「忙しくて。。。」
会うなり、いつもの言い訳だ。
『何に忙しいの?』
…と、嫌みを言ってしまいそうだ。
「誕生日…だけど…」
あ、そう言えば来週、自分の誕生日だったことを忘れてた。
…忘れてなかったんだ…。
「旅行には行けないから、レストランでご飯でも食べない?」
旅行…、数ヶ月前、旅行好きな笑子のため、『誕生日は旅行を!』と言っていたのを思い出した。
「旅行なんていいよ。会社辞めてお店出すために、お金貯めるんだよね」
「うん、ごめん。」
「…それなら、レストランで食事なんて、いいよ」
「え?それは…」
今となっては、一緒に食事するのも気が重い。
「お金貯めないと!」
「ありがとう」
勇一が体を寄せてきた。
笑子は思わず身を引いた。
たぶん、勇一は自分が距離を置き始めていることを感じているはず。
それならそれでいい。
その日は、軽くお酒を飲んで別れた。
お酒さえも酔わない。
もう、本当に潮どきだな。。。