噴火する火山と海をバックに、例の予言者がマスクとマントを剥ぎ取ると、その正体はなんと兜 剣造博士! 兜 甲児の父親です。死んだ筈だよ、おとっつぁん!
「マジンガーZが倒れる。見殺しには出来ん!」
おとっつぁんは何故、わざわざ謎の予言者に変装してたのか? 何故、もっと早く救いの手を差し伸べなかったのか? その答えは2018年現在でも謎のままですw
たぶん、サイボーグとして蘇った姿を息子に見せたくなかったから。出来れば息子すなわちマジンガーZに勝利して欲しかったから……等々、ファンはみんな想像力を働かせ、脳内補完したもんです。(単に、変人だから……ってのが最も有力な説ですw)
「ブレーンコンドル!」
マジンガーZで言えばジェットパイルダーにあたる、ロボットの操縦席を兼ねた機体=ブレーンコンドルがまず現れます。その鋭角的なフォルムといいスピード感といい、パイルダーを遥かに凌ぐ性能が想像出来ます。
「剣 鉄也、時が来た! グレートマジンガーを出動させ、暗黒大将軍の7つの軍団を叩き潰せっ!」
ブレーンコンドル=グレートマジンガーを操縦するのは、剣造博士によって幼い頃から訓練を受けて来た戦闘のプロフェッショナル=剣 鉄也。
TVシリーズでは野田圭一さんが声を担当しますが、本作の時点じゃまだ未定だったのか『デビルマン』の田中亮一さんが鉄也を演じてます。
「マジーンゴー!」
マジンガーZが光子力研究所のプールから現れるのに対して、グレートマジンガーは海から現れます。TVシリーズではスピード感を強調してシュバッと飛び出して来ますが、本作ではZ同様せり上がって来る感じです。
「ファイヤーオン!」
Zとパイルダーの合体が「よっこいしょ」って感じなのに対して、ブレーンコンドルはスピードを落とさずグレートの頭部に突き刺さって行く感じで、どんな絶叫マシーンよりも怖そうです。
「スクランブルダーッシュ!!」
更にZと大きく違うのが、翼がグレート本体の背中に収納されてる点。いちいちドッキングしなくて済むワケです。あの長い翼をどうやって収納してるのか、その答えには諸説ありますw
とにかく、Zが20秒位かけてる出撃プロセスを、グレートは5秒位で済ませちゃう。それだけ見ても性能差は歴然です。
さて……ズタボロにされたマジンガーZは岩壁に磔にされ、甲児も意識を失ってます。パイルダーの床に転がったオルゴールが、可愛いメロディーを奏でて悲壮感を際立てます。こういった小道具の使い方も神レベルですよね。
「他愛ない奴め! トドメの一撃だ!」
獣魔将軍が情け容赦なく巨大トマホークをZの頭部めがけて投げつけますが、突然の稲光により弾き飛ばされます。
「!?」
いつの間にか断崖の上に立っていたグレートマジンガーが、空に掲げた指先に雷光を集め、ビームに変換して発射します。
「サンダーブレーク!」
アルギモンとオルビィが一瞬にして爆死、その反射光で甲児が目を覚まします。
「くっそぉ、生意気な! アルソスとブルンガはマジンガーZにトドメを刺せ! あとの者はコイツを捻り潰せ!」
人型戦闘獣のアルソスが剣を持ってるのを見たグレートは「マジンガーブレード」を取り出します。
「マジンガーZ、これを使え!」
グレートが放り投げたブレードはブルンガを串刺しにして地面に突き刺さり、Zはそれを引き抜いてアルソスと一騎打ち。
それにしてもグレートマジンガーの圧倒的な強さたるや! Zの翼を溶かした毒液をものともせず、Zのボディーを切り刻んだナイフやミサイルを軽く手のひらで跳ね返し、ネーブルミサイル、アトミックパンチ、グレートブーメランといった武器で着実に、しかも一撃ずつで戦闘獣たちを粗大ゴミに変えて行きます。
言うまでもなく、これまで無敵だったマジンガーZが手も足も出せず、ズタボロにされる様が丹念に描かれて来たからこそ、グレートマジンガーの強さが思いっきり引き立つワケです。
それだけじゃなく、マジンガーZと一体化した兜甲児が恐怖を乗り越え、死を覚悟して出撃する姿や、弟シローとの兄弟愛、親友ボスとの友情、パートナーさやかとの別れなど、人間ドラマが丁寧に描かれた事で、我々は甲児に100%感情移入してる。
その甲児=Zが散々いたぶられた上に殺されそうになった時、颯爽と現れて敵を片っ端からやっつけてくれるワケですから、グレートマジンガーは「偉大な勇者」どころか、我々の眼には「神」に見えます。
この映画におけるグレートマジンガーが、あまりにも強く、あまりにもパーフェクトな機体として描かれたお陰で、TVシリーズの製作スタッフはめちゃくちゃ苦労したんだそうですw
あんなにも強いグレートをどうやってピンチに陥れるのか? あんなにもパーフェクトなグレートをどうやってパワーアップさせるのか? あんなにもプロフェッショナルな操縦士=剣鉄也をどうやって悩ませる(ドラマを与える)のか?
この映画を演出された西沢信孝監督は、TVシリーズの事まで考えておられなかったそうですw だからこそマジンガーシリーズの頂点にして、ロボットアニメの金字塔って云われる作品に仕上がったんですよね。
さて、アルソスに押され気味だったZですが、馬乗りにされた瞬間にドリルミサイルを人面部分に叩き込み、かろうじて倒します。その時には既に、グレートが他の戦闘獣たちを一掃してました。残るは司令塔の獣魔将軍のみ。
グレートは獣魔将軍の火炎放射をグレートタイフーンで跳ね返し、その巨体を吹き飛ばします。
「マジンガーZ、任せたぜ!」
自ら放った炎に焼かれながら落下して来る獣魔将軍を、マジンガーブレードを掲げて待ち構えるZが串刺しにします。やたら「串刺し」が多い映画ですよねw
「ブレストバーン!」
「ブレストファイヤー!」
二大マジンガーが必殺技を同時に放ち、ついに獣魔将軍も粗大ゴミと化します。
悪夢のように絶望的だった戦いが、グレートマジンガーの出現によってあっという間に終結しました。ずっと暗い雲に覆われてた空も、嘘みたいにカラッと晴れて太陽の光が差し込みます。
そしてマジンガーZとグレートマジンガーが初めて向き合い、甲児と鉄也が言葉を交わします。
「強い。キミのロボットは何て言うんだ?」
「グレートマジンガー」
「グレートマジンガー?」
「マジンガーZの兄弟さ」
「兄弟だって?」
「ミケーネの7つの軍団と戦う為に造られたんだ」
「何だって?」
「また会おうぜ。マジンガーZ」
「待ってくれ、グレートマジンガー!」
あとはテレビを観てちょんまげ!とばかりに、さっさと引き上げて行っちゃう剣鉄也&グレートマジンガー。本当に格好良すぎです。
「グレートマジンガー……お前はまさに偉大だ。それにしてもあれだけ強いロボットを、いったい誰が造ったんだ?」
甲児の素朴な疑問も、映画公開の直後にスタートする新番組『グレートマジンガー』で明かされます。
グレートを開発したのは甲児の父=兜剣造博士。爆発事故で生命を落としたものの、マジンガーZの開発者である十蔵博士(甲児の祖父)がサイボーグ手術を施して蘇らせたのでした。
十蔵亡き後、剣造は息子=甲児とマジンガーZの活躍を横目で見ながら、ミケーネ帝国の襲来に備えてグレートマジンガーを密かに開発し、孤児だった剣鉄也をそのパイロットとして育成して来たワケです。
これらの設定はにわかにこじつけたものじゃなく、実は放映開始の1年も前から企画が進行し、前番組『マジンガーZ』の中でさりげなく伏線が張られてました。
Z→グレートの交代劇はテレビ版でも同様に描かれますが、劇場版『マジンガーZ 対 暗黒大将軍』のインパクトがあまりに強すぎて、イマイチ印象に残ってません。
何しろテレビ版のZはたった2機の戦闘獣に10分足らずで倒されちゃうし、さやかやシローとのドラマも無く、Zの最終回というよりはグレートのパイロット版みたいな感じでしたから。
それは新番組への橋渡しとして間違ってないんだけど、とにかく劇場版『マジンガーZ 対 暗黒大将軍』が素晴らし過ぎたって事ですね。
現在の若いアニメファンの人が観ても決して見劣りしない作品だと思うし、未見の方には是非ともオススメしたいです。
総称『マジンガーズ・ムービー』として『マジンガーZ対デビルマン』や『グレートマジンガー対ゲッターロボ』等と一緒に収録された、Blu-rayやDVDのシリーズまたはボックスが発売中です。