青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

戦争は何故無くならないのか? 正義と平和という絶対悪について

2024-03-31 08:43:34 | その他



「近所の蝶と大谷と白鵬」という見出しで行く予定だったのですが、上記に変更しました。特に意味があるわけじゃなく、今後も気分次第で2つの総見出しを使い分けて行きます。



一周回っての“絶対悪”ですね。ちなみに僕は悪を全否定しているわけではありません。



「近所の森と道端の蝶・福岡編」やっと完成しました。

問題は(「中国蝴蝶野外観察図鑑」ともども)どうやって収入に結びつけることが出来るか。

148頁。印刷代1500円。僕の実益分に六本脚マージンを加算すると定価は3500~4000円、幾らなんでも高すぎるのではないでしょうか?

PDF原稿をそのままCDに収納、あるいは電子書籍としてネット販売すれば、コストはほぼゼロで、圧倒的にクオリティが良く廉価な作品を読者に提供することが出来ます。僕にとっても購入者にとっても、双方納得です。けれど、現実には、様々な柵や障碍があって、そうも行かない。

そのうちに、ブログでも梗概を紹介していこうと思っています。



ちなみに、この作品の肝は、↓前書き末尾の記述。

>本書は教科書ではない。内容は曖昧かつ適当で矛盾だらけである。殊に学名の選択を含む分類体系の記述は項目ごとに変わっていたりして全く不統一である。むろんそれぞれに根拠はあるのだが、本書ではその理由の説明は割愛する。敢えて定説とは逆の選択を行っている場合が多い、と認識しておいて頂きたい(単純に、文字スペースとの関連で選択した場合もあるが)。よく言えば臨機応変な処置なのだが、要するに著者の思い付きの出鱈目記述、と解釈して頂いても、差し支えない。

>著者の本意は、答えの提示ではなく、問題提起である。自然の生命体に関わる事柄を類型化し統一することは不可能である故、それでよいと思っている。将来はともかく、現在という時点での判定に於いては、本書の記述は間違いだらけなのかも知れぬ。答案用紙に「正しい答え」を書くための教科書・参考書を求める方は、別の(著者以外の執筆者に拠る)図鑑を参照して頂きたい。



僕の姿勢に心配した友人がこんなメールをくれました。

>何とかアカデミックな連中が使うのと共通の言語を持たないと、もったいない。

それはよくわかるのだけれど、僕のポリシーなので、いまさら変えるわけにもいかんです。反アカデミズムは貫き通します。



もう10数回目くらいの繰り返しですが、僕が嫌いなのは、

音楽雑誌「ローリングストーンズ誌」と、バンクシー(ついでにゼレンスキー)。

反権力を装った権力。



芸術なんていうのは、詐欺と依存症(それらによって構築される資本主義社会)の正当化に過ぎんです。科学も同じです。



・・・・・・・・・・・・・・・



当面は、大谷君(以下敬称抜きで統一)絡みの話題を続けて行く予定。



今回の出来事は、単に事件で済まされる次元の問題ではなく、日本人とは何か、民主主義社会、資本主義社会とは何か、と言った、とんでもなく大きな問題が背景にあるように思います。



白鵬問題の裏表逆パターンですね。大谷にしろ白鵬にしろ、何らかの形でケリという問題ではない。これまで僕の携わってきた「香港デモ」「コロナ騒動」「ウクライナ問題」等々とともども、今後とも注意深く見守っていくつもりでいます。



・・・・・・・・・・・



権力に従う。

これが日本人が日本人であるための絶対条件なのでしょう。

それが悪い事だとは思いません。要は、それを自覚しているかどうかということと。そしてそれが全てではない、と認識する事。



前回のブログにも書きましたが、大谷とごく身近な、彼の実像を極めて良く知っていると思われる、日本のプロ野球球団の某コーチ(誰だったか今名前を思い出せないけれど、皆も良く知っているはずの方)が、以前大谷について評していたこと。

>大谷はジャイアン。

↑大谷崇拝者は皆見逃しているのでしょうが、、、必ずしもネガティブな意味で言っているのではなく、それが実態だということです。



ウイキペディアで“ジャイアン”(または“ジャイアン主義”)をチェックしてみました。その幾つかの要約。

>乱暴なガキ大将だが、友情に厚い男の子。

>「おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの」。自らの所有物(占有物)については当然に自分の所有権を主張しつつ、他者の所有物に対してさえも当人の所有権を否定、所有権が自分に属することを主張する。

>「正しいのは、いつもおれだ。」「この町で、おれにかなうものはいない。おれは王様だ。」

>しかし、本人はこれらの行為に悪気はない様子。周囲が嫌がっている事に気づいた際に見せた表情は悲しげで、ドラえもんにも「年に一度は心から祝ってもらいたい」と泣きつく姿からは、自分さえ良ければいいという暴君気質は見られません。



「ドラえもん」というのは、もちろん名前は知っていたのですが、アニメはおろか、マンガ自体も一度も見たことがありませんでした。今日、はじめてインターネットのウキペディアなどで、その梗概をなぞった次第ですが、なぜか、全部知ってた様な気がします。いつの間にか断片的に情報を得ていたのでしょうね。



ちなみに藤子F.不二雄(藤本弘)氏とは、若い頃スタジオ・ゼロの仕事場で何度もお会いはしているのですが、話したことは一度もなかったように記憶しています(雑用とかを頼まれたことはあったかも知れない)。手塚治虫先生ともども、僕が尊敬している、数少ない真の芸術家の一人だと思っています。



話が逸れてしまいました。



多くの日本人が“ヒーロー”として崇拝する大谷。彼の行いは、正しいのに決まっているのです。

一方、(主に)アメリカの少なからぬ人たちは、彼のことをどこか胡散臭い、信用できない人と見ている。

そのどちらとも判断できずにいる人も、一定数いるようです(たぶん僕もその一人)。

悪とは何か。正義とは何か。永遠の問いを追い続けるしかないのです。



・・・・・・・・・・・・



水原は「ギャンブル依存症」。そのような人物は皆「嘘つき」。

大谷は「野球以外の世俗には全く関心のない、聖人君子」。

それ自体はひとつの事実でしょう。

従って、「悪人は正しくない」「正義は正しい」の前提で、全ての物事が処理されていく。

しかし、事実は一つではないのです。別の側面・時空においては、違った解釈が可能です。



“This is a pen”“雨が降っている”“彼が歩いている”、、、それら自体は事実には違いありません。けれどそこに何かが関与した時に、その関係性は無限の可能性が広がる。

“And that is a book”“でも太陽が顔をだした”“石につまずいて転んだ”、、、展開次第で、事実の有り処は無限に広がって行きます。



「水原は賭博を度々やっていた」

「大谷は常に野球に専念している」

そこから先は、別次元の問題として捉えねばなりません。



極論すれば、真実とは無限の矛盾の構築の中で成り立っている、ということだと思います。



賭博は悪なのか?

賭博依存症、それはどういうことなのか?

物事への依存は、特別なことではなく、現実社会のほとんどが、本来必要の無い対象への依存で成り立っているのではないか?

依存症の人間を嘘つきと言うならば、大衆は皆嘘つきなのではなかろうか?



大谷が、脇目もふらず野球の道に邁進していることは、本当に素晴らしいことなのだろうか?

“かのように”的視点の外から見るならば、

ボールを飛ばす(投げる/打つ)ことに卓越している人と、

2か国語を自由に操れる人の、

どちらが人間として(社会・大衆への忖度なしに)優れていると言えるだろうか?



しかし、全ての物事は、“社会・大衆への忖度”から逃れて進めることはできません。

有無を言わさず、前者が圧倒的に(まるで比べものにならぬほど)優れているのです。

大衆はもとより、大谷自身も、もしかすると水原氏も、今回の出来事を、限りなく無かった事にする(全て水原氏の“悪行”に基づくとして処理する)ことで、阿吽の統一見解に至っているのだと思います。



誰もが成し得なかった未曾有の大記録達成に邁進する、それが全てであり、ほかは一切無視。少なくとも日本人の大多数は、その大谷の姿勢を絶対評価し、支持しているわけです。

一方、それで良いのだろうか?という疑問が(主にアメリカの)一部の人たちから噴出している。



僕が思うに、今回の水原氏の過ちは、特別な出来事ではない、ということ。

むろん、置かれた状況(国家規模の大谷フィーバー)が余りにも特別な舞台なわけですから、あらゆる出来事が特別視されなければならないわけですね。



額の多少、違法合法を別に考えると、賭け事依存による負担は、株はもとより買い物とかローンとかも同じであり、本質的には賭博依存と変わらないということ。



水原氏が、つまらんちっぽけな人間で、生まれた環境という宿命に、後に様々な自己責任も加わって、底辺人生を余儀なくされてきた、という背景がある以上、嘘もつかねばならなかったでしょうし、何らかの学歴詐称もせねばならなかったでしょう。



ちなみに、僕自身、まともな学歴は中学1年までしかないわけで、その後どのような教育機関に関わってきたかというと、東京大学に勝手に出入りして、弥生校舎の学内や農学部の演習林で活動を続けてきたわけです。そのこと自体は事実なので、その通りに言うしかない。と同時に、余計な疑念をかけられたくないので、ニセ学生であることを自ら強調してきました。しかし、中には「学歴詐称」という人も出てくる。そんなこと言われても、どうしようもないじゃないですか。



あるいは、中国では3度現地(重慶・成都・昆明)の大学に在籍していました。もっとも、卒業はしていないわけだし(授業にも大して出ていない)、本来中卒の身分では入学は出来ないのですから、在籍自体がたぶん裏口入学に等しいのではないかと思います。でも、裏口であるにせよ、書類上は在籍したことになっているはずです。その書類が、本物であるのか偽物であるのか、僕自身には判断のしようがない。

それに関しては、僕だって、水原氏だって、小池のバアさんだって、似たようなものだと思います。

ついでに、僕が自分の本を(いわゆる自費出版で)売りつけることを、詐欺行為と見做す人がいます。一方、正規の出版社からの刊行だと、大変立派な業績のようにほめたたえられる。なんだかなあ~、という思いです。



話を戻します。若い頃の水原氏は、まあ一般に言うところの正規のレールには乗ってなかったのだと思います。清濁併せのみつつ頑張り続けてきた。紆余曲折した後、日ハムの通訳の職をつかみ、大谷の専属通訳と成り、ともにドジャースに入団した。シンデレラ半生ですね。

しかしシンデレラになることで、全てが変わった訳ではないでしょう。過去(自らのアイデンティティ)は引きずり続けざるを得ない。大谷とは、所詮、置かれた立場が違うのです。

本来はミスマッチであるはずの2人が、人生に一生懸命(水原氏)、野球に一生懸命(大谷)、、、、一生懸命というキーワードを持って見事にマッチしたわけです。

でも、(水原氏が)引きずってきた負の部分は、そう簡単に解消できるものではない。



もう一度、同じことを書きます。

わき目も振らずに野球に邁進する、ということは、本当に(皆が考えているであろう様な)素晴らしいことなのでしょうか?

ボールを飛ばす(投げる/打つ)。

2か国語自由に操れる。

どちらが人間として、社会への忖度なしに、優れているのか?

水原氏も大谷も、そんなことは考えたこともないでしょう。むしろ、現実問題としては、比較にならない、と受け止めていたことでしょう。大谷は悪気ではなく、水原氏は卑下ではなく、当然であると(水原氏の意識の根源には、理不尽と言う思いはあったかも知れないにせよ)。



大谷は、皆が御存じのように人生スケジュールを立てていました。それに沿って邁進し、他のことは全て無視し、努力を重ねて、全てを実現してきた。もちろん、圧倒的な素質と本人の努力があってのことです。

そして、回りの理解(のちには讃美・崇拝)も重要なファクターであることを忘れてはなりません。

言い換えれば、ジャイアンのように、徹底して自分を押し通してきたわけです。それが許される立場にあった。



それが美徳として持ち上げられ続けているわけですが、本当にそうあるべきなのでしょうか?

ちなみに、例えばニューヨーク遠征時、野球以外に何にも興味が無いので、街には出なかった、、、等々、俗世間やお金には興味を示さない、我々一般人には到底マネが出来ない聖人君子であると。

僕には違和感があります。大谷が普通で、一般大衆がおかしいのかも知れない。



烏滸がましいですが、僕なんかも、大谷と全く同様ですね。所有欲、物欲は、皆無だと思います。酒、タバコ、ギャンブル、女遊び等々には全く興味ないし、そのほかの遊びも、(最低限必要なものは別として)買い物とかにも、一切興味がない。嘘もほとんど言わない正直人間だと思います。ひたすら自分の目標(日本の自然の根源を中国の自然の中に探し出すこと)に向けて努力邁進している。大谷に負けない聖人君子なのです(笑)。

でも、当たり前のことですが、聖人君子には程遠い。実質的には、たぶん水原氏により近い(と言うよりも彼には遥かに劣る)出鱈目なダメ人間です。



それはともかく、大谷のやっていることは、皆と同じ行動が取れない(同調圧力に応じない)本来なら社会を乱す、大衆とは異なる価値観に基づいています。普通は排除されてしまうのですが、彼がそれを許され、なおかつ讃美・崇拝の対象になっているのは、ひとつは日本人が欧米人を圧倒する、という現象に、日本の大衆が狂喜乱舞している背景に拠ります(戦後の力道山に被ります、、、後に刺殺され、やがて北朝鮮人であることが判明、諸々の裏の顔も明らかになるのですが、リアルタイムでの熱狂は、それは凄いものでした)。



見方によれば、投手である大谷がDH(代打ヒッター)を独占し続けていることは、集団競技としての野球を考えた場合、大いなるマイナス面もあるわけです。しかし、崇拝されている限り、プラスに捉えることしか許されない。

大谷が、自分の道を突き進むことが、必ずしも「正解」であるとは言えないのですが、日本人大衆の側には、それを指摘することが許されない「空気」(同調圧力)が、頑として確立されてしまっている(早い話、僕にしても、そのことが分かっていながら、大谷に拠る前人未踏の活躍を応援していたわけです)。



・・・・・・・・・・・・・・・



水原氏は懸命に生きてきた。ネガティブな過去の境遇を引きずりながら。

「生活レベルを大谷の(あるいは彼を取り巻く)世界に合わせるのがどれだけ大変だったか」という水原氏の言には、思いのほか大きな意味があると思います。



今回の事件の成り行きは、2つの物語に集約されるでしょう(実際はその2つが混然一体となり複雑多様な様相を示している)。



多くの人が指摘しているように、僕も水原氏の最初のインタビュー内容が、(事実ではないとしても)より事実に近いのではないか、と考えています。



他チームに移籍したフレッチャー選手(大谷の親友として日本の大衆が美談物語を造り挙げていることには辟易していますが、ナイスガイには違いないと僕も思っている)の以前の証言。「賭け事がチーム内に蔓延している、その中心人物の一人が水原氏」。これはネガティブな意味での発言ではないのです。皆が、水原氏を中心に、和気あいあいと楽しんでいる、と。むろん(本人が参加しているか否かは別として)大谷も周りにいて承知しているわけです。単純に、アメリカにおいてはごく当たり前の、皆の楽しみごとのひとつであるわけです。



たまたま違法であったことを除けば、水原氏の“ギャンブル依存症”は、特別なことではないように思います。彼が依存症というならば、フレッチャー以下、皆依存症と言えなくもない。我々大衆も、様々な局面で、(アニメとか音楽とかグルメとかファッションとか)依存症なわけです。



水原氏の場合は、(バックに大谷がいることで)狙い撃ちでターゲットにされちゃったのですね。そして、がんじ搦めになって、抜け出しようにも抜け出せなくなった。

自分は依存症である。水原氏は、正直すぎるほど正直なんだと思います(正直であることは必ずしも美徳ではない)。



けれど、それでは、球界の宝であり、日本人の崇拝の対象である大谷に危機が及んでしまう。水原氏を含めた全員で口裏合わせをする。水原氏が窃盗した。大谷は野球で結果を出せばいい。それもひとつの(というよりもほとんど唯一の)解決策だとは思います。



もうひとつのパターン。本当に大谷は何も知らなかった。全くの寝耳に水。従って現在の捜査進行状況のままで何ら問題はないわけで、野球で結果を出せば良い。

その場合、批判の声は、そんなにリスク管理出来ていないということは、大人(社会人)として失格である、と。



けれど、僕を含む一握りの人たちの思いは、どちらのパターンであるにせよ(特に後者のパターンの場合より強く)、そこはかとない違和感を覚えている。



2人は、二人三脚で頑張ってきたのですね。お互いに全面信頼しながら。

しかし、過去を引きずりつつ周囲(その中心は大谷)に気を配り続けねばならない(なおかつ心ならずも?表舞台に立たされ続ける破目になった)元・出来損ないの水原氏と、回りのことなど何一つ気にせずに自分のやりたい放題(悪い意味で言っているのではない)野球道に邁進することが出来る聖人君子の大谷では、余りにも置かれた立場が異なります。

問題の多少は有れ、(たとえ賭博問題が起こらなくても)何らかの局面で今回のような事態に至ったのは、必然ではないだろうか、という思いもあります。



大谷がお金に無頓着、というのは、その通りなのだと思います。一部(一割としても何10億円)を誰の束縛も受けず自由に使い、それを水原氏に全任、必要とあらば勝手に使って良い、という状況下にあったのではないかと。



背番号譲ってくれた選手の奥さんにポルシェ贈呈、日本の全小学校にグローブ配布、留学の招待、、、、膨大な金額を、大谷の思いのまま動かしている。

それが素晴らしい事であるのは間違いないのでしょうけれど、別の側面から見れば、自分の気の向くまま大量のお金をばらまいているわけで、なんだかモヤモヤも残る、と感じるのは、僕だけではないと思うのです。



水原氏は、それを任されていた可能性が強いです。背番号の奥さんにホイ何千万円、グローブにホイ何千万、、、、。

後払い1000億円だって、山本投手を入団させるため、ひいては勝ちたいがための(お金なんてどうでも良い、勝ちたいんだ)策略であったとも言えます。

暗号資産への賛同(主催者は逮捕はされたけれど、違法と言うのとはまた意味が違うので、大谷ら賛同者にはお咎めなし)も含め、お金に興味がないからこそ、ホイホイとお金を動かすことが出来る。

世界中に、(幾ら必死で努力を重ねようが)お金の為に苦しんでいる人が、どれほどいる事か。それらの人たち(盲目崇拝する日本人貧乏人は除く)にしてみれば、大谷の存在は、違和感満載であっても不思議ではありません。



ある意味では大富豪の余興とも言える大判振る舞いのお金の窓口になっている水原氏自体はお金に苦しんでいる、という状況。けれど自分は大谷の為に全力を挙げ、助けを求めるなんてもってのほか。ジャイアン大谷と違って、水原氏は自分に自信はないし気が弱いのです。



任されているお金は、大谷の夢を叶えることに繋がるならば、湯水のように使うことが出来ます。ならば自分に降りかかっている苦境をゼロにする為に、そのお金を使うことは、大谷にとっても(全体からすると大した額ではないとも言えるわけですから)望ましい事と言えるのかも知れません。

奥さんポルシェや小学校グローブと同じように、プールしてある資金から勝手に支払っておく、というのが、ベストの選択であったのかも知れません。後で自分の犯した不始末は、(今後はもうしませんと誓ったうえで)片付きましたよ、と報告しておけば、大谷への渾身によるこれまでの膨大なメリット考えれば、大谷にとっても、お安い御用、ということで、一件落着だったはず。



大谷は、水原氏の事を、もっと真剣に考えてあげるべきだったのではないかと、僕は思います。その余裕がなかったとすれば、水原自身の負責を含めて、お金のことは最後まで水原氏に全任すべきだった(たぶんそのつもりでいたのだと思う)。



けれど、違法ということで、途中で捜査が入って、取り返しの付かない事態になり、一方的に水原氏を切り捨てざるを得なくなった。



ある意味、自分の目標達成の為に、結果として水原氏を追い込んだのです。



いずれにせよ、大谷が本当に聖人君子なら、野球で結果を残すことではなく、水原氏を助けることを第一義に置くべきではないだろうか?と考える人が、多数派ではないにしろ、少なからずいる、ということも、また事実なのです。

僕ですか? うーん、難しいですね。大谷君には、野球に於いて未曽有の結果も残して欲しいし、それらを超越した“義”も見せて欲しいし、、、、。



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福岡県に於けるコロナ感染状況の発表は、今日を持って終了するとのこと。実質、(コロナが特別な禍では)無かった事にする、ということです。





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大谷選手の会見など

2024-03-26 20:51:21 | その他



その前に再度。

尊富士。



日本への批判、科学に対する批判を行うと、ヤフコメ民(ほぼ日本の大衆の総意)は拒絶反応を示すのですね。



「ライオンは治療しない」

「サプリ飲むの人間だけ」

いやもう、よく言ってくれたです。

ヤフコメ民は、

>「傷ついたライオンは、ほうっておけば死んじゃうんだぞ。医学はそれを助けることが出来る。もっと科学を尊重し、世の中を勉強しなさい」と批判します。

いや、そうとも限らんのですよ。

以前、毎年のように小笠原に通っていた頃、

ある年、野犬が瀕死の重傷を負っていた。

一目見て、これはもう助からんだろうと。

しかし翌年訪れた際には、治っていた。

どの生き物も、そうとうの生命力(自己治癒力)を持っているのです。

人間の病気だって、治すのは自分、医者は手助けをするだけ(それが大きな意味をもつ)。

それが、いつしか医学が主役になって、手助けではなくて、医学の力で治す、という思い上がりに。

一般社会においても同じです。科学(文明)が全てを支配してしまっている。

科学を否定しているわけではありません。人間を助けてくれ、潤いを与えてくれる。科学が全能であるごとき過信することに、危惧を覚えるのです。



・・・・・・・・・・・・



大谷選手のインタビュー。

「正直ショックという言葉が正しいとは思わないですし、それ以上の、うまく言葉では表せないような感覚で1週間過ごしてきた。うまく言葉にするのは難しいなと思っています」「気持ちを切り替えるのは難しいですが、シーズンに向けてまたスタートしたいですし、お話できて良かったと思っている。今日は質疑応答は、これがお話できるすべてなので、質疑応答はしませんが、これからさらに進んでいくと思います」



「うまく言葉にするのは難しい」

本意でしょうね。



この問題、主役は大谷選手でも一平さんでもないのです。

一平氏が(結果として)大金を盗み出し、大谷はそのことを知らなかった、それ自体は事実なのでしょう。

しかし、俯瞰的に見渡せば、様々な次元において、遥かに大きな問題を伴っている。

答えが出るのは(答えなんてないとは思うけれど)、大谷がキャリアを終え、2人や関係者がいなくなった、遥か未来の事だと思う。



秀逸のコメント(スーパジェットさん)がありました。



>野球で夢や希望とやらを与えるよりも、よほど人生に役立つ教訓を大谷さんは人々に与えることになるのでしょうか。 だとしたら二人を掲載した教科書の差し替えなど安易に行わず、結末まで付け加えるのが教育というものだと思うのであります。



・・・・・・・・・・・・・・



大谷選手には、今後ともベストのパフォーマンス(様々な記録の更新)を期待しています。と同時に、(主にアメリカ国内からの)批判・疑念の声を一生受け続けなくてはならない。それは、彼にとって、必ずしもマイナスの要素だけではないのではないかと思います。



一平氏には、あえて“ドンマイ”、と言ってあげたい。神(?)が与えた試練です。反省して、いつか大谷君に謝ろう、と。



重ねて言いますが、日本の社会にとっても、大衆の崇拝・妄信の危うさに気付くきっかけになって、良かったのではないかと思います。



まあ、人を安易に信用してはいけない、みたいな教訓に、これまで以上に向かうのだとしたら、情けない限りですが。














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続々 依存症

2024-03-25 15:21:41 | その他



尊富士110年ぶりの新入幕優勝のインタビュー。

「ライオンは治療しない」

「サプリ飲むの人間だけ」

これにはヤフコメ民猛バッシングです。

この人、ちょっとおかしいんではないか、と言う人さえいます。



文明・科学への過信、

それこそ依存症なんですね、でも、ほとんどの人が、そのことに気付いていない(なんとなく気付いているのかも知れないけれど、直視することが出来ないでいる)。



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オガサワラシジミ(&ルリシジミ)のシリーズを終えた後、「大谷と白鵬」のテーマでブログを書き進めたのが3月11日。「教育とは洗脳の同義語」(3月16日)、「正義の味方」(3月20日)と、大衆の大谷讃美がクライマックスに達しつつあるなか、敢えて苦言・疑問を呈してきました。微力とはいえ、ノー天気な「お祭り気分」に少しぐらい水を差して置いた方が、大谷を取り巻く人々(日本の大衆)にとって、意義があると思ったからです。



その翌日(3月21日)から、まさかの展開。ブログには引き続いて大谷関係の話題を書き続けているわけですが、(問題が発覚した)3月21日スタートなのではなく、3月11日スタートであることを、認識しておいてください。別に僕の先見の明とかを自慢したいわけではなく、問題発覚以前に、大谷フィーバー(日本の大谷崇拝)に対しての、様々なネガティブな指摘が、少なからず存在していたのです。最初に書いた「大谷と白鵬」は、日本のメディアや国民に対する不満や疑問、「正直、大谷がいなくなってホッとしている」というエンゼルス関係者(選手を含む現場)の本音に基づいた記事に触発されて書いたものです。今回の事件は、「青天の霹靂」なのではなく、ある意味、起こるべきして起こったものと言えるかも知れません。



・・・・・・・・・・・・・・



何度も何度も繰り返し書きますが、僕は大谷の大ファンです。でも崇拝はしていません。ついでに、誰にも負けない愛国者であると自負しています。でも日本が単純に素晴らしい国であるなどとは思っていません。結構酷い国だと思っています。でもって売国奴とか呼ばれたりするわけですが。



資本主義社会は実質上の依存症人間を増産する(ほぼ国民全員)ことで成り立っていると前回書きました。「依存症の人間の言うことは信用できない」というコメントが目立ちます。ならば自分たちの言もまた信用するに足り得ない、ということです。人々の思考が余りに上っ面だけしか機能していないことに寂寞たる思いでいます。



大谷の事をよく知る日本の某球団コーチ曰く、「大谷はジャイアン」(僕は漫画見ないのでジャイアンがどんな人かは良く知らないのですが、でも大体のイメージは把握できる)なのだそうです。何もネガティブな意味で言っているのではなく、それも魅力(長所でもあり欠点でもある)ということです。大谷像を勘違いして作り上げている大衆に、実像を伝えたのですね(たぶん伝わってはいない)。



ちなみに、僕は栗山さんがダメ。どうにも好きになれないし、評価も出来ない(全否定している訳ではないですが)。根拠は追々書いていきます。



水原一平氏は、これまで余り好ましくは思っていなかったのですが、今回の騒動によって僕の中でグッと好感度が増しました。



大リーグという機構自体、賭け(スポーツ賭博)によって潤っている側面がある(むろん内部の人間が直接関わることはご法度)のですが、まあ合法か違法か、それが全てなわけで。



大谷はゲーム好きで、お金自体には無関心なのでしょうが、それ(価値としてのお金ではなく物理的存在としてのお金)を使って楽しむことは結構好きなのではないでしょうか。純粋無垢な子供がゲームをやっているような感覚で。



グローブのプレゼントや、後払い契約とかも、素晴らしいことには違いないけれど、光の当たる角度を変えてみれば、単純に手放しで褒め称えてよいことなのか、疑問も残ります。これも繰り返し指摘しますが、崩壊した仮想(暗号)通貨賛美への加担、それに対する責任が有耶無耶にされてしまっていることも気になります。



誰に何と言われようと、自分のポテンシャルを最大限生かすために邁進する。これだって光の当て方次第では相当に酷い事です。そのためにどれだけ多くの人々に迷惑をかけているか。ある意味、米球界は、大谷一人の我儘(それを支持する大衆)の為に滅茶滅茶になってしまっている、と解釈することも出来るかも知れないのです。



エンゼルスが低迷しているのは、大谷が要因の一つになっているのかも知れない。むろん、大谷の加入がプラスになっている面もあるでしょう。でも、それと同等か、それ以上にマイナス面にも作用している。



僕が大谷に魅力を感じるのは、それらの事もひっくるめての事です。ある意味、彼は本質的に悪の塊なのかも知れず、なおかつ表向きは善の象徴として崇拝されている。



大谷は正義の象徴。

レンドンは悪の象徴。

まあ、それはその通りかも知れませんね(笑)。

でも、ひっくり返すことも可能です。

レンドンの発言や行動は、実に奥深いものがあります(それについては改めて)。



報道で知る限り、水原氏は実に正直な人だと思う。正直すぎるほど正直(必ずしも誉め言葉ではない)。

「大谷(を取り巻く状況)に自分の生活レベルを合せることにどれほど苦労しているか」

これ、ものすごく分かる気がする。



基本ダメ人間、グウタラ人間なのでしょうね。と同時に、一生懸命、必死に(大谷の通訳をはじめ膨大かつ様々な懸案に)取り組んできた。たぶん、何が何だか分からない状態のまま(違法賭博への借金という負の要素を背負いつつ)今に至っている。



大谷が、本当の意味で真価を問われるのは、これからだと思います。





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依存症 続き

2024-03-23 20:49:55 | その他



大谷の活躍を楽しみにしている一野球ファンとしては非常に残念な出来事ですが、日本の社会にとっては、案外良い事だったのかも知れません。



「大谷凄い」「日本凄い」の大フィーバーに水を差すような、なんてことをしてくれたのだ、と多くの大衆・庶民が憤慨していることでしょうが、「水を差した」のではなくて「頭を冷やした」のです。



考え方に拠れば、「水を差す」も「頭を冷やす」も同じことで、立場の違いで正反対の意味合いになるだけです。



賭け事依存症で、自分(や周囲)がお金を無くして、(悪徳)胴元が潤う。

薬と置き換えても良いですね。



ファッション依存症で、お金を使って、デザイナーや洋装店が潤う。

グルメ(以下同)、

音楽(以下同)、

コレクター(以下同)、

健康マニア(以下同)、、、、。

基本的にどこが違うのか。



上の例は病気で、下の例は日常(正常)。何をもってそう言えるのか?

医学上の判断だとすれば、どのような基準に基づいているのか?

まさに“かのような”の世界。

精神医学なんて、究極の“かのような”の基盤上に成り立っている。

カウンセリングの胡散臭さ、「向こう側」か「こちら側」かの違いだけで、洗脳合戦を行っているだけです。



法とか科学とか道徳とか教育とかに名を借りた、壮大なからくり。

コロナ騒動や世界中で頻発している紛争も、その“からくり”に基づく洗脳の上に成り立っている。



ちなみに株もギャンブルですね。上手いコメントがありました。

「ギャンブル依存症」を株に置き替えれば「個人投資家」。



法の番人にしろ、科学者にしろ、資本主義社会における成功者にしろ、人間として尊敬を受けているのだろうけれど、光の当て方次第では、悪徳宗教とか死刑囚とかよりも遥かに悪どい「集団洗脳」に加担しているわけで、、、、万死に値する存在なのではないか、と思ったりします。


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「依存症」の本質について

2024-03-22 22:09:13 | その他




暫くは、大谷絡みの話題で行きますね。



僕にとっては「オガサワラシジミ絶滅」をはじめとした野生生物関係の話題も、「大谷の危機」の話題も、同根なので。なんなら、コロナも、ウクライナも、遡って香港デモも、ここしばらく取り上げていないアメリカン・ポップス関係の話題も。



はじめに断っておくと、僕は(多くの日本人野球ファン同様に)大谷選手の大ファンで、彼の人柄云々とかは知らないけれど、前人未踏の挑戦と誰にも成し得ない結果に関しては、文句なく賛美するしかありません。それは必ずしもポジティブな評価だけでなく、野球という団体競技においてネガティブな部分もひっくるめてです。ついでに言えば、一平氏に対しても、胡散臭い、だらしなさそうな人だなと、ずっと思ってはきたけれど、それをも含めて愛すべきキャラであるという受け止め方は、今も変わりないでいます。



ちなみに、僕以外の大谷ファンに対しても、親近感を持っていますが、ただし「大谷崇拝者」には、辟易している、というのが正直な気持ちです(イチローや野茂の時も同じ)。



今回(おそらく今後の展開も含めて)の問題は、単に一通訳、一野球選手の問題にとどまらない、大変な意味を持っていると思う。大袈裟な表現かも知れませんが、日本人、あるいはアメリカという国家、ひいては、民主主義、資本主義、、、、それぞれの本質に直結する問題提起なのではないか、と思っています。



以下、僕が感じたことを、アトランダムに箇条書きで示していきます。



・・・・・・・・・・・



そもそも、スポーツ自体、その勝敗、ギャンブルと被る要素があると思う。



一平氏は、依存症どころか、大学卒業後に、ギャンブルのディラー養成学校で学んでいたとのこと。スポーツの賭け(自分が関わる野球を対象とする場合はともかく)に対しても、ネガティブな心象は持っていなかったはず。それは大谷だって同じかも知れません。



そもそも(むろん現場の人間が直接携わることはご法度としても)大リーグ機構自体が、賭けによって潤う部分があるわけで、合法的なスポーツ賭博を推奨し、どっぷりと積極的に関わっていたわけです。



大阪府のカジノ誘致などについても同じですね。



単に、法律で認められれば、(多くの人々に利益を齎す)「善」。認められなければ「悪」という図式です。それが民主主義の基幹なのです。法は絶対、なによりも上位に位置します。「いかなる理由があろうとも人を殺してはならない」という大前提で、なおかつ法による処刑は「いかなる」からは除外されるのです。考え方に拠れば、それ自体が異様だと思うのですが、皆そうは捉えない。



前回も記したこと。大谷は、一時「仮想通貨」機構の宣伝塔となっていました。倒産して主催者は失脚投獄、大谷の存在によって関わって辛い目にあった人々もいるわけで、本来ならば、ある程度の責任を負う必要があります。



1000億円後払いの件も日本では美談に成ってはいますが、単純に山本獲得などのために為された裏技と考えれば、それを犯罪と見る向きもあるわけで、実際に検察などが動き出しているとも言われています。



お金には無関心、無頓着。(だからこそ)「お金」も、ある意味ゲーム感覚で、良くも悪くも好き勝手に対することが出来る。今回、もっと単純に、大谷も(軽く野球ゲーム感覚で)何らかの立場で参加していた可能性があるのではないかと思っています。



お金に無頓着で恬淡、言い換えれば、お金にだらしない。それは美徳でも欠点でもないのです。大多数の人(殊に日本人)は、“お金にしっかりした感覚を持つ人”が立派であると、価値観の中に刷り込まれているわけですが、なに、言い換えれば、お金に汚い、だけの事です。



一平氏が、「ギャンブル依存症」と自らカミングアウトした由ですが、何か違和感を覚えます。先ほども記したように、カジノのディラーを目指していたぐらいですから、肯定的意味合いも込めて、漠然とそう表現したように感じます。



この一連のニュースのなかに、次の様な、目から鱗の落ちる(ana*****さんと言う方の)コメントを見つけました。

>変な話ですけれど、○○雑誌を買い始めたら、もう依存症の入口だと思います(病気として確定診断されるかどうかは別の話として)。定期購入したらもう決まりです。競馬雑誌、パチンコ雑誌、麻雀雑誌に留まらず、いろいろありますよね。アイドル雑誌、野球雑誌とか、音楽雑誌も、ある意味では依存症頼みだと言えます。SNSもね。大衆を何かの依存症にすることで、本当は使わなくても生活に何の支障もない無駄金を使わせる、これが資本主義の在り方です。罠はどこにでも転がっています。



そうなんだよね。



“依存症”の本当の意味に、誰もが気が付かないでいる。



普通に、社会構造の中に、無意識の依存症的要素が組み込まれている。皆、何らかの形で「依存症」であり(それを医学が「疾患」と判断しないだけ)、それを基に為される同意圧力に無意識のうちに相互に加担し合っているのです。



本質的な意味では必ずしも必要としない様々な要素を、あたかも生活に必須な要素と刷り込まれることで、資本主義社会が回転しつづけ、成り立っているわけです。



ファッションにしろ、食べ物にしろ、エンターテイメントにしろ、無意識的に依存を推奨(同調圧力)する流れが構築されてしまっている(僕だってある意味ネット依存症)。



大多数の人の賛同を得ることが出来れば、本質とは無関係に、社会にとって「正義」であり、そうでなければ、(本質とは無関係に)「悪」とされる。ギャンブルとか薬物とかは、そのボーダーラインを行ったり来たりしているわけです。たまたま「悪」の側に引っかかると「極悪人」となる。



法律あるいはルールを守る、ということは、本質的な善悪を問うのではなくて、自分が「同調圧力」「空気」「集団性自己中」に基づくセフティ・ゾーンにいる、ということです。それが悪いとは言いません。集団の形成・安定(いわゆる“平和”ですね)にとっては必須要素だと思う。でも、それだけが「善」ではない。



野茂の時だって、掌返しは凄かったですよ。それを自分たちが行っていたということを、皆スッポリと忘れている。英雄崇拝者、そして池に落ちた犬を棒で叩く。それを繰り返し行っているのは、プーチンでもトランプでもなく、自分たちなのです。




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水原通訳の解雇

2024-03-21 21:52:31 | その他



2つのコメントを引用しておきます。反吐が出るような、日本人の「単純金太郎飴的正義」に則った、卑しく俗っぽいバカ丸出しコメントが沸き上がるなかで、数少ない冷静かつ妥当な意見だと思います。

【yam****さん】>米の報道を見ると、違法賭博に大谷の名前で送金があり、賭博の借金の肩代わりを大谷がしたが、違法賭博で大谷の口座からの送金自体が違法に問われる可能性があるから、横領って形にして代理人弁護士から告発って流れでしょう。単純な横領とは違う気が。そもそも違法賭博をするなって話だけれど、水谷通訳自身も違法とは認識していなかったようですし。

【car****さん】>まだ詳細が判からない段階なので、勝手な想像でコメするのはいけないことと承知はしていますが、どうしても最悪な不安が湧いて来てしまう。まさか一平さんが「身代わり」なんてことは無いよね・・・。有り得ないと信じるが、大谷選手に関しては彼の全てが異次元の世界なので、ナニが起こるか分からない怖さがある。



・・・・・・・・・・・



キーポイントになるのは、大谷選手の弁護士が告発した、という点。



弁護士は依頼人を守るのが大前提。



事件が発覚すると最も打撃を受ける(それも並大抵の程度ではない)のは大谷本人。ということは、弁護士は逆の手段(絶対に行ってはならないこと)を選択したわけです。



なぜか? それを行わないことには、大谷の野球人生自体が閉ざされてしまいかねない、という事態に直面しかねない(結果として大谷も関与して違法行為に携わった)。ならば、水原氏の「横領」という形で最悪の事態を逃れる、それしか方法がないと判断。



この案件、一歩間違えると、大変な展開になっていくかも知れません。



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筋肉増強剤の使用で、ボンズ、マグワイアほかの大選手が抹殺された訳だけれど、本人たちは大して罪の意識はなかったはず。だってそれも薬の一種だし、捉え方に拠れば、全ての薬が使用できなくなってしまう。例えば、酒や煙草を嗜んでいる人たちが、あるとき突然に逮捕(知らないうちに法律が改正されていた)、ということも有り得るでしょうから。



お金の問題も、むしろお金に不自由しない、かつ無頓着、無関心な人たちが、予期せずに陥るのかも知れません。

社会の歯車に取り込まれて(それを動かしているのは、回り回って大衆・庶民)。



引っかかるのは、以前(つい最近まで)大谷本人が某「仮想マネー」企業の広告塔になっていたこと(その企業は破産し、主催者は懲役50年)。これについては、なんかモヤモヤ感が残ります。



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西鉄ライオンズの池永氏の事は、以前ブログに書いたですね。



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大鵬がまだ親だった(?)頃の大鵬部屋のロシア出身力士・露鵬(とその弟の白露山)が、八百長容疑絡みで角界追放処分を受けた時、露鵬は随分後まで無実を訴え続けていたのですが、結局は闇に葬られたまま今に至っています(同じ頃、一度は追放された中国籍の蒼国来は、後に訴えが認められて復帰している)。



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僕の生涯の自慢(笑)。若貴兄弟が台頭し始めた頃、国民こぞって彼ら(や両親)の事を「理想の一家」として手放しで持ち上げていたわけだけれど、僕は「見ていなさい、そのうちに皆が予想だにしていない、とんでもない事態に展開していく、断言する、、、、」と友子さんに言ったことがあります。



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全ての根源が、(巡り巡って)大衆・庶民の「私欲」「責任逃れ」「個人(強者)崇拝」「空気への同調」といった属性に収斂されることを、ほとんどの人が気付かないでいるのです。



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いずれにせよ、大谷選手、水原氏には、それぞれの立場で今後とも頑張って欲しいと願わずにいられません。







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正義の味方

2024-03-20 16:06:58 | その他



神戸大学のニュース。



コメントを読んでて、暗澹たる気持ちになりました。

たぶん大多数のヤフコメ民とは、正反対の理由で。



数多の(もちろん横並びの)報道の中で、次の一つが引っ掛かりました。

安住紳一郎アナ 神戸大サークルの迷惑行為に「ちょっと信じられない…むしろ違う事情があるのかもとすら」(スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース



「むしろ違う事情が、、、、」

これ、かなり深い意味合いを含んでいますね。一つの事件が起こった時、それを取り巻く状況を全て俯瞰的に見渡さねば、本当の意味での問題の解決には結びつきません。それを、短絡的にしか見れない(答え絶対志向)のが、日本社会の致命的な欠陥です。



“自覚せずに嬉々として迷惑行為を繰り広げる輩は幼稚園児以下/受験勉強一筋で人間としての有り様を学んでいない/自分たちの犯した罪の大きさを自覚すべきである/このような悪塊は社会から永久追放しなくてはならない”といった金太郎飴的コメント。



むろん正論ではある(僕だって一応そう思う)のですが、このようなコメントをしている「正義」の「常識人」たちも、別の角度から覗い見れば、実はとんでもない悪業を(むろん全く無自覚に)行っているのかも知れません。価値観を同じくする社会の中では、悪ではなく善と見做されているだけであって、、、、。



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「近所の森と道端の蝶(福岡編)」完成目前まで漕ぎつけているのですが、最後の詰め(字体を揃えたり誤字の訂正、データの確認、等々)で、手間取っています。次回ブログでは、完成報告をしたいです。



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今日は、ダルビッシュ対大谷の対決、尊富士新入幕力士110年ぶりの優勝に向けて大関琴の若との大一番、と楽しみが尽きません。我ながらミーハー全開です。






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教育とは洗脳の同義語

2024-03-16 21:40:24 | 雑記 報告




教育は洗脳である。



要は、同調圧力の行い方、を習う場なんだと思う。



僕は教育を受けてこなかったから、そのことがよくわかる(随分と損をしていると思うけれど、裏返してみれば、得もしている)。



大谷/白鵬。

権威、メディア、大衆の織り成す、日本のみっともなさの象徴。



白鵬、偉いよね。これだけ叩かれても、淡々と自分の仕事をこなしている。



メディアが大罪の根源である曰くは、彼らが教育によって構築された「正解は一つ」という選抜思考(=洗脳)から抜け出せない、エリート集団から成り立っていること。空を飛ぶカモの群れが、先頭の一頭に何の疑いもなく追従するごとき、大衆の(無意識の)エリート崇拝、権威への憧れ。



「もしかするとあの時の海老さん(日本に帰化した元中国人)」曰く、「日本の最大の欠点は“表現の自由(報道の自由)”が認められていること」。それは結果として弱者・少数者からの自由の剥奪(無意識のうちに為される空気・同調圧力の形成)に繋がる。まやかしの民主主義。



大谷のいなくなった(正確には「大谷とともに押し寄せた形容しがたい空気の集団が消え去った」)エンゼルスは、選手も首脳陣も裏方も皆、見違えるように生き生きしている由、今年の躍進は必至である。



一方ドジャースは、大谷、山本の加入は戦力としては文句なしのプラスだけれども、「日本の大衆」という、とんでもないお荷物も一緒に背負い込んだわけである。どうなることやら。



大谷には、前人未踏の境地を目指して頑張ってもらいたいと、心から願わずにはいられない。でも、活躍すればするほど、メディアや大衆が日本人の恥を晒しまわる結果になるわけで、それを思うと、鬱々とした気分になってくる。



・・・・・・・・・・・



今日は、アパートから徒歩1分の路傍で、ルリシジミの写真をドッサリ撮影しました。それをブログにアップしようと思ったのだけれど、スマホからパソコンへの取り込み方が分からない。ということで、いつものごとく、、、、。




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大谷と白鵬

2024-03-11 11:07:08 | コロナ、差別問題と民主化運動、人類の未来



明歩谷が亡くなりましたね。86歳。

元祖イケメン力士。若浪との吊り合戦は実に見応えがありました。

横綱吉葉山の興した宮城野部屋は、ソップの明歩谷とアンコの廣川が2枚看板だったのですが、引退後の明歩谷が信心するエホバの証人の「戦いは悪」の教義に基づいて相撲協会を去ったため、廣川が後を継ぎ、竹葉山を経て白鵬に繋がったわけです。

そして、明歩谷逝去と時を同じくして、宮城野部屋の消滅(閉鎖)、、、、。



明歩谷は全盛期の大鵬(明歩谷より3歳下)に5勝しています。関脇以下の力士としては稀有の成績です(ちなみに、大鵬に2桁勝利を挙げているのは、柏戸の16勝と僕が応援していた大関北葉山の11勝だけ)。



大鵬は白系ロシア人のハーフ。白系ロシア人と言えば、日本球界最初の300勝投手スタルヒンもそうですね。白系ロシアはおおよそ今のウクライナに重なるので、最近の情報などではウクライナ人とされたりしています(実際はいろいろと複雑です)。ちなみに明歩谷は北海道先住民族(アイヌ)の末裔。



大鵬と同じ年の王もハーフ(現在でも国籍は台湾、父親の出身地は中国大陸の浙江省)。そういえば、金田も張本も、それから力道山も朝鮮半島だし。ダルビッシュの父親はイランですね。



戦後の最強力士は、間違いなく大鵬です。もう一人挙げるとすれば、白鵬でしょうか?数字は嘘をつきません、2人とも圧倒的な強さでした。



白鵬に対する仕打ち、これ、露骨な集団的いじめそのものですね。



朝青龍、日馬富士、逸ノ城、白鵬(with北青鵬)、、、、モンゴル出身の覇者を、ことごとく極悪人に仕立てて抹殺していく日本の社会。それを“当然”と受け入れる大衆、、、例えようのない恐ろしさを感じます。



そこはかとない恐ろしさ、ということでは、大谷に対する報道・大衆のスタンス。これ、いったい何ですかね?僕もみんなと同じく「大谷君の母親・父親」目線で、心から彼の活躍を願っているわけですが、それらの人々の総意が、いつの間にか「日本人凄い!」に置き換えられて行く。そして無意識な個人崇拝(大谷を善の象徴として周囲の善悪を振り分けて行く)。



日本は正義の民から成る平和な国です。そして責任逃れの国です。平和も正義も民主主義も、責任逃れと同義語。ウルマさん問題など、つくづくそう思います。



人類の歴史は、戦争の歴史でもあります。なぜ戦争は無くならないのか?なぜ平和を目指さないのか?人々が正義と平和を主張し続ける限り、戦争は永久に無くなりません。



悪のトランプが、悪のプーチンと組めば、正義の味方ゼリンスキーが失脚して、ウクライナ紛争は一段落するでしょう。それが良い事か悪い事かは別として、少なくとも人々の犠牲は今よりも少なくなるはずです。



共和党予備選はトランプ圧勝。テイラー・スイフトがバイデン陣営についたそうです。僕は、現代の音楽シーンがまるっきり理解できないでいるのですが、彼女の魅力は分かります。

田舎(僕がナッシュビルにいた頃、ちょうどそこで活動をスタートしていたみたい)の一少女カントリー歌手から、今や全米のアイコン的存在に。彼女を受け入れるアメリカ人の気持ちが分かるような気がします。ついでに日本人には分からないだろうということも分かる気がする。



根っこは今でもカントリー。それにリズム&ブルースとかごっちゃになった、いわばアメリカン・スプリットの原型のようなものを感じ取れます。僕の中ではエルヴィスにダブります。ぶっちゃけ、彼女の天敵のトランプとも共通するような。



いっそのこと、トランプVSテイラー・スイフトで戦えば面白い、と思います。







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日本国内絶滅第1号種オガサワラシジミと、ルリシジミ、スギタニルリシジミについて(その7)

2024-03-09 08:01:53 | 日本の蝶、中国の蝶





オニタビラコ(帰化植物)の花を訪れたオガサワラシジミ 小笠原母島乳房山山頂付近Apr.6, 1993



この連載というか一連の報文を書き始めた本来の目的は、昔(1970年代)にドッサリとっておいた、父島におけるオオバシマムラサキとシマムラサキへの産卵行動、および幼虫の周日活動などの写真&データを探し出して発表する事だった。が、それが出てこない。どこかにあるはずなんだが、ダンボールの中をいちいち探すのは至難の業である。ということもあって、まず御本尊ともいえるルリシジミをはじめとする関連種の紹介から初めて、それを行っているうちにオガサワラシジミ関連の資料も出てくるだろうと暢気に構えていたのだが、どだい端から探し出す努力をしていないものだから、出て来るわけがない。とりあえず今回はそれらの紹介は諦める。出てきたときに改め発表していきます。



ルリシジミの話に戻る。スギタニルリシジミやウラジロルリシジミ、あるいはアリサンルリシジミの一群も、オガサワラシジミ成立の何らかのカギを握ってはいるだろうけれど、やはり本命は御宗祖様のルリシジミであろう。見かけの差はともかく、様々な形質でオガサワラシジミに最も関連の深い種であることは確かだ。小笠原に最も近い地域、伊豆諸島南部や、南西諸島北部でも記録がある(分布の北上、ではなくて、南下ですね)。



ルリシジミは14亜種(Eliot&Kawazoeが選択したもの、記載自体はもっと沢山ある)が、ヨーロッパのほぼ全域から、北アフリカ、中東、中央アジア、ヒマラヤ、中国、台湾、日本海周辺、シベリア、北米、中米の、北半球冷温帯(いわゆる周北極圏)地域に広く分布し、唯一熱帯に相当するフィリッピン・ルソン島から亜種suguruiが記録されている。五十嵐邁氏がルソン島で採集し、Eliot&Kawazoeで新亜種記載が為された。



五十嵐氏の採集品には、もう一つの亜種が含まれている。北イラクのクルド地方で採集された、おそらく亜種hypoleucaに属する個体。その採集品は川副氏らには提供されていないのではないだろうか(標本、♂交尾器とも図示なし)。というのは、実は、それ以前に僕が譲り受けているのである。



経緯は忘れた(おそらく五十嵐氏が採集した当地のルリシジミの翅裏に青い鱗粉が顕著に覆うことを何かで知って氏に質問していたのだと思う)。氏の結婚式披露宴に出席した際、わざわざその標本を贈呈してくださったのだ。



早速♂交尾器をチェックしたのだが、ルリシジミとしてはごく平均的な形状、オガサワラシジミとの詳細な比較検討をしないままに今に至っている。川副氏がルリシジミを纏めると聞いた際、それを差し上げればよかったのだが、当然五十嵐氏から直接別個体が渡っているだろうと思っていた。考えてみれば貴重な資料だある、押し入れのダンボールのどこかに入っているはずなので、改めてチェックしたい。むろん、直接的には何の関係もないだろうけれど、オガサワラシジミ成立の何らかのヒントのようなものが暗示されているかも知れない。



小笠原が1968年に日本に返還された直後からの数年間、京都大学の小路義明氏たちによる詳細な調査が行われ、それと入れ替わるように僕が小笠原を訪れたのが1976年から1993年にかけてである(1976/1977/1979/1981/1988/1992/1993年)。写真やデータのかなりの部分を消失してしまったが、それでも今回運び込んだダンボール中に少なからぬ写真が残っているはずなのだが、現時点では見つけ出せないでいる。



1970年代後半には、各所に群がり飛んでいた父島のオガサワラシジミは、1980年代に入って激減、1988年の時点ではほとんど見ることが出来なくなってしまっていた。一方、以前から“大発生”という状況にはなかった母島では、余り顕著な変動はなく、少ないながらも確実に姿を見ることが出来た。



1988年の夏も小笠原に滞在していた。その年の春に最初の中国大陸行。ギフチョウ属やキマダラヒカゲ属の種をたっぷり撮影し、初夏、今後のフィールドを中国大陸に移そうと目論んで、大学に留学すべく東京の中国大使館を訪れたのだが、中卒はダメ!と情け容赦なく却下されてしまった(中卒どころか実質一年生までしか通っていなかったので、卒業証書も提出できなかった)。



それで諦めて、その夏も小笠原に渡っていたのである。8月末、役場に電報(まだ電話が充分に普及していなかった)。友子さんの父上からである。僕の代わりに大使館にウイスキーを2本携えて、再度申請に行った、すると許可が下りた由。新学期(向こうは9月)が始まるので、すぐに戻って来いと。それ以来、主戦場は中国に移ったのである。



中国と日本を行き来する間を縫って、1992年と1993年にも短期間母島を訪れた。92年には、北港道路(石門分岐点)路肩繁みに生えるタチアワユキセンダングサの花に多数吸蜜に訪れているのを撮影した。93年には乳房山山頂付近で、コオニタビラコの花に静止している個体を撮影(冒頭写真)。今思えば、70~80年代には、在来固有種シマザクラが主要吸蜜源(ほかにムラサキシキブ属各種)だったのが、90年代に入ってからは、帰化植物のタチアワユキセンダングサとコオニタビラコに代わってしまっていたのである。



70年代には余り記憶になかったタチアワユキセンダングサだが、80年代末から急激に増えだしたようである。ちなみに、当時並行してフィールドとしていた屋久島でも、80年代前半まではコシロノセンダングサばかりだったのが、90年代に入って久しぶりに訪れたら、まるで魔法のように、ほとんど全てがタチアワユキセンダングサに置き換わっていた。



1993年を最後に小笠原へは行っていない。「父島では絶滅したらしい」「母島でもほとんど見かけない」と言う声が聞こえてくる。



2018年、小笠原日本返還50周年記念ということで、インターネット・マガジン「現代ビジネス」にオガサワラシジミの話題について寄稿した。前後28回渡って掲載した「現代ビジネス」だが、蝶についての話題は後にも先にもこれ一回だけ。



国(東京都)や権威研究機関が“オガサワラシジミ”に対して行おうとしている“保護対策”に対する批判記事である(確かその数年前に朝日新聞社発行の科学雑誌“サイアス”にも同様のことを書いた)。国や都や自然保護機関が行おうとしている保全運動は安易に過ぎる。野生個体絶滅宣言、場所を移して飼育し、現地に再導入する試みなど、もってのほかだ、と。読者の反応は、28回の記事中、最悪(というか無関心)だったようである。



2020年になって、本土(多摩動物園、新宿御苑)での飼育系統個体も全滅、という情報。「それ見たことか」と言いたいところだが、そのような言い方は止めて置こう。看過するわけにはいかない、由々しき事態なのである。



オガサワラシジミの絶滅は、そん所そこらの“絶滅”とは訳が違う。



生物の種の絶滅は、その大半が次の2つのパターンに帰属する。



地域個体群の絶滅。分かりやすいのはトキの例だ。日本に於ける唯一の棲息地佐渡の個体群が絶滅した。しかし中国の秦嶺山地にも同じ種の個体群が健在、従って「種」が絶滅したわけではない(そのため人為的再導入が為された)。



蝶で言えば、オガサワラシジミと並んで、絶滅一番手と目されていた(オガサワラシジミと共に絶滅危惧第一類)日本本土の山地草原に棲む4種、オオルリシジミ、オオウラギンヒョウモン、ヒョウモンモドキ、ウスイロヒョウモンモドキは、それぞれ非常に限られた地域に、絶滅寸前の状況下で生き延び続けている。行政や自然保護団体が必死になって保護政策に取り組んでいる。これらの種は、ひと昔前までは、今よりもずっと広い範囲に分布していた。この数十年の間に急速に衰退して行ったのはオガサワラシジミと共通する。異なるのは、分布範囲が圧倒的に広い事。種としては、日本海を取り巻く極東アジアに広域分布しているのである。そのうちの南辺、すなわち日本列島に於いて急速に衰退しているのだが、北辺のロシア沿海部、朝鮮半島、中国東北地方などでは、必ずしも滅亡の危機に晒されているわけではない。日本国内では絶滅寸前だが、種としては健在なのである。





オオルリシジミ Glaucopsyche(Shijimiaeoides)divinus

長野県上田市 Jun.17,1990

現在では絶滅してしまった可能性のある産地。オオルリシジミはルリシジミと名が付くが、ルリシジミの仲間ではなく、カバイロシジミやゴマシジミのグループ。ちなみにオガサワラシジミの他に後翅裏基半部に顕著な青緑色鱗粉を備えるのは、日本ではこのオオルリシジミと、北海道やシベリアなどに分布するカバイロシジミぐらいである。





オオルリシジミ Glaucopsyche(Shijimiaeoides)divinus

長野県上田市 Jun.17,1990





オオルリシジミ Glaucopsyche(Shijimiaeoides)divinus

熊本県阿蘇山 May 21,1993

この産地は保護政策が取られていることから今も健在と思う。





オオルリシジミ Glaucopsyche(Shijimiaeoides)divinus

熊本県阿蘇山May 21,1993





オオウラギンヒョウモン Argynnis(Fabriciana)nerippe

大分熊本県境九重高原 Aug.9,1992





オオウラギンヒョウモン Argynnis(Fabriciana)nerippe

大分熊本県境九重高原Aug.9,1992





ヒョウモンモドキ Melitaea scotosia

広島県芸北町 Jul.10,1992

この産地における現在の状況は未詳(絶滅?)。





ヒョウモンモドキ Melitaea scotosia

広島県芸北町 Jul.10,1992





ヒョウモンモドキ Melitaea scotosia

広島県芸北町 Jul.9,1992





ウスイロヒョウモンモドキ Melitaea regama

島根県三瓶山 Jul.13,1993





ウスイロヒョウモンモドキ Melitaea regama

島根県三瓶山Jul.13,1993



その他にも、日本の各地で風前の灯状態にある、チャマダラセセリ、ウラナミジャノメ、ヤマキチョウなど絶滅危惧1B類の種も、中国に行けば大都市周辺で、地域によっては市街地の真っただ中で、ごく普通に見られたりする。なんで日本だけ衰退しているのだろうかという思いはあるにせよ、種としての絶滅とは意味が違う。



もう一つの“固有種絶滅”パターンは、確かに、離島や特殊環境に於いて“固有”であることには違いないにしろ、分類群(いわゆる“種”とはなっていても、実質的には品種程度)としては、ごく短い期間に成り立った変異集団に基づくもので、消滅の速度も速い可能性がある(いわゆる“絶滅種”の多くもそれに準じる)。極論を言えば、環境の推移次第で新たに再出現することもあり得るかもしれない集団。



オガサワラシジミの場合は、その両パターンとは明確に異なる。正真正銘“種”の絶滅である。問題の大きさが桁違い、例えて言えば、マンモスの絶滅が、今目の前で為されているようなものである。



ルリシジミやスギタニルリシジミが共通祖先種であることには間違いないが、♂交尾器の比較に基づけば、明らかに独立した固有分類群だ(例えて言えば、絶滅マンモスとアフリカゾウやインドゾウとの関係)。そのことを鑑みれば、公的機関の声明や報道は、余りに淡泊かつ無責任で、違和感を覚える。



通常、新たに種が形成されるのには、数百万年の時間が必要とされる。数百万年間、小笠原という空間は存在したのか。普通に考えれば、こんな小さな陸塊が水没せずに存在し続けることは有り得ないような気もする。ただ、ハワイの生物相の由来(詳細は別途に説明予定)が、単に洋島として捉えれば説明できなくなる(火山移動)のと同様、古小笠原陸塊も今の小笠原と相同のもの(位置や性格)である必要はない(小笠原は“大洋島”ではないという解釈もある)。小笠原固有種が、ずっと小笠原にいたとは限らない。連綿と連なる、幾つもの時代、幾つもの陸塊を、移り住んできた、という可能性も考えられる



そうであるならば、オガサワラシジミの成立も、ルリシジミそのものから派生したのではなく、ルリシジミがスギタニルリシジミ・ウラジロルリシジミと分化する前の、アリサンルリシジミなどとの共通祖先型に基づくと見做すことも可能である。



♂交尾器から見ても近縁各種とは確実な安定差があり、どこか(日本本土や中国大陸)から島に移って、短い期間(数千年とか数万年とか)の間に特化した集団とはとても考え難い。



一般に種の成立には数百万年(人類もそうだ)を擁し、その間の隔離と変化に伴って、独自の形質・性質が齎される(蝶の場合交尾器の形状に如実に表現される)。



もっとも、それだけが種の成立過程とは限らないという見方もできるかも知れない。日浦勇氏や川副昭人氏らの談話会の際、「種のごとく振る舞うことで成立した種」という話題が出てきたことがあった。数100万年かかるであろう必須手順をすっ飛ばして、ショートカットで実質的な種としての機能を獲得(仮免許のようなもの)、後付けで紛いなき種としての独立性を確立するものもあれば、何らかのきっかけで元の集団に収斂していくものもある。遺伝的に異なるのに、形態・形質差が無いという、いわゆる隠蔽種の存在も、その一端なのかも知れない。





まあ、数100万年でも数万年でも、人間の認識からは想像もつかないような修羅場が繰り返されてきたであろうことは想像に難くはない。それをこの10数年間に為された、外敵の出現や、一度や二度の気候変動で説明できるなどとするのは、大いなる思い上がりだと思う。何か、もっと大きな、人知の想像を遥かに上回る、複雑多様な要因が関与している、と考えた方が妥当ではないだろうか。



ただ、21世紀に切り替わった頃に、様々な生物の種や地域個体群が、突然消滅してしまっている、という事実が確かにある。何かがある。むろんその“何か”に人類の行動が大きく関わっているのだろうことは間違いないだろうが、それだけ、と言うわけでも無さそうに思う。自然の摂理のようなもの。



例えば、余りに非科学的な話になるが、進化とか環境とかが関与しない、種としての“賞味期限”のようなもの。人類を含めた地球上の様々な現存生物の多くが、種として数100万年の歴史があるとすれば、(いつか来る大地震みたいに)一斉に滅亡期に突入する、ということがあっても良いのかも知れない。



それに関して気になるのは(もちろん非科学的です)ルリシジミが最近目立って減ってはいまいか?だとすれば、オガサワラシジミを含めたルリシジミ一族(注:分類学上のtribeではない)の生命力が衰えつつある、と言うことである(そんなことはまずないと思うけれど)。



オガサワラシジミの絶滅に至った理由を、研究者や専門家たちが、理路整然と説明している。外敵の増加、環境や気候の急変。それを人為調節できなかったことを悔やんでいる。さらに人為による繁殖の失敗、それは慎重になり過ぎたからで、もっと早くに現地放出し再移入を測るべきだった、等々。



いろんな意味で、違うんではないかい? と思う。



ここで、いつも例に出すジョニー・ティロットソン絡みの話を。



1964年春、ビートルズがアメリカに上陸来襲(ブリティシュインベーション)して、それまで主役を占めていたポップアイドル的歌手たちは見事に一斉駆逐されてしまった。一面ではその通りだと思う。でも、よくよく検討分析すれば、タイムラグがあるのですね。



正確には、ビートルズによって駆逐されたのではなく、ビートルズたち新勢力のブレイクを齎した時期(および要因)と、旧アイドルたちの衰退を齎した時期(および時期)が、重なっている、ということ。旧いのに飽きてきて、新しいのに飛びついた。



(エルヴィス登場後の1957年からビートルズ上陸前の1962年頃にブレイクした)ビートルズ上陸直近のアイドル的歌手たちのヒット曲の推移を仔細にチェックしたところ、彼らが第一線で継続して活動していたのは、5~6年から長くて7年間。57‐58年スタート組は、概ねビートルズ来襲1~2年前の62~63年には勢力が衰え、ビートルズ旋風の時点では既に第一線から退いていた。一方、61-62年スタート組は、ビートルズ来襲の1~2年後の65~66年頃まで第一線で活躍。ということは、もともと全盛期は限られていたわけで、ブリティッシュインベーションに関わらず賞味期限切れで退場したのに過ぎなかった。



もちろん、新世代台頭と、旧世代衰退は、同じ要因に発しているわけで、大いに関係はあるのだけれど、

直接の関わりはない。



帰化種の繁栄と、在来種衰退も、同じ構図。要因は(非常に複雑多様だが)共通し、むろん一部直接の影響(捕食など)もあるだろうけれど、問題はそれだけではない。



ちなみに、アイドル的歌手達も、表舞台からは退いたけれど、その後もそれぞれの自分たちの音楽を地道に発表し続けているわけで、ある意味むしろ健全な状況に戻ったとみることもできる。



オガサワラシジミも、島のどこかに生き残っていると思う。そしてそれ(大発生などせずに細々と暮らしていること)が健全な状態なのかも知れない。



数100万年、あらゆる修羅場を乗り越えて生き続けてきたネイティブ固有種は、少々の気候変化とか人為攪乱とかで滅びてしまうなど、ヤワではない。



巷に言われるグリーンアノール(侵入者代表)とオガサワラシジミ(ネイティブ代表)の関係にしても、両者に早い時期から接してきた僕にすれば、違和感満載である。間違っている、とは言わない。でもそれだけが正解ではない、と。



オガサワラシジミの幼虫は、見事に食草の蕾に溶け込んでいる。確実にそこにいると確信していなければ見つけ出すことは出来ない(それでもアノールの眼からは逃れられないのかも知れぬが)。あるいは、幼虫は信じがたいほどの相当なスピードで移動する。常に草上にいるとは限らず、むしろ地上に潜んでいる時間の方が長いくらいである。



あと、僕の感触では(保護団体などが躍起になって植生回復に取り組んでいる)オオバシマムラサキは、

本来のメイン(ベーシックな)食草ではないと思う。



ルリシジミの食草が様々な科の植物に跨るように、オガサワラシジミの食草も多岐に亘っているのではないだろうか? 蕾、花芽、若葉など肉厚部分を食することのできる、クス科を含む様々な植物。とりあえず、本命とされているムラサキシキブ属に絞っても、半ば雑草的性格を持つ陽樹のオオバシマムラサキではなく、急斜面の、かつより閉ざされた林間ギャップなどに生じるシマムラサキのほうが、本来のオガサワラシジミ生育地と重なっているのではないだろうか?



探しに行きたいですね。(国家権力による実質的妨害を含む)ハードルも予想されるし、先に記したように、理由はともかく、オガサワラシジミと時を同じくして21世紀に切り替わった前後に、各地で多くの生物が絶滅してしまっている、という現実に対する一抹の不安はあるにしても。



幾らかの予算。カメラ。体力。それらさえ整えば、一度時間をかけて島中のチェックを行いたい。もし見つけたら、公式な発表はしない(少なくとも正確な場所は教えない)。国や都や権威機関が、保護とか種保全とかの名目で、飼育個体群の放蝶などに取り組み始めたら、目も当てられないし、、、。



・・・・・・・・・・・・



現時点で、オガサワラシジミの(70年代を中心とした)撮影写真は、ほとんど見つけ出せていません。手許にあるのは、「小笠原緑の島の進化論」に使用した写真(のコピー)と、90年代の写真の一部、それにクオリティの著しく低い、ストロボ使用(失敗例)の数枚の写真、それに加えて1-6回の冒頭で紹介した写真を再掲。



 

オガワワラシジミ(再掲)

母島猪熊谷Sep.23,1993(以下4枚同じ)



 

オガサワラシジミ



 

オガサワラシジミ(再掲)



 

オガサワラシジミ



 

オガサワラシジミ



 オガサワラシジミ 

母島Jul.18,1978





オガサワラシジミ(再掲)
母島Aug.1,1988





オガサワラシジミ(再掲)
母島Aug.1,1988





オガサワラシジミ

撮影データ確認中





オガサワラシジミ

撮影データ確認中





オガサワラシジミ

最初の渡島時(11976年)に撮影した写真の一枚(撮影日データ確認中)





オガサワラシジミ

極めてクオリティの低い♂開翅写真

母島乳房山南面尾根上に左右の谷から吹き上がってくる

Jul.6,1976





オガサワラシジミ(再掲)

母島乳房山Jul.6,1977







オガサワラシジミ

父島中央山Aug.8,1979





オガサワラシジミ(再掲)

父島中央山Aug.8,1979









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日本国内絶滅第1号種オガサワラシジミと、ルリシジミ、スギタニルリシジミについて(その6)

2024-03-06 21:10:46 | 日本の蝶、中国の蝶





オガサワラシジミLycaenopsis(Celastrina)ogasawaraensis ♂

小笠原母島乳房山南面Jul.6,1977



・・・・・・・・・・・・・・



典型Celastrina11種の続き(ルリ-オガサワラ-スギタニ・ウラジロcomplex以外の種)

*概ね大型種



6:オオヒマラヤルリシジミ(仮称) gigas

大型種だが、雄交尾器の形状はsugitanii‐hersiliaとほぼ相同。分布圏西端のcomplexの一員と考えても良いかも知れない。 



7:ニシヒマラヤルリシジミ(仮称) huegelii

2ssp.ヒマラヤ西部‐中部。雄交尾器形状は外観が似通った以下の各種よりもargiolusやhersiliaに近い。



8:アリサンルリシジミ oreas

8spp.アッサム、東南チベット、雲南、四川、台湾、浙江、陝西、山西、朝鮮半島など。

以下4種は♂交尾器形状が類似する。



9:morsheadi

2spp. 東南チベット、雲南北部。



10:オオアリサンルリシジミ(仮称) perplexa

2spp.

>10a: perplexa 四川西部。●

>10b: kuroobi 雲南北部 (Yoshino2002:Eliot & Kawazoe1983の時点では未記載)。●



11:キタアリサンルリシジミ(仮称) filipjevi

2ssp. 極東ロシア、中国東北部、朝鮮半島。



・・・・・・・・・・・・・



オガサワラシジミに最も近縁の現存種は、北半球広域に分布するルリシジミargiolus、あるいは東アジアに固有のスギタニルリシジミsugitanii-ウラジロルリシジミhersilia complexの2種(2上種)に

間違いない。それなりに古い時代に両者の祖先集団から派生したのか、比較的新しい時代になってルリシジミ移動集団の特化に拠るものか、どちらかはともかくとして。



でも、何れの集団とも外観はまるっきり似ていない(あとで述べる北イラク産ルリシジミなどを別として)。



狭義のCelastrinaには、ルリシジミ+(スギタニルリシジミ+ウラジロルリシジミ)のほかに、アリサンルリシジミとその関連数種が含まれる。♂交尾器に関しては、様々な部位が顕著に異なる南方系のホリシャルリシジミとは違って、全体的にはルリシジミ+(スギタニルリシジミ+ウラジロルリシジミ)と共通している。相違点は、valvaの概形が上下に幅広いまま前後に広がり、ampullaの腕状遊離部が後方に伸びずに押しつぶされた状態になること。全体的に大振りで、コンパクトで寸詰まりな傾向のオガサワラシジミとは反対方向に特徴が示されていることになる。



ただし、(サイズの大小を別にすれば)外観の印象(♂翅表の濃紺色、黒い縁取り、裏面の青色鱗など)は意外と両者(オガサワラシジミとアリサンルリシジミ類似種の一部)で共通する。従って、アリサンルリシジミ(とその関連種)の存在も、オガサワラシジミの成立に関わる何らかのヒントを秘めていると思える(祖先形質の共有)。



僕がこれまでの報文(「中国のチョウ」「週刊中国の蝶ルリシジミ」「中国胡蝶野外観察図鑑」など)で「アリサンルリシジミoreas」としてきたのは同定間違いである。それについてのエクスキューズを行っておく。



僕のメインフィールドは、雲南省西北部の梅里雪山や雲南四川省境山地。これまでに撮影した蝶の多くが、この地域の集団である。そこで普遍的に見られる種が、僕にとっての「中国の蝶」の基準になっている、と言う側面がある。もちろん、中国全体から見れば、ごく辺境の地であり、この地域での「普通種」が、中国の蝶を代表しているわけではないことは分かりきっているのだけれど、無意識の上で、ついつい「ポピュラーな種」と見做してしまっている。



例えば、シロチョウ科のAporia lhamoとか、タテハチョウ科のNeptis imitansとか、セセリチョウ科のPedesta bivittaとか、はじめのうちは種名が分からずに戸惑っていた。それぞれ外観に極めて特徴をもつ、少なくともこの地方に於いては最普通種なので、名前が分からないわけがない、と楽観していたのだけれど、同定できるまでに随分と時間を擁してしまった。



この“オオアリサンルリシジミ雲南亜種”もその一つ。何しろ、普通種も普通種。場所によっては、夏の最中にはこの蝶しか見られない、というほど、一面に群がり飛んでいるのである(そういえば70年代の父島のオガサワラシジミもそうだった)。というわけで、てっきり誰もが知っている中国産蝶類の最普通種のひとつ、と思い込んでいた。すなわち「アリサンルリシジミ」だと。



Eliot&Kwazoeには、アリサンルリシジミに類似した3種が図示されている。Huegelii(東北インド産亜種oreoides)、oreas(東南チベット産の新亜種baileyi)、perplexa(四川省康定産の新種)。



しかし、手許に多数の写真がある雲南省北部産の特徴は、どれにも当て嵌まらない。翅表の外縁沿い黒帯が広い点はperplexaに相当するが、この個体群のもう一つの顕著な特徴の一つである前翅裏面外縁沿い下半部の黒斑の発達は見られない。その特徴に関してはhuegelii oreoidesが相当するが、翅表の黒帯は発達せず、産地も離れている。ということで、(きちんと照合することなく)「多数の亜種を擁するoreasの一つだろう」と、アリサンルリシジミと同定しておいたわけである。もっとも、oreasとperplexaの♂交尾器には大きな差はないので、アリサンルリシジミの同定が、完全な間違い、というわけではないのだが。



その後、裏面黒紋の発達状況を除けば、Eliot&Kawazoeが記載したperplexaに違いは無さそうだ、ということに気付いたのだが、産地が異なることもあって、oreasのままで示していた。今回、ネットで様々な検索を行っていたら、新たなperplexaの新亜種記載を見つけた。特徴も産地(標高に1000m前後の差はあるが)もほぼ一致。改めて、四川省産をperplexa原名亜種、雲南省産をperplexa kuroobiとしておく。



僕が撮影した四川省産perplexa原名亜種は、Eliot&Kawazoeに図示されたタイプ標本には見られない後翅裏面基半部の青緑色鱗が出現する(古い標本では消失?)。雲南省亜種kuroobiともども♂翅表は濃紺色で、外縁に沿って黒帯が広がる。オガサワラシジミと興味深い共通点である。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





オオアリサンルリシジミ原名亜種Lycaenopsis(Celastrina)perplexa perplexa

四川省四姑娘山南面Jul.30,2010





オオアリサンルリシジミ原名亜種L.(C.)perplexa perplexa

四川省四姑娘山南面Jul.30,2010





オオアリサンルリシジミ原名亜種L.(C.)perplexa perplexa

四川省四姑娘山南面Jul.30,2010





オオアリサンルリシジミ原名亜種L.(C.)perplexa perplexa

四川省四姑娘山南面Jul.30,2010





オオアリサンルリシジミ原名亜種L.(C.)perplexa perplexa

四川省四姑娘山南面Jul.30,2010





オオアリサンルリシジミ原名亜種L.(C.)perplexa perplexa

四川省四姑娘山南面Jul.30,2010





オオアリサンルリシジミ原名亜種L.(C.)perplexa perplexa

四川省四姑娘山南面Jul.30,2010





オオアリサンルリシジミ原名亜種L.(C.)perplexa perplexa

四川省四姑娘山南面Jul.30,2010





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi ♀

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi ♀

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi ♀

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi ♀

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省迪庆大雪山麓翁水村Jul.16,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省梅里雪山明永Jul.11,2010

*右個体、左はタッパンルリシジミ、背後はウラジロルリシジミ(スギタニルリシジミ)





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省梅里雪山明永Jul.25,2010





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省梅里雪山明永Jul.25,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省梅里雪山明永Jul.25,2014

*右はツバメシジミ(ウスズミツバメシジミ)





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省梅里雪山明永Jul.25,2014





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省梅里雪山明永Aug.10,2011





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省梅里雪山明永Aug.11,2011





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省梅里雪山明永Aug.12,2011

*sampling個体(下はルリシジミ)





オオアリサンルリシジミ雲南亜種L.(C.)perplexa kuroobi

雲南省梅里雪山明永Sep.12,2010



・・・・・・・・・・





全然無関係だけれど、、、ついでに。

翅型や翅色がオガサワラシジミによく似たユンナンフチベニシジミLycaena(Kulua)yunnani

雲南省梅里雪山雨崩 Jun.13,2009











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日本国内絶滅第1号種オガサワラシジミと、ルリシジミ、スギタニルリシジミについて(その5)

2024-03-04 21:52:37 | 日本の蝶、中国の蝶




オガサワラシジLycaenopsis(Celastrina)ogasawaraensis

小笠原母島猪熊谷Sep.23, 1992



・・・・・・・・・・・・・・



話は逸れるけれど、プラタモリ終了するのだそうな。この番組(普段テレビを見ない僕だけれど)以前ホテル宿泊時に見て、とても好感を持った。



去年、しばらくの間、自室でテレビを見るチャンスがあった。ちなみに、昔、確か大江健三郎氏だったと思うのだが、「テレビ」の語には違和感、「テレビジョン」略すなら「TV(ティヴィ)」と言うべき、と語っていた。なるほど。僕が、突然出現したメジャー日本語の「アプリ」にいつまで経っても馴染めないのと同じだ(まあテレビは既に日本語なんで仕方がないが)。



それでプラタモリにも期待して何度か見たのだが、思っていたよりもつまらなかった。以前の魅力は感じられず、違和感ありまくり、タモリ氏本人だって、必ずしも楽しんでいそうには見えない。



以前は、行き当たりばったり、問題提起主体で、ことさら答えは求めていなかった。タモリ氏自身の蘊蓄や感性を晒しているうちに、いつの間にか答えらしいところに辿り着く。本人が楽しんで、視聴者も共に楽しむ。そこが魅力的だった。良くも悪くも緩さ加減、僕の言う俯瞰的な捉え方。



最近のは、学校の授業である。教科書に則った頭でっかちの専門家とやらが、ひたすら体系に基づいた予定調和的な解説をしつつ進めて行く、ちっとも面白くない。でも評価は高い。そう、大多数の日本人が内包する、答えを求めることを第一義とする価値概念。体系に沿った思考を重視し、俯瞰的に捉えることを「非科学的」として排除する。



番組終了に当たってネットでも惜しむ声があるようだけれど、でもさっきチェックしたあるコラムには、「誰も言わない終了の本当の理由、それは面白くなくなったから、まるで民放の観光案内番組みたい、

タモリ氏本人も楽しんでいる様には見えない」という指摘が。まさにその通りだと思う。



NHKの番組造りは凄いといつも感服しているけれど、それは完璧さの中に、ちょっと間が抜けたような曖昧さ(あえて答えに拘らない俯瞰性)を伴っているからであって、どうも最近は、体系的に答えを導き出すことに重点を置き過ぎているように思える。それが視聴者の要求なのであろうが。



・・・・・・・・・・



この絶滅オガサワラシジミの話に、別に結びつけるつもりはない。敢えて関連つけるならば、僕のこのブログは、教科書ではない。自分の忘備のために書いているのである。ついでなら、読者にも一緒に考えて貰おうと。繰り返し言うけれど、答えは一切追求しない。ひたすら問題提起に終始するだけだ。



・・・・・・・・・・・・



「日本国内絶滅第1号種オガサワラシジミと、ルリシジミ、スギタニルリシジミについて」の表題でブログを書き始めたのは、たまたまのきっかけが重なったからである。



*3月になった。春スタートである。去年は春から秋まで自宅近所の蝶の撮影・観察を続けたのだが、今年は止めて置こう。それよりも、進めなくてはいけない、デスクワークに没頭するべきである。でも、去年写し損ねた、春のルリシジミ♂の開翅写真だけは押さえて置こう。撮影ポイントは自宅から至近距離(徒歩1分の地点)なので、負担にはならない。



*「近所の森と道端の蝶(福岡編)」の前半部がほぼ完成。第一部「2023年に撮影した近所の蝶50+7種」と、第二部「日本産の蝶全種」の簡単な紹介で構成。後者には数種抜け落ちている種(未撮影種と一応撮影はしてあるが写真を見つけ出せないでいる10数種)があるが、この際開き直って「写真欠落」と記して進めていく、でも、全体の構成上九州産スギタニルリシジミだけは載せねばならない。今月末には、重い腰を上げて県内の山間部を訪ねてみることにしよう。



*インターネットを検索していたら、日本国内絶滅第一号種オガサワラシジミの記事がちらほら。現地でもこの5年間記録がなく、多摩動物園などに移動室内飼育を続けていた個体群も壊滅、どうやら地球上から種が消滅してしまったらしいとのこと。保護運動の在り方に大きな疑問を抱く僕としては、「それみたことか」という気持ちと、「由々しき事態」という気持ちが入り混じり、現地での再発見に向け、最後の撮影行から31年ぶり(最初の撮影行からは48年目)に改めてトライしようではないか、という思いが沸き上がってきた。



*「中国蝴蝶野外観察図鑑」で紹介した、雲南省産と四川省産のアリサンルリシジミは、実はアリサンルリシジミoreasではなく、オオアリサンルリシジミ(仮称)perplexaであった。それについて、何らかのエクスキューズをしておかねばならない。



シジミチョウ科ヒメシジミ亜科ヒメシジミ族ルリシジミ節ルリシジミ属ルリシジミ種群に属する、上記4つの種に関わる問題が、同時に勃発したわけである。



というわけで、それらを纏めたレビューを記しておこうと、ブログに書き連ね始めたわけだ。一般的に最もインパクトが強いのは、「オガサワラシジミ絶滅?」のテーマ。その問題提起に対処していくためには、オガサワラシジミの成り立ちに深いかかわりを持つ他の3種(ルリシジミ/スギタニルリシジミ/オオアリサンルリシジミ)の性格を知ることから始めねばならない、ということで、(見出しや冒頭写真にオガサワラシジミを前面に押し出したうえで)4種についてトータルに探っていくことにした。



もうひとつ、気になり続けていることがあった。「中国蝴蝶野外観察図鑑」でも「近所の森と道端の蝶」でも、スギタニシジミの学名を、一般に使用されているCelastrina sugitaniiではなく、Celastrina hersiliaとしたことに対して、蝶に詳しい知人から「間違っているので訂正するように」という指摘が為されたことである。



間違って記したのではなくて、いわば確信犯的な問題提起。「誰一人認めていないことを勝手に記してはならぬ」という指摘は分からぬでもない。でも実際は「誰も認めていない」わけではなく、このグループを再編した研究者本人(J.N.Eliot氏と川副昭人氏)だけは、そのことを半ば認めていたのである。彼らが(従来の見解に従って)この2種を別種として据え置いたのは、必ずしも絶対的な結論ではなく、現在の知見に基づく状況的側面からの暫定的な判断。まだ答えが確定された訳ではない、と言うことを提示するために、僕は敢えてスギタニルリシジミをC.hersiliaに併合した。



同一種と見做す根拠:

♂交尾器の形状が完全に相同。外観の著しい相違は、西方に向かうにつれて白い部分が強調される、という(例えばミヤマカラスアゲハの場合などと共通する)東アジアの蝶に屡々起こる現象に沿えば、理解が為される。



別種と見做す根拠:

2つの異なる表現集団が同所的に混在している可能性。今流行り?の「隠蔽種」の問題にも繋がってくるわけで、分子生物学的解析に基ずくならば、基本形態(殊に交尾器)が相同だからと言って、「種」が同じだとは限らない。



それはともかく、大多数の常識的な見解は、「見かけが全く違うのだから同一種であるわけがない」という、単純な根拠に基づいていると思う。僕としては、そのような(コレクター的な要素とも繋がる)安易な発想には組みしたくはない。



もっとも現時点での僕の見解は、やはり別種として認めるべきなのかも知れない、という方向に傾きつつある。こっちに傾いたり、あっちに傾いたり、、、、要は「種とは何か?」という命題の呪縛。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ルリシジミ属北方系種群



1:ルリシジミ Lycaenopsis(Celastrina)argiolus ●

北半球温帯域に14亜種/前回既述済み。



2:ハルカゼルリシジミ L.(C.)ebenina

北米東部/前回ごく簡単に触れた。



3:オガサワラシジミ L.(C.)ogasawaraensis ●

小笠原諸島/次回予定



4:スギタニルリシジミ L.(C.)sugitanii

東アジア温帯域/6亜種

>4a:ssp.sugitanii 本州、四国 ●

>4b:ssp.ainonica 北海道

>4c:ssp.leei 朝鮮半島

>4d:ssp.kyushuensis 九州

>4e:ssp.shirozui 台湾

>4f:ssp.lenzeni 中国大陸中~西部(秦嶺山系、四川省など) ●

*Eliot&Kawazoe1983の時点では台湾産は未記載。ロシア沿海地方、中国東北部などについては記述がなく、これらの地域には分布していないのであろう。



5:ウラジロルリシジミ* L.(C.)hersilia (*和名は青山1998に拠る、後にスギタニルリシジミと併合、分割する場合はヒマラヤルリシジミとした、後述するミヤマルリシジミも同じである可能性)

東アジア温帯域/3亜種

>5a:ssp.hersilia 中国大陸中部(陝西省など)~東部(福建省など) ●

>5b:ssp.vipia ヒマラヤ東部(シッキム、アッサムなど)

>5c:ssp.evansi 中国西南部(雲南省北部山岳地帯)周辺地域 ●



スギタニルリシジミ-ウラジロルリシジミの雄交尾器はルリシジミに酷似するが、次の様な相違点が見出される。

>Ring下半部がやや広がる。Juxtaはより大きくvalvaeからはみ出す。側面から見たsociuncusの鋭突部末端は、本体側出っ張り部分より下方まで伸びる。



6:オオヒマラヤルリシジミ(仮称) L.(C.)gigas

ヒマラヤ西部



7:ニセアリサンルリシジミ(仮称) L.(C.)huegelii

ヒマラヤ中~西部/2亜種



8:アリサンルリシジミ L.(C.)oreas

ヒマラヤ東部、中国大陸、台湾、朝鮮半島/8亜種



9:L.(C.)morsheadi

中国西南部(東南チベット~雲南省西北部)/2亜種



10:オオアリサンルリシジミ L.(C.)perplexa

中国西南部(四川省、雲南省)/2亜種

*1亜種は後に追加(Elot&Kawazoeには未記載)

*「中国のチョウ」「中国蝴蝶野外観察図鑑」ではoreasと誤同定。



11:キタアリサンルリシジミ(仮称) L.(C.)filipjevi

日本海北岸地域(極東ロシア、朝鮮半島、中国東北部)/2亜種



7以降については次々回に述べる予定、ここでは4と5(および6)の関係について考える。



4:sugitaniiと5:hersiliaは同一種なのか、別種なのか。現状では当然のごとく別種とされているわけだが、その根拠は何処にあるのか? それを探っていくことが主旨である(答えを出すことが目的なのではない)。



・・・・・・・・・・・・・・



以前書き終えていた原稿が出てきた。一部重複するが、以下、それに沿って記述していく。



スギタニルリシジミは、年一回、春のみに現れる蝶である。スプリング・エフェメラルの代表種としては、ギフチョウ(&ヒメギフチョウ)/ツマキチョウ/コツバメ/ミヤマセセリのカルテットが著名だが、スギタニルリシジミも、“準スプリングエフェメラル」的な位置づけにある。クインテットにならなかった理由としては、次の様な理由が考えられる。ギフチョウ(&ヒメギフチョウ)、ツマキチョウ、コツバメ、ミヤマセセリは、いずれも(身近な日本産としては)独自の「一枚看板」と言える存在である。それに対しスギタニルリシジミは、日本全土に広く普遍的に分布し、かつ年間を通して見られるごく近縁のルリシジミに対する「脇役」的存在で、インパクトに欠ける。また、4種よりもやや遅れて4月の後半(僕の中学校時代、関西の山間部で4月29日の昭和天皇誕生日の際日にスギタニルリシジミの観察を行うのが恒例となっていた)で、春一番の蝶というイメージはやや薄い。



スギタニルリシジミは、別の視点からも、日本産蝶の中で唯一といって良い性格を有している。九州産の外観が、本州産と著しく異なるのである。本州産のスギタニルリシジミは、ルリシジミと全く異なる色彩・斑紋を持っている(翅の裏が灰褐色を帯び、黒斑が大きく、翅表も濃紺色を呈する)。ところが九州産においては、スギタニルリシジミがスギタニルリシジミである所以の、それらの特徴を示さず、外観的にはルリシジミとほとんど変わらない。



日本産の蝶の中で、東日本と西日本で顕著な外観差がある種としてはダイミョウセセリの関東型/関西型が知られるが、本州産と九州産で外観がガラリと変わる種は、スギタニルリシジミを置いて他に無い。



実は後で述べるように、大局的に(種の分布域全体から)見た場合は、九州産が他と異なるのではなく、本州産が他と異なるのである(ダイミョウセセリに於いても特異なのは“関東型”のほう)。



いずれにしても、せっかく九州に居を移したのだから、たまには室内蟄居の禁を破って、山間部に九州産スギタニルリシジミを訪ねておきたい。出現期は本州よりひと月ほど早いので、今月末か来月初め。写真撮影ももちろんだが、その“印象”を自分の眼で確かめたい。中国産との比較である。



スギタニルリシジミ6亜種中、最も色が濃いのは本州・四国産の原名亜種sugitanii。北海道亜種や朝鮮半島亜種ではやや淡色となり、九州亜種・台湾亜種では裏面の地色が純白に近くなる。ということは、(僕がこれまで何度も接してきた)中国大陸(陝西省・四川省など)産lanzeniとも共通するのだと思うが、実際はどうなのであろうか?



Kyushuensisにしろlanzeniにしろ、本州産に比べれば、明らかに大型。翅裏の地色は白く、黒点は小さく、かつ疎らになり、翅表の藍色も明るい。



その延長線上に、更に顕著な特徴を示すのが、hersiliaである。日本(本州)のスギタニルリシジミには似ても似つかず、むしろサツマシジミに似ている。どう考えても「別の種」なのだが、雄交尾器の形状はsugitaniiと寸分たりとも違わない。



別の視点から、幾つかの蝶(例えばミヤマカラスアゲハ)に於いて西に行くほど「白」くなる傾向があることを鑑みれば、両者を同一種と見做すことも、別段奇特な処遇だとは思わない。種を分けるなら、九州産も中国大陸産lenzeniもsugitaniiから分割すれば良い。それらを分けないならhersiliaを含めて統合。



しかし、その他諸々の、いわば状況証拠を踏まえた視点からは、暫定的に別種としておく方が賢明なのかも知れない。例えば、中国中部から西南部にかけての地域には、hersilia的外観のsugitaniiと、真のhersiliaが混在している様である。両者は(標本写真を見た限りでは)翅(殊に♂翅表)の色合いが明らかに異なる(sugitaniiはややどす黒くhersiliaはより明るい)。そのことからも、別種説を受け入れるのは、吝かではない。



実は、僕の「中国のチョウ(1998)」にも、秦嶺山地の“スギタニ”について、一つの問題提起を行っている(検証しないまま未解決の状態)。オナガギフチョウの生育地(標高1200m前後)には、極めて多くの典型的lenzeniと、ごく少数のarugiolusが見られるが、それより500mほど標高が高いところには、どちらともつかない(「ルリシジミに似たスギタニルリシジミ=lenzeni」に似たルリシジミ?)集団(和名「ミヤマルリシジミ」)が棲息している。これこそhersiliaなのかも知れない。



ただし、その集団の♂交尾器をチェックしたところ、真正のルリシジミargiolusと相同だった由、「中国のチョウ」に記述してある。それがhersiliaに当たるならば、argiolusではなく、lenzeniと相同でなくてはならない。



可能性として、2つ考えられる。僕の記述(チェック)ミス。もとよりルリシジミとスギタニルリシジミの♂交尾器は酷似していて、よほど慎重にチェックしないことには判別が難しい。しかしsugitanii(lenzeniを含む)とhersilia間のように完全に一致するというわけではなく、プロポーションなどに僅かとは言えども安定差がある。この個体(「ルリシジミに似たスギタニルリシジミ」に似たルリシジミ)をチェックした際、3つの集団を比較したのではなく単独チェックをしたため、僕の思い込みで「argiolusと相同」と記した可能性がある(実際その正否に関してはずっと引っかかっていた)。



もう一つの可能性は、秦嶺における3集団の相関が、他の地域の組み合わせとは異なる、ということ。

おそらく偶然だとは思われるが、気になることがある。Eliot&Kawazoeに図示されているhersiliaの♂交尾器は原名亜種ではなくて、おそらくヒマラヤ地方産の亜種vipia、sugitaniiは亜種lenzeniではなくて原名亜種kyushuensis、確かに両者の間に差異は見出せない。また、僕がチェックした個体も、sugitanii原名亜種と雲南省産hersilia(たぶん亜種evansi)、ネットの[Butterflies in Indochina]に写真図示されている個体もおそらく亜種evansi、そして中国大陸産のsugitaniiとhersiliaを詳しく標本図示しているH.Huang(2019)には、同論文内で取り上げられている他の各種については全て♂交尾器の写真が示されているのに、sugitanii/hersiliaだけに関しては表示がない。すなわち、hersilia原名亜種の♂交尾器についての図示・記述は(僕の知る範囲では)どこにもないわけで、むろん偶然だとは思うが、気になるところではある。



いずれにしろ、ルリシジミ-スギタニルリシジミは、ごく近縁な間柄にある一つの種群(上種?)を構成していて(おそらくオガワワラシジミもその中に含まれる)、より広域に分布するルリシジミargiolusは、異所的な多数の集団の複合体、sugitanii-hersiliaは、異なる性格を持つ集団が同所的に混在するcomplexを形成している、と考えて良いであろう。



そのような(複雑で混沌とした)関係性は、別段sugitanii-hersiliaの組み合わせに固有な特殊例なのではなくて、いたるところに普遍的に存在していると思う(そして外観上区別が困難な組み合わせに対しては「隠蔽種」として認識されている)。



「種」を、どの段階で区別するか。形態上の差異が見だせない、かつ遺伝的な独自性を持つ集団(例えば「隠蔽種」)ごとにミクロな視点で認識するか、マクロな視点での「超種」(複合種)として解釈するか、の問題であろう。



スギタニルリシジミsugitaniiとウラジロルリシジミhersiliaは、ある視点からは異なる種であり、別の視点からは同一種である、という、相反する要素を併合した見解があっても良い。事実、実態、答えは、一つである必要はない。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





L(C.)argiolus ladonides

新潟県浦佐市 Apr.15,2020

*新たに見つけ出した幾つかの写真を追加紹介しておく。





L(C.)argiolus ladonides

新潟県浦佐市 Apr.15,2020





L(C.)argiolus ladonides

新潟県浦佐市 Apr.15,2020





L(C.)argiolus cuphius ?

山東省淄博市 Apr.21,1994



写真6

L(C.)argiolus cuphius

浙江省杭州市西郊 Mar.28,1989





L(C.)argiolus cuphius

四川省天台山 Apr.13,1989





L(C.)sugitanii sugitanii

山形県東根市 Apr.21,1985



L(C.)sugitanii sugitanii

山形県東根市 Apr.21,1985





L(C.)sugitanii sugitanii

山形県東根市 Apr.21,1985





L(C.)sugitanii sugitanii

山形県東根市 Apr.21,1985





L(C.)sugitanii sugitanii

山形県東根市 Apr.21,1985





L(C.)sugitanii sugitanii

山形県最上郡大蔵村 May.10,1982





L(C.)sugitanii lenzeni

陝西省秦嶺 Apr.28,2005





L(C.)argiolus caphis

陝西省秦嶺 Apr.25,1994

オナガギフチョウ棲息地一帯で見られるのは、ほとんどがlenzeniで、ルリシジミは稀にしか出会わなかった。





陝西省秦嶺 May 3,1995(sampling個体)

上段は“ミヤマルリシジミ”L(C.)hersilia hersilia?

下段はL(C.)sugitanii lenzeni

*上段2頭の採取地点は標高が500mほど高い。





L(C.)sugitanii lenzeni

陝西省秦嶺 Apr.28,2005





L(C.)sugitanii lenzeni

陝西省秦嶺 Apr.26,2010





L(C.)sugitanii lenzeni

陝西省秦嶺 Apr.26,2010





L(C.)sugitanii lenzeni

陝西省秦嶺 Apr.26,2010

翅表は日本のスギタニルリシジミ同様、幾分黒ずむ。





L(C.)sugitanii lenzeni

陝西省秦嶺 Apr.26,2010





L(C.)sugitanii lenzeni

陝西省秦嶺 Apr.26,2010





L(C.)sugitanii lenzeni

陝西省秦嶺 Apr.26,2010





L(C.)sugitanii lenzeni ♀

陝西省秦嶺 Apr.26,2010





L(C.)sugitanii lenzeni

陝西省秦嶺 May 6,1994





L(C.)sugitanii lenzeni

陝西省秦嶺 Apr.27,2010





L(C.)sugitanii lenzeni

陝西省秦嶺(太白山北面) Apr.27,1994

吸水集団





L(C.)sugitanii lenzeni

陝西省秦嶺(太白山北面) Apr.27,1994





L(C.)sugitanii lenzeni

陝西省秦嶺 May 14,1995





L(C.)sugitanii lenzeni or hersilia

陝西省秦嶺 Apr.27,2010





L(C.)sugitanii lenzeni or hersilia

陝西省秦嶺 Apr.27,2010





L(C.)sugitanii lenzeni or hersilia ♀

陝西省秦嶺 Apr.27,2010





L(C.)sugitanii lenzeni or hersilia ♀

陝西省秦嶺 Apr.27,2010





L(C.)hersilia ?

四川省ミニャコンガ海螺溝 May 1,1989





L(C.)sugitanii lenzeni or hersilia

雲南省梅里雪山明永 May 10,2013





L(C.)sugitanii lenzeni or hersilia

雲南省梅里雪山明永 May 10,2013





L(C.)hersilia*種を分けた場合

雲南省梅里雪山明永 Sep.28,2013

秋の個体





L(C.))sugitanii lenzeni or hersilia [左奥/左手前はタッパンルリシジミ、右は]

雲南省梅里雪山明永 Jul.11,2012

盛夏の個体





L(C.)hersilia*種を分けた場合 ♀

雲南省梅里雪山明永 Jul.11,2012

盛夏の個体










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日本国内絶滅第1号種オガサワラシジミと、ルリシジミ、スギタニルリシジミについて(その4)

2024-03-02 20:41:51 | 日本の蝶、中国の蝶






シマザクラの花を訪れたオガサワラシジLycaenopsis(Celastrina)ogasawaraensis

小笠原母島乳房山Aug.1, 1988



・・・・・・・・・・・・・・



■Celastrina [J.W.Tutt,1906] ルリシジミ(亜)属



★♂交尾器の特徴:Dorsamは全体として背腹に丈高いが、ring下半部はごく短かく、tegumen側面が極めて幅広い。Sociusは鍵状になり、下方および内側に鋭く屈曲する。PhallusのSaccusは短かくほとんど発達しない。Valvaのampula(白水1960年の表記、Eliot and Kawazoeでは個別の部位表記無し)後縁は腕状に分離して伸長する。



★ルリシジミ節(広義のルリシジミ属)のうち、狭義のルリシジミ属に相当する。Eliot & Kawazoeでは15種。うち、主にアジアの熱帯地域に分布する4種(下記①~④)を除く11種は、ルリシジミ属(広義)としては例外的に北半球温帯域(東アジア大陸部と小笠原諸島を含む)に分布の中心を為し、♂交尾器形状が互いに酷似している。





熱帯アジアを中心に分布するCerastlina(亜)属の種

①lavendularisホリシャルリシジミ(ヒマラヤ地方、南インド、スリランカ、インドシナ半島、中国大陸、台湾、スマトラ、フローレス、セレベス、北モルッカ、ニューギニアなどに12亜種)。

*他種とはかなり異なる独自の♂交尾器形状を示す(私見では別亜属または別属に置くことも可能と思われる程度に相違する)。

②philippina(フィリッピン、インドネシア、チモール、モルッカ、ニューギニアに6亜種)。

③algernoni(フィリッピンとボルネオに2亜種)。

④acesina(ニューギニア)。



以下、Eliot & Kawazoeを基に、(Celastrinaのうち上記4種を除く)ルリシジミにごく近縁な11種について再編列記しておく。●印は写真を紹介した分類群。



1:ルリシジミargiolus 14亜種 ユーラシア(北アフリカ、日本、台湾、ルソン島などを含む)、北‐中米。



スギタニルリシジミ-ウラジロルリシジミsugitani-hersilia complexとの♂交尾器相違点

>Ring下半部が心持ち狭い。Juxtaは余り大きくない(valvae内に収まる)。側面から見たsociuncusの鋭突部末端は、本体側出っ張り部分より上方で終わる。



種arugiolusルリシジミが全北区に広く分布。北米東部でハルカゼルリシジミ、東アジアでスギタニルリシジミ-ウラジロルリシジミcomplexと混棲、便宜上、旧大陸亜種群(10亜種)と新大陸亜種群(4亜種)に分けられる。



オガサワラシジミは、それら(ルリシジミ各亜種、ハルカゼルリシジミ、スギタニルリシジミ-ウラジロルリシジミcomplex)の何れか、あるいはそれらの共通祖先集団との血縁関係を持つ。色調や斑紋については、東アジアのもう一つの集団、アリサンルリシジミ近縁種群との関連も念頭に置くべきである。



ルリシジミarugiolus旧大陸亜種群14 亜種は、3グループに大別できる。

>Argiolus亜種群:ヨーロッパ・北アフリカ・中東など、ユーラシア大陸西半部。

>Ladonides亜種群:日本を含む極東アジア(周日本海地域、長江流域周辺地域など)。

>Kollari亜種群:ヒマラヤ地方とその周辺域。



僕の写真の帰属分類群についての検証は行っていないが、暫定的に次の各亜種に配分しておく。

>日本産=Ladonides亜種群のladonides

>湖北、陝西、四川省および雲南省大理産=Ladonides亜種群のcaphis

>雲南省梅里雪山産=Kollari亜種群のiynteana

後者は、殊に季節的変異が著しく、同所に混在するスギタニルリシジミ-ウラジロルリシジミcpmplexや、別(亜)属のタッパンルリシジミやサツマシジミなどとの間に特徴(白色部の出現など)が並行して出現することから、ときに区別が難しい。僕としては、細部の相違点の比較よりも、まず感覚に頼っている。概ね当たっているのではと思っている。



今回はルリシジミargiolus、次回はスギタニルリシジミーウラジロルリシジミcomplex、そのあとオガサワラシジミ、アリサンルリシジミ種群を予定。内外産の多くの写真を所持しているが、探し出すのに膨大な時間と手間を有するかめに、とりあえず現時点で手許にある写真のみを紹介していく。



・・・・・・・・・・・・・



>1a:ssp.argiolus 

ウラル山脈以西のユーラシア大陸(ヨーロッパのほぼ全域)

>1b:ssp.mauretanica 

サハラ砂漠以北のアフリカ大陸(アトラス山脈周辺)およびマルタ島

>1c:ssp.hypoleuca 

トルコ~キプロス~中東北部~中央アジア~ヒンドゥクシュ~サヤン山脈

>1d:ssp.bieneri 

東シベリア(バイカル地方など)

>1e:ssp.ladondes ●

中国東北部、朝鮮半島、ロシア沿海地方、日本列島





ルリシジミ L(C.)argiolus ladonides

千葉県君津市 Apr.23,1978





ルリシジミL.(C.)argiolus ladonides

千葉県丸山町 Jul.4,1979





ルリシジミL.(C.)argiolus ladonides

北海道上士幌町 Aug.5,1982





ルリシジミL.(C.)argiolus ladonides

長野県白馬村 Jul.10,1985





ルリシジミL.(C.)argiolus ladonides

新潟県浦佐市 Apr.25,2020



>1f:ssp.cuphius ●

中国大陸の大半の地域(横断山脈以東および以南=長江流域とその周辺地域)と台湾

日本海周辺地域産la との区別は良く把握していないのだけれど、(梅里雪山を除く)中国大陸産を統括してこれに当てておく。





ルリシジミL.(C.)argiolus cuphius

湖北省宣昌~恩施 May 6,2009

Vicia属(クサフジ類似種)の新芽に産卵。





ルリシジミL(C.)argiolus cuphius

四川省天全県二朗山 Aug.4,2009





ルリシジミL.(C.)argiolus cuphius

四川省天全県二朗山 Aug.4,2009





ルリシジミL.(C.)argiolus cuphius

四川省宝興県東拉渓谷 Aug.7,2010

右はタッパンルリシジミ





タッパンルリシジミL.(Udara)dilecta

四川省宝興県東拉渓谷 Aug.8,2010

タッパンルリシジミの項に入れ忘れたので追加





ルリシジミL.(C.)argiolus cuphius

雲南省大理蒼山中腹 Jul.12,2007





ルリシジミL.(C.)argiolus cuphius

雲南省大理蒼山中腹 Jul.12,2007

翅表は典型的ルリシジミだけれど、裏は微妙、、、、ルリシジミで良いのだろうか?





ルリシジミL(C.)argiolus cuphius

雲南省大理蒼山中腹 Jul.12,2007





ルリシジミL.(C.)argiolus cuphius

雲南省大理蒼山中腹 Jul.12,2007

12‐14と同じ所にいた♀。紋の形がやや疑問だけれど、消去法でルリシジミだろうなあ。裏面基半部の青色鱗粉は個体により出現程度が異なるが、本集団はかなり顕著に表れる。





ルリシジミL.(C.)argiolus cuphius

雲南省大理蒼山中腹 Jul.12,2007





ルリシジミL.(C.)argiolus cuphius

雲南省大理蒼山中腹 Jul.12,2007

産卵行動を行っているのは、半蔓性植物(確かニシキギ科クロヅル属の一種だったと記憶)の成葉。蕾や新芽に産付することの多いルリシジミとしては、やや例外的かも。



>1g:ssp.sugurui 

フィッリピン・ルソン島固有亜種。北方系のルリシジミ種群(ルリシジミ、スギタニルリシジミ-ウラジロルリシジミcomplex、アリサンルリシジミ類似種群)の中では、唯一アジアの熱帯域に生息する種。同様な例=極東系の種のルソン島への進出は、ベンゲットアゲハ、ルソンカラスカラスアゲハ、ルソンオジロクロヒカゲなどでも知られるように、(遺存種か進出種かの判断はともかくとして)興味深いテーマでもある。早い話オガワワラシジミの場合も、それと軌を一にするパターンと思われる。



>1i:ssp.kollari 

ヒンドゥークシュ~ヒマラヤ西部



>1j:ssp.iynteana ●

ヒマラヤ中‐東部、インドシナ半島北部、中国西南部?

雲南省北部産を暫定的にこれに当てておく。

*学名の綴りは記載時のエラーに基づく(本来はjynteana?)可能性が強いが、確証がないために有効となる。





ルリシジミL.(C.)argiolus iynteana

雲南省梅里雪山明永 May 6,2013(左個体、右はウスズミツバメシジミ*♀)。前翅に淡く白紋が現れ、翅頂部が黒い。氷河から流れてきた川岸の水溜りに吸水に訪れ、対岸の草地で訪花する。

*Cupido(Everes)argiades diporidesまたはC.(E.)fuegelii





ルリシジミL.(C.)argiolus iynteana

雲南省梅里雪山明永 May 6,2013





ルリシジミL.(C.)argiolus iynteana

雲南省梅里雪山明永Sep.12,2010





ルリシジミL.(C.)argiolus iynteana

雲南省梅里雪山明永Sep.12,2010





ルリシジミL.(C.)argiolus iynteana(ほかother Blues)

雲南省梅里雪山明永 Jul.2,2012

川岸の水溜りにて。チベットウスルリシジミ、ウンモンクロツバメシジミ、ルリシジミ。この川岸の水溜り&草地で見られるBlueは、チベットウスルリシジミ(ヒメシジミ節)、ウラミドリヒメシジミ(ヒメシジミ節)、ヤマトシジミ(ヤマトシジミ節)、ウスズミツバメシジミ(ツバメシジミ節)、ウンモンクロツバメシジミ(ツバメシジミ節)、ホシボシツバメシジミ(ツバメシジミ節)およびルリシジミ節のルリシジミ、ウラジロルリシジミ(スギタニルリシジミ?)、オオアリサンルリシジミ(他種よりも一回り以上大きい)、タッパンルリシジミ、ヤクシマルリシジミ(?)等。





ルリシジミL.(C.)argiolus iynteana

雲南省梅里雪山明永 Jul.9,2012






ルリシジミL.(C.)argiolus iynteana

雲南省梅里雪山明永 Jul.9,2012





ルリシジミL.(C.)argiolus iynteana

雲南省梅里雪山明永 Aug.11,2011





ルリシジミL.(C.)argiolus iynteana(右はウンモンクロツバメシジミ)

雲南省梅里雪山明永 Aug.11,2011





ルリシジミL.(C.)argiolus iynteana

雲南省梅里雪山明永Sep.11,2010





ルリシジミL.(C.)argiolus iynteana

雲南省梅里雪山明永Sep.11,2010

あくまで“一応”という訳注付きでルリシジミと同定。





ルリシジミL.(C.)argiolus iynteana

雲南省梅里雪山明永Sep.11,2010





ルリシジミL.(C.)argiolus iynteana

雲南省梅里雪山明永Sep.11,2010





ルリシジミL.(C.)argiolus iynteana

雲南省梅里雪山明永Sep.11,2010



>1k:ssp.ladon 

北米

>1l:ssp.echo 

北米

>1m:ssp.cinerea 

北米

>1n:ssp.gozora 

中米



以下、次回以降に。



2:ハルカゼルリシジミebenina 北米東部

3:オガサワラシジミogasawaraensis 小笠原●

4:ウラジロルリシジミhersilia ヒマラヤ東部‐中国西南部‐中国中部(5と同一種?)●

5:スギタニルリシジミsugitanii 北海道-本州-九州-朝鮮半島-台湾-中国中部‐西南部●

6:オオヒマラヤルリシジミgigas ヒマラヤ西部

7:ニセアリサンルリシジミhuegelii ヒマラヤ西部‐中部

8:アリサンルリシジミoreas ヒマラヤ東部‐中国西南部‐中国中部‐台湾‐朝鮮半島

9:オオアリサンルリシジミ perplexa 四川西南部●

10:morsheadi 中国西南部

11:filipjevi 日本海北岸地域



・・・・・・・・・・・



(ほかの蝶でも同様のことが言えるが)中国西南部のルリシジミは、バリエーションが多彩な上に、類似種が数多く混棲していて、夫々が並行的に変異を示すため、判別が難しい。実のところ、半ばお手上げの状態である。我ながら情けなくなってくる(諸兄は識別の自信おありだろうか)。



その組み合わせの多くは別属(細分時)に跨っているわけで、もちろん交尾器を見れば100発100中で判別がつくのだけれど、写真(翅、ことに裏面の模様)での判別はまるで自信がない。



日本本土産については、それほど問題はない。唯一同じ系統に属するルリシジミとスギタニルリシジミは外観が全く異なっているので間違えようがない(九州産ではそう簡単には行かないが)。



その他の類似種、ヤクシマルリシジミとタッパンルリシジミは基本南の蝶だから、日本の多くの地域に於いては原則除外して良いだろう。もちろん地域によってはヤクシマルリシジミの北上に鑑み一応念頭に置いていなければならないし、タッパンルリシジミには余程のことが無いと遭遇しないだろうけれど、南部ではあり得なくはないので、頭の片隅にはおいていなければならない。とはいってもほとんどの場合ルリシジミに見える蝶は(ヤマトシジミ・シルビアシジミ、ツバメシジミなど初歩段階の区別はともかくとして)まず間違いなくルリシジミそのものであり、細かい比較ポイントなどをチェックしだすと、かえってこんがらがる要因にもなるので、無視したほうが良いかも知れない。



中国大陸産、ことに南部産になると、そうは行かない。



ルリシジミ自体が複雑なバリエーションを有するうえ、ルリシジミとスギタニルリシジミの区別(後者は後述するように“ウラジロルリシジミ”と“オオスギタニルリシジミ”が混在)が意外に困難である。それにアリサンルリシジミとその類似種が加わる。



これら北半球広域(ルリシジミ)と東アジア冷温帯域に分布する各種は、互いに血縁が近いだけに、かえって区別点が明瞭に示されているという傾向があり、集中してチェックするならば、案外スムーズに区別がつく。むしろやっかいなのは、系統が離れた、別(亜)属に置かれる幾つかの類似種(いずれも南方系広域分布種)と分布が重なっている場合である。



一応狭義のルリシジミ属Celastrinaに含まれるが、♂交尾器の形状から見て、おそらくかなり離れた系統に位置すると思われるホリシャルリシジミL.(C.)lavendularis、および上述した別属のタッパンルリシジミL.(U.)dilectaとヤクシマルリシジミL.(A.)puspaが、その対象となる。



ちなみにタッパンルリシジミとヤクシマルリシジミの区別は、もしかすると実はごく簡単で、後翅裏第6室黒点がごく明瞭で第7室黒点とほぼ同じ(ときに上回る)大きさなのがタッパン、後翅裏第6室黒点を欠くか第7より明らかに小さいのがヤクシマ、、、、少なくても僕がチェックしたほぼ全ての個体は、それで判別可能なように思われるのだが、それで当たっているのだろうか?それに従えば、前回4枚セットで示した上2枚の左(屋久島)はヤクシマルリシジミ、右(梅里雪山)はタッパンルリシジミということになる。



これら3種は、それぞれ広い分布圏の北縁辺りで、真正ルリシジミの分布圏南縁集団と混在している(概ね中国大陸中~南部)。僕個人の感覚では、ルリシジミもタッパンルリシジミもヤクシマルリシジミも、それぞれの種のイメージのようなものを既に捉えているので、細部はとりあえず無視して、全体的な印象に沿って区別が出来る(それで概ね当たっていると思う)。でも、ホリシャルリシジミには、(僕個人にとっては)イメージが無い。



必ずしもルリシジミの特徴を示さない、すなわち後翅裏面後角付近の2紋が連続し、第4室黒紋が顕著に変形した、かつタッパンでもヤクシマでもないと思われる個体の一部は、ホリシャルリシジミなのかも知れない。本項はホリシャルリシジミという選択肢なしで進めていくので、怪しいのはホリシャルリシジミの可能性もあるということを念頭に置いてもらいたい(もっとも真正のルリシジミ自体個体変異が顕著なので、細部の特徴のみで同定することは危険である)。



と言うことで、ルリシジミ節(広義のルリシジミ属)のうち、タッパンルリシジミ、サツマシジミ、ヤクシマルリシジミ各属(狭義)を除いた真のルリシジミ属(狭義)は、南方に広く分布し♂交尾器の形状が他の各種と顕著にことなるホリシャルリシジミ(および熱帯アジア産数種)と、北半球広域および東アジア温帯に分布し互いに♂交尾器の基本形状が共通する真正ルリシジミ種群(ルリシジミ、スギタニルリシジミ&ウラジロルリシジミ、オガサワラシジミ、アリサンルリシジミ類似各種)から成っている。



今回は、その中の真の「種ルリシジミ」(周極分布する1種14亜種)の写真撮影個体を紹介した。



♂交尾器の細部の形状にはそれぞれの亜種ごとに特徴が示され、捉え方次第では更なる種分割も可能なのかもしれないが、実態は良く分かっていない。



Eliot & Kawazoeは、「種ルリシジミ」を、便宜上旧大陸亜種群(10亜種)と新大陸亜種群(4亜種)に分け、旧大陸産10亜種を、(大雑把に言って)ヨーロッパ周辺地域のargiolus亜種群、ヒマラヤ周辺地域群のkollari亜種群、極東アジアのladonides亜種群に大別した。本ブログでの紹介写真個体は、亜種iynteana(kollari亜種群)、亜種caphis(ladonides亜種群)、亜種ladonides(ladonides亜種群)に振り分けたが、むろん正否の確証はない。



新大陸産に関しては、上記4亜種とは別に、東海岸産のebenina(前回の項では和名をアパラチアルリシジミとしておいたが、ハルカゼルリシジミと変更しておきたい)1種だけ独立種として扱っている。温帯夏緑樹林に棲息する年1化(春に出現)性の種、ということで、東アジア(ことに日本本州産)のスギタニルリシジミに対応する。



北米産の他の生物でも共通する事例として、東海岸アパラチア山系周辺の植生環境や生物相は、東アジアのそれに極めて類似するという傾向がある。東(アパラチア山系)はより古い地史的時代において東アジアとの関連を持ち、西(ロッキー以西、カスケード山脈など)は、より新しい時代に於いて、東アジアとの関連性を示す。



参考として植物のミズバショウの例を挙げると、ミズバショウ属は日本海周縁北部地域固有のミズバショウ(仏炎苞が白色)、北米大陸西北岸に固有のアメリカミズバショウ(仏炎苞が黄色)の2種から成り、それに極めて近縁のゴールデンクラブOrontium aquaticum(仏炎苞を欠く)が北米大陸東部に分布している。西海岸の集団は、比較的新しい時代に東アジアの集団から分離した種、東海岸の集団は、より古い時代に、それらの共通祖先から分化した種の末裔というわけである。



ルリシジミ近縁種群に置けるeveninaハルカゼルリシジミの存在も、そのパターン(ほかにカエデ属ウリカエデ節、ユリノキ属等々、多数)に当て嵌まるわけで、なおかつ東アジアにおけるスギタニルリシジミ-ウラジロルリシジミと対応する(本州のスギタニルリシジミ同様年一化で食草が限定される)わけだが、外観がスギタニルリシジミ(殊に本州産)に似た集団は西海岸の典型ルリシジミの一部(亜種luchia)に見出され、東海岸のeveninaの外観は一般のルリシジミとさほど変わらないという逆転現象を呈していることは、興味深い。










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