日米首脳会談:重層的な同盟の志向、ドルの信認維持で一致
【ワシントン川上克己】麻生太郎首相は24日午前(日本時間25日未明)、オバマ米大統領とホワイトハウスで初めて会談し、経済・金融危機のほか、地球温暖化問題やアフガニスタンの安定化などで連携を進めることで一致した。これまでの日米関係にとどまらず、国際社会の課題に共に取り組む重層的な日米同盟を志向する方針を打ち出した。両首脳は、基軸通貨であるドルの信認維持が重要だとの認識でも一致。ミサイル発射の動きを見せる北朝鮮を「緊張を高めるべきではない」と強くけん制した。
会談はホワイトハウスの大統領執務室で約1時間20分行われた。オバマ大統領は、在日米軍再編では06年5月の日米合意(ロードマップ)に基づく着実な実施の重要性を指摘し、麻生首相も同意した。
金融危機・景気後退問題では、経済規模が世界1位の米国と2位の日本が「世界経済の回復に全力を尽くす」ことで一致。保護主義へ対抗することも日米の重大な責務だとした。4月2日にロンドンで開かれる金融サミット(G20)に向けた協力でも合意した。
オバマ大統領は景気刺激策について「米国も一生懸命やっているが、各国も一生懸命取り組んでほしい」と述べたうえで、日本と中国の一層の内需拡大策に強い期待感を表明した。ただ、麻生首相は追加の景気対策については明言しなかった。
麻生首相は、対テロ戦争の最前線であるアフガニスタン情勢に関し、隣国パキスタンなどを含めた支援策の必要性を強調。パキスタン支援国会議を4月中に開く意向を示し、オバマ大統領もこれを歓迎した。
麻生首相は米国が再検討を急ぐアフガニスタン戦略に、主体的にかかわる考えを表明。アフガニスタン・パキスタン問題の政府特使に近く吉川元偉(もとひで)・駐スペイン大使を任命して訪米させ、米国の戦略再検討作業に参加する考えを伝えた。
北朝鮮問題では麻生首相が拉致・核・ミサイルの包括的解決の重要性を訴え、オバマ大統領も「引き続き緊密に連携することが重要だ」と応じた。
気候変動問題に関し麻生首相は「日本のエネルギー効率が世界で最も高い」と指摘し、カリフォルニア州の高速鉄道構想に日本の新幹線技術を導入するよう提案。「米国の自動車文化を変えることにもなる」と述べた。気候変動問題では13年以降の枠組み構築に向けて25日に日米間の実務者協議を始めることでも合意した。
<日米首脳会談の主な合意点>
・在日米軍再編の着実な実施を含めた日米同盟の強化
・基軸通貨ドルの信認の維持が重要との認識で一致
・国際金融システムの安定化のための協力の加速
・北朝鮮は弾道ミサイル発射で緊張を高めるべきではないとの認識共有
・アフガニスタン安定化で協力確認
・気候変動に関して2013年以降の枠組み構築に向け、実務レベルの協議を開始