緊急事態宣言が解除され、図書館は5月27日から開館となった。まだ閲覧も予約もできないが、緊急事態宣言前に予約した本が受け取れる。早速、菊池洋の『ノーベル賞の生命科学入門 RNAが拓く新世界』(講談社)を受け取ってきた。
新型コロナがRNAウイルスだと聞いて、RNAについて、もっと知りたいと思ったからだ。
読み始めて、自分がRNAについてまったく無知だったと気づいた。私が知っていたのは、DNAの遺伝子コードがRNAのコードに写され、RNAのコードに従って、アミノ酸がつながれてタンパクが合成されるという「セントラルドグマ」までだ。
現在、PCR検査では、鼻の奥からとった検体に試薬をいれて、PCR機器に入れて、RNAが増幅すれば陽性と判定とするという。遺伝子研究にたずさわたった昔の物理学科の同窓生に聞くと、RNAの塩基配列がわかれば、その塩基配列のRNAを増幅する試薬を合成できるのだという。論文が出ているという。それ以上は聞いても、私にはわからなかった。
今回、借りてきた菊池洋の本には、試薬の合成の仕方までは書いてない。
菊池洋の本には、自然界ではRNAからDNAが作成される流れもあるとか、真核生物のDNAには遺伝子コードの部分(エキソン)だけでなく、アミノ酸の配列をコードしていないイントロンという部分があるが、そのまま転写され、スプライシングする(分断される)とき、イントロンが酵素の役割をし、リボザイムといわれているとか、そのイントロンの部分が遺伝子発現をコントロールしているとか、知らなかったことばかりである。抗体ができるのも、ウイルスのRNAの切片が、生体物質と特異的に結合することを利用してであるという。
新型コロナのSARS-CoV-2ウイルスは、ずいぶん複雑なことをして、人間の細胞に侵入し、繁殖しているのだろう。
メディアも、1.5メートル離れれば良いのか,それとも 2メートル離れるのが良いのかとか、エアコンは換気されないから1時間おきに窓を開けて換気すべきとか、マスクをすると熱中症になるから注意をしろとか、気持ちが重くなる話ばかりを報道するのではなく、RNAはどんなものか、科学的好奇心を刺激する番組や特集を組んでほしいと思う。
人類はウイルスと共存するのだという教訓的な話だけでなく、自然の奥深さにひたる夢のある話も聞きたいのだ。
とにかく、私は、RNAについて何も知らなかった。