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米国防総省(DOD)の緊急リリース:米国の対ウクライナ安全保障支援に関するファクトシートの内容と新たな現代戦争軍事装備の変化を見る

2023-12-08 08:01:19 | 国際紛争

 筆者は、ロシアのウクライナ侵攻に関し軍事面から「フィンランドとスウェーデンの軍事同盟NATO 加盟問題と両国のわが国の軍事面の関わり、さらにNATO事務総長来日の真の目的は?を2回((その1)(その2完)にわたりを取り上げた。

  今回のブログは、筆者の手元に届いた12月6日付けの国防総省の速報ロシアのウクライナ侵攻に関し最新情報Fact Sheetを読んだ。米国のバイデン政権発足以来、ウクライナに448億ドル(約6兆5,785億円)以上の安全保障支援を約束しており、その中には2022年2月24日にロシアによるいわれのない残忍な侵略が始まってからの442億ドル(約6兆4,905億 円)も含まれる。

 ここで、筆者が問題視するのは、その金額ではない。無人ドローン兵器の多様化とそれに伴う対ドローン兵器の開発や駆動手段の小型化、携帯性兵器の強化、戦車に代わる一般車両の改良型ミサイル発射装置等である。

 最近、これらを集約した解説サイト“Anti-drone “gun trucks,” a Patriot Battery, Stinger missiles – Ukraine’s modern air defense”を読んだことも影響して改めてDODのニュースを仮訳するとともに、これらの情報をより詳細に補足、整理した。

1.防空兵器(Air Defense)

パトリオット防空砲台と弾薬 1 基(One Patriot air defense battery and munitions)

② 12 基の国家先進地対空ミサイル・システム (NASAMS) と弾薬(12 National Advanced Surface-to-Air Missile Systems (NASAMS) and munitions)

NASAMS(National/Norwegian Advanced Surface to Air Missile System)は、ノルウェーとアメリカが開発した中高度防空ミサイル・システム。AIM-120 AMRAAM空対空ミサイルを地上発射化したシステムとしては初のものであり、分散・ネットワーク化されている。ミサイル本体の名称はSL-AMRAAM(Surfaced Launched AMRAAM)。

NASAMS の発射機(Wikipediaから抜粋)

開発:

 ノルウェーの企業コングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース社がレイセオンと開発チームを編成し、ノルウェー軍と協力して開発が開始された。最先端のネットワーク中心対空防衛システムであるNASAMSは1998年に正式に実戦配備されたが、初期型は早ければ1995年には配備可能だったとされる。

③ HAWK 防空システムと弾薬(HAWK air defense systems and munitions)

 ホーク(Homing All the Way Killer, HAWK)は、アメリカ合衆国のレイセオン社が開発した地対空ミサイル。アメリカ軍での名称はMIM-23。1950年代末に開発され、現在でもNATO各国で運用されている。アメリカ陸軍はホークの配備を推進する一方で、1964年には低空目標への対処能力向上を主眼とした近代化改修として、HAWK/HIP(HAWK Improvement Program)計画を開始した。これはミサイルを更新するとともに、地上側のレーダーや情報処理装置なども更新・強化するものであり、ミサイル本体はI-HAWK(Improved Hawk)、形式名はMIM-23Bとなった。この形式は1971年に承認され、1978年までにアメリカ陸軍・海兵隊の全ての部隊のミサイルがこちらに更新された。(Wikipediaから抜粋 )

ホワイトサンズ・ミサイル実験場博物館に展示されるMIM-23 HAWK:Wikipedia から抜粋

 ③防空用の AIM-7(Sparrow)、RIM-7(Sea Sparrow)、および AIM-9M (短距離空対空ミサイル)の各ミサイル

*スパロー(Sparrow)は、米国レイセオン社製の中射程空対空ミサイル。アメリカ軍における正式名はAIM-7で、誘導にはセミアクティブ・レーダー・ホーミング(SARH)方式を採用しており、視程外射程(BVR)が可能である。

アメリカ空軍・海軍、日本の航空自衛隊など、西側諸国の空軍を中心とした軍事組織で広く使用されるが、現在ではAIM-120 AMRAAMや99式空対空誘導弾などといった、アクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)誘導方式が可能な新型の空対空ミサイルへの更新が進んでいる。

AIM-7 スパロー(Wikipedia から抜粋)

RIM-7(Sea Sparrow)は、空対空ミサイルであるスパローを元に開発された個艦防衛用の艦対空ミサイル。順次に改良が重ねられており、最新発展型の発展型シースパロー(ESSM: Evolved Sea Sparrow Missile; RIM-162)では僚艦防空・近接防御が可能なまでになった。またシステムとしても、もっとも初期に配備された応急的なBPDMS(Basic Point Defense Missile System)、改良型のIBPDMS(Improved BPDMS)がある。

旧西側諸国でもっとも一般的な個艦防空ミサイル・システムであり、アメリカ海軍を始め、NATOなど複数の西側諸国で採用され、海上自衛隊や韓国海軍でも運用されている。

RIM-7 Sea Sparrow

AIM-9M サイドワインダー (「AIM」は「Air Intercept Missile」の略) は短距離空対空ミサイル。航空迎撃ミサイル (AIM)-9 サイドワインダーは、1950 年代にアメリカ海軍によって開発された超音速短距離空対空ミサイルです。 1956 年に就役し、派生型とアップグレード型は 50 年経った今でも多くの空軍で現役で使用されています。 海軍がカリフォルニア州チャイナレイクでミサイルを開発した後、米空軍はサイドワインダーを購入した。

サイドワインダーは米軍で最も広く使用されているミサイルで、海軍/海兵隊のF/A-18A-D、F/A-18E/F、AV-8B、AH-1、空軍のF-16で採用されている。 F-15、F-22、A-10 航空機。 さらに、サイドワインダーは 30 名以上の海外顧客によって 12 種類以上の異なる航空機に搭乗されています。(米国海軍サイトから抜粋、仮訳)

④ 2,000 発を超えるスティンガー対空ミサイル(FIM-92 スティンガー(FIM-92 Stinger)は、携帯式防空ミサイルシステムである。アメリカのジェネラル・ダイナミクス社が1972年から開発に着手し1981年に採用された。FIM-92 スティンガー(FIM-92 Stinger)は、携帯式防空ミサイルシステムである。アメリカのジェネラル・ダイナミクス社が1972年から開発に着手し1981年に採用された。

 FIM-92 スティンガーは、FIM-43 レッドアイ 携行地対空ミサイルの後継として1967年に開発が始まったもので、開発においては、どのような状況下でも使用できる全面性と、整備性の向上、敵味方識別装置(IFF)の搭載に主眼が置かれた。

 主目標は、低空を比較的低速で飛行するヘリコプター、対地攻撃機、COIN機などであるが、低空飛行中の戦闘機、輸送機、巡航ミサイルなどにも対応できるよう設計されている。このため、誘導方式には高性能な赤外線・紫外線シーカーが採用され、これによって目標熱源追尾能力(発射後の操作が不要な能力)を得ている。

FIM-92 Stinger (Wikipediaから抜粋 )

AN/TWQ-1 アベンジャー防空システム(AN/TWQ-1 Avenger Air Defense System)は、アメリカ合衆国の近距離防空ミサイル・システム。軽車両からFIM-92 スティンガー地対空ミサイルを発射できるようにしたもので、従来の自走式対空ミサイルより軽便で機動性に優れている。アメリカ陸軍・海兵隊の近距離防空用地対空ミサイルシステムとして開発・配備された。主契約社はボーイング社。

AN/TWQ-1 アベンジャー防空システム(Wikipedia およびUnited States Army Acquisition Support Center (USAASC)から抜粋)

VAMPIRE は対無人航空機システム (c-UAS) :この L3Harris社の スーツケース タイプの APKWS ランチャーおよびデジグネーター キットは、特殊作戦や軽部隊が通常携行する兵器の射程を超えて地上部隊や空軍目標と交戦する能力を地上部隊(SOF)に提供する。 これはモジュール式で持ち運びが可能で、現場に取り付けることができ、オペレーターが隠れたり、移動したり、連続して発砲したりしながら、広範囲の航空範囲と防御を提供する。 先進精密殺害兵器システム (APKWS) やその他のレーザー誘導兵器を発射するための荷台を備えたほとんどの車両に取り付けることができるポータブル キットである。

 ヴァンパイアの特徴として、あらゆるピックアップまたは荷台付き車両に適合するように設計されており、設置は一般的な工具を使用し、2人で約2時間で完了できる。

L3Harris’ Vehicle-Agnostic Modular Palletized ISR Rocket Equipment (VAMPIRE)(同社サイト12/7⑤から抜粋)

⑦ c-UAS(対無人航空機)用ガントラックと弾薬(c-UAS gun trucks and ammunition)。

* c-UASガントラックは,主にM230リンクFed 30 mm兵器システム*と近接弾薬で武装する。C2のネットワークソリューションの一部として、およびM-ACEシステムC2機能を使用して動作できる。M-ACEプラットフォーム(Mobile, Acquisition, Cueing and Effector System)がUASを識別すると、正確なターゲットの位置がガントラックと共有される。一緒に使用されるC-UAS機能は、移動する無人システムを正確に識別、追跡、および倒す。(Ukraine will operate Northrop Grumman M-ACE C-UASから抜粋、補足のうえ仮訳)

c-UAS gun trucks

*M230 砲は 30 mm (30×113 mm) の単銃身電動機関砲で、発砲と発砲の間に武器に動力を供給するために (カートリッジの発射によって生成される反動や膨張ガスではなく) 外部電力を使用する。(M230チェーンガン M230 Chain Gunから抜粋)

⑧ 移動式c-UASレーザー誘導ロケットシステム。

航空機に搭載される無誘導ロケット弾に、セミ・アクティブ・レーザー誘導装置を追加した精密誘導兵器。

 例として、APKWSは、米攻撃ヘリコプター・無人攻撃機の主な武装である、ヘルファイア・ミサイルと全長はほぼ同じだが、重量は約3分の1と軽量で、高い命中精度を有し、周辺部への被害も限定できる。APKWSとは昔から戦闘機等が多連装ロケット弾ポットに搭載していた70mmロケット弾に簡易なSAL誘導装置を取り付けた安価なシステムである。

APKWS IIは、無誘導のHydra 2.75インチロケットとレーザー誘導キットの設計変換であり、精密殺傷機能を提供する。 これは、接近戦での付随的な被害を制限しながら、ターゲットを破壊する安価な方法として意図されている。 APKWS IIガイダンスセクションは、レガシー10ポンド高爆発性弾頭とMk66 Mod 4ロケットモーターの間にある。 生産は2011年に始まった。 初期運用能力(Initial Operational Capability :IOC)は、AH-1WおよびUH-1Yヘリコプターで2012年に宣言された。2014年3月、APKWS IIはMH-60SおよびMH-60Rへの統合に成功した。 2016年、APKWS IIはAV-8B、F-16、およびA-10航空機に配備された。(DOD 海軍サイト解説を抜粋、仮訳)

DOD 海軍サイトから抜粋

米バイデン政権が2023年8月に発表したウクライナ支援にVAMPIRE C-UAVシステムが含まれていたが、VAMPIREはピックアップトラックにAPKWSなど4発とEO/IRトラッカーを装備を搭載したシステムと言われていた。(解説解説から抜粋)

⑨その他の c-UAS 機器。

⑩対空砲と弾薬。

⑪西側の発射装置、ミサイル、レーダーをウクライナのシステムと統合するための機器。

⑫ ウクライナの既存の防空能力を支援し、維持するための装備。

⑬ 重要な国家インフラを保護するための設備。

⑮ 21 基の航空監視レーダー。

⑯ 39 高機動砲兵

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ウクライナ共同捜査チームの国家当局が米国司法省との了解覚書(MoU)に署名:このMoU は、JIT 加盟国と米国の間のそれぞれの調査と起訴における調整を正式化、促進させる

2023-03-06 11:08:07 | 国際紛争

 欧州司法協力機構(Eurojust)がウクライナを支援する共同捜査チーム (Ukraine joint investigation team :JIT) に参加している 7 か国の国家当局は、ウクライナで犯された疑いのある中核的な国際犯罪について、米国司法省との間で了解覚書 (以下、MoU) に署名した。この MoU は、ウクライナでの戦争に関連するそれぞれの調査において、JIT パートナー国と米国当局との間の調整を強化する。

 このMoU は 3 月 3 日(金)に、7 つの JIT パートナー国の検察当局のハイレベル代表者と米国連邦司法長官メリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)によって署名された。

 筆者は2022年9月23日のブログ 「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!(その3完)」の中で国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏の声明内容等を紹介した。

 以下でEurojustのリリース文を補足しながら仮訳する。

President Volodymyr Zelenskiy and ICC Prosecutor Karim A. A. Khan QC(ロイター通信から引用)

1.ウクライナでのJITメンバーと米国が覚書に署名

 (ウクライナ)のICC検事総長室内の模様;MoU署名時

 中央が米国ガーランド司法長官、右手がICCの主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏

 MoUの調印について、Eurojust のラディスラフ・ハムラン(Ladislav Hamran)執行委員会・委員長は次のように述べている。「我々は野心のために団結する一方で、努力においても協調する必要がある。それこそまさに、この覚書が私たちの達成に役立つものである。JIT パートナー国と米国は、協力の恩恵を十分に享受するために、Eurojustの継続的な支援に頼ることができる。」

 米国司法長官のメリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)氏は「米国が 7 つの JIT メンバー国全員と覚書に署名する最初の国になることを嬉しく思う。この歴史的な了解覚書は、ロシアのウクライナ侵攻に起因する残虐行為の捜査と訴追に関して、米国と JIT 加盟国との間の調整を正式なものにし、促進するものである。また、この侵略の加害者が、自由で民主的な社会という私たちの共通の価値観を損なうことはないという、世界へのシグナルでもある。」と述べた。

 米国との MoU の主な目的は、関係するすべての国家当局によって実施される捜査と起訴の間のより緊密な調整を促進することである。MoU は、協力、情報交換、およびEurojustの支援により開催される調整会議への米国当局の参加のための実際的な取り決めを可能にする。

 ウクライナでの戦争開始から 1 か月以内に、Eurojustは2022 年 3 月 25 日にリトアニア、ポーランド、ウクライナ当局による JIT の設立を積極的に支援した。国際刑事裁判所の検察局は、2022 年 4 月 25 日に JIT に参加した。エストニア、ラトビア、スロバキアは2022 年 5 月 30 日に JIT に加盟し、ルーマニアは2022 年 10 月 13 日に加盟した。

 JIT は、すべての国家当局が、ウクライナで犯されたとされる核心的な国際犯罪の証拠を確保し、責任者を裁判にかけるためにあらゆる手段を講じるというメッセージを増幅させる。

〇米国の戦争犯罪説明責任捜査チームの立ち上げ

 2022 年 6 月 21 日、米国ガーランド司法長官は、ウクライナで戦争犯罪やその他の犯罪を犯した人々の責任を追及する連邦司法省の進行中の作業を強化するために、戦争犯罪説明責任チームの立ち上げを発表した。このチームは、とりわけ、戦争犯罪人権侵害を含む調査における部門の主要な専門家を集める。

 このチームは、刑事訴追証拠収集フォレンジック、および関連する法的分析に関する運用支援アドバイスを含む、幅広い技術支援を提供する。チームの任務の中心的な要素は、ウクライナでの戦争を報道するアメリカ人ジャーナリストの殺害や負傷など、アメリカが管轄する潜在的な戦争犯罪の進行中の調査をさらに進めることである。

 米国当局との協力と調整は、Eurojustの米国連絡検察官*によって促進される。

〇Eurojust内にコアとなる国際犯罪証拠データベース(CICED)の設置

 JIT や主要な国際犯罪に関するその他の調査をサポートするために、Eurojust は Core International Crimes Database (CICED) を設置した。詳細については、この科学的知見に基づく概要書であるファクトシート(full reportは  ダウンロードする)を参照されたい。

 ウクライナでの戦争の勃発以降、Eurojust が取ったすべての行動の詳細については、専用の Web ページを参照されたい。

* 次の 10 か国には、Eurojust との連絡検察官がいる: アルバニア、ジョージア、モンテネグロ、北マケドニア、ノルウェー、セルビア、スイス、英国、ウクライナ、米国。

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ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!(その3完)

2022-09-23 12:00:00 | 国際紛争

(2)2022.6.8 欧州委員会リリース「ウクライナにおけるロシアの戦争犯罪:EU、国際刑事裁判所の捜査を725万ユーロ(約10億3700万円)で支援」

 6月8日、欧州委員会は、国際刑事裁判所 (ICC) の捜査能力を 725 万ユーロで支援するために、その外交政策手段の下で新しいプロジェクトを開始した。ウクライナのキーフで Vice-President of the European Commission (HRVP) によって最初に発表されたこのプロジェクトは、国際犯罪の不処罰と世界的に闘う EU の取り組みの一環である。特に、ウクライナでロシアが犯した戦争犯罪に関する進行中の捜査に対応するために、ICC がその調査能力を拡大するのに役立つであろう。

 欧州委員会のジョセップ・ボレル・フォンテジェス(Josep Borrell i Fontelles)上級代表/副委員長は、「ロシア占領下で行われた犯罪に不処罰はあり得ない。

Josep Borrelli Fontelles 上級代表/副委員長

 国際刑事裁判所の捜査は、ウクライナで行われた凶悪犯罪に対する説明責任と正義を確保するために極めて重要である」と述べた。

 ディディエ・レインダース(Didier Reynders)欧州委員会の司法担当委員は、「一つはっきりしていることは、ウクライナで行われた残虐行為の責任者が裁判にかけられることを確実にするために、世界的な対応が必要であるということである。我々は、国際刑事裁判所と緊密に協力し、戦争犯罪の加害者に不処罰がないようにしている」と述べた。

 Didier Reynders 欧州委員会の司法担当委員

 EUはICC検察局(Office of the Prosecutor of the ICC))が開始した捜査を支持する。4月25日、EurojustとICCは力を合わせ、裁判所がEUの共同調査チームに参加することで合意した。戦争犯罪と人道に対する罪の可能性に関する情報は現在、戦争犯罪やその他の残虐行為の責任者が責任を問われることを確実にするために、将来的に関連主体による調査と裁定を可能にするために収集されている。

 この危機対応措置は、ICC検察局のデータ保管・処理インフラをさらに拡大し、デジタルを含む新しい種類の証拠に対する分析・法医学的能力を強化するために、ICC検察局に的を絞った支援を提供する。

【EUの取組みの背景】

 欧州連合(EU)は、ウクライナにおける国際法と国際人道法の重大な違反について、ロシアの意思決定者に説明責任を負わせることを約束している。ウクライナのブチャで行われた残虐行為の報告を受けて、ウルズラ・ゲルトルート・フォン・デア・ライエン(Ursula Gertrud von der Leyen)欧州委員会委員長はウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー(President Volodymyr Zelenskyy)大統領と会談し、緊密な協力を確保することに同意した。

Ursula Gertrud von der Leyen 委員長

 フォン・デア・ライエン委員長は、ディディエ・レインダース司法担当委員に、ウクライナで行われた戦争犯罪と人道に対する罪を調査するためのEUの取組みのフォローアップと支援を命じた。

 この文脈において、ウクライナ国外での証拠の安全な保管を確保し、様々な欧州および国際的な司法当局による捜査及び訴追を支援することが極めて重要である。欧州委員会は、ユーロジャスト規則(Regulation (EU) 2018/1727 of 14 November 2018 on the European Union Agency for Criminal Justice Cooperation (Eurojust))を改正し、戦争犯罪に関する証拠を保存し、共有する法的可能性を機関に与えることを提案した。この提案は、2022年5月19日に欧州議会と欧州連合理事会によって合意(注19)された。

 戦前にすでにウクライナにいた欧州連合諮問ミッション(EUAM)(注20)は、ウクライナ検事総長が国際刑事裁判所に提出される安全な捜査と証拠収集を確実にするための訓練と機器の寄付を支援する。EUはまた、ICCの調査を支援するための追加の方法を検討している。

  ウクライナ検察総局、13のEU加盟国、国際刑事裁判所(ICC)検察庁は、ウクライナで行われた戦争犯罪と人道に対する罪に関する調査を開始した。ウクライナ検察庁は専用のホームページを設置し、市民にそのような犯罪を登録して文書化するよう求めている。EurojustとEuropolの支援を受けて、ポーランド、リトアニア、ウクライナと共にEU合同調査チーム(JIT)が設立された。ユーロジャストと国際刑事裁判所(ICC)は4月25日、力を合わせ、裁判所が合同調査チームに参加することで合意した。最近、エストニア、ラトビア、スロバキアもJITのメンバーになった。他の加盟国もJITに参加することが期待されている。 Eurojustでホストされているジェノサイド・ネットワークは、中核的な国際犯罪のケース構築を強化するために、加盟国とウクライナの司法当局のためのトレーニングセッションを開始した。EUはまた、例えば、法医学の専門家、機器、トレーニングの可能性などの専門知識で、調査を支援する準備ができている。

 8.欧州刑事警察機構( European Police Office :Europol)

(1)概要

 参考までに元平成国際大学の入稲福 智氏の解説から抜粋する。

EUの欧州刑事警察機構(Europol) との協力(EU条約第30条および第32条)

EU加盟国の警察当局の協力機関である Europol (European Police Office)は、マーストリヒト条約に基礎を置いているが、1998年、全加盟国によってEuropol 協定(OJ 1995, No. C 316, p. 2; OJ 2004, No. C 2, p. 3)が批准されたことを受け、1999年に正式に設立された。

 EU理事会は、Europol との協力を促進し、また、Europol が特に以下の行為を行いうるよう、アムステルダム条約の発効から5年以内に措置を講じるものとされている(EU条約第30条第2項)。

・加盟国警察当局による捜査の準備や加盟国警察当局の支援

・Europol が加盟国の関係機関に調査や調整を求めたり、加盟国関係機関に組織犯罪に関する専門情報を提供しうるようにすること(see OJ 2000, No C 289, p. 1)

 なお、加盟国はEuropol の勧告(調査の要請など)に従うかどうか決定しうる。それに従わない場合には、その理由を Europol に報告しなければならない。

・組織犯罪に関し、加盟国検察・捜査当局スタッフと Europol の協力の促進

・国境を越えた犯罪に関する調査、情報、統計に関するネットワークの構築

9.ICC(国際刑事裁判所)

(1)ウクライナ侵攻にかかるICCの取組みの解説例

2022.7.7 経団連タイムスNo.3551:(東京大学准教授)中島啓「ロシアのウクライナ侵攻と国際訴訟戦線の動向」から引用する。

 「ロシアによるウクライナ侵攻に伴う案件がさまざまな国際裁判の場で扱われ始めている。2022年2月24日の侵攻開始のわずか4日後には国際刑事裁判所(ICC)の検察局が戦争犯罪についての捜査開始に向けて動き出し、3月には国際司法裁判所(ICJ)がロシアに対して「特別軍事活動」の即時停止を命ずる仮保全措置を指示した。また、ロシアからのビジネス活動の撤退に起因する紛争が国際仲裁の場に持ち込まれる可能性が取り沙汰され始めている。長期化の様相を呈する戦争の帰趨とともに、これら国際訴訟戦線の動向も注視していく必要がある。」

 (2)2022.228 ICC ウクライナの状況に関する国際刑事裁判所の調査動向と ICC 検察官、Karim AA Khan QC の声明内容

1.国際戦略研究所(IISS)「ウクライナにおける国際刑事裁判所の調査」を抜粋、仮訳する。

 2022 年 2 月にロシアがウクライナに侵攻してから 1 週間も経たないうちに、国際刑事裁判所 (ICC) の主任検察官は、戦争犯罪が行われたかどうかの調査を開始すると発表した。ウクライナのロシア軍がクレムリンにつながる明確に定義された指揮系統の中で活動しているという事実は、裁判所による他の調査でつまずきのブロックとして役立った起訴への1つの重要な障害を取り除いた。 主任検察官は、おそらく 2022 年末までに戦争犯罪または人道に対する罪でロシア高官を起訴しようとするだろうが、その時点で ICC はおなじみの問題に直面するだろう。ロシア高官等は裁判にかけられるかもしれない。

 2022 年 3 月 2 日、国際刑事裁判所 (ICC) の主任検察官であるカリム・カーン(Karim A. A. Khan QC)は、ウクライナでの戦争中に犯された「過去および現在の戦争犯罪、人道に対する罪、大量虐殺の申し立て」すべての捜査を開始すると発表した。それはロシアによるウクライナ侵攻の 1 週間も経たないうちに始まった。数日前、彼の事務所は、「犯罪が…犯されたと信じるに足る合理的な根拠」が既にあると発表した。

 この捜査は、2021 年 6 月に ICC 検察官として 8 年の任期を務めることになった英国の弁護士、カーンによって最初に開始されたものであり、ICC がこれまでに可決した中で最も重要なものになる可能性がある。 39カ国がウクライナの状況を捜査のために検察庁に付託するなど、強力な国際的政治的支持を受けている。 しかし、裁判所は困難な立場にあることに気づいた。 カーンと彼の事務所の検察官は、犯罪がロシアによって犯されたという証拠を見つけても、ロシアのウラジミール・プーチン大統領を含む可能性のある上級指導者を起訴しなければ、ICCの評判が損なわれることを知っている。 しかし、起訴されて起訴された者の身柄を確保できなければ、その評判も損なわれる可能性がある。 実際、ICC が 2002 年 7 月に活動を開始して以来、起訴と有罪判決を勝ち取ったのは 4 人だけである (全員がアフリカ諸国から引き渡された)。

B.ICC 主任検察官、Karim A.A. Khan QC の声明内容

Karim A. A. Khan QC 主任検察官

 2022年2月28日、私は、ウクライナ情勢の調査を、可能な限り早期に開始することを決定したことを発表する。

 ウクライナは「国際刑事裁判所(「ICC」または「裁判所」)ローマ規程」(注21)の締約国ではないので、それ自体が状況を私の事務所に付託することはできない。しかし、裁判所が行使することを選択した場合、その領土で発生したローマ規程に基づく犯罪の申し立てに対する裁判所の管轄権を合法的に受け入れる特権を2回行使した。ウクライナ政府が提出した最初の宣言は、2013年11月21日から2014年2月22日までにウクライナ領内で行われたとされる犯罪に関してICCの管轄権を認めた。第2の宣言は、2014年2月20日以降、ウクライナ全土で行われたとされる犯罪疑惑を網羅するよう、この期間を無期限に延長した。

 私は、ウクライナ情勢の予備調査から生じた事務局の結論をレビューし、調査を開始する合理的な根拠があることを確認した。特に、私は、戦争犯罪と人道に対する罪の双方が、事務局による予備審査において既に評価された出来事に関連して、ウクライナにおいて行われたと信じるに足る合理的な根拠があることに満足している。ここ数日の紛争の拡大を考えると、この調査は、ウクライナの領土のどの部分でも紛争の当事者によって犯された私のオフィスの管轄内にある新しい犯罪の疑いも包含するつもりである。

 私は、すでに私のチームに、すべての証拠保存の機会を探求するよう依頼している。次のステップは、裁判所の予審室に調査を開始する許可を求め、取得するプロセスを進めることである。規程に定められた、事態をさらに迅速化できる代替ルートは、ICC締約国が状況を私の事務所に付託することであり、これにより、ICC事務局の独立した客観的な調査を積極的かつ迅速に進めることができる。

 また私は、私のオフィスが調査に着手するにあたり、すべての締約国と国際社会全体の支持を求める。私は、追加の予算支援、私たちのすべての状況を支援するための自発的な貢献、そして無償の人員の融資を求める。我々の任務の重要性と緊急性は、手段の欠如のために人質に取られるには深刻すぎる。

 私は、ウクライナの現場の動向を引き続き注意深く見守り、国際人道法の適用規則の自制と厳格な遵守を改めて求める。

 誰かが状況に関連する情報を持っている場合、これは私のオフィスに提出することができる: otp.informationdesk@icc-cpi.int.

 法廷での「予備審査」「捜査中状況と事件内容」の詳細については各クリックされたい。

Reutersから写真を引用

(3)ICC活動に関するUkrinform記事

 2022.7.20 Ukrinform (ウクライナのメディア)が詳細に解説している。戦争当事者国のメデイアでありながら詳しい内容である。仮訳する。

 ICC 主任検察官、カリム・カーン(Karim AA Khan QC)は、すでにウクライナに3回行っており、ロシア軍の残虐行為を自分の目で見た。特に、6月の最近の訪問中に、国際刑事裁判所(ICC)の検察官であるカリム・カーンは、ハリコフ(Kharkiv)の最も影響を受けた地域を訪れた。

 ロシアによるウクライナへの本格的な侵略の後、ICC 検察官は 3 月 2 日、ウクライナで犯された最も重大な国際犯罪の範囲内での証拠収集の開始を発表した。

 ウクライナにおけるロシアの戦争犯罪に関して、42カ国が国際刑事裁判所に付託(注22)した。ウクライナは、まだ「国際刑事裁判所に関するローマ規程」を批准していないが、ICC の管轄権は既に受け入れているため、これらの上訴により調査の開始が許可された。

 ハーグの国際刑事裁判所は、戦争犯罪、ジェノサイド、人道に対する罪で告発された個人を起訴する権限を持っている。したがって、ウクライナにとって、これはロシアの公務員と軍関係者に責任を問う機会である。

 注目すべきは、2021年 2 月の第 19 回ローマ規程締約国会議で、英国の弁護士で国際法の専門家であるカリム・カーンが、国際刑事裁判所の 3 番目の主任検察官に選出されたことである。2021 年 6 月 16 日に正式に就任した。その前に、国際刑事裁判所で検察官および弁護士として働く機会があった。特に、彼はケニア、リビア、スーダンの状況に対処した。

 Ukrinform とのインタビューで、ICC 検察官のカリム・カーンは、ウクライナ領土で犯された戦争犯罪の調査の現在の段階と、裁判が開始される可能性のある日付について語った。

 ICC検察官のキーフ事務所の場所はすでに合意されている。

【カリム・カーン主任検察官との会見内容】

- 現在、国際刑事裁判所におけるウクライナの訴訟はどの段階にあるのか? 十分な証拠を集めたか?

- 私たちの調査についてはコメントしない。私はウクライナに3回行ったことがある。3月2日に調査を開始した翌日、私はチームをウクライナに送った。

我々はウクライナで継続的に完全な存在感を示しており、キーフにオフィスを開設している。うまくいけば、その正式な手続きはすぐに完了すると思う。我々は事務所の場所を合意した。

- あなたはウクライナを3回訪問したと述べられた。初めて訪れたときの感想は?あなたの感情は何であったか?たとえば、キーフ地域で見たものにショックを受けたか?

-私はここにいるのは私的な資格ではなく、検察官としてここにいるので、私の個人的な感情は関係ないと思う。 私は客観的でなければならず、公平でなければならない。

 もちろん、私はアジア、アフリカ、アフリカのすべての地域、ヨーロッパなど、世界中を旅してきたが、恐ろしい犯罪を見てきた。私は 1990 年代にルワンダ トリビューンと旧ユーゴスラビアで起訴している。ビニール袋が立ち去る難民、遊び場が爆破された子供たち、破壊された建物などを見ると、いつも冷静になる。しかし、感情は実際には二次的な問題です。

 私は証拠を処理しなければならない。戦争は醜く、戦争は残酷で、人々は苦しむ。私の焦点は「犯罪」である。民間人が標的にされたか?民用物は故意に破壊されたか? そして、犯罪が行われ、誰が責任を負っているか? そして、なぜ私はそれを言うか?それには、感情的な反応ではなく、法医学的な反応が必要だからである。それが、司法プロセスを他の多くのプロセスと区別するものである。

- 6 月下旬、ICC 検察庁は、ウクライナでの戦争犯罪を調査する共同捜査チームに加わった。 ウクライナに関する調査にはどれくらいの時間がかかると思うか? 私たちが話しているのは、正確にはどのような犯罪であるか?

- ローマ規程では犯罪は明確に規定されている。ICCは戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイドに対する管轄権がある。私たちは、ウクライナの検事総長、国家当局、共同捜査チーム、およびEurojustの両方と協力している。どちらの方法でも、独立して部分的に、真実に到達しようとしている。そして私が言えることは、さまざまな状況において、際限のない調査は信じていないということだけである。法律が影響を与えることができるように、彼らは焦点を当てる必要がある。そして、これが我々がやろうとしていることである。質の高い証拠が集められたら、裁判所に申請する。

 - いつ裁判が始まると思うか?

- 裁判官がそう言うと、法廷審問が始まる。私が国際刑事裁判所に申請するに値する証拠が必要である。しかし、必要な品質の証拠がなければ、そうするつもりはない。同時に、紛争が進行している間、私は親指を遅らせたりいじったりするつもりはない。それはバランスの問題である。

 ICCはスピードアップしようとしている。しかし、私はウクライナの調査が効果的であり、必ずしも遅くならないようにすることに重点を置いている。 しかし、それは証拠が許す限り速くなるであろう。その上で、現地事務所だけでなく知っておくことが重要である。私は、最大規模の展開に継続的に全力を尽くしており、犠牲者や生存者を失望させないよう、誠実に誠実に行動することを望んでいる。

 正直なところ、これはウクライナだけの問題ではない。世界中の被害者と生存者は、国際正義だけですべてを行うことはできないことを認識する必要がある。重要なアンカーです。私は自分の仕事をしなければならないが、教育であろうと経済であろうと、この分野には他の多くのアンカーがあり、最も広い意味での正義が確実に実現されるように調和して機能する必要がある。

 - 6 月、国際刑事裁判所の裁判官は、2008 年のジョージア戦争中に犯された戦争犯罪で、2 人のロシア市民を含む 3 人の容疑者に逮捕状を発行した。戦争犯罪容疑者の逮捕状発行の仕組みについて教えてほしい。

-要点は、逮捕状には、特定の証拠の基準が必要であり、それには、個人が裁判所の管轄内で犯罪を犯したと信じる合理的な根拠があるということである。

 合理的な疑いの余地のない基準が満たされていると感じたら、訴訟を開始する必要がある。または、有罪判決の実際の見通しが必要である。ICCは、法廷に提示するものがその精査に耐えられるようにするための最良の機会を持っている。

  それは正義のためであり、被害者と生存者のためだと思う。

 - 6 月、国際刑事裁判所に潜入しようとしていたロシアのスパイがオランダで逮捕された。ロシア人は、ICC でインターンとしての仕事を探していたブラジル人だと自己紹介した。ロシア人は何を狙っていたと思うか。これはウクライナの事件に関連している可能性があるか? そして、ICC が持っている証拠を保護するために、別のセキュリティ システム、またはさらに強化されたセキュリティシステムを使用しているのではないか?

-まず第一に、私はその問題の裁判所のオフィスの内部セキュリティの問題についてはコメントしない。オランダは、彼らが名前を挙げた個人を返還するために取った行動を発表した。他の問題についてはコメントするが、それ以外は憶測または機密扱いになるため、これ以上コメントするつもりはない。しかし、私は質問への関心を理解している。

- ウクライナはローマ規程を批准していないが、ICC の管轄権を認めている。2 月 24 日まで、多くの専門家は、これがクリミアとドンバスでのロシアの犯罪に対する ICC の調査のペースに影響を与えるだろうと言っている。今日のウクライナにとって、国際刑事裁判所の活動の基礎となっているローマ規程を批准することは重要であるか?

- ウクライナが批准するかどうかを決定するのはウクライナ自身である。今日、多くの国がそれについて言及しているのを見たが、私にとっては、それはウクライナの主権の問題である。ウクライナがしなければならないことは、国際法を遵守することであり、また、2014 年と 2015 年には、ICC 事務局との完全な協力を可能にする法律を実施することを宣言した。

 したがって、残りについては、締約国として署名している欧州連合のすべての加盟国と話し合うかどうかは、ウクライナ次第である。そしてもちろん、それはウクライナが現在公に議論している問題である。

 しかし、私にとっては、一般的な規範的価値観ではなく、法的な責任を扱っている。連携できるタイプの協力法が必要である。そして、真実にたどり着くことができるように、ウクライナの同僚と協力して信頼を築き続ける必要がある。

 率直に言って、私がそれを言うのを好まない人もいるかもしれないが、私はロシア連邦にも連絡を取ったが、気にいられなかった。私のお気に入りは人類であり、私のお気に入りは最も脆弱な人であり、私のお気に入りは恐怖に陥っている人です. それは私の責任であり義務であり、えこひいきではない。それで、私は応答がなかったので、私は再びロシア連邦に手を差し伸べる。 私はウクライナからのものを持っている。

そして最終的に、私は真実にたどり着く責任を負わなければならない。そうすれば、プロセスは信頼できるものになる。そして、それが私たちがなりたいものである。

 ――ICCの予算について教えてほしい。ウクライナの訴訟に割り当てられる割合は? そして、今日、追加の資金調達が必要か?

- 裁判所は 20 年間機能しています。そして、3 月に私が追加の資金提供を求めた理由は、ウクライナのためだけではなく、世界中の 16 の状況での私の義務のためである。ご存知のように、私たちはベネズエラを調査しており、それらの当局とも協力して補完している。私たちはミャンマーとバングラデシュに目を向けている。フィリピンとアフガニスタン、スーダンとリビア、そしてマリと中央アフリカ共和国を見ている。そして、これらのリストは延々と続く。したがって、状況全体に分散するリソースは、私の優先順位に基づいている。前進しようとしている国では、より多くの支援が必要である。締約国会議の次期予算が重要だと思う。

 現時点では、ウクライナは裁判所の支援に関して何も支払っていません。もちろん、戦争ではそれは難しいことであるが、ICCが対処しなければならないまさにその状況が適切に守られ、資源が供給されることを確実にするために、ICCは他国からそれらの手段を得ようとしている。そうでなければ、期待は私たちの提供能力を超えてしまう。そして、私は自分の能力を最大限に発揮する必要があるが、そうではない。私たちは、国際法廷ができることとできないことについて、被害者や証人に対して、率直に接するよう努める必要がある。

 残念ながら、忍耐が必要ですが、それでも迅速に行動できることを願っている。

(4)国際戦略研究所(IISS)「ウクライナにおける国際刑事裁判所の調査」

以下で、仮訳する。

 ジェノサイド(民族大量虐殺)犯罪、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略犯罪の4つがある。特に特定の民族の根絶を目的とするジェノサイドは「犯罪の中の犯罪」と呼ばれる。

 今回の侵攻を巡り、ロシアを非難する意味を込めて「ジェノサイド」と表現する政治家もいる。

  首都キーウ近郊のブチャで明らかになった虐殺事件、市民が避難していた劇場や病院への爆撃、ウクライナ軍に近い人間をあぶり出す「選別収容所」の運営などはどのような犯罪に該当するのか。

 ブチャの虐殺は人道に対する罪の可能性が高い。報道では殺人や拷問、性的暴行などが行われたとされている。兵士ではない住民への攻撃は戦争犯罪にもなり得る。南東部マリウポリの劇場や病院への攻撃は、民間人や負傷兵などしかいなかった場合は、戦争犯罪に当たると考えられる。

 また、選別収容所は「住民の追放、強制移送」という人道に対する罪に当たるとみられる。対人地雷やクラスター爆弾など非人道的な兵器の使用も戦争犯罪に問われる可能性があるが、ロシアはこれらを禁止する条約を批准していない。

 2022年3月2 日、「国際刑事裁判所 (ICC) の主任検察官であるカリム・カーン(Karim Kahan)氏は、2013 年にクライナのキーフでロシアに友好的な政府に対する抗議行動が勃発したとき、ウクライナでの戦争犯罪容疑の捜査を「直ちに進める」と述べた。

********************************************************************************:

(注19) 2022 年 5 月 30 日の欧州議会および理事会の規則 (EU) 2022/838改正

2018/1727のジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪、および関連する犯罪に関連する証拠のユーロジャストでの保存、分析、保管に関する改正規則

(注20) 欧州連合諮問ミッション(EUAM)

 ウクライナに対するロシアの侵略戦争が始まって以来、EUAM はもはやウクライナの領土でその任務を完全に遂行することができなくなった。 しかし、ミッションは、民間の治安部門の改革の分野でウクライナのパートナーを支持し、支持し続け、ウクライナを国民が自由、平和、人権、法の支配を享受する独立した繁栄した国家と見なすという私たちの共通の目標に向かっています。

 2022 年 3 月と 4 月に、EU 加盟国は EUAM に新しいタスクを発行した。 ミッションは現在、法執行機関を支援して、ウクライナから近隣の加盟国への難民の流れとウクライナへの人道援助の流入を促進している。 またEUAM は、国際犯罪の捜査と起訴を促進するための法の支配機関を支援している。

(注21) 国際刑事裁判所に関するローマ規程

国際刑事裁判所に関するローマ規程(Wikipedia )から抜粋する。

 国際刑事裁判所に関するローマ規程(The Rome Statute of the International Criminal Court)は、国際刑事裁判所 (ICC) の構成、管轄犯罪、手続などを規定する国際条約である。

 1998年7月17日、ローマにおける国際刑事裁判所の設立に関する国際連合全権外交使節会議(通称ローマ会議)で、賛成120か国、反対7か国の多数で採択された。4年後の2002年7月1日、発効に必要な60か国以上の批准を受けて発効した。2021年6月現在の署名国は137か国、締約国は123か国である。

 日本は、本規程と同日の1998年7月17日に採択された国際刑事裁判所の設立に関する最終合意書に署名、締約国会議に参加するオブザーバー資格を獲得した。

 その後、2007年(平成19年)4月27日、国会で本規程への加入が承認されるとともに、国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律(協力法)が可決され成立した。同年5月11日、協力法は平成19年法律第37号として公布され、同年7月10日、その関連政令が公布された。そして、同月17日、日本は本規程への加入書を国連条約局に寄託し、10月1日付けで105番目の締約国となった。

 なお、同年7月19日、協力法に関連して「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律による没収保全と滞納処分との手続の調整に関する政令」、「国際刑事裁判所に対する協力の手続に関する規則」(最高裁判所規則第8号)、「国際刑事裁判所の引渡しの請求に係る護送中の着陸があった場合における警察官による引渡対象者の拘束に関する手続を定める規則」(国家公安委員会規則第14号)が公布された。

(注22)  わが国外務省は2022年3月9日ウクライナの事態に関する国際刑事裁判所(ICC)への付託を以下のとおり行った。

1.3月9日(日本時間同日)、我が国は、オランダ・ハーグにおいて、ウクライナの事態を国際刑事裁判所(ICC)に付託しました。

2.今回のロシアによるウクライナに対する軍事行動は、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為です。明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難します。

3.我が国として、3月2日の国連総会決議及び3月4日のG7外相会合共同声明、並びにその後の更なる戦争犯罪の懸念の高まりを踏まえ、ICCの捜査への支持を明確化する観点から、今回、ICCへの付託を行ったものです。

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Copyright © 2006-2022 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.You may reproduce materials available at this site for your own personal use and for non-commercial distribution.

 

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ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!(その2)

2022-09-23 09:16:59 | 国際紛争

4.英国、ドイツやスイスの制裁措置

(1)英国の制裁措置

1.2018 年制裁及びマネーロンダリング対策法の概要

 国立国会図書館 調査及び立法考査局 海外立法情報課 芦田 淳「【イギリス】2018 年制裁及びマネーロンダリング対策法の成立」外国の立法 No.277-2(2018.11)が参考となる。

2.制定法に基づくガイダンス:ロシア制裁:ガイダンス

(更新日 2022年7月21日)の内容を仮訳する。

 「2018年の制裁およびマネーロンダリング防止法(以下「制裁法」という)」の第43条で義務付けられているように、外務・英連邦・開発担当国務大臣は、ロシア(制裁)(EU離脱)規則2019(以下「規則」(The Russia (Sanctions) (EU Exit) Regulations 2019)の実施と遵守を支援するために、このガイダンスを提供する。

 制裁法で義務付けられているように、この文書には、規則によって課せられた禁止事項と要件に関するガイダンスが含まれている。さらに、禁止事項と要件を遵守するためのベスト・プラクティスに関するガイダンスを提供する。

1.ロシア(制裁)(EU離脱)規則2019によって課せられた禁止事項と要件

 この規則は、ウクライナを不安定化させる、またはウクライナの領土保全、主権または独立を損ない、または脅かす行動を止めるようロシアに奨励する目的で、金融、貿易、航空機、海運、移民制裁を課している。

 上記の目的を達成するために、本規則は多くの禁止事項と要件を課している。これらを執行するために、規則は罰則と犯罪行為を定めており、刑事犯罪に関連して制裁法第18条に基づく対応する報告書につき詳細に規定している。

 本規則によって課せられた禁止事項およびその要件は、英国(UK)(北アイルランドを含む)の領域内および世界のどこにいても、すべての英国人の行動に関連して適用される。英国人には、英国国民、および英国各地の法律に基づいて設立または構成されるすべての団体が含まれる。したがって、規則によって課せられた禁止事項および要件は、英国のあらゆる地域で設立されたすべての企業に適用され、海外で事業を展開する英国企業の支店にも適用される。

 規則第10部に含まれる海上法執行権限は、国際水域または外国海域の英国船舶、国際海域における国籍のない船舶および国際海域における外国船舶に適用される。

 その目的または効果が、規則によって課せられた禁止事項を回避するため、またはこれらの禁止事項の違反を可能または促進するためであると直接的または間接的に知っている場合、意図的に活動に参加することは禁止される。

 規則のいずれかの側面、特にあなたが取ろうとしている行動が規則に違反する可能性があるかどうかについて不明瞭な場合は、独立した法的助言を求めることを勧める。

 規則に含まれる金融、貿易、航空機、海運、移民制裁の禁止事項および要件を以下に記載する。

1.1.ウクライナの非政府支配地域

 本規則の特定の措置の領土範囲は「非政府支配ウクライナ領土」である。これは、規則2で「ドネツク州とルハンスク州のクリミアと非政府支配地域」と定義される。

 「クリミア」はさらにクリミア自治共和国(Autonomous Republic of Crimea)セヴァストポリ市(City of Sevastopol)と定義される。

「ドネツク州とルハンスク州の非政府支配地域」とは、2018年1月18日付けのウクライナ法第1条に基づき、2019年2月7日にウクライナ大統領が発行した政令第32/2019号に定められたウクライナのドネツク州とルハンスク州の一部を意味する    「ドネツク州とルハンスク州の一時占領地に対するウクライナの国家主権の確保に関する国家政策の特殊性について」。

 政令第32/2019号および法律第2268-8号の英語への翻訳は、このガイダンスの附属書AおよびBに記載されている。

 1.2.個人の制裁指定

 規則は、国務大臣が金融および/または移民および/または航空機および/または海運および/またはインターネットサービス制裁(ロシア(制裁)(EU離脱)規則2019(改正)の規則6条に定義されている)に関与している場合、または関与していた場合、名前で人物を指名することができると規定している。

 また規則は、国務大臣に対し、特定の記述の人物が、金融および/または移民および/または航空機および/または海運および/またはインターネットサービス制裁の目的のために指定された人物であることを規定する規定を定める。

 英国制裁リスト(UK Sanctions List)には、規則に基づいて指定された人々の詳細と、彼らが指定された制裁の詳細が記載されている。

 1.3.金融制裁

①資産凍結と適用可能規定

 この規則は、指定された人物に対象を絞った資産凍結と、資金や経済資源の利用可能化の禁止を通じて金融制裁を課している。これには、指定された人物の資金および経済資源(財産や車両などの非金銭的資産)の凍結、および資金および経済資源が、直接的または間接的に、指定された人物に、または指定された人の利益のために利用可能にされないようにすることが含まれる。

 金融制裁の詳細については、OFSI(Office of Financial Sanctions Implementation)ガイダンスを参照されたい。

 OFSIは、HM財務省に代わって英国の金融制裁を実施する権限を有する。

 OFSI は、英国で金融制裁が適切に理解され、実施され、施行されるようにするのに役立つ。

  OFSI がどのように金融制裁を実施しているかについての詳細は、GOV.UK の OFSI ページを参照されたい。

②その他の金融および投資の制限

 略す。

ローンおよびクレジットの手配

 この規則は、個人が直接的または間接的に新しいローンまたはクレジットを付与するための取り決めを付与または締結することを禁じており、満期は30日を超える。

コルレス銀行関係と英ポンドでの支払い

非政府支配ウクライナ領土に関する投資

 規則は、以下を禁止する。

・非政府支配ウクライナ領土にある土地の直接的または間接的な取得、参加の延長、または所有権を取得すること。

・直接的または間接的に、ウクライナ政府が管理していない領域に事業所を有する事業体 (「関連事業体」) を取得、参加を拡大、または所有権を取得すること。

・ローンまたはクレジットを直接的または間接的に付与すること、ローンまたはクレジットを付与するための取り決めを締結すること、または関連する事業体に、または関連する事業体の資金調達を目的として、自己資本を含む資金を提供すること。

・政府が管理していないウクライナの領土内または関連団体との合弁事業を直接的または間接的に設立すること。

 上記4箇条書きで言及されている活動に直接関連する投資サービスの提供

外貨準備及び資産運用を目的とした金融サービスの提供

 規則は、英国の個人または団体が外貨準備および資産管理を目的として以下の目的で金融サービスを提供することを禁止する。

・ロシア連邦中央銀行(the Central Bank of the Russian Federation)

・ロシア連邦国家福祉基金(the National Wealth Fund of the Russian Federation)

・ロシア連邦財務省(the Ministry of Finance of the Russian Federation)

・上記の人物のいずれかが直接的または間接的に所有または管理している人(a person owned or controlled directly or indirectly by any of the persons above;)

・上記のいずれかの人物の代理または指示により行動する者(a person acting on behalf of or at the direction of any of the persons above)

ロシア関連投資

 規則は、以下を禁止する。

・ロシアの土地およびロシアと関係のある人物の所有権の直接取得。

・ロシアと関係のある人物に直接的または間接的に、またはロシアと関係のある人物に資金または経済資源を利用できるようにする目的で、ロシアの土地およびロシアと関係のある人物の所有権を間接的に取得する。

・ロシアに事業所を有する事業体(ロシアと関係のある人物ではない)の所有権を直接的または間接的に取得し、ロシアと関係のある人物に直接的または間接的に資金または経済資源を利用できるようにする目的で、またはロシアと関係のある人物の利益のために

・ロシアと関係のある人物との合弁事業設立。

・ロシアに駐在員事務所を開設し、支店と子会社を設立する。

・上記のすべての活動に直接関連する投資サービスの提供。

 以下は時間の関係で仮訳は略すが、いずれも重要な内容でわが国でも参考とすべき点が多々ある。項目のみあげる。

1.4 Trade sanctions、1.5 Transport sanctions、1.6 Immigration sanctions、1.7 Information and record keeping

 2.How will these sanctions measures be enforced?

2.1 Financial sanctions

2.2 Trade sanctions

2.3 Transport sanctions

  3.Are there circumstances when I can get an authorisation or licence for a sanctioned activity?

3.1 Exceptions

3.2 Licensing for financial sanctions

3.3 Licensing for trade sanctions

(2)ドイツ

(1)EU加盟国であるドイツのロシア制裁措置をまず概観する。

  EU加盟国は、EU制裁の執行に責任を負う。ドイツの場合、関連当局は、ドイツ中央銀行(Deutsche Bundesbank)(資金、財源、金融支援)とドイツ連邦経済輸出管理局(BAFA)(注12)である(財・経済資源、技術支援、仲介サービス、サービス、投資)。

 取引の承認に加えて、当局は、法的に不確実な場合に、要求に応じていわゆる「ゼロ通知」を発行することができる。「ゼロ通知」は、特定の商品が輸出規制の対象ではないことを確認する。会社と代理人個人に対する制裁違反の重大な結果に照らして、疑いのそれぞれのケースで「ゼロ通知」を取得する必要がある。

 ドイツの法律では、EU制裁の意図的な違反は刑事犯罪とみなされ、過失による違反は行政犯罪として認められる。個人(例えば、ロシアへの輸出禁止を承認する会社のマネージング・ディレクター(CEOや専務)は、武器や軍事装備の輸出の場合は5年、最大10年の懲役刑に処せられる可能性がある。行政違反は、最大50万ユーロ( 約7100万円)の罰金で処罰することができる。

 個人が会社の管理職として行動した場合、会社は著しく高い罰金と取引からの収益(制裁対象商品に支払われた購入価格など)の没収に直面する可能性がある。制裁違反を防げたはずの適切なコンプライアンス体制を維持できなかった場合、行政違反となり、多額の罰金が科せられる。

(2) BAFAサイトの第一次制裁執行法 (ersten Sanktionsdurchsetzungsgesetzes (SDG I)の解説

外国貿易→輸出管理→禁輸措置→国別措置→ロシア)

および輸出管理→禁輸措置→その他の措置の手順で読まれたい。

 ドイツ連邦議会は「第一次制裁執行法 (ersten Sanktionsdurchsetzungsgesetzes (SDG I))」を可決。

2022.5.23 内閣法案決議連邦法官報第2022巻第17号、2022年5月27日発行、754ページ以下。

「(ロシア)制裁のより効果的な執行のための第一次法(制裁執行法I)」2022年5月28日施行

法全文

連邦議会サイト 

〇背景

 いわゆる第一次制裁執行法 (SDG I) は、ロシア連邦によるウクライナへの違法攻撃を受けて、欧州連合 (EU) が課した制裁をドイツで確実に効果的に施行することを目的としている。

 連邦財務省の解説がわかりやすいので引用、以下で仮訳する。これにつきJETRO の解説はまだない。

 〇EUの対ロシア制裁には、権利者の資産凍結、渡航制限、経済協力の制限、輸出入規制などが含まれる。この法律は、ドイツにおける制裁の効果的な執行を確実にすることを目的としている。

〇SDG Iは、制裁措置の執行が既存の行政情報にアクセスできるようにするための法的根拠を改善した。

 また、法的状況の明確化、制裁の執行のための公的責任と権限の調整と拡張も含まれている。この法律は、所有権を明確にし、資産を保護する可能性を広げ、権利者が資産を報告しなければならないという罰則規定を含む。

〇SDG Iは、外国貿易法、マネーロンダリング法、銀行法、証券取引法を改正する条文からなる法律である。

この法律で特に注目すべきは、次のとおりである。

①所有権を明確にするために、所管官庁は証人を召喚して聴取し、証拠を確保し、家屋や事業所を捜索し、土地登記簿やその他の公簿を検査する権限を与えられている。口座を特定して照会し、制裁対象者のロッカーや有価証券口座を決定する可能性が拡張された。

②所有権を明確にするためのさらなる措置として、凍結された資金やその他の経済資源を報告する刑事義務が導入されている。制裁対象者は、ドイツ連邦銀行または連邦経済輸出・管理局に直ちにその財産を通知する義務がある。罰則は1年以下の懲役または罰金である。

③資金やその他の経済資源は、所有権が明確になるまで確保することができる。

④国は、外国貿易法の規定の適用と執行にも責任があることが明確にされている。

⑤当局間で制裁関連情報を交換する可能性が拡大する。これは、データ保護規制に準拠した個人データにも適用される。公的機関は、受益所有者が記録されている透明性登録簿からデータを取得するための追加の可能性を与えられる。この情報は、当局がそれぞれの権限を有する分野で使用し、それによって金融制裁のより効果的な実施に貢献すべきである。

⑥制裁の執行に協力しているこれらの当局には、ドイツ連邦銀行(Deutsche Bundesbank)連邦金融監督庁(Bundesanstalt für Finanzdienstleistungsaufsicht:BaFin)連邦財務省・税関総局・金融取引調査中央局(Zentralstelle für Finanztransaktionsuntersuchungen:FIU)、税関総局・税関刑事警察局(Zollkriminalamt :ZKA)、連邦経済・輸出管理局(Bundesamt für Wirtschaft und Ausfuhrkontrolle BAFA)が含まれる。

 今後の第2次制裁執行法(SDG II)では、出所不明の資産と制裁対象資産について、国家登録簿を新たに設置する予定である。また出所不明の資産の明確化のための独立行政手続を導入し、特別内部通報機関を設置する予定である。

  1. 制裁登録簿(Melderegister Sanktionen) (注13)
  2. 「外国貿易法((Außenwirtschaftsgesetz :AWG)第 23 a 条(注14)に従って報告する義務(注15)

 2022.6.29 ロシア連邦に対するEU制裁の効果的な施行を確保するために、ドイツ連邦議会は制裁執行法 1 (Sanktionsdurchsetzungsgesetz 1 (SDG 1) ) を可決した。同法は外国貿易法、マネーロンダリング法、銀行法、証券取引法の改正により、所有者の明確化や資産確保の可能性が広がる法律である。特に、SDG 1 は、外国貿易および支払法 ( AWG ) に記載されている人物の資産を報告する刑事義務を導入した。 AWG第23a条第1項によると、この法律の範囲内の資金または経済的資源がそのような法的行為による処分の制限の対象となる外国人および居住者は、これらの資金をドイツ連邦銀行に報告し、これらの経済的資源を連邦経済輸出管理局に遅滞なく報告する義務がある。

 これは、禁輸規則に記載されており、その経済的資源が処分制限の対象となっている人は、これらの経済的資源をBAFAに報告する義務があることを意味する。第2項 によると、この通知義務は、そのような経済的資源を知っているドイツ商法 第453条 および第 467 条の意味のロジスティクス サービス プロバイダー物流運営会社にも適用される。報告を行う義務がある場合は、「件名に関する情報」の下にあるフォームを使用し、フォームに記載されている電子メールアドレスに必要事項を記入して送信されたい。

 この通知はドイツ語で書かれ、関係する外国人または居住者の名前または会社ならびに廃棄制限の対象となる経済資源の種類と価値に関する情報が含まれていなければならない。連絡先も残しておいてほしい。

II.規則 ( EU ) No. 269/2014の第 9条に基づく報告義務

 さらに、2022 年 7 月 21 日の規則 ( EU ) 2022/1273 により、規則 ( EU ) No. 269/2014 が修正され、 EUは、 EUに所在する資産についてリストされた人物を報告する義務を含めた。

 第9 条第2項 a) によれば、附属書 I に記載されている個人、機関、および組織は、彼らが所有または所有している、または保有または保有している加盟国の主権領域内で資金または経済的資源を移転する義務がある。資産が所在する加盟国の管轄当局への報告によって管理される。

 BAFAは、ドイツに所在する経済資源に関するリストに記載されている人物からの報告を受け取る責任を負う機関である。AWG第9 条第5項による、ドイツに所在する資金および経済資源に関するこの報告義務は、2023 年 1 月 1 日からのみ適用されることが指摘されている。AWG第 23a条 ( 1)項の下で既に存在する報告義務は、この変更の影響を受けず、遵守する必要がある。

(3)ドイツの税関総局(注16)のうち、対ロシア制裁に関する専門部門は「第8総局 - 税関犯罪捜査局(Zollkriminalamt)」、第10総局(Zentralstelle für Finanztransaktionsuntersuchungen (Financial Intelligence Unit) 税関刑事警察暑)である。

第8総局 - 税関犯罪捜査局(Zollkriminalamt)

 特別な特徴は、税関犯罪調査を担当する税関総局の第8総局である。ケルンに本拠を置く税関刑事警察事務局は、2016年1月1日に税関総局が発足するまで税関管理局の独立した中央機関として存在していたが、現在はドイツ連邦保安当局ネットワークにおける法的に標準化された地位を維持しながら、総税関総局として管理されている。

 税関刑事警察署はドイツ税関捜査局の本部であり、その主な任務は中程度、重大かつ組織的な税関犯罪の訴追と防止である。

 ベルリン、ドレスデン、エッセン、フランクフルト・アム・マイン、ハンブルク、ハノーファー、ミュンヘン、シュトゥットガルトの8つの関連税関調査事務局の調査を調整し、指揮する。

 特に重要な場合には、税関犯罪捜査局自身が調査を行うこともできる。

第10総局(Zentralstelle für Finanztransaktionsuntersuchungen (Financial Intelligence Unit) 税関刑事警察暑: 金融情報ユニット)

 金融取引調査中央局(FIU)は、マネーロンダリングやテロ資金供与に関連する可能性のある目立つ金融取引の報告を受信、収集、評価するための全国的な中央ユニットである。2021年5月1日以降、機能当局および新しい第10総局として税関総局に統合された。

 FIUによって分析された事実は、FIUが以前に当該財産がマネーロンダリング、テロ資金供与、またはその他の刑事犯罪に関連していると判断した場合に限り、分析報告書によって管轄の法執行機関(検察庁(Staatsanwaltschaft)および州刑事警察部(Landeskriminalämter))、税務および行政当局に引き渡される。彼らの戦略的分析は、特にマネーローンダリングとテロ資金供与の新しい方法を特定することを目的としている。得られた知識は、マネーローンダリング法の義務を負う団体、協力当局、その他のFIUに提供される。

(4) OpenSanctionsプロジェクトについて

 OpenSanctions は、政治的、犯罪的、または経済的に関心のある個人や企業の国際的なデータベースである。このプロジェクトは、制裁リスト、政治的に暴露された人物のデータベース、および公共の利益にかなう人物に関するその他の情報を、単一の使いやすいデータセットにまとめています。これにより、次のことが容易になる。

・利益相反や違法行為の兆候がないかデータベースをクロスチェックする。

・国際取引における潜在的な顧客やパートナーをスクリーニングする。

・政治的紛争を追跡し、国家制裁政策を比較する。

・制裁と利害関係者のグラフを既存のデータ製品に統合する。

 具体例をあげる。

ロシア連邦国家警備隊連邦軍第一副局長ヴィクトル・ニコラエヴィチ・ストリグーノフを検索してみた。

(3)スイス

 2022.2.28 付けスイス連邦参事会(Bundesrat)サイトのリリース「対ロシアEU制裁を採択」を仮訳する。

 ウクライナへのロシアの継続的な軍事介入を考慮して、連邦参事会(Bundesrat)は2月28日に2月23日と25日にEUによって課された制裁のパッケージを採択する決定を下した。上場している個人や企業の資産は即時に凍結される。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、ミハイル・ミシュスティン首相、セルゲイ・ラブロフ外務大臣に対する金融制裁も即時に実施される。スイスはウクライナ及び国民との連帯を再確認する。ポーランドに逃れた人々に救援物資を届けることになる。

 2月28日の臨時会合で、連邦参事会は、対ロシアEU制裁を採択し、その影響を強化するという決定を下した。連邦参事会は、連邦経済教育研究省(Eidgenössische Departement für Wirtschaft, Bildung und Forschung:WBF)に対し、EUの措置に基づいて既存の規則を改正するよう指示した。スイスはEUと連携して制裁を実施する。これらは主に商品と金融制裁である。条例の附属書に記載されている個人および会社の資産は、直ちに凍結される。新しいビジネス関係を結ぶことの禁止は引き続き実施されている。

 また、スイスはロシアのウラジーミル・プーチン大統領、ミハイル・ミシュスティン首相、セルゲイ・ラブロフ外務大臣にEUが課した金融制裁を即時に実施している。そうすることで、スイスはこれらの個人が責任を負う国際法の重大な違反に対応している。2014年から実施されているクリミアとセヴァストポリに関する輸出入、投資の禁止は、ウクライナ政府の管理下にないドネツク州とルハンスク州のウクライナ地域に拡大された。

【入国規則と空域閉鎖】

 また連邦参事会は、ロシア国民のビザ円滑化に関する2009年の合意を部分的に停止することを決定した。また連邦参事会は、スイスとつながりがあり、ロシア大統領に近い多くの個人に対して入国禁止を課すことを決定した。連邦憲法(第184条第3項(注17)および第185条第1項)に基づき、連邦参事会は、スイスの利益またはスイスの対外的安全、独立および中立性を保護するために適切な措置をとることができる。

 さらに、他のヨーロッパ諸国の空域閉鎖に伴い、スイス領空は、人道的、医療的、または外交的目的のフライトを除き、月曜日の午後3時から、ロシアからのすべてのフライトおよびロシアのマーキングを持つ航空機のすべての動きに対して閉鎖される。

【スイスは引き続き優れたオフィスを提供】

 連邦参事会は決定を下すにあたり、スイスの中立性と平和政策の考慮事項を考慮に入れた。また、スイスが良好な事務局を通じて紛争の解決に積極的に貢献していく意思を再確認した。ヨーロッパの主権国家に対するロシアの前例のない軍事攻撃は、制裁に対する以前のスタンスを変更するという連邦参事会の決定の決定的な要因であった。平和と安全の擁護と国際法の尊重は、スイスが民主主義国としてヨーロッパの近隣諸国と共有し、支持する価値観である。スイスはこれまでと同様に、EUが課す制裁の各追加パッケージをケースバイケースで検討する。

【ウクライナ国民への救援物資】

 今後数日以内に、スイスは約25トンの救援物資をポーランドの首都ワルシャワに約40万スイスフラン相当で届け、スイス初の援助パッケージの一部は800万スイスフランに上る。連邦国防・市民保護・スポーツ省(DDPS)は、緊急に必要な医療用品と医薬品を軍薬局から提供している。救援物資は、ウクライナと近隣諸国のウクライナ国民を対象としている。スイス人道支援ユニットのスタッフが援助物資の輸送に同行している。

5.NATOの取り組み

  今回は、詳細は略す。

 6.INETRPOL(注18)

(1)ウクライナ:INTERPOL事務総局の声明(2022 年 3 月 10 日)の仮訳

 INTERPOL は、ウクライナでの紛争に関連して人命が失われ、苦しんでいることに対し、深い哀悼の意を表す。

 中立性は、特に加盟国が紛争に巻き込まれている場合でも、INTERPOL の活動と存在の基本であり、INTERPOLが一貫して維持してきた立場である。

 INTERPOL は、195 の加盟国が犯罪や犯罪者に関する情報を交換することを可能にするグローバルな技術警察協力組織である。

 INTERPOLの憲法第 2 条は、INTERPOLに対し、警察の協力を維持し、コミュニケーション チャネルを開いたままにすることを求めている。INTERPOL の権限には、制裁の発令や懲罰的措置の実施は含まれておらず、憲法には加盟国の停止または除外に関する規定はない。

 組織が政治的、軍事的、宗教的、または人種的な性格の介入または活動を行うことは固く禁じられている。

【世界的な法執行機関の協力】

 INTERPOL は、そのネットワークを介した通信がその憲法と規則に準拠していることを確認しながら、世界的な法執行機関の協力要請に応え続けることを約束する。

 このため、紛争が始まって以来、ウクライナのINTETPOL 国家中央局 (National Central Bureau :NCB) が INTERPOL ネットワークから切断することを決定し、チャンネルのメッセージを監視する機能を削除したことから、事務総局は直ちにデータ処理を保護するための措置を講じた。

 ウクライナでの紛争の内外での個人の標的化に関連してINTERPOLのチャネルが悪用される可能性を防ぐため、ロシアに関する監視と監視措置の強化が事務総長によって実施された。この決定は執行委員会によって承認された。

 これにより、NCB ロシア(モスクワ)から加盟国への直接配布はできなくなった。

 NCB モスクワは、INTERPOL の規則に準拠しているかどうかを確認するために、すべての拡散を事務総局に送信する必要がある。配布が準拠していると判断された場合にのみ、事務総局はそれを加盟国に配布する。この手順は、すべての通知要求の遵守を審査する事務総局の現在のプロセスに追加されるものである。

 必要が生じた場合、事務総長は緊急に追加措置を講じることができる。

 INTERPOL の規則では、各加盟国は、INTERPOL を通じて他国と共有することを決定した情報を完全に管理できると規定されている。これには、そのデータへのアクセスの制限が含まれる。

 同様に、加盟国が INTERPOL を介した要請に応じるかどうかの決定は、もっぱら管轄の国内当局の裁量に委ねられている。

【グローバル・セキュリティのギャップを防ぐ】

 加盟国が重要な警察情報を共有するのを防ぐことは、犯罪者が犯罪を犯し、逮捕を回避する明確な機会を提供し、世界的なセキュリティと安全にギャップを生み出す。

 INTERPOLネットワークからロシアを一時停止または除外するよう、政治レベルでの呼びかけが行われた。

 並行して、世界中の法執行機関の指導者もINTERPOLを通じてロシアとの継続的な協力を要請しており、情報共有が停止された場合の深刻なセキュリティと安全上の懸念を浮き彫りにしている。

 悲惨な人命の喪失に加えて、紛争は常に犯罪の増加につながる。組織犯罪グループは、武器の密輸や商品と医薬品等不法な取引に加えて、虐待や人身売買のリスクを高めながら、安全を求める個人の絶望を利用しようとしている。

 ウクライナ国境沿いの検問所でINTERPOLのデータベースを照合した結果、さまざまな犯罪で4カ国から指名手配されている人物がすでに特定されている。

【グローバル・ データベース】

 毎分、約 9,000 件のチェックが INTERPOL のグローバル・ データベースに対して行われ、安全なグローバル警察通信システムを使用して世界中の警察間で 30 以上のメッセージが交換されている。

 2022年のこれまでのところ、ロシアから提供されたデータに対して加盟国によって約60,000件のチェックが行われている。

 INTERPOL は、外交関係が存在しない国間を含め、可能な限り幅広い法執行協力を確保するために作成された。

 INTERPOL ネットワークが、1 人の児童虐待被害者の救出、1 人のテロ攻撃の防止、または 1 人の行方不明者の特定を支援できる限り、通信回線が開かれたままであることを保証する義務がある。

 事務総局は、その権限の遂行において、INTERPOL憲法の 以下の4 つの主要な原則を引き続き支持する。国家主権;人権の尊重; 中立; 継続的かつ積極的な協力

 INTERPOL の通知と拡散のシステムの詳細については、こちらを参照されたい。

(2) 2022 年 3 月 7 日Estlund Law, P.A.法律事務所の弁護士ミシェル・エストルンド(Michelle Estlund) 「INTERPOL におけるロシアの地位 - 世界的な制裁とウクライナ侵攻の結果の中で、ロシアの活動停止を求める声が高まる」を仮訳する。

Michelle Estlund氏

 ロシアのウクライナ侵攻は、プーチン率いる政権に対して多くの結果をもたらしたが、これまでのところINTERPOL はこの違法行為について加盟国に対して独自の結果を課していない。INTERPOL の憲法は、加盟国が自国の国内法と世界人権宣言の両方に従って行動することを義務付けており、すべての加盟国は適用されるすべての国際条約と協定を遵守する必要がある。

 国連憲章第2条第4項は次のように規定している。

「すべての加盟国は、その国際関係において、いかなる国の領土保全または政治的独立に対する武力の威嚇または武力の行使、または国連の目的に反するその他の方法によるものも慎まなければならない。」

 国連加盟国として、ロシアはこの原則を支持する義務がある。この状況でのロシアの武力行使は、次のような複数の結果をもたらした。

〇欧州連合、英国、米国による経済制裁

〇オーストラリア、カナダ、日本、シンガポールは独自の経済制裁を課している。

〇Apple、Google、Netflix、Visa などの民間企業によるサービスの一時停止または中止。

 しかし、ロシアの侵略に対する国際的な非難の高まりを求める声に欠けているのは、国際法執行機関であるINTERPOLの声である。現在、米国、オーストラリア、英国、カナダ、ニュージーランドを含む同盟は、INTERPOL に対し、不法侵入に基づいてロシアのネットワークへのアクセスを停止するよう求めている。

 これまでのところ、ロシアの地位を変更する動きはない。RNLJ(Red Notice law Journal ) の知る限り、削除/一時停止のプロセスはまだ開始されていない。

 INTERPOL には、法の支配に専心する組織として、またはそうでない組織として、その原則を強く支持する機会がある。時が教えてくれる。

7.Eurojust

 (1) EUの欧州司法協力機構(Eurojust)との協力(EU条約第31条および第32条)

Eurojustにつきわが国の解説もあるが内容的に見て疑問点があり、筆者が独自にEurojustサイトから抜粋、仮訳した。

Eurojustの法的枠組み】法的根拠Legal basis

 欧州連合刑事司法協力庁(Eurojust)は、リスボン条約第85条と2019年12月12日に適用されるEurojust規則(Eurojust Regulation)に基づいて運営されている。この規則は、Eurojustの統治命令、ガバナンス構造、データ保護体制、および非EU諸国との協定を確立するための枠組みを決定する。

【Eurojustの組織図】

https://www.eurojust.europa.eu/sites/default/files/2020-10/2020_infographic_EJ-Organigram.pdf

 さらに、Eurojust は、財務規則、内部手続き、データ保護規則の実施、Eurojust の所在地の決定を含む内部の法的枠組みを採用しており、これにより、Eurojust の設置場所と文書へのアクセスが確立された。

 この法的枠組みに加えて、次のタブは、Eurojust の第三国および国際および EU パートナーとの協定の完全版へのリンクを提供する。

Eurojust規則

② Eurojust規則の改正内容

③ 内部の法的枠組み

④リスボン条約第85条

⑤ 協定

 EU の特別機関Eurojustは、EU の一般機関とは別個の機関であり、EU 法に基づいて特定のタスクを実行するために設立された別個の法人である。

 Eurojust は、欧州連合理事会決定 2002/187/JHA に基づいて機能する EU の司法ユニットとして 2002 年に設立された。

 Eurojust規則 (欧州議会および刑事司法協力のための欧州連合機関に関する理事会の規則、理事会決定 2002/187/JHA を置き換えて繰り返す)改正案 は、2018 年 11 月 6 日に採択され、2019 年 12 月 12 日に適用された。

 この規則は、欧州連合の刑事司法協力機関 (Eurojust) として Eurojust を設立し、12 月 12 日に加盟国で直接適用されるようになった。

 新しい法的根拠により、より安全なヨーロッパのために国境を越えて司法を提供するというEurojustの役割をさらに改善するために、多くの変更が導入された。

①Eurojust と加盟国間の運用能力の強化と情報交換の強化。

②以下の新しいガバナンス構造:

〇Eurojust大学は、EU 加盟国の国家メンバーと、欧州委員会が管理機能を行使する際の委員会の代表者 1 人で構成され、とりわけ、予算、年次および複数年次のプログラム、年次報告書の採択、会長の選出および副大統領と事務局長の任命に責任を負う。

Eurojust大学を支援するためにEurojust理事会が設立され、Eurojust の会長、2 人の副理事長、欧州委員会の代表者、および 2 年間の交代制理事会で指定された他の 2 人の理事会メンバーで構成される。理事長(Administrative Director)この会議に出席するが投票権はない。

Nikolaos Panagiotopoulos 氏(Administrative Director)

 

執行委員会(Executive Board)は、特定の管理上の決定(例:職員規則、財務規則、不正防止戦略の規則の採用と実施)、大学に提出される前の特定の管理文書のレビュー、および内部管理構造の確立または修正を担当する。

Ladislav Hamran氏(執行委員会・委員長)

〇データ保護に関する改訂された EU の法的枠組みに適応した新しいデータ保護制度: 管理個人データの処理に対する規則 2018/1725 (すべての EU の機関、機関、団体に適用) の適用、運用上の個人に関する新しい章の運用上の個人データの処理に関しては、データを「lex generalis」として、Eurojust Regulation を「lex specialis」として定義している。欧州データ保護監視機関 (European Data Protection Supervisor :EDPS) は、Eurojust の両方の規則への準拠を外部から監督する責任を負うようになった。

〇Eurojustの対外関係と、リスボン条約によってこの分野に導入された原則との整合性問題;

 結果として、Eurojust はもはや協力協定を交渉して締結する能力を持たない。Eurojustの国際的範囲をさらに発展させるための 4 年間の戦略は、欧州委員会と協議中である。これには、ユーロジャストが協力の運用上の必要性を確認した第三国および国際機関のリストが含まれている。アイルランド、デンマーク、および英国に適用される特別議定書の結果として、これらの国はそれぞれ異なる法的地位を持っている。

・アイルランドはEurojust規則にオプトインしたため、Eurojustの完全なメンバーのままである。

・デンマークとEurojustは、2019 年 10 月に刑事司法協力に関する協定に調印し、デンマークは現在、運営業務に全面的に参加するEurojustの代表者を擁している。

・2019 年夏、英国は新しいEurojust規則を選択した。 2020 年 2 月 1 日現在、Eurojust での英国のステータスは離脱協定に沿っている

〇Eurojustの活動を民主的に監視する欧州議会および各国議会の役割が強化された。

〇Eurojust と欧州検察庁 (European Public Prosecutor's Office:EPPO) の間の新しい関係は、それぞれの権限と権限内での相互協力、および運用と管理のリンクの開発に基づいている。

 2022 年 6 月 1 日、Eurojust 規則が改正され、Eurojust に戦争犯罪に関する証拠を収集、保存、共有する法的可能性が与えられた。 ここで統合された規則テキストを参照されたい。

**************************************************************************

(注12) 連邦経済・輸出管理局(BAFA)は、連邦経済・気候行動省に従属する連邦機関である。以下の部門において連邦政府の重要な行政業務を委託されている。

・外国貿易

・経済発展と中小企業の振興

・エネルギー

・監査人の監督

 外国貿易部門における連邦経済・輸出管理局の中心的な任務は、輸出管理である。連邦政府の輸出管理政策に関与している連邦経済・輸出管理局は、複雑な輸出管理システムについて他の連邦機関と緊密に協力して活動するライセンス機関である。国際的および法的コミットメントの枠組みの中で、輸出管理はドイツ連邦共和国の安全保障上の必要性と外国の政治的利益に向けられている。

 対外貿易の分野における連邦経済・輸出管理局のもう一つの関連する任務は、欧州連合の共通貿易政策の一部として採択された輸入規制を実施することである。

 経済発展の促進は、中小企業のためのプログラムに焦点を当てている。

 エネルギー部門では、連邦経済輸出管理局が再生可能エネルギーのより良い利用、エネルギーの節約、電力熱リンクアップの維持と延長、ドイツの石炭採掘を促進するための措置を実施し、鉱物油部門の危機的不測の事態対策に参加している。

 監査役監視機関は、公認会計士会議所の監督管理を担い、公益企業の監査を行う監査役および監査法人のミスを把握する。

(注14) 外国貿易及び支払いに関する法律(Außenwirtschaftsgesetz:AWG)§ 23a (届出義務)を仮訳する。

第1項 欧州連合理事会が共通の外交・安全保障政策の分野において採択した経済制裁措置の実施について、欧州連合または欧州連合の直接適用可能な行為が、欧州共同体または欧州連合の官報に既に他の通知を規定している場合を除き、その資金または経済的または経済的に この法律の範囲内の資源は、そのような法律による処分の制限の対象となり、第3項に従ってドイツ連邦銀行およびこれらの経済資源を直ちに連邦経済輸出・管理局に通知する義務がある。

第2項 第1項に基づく義務は、商法第453条および第467条の意味において、本法の範囲内で第1項の意味における資金または経済資源に関する知識を有する物流サービス提供者にも適用される。

第3項 第1項及び第2項に規定する通告には、当該外国人また国民の氏名または商号ならびに処分の制限の対象となる資金および経済資源の性質および価値に関する情報を記載しなければならない。それらはドイツ語で書かれ、送信者を識別する必要がある。

(注15) わが国の財務省ウクライナ関連個所の抜粋

我が国は、外為法に基づく資産凍結等経済制裁措置として支払規制や資本取引規制等を実施しています。支払規制では、制裁対象者に対する支払は、暗号資産による支払を含めあらゆる支払について、事前に主務大臣の許可を受けなければ行うことができません。

 許可を受けないで支払を行った場合には、3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はこれを併科(違反行為の目的物の価格の3倍が100万を超えるときは、罰金は当該価格の3倍以下)の対象となります。

(注16) 税関総局の説明、組織図ダウンロード可

税関総局(Generalzolldirektion)から抜粋、仮訳する。

 税関総局は、約48,000人の税関職員とともに税関管理局の運営管理を担当しているのは10のディレクターに分かれており、 2つの中央ディレクターと8つのスペシャリストディレクターからなる。

 専門局には、税関刑事警察事務所、教育科学センター、金融情報ユニット(FIU)が含まれる。

 

 税関総局(Generalzolldirektion)から抜粋、仮訳する。

 税関総局は、約48,000人の税関職員とともに税関管理局の運営管理を担当している。それは10のディレクターに分かれており、 2つの中央ディレクターと8つのスペシャリストディレクターからなる。

 専門局には、税関刑事警察事務所、教育科学センター、金融情報ユニット(FIU)が含まれる。

(注17)スイス連邦憲法第184条(他国との関係)を仮訳する。

1.連邦参事会(Bundesrat:内閣)は、連邦議会(Bundesversammlung)の参加権を保護する一方で、外交問題を管理する。 連邦参事会は対外的にスイスを代表する。

2.連邦参事会は、条約(Verträge)に署名し、批准する。 連邦参事会はそれらを承認(Genehmigung)のために連邦議会に条約案を提出する。

3 .国家の利益を保護する必要がある場合、連邦参事会は命令(Verordnungen)および指令(Verfügungen)を発布することができる。この命令の施行期間は制限されねばならない。

(注18) 警察庁刑事局組織犯罪対策部国際捜査管理官作成「2022 国際刑事警察機構ICPO-INTERPOL」(2022 年(令和4年)6月)参照。

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ロシアとウクライナ戦争の拡大阻止のための米国やNATOが北大西洋条約第5条(集団防衛)の適用について具体的な検討内容

2022-03-08 13:46:35 | 国際紛争

  筆者は去る3月7日付けのブログの最後で米国やNATOが北大西洋条約第5条(集団防衛)の適用について具体的に検討を進めている旨、解説した。

 この問題については、NATOにとって最後の切り札であり、もし適用を誤ると第三次世界大戦に突入するという大問題である。さらに国連の議決ともかかわる微妙な問題だけに慎重な検討がなされているようである。

 この点につき米国CNNが3月7日付け記事で簡単な要約を行っている。重要な問題であり、ブリンケン国務長官も東欧の関係国を回る中で強く協調している点でもあり、その概要を紹介する。また、同長官のラトビア外相との共同記者会見でも明言していることから今回のブログであえて取り上げた次第である。

1.北大西洋条約第5条(集団防衛)

【外務省の解説】北大西洋条約第5条(集団防衛)欧州又は北米における一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす。締約国は,武力攻撃が行われたときは,国連憲章の認める個別的又は集団的自衛権を行使して,北大西洋地域の安全を回復し及び維持するために必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を個別的に及び共同して

直ちにとることにより,攻撃を受けた締約国を援助する。(外務省の解説から引用)

2.CNN記事

 北大西洋条約第5条(集団防衛)に関する部分を抜粋、仮訳する。

(1)北大西洋条約第5条(集団防衛)とは何か?

 第5条は、NATOの1つのメンバー国に対する攻撃は、すべてのメンバー国に対する攻撃であるという原則である。これは、1949年にソビエト連邦のカウンターウェイトとして設立されて以来、30人のメンバー国(注1)による同盟の要となっている。

 この原則は、潜在的な敵対者がNATO加盟国を攻撃するのを阻止することを目的としている。第5条は、同盟全体の資源が単一の加盟国を保護するために使用できることを保証する。これは、同盟国なしでは無防備になるであろう多くの小国にとって極めて重要である。たとえば、アイスランドには常備軍がない。

 米国は最大かつ最も強力なNATO加盟国であるため、同盟のどの国も事実上米国の保護下にある。

 そのような武力攻撃およびその結果としてとられたすべての措置は、直ちに安全保障理事会に報告されなければならない。安全保障理事会が国際の平和と安全を回復し維持するために必要な措置を講じたとき、そのような措置は終了するものとする。

 冷戦時代の主な関心事はソビエト連邦であったが、近年、東欧でのロシアの積極的な行動が注目されている。

(2)これまで第5条が発動されたことはあるか?

 第5条は一度だけ発動された:2001年9月11日以降、米国へのテロ攻撃時である。

 しかし、NATOの第5条の原則は、祖国への攻撃を超えている。同盟はまた、2012年にシリアとトルコの国境にパトリオットミサイルを配備し、2014年にロシアがクリミアを併合した後、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランドでその軍隊を強化するなど、いくつかの機会に集団防衛措置を講じた。

 NATOの同盟国も、アフガニスタン、イラク、シリアで戦うために米国に加わった。

(3)5条は、ロシアのウクライナへの攻撃にどのように適用されるか?

 ウクライナはNATO加盟国ではないため、米国はNATO加盟国が攻撃された場合と同じように国を保護することを強制されていない。

 しかし、ウクライナの隣国の多くはNATO加盟国であり、ロシアの攻撃がこれらの国の1つに拡大した場合、第5条は米国や他のNATO加盟国からの直接の関与を引き起こす可能性がある。

(4)NATO加盟国への攻撃とは何を指すのか?

 第5条の文言は、加盟国に対する「武力攻撃」が集団行動の引き金となることを規定している。

 しかし、「武力攻撃」を構成するのはNATO加盟国次第であり、ロシアの攻撃的な姿勢は、NATOの対応を潜在的に誘惑する国の意欲に対する懸念をすでに引き起こしている。

 たとえば、バージニア州の民主党上院議員マーク・ワーナーは最近、ウクライナへのロシアのサイバー攻撃が意図された「地理的境界」を超えた結果につながり、NATO加盟国に影響を与える可能性があるとワシントンポスト紙 に語っている。

 「ポーランドやルーマニア、バルト三国に出血して病院を閉鎖する可能性があり、そこにアメリカ軍がいる可能性があります。ライトが消えたためにトラックに乗ったアメリカ軍が墜落した場合、第5条に非常に近づく」 と語った。

 ヨーロッパ最大のザポリージャ原子力発電所サイトに対するロシアの攻撃は、同様の懸念を引き起こした。ウクライナの原子力規制当局はこの地域で「放射線レベルに変化はない」と述べたが、NATO加盟国に広がる放射線漏れがあったとしたらどうなるだろうか。

 「それは同盟が作るための質問だ」と国防総省のスポークスマン、ジョン・カービー氏は3月初めにCNNに「具体的には、第5条は、NATOの同盟国に対する武力攻撃が第5条を誘発することを明確にしていることを思い出すべき 」と語った。

(5)米国の政府当局は現在、第5条について何と言っているか?

 米国国務長官のアントニー・ブリンケン氏は、「NATOの第5条に対する米国と同盟国のコミットメントを繰り返し、「NATOの領土の隅々まで守るための行動。それはそれと同じくらい明確で直接的である」と述べている。

 米国のトップ外交官からのコメントは、一般教書演説でのジョー・バイデン大統領の「私たちの総力でNATO諸国の領土の隅々まで守る」という誓約を反映している。

3.2022.3.7 ブリンケン国務長官とラトビア外務大臣エドガース・リンケヴィッチ(Edgars Rinkēvičs, Latvi)との共同声明の中で北大西洋条約第5条(集団防衛)への言及箇所

以下抜粋のうえ、仮訳する。

・・・・

 また我々は我々自身の共有防衛を強化している。わが国と北大西洋条約機構(NATO)同盟国は、いかなる脅威にも対応する用意がある。バイデン大統領はほんの数日前の一般教書演説でアメリカ国民と話をし、彼は繰り返し肯定したことを再び明らかにした:我々はいつでもどこからでも来る侵略からNATO領土のあらゆるインチ単位で守る。第5条へのコミットメントは、1つに対する攻撃は全てに対する攻撃であり、鉄則である。バイデン大統領はそれを一切の批判を許さない神聖な原則(sacrosanct)と呼んだ。そして、誰もそれについて疑問を持つべきではない。

 北大西洋条約機構(NATO)は史上初めて欧州東側の防衛計画を発動し、最高連合軍司令官ヨーロッパに必要に応じてNATO対応部隊を配備する権限を与えた。多くの同盟国は、部隊の存在感を高め、この取り組みに追加の装備と能力を貢献した。バイデン大統領はさらに7,000人の米軍をヨーロッパに配備するよう命じ、すでにヨーロッパにいる軍隊をラトビアを含む北大西洋条約機構(NATO)の東側に移した。

 我々は今、ラトビアに1000人以上の米兵を保有している。我々は、ラトビアの軍隊と協力して、カナダが主導するNATOが「強化した即応前進戦闘部隊」(ENHANCED FORWARD PRESENCE (EFP))(注2)と共に訓練するために、ラトビアとバルト地域に軍隊をローテーションし続けている。そして、わが国はNATOの強化された空軍警備任務部隊(air policing mission.) (注3)を強化するために、同地域にF-35ストライキ戦闘機(F-35 strike fighter jets)を配備した。

 また、ラトビアやマルチパートナーと協力して、悪意のあるアクターから重要なインフラを保護するサイバーセキュリティや、ラトビアのエネルギー供給がロシアに依存しないようにエネルギーセキュリティなど、他の分野のセキュリティにも取り組んでいる。

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(注1) アルバニア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、クロアチア、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、モンテネグロ、オランダ、北マケドニア、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、トルコ、英国、米国の30か国。

(注2) NATO強化した即応前進戦闘部隊(ENHANCED FORWARD PRESENCE (EFP)

 NATOは、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランドに4つの多国籍大隊規模の戦闘群を交代で配置し、同盟の東部での前向きな存在感を高めている。英国、カナダ、ドイツ、米国がそれぞれ主導するこれらの大隊規模の戦闘群は、大西洋横断の絆の強さを実証し、1つの同盟国への攻撃がアライアンス全体への攻撃と見なす。これは、世代における同盟の集団的防衛の最大の強化の一部である。

 また、NATOは、ルーマニアの南東部多国籍師団の下で、多国籍フレームワーク旅団の周りに建設された土地要素を備えた同盟地域の南東で調整された前方プレゼンスを開発し、複合共同強化訓練イニシアチブを通じて多国籍訓練を調整した。

 さらにNATOは、同盟の360度の視点でセキュリティ問題に対処するために、SACEURの責任範囲全体でその存在と活動を拡大している。

(注3) 2004年3月29日にバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)はNATOに加盟した。これらの国は、ソ連崩壊後の経済混乱の影響もあり、国家財政が疲弊し、有効な航空戦力を保持していなかった。

 そのため、NATO加盟諸国が戦闘機部隊を順次派遣し、交代でバルト三国における領空警備任務を行うこととなった。戦闘機部隊の派遣は2004年3月30日にベルギー空軍の4機のF-16戦闘機が派遣されたことを皮切りに、3カ月交代で行われている。戦闘機部隊はリトアニアの空軍基地でスクランブル待機状態に置かれ、識別不明機に対する要撃などを行っている。(Wikipedia から抜粋)

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OSCEはウクライナへのOSCE特別監視ミッションの国家ミッションメンバーの死を悼む

2022-03-03 13:56:04 | 国際紛争

2022年3月2日、ウィーンのヘルデン広場でのOSCE本部前の旗と黒い弔旗の写真

 筆者の手元に3月3日、OSCEはウクライナへのOSCE特別監視ミッションの国家メンバー (OSCE Special Monitoring Mission to Ukraine:SMM)である マリーナ・フェニーナ (Marina Fenina)氏が, ロシア軍のハリコフで砲撃で死亡した旨のリリースが届いた。

 筆者は OSCEについて2月22日の本ブログ「プーチン大統領がウクライナのドネツクとルガンスクの特定の2地域を国家として承認するとした発表に対するOSCEウクライナ担当特別代表キヌネン特別代表の声明の意義」で取り上げているが、今回のブログは、(1)OSCEの公表内容、(2)ロシアとウイクライナの停戦合意の重大な不安定性と 同合意の違反国(しかけた国)はいずれか、(3)SMMの役割、(4)ロシア国営放送であるタス通信の報道内容、等について、取り急ぎまとめたものである。

1.OSCEのリリース内容

 OSCE議長兼ポーランド外相であるズビグニェー・ラウ(Zbigniew Rau)およびOSCEのヘルガ・マリア・ット(Helga Maria Schmid:ドイツ)事務総長は、マリーナの愛する人たち、そしてSMM全体に対し、次のとおり心から哀悼の意を表す。

ズビグニェー・ラウ(Zbigniew Rau)OSCE 議長

ヘルガ・マリア・シュミット(Helga Maria Schmid:ドイツ)事務総長

 「心から哀悼の意と同情はマリーナの家族に向かう。マリーナはSMMチームの大切なメンバーであり、ウクライナの同僚たちは私たちのサポートを提供するために彼女の家族と密接に連絡を取り合っている。マリ-ナは、戦争地帯になった都市で家族のために物資を手に入れながら殺された。ハリコフやウクライナの他の都市や町では、ミサイル、砲弾、ロケット弾が住宅や町の中心部を襲い、女性、男性、子供など、罪のない民間人を殺害し、負傷させた。

 国際社会全体、そしてOSCE全体からの繰り返しの呼びかけにもかかわらず、ウクライナに対する挑発的な軍事作戦は続いている。我々は、市民に死滅及び負傷を引き起こす都市部の砲撃の増加を強く非難し、ロシア連邦に対し、敵対行為の即時停止と有意義な対話を求める声を改めて表明する」

2.2020年7月20日、ドンバス停戦合意の内容

 わが国では詳しい解説が極めて少ない中でReliafweb記事「パターンを破る:ウクライナでの最新の停戦協定の相対的な成功」を仮訳する。

 この記事は今回もロシアのウクライナ攻撃で大きく期待外れであったことはいうまでもない。

 特に、注意すべきはロシアの情報戦略である。例えば、2022.2.17 Yahoo news「ウクライナ軍が東部地域で迫撃砲を用いて攻撃」=露メディア」を重要視したわが国メディアはどれだけあったであろうか。ここで抜粋、引用する。

 「ロシアのスプートニク通信は同日、合同停戦合意調整委員会(JCCC)を引用して、ウクライナ軍が午前4時30分頃、親ロシア派武装勢力が掌握したルガンスク人民共和国地域の4か所に迫撃砲と手榴弾の攻撃を敢行したと報じた。

 ウクライナ東部のルガンスク州はドネツク州とともにロシアの国境に面した地域で、親ロシア派武装勢力とウクライナ政府軍の交戦が続いている場所だ。これら2つの地域を合わせて「ドンバス」とも呼ばれている。

 ロシアのRIA通信は、「ロシアの支援を受ける武装勢力は、ウクライナ政府軍が終戦協定に違反して迫撃砲の砲撃を加えた、と伝えた」

 このロシアのメディアの記事は押しなべてもともとの停戦違反はウクライナである主張している。

【Reliafweb記事】要旨

 ドンバスでの最近の停戦合意は、ウクライナとロシア主導の分離主義勢力間の戦闘の大幅な減少をもたらし、ロシアとウクライナの和平交渉の将来への期待を高めている。2020年7月22日、ウクライナ、ロシア、欧州安全保障協力機構(OSCE)の代表がウクライナ東部の戦争解決について話し合うプラットフォームであるウクライナの三国間接触グループ(TCG)は、ドンバスの最前線に沿って停戦体制を強化するための措置に関する新たな合意に達した。新協定は2020年7月27日に発効した。これは2018年初めから締結された8回目の停戦合意であり、これまでのところ最も効果的である。

 ドンバスでの戦争は、ロシア軍がクリミアを占領し、領土を獲得し、キエフの新しい親欧米政府を弱体化させることを目的としてウクライナ東部に入った2014年に始まった。ウクライナとロシア主導の軍隊間の激しい戦闘が続いた。ロシア主導の部隊には、ロシア連邦の正規軍部隊のほか、ドネツク(DNR)とルハンスク(LNR)人民共和国のウクライナ分離主義者の親ロシア武装形成が含まれていた。紛争の最前線は2015年末までに安定したが、その後もトレンチ戦争(紛争における膠着状態(trench warfare)が続いている(ISW(戦争問題研究所)レポート、2017年9月7日)。(注1)

 2020年の7月の停戦は、ウクライナとロシア主導の軍隊間の戦闘の急激な減少につながっている。今回の停戦合意の3ヶ月前に、ACLEDは武装衝突や爆発/遠隔暴力イベントを含む合計3,046件の停戦違反を記録している。停戦後の3ヶ月間に、停戦違反件数は542件に減少し、82%減少した。しかし、通常数週間以内に侵食された以前の停戦とは異なり、現在の合意は、ほぼ4ヶ月間、戦闘のレベルを低く保つことができた。減少にもかかわらず、停戦違反は依然としてほぼ毎日記録されており、双方の死亡者数につながった。

 実用的な要因と政治的要因の両方が7月の休戦の成功に貢献した可能性がある。以前は、平均して3ヶ月ごとに新たな停戦合意に達した。7月の休戦は採択に半年以上かかり、TCGの代表者は新しい開発を計画し実施する時間を増やした。この間、TCGへのウクライナ代表団は大きな変化を遂げた。ほぼすべてのウクライナ代表は、独立して決定に達する権限とそれらの決定の実行に貢献する能力の両方を代表団に提供することを意図して置き換えられた(Ukrinform、2020年5月8日Ukrinform、2020年5月6日)。

 新協定は、合同停戦合意調整委員会(JCCC)の円滑化を通じてTCGの臨時会合を招集することを含む停戦違反に対応するための調整メカニズムの使用を求めている。JCCCは、ウクライナ、ロシア、およびTCGが合意した合意の遵守を遵守する任務を負うDNRとLNRのロシア主導の武装形成からの代表者のグループである。この調整メカニズムが戦闘を減らすことができない場合、この合意は、それぞれの軍事司令部による命令の問題、そのような命令に関する公の声明、およびTCGへの通知(OSCE SMM-2020年7月23日)に続く報復戦争を可能にする。最前線の部隊が停戦違反に対応することを可能にするこのアプローチは、ロシアやウクライナがそのようなエスカレーションが有利であると計算した場合でも、意図的なエスカレーションが可能であるが、不注意なエスカレーションを減らすのに役立つかもしれない。

 ドンバスの紛争の冷却は、それを駆動する政治的問題を解決しない。ウクライナとロシアは、ドンバスでの選挙開催を含む紛争を解決するためのロードマップに合意した。しかし、両国は、これらの目標を達成する方法について相互理解に達していない。ロシアは、これらのプロキシが武装解除する前に、彼らのプロキシによって制御される選挙が必要であることを維持し続けている。彼らは、この条件が満たされるまで、戦争を終わらせる方向に進むことを拒否した。ウクライナは、これらの条件の下で選挙が行われる場合、ロシアの代理部隊が結果に影響を与え、最終的にはDNRとLNRの人形政権を正当化すると考えている(ユーロマイダンプレス、2019年9月21日)。

 ウクライナは、ドンバスで活動する外国の傭兵と軍事組織が地域を去った後にのみ選挙が可能であることを維持し続けている。ウクライナは、最初に占領地域に入り、そこで活動するロシア主導のフォーメーションを武装解除し、ウクライナの政治システムへの復帰を守るためにロシアの情報バブルから人口を打ち破ることを望んでいる。分離主義地域の多くは、ウクライナと西側のメディア資源へのアクセスを拒否され、ウクライナの政治状況(ラジオ・フリー・ヨーロッパ(注2)2019年8月8日記事)の歪んだ見解を提示されている。ウクライナはまた、DNRとLNRのリーダーシップを起訴したいと考えている。ウクライナは、その要求を後退する兆候を示していない。ロシアの要求にもかかわらず、10月25日に行われた今年の地方選挙にドネツクとルハンスクを含めることを拒否した。

 一方、国際的および国内的な懸念は、ウクライナでの活動に対するロシア政府の関心を低下させ、停戦の成功に寄与する可能性がある。ベラルーシでは、2020年8月の不正な大統領選挙の後、時にはクレムリン同盟のアレクサンドル・ルカシェンコ政権に対して広範囲にわたる反政府デモが行われた(詳細については、この最近のACLEDインフォグラフィックを参照)。

 この危機は、ルカシェンコ政権を一般的に選ばれた政府に置き換える恐れがあり、クレムリンの地域的利益に沿わない開発であり、管理に注意と資源が必要である。同様に、ナゴルノ・カラバフでのアゼルバイジャンとアルメニアの間の最近の6週間の戦争の中で、ロシア政府の注目はトルコとの関係に焦点を当てています(ラジオ・フリー・ヨーロッパ、2020年11月9日。BBC、2020年11月10日)。ロシア自体では、少なくとも2036年までウラジーミル・プーチン大統領の権力掌握を固めた憲法に関する国民投票の後、夏にデモ活動が増加した。人気のある地域知事の逮捕と著名なロシアの反体制派の人物の中毒もデモの増加に貢献しました(詳細については、この最近のACLED分析「CONSOLIDATED POWER AND GROWING UNREST: PUTIN’S RUSSIA IN SUMMER 2020」を参照)。これらの動きはすべて、ウクライナでの軍隊を使ってキエフに圧力をかけるというロシア政府の当面の関心を弱めたかもしれない。

 7月27日の休戦は画期的なものであり、ドンバス紛争の終結に向けた重要な一歩は間違いなく重要である。しかし、以前の停戦は、明白な理由や警告指標なしに迅速かつ侵食されている。この休戦は、最前線全体に沿って戦闘が続いているため、最終的には変わらないかもしれない。ドンバスでの戦争は、キエフに対するクレムリンの主要な影響力のレバーのままである。今後、ロシア政府は、国内デモの中で強さの兆候として東ヨーロッパの筋肉を曲げ、新政権が米国で引き継ぐにつれて地政学的な力を西側に示す方法を模索するかもしれない。これは、今後数ヶ月でドンバスでの敵対の増加につながる可能性がある。

3.SMM( 注3)の役割

 Reliefweb記事「Statement from the OSCE Special Monitoring Mission to Ukraine」を抜粋、仮訳する。

 キエフ、2月18日 - ここ数日、OSCEウクライナ特別監視団(SMM)は、停戦強化措置に関する2020年7月の合意が発効する前に報告された停戦違反の数に等しい、ウクライナ東部の接戦線に沿った運動活動の劇的な増加を観察した。

 SMMは、現場での国際社会の公平な監視者としての役割を認識しており、停戦へのコミットメントやミンスク議定書で予見されるその他の措置を実施する上で、両国を支援することに尽力している。 SMMは現在、両国サイドによる申し立てをフォローアップしており、これらのエリアへのアクセスを支障なく確保する必要があります。裏付けられ確立されたすべての事実は、SMMのレポートで引き続き公開される。

 緊張が高まるこの時期、SMMは、両国が行ったすべてのコミットメントを厳格に遵守し、緊張を軽減し、この紛争に苦し続ける接触線の両側の無実の民間人の生活の利益のために即時のエスカレーションに向けて取り組むために必要なすべての措置を講じるために、双方への要請を繰り返す。

4.OSCEスタッフの死亡につきロシア国営放送であるタス通信の報道内容

 3月3日7時57分発ロシアのタス通信記事を以下、仮訳する。

 ウクライナへのOSCEウクライナ特別監視団(SMM)の従業員であるマリーナ・フェニーナは、ハリコフの砲撃中に殺害された、とウィーンのOSCE事務局は3月2日に発表した。

「マリーナは、戦争地帯となった都市で家族のために物資を手に入れている間に殺された」と声明は述べた。

OSCEの議長兼ポーランド外務大臣であるZbigniewRau氏とOSCEの事務総長であるHelgaMaria Schmidは、彼女の愛する人たちに以下のとおり哀悼の意を表した。

「国際社会全体から、そしてOSCE全体からの繰り返しの呼びかけにもかかわらず、ウクライナに対する挑発的な軍事作戦は続いている。私たちは、都市部の中心部での砲撃の増加が民間人の死と負傷を引き起こしていることを強く非難し、ロシア連邦に敵対行為の即時停止と有意義な対話に従事すること」と述べた。

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(注1)米国のシンクタンクである「戦争問題研究所(The Institute for the Study of War)は、信頼できる研究、信頼できる分析、革新的な教育を通じて、軍事問題についての情報に基づいた理解を深める。同研究所は、米国の戦略目標を達成するために、軍事作戦を実行し、新たな脅威に対応する国の能力を向上させることに取り組んでいる。 ISWは、無党派、非営利、公共政策研究機関である。

(注2) ラジオ・フリー・ヨーロッパおよびラジオ・リバティー(Radio Free Europe / Radio Liberty、略称はRFE / RL、自由欧州放送とも訳される) は、アメリカ合衆国議会の出資によるラジオ放送と報道の機関である。本部はプラハ。(Wikipediaから一部抜粋)

(注3)SMMにつき、わが国との関係を紹介する。

2015.7.30 外務省リリース「ウクライナにおけるOSCE特別監視団への人員派遣」

1.本年8月3日から,ウクライナにおけるOSCE特別監視団(以下,SMM)の報告・分析部報告ユニットの報告官ポストに外務省職員1名を派遣します。本派遣は,OSCE加盟国を除くパートナー国11か国の中では最初の人員派遣となります。報告官は,ウクライナ各地域から報告される情報を分析し,報告書を作成する業務を担当します。

2 SMMは,ウクライナにおける政治的安定と民主主義の回復を目的とし,ミンスク合意の下,停戦,重火器撤収等の状況をモニターし,報告するという重要な任務が付与されており,我が国を始めとするG7諸国はその活動を後押ししています。

3 日本はこれまで,OSCEとの特別な協力関係や,ウクライナ情勢におけるOSCEの役割の重要性に鑑み,政治対話促進ミッションへの財政的・人的貢献(2014年3月~4月),ウクライナ大統領選挙及び議会選挙の監視活動への人的貢献(2014年5月及び10月,計20名)を行うとともに,SMMに対しても,計200万ユーロの財政的貢献を行っています。本派遣が,ウクライナの平和と安定に貢献することを期待しています。

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