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綾野剛 ハゲタカ 現代に向けたメッセージドラマ

2018-07-27 03:27:20 | MUSIC/TV/MOVIE
ライオン、虎、鷹、白鳥などは高貴な形容詞として使われるが、逆に蔑んだ言い方の時に使われる動物がいる。

蛇のようにしつこい。
こそこそと鼠のように嗅ぎまわる。
ハイエナのような奴だな。
などなど動物を使った言葉はかなり多い。そしてそのほとんどは人間界ではあまり良い意味で使われていない。
その動物には罪はないのだが・・・。

ハゲタカ。
実際のハゲタカを見たことがある人はほとんどいないだろうが、こちらも獲物を骨までしゃぶり尽くすという蔑みの形容詞として使われる。
今、その名を冠したドラマが始まっている。

綾野剛主演のドラマ「ハゲタカ」
真山仁さんの小説を基にした経済ドラマだ。
NHKで以前、大森南朋主演でドラマ化してたらしい。こちらは残念ながら見ていなかったのだが、かなり面白かったという評判だ。

だから先入観なしに今回の綾野剛版のハゲタカを見てるのだが、これが面白い。
まだ2話目だがかなり今後の展開もかなり期待してしまう、今クール1推しのドラマだ。
「半沢直樹」や「下町ロケット」などにも通じる1話完結の痛快社会ドラマの作り方。もちろん顔アップ、顔芸が随所に見えます。

ストーリーは1997年の日本。
そう、プラザ合意がなされ、バブルだぁって浮かれてた日本の経済が一気に落ち込み、日本の銀行が一気に不良債権を抱え貸し渋りや貸し剥がし、回収や身売り、合併などてんわやんわし始めた頃。第1話はここから始まる。

綾野剛はアメリカで外資系ファンドのファンドマネージャーとして次々と企業を買収し「ハゲタカ」という異名を持つ男。
ホライズンジャパン・パートナーズの日本代表として日本に帰ってきて、手始めに三葉銀行がかかえるバルクセール(保有債権のまとめ売り)を行なう。
この三葉銀行の窓口、不良債権資産流動対策室(今回のドラマのホームページでは資産流動化開発室/金融戦略部となっている)の室長が渡部篤郎。

徹底的にリストに載ってる不良債権を調べ、銀行が提示したパルクセールの希望価格を大幅に下回る金額を提示して不評をかうが買い取ることに成功。さらに他の不良債権の公開入札でも銀行側の人間を抱き込み採鉱学で入札する。甘く見ていた常務の小林薫は渡部篤郎のせいにして切り抜ける。

半沢直樹で香川照之が演じた憎々しさ満開の銀行常務に匹敵する、ハゲタカでの小林薫常務。銀行関係の人には申し訳ないが、銀行の常務とか役員てのは狡猾って印象になってしまうね。

そして買収され債権放棄の条件提示をされていたにもかかわらず対策せず、債権を売り飛ばされてしまった老舗旅館の放漫社長六角精児は綾野剛が泊まってるホテルに文句を言いに来る。
「このハイエナがぁ」と罵る六角精児に対し綾野剛は「ここまで日本の経済を悪化させたのは、すべてお前らの油断と思い上がりだ。自分が食われる屍肉だってことを忘れるな」

この時、綾野剛が利用してたホテルのフロントマネージャーが沢尻エリカ。
沢尻エリカは日光の老舗ホテルの娘で、2話目では実家の旅館に戻り支配人となっている。
1話のラストではハゲタカではなく犬鷲を見に来たところで綾野剛と再会、2話目のラストでは沢尻のホテルを買収しに綾野剛が現れるから、渡部篤郎、小林薫と同じく今後ドラマのキーマンになるのだろう。

第2話では2004年。太陽ベットという会社の不良債権を綾野剛が小林薫に持ちかけ買い取る。
先代が築いた会社を放漫経営&私物化してる現社長をかたせ梨乃が演じる。

かたせ梨乃は最近よく見るなぁ。
コンフィデンスマンJPではイケメンダメ息子を病院の顔にしてイメージ戦略してる病院理事長役で、長澤まさみにまんまと大金を騙し取られる役。(s長澤まさみの描いた絵をオークションで買って飾ってたりする)千鳥の相席食堂にも出てた。最新作映画版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-にも出てるみたいだ。

かたせ梨乃は演技が上手い。今回の第2話では見事に嫌な女社長を演じている。債権を買われておりながらも社長の座と変わらぬ生活を綾野剛に突きつける。書類は破る。靴はふむ、罵詈雑言にいかにもダメな二代目お嬢社長。
裏では債権を綾野剛に売っておきながら民事再生法を申請し、サポーターの公開入札に三葉銀行系のファンド会社を送り込む小林薫。カラクリを知りながらも忠実な渡部篤郎。
今回もまた痛快な逆転劇で、綾野剛のチームが勝つ。

このドラマがすごいなぁって思うのは、
第1話目のバルクセール(保有債権のまとめ売り)
第2話目のゴールデン・パラシュート(高額な退職金を提示して経営陣に退任を迫る)スポンサー入札(サドンデス方式による弁護士同席による入札)
など業界専門用語をさりげなく取り入れ、違和感なく展開していくところ。

そしてもう一つは時代考証のさりげなさ。
1話目では1997年、そして2話目は4年後の2001年。
車とか小物などが全て時代にあっているものを使用している。

第1話目では書類はいかにもワープロで打った文章だし、2話目では一太郎とか花子の書式だ。
第2話目で綾野剛の前に置かれてるノートパソコンはまだまだ分厚いものだ。
携帯電話も第1話ではかなりでかい。第2話目で綾野剛のスタッフ、池内博之が演じる日系人アラン・フジタがアメリカの本社に資金追加を依頼してるシーンでは、かなり細くなっている。

高度経済成長期ではないが、まだまだサラリーマンが家庭を顧みず働いてた時代。長時間拘束、無理難題を押し付ける上司、接待などで深夜帰宅。
劇中の渡部篤郎の家庭も、2話目にしてすでに娘には愛想を尽かされ、奥さんは毎晩飲み歩いて酔いつぶれてる。
こういったバブル後のツケに奔走してくれたサラリーマンによって今の社会が成り立っている。
今ではブラックとすぐSNSにつぶやくやつらよ、このドラマ見て「やっぱ昭和はダメだわ」とか「自分の時間って大切」とか「会社とは労働規約の関係」ってまだまだいうのかね。
別に家庭崩壊させてまで働けとか、体壊すまで働けとか言わないが、自分の働きが報酬や労働時間にあっているかは考えてほしいな。

怠惰に生きて食われる側になるか、鋭い牙や爪で喰う方になるか。それは自分次第だ。

能ある鷹は爪隠す。燕雀焉んぞ鴻鵠の志知らんや。静かに虎視眈眈と力を蓄え野望を持つのもいい。

猪突猛進。脇目も振らず目標に向かうのもいい。

蛇の道は蛇。情報通として重宝されるのもいい。

虎の威を借る狐。風見鶏。上司の顔色を伺ってソツなくこなすのもいい。

狸寝入り。猫に小判。と無能扱いされたり、鴨がネギしょってって比喩されても、窮鼠猫を噛む。と場合によっては歯向かってもいい。

このハゲタカというドラマ。
そんな時代へのメッセージとも思えるドラマだ。
ぜひ観てほしい。

ちなみに人気の山口県の日本酒、獺祭の「獺」はカワウソのことだ。