を読む」河合隼雄
大分汚れもあり、それでも自分で買った本を再び開いてみた。河合先生はとても含蓄のある文を書き残しておられる。
ファンタジーの概念を説明しながら作品の紹介を進めていく。 「夢想」とでもいう言葉に置き換えられるだろうか。形のないものを
改めて言葉に置き換えるには、どうにも私には自信がないのだが。 ファンタジーは、ユーモアよりも心の中での動きが発生して生まれるようだ。「床下の小人たち」は、宮崎アニメで製作されている。
ファンタジーの登場人物に、病んだ人がいる。お話が展開するうちにある人は病気が治って成長したり、ある人とは別離がおきたりする。 読者は読み進めながら、何によって癒されたのか
同じように共有していく。
抜粋 人間のアイデンティティは矛盾したり対立したりするものの巧妙なバランスの上に立っている。(人間は、杓子定規で計れない面もある。現わし方が絶妙です。)
「深める」とはどういうことか。・・「誰が正しいか」とか「どちらが悪いか」という問いにではなくて、その「意味は何か」という問いに応えようとするのである。(丸か×かではなくて、受け止めてみる。そして、考えてみよう。)
日本人はファンタジーを書くのが苦手なのだろうと思われる。・・・日本人は、意識と無意識の隔壁が西洋人に比して薄いので、ファンタジーをひとつの作品として結実させるのが
難しいのではないかなどと考えている。(これは、宗教・教会が介在し、浮遊する自分の行方を意味しているのだろうか、と私は思った。
)
書かれた当時の内容とは違って、現代を言い当てているとは言えない箇所もあるかもしれない。
人間のマイナス局面要素は、お話になくてはならないだろうが、そんなものを抜きにして心を満たし、高揚させるファンタジーがあったら、知りたいと、思っている。
読み進めながら、材料で登場しただろうドールミニチュアを思い出したりしていた。著者のお国柄や背景に関心を寄せるのも楽しみに繋がるだろう。