⓸タッパンチャバネセセリは、「原名亜種eltola(一応「タイリクタッパンチャバネセセリ」と表記しています)と 台湾産亜種tappanaで、(エヴァンスの挿図で比較する限り)雄交尾器の形状が著しく異なる」と、白水図鑑に記されています。僕は今エヴァンスが手元に無い(段ボールの中、笑)のですが、他の幾つかの文献(例えば「The butterflies of the Malay peninsula」や「Butterflies in Indochina」)の添図をチェックした限りでは、それほどの差があるとは思えません(種レベルとしては微妙)。一方、ニセタイリクタッパンチャバネセセリdiscreta とは明らかに相違(見方によっては属レベル)します。
前回同定保留にしておいた写真3・4と写真5・6の種について。
「Butterflies in Indochina」(Polytremisとしてlubricansを含む3種、Zenonoidaとしてeltolaとdiscleteの2種が掲示されている) でチェックしてみましたが、結局分からなかった。ベトナム・サパの5・6は、たぶんどちらかに帰属すると思います。「Butterflies of Malay peninsula」や「Butterflies in Indochina」に添附されたdiscletaの雄交尾器図・写真は「中国のチョウ」で紹介したdiscleta雄交尾器の図に完全に一致しますが、5・6(後翅の白紋が一個少ない)の個体に関しては雄交尾器を検鏡していないので、判断がつきません(イメージ的にはdiscleta?)。3・4のほう(やはり雄交尾器は見ていない)は、外観的には両方とも違うような、、、(イメージ的にはeltola?)。
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ネットで、色々な資料を調べていたら、今回取り上げた2つの論文の他にも、幾つかの報文を見つけました。
『Polytremis属の分子系統学研究(上海大学2013)』
『Molecular Phylogeny of the Butterfly Genus Polygonia(Hesperiidae,Hesperiinae,baorini)in China』
『中国及び周辺地域セセリチョウ亜科分子系統学研究(百度文庫2020)』
等々。
それらについてのチェックはまだ行っていません。また機会があった時に言及しようと思っています。
いずれも、分子生物学的手法を使った系統分類で、論文中の語句をそのまま示すと、前者は“the evaluation of mitochondrial and nuclear DNA markers”、後者は、“inferred based on regions of the mitochondrial COI-COII and 16S and nuclear EF-1α genes (3006 bp)”という手法に基づいているようです。頭の悪い僕にはよく分からんのですが(笑)、いわゆるDNAによる解析ですね。