弁護士任官どどいつ集

弁護士から裁判官→原告→法科大学院教授になった竹内浩史のどどいつ集

法を厳格 解釈すれば 世間が浴びせる 「非常識!」

2008年01月10日 19時12分00秒 | 未分類
8日の福岡地裁判決から。
「酒気帯びではあったものの、正常な運転が困難な状態であったと見るには合理的な疑いが残る」との判断。
こういう事態を避けたいのであれば、刑法208条の2第1項前段の「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で」という要件を、例えば「酒気を帯びた状態で、正常でない運転をし」という趣旨に緩和するとか、正常な運転の可否の立証責任を転換する等の法改正を検討すべきでしょう。
しかし、そうすると酒気帯び運転との区別もなくしていく方向になってしまいそうですが、本当にそれでいいのかどうか、国民的に議論してほしいと思います。
法律的には、「正常な運転が困難な状態」であったかどうかが問題で、実際の運転が「危険運転」だったか「正常な運転」だったかではありませんから、下掲社説の「なにが危険運転にあたるのか。どこまでが「正常な運転」なのか。」という問い方は不正確でしょう。
(9日の朝日社説から抜粋)
「3児死亡事故―危険運転でないとは」
 約4時間の間に自宅や居酒屋、スナックで缶ビール1本と焼酎のロック8~9杯のほか、ブランデーの水割り数杯を飲んだ。その足で車を運転し、時速100キロで暴走して車に追突した。追突された車は海に転落し、一家5人のうち幼児3人が亡くなった。
 これが危険運転致死傷罪の危険運転にあたらないというのは、普通の人の常識に反していないだろうか。
 福岡市で06年に起きた事故について、福岡地裁は危険運転致死傷罪を適用せず、業務上過失致死傷罪などで元福岡市職員に懲役7年6カ月を言い渡した。
(中略)
 刑事裁判は刑罰を科すものだから、法律にあてはまるかどうかを厳格に判断しなければならない。とりわけ危険運転致死傷罪のような重い刑を科す場合は、法律の適用に慎重であるべきだ。
 そうしたことを考えてもなお、今回の裁判所の判断には疑問がある。なにが危険運転にあたるのか。どこまでが「正常な運転」なのか。新しい法律なので、裁判所によって判断にバラツキがあるのが現実だ。はっきりとした基準をつくるには、判例を一つずつ積み重ねていくしかあるまい。
 その際、国民の常識からかけはなれたものであってはならない。危険運転致死罪が来年始まる裁判員裁判の対象になることを考えれば、なおさらである。