<作文>
スキー
(S・T)
僕は今年まで、4尺5寸の短いスキーを持っていた。ところがお父さんが此の間、長いスキーをくれた。僕はうれしくて、すぐ乗りにいった。このスキーはみんなのよりも、ものすごく細かった。そして、ぐんにゃりとしのる。
お母さんが、僕に「そんなに長いスキーにのって大丈夫かい。ころんで足を折らない様にね」と注意してくれた。僕は「大丈夫だよ」と、平気で答えて乗りに行った。F君やY君と一緒に火防線に行った。
僕は長道の方をすべった。はじめの時は下からすべったが、だんだんと上に登っていった。その内に日が暮れてきたので皆と一緒に帰った。この日は何ごともなかった。
次の日、学校から帰ってすぐR君と一緒にまた火防線に乗りにいった。 昨日よりも高い所からすべれた。R君は僕よりも下ですべっていた。大分、すべっているとR君が手ぶくろを替えに家に帰った。もうしばらくして来るといったので、待っていると又すぐ来た。
此の日も一日いっぱいすべって最後にうんと高いところからすべろうと思ってすべった。そしてすべって、曲げる気になったらスキーの先は馬力がついていたので「バリン」という音と共に折れてしまった。 僕は「さぁ、困った」と思った。
仕方がないので家に帰ってお母さんに「スキーを折ってしまった」といったら、お母さんは「ほら見れ!そんなに長いスキーに乗るからよ」と言った。僕はおこられるのかと思って、ひやひやしたがおこられなかった。
☆ ☆
われわれの間では、冬はスキーが一番人気のある遊びだった。ちようど、その頃、イタリアのコルティーナダンペツッオで行われたオリンピックスキー回転で、猪谷千春選手が、冬季五輪日本初の銀メダル(アジアでも初)を獲得し、スキー熱が一層盛り上がっていたときだった。
どれだけ高い所から滑ることができるかということは、結構勇気のいることであり、ちょっとした冒険心を満たされることでもあった。また、それが出来るということは、クラスの中で存在感を示すことになり、尊敬の眼差しで見られるという一面があったので、競い 合って高い所からすべった。可愛いものだったな~と思う。