ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『警視庁物語/白昼魔』

2023-04-28 16:50:10 | 刑事ドラマ'60年代

1957年に劇場公開された、脚本=長谷川公之、監督=関川秀雄による『警視庁物語』シリーズの第4弾。こちらは’67年の3月にテレビ用の短縮版が第9話として放映されました。

「無音拳銃」(サイレンサー付きハンドガン) による殺人事件を捜査する警視庁捜査一課の刑事たちの活躍が、例によって淡々と描かれてます。

ただし今回は、結核で余命わずかな若い殺人者と、その恋人の哀しい逃避行というメロドラマ的要素が加味され、前作『追跡七十三時間』よりは余韻の残る内容になってます。



イケメンな犯人=八村を演じたのは、黒澤明監督の『七人の侍』等で知られる木村功さん。そしてその恋人役は、宝塚歌劇団ご出身で月丘夢路さんの妹である、月丘千秋さん。



富士山の見える浜辺が舞台のクライマックスには、このシリーズらしからぬロマンチックさがあり、死刑か無期懲役を示唆するラストカットのテロップが浮いてますw



私にとってはやはり、そんな辛気臭いドラマよりも昭和中期の風景、文化、風俗こそが見どころで、現在の味気ないデザインとは全然違うクラシックカーの数々を眺めてるだけで楽しいです。



そして本作のハイライトは何と言っても、昭和30年代の大阪駅周辺!



↑御堂筋を走るこのパトカー、左ハンドルってことは外車でしょうか?



今回はちょっとした銃撃戦も見られました。バイオレンスがあればエロもあり! 月丘千秋さんが経営する洋装店の下着ファッションショー!



さらに、若手刑事が「トルコ風呂」に潜入しちゃう場面も!



↑トルコ娘「花ちゃん」役は映画『ずべ公天使』等で主役を張った小宮光江さん。今の若い人はもう、トルコ風呂の意味も知らないでしょうね。



↑「模写電送」っていうのは初期型のFAXみたいなもんでしょうか?



↑ジュークボックスなんかも当時は「新しくて」珍しかったみたいです。

捜査一課の刑事たちを演じたのは、永田 靖、堀 雄二、神田 隆、南原伸二、須藤 健、山本麟一 。



ストーリーはどうって事なくても、60年以上の月日が全てを味わい深くしちゃう。2023年現在のテレビ番組も、60年後に観ると味わい深いんでしょうか?

ポートレートは月丘千秋さんです。


 

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『警視庁物語/追跡七十三時間』

2023-04-27 16:00:11 | 刑事ドラマ'60年代

いきなりレトロになります。今までこのブログで取り上げてきた中で、最も古い作品になるかと思います。

『警視庁物語』は1956年から’64年にかけて全24作が公開された、東映製作による人気シリーズ映画。

先月からCS東映チャンネルで順次放映されてるんだけど、ひたすら刑事たちの捜査過程を追うだけの内容でドラマ性がほとんど無く、レビューしようも無いと思ってスルーしてました。

が、このシリーズが『特別機動捜査隊』から『特捜最前線』へと繋がっていく東映刑事ドラマの原点オブ原点であり、『七人の刑事』等にも多大な影響を与えてると知り、無視するワケにいかなくなった次第。

それと、このシリーズのうち16本が約50分に再編集され、1967年1月から4月までNETテレビ(現テレビ朝日)系列の日曜夜8時枠で放映されてたんですよね! つまり連ドラにおける刑事物の古典でもあるから、是非とも記録として残さなきゃいけない。

本作のキャラクターたちがそのまま登場する、続編的な後番組『刑事(でか)さん』は完全にテレビのオリジナル作品で、それが『特別機動捜査隊』や『五番目の刑事』等に枝分かれしていくんだから、やっぱ無視しちゃいけない重要作です。



今回取り上げた『警視庁物語/追跡七十三時間』(脚本=長谷川公之/監督=関川秀雄) は、1956年公開のシリーズ第3作。

Wikipediaに記されたテレビ版の放映リストに『追跡七十三時間』のタイトルは無いんだけど、改題されてるかも知れないし、とにかく古いもんでそのリストも正確かどうか判りません。

いずれにせよ70年近く前の作品がこうしてレストアされ、クリアな画面と音声で鑑賞できることが何より素晴らしい! どんな作品でもちゃんと遺しとくもんです。



事件は、深夜のガソリンスタンドで店主が射殺された件を発端とする、同じ軍用拳銃を使った連続殺人。まずは拳銃の出処を探り、オトリ捜査で売人を捕まえ、そこから糸を手繰り寄せるように地道な捜査で、犯人へと辿り着く。

まさに「事件捜査とはこういうもの」っていう教科書みたいな内容で、当然カーチェイスも銃撃戦も無く、ましてや取調べで容疑者をぶん殴ったりはしません。’70年代の刑事ドラマだけ異常なんですw



じゃあ一体なにを楽しめばいいの?って話だけど、たぶん当時は警察がどんな過程で捜査を進めるのか、ほとんどの一般市民は知らなかったでしょうから、それを刻銘に見られるだけで充分面白かったのかも知れません。

で、捜査過程なんかとっくに見飽きてる現在の我々からすれば、当時の人々が見飽きた昭和中期の風景や文化、風俗こそが新鮮で面白い!



「ホステル」とか「ベットハウス」とか、現在は耳にしない単語が色々出てくるし!



屋台で売ってる焼きそばが一杯60円で、それを百円札で払ってるし!



極めつけは焼鳥キャバレー! そんな風俗があったとは全然知りませんでした。



拳銃のことを「ハジキ」じゃなく「パチンコ」って呼んだり、他にも「枕さがし」とか「パンパン」とか、すっかり死語になった俗称が普通に使われてて新鮮です。



そんなこんなで刑事たちが犯人の隠れ家に辿り着き、逮捕する瞬間がクライマックスになるのは今も昔も変わりません。

が、捕まった犯人が泣きながら犯行動機を語ったりする描写はなく、あっけなく連行されてジ・エンド。



替わりに挿入される罪状と刑の内容を記したテロップに、創り手(というより警視庁?)からのメッセージが感じられます。つまり、最後は絶対こうなるんだから、バカな真似はすんなよと。

刑事ドラマっていうのは本来、警察のプロパガンダが目的で生まれたのかも知れません。いや、確実にそうでしょう。



警視庁捜査一課の刑事たちに扮したのは、永田靖、神田隆、南原伸二、須藤健、山本麟一 。

私は知らない俳優さんばかりの中、モグリの医者役で花沢徳衛さんが……



そして犯人役で加藤嘉さんがゲスト出演されてます。



いずれも’70〜’80年代の映画やドラマで老人役を数々演じられた名優だけど、花沢徳衛さんは’56年当時の方が老けて見える!w

女優さんは不忍鏡子、谷本小夜子、藤里まゆみ、稲植徳子といった方たちがご登場。

中でも犯人の内妻に扮した星美智子さんが、ちょっとセクシーな姿を見せてくれて印象に残ってます。



1935年から2013年に至るまで、物凄い数の作品に出ておられる大ベテラン女優で『特別機動捜査隊』には30回近くゲスト出演されており、今もご健在です。


 

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『特別機動捜査隊』#286

2022-11-10 23:55:06 | 刑事ドラマ'60年代

この時期(1967年=昭和42年の4月)より、それまでモノクロだった『特別機動捜査隊』がカラー放送に切り替わったそうです。

当時は誰しも喜んだであろうテレビのカラー化だけど、今こうして観返すとモノクロの方がスタイリッシュで格好良いですね。特に本作みたいなフィルム撮りの「テレビ映画」は。

4月19日に放映されたこの第286話(脚本=横山保朗/監督=北村秀敏)のサブタイトルは『女と赤電話』。

たしかに赤電話(公衆電話)が印象的に使われてはいるけど、それが深い意味を持ってるワケでもなく、たぶんカラー放送であることを強調したかっただけでしょう。

カラー化でそれくらい沸いてた世間の空気を、私はうっすら憶えてるような気がします。当時1歳半ぐらいだけど。



警視庁特捜隊’67・立石班のメンバーは、立石主任(波島 進)、橘部長刑事(南川 直)、荒牧刑事(岩上 瑛)、桃井刑事(轟 謙二)、岩井田刑事(滝川 潤)、松山刑事(松原光二)。



さらに今回から、事務員として佐藤敏子さんもレギュラーに加わります。

お茶汲みが主たる役目のようで、そういうマスコットガール的なポジションも当時からあったんですね。



さて今回は、少年院から3人の少女(桑原幸子、河崎いち子、桜井詢子)が脱走するシーンで幕を開けます。

それを手引きしたのは大塚(近藤 宏)という卑劣なヤクザ者で、彼女らを売春組織に売り飛ばすのが目的だった。

その大塚が他殺死体で発見されたもんで、立石班が少女たちの行方を追います。



↑少女をとっ捕まえて、なぜかニヤつく松山刑事w めちゃくちゃ真面目な番組なのにw

で、少女たちは結局シロで、真犯人は津島(入江洋佑)というバンドマンだった。大塚に弱みを握られ、囲われてた圭子(生田三津子)という女と恋に落ち、彼女を救おうとして大塚と揉み合い、弾みで殺しちゃった。



だから2人は別れを決意し、せっかく毎晩チョメチョメしてつくった子供を堕ろそうとするんだけど、やっぱり出来なくて、産婦人科から2人で逃げ出したところに、立石班の刑事たちが迎えに来るという、なんとも切ないラストシーン。



相変わらず刑事側には何のドラマも無いんだけど、少女たちの脱走からバンドマンの悲恋へと繋がっていくストーリーは面白く、意外性もあって見応えありました。

何より、女優陣が華やかなのが素晴らしい!



小川万里子、蔵悦子、松風はる美、古賀京子、三谷幸子、水沢麻耶、池田朱実、岩本好恵、石橋暁子etc…といった女優さん達に加え、特別出演として小桜姉妹(明子と康子)という、おそらく当時売り出し中だったデュオまで登場し、歌声を披露してくれてます。



しかし私にとっての白眉はやっぱり、ザッツ昭和!なロケーション。都心とは思えない素朴さ、泥臭さがたまりません!



今回のセクシーショットは、脱走少女3人組のリーダー格=ゆり子を演じた桑原幸子さん、当時19歳。子役から活躍され、東京12chのお色気アクションドラマ『プレイガール』(’69~’73) のレギュラーメンバー、原幸子役で注目された女優さん。



『特別機動捜査隊』は第159話にも登場されており、刑事ドラマは他に『鉄道公安36号』や『非情のライセンス』第1シリーズ等にもゲスト出演。ですが今年の春、心不全で亡くなられたそうです。合掌。


 

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『特別機動捜査隊/劇場版』

2022-11-07 21:45:07 | 刑事ドラマ'60年代

1961年10月、TBSの『七人の刑事』とほぼ同時にスタートし、’77年3月まで実に全801話という、60分枠の刑事ドラマとしては最も多い制作本数を誇り、また現在まで脈々と続くテレビ朝日&東映タッグによる刑事物の原点と言えるのが『特別機動捜査隊』でした。

で、本作は’63年3月に公開された、太田浩児監督による上映時間60分の劇場版。テレビのレギュラーキャストをそのまま使った『七人の刑事/終着駅の女』とは対照的に、役名はテレビ版に準じつつも劇場版オリジナルのキャスティングになってます。



↑どう見ても暗黒街の顔役にしか見えない、立石主任(安部 徹)と橘部長刑事(織本順吉)。



↑荒牧刑事(南 廣)と桃井刑事(亀石征一郎)。



↑そして若手の内藤刑事に扮したのが、まだ『キイハンター』でスターになる前の千葉真一さん。完全に新人扱いで、アクションの見せ場はおろか台詞もロクにありません。



↑ゲストは中原ひとみさん、曽根晴美さん、室田日出男さん。実に個性豊かです。

ストーリーは、撮影スタジオで殺された時代劇スターと、自殺した女子高生との意外な繋がりを警視庁特捜隊が炙り出すというもので、やっぱりドラマは犯人側にあり、刑事たちは狂言回しに過ぎません。

ただ、ドキュメントタッチの『七人の刑事』とはこれまた対照的に、エンタメ要素が豊富なのが『特別機動捜査隊』の特徴。BGMも賑やかです。



派手さは無いけどカーチェイスや銃撃戦の見せ場もあり、終始淡々と進む『七人の刑事』より遥かに見やすいです。



ただし、せっかくの千葉真一さんにアクションの見せ場が皆無なのは、残念にも程があります。当時はまだ、千葉さんご自身もアクションで注目されるとは思われてなかったでしょうけど。

劇場版であること(すなわちグレードアップ)を意識してか、ロケーションも泥臭い場所が避けられたような感じで、やけにスタイリッシュ。

もっと昭和の匂いがプンプンする映像を観たかったもんで、私にとってそれは逆効果。その点で言えば、同じTVドラマの映画化でも『七人の刑事』の方が良かったですね。


 

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『七人の刑事/終着駅の女』

2022-11-06 21:21:35 | 刑事ドラマ'60年代

父が亡くなって、あっという間に1週間が経ちました。今日は日曜日。まだまだ山積みの手続きはいっさい忘れて、完全休養したる!と決めてました。

けど、思いのほか親父ロスが尾を引いてます。施設に入ってからの約1年間は、会えなくて寂しいどころか「別に会っても話すこと無いし」って感じだったのに。やっぱり死別っていうのは、普通の別れとは全然違いますね。当たり前だろうけど。

で、どうしても追想しちゃうのが、自分が幼かった頃の、楽しかった家族の想い出。小学時代の後半からは、家族に関して暗い記憶しか無いもんで、’65年から’75年ぐらいの約10年間限定です。(それも前半はまだ赤ちゃんですから、実質は5年くらい)

なので、その当時の町並みを写した映像には、過剰なほどノスタルジーを感じます。非常にタイムリーと言うべきかどうか、私の生まれた1965年=昭和40年に公開された日本映画がケーブルTVで放映されてました。

若杉光夫監督による日活映画『七人の刑事/終着駅の女』です。そう、’61年10月から’69年4月までTBS系列で放映された、伝説的刑事ドラマ『七人の刑事』第1シリーズの劇場版。

テレビの『七人の刑事』はVTR撮影だったのでテープが上書きされ、奇跡的に残った1話を除くと映像が現存しておらず、’78年の新シリーズも『太陽にほえろ!』の裏番組だったもんで、私は一度も観たことありません。今回が生まれて初めてです。

あの有名なハミングによるテーマ曲もナレーションも使われず、テレビ版とは雰囲気がかなり違うみたいだけど、刑事の顔ぶれはそのままなので、伝説の片鱗ぐらいは味わえるかも知れません。



↑赤木係長(堀 雄二)、沢田部長刑事(芦田伸介)、小西刑事(美川陽一郎)、南刑事(佐藤英夫)、中島刑事(城所英夫)、杉山刑事(菅原謙二)、久保田刑事(天田俊明)という、前述の通りテレビ版と同じ警視庁捜査一課のレギュラーメンバー。私は芦田伸介さんしか存じ上げません。

そしてこの劇場版では、所轄署の刑事に扮する大滝秀治さんはじめ、草薙幸二郎さん、梅野泰靖さん、庄司永建さんなど’70〜’80年代の刑事ドラマで活躍される名優たちや、北林谷栄さん、三崎千恵子さん、日色ともえさん等の若きお姿も見られます。



映画としては、ハッキリ言って全然面白くありません。上野駅で若い女性が刺殺され、その身元と犯人を刑事たちが捜査し、事件を解決させる。ただ、それだけ。

地方出身者が大都会で味わう悲劇という、後の『太陽にほえろ!』でもお馴染みのテーマを扱ってはいるけど、刑事側には何のドラマも無く、しかもテーマ曲はおろかBGMも一切使われず、まるで記録映画を観てるよう。当時の警察物は皆そんなもん?

だから、見どころは名優たちの若かりし姿と、KTさんも大好きな昭和の町並み、車、ファッション。それに尽きます。いや、それを観てるだけで充分楽しい!



お茶を淹れる場面1つだけでも味わい深い! ザッツ昭和! ザッツ日本!



上野駅を行き交う女性たちの和装と洋装、半々ぐらいのファッションがまたノスタルジック!



キップ切りの駅員さんや、常駐するホームレスさんすら懐かしいw



アチコチにあった公衆電話、そして個人情報あけっぴろげの掲示板。昭和、昭和……おれの昭和……また泣けて来ました😢

エアコンも無い、スマホも無い、けど、今より確かに楽しかった、おれの昭和。と言ってもこの映画が撮影されてた頃、私はまだ母のお腹にいました。(11月生まれです)



 

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