2021年冬シーズン、テレビ朝日系列の土曜深夜「土曜ナイトドラマ」枠でスタートした、橋部敦子さんのオリジナル脚本による30分の連続ドラマ。我が地域では (全国的にも?)『モコミ』→『書けないッ!?』と続けて30分ドラマが放映されてます。
原作の知名度に頼らないオリジナル企画、そして30分枠の連ドラが増えて来たような気がしますが、とても良い傾向だと思います。1話完結だと正味20分は尺が足りないかも知れないけど、連続物だと1時間(正味45分)はちょっと長すぎると、以前からずっと思ってました。
というか、テレビ鑑賞にあまり時間が割けなかったり、歳を重ねるにつれ集中力が保てなかったりで、個人的に30分の方が観易いんですよねw 実際、これまで「30分なら毎週観るのになあ」って思いながら視聴をやめた番組が沢山あります。
アニメ番組は昔からそうだし、30分で充分なんですよホントに! たぶん業界の人達もそれを薄々分かっていながら、1時間枠をやめるにやめられない何か事情があるんでしょう。
それならそれで『俺の話は長い』みたいな2幕構成、『女子高生の無駄使い』みたいな3幕~4幕構成といったやり方もあるし、もっと色んな形があって良いと思います。
そう言えばNHKの正月番組で、これから配信ドラマが盛んになるにつれ定型の時間枠は無くなっていくだろう、みたいな話をしてました。私はパソコンやスマホで映画やドラマを観ようとは思わないけど、旧態依然としたテレビ番組の形が崩れていくのは歓迎したいところです。
さて『モコミ』ですが、私がどハマリした『トクサツガガガ』以来、怒濤の快進撃を続ける小芝風花さんが主人公の萌子美(もこみ)に扮します。
感情を持たない筈の静物や植物の気持ちが読み取れちゃうという、特殊な能力を持ってるため幼い頃から世間に変人扱いされ、誰より理解して欲しい母親(富田靖子)の理解も得られず、他者とのコミュニケーションがすっかり苦手になっちゃった萌子美が、自由人の祖父(橋爪 功)が同居することになったのをキッカケに殻を破り、やがて自立していくまでの成長過程が優しい目線で描かれる、ほっこり温かいドラマになりそうです。
これは決してファンタジーじゃなく、世間のいわゆる「同調圧力」に息苦しさを感じてる普通の人々、つまり私たちへの応援歌だろうと思います。特殊能力はあくまで「みんなと違うこと」のメタファーですよね。
でも実際、植物の声が聞こえちゃう幼い女の子が『探偵!ナイトスクープ』に登場したりしてましたけどねw 無数にあるクローバーの中から瞬時に四つ葉を見つけちゃう不思議な能力だけど、それはたぶん大人になったら無くなっちゃう。もしかしたら萌子美も、自立したら静物や植物の気持ちが解らなくなるのかも?
いや、それだと「みんなと違うこと」を否定することになるから、そうはならないですね、きっと。これも個性の1つなんだと受け入れなきゃ意味がない。
いずれにせよ、これは超能力者の話じゃなくて、私やあなたのストーリー。世間の眼などいっさい気にしない強者は別だけど、そんなヤツはこんなブログ読んだりしないでしょうw
萌子美の父親に田辺誠一、兄に工藤阿須加、初恋の人に加藤清史郎、これから萌子美が勤めることになる花屋さんの店員に水沢エレナ&内藤理沙と、魅力的なキャストが揃ってるし、『書けないッ!?』とセットで是非とも完走したいと思ってます。
2021年冬シーズン、テレビ朝日系列の土曜深夜に新設された30分枠「オシドラサタデー」でスタートした、福田靖さんのオリジナル脚本による連続ドラマ。
売れない脚本家の吉丸圭佑(生田斗真)はここ数年ほとんど執筆依頼を受けておらず、売れっ子小説家の妻=奈美(吉瀬美智子)に代わって家事をこなす日々。
そもそも欲が無い佳佑はそんな生活に満足してたんだけど、ある日突然、ゴールデンタイムの連ドラを全話書いて欲しいという夢のような依頼が舞い込んだもんだから、さあ困った!w
引き受けはしたものの、書けない! アイデアが浮かばない! それでも無理して頑張って書き上げた脚本が、主演スター(岡田将生)のワガママであっさりボツにされてしまう!
いつもノープランで無責任なプロデューサーに北村有起哉、やる気がないアシスタント・プロデューサーに長井短、やる気しかないディレクターに小池徹平、佳佑&奈美の娘=絵里花に山田杏奈が扮するほか、小野武彦、梅沢昌代、野村麻純、濱野謙太etc…といったレギュラーキャスト陣。
なにを隠そう、私の親友の前職が「売れない脚本家」だったもんで、このドラマは「あるある」に溢れてて他人事とは思えませんw
それが「売れない」脚本家だけの「あるある」なのか、売れたとしてもやっぱり「あるある」なのかは、売れた経験が無い彼には分からないそうですw
だけど恐らく福田靖さんの実体験が元ネタになってるでしょうから、今やチョー売れっ子の福田さんでもこんな時代があったんだ!と思えば、今まさに売れっ子脚本家を目指してる方々には心の支えになるんじゃないでしょうか?
ただし、脚本家時代は風呂なしアパートに独りで暮らし、将来への不安と孤独と不摂生で体調を崩しまくってた私の親友から見れば、裕福な生活と美人の奥さんに恵まれてる佳佑くんがいくらストレスで幻覚を見ようが「それくらい何やねん!」って思うだけ。別に売れなくたって充分幸せやん!って。
まぁしかし、そこはやっぱりフィクションだし、売れない脚本家が現実にどんな生活をしてるかなんて、大多数の視聴者は興味ないでしょうから、殊更リアルに描く必要もないと思います。
視聴者が見たいのは脚本家の私生活なんかじゃなくて、連ドラ制作の裏側とテレビ業界の実態ですよね、きっと。その点、経験者である親友の眼から見るかぎり、このドラマは(多少のデフォルメはあるにせよ)相当リアリティーがあるみたいですw
売れてない佳佑に突然ビッグな仕事が舞い込んだのは、本来そのドラマを書く予定だった有名脚本家が降りてしまったから。降りたくなる理由がそのプロジェクトにはあるワケで、しかも撮影開始が間近に迫ってるもんだから時間がない! そんなリスクばかりの仕事を名の売れた脚本家が引き受けるワケないから、ヒマを持て余してる売れない人にお鉢が回って来るワケです。
似たような経験が私の親友にもあったそうですw 元プロレスラーで当時国会議員だった、仮称「ミスターX」が町興し企画の映画を監督(兼 主演)することになり、他のライターさん(どなたかは不明)が脚本を引き受けたものの、途中で放り出して逃げちゃった。
で、当時マイナーな特撮ヒーロー番組の脚本を書いてた親友がピンチヒッターとして雇われるワケだけど、プロデューサーから渡された企画書を読んで、彼は前任者がなぜトンズラしたかを瞬時に悟ることになりますw
そこには監督=ミスターXがその映画でやりたいことが箇条書きで色々書かれてたんだけど、テーマはおろかジャンルもバラバラで支離滅裂、1本のストーリーには到底まとまらない!
そもそも元プロレスラーの国会議員さんなんて、住む世界も生き方も180度ぐらい違いますから、オタク気質の我々とは趣味がまったく合わない! やれヤクザだの元ロックスターだの純愛だの人情だのと、俺にはそんな資質が無いんだよベイビー・ロケンロール!
で、ちょっと強気に出た親友は、ある程度は企画書に沿いながらも、使えないと思ったネタはことごとく排除し、かなり自分の得意分野に寄せたプロット(あらすじ)を書いてプロデューサーに提出。それが面白ければ文句は無いだろうと、ミスターXを甘く見てたワケですw すると……!
「よくぞ上手くまとめてくれた!」って、プロデューサーは褒めてくれたのに、その翌日、夜中の0時近くに親友のケータイが鳴るワケです。えっ、まさか?と思いながら電話に出たら、ドスの効いた低い声が聞こえて来るワケですよ!w
「先生……こりゃ一体どういう事っスか?」
自分の要求を半分近く無視されたミスターXは、完全にお怒りモード。ちなみにこの時点まではプロデューサーが仲介役だったもんで、親友はまだミスターXと対面してません。
「先生……今すぐ議員宿舎に来て下さいよ、タクシーで」
この「先生」っていう呼び方に絶望的な恐怖を覚えた親友はw、20発ほど殴られる覚悟を決めて議員宿舎に向かったそうです。逃げるよりもこの際、よく話し合ってクビにしてもらう方がすっきりラクになれると判断したんですねw
で、宿舎1階の喫茶店で初対面したのが深夜2時ぐらい。ミスターXは仏頂面ではあるものの、逃げずにやって来た私の親友に敬意を払ってくれたそうです。電話でお怒りモードだったのは、たぶん親友がどう出るか試したんでしょう。
そしてミスターXの部屋に招かれた親友は、謎の美女にコーヒーを煎れてもらったりしながらw、朝方までミスターXの注文をみっちり聞かされたそうです。
その注文はやっぱり支離滅裂ではあったけど、直接話を聞いたお陰で親友は2つのことを悟りました。1つは、ミスターXが本気でいい映画を創りたいと思ってること。そしてもう1つは、要するにロックスター版の『ロッキー』をやりたいんだな、ということ。
ちゃんと映画創りに対して情熱があるなら協力したいし、『ロッキー』なら俺だって好きだから何とかなるかも? そう思った親友はいよいよ覚悟を決め、ミスターXの注文を100%取り入れた脚本を書くことにしたそうです。
期限は1週間後。映画のシナリオを書くにはあまりに短かいけど、親友は必死に頑張りました。途中、ミスターXから電話で「先生、主人公の妹を出したいんですけど」とか「先生、自民党の○○議員が出てくれるから、役を作って下さい」とかw、おいちょ待てよ!(先に言えよ!)って言いたくなる注文がバンバン入って来たけど、親友は文句を言わずに全て受け入れ、自分がこれを面白いと感じるかどうかは置いといて、とにかくミスターXがやりたいことを全て盛り込んだストーリーを、なんとか破綻させずにまとめた脚本を書き上げるのでした。
彼はそれまで、アクション映画や特撮ヒーロー物など、幸いにも自分が好きなジャンルの脚本しか書いて来なかったんだけど、このとき初めて、全くそうじゃない脚本を四苦八苦しながら完成させて、ホントに死ぬほど苦しかったけど、やっと自分が本当の「プロの脚本家」になれたような、それまでの仕事とは違う充実感があったと言ってました。
映画は全くヒットしなかったけどw、ミスターXは後から親友に「先生。次、こんな企画があるんスけど」って、ドスの効いた声で電話して来たそうです。残念ながらその企画は流れてしまい、親友は心底ホッとしながらもw、あのミスターXが自分をプロとして認めてくれたんだなって、ちょっと誇らしい気持ちになったそうです。
……長くなってしまいましたm(__)m ドラマ『書けないッ!?』に話を戻すと、第2話で佳佑のライバルとなる若い脚本家が登場し、メインライターの座を奪いかけるんだけど、彼は主演スターの勝手な注文に難色を示すんですよね。「ぼくの世界観とは違う」「そんな話になるなら引き受けなかった」とか言って。
そしたら、北村有起哉さん扮するスチャラカ・プロデューサーが、顔を馬みたいに長くしながら言いました。「これはプロの仕事だから。キミの世界観なんかどーでもいいんだよ」って。
アーティストの立場からすると聞き捨てならない台詞だけど、プロの現場で働いてるクリエイターからすれば、それは実に真っ当な言葉じゃないでしょうか?
勝手な注文にさんざん振り回されてる佳佑は、一見気弱で頼りなく感じるけど、「自分に合わないから」って逃げちゃうヤツよりよっぽど闘ってるんですよね。
だから、彼は必ず最後に勝つと思います。次回から撮影が始まっていよいよシッチャカメッチャカになりそうだけどw、佳佑ならきっと大丈夫。
そんなワケで、私はこのドラマを楽しみにしてます。脚本家とかドラマ制作の裏側に興味がない人はどう感じられるか分からないけど、とにかくリアルなのは確かですから、興味ある方にはオススメしておきます。
セクシーショットは山田杏奈さんです。
2021年冬シーズン、日本テレビ系列の土曜夜10時「土曜ドラマ」枠でスタートした、日本テレビ&AX-ONの制作による刑事ドラマ。
2024年、日本全国に存在する500万台もの監視カメラを駆使し、犯罪発生を予知して容疑者を事前に押さえる特殊部隊=KSBC(神奈川県警捜査分析センター)が新設され、現役警察官でセンター長の島原由梨(松下奈緒)により民間から特別捜査員が選抜されます。
そして集められたメンバーは、かつて最愛の人を殺された元捜査一課の敏腕刑事=伏見響介(亀梨和也)、元自衛官でシングルマザーの湊川由美子(シシド・カフカ)、元犯罪心理プロファイラーで前科者の山崎辰二郎(木村祐一)、若き天才ハッカーの小牧要(松村北斗)、サイバー犯罪対策課から異動して来た情報分析官の長篠文香(趣里)等。
さらに県警捜査一課の長久手刑事(川瀬陽太)、姉川刑事(長田成哉)、奥州刑事部長(矢島健一)等が絡んで来ます。
撮影現場で不眠不休で頑張っておられる方々のお姿を想像すると、一刀両断に「こりゃダメだ」とか「つまんない」とか言うべきじゃないとは思うんだけど、すみません。初回を観た正直な感想は「こりゃダメだ」「つまんない」でしたm(__)m
いわゆる「既視感」ってヤツがあるのは仕方がない。だって刑事物のネタなんて何十年も前に出尽くしてるんだから、過去の番組に似てしまうのはどうしたって避けられない。ある程度までは。
けど、ほぼ100%「既視感」しか無いってのは、こりゃダメでしょう? この作品ならではの面白さ、何らかの新しさが全く見えて来ないってのは、そりゃつまんないに決まってます!
例えば同時期にスタートした刑事ドラマ『青のSP』なら学園物、『天国と地獄』なら男女入れ替わり物と、それぞれ異種ジャンルと組み合わせることで新鮮さを生み出す工夫、努力のあとが見えて来るんだけど、この『レッドアイズ』には何も無い!
しかもその「既視感」のオリジナルが『ボイス』だったり『絶対零度』だったり『DIVER』だったりと、1年以内に放映された番組ばかりってのがいくらなんでも酷すぎる!おいちょ待てよ!
創り手がもはや「ハイハイ、パクリとでも何とでも言ってくらはい」って、開き直ってるとしか思えない!(木村祐一さんが『ボイス』の時とほとんど同じキャラ&同じポジションで出てるのとか、もはやヤケクソですよね?)
私が僅かながら新鮮味を感じたのは2点だけ。やけに綺麗になられた趣里さんと、シシド・カフカさんの格闘アクション。どっちもストーリーと全く関係ない! おいちょ待てよ!
そのシシドさんのアクションにしたって、よく見ればそれほど大した動きはしてないんだけど、タッパがあってヤラレ役の人が上手いとそれなりに魅せられるっていう典型例ですよね。亀梨くんはまぁ、主役なんだからアレくらいはやってくれなきゃ困ります。
だけどその立ち回りにしたって、この作品ならでは、そのキャラクターならではの個性が、やっぱり見えて来ない。
高望みし過ぎですか? いやいや、そんな事はないと思う。一視聴者として当然の要求だと私は思います。つい昨年観たばかりの番組と(役者が違うだけで)ほとんど同じものを観せられたら、そりゃ誰だって怒りますよ!
こういう時いつも浮かんで来るのが、創り手さんたちは一体、何をモチベーションにしてドラマを作ってるんだろう?っていう疑問。余計なお世話なんだけど、他の誰かが創ったものをまんま焼き直すだけの「作業」に、果たしてやり甲斐はあるんだろうか?って。
もちろん仕事ですから好きな事ばかり出来るワケじゃないし、時にはやりたくない事もやらなきゃいけない。でも、そんな時にこそ、これならどうだ!っていう、こんな「オワコン」のジャンルでも俺なりの面白さで魅せてやる!っていう意地、覇気、情熱、底力を発揮するのがクリエイターじゃないの?って、私は思うワケです。
そういうものがこの番組からはほとんど感じられません。せっかくのアクション物なのに、残念です。
リー御大の次はやっぱりジャッキーで……って思ったけど、それじゃ順当すぎてつまんないから、意表を突いて今回はこれを蔵出し。私が所有する唯一のタイ映画DVD、プラッチャヤー・ピンゲーオ監督による2008年公開の作品です。
主演はジージャー・ヤーニン、撮影当時23歳ぐらいの可愛い女の子! そしてどういうワケか阿部寛さんもご登場、ナレーションまで担当されてますw
タイの凶悪マフィアのボス=ナンバー8(ポンパット・ワチラバンジョン)の女であるジン(アマラー・シリポン)が、よりによって日本ヤクザの阿部ちゃんと恋に落ちたもんだからさぁ大変!
当然、激怒したナンバー8に命を狙われた阿部ちゃんは急きょ日本に逃亡。残されたジンは阿部ちゃんとチョメチョメして出来た娘=ゼン(ジージャー)を密かに育てるも、大病を患って倒れちゃう。
ゼンはお母さんの治療費を工面するため、かつて母から借金し踏み倒したロクデナシどもを「取り立て」に回り、抵抗する輩を片っ端からフルボッコにしていくのでした。
こんな小柄な女の子がなぜそんなに強いのか? 本作はちゃんとその理由も描いてくれます。ゼンは生まれながらに脳の発達障害を患っており、その代償として「眼で見た体術を一瞬で習得できる」特殊能力を備えてる。
なんと彼女は、テレビで放映されてるカンフー映画を片っ端から観て強くなった! そこで当初はブルース・リー御大の映像を使う予定が著作権の問題で不可となり、監督はやむなく自作『マッハ!!!!!!!!』('03) からトニー・ジャーの映像を流用したんだとか。つまり本来、ゼンの師匠はリー御大だった!
この設定にリアリティーがあるかどうかはともかく、何も無いよりは断然いい。お陰ですんなり感情移入できますから、全てのアクションに説得力がある。燃えます。めちゃくちゃ燃えます!
いや、こんな小柄な女の子が超人的なカンフー技(マーシャルアーツ? ムエタイ?)を見せてくれるだけでも鳥肌もんで、自然と涙が出て来ちゃう。
『キック・アス』('10) におけるヒットガール(クロエ・グレース・モレッツ)の超絶アクションにも興奮したけど、先にジージャーのアクションを観ちゃったもんで驚きはしませんでした。
それだけジージャーの動きは凄い! そのスピードと精確さはブルース・リー御大にも決して負けてない!(私みたいな素人の眼から見ればだけど)
なぜそんなに凄いのかと言えば、ピンゲーオ監督はジージャーが高校生の頃から眼をつけ、4年間みっちり鍛え上げてから撮影に入ってる。その撮影にも丸1年ぐらいの歳月をかけてる。
同じガールズアクション物でも、主演女優を2~3回だけアクション塾に通わせ、たった10日ほどで撮っちゃう日本映画とは環境レベルに雲泥の差がある。そもそも打撃技から高所落下まで何もかも「ガチで」本人にやらせちゃうタイや香港の映画界と、タレント(で得られる収益)を守ることしか頭にない日本の芸能界とじゃ比較にならないワケです。
水野美紀さんや清野菜名さんがいくら動けても、それを活かせる機会がほとんど無い。あったとしても活かしきれる環境が無い。映画『百円の恋』でボクサーに扮した安藤サクラさんも悔しがっておられました。小太りからボクサー体型になるまでの減量過程をたった10日で撮るって、そんな馬鹿げたことやってるのは世界を見渡しても日本だけじゃないですか?
海外のアクション映画を観るたび、そんな我が国の現状を嘆かずにはいられません。もうちょいホント、なんとかならんものか?
だけどそのお陰で、女の子がこれだけ凄いアクションを見せてくれる事実だけで、私は心底感動しちゃう。ほんと有難いことです。(皮肉ですよ!)
『マッハ!!!!!!!!』のトニー・ジャーも確かに凄いけど、カリスマ性じゃリー御大に遠く及ばない。その点『チョコレート・ファイター』当時のジージャーには「可憐さ」という強力な武器がありますから、もしかするとリー御大に太刀打ち出来た唯一の存在と言えるかも?
百聞は一見に如かず、未見の方は是非ご覧下さい。格闘技にそれほど興味なくとも、ジージャーの凄絶アクションには鳥肌&感涙を保証します。以降にもいくつか出演作があるけど、やっぱ一番若い時の本作がオススメ。
少々血なまぐさいシーンもありますが、あとで存分に燃えるための布石ですからそこは我慢。それよりラストのNG集&メイキングの方がよっぽど血なまぐさいしw(絶対、死人でてますw)
当然、主役のジージャーが誰よりも満身創痍。そこまでやるからこその鳥肌&感涙です。日本映画でそんな涙を流したことは一度も無いし、今後もたぶん死ぬまで無いでしょう。
カワイイは最強!とはまさに『チョコレート・ファイター』のこと。これはホント、必見です!
やっぱり、バッタもんを観たらホンモノも観たくなりますよねw 私が唯一所有してるブルース・リー御大のDVD『燃えよドラゴン』を久々に観ました。1973年公開の香港&アメリカ合作映画、ロバート・クローズ&ブルース・リー共同監督による作品です。
やっぱねぇ、違いますよw 全然違う! この唯一無二の個性と存在感、まさに鋼のような肉体、そして正確無比なアクション! どれを取ってもバッタもんとは比べもんになりませんw
いや、世界中のアクション俳優やクリエイターたちが影響を受けまくりながら、いまだ誰ひとり超えられないんだからバッタもんとは比べようもない。バッタもんにはバッタもんの良さがあるんだし。(ブルース・リィさん、バッタもん連呼してすみませんw)
ジャッキー・チェンを筆頭とするカンフースターは言わずもがな、竹中直人さんみたいなモノマネ芸出身の俳優さんやケンシロウなど漫画あるいはゲームキャラに至るまで、世の中はいまだブルース・リーに溢れてます。
さんざん松田優作さんのバッタもん呼ばわりされた『太陽にほえろ!』のブルース刑事=又野誠治さんにしても、むしろ優作さんよりブルース・リーを意識しすぎてたことが、あらためてリー御大の映画を観るとよく分かります。そもそも優作さんだって影響受けてたでしょうしw
だけど誰も超えられない。若くして亡くなったお陰で唯一、その優作さんが日本のブルース・リーみたいな存在になった感はあるけど、それでも比較にならないと言わざるを得ません。
『Gメン'75』の記事に書いた通り、さほど私はカンフー物が好きなワケじゃないんだけど、それでもリー御大はずっと観てられる。アクションシーン以外でも一挙手一投足から眼が離せない。
なぜって、やっぱり唯一無二だから。これはもう理屈じゃ説明のしようがありません。初めて見た子供の頃よりも、いろんな作品や人間を観て来た今の方がより一層、如何にこの人が飛び抜けてるかがよく解ります。バッタもんを観た直後だから余計にw(リィさん、重ね重ねすみませんw)
この『燃えよドラゴン』はアメリカ資本が入ってるからブルース・リー映画随一の大作だし、バランスも良くてクオリティーが高い。今の眼で観るとびっくりするほど展開がトロいけどw、リー御大が画面に映ってる限り退屈はしません。だからこそのスーパースターです。
さらに本作には『Gメン'75』香港カラテシリーズの常連ゲスト、ボクらの筋肉アイドルことヤン・スエさんもけっこう重要な役で登場し、ここでも筋肉をメリメリ言わせながら大活躍されてます。凄い人だったんですね!(筋肉アイドルとか言ってすみませんw)
ストーリーは、少林寺随一の達人であるリー御大が国際情報局からの依頼により、やはり少林寺出身で悪の道に走ったハン(シー・キエン)が支配する要塞島に潜入し、武術トーナメントに参加しながら悪事を暴いていく、基本はスパイ活劇。
リー御大が最初に対戦するのがかつて妹=スー・リン(アンジェラ・マオ)を死に追いやったにっくき仇で、そいつを圧倒的な強さで処刑しちゃうシーンでつかみはバッチリ! とどめの蹴りを入れたあと泣きそうな顔で歯を食いしばる有名な演技がここで披露されます。
リー御大より先に潜入してた諜報員=メイ・リン(ベティ・チュン)や、ハンの愛人らしき金髪美女=タニア(アーナ・カプリ)、そしてトーナメントに招かれた武術家たちをお色気で接待する美女軍団も登場し、意外とむさ苦しくありませんw
以前レビューしたジャッキー・チェンのハリウッド進出第2弾『プロテクター』でも似たような(あまり必然性が感じられない)お色気サービスがあったけど、もしかして本作へのオマージュだった?
ほか、アメリカ側からジョン・サクソン、ジム・ケリー、ボブ・ウォールといったアクションスターたちも参加されてます。
要塞島におけるアジア風味のへんてこパラダイス感も見どころで、やっぱりこれは面白い! まだ観てない方には大いなるサプライズが、子供の頃に観たきりの方には新たな発見が多々あると思うので、今更ながらオススメです。