ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#437

2021-09-05 23:23:25 | 刑事ドラマ'80年代

 
☆第437話『ニセモノ・ほんもの』

(1980.12.19.OA/脚本=小川英&四十物光男/監督=斎藤光正)

競馬場の馬券売場で1枚の精巧な偽造1万円札が発見され、それを見たスコッチ(沖 雅也)が眼の色を変えます。

それは3年前に70枚ほど出回ったニセ札と同じタイプで、その事件は未解決のまま。当時、スコッチは若林(佐野浅夫)という印刷工が犯人だと確信するも、証拠がどうしても見つからず逮捕出来なかったのでした。

現在は写真屋として働く若林を訪ねたスコッチに、彼は「あんた、まだ俺を疑ってんのか? いい加減にして欲しいぜ、まったく」と最初から喧嘩腰。

「なにを偉そうに……どうせニセモノだらけの世の中じゃないか、刑事さん」

「なんですか、あの態度は?」と顔を毛むくじゃらにしながら怒る今回の相棒=ロッキー(木之元 亮)の暑苦しさとは対照的に、スコッチは「当然だろう、ヤツがシロだとすれば」と涼しい顔。

「滝さん、今でもヤツをホシだと思ってるんですか?」

「いや、容疑者には常にシロの可能性もある。俺は確かめたい」

そうは言いつつ、あれだけ精巧なニセ札は誰にでも造れるモノじゃなく、スコッチは若林以外に犯人はいないと確信してるんだけど、そこで思いがけない新たな容疑者が浮かんで来ます。今回発見されたニセ札から、菊田(井上博一)という前科者の指紋が検出されたのでした。



菊田は公文書偽造のプロである上、ギャンブラーで常に借金を抱えており、普通に考えればそいつが犯人ってことで万事解決なんだけど、それでもスコッチは若林をマークし続けます。

「3年前に若林を逮捕した意地ですか?」

「かも知れんな。人を逮捕するってのはそういう事じゃないのか? あいつが裁かれるか、俺が裁かれるか……2つに1つだ」

ロッキーの凡庸でダサい質問に対して、スコッチの返しがいちいちカッコいいですw

そんなスコッチの執念により、若林が近年、何の繋がりも無いはずの菊田の身辺を調べ回ってた事実が判明します。

3年前のニセ札と今回のニセ札は一見、同じ原版から造られたように見えるけど、実は微妙な差違があり、同じ製造者が新たに造り直した可能性がある。そして印刷のクオリティーは、なぜか今回の方が遥かに高い!

思い返せば、3年前にスコッチの取り調べを受けた時、若林は「こんなみっともないニセ札を俺が造るか!」と憤慨していた。そう、原版はどちらも若林の作品だけど、印刷した人間が違うのでした。

「これは若林の復讐なんだ!」



3年前、スコッチに若林のネタを提供した情報屋(奥村公延)が、実は遊び人の田代(沖田駿一)にも同じ話を漏らしてた!という事実を掴み、いよいよスコッチは真実に辿り着きます。

3年前のニセ札は、遊び人の田代から情報を得た菊田が、こっそり若林の工場から原版を盗んで印刷したモノだった。そして、それが許せなかった若林が今回、警察に菊田を逮捕させる為にわざわざ原版を造り直し、新しいニセ札を1枚だけ刷ったに違いない!

けれどそのニセ札に若林は、どうやって菊田の指紋を付けたのか? その疑問も、スコッチが執念の捜査で解決して見せます。

「指紋を、印刷?」

そう、超一流の印刷工だった若林にとって、菊田が競馬場で呑み捨てたカップ酒の瓶から指紋を採取し、ニセ札と同じように原版を造って「印刷」することなど朝飯前なのでした。

つまり今回のニセ札に関しては、菊田は完全にシロ。そして若林は何も証拠を残しておらず、結局は菊田も若林も逮捕できない袋小路。

「イチかバチか、やってみるか」

スコッチを全面的に信頼するボス(石原裕次郎)の許可を得て、スコッチは菊田を釈放して泳がせる賭けに出ます。



油断した菊田は運転免許証の偽造を依頼され、借金返済のために引き受けるんだけど、もちろんその依頼人はスコッチが用意したニセモノ。

スコッチらに尾行されてるとも知らず、菊田は町の小さな印刷所を訪ねます。恐らく3年前にも其処でニセ札を印刷した……であろうけど確証は無く、ダサいロッキーは「もう少し慎重に調べてから手入れしては?」と尻込みするんだけど、もちろんカッコいいスコッチは怯みません。

「いや、一発勝負だ。やり直しは利かん」

自分1人で責任を負うべく、ロッキーとスニーカー(山下真司)を外で待機させたスコッチは、菊田が印刷所のオヤジと二人、免許証の偽造に取りかかったところに踏み込みます。

「俺は執念深いタチでな。実刑2~3年のケチな偽造じゃ満足出来ないんだよ」

そしてスコッチは印刷所内を徹底的に捜索し、ついに1枚、油まみれの1万円札を見つけるのでした。

「そんな……全部始末した筈なのに!」

取り返そうとする印刷所のオヤジを殴り倒し、札をひったくって飲み込もうとする菊田にマグナムの銃口を向けたスコッチが、駆けつけたロッキー&スニーカーにかけた一言が、これ。

「そこに眠ってるとっつぁん、片付けろ」

ハードボイルド! カッコ良すぎる!w ボスと山さん(露口 茂)以外でこんな台詞がサマになるのは、七曲署歴代刑事たちの中でもスコッチしかいないでしょう。



菊田がニセ札の容疑で逮捕されたことは、すなわち若林がその原版を造ったことも立証されることになります。当然、若林自身もそれは覚悟してた事でしょう。

「負けましたよ滝さん。あんたはやっぱり、ホンモノだ」

初めて笑顔を見せた若林は、むしろホッとした様子。それほど、自分の原版で造られた粗悪なニセ札が許せなかった。一流印刷工がプライドを取り戻した瞬間です。

もちろん、例の印刷所から見つかった油まみれの万札が、スコッチのなけなしの給料から絞り出されたホンモノだったことは言うまでもありません。あとで絶対バレると思うんだけどw



七曲署に復帰して以来、ホットな面が強調されて来たスコッチが、久々にクールな魅力を全開にし、'76年の初登場時を彷彿させてくれたハードボイルド編。久々に登板された斎藤光正監督の演出も渋かった!

後に水戸のご老公となる佐野浅夫さんを筆頭に、井上博一さん、奥村公延さん、沖田駿一さん、原口剛さん、天草四郎さんetc…と名バイプレーヤーが揃った豪華布陣。女っ気ゼロだけど男の色気ムンムンで実に見応えありました。

ただ、あえて1つだけ残念な点を挙げれば、このストーリーなら山さんが主役でもまんま成立しちゃうこと。シャープなアクション&美女との絡みが最高に絵になる、スコッチ=沖雅也さんならではの魅力がもっと発揮されてたら文句なしでした。

この時期から沖さんの体調に異変が見られたのかどうか分からないけど、スコッチが徐々に山さん化して行くんですよね。だけど山さんのポジションにはちゃんと山さんがいるワケで、スコッチには若手のリーダーとしてもっとアクティブに、もっとハードに活躍して欲しかったと個人的には思ってます。
 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする