2023年秋シーズン、フジテレビ系列の月曜夜10時枠でスタートした、関西テレビ放送&共同テレビの制作によるコメディータッチの警察ドラマ。
緊縮財政の一環として所轄署の“経費削減”の特命を背負い、本庁から専任担当者として万町署・刑事課強行犯係に派遣されてきた“特別会計係”の警察官・一 円(はじめ まどか)を“1000年に1人の美少女”こと橋本環奈さんが演じておられます。
確かにまるでCGキャラクターみたいに整いすぎたお顔立ちで、人間味が感じられないから「この人は売れないだろう」と私は思ってたのに、持ち前のガッツと“コミュ力”ですっかり売れっ子になられました。
今回は融通が利かないガッチガチの“数字マニア”って設定だから、もしかするとCGっぽいお顔立ちがかえって活かせるハマり役になるかも?
そんな一円に振り回される昭和気質のバイオレンス刑事=湯川班長に、またアンタかよ!?ってまた書かなきゃいけない、沢村一樹。
バツイチ・マミーにして湯川班の紅一点・藤堂刑事に、たぶん連ドラにおける刑事役は初めての、松本まりか。
同じく湯川班の中西刑事に徳重 聡、大竹刑事にJP、月村刑事に前田拳太郎。
会計・人事・総務を担当する万町署の金庫番=警務課の須賀課長に、佐藤二朗。
同じく警務課でボインぼよよん担当の門倉婦警に、結城モエ。
公に出来ない金銭問題を抱えてそうな副署長の中塚に、鶴見辰吾。
あらゆる業界で“経費削減”が重要視されてる今、経理係の目線から事件捜査を描くっていう発想が新鮮で、これは面白くなるかも!って、最初はちょっとワクワクしたんだけど……
観てるうちに気づいちゃいました。これって、多部未華子さんが3年前に主演されたNHKのスマッシュヒット作『これは経費で落ちません!』の警察バージョンやんって。
パクリとは言わないけど……いや、むしろ面白くなるならどんどんパクればいいと思うけど、私はあの作品に“ドはまり”しちゃったもんで、どうしても比べてしまう。近年じゃ指折りの傑作だっただけにハードルも自ずと上がっちゃう。
最初の2話を観た限りだと、これは無謀なチャレンジだったと言わざるを得ません。あらゆる意味で格が違う。面白いんだけど、あの面白さには到底及ばない。
だから私としては、本作の新しさよりもむしろ、古き良き時代の刑事ドラマのパロディーとして楽しみたいところ。
ちょっと前に“マジンガーZの格納プールを実際に造るとしたら予算はこんな額になる”っていうコメディー映画があったけど、それと一緒ですよね。昭和の刑事ドラマみたいな捜査を実際にやったら警察が破産しちゃうよっていうw
転がっていく一円玉を追って刑事たちが“走る”オープニングのタイトルバックも、いにしえの刑事ドラマや大ヒット映画のパロディーで構成されてるし。
それが毎回、演じるキャストが入れ替わってたりなんかして、ここまで凝ったOPタイトルも近年の連ドラじゃ珍しく、それだけで私は応援したくなっちゃいます。
一円と湯川班長の対立も、例えば『太陽にほえろ!』でマイコン刑事が登場した時のことを連想させたりするんです。
データを最重視して捜査するマイコンも、金額ですべてを判定する一円も、“勘”や“足”で捜査する昔気質の刑事たちには宇宙人みたいに見えてしまう。
経費なんぞ気にしながら捜査してられるか!?ってハイパー激怒する湯川班長に、一円は言います。
「湯川さんは正しいと思います。しかし、お金が無ければ捜査は出来ません。事件が起きても、それを解決すべき警察がいない。そんな恐ろしい未来がきてもいいんですか?」
それはまさに今、あらゆる業界が抱えてるジレンマですよね。お金が無いから人を雇えない、人手が足りないから業務が回らない、そしてまた赤字がかさむっていう負の連鎖。まるで悪夢です。
けど、意気消沈する一円に金庫番の須賀課長が言ったセリフには、私もちょっと励まされました。
「一番の経費削減は、事件の早期解決。キミだって警察官だろ?」
確かに、沈んでても仕方がない。自分が動くことでほんの僅かでも光が見えるなら、とにかくやるっきゃない。
『これは経費で落ちません!』とは比較にならないけど、これも観て損はしないドラマと言えそうです。
ただし! 毎回ラストシーンでオマケみたいに挿入される、主人公の“秘密”と“裏切り”を匂わせる“取ってつけたような謎”さえ無ければ!っていう条件付きで。
そこはコメディーですから他愛ないオチがつくんだろうけど、ホントにもう心底ウンザリです。たぶん、創ってる人たちも本音じゃ「こういうの、もうやめません?」って思ってるはず。
なのに、やめるにやめられない何らかの事情、忖度ってヤツがあるんでしょう。ついにジャニーズがあんな末路になっても、テレビ業界は何ら変わりそうにありません。
セクシーショットはもちろん橋本環奈さんと松本まりかさんです。