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猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

赤沢亮正経済再生担当大臣、ドナルド・トランプ大統領と会う

2025-04-17 15:37:51 | 国際政治

日本時間の4月17日早朝、赤沢経済再生担当大臣が、日本政府とアメリカ政府の関税交渉に、はじめてトランプ大統領らと会談した。赤沢は、ベッセント米財務長官とグリア米通商代表部と閣僚級協議の予定だったが、それに先立って、ベッセント米財務長官とラトニック商務長官の参席のもと、ホワイトハウスでトランプと50分会談した。

赤沢は前日の午前中、出発に先立って記者会見をした。テレビでみると、赤沢の目が泳いでいるので、すごいプレッシャーが掛かっているのだと私は感じた。ほとんどのメディアは交渉経験のない赤沢を送りだすことを非難していた。

ジェット機でも東京からワシントンは遠い。着いて、すぐの会議はつらいものだ。私は赤沢がよくそのミッションを努めたと思う。

交渉は外交の一部で、まず、相手の立場を理解し、ウィンウィンの妥協点を探ることである。赤沢が自民党の中での重鎮でなかったことはかえって良かったのではないか。トランプも赤沢に期待せず率直なミーティングを持てたのではないか。

両者のミーティングで、アメリカ側の困り感、日本側の困り感が率直に話されたようだ。

野党の一部は、石破首相が赤沢を送ったことを批判しているが、私として、交渉の第一歩としては成功だったと思う。赤沢、トランプの双方にとって暖かい礼儀を尽くしたミーティングだったらしい。

ミーティング後の赤沢の会見で私が不思議に感じたのは、為替相場の話がミーティングで出なかったことである。トランプ政権側としては、交渉せずとも、ドル安円高に持っていけると思っているのではないか。日本の自動車産業の立場からは、数年前より円が40%安くなっているから、為替相場がこのままなら、25%の関税が追加されても、やり過ごせる。

円安のままであるとは、私には信じられない。円高に向かうと考えて、日本側は、耐えられる体制を今後準備したほうが良いと考える。

また、交渉にあたって、一律の自由貿易が日本にとって正しい選択でもない。世界は国境で分けられて国民と政府があり、理想とする社会が異なるのだから、関税で保護する業種が出てきて当然である。

また、他産業を犠牲にして、自動車産業をアメリカの関税政策から守ることができれば良いという交渉もおかしい。マスメディアはどうして自動車産業ばかりえこひいきするのか。許せない。


病人になって気づいたこと

2025-04-16 15:22:51 | こころ

この歳になって、ガンになって気づいたのは、世の中には病人がいっぱいいるということである。

近所の大学病院に入院して気づいたのは、いつも病床がいっぱいであることだ。手術の後、みんなせきたてられるように退院となる。

私は退院後おしっこがでなくなって近所のクリニックに通ったがそこはもっと混んでいていた。忙しい中を診療してくれて本当にありがたいと思った。町医者も大変なのだ。

電車の駅では歩き方の変な人が目につく。どこか痛くてやっと歩いているのだろう。

診療や処方箋に保険が効くということはとてもありがたい。高額医療費制度も本当に助かった。ガンは手術したからと言ってスパッと治ると限らない。年寄りの場合はゆっくりと進行して重くなる。家庭の医学書は、病人を傷つけないよう明るく書いているが、実際はそうでない。

アメリカではオバマ元大統領が導入した国民皆保険制度に対し、トランプ政権が攻撃しているようだ。

アメリカの歴史書を見ると、ルーズヴェルト元大統領のニューディール政策以降、アメリカも福祉の方向に向かい、企業は従業員に健康保険に掛けたようだ。ところが、1980年代以降、だんだん企業も従業員の健康保険の面倒をみなくなり、無保険の国民が急増し始めた。こういう背景があって、オバマ元大統領が国民皆保険制度を導入した。アメリカが福祉制度を維持できなくなったのは、製造業の衰退と軍事費の増大にあるという。

日本に国民皆保険制度や高額医療費制度があるということは、本当に素晴らしいことだ。ところが、日本の財務省は財政難を理由にその制度を切り詰めようとしている。人間は病気になるものだ。病人を助ける制度は、地味だが、社会制度として、防衛費よりもっと重要だと、私は考える。

アメリカの場合、グロバールサプライチェンや多国籍企業や国際金融を守るため、巨大な軍事力が必要なのだろうが、日本はそうではない。そうあってはならない。日本は今後とも福祉制度を維持すべきである。


トランプ大統領の関税政策はそんなに悪か、自由貿易が正義か

2025-04-13 17:37:28 | 経済と政治

テレビを見ていると、誰もが一方的にドナルド・トランプ大統領の悪口を言い、誰もが自由貿易支持者のように振る舞っている。こうなると、へそ曲がりの私は反論したくなる。

自由貿易の根拠は、国による分業によって生産が効率化される程度のことである。国際経済学の本によれば、これをデイヴィッド・リカードの「比較優位理論」と言うらしい。しかし、「生産の効率化」より、人々がそれで幸せになるかが、私たちにとって重要なのだ。人間は「生産拡大」ための奴隷ではない。

トランプは、安倍晋三と同じく、選挙で自分が支持されるかを非常に気にする。単なる民主主義の破壊者ではない。自分の権威が選挙結果から来ていることを自覚している。だから、彼は米国の東部から中西部にまたがるラストベルト(荒廃した工業地帯)の労働者たちの思いを気に留める。

「自由貿易」はラストベルトの労働者から仕事を奪い、住み慣れた彼らの町を荒れ果てるままにしている。

米国は、貿易収支のみならず経済収支が、この30年、赤字なのである。今年の3月20日の米商務省が発表によれば、2024年の経常収支は1兆1336億2100万ドルの赤字で、赤字幅は前年から25.2%拡大した。これにトランプが責任があるのではない。これまでの民主党政権や共和党政権がラストベルトの労働者たちを見捨ててきたのだ。

米国が貿易で赤字を垂れ流しているのに、ドルが値崩れしていないのは、米国にお金が流れているからだ。アメリカの金融企業が世界最強だからだ。彼らは金融資本主義の担い手だと称している。

アメリカの会社の製品が日本国内にあふれている。しかし、アメリカ国内で生産しているのではない。これがグロバールサプライチェーンなのだ。これが自由貿易の実態なのだ。多国籍企業は、利益を一番税の安い国に留め置き、米国に利益を還元しない。

自由貿易という形で、企業は国境を越えてきた。米国政府は軍事力でこれらの企業を守ってきた。しかし、米国政府は、これらの多国籍企業や金融企業の強欲を抑え込むことはできなかった。抑え込もうともしなかった。

一部の人々だけが潤っているのが米国の実態なのだ。見捨てられた多数の人々がいるのだ。

トランプの関税政策がこれらの問題を解決できるとは私も思わない。しかし、少なくともトランプは米国の金融企業や多国籍企業を慌てさせている。


宇野重規の朝日新聞『論壇時評』最終回

2025-04-12 11:35:25 | 国際政治

宇野重規は、自分の願いを押し殺して客観性を装う癖があるので、『西洋政治思想史』(有斐閣アルマ)はどこか詰まらない。

そんな宇野が朝日新聞に書いてきた『論壇時評』も総花的で、読んでいて不完全燃焼の思いに陥る。

ところが、きょう気づいたのだが、私が入院中に、宇野の『論壇時評』に最終回を迎え、彼が自分の思いを隠さず書きまくっていた。

まず、彼はドナルド・トランプに怒っている。彼は書く。

「エリート意識と歪んだ被害者意識をもつ国家の破壊者たちが国家のトップに居座る矛盾は、世界の未来にどのような影を落とすのだろうか。」

そして日本政府に意見を申す。

「トランプ氏との「取引」は何も保証しない以上、日本は、お目こぼしに甘い期待を抱かず、米国不在でもルールの支配に基づく自由貿易体制の維持・発展に努めるべきであろう。」

「現在の日本はトランプ氏の機嫌を損ねることを極力回避し、ダメージを軽減することに汲々とするばかりである。今こそ東アジアの安定や社会保障を考えるために、予測可能性とレジリエンスを高める国内社会の改革を相互に進める必要がある。」

そして、日本の国内問題にも触れた後、次のように書く。

「他者と折り合えるルールを根気強く探し続け、新たなルールをづくりの時代を目指したい。」

宇野の本音がようやく聞こえた。

論壇というものがありえるなら、自分の野心や見栄のために意見を戦わせるのではなく、より良い世界の実現のために本当に必要だと思うことを述べ、議論の中で、なすべきことの合意を作っていくべきだ、と私は考える。


トランプ大統領の「相互関税」発動でかすんだ韓国大統領罷免のニュース

2025-04-08 21:25:37 | 国際政治

日本のメディアはトランプ大統領の「相互関税」発動で大騒ぎをしており、いまのところ4月4日に韓国憲法裁判所がユン・ソンニョル(尹錫悦)の大統領罷免のニュースがかすんでいる。私には、韓国のこの間の事態は民主主義とは何かを問う大きな事件に思える。

トランプ大統領の「相互関税」発動については、彼の言い分にも一理ある。彼の行なったことは、全世界に影響が及ぶが、民主主義の範囲を超えていない。まず、アメリカ国民がトランプの関税政策を評価し対応すべき問題である。アメリカの経営者が海外に投資し生産現場を移したことに、貿易の不均衡の根本原因があるように思える。

大統領罷免に至った一連の事態をまとめてみる。

2024年12月3日、ユン韓国大統領は午後10時20分過ぎに緊急のテレビ演説の中で「非常戒厳」を宣言した。このとき、私は心から驚いた。

非常戒厳の理由として韓国の主要野党の「共に民主党」が北朝鮮に追従して「反国家活動」を行っているからとユンは主張した。韓国国会をユンの軍隊が囲んだが、非常戒厳令の解除を要求する決議を出席議員190人の全会一致で採択したため、憲法の規定に従い、結局、ユンは翌日の午前5時過ぎに戒厳令を解除せざるを得なくなった。

戒厳令解除を国会が要求し、大統領が受け入れるというのにも驚いた。

同じ月の14日にはユンの弾劾訴追案が国会で可決された。弾劾訴追に基づき、憲法裁判所が弾劾に値するかどうかが審議し、今年の4月4日に弾劾が認められ、ユンの大統領罷免が正式に決定した。国会決議を裁判所が憲法にそっているか審議するという手続きがあることにも驚いた。

この一連の出来事は、韓国に民主主義が根付いていたと考えるべきなのだろうか。私は韓国の世情にうといので、自信をもって答えられない。しかし、強権発動に対抗できる手続きが韓国にあること、大統領が強権を振る舞うことに反対する若者が多いということは間違いないだろう。

本件は親日政権が野党に顚覆されたというような視点で議論すべきでない。

[蛇足]

カール・シュミットの『政治神学』「主権者とは、例外状況に関してEnschheidung(決定)を下す者をいう」言葉で始まるという。ユン韓国大統領は主権者だったのであろうか。それとも、シュミットの言葉が的を得ていない曖昧模糊としたものなのだろうか。憲法裁判所の判断は国会が主権者だとも解釈できる。

蔭山宏の『カール・シュミット』(中公新書)を読んでも、シュミットのどこが鋭いのかわからない。言葉に酔っているのではないか、と私はシュミットを疑う。