☆第26話『愛するって何ですか?』
(1980.4.30.OA/脚本=大原豊/監督=土屋統吾郎)
ラグビー部のキャプテン=水野(井上純一)にカノジョが出来ます。
最近あさひが丘に引っ越して来た謎の美少女=弘子(白石まるみ)が浜辺に落としたペンダントを拾ったのをキッカケに、ダメ元でアタックしようとしたら彼女の方から「友達になって下さい」と言って来たもんだから驚いた!
「もちろん! もちろんだよ!」
だけど世の中、そんなウマイ話はありません。いくらTVドラマとはいえ……いや、TVドラマだからこそ、なんの努力もせずに欲しいものが手に入るなんてことは有り得ない、あっちゃいけないんです。
弘子は夕方5時という小学生みたいな門限を律儀に守り、サイクリングに誘っても「私、そういうことはダメなの」と暗い顔をして、理由を尋ねても「今は言いたくない」としか答えない。これじゃチョメチョメ出来ません!
それでも本気で弘子を好きになっちゃった水野は、彼女が自分から理由を言う気になるまで待つと決意し、チョメチョメは我慢します。チョメチョメしたい真っ盛りの高校生なのに、偉いぞ水野!
ところがある日、待ち合わせ場所で弘子を待つ水野の前に現れたのは、なんだか陰気な顔をした中年男=山根(城所英夫)、なんと弘子の父親でした。
「娘はここには来ない。それに、今後の付き合いもお断りする」
「ええ? ちょっと、どういう事ですか?」
「とにかくこれ以上、娘には近づかないで頂きたい。それだけだ」
「そんな、理由も言わずにいきなりそんなこと言われても! とにかく弘子さんに会わせて下さいよ!」
「弘子ももう会わないと言ってるんだ。これ以上しつこくするな!」
それだけ言って山根は車に乗って立ち去ります。ちょっと待ってくれ、どういう事なんだ?! 俺のチョメチョメはどうしてくれるんだチョメチョメは?! チョメチョメはーっ?! チョメチョメーっ!!
当然、納得いかない水野は僅かな手掛かりから弘子の家を探しだし、近所迷惑も考えずに「弘子さん! 開けてくれよ弘子さん! 出てきてくれよ弘子さん! 弘子さん! 弘子さん! 弘子さん! 弘子さん! 弘子さん! 弘子さん! 弘子さん! 弘子さん!」と喚き散らすもんだから警察が駆けつける騒ぎとなり、またもや竹内教頭(高城淳一)を「水野は退学だな」とニンマリさせちゃうのでした。
見かねたハンソク先生(宮内 淳)が山根家を訪れ、父親から真相を聞き出します。
「心臓疾患?」
そう、弘子は山さんの奥さんと同じように心臓に持病があり、いつ発作を起こすか分からないから刺激を避けて生活しないといけない。だから水野とチョメチョメするなどもってのほか。そんな殺生な!
父親の山根は妻を亡くし、たった一人の娘を守るために転職し、出来るだけ静かな環境を選んで引っ越して来た。
「あの子が、いま一番欲しがってるのは友達だということは知ってます。しかし、弘子が発作を起こすと怖がってみんな離れて行ってしまう。そのたびに傷つくあの子を、私はもう見たくないんだ」
「水野はそんなヤツじゃありませんよ」
「同じだよ! キミも同じだ。同じ思いを二度とさせたくないんだ。分かったら帰って下さい!」
「彼女はどうなんですか? だからってこの先、友達も持たずに、ただ病気を怖がって、ひっそり暮らして行くだけなんですか? 彼女はそれで幸せなんですか?」
「…………」
「幸せなんですか?」
そんなハンソク先生の真摯な訴えが功を奏し、水野と弘子はデートすることを許されます。ただし、常にハンソクが監視することを条件にw これじゃ一生チョメチョメ出来ません!
弘子の希望により病気のことを知らされてない水野は、スキだらけのハンソクのスキを狙ってあっさり監視を逃れ、遊園地で弘子をジェットコースターに乗せた挙げ句、いきなりチョメチョメ……はさすがに無理だから、ファーストキスを奪っちゃう。すると……
「あっ……んん……あああ!」
えっ、そんなに悶えるほど俺のキスよかったの? うへへへ!と水野が喜んだのも束の間、弘子は倒れてしまいます。そう、父親があんなに恐れていた心臓発作。それは弘子自身が水野を失いたくない一心から、限界にチャレンジした結果でもありました。
救急病院に搬送され、弘子はなんとか一命を取り留めたものの、父の山根は当然ながらハイパー激怒。ハンソク先生が土下座して謝っても許してくれません。
「私がバカだった……私がバカだったんだ! 今後もう二度と、私らには関わらないでくれ!」
何も知らなかったとは言え、水野は自分を責め、泣きじゃくります。
「オレのせいなんだ……オレのせいなんだよ! オレ、連絡とるのが遅れちゃって、救急車が来るのが遅かったんだよ……その間、彼女ずうっと苦しんでて……オレ、彼女があんなになるなんて思ってもみなかった……思ってもみなかったんだよ!」
「もういい、水野。お前だけが悪いんじゃない。自分だけ責めるな。大丈夫だよ、彼女は。きっと大丈夫だよ」
何の根拠もなく言うハンソク先生だけどw、その言葉どおり山場を乗り越えた弘子は、治療のため専門病院に転院することになります。そして……
「水野くん、来てくれてありがとう」
「ああ。今度の日曜日には行くからね。頑張れよ」
山根の車に乗せられ、次の病院へと向かう弘子をハンソク先生と一緒に見送ったのが、水野が彼女の笑顔を見た最後の時となりました。
「そんな……嘘だ……嘘だよ!」
数日後の朝、あさひが丘学園を訪れた山根から、水野とハンソク先生は弘子が亡くなった事実を聞かされます。あのあと再び発作を起こし、あっけなく……
「そんな……そんな……そんな事って……うああああーっ!」
水野が叫び声を上げながら走り去った後、山根はハンソク先生に言います。
「あの子は、小さい頃から病気を背負ってひっそりと生きて来たんです。いや、私の方が病気を恐れて、そんな生き方をさせてしまったんです」
「…………」
「そんな生き方を強いられて来たあの子が、生まれてきて良かった……生まれてきて良かったと、そう言ってくれました」
「そうですか……」
いつもの砂浜で、朝から夕方まで泣き続けてる水野に、ハンソク先生がペンダントを手渡します。弘子と仲良くなるキッカケになった、あのペンダントです。
「お前に渡してくれと言ったそうだ」
「…………」
「お父さん、お前に感謝していたよ。お前と逢ったことで、彼女は生まれて初めて、生きてることを感じたのかも知れないって……そう言ってたよ」
「…………」
「お前は、彼女の命を縮めたんじゃないんだよ。お前が愛したことで、彼女は本当に生きられたんだ」
「…………」
「生きて、死んでいけたんだよ」
……かくもストレートなメロドラマ、そして難病モノも、'80年代に突入した当時はすでに「あざとい」あるいは「ダサい」と思われてたかも知れません。
けど、そういうのがすっかり観られなくなった現在あらためて観ると、なかなか良いもんですよねw 井上純一さんの熱演もあって、私はもらい泣きしそうになりました。
ナイター中継で順延になった前回分(#25)の放映がさらに後回しにされたのは、恐らくこの純愛物語の放映日程を変えたくなかったから。女子ウケしそうだし、井上さんと白石まるみさんのキスシーンが大々的に宣伝されてましたから。
現在の眼で見ると大した描写じゃない……かと思いきや、ソーシャルディスタンスを意識しなくちゃならない今となっては逆に貴重かも? そういや2020年現在の恋愛ドラマは、ラブシーンをどう処理してるんでしょう? AVは一体どうしてるの? どっちも最近観てないから分かんない。
んなことはどーでもよくてw、このエピソードに番組スタッフが勝負を賭けるほど、当時は井上純一さんが女性人気を引っ張ってたワケです。ハンソク先生にいまいち人気が無いからと言うより、そういう対象がどんどん低年齢化してたんですよね。当時まさにジャニーズの「たのきんトリオ」が一世を風靡しており、私はほんとヘドが出そうでしたw
そして相手役の白石まるみさんも絶賛売り出し中で、この直後に『太陽にほえろ!』#408にも登場、以後も4回出演される常連ゲストとなられました。
ラブシーンは恐らく今回が初めてで、ご本人にとっても思い出深い作品になったんじゃないでしょうか。
前回のロッキー刑事=木之元亮さんに続いて、今回は長さん=下川辰平さんが『太陽にほえろ!』撮影の合間を縫って応援ゲスト出演!
VTRでサクサク撮れちゃう昨今の連ドラと違って、フィルム作品の『太陽~』や『あさひが丘~』は撮影にとても時間がかかる上、10話やそこらじゃ終わらないからスケジュールが非常にタイト。ゆえに掛け持ち出演は相当な激務だった筈で、これぞまさに「友情出演」です。
『太陽~』マニアとしては、長さんがボンを「先生」って呼ぶたびにクスッと笑わずにいられませんw 長年お世話になった大先輩に「先生」呼ばわりされちゃう宮内さんも、きっとこそばゆい思いをされてたんじゃないでしょうか?
そういう楽屋オチ的なことを抜きにしても、下川さんはじめキャスト陣の真摯な熱演により、これは泣けるエピソードになりました。
(なお、放映日が前回#24から1ヶ月以上も空いてるのは、ナイター中継による順延に加え、諸事情につき次の#26が先に放映されたから。DVDでは制作順に収録されてるので、ここでもそれに準じます)
☆第25話『生徒の親の再婚問題!』
(1980.5.21.OA/脚本=奥村俊雄/監督=土屋統吾郎)
ラグビー部の内田(小野沢 淳)が、チームメイトで仲のいい松野(星野浩司)がタバコを持ってることを竹内教頭(高城淳一)に報告したもんだから驚いた!
「停学だ。松野は停学です」
そう言ってニンマリ笑う竹内教頭の顔がホントいやらしいw ドSで小賢しい中間管理職を演じさせたら高城淳一さんの右に出る者はいませんw
内田はどうも、離れて暮らす父親=洋平(下川辰平)から「再婚したい人がいるんだ」と言われて以来、様子がおかしい。いや、そう聞いて最初は喜んだのに、父の再婚したい相手=雪江(星野晶子)が同じあさひが丘学園で風紀委員長を務める山本夏子(一ノ瀬康子)の母親だと知った途端、おかしくなったのでした。
人一倍モラルにうるさく、他人にも自分にも厳しすぎる夏子は、能天気なラグビー部の連中を特に嫌っており、だから内田たちにとっても誰より煙たい存在。しかも同学年なのに誕生日がわずかに夏子の方が早く、内田は彼女の義弟になってしまう。そりゃあイヤでしょう。
だけど、それがなぜ、友達の松野を教頭に売るような行動に繋がったのか? そもそも松野はイキがってタバコを持ってるだけで、吸ってたワケじゃない。その事実を内田は知っているのに。
原因はどうやら夏子にあるらしく、涼子先生(片平なぎさ)は彼女の潔癖さに理解を示しつつ、その真意を探ります。
「あなたぐらいの年頃にはそういう時ってあるし、もちろん私にだってそういう時期があったわ。でもね、自分に対しても他人に対しても、あんまりあなたが厳しすぎたら、他の生徒たちから孤立しやしないかって、私はそれが心配なの」
「……私、独りでも生きられます。私、寂しいなんて思ったことありません!」
そんな思いをことさら強調する夏子は、再婚すなわち、たった一人の家族であるお母さんを取られるみたいで怖いのかも知れません。
一方、回りくどいことが苦手なハンソク先生(宮内 淳)は、ストレートに内田から本音を聞き出そうとします。
「どうしたんだよ? 松野はお前の友達だろ? みんな仲間だろうが」
「……オレ、どうしたらいいのか……」
どうやら内田は夏子から、再婚を受け入れるにあたっての条件を突きつけられたようです。その条件とは、ラグビー部の連中とはもう付き合わないこと、そして夏子が言う通りの真面目な生活を送ること。だから内田は彼女に言われるまま、タバコの件を教頭に報告したのでした。
「オレが、オレがそれさえ守れば、親父は結婚できるんだよ!」
妻を亡くして以来15年、洋平は苦労して息子を男手一つで育てて来た。洋平はどんな時でも息子を信じ、味方でいてくれた。内田はそんな父親を心から愛してるのでした。
「オレ、今まで親父の為に何もしてやれなかったんだ。その親父が、15年ぶりに好きな人が出来てあんなに喜んでるんだよ。オレ、親父に幸せになってもらいたいんだよ!」
「内田……」
「それが……それがこんな事になるなんて……オレ、どうしたらいいんだよ?!」
悩みに悩んだ挙げ句、内田は教頭先生に「タバコの件はオレの思い違いでした」と前言撤回するんだけど、それが夏子をますます激怒させちゃいます。
「やっぱりあなたはあの連中と同じよ! あなたのお父さんだって……」
「いや、親父は違うんだよ! いい男なんだ! キミだって一度会ってみれば……」
「会わなくたって分かるわよ! あなたを見てれば分かる。だらしなくていい加減な人よ!」
「なに?」
「そんな人と母を結婚させるワケにはいかないわ。あなたのお父さんなんか、私の母が好きになるワケないのよ!」
「なに言ってんだ! なんで親父をそんな風に言うんだっ?!」
逆上した内田は夏子にビンタしてしまい、事態はますます悪化。見かねたハンソク先生が夏子の説得に当たるんだけど、彼女が長さんの悪口ばかり言うもんだから内田以上に激怒しちゃいますw
「お前、内田の親父さんに会ってもいないんだろが!」
「会わなくたって分かります! 内田くん、私に暴力を振るいました。内田くんのお父さんだってそういう人です!」
「甘ったれんなっ! お前な、自分のお袋も信じられんのか?」
「えっ……」
「お前のお袋さんは、内田の親父さんが好きで、親父さんを信じて一緒になろうとしてるんじゃないか! だったらどうして信じてやらないんだ?!」
「…………」
「お袋さんは、今まで一生懸命お前を育てて、いま幸せになろうとしてるんじゃないか。どうしてそれを解ってやろうとしないんだよ? いい歳をして甘ったれんなっ!!」
さすがは主人公! ハンソク先生の言葉は夏子にガツン!と響いたみたいです。
そう、夏子も母=雪江のことを心から愛してる。親に幸せになって欲しいっていう気持ちは内田とまったく同じなんです。なのに雪江を独占したい気持ちが勝ってしまうのは、ハンソク先生の言うとおり彼女の甘えに過ぎません。
だけど、気づくのが遅かった。お互い我が子の気持ちを優先したい洋平と雪江は、話し合って再婚を諦めるという結論を出してしまいました。
「そうですか……やめるんですか……」
洋平が宿泊する旅館を訪ね、それを聞いたハンソク先生はとても残念そう。初対面の筈なのに他人事とは思えない様子ですw
「知りませんでした……息子があんなに苦しんでいたなんて……それなのに結婚だなんて」
そんな二人のやり取りを、部屋の外で夏子が聞いています。洋平がどんな人なのか自分の眼で確かめる為に、彼女も此処を訪ねて来たのでした。
「あの人は本当にいい人なんです。優しくて、思いやりがあって……この歳になって、やっと巡り会えた人だっていうのに……つらいです。つらいですよ……でも仕方ありません」
「長さん……いや、内田さん」
「ボン……いや、先生」
最後の部分には私のアドリブが混入してますけどw、この会話が夏子の心を大きく動かしたのは言うまでもありません。
「ボン……いや先生、いろいろお世話になりました」
「長さん……いや、内田さん……」
ハンソク先生と息子に見送られ、洋平はあさひが丘駅の改札口に向かいます。その後ろ姿に私は泣きました。長さん……いや、下川辰平さんほど背中で哀愁を語れる俳優さんはなかなかいない事でしょう。
ところが! 改札の前で洋平を待ってる人がいました。そう、夏子です。
「内田さん……」
「?」
「母を……母をよろしくお願いします!」
それだけ言って、夏子は走り去りました。こうして彼女も一歩大人に近づいたワケです。
そして例によっていつもの砂浜で、夏子はハンソク先生に問います。
「先生……お母さん、幸せになれますよね?」
「ああ、内田さんはいい人だ。幸せになれるよ、きっと」
「私……私……」
夏子が何か言おうとしたところで、涼子先生とラグビー部員たちが満面の笑顔で砂浜を走って来ます。この光景もこれまで何度見たことか!w もちろん、最後は夏子も一緒になって走ります。
とにかく、何かあれば砂浜へ行く。そしてみんなで走る。それが日テレ青春シリーズの伝統であり様式美で、そこに意味など何もありませんw
こうして文章にするとありがちなストーリーに過ぎないんだけど、下川さんが全身で滲ませる哀愁と、内田役の小野沢淳さんや夏子役の一ノ瀬康子さんの真っ直ぐな情熱が心を震わせてくれます。私はそこに「魂」を感じました。ドラマはこうあって欲しいです。
一ノ瀬康子さんは当時20歳で、片平なぎささんとは堀越学園の同級生。本作が放映された'80年には映画『きらめきの季節』で主役を張り、セクシーショットもそのプロモーションの一環で撮られたみたいです。
☆第24話『オレはカッコイイ刑事になりたい!』
(1980.4.16.OA/脚本=大原 豊/監督=馬越彦弥)
あさひが丘の学生寮で小寺先生(谷 隼人)が所有する30万円の茶碗が盗まれ、七曲署のロッキー刑事……によく似た顔じゅう毛だらけの刑事(木之元 亮)が、ベテラン刑事(今西正男)と2人でやって来て、華麗なる捜査であっという間に犯人を検挙し、顔を毛むくじゃらにしながら去って行きます。
七曲署にはもっとカッコイイ刑事がいくらでもいることを知らない学生たち、殊にラグビー部のNo.2である山下(長谷川 諭)はすっかり魅了され、自分もあんなカッコイイ刑事になりたい!という夢を抱きます。
そんな時に町でひったくりの現場に遭遇し、犯人逮捕に協力した山下は、クラスのマドンナである星野(壇まゆみ)に誉められて、ますますその気になっちゃいます。
そこに眼をつけたのが、落ちこぼれのラグビー部を眼の敵にする竹内教頭(高城淳一)。「学園の規律を守れるのはキミだけだ」と山下をおだて上げ、ラグビー部の連中を刑事よろしく監視するよう依頼します。
単純な山下はそれを喜んで引き受け、後輩たちの喫煙を教頭に密告。そのせいで彼らが停学処分となり、怒ったチームメイトたちと乱闘する事態になっちゃいます。
実はそれこそが竹内教頭の狙いで、乱闘騒ぎを理由に全ラグビー部員を退学にする企みに、山下はまんまと利用されたのでした。日テレ青春シリーズの教頭はこんな小賢しいヤツばっかですw
そこで、最近ちょっと影が薄くなって来たハンソク先生(宮内 淳)がようやく動き出します。「オレは正しいことをしただけなのに!」と逆ギレする山下に、番組初期に比べるとかなりソフトなもみあげパンチを浴びせて「自分のやった事がどういう事か、お前は解ってない!」と説教します。
「お前、将来刑事になりたいそうだが、今みたいなお前が刑事になるのは、オレは反対だ」
「…………」
「こないだの刑事に、お前やみんなが憧れたのは、あの刑事がみんなから信頼されてるからだ。そうだろ?」
「…………」
「どんな職業に就いても、その人間が周りから信頼されなければ、何の価値も無いんだよ」
どうやら仲間たちに退学処分が下されることを知らなかった山下は、あまりのショックで学園の屋上から飛び降りようとします。
「ほっとけよ! オレの事なんかほっとけよ!」
それでもハンソク先生は、真正面から彼にぶつかって行きます。
「だったらサッサと飛び降りたらどうなんだ? ゴチャゴチャ言ってないで飛び降りたらどうだっ?!」
「…………」
「もういいんだ、山下。もういいんだよ」
何がもういいのかよく解らないけどw、その場に泣き崩れた山下は、とりあえず死ぬのを中止します。そんな山下の姿を見たラグビー部の仲間たちは彼を許し、竹内教頭も退学処分を取り下げるのでした。
今回は『太陽にほえろ!』の黄金コンビ=ボン&ロッキーがつかの間の復活!ってことで大々的に宣伝されました。スコッチ(沖 雅也)あたりを連れて来た方が宣伝効果はあったと思うけどw、我々『太陽』ファンには嬉しいプレゼントでした。
七曲署だといまいち冴えないロッキー刑事でも、学園ドラマのガキンチョたちに囲まれるとカッコ良く見えちゃうのは1つの発見でしたw サングラスなんかして普段以上にカッコつけてる木之元さんも、七曲署にいる時より生き生きして見えましたw
出番が短く、宮内さんとの掛け合いが一瞬しか見られないのは残念だけど、まあ『太陽~』撮影で忙しい合間を縫っての出演ですから仕方ありません。
本筋はまあ、他愛ないと言えば他愛ない話だけど、何より大切にすべき財産は信頼関係なんだ、っていうのは『太陽にほえろ!』と相通じる着地点で良かったと思います。
この時期になるとドラマの比重が生徒側に片寄り、またハンソク先生があまり無茶できなくなったせいもあり、前述のとおり影が薄くなって来ちゃったのが私としては残念です。
いや、ハンソク先生が暴走できなくなった分、彼を諌める役目を担った涼子先生(片平なぎさ)の方が割りを食ってるかも知れません。あまり喧嘩しなくなったのは互いに成長した証とも言えるけど、やっぱ物足りないです。
そんな流れの中で今回は、かつての相方の参戦により、ハンソク先生がちょっと元気を取り戻したように感じます。珍しくロッキーが良い仕事をしてくれましたw
後に最終回を演出される鈴木一平さんの監督デビュー作となった本エピソードで、ロッキー(木之元 亮)と早瀬令子婦警(長谷直美)が急接近、3ヶ月後には結婚することになります。
令子にはゴリさん(竜 雷太)と、ロッキーには山さんちの家政婦さん=加代子(千野弘美)とくっつく裏プランがそれぞれあったものの、あえなく破談。言わばフラれた者どうし、妥協して身を寄せ合うワケですw
いや実際、スコッチ(沖 雅也)の復帰により若手筆頭の座から転落したロッキーと、交通課婦警として藤堂チームに絡むにはネタが尽きて来た令子は、そのままだと存在価値を失ってたかも知れません。
ところが! 二人がくっつく事によって、妻帯者となり父親にもなるロッキーには長さん(下川辰平)に代わるホームドラマ担当としてのポジションが、そして令子には双子の母親にして未亡人=マミー刑事としてのポジションがそれぞれ与えられ、逆に存在感を増していくんですよね!
そこまで見越してのカップリングではなかったにせよ、結果的には大成功と言えるんじゃないでしょうか? ロッキーが結婚したからって怒る女性ファンはいない事だしw
ツッコミ上手な先輩と絡んだ時だけ面白くなるロッキーには、常に強気な令子さんが一番マッチするんですよね。
後にロッキーが殉職しても大した話題にはならなかったけど、そのお陰で未亡人刑事マミーが誕生したことを思えばちゃんと意味がある。しかも、マミーが主役の回で頻繁に回想してもらえるんだからラッキーそのもの。お前、ロッキーじゃなくてラッキー刑事だよって、ドック(神田正輝)あたりが言いそうですw(実際言ってたかも?)
ヒゲしか取り柄が無かったロッキーにとって、これはまさに起死回生。このシーズンは色んな意味で「復活」のシーズンなんですよね。
☆第407話『都会の潮騒』(1980.5.23.OA/脚本=柏原寛司/監督=鈴木一平)
交通課婦警の令子が命を狙われます。犯人の西山(井上高志)は、半年前に起こった交通事故により死亡した女性の兄。
その事故の処理を担当した令子が、被害者自身にも不注意があったことを裁判で証言した為に、加害者が減刑されたのを西山は逆恨みしてるのでした。
夢を抱いて上京したものの都会に馴染めなかった西山にとって、一緒に暮らす妹の存在が唯一、心の拠り所だった。それを奪った事故の加害者を殺しても気が済まず、今度は令子を狙ってるワケです。
「都会で独りで暮らすっていうのは、寂しいもんでしょうね。オレなんか妹と一緒だからいいけど……オレ、西山の気持ちも解るような気がするんですよ」
そう言って同情するスニーカー(山下真司)に、今回だけやけにクールなロッキーが言います。
「この東京にはさ、そういう人間が沢山いると思うんだよ。だけどみんな立派に生活してるんだ。力いっぱい生きてるんだ。オレは、西山を許せない」
そして、恨まれてばかりの警察官の仕事に嫌気が差して来たとボヤく令子にも、ロッキーはクールに言ってのけます。
「キミは、人に感謝されたくて警官をやってるのか?」
「…………」
「間違ってるよ、そいつは。警官なんてのは、人に感謝されようがされまいが、やっぱり必要なんだよ」
ただの毛むくじゃらとしか思ってなかった男にビシッと言われて、令子も今回だけやけにしおらしくなりますw
で、ダンプカーを暴走させて襲ってくる西山から、ロッキーは自分を犠牲にしてでも令子を守り抜こうとし、瀕死の重傷を負ってしまう。おまけに木之元亮デビュー曲にして最後のレコード『都会の潮騒』が1コーラス流れた日にゃあ、たとえ顔じゅう毛だらけでもメロメロにならざるを得ません。
そうして今回だけ特別待遇でカッコよく描いてもらったロッキーに、令子はうっかりハートを掴まれちゃうワケです。結婚、出産、子育て、そして死別、マミー刑事誕生へと続く波瀾万丈ドラマの、これが幕開けであったことを思うと、今だからこそ味わえる感慨深さがあります。
斉藤こず恵さんを憶えておられるでしょうか? 昭和世代なら皆さんご存知かと思います。
'74年のNHK朝ドラ『鳩子の海』でヒロインの少女時代を演じて一躍「天才子役」として注目され、さらに'76年にはシングル『山口さんちのツトム君』の大ヒットで歌手としても「時の人」となられました。現在も女優、声優、ブルース歌手として活躍されており、2012年には多部未華子さん主演の連ドラ『浪花少年探偵団』第3話にゲスト出演されてます。
この当時は中学生になったばかりで仕事をセーブしてたんだけど、『太陽にほえろ!』は番組スタート時からのファンだったもんでオファーを断れず、学校の先生にお願いしてなんとか出演に漕ぎ着けたんだとか。同じファンとして嬉しいかぎりです。
殿下(小野寺 昭)を初恋の「せんせい」に見立てた少女の青春ストーリーとしては、同じく朝ドラ出身の大竹しのぶさんがゲスト出演された第276話『初恋』に次ぐものだけど、ヒロインの年齢がさらに下がったもんで、内容はより他愛ないものとなってますw
それでも斉藤こず恵さんのハツラツとした演技を見てるだけで楽しめますから、やっぱり天性のスターなんですよね。
☆第406話『島刑事よ、さようなら』
(1980.5.16.OA/脚本=小川 英&古内一成/監督=児玉 進)
喫茶店に置かれた落書きノートをなにげなく読んでた殿下が、自殺を予告するような書き込みを見つけて、それを書いた真紀という女子中学生(斉藤こず恵)を探しだし、まさに睡眠薬で死のうとしてたのを阻止します。
誰かが書き込みを見て助けに来なければ本当に死ぬつもりだった真紀は、自殺の理由を「生きるのが面倒くさくなったから」なんて言うもんだから、殿下に「命を粗末にするような人間は嫌いだな」とやんわり叱られて、メロメロになりますw
そんな折り、運送会社の営業課長がナイフで刺殺され、容疑はその部下の係長(山本紀彦)に絞られるんだけど、決定的な証拠がない。
捜査が難航してることを新聞記者である父親から聞いた真紀は、なんとか殿下の役に立とうと容疑者に近づき、あわや殺されそうになったところを殿下にまた救われます。
お陰で犯人を逮捕することが出来たんだけど、殿下は心を鬼にして真紀を諭します。
「もう二度とこんなことしちゃいけないよ」
「いや。またお仕事手伝ってあげる。だって、何があったって島さんが助けに来てくれるんだもん。今だってそうでしょ?」
「キミだから助けたんじゃないんだよ」
「えっ………」
「これが、刑事の仕事なんだ」
「…………」
真紀を危ない目に遭わせないため、あえて突き放した殿下は心が痛むんだけど、数日後、例の喫茶店の落書きノートに「島さん、ありがとう」っていう彼女の書き込みを見つけて、胸を撫で下ろすのでした。
今回は#402『島刑事よ、安らかに』に続く、いわゆる殿下の「死ぬ死ぬ詐欺」シリーズ第2弾w
#402は殿下を主役にしたスナッフフィルム(人が本当に殺される様子を撮った実録映画)のタイトルが『島刑事よ、安らかに』だった!っていうオチで、私は「なるほど、そのテがあったか」と感心したもんだけど、今回の『島刑事よ、さようなら』は真紀の主観に基づくタイトルですから、さすがに女子中学生が「島刑事よ」とは言わんやろ~ってw、ちょっと無理を感じてしまいました。でも、それでいいんです。
殿下がもうすぐ殉職すると公表した上でこのタイトルですから、多くの視聴者から「紛らわしい!」「あざとい!」ってなクレームがついたらしいけど、私はもっと『太陽~』にはこういう仕掛けを打ち出して欲しかったです。それまでが品行方正すぎたんです。
やっぱりテレビ番組は攻めなきゃ面白くない。あざとくたって他愛なくたって、面白ければ文句なし! ようやく『太陽にほえろ!』が、また面白くなって来ました。