猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

トランプの勝利にアメリカの2大政党制の欠陥をみる、日本国民で良かった

2024-11-07 23:51:30 | 国際政治

今回のアメリカ大統領選を見ていて、自分がアメリカ国民でなくて本当に良かったと思う。アメリカの政治制度の貧困さをまざまざと見た。アメリカを見習うのは終わりにしよう。

第1に、アメリカは大統領選や議員選挙に有権者登録制度を導入している。州あるいは地方政府に、投票することを事前に登録しないと、投票できない。有権者登録率は7割前後である。有権者登録制度を通じてマイノリティの投票を抑制している。

第2に、予備選挙制度である。州政府の実施する予備選挙制度で各政党の大統領選や連邦議員の候補者を決定する。

第3に、大統領選は州単位で選ばれる代議員による間接選挙である。しかも、ほとんどの州では総取り方式である。1票でも多い政党がすべての代議員を取るのである。今回、トランプが50.9%の票をとり、ハリスが47.6%の票をとったが、代議員はトランプが295代議員をとり、ハリスが226代議員をとった。

第4に選挙にどれだけお金を使おうが問題にされない。お金をかけて作られた扇動的なテレビ広告やネット広告がどんどん流れる。個人献金の額にも制限がない。今回、イーロン・マスクがトランプ陣営に少なくとも1億1900万ドルの献金を行った。それだけでなく、マスクは選挙期間中、自身が設立した政治活動委員会「アメリカPAC」が掲げる請願書に署名した激戦州の有権者を対象に「毎日誰か1人に100万ドルを配る」とした。

これらが、総じて2大政党を有利にしている。

ウソをつきまくるトランプも嫌だが、ガザやレバノンに侵攻しているイスラエルに軍事援助を行うハリスも嫌だとすると選択先がなくなる。ハリスは民主主義の危機という「正義」を旗印にしたが、すざましいインフレ下での経済的困窮の解消を約束しなかった。

自分を代弁してくれる候補者を見出すためには、2大政党のいずれかに予備選に参加して、自分に近い意見を述べる候補者を勝たすしかない。本選の前に夢破れるかもしれない。

振り返って、日本やヨーロッパでの選挙では、政党の多数の選択肢がある。

今回の衆院選で、国民民主党が7議席から28議席になっただけで大騒ぎだ。過半数は233議席なのにだ。国民民主党の「手取りを増やす」という主張は、日本の政治にこれから反映され可能性が高い。日本の政治のほうがアメリカより健全である。


イスラエル最高裁がユダヤ教超正統派の徴兵を政府に命令

2024-10-15 21:33:55 | 国際政治

2日前に、朝日新聞は「ユダヤ教の超正統派 徴兵を」「イスラエル最高裁、政府に命令」「兵役免除に批判 教徒は反発」という記事を載せた。

この最高裁判決は4カ月近く前の6月25日に出たものである。なぜ今頃になって、朝日新聞がわざわざこれを報道するのか、私は不思議に思った。

ユダヤ教の超正統派は徴兵に反対していて、いまもなお、ガラント国防相の「軍は今後1年で計4,800人の超正統派を徴兵する方針」が実行されていないのか、あるいは、超正統派の誰も徴兵に応じないのか、これらが記事からはわかりにくい。

記事によれば、現在約36万人が戦争に動員されており、超正統派はイスラエルの人口の約14%を占める。国防相方針の数字4,800人は、ずいぶん控え目な数字で、応分な負担ではない。

しかし、私は徴兵を拒否すること自体は悪いことではないと思う。人を殺してはならないという理由で徴兵を拒否することは正当だと思う。

過去の事例では、ベトナム戦争のとき、アメリカは徴兵制であったが、政府は、キリスト教の一派アーミッシュの良心的徴兵拒否を認めた。

問題なのは、ユダヤ教超正統派は、現在のイスラエルが行っている戦争、ガザ侵攻、レバノン侵攻に反対しているのか、賛成しているのか、朝日新聞の記事からは判然としないことだ。

戦争に賛成していて、自分が戦争に行きたくないというのでは、私は身勝手だと思う。イスラエルの建国のとき以来、超正統派は戒律の学習に忙しいからという理由で、徴兵免除になっていたというから、身勝手の可能性がある。超正統派は選挙で積極的に投票し、超正統派を母体とする2つの政党がイスラエルの戦時内閣に参加しているから、身勝手の可能性が高い。

朝日新聞の記事は、「男性の多くは卒業後も仕事せずに宗教を学ぶ。貧困世帯も多く、政府から補助金が支給されている」と超正統派を非難する。記事では、これ以上の詳しい説明がない。

私が昔読んだ知識では、超正統派では、男は仕事をせずに、戒律の学習や研究に一生をささげ、女が生活を支えるという。記事は、男が働かないので貧困世帯となり、生活保護を受けているという意味ではないかと私は思う。また、イスラエルでは、子どもの数が4人以上だと、子ども手当がでる。イスラエルの出生率は3.0人だが、超正統派では6.4人である。さらに、イェシヴァといってユダヤ教の戒律の学習・研究に引きこもっていれば、結婚しようが子供ができようが、政府が奨学金として最低限の生活の面倒をみる。

不公平だという一般のイスラエル人の気持ちもわかる。

アーミッシュの場合、彼らは政府に税金を納めるが、政府の補助金を拒否する。男も女も働くことに感謝と喜びを見いだし、欲望に振り回されず、静かに生きる。私はアーミッシュの生き方が好きである。ユダヤ教超正統派とずいぶん違う。

反ユダヤ主義からくるフェイクニュースも多い現在、朝日新聞には丁寧な説明と裏付けのある記事を望む。

[補遺2024.10.22]

朝日新聞の記事は、ユダヤ教超正統派がガザ侵攻やレバノン侵攻やヨルダン川西岸入植を促していると述べているのでもないようだ。芝生瑞和の『パレスチナ』(文芸春秋新書)によれば、超正統派は、戒律を守り、ヤハウェーの神を畏れよと言っているのであって、パレスチナ人の排除を主張していない。むしろ、超正統派は、領土拡大を狙うシオニズムを批判している。そういうことを考えると、朝日新聞の記事の意図はわからなくなる。

[補遺2024.11.7]

アメリカ大統領選でトランプの勝利が確実になると、イスラエルのネタニヤフ首相はガラント国防相を解任した。ユダヤ教の超正統派の徴兵を主張していたのがガラントであり、反対していたのがネタニヤフだった。徴兵は実施されていない。戦争継続のため、ユダヤ教の超正統派の支持をネタニヤフが必要としていたのである。


カマラ・ハリスの大統領候補受託演説への違和感

2024-08-26 02:34:36 | 国際政治

2日前、私は、テレビ中継で民主党大会最終日のカマラ・ハリスの大統領候補受託演説(Acceptance Speech)を聞いた。会場は非常に盛り上がっていたが、彼女のスピーチに何か引っかかるものがあった。

なんだろう。

翌日、ネット上にスピーチ原稿をみつけ、YouTubeの中継録画のスピーチを原稿を見ながら聞き直した。彼女は自信に満ちて話している。自分の苦難に満ちた生い立ちから話している。彼女は人権擁護の運動の中で育ったと言っている。アメリカの国民が豊かな生活をおくれるようにしたいと言っている。一見よくできている構成のようだった。

しかし、つぎのフレーズにぶつかると、彼女は昔の民主党の主張と何も変わっていない、という思いになる。

Because we know a strong middle class has always been critical to America’s success.

(なぜなら、強力な中産階級がアメリカの成功には常に不可欠であったことを私たちは知っているからです)

さらに彼女は私にはわからないことを言っている。

That’s why we will create what I call an opportunity economy. An opportunity economy where everyone has a chance to compete and a chance to succeed.

“opportunity economy”は“economic opportunity”とは違うようだ。「誰もが競争するチャンスと成功するチャンスを持つ」opportunity economyなのだ。

これでは、自分の生い立ちの話は、自分が成功者と自慢していることになる。弱者の味方になると言ってることにならない。世の中にはいろんな事情で努力できない人たちもいるのだ。

中間層を増やすではなく、貧困で苦しんでいる人々をなくすでしょう。競争と中間層増加をセットでは、経済格差の肯定になってしまう。

ガザでのイスラエルの暴力に対しても、プーチンのウクライナの侵略に対しても、ハリスは、どうしたいのか、わからない。誤魔化しているように見える。

現在、イスラエルは、昨年の10月のハマス襲撃に復讐しているのではない。ハマス襲撃でのイスラエル死者は約千人である。現在、イスラエル軍によるガザでの死者は4万人以上である。この不均衡は、ナチスがかって占領地域でやったドイツ人襲撃の復讐を思い起こさせる。これはイスラエルのネタニヤフ政権がハマス全員を殺すためにはガザの住人がいくら犠牲になってもかまわないと考えているからだ。

ウクラナイ侵攻でも、ハリスはロシアの侵攻の5日前にウクライナのゼレンスキー大統領に警告したと受託演説で自慢している。逆だろう。プーチンに警告して思いとどまらせるべきだろう。アメリカ人をウクライナから撤収させるべきでなかった。そうすれば侵攻を防ぎたと私は考える。

こんなことで、ハリスはトランプに勝てるのだろうか。ハリスは左派と思われることを避けるために、右派路線を意識的に主張している。これでは、真面目な若者は、ハリスについていくことに抵抗感をもつだろう。


「ドナルド・トランプが銃撃された」の気になるBBC報道

2024-07-15 22:09:16 | 国際政治

前米大統領ドナルド・トランプは強運の持ち主である。アメリカ時間7月13日午後6時15分(日本時間14日午前7時15分)、彼は東部ペンシルベニア州で演説中に銃撃を受けたが、弾丸は右耳を貫いただけで、脳に損傷はなかった。これは奇跡である。

BBC報道によれば、銃撃した実行犯は、トランプの背後にいたシークレットサービスの狙撃班によって、その場で射殺された。

死亡した実行犯は、身分証など身元が分かるものを持っていなかったため、連邦捜査局(FBI)はDNAや顔認識技術を使って、身元を特定した。

私は、演説するトランプの背後の高台に狙撃手が潜んで、会場全体を見渡し、不審な行動をするものがあれば、その場でただちに射殺する体制をシークレットサービスが取っているとは、知らなかった。

銃撃の数分前に、ライフルを手にした実行犯が演壇から130メートル離れた納屋の上を這っているの目撃した人がいたという。目撃者は警備側に知らせようとしたが、これに警備側の狙撃手は気づかなかったようである。間の抜けた話である。

実行犯の身元特定に、FBIが「DNAや顔認識技術」を使ったというのも、私にとって、驚きである。最新技術であるというだけでなく、FBIに膨大なDNAや顔のデータベースがあるということである。日本政府も顔認証を国民健康保険の利用に採用したことに、監視社会の世界的進行を私は思う。

BBC報道によれば、FBIは犯行の動機解明に、ソーシャルメディアなどの投稿や最近の通話記録を調べているが、動機や計画などをうかがわせる内容は今のところ見当たらないという。政府による事前の個人情報の収集は、通信の機密に反しないということなのだろう。FBIは、きっと大量の個人情報をためているのだろう。

(BBC報道「トランプ前米大統領の暗殺未遂、容疑者はどういう人物か」)


日本政府とメディアを通じたアメリカのイメージに騙されるな、『自発的対米従属』

2023-05-28 23:30:04 | 国際政治

土日に猿田佐世の『自発的対米従属』(角川新書)を読む。松田武の『自発的隷従の日米関係史 日米安保と戦後』(岩波書店)は、「自発的対米隷属」を強いてきたアメリカ政府の狡猾さに焦点があたっているのに対し、猿田は「自発的対米従属」する日本政府の狡猾さを明るみにする。日本の支配層は、アメリカの外圧を演出して、自分たちの都合を日本の国民に押しつけている、と彼女は告発する。

猿田は本書を、ドナルド・トランプが2016年11月にアメリカ合衆国の大統領選に勝利した半年後に出版した。アメリカ・ファーストを主張するトランプが大統領になったことに慌てふためく日本の政界、メディアに対して、対米関係を見直す好機だと主張する。

これまでの対米関係は、日本の支配層とアメリカの少数の知日派によって作られてきた。猿田によると、「実際に影響力を有する知日派の数は、5~30人程度」という。

日本支配層は、日本国内に政府の方針を徹底させるに、アメリカの少数の知日派に働きかけ、発言させることで、「アメリカ」が支持しているかのように、見せてきたという。これを猿田は「ワシントン拡声器」と呼ぶ。

知日派とは日本通ということであって、別に親日派ではない。日本政府はこの少数の知日派に情報とお金を渡し、互いにウインウインの関係を築いてきた。

この知日派は、アメリカの保守派であり、ほとんどは共和党系である。トランプ出現の日本側のろうばいは、このウインウインの関係を飛び越えて、在日米軍の引き上げを言うなど、トランプの言動の予測不可能性にあるという。

猿田はアメリカの政界・経済界・メディアのほとんどが日本に関心をもっていないと言う。

私の狭い経験でも、日本のバブルが崩壊した1990年以降、アメリカ人は日本に関心をもたなくなった。アメリカはふたたび日本に勝ったからである。

アメリカの経済界の関心は、アジアでは中国になった。中国は10億人を超える人口をかかえており、その高い経済成長率とともに、アメリカの経済界は、未来の巨大消費市場に期待を膨らませていた。中国の敵視は、米中の経済摩擦が高まったこの10年である。特に、トランプ、バイデンが、根拠なく、中国への憎悪を駆り立てている。

猿田は、日米関係を、日本政府とアメリカの少数の知日派を通してでなく、幅広い多様な層からなる関係にもっていくべきだと言う。私もその通りだと思う。アメリカには多様な意見があるのに、保守派の知日派を相手にしていては、日本の選択肢が狭まる。

アメリカ人の多数は、共和党を含め、日本人のために血を流そうとは思わない。朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン戦争、イラク戦争と経験したアメリカ人が、戦争で自分や自分の子どもが死んだり 障害者になったり したいと思わない。これは、ロシアの侵攻でウクライナ人が苦しんでいるのに、アメリカが参戦しないことに通じる。アメリカにはウクラナイからの移民が多数いるのにウクライナ本国が見捨てられている。

このことから、アメリカ政府が中国を敵視しても、直接の戦争にならず、台湾、朝鮮半島、沖縄、日本本土の一部が戦場になるだけと想定される。日本が軍備を増強すればするほど、日本がアメリカのために最前線で戦うことをアメリカ政府は期待する。

冷静に考えれば、日本に米軍基地がある必要はない。特に、沖縄にアメリカの海兵隊が駐屯していることに何のメリットもない。日本が、社会福祉や教育の予算を削減してまて、軍事力を拡大する必要もない。それより、平和憲法のブランドで、中国とアメリカのあいだの戦いの機運を、未然に鎮める方向に走り回るべきである。アメリカだって、中国だって、軍備拡張競争の経済的負担に苦しみたくない。

ところが、岸田文雄は安倍晋三の敷いた路線をひたすら走っている。安倍は左翼憎しだけの男で、理想も哲学も展望も何もない。統一教会、日本会議を利用して、首相の座についただけである。

岸田政権の支持率が広島G7サミットで9%上がったという。

しかし、G7は、広島を舞台にした見世物であって、何かG7で世界が変わる方向性が打ち出されたわけではない。岸田を有頂天にした責任は日本のメディアにある。メディはG7、G7と持ち上げたが、その中身は初めからなにもなかった。

生成系AIに関しても、日本政府はそれによる経済効果を期待し、いっぽう、欧米の政府は、技術が悪用されないよう規制したいと考えていた。G7は、今後、また討議しましょうと、お茶を濁しただけである。イギリスのテレビ BBCは、広島G7のニュースを、ほとんど取り上げなかった。

外交を日本政府にまかしておけない。そのまえに、日本人は英語など外国語をせっかく習っているのだから、アメリカやヨーロッパで人びとは何を言っているのか、インタネットで知り、自分も意見を発信すべきではないか。