猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

斎藤元彦の知事選で再選をどう考えたよいのか、ネットが悪いのか

2024-11-19 22:18:13 | 政治時評

百条委員会にパワハラで調査中の、しかも県議会で不信任決議を受け辞職した斎藤元彦が11月17日の知事選で再選を果たした。19日の朝日新聞の見出しは「共感 うねり生んだ有権者」「ネット信頼感 斎藤氏を後押し」であった。私は問題の本質を何か見落としているのではと感じる。

「うねりを生んだ有権者」というが、投票率は55・65%であって、多くの人がそもそも投票場に行っていない。斎藤が得た票は有権者の24.96%にすぎない。

事実としては、自分たちの置かれている状況に不満を潜在的に抱えている人々の一部が、不信や偏見にもとづき、「改革に強い姿勢の斎藤がマスコミにいじめられている」「公務員らは甘えている」との扇動に動いたということである。

この現象に、現代の民主主義国家の問題がある。アメリカのトランプ現象や、イギリスでの反移民暴動に通じるものがある。古くは1931年にナチスが政権を握ったときにも似ている。選挙でナチスは投票の過半数の票を得ずに、政権の座に就いた。ハンナ・アーレントは、これを政治に無関心の人々と、政治家から見捨てられている人々がいるからと述べた。

アメリカの選挙制度は事前登録制で、大統領選では有権者の6割しか登録しない。多くの人が棄権している中で、大統領が決まるのである。バイデンがトランプに勝った2020年の大統領選では、トランプが初めて大統領になった2016年の選挙より多くの票を取ったのに、バイデンの票がそれをうわまったのである。このときは民主党支持のボランティアが事前登録するよう家々を訪問して歩いたからである。今回の結果は、ガザやウクライナに対するバイデンの曖昧な姿勢に不満なボランティアが動かなかったからである。

多くの人びとが政治に関心をもって参加することが大事である。一部の人が動くだけで政治が決まるのは、民主主義からすると危険なのだ。

今年のイギリスの反移民の暴動も、26都市に広がったが、結局は数万人程度の参加者である。これに対し、反移民暴動に抗議するデモが各都市で起きた。労働党政権はこの反移民暴動に対して、ルール違反を起こしたものを裁判所に訴えた。

今回の斎藤の県知事再選での問題も、ネットの功罪を論じるだけでなく、政治への関心の低さやネットでのルール違反の行動を取り上げるべきである。斎藤県知事が内部告発者を自分への中傷として行政処分したこと、こんどの選挙中にネットでコメンテーターや議員を脅迫した者がいたことに対して、民意だなんておかしなことを言わず、裁判所に訴えるべきである。有権者の24.96%の票で、問題行動があったことをチャラにすることではない。


衆院選躍進の国民民主党のキャッチフレーズ「手取りを増やす」への不安

2024-11-03 21:17:45 | 政治時評

今回の衆院選の勝利は国民民主党(国民)の躍進だ。前回の衆院選では立憲民主党(立憲)の獲得票のわりに獲得議席が少なすぎたから、立憲の議席増加は当然のことである。

朝日新聞の出口調査によると、国民と立憲を合わせると、80歳以上を除き、どの年齢層でも自民党の支持率をうわまった。

朝日新聞の出口調査で、もっとも驚くべきは、20代の比例投票先では、国民の支持がどの政党よりも大きくうわまっている。出口調査では、国民は26%で、自民の20%、立憲の15%、維新10%、れいわ10%である。

国民は、「手取りを増やす」以外、選挙で何も言わなかったのに、若者の支持を集めたのである。これは、都知事選で何も政策を述べなかった石丸伸二が若者の票を集めたのと似ている。じっさい、都知事選と同じ選挙参謀が国民の選挙を取り仕切った。

しかし、それだけとは言えない。「手取りを増やす」という国民のキャッチフレーズがお金が欲しいという若者の心をつかんだのである。

立憲の野田佳彦は、「政権交代」と「裏金スキャンダル」の一点張りで自民党を攻め、多くの人びとが経済的に困窮しているという事実を軽く見ていた。この点で国民の玉木雄一郎の選挙戦術をわたしは高く評価する。

一方で、「給料を上げろ」でなく「手取りを増やす」だったことには、わたしは不安を覚える。今回の衆院選の選挙公報では、国民は「減税」「社会保険料の軽減」で「手取りを増やす」と言っているからである。公報の「公費投入増による後期高齢者医療制度に関する現役世代の負担軽減」と「減税」とは矛盾しているのではないか。

一般的な減税でなく、立憲の泉健太が今回の代表選で言っていた、困窮層と富裕層や企業との税負担率の見返しを、国民は主張すべきでなかったのか。

「手取りを増やす」ために、福祉予算を削るのでは、オカシイ。防衛費増額(軍備拡大)に反対すべきではないか。国力に見合った防衛費で充分であると考える。

福祉は、単に生活困窮者を助けるだけでなく、J. ガルブレイスが言うように、不況のとき需要を底支えするのである。不況は需要が供給力を大きく下回ることで起きるので、福祉は不況をやわらげる効果がある。

さらに、3週間前に小熊英二が朝日新聞で言っていたように、福祉は雇用先を増やす。AIを含む大量生産技術の進展は、製造業における雇用を減らしていく。労働力の新しい吸収先として、政府が影響力を比較的持つ医療・福祉・教育に雇用をシフトしていく必要があると、小熊は言う。私自身はそれらに文化活動(芸術・音楽・演劇・研究など)も加えたい。

「手取りを増やす」だけの国民民主党に不安を感じ、これでは国政をまかすわけにはいかないと、わたしは思う。

[11月4日補遺]

きょうのTBS報道19:30を聞いていると、せっかくの国民民主党の提案「手取りを増やす」が、財源がないという理由だけで、税制体系全体の改定や税金の使い道につながらずに、国民民主党叩きになっている。これはフェアでない。

「103万円の壁撤廃」が国の財政不足を起こすなら、富裕層や大企業からもっと税金をとればよいのではないか。福祉にかける予算を削らず、膨張している防衛費を削れば良いのではないか。また、負担が大きいのは国税だけでなく、累進課税になっていない地方税の負担がとても重い。

番組のコメンテーターには、選挙で支持された「手取りを増やす」を良い方向に導くよう議論して欲しい。


自民党の衆院選の公約はあまりにも低レベル、立憲民主党の公約のほうがずっとマシ

2024-10-17 21:01:19 | 政治時評

今回の衆院選の自民党の公約はとてもレベルが低い。単に立憲民主党の公約に比べてだけではなく、岸田政権時の2021年の衆院選の公約にくらべてもレベルが低い。

今回の自民党の公約は

  1.  ルールを守る
  2.  暮らしを守る
  3.  国を守り、国民を守る
  4.  未来を守る
  5.  地方を守る
  6.  あらたな時代を切り開く

と「守る」の韻を踏んだ言葉遊びである。6番目の公約は韻を踏んでいないが、「国民とともに憲法改正を実現します」ということである。

岸田政権のときの衆院選公約は、

  1.  感染症から命と暮らしを守る。
  2. 「新しい資本主義」で分厚い中間層を再構築する。「全世代の安心感」が日本の活力に。
  3.  国の基本「農林水産業」を守り、成長産業に。
  4.  日本列島の隅々まで、活発な経済活動が行き渡る国へ。
  5.  経済安全保障を強化する。
  6. 「毅然とした日本外交の展開」と「国防力」の強化で、日本を守る。
  7. 「教育」は国家の基本。人材力の強化、安全で安心な国、健康で豊かな地域社会を目指す。
  8.  日本国憲法の改正を目指す。

と、何をやりたいかが、はっきり打ち出されている。

この違いは、石破茂は岸田文雄と比べて、日本をどのようにしていくかの目標が設定できていないからと考える。

立憲民主党の衆院選の公約は、今回の自民党の公約と比べ、それが好ましい目標か否かを別にして、目標がはっきりしている。目標がはっきりしていれば、それが良い目標か否かがをみんなが議論できる。何を言っているか、わからないものは、公約と言えない。「口約」である。

立憲民主党の公約は、

  1.  政治の信頼回復
  2.  分厚い中間層の復活、家計・賃上げ支援
  3.  安定した外交・安全保障戦略
  4.  超高齢社会に対応した確かな年金・医療・介護・福祉
  5.  未来を育む子育て・教育
  6.  地方と農林水産業の再興
  7.  多様性を認め合える当たり前の社会

である。それぞれに3、4個のブレークダウンがついているので、個々の公約に賛成か反対かの自分の意見を表明できる。公約を議論の対象にできる。

例えば、2番目の「分厚い中間層の復活、家計・賃上げ支援」は、つぎのブレークダウンを設定している。

  • 最低賃金を1500円以上とし、適切な価格転嫁等により、労働者の賃金の底上げを実現します。
  • リスキリング、リカレント教育など、徹底した「人への投資」で賃上げを支援します。
  • 希望すれば正規雇用で働けるよう 契約社員、派遣労働の抜本改革などを実現します。
  • 成長の柱となるグリーン、ライフ、ローカル、デジタル(GLLD)に重点的に投資します。

私は、政府が経済活動に直接投資するということには反対である。政府は単に成長分野を示唆すれば良くて、投資は企業の仕事である。残りの3つには納得できる。

ただ、このブレークダウンを読むと、これらは「分厚い中間層の復活」とどんな関係があるのか、私には疑問である。

面白いことに、岸田政権も立憲民主党も「分厚い中間層」と言っている。この「中間層」とは何かが問題である。多くの識者は、「中間層」で「経済的」問題を指しているが、私はそんなことではないと考える。

フロムは『自由からの逃走』で1920年代のドイツの「中間層の没落」を論じている。この「中間層」は自営業者のことである。これが、1930年代のナチスの台頭を招いたと論じている。

日本でも、現在、自作農、小売業、町工場が、やっていけなくなっている。町ではシャッター街が生じている。石破茂を含む政治家や評論家は「付加価値」の高い事業を行えば良いというが、そんな問題でないと私は考える。いつの世も「付加価値」の高い産業分野は限られる。資本主義の本当の問題は、雇う、雇われるが、支配する、支配される構造を生むことである。

つぎのブログで「中間層の没落」の問題を論じたい。


10月7日代表質問での野田佳彦の問題発言

2024-10-08 11:32:42 | 政治時評

けさ10月8日のAERAdot.で、古賀茂明が「高市首相・立憲野田」コンビで超右翼政治の恐怖と警告していた。私も、立憲民主党の代表になぜ「終わった右翼政治家の野田佳彦」を選んだのか、残念でたまらない。泉健太で良かった。

10月4日の石破茂の所信表明を受けての、きのうの野田の代表質問を聴いて、唖然とすることが少なからずあった。ここで野田の問題発言の1つをそのまま紹介する。

「日本国憲法第7条では、天皇は内閣の助言と承認により国民のために国事行為を行うと定めています。ところが総理は、就任前の9月30日記者会見で、解散、総選挙の日程を確定的に明らかにいたしました。内閣総理大臣就任前の一国会議員であった者が、こともあろうに、憲法第7条に定められた衆議院の解散、総選挙の公示といった天皇の国事行為に踏み込んだ発言をしたことは、私は断じて許せないと思っています。」

衆議院の解散を党利党略で行うことは厳しく非難しなければならない。国民に信を問うのは、与党と野党との議論が膠着した場合、あるいは、与党の少なからずの議員が内閣の改革を妨害している場合にのみ、許されることである。

今回は、補正予算委員会も開かれず、与野党の議論が熟さないなかで、裏金問題の議員も公認する方針で衆議院解散・総選挙の日程を早めたことが問題なのである。

それが突然、野田は、「天皇」を持ち出し、「内閣総理大臣就任前の一国会議員であった者が天皇の国事行為に踏み込んだ発言をした」と非難した。一国会議員が天皇に失礼なことをしたと非難したことになる。野田は「天皇」を政争に利用しているのではないか。ここで、「天皇」を持ち出す必要はない。野田の右翼性が思わず出た瞬間である。

野田は代表質問で日米同盟を称賛していたが、国際政治上の問題は、アメリカ政府が過剰な攻撃を行うイスラエル政府を抑制できていないことである。ガザやレバノンへのイスラエルの無差別攻撃にもかかわらず、自分の選挙への影響を恐れて、アメリカ政府も議会もイスラエルへの軍事援助を続けている。ここは、アメリカにもの言う日本でなければならないところだ。

同じように、政権を狙う野党であるより、良心の野党であることが、大事である。古賀が心配するように、与野党挙げて軍拡に走るのではなく、野党は、良心に基づき、日本が道を誤らないよう、与党をたしなめるべきである。


新総裁の石破茂はバカではないか、敵が誰かわかっていない

2024-10-01 11:27:09 | 政治時評

9月30日の石破茂新総裁と自民党新役員の記者会見を見てびっくりした。石破はバカではないか。政権が持たないのではないか。敵が誰かがわかっていない。

半分ボケているような森山裕(79)が幹事長、鈴木俊一(71)が総務会長、重病人のような菅義偉(75)が副総裁、こんな執行部で、石破は何ができるのだろうか。

おまけに、石破は記者会見の最初にでてきただけで、新役員の会見では引っ込んで同席していない。自分の指名した役員を必死でサポートする姿勢を見せるべきではないか。

石破の敵は立憲の野田佳彦ではない。自民党の高市早苗や安倍派である。統一教会をバックにする萩生田紘一である。裏金問題で離党した世耕弘成である。経団連会長の十倉雅和である。

原発の推進派の十倉は2期連続で大赤字を出している住友化学の会長でもある。石破の公約の「金融資産への課税」に反対しているのは戸倉である。また、財界は円安、インフレを望んでいる。

高市早苗は総務会長の打診を断ったという。コバホークの小林鷹之も入閣の打診を断ったという。喧嘩を売っているわけだ。

安倍晋三が産み落とした糞まみれの腐敗の構造がまだ一掃されていないのだ。

よれよれの老人役員で、これらの敵と戦えない。小泉進次郎を幹事長にして、副幹事長に経験豊かな老議員を配置すべきではないか。

さらに驚くことに、まだ、石破が国会で新首相に選任されていないのに、新閣僚のメンバーが漏れてきている。驚くのは、総裁選候補の河野太郎、茂木敏充、上川陽子が新閣僚メンバーに入っていないことだ。

外交の経験が少ない石破は決戦で自分に投票してくれた上川を外相に留任させるほうが安全であった。

また、文部科学省は統一教会の宗教法人解散問題を扱っているが、まだ裁判が結審していない。統一教会をいかに抑え込むかが、萩生田をはじめとする安倍派との戦いでキーとなる。河野太郎を文部科学相にもってくるのも一つの策だろう。

とにかく、石破は本当の敵が誰だかわかっていないから、公約は空手形になるだろう。

[補足]10月1日の新首相としての記者会見も精神論ばかりで、具体的に何をするのか、わからない会見になっている。石破は、総裁選にでたときは、もっと具体的なことを言っていたのに、抽象的な何がなんだかわからない事を言って、記者会見になっていない。

石破は、金融資産に課税することは引っ込めたのだろうか。これまでうまくいかなかった地方創生はどうやって行うのか。10月9日解散で自然災害に苦しむ能登の支援が遅れるのではないか。

総裁選に立候補した段階で、米国と新しい日米地位協定を結ぶと言っていたが、そのことについて問われても、日米地位協定の何が問題のか、これまでなぜ改定できなかったのか、どうやって米国政府を説得するのか、に答えることができない。石破は、米国に自衛隊の訓練基地を作るの一点張りである。

石破が議論できない人なのか、それとも、自民党内の支持基盤が弱いので何も発言できない状態なのか、そのどちらかである。