夏の大スランプから抜け出して、ちょっと気持ちに余裕ができたお陰か、刑事もの以外の連ドラもいくつかチェックしてみる気になりました。
刑事ものに近いジャンルと言えば探偵ものと法廷ものが挙げられますが、2024年秋シーズンは両方、月曜日にフジテレビ系列でやってます。
その1つが “月9” 枠の『嘘解きレトリック』で、昭和初年の九十九夜町(たぶん架空の町)を舞台にした「レトロモダン路地裏探偵活劇」。
昭和元年をあえて「初年」と称してるのは恐らく、リアルな昭和じゃなくて「昭和っぽい」世界を背景にしたファンタジーだから。他人の嘘を見分ける特殊能力を持った少女(松本穂香)が主人公だし、言葉遣いも現代風だったりする。
それは別にいいんだけど、主人公の心情を全部モノローグで説明しちゃう過剰な解りやすさと「お涙頂戴」に私はゲンナリし、初回で見限りました。せっかくの松本穂香さんとお金をかけたセットが勿体ない!
お金をかければかけるほど失敗が許されなくなり、万人受けを狙い過ぎてつまんない“商品”になっちゃうこのジレンマ。いま話題の映画『侍タイムスリッパー』はまだ観てないけど、低予算(なにせ自主製作)だからこそ純粋に面白い“作品”になり得たんでしょう。
そんな月9に続いてフジの「月曜22時枠」でスタートしたのが、『僕の生きる道』や『ファイト』『僕のいた時間』『ゴーストライター』等を手掛けて来られた橋部敦子さん脚本による『モンスター』。
高校3年生のときに一発で司法試験に合格したゲーム好きの才女=神波亮子(趣里)が「ちょっと弁護士でもやってみるか」みたいなノリで法廷闘争に臨む“痛快リーガルエンターテインメント”。
ゲーム感覚ではあるけど、かの古沢良太さんの傑作『リーガル・ハイ』を彷彿させる硬派さもあるし、常にポーカーフェイスで何を企んでるか分かんない主人公のキャラクターが何より面白い!
その面白さは「演じてるのが趣里さんだから」っていう側面もかなり大きいと思います。表情豊かなヒロインを演じた朝ドラ『ブギウギ』の次にまったく対照的な役を選んだ趣里さん(と所属事務所)は実に賢い!
ポーカーフェイスと言ってもあの趣里さんですから、ほんの僅かな表情1つ1つに味があって眼が離せない。脚本もハイクオリティーですから安心してオススメできる作品です。
だけどそれ以上にオススメしたいのが、はんざき朝未さんの人気コミックを映像化した、根本ノンジさん脚本によるこの作品。
テレビ朝日系列の金曜深夜“金曜ナイトドラマ”枠でスタートした『無能の鷹』。
実はパソコンの使い方も覚えられないポンコツ営業ウーマンなのに、そのスマートな身のこなしと落ち着いた声、自信に満ちていながら謙虚な振る舞いで、会う人みんなに「デキる人」と思い込ませ、取引先に契約を結ばせてしまう奇跡の主人公=鷹野ツメ子を菜々緒さんが演じるというだけで面白い!
笑えるだけじゃなく、観ると勇気が湧いてくるんですよね。どんなにダメでも、常にオードリーの春日くんみたいに胸を張ってれば何とかなるもんだって。そんなワケは無いんだけどw
自分のポンコツぶりを自覚しながら「テレビドラマみたいな格好いいワーキングウーマンになりたい」というだけの理由でITコンサルティング会社の面接を受けたツメ子も、その有能オーラに騙されたことに気づいても受け入れてる同僚たち(井浦新、工藤阿須加、さとうほなみ、相馬有紀実、塩野瑛久、高橋克実、安藤玉恵ほか)も凄い!
さとうほなみさん演じるパイセンの鵜飼さんだけが「実はわざと爪を隠してるに違いない!」って疑ってるけど、そんなことして一体なんのトクがあるのか?w
こうして書いてるだけで楽しくなる作品です。