[東京 25日 ロイター] 政府は25日夕の臨時閣議で鳩山政権初となる2010年度当初予算の政府案を決定した。「子ども手当」などマニフェストに掲げた主要政策の実現や雇用・地方支援など景気対策、社会保障費の増加などに伴い、一般会計総額は92兆2992億円と当初ベースで過去最大となった。
これを賄う歳入は景気の低迷などを背景に税収が2009年度当初比で8兆7070億円減の37兆3960億円に落ち込む。特別会計への切り込みなどで税外収入は過去最大の10兆6002億円を確保したが、新規国債発行額は当初ベースで過去最大の44兆3030億円に膨らんだ。この結果、戦後初めて当初予算段階から国債発行額が税収見通しを上回る。公債依存度は48.0%に上昇、国の基礎的財政収支(プライマリーバランス)も23.7兆円の赤字といずれも過去最悪となり、財政状況は一段と深刻さを増す。
<一般歳出も過去最大、マニフェスト実現や景気対策で>
国の政策的経費である一般歳出も当初ベースで過去最大の53兆4542億円となる。最も金額が大きい社会保障関係費は、高齢化などに伴う自然増に加え、マニフェストの目玉政策である「子ども手当」を1人あたり月額1万3000円(半額実施)でスタートする結果、09年度比で9.8%増に膨らむ。金額で過去最大の27兆2686億円となり、一般歳出の半分を超える。このうち「子ども手当」に伴う費用は、事務費や特例交付金を含めて国の負担は1兆7465億円。
また、マニフェストの主要項目である高校の実質無償化(3933億円)に伴って文教および科学振興費が09年度比5.2%増の5兆5860億円に、農業の戸別所得補償のモデル対策(5618億円)の実施で食料安定供給関係費が同33.9%増の1兆1599億円にそれぞれ拡大する。
このほか、雇用確保や地域活性化などを目的に「経済危機対応・地域活性化予備費」を新設し、1兆円の真水を確保する。同予備費は2011年度以降の歳出が見込まれる国庫債務負担行為の限度額1兆円と合わせて2兆円規模の景気対策として活用される。
一方、鳩山政権が標ぼうする「コンクリートから人へ」を反映した資源配分を行う結果、公共事業関係費は5兆7731億円となり、同18.3%減と過去最大の減少率となる。
他の歳出項目では、概算要求段階で21兆9158億円を計上していた国債費が、想定金利を概算段階の2.5%から2.0%に引き下げたことなどに伴い、20兆6491億円となった。09年度比では4053億円増となる。地方交付税交付金は、国と地方の折半対象としている財源不足10.8兆円を特例加算や臨時財政対策債で補てんすることなどにより、同9044億円増の17兆4777億円と過去最大となる。
また、2008年度の一般会計決算において発生した歳入不足の補てんである7182億円を計上した。
<当初段階から税収と国債発行が逆転、埋蔵金に依存>
こうした過去最大の歳出を賄う歳入は、柱となる税収が09年度当初比で8兆7070億円の大幅減となる37兆3960億円にとどまる見通し。景気の安定した回復が見込みづらいなか、法人税を中心に税収の低迷が続く見通しで、09年度第2次補正予算後の見積もり額である36兆8610億円から微増にとどまる。
このため、歳入の多くを新規国債発行と税外収入に依存する歪な構造となるが、政府は予算編成方針に掲げた新規国債発行額を「約44兆円以内」に抑える目標を達成するため過去最大となる10兆6002億円の税外収入を捻出した。
具体的には、財政投融資特別会計から積立金の全額(3.4兆円)と2009年度に生じる剰余金の全額(1.4兆円)の計4.8兆円を確保。外国為替資金特別会計から2009年度の剰余金の全額(2.5兆円)のほか、法的措置を行った上で2010年度分の剰余金(3500億円)の計2.9兆円程度を活用する。これ以外の7特別会計から2000億円程度を一般会計に繰り入れるほか、公益法人などの基金の見直しで1兆円程度、日銀納付金3000億円程度などを計上した。
この結果、新規国債発行額は44兆3030億円とかろうじて目標を守った格好だが、戦後初めて当初予算段階から国債発行額が税収を上回る異常事態となる。国債の大量発行に伴って2010年度の国・地方の長期債務残高は862兆円程度に増大、対国内総生産(GDP)比では181%に上昇する見通し。