6) Alina Habba 氏は現在、Habba Madaio & Associates LLP のマネージング・ パートナーである。

LLP会社を設立する前は、フォートレスの子会社にサービスを提供する中規模の会社のマネージング パートナーを務め、7 年間、北東地域全体に事業を拡大することに成功した。アリナは、企業訴訟と設立、商業用不動産(取引と訴訟)、家族法、金融サービス業界、建設関連の問題を含むがこれらに限定されない訴訟の多くの分野での経験を持っている。アリナ は、ニューヨークの東部地区、ニューヨーク、ニュージャージー、コネチカット、ニュージャージー地区連邦地方裁判所、コネチカット地区連邦地方裁判所、および南部地区連邦地方裁判所での弁護士資格を持っている。(Habba Madaio & Associates LLPを抜粋、仮訳した)

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オバマ政権の元国防総省長官アッシュ・カーター氏が68歳で逝去

2022-10-26 17:01:10 | 国家の内部統制

 本日、筆者の手元にハーバード大学 ケネディ・スクールの研究拠点となるBelfer Center for Science and International Affairs (国際安全保障と外交、環境と資源の問題、科学技術政策に関する世界トップレベルのThink Tankである)(注1)からオバマ政権で国防総省長官を勤め、その優れた国際政治能力、他方で理論物理学や中世史の研究者としてまたアカデミックの運営者としてなど多くの指導的立場から支持者を得ていたことは間違いないアッシュ・カーター(Ashton B. Carter)氏が10月24日心臓発作により急逝されたとのニュースが届いた。

 米国の世界軍事政治の中核とともにアカデミアの世界を真剣に生き抜いたカーター氏の訃報については米国メデイアだけでなく、世界の主要メデイアが取り上げていることは間違いない。心からお悔やみを申し上げたい。

今回のブログは、あえてBelfer Centerの訃報声明およびCNNの記事を仮訳する。

1.Belfer Centerの10月25日付け訃報声明

 本日はベルファーセンターのコミュニティにとって深い悲しみの日です。私たちは、今朝(10月25日)に次の声明を発表したハーバード・ケネディ・スクールの学部長ダグラス・W・エルメンドルフ(Douglas W. Elmendorf)の悲しみの感情を共有する。

Douglas W. Elmendorf 氏

「昨24日の夕方、同僚であり、教師であり、友人のアッシュ・カーター氏が心臓発作に苦しんだ後に亡くなったことを皆さんにお伝えするために、深く深い悲しみとともにここに声明文を書く。

 彼を失った損失はとても突然で、かつとても壊滅的である。

 私が初めてアッシュ・カーター氏に会ったのは2016年、彼が米国防総省長官を務めていたペンタゴンで、彼が国防総省を去った後、ケネディ・スクールに彼を誘い戻すキャンペーンを始めた。アッシュが2017年にベルファーの技術・グローバル・アフェアーズ教授とベルファー科学国際問題センターのディレクターとして再び教員に加わったとき、私たちは皆光栄に思った。

 アッシュ・カーター氏は過去5年間、ケネディ・スクールの重要なリーダーであり、教員の採用を支援し、テクノロジーと公共政策に関するカリキュラムの拡大を支援し、テクノロジーと公共目的と呼ばれるプロジェクトを作成し、さまざまな共同作業で私と提携した。アッシュは私たちの学生に捧げられました。

 彼は、彼がここに戻った主な理由の1つは、海外を訪問し、彼の元学生から「こんにちはカーター教授」という挨拶で迎えられたという国防総省での経験だったと言った。アッシュはハーバード大学でも幅広くリーダーを務めている。例えば、彼とハーバード大学ポールソン・スクール・オブ・エンジニアリング・アンド・アプライド・サイエンス学部長のフランク・ドイルは、ボストン全土で、テクノロジーと社会について深く考える教員やその他の人々の定期的な集まりを開催した。

 アッシュ・カーター氏のケネディ・スクールへの最近の貢献は、彼がここでのほぼ40年前にさかのぼるキャリア全体にわたって行った莫大な貢献のほんの一部に過ぎない。アッシュはオックスフォード大学で理論物理学の博士号を取得したが、政策に非常に興味を、持った。彼は1984年に助教授としてここで始まり、1988年にテニュアを受けた。彼は数多くのコースを教え、多くの将来のリーダーを指導し、国際問題とグローバル・アフェアーズへの集中力を高めるのを助けた。アッシュは1993年から1996年の間、そして2010年から2017年の間に再び公共サービスのためにいったんケネディ・スクールを去った。 そして彼が私たちのキャンパスを超えてとても有名で賞賛されたのは、その奉仕を通してである。

 アメリカ合州国と世界は、アッシュ・カーター氏が、この国に奉仕し、この国の最高の価値を守り、すべての人々にとってより安全な世界を築くための生涯にわたる努力を知っている。1993年から1996年の間、彼は国際安全保障政策の国防次官補を務めた。その役割における彼の重要な活動の一つは、ウクライナの非核化(denuclearization of Ukraine)であり、彼は最近、かなりの話題を語った。2010年から2017年まで、買収・技術・物流担当国防次官、国防副長官そして国防総省長官を歴任した。

 国防総省長官として、アッシュ・カーター氏は、ISIL(注2)に対する軍事作戦、アジア太平洋地域への関心の高まり、新しいサイバー戦略、ロシアに対するNATOのより強力な対応を監督した。彼は、軍と民間部門の技術専門家をつなぐ技術ハブの創設など、技術への投資に多大な注意を払った。そして彼は、才能ある人材の採用と定着率の向上に焦点を合わせ、その一部は例外なく、すべての軍事的地位を女性に開放することであった。過去数年間、彼は国家安全保障と国際関係の問題に関する非常に重要な公的発言者であり、私的顧問であり続けた。

 アッシュ・カーター氏についてはもっと多くのことが言えるし、そうすべきである。私たちは多くの人々の視点、ケネディ・スクールやそれ以降、アッシュを知り、彼と一緒に働いた人たちを共有する方法を見つけるであろう。私としては、彼の洞察力と知恵、世界をより良くしようとする彼の揺るぎないコミットメント、ケネディ・スクールが世界に重要な違いを生むことができるという彼の自信、彼の学生や同僚に対する寛大な精神、そして私との暖かく優雅な友情に感謝したいと思う。私は彼をとても寂しく思うであろう。

 私の心は、アッシュの妻ステファニーとアッシュの家族全員に向かう。私たちの思いと同情は、アッシュを知り、彼から学び、彼と一緒に働いたすべての人にもある。この困難な時期に誰かと話をしたい場合は、プログラムディレクター(学生用)、人事担当者(スタッフ用)、学部長室(教員用)、またはハーバード大学カウンセリングおよびメンタルヘルスサービス(全員用)にお問い合わせください。追悼式に関する情報がわかったら、お知らせする。

大きな悲しみとともに

ダグラス・W・エルメンドルフ(Douglas W. Elmendorf)

学部長兼ドン・K・プライス・ハーバード大学ケネディ・スクール公共政策教授

2.2022.10.25 CNN記事「オバマ政権の元国防長官アッシュ・カーターが68歳で死去」

 同記事を仮訳する。

 バラク・オバマ大統領の最後の国防総省長官を務めたアシュトン・カーター氏が亡くなった、と彼の家族は語った。68歳であった。

 2015年2月から2017年1月まで国防総省を率いていたカーター氏は、10月24日の夜にボストンで「突然の心臓イベント」に苦しんだ、と彼の家族は声明で述べた。彼は妻のステファニーと彼の子供たち、エヴァとウィルとともに生き残った。

 カーター氏は「並外れた誠実さの人」であり、「強く、安定した道徳的羅針盤と、公共の目的のために彼の人生を使うというビジョンに導かれた」と、ジョー・バイデン大統領は24日午後の声明で述べた。

 バイデン大統領は「私は当時副大統領であったが、オバマ大統領と私は、アッシュの猛烈な知性と賢明な助言に頼って、私たちの軍隊の準備、技術的優位性、そして世界史上最大の戦闘力の女性と男性に対する義務を確実にした」と語った。

 ペンタゴンを率いるにあたり、カーター氏は、オバマ大統領の下でのアフガニスタンへのアメリカの関与の最後の年と、アメリカ軍の配備を含む中東におけるISIS (注3) の台頭と戦うためのアメリカの努力を監督した。また彼の在任期間中は、戦闘における女性の利用可能な役割を拡大し、トランスジェンダーの人々が公然と奉仕できることの禁止を解除する努力も見られた。

 2014年11月に国防総省長官を追放されたチャック・ヘーゲルの後任として、カーター氏は直ちに、それまでにイラクでかなりの領土を占領していたISISの台頭に対処する任務を与えられた。オバマ大統領はイラクからの米軍撤退を外交政策の重要な優先事項としていたが、最終的にはテロリスト集団に対処するために米軍をイラクに再投入した。

 カーター氏は2016年にバグダッドを訪問した際、「イラクとシリアでISILを破壊することは必要だが、十分ではない、なぜなら、ISILが始まったのはここであり、私が癌の親腫瘍と呼んでいるものだからだ。癌のように、ISILは...他の場所、そしてそれはまた私たちの祖国を脅かしている」と、記者団に語った。

 カーター氏のリーダーシップの下、米軍の戦闘ポジションはすべて女性に開放され、2016年にペンタゴンはトランスジェンダーの人々が軍に奉仕できることを禁止した。この問題をほぼ1年間研究した彼は、当時、この決定は「原則の問題」であると述べた。

 「我々は、奉仕する人の資格に関係のない障壁が、任務を最もよく達成できる兵士、水兵、飛行士、または海兵隊員を募集または維持することを妨げたくない。我々はアメリカの人口の100%にアクセスできなければならない」と彼は語った。「数は比較的少ないが、我々は名誉と区別をもって自国に奉仕している才能と訓練を受けたアメリカ人について話している」と彼は語った。「我々は、この機会を利用して、私たちが投資した才能を持ち、自分自身を証明した人々を維持したいと考えている。

 一方、彼はイェール大学とオックスフォード大学で理論物理学と中世史の学位を取得したこともあって「テクノクラート」とみなされ、国防総省の伝記によると、物理学、技術、国家安全保障、経営に関する11冊の本と100以上の記事を執筆または共著したカーター氏は、政府で長く優れたキャリアを積んできた。彼のキャリアは1981年に始まり、連邦議会のための国際安全保障および商業プログラム技術評価局のアナリストとして働いていた。1993年から1996年までビル・クリントン大統領(当時)の下で国際安全保障政策担当国防次官補、2009年から2011年まで買収・技術・、物流担当国防次官補をペンタゴンで務めた。

 2014年後半、共和党が上院を乗っ取った後、オバマはISISの台頭にもっとうまく対処するだけでなく、確認できる新しい国防総省長官を探していた。カーター氏を彼の選出として発表する中で、オバマ大統領は「共和党と民主党の秘書の両方に仕えてきたので、彼は通路の両側で尊敬され、信頼されている」と述べた。

 この発表は広く称賛された。当時、軍事委員会の次期共和党委員長だったジョン・マケイン上院議員は、彼を「共和党員と民主党員から同様に尊敬されている、アメリカで最も尊敬される防衛専門家の一人」と呼んだ。

 カーター氏は上院で93対5の投票で承認された。

 また、カーターは、国防総省の民間人に与えられる最高の賞である国防総省功労勲章を複数回受賞した。彼の逝去時、彼はハーバード・ケネディ・スクールの教授として、ベルファーの技術と世界情勢の教授、そしてベルファー科学国際問題センターの部長を務めていた。

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(注1)“Belfer Center for Science and International Affairs” は、国際安全保障と外交、環境と資源の問題、科学技術政策に関するハーバード ・ケネディ スクールの研究、教育、トレーニングの拠点である。 2021 年、ベルファー・ センターは、同センターが 6 年連続で世界第 1 位の大学関連シンクタンクであることが認められ、ペンシルベニア大学のシンクタンクおよび市民社会プログラムによって「センター オブ エクセレンス」に選ばれた。

(注2) イラク・レバントのイスラム国(ISIL):イラク及びシリアを拠点に活動するスンニ派過激組織。「カリフ国家」を自称。両国政府やシーア派等スンニ派以外の宗派、他宗教の住民等を標的としたテロを実行。(公安調査庁の解説        から抜粋)。

(注3) ISISは、2004年に「イラクのアルカイダ」として発足し、その2年後にISISに改名した。ISISはオサマ・ビンラディン率いる国際テロ組織アルカイダと同盟を組み、またどちらもこの地域にイスラム独立国家の建設を目指す反西洋の過激派の武装グループであるなど共通点があった。一方で、ISISはアルカイダと異なり、より残忍かつ効果的な方法で奪取した領土を支配してきた。アルカイダは2014年はじめにISISとの関係を断ち切っている。(CNN.co. jp記事「図で見る「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」」から一部抜粋)

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ロシア連邦の政治体制、法制度等からみた非民主化の実態:新たな連邦体制崩壊の危機はあるのか!(その2)

2022-09-03 15:14:17 | 国家の内部統制

第11条 ロシア連邦軍の一般的な構成

ロシア連邦の軍隊は、ロシア連邦軍の軍隊の種類と種類に含まれる軍事行政、協会、編成、軍事ユニットおよび組織の中央機関と、ロシア連邦軍の軍隊の種類と種類に含まれていない軍隊で構成される。

第11.1条 法人としてのロシア連邦軍の協会、フォーメーションおよび軍事ユニットの部門

1 ロシア連邦軍の協会管理、形成管理および軍事ユニットは、連邦国家機関の形態の法人であり得る。

2 結成された協会の管理、ロシア連邦軍隊の結成された組織又は形成された軍事部隊の管理並びに特定の法人の再編成又は清算に関する法人として設立する決定は、ロシア連邦の国防大臣が行う。

3 ロシア連邦軍の結社、結成又は軍事部隊の改革(解散)の場合には、当該法人の再編成(清算)を行う。

4 ロシア連邦国防大臣が承認した単一のモデル憲章に基づいて、ロシア連邦の軍隊の協会部門、編成部門および軍事ユニットは、法人として行動する。

第12条 軍隊の人員とロシア連邦の軍隊の募集

1 ロシア連邦軍の職員には、ロシア連邦軍の軍人及び文民要員(連邦国家公務員及び被用者)を含む。

2 ロシア連邦軍隊の徴兵は、ロシア連邦の法律に従って行う。

1)軍人 - ロシア連邦市民を治外法権に基づいて兵役に徴用し、ロシア連邦市民(外国人市民)を自発的に兵役に加入させることによって。

2)連邦国公務員。

3)従業員。

3 ロシア連邦軍の文民要員が記入することができる軍事的地位のリスト(参謀が上級将校の軍事的階級を規定する軍事職、連邦国家公務員が交代できる軍事的地位を除く)は、ロシア連邦国防大臣が定める。

4.2012年12月30日付けの連邦法N 288-FZ は、2013年1月1日より有効期限が切れる。

第13条ロシア連邦軍のリーダーシップと管理

1 ロシア連邦軍の指導力は、ロシア連邦大統領(ロシア連邦軍最高司令官)が行使する。

ロシア連邦軍最高司令官は、その権限の範囲内で、ロシア連邦軍、その他の軍隊、軍隊及び機関による執行に必須の命令及び指示をロシア連邦軍最高司令官に発令する。

2 ロシア連邦の軍隊は、ロシア連邦国防省を通じてロシア連邦国防大臣が管理する。

3 ロシア連邦軍の指導及び管理、ロシア連邦軍隊の要員の訓練は、ロシア連邦の国語で行わなければならない。

4 戦時におけるロシア連邦軍の指導及び管理は、連邦憲法法、連邦法、ロシア連邦大統領の規制法規的法律及びロシア連邦の他の規制上の法律行為に従って行われる。

第14条 (2004年6月29日付けの連邦法N 58-FZ)は無効になった。

第15 条。(2004年6月29日付けの連邦法N 58-FZ)は 無効になった。

第16条 ロシア連邦軍の配備

1 ロシア連邦軍隊の結社、組織及び軍事部隊の転位は、防衛の任務及び配備地の社会経済的条件に従って行われる。

2 ロシア連邦国防省に使用のために移転された領域内の軍事部隊及び区画の再配置は、ロシア連邦国防大臣の決定により、また、その形成及びこれ以降、ロシア連邦大統領の決定により行う。

3 ロシア連邦の領域外におけるロシア連邦軍隊の結社、組織及び軍事部隊の配備は、ロシア連邦の国際条約に基づいて許可される。

第17条 その他の部隊、軍事組織および機関

1 他の軍隊、軍隊及び機関の創設(廃止)、活動及び募集並びにそれらの管理は、ロシア連邦憲法、連邦憲法、連邦法、ロシア連邦大統領の規制法及びロシア連邦のその他の規制法に従って行われる。

2.その他の部隊、軍事組織および機関:

1)ロシア連邦の軍隊の使用計画、防衛目的のためのロシア連邦領土の運用装備計画、国家軍備計画および軍産複合体の開発に参加すること。

2) ロシア連邦軍隊と共に、ロシア連邦軍隊使用計画に従い、ロシア連邦に対する侵略を撃退することに参加すること。

3)防衛を目的とするロシア連邦軍との共同行動の準備を組織すること。

4)兵役のためのロシア連邦市民の準備に参加する。

5)ロシア連邦の領域の運用装備及び防衛目的の通信の準備のための措置の実施を確保する。

6)ロシア連邦軍との共同作戦訓練および動員訓練に関与していること。

7)ロシア連邦大統領の連邦憲法法、連邦法および規制法に従って、防衛の分野で他の任務を遂行する。

3 防衛の分野における任務を遂行するための他の軍隊、軍事組織及び機関の活動の調整並びに他の軍隊及び軍事組織の建設及び開発の調整の問題は、ロシア連邦大統領が定める。

第17.1条 ロシア連邦軍、その他の軍隊、軍事組織および機関への医療支援

1 ロシア連邦の軍隊、その他の軍隊、軍隊及び機関の医療支援は、この連邦法、他の連邦法及びロシア連邦の他の規制上の法的行為に従って行われる。

2 ロシア連邦国防省は、全ロシアの基本(部門別)公共サービスのリスト(分類子)、国家及び地方自治体のサービスの全ロシア基本(セクター別)リスト(分類器)に含まれない公共サービスの連邦リスト(分類器)及びロシア連邦軍の医療支援を目的としてロシア連邦の規制法によって規定される工事、その他 防衛の分野での軍隊、軍事編隊および身体、軍事(戦闘)作戦の実施、戦闘(訓練戦闘)、サービス戦闘(運用サービス)タスクの実行。

3 ロシア連邦軍の医療(軍医)部隊、その他の軍隊、軍事組織及び機関(医療ポイント、船舶医療サービス、医療小隊、医療会社、医療分遣隊、特別医療分遣隊、病院船、移動医療団体)は、免許を付与せずにその活動を行うものとする。

4 ロシア連邦軍の医療(軍医)部隊、その他の軍隊、軍隊及び恒久的配備の場所における軍隊の軍人に対する医療援助は、ロシア連邦政府が設立した軍人のための医療を組織するための手続に従い、国家政策の策定及び実施のための機能を果たす承認された連邦執行機関に従って提供されなければならない。 医療分野における規制および法的規制、医療の提供のための手続き、指定された連邦執行機関によって承認された医療の基準を考慮に入れる。

5 ロシア連邦軍の医療(軍事医療)部隊、他の軍隊、軍事組織および機関における医療組織の特徴は、ロシア連邦国防省、他の軍隊、軍事組織および機関の管理の分野で認可された連邦執行機関(機関)によって設立されるものとする。

6 ロシア連邦国防省は、ロシア連邦軍の医療(軍医)組織、部隊及び医療(軍医)部隊、その他の軍隊、軍事組織及び機関の職員による医療の提供のための事例及び手続を定める。

1) 軍人が本条第2項に定める条件の下で任務を遂行する場合に、これらの組織、部隊及び区画の恒久的な配備場所の外に

2)これらの組織、部隊、および細分化をロシア連邦の領土外に展開する場合(ロシア連邦に登録されていない医薬品および医療機器の使用手順を含む)。

7.ロシア連邦国防省の指示により開発された医薬品及び医療機器の流通の特徴、他の部隊の管理の分野で認可された連邦執行機関(機関)、軍事組織及び戦時中の使用を意図した機関、軍事(戦闘)作戦の実施、軍隊による防衛分野における戦闘(訓練戦闘)、サービス戦闘(運用サービス)任務の実施 ロシア連邦政府並びに武器、兵器及び軍事装備並びに有害な化学的、生物学的及び放射線的要因の影響に起因する疾病及び負傷の診断、予防及び治療のために使用される他の軍隊、軍事組織及び身体は、ロシア連邦政府が設立する。

8 ロシア連邦軍、他の軍隊、戦時中の軍隊、軍事組織および身体の軍人への応急処置、軍事(戦闘)作戦の実施、防衛分野における戦闘(訓練戦闘)、サービス戦闘(作戦-サービス)任務を遂行する前に、医療(軍事医療)組織、部隊および医療(軍事医療)ユニットの医療専門家、ならびに犠牲者自身(自助)または 近隣の人(相互扶助)。

9 応急処置が提供される条件のリスト、その提供のための規則、応急処置キット、バッグおよび医療機器のセットを装備するための基準は、ロシア連邦国防省によって開発され、承認されなければならない。他の部隊、軍事組織および機関の管理の分野で認可された連邦執行機関(機関)は、応急処置キット、バッグおよび医療機器セットを装備する機能を確立することができる。

10 訓練プログラムを含む応急処置を提供するための措置を実施するための医療(軍医)組織、部隊及び医療(軍医)部隊の軍人及び医療専門家の訓練を組織するための手続は、ロシア連邦国防省、他の軍隊、軍事編隊及び機関の管理の分野において認可された連邦執行機関(機関)によって開発され、承認されなければならない。

第V節 戦争状態、戒厳令、動員、民間防衛、領土の防衛

第18条 交戦性

1 戦争状態は、他の国家又は国家集団によるロシア連邦に対する武力攻撃の際、並びにロシア連邦の国際条約を遵守する必要がある場合には、連邦法により宣戦布告される。

2 戦争状態の宣言又は敵対行為の実際の勃発の瞬間から、敵対行為の停止の宣言の瞬間から満了するが、実際の停止の前には満了しない戦争の時が来る。

第19条 戒厳令

1 戒厳令の導入及び廃止並びに戒厳令の体制の根拠及び手続は、ロシア連邦憲法及び連邦憲法法に定める。

2 ロシア連邦の軍隊、その他の軍隊、軍隊及び機関は、戒厳令の期間中、一般に認められた国際法及びロシア連邦の国際条約の原則及び規範、連邦憲法法、連邦法、ロシア連邦大統領の規制法行為並びにロシア連邦のその他の規制上の法律行為に従って適用される。

第20条 動員

動員の準備と動員の手順は、連邦法、ロシア連邦大統領の規制法行為、およびロシア連邦の他の規制法行為によって決定される。

第21条 民間防衛

民間防衛の任務、組織及び行為は、連邦法に従って決定される。

第22条 領土防衛

1.領土防衛 - 戒厳令の期間中に、軍隊、重要な国家および特殊施設、住民の生命活動を保証する施設、輸送、通信および通信の機能、エネルギー施設、人々の生命および健康および環境に対する危険を増大させる物体、外国の妨害行為および偵察組織と戦うために、および防衛するためにとられた措置のシステムをいう。 これらの施設の機能およびロシア連邦軍、他の軍隊、軍事組織、機関および戦時中に作成された特殊編隊の使用に有利な条件を作り出すために、それらの破壊活動、偵察およびテロ活動の結果を特定、防止、抑圧、最小限に抑え、および(または)排除するための違法な武装組織を排除する。

2 領土防衛は、戒厳令の期間中に適用される措置を考慮に入れつつ、戒厳令が導入されているロシア連邦の領域又はその個々の地域において行われる。

3 領土防衛の組織、配備及び実施のための手続、軍事管理機関の機能、他の部隊の管理の分野において認可された機関、戦時中に創設された軍事組織、機関及び特別編成、連邦執行機関及びその領土機関、ロシア連邦臣民の執行機関、領土防衛の分野における地方自治機関及び組織は、 ロシア連邦の領土防衛に関する規則を定める。

4 ロシア連邦の構成機関において、戒厳令が導入された地域(領域の一部)において、戒厳令が導入された地域の市町村においては、ロシア連邦大統領が定める方法により戒厳令が発令された日から、省庁間調整機関(以下「領土防衛本部」という。

5 領土防衛本部の活動は、連邦法、ロシア連邦の他の規制法行為、並びにロシア連邦の構成主体の規制法行為及び防衛の分野における連邦法を実施する目的で採択された地方の法律によって規制される。

6 領土防衛本部の長は、ロシア連邦の構成機関の最高幹部(ロシア連邦の構成主体の国家権力の最高執行機関の長)、地方行政(自治体の行政機関および行政機関)を率いる地方自治の職員で、連邦法およびその他の規制法によって割り当てられた連邦法およびその他の規制法規法の実施に個人的に責任を負うものとする。 ロシア連邦は領土防衛の分野で責任を負っている。

7 領土防衛司令部の任務は、次のとおりとする。

1)ロシア連邦の対応する主体の領土における領土防衛のための措置を実施する機関、組織および組織の共同行動の調整を確保する。

2)領土防衛に関する措置と、戒厳令、動員措置、市民防衛措置及びテロ対策を確保するための措置とが、ロシア連邦の対応する主体の領域において実施される、地方自治体の組織と整合することを確保する。

8 領土防衛司令部は、次に掲げる基本的権限を行使する。

1)ロシア連邦の対応する主題の規制法行為草案、領土防衛に関する措置の実施に関する関連自治体の地方自治体の法律行為草案を策定する。

2)ロシア連邦の対応する主体の領土における領土防衛のための措置の実施を確保する。

3)ロシア連邦の対応する主体、対応する地方自治体の行政当局による領土防衛措置の実施のために作成された軍隊の状態と手段を管理する。

9 領土防衛本部は、ロシア連邦の規制上の法律行為に規定する領土防衛の分野においても、他の権限を行使する。

10 領土防衛司令部は、その権限の範囲内で、ロシア連邦の構成機関、地方自治体の行政当局による領土防衛措置の実施のために創設された軍隊及び手段の状態について責任を負うものとし、これらの軍隊及び手段の管理を行使する。

第VI節 最終規定

第23条 除外。( 1999年12月30日付けの連邦法N 223-FZ)。

第24条 ロシア連邦軍、その他の軍隊、軍事組織および機関における政党および公共団体の活動の制限

1 政党並びに政治的目的を追求する他の公共団体の活動並びにロシア連邦軍、他の軍隊、軍隊及び団体におけるその構造の形成は、許可されない。

2 ロシア連邦軍、その他の軍隊、軍隊及び機関は、選挙前のプロパガンダを含むいかなる政治的プロパガンダ及び扇動も禁止する

3 ロシア連邦軍、その他の軍隊、軍隊及び機関の正規の地位及び財源を、政党並びに政治的目的を追求する他の公共団体の組織の作成及び活動の実施のために使用することを禁止する。

第25条ロシア連邦軍、その他の軍隊、軍隊および機関における合法性の確保

1 ロシア連邦軍、その他の軍隊、軍隊及び機関における合法性の監督は、ロシア連邦検事総長及びその部下の検察官が行う。

2 ロシア連邦軍、その他の軍隊、軍隊及び機関における犯罪の調査は、ロシア連邦の刑事手続法によって定められた調査に従って、捜査官によって実施する。

3 ロシア連邦の軍隊、その他の軍隊、軍隊及び機関における正義は、ロシア連邦の法律に従って裁判所によって管理される。

4 ロシア連邦軍の憲兵隊は、ロシア連邦軍における合法性の確保に参加する。

第25条 第1項ロシア連邦軍の軍事警察

1 ロシア連邦軍(以下、この条において「軍事警察」という)の軍事警察は、ロシア連邦軍における合法性、法及び秩序、軍事規律、交通安全、ロシア連邦軍の施設の保護を確保するために、ロシア連邦軍の軍人、文民、市民の生命、健康、権利及び自由を保護し、 また、犯罪と闘い、防衛の分野で法律によって保護されている他の法的関係を保護する能力の範囲内でも同様とする。

2 軍事警察の活動、機能及び権限の主な方向は、連邦憲法、連邦法、一般軍事規則、ロシア連邦軍警察憲章及びロシア連邦のその他の規制上の法律行為により定める。

3 軍事警察は、ロシア連邦国防大臣が指揮する。

4 憲兵隊は、ロシア連邦軍の一部とする。軍事警察の組織構造、組織構成及び人員配置は、ロシア連邦国防大臣が、ロシア連邦軍の軍人及び文民要員の定例数の範囲内で決定する。

5 軍警察官は、連邦憲法法、連邦法、一般軍事規則及びロシア連邦軍警察憲章に定める場合及び方法において、戦闘方法、特別手段、銃器、戦闘及び特殊装備を含む物理的武力を使用する権利を有する。

第26条 防衛の財政支援

1 この連邦法に従った防衛の分野における措置の実施は、ロシア連邦の支出義務とする。

2 ロシア連邦軍がその目的に関係のない任務を遂行するための費用は、ロシア連邦の法律に従ってロシア連邦政府の決定により行う。

第26条第1項ロシア連邦の軍隊、他の軍隊、軍隊及び機関が、ロシア連邦の領域外で対テロ及びその他の作戦を行うことを確保する。

1 ロシア連邦政府は、ロシア連邦の軍隊、その他の軍隊、軍隊及び機関が、ロシア連邦の領域外で対テロその他の活動を行うことを確保するため、次の事項を定めるものを含む、経済分野における特別措置の導入について決定することができる。

1)連邦執行機関、ロシア連邦の構成機関の執行機関、地方自治機関および組織によって実施される活動、それらの資金調達の手順、および物質的および技術的支援を実施すること。

2)動員能力と施設の一時的な密閉管理 (mothballing)。

3)国家準備金の物質的価値の計上。

4)労働時間外、夜間、土日、非労働休日の誘致手続きや条件の整備、年次有給休暇の支給など、個々の組織、その構造的細分化、個々の生産施設における労働関係の法的規制の特徴を確立する。

2 ロシア連邦政府及び連邦行政機関は、経済の分野における特別措置の導入に関する決定を実施するため、ロシア連邦の法律に基づき、その権限の範囲内で、規制上の法律を採択し、かつその実施を組織する。

3 ロシア連邦政府が本条第1項に規定する決定を採択する場合、法人は、その組織的、法的形態及び所有権の形態にかかわらず、2011年7月18日連邦法第223-FZ号「特定の種類の法人による物品、著作物、サービスの調達について」、2012年12月29日連邦法第275-FZ号「国家防衛命令について」及び(又は)連邦法第275-FZ号「国家防衛命令について」及び(又は)連邦法に従って締結することを拒否する権利を有しない。2013年4月5日の法律N 44-FZの「商品、作品、サービスの調達の分野における契約システムについて」ロシア連邦の軍隊、他の軍隊、軍事組織およびテロ対策機関による行動およびロシア連邦の領土外でのその他の活動を確実にするための契約、商品の供給、仕事の遂行、サービスの提供のための国家契約(契約)。

第27条 防衛分野におけるロシア連邦の法律違反の責任

ロシア連邦の国家当局の機関、ロシア連邦の構成機関の国家当局の機関、地方自治の機関、組織、その所有権の形態にかかわらず、並びに防衛任務を怠り、又は防衛任務の遂行を妨害した罪を犯した市民は、ロシア連邦の法律に従って責任を負う。

第28条 この連邦法の発効

1 この連邦法は、その公布の日に効力を生ずる。

2 ロシア連邦大統領に提案し、ロシア連邦政府に対し、その規制上の法的行為をこの連邦法に沿わせるよう指示すること。

第29条 この連邦法の採択に関連する特定の立法行為の廃止について

この連邦法の採択に関連して、以下の事項は無効と宣言されるものとする。

1)ロシア連邦の「防衛に関する法律」(ロシア連邦人民代議員会議ヴェドモスティおよびロシア連邦最高ソビエト、1992年第42号、第2332条)。

2)ロシア連邦最高ソビエト連邦決議「ロシア連邦の法律「防衛に関する」を制定するための手続きについて(ロシア連邦人民代議員会議ヴェドモスティおよびロシア連邦最高ソビエト、1992年、第42号、第2332条)。

ロシア連邦 大統領 ボリスエリツィン

モスクワ、クレムリン 1996年5月31日

N 61-FZ

3.ロシア連邦の国家警備隊(Rosgvardiya ( Росгвардия)

1.ロシア連邦の国家警備隊(公的サイト抜粋、仮訳)

国家警備隊の連邦サービスの活動は、ロシア連邦大統領によって管理されている。

ヴィクトル・ヴァシリエヴィチ・ゾロトフ最高司令官

ロシア連邦の国家警備隊は、ロシアの国内軍事力であり、最高司令官および安全保障理事会の議長としての権限の下、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に直接報告する独立機関で構成される。国家警備隊はロシア軍とは別の組織である。

ウラジミール・プーチン大統領が署名した法律により、2016 年に連邦行政機関として設置された。国家警備隊は、ロシアの国境を確保し、銃規制を担当し、テロや組織犯罪と闘い、公の秩序を守り、重要な国家施設を守るという明確な使命を持っている。

国家警備隊の設立は、効率を高め、ロシアの安全保障システム内での責任の重複を回避するための努力として説明されているが 他の人々は、国家警備隊がウラジーミル・プーチンによる内戦やカラー革命の試みを統制するための私有軍の創設の試みであると非難している  。

2018 年の時点で、国家警備隊はロシア全土の 84 部隊に約 340,000 人を数えている。それは、MVD Internal Troops、SOBR、OMON、およびロシア軍以外のその他の国内軍事力を統合したものである。(Wikipedia から抜粋)

B.2022年8月3日付のロシア連邦国家警備隊(Rosgvardiya)命令第242号命令「ロシア連邦の国家警備隊部隊の軍人、ロシア連邦の国家警備隊部隊に勤務し、特別警察階級を有する者、連邦国家公務員およびロシア連邦国家警備隊部隊の従業員に専門住宅ストックの居住施設を提供するための手続きの承認について」(ロシア連邦法務省に25.08.2022 N 69792に登録)

ロシア連邦の国家警備隊の軍人、ロシア連邦の国家警備隊部隊に勤務し、特別な警察階級を有する者、連邦国家公務員およびロシア連邦の国家警備隊部隊の従業員に、特殊な住宅ストックの居住施設を提供するための手順

  1. 総則
  2. 軍人へのサービス住宅施設、寮内の居住施設の提供

III. 従業員への専門窓口の提供

  1. 公務員への専門宿舎の提供
  2. 従業員への専用住宅の提供
  3. 軍人、職員、公務員、職員への専門居住区の提供に関する業務の整理

アプリケーション。専門住居の受入れ及び譲渡の行為(推奨サンプル)

 C.Rosgvardiyaについて、国際戦略問題研究所(Center for Strategic and International Studies:CSIS)の上級者向けプログラム“Understanding the Russian Military Today”から一部抜粋、仮訳する。

1)構造

2016年、プーチン大統領は、ロシア語の名前Rosgvardiyaで一般的な用語で知られている国家警備隊を創設する法令に署名した。これは、全く新しい組織や新しい軍隊の徴兵を伴ったのではなく、むしろ、既存の国内治安部隊を、プーチンに直接報告する別の機関に再編成することだった。最も重要な変化は、内務省(当時の大臣ストヴォ・ヴヌトレンニク・デル:MVD)から14万人の内部部隊が移管されたことであり、これが新組織の基盤を形成した。内務省は、OMON Special Purpose Mobile 特殊目的分遣隊(otryad mobilnyi osobennogo naznacheniya: OMON)  は、さらに40,000人の兵士を失い、またSpecialized Quick Reaction Forces(spetsialnyi otryad bystrogo reagirovaniya: SOBR)は12,000人を失った。

作戦旅団、師団、特殊部隊分遣隊に分かれた内部部隊は、反乱鎮圧軍と見なすことができるものの大部分を形成している。他の部隊はOMONやSOBRを支援するためにユニットを形成し、徴兵制は他の独立した大隊や連隊の大部分を占め、主に静的な固定サイトセキュリティを提供する。これらの部隊は、能力と規模が異なる7つの地域コマンドに分散されている。いくつかの報告では、国家警備隊の総人員は約400,000人であったが、正確な数は不明である。

2)政治的背景

プーチン大統領が2016年4月に部隊の創設を布告した際、国家警備隊の表明された目的は、公共の秩序と安全を確保し、テロリズムと過激主義から守り、領土防衛に参加し、特定の政府対象を確保し、ロシア国家の防衛のために連邦保安庁(FSB)の外部機関と協力し、法律に従って、民間銃器登録を管理し、民間治安部隊を提供する義務を遂行することであった。しかし、部隊に対する外部からの制約はなく、国家警備隊の責任は広い解釈のために開かれたままである。すなわち自主機関として、プーチン大統領にのみ報告する。ロシアウォッチャーは、国家警備隊がプーチンに抗議行動をコントロールし、おそらくクーデターから彼を守るためのより直接的な権限を与えるために作られたことに大部分同意している。前者は、2016年までの抗議活動のテンポが上がっており、今日まで抗議活動が続いていることを考えると、十分に論理的に見える。国家警備隊は近年、これらの抗議行動のいくつかを解散させるために配備されている。

ロシアのエリート・クーデターは、現在想像するのは難しいが、完全に排除することはできない。2008年から2016年までの調査データは、プーチンの外交政策の動きに対する圧倒的なエリート支持を示しており、ロシアの事実に忠実なエリートの「バランサー・イン・チーフ」として、プーチンはエリートの競争と内紛を緩和し解決することに長けていることを証明している。しかし、プーチン大統領の信頼度の低下、コロナウイルス危機に対する不安定な対応、ハバロフスクでの抗議行動に対する反応の弱さは、彼が国内危機を解決する能力や意欲について疑問を投げかけている。この傾向が続けば、エリートの批判が最終的にプーチンに酸っぱい思いをさせる可能性がある。このシナリオでは、国家警備隊はエリート反乱を阻止する上で重要な機能を果たすだろう。

3)機関の組成

国家警備隊の新興文化は、他のロシアの治安機関に根ざしている。その指導部は、MVDや他の治安機関で何十年も奉仕し、完全に保守的で階層的な政治的態度を持つ年配の男性によって大部分が構成されています。ビクター・ストリグノフ第一副大佐はMVDの40年のベテランである。参謀総長のセルゲイ・チェチニク大佐は、MVDで37年間勤務しています。副長官兼国務長官のオレグ・プロホイ大佐は、FSBで13年間のキャリアを積んだ後、大統領政権でさまざまな役職を務めました。ヴィクトル・ゾロトフ長官は、この規則を証明する例外だ:彼は国家治安機関の機関内では成長しなかったが、2014年にMVDの第一副官になる前、プーチンの民間治安部隊の長を13年間務めた。彼らの職業的育成の相対的な文化的および職業的同質性により、彼らの見通しと世界観は予想通り保守的で均一である:変化に不快で、ランク付けされた上司に忠実で、イニシアチブに消極的である。

4)ミッション: あらゆる[多様な]状況に対応できるもの(catch all)な機関

国家警備隊は、紙の上では、組織犯罪、テロリズム、その他の内部脅威に対処することになっているが、その自律性(ゾロトフとプーチンの個人的な関係に大きく根ざしている)、外部からの監督の欠如、曖昧な法的使命は、大統領令に支えられて、どんなホットな問題が生じてもプーチンのキャッチオールな力になることを可能にする。支持者は、他のヨーロッパ諸国は、イタリアのカラビニエリのように、常設で中央集権的な警察や憲兵隊の永続的な伝統を持っていると指摘しています。しかし、クレムリンは、ロシアで抗議行動が全体的に増加している時に、既存のMVDとは別の勢力を切り開くことによって、自らの不安にフラグを立てた。プーチンにとって、ウクライナと最近のベラルーシの物語は有益だ。彼の見解では、ウクライナは、ウクライナ政府が弾圧する準備ができていなかった欧米列強の助けを借りて画策されたクーデターに陥った。

その結果、役割と機能、および構成の自由度が生まれます。ロスグヴァルディヤの法執行機関の役割は、クレムリンがコサックのような特定の準軍事的歴史的要素を正式に取り込むことを可能にした。ロシアでのコロナウイルスの発生により、モスクワの通りで国家警備隊のパトロールの数が増え、公衆衛生の義務を執行しました。国家環境監視機関の職員が、シベリアのウソリェヒムプロム施設で差し迫った環境災害について警鐘を鳴らしたとき、国家警備隊は被害を確保し封じ込めるために連れてこられた。ユニットはまた、9月1日の学年の伝統的な開始前に学校で追加のセキュリティを提供するために呼び出された。これらの任務は欺瞞的であり、市民の不安を管理するという中核的な任務が残っているにもかかわらず、公共の安全への慈悲深い貢献を示すことによって、ロスグヴァルディヤにもっと人間的な顔を与えるように設計されていると批判する人もいます。

5)悪循環

しかし、ベラルーシの場合が示すように、政権の独裁的な中央集権化(および停滞)は、国家警備隊が支配するように設計されている非常に不満と大衆の不満を生み出します。さらに、エリートの特定の下位派閥(すなわち、ゾロトフのような「保護者」)は、前述の不満から生じる不安と抗議を封じ込める勢力を作り出していると考えているが、国家警備隊の展開は実際に反発を引き起こし、緊張を高める可能性がある。もちろん、国家警備隊の指導部はそれをこのようには見ていない。それどころか、彼らは民衆の蜂起や抗議行動を、欧米からの危険で悪質な輸入品であり、本物のロシア人ではないと見なしている。この狭く、しかし密接に保持されている世界観は、大衆の抗議行動を予測し計画する指導者の能力を曇らせ、国家警備隊が純粋に反応的な力であり続けることを確実にするため、問題をより危険にする。

重要なことに、ベラルーシとハバロフスクにおける現在の抗議行動は、生活条件、経済的要因、または外交政策問題に関する意見の相違に対する不満から生じたうねりの動きではなかった。彼らは支配体制によって取られた醜い行動に反応して生じた。ハバロフスクでは、15年前に犯したとされる犯罪で、好意的な地域知事セルゲイ・フルガルが逮捕された後、抗議行動が燃え上がったが、国民の支持とクレムリンからの強い独立の両方を維持している可能性が高い。ベラルーシでは、選挙結果を露骨に改ざんした後、大規模な抗議行動が始まったが、警察がデモ参加者を殴打している画像が浮上し、拘留中の抗議者の拷問が確認されたことで劇的に拡大した。同様に、2014年のウクライナでは、欧州連合との経済協定の方針を逆転させるというヤヌコーヴィチの決定に対する当初の抗議行動が、ウクライナのOMONに相当するベルクートが独立広場で約20人の学生を暴力的に殴打したときに倍増した。興味深いことに、ハバロフスクでは、警察はより抑制的なアプローチをとっており、国家警備隊は不在であり、プーチンはこれらの特定の抗議行動を抑圧し、市民社会からのより強い反応を引き起こす可能性があると感じていることを示唆している。

ロシアでは、抗議行動の頻度が高まっているため、混乱した対応の機会が増えており、国家警備隊は、抗議行動を封じ込めることとエスカレーションを引き起こすこととの間の微妙な線を歩まなければならないだろう。現在、クレムリンはおそらく、さらに人々の怒りの対象になることを恐れて、公然たる対立を避けたいと熱望している。さらに、人々は国家警備隊が疑わしい行動に関与している場合にのみ、国家警備隊に気づくようである。ロシアのインターネットは、腐敗した慣行に関与したり、権力を乱用したりする個/々の悪者の物語でいっぱいである。モスクワの2019年の地方選挙では、世論は警察や同様の当局の過度に厳しい反応を非難した。しかし、ハバロフスクでは、国家警備隊がデモを封じ込めるために強制的な行動をとらなかったことが目立って、警察ではなく抗議行動が注目の対象となった。

4.ロシア連邦の主要情報(諜報)機関

Nippon Communication Foundationサイトから抜粋

(1)ロシア対外情報庁(Служба внешней разведки:SVR))

解説サイト (注7)を一部仮訳する。

ナリシキン・セルゲイ・エフゲネヴィッチ(Sergey Yevgenyevich Naryshkin (Russian: Серге́й Евге́ньевич Нары́шкин)

Sergey Yevgenyevich Naryshkin 氏

ロシア連邦「外国諜報活動に関する法律(закону «О внешней разведке»)」によると、SVRはロシア連邦の治安部隊の不可欠な部分であり、この連邦法で定義された方法と手段を使用して、個人、社会、国家の安全を外部の脅威から保護するように設計されている。

諜報活動は、ロシア連邦の重大な利益に影響を及ぼす外国の国家、組織および人物の現実的および潜在的な機会、行動、計画および意図に関する情報(以下、「諜報情報」という)の取得および処理を通じて行われる。ロシア連邦の安全を確保するために国家が実施する措置の実施を支援する。

諜報活動を行う必要性は、他の手段によってロシア連邦の安全を確保することの不可能又は不便さに基づいて、ロシア連邦大統領及び連邦議会が、その権限の範囲内で決定する。

外国諜報機関の地位は、1992年7月8日のロシア連邦外国諜報活動法と大統領が承認した外国諜報活動に関する規則によって決定される。SVRの前身はソ連のKGBの最初の主要総局である。

 (2)連邦保安庁(Федеральная служба безопасности Российской Федерации:FSB)Wikipediaから抜粋 (注6)

アレクサンドル・ヴァシリエヴィチ・ボトニコフ(Alexander Vasilyevich Botnikov、1951年11月15日 - )は、ロシアの政治家。2008年5月12日よりロシアFSB理事。

Alexander Vasilyevich Botnikov 氏

(3)ロシア連邦軍参謀本部情報総局(Главное разведывательное управление:英:Main Intelligence Directorate of the General Staff)は、ロシア連邦軍における情報機関。略してGRU) (注8)

組織上は、欧米列国と同様に参謀本部の一部署に過ぎないが、参謀系統を通した情報の収集のほか、スパイ活動、SIGINT、偵察衛星や特殊部隊(スペツナズ)の運用も管轄しており、ソ連KGB(現在のSVR・FSBなど)と並ぶ強力な情報機関である。第二次世界大戦中のスパイ、リヒャルト・ゾルゲはGRUの管理下にあった。

GRUの総局長は参謀総長(И́горь Оле́гович Костюко́в)及び国防相に従属し、ロシア対外情外報庁 (SVR) やFSBとは異なり、大統領に直接報告することはない。GRUの本部庁舎はモスクワの旧ホドゥンキ地区、ホロシェフスコエ通りに位置するガラス張りの9階建ての建物である。GRU職員からはステクリャーシュカ(Стекляшка;ガラスビル)と呼ばれているが、一般にはアクワリウム(Аквариум;水族館)として知られている。(Wikipedia を抜粋)

イーゴリ・コスチュコフ(Igor Kostyukov;Игорь Костюков氏

5. 2022 年 8 月 25 日のロシア連邦大統領令第 575 号「ロシア連邦軍の権限の確立について」(official 英文の仮訳)

ロシア連邦軍のスタッフ力の確立について

1996 年 5 月 31 日の連邦法第 61-FZ 号「防衛に関する法律」の第 4 条に従い、私は次のことを決定する。

  1. 1,150,628 人の軍人を含む 2,039,758 人のロシア連邦軍のスタッフ力を確立する。
  2. ロシア連邦政府は、本政令のパラグラフ 1 の実施に必要な連邦予算からロシア連邦国防省への予算の割り当てを規定する。
  3. 2017 年 11 月 17 日付のロシア連邦大統領令第 555 号「ロシア連邦軍の承認された戦力の確立について」(Sobraniye Zakonodatelstva Rossiyskoy Federatsii、2017 年、No. 47、第6969条) が無効であることを認める。
  4. この政令は 2023 年 1 月 1 日に発効する。

ロシア連邦大統領 V. プーチン

モスクワ クレムリン

2022 年 8 月 25 日第575号

6.ロシア連邦法の一部改正

ロシア連邦の個々の法令の改正について(2022.7.14ロシア日本大使館の仮訳を引用)

国家院( Госуда́рственная ду́ма)採択( 2022年7月6日)

連邦院(Сове́т Федера́ции)にて承認( 2022年7月8日)

第1条

1996年5月31日付連邦法第61-FZ号「国防について」(ロシア連邦法令集、1996年、第23号、掲載番号2750)に下記の内容の第261条を追加する。

「第261条 ロシア連邦軍、その他の部隊、軍事編成及び機関による、ロシア連邦領外における対テロ作戦及びその他の作戦の実施の確保」

1.ロシア連邦軍、その他の部隊、軍事編成及び機関による、ロシア連邦領外(注1)における対テロ作戦及びその他の作戦の実施の確保を目的として、ロシア連邦政府は、下記を盛り込んだものをはじめとする経済領域における特別措置の発動に関する決定を採択することができる。

1)連邦執行権力機関、ロシア連邦構成主体執行権力機関、地方自治機関及び組織が遂行する施策の実施、当該施策への資金提供及び後方支援に係る規定。

2)動員用生産施設及び物件の一時的な休止の解除。

3)国家備蓄資産の放出。

4)労働継続時間を超える労働、夜間、休日、非労働祝祭日における労働への起用、年次有給休暇の提供に係る規定及び条件の制定をはじめとする、特定の組織、その下部構造及び特定の生産施設における労働関係の法的規制に係る特徴の制定。

2.経済領域における特別措置の発動に関する決定の実現を目的として、ロシア連邦政府及び連邦執行権力機関は、自らの権限の範囲内において、ロシア連邦の法令を根拠として、規範的・法的文書を採択し、その履行を組織化する。

3.本条第1項に定めのある決定がロシア連邦政府によって採択された場合、法人はその組織的・法的形態及び所有形態の如何を問わず、2011年7月18日付連邦法第223-FZ号「特定の種類の法人による商品、役務、サービスの調達について」、2012年12月29日付連邦法第275-FZ号「国家国防発注について」及び(または)2013年4月5日付連邦法第44-FZ号「国家及び地方自治体の需要充足を目的とした商品、役務、サービスの調達領域における契約システムについて」に従った契約、ロシア連邦軍、その他の部隊、軍事編成及び機関による、ロシア連邦領外における対テロ作戦及びその他の作戦の実施の確保を目的とした商品の供給、役務の遂行、サービスの提供に係る国家契約(契約)の締結を拒否する権利を有さない。

第2条

2011年7月18日付連邦法第223-FZ号「特定の種類の法人による商品、役務、サービスの調達について」(ロシア連邦法令集、2011年、第30号、掲載番号4571;2018年、第1号、掲載番号89)第36条に、次の2内容の一文を追加する

「1996年5月31日付連邦法第61-FZ号『国防について』第261条第1項に定めのある、経済領域における特別措置の発動に関する決定がロシア連邦政府によって採択された場合、発注者は、国家国防発注の遂行、ならびに2012年12月29日付連邦法第275-FZ号『国家国防発注について』第71条第3項~第32項に定めのある製品、原料、材料、半製品、構成部品の在庫の構築に必要な商品、役務、サービスの調達を唯一の供給業者(請負業者、遂行業者)から行う権利を有する。」

第3条

2013年4月5日付連邦法第44-FZ号「国家及び地方自治体の需要充足を目的とした商品、役務、サービスの調達領域における契約システムについて」(ロシア連邦法令集、2013年、第14号、掲載番号1652;第52号、掲載番号6961;2014年、第23号、掲載番号2925;2015年、第1号、掲載番号51号;第29号、掲載番号4353;2016年、第1号、掲載番号10;第27号、掲載番号4298;2018年、第1号、掲載番号88、2019年、第18号、掲載番号2195;2021年、第27号、掲載番号5188;2022年、第16号、掲載番号2606;ロシア新聞、2022年、6月30日付)第95条第1項に下記の内容の第14号を追加する。

「14)1996年5月31日付連邦法第61-FZ号『国防について』第261条第1項に定めのある、経済領域における特別措置の発動に関する決定がロシア連邦政府によって採択された場合で、契約の対象が国家国防発注に基づく商品の供給、役務の遂行、サービスの提供である場合。国防分野、民間防衛分野、天災及び人災としての性質を有する非常事態からの国民及び領土の保護分野、国家保安分野、ロシア連邦の安全保障確保分野における国家管理分野、ロシア連邦国家親衛隊の部隊の活動領域における国家政策の立案と実現に係る機能を遂行する連邦執行権力機関である発注者の申し出に基づく場合には、当該の契約に定めのある商品供給数量、役務遂行規模、またはサービス提供規模の拡大、あるいは当該の契約に定めのある商品供給数量、役務遂行規模、またはサービス提供規模の縮小が認められる。この場合、ロシア連邦の予算関連法令の規定を踏まえたうえで、かつ、国家国防発注の基本的指標の範囲内においてであれば、契約で定められている商品、役務またはサービスの単位価格に立脚し、追加される商品数量、追加される役務またはサービスの規模に比例させる形で、契約価格を変更することが認められる。契約に定めのある商品供給数量、役務遂行規模、またはサービス提供規模を縮小する場合には、契約両当事者は、商品、役務またはサービスの単位価格に立脚して契約価格を減額する義務を負う。追加供給される商品の単位価格、または契約に定めのある商品供給数量を縮小する場合の商品単位価格は、契約に定めのある当該商品の数量で当初契約価格を除した商として算出しなければならない。

ロシア連邦大統領 V.プーチン

モスクワ、クレムリン

2022年7月14日

272-FZ号

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(注7)ロシア対外情報庁(Служба внешней разведки:SVR))は、ロシア連邦の情報機関。ソ連時代のKGBで対外諜報を担当していた第一総局の後継機関である。本部はモスクワ南部のヤセネヴォに位置する。CIS加盟諸国とは相互に諜報活動を行わない協定を締結しているため、CIS加盟諸国における諜報活動には、連邦保安局 が従事している。

(注8)ロシア連邦軍参謀本部情報総局(Главное разведывательное управление,GRU):組織上は、欧米列国と同様に参謀本部の一部署に過ぎないが、参謀系統を通した情報の収集のほか、スパイ活動、SIGINT、偵察衛星や特殊部隊(スペツナズ)の運用も管轄しており、ソ連KGB(現在のSVR・FSBなど)と並ぶ強力な情報機関である。第二次世界大戦中のスパイ、リヒャルト・ゾルゲはGRUの管理下にあった。

GRUの総局長は参謀総長及び国防相に従属し、ロシア対外情報庁 (SVR) やFSBとは異なり、大統領に直接報告することはない。GRUの本部庁舎はモスクワの旧ホドゥンキ地区、ホロシェフスコエ通りに位置するガラス張りの9階建ての建物である。GRU職員からはステクリャーシュカ(Стекляшка;ガラスビル)と呼ばれているが、一般にはアクワリウム(Аквариум;水族館)として知られている(Wikipedia から抜粋)。

(注9) ミンスク合意(Minsk agreements)Wikipediaから抜粋する。

ミンスク議定書(ミンスクぎていしょ、英語: Minsk Protocol, ロシア語: Минский протокол, ウクライナ語: Мінська угода)は、2014年9月5日にウクライナ、ロシア連邦、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国が調印した、ドンバス地域における戦闘(ドンバス戦争)の停止について合意した文書。これは欧州安全保障協力機構(OSCE)の援助の下、ベラルーシのミンスクで調印された。議定書はウクライナ、ロシア、OSCEの代表で構成された3カ国連絡グループが作成した。以前から行われていたドンバス地域での戦闘停止の試みに添い、即時休戦の実施を合意している。しかしドンバスでの休戦は失敗した。

2015年2月11日にはドイツとフランスの仲介によりミンスク2が調印された。ロシア・ウクライナ危機 (2021年-2022年)が対立の激しさを増し、2022年2月21日にロシアのウラジミール・プーチン大統領はドンバス地域の独立を承認し、翌22日の会見で、ミンスク合意は長期間履行されずもはや合意そのものが存在していない、として破棄された。24日にはウクライナの非軍事化を目的とした特別軍事活動を承認し、ロシア軍によるウクライナへの全面侵攻が開始された。

(注10) 2022.2.22 筆者ブログ「プーチン大統領がウクライナのドネツクとルガンスクの特定の2地域を国家として承認するとした発表に対するOSCEウクライナ担当特別代表キヌネン特別代表の声明の意義」を参照されたい。

OSCE(Organization for Security and Co-operation in Europe:欧州安全保障協力機構

(注11) テロ組織「ルハンスク人民共和国」および「ドネツク人民共和国」を公式に「国家」として「承認」したとある。しかし、前述したロシア連邦憲法第65条には共和国としては明記されていない。ロシア自体、国家として実態のないという点が問題となろう。

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