☆第231話『孤独』(1976.12.17.OA/脚本=峯尾基三/監督=竹林 進)
工事現場から男の腐乱死体が発見され、その所持品から2年前に詐欺罪で指名手配された辻井 勉らしいことが判明。たった1人の身内である妹=君子(栗田ひろみ)も、それが辻井勉の死体であることを認めます。
ところが解剖の結果、辻井の死因は毒殺であることが判明。なのに、顔面を打ち砕かれた形跡がある。なぜ、そんなことをする必要が犯人にあったのか? あの死体は本当に辻井勉なのか?
藤堂チームは辻井の身辺を捜査するんだけど、彼は妹以外とは誰とも交流しておらず、全く手掛かりが掴めない。
人が誰ともいっさい交流せずに暮らすなんてことが有り得るのか? そんな疑問を抱きつつ、遺留品の1つである懐中時計を調べてみたら、野村(三ツ木清隆)という男が一度修理に出していることが判明し、ゴリさん(竜 雷太)が彼のアパートを訪ねます。
懐中時計はどこかで紛失したと言う野村は、部屋で油絵を描いて毎日を過ごす、やはり誰とも交流しない孤独な男。まさか……もしかして?
君子に面通しさせ、ろくに顔も見ないで「あんな人は知りません」と言う彼女の反応を見て、ゴリさんは確信します。野村を名乗るこの男こそが辻井勉であり、あの死体は野村なのだと。つまり、辻井は別人になりすまして詐欺容疑から逃れるために、野村という男を殺して顔を打ち砕いたのだと。
証拠が何1つ見当たらない中、ゴリさんは野村の部屋にあった少女の肖像画に目をつけます。
人間嫌いで、静物画しか描かない筈の野村が、たった1枚だけ保存してる人物画。そのモデルとなった少女が着てる制服は、辻井の妹=君子の出身高校と同じ物だった!
辻井が野村になりすましてることが証明されるのは、もはや時間の問題。辻井は、2年前に搾取した金を妹に残し、自分はこの世から消えることを決意します。
「刑事さん、お兄ちゃんを助けて! お兄ちゃんを死なせないで!」
たまらず君子が真実を明かし、ゴリさんが辻井に自首を促します。
「妹さんの気持ちが解らんのか? 彼女にとって大切なのは金なんかじゃない。お前だよ!」
観念した辻井は、誰にも頼らず妹と2人だけで生きていく為に犯行に及んだことを自供します。が、ゴリさんにはそんな彼の心情がどうしても理解出来ません。
「たった1人の身内の、妹さんとも他人を装わなきゃならない……そんな孤独に耐えられると思ったのか? お前は、信じ合える友達が欲しくはなかったのか?」
「別に……子供の時から世間に放り出されて、思い知らされてます。他人なんか信じちゃいけない、初めから信じなきゃいいんだ。そうすれば、裏切られることも無い」
「…………」
なんの迷いも無く言ってのける辻井に、ゴリさんは返す言葉を失うのでした。
大都会における凍えるような「孤独」は、たびたび『太陽にほえろ!』で描かれる定番テーマの1つであり、解決出来そうにない永遠のテーマでもあります。特に今回の事件は、加害者と被害者の両方が孤独でなければ成立しなかった筈。
時代が進み、人と人との(直接の)繋がりがどんどん希薄になってる反面、現在はインターネットにおける繋がりがある分、ここまで極端な孤独はかえって現実味が無くなってるかも?
……って思ったんだけど、そのネット社会の中でもイジメやシカトがあり、それが犯罪の引き金になったケースもあることを考えると、やっぱりこれは永遠に解決しそうにないテーマですよね。
「最初から信じなきゃ、裏切られずに済む」っていう辻井の言葉は、「二度と仲間を失いたくないから、誰とも組まない」っていうスコッチ(沖 雅也)の考え方に通じるものがあると思うんだけど、今回のスコッチには捜査上の客観的な発言しか無かったのが、ちょっと残念ではありました。
私自身、人を傷つけたり傷つけられたりするのがイヤで「だったら最初から距離を置こう」って思うタイプなんだけど、それはもしかすると人恋しさの裏返しで、実は人一倍「人との繋がり」を欲してる人間なのかも知れません。たぶん、そうでなきゃブログなんかやってないだろうし。
そんな私も、ゴリさんから見れば理解不可能な人種って事になるでしょう。他者と普通にコミュニケーション出来る人には、それが上手く出来ない人間の気持ちは解らないだろうと思います。
人とのコミュニケーションが面倒臭いだけだろう、サボってるだけだろうって、上手に出来る人は言うんだけど、そんな単純な問題じゃない。だからって犯罪に走ろうとは全く思わないけど、今回の犯人の気持ち、私は解らなくもないです。
犯人役の三ツ木清隆さんは、13歳の時に特撮ヒーロー『光速エスパー』の主役でデビューした俳優さんで、『太陽にほえろ!』は他に第265話『ゴリ、爆発!』、そして第512話『婚約者の死』と、いずれもゴリさん編でゲスト出演されてます。
他にも多数の刑事ドラマに出演され、特に『特捜最前線』では犬養刑事役でレギュラーも務められました。
妹役の栗田ひろみさんは当時19歳。'72年に大島渚監督の映画『夏の妹』で主役を演じ、以来アイドル的な人気を博してTVドラマやCMでも活躍、歌手デビューも果たされました。
刑事ドラマは『大都会/闘いの日々』『刑事物語/星空に撃て!』『東京メグレ警視シリーズ』『鉄道公安官』等にゲスト出演。'80年の大晦日をもって芸能界を引退されてます。
ヌードグラビアは18歳頃に撮られたものと思われます。