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バーボングラス片手のロックな毎日

極主夫道実写版がいまいち面白くない

2020-10-27 19:25:56 | MUSIC/TV/MOVIE

極主夫道実写版。観ないつもりだったのだがつい観てしまった。

しかし、やっぱりいまいち面白くない。

結論から先に言っておく、これは脚本とか演出などが悪すぎるのだ。俳優陣は悪くない。

 

漫画の実写化って賛否両論ある。あって当たり前だ。

原作ファンの「キャストのイメージが違う」とか、「あの話を何故使わないのだ」とかの声は至極まっとうだ。どう作ってもそれは避けられない。でもそれで面白いんだったら、ある程度の弄りは許容範囲。許される。原作者も「コミックとアニメやテレビは別物と考えてる」なんてコメントするくらいだからね。

 

今回の極主夫道。

タイトルからわかるように、原作は元裏社会で最強と恐れられた「不死身の龍」が一転主夫道を極めるシリアスな絵柄のギャグ漫画だ。

主人公・龍の玉木宏の再現性は見事だ。漫画のイメージそのままで、サングラスのズレ、極道ファッション、メンチや仁義の切り方、そして家事をテキパキこなす姿、全てにおいて悪くない。

しかしこのドラマ、いたるところで「あれ?」とか「なんでやねん」とかあるのだ。いや、多いいのだ。

なぜここの設定を変えたの?ってのが随所に出てくる違和感と、コミックスの各話を無理やり繋げたのはいいがツギバギ感が丸出しのテンポの悪さ。ギャグとかもイマイチノリが悪いのだよ。

 

裏社会の雰囲気丸出しの男が家事をし、買い物をし、キャラ弁を作る。随所に裏社会隠語が出てくるがそれはどこの家庭にもある生活用品や食材だったり、真面目にやればやるほどそのギャップに周囲は戸惑うってところがこの話のミソなのだが、それが全然描けてない。かなり下手くそだ。素人か?まさかな。

原作未見の人には違和感ないだろうが、原作ファンからすりゃ、漫画の世界観・イメージがめちゃくちゃになってしまってるのだよ。

 

原作では龍(玉木宏)と妻の美久(川口春奈)が暮らしてるのはボロアパートの2階の部屋なんだが、なぜか今回のドラマでは一軒家だ。安アパートの狭い部屋に美久が大事にしてるポリキュア(プリキュアのもじり)のフィギュアが所狭しと飾られてたりするからいいのであって、綺麗な一軒家ってなんかなぁって。大人の事情ってやつか?

 

さらに原作にはいない娘・向日葵(白鳥玉季)が登場。しかもなぜか美久(川口春奈)の連れ子って設定だ。一体なんのためにこんな子供を登場させたのかがわからない。変に家族愛とか描かんどいてほしいのだがなぁ。そんなん求めてないし(案の定第3話でそんなノリだった)ね。

 

まぁ、心配してた川口春奈の演技はまぁこんなもんって感じ。料理させたら台所をぐちゃぐちゃにし、洗濯物たたませたら丸めただけという、龍の神経を逆なでするイラつかせかたは原作通りで合ってる。娘役の白鳥玉季も可愛いいしうまいから、これはこれで良しだ。

 

龍が元所属してて今は斜陽の暴力団・天雀会・会長を演じる竹中直人はさすがだ。セリフやアクションは多分ほぼアドリブが入ってるのだろう。

しかし当然、元・龍の舎弟・雅(志尊淳)はそのノリについていけていない。

この雅は原作でもツッコミ役として重要な役なんだが、やっぱり志尊淳では無理だった。玉木宏や竹中直人のボケに対してツッコむタイミングがちょっと(どころか完全に)ずれてる。っていうか彼では無理だろうって最初からわかってたけど、やっぱりで残念だ。

 

そしてこの天雀会や会長の設定も原作と違う。ドラマでは2話目にして早くも潰れてしまったが、原作では弱小ながらも健在だ。竹中直人が演じてる会長・菊次郎も原作ではまだまだ睨みが効き、組員を従え犬の散歩をする。今は主夫になってる龍に助けを求めたりはしない。

 

天雀会会長夫人(竹中直人の妻ね)を稲森いずみが演じてるのだが、これまた原作と違う。「あれ?これって酒井組の姉さんじゃぁ」って戸惑ったよ。今は解散した酒井組の姐さんは妖艶で頭脳明白だけどちょっと天然、そんな粋な姐さんなんだが、天雀会会長夫人はそんな人ではない。なぜこの二人をゴッチャにしたのだ。

まぁ、稲森いずみ独特の不思議な空気(この人はデビュー時から不思議ちゃんだった)は健在のまま、黒のお着物と極妻仕様に結った髪がよく似合うこと。これはこれで悪くはないのよ。

 

龍のライバル「剛拳の虎」こと虎二郎を演じる滝藤賢一の再現度は素晴らしい。

第2話目で滝藤賢一が登場するという番宣スチールを見た途端、原作の「剛拳の虎・虎二郎」が滝藤賢一にしか思えなくなったくらいだ。

滝藤賢一演じる剛拳の虎は、刑務所から出所してクレープ屋をやっているが、未だに何かと龍と張り合う。

傑作だったのは第2話でフィットネスクラブ体験入会でヨガをしてる時、いちいちポーズに裏社会ネームを二人してつけてたこと。

「組長に木刀でどつかれた時のポーズ」とか『腹に綺麗にドスが入った時のポーズ』とか交互に競っていた。傑作は「車のキーを渡されて『車ごと処分してきて』って言われた時のポーズ」と虎二郎が言ったセリフ。

ビニールシートにくるまった荷物がトランクに入ってる車ごと、雨の中人気のない山から落とす(または海に沈める)ことを上のもんから指示されたとこを想像してしまったよ。

 

第1話では天雀会と敵対する組の組長に橋本じゅん、第3話ではひまわりが通う学校のPTA会長に鈴木浩介(妻役は鈴木亜美だった)と豪華なゲスト。レギュラーでは古川雄大・安井順平(警察官役)MEGUMI(婦人会会長役)と脇も十分。

原作にない喫茶店ウエイトレス役で玉城ティナが出てるが、これは志尊淳のサポート要員か?よくわからん。

 

これだけキャスト揃えて、それぞれが悪くない演技をしている。なのになんでイマイチ面白くないのだろう。なんでイマイチ盛り上がらないのか、不思議だ。

テンポが悪すぎる、つなぎが悪い、詰め込みすぎ。そしてなんか狙いすぎ。

第1話のラストで天雀会の組員が警察官に捕まる際、中島みゆきの「世情」がBGMが流れた。多分「3年B組金八先生」の加藤が警察に捕まり連行されるシーンをイメージして作ったんだろうけど、見事に外してた。こんなとこが狙いすぎのとこだ。

オープニングでキャストがラジオ体操をするシーンもちょっとなぁ。小栗旬、山田孝之、桐谷美玲ら豪華メンバーで実写化された「荒川アンダー ザ ブリッジ」のゆるゆる(グダグダ)体操をイメージしたか?これもちょっとはずしてしまってる。

龍が家事をするときのちょっとしたコツを説明するシーン。これも「家政婦のミタゾノ」のパクリっぽい演出に見えて仕方がない。

原作ファンからするといろんなところが違和感満載で戸惑うのよ。

 

でもね何度も言うけど俳優は悪くないよ。ダメなのは監督と脚本と演出など制作陣だ。ディレクターとかもダメなのかな。もっと弾けたらいいのになんか中途半端。

パロディ入れるなら「仁義なき戦い」とか「ごくせん」とか「アウトレイジ」とか「極道の妻たち」とか、わかる人にだけ分かるって感じでバンバン入れたらいいのに。

金が無いと嘆く会長・竹中直人に「ティッシュ詰めするくらいならモ●ットで借りるか」と言わせたり、同じく滝藤賢一に「クレープ屋の開業資金はレ●クで調達した」とか言わせたらどうだ。(二人とも信販会社のCMしてるぞ)

「レンコン」(回転式拳銃の隠語)とかの使い方も原作通りなんだが、説明なしだと一般人の知らない人は知らないって。小麦粉を「上物の白い粉」とか、クエン酸を「元気が出る魔法の粉」とか誤解を招くシーンの作り方、描き方も雑だし。

もっと弾けちゃっていいと思うのだけどねぇ。

 

次週は美久の両親が遊びに来る話。両親はYOUと正名僕蔵が演じるらしい。

っていうか、美久役の川口春奈と向日葵役の白鳥玉季、そして剛拳の虎役の滝藤賢一はNHK大河ドラマ「麒麟がくる」でも濃姫とお岸(光秀の長女)、足利義昭を演じてる。

滝藤賢一は「ヴィレヴァン! 2」にも店長役で出てる(映画化もされる)。大忙しだね。そりゃ半沢直樹は出演できないわね。

ちなみに稲森いずみがパートしてるスーパーの店長の本多力と、玉城ティナがバイトしてる喫茶店のマスター水橋研二も「ヴィレヴァン!」に出てた。

「ヴィレヴァン!」は名古屋のメ〜テレ制作の深夜放送だったがめっちゃ面白かった。なのになぜ読売テレビ(日本テレビ)制作の「極主夫道」はこれほどまでに面白くないのだろうか。

不思議だ。

 

あ、極主夫道は2021年にNetflixでアニメ版が制作され全世界配信されるらしい。

龍役は津田健次郎だそうだ。

実写PVで見事に龍を演じてた津田さん。「じゃぁテレビ実写版も津田さんでよかったんちゃうん?」って思っては・・・ダメか・・・。

 

大ゴケの予感 竜の道 極主夫道