米民主党のバラク・オバマ上院議員は3日夜(日本時間4日午前)、民主党の大統領候補指名に必要な代議員数2118人以上を獲得し、指名獲得を確実にし た。支援者を前にオバマ氏はミネソタ州セントポールで支援者を前に、「今こそ変化の時だ。今こそアメリカを再び偉大な国に再生させる時だ」と力強く訴えた。
オバマ氏公式サイトに掲載された演説原稿の全文を翻訳した。(gooニュース)
「54回もの激戦を経て、予備選期間はついに終わった。
私たちがイリノイ州スプリングフィールドで旧州議事堂の階段に集ってから、16カ月がたった。あれから私たちは、何千マイルも旅してきた。何百万人もの声に耳を傾けてきた。皆さんが口々に言ってくれたおかげで、皆さんがワシントンは変わらなくてはならないと決心したおかげで、皆さんが今年こそ今までと違った年にしなくてはと思ったおかげで、皆さんが自分の中の疑いや恐怖ではなく最大の希望と最高の志を尊重することにしたおかげで、私たちは今夜、ひとつの歴史的な旅を終えて、新たな歴史的な旅を始めることができる。アメリカに新しい、より良い日々をもたらすための、新しい旅が始まるのです。今夜わたしはこうして皆さんの前に立って、自分が民主党のアメリカ合衆国大統領候補になると宣言できます。
この選挙戦を通して、良い日も悪い日も、私たちと共に立ってくれた全てのアメリカ人に感謝したい。アイオワ州シーダーラピッズの雪の日々から、サウスダコタの陽光に至るまで。そして今夜わたしは、同じ大統領候補としてこの旅路を共に歩んでくれた人々にも感謝したい。
私たちのこの国の行く末を決めるこの時に自分たちの党が、かつてないほど優秀で適任な人物たちを候補として輩出したこと。私たちはそれを誇りに思うべきだ。私は彼らとライバルとして競っただけでなく、多くのことを学んだ。友人として、公僕として、そしてアメリカを愛しアメリカのために疲れを知らずに働ける人間として。彼らが民主党のリーダーだ。そしてアメリカは今後何年にもわたり、この人たちを頼りにし続ける。
これは特に、この旅路を最も長く歩んできた候補にあてはまる。ヒラリー・クリントン上院議員はこの選挙戦で歴史に足跡を記してきた。ただ単に、ほかの女性が今までできなかったことを達成してきたというだけでない。私たちが今夜ここに集う理由となった様々な大義のために、彼女は身を捧げてきた。彼女は、その力強さと勇気をを通じて何百万ものアメリカ人を奮い立たせてきたリーダーだ。だからこそ、クリントン議員は歴史にその名を残すのだ。
もちろん私たちは過去16カ月にわたり、色々と立場を異にしてきた。しかし何度も彼女と一緒に舞台に立った人間としてこれは言える。どんなに自分に分が悪くても、ヒラリー・クリントンは毎朝起き上がって出発する。その原動力となっているものは、何年も前に彼女とビル・クリントンがテキサスで初めての選挙活動に参加した、そのときの思いと同じだ。彼女の原動力は、児童保護基金で働き始めたときの思いと同じ。ファーストレディとして国民医療保険のために戦ったときと同じ。上院へと彼女を導いたものと同じ。そしてあまたの壁を乗り越えて大統領選を戦うよう彼女をかりたてたものと同じ。それは普通のアメリカ人の生活をもっと良くしたいと願う、不屈の願いだ。どんなに厳しい戦いだったとしても、彼女は戦ってきた。そしてこの国でいずれ国民皆医療保険をついに勝ち取った暁には、その勝利の中心を担うのは間違いなく、彼女だ。エネルギー政策を刷新して、子供たちを貧困から救い出した時、それはクリントン議員がそのために努力してきたおかげだ。彼女のおかげで私たちの党と、この国はより良いものとなっている。そして私自身も、ヒラリー・ロダム・クリントンと競い合うという名誉に預かったおかげで、より良い候補となった。
予備選のおかげで私たちは弱体化し、分裂してしまったと言う人たちもいる。しかし私はむしろ、この予備選のおかげで、今回初めて投票したというアメリカ人が何百万人もいるのだと指摘したい。今回のこの選挙はただ単に、誰がワシントンを仕切るのかを決める争いではない。無党派や共和党員の中には、このことを理解している人たちもいる。ワシントンを変えなくてはならない。今回の選挙は、それがテーマなのだ。実に多くの若者やあらゆる年代のアフリカ系アメリカ人、ラティーノや女性が、記録的な数で投票し、そして国全体を奮い立たせてきた。
皆さんは全員、自分が深く信じることのできる候補を支持してきた。しかしとどのつまり、皆さんが家を出て、果てしなく続く長蛇の列に並び、自分の声を国に届けようとするのは、私たち候補が理由ではない。皆さんがそうやってきたのは、私のためでもなければクリントン上院議員のためでも、ほかの誰のためでもない。皆さんがそうしたのは、確信しているからだ。今このとき、私たちのこの世代を決定付けるだろうこの瞬間、今まで通りのことをしている余裕はないと、深いところで確信しているからだ。私たちには、子供たちにより良い未来を与える義務がある。この国により良い未来を与える義務がある。そして今日この夜、そのより良い未来を夢見る皆さんに向かって私はこう言いたい。今から一緒にやりましょう、と。アメリカの新しい方向を切り開くため、団結して、共に働きましょう。
今から数カ月後、共和党は全く違う政策目標を掲げてここセントポールにやってくる。共和党はここに来て、ジョン・マケインを党の候補に指名するだろう。彼は実に英雄的に、この国のために身を捧げてきた人だ。私は彼の献身を称え、多くの業績を尊敬する。たとえ向こうが、私の業績を否定しようとしても。マケイン議員との食い違いは、個人的なものではない。私が異を唱えるのは、今回の選挙戦で議員が提唱している政策についてだ。
というのも確かにジョン・マケインは過去には、党の方針とかけ離れた独自路線をとったことがある。しかしそうした独立独歩の姿勢は今回の大統領選では、特に際立って見えてこない。
マケイン議員は昨年上院で95%、ブッシュ大統領の政策を支持した。それは変化ではない。
ブッシュ政権の経済政策をまた4年間続けると提案する。それは変化ではない。ブッシュ経済政策は、高給の雇用機会を創出することなく、労働者の待遇を保障することなく、高騰する大学学費を抑えて国民が大学に行きやすいようにすることもなかった。むしろアメリカの平均世帯の実質所得を目減りさせ、ウォール街と地元商店街との経済格差を拡大させ、そして子供たちに巨額の借金を押し付けることになったのだ。
イラク政策を継続すると約束することも、それは変化ではない。今のイラク政策は、勇敢な米軍兵士たちに何もかも要求し、イラクの政治家に何も求めてない。イラクにとどまる理由を探すばかりで、アメリカ国民の安全に何も貢献しない戦争に毎月何十億ドルもつぎこんでいるのだ。
なので私は敢えてこう言おう。ジョン・マケインはジョージ・ブッシュの政策を我が物として受け入れながらも、自分がやっていることは超党的で、新しい動きだと言いくるめようとしている。彼のやっていることは、ほかにも呼び方がいろいろあるだろう。しかし変化、でないことは確かだ。
変化とは、そもそも承認されるべでなかった戦争、遂行されるべきでなかった戦争に徹頭徹尾依存したりしない、外交政策のことだ。イラクにはまだ良い選択肢がいくつも残されているなどと、ここでフリをするつもりはない。しかし、あの国に米軍をあと100年も駐留させておくなどということは、決して選択肢ではあり得ない。とりわけ、米軍が重過ぎる責務で疲弊している今。国際社会でこの国が孤立している今。そしてアメリカを脅かす、イラク以外のほとんど全ての脅威が無視されている今。
この国は実にうかつに不用意にイラクに入った。イラクから出るときはその分だけ慎重にしなくてはならない。しかし撤退開始は、なんとしても必要だ。イラク人は自分たちの未来に自分たちで責任をもたなくてはならない時期だ。米軍を建て直し、帰還兵が帰ってきたときには当然のように、十分に面倒を見て、手当てを与えなくてはならない。アルカイダの指導力とアフガニスタンに再び注目し、対策をとるべき時だ。そして21世紀における世界共通の脅威、つまりテロリズムや核兵器、気候変動と貧困、大量虐殺と疫病に対して、世界で一丸となって立ち向かわなくてはならない。変化とは、そういうものだ。
変化とは、金持ちだけを豊かにするのではなく、労働者と労働に報いる経済を作り上げることだ。巨大企業や裕福なCEO向けの減税措置を繰り返すために何十億ドルもつぎ込むことと、勤労家庭が直面する苦しみを解消することは、全く別物だと理解することだ。労働者の家庭を助けるには、中産階級向けの減税を実施し、崩壊しつつあるインフラに投資し、エネルギーの使い方を転換し、学校を改善し、そして科学と技術革新に再び力を傾注することだ。責任ある財政と繁栄の共有は、ビル・クリントン大統領の時代にそうだったように、併せて同時に可能だと理解することだ。
ジョン・マケインはここ数週間、イラク訪問について発言を繰り返している(訳注・オバマ議員が2006年以来イラクを訪れていないことを批判している)。しかし今の不景気にひどい打撃を受けている都市や町を、マケイン議員が訪れてみれば、時間を作ってミシガンやオハイオ、そしてここミネソタの町を訪れてみれば、国民がどういう変化を求めているのか分かるはずだ。
マケイン議員がアイオワに行ってみて、朝からずっと授業に出た後に夜勤のアルバイトをする学生と会ってみたら、彼がそれだけ働いても病気の妹の医療費を払えないのだと知ったら、マケイン議員にも分かるはずだ。健康で金持ちな人の面倒しかみてくれない医療制度があと4年も続いたら、この学生と彼の妹はもうやっていけないのだ。医療保険が必要なすべてのアメリカ人に保険の支払いが保障され、保険が必要なすべての家族の保険料が下がる、そんな医療保険プランが必要なのだ。この国に必要な変化とは、そういうものだ。
マケイン議員がもしもペンシルベニアに行ってみて、失業者と話してみたら分かるはずだ。新しい仕事を探すのに車で移動しなくてはならないのに、そのためのガソリン代が払えない、そんな失業者と話してみたら、分かるはずだ。独裁者から買ってくる外国石油への中毒症状をどうにかしないとならないと、この状態をさらに4年間も続けるわけにはいかないと。ガソリン代が払えない失業者に必要なのは、新しいエネルギー政策だ。燃費改善のために自動車メーカーに働きかけ、環境を汚す企業には罰金を払わせ、記録的な利益を上げる石油会社には未来のクリーンな新エネルギーに投資させるような。高収入で海外に流出したりしない雇用を大量に作り出す、そんなエネルギー政策だ。この国に必要な変化とは、そういうものだ。
マケイン議員がもしもサウスカロライナやここセントポールの学校にしばらくいれば、あるいは彼が今夜演説したニューオーリンズの学校にしばらくいれば、「落ちこぼれゼロ運動」の予算を滞らせるわけにはいかないと、理解するはずだ。低学年教育に投資するのは、子供たちへの義務だと。新しい教師たちを大量採用し、給与を改善し、もっと支援する必要があるのだと。そして今のこのグローバル経済において、大学教育の機会は金持ちだけの特権ではなく、すべてのアメリカ人に与えられる生まれながらの権利であるべきだと。アメリカに必要な変化とはそういうものだ。だから私は大統領になろうとしているのだ。
相手側は9月にここにやってきて、私たちとはかなり違う政策や立場を掲げるだろう。その政策論争を私は楽しみにしている。国民の前で、きちんとした政策論争をしなくてはならない。アメリカ国民にはその権利がある。その一方で、恐怖をかりたて、悪意でもって相手を皮肉り、世論を分断させることのみを目的とする、そんな選挙はもう要らない。私たち民主党は、宗教を分断の道具に使い、愛国心を相手を叩きのめす鈍器代わりに使うような、そんな政治は行わない。対立候補を挑戦すべきライバルとして扱うのではなく、悪者扱いすべき仇敵とみなすような、そんな政治は行わない。民主党支持であれ共和党支持であれ、私たちはまず真先に、アメリカ人なのだ。私たちはいつでもまず真先に、アメリカ人なのだ。
アリゾナ選出の上院議員が今夜語った内容はともかくとして、私は20年にわたる公職生活において繰り返し、考え方や見方の違う人たちが共通の目的を見出す場面を目撃してきた。シカゴのサウスサイドで地域リーダーたちと腕を組み共に歩き、黒人と白人とラティーノが一緒になってより良い仕事やより良い学校のために共闘することで、人種間の緊張が消えていくのも目撃した。私は司法当局者や人権活動家と同じテーブルに座り、13人もの罪なき人に冤罪の死刑判決を下した刑事司法システムの改革に関わった。そして相手党の友人たちと協力して、子供たちの医療保険を拡充し、勤労者世帯に減税措置を提供した。ほかにも、核兵器の拡散抑止や、国が税金をどう使っているのかアメリカ国民に分かりやすく情報提供するよう、超党派で協力。またワシントンの政策課題を勝手に決めてきたロビイストの影響力を弱めるよう、努力してきた。
この国では、こうした超党的な協力関係は、お互いが全てに同意できるから実現するのではないと分かった。あらゆるレッテルや偽りの分断の裏側までたどりつけば、瑣末ないさかいやワシントン的点数稼ぎの後ろまでたどりつけば、アメリカ人というのは真当で寛大で情の深い人々なのだ。同じ課題や同じ希望を共有し、連帯している。そしてこの国を再び偉大なものとするため、アメリカ人のそうした根本的な善良さを奮い立たせるべき瞬間というものが、時折やってくる。
フィラデルフィアの議事堂で、より完璧な連邦の結成を宣言した愛国者たちは、そういう瞬間に立ち会ったのだ。ゲティスバーグやアンティータムといった南北戦争の戦場で、その連邦を守るために全身全霊を捧げた全員もそうだ。
そして「恐怖そのもの」を克服して1つの大陸を独裁から解放し、この国をかつてない機会と繁栄の土地に押し上げた、偉大なる世代(第二次世界大戦世代)もそうだ。
ストに参加してピケラインに並んだ労働者たちもそうだ。ガラスの天井を打ち破った女性たちもそうだ。自由という大義のために(キング牧師と共に)アラバマ州セルマの橋を行進した勇気ある子供たちもそうだ。
あらゆる時代に巨大な挑戦に立ち向かってきたすべての人々がそうだ。どんなに分が悪くても、巨大な課題に立ち向かい、子供たちにより良い世界、より優しい、より公平な世界を残そうとしたすべての人が、そうだ。
そして私たちも、そうしなくてはならない。
アメリカよ、今こそが私たちのその瞬間だ。今こそがその時だ。過去の政策からページをめくるべき時だ。新しいエネルギーとアイディアをもって課題に取り組むべき時だ。愛するこの国のため、新しい方向を切り拓く時だ。
道のりは長く、困難なものになるだろう。私は限りない謙遜と共に、そして自分の限界を自覚しつつ、この挑戦に立ち向かう。しかし同時に私は、アメリカ国民の能力に無限の信頼を寄せている。なぜなら、私は確信しているから。より良い未来のために私たちが努力し、戦い、信じる覚悟があるのなら、今から何十年もたった将来、私たちは今この時を振り返って子供たちに、あの時、あの瞬間に始まったのだと語り継ぐことができるはずだと。あの時あの瞬間に、病人を労わり、職のない人たちに良い仕事を提供するようになったのだと。あの時あの瞬間に、海面の上昇速度がゆるやかになり、この惑星が回復し始めたのだと。あの時あの瞬間に、戦争を終結させ、国の安全を守り、この国が再び地上で最高最後の希望の地として見上げられるようになったのだと。
今がその瞬間だったと。今がその時だと。この偉大な国を再生させるために、みんなが集ったのは。この偉大な国がいついかなるときも、自分たちの理想の姿、自分たちの最高の理念を反映するものであるように。
みなさんありがとう。みなさんに神の祝福がありますように。そして神がアメリカ合衆国を祝福されますように」
オバマ議員のこの演説の先立ち、マケイン議員がオバマ議員に政策論争を持ちかけて行った演説は
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みなさんありがとう。みなさんに神の祝福がありますように。そして神がアメリカ合衆国を祝福されますように」
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