朝日新聞の投書欄を見ると、新型コロナのワクチン接種が高齢者なのに予約もできない、予約できても8月にならないと接種が受けられない、また、副反応の情報が届かない、という投書が続いている。
厚労省のホームページによれば、ファイザー社のワクチンが、7月中に84,341箱、各市町村に供給されることになっている。1箱は、接種1170回分である。いっぽう、65歳以上の高齢者は、約3513万人である。7月中に高齢者の全員が2回接種したとしても、29%のワクチンが余ることになる。実際には、高齢者の半分程度しか接種しないから、大量にワクチンが余ることになる。
したがって、投書の事態が生じるのは、単に行政の問題である。行政のトップが政府であるから政府の責任である。ワクチンが余っているのに、希望者が接種をうけられないというのはおかしい。
一番の問題は、政府が市町村の要請にしたがってワクチンを供給し、接種率の低い市町村の担当者を総務省の役人が叱るという体制にあると思う。公平な供給という考えがなく、自由競争に任すが、政府に計画性がまったくない。叱ると、ウソの申請をする市町村が現れ、結局、ワクチンが廃棄されるか、怪しげなところで消費される。
日本は総務省が日本の各市町村の年齢別人口構成を把握しており、どこが接種が進んでいないか、どこがあまっているのか、わかっているはずだ。なぜ希望者が接種を受けられないかを、しらべ、中央の政府が地方の市町村を助けるべきである。責任を地方におしつけ、中央が叱るばかりというのはおかしい。接種する医療従事者がいないなら、政府が支援すべきである。たとえば、巡回接種バスで地方を回ることもできる。
私の神奈川県では、申請ベースで市町村にワクチンを供給するので、郡部の町村は有り余る量のワクチンが供給されている。接種が遅れているのは市部である。川崎市、大和市、横浜市、厚木市などである。
神奈川県の市部で遅れている理由は、大規模接種、集団接種、個別接種、職場接種という、接種体制の複雑さのためである。大規模接種、集団接種は予約申し込み方法が単純であるが、個別接種はクリニックや医療施設によって申し込みが非常に異なる。個別接種のクリニックによっては、一般予約を受けず、クリニック側から顧客に電話をかけて接種をうける者を選んでいる。
地区センターや公会堂をつかった集団接種の予約枠は少なく、どうも、個別接種に大量のファイザー社のワクチンが出まわっていると、私は推定している。
私の妻は1昨日、1時間半かかって、横浜の大規模接種会場ハンマーヘッドでモデルナ社の1回目の接種を受けた。私は、20分で歩いていける小児科で、昨日、ファイザー社の個別接種をうけた。その小児科クリニックは、診察券がなくても、接種の予約を受けるとインターネット上に出ていたからだ。
考えてみれば、高齢者が小児科の診察券を持っているはずがない。それなのに、診察券がないと接種が予約できない小児科クリニックも実際に数多くあった。
私の予約した小児科での接種は、いつ接種されたか気づかないほど、痛くもかゆくもなかった。さすがに、小児科医だと思った。解熱剤の処方箋もそこでもらえ、隣の薬局で買えた。
投書の副反応の情報がたりないというのも本当で、これも政府の責任である。
ワクチン接種を受ける人は予診票の提出が義務になっているが、それは同時に同意書にもなっている。普通の同意書には、どれだけのどのようなリスクがあるかが記載され、そのリスクを受容することが、同意である。横浜市の同意書にそれがないのである。かわりに、神奈川県医師会の発行の、10%以上の接種者に現れる副反応が記載された紙が、接種後に看護士から渡された。その紙に、副反応が出た場合の相談電話番号も書かれていた。
幸いにも、私も私の妻も重大な副反応が現れていない。私の場合は、接種した腕が重たくて、倦怠感がでているが、発熱はない。
新しいRNAタイプのワクチンだから、町の医者が副反応の情報を持っているはずがない。副反応の情報供与の責任は政府にある。
世界中で接種が行われているのだから、厚労省に、副反応の統計データがたまっているはずである。世界の主要国で平均20%の接種率なら、億単位の症例があつまっているはずである。政府は接種率を高めるために、意図的に副反応の公表を控えている、と私は疑っている。
[補遺]
7月11日朝のテレビは、モデルナ社のワクチンの副反応に、1週間以上してから腕が赤くなったり、痛くなったりすることがあると言っていた。私の妻も1週間してから、接種した腕が広範囲に赤くなった。NPOの私の同僚も腕が痛くなったと言う。ともに、大規模接種にでかけ、モデルナ社のワクチンの接種を受けた。
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