優しい嘘

いやな時代になったな、と思う。　なんでもかんでもPCで情報が入ってくるから。

市川海老蔵さんの奥様が乳がんを患って闘病中とか。
会見で、旦那様は目元が潤むようなこともあったけれど落ち着いて立派に説明、受け答えされていた。

誰もがどの程度のステージでどんな病状なのかは気がかりだけど、まるでそれを見透かしたように専門家、と呼ばれる人たちが詳しく解説しまくっている。
興味、好奇心というよりは癌にかかる人がこれだけたくさんな現在、他人事ではなくわが身の事としても気になる、それはそうだと思う。

でも、正直、あのあちこちに書かれている詳しい説明を読んでいたらうんざりした。

以前、癌は不治の病とされていたので、告知するとショックで一気に病状が悪くなる人も多くて、告知するかしないか、、、というのが論議されていたときもあった。
それがいつしか、告知は当たり前で、自分の病気を知ったうえで積極的に戦う、もしくは、もっと進んでいて手の施しようがなかったりすると、いかにその日までを前向きに生ききるか、そんなところまで告知というのは進んでいる。

私は、治らない病を得たら、できるだけ余命はどのくらいか教えてもらいたいと思っているけれど、現実そうなったら今と同じ考えでいられるかどうかはよく分からない。　知る権利もあれば、知らない自由もあってもいいかな、って思う。

父の晩年を思い返しても、病状で一喜一憂したし、ドクターやナースの嘘、は神経が鋭敏になっている患者にはすぐにわかるものだと思う。
どんなに励まして明るく大丈夫ですよ・・・なんて言われても、ナースセンターでのカンファレンスの時に、希望を奪うような言葉は絶対に言ってはならないって言われてるんだろうな～とか。

全部病状を知ったうえで前向きに戦うというならともかく、ドクターも患者本人には100％ほんとのことを伝えていないかもしれない。
だけど、こんなふうに微細に解説するものが簡単に見られたりすると、少なくとも私はめげるし、落ち込むと思う。
知らない方が幸せってことは世の中、往々にしてあるものだ。

以前、ベストセラーになった本の著者が、ドクターであるばかりに自分の体の不調を見抜いて余命まで分かっていることを読んだときに、ああ、医者って因果な商売だなと思ったのを覚えている。 なんでもわかるのは果たして幸せなのか？

なんだか、柄にもなくいろいろ揺れる。