三世から、「サントリーニ島」近海の群発地震についての感想をブログに書いてくれ、と要望されました。
日本ではさほど話題には上っていない(先日のニュースでは、ジョージと三世がそれぞれ顔出しで~“現地からの報告”として~インタビューを受けていた、今朝のニュースでも三世のコメントが放送されていた)のですが、現地では相当に大きな騒ぎになっているようです。
僕は、エーゲ海やギリシャについては、ほぼ全く知識がありません。何度か2人を訪ねて行ったことはあっても、部屋に閉じこもって原稿書きか、赤ちゃんの御守りが主要目的で、(サモス島に於ける10日間ほどの“萌葱蝶”の探索と、約ひと月間のアテネ近郊の自然観察以外には)ほとんど何にもしていないのです。
三世の反応は、おおよそ次のようではないかと推察します。
>コロナの時と同じ、(何らかのバイアスによって)大袈裟に騒ぎすぎなのではないか。
>「火山」(サントリーニ島)と「今回の群発地震」(震源はパロス島とサントリーニ島の間の海底)は、特に関連はないのではないか。
繰り返し言うけれど、僕はエーゲ海について述べるべく何らの知識もありません。それで、話を少し斜めから、幾らかは知識のある日本での(トカラ火山列島を中心に置いての)状況と照らし合わせながら、適当に話を(単なる思い付きの感想ですが)進めて行きます。
「群発地震」ですぐに思い浮かべるのが、長野県北東部に於ける「松代群発地震」。僕の意識の中では、さほど昔のことではないように思っていたのですが、実際は60年近く前のことなんですね(「光陰矢のごとし」を痛感)。1960年代後半、5年間余に亘り、震度5の9回を含む有感地震6万回以上を観察、現地周辺のみならず国民を不安に陥れて、随分話題になったものです。
結局大地震は起こりませんでした(現在に至るまで微小地震は続いているようですが)。
ただし、群発地震が頻発し始める1年前(1964年6月)には、M7.5の新潟大地震が起こっていますし、また、すぐ近く(同じ長野県西北部の栄村)では、東日本大震災の翌日(2011年3月12日)にM6.7の長野県北部地震(栄村地震)が発生しています。後者も、かなり大きな地震ではあったのですが、前日の東日本大震災に隠れて、さほど大きな話題にはなりませんでした(東西に500km近く離れているけれど、現在では三陸沖が震源の東日本大地震を起因とした「遠方誘発地震」と見做されているようです)。
2011年の栄村地震と1960年代の松代群発地震との関連については、(ネットを検索した限りでは)全く言及がありません。といって、全く無関係と言うわけではないでしょう。この一帯は本州の中央を縦断するフォッサマグナの北端近くに当たることや、近くに妙高山や浅間山など日本有数の高山性火山が点在していること等々を併せ考えれば、この地域一帯に於ける何らかの共通した要因が存在する可能性も、一概に否定は出来ないと思われます。
エーゲ海との関連で話を進めます。真面目に考察するとなると非常に長くなるのですが、ざっくり言えば、日本列島、台湾、中国大陸など東アジアと、地中海、バルカン半島、トルコなどの南ヨーロッパは、共に地球レベルで見るとプレートが複雑に入り組んだ地域で、地震の巣窟です。
ひいては生物相も複雑で、(時代的には全然最近になるけれど)人類の近代文明の発祥地であることにも繋がってきます(それらの相関性ついての説明はパス)。
震源はパロス島とサントリーニ島の間ですね。地震と火山は直接の関係はないでしょが、根っこは密接に繋がっています。
そもそも研究者とか専門家とかの頭の良い人々は、物事を体系的に捉えて行きます。それが間違っているとは言わないけれど、そのことに拘泥するあまり、俯瞰的に捉えることが出来ないでいるのです。
地震と火山の存在は、ある前提・次元(体系的な考察)から見れば、全く関係がない、と言い切ってしまうことが出来るかも知れません。しかし別の前提・次元(俯瞰的な把握)によれば、大いに関係がある、とも言えます。後者は、往々にして(多くの知識層の人々が好きな言葉である)“エビデンス”に欠けるわけで、下手に押し通そうとすれば「陰謀論」として葬られてしまうのです。
さっきヤフーニュースをチェックしたら、今年はエーゲ海諸島とトカラ火山列島で、(地域を壊滅させるほどの)大規模な火山噴火が予想される、という記事がありました。ヨタ記事には違いないとしても、まんざら「陰謀論」と言い切ってしまうことも出来ないと思います(「南海大地震」と同じぐらいの確率で起こる可能性があると思う)。
このトカラ火山列島(北琉球内帯)海域では、ここ数10年来、小規模な群発地震がずっと続いています。火山活動も「霧島山」「桜島(鹿児島市対岸)」「開聞岳(薩摩半島南端)」「硫黄島(三島村)」「口永良部島(屋久島町)」「口之島(十島村)」「中之島(同)」「諏訪之瀬島(同)」「奄美鳥島(沖縄県久米島町)」と、代わる代わる噴火している。ことに硫黄島の鬼界カルデラが本格噴火すれば、日本(特に西日本)は滅亡するのではないか、という見解もあります。
プレートの食い込み(ずれ)によって引き起こされる地震と、プレートの境に沿って連続する火山の活動は、直接の関係性はないのでしょうが、成り立ちは同根です。
群発地震がサントリーニ島本体ではなく、古い時代はともかくとして、現時点では直接火山とは関係なさそうなパロス島などとの間の海中が震源、というのも、何かを暗示しているように思われます。
ちなみに、トカラ群発地震の震源地も、活火山の島々が並ぶ、諏訪之瀬島、中之島、口之島寄りではなく、悪石島(いわゆる休火山)と、非火山性の小宝島・宝島寄りです。
トカラ火山列島(行政上の地名ではなく、地史学・生物地理学的な側面からの名称)北部に位置する硫黄島(喜界カルデラ)と(行政上の)トカラ列島北端の火山島・口之島の間に位置する口永良部島も活火山で、その噴火・溶岩流出に伴う島民の避難活動(2015年)は、記憶に新しいことでしょう。
その口永良部島と口之島の間(直線距離約50km)にも、実は2つの海中火山が存在します。一つは山頂部が海上に出た口之島寄りの岩礁群「平瀬」(灯台があります)、もう一つは山頂が海面に達しない口永良部島・屋久島寄りの海底火山。これらの“隠れた火山島”がいつ噴火しないとも限らない。さらに、宝島を挟んだ南側(奄美大島の対岸)の無人島「横当島」も火山島(僕は昔ツクツクボウシの調査のために上陸したことがある)、最近火山活動の兆しが見られるという報道も目にしました。
エーゲ海とトカラ列島の群発地震に起因する巨大地震の勃発も、サントリーニ島や鬼界カルデラなど周辺の活火山の大噴火も、(これまでの流れを見れば)今すぐ起こるという確率は低いものと思われます。同時に、遠からぬうち(我々が生きている時代であるかどうかはともかく)に確実になされるであろうことも間違いありません。
速い話、それらのことを承知の上でそれらの地に人々が住んでいるわけですから、今更ジタバタしても仕方がないのでは、と思うのです。今やるべきことは、右往左往して徒に状況をかき乱すことではなく、腹を括って冷静に状況を見つめ、万が一事が起こったときに、どのような対応をしていくかを考えておくことだと思っています。
三島列島・硫黄島。この島と東隣の竹島(全島リュウキュウチクに覆われた平坦な島)は、「鬼界大カルデラ」の北側外輪山に相当。西隣に原生林に覆われた黒島。
屋久島・尾之間海岸から望む夕映えのトカラ列島中之島御岳(標高979m)。左に諏訪之瀬島、右に口之島が続きます。