
このところ飲食店にツイてない。
今日、梅地下の天丼屋に行った。カウンターだけの天丼専門店で、ここに来るのは約1年ぶりだ。
先週、豚カツで妥協して失敗したからリベンジも考えたが、既に家でスペシャルカツとじ丼を自分で作って食ったので、もういいや。(何がスペシャルでどう美味いのかは長くなるので端折る)
4時というランチには遅く晩飯には早いという中途半端な時間のせいか、めっちゃガラガラ、店内には誰もいなかった。
「お好きな席へどうぞ〜」
そりゃそうだろと思いつつ(客いないのに「なぜここ?」って変な席に案内される店もあるけどね)奥のカウンター席に行く。
と、いきなりここでカウンター内からおばさんがスプレー持って「はい、消毒!」と。
「コロナ対策で消毒にご協力を」とか「入り口で消毒液されましたか?」などではない。「はい、消毒!」
まるで俺がバイキンのような扱い。
北斗の拳のザコキャラ「汚物は消毒ダァ〜」の火炎放射器が頭をよぎったよ。
有無を言わさない口調に思わず差し出した俺の両手に、ブシャーと豪快に消毒液を噴霧するおばさん店員。
ビチャビチャだよ。ここまでかけなきゃいけないか。
「まぁ徹底してんだろう」と思いつつも「あれ?ペーパータオルとか無し?」。簡単に乾く量じゃねぇぞ、これ。
これだけ(しかもいきなり)濡らされたらポケットからハンカチもティッシュも取り出せんぞ。濡れた手が乾くまで俺はハエのように手を擦り続けてろというのか。
そこへまたもやさっきの消毒おばちゃん、カウンター内から
「ご注文は」
・・・、待て、俺はまだ手が乾いていないから上着も脱げてないし、だいいちまだ席に座ってもいない。見てわからんか?
注文メニューは外のメニューパネルやサンプル見て、店内に入ったらすぐ注文できるように既に決めとけと言うのか?それがこの店のルールか?
イラッとしたが、怒ってもしょうがない。
このご時世だ。
インバウンドでアホみたいに客が増え、新型コロナで一気に客が減った。自粛期間を終えやっと再開して、最近ようやくGoToの恩恵でまた客足伸びたが、今日の梅田の人出を見る限りまたヤバイ状況に逆戻りかもしれない。
バイトやパートはいつ「悪いんだけど今月で」と首切られるか、いつ「とりあえず自宅待機でお願いね」と言われるかわからん。
今日も大阪は318人の新型コロナウイルス感染者が出たそうだ。
感染者数がちょっと増えようが減ろうが、最近は驚きもしなくなってるが、大阪市はついにGoToの停止を決めたそうだ。
11月27日から12月11日の15日間、梅田含む北区と難波・心斎橋を含む中央区全域の飲食店に時短営業を要請することを決めたらしい。
酒類を提供する飲食店(接客を伴う飲食店)が対象。居酒屋、焼肉屋、カラオケ、バー、スナック、キャバクラ、ホストクラブ、クラブなど約2万5000軒。
「またかよ」「これから年末のかき入れ時なのに〜」「コロナより前にこっちが死ぬわ」「50万ぽっちの補償でやってられるかぁ」って悲鳴が聞こえてきそうだ。
こっそり深夜開けちゃうバーやクラブなんかも増えそうだが、感染防止のガイドラインを導入しない店は休業を要請するんだと。
あれ?じゃぁ梅チカ(ホワイティうめだ)のこの天丼屋なんて別に関係ないやんって言いたくなるが、それだけじゃない。
大阪府は「利用客5人以上」「2時間以上」の宴会や飲み会を控えるように要請。「Go To Eat/キャンペーン」や大阪府独自の「少人数利用飲食店応援キャンペーン」で付与されたポイントや、プレミアム付き食事券を利用しての飲食も控えてくれと呼び掛けるそうだ。
政府も11月24日から12月15日の3週間、大阪市を目的地とする旅行に対して「Go To トラベル」の割引対象から外すと決めた。
やはりこれらによって梅田全体の客足が鈍るのは間違いないだろう。俺だってできれば来たく無いもん。飲食店なんて人が来なけりゃ開けてても無駄だ。
そんな状態じゃぁ店もバイトやパートなど人件費を考えなきゃいけない。GoTo景気見越してまたスタッフ増やそうかと思った矢先にこれだもの。
そりゃ現存スタッフも、「消毒を徹底しろ!」「店から絶対クラスター出すな」のお触れをきっちり守るだろう。店が休む羽目になったらパートもバイトも必要なしになるんだからな。
俺の手をべちゃべちゃにしようが、そんなことより店からコロナ感染者を出さないことの方(自分のパート雇用=生活守る方)が優先だ。
俺はようやく乾いた手(カッサカサになったよ)でカウンターに置いてあるメニュー(アクリルスタンド)を見る。
もうなんでもいいや。こういう時はこの店の定番、普通、ノーマルを選ぶに限る。並の天丼でいいや。
すかさず「あさりの味噌汁は」などとサイドメニューのセールストークをされるが「あさりのみ」くらいで『要らないです』とキッパリ断る。せめてもの抵抗。
消毒液噴霧のおばちゃん、慣れた手つきで具材にタネ(ころも)をつけ、次々と油の中に入れていく。
あれ?油の温度を確かめてないけど大丈夫か。自動調整なのか?俺が入ってくるまで客がいなかったが、それでもすぐ適温になるのか?
そりゃ、グルメでもフーディでもありませんから、こんなファスト天丼屋で「小麦粉と卵と水は冷やしたやつをダマが残るくらいに軽くかき混ぜろ」「そのタネを油に落してスッと戻ってくるくらいが200度だ」とかいう気はありません。
しかし、油の温度を確認もせずに・・・とか、なぜそんなに箸でくるくる油の中でネタをひっくり返してるんだ?とか、ちょっと気が気じゃない。
さらに衝撃!
揚げながらご飯を丼によそってるところまではまぁ普通だったのだが、なんと、揚がった天ぷらをトレーの上に移したり、ペーパーの上に置いて油切りという行為なしで、ダイレクトで丼に入れていく。
油を滴らせながら丼に収められた天ぷら。さぞかしギトギトの天丼だろうなと思ったら、上からさらに秘伝(?)のタレをかける。中和されるのかごまかせれるのか、よくわからん。
天ぷらって、カツと同じく家で絶対しない。
天ぷら、フライ、から揚げなどは油の処理が面倒なのもあるが、油の温度が家のコンロじゃ安定しないし、揚げ上がりのタイミングもよくわからんし。
だから店で食う。
特に最近は新型コロナが怖くても「まぁ少しくらいは苦境のお店に貢献できれば」と、普段は微塵もない奉仕精神を言い訳にして、店で食うようにしてる。
しかし、見事にこの天丼は失敗だった。
そりゃ、京極さんのように「なんちゅうもんを食わせてくれはったんや・・・」などと涙を流しながら感激するほど美味い天ぷらが食いたいわけじゃない。
揚げる音の微妙な変化で、油から取り出すベストな状態を見極められる名人芸も求めちゃいない。
でも、もうちょっとマシな天丼が食いたかった・・・。
案の定、油の温度が低かったのか衣は熱いが全然カラッとしていない。
あのくるくる油の中でひっきりなしにタネを回転させてた謎行為はなんだったんだろう。イラチだっただけか?
エビは中まで火が入っていない状態。2本とも生焼けとまでは言わんが、もう少し長い時間油の中で遊ばしとけよって言いたい。
茄子は最悪。これは熱い衣の付いた生ナスです。油炒めの際ごま油をスポンジのように吸収してくれるナスを、ここまでシャリっと感を残して揚げられるなんて、もはや匠の技。その技術、後輩に教えてあげてくれ。一口かじって残した。
カボチャはまだまともだったが、俺、カボチャやジャガイモは飯の友にならんと思ってる派なのであんまりありがたくない。だってモソモソ感が口いっぱいに広がって、お茶なしでは飲み込めないんだもの。これも一口かじって残した。
あれ?あと一品なんかあったんだけど、忘れちまった。それくらい印象がなかったってことだ。
結局俺は、たっぷりの消毒液でカサカサになった手で、油とタレのしみた(大阪弁で「しゅんだ」)ご飯を食べ金を払ったようなもんだ。
またもや負け。
ここ最近の俺の孤独のグルメは負けっぱなしだ。
リベンジしたいものよのう。
追記:
誤解のないように書いておくが、このカウンター内の店員は実によく動くスタッフさんだ。以前書いた三番街の蕎麦屋のおばさま店員と違い無駄話はおろか、サボってる時間は1秒たりともないくらい、常になんかをしている。
丼を洗ってたかと思うと、何かを下(冷蔵庫?)から取り出し、容器を片付けたら、仕込んでるのかタレをかき混ぜ様子を見る。
ただ色々やることに夢中になりすぎて、お客様が見えないのだろう。俺が丼を食い始めた頃に女性客がお一人入ってこられたが、やはり有無を言わさない消毒液噴霧〜注文の丼の食材準備、トレーを出し、丼を温め、油にタネ投入(温度はやはり確認せず)。
お客様に注文の丼をお出しした後はまたもや丼を洗い、何かを下から取り出し、容器を片付け、仕込んでるタレのチェック・・・。まぁよく動く。給料分はしっかり働きますよと言わんばかり。
ただ残念なのは、そのお客様が粗相をされたのだが、知らん振りって感じだったこと。
俺の対面カウンター側だから何がどうなったのかはよくわからなかったが、どうも卵かなんかも注文してそれを丼に入れるのを失敗してはみ出してカウンターがえらいことになってるみたい。
お客様は紙ナプキンを何枚か使い手を拭ってたが、普通そんな時は、カウンターからおしぼりや手拭きを出したり「お洋服は大丈夫でしたか?」とか「代わりを用意しますとか言わないか?
それは他の店員(カウンター外の接客スタッフ)の役目なのかもしれないが、それならそれですぐお声がけに行くなり、カウンターを拭いたりするもんだろ?
たぶんそういった接客応対マニュアルはこの店(このチェーン)はないんだろうな。同じ丼のチェーンでも松屋とか吉野家とかは完璧なマニュアルあって、よほどのことがない限りトラブルや不快には発展しないもん。
マクドナルドをはじめとしたファストフードのマニュアル接客は、時にネタにされたりするけど、かなりしっかり作りこんである。
マクドナルドで注文したハンバーガーとシェークを受け取り、席に移動しようとした際にそのシェークをトレーから落としてしまったら、間違い無く店員(キャスト)が飛んできて、ダスターとタオルと気遣いとお声がけをしてくれる。ついでにシェークも新品を持ってきてくれる(本当)。
マニュアル=型にはまったって思うんじゃ無く、基本形として捉えてね。
自分らしくとか、ケースに応じてなんていうのは基本がきっちりできる人が言う言葉だよ。
追記その2:
天ぷら鍋を火にかけたまま、天ぷら油を追加補充するのはやめようね。危ないよ。
天ぷら専門店なら火力の強いプロパンを使ってると思うのよ。気化したらあっと言う間に引火して火の海だぞ。
減ったら補充って言われてるのかもしれないが、面倒でも一度火を止めてから(できれば鍋の油の温度下げてから)追加の油は入れないと、危険だよ。
店長を呼んで怒鳴りつけてやればよかったのに、紳士ですね。