青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第110回)

2011-10-13 20:43:58 | その他の植物

★朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第108回)に載せていた記事ですが、小沢一郎氏に関する記事と、分けてほしいと青山さんから指示がありましたので、こちらに移動しました。(あやこ)

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東洋のレタス“麦菜”の謎 Ⅱ⑨



以下の文章は『朝と夜のはざまで(106)東洋のレタス“麦菜”の謎Ⅱ⑦』の末尾に付け加えるつもりだったのですが、うっかり送信を忘れていました。独立の項目⑨としてアップします。

【帰国後の追記】

『世界有用植物辞典/堀田満代表編集(平凡社)』の「Lactuca」の項に、日本に於けるアキノノゲシ(var.dracoglassa=龍舌菜)の利用は、食用・家畜の餌として併記されています。また、インドネシアのジャワ島では、「Kuban kayu」の名で食用野菜とされている由、アキノノゲシを食用とする具体的な記述に出会ったのは、これが初めてです。

これとは別に、『食べられる野生植物大辞典/橋本郁三著(柏書店)』という本の中に、沖縄(石垣島)で、アキノノゲシを食した感想が記されていました。「本土産は苦味が強いが、沖縄産は苦味がない、沖縄ではゴーヤなど苦味の強い食料が普遍化しているため、苦味に慣れ親しんで余り感じないのかも知れない」、というような要旨です(“苦味食文化圏”と“苦菜”類の普及の相関性については、僕自身も前に触れましたが、興味深いテーマだと思います)。

野菜の種研究家の野口勲氏に頂いた販売種子のうち、「白かきちしゃ」の袋には、「日本古来の掻きちしゃ、原産地ははっきりしないが、奈良時代から日本にあり、江戸時代までは日本でチシャ(レタス)といえば、このカキチシャのことを指した」旨が記されています。もしかすると、この古い時代に日本に伝来した「カキチシャ」が、現在の中国の「油麦菜」に相当するのかも知れません。中国で購入した「油麦菜」は2品種とも黒い種子色、頂いた「白かきちしゃ」はレタス類一般と共通の白っぽい種子色ですが、レタスの種子には白黒両方があるようなので、色彩の相違は、さほど意味を持たないのではないかと思います。むしろ、同時に頂いた沖縄古来のチシャとされる「島ちしゃ菜」のほうが、種子に幾らか丸味があり濃色を帯びていて、他のレタスとは幾分雰囲気が異なるように感じられます。

『世界有用植物辞典』の同じ項目のレタスの解説では、野菜としてのレタスは、L.serriolaに、L.salignasが交配されて作出された、となっています。L.serriolaはアレチヂシャ(トゲヂシャ)で、前掲の付録リストでは、レタスのひとつ後の⑨に、また、L.salignasは、地中海周辺地域などに分布し、レタスのひとつ前の⑦に記述されています。

思うに、レタスの“種(species)”を考えるに当たっては、稲をはじめとする野菜・果物・園芸さらには家畜など、人間の手によって改良作成された様々な“有用生物”共々、野生生物の“種”とは一線を画した、全く別の次元での“種”を定義づける必要がありそうです。

在来野生生物の場合は、“種”は単一の(野生生物の“特定の種”の範囲内に含まれる単系統上の)の分類群なわけですが、人為的に作出された“有用生物”の場合は、複数の(野生生物の)“種”に跨っての遺伝子交流が成されているわけで、特定の種(レタスならL.serriola)を中心に、なんらかの形で別の種が関与した、遺伝的に非常に雑多な集団であるのです。

改めて、苦麦菜と油麦菜の種子の構造を、比較検証してみましょう。アキノノゲシ&苦麦菜の種子は、極めて平たく卵形に近い楕円形で、両側に幅広い翼を持ち、中央に太く明瞭な1肋が走ります。冠毛柄は明瞭に存在しますが、レタスのように長く伸長することはありません。

ちなみに、6で示した九万大山(汪洞鎮)のヤマニガナ類似種(おそらく日本産のヤマニガナと同一種またはごく近縁の種)の種子は、鮮オレンジ色、アキノノゲシ&苦麦菜に比べて小型で、やや幅が狭く、(色はともかく)全体としてはアキノノゲシとレタスの中間程度の印象です。肋はやや不明瞭に3~5本、アキノノゲシ&苦麦菜ほど幅広くはありませんが左右に明瞭な翼を持ち、冠毛柄がごく短いことなど、どちらかと言えばレタスよりもアキノノゲシに近いように思えます。

一方、アレチヂシャ&レタス&油麦菜の種子は、細長くて両側に翼を持たず、多数の明瞭な肋(10本前後)を有し、極めて長い冠毛柄を持つことなど、アキノノゲシ&苦麦菜との間には、かなりの有意差が認められます。種子の形状の差をもとに、アキノノゲシやヤマニガナを狭義のLactuca属から分け、Pterocypsela属に分割したのも、なるほどと頷けるのです。

ちなみに、レタス&アレチヂシャ、アキノノノゲシの染色体数は、共に2N=18(レタスには2N=36の個体もある由)。アキノノゲシ(ヤマニガナ)属と、狭義のレタス(チシャ)属の間の交雑の可否について知りたいものです。

油麦菜は、花や種子の形態から見て、レタスそのものと言って良いかも知れません。次のような可能性を考えておきます。

●① (極めて可能性は低いでしょうが)東アジアにも在来分布していたのかも知れないアレチヂシャ、またはごく近縁の種(レタスやアレチヂシャにごく近縁の狭義のLactuca属は、雲南省を含む中国に4種が分布)から、非常に古い時期に(ヨーロッパのレタスとは別個に)全く独自に東アジアで作成された野菜。あるいは、ヨーロッパ産のアレチヂシャをもとに、東アジア(中国)で改良。

●② ヨーロッパにおいて野菜としてのレタスが成立する初期段階で、東アジア(中国)に渡来。古い形質を保ったまま、ローカルな野菜として、現在に至る。

●③ レタスと東アジア(中国)産の何らかの在来種(アキノノゲシなど狭義の別グループの種を含む)種との交配。

いずれにしても、マイナーな野菜として古い時代から存在していたにもかかわらず、最近になって急速に普遍化(人気復活)し出したのは、確かなようです。

●④ 別に①~③のような謂れがある(=中国独自の野菜)わけではなく、単に調理法などが異なることから漠然と違う存在と思われているだけで、実は一般のレタスの品種(コスレタスやスティムレタスなど)と相同である。

●⑤ ①~④の可能性も含め、既存のレタスの品種の一部、中国で独自に作出された品種、さらにはL.serriola以外の遺伝子が混ざり合ったものまで、様々なパターンでの由来をもつ、(典型的“レタス”以外の)中国での栽培Lactucaを、一括して“油麦菜”と呼んでいる(欧米で作成されたL.serrateが関与する栽培品種を、全て“レタス”と呼ぶように)。そう考えれば、(系統が全く異なる)苦麦菜を油麦菜の一品種とすることも、あながち否定は出来ないかも知れません。

「苦麦菜」はアキノノゲシ由来。これはほぼ間違いのないところ。しかし、広く東アジア各地に在来(?)野生分布するのにも関わらず、特定の地域でのみ野菜としての育種改良が成されるに至った過程と、その理由は不明です。

「油麦菜」は原則としてレタスと考えてよいでしょう。その由来、系統上どのような位置付けにあり、いつ頃から中国で普及しだしたのか、近年の人気のきっかけは、等々、数多くの未解明な点が残されてはいますが。

日本でチェックし得た、野菜に関する書籍には、(7年前チェックした際と同様に)「レタス」の品種については数多くの記述があっても、(数百ページに亘る詳細な解説が成されている場合でも)「油麦菜」に関する記述は全くありません。それどころか、「中国野菜」についての専門書でさえ、(「苦麦菜」はむろん)「油麦菜」のことは一切触れられていないのです。

何だか、狐に抓まれたような思いでいます。

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写真は、中国と日本で入手したレタス類の種子の袋。

(日本の2つを除く)種子の写真は、第 回と第 回に紹介、改めて種子の比較写真を載せたいところですが、帰国後カメラを質に入れてしまったので、撮影が叶いません。もうしばらくお待ちください。





左から、苦麦菜(甜麦菜)/広東陽春[図はアブラナ科の蔬菜?]、油麦菜/広西梧州、油麦菜(甜油麦菜)/広東佛山。


左から、レタス(イタリア生菜)/広西梧州、レタス(かきちしゃ)/日本、レタス(島ちしゃ)/日本沖縄。












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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第106回)

2011-10-09 21:48:05 | その他の植物


東洋のレタス“麦菜”の謎 Ⅱ⑦


広東省センツェン市2011.10.2


翌朝の帰国に備え、センツェンのY.H.の隣にあるスーパーで、お土産の「麦菜」を買って置くことにしました。
「苦麦菜」「油麦菜(屋外栽培)」「油麦菜(温室栽培)」「生菜(レタス)」の4点セットです。


左から、苦麦菜、油麦菜、温室油麦菜。各500gの値。1元ずつ高くなります(レタスは500g約3元)。



左から、生菜(レタス)、温室栽培油麦菜、油麦菜、苦麦菜(2束)。質感や光沢を表したかったので、自然光撮影とストロボ撮影を並べて紹介しました。油麦菜の茎の切り口が緑色なのは、店長さんが新しく切ってくれたごく新鮮なものだから。


左から、生菜(レタス)、温室栽培油麦菜、油麦菜、苦麦菜[上・自然光、下・ストロボ同調]。



(左)温室栽培油麦菜、(右)苦麦菜。

さて、Y.H.に持ち帰って、一応ベンチで撮影しておきます。ロビーにいた宿泊客達が、なぜ野菜を撮影しているのか?と次々にやって来て質問を浴びせます。普段は、日本人や欧米系の宿泊客と会話を交わすことはあっても、中国人の宿泊客とは、まず積極的に話すことは無いのですが、この機会に彼らの意見も聞いておかねばなりません。地元広東省の男性「どれも美味しいよ!最近人気が出たのかって?そんなことは無い、昔から食べていたもの」と。山東省からの旅行者男性「“苦麦菜”というのは存在は知っているけれど、食べたことは無い、油麦菜は以前から食べていた」等々。

今回の中国での活動は、これで終わりです。苦麦菜・油麦菜の実態は、8割がた見えてきたような気がします。あとは油麦菜の花と、実際の栽培地で得た種子の写真を撮ること。種子があるということは、どこかに塔の立った株に咲く花を残して栽培している所があるはずです。種子の販売店で聞けば分かるかも知れないので、今日はそれにトライしようかとも思っていたのですが、短い時間と少ない予算では、充分な活動は出来ません。それに、皆「花を見るのは難しいし、いずれにせよ今は花の時期ではない」と口を揃えて言います。今回はここまで。麦菜の花の撮影は、次回です。ところが、、、、、。

僕のテーブルの隣で、読書をしていた大学生らしい女性が、ずっとこちらに注目して、聞き耳を立てていたようです。一通り撮影が終わり、テーブルに戻ると、話かけて来ました。

《“麦菜”の話、とても興味があります。私は先月大学を卒業したばかりで、生物学・農園学を勉強していました。レタスや麦菜のことも、ある程度は分かります。“油麦菜”の花の生えている場所も知っています。よろしければ、ご案内しましょう。いろいろとお手伝い出来れば、と思っています。》

とても有難い話です。でも今日はもう夕方だし、明朝の帰国便搭乗に向けて、香港空港に移動せねばなりません。丁重に“お申し出は有難いのですが、時間がありません、次回に中国を訪れた時は、何かレクチャーをお願いするかも知れませんので、よろしく”と今回は辞退し、その張さんという方に、メールアドレスを渡しておきました。

香港国際空港に到着して、ネットを開くと、張さんから、写真が転送されて来ていました。

これぞ“油麦菜”の花。最後の最後で、はじめて確認出来た、油麦菜の花です。もう一日早ければ、その場所に案内して貰うことも可能だったのに、と思うと、少し残念ではあります、、、、、でも、楽しみは、次回にとっておきましょう。



張さんです 


張さん自ら撮影の“油麦菜”の花。バリエーションが、かなりあるようです。左端は苦麦菜の花に似ています(苦麦菜かも知れない)。3枚目はレタスそっくりだと思う。

僕は、油麦菜はレタスそのもの、あるいは限りなくレタスに近い中国独自の作物で、苦麦菜&アキノノゲシとは、没交渉なのかも、と最近思いかけているのですが、張さんの意見では、「油麦菜はレタスよりも苦麦菜に近いと思う」とのこと。やはり、一筋縄ではいかない、様々な問題が含まれているようなのです。


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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第105回)

2011-10-08 09:00:27 | その他の植物

東洋のレタス“麦菜”の謎 Ⅱ(付録)

■=種(黒字表記)、●=Grope(または亜種・変種/青字表記)、▲▼=Type(褐色字表記)とし、それぞれにナンバーを付しました。

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MULTILINGUAL MULTISCRIPT PLANT NAME DATABASE
Sorting Lactuca names
http://www.plantnames.unimelb.edu.au/new/Lactuca.htm
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という、チェックリストを見つけました。Lactuca属(アキノノゲシ属)276種(Wikipediaのレタスの項目に全種が紹介されています)のうち、レタスLactuca sativaを中心に、近縁種を含めた15種17下位分類群(下位分類群は、ほとんどがレタスに帰属)についての、各国言語ごとの列記リストです。

Lactuca sativaの下位分類群については、亜種ssp.や変種var.として示さず、あえて(一見非科学的な)「グループ」および「タイプ」として記述していますが、この(将来に様々な含みを残す)姿勢は大いに賛同出来ます。

そのチェックリストを基に、以下のように手を加え、縮小再編(辻褄の合わない部分などは変革)してみました。

○各国語ローカルネームのうち、中国語、英語、日本語のみを表示。
○( )内数字は、紹介されている各国言語の総数。
○日本語表記については、学名をそのまま片仮名で示した例を除外し、さらに一部修正・追加を行いました。
○■=種、●=Grope、▲▼=Typeとし、それぞれにナンバーを付しました。

栽培種を中心としたリストと思われるので、野生種についてはごく簡単にしか述べられていず、その分布や、形態の比較なども行われていませんが、どの国(言語)にローカルな呼称が存在するのかということと、その名称の意味などを知ることで、レタス種内の下位分類群および近縁分類群の全体的な相関性を把握することが出来ると思います。

Lactuca属276種のうちから、どの様な根拠でレタス以外の14種をピックアップしたのかは不明ですが、一応取り上げられた全種を紹介し、( )内に簡単なコメントを付しておきます。

■①Lactuca canadensis L. (1)
ENGLISH:Canada lettuce/Florida blue lettuce/Wild lettuce.
(北米産の野生レタス)

■②Lactuca indica L. (5)
ENGLISH:Indian lettuce.
JAPANESE:アキノノゲシ
(日本を含む東アジア~東南アジアに広く分布)

■③Lactuca intybacea Jacq. (1スペイン語)
(南米Nicaragua産、ネット検索で写真を見た限り、全体のイメージはオ二タビラコを思わせます)

■④Lactuca muralis (L.) Gaertn. (8)
ENGLISH:Wall lettuce.
(ヨーロッパなどに広く分布、花は小花数が少なく、ニガナに似ている)

■⑤Lactuca perennis L. (6)
ENGLISH:
(ヨーロッパ中~南部に広く分布する紫花の種)

■⑥Lactuca quercina L. (8)
CHINESE:裂葉萵苣Lie ye wo ju.
ENGLISH:Wild lettuce/Oak-leaved lettuce/Wild oak-leaved lettuce
(ヨーロッパ南部から中央アジアにかけて分布、小さな黄花の種で、オ二タビラコに似た雰囲気)

■⑦Lactuca saligna L. (10)
ENGLISH:Least lettuce (UK)/Willow-leaf lettuce (USA).
(ヨーロッパ南部・北アフリカ・中央アジアに分布、前種に似て、いかにも雑草然とした小さな黄花の種)

■⑧Lactuca sativa L. (26)
CHINESE:莴苣Wo ju/萵苣Wo ju (Taiwan)/生菜Sheng cai.
ENGLISH:Garden lettuce/Lettuce.
JAPANESE:チシャ/レタス.

■⑧●①Lactuca sativa L.(Angustana Group) (20)
CHINESE:大葉萵苣 Da ye wo ju,/Jing wo ju,/莖用萵苣Jing yong wo ju,/Nen jing/Wo ju,/莴笋Wo sun.
ENGLISH:Asparagus lettuce/Celtuce.
JAPANESE:カキチシャ/ステムレタス/茎レタス.


■⑧●①▲①Lactuca sativa L.(Angustana Group/Stem type) (5)
ENGLISH:Celtuce/Chinese stem-lettuce.
(グループ全体に添附された各国語名称は、本来このタイプに相当するものと思われます)。

■⑧●①▲②Lactuca sativa L.(Angustana Group/Leaf type) (2)
CHINESE:油麦菜You mai cai(yóumàicài).ENGLISH:Chinese leaf-lettuce.

(一応、これが“油麦菜”が帰属するタクサ。茎を食べるタイプのものは▲①に入るのでしょう。▲②は“「茎レタス」の「葉タイプ」”と言うことになります。呼称が中国名と英名しか無いということは、世界的にはまだ普及していないということなのだと思います)。

■⑧●②Lactuca sativa L.(Capitata Group) (26)
CHINESE:结球莴苣Jie qiu wo ju,/Juan xin wo ju.
ENGLISH:Cabbage lettuce/Head lettuce/Heading lettuce/Iceberg lettuce.
JAPANESE:タマチシャ/結球性レタス


■⑧●②▲①Lactuca sativa L.(Capitata Group/Butterhead type) (6)
ENGLISH:Bibb lettuce(USA)/Boston lettuce(USA)/Butter-head lettuce/Butter lettuce

■⑧●②▲②Lactuca sativa L.(Capitata Group/Crisphead type) (9)
CHINESE:皱叶莴苣Zhou ye wo ju.
ENGLISH:Crisp lettuce/Crisphead lettuce/Iceberg lettus.
JAPANESE:チリメンヂシャ

■⑧●②▲②▼①Lactuca sativa L.(Capitata Group/Crisphead type“Red Iceberg”) (1)


■⑧●③Lactuca sativa L.(Crispa Group) (27)
CHINESE:San ye wo ju,/皱叶莴苣Zhou ye wo ju,/Wu tou wo ju.
ENGLISH:Curled lettuce/Cut lettuce/Cutting lettuce/Leaf lettuce/Loose-leaved lettuce/Vietnamese lettuce.
JAPANESE:チリメンヂシャ/カキチシャ
(“チリメンヂシャ”や“カキチシャ”の名は、幾つものグループに跨って冠せられていると解釈して良いのでしょうか?)

■⑧●④Lactuca sativa L.(Acephala Group) (7)
CHINESE:皱叶莴苣Zhou ye wo ju.
ENGLISH:Batavian lettuce/Crinkled leaf lettuce/Loose-headed lettuce/Non-heading cut lettuce/Wrinkle-leaved lettuce
JAPANESE:チリメンヂシャ/サニーレタス/リーフレタス/葉レタス

■⑧●⑤Lactuca sativa L.(Secalina Group) (9)
ENGLISH:Criolla lettuce/Italian lettuce/Italian leaf lettuce/Latin lettuce/South American lettuce/Tall leaf lettuce


■⑧●⑤▼①Lactuca sativa L. (Secalina Group“Lollo Rossa”) (3)
ENGLISH :Laitue italienne“Lollo Rossa”


■⑧●⑥Lactuca sativa L.(Longifolia Group) (27)
CHINESE:Zhi li wo ju.
ENGLISH:Cos lettuce/Romaine lettuce.
JAPANESE:コスレタス/ロメインレタス/タチチシャ
(大多数の文献では、「油麦菜」はこの分類群に含められています。アメリカ産のレタスの1/3はこれ)

■⑧●⑦Lactuca sativa L.(Quercifolia Group) (2)
ENGLISH:Cultivated oakleaf lettuce/Cultivated oak-leaved lettuce


■⑧●⑦▼①Lactuca sativa L.(Quercifolia Group“Radichetta”) (3)
ENGLISH:Italian oakleaf lettuce“Radichetta”


■⑨Lactuca serriola L. (23)
ENGLISH:Prickly lettuce/Wild lettuce.
JAPANESE:トゲチシャ/(青山追加)アレチヂシャ
(レタスの原種と見做されています。ヨーロッパ南部原産?世界各地に広く帰化。Wikipediaによると“Chain lettuce”の英名も)

■⑩Lactuca sibirica (L.) Benth. ex Maxim. (3)
ENGLISH :Siberian lettuce.
(紫花、シベリア産)

■⑪Lactuca taraxacifolia (Willd.) Schum. et Thonn. (1フランス語)
(黄花種、熱帯アフリカ産)

■⑫Lactuca tatarica (L.) C. A. Mey. (3)
ENGLISH :Blue lettuce/Chicory lettuce.
JAPANESE:(ムラサキハチジョウナ)
(紫花、北半球に広く分布)

■⑫●①Lactuca tatarica (L.) C. A. Mey. ssp. pulchella (Pursh) Stebbins (3)
ENGLISH:Blue lettuce/Russian blue lettuce


■⑬Lactuca tenerrima Pourr. (1フランス語)
(紫花、南ヨーロッパ~モロッコ産)

■⑭Lactuca viminea (L.) J. et C. Presl. (5)
(特異な花序の黄花種、小花は5弁で④に似る、地中海周辺域に分布)

■⑭●①Lactuca viminea (L.) J. et C. Presl ssp.chondrilliflora (Boreau) Bonnier (1)


■⑭●①Lactuca viminea (L.) J. et C. Presl ssp. viminea (1)



■⑮Lactuca virosa L. (20)
ENGLISH:Acrid lettuce/Bitter lettuce/Butter lettuce (as weed)/Garden lettuce (as weed)/Great lettuce (as weed)/Hemlock lettuce/Opium lettuce/Poison lettuce/Prickly lettuce/Wild lettuce.
JAPANESE:トゲハニガナ
(葉に棘が多い黄花種、ヨーロッパ原産で世界各地に帰化。和名は、これまで「トゲハニガナ」で通っていましたが、ニガナ属Ixerisではなくアキノノゲシ(チシャ)属Lactucaであるため、近年「(マルバ)トゲチシャ」に変更されたとも聞きます。実になさけない話で、一部の研究者の、ほとんどバカと言って良い頭の固さを思い知らされます。ちなみにIxerisとLactucaはごく近縁の関係にあり、もし将来属の組み換えが成されれば、そのたびに和名を変えることになるのでしょうね。)

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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第104回)

2011-10-07 11:05:39 | その他の植物

東洋のレタス“麦菜”の謎 Ⅱ⑤


広東河源2011.9.29-30


前記の、シェンツェンの食堂の料理長のアドバイス、「栽培している油麦菜(の花)を見たければ、河源市に行けばいい」に従って、今、その河源市(センツエンからバスで3時間)に来ています。ホテルの向いに日本料理店があり、そこのスタッフたち(日本語を喋れるのは一人もいない)およびホテルのフロントに訊ねてみました。

まず、わざわざこの町に「油麦菜」の花の撮影のために来た、という事を、呆れられてしまったです(そりゃそうでしょう、何もここだけで油麦菜を栽培しているなんてことは無いはずですから)。

スタッフの方々が言うには「うちの店では生菜(レタス)を使っているけれど、油麦菜も苦麦菜もとても美味しい! ともに昔から食べていた様に思う、苦麦菜はどこにでも生えている、油麦菜もどこかで見られるはずだけれど、今は花の季節ではない」。

■香港のJTB代理店(日本人スタッフを通じて)、及び日本料理店(日本語を喋れるスタッフはいない)の従業員。「油麦菜は普通に食べている、昔から食べてはいるが、確かに近年急速に人気だ出てきたようだ、苦麦菜は食べない(きっぱりと断言)」。

■センツエンや香港など、大都会の人々にとっては、レタスがブランド品、苦麦菜? そんなの食べるわけないでしょう!ということなのでしょうか。

それに比べ、陽春にしろ梧州にしろ河源にしろ、中国南部の地方中心都市では、苦麦菜の人気は、意外に高いのです。

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9月29日

タクシー代600円を奮発、ホテルのフロントで(今は油麦菜の花は見られないと思うが、との注訳付きで)教えて貰った郊外の農場に行ってきました。畑作業中の人々に“油麦菜の花を写したいのですが”と中国語で書いたメモを見せると、“油麦菜の花は無い”という返事が返ってきます。それで引き下がるわけには行きません。「緑田蔬菜生産基地」という所を教えられたのでそこを訪ねてみました。

事務所の方々は大変親切で、「日本から、油麦菜の花を写しに来ました、苦麦菜の花は、これまで何か所かで写したのですが、油麦菜はスーパーや市場には沢山出ているのに、生きた実物には出会えません、センツエンのレストランで、“河源市に行けば見ることが出来る”と教えて貰ったので、昨日この町にやって来ました、花の撮影は無理でも、せめて畑に植えられている油麦菜を見ておきたいのです、どこに植えられているか、教えて頂けないでしょうか?」と訊ねたところ、丁重に次のように答えて頂きました。

香港やセンゼンの市場に出ている油麦菜や生菜の多くは、北京や上海をはじめとした、中国各地から搬送されてきたものである(膨大な消費量に特定の生産地域では対応できない)。この辺りは、油麦菜の生産は余り盛んではない。主要生産地は、雲南省の昆明である。花はこの時期には咲いていない。冬から春にかけてだが、見るのは非常に困難。今はごく小さな、芽生えたばかりの葉しか見ることが出来ないだろうが、それでも良ければ、近くの農場に車で案内してあげる。

という事で、連れて行って貰ったのが、上の写真の畑。バナナとパパイアで囲まれた畑一面に、油麦菜と生菜(レタス)が植えられています。この町の付近を北回帰線が横断していて、すなわち亜熱帯と熱帯の境界地域です。バナナとパパイアとレタス。何だかピンと来ない組み合わせ。

もう一つ別の畑にも行ってみました。こちらは、油麦菜、生菜に、苦麦菜も栽培されています。(梧州など他の地域と同様)苦麦菜だけが、塔が立った株が、畑のあちこちに見られます。おおむね一か所に固まって生えているので、“残っている”というのではなく“残されている”のでしょう。種子の採取が目的なのでしょうか? 油麦菜は、塔の立った個体は一つもなく、刈り取った後が見られるだけ。花が残っていると、なにか具合の悪いことがあるのかも知れません(タンポポ亜科の種は自家受粉のはずなので、交雑する心配はないと思うのですが)。





(写真上と下左)左が油麦菜、右が生菜。背景はパパイアとバナナ。(下右)油麦菜。市場に出荷されるのはもう少し先?



(写真左)油麦菜だそうです。花が咲く前に刈り取ってしまうのでしょう。(写真右)苦麦菜の塔立ち個体。右半は「甜麦菜」。



油麦菜の若い株と、苦麦菜の塔立ち株。



苦麦菜。右写真は「甜麦菜」と呼ばれる品種。



(下から)苦麦菜、油麦菜、生菜(レタス)
 

生菜、油麦菜、苦麦菜



(左写真、下から)苦麦菜、油麦菜、生菜 (右写真、左から)生菜、油麦菜、苦麦菜



花が咲いているのは、もちろん苦麦菜だけ。

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●油麦菜も苦麦菜も、最近になって品種改良され、一般に広まった、というのは僕の思い込みで、案外古くから知られていたようです。

●とはいっても、苦麦菜の場合、広い地域において「食用」として市民権を得たのは、ごく最近のことだと思います。油麦菜も以前から「食用」として利用されてはいたのでしょうが、急速に人気が高まったのは、比較的最近のことのようです。

●(苦麦菜はともかく)油麦菜が(ほとんど全くと言って良いほど)日本に紹介されていないのはなぜでしょうか?

●苦麦菜がアキノノゲシ由来であることは、ほぼ間違いないでしょう。油麦菜の由来は分からずじまい。単純にレタスの一品種と考えれば良いのか、もっと複雑な問題があるのか。油麦菜はアキノノゲシとは直接の関係はなさそうなのですが、全く無関係とも言い切れない。何らかの程度で、「レタス×苦麦菜」由来と考えるのが、座りが良さそうです。ただし今のところ実証する術はありません。

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以上、河源の畑での検証は、一応想定内の結果だったのですが、予想外の事実が一つ、むしろそちらのほうが、今回の収穫だったようにも思えます。

タクシー下りて、目を疑ったのです。農園周囲の路傍の一面に、アキノノゲシが生えている! 別に驚くことではないのかも知れません。梧州をはじめ、これまで訪れた広西~広東西部の苦麦菜栽培地の周辺では、見慣れた光景です。しかし、これまで目にしてきたのは“アキノノゲシそのもの”というよりも、明らかに“苦麦菜”の逸出由来と想定される個体です。それに対し、ここで見られる個体は、どれも紛いなきアキノノゲシそのものなのです。

どう解釈すれば良いのでしょうか? 一応、次の様な答えを考えてみました。

広西~広東西部一帯では、苦麦菜栽培化の歴史が古いため、在来自生するアキノノゲシと、品種改良が成された逸出苦麦菜が交雑、苦麦菜の性質に収斂し、苦麦菜に近いタイプの帰化雑草として存在している。一方、苦麦菜栽培の歴史が新しい広東東部一帯では、在来アキノノゲシと逸出苦麦菜との間に遺伝子交流がまだ進んでいず、そのままの形で在来アキノノゲシが残っている。

正反対の考え方も可能かも知れません。広東東部一帯では、より古くから苦麦菜の栽培化が成されていたことから、逸出し雑草化した集団は、永い時間の経過と共に、本来の野生アキノノゲシの性質に戻った。











この辺りの路傍で見られるのは、明らかに野生アキノノゲシそのものと思われる印象の個体です。










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最後に、
レタスとは?
アキノノゲシとは?
について考えておきましょう。

レタスと、世界中に帰化繁栄しているアレチヂシャ(トゲヂシャ、学名種名はレタスとは別)の関係については、ネットでの検索ではほとんど触れられていません(せいぜい「似た花が咲く」程度の記述)が、まともな図鑑類などでは、後者は前者の原種である可能性が強い由、記述されています。しかし、アレチヂシャは“野生種”とは言い難い分布の様相(帰化雑草状)を示していることから、アレチジシャそのものを「原種」と言いきって良いのかは、疑問です。

したがって、各地で見られるアレチヂシャからレタスが作出された、というよりも、原種が育種改良されレタスとなる過程で、逸出帰化雑草化し、原種の性質に戻ったのが今見られるアレチヂシャ、とするのが妥当なのではないかと思われます。原種とアレチジシャは形質が相同でも、今に至る時間レベルでの相違があり、全く同一とは言えない、と考えます。

アキノノゲシも似た問題を抱えていると思います。

以前の図鑑類などの記述では、日本の在来分布種となっていたのですが、最近の(ネット)記述を見るに「史前帰化種」とされているようです。むろんその可能性は大いに高いのでしょうが、そうでない(というか、そう簡単には括れない)可能性もあります。どの様な根拠で「自然帰化植物」とされているかについては、ほかの多くの人里に生える“雑草的広域分布植物”共々、「人里的環境(極相状態ではない環境)に生えているから、よって二次的な分布」ということなのでしょう。しかし、原的環境自体が、二次的に出現した人里的環境に類似していたため、人里的環境に収斂された形で今に至った、という形も否定できない。人里的環境に収斂され拡散繁栄する「遺存的植物」と考えることも出来るのです。「史前帰化種」との結論を下すのは、そう簡単ではないと思います。

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河源を離れる前日の夜、ホテルの食堂で「苦麦菜」「油麦菜」がメニューにあるか?とたずねたら、もちろん!と答えが返ってきました。ともに炒め物。いずれも一皿(一人ではとても食べ切れません、3~4人分)15元(180円ほど)。スープにも、卵などに加え、茹でた「苦麦菜」「油麦菜」がセットで入っています。

油麦菜は品種の「香麦菜」だそうです。苦麦菜のほうはいわゆる「甜麦菜」でしょうか。味はほとんど区別が付きません。それと分かって慎重に吟味すれば、油麦菜のほうは、何となく独特の“香り”がします。苦麦菜のほうも、うっすらと野生の風味(青臭み)が感じられるような気がします。いずれも、レタス同様のしゃきしゃき味とトロ味があり、大変に美味しいのです。こんなに美味しい野菜が、どうして日本に紹介されないのか、今更ながら不思議に思えます。




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[現時点での結論]

苦麦菜(甜麦菜) Lactuca indica var.?

アキノノゲシLactuca indicaの一栽培品種

アキノノゲシは、アジア各地に広く分布(どの地域の集団が在来分布なのかについての検証は成されていない)。多くの地域で家畜の飼料として具されるほか、(主に薬膳料理として)中国南部の一部地域では古くから食用とされてきた。近年、品種改良が進むに伴って人気が高まりつつあり、中国南部を中心に、ポピュラーな野菜となっている。

葉に強い苦みをもつことから一般受けし難い半面、その苦味が人気の要因ともなっているようである(苦味の少ない甜麦菜などもある)。原則として生食はせず、主に炒めて食べることが多いようである(炒めると苦味は消える、茹でて食べることも?)。

葉の色は艶消し状。深い切れ込みのあるものが主体だが、全縁で幅広いものも多い。頭花は比較的大きく(径2~2.5cm)、舌状花は淡い卵黄色でほとんど白色に近いが、雄蕊が鮮やかな黄色のため、離れて見ると頭花全体が黄色のように感じる。種子は、左右に幅広い翼を持った楕円形で、濃黒褐色。

栽培地では、生葉の収穫後、塔の立った株を残し、そこから種子を採取して畑に撒く。栽培地(広東・広西など?)の周辺には、野生化した逸出株を多く見かける。



油麦菜(香麦菜、甜油麦菜、春菜?) Lactuca sativa var.?

レタスLactuca sativaの一品種?

学名上は、コスレタスやロメインレタスの名で呼ばれるL.sativa var. longifoliaとされたり、ステムレタス(茎ヂシャ)L.sativa var. angustanaの葉食品種(カキヂシャ≒莴笋)とされたりするが、それらと相同であるか否かについては未検証。

レタス(チシャ)またはその原種と目されるアレチヂシャ(トゲヂシャ)L. serriolaから、中国で独自に改良された野菜である可能性も。さらに苦麦菜(あるいはアキノノゲシ)との間の何らかの関わり(遺伝的交流?)も考えられなくはない。それらを含めた発祥の由来についても未検証。

中国では古くから各地で食用として利用されてきたが、近年急速に人気が高まり、アブラナ科の青菜類と並ぶ、メジャーな野菜となっている。通常生食はしないが、苦味はほとんど無く生食も充分に可。茹でて食べたり、炒めて食べたりすることが多い。薫りのある香麦菜をはじめ、様々な品種がある。

茎は中実で太く(食用の「莴笋」とする)、葉は通常全縁、色はレタスに似て明黄緑色の艶がある。頭花については未検証だが、レタスと同じとすれば、麦菜(アキノノゲシ)より明らかに小型で、舌状花は黄色味をより強く帯びる。種子(購入品による検証)は、前後に細長く、左右に顕著な翼は持たない。ただし、種子の色は淡色のレタスと異なり、苦麦菜やアキノノゲシ同様に濃い黒褐色を呈する。

栽培地では、塔の立った株は見られず、葉の収穫後に刈り取ってしまうものと思われる。市販の種子を毎年撒種するのであろう。


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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第103回)

2011-10-06 08:52:50 | その他の植物

東洋のレタス“麦菜”の謎 Ⅱ④


広西融水(九万大山/汪洞)2011.9.20-21


結局、梧州では“油麦菜”の花を見ることは出来ませんでした。しかし、たまたま以前の写真を整理していたら、7月上旬の“ヤナギバハナアジサイ”の探索時に訪れた九万大山の麓(汪洞鎮)で撮影した一連の写真の中に、紛いなき油麦菜であろうと思われる個体(葉)のカットを発見。融水は、数日前まで一週間ほど滞在していた桂林からは100㎞以内の地で、もとはと言えば今回の桂林行は、帰国の前に、ヤナギバハナアジサイの挿木を採取しに九万大山を再訪することが目的だったのです。でも、予算的に(一文無しですからして)宿舎を離れるのは難しい、ということで断念したのですが、今なら経費は確保出来ます。帰国前にもうひと踏ん張りして“幻のヤナギバハナアジサイの挿木採取”&“謎の油麦菜の花撮影”に向うにしくはありません。

しかし、写真をチェックして“油麦菜”と確信していたはずの汪洞の集団も、実際に調べてみたら全て“苦麦菜”だったのです。幅広い葉の様子はいかにも油麦菜的なのですが、花や種子は、紛いもなき苦麦菜。地元の方に「油麦菜はどこにあるのですか?」と訊ねても、「無い」または「今は無い」としか返事が返って来ません。

それと、不思議なのは、厳重な石垣で囲われて大事に栽培されている一方で、そこいらに雑草化して生えている。梧州~柳州~融水のバスの車窓からも、至る所で栽培なのか逸出なのか定かでない、塔の立った“苦麦菜”を見かけています。その辺りの相関性が、今一つ良く分からない。

という事で、結局うやむやになったまま、実態は分からずじまいなのです。




 九万大山山麓の汪洞鎮にて7月8日撮影。これぞ“油麦菜”と思っていたのですが。



こんな風に生えていると、栽培なのか逸出なのか、よく分からなくなってきます。





葉は、ごく狭いものから、幅広いものまで、様々です。



網や石垣で囲われているものは、間違いなく大事に栽培されているのですが。



葉質のイメージは、どこかレタスを思わせます。



(写真左)花と種子をぎっしり付けた古い塔立ち個体と、幅広い葉の若い塔立ち個体。



(写真左)株の横に注目して下さい。種子を撒いた後の市販の袋が、、、。栽培品は、一回一回市販の種子を撒いているのでしょうか?



極めて細長い葉の個体。野生アキノノゲシの“ホソバアキノノゲシ”のタイプに当たるのでしょうが、どこか雰囲気が異なります。



花はアキノノゲシと区別が付かないと思う。




こちらは野生(在来?)種の、ヤマニガナ近縁種(アキノノゲシ属)またはニガナ属の種。

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以下、断片的に。

苦麦菜は、アキノノゲシそのもの(またはごく近縁の種)を育種改良したものと考えて、ほぼ間違いないでしょう。

以前(8年前)に陽春を訪れた時に初めて見ました。その頃は、“食用”としては、陽春周辺(及び海南島など)の限られた地域でのみしか栽培されていなかったように思います。

その後、急速に普及、現在では、長江流域以南の中国各地で、広く栽培されているようです。

石垣や柵で囲み、非常に大事に栽培されているようであるとともに、あちこちの空き地や路傍に雑草然として見られるのは、どう解釈すれば良いのでしょうか。

葉が大きい小さい以外は、大事に囲って栽培されているものと、路傍などに雑然と生えているものとの間に、これと言った差は無いように思えます。

これは僕の想像ですが、セイヨウタンポポが食用として最初に日本に持ち込まれた頃も、似たような状況だったのでは? 当初は大事に育てられていたのが、(“綿毛”で種子を運ぶ風媒花ゆえ容易に拡散繁殖し)至る所に雑草化、肝心の“野菜”としての栽培は、早晩廃れてしまった。それと似たような道を辿る可能性も考えられるでしょう。

葉に切れ込みがあるのが苦麦菜、滑らかな全縁の葉が油麦菜である、と言う人が多くいます。でも、苦麦菜にも全縁の葉は普通に見られます。苦味も全く同じです。

花の写真を見せると、畑の周辺の住人さえ、ほとんどの人が、「これは苦麦菜では(もちろん油麦菜でも)ない、“野菊”の花である」と答えます。茎や葉がともに写っている写真を見せて、はじめて納得して貰えるのです。大抵の人は、麦菜もほかの青菜類と同様に、菜の花タイプの花が咲くのだと思い込んでいるようです。野菜として利用され出してからの歴史が、それだけ新しいのかも知れません。

「油麦菜はどこにあるのか?」と訪ねると、「今は無い」という答えがしばしば帰ってきます。油麦菜は春にしか見られない、とういことなのでしょうか? だとしても(苦麦菜同様に)塔立ちの株が残っていても良さそうなのですが。

油麦菜と苦麦菜は全く別物。なおかつ季節が異なる。それにしては、油麦菜も(苦麦菜以上に)市場に溢れています。

油麦菜と苦麦菜は同じもので、食用に具される若い葉の頃を“油麦菜”と呼び(収穫時期は春?)、塔の立ったものを“苦麦菜”と呼んでいる。これは絶対にあり得ない(同時に市場に出ているし、両者は明らかに種子の形状が異なります)のですが、一般の人々が(実際の両者の区別とは無関係に)そのように思っているであろう公算は高いでしょう。

どう見ても油麦菜の葉(油麦菜の花は未確認)としか思えない個体も、聞くと“これも苦麦菜”という答えが返ってきます(そして、同じ場所に生えている塔立ち個体の花や実をチェックすれば、確かに間違いなく苦麦菜なのです)。

「甜麦菜」と言うのもある由。苦麦菜の畑で念のため名を確認したら、「これは甜麦菜」という答えが返ってきました。葉が甘い(または苦味の少ない)苦麦菜?

「甜油麦菜」というのもあります。甘い油麦菜。ほとんどレタスそのものなのでは?

市場やスーパーには、葉の切れ込んだ苦麦菜(①)、全縁の苦麦菜(②)、それに似た油麦菜(③)、レタス的な油麦菜(④春菜?)、生菜(⑤レタス)が、たいてい一緒に並んでいます。

生のまま食べ比べをしてみました。①苦い(野生のアキノノゲシと基本的には同じ味だと思う)、②苦い、③苦くない、④レタスに似た味、⑤レタスの味。

①や②も、熱湯に浸せば苦く無くなることを確認。

苦麦菜はむろん、油麦菜も炒めて食べることが多いようです。

苦麦菜の存在意義が、もう一つ良く分かりません。一般にはまるで人気がなさそうなのに、これだけ数多く栽培されて(かつ場所によっては非常に大事に扱われて)いる、という事実に、どういう意味があるのでしょうか?

苦味の成分に様々な薬効があり、純粋な食用としてよりも、いわゆる薬膳として利用されている。それは確かだと思います。でも、それだけではこんなにあちこち(といっても南部の限られた地域だけでしょうが)で栽培されている、と言うのは不思議。

やはり“苦味”が(遠ざけられる原因であるとともに)人気のポイントなのだと思います。

とは言っても、中国の市場やスーパーでは、明らかに油麦菜のほうがメインではあるのです。

それらの油麦菜は、どこから来るのでしょうか? もしかすると温室内栽培?

油麦菜も苦麦菜も、共にこの数年の間にブレークしたのは確からしいのです。

湖北省の恩施のスーパーで訊ねたところ、(油麦菜か苦麦菜かそれとも両方かは聞き漏らしました)2009年から扱い出した、との答え(Ⅱ①に写真)。

ほかの(長江以南の)各地でも、似たり寄ったりだと思います。

中には、(少なくとも苦麦菜は)昔からあった、と言う人もいます。

あったけれど、食用とはされていなかった、という可能性も大きいと思う。

苦麦菜も油麦菜も、ともに陽春周辺(またはその近隣地域)が、発祥の地? それとも別個に発展した?

両者の由来は、全く無関係に成されたのでしょうか? 相互に何らかの関係を持ちつつ、今に至っているのでしょうか?

実のところ僕は、苦麦菜と油麦菜の関係を全く理解していないのです。

中国語のインターネットをチェックすると、苦麦菜は油麦菜の一品種ということになっています。

しかし、油麦菜は種としてはレタスそのものの可能性があります。

英文ネット上では、油麦菜の学名は、Lactuca sativa(=レタス)の変種(var. longifolia)とするのが一般的。Longifoliaは、いわゆる“コスレタス”“ロメインレタス”のこと。欧米で主流のタチレタスと同じものと考えられているわけです。

しかし、より詳しい報文(“付録”参照)では、種としては同じLactuca sativa(=レタス)でも、上記とは別の変種(var. angustana)のleaf typeとされています。Angustanaは“スティムレタス”のこと、すなわち、中国産の茎レタス(=莴笋)の、葉を食べるタイプ。

どちらが正しいのでしょうか? どちらかの変種が、中国で改良されたものなのでしょうか?

どちらでもなく、アジアに固有の集団に由来する、中国独自の野菜?

油麦菜が、種としてはレタスに属する一集団と、アキノノゲシを母種とする苦麦菜との、交雑由来である可能性も有り得ると思われます。

苦麦菜栽培地域に、(苦麦菜の逸種個体が数多く見られるのに)野生のアキノノゲシそのものが見られないことは、不思議です。

ほかの地域(陽春周辺や海南島など中国南部以外)が発祥の、アキノノゲシの食用化は?

台湾が発祥地(苦麦菜?油麦菜?)と言う説も。
神戸元町明楓(めいふう)China Maple Café

中国の一部地域では「ウサギノミミ」と俗称されているらしい。
雑草の都合 2011年07月12日レタス(5)油麦菜 ムギレタス

日本の西表島で、野生のアキノノゲシを「ウサギノミミ」と呼び、食用とする風習もある、という話と、合致します。

以前、那覇(沖縄)のスーパーで「食用ホソバワダン」を見付けた事を報告しましたが、“苦味の文化”を共有するのであろうアジア南部地域では、“苦菜”で総称されるところのキク科タンポポ連の苦味を持ったいくつかの(葉が大きな)種も、郷土野菜としてメジャーになりつつあるのかも知れません。

野生アジサイ探索記(下2e)伊平屋島【トカラアジサイ】2011.4.26~5.1 参照
野生アジサイ探索記(下2f)石垣島・西表島【ヤエヤマコンテリギ】2011年5月2日~5月5日 参照


タンポポ連の各種は、どれも苦味を伴う独特の風味(及び成分)を持ち、食用化に至る素養を内包しているものと思われます。しかし大半の種は葉がごく小さなことから、現実的には普及しないでいたのでしょう。その中で、ホソバワダンは葉が大きく肉厚で、食用化に適していたものと思われます。といっても、実際に食されているのは、(ゴーヤが普及するなど)苦味の文化の残る沖縄でも、一部地域のみ。中国南部のアキノノゲシの食用化(苦麦菜)ともども、どの様なきっかけがあったのか、知りたいものです。

しかし、一方では、苦味の強い苦麦菜やホソバワダンは、一般の人々には余り歓迎されてはいないのかも知れない、というのも事実でしょう。

中国シェンツェンの高級ホンコン料理店でワンタンを注文したところ、油麦菜らしきものが添えられていました。料理長に確認したところ、(言外に「失礼なことは言わないでくれ」といった面持ちで)「これは油麦菜ではない、生菜(レタス)である」と反駁されてしまいました。彼曰く、中国人は油麦菜などは好きではない、ましてや苦麦菜など食べるものは皆無に近い、美味しいのはレタスに限る、よって当店ではレタスしか使用していない、と。ゆくゆくは、レタスに限りなく収斂していくのではないかと思われます(すでにそうなりつつある?)。

(日本において当初食用として導入されたはずの)セイヨウタンポポも、今になって思えば、レタスに駆逐された口なのかも知れません。

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苦麦菜の種子(下右写真中央のオレンジ色は、ヤマニガナ近縁種またはニガナ属の種)。



上段オレンジはヤマニガナ近縁種、上段右は油麦菜(購入した種子)、その他は苦麦菜。




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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第102回)

2011-10-05 09:45:55 | その他の植物


東洋のレタス“麦菜”の謎 Ⅱ③


広西梧州2011.9.15-17(続き)








畑の外側、すなわち市街地に戻る車道の周辺にも、多数の苦麦菜が生えています。それらも、アキノノゲシそのものに比べれば、葉も茎もより大ぶりで、畑からの逸出由来であろうことが推測されます。





なぜかいつもパパイアとセットです。

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街に戻って、ホテルのすぐ横の市場を歩いてみました。様々な野菜の中に、苦麦菜も油麦菜も生菜もあります。









中段右のオバちゃんが買ったのは苦麦菜。




一束20円ほど、午後になるとほとんど売り切れています。



左はアブラナ類、右上が油麦菜、右下が生菜(レタス)。   中央上が生菜(レタス)、下は油麦菜(春菜)?




油麦菜(だったと思う)。                苦麦菜。




アブラナ類とタンポポ類(苦麦菜・油麦菜・生菜)。

 



右から、苦麦菜、苦麦菜、油麦菜、油麦菜、生菜、生菜。上左写真の左端はアブラナ類。

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梧州滞在中に、あやこさんから、ネットで調べたレタスの花と種子&アキノノゲシの花と種子の写真を送って頂きました。また、梧州の町の種子販売専門店で、苦麦菜・油麦菜・生菜(レタス)の種子を購入することが出来ました。その結果、以下のことが判明しました。大雑把に言って、次の様な図式になるのではないかと思われます。甜麦菜(苦味の少ない麦菜?)や春菜(限りなくレタスに近い?)についての詳細は不明です。

アキノノゲシ(⇔龍舌菜)⇔苦麦菜(⇔甜麦菜)⇔?⇔油麦菜(⇔春菜)⇔生菜(レタス)⇔アレチヂシャ(トゲヂシャ)

【種子の色と形について】
アキノノゲシLactuca indica          濃色 翼がある
苦麦菜                    濃色 翼がある
油麦菜                    濃色 翼はない
レタス(生菜)L. sativa            淡色 翼はない
アレチヂシャ(トゲヂシャ)L. serriola        淡色 翼はない




左から、苦麦菜、油麦菜、生菜(レタス)。

「中国植物志」で、レタスの一群と、アキノノゲシの一群を別属に分けた指標形質、種子本体の両側の広い翼の有無(従って全体としては、丸味を帯びて見えるか、細長く見えるかの違い)が、よく分かります。レタスと油麦菜では、形は互いに良く似ていますが、色の濃淡が顕著に異なります(油麦菜は苦麦菜同様の濃黒褐色)。







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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第101回)

2011-10-04 11:26:31 | その他の植物

東洋のレタス“麦菜”の謎 Ⅱ②


広西梧州2011.9.15-17


桂林-センツエン間は、ふだん夜行寝台列車を利用しているのですが、時期によってはチケットが入手しにくい事もあり、最近は長距離バスを利用しています。朝出発して夜に着く便や、列車同様夜出発して朝到着する夜行便もありますが、日程的に余裕がある時は、中間地点の梧州(広西と広東の境界近くにある大都市)で一泊することにしています。ここの常宿の「梧州大酒店」は、各階ごとにワイアレスの無線ケーブル(僕のパソコンでも利用可能な日本語での表示)が完備していて、中国一インターネットがスムーズに行えるため、何日か連泊することもあります。

でも、ただ室内に籠っているだけでは勿体ないので、この機会に“麦菜”の実態をチェックしておこうと、近くの畑へ探索に出かけることにしました。別に、梧州でなくとも、桂林でも広州でも最初に麦菜に出会った陽春でも良かったのですが(いずれも梧州から4~5時間の距離)。

歩いて1時間程の耕作地。畑のあちこちに塔(正確な漢字が出て来ないのでこの字を当てておきます)の立った麦菜が、場所によっては広い面積に固まって(あるいは一本だけがポツンポツンと)見られます。畑の作物の数分の一程度を、塔の立った麦菜が占めているように思えます。全て苦麦菜で、中でも甜麦菜と呼ばれるものの由。油麦菜は今はほとんどない(後で気付いたのですが、ごく若い芽生え始めたばかりの苗が幾らかあったようです)とのこと。花も種子も明らかにアキノノゲシと相同ですが、葉の印象はやや異なっていて、育種改良された栽培品であることが窺い知れます。





塔の立った苦麦菜の株の集合が目立ちます。



一株だけポツンと立っている株もあちこちに。どのような意味があるのでしょうか?



塔立ち株も、まだ若々しい葉を付けた集団から、枯れた葉を纏った集団まで様々です。





ところどころに苗床のような場所もあるようです。





塔立ち株の葉の様子は様々ですが、全縁で、先に近い部分まで幅広く、確かに“ウサギの耳”を思わせます。







頭花は、大きさもイメージもアキノノゲシそっくりです。








舌状花は(ほとんど白と言っても良い)ごく薄い黄色。雌蕊(with雄蕊)が鮮やかな濃黄色のため、離れた所からは、全体が卵黄色に見えます。















種子の色や形もアキノノゲシと全く同じで、左右に広い翼を持ちます。綿毛を見ると、広い意味でのタンポポの仲間(キク科タンポポ連)であることが、よく分かります。



熱帯の蝶、シロオビアゲハにウラナミシロチョウ。日本本土におけるアキノノゲシと蝶(例えばクロアゲハやモンキチョウ)の組み合わせとは大分異なります。














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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第100回)

2011-10-03 11:30:49 | その他の植物

東洋のレタス“麦菜”の謎 Ⅱ①




≪何度か繰り返し紹介する画像ですが、初出時に油麦菜と苦麦菜の順序が逆になっていたので、この機会に訂正しておきます≫
語:左から生菜(レタス)・苦麦菜・油麦菜 深圳のスーパーにて購入。
正:左から生菜(レタス)・油麦菜・苦麦菜 深圳のスーパーにて購入。



広西桂林2011.8.24


ここのところ一年のうち半分程は、ホテルを転々としつつ中国に滞在しているわけですが、日本人に出会う機会は非常に少ないのです。
2年前は“日本人バックパッカー御用達”とも言える成都の「シムズ」にいることが多かったので、日本人の若者や熟年諸氏も随分と見かけたのですが、シムさん一家がそこを離れてから成都での常宿を変えたため、また日本人に出会うことが少なくなってしまいました。

欧米人は、どこに行ってもそこそこ出会うのです。でも日本人は、いないところには全くいない。「欧米人はよく見かけるけれど、日本人はほとんど見かけない。来る時は、大人数が一度にやってくる」とは、雲南奥地の現地人の言。

桂林のユースでは、比較的日本人に会う機会が多いようです。今年も累計数週間滞在していましたが、数人の日本人の方に出会っています。僕と同年代の赤坂ご夫婦。定年前にして退職、ご主人は日本の大学で、奥さんは中国河北省の大学に交換留学生として、学び直しているとのこと。夏休みで2人揃っての中国旅行です。

食事に行きませんか? とのお誘いを受けたので、スーリンを案内役に、“重慶火鍋”を食べに行きました。スーリン、たぶんご夫妻に御馳走して頂けるのだろうとの目論みで(実際、御馳走して頂いた)、どんどん注文して行きます。僕は冷や汗ものです。

でも、こんな機嫌の良いスーリンも珍しい。奥さんのほうが、50歳台後半になってから中国語の勉強を始めたということに、いたく感激しているようなのです。たどたどしい中国語を喋るのですが、6カ月でそれだけ話せるのは大したものと、褒めること褒めること。返す刀で、24年経っても一向に中国語が上達しない僕を、ぼろくそに貶します(毎度のことなので僕としては“柳に風”ですが)。一年目には僕を追い越してしまうのは間違いない、と(それにしてもスーリン、その体型はなんとかならんもんか、、、、、運動不足が如実に表れているぞ、、、、、「パパは何だかわからない(山科けいすけ)」の「ママ」の存在を思い浮かべてしまいます)。





「火鍋」、いやもう、美味しかったのなんの。肉がたっぷり、野菜もたっぷり、、、(自分のお金で食べるチャンスなど、日本では100%無理でしょう)。最後に青菜を頼もう、ということになりました。そうだ、麦菜を食べなくては。この麦菜(たぶん油麦菜)が、なんともまた、美味だったのです。




←こちらは別の店で(一週間後)。




7年前、広東省の陽春で「苦麦菜」に出会って以来、“麦菜”の実態探索を中国でのテーマの一つにしているのだけれど、僕が中国語が出来ないこと、真面目にリサーチを行っていないことが原因で、一向に先が見えて来ません。

ということで、桂林の「火鍋」以降、少し真面目に取り組まなくてはと、この一ヶ月、情報の整理を試みているのですが、結局何が何だか分からなくなってしまい、泥沼に足を踏み入れた状態です。そこで、書きかけた草稿を全てボツにして、思いついたままの断片を、(前後の繋がりは無視して)箇条書きに記して行くことにします。




湖北恩施(左はたぶん油麦菜、右から2個目は「莴笋」)   雲南河口(左は生菜、右はたぶん油麦菜)
 



センツェン(左写真左が油麦菜、右写真は苦麦菜)












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朝と夜の狭間で My Sentimental Journey(24)東洋のレタス“麦菜”の不思議 Ⅱ

2011-04-28 08:54:52 | その他の植物




一昨日より、再び伊平屋島を訪れています。ここで前回来島時の資料に基づいて紹介する、ローカル野菜としての“苦菜”については、トカラアジサイの調査結果の報告共々、次回5月7日頃より再開予定の「あや子版」で改めて紹介して行く予定です。




 
                       
(タンポポ族の代表的な「雑草的植物」、いずれも屋久島にて撮影)


キク科タンポポ族の植物には、私達に身近な人里雑草が多数あります。主なものをリストアップすると、
●タンポポ属各種(カンサイタンポポなどの在来種と、セイヨウタンポポなどの帰化種)。帰化種は、本来、葉をサラダに、根をコーヒーにする目的で移入されたものが、逸出して人里雑草に。
●タビラコ(別称コオニタビラコ、春の七草の“ホトケノザ”)
●ハルノノゲシ(単にノゲシとも、同属種に、新帰化植物オニノゲシ、在来野生種ハチジョウナがある)。
●二ガナ属(二ガナ、ジシバリ、オオジシバリ、タカサゴソウ、ノニガナなど、多数の人里雑草あり)。
●オニタビラコ(路傍に普通な人里雑草、タビラコとは別系統の種で、茎が柔らかく高く上方に伸びる)。
●ヤクシソウ(オニタビラコと同属種とされているが、アゼトウナ属に近縁で、雑種が形成される)。
●アゼトウナ属(ワダン、アゼトウナ、ホソバワダンの海岸性3種、ヤクシソウと共に冬に花が咲く)。
●ヤマ二ガナ属(ヤマ二ガナ、アキノノゲシなど、野菜のレタスも同属種、秋に開花する種が多い)。

他のキク科植物と明瞭に異なるタンポポ族の特徴が2つあります。■頭花(キク科の花は小さな花が一か所の花床上に集まって咲き、全体で一つの花のように見えます)は、他のキク科各族では、内側に小さな筒状の筒状花、外側に片方が舌のように伸びた舌状花の組み合わせ(または筒状花のみ)で成りますが、タンポポ族の小花は全て舌状花から成ります。■葉や茎をちょん切ると、白い乳状の液が出ます(海外のタンポポの中には乳状液でゴムを製造するために改良された品種がある)。

食用として考えた場合、次のような共通点があると思います。■苦味がある。■水っぽい。■柔らかい。
よく考えたら、レタスという野菜も不思議な存在だと思います。美味しいとか、栄養があるとか、お腹が満たされる、とかには無縁なように思うし、別に無ければ無いで良い存在だと思うのですが、でも、よくわからない魅力があることも確かです(僕は大好きです)。レタスは苦味がないのですけれど、野生の各種は苦味の強いものが大半で、それがマイナスになっている半面、プラスにも作用しているのではないでしょうか。地域や人によって、その苦味が好まれるか否か、大きな差があるものと思われます。どの種でも食そうと思えば食べられるはずですが、日本では、実際に品種改良が成されているのは、比較的葉や茎が大型のアキノノゲシ(家畜の餌用に改良された“龍舌菜”)くらいだと思います。

しかし、何らかの要因で、特定の種が特定の地域で人の食用として利用されていることもあるようです。
やはり葉の大きなアゼトウナ属のホソバワダンは、西南日本の海沿いの低地にごく普通に生えていますが、通常は食用とはしません。しかし、この暮れから正月(2011年)にかけて訪れた(来週から再訪予定)沖縄県伊平屋島では、二ガナと呼ばれて親しまれていて(日本にしろ中国にしろ、市民レベルで“苦菜”と呼称するのは、真の二ガナであることよりも、属や種にかかわらず、その地に生えるタンポポ族野草で最も目立つ対象を指すことが多いように思われます)、野生の葉を採取し、おひたしや炒め物やスープの具などにするなど、日常的な食材として利用していました。

僕も滞在中、複数の民家や宿舎で頂く機会を得たのですが、極めて強い独特の苦みと、マイルドな舌触りとが丁度良くブレンドされ、慣れればなかなか癖になる味だと思います。対岸の名護市でも、ニガナ(ホソバワダン)を利用するようですが、料理法が限られ、食べる機会はずっと少ないように思われました。屋久島や奄美や九州本土などの海岸沿いにも、場所によってはホソバワダンが普遍的に生えていますが、今のところ(少なくとも伊平屋島のように積極的に)利用しているという情報は得ていません。

興味深いのは、“麦菜”の原型であるアキノノゲシを、(家畜の餌以外に)人間の食用として利用しているという話を聞いたことがないことです。伊平屋島でも、両者は一緒に生えていますが、食用に供されているのはホソバワダンのほうだけです。タンポポ族の野生種は、いずれの種も、どの地方でも、おおむね人間の食用としては利用されていず、一部の種が、一部の地域のみで、例外的かつランダムに利用されているということなのでしょう。唯一野菜化されメジャーになりつつあるのが、中国南部発祥のアキノノゲシの改良品種=麦菜というわけでしょうか。今後の詳細なフィールドワークが望まれます。



伊平屋島にて。上左:ホソバワダン、上右:アキノノゲシ。写真下左は、右にアキノノゲシ(花と葉)、左にホソバワダン(葉のみ)。下右2枚は、民宿で出てきたホソバワダンの和え物と味噌汁。

『中国の野菜Chinese Potherb』吉林科学技術出版社2004(490頁+32図版)を久しぶりに引っ張り出して眺めているのですがよく考えたら、アキノノゲシほかタンポポ族各種の項も、まだ余り真面目には読んでいないのです(という以前に、中国語はほとんど読めない)。改めて、ざっと目を通してみました。

タンポポ族の種については、23頁に亘り7種(*1)の本文解説(線画付き)+各種カラー図版があり、うち、タンポポ(モウコタンポポ)の記述が10頁を占めます。紹介順に、幾つかの要点をピックアップして書き留めておきます(分布は、どの種も全国的に広く見られるとされています)。

●山苦菜(苦叶名、苦菜、活血草、苦丁菜、苦苦菜、苦麻菜)
Ixeris chinensis
=タカサゴソウ[二ガナ属]
食用方法2例、医療保険作用3例。

●苦賣菜(苦萵、苦菜、老鶴菜、盤児草、満点星)
Ixeris denticulata(=dentata)
=ニガナ[ニガナ属]
食用方法4例、医薬保険作用7例。

●苦碟(満点星、苦賣菜、苦碟子、抱茎苦菜)
Ixeris(Youngia?)sonchifolia
=図版を見る限り、ヤクシソウYoungia denticulataに似ているようにも見えます。
食用方法3例、医薬保険作用7例。

●山萵苣(萵苣菜、萵笋、萵菜、山生菜、鴨子食、鵝食菜)
Lactuca indica
=アキノノゲシ[ヤマニガナ属]
栽培技術(1整地、2繁殖法、3管理)、食用方法4例、医薬保険作用3例。

●鴉葱(倒扎草根、芽草細辛、毛草七、条参、水防風、羊奶子、仙予参、ほか)
Scorzonera albicaulis
=サルシフィー(根菜)に近縁の一種[フタナミソウ属](*2)
栽培技術(1整地、2繁殖法、3管理)、食用方法5例、医薬保険作用3例。

●苣賣菜(苦賣菜、野苣、天精菜、賣菜、野苦賣、苣菜、苣麻菜、苦菜、ほか)
Sonchs brachyotus
=ハチジョウナ[ノゲシ属]
(Sonchs oleraceus=ハルノノゲシも苦賣菜と呼ばれる)
栽培技術(1整地、2繁殖法、3管理)、食用方法3例、医薬保険作用11例。

●蒲公英(婆婆丁、黄花地丁、狗乳草、奶汁草、白鼓丁、ほか)
Taraxacum mongolicum
=タンポポ/モウコタンポポ(中国で単にタンポポと言えばモウコタンポポを指すようです、本書には中国産タンポポ属計19種の特徴や分布域が併記されています)
栽培技術(1整地、2繁殖法、3管理、4病害虫予防)、食用方法18例(粥が最も多く10例、茶や酒などの飲料が4例)、医薬保険作用23例。

ということで、やはりタンポポが飛びぬけて需要が多く、「野菜(日本で言う山菜)」というよりも、限りなく「蔬菜(日本で言う野菜)」に近い存在なのではないかと思われます。

また、「蒲公英」と「鴉葱」は、別称も含め、独自のイメージの漢名を持っていますが、後の各種は、山苦菜、苦菜、苦賣菜、苦萵、山萵苣、萵苣菜、萵菜、苣賣菜、苦賣菜、野苣、賣菜、野苦賣、苣菜、、、、等々、苦、賣、萵、苣といった字が相互に重なり合って、紛らわしいのです。そのうち「山苦菜」「苦賣菜」「苦碟」のニガナ属とされる3種には、栽培技術の項目が示されていないのに対し、「山萵苣」のアキノノゲシと、「苣賣菜」のハチジョウナ(ハルノノゲシ近縁種)には、「蒲公英」や「鴉葱」同様に栽培技術の項目が示されていて、「野菜(山菜)」としての重要性が伺い知れます。

しかし、肝心の「麦菜」の名は、「山萵苣」(アキノノゲシ)の項の解説中にも全く登場しません(別名「山生菜」の「生菜」はレタス)。「麦菜/油麦菜」は栽培植物なので、あえて記述がないのかも知れませんが、それにしても、どうにも不自然な気がします。

(*1)春の七草のメンバーでもある、タビラコ(コオニタビラコ、ホトケノザ)Lapsana humilisが紹介されていないのは、何故でしょうか? まさか“蔬菜”として扱われている、ということはないと思うけれど、、、、。そういえば、やはりメンバーの一員の、ハハコグサ(オギョウ、ゴギョウ:キク科ヤマハハコ族)Gnaphalium affineも紹介されていません。ハハコグサは、雲南の奥地などでは“八百屋”の店頭でもよく見かけるのですが、至る所に繁殖している代表的な田畑の雑草ですから、栽培しているなどと言うことは、まず有り得ないと思います。

(*2)同属種の日本産在来種は、礼文島の絶滅危惧種フタナミソウScorzonera rebunensisだけですが、中国大陸では幾つかの種が普遍的に見られます。ヨーロッパで根菜として普及しているバラモンジン属Tragopogon属(通称“サルシフィー”)に近縁で、同属種には、やはり根菜として利用されるキクゴボウ(ブラック・サルシフィー)などが知られています。

【中国陽春などで栽培されている麦菜や、中国各地で料理に出てきた麦菜の写真は、探し出してそのうち紹介する予定。】


(分類単位についての注)
科Family   キク科
亜科Sub-family タンポポ亜科Chicorinae
族(連)Tribe    タンポポ族Chicorini
属Genus       タンポポ属Taraxacum
亜属Sub-genus     タンポポ亜属Taraxacum
種Species        ニホンタンポポT.japonicum
亜種Ssp./変種Var.     カンサイタンポポT.japonicum ssp.japonicum
品種Form          (明治時代にはカントウタンポポの36の品種があったとされています)


多くの種を擁する科のうち、キク科は、ラン科、イネ科などと共に、進化の末端にあるグループです。
一方、ユリ科のように、極めて未分化の集団もあります。

形態の基本的構造を細見し、分子生物学的解析を行ったところ、ユリ科のごく一部分に、ラン科やイネ科や、その他の大多数の単子葉植物が含まれてしまうという結果が示されました。ラン科やイネ科など、大半の単子葉植物をユリ科に併合してしまうと言うのも一つの手段でしょうけれども、そうすれば余りに大きな分類群と成ってしまい、いわゆる双子葉植物の科とのバランスが崩れてしまいます。そこで、ラン科やイネ科など、それ自体非常に多くの種からなる科をこれまで通り成立させるためにも、旧ユリ科は、数10の科に細分され、他の単子葉植物の科と混ざり合うようにして、幾つかの目(科の上の単位)に配分されることになったのです。

従って、現在のユリ科は、従来は、ユリ科ユリ亜科ユリ族に含められていた少数の属と種(ユリ属、ウバユリ属、カタクリ属、バイモ属[クロユリなど]、アマナ属[チューリップなど]、チシマアマナ属)に、以前は別の族に置かれていた、ツバメオモト属、キバナノアマナ属、タケシマラン属、ホトトギス属を併せて構成されることになりました。種の数から言えば、超メジャーな科だった以前にくらべ、極めてマイナーな存在になったわけです。

ユリ科の場合とは反対に、キク科やラン科やイネ科は、比較的新しい時代に、爆発的に進化発展したグループです。非常に多くの種を擁し、それぞれが特徴的形質を持つ幾つものグループに分けることが出来ますが、ユリ科を多数の科に分割したような、古い時代から引き継がれたものではありません。従って、それらの科は(幾ら多くの種を含んではいても)比較的纏まった集団として捉えられ、一つの科の中の亜科や族が、余り多く設置されることはありません。

キク科に例を取れば、従来はタンポポ族単独のタンポポ亜科と、他の10前後の族を併せたキク亜科に2分することが一般的見解でしたが、現在ではタンポポ族だけが他の各族とかけ離れた存在ではなさそうという見解が示されていて、科を大きく2亜科に分ける処置は取られないことが一般です。

思いつくまま日本産のキク科の各族(Tribeという分類単位の日本語表記である「族」は、一つ下の分類単位「属」とGenusと発音が同じなので、植物の分類では、最近は「連」を充てることが主流となっているようです、ただし、動物や昆虫では、今まで通り「族」を使用しています)を並べて見ました(このほかにも見落としがあるかも知れません)。系統的な順は不同です。

従来は、このうちタンポポ族のみでタンポポ亜科、その他の全族を併せてキク亜科、としていたのですが、現在はそのような処置は取られていないと思います。むしろ、日本産のキク科の中では最も原始的な位置付けにある(祖先的形質を多く残している)コウヤボウキ族が、ほかの全族と対応するのではないかと思われます(さらに、コウヤボウキやモミジハグマと、センボンヤリやガーベラは、族を分けるべきかも知れません)。

コウヤボウキ族     モミジハグマ/センボンヤリ/ガーベラ(園芸植物)
アザミ族        ノアザミ/ゴボウ(栽培野菜)/アーティーチョーク(栽培野菜)
タンポポ族       タンポポ/ブタナ(帰化雑草)/レタス(栽培野菜)
メナモミ族       センダングサ(帰化雑草)/コスモス(園芸植物)/ダリア(園芸植物)
オナモミ族●      ブタクサ(帰化雑草)
キク族         ノジギク(野生菊の一種)/ヨモギ/マーガレット(園芸植物)
シオン族        ノコンギク/セイタカアワダチソウ(帰化雑草)/ディジー(園芸植物)
サワギク(キオン)族   フキ/ベニバナボロギク(帰化雑草)/サイネリア(園芸植物)
ヒヨドリバナ族     フジバカマ/カッコウアザミ(アゲラツム園芸植物→帰化雑草)
オグルマ族●      ミズギク
ヤマハハコ族      ハハコグサ/ウスユキソウ/エーデルワイス(ヨーロッパ産のウスユキソウ)
ショウジョウハグマ族● ムラサキムカシヨモギ(ヤンバルヒゴタイ)

[●は日本産についてはごくマイナーな(種数が少ない)族]


Bert Kaempfert Tijuana Ta


Gene Pitney &George Jones Mocking Bird Hill

舞台は、むろんアメリカなのでしょうけれど、僕の作った博物館のあるミャンマーのピンウーリンの植物園に、余りにも良く似ているのです。曲が終わってから最後に出る、ジーンとジョージが並んで微笑んでいる写真が、なんとも言えず素敵です。


Jimmy Clanton A Million Drums
24人衆で唯一人CDが手に入らない! でも50年近く前、この曲の入ったLPを購入していて、なぜか今も手元にあります。最近のJohnnyや、若い日のBobby Darinとのポートレイトがバックに、、、。

Bobby Vinton The Last Rose

(「ElvisとBeatlesの狭間で」2010.10.6付けの記事より抜粋)
最後に、「薔薇」がらみ。
★Roses are Red(涙の紅バラ)
1962年Pop 1位、AC 1位、R&B 5位。
★Bed of Roses
1984年C&W 91位。
★The Last Rose(最後のバラ)
1989年C&W 63位
★Roses are Red(涙の紅バラ)[再発]
1990年[英メロディー・メイカー誌] 71位。
と、キッチリと締めくくっているところが、見事というほかありません。

John D. Loudermilk Language of Love
1961年、珍しく本人が唄ってヒットした曲。

Johnny Tillotson Judy Judy Judy


Johnny’s Girl Angelgroupkk


Johnny Tillotson Judy Judy Judy janschro


ジョニーの最大のヒットは、アメリカでは「涙ながらに」、イギリスでは「ポエトリー」、日本では「涙くんさよなら」、そして日本を除くアジア各国では「ジュディー、ジュディー、ジュディー」で決まりでしょう。フィリッピンでは、ラインダンスのスタンダードナンバーとなっているようです(10バージョンほどYou-tubeにアップされているうち、振付けつきのと、真ん中の娘が僕の好みの、2バージョンを紹介)。

Horst Jankowski A Walk In The Black Forest(森を歩こう)


Marianne Faithfull This Little Bird (可愛い小鳥)


Millie Small My Boy Lollipop


ちょっと安易な選曲だけれど、1964~1965年の大ヒット3曲を紹介します。“美少女”マリアンヌ・フェイスフル「可愛いい小鳥」は、ジョニーの「トーク・バック・トレンブリン・リップス」に並ぶ、ラウダーミルクの最も良く知られた曲。“ジャマイカのお転婆少女”ミリー・スモールの「マイ・ボーイ・ロリポップ」は、成長してセクシーになった、10年後の映像です。




★手違いで、関係ない記事を載せていましたので、その部分を削除しました。

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朝と夜の狭間で My Sentimental Journey(23)東洋のレタス“麦菜”の不思議 Ⅰ

2011-04-27 08:57:55 | その他の植物




(2004~5年執筆の未発表草稿)中国自然紀行~日本のルーツを求めて/West meets East(第7章)から

キャベツはナノハナの仲間(アブラナ科)、これは知っている人が多いでしょう。ではレタスは? こちらは知らない人も結構いるのではないでしょうか? 答えはタンポポの仲間(キク科タンポポ族)。なかでも、秋(9~11月頃)日本各地の野辺で普通に見られるアキノノゲシなどと同じヤマニガナ属に含まれます。

アキノノゲシは、私の大好きな野の花のひとつです。だから日本の国内はもとより、台湾でも、中国大陸でも、路傍に咲いているこの花を見つけるたびに足を止めて、写真を写しています。「レタスの近縁種だから(料理の仕方によっては)美味しいのに違いないのに、どうして雑草のまま放って置かれるのだろう、もったいない話だなぁー」と、いつも想いながら、、、。

中国の蔬菜は実に多様ですが、中心となっているのは日本同様にナノハナの仲間です。“菜の花”とは、狭義にはアブラナの花とその近縁種セイヨウアブラナの花を指すのだと思いますが、やはり近縁種のカラシナの花やキャベツの花(クリーム色)も、一般には“菜の花”と認識されているはずです。ダイコンの花も“白い菜の花”と思って良いかもしれません。ちなみに、実から油を採るナタネ、根を食べるカブ、葉を食べるハクサイやコマツナやチンゲンサイなどは、全て種(species)としては同じアブラナに含まれます( セイヨウアブラナは別種)。

中国での呼称は、「菜の花」は“油菜花”、食用としての花序の部分は“菜芯”、カブは“蕪菁”、ハクサイは“大白菜”、その他の葉を食用とするものは“小白菜”や“青菜”の名で総称されているようです(むろん品種ごとに一つ一つ名が付いています)。キャベツは“甘藍”“洋白菜”“円白菜”“巻心菜”など(カリフラワーは“菜花”)、ダイコンは“蘿ト”
です。これらアブラナ科(十字花科)の蔬菜は実に多様です。畑にも、市場にも、食卓にも、様々な種や品種が溢れかえっていて、どれがどれだかまるで区別がつきません。はっきりしているのは、その大半が、アブラナまたはその近縁種、いわゆるナノハナの仲間だということです。筆者は、歴史や文化や風俗など人間との関わりでみた中国には全く興味がないのですが、春の菜の花畑の圧倒的な美しさだけは、理屈ぬきで感動せざるを得ません。「菜の花」と「中国」は、切っても切り離せない関係にある、といっても良いでしょう。

一方、レタスとその仲間の、中国での位置づけは、どのようになっているのでしょうか? 『ナノハナvs.タンポポ 』ですから、代表者どうしの「春の草花」としてのネームバリューは、負けてはいません。しかし、食用としての位置づけは、大きく異なります。ナノハナの仲間で食用とされるものは、上述したような極めて多くの、改良・育種され農地に栽培する“野菜”から成ります。イヌガラシやナズナやタネツケバナの仲間などの野草そのもの(あるいはそれらをいくらか改良したもの)を食用とする例も、あるにはありますが、膨大な量の栽培蔬菜を前にしては、ほとんど無いに等しいと言えます(ちなみに、中国語の「野菜」は日本でいうところの「山菜」を指し、「蔬菜」が日本でいう「野菜」にあたります)。

それに対し、レタスの仲間で食用になるものといえば、レタスやチシャ(レタスと同じ種で球状にならない品種群、“サラダ菜”はその代表)以外は、ほとんどが“山菜”(中国でいうところの「野菜」)です。まず、タンポポ自体が、栽培植物のナノハナと違って純然たる野生植物です。日本では、かつて食用として導入されたセイヨウタンポポ(現在は全土に帰化)の、根をコーヒーの代用に、葉をサラダにしていた由ですが、中国では、在来種のモウコタンポポ(日本には対馬に分布)が、同じように利用されています。

タンポポといえば日本で最もポピュラーな野生植物のひとつでしょう。逆に稀産種№1のひとつが、北海道・礼文島の断崖絶壁に固有分布するフタナミソウ。同属種は世界的な視野で見れば広域に分布し、ヨーロッパなどでは近縁属の種が“バラモンジン”の名の蔬菜として普及しています。中国でもフタナミソウと同属の種(Scrzonera albicaulis、中国名は“鴉葱”)が広く分布し、野菜(すなわち山菜)として利用されているようですが、栽培蔬菜までには至っていないと思われます(他にタンポポ族の蔬菜としては、ヨーロッパなどではポピュラーな青花のチコリCichorium intybus がありますが、日本や中国では余り見かけません)。

多くの種が春咲きのタンポポ族の中にあって、少数派の秋咲きの種が、レタスと同属の、アキノノゲシLactuca indicaや ヤマニガナL.raddeanaです。日本産の種としては、ほかに花が青紫色のエゾムラサキニガナとムラサキニガナ、黄花のミヤマアキノノゲシがあり、レタスL.sativaの原種と目されるユーラシア大陸西部原産のアレチヂシャL.serriola(別名トゲジシャ、花は黄色)も帰化しています。ヤマニガナの花も黄色ですが、アキノノゲシの花は、独特の淡黄色です(レタスの近縁種アキノノゲシの花色がキャベツのそれと似ているのは、偶然とはいえ興味深い事実だと思います)。黄色い草花が多い華やかな春の野辺と違って、どこか寂しげな秋の野辺では、アキノノゲシの淡黄色(クリーム色)は実によく目立ちます。また、アキノノゲシ、ヤマニガナ、別属のヤクシソウなど、秋咲きのタンポポ族の越年草は、しばしば古い茎が木質化するのも特徴で、繊細な春の各種に比べ、ずっとワイルドです。葉や茎も荒々しく、とてもレタスの近縁種だとは素直には思えません。

それはともかくレタスに最も近縁な野生種のひとつが、雑草といってもよい程どこにでも見られるアキノノゲシなのですが、これまで私は、そのアキノノゲシを(ブタやニワトリの餌用に改良された品種リュウゼツサイを除いては)積極的に食用とする例は、聞いたことがありませんでした。日本はもとより中国でも、蔬菜として普及しているタンポポ族の種は、せいぜいレタス(チシャ)やチコリ(キクジシャ=エンダイブを含む)どまり、と思っていたのです。

だから、広東省西南部の春陽市近郊で、畑という畑に、どこから見てもアキノノゲシそのものの栽培野菜(蔬菜)が植えられているのを目にしたときは、びっくりしました。

この文章は、実はリアルタイムで書いています。野菜(以下ややこしいので、栽培されているもの=中国でいう“蔬菜”=を日本流に“野菜”と呼び、食べられる野生種=中国でいう“野菜”=を日本流に“山菜”と統一)としてのアキノノゲシに出会ったのは10日ほど前。驚いたのと共に、レタスやアキノノゲシそのものには非常に興味があっても、前述したように人間社会にかかわることには興味も知識もまるでない筆者ですから、もしかしたら(というよりもかなり高い確率で)中国でアキノノゲシが野菜として栽培されていることを知らないのは僕ぐらいであって、実際には周知の事実なのではなかろうか?という思いが、頭をよぎったのです(今でも半分くらいはそう考えています)。

周知の事実であるにしろ、少なくとも日本では余り知られていない事であるにしろ、僕自身は中国の野菜について何も知らなさ過ぎるので、とにかく一からアプローチするしかありません。花序の部分(畑に咲いている薹の立った花)と市場で買った野菜としての葉を持ち帰り、深圳在住(桂林の山奥出身)の僕の(元)婚約者Shulingに教えを乞いました。名前は“苦麦菜”(現地で聞いた名は“麦菜”、“苦麦菜”は半野生のものや薹の立ったもの?)で、桂林でもいくらかは栽培している、とのこと。早速、深圳の街中のスーパーマーケットに行って探したのですが、レタスはあっても麦菜・苦麦菜は見つかりません。

次に本屋へ行き、『 中国野菜Chinese Potherb』という出版されたばかりの分厚い本(500頁余、図や写真も載っている)を手に入れました。中国の“野菜”についての詳しい記述を期待していたのですけれど、前述したように中国語の“野菜”は日本語の“山菜”です(そのことはこの本を買って初めて知りました)。キャベツやレタスなどの蔬菜は紹介されていません。そこで書店に置いてある蔬菜の本を片っ端から調べたのですが、麦菜・苦麦菜についての記述はどこにも見当たりません。

『中国野菜』の記述によると、山菜としてのアキノノゲシは“山萵苣”で、別名として“萵苣菜”“萵菜”“山生菜”“鴨子食”などが記されています。“鴨子食”はリュウゼツサイのことでしょう。手許にある日本の辞書(*1)では“萵苣”がレタス(チシャ)ですが、この地方(おそらく華南一帯)では、レタス(チシャを含む)は“生菜”と呼ばれています。従って、“山萵苣”“山生菜”は、ともに野生のレタスということになります。

(*1)萵苣Woju【植物名】チシャ。 萵笋:萵苣の変種で、太い茎を食べる。 巻心萵苣:レタス。

ほかにタンポポ族で山菜になる種としては、ニガナ属のニガナとタカサゴソウが、それぞれ“苦賣菜”“山苦菜”、ノゲシ属のハチジョウナとハルノノゲシが、それぞれ“苣萵菜”“苦苣菜”という名で紹介されています。それらを併せて考えると、タンポポ族の(うち草丈の高い)山菜の名は、“苣”“ 萵”“賣”の字が組み合わさって成されていて、野生のもの(おおむね苦いものが多い)には、“山”や“苦”の字が冠されます。気になるのは、この本(及びその他の辞書など)のどこにも、“麦菜”“苦麦菜”が出てこないことです(本の版元が北部の吉林省であることも関係しているのでしょうか?)。

今、再び陽春市に来ています。朝の町の中心街では、大袈裟ではなく行き交うほとんどの人が、麦菜の入った袋をぶら下げて歩いています。彼らのやってくる道を遡ると、大きな市場に辿り着きました(ちなみに、この市場の周りには、何人ものお婆さん達が座り込み、山菜~というより道端の雑草? ウスベニニガナ、オトギリソウetc.~を売っている)。その広い2階の全フロアが蔬菜売り場で、幾つもの小スペースに区切られたどの店先にも、麦菜が大量に並べられています。膨大な量の、麦菜・麦菜・麦菜、、、。2つのタイプの麦菜(のっぺりとしていて葉縁に細鋸歯があるタイプと、深い切れ込みがあり葉の質が柔らかそうなタイプ、後者は葉の基部が肉厚に肥大しているものが多い)、2つのタイプの生菜(外観が麦菜に似たチシャ状のタイプと、半ば球状に巻きかけたレタスに近いタイプ)、大抵この4点がセットになって並べられています。そこに、青菜・白菜・菜芯・甘藍などの“キャベツ・ナノハナ組”も加わるのですが、ここでは明らかに“レタス・麦菜組”が圧倒しています。

それらを買って帰り、食堂でその炒め物を作ってもらいました。僕には食べ物の味を表現する能力はないのですが、くせがなく、とにかく美味しいのです。炒め物になった生菜と麦菜は、見た目にも味も全く区別がつきません。ただし、生食できるのは生菜だけで、麦菜は生では食べられないとのこと。

陽春市の南端にある八甲という町(ここにきたのは別の目的、屋久島と華南の一角に隔離分布するホソバハグマの撮影)の旅館で夕食をとりながらこの原稿を書いているのですが、麦菜の話を持ち出すと、「この町(八甲)の特産だ」と言って、早速また炒め物を作ってくれました。特産は少々オーバーだとしても、この辺り(陽春市周辺?それとも華南一帯?)が麦菜の主産地であることは確かなようです。陽春の人々に『中国野菜』の“山萵苣”の図を見せても、色をなして「これではない!」と言われます。あまりにきっぱりと否定されるので、本当に“麦菜”がアキノノゲシの栽培品種なのだろうか?と、少々心配になってくるほどです。それに加え「野生は無い!」と言われることからも、よほど重要な野菜として、大事に育てられているのだろうことが知れます。

そこにいくと、桂林あたりでは“苦麦菜”と呼ばれるように、野生品と栽培品が混在する中途半端な状況にあるようです(Shulingの記憶によれば、深圳にも桂林にも前述の2つの麦菜のうち、のっぺりした葉のほうは存在せず、また、外観が麦菜タイプの生菜も“苦麦菜”と呼んでいる由)。この、のっぺりとした葉のほうの“麦菜”は、日本でいう“リュウゼツサイ(龍舌菜)”とそっくりです。同じものである可能性が高いと思うのですが、それにしてはこんなに美味しい野菜を、日本や中国の多くの地域では豚や鶏の餌としてしか利用しないというのは、一体どういうことなのでしょうか? 外観は似ていても含有する成分が異なる(分類群も異なる?)のか、本当は美味しく食べることもできるのだけれど、何らかの理由で野菜としての改良・普及が成されなかっただけなのか..... 。

台湾や福建省でも、日本と同様に路傍に生えるアキノノゲシの野生種を沢山見ていますが、栽培しているところを見た記憶はありません。華南(の一部?)では野菜として普遍的に栽培されているのに対し、おそらく中国の多くの地域では、野生種はあっても、野菜としては栽培されていないものと思われます。桂林や深圳の辺りは、その移行地帯なのかも知れません。

“麦菜”として栽培されている地域がどの範囲に亘っているのか? 本当にアキノノゲシの栽培品種が“麦菜”なのか?などの疑問については、これから解明していくつもりでいます。

アキノノゲシは、ユーラシア大陸東部(インドシナ島嶼部を含む)の極めて広い範囲で、普遍的に見られる種です。それらのうち、華南などの一部地域のみで栽培化が成されたのでしょうか? それとも、本来はそれほど広い分布圏をもつ種ではなく、栽培による分布拡大の後、大多数の地域では栽培が行われなくなって野生化したもののみが残った、と考えることは出来ないでしょうか? ユーラシア大陸西部における“アレチヂシャ~レタス”の広がりと併せ考え、ユーラシア大陸東部における“アキノノゲシ~麦菜”の広がりの実態には、多くの興味深い問題が含まれているように思えるのです。

2004年11月2~8日 広西壮族自治区陽春市にて記述

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以上が、今回の中国滞在中(2004年10月17日~11月10日)に見聞きし、知り得たことを、これといった基礎知識もないまま、現地でめくらめっぽうに書いたものです。

日本に帰って早速、“麦菜”について調べてみることにしました。おそらく様々な“周知の事実”であろう情報が追加され、上記の文章も大幅に書き換えねばならないだろう、と思っていたのです。

というわけで、図書館へ行き、大型書店へ行き、野菜に関する本を片端から当たってみたのですが、どの本にもチシャ・レタスについては、品種の紹介(サラダ菜、クキヂシャ、カキヂシャ、チリメンヂシャ、サニーレタスetc.....)をはじめ、その伝播の歴史、アメリカ・ヨーロッパ・中国・日本などにおける現状、栽培法など、痒い処に手が届くほど詳しく説明されているのに対し、予想に反して、“麦菜”“苦麦菜”についてはもとより、アキノノゲシをはじめとした東アジア産Lactuca属野生種に基づく野菜についての記述は、ものの見事に見当たりません。

東アジア原産の食用Lactuca属についての記述は、唯一つ、『世界の野菜』(養賢堂1989)という、やはり500頁余の大部の本(ほぼ学術書)のレタスの項目中に2行ほど、「中国原産の“インディアンレタスL.indica”が、中国南部地域では炒めものなどに利用される」とあるのを、かろうじて見つけました(L.indicaがアキノノゲシだとは気付かずに“インディアンレタス”と名付けた公算大)。

もうひとつ目に留まったのは、大場秀章著『サラダ野菜の植物誌』(新潮社2004)。生物学的な視点から、キャベツやレタスの歴史を解説した、とても良い本です。東アジア産Lactuca属の食用に関する具体的な記述はないのですが、「Lactuca属の種は互いに近縁で、交雑が起こり易く、種の区分が難しい」「将来、新たな品種改良が成される可能性が、大いにある」といった由の、“麦菜”の存在を暗示する内容が記述されています(大場先生、“麦菜・苦麦菜”について何か知っている事があれば教えて下さい!*2)。

【(*2)この数年後、大場教授にお会いしたとき、以前、陽春の真南にある海南島で植物調査を行った時に、やはりアキノノゲシを栽培化した野菜に出会った、他の地域での栽培化は記憶にない、という話をお伺いしました】

なお、中国科学出版社刊『中国植物誌』(第80巻、菊科舌状花亜科菊苣族=キク科タンポポ亜科タンポポ族)では、アキノノゲシはLactuca属ではなく、Pterocypsela属に移されて、P.indicaとなっています(レタスはそのままLactuca属)。漢名は“翅果菊”ですが、これは新しく作られた学術書用の名。Pterocypselr属をLactuca属から分離する根拠とした、翼状の種子に基づくものです。

別称として示されている“山萵苣”“苦萵苣”“野萵苣”“山馬草”が事実上の中国名で、前述した『中国野菜』の記述と概ね符合します。“麦菜・苦麦菜”の記述は、狭義のLactuca属を始めとする他の近縁属の種を含め、やはり見当たりません。

ここまで書いてきたところで、『中国野菜』を読んだ当初から、ずっと気になっていたことを確かめてみることにしました。すなわち、書物には一切出てこない、華南(の一部?)における蔬菜としてのアキノノゲシの呼称“麦菜・苦麦菜”と、各文献に示されている、アキノノゲシ属(ヤマニガナ属)に近縁のニガナ属やノゲシ属の種名“賣菜・苦賣菜”は、同義なのではないのだろうか? ということです。手許の辞書をひもとくと、“麦”と“賣”は隣り合って載っています。それもそのはず、発音が全く同じなのです(尻下がりに“マァイ”、ちなみに同じ“マァイ”でも“買”は語尾が上がる)。もとより意味は全くちがっていて、それぞれ日本語の“むぎ”“うる”に相当し、両者を繋ぐ意味合いは、どこにも見当たりません(偶然でしょうが、“賣”の簡体字は“麦”にどことなく似ていて、私が両者の結びつきを思いついたのは、意味でも発音でもなく視覚によるものです)。

それでも、それぞれの語の熟語の中に一つぐらいヒントになる意味が含まれていないだろうか、と辞書を眺めていたら、ひとつありました。麦の収穫期をさす“麦秋”(秋と言うより夏に近い季節だそうですが)。“麦菜”は夏から秋にかけて収穫シーズンを迎える蔬菜の代表、ということなのでしょう。メインの栽培地である華南(の一部)では、野生のレタス、すなわち“山萵苣”“山生菜”といった脇役的な存在なのではなく、“麦菜”と言う独立した存在の主役の蔬菜であるわけです。深圳や桂林あたりまでは、メインの産地ではないにしろ栽培野菜としての影響は及んでいるので、野生種ともども“苦麦菜”と呼び習わしているのに対し、そのほかの大多数の地域では、あくまで山菜的感覚の、野生のレタス“山萵苣”“山生菜”でしかないわけです。そして(全くの推察ですが)意味を失った“麦”の語が“賣”に置き換えられ、典型的な山菜でより小ぶりのニガナ属の種などに当てられた(“苦賣菜”etc.)とは考えられないでしょうか。

最後に、『中国植物志』のタンポポ族の分類について、簡単に述べておきます。痩果の形状を重視することなどにより、属と種の組み合わせが、従来のそれとは大きく異なっています。ヤマニガナ属の関連では以下の通り。

・Lactuca属からPterocypsela属を分離。前者は主にユーラシア大陸西部に繁栄(中国ではチベット・ウイグル・雲南などに4種が分布)。後者は主に東アジア産で、中国産は次の7種。
① P.indica
② P.laciniata
①はホソバアキノノゲシ、②はアキノノゲシに該当し、従来の見解ではせいぜい品種関係に置かれる程度。日本本土産は葉が深く切れ込む②が中心となり、屋久島産は私が知る限りすべて葉の細長い①。『中国植物志』によれば、中国では両者は広い範囲に混在し、朝鮮半島には②のみが、海南島、フイリッピン、インドネシア、インドにはそれぞれ①のみが、分布地として記されています。
③ P.triangulata
ミヤマアキノノゲシ。中国北部・東北部、東シベリア、本州中部山地。
④ P.sonchus
中国固有種、貴州・湖南・四川各省の一部。
⑤ P.formosana
中国名“台湾山苦賣”。台湾産のLactuca~Pterocypsela属は本種のみ。中国大陸にも北部を除き広く分布。痩果の概形はP.sonchusに近い。
⑥ P.eiata
⑦ P.raddeana
⑥はヤマニガナ、⑦はチョウセンヤマニガナ。日本の文献では両者を変種関係に置く。⑥は日本各地をはじめ、中国大陸に広く分布。痩果の形が異なる⑦は、主に朝鮮半島~中国大陸北部に分布するほか、九州北部、四川省、福建省などからも記録がある。屋久島産、ベトナム産も⑦とされている。

・従来Lactuca属に含められていたエゾムラサキニガナは、1属1種のLagedium属へ(Lagedium sibiricum)。中国名“山萵苣”または“山苦菜”。北海道、中国大陸北半部を含む、ヨーロッパに至るユーラシア大陸温帯域に広域分布。

・やはり従来Lactuca属に含められていたムラサキニガナは、中国に15種が知られるParaprenanthes(ニセフクオウソウ=假福王草)属へ(Paraprenanthes sororia)。中国名“假福王草”または“堆萵苣”。日本(本州以南)、中国大陸南半部などに広く分布。

・Ixeris属を2分割し、Ixseris(ニガナ=苦賣菜)属とIxeridium(コニガナ=小苦賣菜)属に。両属の種は、いずれも小さな草本で、蔬菜化にはほど遠いと思われます。
2004年11月17~21日 東京および鎌倉市にて記述
≪使用写真≫(注:見つけ出すのに時間がかかるため今回は割愛、見つかり次第掲載します)
・陽春市圭岡の麦菜畑(4枚)
・陽春の市場の生菜と麦菜(3枚)
・料理した麦菜と生菜
・麦菜を買って帰る人々
・市場周辺の雑草売り
・陽春市八甲の麦菜畑
・麦菜の花(拡大)
・アキノノゲシ(兵庫県/屋久島/福建省)
・ヤマニガナ(屋久島)

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2005年10月20日 追加記事

東洋のレタス麦菜(栽培アキノノゲシ)に関する記事を、昨年11月21日の時点で一応まとめた後も、暮れから正月明けにかけ、西安や雲南省の各地を回って来ました。各地で新しい情報を得たり、インターネット検索を行ったりしていたのですが、なんと!――――――パソコン故障の為、撮影した写真の多くと、それら新たな情報の大半が消失してしまった―――――――。ということで、しばらくの間、麦菜の探索も、やる気を失っていたのです。

もっとも、その時(2005年1~2月)のインターネット検索では、特にこれといった情報は見つからなかったのですけれど、一年近く経ったことですし、新しく購入したパソコンでのインターネット操作方法もやっと分かってきたものですから、改めて検索をかけて見ることにしました。

苦麦菜20万件強(苦菜・麦菜を含む.....なお、野菜=料理の素材としての一般名称は「油麦菜」らしく、おおむねこの名前で紹介されていますが、少なくとも活字本ではこの名前でもほとんど登場しない)。でも実質的には、、、、。

中国語で検索(最初の数100件)した“麦菜”が記された地域を羅列して見ると、桂平市(広西壮族自治区東南部で陽春の北西約200km)で新品種が開発されたという情報、次いで高州(特定できず、陽春の近くの町らしい)、広州白雲山(同・北東約200km/広東省)、肇慶(同・約100km/広東)、梧州(同・北約150km/広西)、東莞(同・北北東約220km/広東)、深圳(同・東約240km/広東)、東平(特定できず、広東省の北隣の江西省、この中では最も離れている)、と続き、大半は市場情報です。この地域(陽春から半径数百kmほどの中国南部)に縁の深い野菜であることは確かなようです。

日本語検索は4万件近くがあり、ざっと目を通したところ、野菜の“麦菜”とはほとんど直接の関連はない例が大半です(苦と麦でビール関連多し)。しかし、幾つかは“麦菜”について触れた記述も見付けることが出来ました。


●『日々是ナヲチ』(主題は政治、2005年3月のサイト)
“「生菜」はレタス、「白菜仔」は青菜の1種、「油麦菜」は......不明です。”

といった記述があります(農薬公害に関連する話題)。


●『上海しーすー日記』(2005年4月のサイト)
“中国野菜「油麦菜(ヨウマイツァイ)」は、レタスのような柔らかい葉物です。食べ方としては、炒め物、お浸し、汁物の具にも合います。”

「麦菜」で検索すると120万件強、日本語検索が30万件、おおむね苦麦菜・油麦菜と重なり、似たり寄ったりで、ほとんどは“麦菜”とは全く無関係な情報ばかりですが、ごく稀に広州料理の関係などに(上海料理にも)記述が見られます。


●『上海のお昼ご飯!薬膳』(2005年8月のサイト)には、
“油麦菜は夏になるとどこにでもある。レタスのようなシャキシャキな葉茎だが、苦味はそれほどなく甘い。”

桂林近郊のスーリンの実家では、秋でなく夏に収穫される、と聞いたのと符号します。花期は秋~冬でしょうが、収穫は夏なのだと思われます。冬の西安でも(はじめに述べたように写真・詳しいデータとも消失)食堂で食べることが出来ました。各地に広く出荷され消費されているものと思われますが、仮に限られた地域のみでの栽培となると、出荷や消費のシステムや絶対量はどれくらいなのか、知りたいところです。


●『「人民中国」13億の生活革命(28)農家と食卓を彩る「緑色革命」』で紹介されている、雲南省呈貢県梅子村(昆明近郊)の農民についての話。
“現在、村のビニールハウスでは、一年に三回も四回も収穫可能で、成長期間が最も短い油麦菜(青菜の1種) 〈青山注:これは間違いで、油麦菜は青菜の仲間(=アブラナ科)ではない〉 は40日で収穫できる。こうして野菜農家の収入は著しく増えた。”

この野菜の新たな人気ぶりを裏付けているように思われます。

麦菜(苦麦菜・油麦菜)の実態については、まだまだ分からないこと(あるいは、ほかの人が知っていても、僕だけが知らないこと)だらけなのです。

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それから5年余が経ち、久しぶりにこの未発表草稿(および追加記述)を引っ張り出し、改めて麦菜(苦麦菜・油麦菜)について考えて見ることにしました(ネット検索はまだ行っていないのですが、何か分かれば後で追加報告する予定です)。

その後も、中国各地(と言っても、広東・広西・雲南・四川・重慶・陝西・湖北など、おおむね長江流域以南の中~南部で、北京など北部の状況は全く不明)の食堂で、麦菜に出会っています。大きめの食堂に行った時は、まず油麦菜を注文するのですが、案に反して、ちゃんと出て来くることが多いのです。以前はともかく、少なくとも現在では、かなりポピュラーな野菜であるようなのです。

栽培地域はまだ限られているけれど、全国に流通しつつある、ということなのでしょうか? ただし、中国南部以外の各地でも、油麦菜ではないだろうかと思われる野菜の栽培を、しばしば見かけます。最近になって、広東以外の地でも、急速に普及しつつあるのかも知れません。それとも、僕を含む日本人が知らないだけで、実際には以前から中国の各地で普遍的に栽培されていたのでしょうか?

それにしても、中国でも活字本に登場しない(中国各地の書店で「野菜=中国語での蔬菜」に関する本を見付け次第チェックしているのですが、麦菜・油麦菜については全く記述がないか、ごくローカルな野菜として紹介されている程度)のは不思議です。やはり、本来は極めてローカルな存在であり、最近になって急速に普及しつつある、と考えるのが妥当なのではないかと思っています。




左から生菜(レタス)・苦麦菜・油麦菜 深圳のスーパーにて

 
   
野生のアキノノゲシの花と葉(いずれも屋久島)
















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2010年夏、四川省/来金山&巴朗山の植物(10)

2011-04-26 15:11:24 | その他の植物




アブラナ科 2010.7.31 巴朗山






























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2010年夏、四川省/来金山&巴朗山の植物(9)

2011-04-25 16:31:07 | その他の植物


明日は青山さんの63歳の誕生日ですね。

3年前の誕生日、満身創痍で迎えたことを思い出します。

無事今日のこの日を迎えられたことは、幸運かどうかわかりませんが、まだまだこの世でやってもらいたいことがあるよ。という神様のお考えなのでしょう。

今年が青山さんにとって、最高の年になりますよう、心から願っています。ハッピーバスデイ!!          


 あやこ


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


キランソウ属 2010.7.31 巴朗山














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2010年夏、四川省/来金山&巴朗山の植物(8)

2011-04-24 11:18:56 | その他の植物


リンドウⅥ


リンドウ族シロウマリンドウ属Gentianopsis/サンプクリンドウ属Comastoma 2010.7.30

四川省来金山北面(標高3500m付近/冷温帯性樹林)







シロウマリンドウ属Gentianopsis


サンプクリンドウ属Comastoma






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2010年夏、四川省/来金山&巴朗山の植物(7)

2011-04-23 11:26:34 | その他の植物


リンドウⅤ


全てリンドウ科リンドウ属Gentiana⑦ 2010.7.26 四川省二朗山(標高2700m付近/冷温帯性樹林)

二朗山旧道から少し入った渓谷の上に一株だけ生えていました。




















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2010年夏、四川省/来金山&巴朗山の植物(6)

2011-04-22 13:44:47 | その他の植物


リンドウⅣ



リンドウ科リンドウ属Gentiana④⑤⑥ 2010.7.24 四川省塔公北郊(標高4200m付近/高山草原)















白花と紫花(④と⑤)は全く同じ場所に生えていますが、別の種だと思います。



草丈の高い小型種(⑥/花が開いていない状態)。







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