ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『刑事たちの夏』1999

2024-07-02 21:37:37 | 刑事ドラマ'90年代

1999年に日本テレビ系列で放映された、YTV制作、鶴橋康夫演出、吉田剛脚本、久間十義原作による2時間スペシャルドラマ。鶴橋監督による新作映画『のみとり侍』のPR特集企画として、CATV「日本映画専門チャンネル」にて先日(※2018年5月)放映されました。

ホテルの上層階から大蔵省の官僚が転落死し、捜査本部は早々に自殺として処理しようとするんだけど、本庁捜査一課の松浦刑事(役所広司)はひょんな事から、それが他殺であるのを示唆する状況証拠を掴んでしまう。

持ち前の正義感から、ひとり他殺の線で捜査を続ける松浦に、上層部から容赦ない圧力と妨害がかかり、どうやら官邸を揺るがす汚職事件が背景にあることが判って来ます。



離婚協議中の妻との幼い息子が命を狙われ、捜査に協力してくれた恋人=ヒロコ(山本未來)も殺された上、その容疑を自分に掛けられても尚、スッポンのごとく真相に食らいついていく松浦。



最終的に事件が闇に葬られようとした時、松浦は旧知の敏腕検事・古沢(大竹しのぶ)に全てを託し、あえて自らが殺されることで事件を再捜査へと導くのでした。

「今、私はあなたです。」

そう言って裁判所へと向かう古沢検事に、死んだ松浦とヒロコがしっかりと付き添って歩くラストシーンは涙なしじゃ観られません。

熱い! めちゃくちゃ熱い! 素晴らしい! 昭和の遺物みたいなチョー熱血刑事を、役所広司さんが全身全霊で演じておられます。



自らも盗聴、おとり捜査、週刊誌への情報リーク等、目には目をのダーティー捜査で巨悪と渡り合う、その捨て身っぷりがたまらなく魅力的です。

そんな主人公に魅了され、危険を承知で捜査に協力する二人の女を、山本未來さんと大竹しのぶさんがこれまた魅力的に演じておられます。



ほか、古尾谷雅人、塩見三省、田山涼成、黒田福美、新山千春、芦川よしみ、阿藤 快、本田博太郎、そして真田広之と、大作映画でもなかなか揃わない豪華キャスト陣。



徹底的に無駄を削ぎ落とした脚本、演出、編集も見事で、一瞬のダレ場もなく約90分を見せ切ってくれます。照明や構図にこだわった映像美も素晴らしく、画像をご覧の通りテレビの2時間ドラマとは思えない仕上がり。

1999年度日本民間放送連盟賞最優秀賞、第37回ギャラクシー賞大賞などの受賞も納得の名作ドラマだと思います。



セクシーショットは死んだ官僚の娘=奈津子を演じられた、新山千春さん。本作出演時は18歳でした。

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『刑事/蛇に横切られる』1995

2024-03-10 17:38:40 | 刑事ドラマ'90年代

1995年7月1日にNHK総合テレビ「土曜ドラマ」枠で放映された、早坂暁 脚本&高倉健 主演による単発スペシャルドラマが先日、CATVの「日本映画専門チャンネル」で放映されました。

日本を代表するムービースターである高倉健さんが、テレビの刑事ドラマに主演された唯一の作品となればレビューしないワケにいきません。(そもそもTVドラマは単発3本、連ドラ1本にしか出演されてない!)

しかも脚本が『七人の刑事』『夢千代日記』『花へんろ』『必殺からくり人』など数々の名作で知られる早坂暁さん! だからこそ健さんもオファーを引き受けられたんでしょう。

そのうえNHK制作ですから社会派の重厚なドラマを想像しちゃうけど、観たらエンタメ要素もしっかり備えた健さん版『太陽にほえろ!』と言っても過言じゃない作品になってて、私は感激しました。

いや、しかし暗い過去を背負った主人公のキャラクターと、ラストに流れる小林亜星さん作詞・作曲による主題歌を健さん自ら唄われてる図式は、『太陽〜』よりも倉本聰 脚本&渡哲也 主演の『大都会/闘いの日々』に近いかも知れません。



健さんが扮するのは、警視庁捜査一課で主任を務めるベテラン刑事=秋庭 実。

秋庭は13年前、逮捕した男の逆恨みにより妻=素江(田中好子)を目の前で刺殺され、そいつを即射殺したせいで所轄に飛ばされ、最近ようやく本庁に復帰したという設定。

↑この秋庭刑事の使用拳銃がまた渋い! S&W M10 ミリタリー&ポリス.38スペシャル (略してミリポリ) の2インチ・オールドタイプ!

私ことハリソン・フォード氏も映画『刑事ジョン・ブック/目撃者』(’85) で愛用したリボルバーであり、仮の姿たる私自身がコレクションの中でも一番好きかも知れない、コクサイ社製モデルガン(↓)がベースになってます。



健さんがハリソン・フォード氏を意識して、というか私を見習ってチョイスされたのかどうか知る由もないけど、主役の刑事がミリポリの2インチ(しかもオールドタイプ)を愛用した日本のTVドラマはかなりレアだと思います。たぶんベテラン感や武骨さを強調してのチョイスでしょう。



で、秋庭を囲む刑事たちを演じるのが、寺田農、谷啓、梨本謙次郎、河合美智子、重松収、津嘉山正種、井川比佐志、小林稔侍etcといった錚々たるメンツ。

あとでご紹介するチョー豪華な女優陣にせよ、NHKだからこそ可能なキャスティングである以上に「早坂暁 脚本&高倉健 主演」のドラマならノーギャラでも出演したい!って、俳優なら誰でも思ったことでしょう。



ストーリーは至ってシンプル。秋庭が飛ばされた所轄署で特に可愛がってた後輩で、きっとパソコンが得意だったに違いない村沢巡査(石原良純)が交番で刺殺され、拳銃を奪われてしまう!

もちろん身内の裏切者やどんでん返し等のゲーム要素は一切なく、怒り心頭の健さんたちが地道な捜査で真犯人を突き止め、炙り出し、追い詰めていく“燃える展開”で魅せてくれます。これぞ真の刑事ドラマ!



最後は西部劇さながらの“一発必中”で二人組の犯人を仕留める健さん!

     「村沢、お前を刺したヤツはどっちだ?」

こんな健さんが見たかった! それもテレビの刑事物で!っていう、創り手の想いがストレートに伝わって来ます。だからヒネリは不要、と言うより邪魔にしかならない。

このあと健さんが犯人を射殺したか否かは描かれてないけど、エピローグを観るとクビや降格にはなってなさそうで、たぶん13年前と同じ轍は踏まなかった。“蛇に横切られる”(スピリチュアルな意味で“変化が訪れる”)っていうサブタイトルは、それを暗喩してるんだろうと私は解釈しました。

↑こんな場面も「老体に鞭打って自転車を漕ぐ健さんが見てみたい」ってな発想から生まれたに違いありませんw 無論、ちゃんとストーリー上の意味があるんだけど。

いや〜素晴らしい! 私は幼い頃からテレビっ子で刑事物マニアだけど、絶え間なくそうだったワケでもなく、映画に興味が移ったり忙しかったりでほとんど観てない時期もあり、こんなドラマが放映されたことは今の今まで知りませんでした。

素晴らしいのは健さんだけじゃありません。先にも触れた通り、NHKさんでなければ実現しなかったであろうチョー豪華な女優陣!

まずは、健さんの妻=素江に扮した元キャンディーズの、田中好子さん。麗しい!



そして夫の元マイコン刑事が殉職して未亡人となった村沢光子に、紺野美沙子さん。初々しい!



事件を解決に導く重要な目撃者にしてキャビンアテンダントの真弓に、景山仁美さん。色っぽい!



右も左も分かってない新米刑事なのに、なぜか次々と有力な手掛かりを掴んじゃうラッキーガールの紅崎七穂子に、河合美智子さん。可愛い!



そして健さんの一人娘で、新聞記者の一條(西村和彦)と婚約中の秋庭宮子に、鈴木京香さん。美しすぎる!


というワケでセクシーショットも豪華ラインナップ。田中好子さん、紺野美沙子さん、河合美智子さん、鈴木京香さんです。


 

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『ダブル・パニック'90/ロス警察大捜査線』

2023-09-09 18:32:12 | 刑事ドラマ'90年代

1990年10月にテレビ朝日系列の『日曜洋画劇場』枠で放映された、脚本=佐藤純彌/監督=深作欣二による単発スペシャルドラマ。

1980年代、サッカーのカズさんでもタモリさんでもない、三浦和義氏を巡る「ロス疑惑」報道で一躍注目されたロサンゼルス警察の日系三世=ジミー佐古田 元警部補をモデルにした、前年の単発ドラマ『ロス警察1989』の続編です。

今回、深作欣二監督の没後20年特集として「東映チャンネル」で放映され、レビューするにあたって詳細を調べるまで、私はてっきり本作が草刈正雄&竜雷太のコンビによる『ロス市警アジア特捜隊』の続編だと思い込んでました。



同じ題材から生まれた『ロス市警アジア特捜隊』は’84年に日本テレビ系列の『金曜ロードショー』枠で放映された単発スペシャルで、ゴリさんも出てるだけあってメインスタッフが『太陽にほえろ!』とかなり被ってました。

で、本作『ダブルパニック’90/ロス警察大捜査線』の主役=マイケル村上警部補を演じたのが、この人。テレビ初出演が『太陽にほえろ!』(ジーパン期) におけるチョイ役で、その姉妹作とも言える『俺たち〜』シリーズでスターになった、中村雅俊さん。



そして準主役が『太陽〜』の殿下こと、小野寺昭さん。



おまけに、小野寺さんの妻を演じてるのが『太陽〜』で殿下の妹役だった中田喜子さん!



ところが『太陽〜』も『俺たち〜』も東宝作品なのに対して、深作さんはバリバリの東映系監督。(そもそも東映チャンネルで放映されてるし)

制作は近藤照男プロダクションだから、これは『太陽〜』じゃなくて『キイハンター』『Gメン’75』の流れを受けた作品なんですよね。

思い返せば雅俊さんは後に『Gメン〜』の復活スペシャルで主役を張り、小野寺さんも『Gメン〜』の後継作『スーパーポリス』でレギュラー出演されてますから、単純に皆さん売れっ子だってこと。



それとヒロイン(雅俊さんの妻)役の藤真利子さんにせよ、『三つ首塔』からヒゲを剃ってますます近藤春菜に近づいた角野卓造さんにせよ、日本人キャスト全員が英語ペラペラですから、そういう条件をクリアして選ばれたのが、たまたまこのメンツだったって事でしょう。(本作はセリフの9割以上が英語で字幕スーパー入り)



ストーリーはできるだけ簡潔に書きます。雅俊さんのワイフである真利子さんが、マイカーで娘たちをスクールへ送る役目を、フレンドの喜子さんといつも1日交代でやってる。

で、その日は喜子さんの番だったけど風邪で体調を崩し、急きょ真利子さんが引き受けることに。その道中で、GUNを持ったヤングたちに拉致されてしまう。



喜子さんのハズバンドであるミスター小野寺は、’90年当時(つまり日本がバブル真っ只中だった頃の)アメリカで荒稼ぎしてた日本企業のBIGボス。

そう、犯人グループはミスター小野寺のワイフを狙ってたのに、間違えて雅俊さんのワイフを誘拐しちゃった。けど、いずれにせよ小野寺さんのドーターもトゥゲザーだから身代金はドマンドできます。わしゃルー大柴かっ!?



そこで雅俊さんの出番です。このドラマにおける「ロス市警アジア特捜隊」は、バブル景気で浮かれた日本人や日本企業のマネーを狙う犯罪の激増に対応すべく生まれた設定(現実には’70年代から存在してるそう)で、雅俊さん=マイケル村上(つまりジミー佐古田氏)はそのキャプテン。

ミスター小野寺はフレンドである雅俊さんに、あくまで個人的に相談する(警察沙汰にはしたくない)んだけど、犯人たちを制圧(つまり即射殺)しない限り被誘拐者が生きて戻る可能性は「100%あり得ない」と断言する雅俊さんは、特捜隊を率いてミッションを進めます。



まぁしかし、マネーは沢山あるに越したこと無いけど、儲ければ儲けるほどこうしてバッド・ガイズに狙われる。

すっかり没落しちゃった現在の日本からすりゃ輝かしい(私はただただ恥ずかしかったけど)、近いようですっかり遠くなった過去。金持ちは金持ちで大変だったことでしょう。私は常に安定のビンボーでほんと良かった!👍

なにせ敵は素人とは言え、当たり前にGUNを持ってるヤツらです。交渉だの説得だのと悠長なことはしてられない。それがロサンゼルスであり、市警察にはリッグス刑事(メル・ギブソン)みたいなリーサル・ウェポンもいるワケです。



余談ですが、犯人役にせよエキストラにせよ、さすが本場ハリウッドで調達された(つまりオーディションで役を勝ち取った)アクターたちは、無名でもみんな演技が上手い。日本に都落ちしてくるガイジン俳優たちとは明らかにレベルが違う。これは作品のクオリティーアップに大きく貢献してます。



さて、ただ誘拐犯グループと対決するだけのストーリーなら『ダブルパニック’90』ってタイトルが意味不明になっちゃう。ここからが本題です。

卓造さんが支店長を務めるバンクで身代金を用意し、さぁいよいよ取引(すなわち皆殺し)に向かおうとしたその時!



なんと、誘拐犯グループとはまったく関係ない武装グループが、よりによって今、卓造バンクのマネーを奪うため押し入ってきた!



Oh,タクゾー! ユーのフェイスはなんてBigなんだ!?

まぁしかし、取引の時刻までには、まだ余裕がある。大人しくさえしとけば、連中は金を奪ってすぐ逃走してれる。

と思いきや! 表で待ってたアジア特捜隊の若手刑事(高郎隆志)が事態に気づいて通報し、あっという間に卓造バンクは警官隊に包囲されちゃう!



オーマイガッ!? このまま強盗グループに籠城されたら誘拐グループとの取引に間に合わず、殿下の娘&雅俊の妻娘も皆殺しにされてしまう! まさにダブルパニック!!

ミスター小野寺が身代金50万ドルを差し出し、「このマネーはYouたちにくれてやるから、取引に行かせてくれ!」と交渉するも……



警官隊とTVクルーの目前で公開処刑されそうになり、妻の喜子さんが自分のおっぱいを揉みながら気を揉みます。(けど殿下は軽傷で済みました)



籠城が長引けば当然、こんなことも起こっちゃう!



Why,タクゾー!?  近藤春菜じゃねーよ!💨

一方、雅俊ワイフの真利子さんは、誘拐グループの紅一点(アナベル・スティーム)が主犯格と毎晩チョメチョメしてつくった子供を宿してることに気づき……



先輩マミーとして、彼に愛があるならYouにこんな事させるワケがないし、赤ちゃんの為にも良くない!と、アメリカ人には馴染みが薄い「胎教」という概念を持ち出して……



いわゆるストックホルム症候群みたいな絆を育み、それがダブルパニック収束につながる伏線となります。

誘拐グループを制圧する切札として身代金に仕掛けてたブービートラップが役に立ち、なんとか銀行強盗グループを制圧(すなわち全員射殺)した雅俊さんたちは……



真利子さんが残した手掛かりによって誘拐グループの潜伏する場所をつかみ、電話を借りにきた観光客を装って潜入し……(まだ携帯電話が今ほど普及してない時代です)



妊娠中の女子が土壇場で協力してくれたお陰もあり、見事こっちのバッド・ガイズも1人残らず射殺するのでした。ザッツ・アメリカ!



冒頭シーン(プロローグ)で雅俊さんの相棒刑事が殉職し、真利子さんが「こんな危険な仕事はもう辞めて!」と涙ながらに訴えるも、雅俊さんは「オレだけ逃げるワケにはいかない!」って、えらく深刻でウェッティな夫婦喧嘩が描かれて、やれやれ、これだからジャパニーズドラマはよう……って、辟易しそうになりました。

けど、誘拐事件が起きてからは一気呵成にダブルパニックへと連鎖し、クライマックスまでノンストップで突っ走るスピード感&ダイナミズムは、やっぱりさすがの深作欣二演出!(息子の健太はいったい何を学んだ!?)

だからこそ、夫婦の絆を取り戻していくような「ドラマ」が必要だったにせよ、あんなメソメソした場面は要らなかったと私は思う。『ダイ・ハード』(’88) みたいに「ちょっと倦怠期」程度の描き方で良かったのでは?(それじゃパクリになると考えた?)

娘を誘拐された主人公が他の事件にも巻き込まれちゃう展開は、むしろ『ダイ・ハード』よりTVシリーズ『24−TWENTY FOUR−』を彷彿させるけど、あれは2001年スタートだからこっちの方が10年も先を行ってます。

他にも元ネタがあるかも知れないけど、何にせよ凡庸な監督が撮ってたらこんなに面白くはならなかった筈。巨匠には巨匠たる理由がちゃんとあるんだと、あらためて認識した次第です。

セクシーショットはヒロインの藤真利子さん。刑事ドラマにはあまり出られてない印象だけど、実は今回みたいな2時間ドラマへの出演は数多く、ことに『火曜サスペンス劇場』では犯人役の最多記録をお持ちなんだそうですw


 

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『さすらい刑事旅情編III』#20

2023-08-04 20:50:11 | 刑事ドラマ'90年代

『さすらい刑事旅情編III』レビュー3連発となりました。

同じ番組でも各エピソードの内容がバラエティー豊かで、『太陽にほえろ!』に例えれば本格ミステリーの#12は山さん編、ちょっとハードな失恋話の#14はマカロニ編、そして今回の#20はスペシャル仕様のボス編ってことで、いよいよ折り目正しい宇津井健さんが実質の主役を務め、いつもより豪華なゲスト陣が脇を固めてます。

脚本がこのシリーズ初登板となる塙五郎さん(『夜明けの刑事』『特捜最前線』等)で、それまで在りそうで無かった「ローカル線の廃止」をテーマにした物語。

ふだんは駅や車内で事件が起こるだけで、鉄道そのものにドラマを持たせたエピソードがほとんど無く、塙五郎さんはそこに眼をつけられたんでしょう。

これぞまさに旅情編!ってことで、スタッフ&キャストの皆さんが相当な気合を入れて臨まれたのか、ふだん感じない熱量が今回は伝わってきますw




☆第20話『幻の汽笛! 誘拐された大臣の娘』(1991.2.27.OA/脚本=塙 五郎/監督=天野利彦)

福島県の、今は廃線になってる鉄道=弥富線の長沢駅付近に「死体を埋めた」という、匿名の中年らしき男から通報を受け、鉄道警察隊の山さん(蟹江敬三)、リーゼント(三浦洋一)、少年隊(植草克秀)が発掘に出向きます。



そして発見されたのが、長沢→東一条行きの切符を手にした若い女性の遺体。

彼女はいったい誰なのか、再び電話してきた中年男に高杉警部(宇津井 健)が折り目正しく尋ねたら、現政府の運輸大臣=広上(内藤武敏)の娘だと言うから驚いた!

けれど広上大臣に聞いてみたら、ひとり娘の恵(中村由真)は心臓病で入院してはいるけど、ちゃんと生きていると言う。一体どういうことなのか?



検死の結果、あの遺体が心臓発作による病死、つまり恵と同じ心臓病だったと判明したところで、中年男がまた見計らったように電話してきます。

「広上に言っておけ。今度はお前の娘が埋められる番だってな」

まさか!?ってことでリーゼントたちが恵の入院先に駆けつけるも、時すでに遅し。彼女は何者かに連れ出されて行方不明。

死体遺棄に誘拐という重罪まで加えた犯人が、運輸大臣を相手に人生の全てを賭け、突きつけて来た恐るべき要求とは!?

「弥富線6244列車をもう一度走らせろ」

「なにっ!?」



犯人は、数年前に広上大臣が廃線を決めたローカル線の名物列車「6244」を、乗務員も含め全て昔どおりに運行させろと言うのでした。

しかし撤去した線路を元に戻すだけで莫大な費用がかかるし、引退した乗務員たちを揃えるのも容易なことじゃない。

政府は「NO」の返事を突きつけ、広上大臣はそれに従おうとするんだけど、高杉警部が折り目正しく頭を下げて必死に説得。結果、1度きりの再運行が奇跡的に決定!



ひとり、長沢に残って捜査してた少年隊が線路の補修を手伝い……



鉄道警察隊は手分けして「6244」の元乗務員たちを捜しだし、再運行イベントへの全員参加を実現させるのでした。それはやっぱり、名物列車をもう一度走らせたい気持ちが皆にあったからでしょう。

ところが政治家には、そんな市井の人々の気持ちが解らない。

「無くなった列車を、今さら走らせてどうなると言うんだ?」

てめえの娘を救うために皆が奔走してるのに、すっとぼけたことをぬかす広上大臣に、今回は見せ場が少ないリーゼントがここぞとばかり、美味しいセリフを独占します。

「列車はただの輸送の手段じゃない。走る列車に勇気づけられ、夢を託す人もいる。世の中にはそういう人間もいるって事ですよ」



「私には解らん、キミたちが何を言ってるのか」

「列車が人の生き甲斐になることもあると言ってるんです! その人から見れば、あなたはその夢や希望を取り上げた事になりますね」

「…………」

「私の生まれたところも鉄道が無くなりました。今は住む人もいなくなったそうです」

そう、こんな事態になったのはそもそも、広上大臣が弥富線を不要と断じ、鶴の一声で廃線にしちゃったから。

政府側にも経済的な事情があったにせよ、鉄道を愛する人々の気持ちを「私には解らん」の一言で片付けるような人間が、運輸大臣の座に就いてるという理不尽。ゴルフを愛する皆さんへの冒涜も甚だしい!💨(時事ネタ)



かくして6244列車の復活が目前に迫る一方、事件の背景も見えてきます。

かつて長沢の療養所に入所してた犯人の娘が、病室の窓から6244列車を眺めるのを毎日楽しみにしてたのに、それが廃線になって生き甲斐を奪われ、心も病むようになって東京の病院に移された。

そして数年後、そこに同じ病で入院してきた広上大臣の娘=恵と出逢い、友情を育んだ。



そう、今回の事件は「お父さんが彼女から取り上げた6244列車を、私が走らせる!」という、恵の想いが発端なのでした。

「私は間違っていたんだろうか? 私は常に、大勢の人たちの幸せを考えて来たつもりだったが」



ようやく自分の過ちに気づき始めた広上大臣を、高杉警部が折り目正しく諭します。

「たった1人の幸せを守ることが、何より大切な時もあるかも知れません」

「…………」

「広上さん、私は部下によく言うんです。人間はたくさん間違いをするけども、やり直すことが出来るのも人間じゃないかって」



そして長沢の療養所で恵が発見され、彼女をそこに連れてきたのは6244列車の元操縦士=原島(山田吾一)の妻であることが判明します。そう、この夫婦こそが線路脇に埋葬された女性の両親、すなわち広上大臣を脅迫してる犯人なのでした。

そして今、原島が再び操縦士として6244列車に乗り込もうとしてる。

「何をしてるんだ高杉くん! 運行は中止だ!」



ひとりの人間としては、このまま列車を走らせたい。けど、真犯人が判った以上、警察官として放っておくワケにはいかない。高杉警部は折り目正しく決断します。

「ただちに原島操縦士を逮捕するんだ」

現場にいる山さんが逮捕に向かうも、セレモニーの準備をずっと手伝ってきた少年隊が立ちはだかります。



「山さん、走らせてやって下さい。みんな喜んでるじゃないスか! みんな待ってるじゃないスか!」

「どけ!」



「オレだってレール運んだんですよ! オレ見たいんですよ、6244が走るの見たいんですよ!」

なおも食い下がる少年隊を柔道技で投げ飛ばし、山さんは言います。



「馬鹿野郎っ! オレだってな、オレだって走らせたいんだよ!」

これです。この葛藤こそが刑事ドラマなんです。トリックだの裏切者だのどんでん返しだの、昨今の刑事ドラマ(と呼ばれてる番組)は推理ゲームであってドラマじゃない。だからレビューしようもない。



「原島くん。キミがこんなやり方で走らせようとした列車は、亡くなった娘さんが見たかった6244列車じゃない」

逮捕され、駅舎内に連行されてきた原島に、今回も折り目正しい説教をかます高杉警部だけど、そんなことは百も承知だったであろう原島は、にっくき運輸大臣につかみかかります。



「娘は、あの線路脇に埋めてくれと言って死んだんだ! いつかきっとまた、あの列車が走るからって! それを見たいからって!」



「……高杉くん、騒ぎはこれでおしまいだ」

宇津井健、山田吾一、内藤武敏という名優3人の演技バトルはさすがに見応えあります。

さらに、普段はリーゼント刑事の引き立て役に甘んじてる、蟹江さんや植草くんの演技も光ってます。そりゃみんな燃えますよね、リーゼント以外は。

さて、その後すぐ療養所に駆けつけた広上大臣だけど、6244列車が走るのをドキドキしながら待ってた我が娘から、まるで汚物を見るような視線を浴びる羽目になります。



「お父さんが止めたの? ひどいわ、みんな待ってるのに! 私だって……」

そうして彼女はスケバン化し、やがて風間三姉妹の次女となるのでした。時系列はでたらめです。



でたらめと言えば、折り目正しく長沢駅のホームを歩く、この男も実はタローマン並みにでたらめな男だった!

「とりあえず、長沢署まで連行しなきゃいかんな」



「警部、自分が護送します」

待ってました!とばかりに山さんが、原島の両腕から手錠を外します。



「ほら、何してる? お前以外に誰が6244を動かすんだ?」

人情ドラマを蔑視するようなことをよく書くけど、私が忌み嫌うのは「単なるお涙頂戴」を目的にしたドラマであって、今回のエピソードは該当しません。

なぜなら、作者のメッセージが明確に伝わって来るから。



たとえ人情ドラマであろうと謎解きゲームであろうと、作者が何かを主張してきたなら、私は喜んで耳を傾けます。

昨今の(日本の)TVドラマやメジャー映画がつまんないと感じる、最大の理由がそこにある。何も主張せず、誰にも文句を言われないよう無難に、とにかく当たり障りなく作られた作品が面白くなろう筈がない。

今回レビューしたエピソードでは、政府側の言い分がほとんど無視されてたりするけど、それでいいと私は思う。これは鉄道を愛する人たちのドラマなんだから。



運輸大臣の娘=恵を演じた中村由真さんは、グラビアアイドルから芸能活動をスタートし、女優としては1986〜’87年に放映された連ドラ『スケバン刑事III/少女忍法帖伝奇』における風間三姉妹の次女役で一気にブレイク。

刑事ドラマへのゲスト出演は(単発モノを除けば)同じ『さすらい刑事旅情編』の第5シリーズ第19話しかウィキペディアに記載がなく、そういう意味でも今回はスペシャルな作品と言えそうです。


 

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『さすらい刑事旅情編III』#14

2023-07-30 11:55:28 | 刑事ドラマ'90年代

ゲストの辻沢杏子さんは1981年に放映された連ドラ『翔んだライバル』のヒロイン=リンゴちゃん役で注目され、アイドル歌手としても活躍された女優さん。

刑事ドラマは同じ『さすらい刑事旅情編』の第7シリーズほか、『裏刑事』『科捜研の女』『刑事110キロ』『刑事7人』等にゲスト出演。本数は少なめながら息長く活躍されてます。




☆第14話『疑惑!? アリバイ工作をした女』(1991.1.16.OA/脚本=日暮一裕/監督=息 邦夫)

特急「踊り子101号」で犯人を護送中だったリーゼント(三浦洋一)が、車内で「遺書を拾った」と言うリンゴちゃん(辻沢杏子)と一緒に落とし主を探すことになり、護送をバディの西園寺刑事(高木美保)に押しつけ、伊東駅で下車します。



自殺志願者の行先と言えば景色のいい崖と相場は決まっており、案の定、リーゼント&リンゴちゃんはあっという間にその女性(恋人に浮気され、捨てられたらしい)を見つけます。



が、しょせん恋愛に疎いリーゼントゆえ、どう言って彼女を励ませばよいやら分かりません。

と、そのとき!

「死にたければ死になさいよ!」



リーゼントを差し置いて彼女を叱咤激励したのは、一見おとなしそうなリンゴちゃんでした。

「当てつけに死んで見せるつもり? そんな事したって笑われるだけよ!」

おとなしいどころか、初対面の女性にビンタまで食らわせ、リンゴちゃんは言います。

「どうして見返してやらないのよ! 自分1人で決着つければそれでいいの?」



その通り! そもそも、たかが恋愛ごときに人生を左右されるなんてバカげてる。男なんぞ無数に余ってるのに贅沢ぬかすな!っちゅう話です。なにが恋愛だ、セックスセックス!

というワケでリーゼントは出る幕ないまま騒動は解決。どうやらリンゴちゃんも下らない恋愛の悩みを抱えてたようで、だけど死のうとした女を叱咤することで吹っ切れたみたいです。



ところで、途中下車させてしまったリンゴちゃんを(本来の目的地だった)下田へ送らなきゃいけないのに、彼女が「もう用は済みましたから」と東京へ戻ることを希望したもんだから、リーゼントは眼をギョロギョロさせて歓びます。

しかも、午後から非番になってる今度の土曜日に、上野の美術館でデートする約束まで取りつけ、有頂天になるリーゼント。



しかし刑事ドラマでこういう展開になれば、結末はソフトな順に「事件に追われてデートをすっぽかし、フラれる」か「惚れた相手が実は殺人犯だった!」か「幸せの絶頂で殉職!!」の三択しか無く、成就はまずあり得ません。

そうとも知らず、土曜の午前勤務を終えたリーゼントが、ウキウキしながらタイムカードを打とうとしたその時、分駐所宛てに差出人不明の小包郵便が届いちゃうのでした。



その中身は思わせぶりな鉄のボルトと、新聞の切抜き文字による「今日の午後2時、東京駅で何かが起こる」という予告状。

もし駅のどこかに危険物が仕込まれてるとしたら、そりゃデートに行ってる場合じゃありません。早期解決を祈りながら、リーゼントは仲間たちと駅構内を駆け回ります。



で、結局2時になっても異変は起きず、悪質なイタズラだったと結論が出たところで、リンゴちゃんから分駐所に「リーゼントはまだか」と電話がかかって来る。



それを聞いてリーゼントは美術館に慌てて駆けつけるも、間に合わず。果たして、これでフラれるだけなら良いのですが……

残念ながら、神奈川県警の刑事(粟津 號)が鉄道警察隊を訪れ、横浜で起きた殺人事件の最有力容疑者が、リーゼントの名前を出してアリバイを主張してると告げるのでした。そう、リンゴちゃんです。

彼女と恋愛関係にあった男が毒殺され、それが明らかに顔見知りの犯行であること、彼の浮気により別れ話がこじれてたこと、その浮気相手には確かなアリバイがあることから、県警はリンゴちゃんを疑ってるのでした。

が、下心は置いといても、眼の前で自殺志願者を救ったリンゴちゃんが殺人を犯すなんて、リーゼントにはとても思えません。



「命の大切さを知ってる人間が、人の命を奪う筈がない」

「それは甘いんじゃないか? こんな仕事をしていれば、人間の信じがたい部分も知らないワケじゃないだろう」

「信じることの大切さも知ってるつもりです!」

自分が約束通りの時間に上野へ行ってさえいれば、リンゴちゃんのアリバイをはっきり証明することが出来たのに……

眼をギョロギョロさせながら後悔するリーゼントは、県警の取調室で再会したリンゴちゃんに約束するのでした。



「あなたの無実は、必ず立証してみせます!」

予想犯行時刻(IN横浜)は、あの土曜日の午後1時から1時半の間。2時過ぎにリンゴちゃんが分駐所にかけて来た電話が、本当に待ち合わせ場所の上野からだったことを証明すれば、立派なアリバイになる!

寝食も忘れて捜査し、仲間たちの協力も得てみごとアリバイを立証させたリーゼントのお陰で、リンゴちゃんは晴れて釈放となるのでした。



で、2人はあらためて美術館デートを約束し、今度こそ事件に邪魔されることなく、チョメチョメする筈だったのですが……

待ち合わせ場所に近づいたところで、ひょんな事からリーゼントは知ってしまいます。リンゴちゃんのアリバイを決定づけた、上野駅近くの電話ボックスがあの日、故障して使えなかったことを……



「あのとき、僕に電話をくれたのは、このボックスからですよね?」

「ええ、そうですけど」



特急列車で初めて出逢ったあの日、リンゴちゃんは生まれ故郷の下田で自殺するつもりだった。

けど、同じ理由で自殺しようとする女を客観的に見て、恋愛ごときの為に死ぬバカバカしさに気づいた。それで全部忘れりゃ良かったのに、復讐という修羅の道を選んじゃった。

「香取さん(リーゼント)なら、きっと私の無実を証明してくれると思ったんです」



結局、リーゼントはアリバイ工作に利用されただけ。彼にもっと男としての魅力があれば、リンゴちゃんも気持ちを切り替えたかも知れないのに、まったく何もかもギョロ眼リーゼントのせいです。

そんなウルトラ傷心状態のリーゼントに、上司の高杉警部(宇津井 健)が折り目正しくポーズを決めながら、こう言って励ますのでした。



「ま、いいじゃないか」

そう、リーゼント野郎の失恋なんか全くもってどーでもいい。

それより今回は、内心ヤキモチを焼きながらもリーゼントの捜査に力を貸す、西園寺刑事の女心にこそグッと来ましたよ!



ラストシーン、使わずじまいになった美術館のペアチケットを取り上げて、彼女が言うワケです。



「おー、勿体ない。私がつき合ってあげる」

あんなギョロ眼リーゼントがなぜモテるっ!?

ま、リンゴちゃんには見事にフラれましたから、今回は大目に見るとしましょう。なかなか良いエピソードでした。

リンゴちゃん=辻沢杏子さんだからこそ良い、っていう側面も絶対あると思います。そりゃ惚れちゃうよね、っていう説得力が無きゃ主人公に感情移入できませんから。

そういう役を、華も実力も兼ね備えた女優さんが演じるのって、現在なら当たり前だけど昭和の時代は違いましたから。美人だけど演技力がなかったり、演技は上手いけどルックスが地味だったりがほとんどでした。

それが許されなくなって来たのが平成の時代で、まさにこの『さすらい刑事旅情編』あたりから変わって来たんじゃないでしょうか?


 
 

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