猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

カウンセラー(臨床心理士)と精神科医

2023-06-18 00:25:09 | こころ

きょうは信田さよ子の『カウンセラーは何を見ているか』(医学書院)を読む。メッセージ性のない、まとまりの欠ける本だが、共感できるところも多い。

カウンセラーと精神科医とは異なった専門職であり、カウンセラーは、病人でなく悩んでいる人の相談にのる人である。精神科医は病気で苦しんでいる人を治療する人である。

精神科医の監督のもとにカウンセラーが働くというのは、信田が言うように、本来オカシイ。別の仕事である。もちろん、悩んでいるだけなのか、病気なのか、その境界はあいまいだが、いっぽうで、多くの場合は明らかに異なる。にもかかわらず、精神科医は国の容認のもと、カウンセラーの領分を大幅に犯し、5分から10分の診察で患者に薬を出している。

20年以上も前、信田は二人の精神科医の経営するカウンセリング機関の所長をしていたが、50歳を迎える直前に、8人のスタッフとともに、解雇になった。意図せず、独立して、精神科医の支配する医療から脱出せざるをえなくなった。

悩んでいる人を病気だとして病院に閉じこめて治療するというのは、明らかに精神科医の傲慢である。世界の精神科医療は、病人を社会から隔離するという国の方針に支えられて、かって、人権無視の限りを尽くした。今でも、日本にはその名残が一部に残っていて、精神科病院で問題が散発している。

信田は私の1歳上である。彼女が臨床心理士として精神科病院に務めたのは、精神科医療の人権無視が社会的に問題になり出した、ちょうど、そのときである。彼女の務めた病院は、その2年前に入院患者に対する不当な使役が問題とされ、東京都衛生局から監査のはいった病院である。「病院の隣には、かっての経営者である医師一族の豪邸が建っており、入り口から見事な日本庭園をのぞくことができた」という。

私の子ども時代も、精神科病院の経営者は私の育った田舎町一番の金持ちだった。精神科医病院の人権無視は、国にも責任の一端がある。

さて、1995年に信田が独立したときの一番の問題はカネであった。精神科医のもとのカウンセリングには保険が効く。いっぽう、精神科医の支配を離れると保険は効かない。したがって、高価なカウンセリング料を払ってくれるお客を集めないといけない。そのため、カウンセリングの合間に、本を執筆して出版する、依頼があればどんな講演でも引き受けるなどして猛烈に働いたという。そういうことを知ると、時間のない彼女の本が、まとまりがないのも仕方がない、と思う。まとまりがない分、加工されていない真実がある。

信田はワンダウンして緊張感をもってクライエントと対等に接し、命令するのではなく、自分で解決策を選択したのだと思わせるようにするという。

外資系のIT会社に勤めていたとき、私は個室をもっていたので、私のもとに来る若い子たちの悩みの相談にのっていた。私の「相談にのる」ということは、何に悩んでいるのかを共同作業で明らかにして、解決策を自分で見つけられるようにすることだった。

現在、私は、NPOで、本人や親が悩んでいる、上は37歳から下は7歳の子までの子どもたちを相手に、信田と同じく、緊張をもって対等に接している。

不登校の子や発達障害の子などを相手にしたNPOの経営も難しく、自治体の補助にある放課後デーサビスのおかげでようやく成り立っている。自治体の補助のないと、高額のサービス料金を払える子しか救いの手を差し伸べられない。もちろん、高額といっても、カウンセリング料や個別指導学習塾の料金より安いのだが。

信田は、本書で、大学の教授や医療関係者の作ったカウンセリングの常識に異議をいろいろと申したている。私の経験と照らし合わせて、うなづけるところが多い。


自社株買いによる株価の急騰に浮かれている場合ではない

2023-06-14 02:46:44 | 経済と政治

6月11日(日)の朝日新聞に、1面トップに『自社株買い 過去最高 先月3.2兆円 東証通知受け』、3面トップに『利益分配 経営者に重責 自社株買い急増、株主還元偏重』という見出しの記事が載った。

この記事は、今年の4月から始まった株価の急騰の大きな要因が、3月の東京証券取引所(東証)が上場企業への「株価を意識した経営」を要請したこととするものである。

一昨年の後半から日本は株価低迷に突入していた。安倍政権での株の高値維持は、政府系金融機関が市場の株を買うことで実現していたが、2,3年前から、それも効果がなくなったのである。株価低迷は今年の3月まで続き、突然 4月から異常な急騰をして、「日経平均株価をバブル後の最高値圏まで押し上げ」た。

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「自社株買い」をはじめて知ったのは、私がまだ外資系会社に勤めていたときである。

営業部門に属する幹部社員のXが自社株買いのサイクルを知って株の売り買いをすると儲かると私に自慢気に話しした。

当時、私の勤める外資系会社の本社は長期低落の流れにあり、金融機関から派遣されたコンサルタントが経営に参加していた。金融機関は会社の株を大量に保有していたので、株価が下がると保有資産が減ることになり、金融機関の信用不安を引き起こすことになりかねない。それで株価を維持するために、会社に自社株を買わすのである。

その幹部社員Xはどのようして儲けたかを私に説明した。会社の決算発表があると株価が急に下がり、会社は自社株買いに走る、もとの株価に戻ると会社は買った株を少しづつ売り、つぎの自社株買いの資金を蓄える。このサイクルを知って、株価の底値で買い、株価がもとに戻ったとき売れば、必ず儲かると言った。

私の勤めた外資系会社の本社は、いまも株価を維持しているが、相変わらず長期低落の流れにある。

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「株価を意識した経営」とは、企業の株の時価総額が保有資産を上まわるようにとのことである。ところが、株価は企業の将来性を市場がどう評価するかであって、東証が上場企業に要請したからといって、すぐには上がらない。そこで、要請を受けた企業がいっせいに「自社株買い」に走ったのではないかが、朝日新聞の推理である。

株価のための「自社株買い」は長期低落の流れにある企業がとる奥の手である。

自社株買いによる株価の急騰は続かない。それを知らない若者が株を買って損をするのではないかと私は心配している。

日本では、企業が儲けた利益を貯め込んでいる。本来は、働いた人に報酬として還元するか、商品価格をさげて消費者に還元するか、研究開発や生産設備に投資すべきものである。株価を上げるために、自社株買いによって貯め込んだ利益を吐き出すのでは、国際競争力を失いつつある日本の製造産業をますます弱体化するのではないか。また、電力会社やガス会社は、エネルギー価格が想定したほど上がらず、棚ぼたの利益を得ている。消費者価格を下げて消費者に還元すべきではないか、と考える。

朝日新聞の記事は、「利益の分配が、目先の株価を上げる株主還元にかたよっていないか」「経営者が自社株買いを優先していると日本経済はどんどん縮み、労働生産性も下がる」と警告している。

朝日新聞の提起した「自社株買い」の自重をメディアはもっと取り上げるべきである。

もう昨日になるが、テレビで、岸田文雄は、女性の取締役を増やすために、東証の規則に女性取締役の割合を明記する、と言っていた。安倍晋三は日銀を政府の下部機関かのように言っていたが、岸田は東証を政府の下部機関かのように言っている。調べてみると、確かに東証のトップは財務省、金融庁の天下り先である。

したがって、今回の自社株買いの騒動は財務省か金融庁の幹部か金融機関の幹部が岸田に入れ知恵したのではと私は推理する。


福島第1原発汚染水の海洋放出に反対なのは漁業者だけでない

2023-06-11 22:16:09 | 原発を考える

けさの朝日新聞に『処理水の海洋放出 漁業者の不信なお 経産相に「反対」伝える』の短い記事が載った。

「福島第1原発の処理水の海洋放出計画をめぐり、西村康稔は6月10日、宮城、福島、茨城の各県を訪れ、業関係者と意見交換をして理解を求めた。」「漁業関係者の反対は根強い。」

見出しの「漁業者の不審なお」は、トリチウムなどの放射性物質を含む「処理水」の海洋放出に反対しているのは、宮城県、福島県、茨城県の漁業関係者だけのように読めるが、そうではない。

NHKの今年2月10日の世論調査では、「処理水を国の基準を下回る濃度に薄めたうえで海に放出する方針」について、全国の人は、27%が「賛成」、24%が「反対」、41%が「どちらともいえない」と答えた。賛否はほぼ同数で、判断ができないと答えた人がもっとも多かった。この結果は、「政府が放出方針を決定した直後の2年前に聞いたときとほぼ同じ」であるとNHKの記者は言う。

漁業関係者でなくても、多くの人は海洋放出計画の政府の説明に納得できないものを感じているのだ。政府の同調圧力に屈する必要はない。

中国政府、韓国政府は日本の海洋放出に反対を表明している。ヨーロッパの主要国の政府も、広島G7 で日本政府の海洋放出計画を支持できないとした。

海洋は人類みんなの財産である。そこに、「海水で薄めた」といえ、トリチウムなどの放射性物質を含む「処理水」を放出していいはずはない。海水で薄めたといえど、放出するトリチウムなどの放射性物質の総量は変わらない。

日本政府は「1年間に放出する処理水の量は22兆ベクレルを下回る水準」にする計画だというが、この基準では、現在の福島第1原発の敷地のタンクの処理水を放出するだけで30年以上かかる。しかも、毎日新たに汚染水が発生しつづけているので、いつまで放出が続くのか不透明である。

他の手段があるのに、大量の放射性物質を公共の海洋に放出することは避けるべきである。

さらに、日本政府の排水規制値の40分の1に海水で薄めるというが、国連飲料水規制値の7分の1、EUの飲料水規制値の8分の3である。日本の排水規制が緩いことを利用して、「とっても薄い」かのように印象操作をしている。日本の規制値は、人間がその汚染水の外にたっても健康障害がないという基準である。国際規制値やEU規制値にしても、体内からすぐ排泄されると想定しての基準値である。汚染水に一生どっぷりと浸って暮らす海洋生物のことを考えての話ではない。

日本政府もこの批判を知っていて、ヒラメとアワビを「原発周辺の海水を入れた水槽と、海水で1リットルあたり1500ベクレル未満まで薄めた処理水の水槽にわけ、比較している」という。しかし、なぜ「原発周辺の海水」と「薄めた処理水」とを比較するのか。また、処理水で育てヒラメを「通常の海水に戻すとトリチウムは検出できない値まで下がった」と報告するが、市場に出す前に「毒抜き」が必要だとのことで、海洋生物に影響がないとの証拠ではない。

海洋放出以外に地層注入処分の手段がある。

使用済み燃料や放射性物質で汚染された処分には、日本政府は、地層埋設処分を提案している。経産省は300メートルの深さに、大きな穴をほって放射性廃棄物を積み上げることを計画している。これらの処分対象は固形物であり、重機で運ばなければいけない。

いっぽう、汚染水は液体である。圧力をかけて、汚染水を蓄えられる地層に押し込むことになる。したがって、1000メートルの深さでもかまわない。経産省はどうして、地層注入処分を選ばなかったのか、私には、とても不思議である。

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顔写真つきのマイナンバーカードが義務化されて君は平気なのか

2023-06-05 20:21:44 | 政治時評

3日前、6月2日の参院本会議で、マイナンバーカードを実質上義務化するマイナンバー関連法改正が自民党、公明党、維新の会、国民民主党の賛成で可決した。

じつは、75歳の私は、去年の暮れに、会社加入の健康保険から国民健康保険に国によって強制的に変えられた。本人の意思を無視してである。その結果保険料が増えた。私は、国家の横暴と腹をたてている

今回 可決した法案によれば、現在の紙の保険証はマイナンバーカードに置き換えられる。移行期間があるが、マイナンバーカードを申請しないと、国民健康保険の対象にもならない。すなわち、マイナンバーカードの実質上の義務化である。

マイナンバーカードの何が問題化というと、カードに顔写真を添えるからだ。これまでの会社の保険証はデジタルカードであったが、顔写真がなかった。

マイナンバーカード制度では、自分の顔写真を国に登録し、本人確認にカードが使われる。これでは身分証明書である。国が個人の本人確認をする道具となる。将来、首都などが厳戒態勢になったとき、外出者がマイナンバーカードの提示を求められるかもしれない。

近代社会で、都市に住むことが憧れとなったのは、経済的な理由だけでなく、都市の住民の匿名性である。匿名性が都市住民の精神的自由を保障したのである。

国による個人の管理が昔と比べ、じわっと、きつくなっている。

各通りや各施設には監視カメラがつけられている。いま、監視カメラは犯罪事件が起きたときのみ、警察が提出を要請し、犯人割り出しに使っている。しかし、デジタルの力を使えば、各個人の行動を管理することが可能となる。

国がどんどん個人情報を管理しだすと、個人の自由が侵害されるようになる。昔は、個人が国家から隠れて暮らすことができたが、AIなどデジタル化の現代では、それが難しくなっている。デジタル化で国に情報が集中し、個人をデータとして、統計的に確率的に扱い、個人の尊重など忘れ去れる。マイナンバーカードのひもづけの間違いだけでなく、AIに頼れば、誤認逮捕も多発するだろう。

どうして、自民党・公明党・維新の会・国民民主党は、そのことに危機感をもたないのだろうか。危機感がないのは、自分と国家を同一視しているからだと思う。自民党・公明党・維新の会・国民民主党は、もはや、徒党を組むゴロツキ集団になっている。

国は、単なる個人の集まりではなく、権力をもっている。国家はトマス・ホッブズのいう「リヴァイアサン(聖書に出てくる怪物)」なのだ。国に情報と権力を集中させてはいけない。ゴロツキ集団のボスが、国家の名前を語って、横暴の限りを尽くすことになる。


「両親を老人ホームへ 一生後悔しそう」との50代女性の悩み

2023-06-03 22:39:02 | こころ

2週間前の朝日新聞の『悩みのるつぼ』に、「両親を施設へ 一生後悔しそう」との50代の女性の相談があった。回答者は姜尚中であった。私も後期高齢者のひとりになったので、一言いいたい。

相談の要旨は、入所したくない90代の両親を「特別養護老人ホーム」に入れたのだが、父は怒っており、母は泣いているので、罪悪感にさいなまれる、この罪悪感を消したいというものだった。姜尚中は、老人の介護は社会の責任と考えることで、心の重荷を軽くしましょう、と答える。

私は、姜尚中と違って、相談者が「罪悪感」を持つことは別に悪いこととは思わない。姜尚中も、彼女が「罪悪感」を感じたことを、まず、ほめてあげて良いのではないか、と思う。

つぎに、この相談に具体的に答えるには、いくつもわからないことがある。

1つは、両親と相談者の関係がわからない。90代の両親と50代の女性の間に歳の開きが40歳もある。90代の両親の子どもは相談者だけなのか。あるいは、自分の親でなく、夫の親だろうか。なぜ、相談の中に、夫がでてこないのだろうか。

1つは、特別養護老人ホームの入所まで「両親とは2世帯同居で、私は介護でクタクタ」とあるが、どうして「2世帯同居」したのか、なぜ「クタクタ」になるまで介護したのか、ということである。

私の母は子ども夫婦と同居したくないと言い続けていたが、母の意思に反して弟は両親と同居した。弟は世間体を気にしてと、父の資産を管理するためである。

現在、自宅介護の制度があるのに、なぜ「クタクタ」になるほどの介護をしたのか、との疑問も生じる。制度を利用して「クタクタ」になるのを避けるべきである。

また、特別養護老人ホームに入所できるためには、要介護3以上の認定を受ける必要がある。本当に自宅介護ができないほど認知症が進んでいたのだろうか。

また、特別養護老人ホームで、両親は一緒に暮らすことができたのだろうか、という疑問もある。特別養護老人ホームは費用の安い公共施設であるから、ホテルと違い、人としてのリスペクトを払われていないケースが多い。

相談者は母とだけ面会して、父との面会を避けているから、別々に老人ホームで暮らしている可能性が高い。

わかっていることは、両親は「施設には絶対入らない。親の面倒は子どもが最後まで見るのが当たり前だ」と言ってたことだ。入所が2人の意思ではない。

「親の面倒は子どもが最後まで見るのが当たり前」は間違っている。子どもが親の面倒を見るか否かは、あくまで子どもの意思による選択である。

リベラル思想の元祖、ジョン・ロックは、私的所有を肯定していて、子どもが親の面倒を見るのは遺産を引き継ぎたいからだと言っている。相談者が「2世帯同居」したことに、親の土地、家屋を相続したいという気持ちがあったのではないだろうか。それとも、自分の力で獲得した土地と家屋に、可哀そうな両親を引き取ったのだろうか。

私の母は同居したくないと言っていたのに、弟夫婦が転がり込んで、母は隅で小さくなっていた。言いたいことも言えずに小さくなっていた。死ぬ数年前に老人ホームに入れられ、怒りまくって死んだ。

私の80歳の兄は、自分の子どもたちや妻と別れて大阪の安アパートの一室で一人で暮らしている。足腰が弱くなって伝い歩きしかできない。訪問介護者をたよって、かろうじて生きている。兄にとって、それが自分の生き方なのだ。

私も特別養護老人ホームに入りたくない。老人ホームの母を見舞ったが、まず、ホームから出れないように鍵がかかっている。部屋は何人か一緒に使用する。それだけでなく、集団生活が強制される。1日の時間の使い方が管理されている。母には、したいことがいっぱいあったのだ。

私はみんなと同じテレビを見たくない。みんなと同じ歌を歌ったり遊戯をしたいと思わない。みんなと同じものを食べたいと思わない。思索にふける時間が欲しい。知的な会話がしたい。研究をしたい。美しい異性と会って眺めていたい。

人間はいずれ死ぬのである。死ぬまでの時間の使い方に自由が欲しいのである。子どもが、その自由を奪うのには、納得できない。